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12 飯能市エコツーリズム推進協議会

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12 飯能市エコツーリズム推進協議会
住民が共に育てる
観光まちづくり
事例
12
埼玉県 飯能市
飯能市エコツーリズム推進協議会
住民が、自分の言葉で飯能の自然と暮らしを語れる
それが飯能のまちづくり
全国各地や海外から視察が訪れるエコツーリズム先進地・埼玉県飯
能市。平成 20 年「第 4 回エコツーリズム大賞」の大賞を受賞、翌年エ
コツーリズム推進法に基づく全体構想を策定し、全国で第 1 号となる
認定を国から受けた。
飯能市は、かつて「西川材」を産出する林業のまちとして知られて
いたが、需要低下によりまちは徐々に活力を失い、森や山と人々の暮
らしとの関わりも薄れ始めていた。そうした中、平成 16 年に「エコツ
ーリズム推進モデル事業(環境省)」のモデル地区に採択された。
「自
分たちの地域の本当の良さとは何か、もう一度見直す必要があった。
そのためには、エコツーリズムの考え方がうってつけだった」と協議
会会長の石田氏。協議会は、エコツーリズムを合い言葉に、地域の自
然や生活文化を手掛かりとした地域振興に取り組んでおり、
「エコツー
リズムオープンカレッジ」や「活動市民の会」といった取り組みを通
じて、住民主役のまちづくりを行ってきた。エコツーリズムは、地域
の新しいアイデンティティとして根付きつつある。
取組主体
飯能市エコツーリズム推進協議会
設 立 年
平成 17 年(2005 年)5 月 11 日
住
埼玉県飯能市大字双柳1-1
所
石田 安良氏(いしだやすよし)
昭和 16 年生まれ。白子五人衆
の一人。無農薬の野菜づくりや
郷土料理づくりなど、古民家での
ゆったりとした時間を満喫できる
田舎暮らし体験ツアーを実施し
ている。現在、飯能市エコツーリ
ズム推進協議会会長。西川広域
森林組合代表理事組合長
(http://hanno-eco.com/)
電話
042-973-2123
FAX
042-971-2393
地域の課題
ソリューション
山間地域の活力低下に伴い、森や山と人々
の暮らしとの関わりが薄れてきた
→
森や山との新しい関係づくり 【エコツーリズムの導
入】
観光客が地域内で消費する機会が少ない
→
飯能ならではの生活文化や産業を絡めたエコツア
ーづくり 【多様なエコツアーの実施】
(地域の特徴)
里地・里山の身近な自然と生活文化を
守りながら活かしていく仕組みづくり
エコツーリズムの導入過程で、飯能のあたりまえ―丘陵地の雑木林
から山地に分布する多様な樹林、源~中流域の変化に富んだ河川、そ
こに息づく多様な野生生物、古民家の残る街道、山村集落の風景、そ
こで営まれてきた産業や生活風土―こそが飯能の魅力であると考えた。
そこで、協議会を中心に、住民が飯能の魅力やガイドの基礎を学べ
る「エコツーリズムオープンカレッジ」を毎年開催し、受講修了者を
中心に「活動市民の会」という活動組織を作った。市内の意欲ある NPO
オープンカレッジは開講 6 年目。毎
年定員以上の応募がある
法人や地域の団体、
「活動市民の会」を中心として、エコツアーを提供
し始めた。飯能市のエコツアーは、飯能の「自然を保全・再生し、文
化を継承して将来に伝えること」を基本方針の一つに掲げている。具
体的なツアーの内容は、谷津田を再生し、両生類の生息地を復元する
ツアー、西川材を利用した家づくりや郷土料理を学ぶ文化体験ツアー、
湧水と暮らしとの関わりを辿るツアーなどがあり、基本方針をゆるが
ないものにするため、事前協議制度やモニタリング、安全管理などの
ルール設定の仕組みも定めている。これにより、地域の自然や文化を、
観光客も巻き込んで、活用しながら守る仕組みが動き出した。
地域の人が地域の言葉でガイドする
ことが信条。ガイドの基礎を学ぶ
(取り組み概要)
地域への経済効果を意識したツアーづくり
現在、飯能市には年間約 250 万人の観光客が訪れているが、従来は、
キャンプやバーベキュー、登山が中心で地元消費が少なかった。そこ
で、エコツアーを展開するにあたっては市街地をコースに入れて立ち
寄ったり、弁当や菓子を地元で手配したり、土産品を紹介するなど、
地元への波及効果を高めるように意識して行程を組んでいる。また、
積極的にメディアへの情報提供を行うことで、エコツアーによる地域
のイメージアップにつなげている。
飯能市エコツアーは、地域にお金が
落ちる仕組みを意識している
地域の課題
ソリューション
エコツーリズムに関わる人の裾野を広げてい
く
→
活躍の場づくりを支援 【人材育成の強化】
自立的な活動を続けていくにはまだ集客が不
十分
→
エコツアーの多様化とレベルアップ 【新たな商品展
開】
(地域資源の発掘と活用術①)
学びの場づくりから、活躍の場づくりへ
毎年「エコツーリズムオープンカレッジ」を開催し、受講修了者を
中心に「活動市民の会」の会員が増加していく中で、実際にエコツー
リズムの取り組みに関わる人は固定化されつつあり、いかに人材の裾
野を広げていくかが課題となっている。現在会員からの意見交換を重
ねながら、会の活性化に取り組んでいるところである。
また、市内のエコツアー実施者、活動市民の会の会員を中心に、更
なるスキルアップを目指し、実践的なツアーの実施方法を学ぶ「エコ
ツアーガイドステップアップ講習」を開設し、ガイド活動へより積極
ステップアップ講習ではより実践的
な知識を学ぶ
的に参加してもらえるような支援を行っている。
(地域資源の発掘と活用術②)
将来の“自立”に向けて
エコツアーのレベルアップへ
エコツアーの運営では、市内の意欲ある NPO 法人や地域の団体、活
動市民の会などがエコツアーを実施、企画し、ガイド役を担っている
が、エコツアーを支える体制(エコツアーの総合窓口や各種相談など)
は、市のエコツーリズム推進室が一元的に担っている。将来は、窓口
機能を含めて自立的運営を行っていくことが必要であるため、法人化
や基金設立も含めて様々な可能性を議論しているところである。
そうした将来像を描いていくためには、集客をさらに増やし、エコ
ツアーの事業性を高めることが重要である。そこで、エコツアーのレ
ベルアップや多様化に取り組んでいる。
具体的には、シリーズ型ツアー「里活」や、若い客層の開拓を狙っ
た「リバートレッキング」
、宿泊を伴い、普段よりもさらにディープな
体験を提供するツアー(シカウォッチングなど)
、従来の遠足に環境教
育の要素を組み入れた「体験型遠足」など、新たな展開を進めている。
シリーズ型ツアー「里活」。リピータ
ーの獲得を狙っている
「飯能市エコツアー」ができるまで
(地域資源を観光事業に活かすまでのプロセス)
飯能市エコツアーは、市内の NPO 法人や地域の団体、
「活動市民
の会」などが主体的に実践している。
「活動市民の会」の個人ガイ
ドがエコツアーを実践する場合を例にとると、先輩たちのツアー
見学、解説補助などを通じて経験値を高め、その中で、
「私ならこ
んなツアーをやってみたい!」という思いが芽生えたら、市のエ
コツーリズム推進室と相談しながら企画を練っていく。ツアーで
お世話になる相手先(農家、民家、お寺など)と打ち合わせを重
ねて、行程や解説内容を煮詰めていく。企画ができ上がったら、
飯能市のエコツーリズムの基本方針に沿ったものであるかどうか、
事前協議制度を経て、市の広報紙やウェブサイトなどで PR を行い、
参加者を募集する。ツアーを実施した後は、参加者からの感想を
踏まえ、市の推進室と改善点についての話し合い、次のツアーづ
くりにつなげていく。
(年表)
平成 16 年(2004 年)
環境省モデル事業採択
平成 17 年(2005 年)
エコツーリズム推進協議会を設立
エコツーリズムオープンカレッジを開講
エコツーリズム推進事業交付金の開始
平成 18 年(2006 年)
活動市民の会を設立
平成 20 年(2008 年)
エコツーリズム大賞受賞
平成 21 年(2009 年)
エコツーリズム推進法に基づく全体構想第 1
号認定
(統計データ)
数字でみる「飯能市エコツアー」
飯能市では、平成 17 年度からエコツアーを開始し、翌年
には 46 件ものツアーを実施して 2,000 人弱を集客した。そ
の後も順調に取り組みを継続し、平成 22 年度にはツアー数
80 件、参加者数 2,700 人に達している。
環 境 省モ デル 事
業 の モデ ル地 区
指 定 をき っか け
として、仕組みづ
くりを進めた
「飯能市エコツアー」の参加者数
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