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市場実態(PDF:536KB)

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市場実態(PDF:536KB)
3.加工米飯
(1)市場実態
a
米の需要動向
米は、米国の消費者にとってもなじみのある食品であり、米の消費量は過去 20
年伸び続けている(図 20)。米食民族の人口が増えていることが、米の需要増大
の最大の要因であるが、米食民族のうち人口も人口増加率も最も大きいのがヒスパ
ニックである。アジア系人種の人口も急速に増えてはいるが、その数はまだ少ない。
図 20
米国人 1 人当たりの米の消費量
25
ポンド/人
20
15
10
5
0
1986
1989
1992
1995
1998
2001
2004
出典:米国農務省経済調査部
日本とは異なり、米国では米といえば主に長粒種である。米は副菜として食べら
れるのが一般的だが、メインの料理に使われることも、サラダやスープに加えられ
ることもある。炊いただけの白いご飯として食べることもあるが、野菜や肉を加え
香辛料やソースで味付けするのが普通である。
b
米国における米の生産
米は、南部諸州やカリフォルニア州では重要な作物であり、米の生産量は、過去
20 年、ゆるやかではあるが一貫して増加し続けている(図 21)。
71
71
図 21
米国の米生産量
250
Million hundredweight
200
150
100
50
0
1987
1990
1993
1996
1999
2002
2005
出典: 米国農務省
図 22
米国の米の種類別生産比率
100%
80%
60%
40%
20%
0%
1987
1990
1993
1996
長粒種
中粒種
1999
2002
2005
短粒種
出典: 米国農務省
米国産の米は大半が長粒種だが、中粒種や短粒種もある程度栽培されており、こ
こ数年、中粒種が少しずつ増加する兆しを見せている。ただし、短粒種のシェアは
72
72
ごくわずかである(図 22)。カリフォルニア州の一部の生産者は、日本の品種を
日本のブランド名で売っている。
これらの米は、輸出されるか、アジア系の小売店やフードサービス市場に出荷さ
れている。
c
米の輸入動向
米国の米の輸入量は、ここ 20 年ほど増加を続けている。米国において米の国内
市場全体に占める輸入の割合はわずかにすぎないが、それでも 1980 年代半ばの約
4%から 2000 年代半ばには 15%へと増大している。
図 23
米国の米輸入量
600
千トン
500
400
300
200
100
/0
6
05
/0
5
20
中国
04
03
/0
4
/0
3
ベトナム
20
20
02
01
/0
2
/0
1
パキスタン
20
インド
20
タイ
00
20
99
19
19
98
/0
0
/9
9
/9
8
97
19
19
96
/9
7
0
その他
出典:米国農務省
米輸入量増大の最大の要因は、ジャスミンライスやバズマティ米(いずれも長粒
種)などの香り米に対する需要が伸びているためである。この種の米は主に輸入米
であり、ジャスミンライスはタイから、バズマティ米はインドやパキスタンから輸
73
73
入されている。米国ではこのような香り米は栽培されていないので、香り米の輸入
量は今後も伸び続けることが予想される。
米国における輸入米の主流は長粒種であり、中粒種も少しずつシェアを伸ばして
いるが、短粒種の割合はごく少ない。2006 年において米国は約 54 万トンの米を輸
入したが、その 6 割以上が長粒種である。図 24 は、米国の米の輸入量を種類別に
表したものである。
日本からの輸入はごく少量であり、すべて短粒種と中粒種である。日本からの米
輸入量は、2004 年と 2006 年に多かったが、それでも 200 トン台の前半にすぎない。
この 2 年を除けば、日本からの米輸入量は 20~80 トンに過ぎない。
図 24
米国の種類別米輸入量
600
千トン
500
400
300
200
100
0
1997
1998
1999
2000
2001
長粒種
2002
2003
2004
2005
2006
短中粒種
出典: 米国農務省 http://www.fas.usda.gov/ustrade
d
包装米飯の需給動向
米国における包装米飯の市場規模に関する統計はない。今回の調査の対象は、調
理済み米商品のうち、味付けをしていない白米の包装米飯(パックライス)(短粒
種)であり、日系スーパーや日系の輸入業者によると、包装米飯は日本人駐在員(特
に単身赴任者)を中心によく売れており、しかも増加しているとのことであった。
74
74
しかし、日本製の包装米飯は、日系スーパーや韓国系スーパーでは多くみられた
ものの、一般の米系スーパーではほとんど売られていない。
ただし、米国では、調理済みの米商品は、その形態も加工程度もさまざまなもの
が広く流通しており、下の写真は、食料品店で手に入る数多くのブランドのほんの
一部である。
調理済みの米商品は食料品店で簡単に買える
例えば、Uncle Ben’s Ready Rice は、電子レンジ対応の袋に米を入れた商品で
あり、わずか 1 分半で食べられることを売りにしている。プレーン(長粒種)白米
やプレーン玄米など 12 種類のラインナップがある。
また、Near East ブランドのようなインスタントライスミックスもある。水を加
えて火にかけるだけでできる商品である。ライスピラフが 10 種類ほどと、全粒ミ
ックスが 5 種類(玄米に、ひき割り小麦や精白小麦など他の穀物、ハーブなどの香
味野菜、焼いたニンニクやチキンを加えたもの)出ている。
ほとんどのブランドが、何種類かの異なった味つけの商品をそろえている。よく
見られるのが、チェダーチーズとブロッコリー、チキン、ケージャン、テリヤキ(照
り焼き)、ベジタブルなどである。ライスピラフ(米にオルゾーパスタやスパイス
75
75
を加えることも多い)はポピュラーな副菜であり、いろいろな味つけが可能である。
チキンとハーブ、ガーリック、スペイン風、マッシュルーム、レンズマメ、トース
トアーモンド、トマトとバジルなど、様々な種類がある。パッケージには、野菜や
肉、魚介類を加えてメインディッシュにもなるようなピラフを作るためのレシピも
入っている。
南部の料理やメキシコ風のメニューには、いろいろな豆と米を使うものがあるが、
今ではこうした料理が簡単にできる商品も売られている。
これらの商品で、1 食分だけのパッケージはほとんどないが、Uncle Ben’s Ready
Rice(2 食分)は、1 人でメインディッシュとして食べることも、2 人でサイドデ
ィッシュとして食べることもできる。
Whole Foods など非アジア系の店では、Annie Chun’s などの調理済み米製品を使
っている。このブランドには 2 分で食べられる「Sprouted Brown Rice(胚芽玄米)」
と「Sticky White Rice(やわらか白米)」があり(どちらも小売価格は 2.99 ドル)、
「アジアンフード」製品として販売されている。アニー・チャン自身は韓国出身で、
同社のラインナップは、アジア風に味つけした食品を米国の消費者向けに商品化し
たものである。Annie Chun の製品は米国で製造されているが、上記の 2 種類の調
理済み米製品は韓国で製造されている。同社の目標は、「アジアンフードをスパゲ
ティー並みに普及させること」である。
こういった米製品は、健康志向が強く、アジア風の炒め物料理のつけ合わせに便
利な製品を探している非アジア系の消費者に受け入れられやすい。多くの米国人は
普段の料理にほとんど時間をかけないが、これらの製品は、スパゲティーなどの料
理の代わりにもなる。Annie Chun’s では、米国の消費者向けに開発された炒め物
用の各種のソース(中華風、タイ風ピーナッツ、テリヤキなど)も販売している。
e
もちの消費動向
日本人が食べる「もち」は米国の消費者にはなじみがなく、一般のスーパーマー
ケットでは手に入らないが、アジア系の食料品店では売っている。また、面接調査
の回答者によると、ニューヨーク周辺では売上が伸びているという。もっともこれ
は、アジア系(主に日本人)の消費者の間だけの傾向である。
もちを使った商品で徐々に一般消費者向けの市場に進出してきているのが、日本
の「雪見だいふく」に似た「もちアイス」である。ただしこれも、マンゴーやモカ
76
76
などさまざまなフレーバーのアイスを詰めて一般消費者の好みに合うような工夫
を凝らしている。米国産のもちアイスは、アジア系スーパーマーケットのほかに
Trader Joe’s の店でも売っている。特に西海岸では、アジア料理店やアジア系の
フュージョンレストランでデザートとして出されることがある(ただし、「もちア
イス」の「もち」のなかには、コーンスターチを原料としているものも一部ある)。
三 河 屋 の も ち ア イ ス 、 マ ン ゴ ー と コ ー ヒ ー ( 小 売 価 格 6.00 ド ル )
前 田 園 の も ち ア イ ス 、 抹 茶 味 ( 小 売 価 格 4.39 ド ル )
もちを初めて食べた一般消費者の代表的な感想は、ほとんど味がなく、ねばねば
感が風変わりでなじめないというものだ。もちアイスは、いろいろな風味を用意し、
軟らかいもちと冷たいアイスクリームというコントラストをうまく利用して、米国
人にももちの食感に慣れてもらおうとした商品である。
もちアイスと同様に、「バブルティー」も興味深い例である。「バブルティー」
とは「真珠」のようなタピオカがたっぷり入ったフレーバーミルクティーで、もと
もとは台湾のビジネスマンの間で人気だったのが、西海岸から東海岸の主要都市に
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広がり、学生をはじめとする若者の間で人気が沸騰している。もちを使った商品と
いうわけではないが、バブルティーが人気を博するのも、米国人が、米などアジア
特有の粘りけのあるデンプン質の食材に慣れてきたことを示すものだろう。
Grainaissance 社の「焼いてすぐ食べられる」Mochi
(Raison Cinnamon と Plain Organic Brown)
Whole Foods では、カリフォルニアの Grainaissance 社の「Mochi(もち)」と
いう商品を冷蔵部門で販売している。これは、ベジタリアンや完全菜食主義者、乳
製品や小麦、グルテンのアレルギーがある人向けの商品である。Raisin-Cinnamon
(レーズンシナモン)、Sesame-Garlic(ごまガーリック)、Super Seed(シード)、
Chocolate brownie(チョコレート)、Cashew date(カシュー)、 Wheatgrass/Mugwort
(ヨモギ)、Pizza(ピザ)、Original の8種類がある。この商品は粘着性の高い
有機玄米を原料とし、機械でついた後、12 オンス(60 グラム弱)づつとって平ら
に延ばし、フレーバーごとに違う材料を加えたものである。例えば「Super Seed」
の場合は、有機玄米とアサ、カボチャ、アマ、黒ごま、ケシ、ヒマワリの種(シー
ド)、それに海塩を加える。「Pizza」の場合は、米、トマト、ハーブ、スパイス、
パプリカ、塩である。消費者はこのシート状のもちを小さく切って焼いてもよいし、
スープ(カボチャとケシのシードスープなど)に入れてもよい。Grainaissance 社
のパンフレットには、もちは日本の伝統的な食品であるが、この商品はアジアや日
本の食品としてでなく、非常に特殊な少数の消費者向けの健康食品として販売する
と記載されている。
78
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工夫次第で米国の消費者ももちを試してみる気にはなるだろうが、やはり一般消
費者の好みに合う商品を開発することが必要である。一般に、米国人と日本人では
味や食感に対する好みが違うので、ある食品の市場を開拓する際には、このことを
考慮に入れなければならない。
(2)流通実態
a
加工米飯の流通
米国では様々な包装米飯が売られており、それらの包装米飯の流通は他の一般の
食品と同様な流通システムのもとにある。ただし、日本産の包装米飯(パックライ
ス)や包装もちは、日系スーパーを中心とする限られた流通しかしておらず、その
流通範囲もロサンゼルスなどの日系人、駐在日本人の多い地域が主である。
日系スーパーを含む米国の食品流通については、「1(3)米国の食品流通の構造と
動向」参照。
b
スーパーの陳列状況
店舗調査からわかったことをまとめると、一般の米系スーパーで包装米飯を置い
ているところは比較的少なく、日本産のものはロサンゼルスでは一部の店で置いて
あったものの、他の地域では皆無だった。中国系スーパーも同様の傾向であった。
それに対して、韓国系スーパーには包装米飯が多い。日系スーパーの大型店におけ
る品揃えは日本と同等かそれ以上である。
外国産の包装米飯としては、CJ(チェル・ジェダン。韓国最大手の食品メーカー)
や米国産の無菌包装米飯、米国やカナダ、インド産のレトルト包装米飯が見られた。
包装餅については、包装米飯以上に取り扱いが限られており、かろうじて米系の
自然食スーパーが米国製品を扱っている程度であった。日系スーパーの品揃えは日
本と同様に豊富であった。(1オンス=28.35 グラム)
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