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欧米・豪州における石油精製事情

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欧米・豪州における石油精製事情
資料5
欧米・豪州における石油精製事情
第3回石油精製・流通研究会資料
2016年11月21日
一般財団法人日本エネルギー経済研究所
The Institute of Energy Economics Japan
報告の内容
1. 米国の石油精製専業企業について
• 米国の石油精製業を巡る事業環境
• Valero Energyの事例
2. 成熟市場における政府と石油精製業の関係について
• 英国の事例
• 豪州の事例
• フランスの事例
• EUの取り組み
3. 合弁製油所形態の採用について
• ニュージーランドの事例
• ドイツの事例
2
3
米国の石油精製業を巡る事業環境
アジアの石油精製業に比べて恵まれた事業環境にある米国の精製業




世界最大の石油市場であり、途中の増減はあるものの、今後10年間は、概ね需要規模は現在の水準を維
持すると予測されている。
2015年に原油輸出が解禁されるまでは、米国内の原油価格は国際原油価格に比べて割安な水準にあり、
米国の精製業界にとっての競争力の一つとなっていた。
シェール開発に伴う天然ガス価格の下落・低迷によって、自家燃料を始めとする精製コスト削減も可能に。
米国の原油価格と国際原油価格
米国内の石油需要実績・見通し
25
million
b/d
150
$/bbl
米国(WTI)
見通し
各国の天然ガス価格*
20
米国
(Henry Hub)
$/mmbtu
欧州
(NBP)
国際(Brent)
20
日本
(JLC)
15
その他
15
100
重油
軽油
10
ジェット燃料
10
ガソリン
50
LPG
5
5
0
2000
2006
2012
2018
2024
2030
0
2010
0
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2010
2011
2012
2013
2014
*:天然ガス価格は、米国・欧州の価格は国内の卸取引価格、日本の価格は輸入価格。
2015
2016
出所: EIA; IEA
4
(参考)米国の石油精製業を巡る事業環境(続き)
地域別の精製マージンも大きく改善。


米国内外の原油価格差が特に拡大した2012~2014年は米国の精製マージンが大きく増加。
米国の製油所は、高い競争力を基に、南米・欧州を中心に製品輸出を拡大。


製油所が生産する最終製品の他にも、LPG、天然ガソリンなど天然ガス液(NGL)の輸出も増大。
米国の石油製品輸出**
地域別の精製マージンの推移*
18
$/bbl
3.0
million b/d
16
2.5
14
12
2.0
10
その他
米国
8
欧州
6
重油
1.5
ジェット燃料
シンガポール
4
軽油
1.0
ガソリン
2
0.5
0
-2
0.0
-4
2011
2012
2013
2014
2015
2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014
*: 精製マージンは、米国はメキシコ湾岸。欧州は北西部の代表値。**: 製品輸出にはNGLは含まない。 出所: BP; EIA
5
Valero Energyの概要

米国最大の石油精製企業にして世界最大の独立系精製企業





1980年1月創立。本社は米国テキサス州San Antonio。
2015年末時点での精製能力*は301.5万B/D(JXエネルギーの約2倍)。
2015年末時点での従業員数は10,103名。米企業の中では終身雇用的な雇用形態で知られる。
米国内外に15か所の製油所を保有。一か所平均の原油処理能力は約20万B/D。
リーマンショック後の低迷期を脱し、近年の業績は好調。
Valeroの営業利益・純利益の推移
8,000
Valeroの原油処理量・製油所稼動率の推移
100万ドル
3,500
'000 b/d
100%
7,000
90%
3,000
6,000
80%
5,000
2,500
70%
4,000
営業利益
3,000
60%
2,000
稼動率
50%
純利益
2,000
1,500
40%
1,000
30%
1,000
0
原油
処理量
20%
-1,000
500
10%
-2,000
-3,000
0
2005
2007
2009
2011
2013
2015
0%
2005
2007
2009
2011
2013
2015
*: 本資料では特に断りのない限り「精製能力」とは「原油処理能力」を指す。
出所: Valero 10-K
6
米国石油市場におけるValero Energy

米国内における製品供給者としての存在感が大きい。

販売量が自社の精製能力を上回る企業が多い中、卸取引を介して積極的に製品を供給。
•

自社製油所ないしは第三者の油槽所で各ブランドの規格に適合した製品を生産し販売。
近年は安定的な精製マージンを実現。


他社と比べて、マージンの変動が少なく、安定的に高い収益を上げている。
米国のみならず、大西洋市場規模で展開する事業活動もその安定性の一因と考えられる。
米国内での各社の精製能力と末端製品販売量*
米国精製各社の精製マージン**
25
$/bbl
20
PBF
15
Holly Fronteer
Phillips 66
Tesoro
10
Valero
Marathon
5
0
2011
2012
2013
2014
2015
*: Shellの精製能力・販売量は南米地域を含む。Phillips 66の精製能力・販売量は欧州地域を含む。ValeroにはCST Brandsが販売する
自社ブランドの製品あり。**: Phillips 66のマージンは欧州を含む。Marathonのマージンは販売マージンも含む。
出所: 各社 10-K
7
Valeroの動向 ① ダイナミックな事業ポートフォリオ・投資戦略

2006年頃までは、積極的な製油所買収で事業規模を拡大。
 2007年以降は、米国内のガソリン需要が頭打ちとなる中、資産の「選択と集中」を実施。
 2010年以降は、事業環境に合わせて、既存の製油所の装置構成・生産得率を調整。
2014年頃までは、将来的に軽油需給がひっ迫するとの観測の下、水素化分解装置を重点的に整備。
MLP(Master Limited Partnership)を活用した中流部門への資金調達・投資も積極的に実施。
直近では、軽質原油処理能力、高オクタン基材油生産施設、製品輸出施設に投資。



米国内では、その企業規模の割に「機を見るに敏」、「資産売買に係る意思決定が早い」と評判。
Valeroの製品生産得率の推移
Valeroの資本支出額と原油処理能力の推移*
3.5
million b/d
$ million
100%
3.5
90%
3.0
3.0
2.5
2.5
80%
70%
資本支出
2.0
60%
その他
50%
石油化学
2.0
1.5
1.5
1.0
1.0
0.5
0.5
原油処理
能力
(右軸)
ガソリン
40%
軽油
30%
20%
38%
31%
10%
0.0
0.0
2001
2004
2007
2010
2013
2016
0%
2006
2008
2010
2012
2014
*: 2016年の資本支出額は計画値。 出所: Valero 10-K
8
(参考)Valeroの製油所売買
事業
拡大期
1997年:
1998年:
2000年:
2001年:
2001年:
2001年:
2003年:
2004年:
2005年:
Basis Petroleumを買収。メキシコ湾岸の3製油所を取得
Mobil CorpよりNew Jersey州Paulsboro製油所を取得
Exxon MobilよりCalifornia州Beniciaの製油所と350ヶ所のガソリンスタンドを取得、小売事業に進出
California州BeniciaならびにNevada州Wilmingtonでアスファルトプラントを運営するHuntway Refining Companyを手
持ち資金により7,600万ドルで買収し、いずれもValeroのBenicia、Wilmington製油所に統合。
El PasoのTexas州Corpus Christi製油所を買収
Ultramar Diamond Shamrock Corporation(UDS)を61億ドルで買収、7製油所を取得するも、2002年には、UDS買収
の政府認可を受けるため、UDSのCalifornia州Golden Eagle製油所(16.8万B/D)とガソリンスタンド70ヶ所をTesoro
Petroleumに10.75億ドルで売却。
Orion Refining Corporationよりルイジアナ州St. Charles Parish製油所を取得
El Paso Corporationのカリブ海Arubaの製油所を取得
Premcor Inc.を69億ドルで買収
油価上昇・燃費改善に伴う国内ガソリン需要の頭打ち
2007年
2007年
選択と集中
期
2009年
2010年
2011年
2011年
2012年
Lima製油所(16.5万B/D)を、Husky Energy Inc.子会社のHusky Refining Company (Husky)に19億ドルで売却
Krotz Springs 製油所(8万B/D、ルイジアナ州)を6月に操業を停止、2008年7月に Alon USA Energy, Inc.子会社の
Alon Refining Krotz Springs, Inc. (Alon)に4億6,300万ドルで売却、(税引後1億7,000万ドルの売却益を確保)。
Delaware製油所(18.22万B/D)を11月、不採算を理由に閉鎖し、19億ドルの損失(うち資産滅却における評価損14億
ドル)を計上。その後、2010年4月にPBF Investmentsに2億2,000万ドルで売却、税引後5,800万ドルの売却益を確保。
New Jersey州Paulsboro製油所(185,000B/D)をPBF Holding Co. LLCに7億700万ドルで売却(うち在庫評価分3億
6,100万ドル)。決算上は税前9億8,000万ドル(税引後6億1,000万ドル)の売却損を計上。
英国Pembroke製油所(270,000BPD)をChevronから17.3億ドルで取得。
Murphy OilからLouisiana 州Meraux 製油所(13.5 万B/D)を5.86億ドルで買収
Aruba製油所が3月に操業を停止。ValeroはAruba製油所を原油・製品ターミナルに転換することとし、2012年9月には
更に3億3,300万ドルの減損損失を計上。
・・・製油所売却時には「Earn out deal 」制度を活用。
製油所の売買に際し、一定期間にわたって精製マージンが目標水準を上回った時、売り手側が報酬を受け取る仕組み。買い手側は、この
仕組みを導入することで、最初の買収金額を下げると同時に、買収した製油所が利益目標などを達成できない場合に買収金額全体を減ら
すことができる。事後の報酬額には年間の上限額ならびに総額が定められている場合が多い。
出所: Valero 10-Kを基に日本エネルギー経済研究所作成。
9
Valeroの動向 ② 大西洋市場における精製事業展開

2011年8月に、Chevronから7.3億ドルで英国ウェールズのPembroke製油所を取得


精製能力は27万B/D。主として低硫黄原油を処理するが、高度化装置も充実。大西洋市場に面した立地。
当時の指標原油価格間の格差などを背景に、大西洋市場規模での供給最適化を図る。



Valeroはカナダ東海岸にも製油所を保有。米国・カナダ・英国の3か国間で製品を融通。
実際の荷動きは、軽油を北米から欧州・南米に輸出、ガソリンを英国から米国・アフリカ・南米へ輸出。
北大西洋取引による経済効果の額は不明だが、2011年以降、北大西洋セグメントのマージンは改善中。
Valeroの大西洋製品貿易のパターン
Valeroの地域セグメント別精製マージンの推移
14
$/bbl
12
メキシコ
湾岸
10
西海岸
8
中部
6
軽油
ガソリン
4
北大西洋
2
平均
0
-2
2005
2007
2009
2011
2013
2015
出所: Valero Investor presentation(2012年)、Valero Operating Highlight、10-Kを基に日本エネルギー経済研究所作成。
10
Valeroの動向 ③ 販売部門のスピンオフ

2013年5月、販売部門の分離を実施。





販売部門を分離することで、精製部門への集中的な経営資源配分と経営の効率化を図る。
分離後の組織名は、CST Brands Inc。米国南西部とカナダを中心に、SS約1,900か所を保有。
組織の分離は株式の追加割り当てによって実施(Valero株9株に対し、CST Brands株1株を配分)。
ValeroはCST Brandsに対し、2028年まで石油製品を供給する長期契約を締結。
CST Brands社はValeroからの分離以降も安定的な販売量と利益を実現。
Valeroの部門別営業利益の推移
9
CST brandsの営業利益と販売量の推移
$ billion
350
gal/d
$ million
6,000
8
300
5,000
7
250
6
4,000
5
バイオ燃料
4
精製
3
販売
営業利益
200
3,000
150
米国内
燃料販売量
(右軸)
2,000
2
100
1
1,000
50
0
0
(1)
2006
2008
2010
2012
2014
0
2011
2012
2013
2014
2015
出所: Valero 10-K; CST Brands 10-K
11
(参考)販売部門は分離すべきか統合すべきか?

一般的に、米国の株式市場では、各バリューチェーンに特化した企業形態が好まれる。


石油業界でも、上・下流を分離したConocoPhillips、Marathon Petroleumの事例や、保有製油所を売却
して販売専業となったSunocoなどの事例あり。
しかし、精製事業のみに集中した「Merchant refiner」を志向するか、販売部門を統合した製販一
体型のビジネスモデルを志向するかは、米国の精製業界でも会社によって見解が異なる。

必ずしもすべての会社が(ウォール街好みの)機能特化した企業形態を選択しているわけではない。
分離派(Merchant Refiner)の見解
 販売部門を分離することで、より精製事業に集
中した経営を行うことができる。
 分離される販売部門も、高いブランド価値や良
好な資産を有し、独立した企業として十分に
やっていける。
Valero Energy バリューチェーン別の収支では、販売部門の全体
の営業利益への寄与度は低い。
PBF Energy
 投資ファンドを親会社としていることもあり、ウォー
ル街好みの、機能特化した企業形態を志向。
 石油メジャーが売却する製油所を安値で取得。
精製事業に特化し、製品販売先市場も特化し、
購入した複数の製油所間での製品融通を図る
ことによって収益改善を追求する戦略を採用。
 販売部門のみならず、原油調達・在庫管理・製
品販売業務もすべて外部委託(その後原油調
達は委託先の事業撤退に伴い自社で実施)
することで、さらなるコスト削減を図る。
統合派(製販一体型)の見解
Marathon
Petroleum
Tesoro
Corporation
 精製・中流・販売と高度に統合された資産構成
を有することで操業面での柔軟性を向上。限ら
れた利益の機会を確保。
 各種資産を戦略的に配置することが可能。
 自社の販売部門は国内でも最高水準の競争
力を保有。
 販売部門を統合しておくことで、安定的な引き
取り先を確保。
 製油所の稼働率を最大化し、経済的な運転が
実現。
 より確度の高い需要情報を得ることで、運転計
画を最適化
 製油所と販売資産を地理的に近づけることで輸
送費用を削減。
 事業ポートフォリオを分散しておくことで収益の変
動をコントロール。
出所: 各社Presentation資料を基に日本エネルギー経済研究所作成
Valeroの動向 ④ バイオ燃料への投資

精製事業と併せてバイオ燃料事業も展開。



12
2009年に、経営破たんしたVerasun社のエタノー
ルプラント7か所を4.8億ドルで取得してバイオ燃料
事業に参入。
11か所のエタノールプラント(合計8.5万B/D)、ルイ
ジアナ州St. Charlesにおける廃油原料のバイオ軽
油プラント(1.1万B/D)の50%権益を保有。
部門利益は年によって大きく変動。
Valeroのエタノール生産量と営業利益の推移
100
'000 b/d
$ mil
90
900
800
80
700
70
600
60
500
生産量
営業利益
(右軸)
50
400
40
300
30
200
20
100
10
0
0
2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
出所: Valero Investor presentation(2016年8月)及び10-K
13
(参考)他産業による精製事業への参入① PBF Energy

PBF Energyの沿革


2008年に、欧州のPetroplusが、投資会社Blackstone Group及びエネルギー産業を対象とした投資会社
First Reserve Managementと共にPetroplus社による米国での下流部門資産の買収を行うために設立。
その後、2010年に、Petroplusが業績悪化によって撤退。以降、Blackstone及びFirst Reserveが主体とな
り、事業を展開。
現在、製油所5か所、88.4万B/Dの能力を有する米国第4位の独立系精製事業者にまで成長。




これまでは東海岸の製油所を中心に製油所取得を進めていたが、2015年以降は南部、西海岸にも進出。
重質原油の処理能力に優れた製油所を中心に取得を進めている。
2015年の営業利益、純利益はそれぞれ3.6億ドル、1.5億ドル。
業務の外部委託を積極的に行い、コア事業である精製事業そのものに集中。


原油調達業務は、Statoil、Morgan Stanleyに外部委託、在庫管理業務はJ. Aronに委託。以前は製品の
卸販売業務もMorgan Stanleyに委託(現在は自前で実施)。
米国精製各社の処理原油構成
PBFの製油所資産
場所
Delaware City
Paulsboro
Toledo
Chalmette
Torrance
州
Delaware
New Jersey
Ohio
Lousiana
California
取得年月
2010年6月
2010年12月
2011年3月
2015年11月
2016年7月
取得元
Valero
Valero
Sunoco
精製能力
19.0万B/D
18.0万B/D
17.0万B/D
ExxonMobil/
PDVSA
18.9万B/D
ネルソン指数
11.3
13.2
9.2
12.7
14.9
処理原油
中・重質油
中・重質油
低硫黄軽質油
中・重質原油
重質原油
取得価額
$220 mil
$360 mil
$400 mil
$322 mil
$537.5 mil
ExxonMobil
15.5万B/D
出所:PBF Energy web-site 10-K
14
(参考)他産業による精製事業への参入② Delta航空

Delta航空は、増加するジェット燃料購入費用対策として、精製事業に進出。
• 2012年6月、Delta航空がPhillips 66から1.8億ドルでPennsylvania州のTrainer製油所を取得。
• Delta航空は全社で25.4万b/dのジェット燃料を消費。製油所取得当時は原油価格が高水準で推移しており、総費用の3割を占め
る燃料費の抜本的な削減を目指しての製油所資産を取得。
• 精製された製品はパイプラインでニューヨークの複数の空港へ輸送。同製油所の他の製品も、他の石油会社との異油種間スワッ
プなどによって、ロサンゼルス、アトランタ、ダラス、シカゴなど全米の空港でのジェット燃料供給にも寄与。
• Delta航空は、製油所のマージンが低いときには本体の燃料調達コストが下げられているため、利益のヘッジができていると主張。
• 2015年は、を5~10ȼ/galの調達費削減を実現と発表
Delta航空の精製セグメントの営業利益
取得後の設備投
資負担が低減し
たことで精製事
業は黒字化。
原油価格とジェット燃料価格の価格差
当初想定していたよりも価
格差は縮小(製油所保有の
メリットもその分縮小)。
出所:Delta航空 10-K report及びweb-site; EIA
(参考)他産業による精製事業への参入③ Carlyle Group
15
著名投資ファンドのCarlyle Groupが製油所事業に進出。
 PBF Energy と同様、原油の調達や製品の卸販売は外部に委託。

• 2012年7月、Carlyle Groupは、石油販売大手のSunocoとPennsylvania州のGirard Point製油所とPoint Breeze製油所の2か所
の製油所を操業する合弁企業Philadelphia Energy Solutions(PES)を設立。
• 採算悪化のため閉鎖の危機にあったSunoco傘下の製油所にCarlyleが出資を行った形。出資金額は非公開。
• 2か所の製油所の精製能力合計は約33万B/D。
• 製油所の稼働を維持することで850人の雇用が確保できるとして、Philadelphia州は、PESに対し2,500万ドルの補助金を供与。
• Carlyleは、製油所への鉄道網を整備することで、現在処理している輸入原油から国内の安価なシェールオイルへと処理原油の変
更を計画。
• 原油の調達と精製された製品の卸販売業務は、JP Morgan Chase(のちにBank of America)に外部委託。
• 近隣のMarcellus Shaleから安価な自家燃料用の天然ガスを確保。
• PESは、5.16億ドルの設備投資を行い。2015年8月に10億ドル規模のIPOを行おうとしたが不調に終わり、現在再度IPOを計画中。
出所:Philadelphia Energy Solutions web-site
16
イギリスの石油精製事情

国内の石油需要は2000年以降、2割減少。


ガソリンの需要減が進む一方、軽油の需要が増加。精製能力とのミスマッチが顕在化。
国内の精製能力は2000年以降、3割減少。




国内製油所は、2016年初時点で6か所。国内の製油所は全て外資が保有。
メジャーによる製油所売却を機にタンク事業者、輸入事業者が市場へ参入。
製品輸入の増加に伴い需要の減少以上に精製能力の減少が進行。
2015年時点でジェット燃料の72%、軽油の53%は輸入品に依存。
英国内の石油需要*
1.4
英国の原油処理能力と処理量
million
b/d
2,000
英国内の製油所
原油処理能力
'000 b/d
原油処理量
1.2
1,800
1,600
重油
1.0
0.8
軽油
1,400
他灯油
1,200
Grangemouth
ジェット
航空ガソリン
0.6
ガソリン
LPG
0.4
1,000
X
Teesside
(closed in 2009)
800
Linsey
Stanlow
600
Humber
ナフサ
400
X
0.2
Mifilford Haven
(closed in 2014)
Coryton
(closed in 2009)
Pembroke
200
X
Fawley
0.0
0
2000
2003
2006
2009
2012
2000
2005
2010
2015
*: 石油需要は最終製品需要。 出所:DECC; BP統計;日本エネルギー経済研究所
17
イギリスにおける製品輸入増加をめぐる議論

英国下院エネルギー・気候変動委員会が、2013年に特別委員会を開催。エネルギー・気候変動
省(DECC)への意見書を作成。主な意見の内容は:





国内精製品と輸入品とが存在していることはエネルギー安全保障上、有意義。しかし、国内の製油所は
雇用・税収面からみても重要な存在。国内製油所の将来のために長期的な枠組みを提示すべき。
精製産業が、需要構成に見合った最適な供給能力(ここでは主として軽油の生産能力増強)を確保する
ための投資インセンティブの確保を図るための方策を検討すべき。
輸入事業者と比べて精製事業者に対してより重い負担となっている税制や経済政策内容を見直すべき。
欧州委に対し、EU Fitness check の早期実施を働きかけるべき。
国内精製品と輸入品とのバランスを確保するためのインフラ整備の最適化を促進する。
•
•

この他、精製業界からは規制対応費用(2030年までで$1.85/bblと推定)でマージンが全て消滅するとの意見あり。
また非メジャー系精製事業者からは、製品輸入の多くが中東やロシアからのものであることを問題視し、安定的な設
備投資を行うため輸入品の上限設定を求める意見あるも、反対意見が多く採用されず。
上記意見書を受け、DECCは2014年4月に行動計画を策定。下記の政策行動を明示。





経済性の見合うインフラ・精製設備投資に対しては遅延が生じないよう英国政府が保証を行う。
石油精製産業に対する気候変動対応への影響緩和策(再生可能エネ導入費用に対しての補償、炭素価
格の上限設定など)を講じる。
政府系金融機関が製油所の省エネ投資に対し長期の融資を行う。
環境保全・安全に関する規制のあり方を検証する。
官民の代表者からなる「Midstream Oil Task Force」を設置。適正な規制のあり方などについての戦略的
・中長期的課題についての議論の場を設置。
•
具体的な議論のトピックとしては、国内のインフラアクセスの問題、精製事業者と輸入事業者の石油備蓄義務の問
題、英国における備蓄協会設立の可能性、EU Fitness Checkの早期実施と不要なEU規制の撤廃、など
出所: UK House of Commons; DECC
18
豪州の石油精製事情

イギリス同様、製油所閉鎖・売却が相次ぐ豪州。

過去10年間で製油所4か所(約40万b/d)が閉鎖。
•
•

石油4社がそれぞれ一か所ずつ閉鎖。
南東部で製油所が重複している地域では小規模の製油所の閉鎖が相次ぐが、西部のKwinanaは操業継続。
国内石油需要は微増にとどまるものの、製油所の閉鎖によって製品輸入が急速に増加。

製品別では、軽油の輸入需要が大きい。
稼働中の製油所と閉鎖された製油所
原油処理能力
閉鎖年
Adelaide
ExxonMobil
企業
80
2003
Clyde
Shell
85
2012
Kurnel
Valtex
135
2014
Bulw er Isld.
BP.
102
2015
製油所
Bulwer
豪州国内の石油供給
1,200
’ 000 b/d
豪州の製品輸入量
600
’ 000 b/d
1,000
500
800
400
重油
製品
純輸入300
軽油
600
400
製油所
生産 200
200
100
その他
ジェット
燃料
ガソリン
Lytton
Kwinana
Kurnell
Altona
Altona
Geelong
Clyde
0
LPG
0
2010- 2011- 2012- 2013- 2014- 20152011 2012 2013 2014 2015 2016
2010- 2011- 2012- 2013- 2014- 20152011 2012 2013 2014 2015 2016
出所: Department of Industry; 日本エネルギー経済研究所
豪州政府によるエネルギー安全保障上の影響評価

豪州政府は2011年12月、同国のエネルギー安全保障に関する評価報告書(National Energy
Security Assessment)を発表し、国内の製油所の閉鎖は豪州のエネルギー安全保障には問題
をもたらさないと結論。




石油製品輸入の増加によって地政学的リスクの様な外的要因に左右される側面が強くなっているが・・・
価格変動は、製品の輸入であれ、国内生産であれ、ひとしく国際市況の影響を受けるため、製品輸入そ
のものが、豪州の石油供給における競争力には影響を及ぼさない。
アジア太平洋地域においては、今後インドや中東を中心に新規の製油所建設が相次ぐため、地域の市
場全体としては精製能力の余剰バランスが続く。
したがって仮に豪州において今後中長期的に国内の製油所の閉鎖が続いたとしても、その製品供給能
力自体は問題ない、と結論。
•

19
ちなみに、同様の理由から、IEAの石油備蓄90日目標が満たされていなくとも、豪州の石油の安全保障には顕著な
影響はないと結論付けている。
上記結論を補強する意味で、石油製品供給をめぐる「ショックシナリオ」の分析を実施。



ショックシナリオとして、「豪州が製品輸入の半分以上を依存しているシンガポールの製油所からの輸出
が30日間停止したケース」の影響を検討。
この規模の供給停止が発生して以降、1か月間は、国際製品市況の上昇で豪州国内の石油製品価格は
約18%上昇すると想定されるが、2か月目以降は徐々に価格が低下すると想定。
物理的な供給量という観点では、国内製油所からの供給に加えて、国内の商業在庫の引き下げや、アジ
ア太平洋地域においては十分な余剰精製能力が存在しているため、国際スポット製品市場において日本
や韓国、中東の製油所からの代替供給の手当てができること、またシンガポールから豪州までの輸送時
間が1~2週間かかり、シンガポールで途絶が発生しても少なくとも2週間弱の代替供給に向けた対応期
間が確保できるといった理由から大きな問題は生じない、との分析結果を示している。
出所: Department of Resources, Energy and Tourism (当時)
20
フランスの石油精製事情
イギリス同様、国内の石油需要は減少しているが、製品別では軽油の需要が増加しており、精
製能力と国内の石油製品需要構成との間のギャップが拡大している。
 近年は製油所の閉鎖が相次ぎ、中東や米国からの製品輸入が増加。




2010年以降、4か所(Dunkirk、Reichstett、Petit-Couronne、Berre)の製油所が閉鎖。
2016年初時点で、国内の製油所は8か所。合計精製能力は138万B/D。
フランスの小売市場ではハイパーのシェアが拡大。国内競争が激しいことで国内製油所も苦境に。
フランスの石油需要と精製能力
2.5
million
b/d
精製能力
国内需要
メジ ャー系
45%
その他PB
Petrovex 8%
3%
2.0
Distridyn
Siplec 4%
6%
1.5
Systeme
U
7%
1.0
合計
10,765か所
( 2015年時点)
Carf uel
12%
0.5
ハイ パー系
47%
0.0
2000
2005
2010
フランスの石油関連インフラ
フランスのSS数
Total
34%
Esso
5%
SCA
15%
Agip
1% Delek
(BP)
Shell 4%
1%
2015
出所:BP; CPDC; IEA
21
フランスにおける政府の関与

Dunkirkの製油所閉鎖をめぐり労使紛争が発生。


Totalは2009年9月、採算の悪化に伴い、Dunkirk
製油所の稼働を停止。その後、同製油所の売却を
模索したものの、買い手が見つからず、同製油所
の閉鎖を計画。
これに対し、労組側が反発。上部労組団体も巻き
込んで、2010年1月以降、同社の国内6か所の製
油所でストライキを実施。
Totalの精製能力の変化
3.0

近年は、フランス・欧州の
精製能力を縮小する一方
で、中東で輸出製油所を新
設している。
million b/d
事態を重く見た仏政府が労使間の調停を実施。



2010年2月23日、Sarkozy大統領はde Margelie
CEOを招き、事態の早期解決を要請。
同日、 Estrosi産業相は、仏議会において、Totalと
調整をした結果、同社の、Dunkirk製油所以外の
国内5か所の製油所を今後5年間閉鎖しない方針
(モラトリアム)を確認と答弁。
Totalの公約を受け、労組側もストを解除。
2.5
アジア・
中東など
2.0
米国
1.5
欧州
フランス
1.0

Totalはモラトリアムが終了した2015年4月、今後
の国内精製部門のロードマップを発表。

国内のDonges製油所の超低硫黄石油製品生産
能力を増強。La Mède製油所はバイオ燃料製油所
へ転換する計画。
0.5
0.0
2005
2007
2009
2011
2013
2015
出所: Total 10-K報告書
22
EUによる取組み

2013年以降、EU Refining Forumを開催。




EU規制が精製部門の競争力や供給安全保障に及ぼす影響について検証・議論することを目的に開催。
フォーラムの参加者は、エネルギー委員を始めとするEU高官のほか、各国政府の代表、精製事業者、業界
団体、国際機関関係者、コンサルティング会社など。
これまで6回開催。最近では、欧州地域の精製事業をめぐる様々なトピックについて、各分野の関係者が意
見交換を行う場となっている模様。
2015年6月のフォーラムでは、EU規制が域内精製コストに及ぼす影響について議論。



EU規制は、2000~12年の平均で、欧州の製油所に47 euro cent/bblのコスト増をもたらしたと推定。
ただこのコスト増は米国・中東等他地域の製油所とのマージン格差拡大の20%しか説明できないと結論。
2012年以降に導入・強化された規制対応費用の推定も含め、今後も同様のモニターを続ける予定。
EU 規制が域内精製コストに及ぼした影響
EU 規制によるコスト増と他地域製油所との
マージン格差拡大
出所: EU JRC
23
ニュージーランド(NZ)の石油精製事情

国内の石油需要は近年、12万b/d前後で安定的に推移。


国内では原油の生産も行っているが(4.7万b/d)、その多くは海外に輸出。
製油所は北島北部Marsden Pointにある一か所のみ。



精製能力はほぼ国内の需要規模と同水準(複数の製油所が必要なほどの国内需要規模ではない)。
処理原油は主に中東、東南アジア産の原油。
精製された製品はAucklandまでは製品パイプラインで輸送。それ以外は国内の油槽所へ内航輸送。
NZの石油需給バランス
250
NZの石油関連インフラ
NZの製品供給
kb/d
140
'000 b/d
100%
90%
120
200
80%
48
37
150
100
30
70%
60%
80
9
100
50%
60
104
123
40%
30%
40
50
製品
純輸入
国内
製油所
製油所
生産%
20%
20
47
0
国内
生産
原油
輸入
製品
輸入
原油
輸出
製品 その他 国内
輸出*
需要
10%
0
0%
2000
2004
2008
2012
出所:MBIE;IEA
24
Tolling refineryモデルの採用

Refining NZ社が操業するMarsden Point製油所の概要

NZ国内で燃料販売事業を行う石油会社3社(BP、ExxonMobil、Z Energy)による合弁形態。
•



元々Chevronも11.4%のシェアを保有していたが、グローバルな資産再構成に伴い2015年6月に保有株
式を全て売却。Chevronは引き続きNZでの燃料販売事業を実施。
現在、CCR(ガソリン基材油生産装置)を新設中。今後はSuezmax船型のタンカーが満載で航行できる
ような周辺航路の拡張を計画。
原油処理量に応じて委託精製費を受け取るTolling refineryというビジネスモデルを採用。


BPが21.19%、ExxonMobilが17.2%、Z Energy15.36%、他大株主が27.2%(ほとんどが金融機関)、残り19.05%
はNZ証券取引所に上場。
当該製油所を利用する石油各社が原油を調達し、製油所(ないしはAucklandのパイプライン到着地点)
まで製品を取りに行き、自社の販路に乗せて販売を行う
委託精製費は理論的なグロス精製マージンの7割に設定。





1988年に石油産業が自由化。それ以降、コストプラス方式が採用されていたが、輸入製品との競合が強
まり、1995年より、現在の制度を採用。
グロス精製マージンは、(NZ着時点での製品の価値-NZ着時点での原油の価値-インセンティブ)/(処
理原油の数量)で産出。
グロス精製マージンの3割は、石油会社が負担する製油所からの供給コストに相当するという前提。
委託精製費のフォーミュラは2~3年に一度見直し(最新の見直しは2014年)。
委託精製費には上限・下限が設定されており、下限は過去1回(1999)、上限は過去2回(2007年と2008
年)発動されている。
出所:Refining NZ; Hale & Twomey
25
精製費用の回収オプションとその長所・短所

2014年の委託精製費見直しに際し、株主利益、投資財源、製油所の存続、製油所・石油会社双
方のマージン改善インセンティブを確保するためのモデルが検討され、現行方式が最適と結論。
固定費方式
コストプラス
現行方式
ネットバック
独立採算
株主に対する安定的なリ
ターン確保
Average
リターンは比較的安定。
精製マージンや為替レー
トの影響なし。
Average
リターンの水準は現行の
水準と大きく変わらない。
Average-Good
固定費・コストプラスより
は変動するが、ネットバッ
ク・独立採算よりは安定。
Average-Poor
リターンの変動が現行より
激しくなる。
Poor
リターンは極端に変動。バ
ランスシートへの圧力も大。
継続的な投資のための財
源の確保
Poor
固定費の設定水準次第で
は投資がなされず。政府
の支援が必要となる。
Poor
高マージン期のリターンが
低下するため現行より投
資インセンティブが減少。
Average
現行の枠組みでは、今の
ところ、新規の投資財源
の確保は出来ている。
Average-Good
マージンが大きい時には
投資意欲も拡大するが、
低マージン期には後退。
Poor
高リターン期には投資財
源確保できるが、投資の
継続は困難の可能性大。
石油会社の製油所利用イ
ンセンティブ
Poor
市況次第で経済性が悪
化。、強制されなければ利
用しないケースも出てくる。
Average
固定費回収のために石油
会社に一定の利用義務を
導入する必要あり。
Average
フォーミュラのインセンティ
ブ調整を通して石油会社
の利用を図ることが可能。
Poor
石油会社が敢えて国内の
製油所を活用しようという
インセンティブを持たない。
Poor
石油会社との関係が疎遠
となり、製油所の稼働率も
低迷する可能性あり。
競争力のある製品供給
Poor
市況次第では相対的な競
争力の変動が激しい。
Poor
競争力の変動が激しい。
高マージン期には競争力
拡大(逆もまた真)。
Average
精製コストは国際市場並
みの水準に設定。
Good
本方式であれば常に競争
力のある製品が供給され
る。
Good
製油所は常に競争力を意
識する必要あり。但し収益
面での不確実性あり。
製油所・石油会社双方が
マージン改善のインセン
ティブを持つ
Poor
石油会社が全てのマージ
ンリスクを負い、製油所側
にマージン改善のインセ
ンティブなし。
Good
固定費比率を上げること
で石油会社へのマージン
比率が拡大(製油所の
マージンリスクは低減)
Good
石油会社は調達原油価
格の引下げ、製油所は実
際の精製コストの引き下
げインセンティブを持つ。
Poor
石油会社の側に原料調達
費用の低減インセンティブ
が生じない。
n/a
製油所は自社のマージン
をコントロール可能。
効率的かつ信頼性の高い
製油所操業
Poor
現行方式に比べれば商業
的なインセンティブが働か
ない。
Average
製油所側にコスト効率化
インセンティブ働くも現行
方式よりは低い
Good
現行の製油所操業では、
効率性と信頼性双方を確
保できている。
Good
製油所側への商業的圧
力が高まり、運転も効率
化。
Good
製油所は効率改善に向け
た強いインセンティブを有
する。
持続可能なビジネスサイ
クル
Poor
株主や石油会社に魅力な
し。政府も規制の必要性
に疑義を持つ。
Average
1990年代にこの方式から
現行の方式に変更した経
緯あり。持続性は不明。
Good
1990年代から現在に至る
まで、株主、石油会社共
に現行の制度を支持。
Poor
低マージン期に製油所の
収益が悪化すれば操業の
継続が困難に。
Poor
収益の変動や資産の拡
大、不透明性な稼動率な
ど持続可能性は不確実。
コストプラス方式: コストを固変分解して回収。ネットバック方式:製油所からの販売価格を輸入品等価に設定。独立採算方式:原油調達、製品販売を市場価格で実施。
出所:Hale & Twomeyによる評価報告書に日本エネルギー経済研究所加筆。
ドイツにおいても合弁製油所形態が採用されている。

2016年初時点で、ドイツ国内の製油所は13
か所、合計精製能力は219万B/D



各合弁製油所がそれぞれのブランドの製品
を生産・供給。
製油所を保有している会社は全て外資企業



平均能力は16.8万B/D。日本とほぼ同水準。
能力の削減は過去10年間で12%減。
国内5か所、全体の4割の精製能力がメジャ
ー同士による合弁製油所によるもの。


26
石油メジャー・産油国の国営企業・欧州トレ
ーダーが保有。ドイツ企業は一社もなし。
近年は産油国(ロシア)、トレーダーの進出が
相次ぐ。
国内8地域で卸市場が形成


精製事業者と販売事業者がターム・スポット
契約で製品取引を行っている。
北部では、Rotterdamの製品価格、南部では
OMI社の発表価格が卸取引の価格指標とな
っている。
出所: 各社HPより日本エネルギー経済研究所作成
まとめ
27

石油精製企業として、長年にわたり安定的な経営を行っているValeroの競争力の源泉は、 「機
を見るに敏」なダイナミックな事業ポートフォリオ・投資戦略にあると考えられる。近年の特筆すべ
き動向としては、大西洋市場を中心とする商圏の拡大や、販売部門のスピンオフ、米国内の事業
環境の変化に応じた設備投資といった点が挙げられる。

製油所の閉鎖と製品輸入の増大がエネルギー安全保障上の脅威となりうるという点は、諸外国
における共通認識となっている。しかし、フランスのような労使紛争が起きない限り、政府や公的
機関による精製部門への関与は、競争条件の平準化や現行規制がもたらす影響の検証、官民
の議論の場の設定、環境対応への支援(ないしは豪州のように特にアクションはとらない)といっ
た分野にとどまっている。

ニュージーランド(NZ)では、国内唯一の製油所を国内で石油販売事業を行う石油各社が共同で
保有している。ドイツでも国内の4割の精製能力は石油各社の合弁製油所によるものである。特
に、NZの製油所では、石油各社から精製費用を回収する「Tolling refinery」モデル採用がされて
おり、その費用の算出フォーミュラには、株主利益や投資財源、製油所の存続、製油所・石油会
社双方のマージン改善インセンティブを確保するような工夫がなされている。
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