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KINPAK事件 - 不二商標綜合事務所

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KINPAK事件 - 不二商標綜合事務所
最 新判 決 情 報
2011 年
〔2 月 分 〕
〇 KINPAK事
KINPAK 事 件
東 地 判 H23.2.25 H21(
( ワ ) 31686 不 正 競 争 行 為 差 止 等 請 求 事 件 ( 岡 本 岳 裁 判 長 )
「K INPA K 」 として 販 売 する 金 箔 を素 材 とする美 顔 パッ ク の形 態 ( 右 上
掲 ) が周 知 商 品 表 示 で あり、同 じく金 箔 を使 用 した美 顔 パ ックである被 告
商 品 (右 下 掲 )が原 告 商 品 の形 態 を模 倣 したものであるとして、不 競 法
2-1—1 号 及 び同 2-1-3 号 に基 づきその使 用 差 止 と損 害 賠 償 が求 められ
た事 案 である。
判 決 では、原 告 商 品 の周 知 性 が否 定 されて いるので、不 競 法 2-1—1
号 該 当 性 が否 定 された。
3 号 の形
形 態 の模 倣 については、両 商 品 を比 べてみれば分 かるように、非
常 に 酷 似 しているが、判 決 は、原 告 商 品 は不 競 法 が保 護 する「商 品 の形
態 」には当 らないと判 断 した。その理 由 は以 下 の通 りである。
〔共 通 点 1〕
〕 顔 の形 をした四 角 形 状 と鼻 の輪 郭
→ 【判 決 】美 顔 パックの基 本 的 機 能 を果 たすために不 可 欠 な形 態 であ
る。
〔共 通 点 2〕
〕 「金 箔 」を用 いている。
→ 【 判 決 】 パック素 材 の選 択 の問 題 で あ り、従 来 から 金 箔 は用 いられて
いた。
〔共 通 点 3〕
〕 金 箔 を台 紙 の上 に密 着 させ、金 箔 の上 に薄 紙 を載 せている。
→ 【判 決 】素 材 の金 箔 をした商 品 を保 護 するための機 能 、効 用 を果 たすために不 可 避 的 なものである。
〔共 通 点 4〕
〕 特 徴 的 な色 彩 、光 沢 、質 感 がある。
→ 【判 決 】 金 箔 独 特 の特 徴 である。
不 競 法 の「形 態 の模 倣 」を考 える上 で、参 考 になる事 案 である。
〇 遠 山 の 金 さん事
さん 事 件
知 財 高 裁 H23.2.28
H22(
( 行 ケ ) 10152 審 決 取 消 請 求 事 件 ( 飯 村 敏 明 裁 判 長 )
第 28 類 「ぱちんこ器 具 」他 を指 定 商 品 とする登 録 商 標 「 名 奉 行 金 さん」が、登
録 商 標 「 遠 山 の 金 さん」を引
さん
さん
用 商 標 とする無 効 審 判 により無 効 とされたので 、当 該 審 決 の取 消 しが求 められた事 案 である。パチンコ業 界
の争 いである。
判 決 も審 決 を支 持 し、両 商 標 は観 念 において類 似 すると判 断 した。いわく、「遠 山 金 四 郎 」は実 在 の人 物 で
あり、明 治 時 代 から歌 舞 伎 、小 説 、映 画 、テレビ時 代 劇 を通 じて、「遠 山 の金 さん」として大 衆 に親 しまれて き
た。
そうすると、本 件 商 標 「名 奉 行 金 さん」からは、「名 奉 行 として知 られている遠 山 金 四 郎 」の観 念 が生 ずる。
また引 用 商 標 「遠 山 の金 さん」からも「名 奉 行 として 知 られている遠 山 金 四 郎 」の観 念 が生 ずるので、両 商 標
は観 念 において類 似 する。
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次 に判 決 は、パチンコ業 界 の取 引 の実 情 について、以 下 の点 を認 定 した
① パチンコ機 の取 引 は、メーカーとパチンコホールとの売 買 が多 いものの、ゲームセンターに売 買 されたり、ネ
ットオークションで中 古 品 が売 買 されたり、個 人 向 けの中 古 品 販 売 業 者 も多 数 いる。
② パチンコ業 界 では、90 年 代 頃 より「版 権 もの」又 は「タイアップ機 種 」と呼 ばれるテレビアニメ、テレビドラマ、
映 画 、漫 画 等 のキャラクターを使 用 した機 種 の人 気 が高 まり、出 玉 に応 じて液 晶 画 面 に動 画 が流 れる演 出
となっている。「水 戸 黄 門 」 「宮 本 武 蔵 」 「じゃりん子 チエ」 「キン肉 マン」など、複 数 の機 種 に同 様 のキャ
ラクターが使 用 される場 合 もある。
③ 原 告 のパチンコ機 種 は、俳 優 松 方 弘 樹 が登 場 し、遠 山 金 四 郎 に扮 した写 真 が掲 載 されて居 り、一 方 、被
告 機 種 では、俳 優 橋 幸 夫 が遠 山 金 四 郎 に扮 した写 真 が掲 載 されている。
以 上 の認 定 事 実 より、判 決 は以 下 のように判 断 した。パチンコ機 の大 部 分 はパチンコホールに設 置 され、遊
戯 者 はパチンコ機 を売 買 することはないが、パチンコ機 に付 された商 標 によりパチンコ機 の出 所 を認 識 、識 別
した上 で利 用 するのが通 常 であり、また遊 戯 者 の嗜 好 や人 気 がパチンコホールの機 種 選 定 に大 きく影 響 する
から、遊 戯 者 の認 識 等 を考 慮 して、商 標 の類 否 を判 断 するのが合 理 的 である。
事 情 を総 合 すると、両 商 標 は、外 観 、称 呼 において類 似 しない点 があるものの、歴 史 上 の人 物 である「遠 山
金 四 郎 」、時 代 劇 等 で演 じられる「名 奉 行 として知 られて いる遠 山 金 四 郎 」の観 念 に おいて類 似 するので、商
品 の出 所 について混 同 を生 ずるおそれがある。
この判 決 には大 いに疑 問 がある。つまり、両 者 商 品 に使 用 されている「名 奉 行 金 さん」や「遠 山 の金 さん」は、
果 たして「商 標 」なのであろうかという点 である。判 決 が事 実 認 定 しているように、両 者 商 品 とも「版 権 もの」「タ
イアップ機 種 」であり、「遠 山 の金 さん」、「名 奉 行 金 さん」 は、版 権 元 、タイアップ先 で あるパチンコゲームに登
場 するキャラクターの名 称 、ないしは著 作 物 のタイトルである。
確 かに、(株 )三 洋 物 産 のヒット商 品 「海 物 語 」のように、パチンコ機 械 とメーカーとの出 所 が結 びついたゲー
ム機 もあるが、一 方 、版 権 物 を見 ると、「CR石 原 裕 次 郎 嵐 を呼 ぶ男 」や、「CR釣 りバカ日 誌 」、「CR加 山 雄
三 」、「ムツゴロウの動 物 王 国 」、「男 はつらいよ」のように、映 画 俳 優 の芸 名 や映 画 のタイトルをそのままパチン
コ機 械 の名 称 としているもの多 く、これらが版 権 元 のタイトル、つまりゲームの内 容 を表 示 しているのであって、
パチンコ機 械 自 体 の商 標 でないことは明 らかであろう。とりわけ、「石 原 裕 次 郎 」や「加 山 雄 三 」を、パチンコ機
械 の商 標 とは、誰 も思 わないであろう。
仮 に、これらの版 権 元 のタイトルをパチンコ機 械 の「 商 標 」 とみた場 合 、版 権 、つまりラ イセンスが切 れた時
点 で当 該 パチンコ機 は使 用 できなくなるのであるし、さらに、現 実 的 ではないかも知 れないが、その後 に他 のパ
チンコメーカーに同 じタイトルのゲームが許 諾 された場 合 、同 一 または類 似 するタイトルのパチンコ機 械 が出 現
することになり、商 標 とした場 合 、出 所 の混 同 が生 ずること必 至 である。そのような一 時 的 あるいは暫 定 的 な表
示 を、「商 標 」と見 ることには矢 張 り無 理 があるであろう。
このように、本 件 の「遠 山 の金 さん」なども、パチンコ機 械 の出 所 を表 示 するために使 用 されているのではな
く、パチンコ機 が採 用 したゲームのタイトルを表 示 しているのであって、このような表 示 が商 標 としての使 用 では
ないことは、古 くは土 産 用 ペナントの清 水 の次 郎 長 事 件 や漫 画 一 休 さんのテレビまんが事 件 、ゲームソフトの
三 国 志 事 件 やぼくは航 空 管 制 官 事 件 、音 楽 CDタイトルの UNDER THE SUN 事 件 などで広 く合 意 されているこ
とと思 われる。
裁 判 所 は、遠 山 の金 さんのテレビで有 名 な俳 優 が起 用 されていることを認 識 し、版 権 ものとまで認 定 してい
ながら、この点 に気 が付 かなかったのであろうか。
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また事 実 認 定 で、版 権 もののパチンコ機 械 では、同 じテーマの著 作 物 を基 にした複 数 の機 種 が出 回 ってい
ることも認 定 している。本 件 が正 にそのケースであり、本 来 、原 告 、被 告 のみではなく、他 のパチンコ機 メーカー
も、遠 山 の金 さんに因 んだパチンコ機 を製 造 、販 売 できるのである。(但 し、もろ肌 脱 いだ桜 吹 雪 の金 さんのス
トーリーは、被 告 東 映 株 式 会 社 に著 作 権 があるようである。)
つまり歴 史 上 の人 物 である遠 山 の金 さんをモデルとしたパチンコゲーム自 体 は誰 でも作 れるのにかかわらず、
「金 さん」に関 係 したネーミングが使 用 できないというのが本 件 判 決 である。
本 件 が正 しいとすると、本 来 著 作 物 の題 号 には著 作 権 がないにも拘 らず、著 作 物 の題 号 を商 標 登 録 するこ
とで、著 作 物 自 体 を独 占 で きる結 果 になり、商 標 権 の範 囲 を逸 脱 し、著 作 権 法 との整 合 性 が失 われて しまう
のではないであろうか。
仮 に裁 判 所 が、取 引 の実 情 の認 定 として、両 商 標 は本 来 の商 標 としては使 用 されていないと判 断 した場 合 、
商 標 の類 否 判 断 には、そのような実 情 は斟 酌 することが出 来 ず、単 に言 葉 としての「名 奉 行 金 さん」と「遠 山 の
金 さん」との類 否 を判 断 するだけになるのであろうか。
次 に、遊 戯 者 の認 識 を商 標 の類 否 判 断 の基 準 としている点 は、どうであろうか。遊 戯 者 も、キャラクターとパ
チンコ機 械 とを一 体 に認 識 して機 種 を選 んで遊 ぶのであるから、判 決 がいうように、パチンコメーカーは、遊 戯
者 に好 まれる機 種 の開 発 に力 を注 いでいることは事 実 である。
しかし、遊 戯 者 が遊 ぶ機 種 を選 ぶのは、パチンコ機 械 の出 所 によってではなく、キャラクターやストーリーに
着 目 して機 種 を選 んでいるのであるから、キャラクターの名 称 がパチンコ機 械 自 体 の商 標 になることはないの
ではないであろうか。
もちろ ん、 当 該 ゲー ムの タイ ト ルが、特 定 のパチンコ 機 械 の名 称 と して 周 知 され た 場 合 に は、 不 競 法 上 の
「商 品 等 表 示 」として、保 護 の対 象 となり得 ることは言 うまでもない。
遊 戯 者 が需 要 者 の1つと考 えられるケースもある。たとえば、パチンコ機 械 メーカーのハウスマークなどでは、
遊 戯 者 がパチンコを楽 しむことで特 定 の出 所 つまりメーカーを認 識 することになるし、その結 果 、遊 戯 者 がどこ
のパチンコ機 械 が導 入 されているかでパチンコホールを選 ぶことがあるので、例 えば周 知 性 の認 定 などに当 っ
ては、遊 戯 者 の認 識 を勘 案 しても良 いであろう。
本 件 については、今 後 色 々な方 面 から議 論 の的 になるであろうが、天 下 の知 財 高 裁 においてこのような判
決 が出 される以 上 、パチンコ機 械 メーカーとしては、たとえキャラクターの名 称 であろうと、商 標 登 録 し、自 己 防
衛 を図 る以 外 にないが、先 行 するメーカーが、ある著 作 物 にかかわる名 称 を商 標 登 録 している場 合 には、その
ストーリーを使 用 し、関 連 する名 称 をつけることが危 険 であることは、肝 に命 ずるべきであろう。
〇 セキスイ事
セキスイ 事 件
知 財 高 裁 H23.2.28
H22(
( 行 ケ ) 10127 審 決 取 消 請 求 事 件 ( 飯 村 敏 明 裁 判 長 )
特 許 事 務 所 の子 会 社 (原 告 )が発 注 したコンピュータプログラムに欠 陥 があったため、役 務 の質 について誤
認 を生 じたとして、法 53-1 を理 由 に商 標 登 録 の取 消 しを求 めた事 案 である。
被 告 商 標 権 者 は、積 水 化 学 工 業 (株 )であり、第 42 類 「電 子 計 算 機 のプログラムの
設 計 ・作 成 ・保 守 」他 について、商 標 「セキスイ」(右 上 掲 )を所 有 している。
特 許 事 務 所 の 子 会 社 が プ ロ グ ラ ム 作 成 の 発 注 を し た 先 は、 被 告
積 水 化 学 工 業 と(株 )NTTデータとの合 弁 会 社 であり、会 社 名 中 に
「 セ キス イ」 の語 を 含 む 商 号 「 株 式 会 社 N T T デ ー タセ キ ス イ シス テ ム
ズ 」(使 用 商 標 :右 下 掲 載 )を使 用 している。
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つまり、原 告 からみると、株 式 会 社 NTTデータセキスイシステムズは、積 水 化 学 工 業 の通 常 使 用 権 者 であり、
登 録 商 標 「セキスイ」は、使 用 商 標 「株 式 会 社 NTTデータセキスイシステムズ」として使 用 されたことになる。
然 るに、原 告 は、「セキスイ」の名 前 を信 頼 して、「セキスイ」の語 を含 む株 式 会 社 NTTデータセキスイシステ
ムズに対 してプログラムの作 成 を依 頼 したのであるが、その成 果 物 に 欠 陥 があったので、本 件 商 標 が表 示 す
る役 務 の質 と、通 常 使 用 権 者 によって提 供 された役 務 の質 とには隔 たりがあり、役 務 の質 について誤 認 を生
じさせたというのが原 告 の登 録 取 消 の理 由 である。
しかし、判 決 では、本 件 商 標 「セキスイ」と使 用 商 標 「株 式 会 社 NTTデータセキスイシステムズ」とは外 観 、称
呼 において類 似 せず、いずれも特 定 の観 念 を生 じないとして、両 商 標 を非 類 似 の商 標 と判 断 し、審 決 を支 持 し
た。
〇NTT事
〇NTT 事 件 ・ NTTデータ
NTT データ事
データ 事 件
知 財 高 裁 H23.2.28
H22(
( 行 ケ ) 10279 同 10279 審 決 取 消 請 求 事 件 ( 飯 村 敏 明 裁 判 長 )
上 記 セキスイ事 件 と同 じ構 成 であり、対 象 商 標 が日 本 電 信 電 話 (株 )の登 録 商
標 「NTT」(右 掲 )と「NTTデータ」(標 準 文 字 商 標 )に代 わっただけである。
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