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小論文

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小論文
平成21年度
法科大学院入学者選抜試験問題
小
論
文
1. 試験開始の合図があるまで亜この問題用紙の中を見てはいけません。
2.
試験時間は亜80分です。
3.
試験中に問題用紙の印刷不鮮明や解答用紙の汚れ等に気付いた場合は亜手を挙げて監督者に知らせ
てください。
4.
解答にあたっては亜必ず黒か青のペン(鉛筆は不可)またはボールペンを使用してください。
5. 解答用紙に記入するときには亜下記の点に注意してください。
⑴ 受験番号茜氏名を所定欄に記入してください。
⑵ 訂正する場合は亜=線で消すなどして亜分かりやすく訂正してください。
⑶ 解答用紙は亜折り曲げたり汚したりしないでください。
6.
問題用紙の余白等は適宜利用してかまいません。
7.
試験終了後亜問題用紙は持ち帰ってください。
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以下の文章は亜雑誌改造の大正11(1922)年月号に刊行された亜末弘厳太郎
(すえひろ茜いずたろう)嘘の効用の一部を引用したものです(出典:岩波現代文
庫役人学三則岩波書店亜2000年)。この文章を読み亜次の設問に答えなさい。解
答は亜横書き亜句読点茜括弧等も字分として計算します。
人間は公平
を好む。ことに多年不公平
のために苦しみぬいた近代人は亜何
よりも公平
を愛します。
法の前には平等たるべし
これが近代人一般の国家社
会にたいする根本的要求です。そうして亜いわゆる法治主義
は亜実にこの要求か
ら生まれた制度です。
法治主義というのは亜あらかじめ法律を定めておいて亜万事をそれに従ってきりも
りしようという主義です。いわばあらかじめ法律
という物差しを作っておく主義
です。ところが元来物差し
は固定的なるをもって本質とするのです。
伸縮自在
な物差し
それは自家撞着①の観念です。例えば亜ゴムでできた伸縮自在の物差しを
使って布を売る呉服屋があるとしたら亜おそらくなにびともこれを信用する人はない
でしょう。同じように国家に法律があっても亜もしもそれがむやみやたらに伸縮した
ならば亜国民は必ずや拠るべきところを知ることができないで亜不平を唱えるに決ま
っています。
ところが亜それほど公平
好きな人間でも亜もしも法律
の物差しが少しも伸
縮しない絶対的固定的なものであったとすれば亜必ずやまた不平を唱えるに決まって
います。人間は公平
を要求しつつ同時に杓子定規②
を憎むものです。したが
って一見きわめて矛盾したわがままかってなことを要求するものだといわねばなりま
せん。しかし亜かりにそれが実際に矛盾
でありわがままかって
であるとして
も亜人間はかくのごときものなのだから仕方がありません。そうして人間がかくのご
ときものである以上亜そこに行わるべき法律はその矛盾
したわがままかって
な要求を充たしうるものでなければなりません。なぜならば亜われわれは空想的な
理想国
の法を考えるのではなくて亜現実の人間世界の法律を考えるのですから。
しかるに亜従来法を論ずる者の多数は人間を解してかかる矛盾
したわがまま
かって
なものだと考えていないようです。その結果亜彼らのある者は亜いやしくも
人間が法の前に平等
たらんことを希望する以上亜同時に伸縮自在の法
を要求
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してはならぬと主張する。そうして現存の法
がある具体的の場合に亜これを適用
すると普通の人間の眼から見ていかにも不当だと思われる場合でも亜それは法であ
る亜適用されねばならぬ
という一言のもとにその法を適用してしまう。その態度は
いかにも勇ましい。しかし亜かくのごとくに勇ましくも断行した冷くして固きこと鉄
のごとき彼らは亜はたして内心になんらの不安がないでしようか?
否亜彼らもまた
人間です。美しきを見て美しと思い亜悲しきを聴いて悲しと思う人間です。必ずや亜
かくして人を斬った彼らの心の中には男の涙
が流れているに違いない。もしも流
れていないならば亜それは人間
ではありません。法
を動かして裁判
を製
造することあたかも肉挽き器械のごときものたるにすぎません。われわれはかかる器
械をして人間
を裁くべき尊き地位にあらしめることを快しとしません。
しからば亜心中男の涙
を流しつつ断然人を斬る人々はいかん?
私はその人の
志を壮なりとする。しかしながら同時にこれを愚なりと呼ばなければなりません。な
ぜならば亜もしも法
が全く伸縮しない固定的なものであり亜またこれを運用する
人間がこれを全然固定的なものとして取り扱ったとすれば亜世の中の矛盾
した
わがままかって
な人間は必ずやいったい法は何のために存するのか?
といっ
て法
を疑うでしよう。そうしてその中の正直にして勇気ある者は法
を破壊し
ようと計るでしょう。また彼らの中の利口にして生
を愛する者どもはひそかに
法
をくぐろうと考えるでしょう。法
をくぐってでも生
きなければなりませ
んから。
彼らの中の正直にして勇気ある者はよく嘘
をつくに堪えません。嘘
をつく
ぐらいならば命
を賭しても法
を破壊しようと考えます。彼らは嘘
をつか
ずに生きんがために亜また子孫をして嘘
をつかずに生きることをえしめんがため
に亜
法
を破壊せんと計ります。そうして法
を固定的なものとして考え亜固定
的なものとして取り扱わんとする人々の最も恐れている革命家
は実にこの種の
正直にして勇気ある人々
の中から出るのです。
またそれほど正直でないか亜または勇気のない多数の利口者は亜嘘
をついて
法
をくぐろうと計ります。法
が固定的で亜ある事柄が有
る以上必ず適用さ
れねばならぬようにできている以上亜有
をいつわって無
という以外法
の
適用を免れる方法はない。
生
を熱愛する人間のこの方法に救いを求める亜事や実
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に当然なりといわねばなりません。
法
を固定的なものとして考え固定的なものと
して取り扱わんとする人々はかかる結果を好むのでしょうか?
否亜彼らの最も憎み
きらうところでなければなりません。
しかし彼らがいかに憎みきらっても亜生
を熱愛する人々の嘘つき
をやめる
ことは事実上不可能です。彼らがこの否むべからざる人生の大事実に気がつかないの
だとすれば亜それはきわめて愚だといわねばなりません⑴。
大河は洋々として流れる。人間がその河幅を狭めんとして右岸に鉄壁をきずく。水
は鉄壁に突き当ってこれを破り去らんとする。しかも亜事実それが不可能なことに気
づくとき水は転じて左岸をつく。そうしてその軟い岸を蹴破ってとうとうと流れ下る。
この際右岸の鉄壁上に眠りつつ太平楽③を夢みるものあらば亜たれかこれを愚なりと
せぬものがあろうか。世の中に自由法
なることを主張する者があります。そうし
てまた自由法否なり
として絶対的にこれに反対する人もあります。その反対
する人々は大河をせき止めえた夢をみてみずから壮美
を感ずる人々です。しかも
実は左岸の破り去られつつあることに気のつかない人々です。それらの人々は亜すべ
からく書斎を去り赤煉瓦のお役所を出でて亜現実を現実としてその生まれたままの眼
をもって亜ありのままを直視すべきです。たいして骨を折ることはいりません。ただ
ちに対岸の破壊せられつつあるのに気がつくでしょう。ところが亜彼らの中にも利口
者があります。口では法は固定的なものだ
と主張しつつ実際上これを固定的に取
り扱って壮美
を味うだけの勇気のない人々です。彼らは亜従来伝統ないし独断に
とらわれて口先きでは法の固定
を説きます。しかし亜それを行いの上に実現する
ことができない。しからば亜彼らはその矛盾した苦しいせとぎわをいかにしてくぐり
ぬけるか?
その際彼らの使う武器は常に必ず嘘
です⑵。
むろん亜裁判官
ことに保守的分子の優勢な社会または法治国における裁判官
が亜かかる態度をとることはやむをえません。なぜならば亜彼らはこの方法によ
ってでも法
と人間
との調和をとってゆかねばならぬ苦しい地位にあるのです
から。ところが亜法律上亜社会上毫もかかる拘束を受けていない人々
学者
が
みずからのとらわれている伝統
や独断
と人間の要求
とのつじつまを合わ
せるために亜有意または無意的に嘘
をついて平然としているのをみるとき亜われ
われはとうていその可なるゆえんを発見することができないのです。彼らがこの際採
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るべき態度⑶は亜
【中略】
わずかに嘘
の方法によって法
と人間
との調和を計りえた彼らが亜これに
よって彼らみずからの独断
や伝統
を防衛し保存しえたりとなすならば亜それ
は大なる自己錯覚でなければなりません。
【設問】
文中下線部①から③の用語の読みをひらがなで記し亜それらの意味をそ
れぞれ20字以内で説明しなさい(配点各点亜15点)。
①自家撞着
②杓子定規
③太平楽
【設問】
下線部⑴において亜著者は亜彼らがこの否むべからざる人生の大事実
に気がつかないのだとすれば亜それはきわめて愚だといわねばなりませ
ん
とする。その理由と根拠を亜文中の表現を用いて亜200字以内で説明
しなさい(配点20点)。
【設問】
下線部⑵に関連して亜著者は亜嘘
という武器をどのようなものであ
ると判断茜評価しているか亜200字以内で述べなさい(配点25点)。
【設問】
下線部⑶につづき亜著者は亜彼らがこの際採るべき態度
を二つ指摘
しています。その態度とは亜どのような内容であるかをあなたの考えも交
えながら500字以内で述べなさい(配点40点)。
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