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The Rope News The Rope News
The
The Rope
Rope News
News
Model Ship Builder's Club
ザ・ロープニュース
発 行日 :1,4,7,10月の 各 末日 (年4回 )
No.80
2013年8月31日
企画・発行:ザ・ロープ幹事会
編集:安藤雅浩
総会・例会・研修会
平成25年度 定期総会を開催
瓜生 法男
6月9日(日曜日)午後2時から銀座2丁目中央通りのイタリアン・レストラ
ン「リポーゾ銀座」で平成25年度定期総会が開催された。店名のリポーゾ
RIPOSOはイタリヤ語の'ひと休み'の意。以前から総会・例会の会場とし
て利用してきた東京駅近くの「日本橋サリュ・コパン」がビル建て替えによ
り閉店したので新しい会場での開催になった。当日は夏のはしりの様な暑
い日であったが、会場が地下のためか涼しく快適であった。
総会は会員数109名に対し60名を超える出席と欠席者の委任状により、
定刻通りスタートした。
1.田中会長挨拶
本年4月の第38回展示会は成功のうちに終了した。展示会開催に合
わせて姉妹クラブのSMAよりアメリカとフランスからのツアーが来日し、
素晴らしい帆船模型6隻の出展があった。アメリカのNRGジャーナルに
も記事として掲載された。さらに近隣同好会からの出展を得て盛況を呈
し、見学者は毎日500名を超えた。今後の課題として展示会費用増加
への対応、会員の世代交代が進み製作ノウハウの引き継ぎとその場で
ある研修会の一層の充実策、JSMCCの継続などを提起した。
2.平成24年度業務報告
田中会長
塩谷事務局長より業務報告書を基にこの一年の活動を振り返る。
定期総会・例会・講演会、納涼会の夕べ、帆船模型製作研修会、第
38回帆船模型展示会、帆船模型教室等の諸行事の開催、ホームペー
ジのリニューアル、ザ゙・ロープニュースの発刊、幹事会での打ち合わせ
等々の報告があった。何て活動内容が多岐に渡っていることか !
3.平成24年度決算報告と監査報告
岩本会計幹事・松原監査により平成24年度の決算報告・同監査報
告・承認の後、岩本さんより予算作成の骨子説明と予算案提示があり、
平成25年度予算案が承認された。
塩谷事務局長
4.平成25年度幹事改選
幹事改選は、長年副会長(特に展示会レイアウト等)として活躍された
肥田さんと志村さんの退任。新幹事として、ホームページ作成で以前よ
り尽力している中山さん、新ジェネレーション代表の市川さんの幹事へ
の推挙がありました。この議題も出席会員により承認された。
なお、肥田さん退任により、塩谷さんが副会長、松原さんが事務局長と
夫々新役職に就きました。
5.平成25年度活動方針
田中会長より、平成25年度の活動方針大綱の説明があった。スロー
ガンは「みんなでザ・ロープ゚の諸活動に積極的に参加しよう!!!」
岩本会計幹事
活動方針は ① 総会・例会を充実させて新旧会員間の交流の輪を広げ
る。今年から総会・例会の会場が変わった。例会では会員外の講師による講演会の充実。
- 1 -
② 第39回帆船模型展の開催---平成26年4月13日(日)~19日(土)
出品と展示会準備に全会員の参画をお願いしたい。帆船模型教室
受講生の積極的な募集。
③ 会員のスキルアップのための帆船模型製作研修会の充実
開催月は7月、10月、11月、26年1月。担当は佐藤、木村、高橋
の各幹事。キット製作、キットのグレードアップを目指す会員向けにグ
レードアップ方法の講習。製作途上の作品をベースにした発表会。
④ 新講師陣による帆船模型教室の開催---6月~平成26年3月
講師は松原幹事と田中(嘉明)会員。
松原新事務局長
⑤ ホームページの積極的な活用
「ギャラリー」蘭を第2の常設作品展示場にしたい。第30~38回展の
出品作品を複数枚収録した。ホットニュースはブログ欄に随時掲載中。
⑥ 譲ります・譲ってくださいマーケットの開催(年1回開催)
昨年は大好評。今年も12月に開催の予定。模型製作諸材の相互
活用を図る。
⑦ 創立40周年記念準備委員会の発足
引き続き新旧幹事の挨拶の後、各担当幹事の補足説明と続き、
最後に新会員7名の挨拶、会員バッジ授与等で約1時間半にわたる総
中山新幹事
会が終了した。
総会後の恒例懇親パーティ
総会終了後、懇親パーティに移り、サラダ、アンティパスタ、パスタ等
の美味しいイタリア料理に舌
鼓を打ち、中にはケンタッキ
ー・ウイスキーのソーダ割りを
何度も楽しむ方々。和気あ
いあいとした雰囲気の中で
会員の交流の場がひろがっ
た。また、会員諸氏も旧知の
市川新幹事
友を見つけながら模型談義
など楽しい会話を弾ませていた。中締めは久保田さんの軽妙な話と乾杯
により、本年度の総会・懇親会を終了することが出来た。
中締めの久保田さん
研修会
第6回帆船模型製作研修会を開催
7月6日(土)12時30分より水道橋の会議室「内海」で第6回帆船模型製作研修会が開催された。今回も第一部は
製作フォローアップ講習会で、講師は佐藤憲史さん、高橋利夫さんが担当し、第二部は3名による発表があった。
その後は製作中の模型を持ち込んでの質疑や意見などが相次いだ。進行は木村さん。
第一部 フォローアップ講習会
佐藤さんはご自身の豊富な帆
船に関する時代考証を基にして
「キットのグレードアップ時の落と
し穴」を説明した。パワーポイント
を使用した図解により、キット製
作時の不明点、資料調べや注
意点を整理して説明した。
図解で説明した画面の主な
進行役の木村さん
第一部講師の佐藤さん
- 2 -
ものを列挙する。
ヤードの位置は展帆時と縮帆時で異なる
ビレイピンは建造年により有無がある
帆船関係洋書の大半はインターネットのアマゾンで購入出来る
11世紀から19世紀までの帆船の変遷
船体形状の変化と大型化、帆枚数の増加
などの一覧。下地がピンク色に船名があるの
はキットで販売されている帆船またはスクラッ
チで多く製作される帆船。
高橋さんの「工作の基本 その1」
高橋さんは木製帆船模型製作時の基本中の基本である工具
の使い方について説明した。今回はカッター、ノコギリおよびヤス
リの使い方で、緻密な製作には欠かせない基本テクニックである。
材料の切断時に大事なことは寸法の取り方で、方法は次頁のA,B,
Cがあり、同じ寸法に切断する方法としてどれも同じに見えるが誤
差が大きいのはAの方法。Bは物差しの縦線と下敷きの線が合っ
ているが、刃の位置が正確に出ていない。Cは刃の位置を金属物
差しの端部に合わせ、6cmの長さも下敷きの縦線に合わせている
ので一番正確な寸法の切り出しが出来る。カッターの形は切り出
高橋さん
しやアートナイフなど数種類あり、刃も両刃と片刃がある。
- 3 -
両刃は金属物差しに合わせても刃の厚みの半分はずれるが、片刃ならずれが生じない。
ノコギリ使用で大事なことはまっすぐに引くこと。 鋸で切断後の切断面はヤスリで仕上げる。
ヤスリは金工ヤスリ、木工ヤスリ、ダイヤモンドヤスリおよび
紙ヤスリがあり削る材料で使い分けする。金属削りに使う金
工ヤスリは押す時に力を入れて削るもので、引くときに力を
入れると刃が劣化する。引くときは浮かせ気味に引く。
その外、ヤスリがけ時の留意事項は次の通り。
・木材のヤスリがけは木目と並行に動かす。
・番手の少ないヤスリの研削跡は回復に手間がかかる。
・平面はしっかりと、角部・端部はそっとかける。左参照。
・平行移動を心掛ける。腕関節の動きに留意。
小川さん
赤道さん
齋藤さん
続いて紹介コーナーに移り、小川さんからサンプルとして入手した沢山の彫金用先端工具のお裾分けがあった。
いろいろな種類のルーター用ビットを各自3本程度、選り取りで配布した。赤道さんは割安アクリルケースのメーカー
を紹介した。メーカーは川口市の日本樹脂工芸(株) http://www.njkogei.com/ で厚み3~5mmのアクリルケースな
ら好みの寸法で製作し3日程度で発送する。齋藤さんはカリフォルニアにあるワーナーのブロックを紹介し、希望数
が纏まれば注文するとのこと。
第二部 帆船模型製作研修会
ヒヤシンス(LA JACINTHE)の製作 第3回
川島 壮介
1825年のスクーナー「ヒアシンス」をブードリオの図面(縮尺1/48)から
製作した。第1回の船体の製作、第2回の艤装に続いて、完成までに工夫
した点を発表した。① マストのステイロープは自作のサービング工具で作
る。サービング糸の張力はクリップの重さで調整し、マストのトップ近くにあ
るマウスは木製ビーズ玉をスティに嵌めて塗装する。② チャンネルのデッ
ドアイとシュラウドのデッドアイの間を一定にロープで結ぶラニヤードは真
鍮棒の半田付けで作ったX形治具を使用。間隔は角材に当てて両端を折
り曲げる。 ③ X形治具を上下のデッドアイに嵌めて、シュラウドロープを
川島さん
上のデッドアイに縛る。続いてラニヤードロープを取り付ける。
- 4 -
スティのサービング
ラニヤードの長さを一定にするX形治具の製作
④ シュラウドのラットラインは図面をコピィして型紙を作り、型紙をクリップでシュラウドに固定して置き、編み込む。
⑤ 帆も図面をコピィして型紙を作り、布地を重ね縫い目をチャコペンで写し取り、ミシンがけする。
ラニヤードのロープ掛け
ラットライン縫い込み
帆の縫い目とミシンがけ
⑥ 帆の外縁は布を折り返す方法で作成する。外縁の折り目に両面テープを貼り、折り目には0.5mmの銅線を挟み、
風を受けた帆のたわみを表現する。
⑦ 船尾の船名はパソコンでデザインし、「おうち de デカール」にプリントして貼り付けた。
帆に銅線を挟みたわみを作る
デカールの作成
サイレン(USS SYREN)の製作
完成
泉 邦幸
モデルシッ
プウェイのキ
ット「サイレン」
縮尺1/64を
製作した。2
本マストのブ
リッグで、キッ
トの図面はし
っかり画いて
泉さん
銅板貼りのサイレン
あり、型紙も
入っている。この船はマストの高さが相当高いのでマスト無しで製作した。また、船底の銅板貼りに初めて挑戦した。
キット付属の銅テープは光っているため、厚さ0.1mmの銅板を購入して切断してガス焼きした。銅板を細切りして焼
き加減は7~8割程度にし、艶消しのラッカーで塗装した。焼き過ぎると黒くなるので、テストを3回重ねた。
- 5 -
ミュンヘン/ドイツ博物館の展示帆船と模型
栗田 正樹
東京からミュンヘンには全日空とルフトハンザが毎日直行便を飛ば
しているが、往路で12時間、復路で11時間の長旅となる。
ミュンヘンのドイツ博物館(Deutsches Museum)はミュンヘン旧市街
の東側に位置するイザール川の中州にある国立博物館である。
敷地面積は51千平米あり、展示品は農業から鉱業、船、飛行機、蒸
気機関、潜水艦さらに宇宙関連にまで及び、ドイツの科学技術の歴
史館であり、ドイツ最大規模の博物館である。
アクセスは中央駅(Hauptbahnhof)から地下鉄で3つ目のイザルトー
ル(Isartor)駅で下車し、看板に従って5分くらい歩くと大きなドイツ博
物館が見えてくる。欧米の多くの博物館や美術館は月曜日が休館と
栗田さん
なるが、ドイツ博物館は月曜日も開館している。入場料は8.5ユーロで、
英語の案内パンフレットもある。館内の表示はドイツ語と英語の併記
で日本語のものはない。お薦めは、入場する前に本館の横にあるショ
ップで英語版のガイドブックを7ユーロで購入し、写真を見ながら興味
のある展示を見るのが効率的である。なお、ショップで販売されてい
る書籍は豊富だが、皆ドイツ語で英語のものはガイドブックのみ。
海事関連は少なく、訪問記念に練習船の歴史に関する書籍を買い
求めた。海事関連は、入口近くの大ホール中央にケッチ型バージ船
の実物が展示されている。解説には、このタイプのバージはエルベ河
下流で興盛を極め、1900年には11000隻も活躍をしていたこと、また、
ドイツ博物館
18世紀より発達し、当初は1本マストであったが、牽引力を増やすため
に、マスト、帆の増加の様子が解説されて
いる。左舷はカットされており、船の構造の
みならず、船内の生活の様子も分かるよう
バージ船 Maria HF31(左舷をカットしていて船内といけすが見える)
になっている。船には水槽も設置され、船員の生活用の魚も
搭載されていたとの解説がある。展示されているのは、Maria
HF31という船で、1880年から1950年まで運用され、ハンブル
グの船籍証明書の原本とともに展示されている。大ホールの
周囲には多くの模型が展示されていて、実物船の横の階段を
おりたスペースにも展示がある。左の模型はスタンスル(Stunsl)
とウォータースル(Watersl)を見せる模型。増速するためにスタ
ンスルを張り出し、スタンスルの下にもう一枚ウォータースルを
足した。水面すれすれのところまで帆を張ったことが良く分か
る模型。解説によると130人の船員がリギングに携わったとある。
デッキの長さ58.8m,ビーム12.2m, 船はアメリカのクリッパーで
- 6 -
船名はPepulic、建造は 1869年、造船所はCrawford and Perkins, Kennebunk, Maine。模型の縮尺は1/50。
4本マストのバーク練習船(Norddeutscher Lloyd)
展帆の様子を見せる模型
18世紀まで全盛を誇っていた木製帆船も、木材不足も手伝って19世紀に入り鉄材を利用した帆船へと進化し、こ
れにより船も大型化が可能となった。マストも高く、また帆の数も増えた。さらに、より機能的な帆の展縮も可能となり、
日本でも日本丸や海王丸で展帆の様子を見ることができる。この模型では、展帆の様子を船員のフィギュアを使っ
て表現している。船は、ドイツのブレーメン港を母港とするNorddeutscher Lloyd,Overall Length95.76m,Beam14.04
m, DWT 4300t。模型の縮尺は1/50。
捕虜が製作した模型
Prisoner of War Models
1793年〜1815年のナポレ
オン戦争で12万人にもおよ
ぶフランスの水兵が英国の
捕虜となり、彼らは厳しい捕
虜生活中、図面も材料もな
い中で骨を使って帆船模
型製作を楽しんだ。捕虜を
解かれてフランスに戻り、彼らは象牙を利用した帆船模型製作技法を学ぶ学校を設立した。特に、La RochelleとDie
ppeが有名。展示されているモデルがいつどこで製作されたのかの表示はないが、アメリカの捕鯨船の船員が作成し
た象牙彫刻(スクリムショー)とともに、すっきりと展示されている。
河を行き来した船の模型
ドイツではライン河をはじめ河川が重要な交通路となり、船の進化
が進んだ。現在でも閘門をいつくも設けて、ドラフトの浅い船が地
上の道路と同じように行き来している。南ドイツはザルツブルクの
ように塩がそのまま街の名前になって岩塩の一大産地だが、この
塩を運んだ単純な貨物を運ぶ筏と船の模型展示。
帆船の船体と構造の変化を見せる展示
- 7 -
物資の運搬、軍船として船形が次第に大型化し、また耐航海性を求めて造船工法も発達したが、この展示はその
過程を模型を使って分かりやすく見せている。
これらの他に沢山の帆船模型が展示されている。カヌーの発達
の様子、様々なヨットの帆の貼り方のパターン、1918年に外輪で
大西洋を横断した機帆船やパドルの構造・操作方法など、科学博
物館らしく分かりやすく展示している。全ての模型や展示物を駆け
足でざっと見るだけでも楽しいが、ドイツ語ないし英語の解説を読
み込みながら見学するには1日はかかりそうな展示である。
博物館の各階にはレストランを設置している。開館時間は9時から
17時。
90馬力のエンジンで大西洋を横断したサバンナ号
公式サイト(英語版)
http://www.deutsches-museum.de/en/information/preislisten/
admission-charges-museumsinsel/
3名の発表終了後、加藤(史郎)さん、土屋さん、坪井(悦朗)さんが製作中の艤装品や構造模型を持参して製作
の経過を報告した。加藤さんは「ラ・レノメ」を製作していて縮尺は何時もの1/64。グレーチングとレンガ敷お釜作りに
注力している。土屋さんは構造模型「ル・フランソア」の製作が進んでいて、螺旋階段とお釜を製作中。坪井さんも製
作中の構造模型を披露した。いずれも優れたテクニックと素晴らしい仕上げに関心が集まり、研修会をさらに盛り上
げた。
加藤さん
加藤さんの艤装品
土屋さん
土屋さんの構造模型
- 8 -
坪井さん
坪井さんの構造模型
同好会の展示会
横浜帆船模型同好会「第35回世界の帆船模型展」が開催
4月27日(土)から5月6日(月)まで、ゴールデンウィークの9
日間、横浜帆船模型同好会の第35回世界の帆船模型展が
開催された。場所は過去2回開催した「みなとみらいギャラリ
ー」 から保存帆船日本丸メモリアルパークの「横浜みなと博
物館」 に代わっての開催。最寄り駅は同じJR桜木町駅で駅
からの距離は近くなった。会場は弓状建物の地下1階にある
「特別展示室」で入場料は無料。(会場横の常設展示室は有
料)特別展示室の会場は広く、中央には休憩用の椅子、テー
ブルを設けている。天窓からの明かりの効果で広々とした感
日本丸横の横浜みなと博物館
じである。展示点数は98点と多く、力作も展示されていた。
作品を眺めていると観たことがある作品が散見される。昨年
までは特別にテーマを定めて観たことがある作品が展示され
て関心を持って観たが、今回はテーマ表示がないので会場
が広いためかなと感じた。それで、数年掛けて製作している
力作、精密感のある作品およびユニークな作品をピックアッ
プしてみた。先ずは濱中聖之進さんのソレイユ・ロワイヤルの
スターン彫刻。壁面のデコパージュなど額縁展示の中にさり
気なく展示しているが、つぶさに観ると素晴らしい作品である。
額縁以外は全てスクラッチビルト。過去に村石さんが同作品
をパリ・シャイヨー宮の海事博物館図録写真を基にして素晴らしいスターン彫刻を製作したが、濱中さんは更に古い
実船建造時の計画図から製作している。(計画図と模型は形と窓数など異なる) 材料は石膏粘土(ラドール)と窓のプ
ラ材。留意点は石膏粘土乾燥時の収縮と反りで、そのへんのコツが大事とのこと。
濱中聖之進さんのスターン彫刻
参考にした実船建造計画図
パリ・シャイヨー宮博物館展示の模型
次に飯沢さんのフレーム設計図を基にした構造模型の数々。飯沢さんの設計は主にイギリス・コンウェイ社のアナ
トミーシリーズをベースにして1隻50~70枚枚程度のフレーム図をA4サイズに作成するもの。アナトミーシリーズのフ
レーム図は大半が縮尺1/192で、枚数も少ない。模型製作時に縮尺を1/64程度に拡大してフレーム図を一枚ずつ
作るのはしんどい作業になる。構造模型の製作は作者の腕の良さで作られてはいるが、これだけ揃うと飯沢さんの図
面が素晴らしい事がよく分かる。ただし、キールやデッキなどの図面は自作になる。
- 9 -
展示会毎に充実する構造模型
▼
前川 政司さんの「パンドラ」縮尺1/64
1779年、イギリスで建造された砲24門のフリゲート艦。
諺の「パンドラの箱」の語源とも言われている。由来はバ
ウンティ号の反乱者捕獲にタヒチに向い、捕獲した14人
を船内の檻に収容した事による。
飯沢さんがアナトミーシリーズから作成したフレーム図
から製作。使用材料はペアウッド(洋梨)が大半で、一部
ケヤキを使用。仕上げはワトコオイル。
村石 忠一さんの「50門艦」縮尺1/60 ▼
1695年、イギリスで建造された50門艦。図面はカリフォル
ニアのNRGが出版しているジャーナル2004年版に掲載の
古図面を基に飯沢さんに縮尺1/60のフレーム図作成を依
頼して製作中のもの。縮尺は古図面に記載の縮尺による。
使用材料は板厚6mmのペアウッド(洋梨)とウエールにロ
ーズウッド。当会2月の研修会でも披露した模型。詳細は
ザ・ロープニュース79号参照。
▼
馬場
裕さんの「グラナド」縮尺1/64
1742年、イギリスで建造された臼砲2門のボムケッチ。
この作品も飯沢さんのフレーム図から製作中。
冨井
浩さんの「パンドラ」縮尺1/64▼
1779年、イギリスで建造された砲24門のフリゲート艦。
▼
廣野 常也さんの「74門艦」縮尺1/72
18世紀、フランスで建造された74門艦。
ブードリオの図面から製作中。ブードリオの74門艦図
面は大判の図書4冊に画かれていて重ねると15cmくら
いになる大著。模型製作者にとって一度は作ってみた
いと思わせるカッコイイ戦艦。毎年、少しずつ進んでい
る。今年は黒檀材のウエールが取り付けられた。
- 10 -
精密感のある素晴らしい作品
▼
久保田 光昭さんの「ベレロフォン」縮尺1/72
1780年、イギリスで建造された74門艦。
アマティ・ビクトリーモデルのキット「ヴァンガード」から製
作中で船首部のデッキ張りは終わったが、船尾デッキ張
りと艤装品取付がこれからの段階。この状態でも素晴ら
しいのはスターンがほぼ完成していることよりも、船底の
銅板貼りが正確で綺麗なこと。通常、キットに銅板張りの
展開図(銅板貼りの割付)は付属していないために、喫
水付近の上からまたは下から貼ることが多い。このような
作品を横から見ると銅板ラインがW字形にうねったり、前
後で傾斜することが多々ある。この模型は船尾銅板貼り
にスチーラーを入れて、前後で緩いU字形に仕上げて
いる。更に銅板一枚毎の中に網目状に釘の跡を付けて
いる。本模型の完成が待ち遠しい。
▼
常石 昭弘さんの「レアル・ドゥ・フランス」縮尺1/60
18世紀、フランスで建造されたガレー船。59丁の櫂を
413人の奴隷と受刑者で漕いだ。
コーレルの名作と言われるキットから製作。キット付属
の木材が今一のため殆どをボックスウッド(ツゲ)に取り替
えて製作。力作の一隻。
▼
児玉 陸郎さんの「錦川の親子船と算盤橋」縮尺1/30
スクラッチビルトのユニークな作品。
水面に映える小舟と錦帯橋の曲線の美しさに魅了さ
れて製作。橋は梁の組み合わせが見られるようにしてい
る。製作には平成の架け替え工事の時、現地を訪れ岩
国市職員と棟梁から橋の構造についてアドバイス受け
た。全国同好会の展示会でも見ることのない調和の取
れた作品であるが、どうもメインは建築模型のような気が
する。
▼
小野田 周二さんのジオラマ「老人と海」縮尺1/18
ヘミングウェイの海洋小説「老人と海」をジオラマにし
たもので、スクラッチビルト。カジキマグロを3日間で仕留
めて、船体の横に縛って帰港途中の老人。
港に着いた時、マグロは魚に食われて頭と骨だけが
残るお話。老人はタミヤの縮尺1/16のプラモデル「ロンメ
ル元帥」を加工して製作した。ポエムを取り入れた作品。
(安藤 雅浩 記)
- 11 -
4月14日~20日まで開催の第38回ザ・ロープ帆船模型展の写真集がDVDになりました。
出品作品69点を収録。高精密画像は約1300枚あります。写真のサイズはA4判までプリン
ト可能。再生はパソコンモニターのみ。希望者は14頁ホームページのアドレスから「第38回
ザ・ロープ帆船模型展、作品画像集2013」と明記して申込み下さい。
価格は1枚
一般1,000円/会員500円(送料込)
「海を渡った人類の遙かな歴史」 -名もなき古代の海洋民はいかに航海したのか-
著:ブライアン・フェガン、訳:東郷えりか、河出書房新社、B6判、381頁、ISBN9784309252834、
2013年5月発売、価格 3,045円(税込み) Beyond The Blue Horizon. How the Earliest Mariners
Unlocked the Secrets of the Oceans by Brian Fagan 2012
我々の祖先はなぜ海に乗り出したのか。山と同じでそこ
に海があったからであろうと軽い気持ちで読み始めたが、
世界地図を横に置きながら時間が経つのも忘れてほぼ
一気に読み通した。5万年以上前の東南アジア本土に
始まり、太平洋の諸島への入植につながる驚異的な航海、
紀元前8000年頃のエーゲ海、紀元前2000年になって
ペルシャ湾、モンスーンを利用したインド洋の航海、そして
話は北海、アイスランド、グリーンランド、さらにはアリュー
シャン列島、アメリカ北西部、そしてカリフォルニアの沿岸
海域を行き来した先住民の事例や、中央アメリカのマヤ文
ブライアン・フェガン
明にまで及ぶ。一読して壮大な航海を終えた気分になった。各章の初めに著者が頭
に描いた当時の様子の記述から話が始まっている。アメリカの本にあるようなやたら細
かい原注も少ないなかで、どこでどうやって集めたのか膨大な情報や知識の中から、その一部が本書の至る所に織
り込まれているようにも感じる。中身が濃いだけに、訳本に索引が無いのがいかにももったいない。
人類による航海はどうして始まったのか。各地域により差はあるようにも思われるが、人間は海を慎重に探り、陸上
の暮らしの延長線、日々の暮らしの途切れ目のない一部から始まっていることは共通しているようだ。
コンパスやクロノメーター、六分儀などもない中で、人間の祖先は心理的に海と密接な関係を築いていたと著者は
いう。航海も単なる冒険的企画ではなく、その背景には、経済的、社会的な理由があった。例えば、太平洋のミクロ
ネシア、メラネシア、ポリネシアへの人類の拡散の裏には長子相続制度があったのではないかと著者は言う。祖先の
土地や畑を相続できぬ人たちは追い詰められ、新たな生活の場を求めるためにまず先遣隊が航海に乗り出し、大
丈夫だと分かってから初めて動植物や食料飲料を携えて航海に乗り出していたようだ。先遣隊はかならず出発した
土地に戻ってこれると確信をしてから初めて海原に乗り出していると著者は強調する。
水平線しかない世界では、昼は太陽、夜は月や星が道連れとなる。ミクロネシア人の航海における基本的な思考
プロセスも興味深い。頭の中でカヌーと星を静止した状態に保ち、感覚的に捉えた海の中で島々を移動させ、基準
とした島が目的地の島から見た場合と同じ方角にカヌーからも見えるかといった航法を取っていた。
そういえば、
いつ読んだか忘れたが、1976年に古代ポリネシアの双胴船カヌーのレプリカであるホクレア号が、古来の航海術だ
けを使って太平洋を2年間航海した記録の本があった。文字もなく、伝承のみで伝えられてきた航海術が、現代の実
験で後世にも伝えられることになった。
人間は、臆病で慎重ながら、追い詰められると合理的なものを生み出す創造力を持っていることを改めて感じさせ
る本だ。帆船もそういえば風と海を合理的に利用する究極的人類の遺産である。 この6月下旬にトール・ヘイエルダ
ールのコンティキ号探検記が映画化され、日本でも公開される。これも海を渡った人類の遥かなる歴史を再現する
一コマである。
(栗田 正樹 記)
- 12 -
【新会員7名】
ID207 大川原一隆さん
ID208 長崎
(おおかわら かずたか)
(ながさき あきら)
千葉県柏市在住
埼玉県川越市在住
月刊誌「世界の艦船」
昨年、帆船模型教室で
に掲載の会の記事で
チャールス・ヨットを製
存在を知り、十数年前
作したのが初めての製
から展示会を観ている。
作。帆船作る楽しみ
その影響で、幾つかの
から趣味の幅を広げて
帆船模型を手掛けた
行きたい。 その内、美
が途中の段階。
しい大型帆船模型を製
入会を機会に最後まで完成させたい。
景さん
作したい。
ID209 菊池 幸雄さん
ID210 山田 剛彦さん
(きくち ゆきお)
(やまだ たけひこ)
埼玉県宮代町在住
東京都足立区在住
昨年、帆船模型教室に
模型全般、日曜大工
参加して製作方法がよ
など物を作るのが好き
く理解出来た。
で、現在ロフト付きの
仕事から引退したので、
工房を製作中。会の展
これからはじっくり時間
示会は30年程前から
をかけて製作に取り組み
観ている。帆船模型は
たい。
昨年、帆船模型教室
に参加して完成させることが出来た。
ID211 日吉 泰史さん
ID212 渡辺 愃二さん
(ひよし やすぶみ)
(わたなべ けんじ)
東京都港区在住
展示会では帆船模型
今まで数隻の帆船模型
の華麗さに魅せられて
を製作してきたが、い
いた。
ずれも自己流で作った。
帆船模型教室でチャ
帆船模型教室に参加し
ールス・ヨットを製作し
て製作手順が分かって
て達成感を持てた。こ
きた。これを機会に最初
れからテクニックの向
からやり直していきたい。
上を目指したい。
ID213
松岡 りう子 さん
(まつおか りうこ)
【退会 3 名】
平成25年5月10日
東京都練馬区在住
ID47 伊藤 一吉 さん
体調不良のため退会
昨年、帆船模型教室に
平成25年6月18日 ID128 中江 文男 さん
参加してチャールス・ヨッ
トを製作したのが初めて
の帆船模型作り。
ご高齢により退会
平成25年8月31日 ID84 松田 紀昭 さん
自己都合により退会
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日本帆船模型同好会協議会(JSMCC)が新体制へ移行しました
2004年にザ・ロープが世話役を引き受け、全国21同好会の賛同を得てJSMCCが発足しました。以来9年間にわ
たり当会の会長が同協議会の会長を兼務して同好会間の紐帯強化に努めてきました。特に2009年10月には船の科
学館様の協力を得て、念願の「第1回全日本帆船模型展」を開催することが出来ました。模型展には全国から100隻
を超える出品を戴き、多くの来場者を得て大成功の展示会になりました。
一方で、ここ数年来JSMCCのあり方や今後の活動の見直しについて全国同好会間で議論した結果、平成25年より
会長輪で番新たな活動(第2回全日本帆船模型展開催を展望)を行う事になりました。会長は今年からザ・ロープオー
サカ様にお願いして、了承を得ました。新体制はザ・ロープオーサカのJSMCC事務局から下記の連絡が届きました。
当会は常任委員として会の運営をバックアップしますので、会員各位のご協力をお願いします。なお、当会の事務局
担当は塩谷 敏夫さんになりました。
平成25年度JSMCC新体制(2013年8月1日付)
会長
ザ・ロープオーサカ
JSMCC会長
JSMCC事務局
大森 武彦
中谷 雅和(ザ・ロープオーサカ会長)
常任委員
横浜帆船模型同好会 会長
西谷 真宏
同
ザ・ロープ 会長
田中 武敏
運営委員
札幌帆船模型同好会 会長
小林 元也
同
福島帆船同好会
会長
吉田 耕平
同
ザ・ロープ九州
会長
徳永 幸久
平成25年9月から平成26年4月までの行事予定
年月
幹事会
発表会・例会【会場:リポーゾ銀座】
25/9 1日(日) 14:00~17:00 発表会・例会 8日(日) 14:00~17:00
10
11 24日(日) 14:00~17:00
12
発表会・例会 1日(日) 14:00~17:00
26/1
2 9日(日)
研修会【会場:水道橋・内海】
第2回
5日(土)
12:30~17:30
第3回
9日(土)
12:30~17:30
第4回
25日(土) 12:30~17:30
14:00~17:00
3 2(日)
14:00~17:00 発表会・例会 9日(日) 14:00~17:00
4 第39回ザ・ロープ帆船模型展 13日(日)~19日(土) 10:00~19:00 東京交通会館B1ゴールド・サロン
*帆船模型教室
6月から平成26年3月まで月1回、第2日曜日の10:30~12:30。計10回開催。
ザ・ロープ事務局 松原 滿
〒261-0011 千葉市美浜区真砂 1-4-6
メール [email protected]
ホームページ http://www.theropetokyo.org/ JSMCCはホームページからリンクして下さい。
会費の入金口座 【郵便振替】 口座番号:00120-1-187264
加入者名:ザ・ロープ
【銀行振込】 みずほ銀行 銀座中央支店 普通預金:2142080 口座名義:ザ・ロープ 会計 岩本和明
振込時は氏名の後に会員ID番号の記入をお願いします。
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