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一 論 説 核兵器の非人造性と 核兵器完全廃棄への新たな潮流

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一 論 説 核兵器の非人造性と 核兵器完全廃棄への新たな潮流
核兵器 の非人道性 と核兵器完 全廃棄への薪 たな潮流
亙511
論 説
核兵器 の非人道性 と
核 兵器 完全廃棄 へ の新 た な潮流
本
間
佳
子
1は
じめに
2核
兵 器 の 非 人 道 性 に言 及 し た初 の 覇 法判 断 一 原 爆 裁 判(1963年12肩7H)
3瞬
際 鶏法 裁 料 所 勧 密 的 意 見(1996年7月8鋤
4赤
十 字 圏 際委 員 会(ICRC)総
5NPIr再
6赤
裁 声 明(20!0年4月20日>
検 討 会 議 の最 終 文 書 一
一國 際 入 道 法 に書 及(2010年5月28鴎
十 字 代 表 者 会 議 に お け る ヂ核 兵 器 の 使 矯 禁 止 と金 面 廃 棄 」 を求 め る決 議
(2011年1!月)
7核
兵 器 の 非 入 道 性(人
月,2013年4月,岡
8核
道 的 影 響)に
関 す る 共 同 声 明(2012年5月,岡
兵 器 の人 道 的 影 響 に 関 す る圏 際 会 議(2013年3月,2014年2月,嗣
9結
び
年!0
年10月)
痢2月)
に
1は
じめ に
2015年 は広 島 ・長 崎 に原 爆 が 投 下 され て か ら満70年 の節 目の 年 で あ る。 こ
の節 目に 向 か っ て 核 兵 器 廃 絶 を 冒指 す 様 々 な 運 動 が展 開 され て き た が,特
に,2010年
こ ろ か ら,核 兵 器 の 非 人 道 性 に着 目す る新 た な動 きが 国 際 祉 会 に
1)
お い て活 発 化 し て い る こ とが 注 目 され る。 本 稿 は,核 兵 器 の 非 人 道 性 に着 欝
1)頬
崎 暫
骸
兵 器 を禁 止 す 鯛
へ の 価 憾 創 造 の 万 波 をJ第39籔
koen..-teigen/i儀dex.html17頁o
岩 波 ブ ッ ク レ ッ トNo.906(2014)27翼
「SGIのill」
記 念 提 需(2014)http://www
。 池 繊 大 作
「地 球 革 命
.sokanet.jpfsoktisel〈i/
望52創
価 ロージ ャー
一ナル第8畢
し て 国 際 人 道 法 の 視 点 か ら核 兵 器 の 違 法 性 を 明 ら か に す る 運 動 の 歴 史 を ま と
め る こ と を 目的 と す る 。
2核
兵 器 の 非 人 道 性 に 言 及 し た 初 の 司 法 判 断 一原 爆裁 判(!963鏑2月7霞)
(9)原
爆 判 決 の意 義一5人
の 被 爆 者 に よ る提 訴
広 島 ・長 崎 で の原 爆 投 下 の被 爆 者5名
訟 に お い て,東 京 地 方 裁 判 所 は,そ
で,広
が 国 に対 し提 訴 した損 害 賠 償 請 求 訴
の請 求 を棄 却 した も の の,そ
の判 決 の 中
島 ・長 崎 で の原 爆 投 下 を違 法 と判 断 し た(東 京地裁 昭和38年12月7臼 下民
集!4巻12号2435頁,い わゆ る 「
原 爆判決」)。こ の判 決 は,広
島 ・長 崎 で の 原 爆 投
下 が非 人 道 的 な結 果 を も た ら し た こ と を事 実 と して 認 定 し,さ
らに,そ の 事
実 か ら,同 原 爆 投 下 が,戦 争 法 個 際人道法)上 違 法 と認 定 した 。 核 兵 器 の非
人 道 性 を判 決 で言 及 し た地 球 上 で 初 め て の 司法 判 断 で あ り,世 界 の 中 で,唯
一 の 国 内 司 法 機 関 に よ る判 断 で も あ る。
(勃
原爆判 決の内容
原 爆 判 決 は,「 当事 者 に争 い の な い 事 実 」 と し て,次 の 通 り認 定 し た 。
「昭 和 二 〇 年 八 月 六 日午 前 八 時 一 五 分 頃,米
の操 縦 す る爆 撃 機B29が,米
国 大 統 領H・S・
国陸軍 航空 隊 テイベ ツツ大佐
トル ー マ ンの 命 令 に よ り広
島市 上 空 で ウ ラ ン爆 弾 を投 下 し,同 月 九 日午 前 一 一 時 二 分 頃,米
隊 ス ウエ ー ニ ー 少 佐 の 操 縦 す る爆 撃 機B29が,ト
国陸軍航空
ル ー マ ン の 命 令 に よ り長
崎 市 上 空 で プ ル トニ ウ ム爆 弾 を投 下 し た 。 こ れ らの爆 弾 似 下 瞭 子爆弾」 と
い う。)は 空 中 で さ く裂 し,閃 光 と と も に激 し い爆 風 が 起 り,広 県 市 に お い て
も,長 崎 市 に お い て も,市 内 の ほ とん ど の建 物 は 倒 壊 し,同 時 に い た る とこ
ろ で火 災 が発 生 し,爆 心 地 か ら半 径 約 四 キ ロメ ー トル の範 囲 内 に居 た 人 々 は
老 若 男 女 の 区別 な く一 瞬 に し て殺 害 され た。 そ し て,そ れ 以 外 の地 域 に い た
入 々 も,あ る い は閃 光 に よつ て皮 膚 に火 傷 を負 い,あ
るい は放 射 線 を浴 び て
い わ ゆ る原 爆 症 に罹 つ た もの が 多 数 に及 び,軍 関 係 者 を除 い て広 島 市 に お い
て は 少 く とも,死 者 七 万 人 以 上,負 傷 者 五 万 人 以 上,長 崎 市 に お い て て は死
核兵器の非入道性と核兵器完全廃棄への新たな潮流
望53
者 二 万 人 以 上,負 傷 者 四 万 人 以 上 を 出す に至 つ た 。」
そ し て,原 子 爆 弾 の爆 発 の原 理 と効 果 をサ ミュ エ ル ・グ ラス トン 「
核兵 器
の 効 果 」(米 国原子力委員会刊行 ・邦訳 順 子カハ ン ドブック爆弾篇」)に 基 づ い て 認
定 した 。 さ らに,広
島 ・長 崎 へ の原 爆 投 下 当 時 の 国 際 法 と し て,セ
テ ル ス ブ ル グ宣 言,ヘ
禁 止 宣 言,毒
ー グ(ハ ーグ)陸 戦 法 規,ダ
ガ ス 禁 止 宣 言,毒
ン ト ・ペ
ム ダ ム弾 禁 止 宣 言,空
爆
ガ ス等 の 禁 止 に 関 す る議 定 書 な ど を挙 げ て,
原 子 爆 弾 の 国 際 法 上 の 評 価 を詳 細 に論 じ,以 下 の 通 り結 論 づ け て い る。
「
原 子 爆 弾 に よ る爆 撃 が仮 に軍 事 目標 の み をそ の攻 撃 の 目的 と し た と し て
も,原 子 爆 弾 の巨 大 な 破 壊 力 か ら盲 目爆 撃 と同様 な結 果 を生 ず る も の で あ る
以 上,広
島,長 崎 両 市 に対 す る原 子 爆弾 に よ る爆 撃 は,無 防 守 都 市 に対 す る
無 差 別 爆 撃 と し て,当 時 の 国 際 法 か らみ て,違 法 な戦 闘 行 為 で あ る と解 す る
の が相 当 で あ る。
(中略)
の み な らず,広
島,長 崎 両 市 に対 す る原 子 爆 弾 の 投 下 は,戦 争 に 際 し て不
要 な苦 痛 を与 え る もの 非 人 道 的 な も の は,害 敵 手 段 と して禁 止 され る,と
い
う国 際 法 上 の 原 則 に も違 反 す る と考 え られ る。 佃 畑茂二郎 の鑑定参照。)
(中略)
原 子 爆 弾 の も た らす 苦 痛 は,毒,毒
ガ ス 以 上 の もの と いつ て も過 言 で は な
く,こ の よ うな 残 虐 な爆 弾 を投 下 し た行 為 は,不 必 要 な 苦 痛 を 与 え て は な ら
な い とい う戦 争 法 の基 本 原 則 に違 反 し て い る とい う こ とが で き よ う。」
(3)原
爆 判 決 に別 紙 と して 添 付 され た 鷺本 政 府 の 米 政 府 に対 す る抗 議 文
同 判 決 に は,「 別 紙 」 と し て,広
島 に 対 す る原 爆 投 下 の 直 後 に 日本 政 府 が
米 国政 府 に対 し て 提 出 した抗 議 文 が 添 付 され て い る。 そ の 内 容 は,広 島 市 に
対 す る原 爆 投 下 に つ い て,瞬
時 に し て 多 数 の 市 民 を 殺 傷 し同 市 の 大 半 を潰
滅 せ し め た り∬ 被 害 地 域 は 広 範 囲 に わ た り右 地 域 内 に あ る も の は 交 戦 者,
非 交 戦 者 の 区 別 な く,ま た男 女 老 幼 を 間 わ ず,す
べて爆風及 び輻射熱 に よ り
無 差 別 に殺 傷 せ られ そ の 被 害 範 囲 の 一 般 的 に し て,か
つ 甚 大 の み な らず,
個 々 の 傷 害 状 況 よ りみ る も未 だ 見 ざ る惨 虐 な る も の とい うべ き な 窮
と論
望54翻
価u・ ・
一
一ジ ャ ー ナ ル 第8弩
じ,害 敵 手 段 の選 択 に お い て 不 必 要 の 苦 痛 を与 え るべ き兵 器 は使 用 して は な
ら な い な ど,戦 時 国 際 法,国
る兵 器,投
際 人 道 法 の 根 本 原 則 に言 及 し,「 従 来 の い か な
射 物 に も比 し得 ざ る無 差 別 性 惨 虐 性 を有 す る本 件 爆 弾 を使 用 せ る
は 人 類 文 化 に対 す る新 た な る罪 状 な り」 と し,f即 時 か か る非 人 道 的 兵 器 の
使 用 を放 棄 す べ き こ と を厳 重 に 要 求 す 」 る と し た。
こ の 臼本 政 府 の米 国 政 府 に 対 す る抗 議 文 は,そ
て,お
の 時 期 及 び 内 容 か ら考 え
そ ら く,世 界 で最 初 に原 子 爆 弾 の非 人 道 性 に言 及 し,国 際 人 道 法 違 反
を説 い た も の と思 わ れ る。
3国
(D国
際 司 法 裁 判 所 勧 告 的 意 見(1996年7月8田)
際 司 法 裁 判 所(互C3)に
運珈
よ る 判 断 の 意 義 一 市 民 に よ る 「世 界 法 廷
の結 実
ig90年 代 の 初 め こ ろ ニ ュ ー ジー ラ ン ドの 主 婦 ケ イ ト ・デ ュー ス らの提 唱 か
ら始 ま っ たfWorldCourtProject(世
界法廷運動)」 が,次 第 に世 界 的 な 広 が
りを持 つ 市 民 運 動 とな っ た。 これ は,ケ イ ト ・デ ィ ー ス が,そ の 台 所 で,世
界 の 平 和 に つ い て市 民 グ ル ー プ の 勉 強 会 を行 い,唯
界 に は核 兵 器 が 溢 れ て
い る。 じゃ あ,国 際 司 法裁 判 所 で核 兵 器 が違 法 か ど うか判 断 して も ら い ま し
2)
よ うよ」 と話 し合 っ た こ とが 始 ま りと言 わ れ て い る。 この 運 動 は,1995年 に
原 爆 投 下50年 を迎 え る こ と を意 識 した 運 動 で あ っ た。 そ れ が,国
家 協 会 や 核 戦 争 防 止 国 際 医 師 会 議 等NGOに
か け て,世
界 保 健 機 構(W}{O)と
も広 が り,1993年
際反 核 法 律
か ら1994年 に
国 連 総 会 とが 国 際 司 法 裁 判 所(ICJ)に
対
し,核 兵 器 の 使 用 ・威 嚇 の 国 際 法 上 の 違 法 性 につ い て の 勧 告 的 意 見 を求 め
た。 こ の審 理 に あ た り,前 例 の な い 多 数 の 国 か ら意 見 陳 述 が な され,ま
た,
広 島 市 長 及 び長 崎 市 長 を 含 む多 数 の識 者 が 意 見 陳 述 を行 っ た。 そ して,ICJ
は,WHOか
2)NHK広
らの 要 請 を 適 格 が な い と し て 退 け た が,国
連総 会 の要請 に対
島 核 平 湘 プ ロジ ェ ク ト 骸 兵 器 裁 判 」 霞本 放 送 出 版 協 会(1997)。
核兵器の葬人道性 と核兵器完全廃棄への漸たな潮流ll5"「
し,1996年7月8日,勧
②9CJ勧
告 的 意 見 を出 し て判 断 し た。
告 的意見 の内容
ICJ勧 告 的 意 見(多 数意見)は,核
兵 器 に つ い て 「そ の特 徴 は他 の 兵 器 よ り
も は るか に甚 大 な 被 害 を も た ら し,放 射 能 の影 響 を残 す こ とに あ る。 こ う し
た核 兵 器 の特 性 か ら,核 兵 器 は潜 在 的 に破 滅 的 な力 を持 ち,そ の使 用 に よ る
効 果 は 時 間 的 に も空 間 的 に も限 定 され ず,地
球 上 の全 て の 文 明 と生 態 系 を破
壊 し うる。 放 射 能 は 自然 環 境 に も 広 範 囲 に わ た り影 響 を与 え,未 来 の世 代 に
も深 刻 な危 険 を与 え る 。」 と認 め た。
そ し て,ICJは,勧
告 的 意 見 の主 文 で,「 核 兵 器 の威 嚇 又 は使 用 は,武 力
紛 争 に適 用 され る国 際 法 の 諸 規 制,と
は 違 反 す る 」 と述 べ た。 し か し,そ
くに人 道 法 の原 則 及 び 規 則 に一 般 的 に
れ に加 え て,骸
兵器 の威 嚇又 は使用
が,国 家 の存 亡 そ の も の の か か っ た 自衛 の極 端 な事 情 の 下 で,合 法 で あ る か
違 法 で あ る か を は っ き りと結 論 し え な い」(7対7,裁
判長 の決定投票 による判断)
と述 べ た。
4赤
十 字 国 際 委 員 会(ICRC)総
(DgCRC総
裁声 明の意義
2010年4N20N,赤
裁 は,在
裁 声 明(2elo年4月2eee)
十 字 国 際 委 員 会(ICRC)の
ヤ コ ブ ・ケ レ ンベ ル ガ ー 総
ジ ュ ネ ー ブ各 国 政 府 代 表 団 に対 し て,「 核 兵 器 の 時 代 に終 止 符 を」
と題 す る声 明 を発 表 した 。 こ の声 明 は,同
年5月
の核 拡 散 防 止 条 約(NPT)
再 検 討 会 議 に先 立 っ て発 表 され,核 兵 器 の使 用 が 国 際 人 道 法 に違 反 す る とい
う視 点 を 明 らか に した も の で,そ
の後 の核 兵 器 の 非 人 道 性 に着 目す る潮 流 を
起 こす 先 導 的 役 割 を果 た し た 。
3)
(2)豆CRC総
裁 声 明 の 内容
2010年4月ICRC総
裁 声 明 は,そ
の 冒頭 で,「 核 兵 器 に 関 す る 議 論 は,軍
3)h即s:〃wwwほcrc.・rg/e鷺9/res・u・ces/d・cuments/statement/xxuclear-weap・}・s-s£aζeme獄
宅一200410。htm
歪56翻
価 ロージャーナル第8愚
事 的 及 び政 治 的 考 慮 の み で な され るべ き で は な い]と
し,「 こ の 議 論 の 流 れ
は,究 極 的 に は人 間 そ の も の に関 す る も の で あ り,国 際人 道 法 の基 本 原 則 に
関す る も の で あ る と とも に 人 類 全 体 の 将 来 に 関 す る も の で あ る」 と し た。 次
に,声
明 は,マ ル セ ル ・ジ ュ ノー 博 士(原 爆投下 直後の1945年9月8N広
り,世 界 に初 め て被 爆 の実態 を伝 え た医師,当 時ICRC駐
島に入
臼主席 代 表。 マ ッカー サ
ー 登GQ総 罰令宮 を説得 して!5トン もの 医療 晶 を提供 した。)の 報 告(r広 島 の惨鵜
(1982))を 引用 し て,広
島 ・長 崎 の原 爆 投 下 に よ る被 害 が他 に類 を み な い も
の で あ る こ と,将 来 の い か な る核 兵 器 使 用 も同 様 に対 処 不 能 な破 壊 を も た ら
す で あ ろ うこ と を確 認 した 。 さ ら に,1950年
のICRCの
ス テ ー トメ ン ト(ジ
ュネーブ条約加盟国へ 向け られ たもの)を 引 用 し て,赤 十 字 は,過 去 か ら一 貫 し
て,核 兵 器 は 不 可 避 的 に 「全 滅 」 を も た らす も の で あ る との認 識 に立 ち 「
核
兵 器 の 禁 止 」 を呼 び掛 けて き た と し,赤 十 字 の 核 兵 器 禁 止 を推 進 す る立 場 を
明 確 に し た。 そ し て,「 核 兵 器 の 威 嚇 又 は使 用 は 人 道 法 の 諸 原 則 と諸 規 則 に
一 般 的 に反 す る」 と し た1996年ICJ勧
告 的 意 見 をICRCと
して歓 迎 し,「 核
兵 器 の 使 用 が 国 際 人 道 法 に適 合 す る状 況 を想 像 す る の は 難 し い 」 と表 明 し
た 。 最 後 に,声 明 は,曝
撃 の 物 理 的 衝 撃 は,人 々 の 考 え,不 安,想
像,全
て を絶 す る も の で す 。 そ の道 徳 的 衝 撃 は凄 惨 な も の で す 」 とい うマル セ ル ・
ジ ュ ノー 博 士 の 言 葉 を 引 い て,ド 全 て の 国 家 と国 家 に影 響 力 を持 つ 者 に対 し
て,核 兵 器 の 時 代 を 終 焉 させ る又 と な い好 機 を手 に して い る の だ か ら,強 い
決 意 と緊 急 性 を も っ て これ を掴 む よ う求 め る」 と した 。
5NPT再
(D2010年NPT再
検 討 会 議 の 最 終 文 書 一 国 際 人 道 法 に言 及(2010年5月2謂)
検 討 会 議 最 終 文 書 の意 義
核 拡 散 防 止 条 約(NPT)は,!968年,当
時 の核 兵 器 保 有 国(来 臨 英 燭,フ
ランス,穏 シア,中 閣)に 核 兵 器 保 有 を 限 定 し,そ れ 以 上 核 兵 器 が 拡 散 し な い
よ うに す る こ とを 目的 と し て署 名 に 開 か れ,1970年
発 効 か ら25年 を経 て 無 期 限延 長 が 決 定 され,5年
に発 効 した 。1995年 に は
毎 に再 検 討 会 議 を 開 く こ と
核兵器の非人道性と核兵器完金廃棄への薪たな潮流
が決 定 され た。2000年,2005年
と再 検 討 会 議 が 重 ね られ た が,そ
望57
の不 平 等 性
と核 保 有 国 の核 抑 止 力 依 存 の ゆ え に,同 条 約 第VI条 で約 束 され た核 軍 縮 撤 廃
へ の動 きは な か な か進 展 しな か っ た。
そ の後,2007年
キ ッ シ ン ジ ャー 元 米 国 国 務 長 官 な ど に よ る 骸 兵 器 の ない
世 界 」 へ 向 か うべ き 旨 の 提 案(ウ ォール ス トリー トジャーナル),2008年
国 連 事 務 総 長 の 骸 軍 縮5項
播基 文
目提 案 」,2009年 バ ラ ク ・オ バ マ 米 国 大 統 領 の
「
核 兵 器 の な い世 界 」 へ 向 け た プ ラハ 演 説 な どの 後 押 しを 受 け,2010年5月
28R,全
会 一 致 でNPT再
検 討 会 議 最 終 文 書 が採 択 され た 。
そ こ で,特 に 注 目 され るべ き こ と は,同 再 検 討 会 議 で は,広 島 ・長 崎 の被
爆 者 が 一 般 演 説 を行 い,全 会 一 致 で 採 択 され た最 終 文 書 に ヂ
国際人 道法」 へ
の言 及 が み られ た こ とで あ る。
(2)2◎10年NPT再
20!0年NPT再
検討会議 最終文書 の内容
検 討 会 議 最 終 文 書 で は,第1部
の 「
結 論及 び次 の行動 の提
案 」 の 中 の 「1核 軍 縮 」 「A原 則 及 び 目的 」 の 中 で,「 会 議 は,核 兵 器 の い か
な る使 用 も壊 滅 的 な 人 道 的 結 果 を も た らす こ と に深 い懸 念 を表 明 し,全 て の
国 が い か な る時 も 国 際 人 道 法 を含 む適 用 可 能 な 国 際 法 を遵 守 す る必 要 性 を再
爆)
確 認 す る」(第v項)と され た。 こ の文 言 が 組 み 込 まれ た の は,ス イ ス政 府 の
努 力 に よ る と こ ろ が 大 き か っ た と され て い る。 そ し て,こ れ を受 け て,骸
兵 器 の 撤 廃 」 へ 向 け た 具 体 的 行 動 及 び核 兵 器 禁 止 条 約 に言 及 され た。
6赤
十 字 代表 者 会議 にお け る
「
核 兵 器 の使 用 禁 止 と全 面 廃 棄 」
を 求 め る 決 議(20三 蝉11月)
(9)赤
十 字 代 表 者 会 議 に お け る決 議 の 意 義
2011年11月,187の
赤 十 字 ・赤 新 月 社 か ら な る 国 際 赤 十 字 ・赤 新 月 社 連 盟
に赤 十 宇 国 際 委 員 会(ICRC)を
塵)N王)窪
ンCONF.20!0/50(Vol.1)P.19
加 え た 赤 十 宇 代 表 者 会 議 が 開 か れ,こ
こ で,
958創
価M・一
一
一
ジャーナル第8弩
核 兵 器 の 使 用 禁 止 と全 面 廃 棄 を求 め る決 議 が採 択 され た 。 こ の決 議 は,核 兵
器 に対 す る赤 十 宇 の 見 解 を 未 だ かつ て な い ほ ど明 確 にす る も の で あ り,政 治
的 中 立 を 旨 とす る赤 十 宇 の決 議 で あ っ た こ とか ら,ヂ 人 道 」 の 観 点 か ら核 兵
器 廃 絶 へ 向 か お う とい う潮 流 を起 こ した 。
な お,こ
に東 日本 大 震 災 及 び これ に よ っ て 引 き起 こ され た 福
5)
島 原 発 の 事 故 が,赤 十 字 の議 論 に も大 きな 影 響 を も た ら した と され る 。
(鋤
の年3月11日
赤 十 字 代 表 者 会 議 に お け る決 議 の 内 容
2011年11月 赤 十 字 代 表 者 会 議 に お け る決 議 は,第1に1996年ICJ勧
意 見 を 支 持 し,骸
告的
兵 器 の使 用 が,国 際 人 道 法 の 定 め る理 念 と一 般 的 に 両 立
し な い」 こ と を表 明 し,第2に
核 兵 器 は 眺 し使 用 され た場 合,そ
の結 果 に
対 応 で き る人 道 的 援 助 能 力 が欠 如 し て い る」 こ とを訴 え た。 さ ら に,同 決 議
は,各
国政 府 に対 し,① 入 道 的観 点 か ら,核 兵 器 を 使 用 し な い こ とを 求 め,
② 法 的 拘 束 力 を持 つ 国 際 合 意 に よ っ て,核 兵 器 の使 用 を禁 じ,完 全 な る廃 棄
をす る た め,早 急 に決 定 を伴 う交 渉 を行 い,結 論 を 導 くこ とを 求 め た。
7核
兵 器 の 非 人 道 性(人
(20!2年5月,嗣
(1)核
道 的 影 響)に
年10月,20i3年4月,同
関 す る共 同 声 明
年10月)
兵 器 の 人 道 的 影 響 に関 す る 共 同 声 明 の 意 義
「核 兵 器 の 人 道 的 影 響 に関 す る共 同 声 明jは,2012年5月2日
に第1回
が採 択 され て か ら,す で に4回 発 表 され て い る。 す な わ ち,第1回
年5月2日,2015年NPT再
検 討 会 議 第!回
リア な どヱ6力国連 名 で 発 表 され た。 第2回
は,2012
準 備 委 員 会 に お い て,オ
は,2012年le月22日
紹
ース ト
国連 総 会 第
1委 員 会 に お い て,ス イ ス に よ っ て発 表 され,署 名 国 は35力 国 に増 え た 。 第
3回 は,2013年4月24日,2015年NPT再
検 討 会 議 第2回
てs南
国 の 署 名 を得 た。 そ し て,第4回
5)大
ア フ リカ に よ っ て発 表 され,80力
山啓 都
準備 委員 会 におい
「核 兵 器 及 び原 子 力 災 害 に お け る赤 十 字 の 見 解 に つ い て 」 配本 赤 十 字 豊 霞藩 護 大
学 糸己要8巻!蕩}(20!3)59頁o
核兵器の非人道性と核兵器完全廃棄への新たな潮流
は,2013年10月21日,国
認5嚢
連 総 会 第1委 員 会 に お い て ニ ュー ジ ー ラ ン ドに よ っ
て 発 表 され,臼 本 を含 む 国 連 加 盟 国 の3分
の2に
あ た る125か 国 が 署 名 した 。
これ ら,核 兵 器 の非 人 道 性 に 着 目し た共 同 声 明 は,徐
々 に署 名 国 を拡 げ,
今 や,臼 本 を含 む 多 数 の 「
核 の傘 」 の 下 に あ る 国 も賛 同 し た こ と に よ り,核
兵 器 の非 人 道 性 の 問題 は無 視 で きな い も の と な っ て き た。
(幻
核 兵 器 の 葬 人 道 性 に関 す る共 同声 明 の 内 容
共 同声 明 は,最 初 に,20io年NPT再
検 討 会 議 の最 終 文 書 が 「
核 兵器 のい
か な る 使 用 も壊 滅 的 な人 道 的 結 果 を も た らす こ とへ の深 い 懸 念 」 を 表 明 し
「
全 て の 国 が い か な る時 も 国 際 人 道 法 を含 む 適 用 可 能 な 国 際 法 を遵 守 す る必
要性 」 を再 確 認 し た こ と を歓 迎 す る と した 。 さ らに,赤 十 字 代 表 者 会 議 の 決
議 に言及 し 「
全 滅 」 の兵 器 で あ る核 兵 器 の廃 絶 を訴 え た 。 第2回
回 目 ま で,少
囲か ら第4
しず つ 加 筆 修 正 が加 え られ な が ら,骨 子 は 同 一 の声 明 文 に毎 回
署 名 国 が増 え て ゆ く とい うス タ イ ル を とっ た 。
第4回
目の 共 同 声 明 に は,核 の傘 の 下 に い る国 も参 加 しや す い よ うに若 干
の 配 慮 が され た が,骨 子 は 同 様 で,「 核 兵 器 が ふ た た び,い
か な る状 況 下 に
お い て も使 用 され な い こ と に人 類 の 生 存 が か か っ て い る」 と うた わ れ た 。
8核
兵器 の人道 的 影響 に関 す る国 際会議
(2013年3月,20!4年2月,同
(D核
兵 器 の 人 道 的影 響 に関 す る 国 際 会 議 の 意 義
2013年3月
か ら,す で に3回,核
催 さ れ て い る 。 第1回
れ,127か
年!2月)
兵 器 の人 道 的 影 響 に 関 す る 国 際 会 議 が 開
は,2013年3.月,ノ
ル ウ ェ ー ・オ ス ロ に お い て 行 わ
国 が 参 加 し た。 こ の会 議 は,核 兵 器 の 人 道 的 影 響 を 申 心 テ ー マ に
して核 兵 器 の 問題 を と ら え な おす こ と を 目的 と し て 開催 され た世 界 で 最 初 の
会 議 で あ り,そ の意 味 は大 き い。 こ の会 議 をNPTの
イ コ ッ トし た 。 ノル ウェ ー 政 府 は,こ
五 核 保 有 国 は集 団 で ボ
の会 議 につ い て,あ
くま で核 兵 器 使 用
の影 響 を科 学 的 に検 証 す る会 議 で あ る と強 調 し た が,核 保 有 国 は,非 人 道 性
望6の
創価・一ジヤーナル第8号
の議 論 が,核 兵 器 禁 止 条 約 へ つ な が っ て い く とみ て脅 威 を感 じ た と評 され て
6)
い る。 米 国 は,オ ス ロ会 議 が,既 存 の 現 実 的 な 「ス テ ッ プ ・バ イ ・ス テ ッ
プ」 ア プ ロー チ に よ る核 軍 縮 努 力 か らの 脱 線 に つ な が る との 懸 念 を表 明 し,
ま た,英 国,フ
ラ ン ス も,非 人 道 性 の 議 論 や 核 兵 器 禁 止 条 約 の推 進 は,既 存
の現 実 的 な ア ブ 獄一 チ の エ ネ ル ギ ー をそ ぐも の だ と批 判 した 。
第2回
は,2014年2月13日
行 わ れ,5核
第3回
か ら14日 に か け て,メ
キ シrm・ ナ ジ ャ リ ッ1・で
保 有 国 は,こ の 会 議 に も出 席 しな か っ た 。
は,2014年12月8日
か ら9Hに
か け て,オ
ー ス ト リア ・ウ ■一 ンで
開 催 され た。 これ に は そ れ ま で 出席 を拒 ん で い た 核 保 有 国 の うち米 国 と英 国
が 出席 し,核 保 有 国 を含 む グ ロー バ ル な 潮 流 を作 る意 味 で 大 き な ス テ ップ と
なった。
(渤
核 兵 器 の 人 道 的影 響 に関 す る 国 際 会 議 の 内 容
第1回
目の ノル ウ ェ ー ・オ スXX会 議 で は,日 本 赤 十 字 社 長 崎 原 爆 病 院 の朝
長 万 左 男 院 長 が,原 爆 投 下 に係 る放 射 線 に よ る健 康 に対 す る影 響 が癌 や 白血
病 な ど長 期 に亘 り今 日ま で及 ん で い る こ と を 証 言 し た 。 ま た,こ
は,も
の会 議 で
し今 核 兵 器 が 使 わ れ た ら どの よ うな影 響 が あ る か,地 球 規 模 の 食 糧 危
機 に つ な が る こ とな どが 熱 心 に議 論 され た
メ キ シ コ ・ナ ジ ャ リ ッ トで 行 わ れ た 第2回 会 議 で は,11i寺 間 以 上 の 「
被爆
証 言 セ ッ シ 滋 ン」 が 持 た れ,広
島 で 被 爆 し たサ ー 雛一 節 子 氏(カ ナダ在住)や
長 崎 で被 爆 し た 田 中煕 巳 氏 な ど4名 の 被 爆 者 と被 爆3世
の高校生 平和大使 が
証 言 を し た。 フ ロ ア か らは,マ ー シ ャル 諸 島代 表 が 核 実 験 被 害 者 につ い て証
7)
言 し,会 場 か ら核 兵 器 禁 止 に向 け た行 動 を求 め る声 が 多 数 上 が っ た 。 終 了 に
あ た り,議 長 は,「 核 兵 器 の 非 人 道 性 の 議 論 は,法
的 拘 束 力 の あ る文 書 に よ
る新 し い 国 際 規 範 へ と進 ま な け れ ば な ら な いjfそ
の た め の外 交 プ ロセ ス を
始 め る と きが 来 た」 「広 島 ・長 崎70周 年 は そ の た め の 一 里 塚 で あ る。 も はや
6)脅{∫
課葛aノ 申騰(2014)42頁0
7)前
掲
励ノ珂;i翁=(2014)32頁o
核 兵器の非入道性 と核兵器完 全廃棄への薪 たな潮流
望6選
引 き返 す こ とは で き な い 」 と総 括 した 。
第3回
目 の ウ ィー ン会 議 で は,セ
ッシvaンla「 核 兵 器 爆 発 の 影 響 」,セ ッ
シ ョンlb「 核 実 験 の影 響 」,セ ッ シ ョ ン2倣
意 又 は偶 発 的 な核 兵 器 使 用 の
リス ク要 因 」,セ ッ シ ョ ン3「 核 兵 器 使 用 等 に 関 す る シ ナ リオ,課 題 お よ び
対 処 能 力 」,セ ッシsン4「
国 際 規 範 と核 兵 器 の非 人 道 的 影 響 の 鳥 轍 図 」 を
テ ー マ に議 論 され た の ち 一 般 討 論 が な され た 。 こ の 中 で,サ ー ロー 節 子 氏及
8)
び 田 中 煕 巳 氏 が被 爆 体 験 を証 言 した 。 議 長 国 オ ー ス ト リア政 府 の ア レク サ ン
ダ ー ・ク レ メ ン ト軍 縮 部 長 は,そ の 総 括 の 中 で,「 核 兵 器 爆 発 の影 響 は,そ
の原 因 の如 何 に か か わ らず,国 境 で 制 御 し得 ず,地
模 の 結 末 を 生 じ得 る も の で あ る。 そ れ は,…
域 的,ひ
い て は地 球 的 規
… 仲 略)… … 人 類 の生 存 さ え
脅 か し う る。」 「
核 兵 器 爆 発 が もた らす 人 道 上 の影 響 の 範 囲,規 模,相
互 関係
は 壊 滅 的 な も の で あ り,そ れ は 一 般 的 に 理 解 され て い る も の よ りも複 雑 で あ
る。 これ らの 結 末 は 大 規 模 で あ り,不 可 逆 的 な も の に な り う る。戸 核 兵 器 が
存 在 す る限 り,核 兵 器 爆 発 の 可 能 性 が 消 え る こ とは な い 。 た と え可 能 性 は低
い とみ られ る と して も,核 兵 器 爆 発 の もた らす 壊 滅 的 結 末 を考 えれ ば,そ
の
危 険 性 は容 認 しが た い も の で あ る。(後 略)∬ … …(前 略)… ・
曾
骸 兵 器爆発 の
危 険 性 を 回 避 す る た め の 唯 一 の保 証 は 核 兵 器 の 完 全 廃 棄(t・£aleliminati・1・
・f
nuc}earweapons)に
ほ か な らな い 。」f… …(前 略)… … 国 際 人 道 法 に照 ら し て
こ れ ら の 兵 器(核 兵器)の 使 用 が 可 能 か 否 か につ い て は,核 兵 器 の 人 道 上 の
影 響 を め ぐっ て過 去2年
に出 され て き た新 た な 証 拠 に よ り,さ らな る疑 間 が
突 きつ け られ て い る。 人 間 性 を打 ち の め し,今
と な っ て は誰 に とっ て も受 け
入 れ が た い も の で あ る拷 問 の ケ ー ス と 同 じ く,核 兵 器 使 用 に よ る惨 禍 は法 的
問題 に留 ま らず,道 徳 的観 点 か らの 評 価 を必 要 とす る もの で あ る。」 吠 多 数
(the朗ority)の
政 府 代 表 が,核 兵 器 の最 終 的 な 廃 絶 は,核 兵 器 禁 止 条 約 を含
む,合 意 され た 法 的 枠 組 み に お い て 追 求 され るべ き で あ る こ と を強 調 した 。」
8)外
務 省
「第3園
page24_OGO380.html
核 兵 器 の 人 道 的 影 響 に 蘭 す る 会 議jhttp://www.mofa.gG.jp/mofal/dns/ac..d/
ff62翻
億 ロ ー ジivV+..ナ ル 第8暑
「多 くの 政 府 代 表 は,全
て に とっ て の安 全 保 障 の必 要 性 を強 調 し,核 兵 器 の
完 全 廃 棄 と禁 止 こ そ が,こ の 全 て に と っ て の 安 全 を保 障 す る 唯 一 の 方 法 で あ
9>
る と強 調 し た 。」 等 と述 べ た 。
9結
び
に
2015年 は,原 爆 投 下 か ら70年 の節 目で あ る と と も に,NPT再
検討 会議 の
年 で も あ る 。20XO年 以 降,赤 十 字 や ス イ ス な どの り一 ダー シ ッ プ の も とで,
核 兵 器 の 人 道 上 の影 響(humanitarianc・nsequence)・ 非 人 道 性 を具 体 的 に確 認
す る潮 流 が 高 ま り,核 兵 器 の対 処 不 能 な 不 可 逆 的 壊 滅 的 影 響 が 広 く認 識 され
る よ うに な っ た。 そ して,核 兵 器 の使 用 ・威 嚇 が 国 際 人 道 法違 反 で あ る と の
共 通 認 識 が 醸 成 さ れ つ つ あ る。 国 際 社 会 の 中 で,核
兵 器 の 完 全 廃 棄(t・tal
elimixxati・n)と
非 合 法 化 へ 向 か う合 意 が少 しず つ 形 成 され つ つ あ る とい え る。
他 方,核
兵 器 保 有 国 や 日本 を含 む 核 の 傘 の 下 に あ る政 府 な ど の 中 に は,「 核
兵 器 の完 全 廃 棄 」 を避 け て,核 兵 器 と共 存 し よ う とい う動 き も根 強 くあ り,
両 者 が せ め ぎ合 っ て い る の が 現 状 で あ る。NPTに
お け る 「ス テ ッ プ ・バ
イ ・ス テ ッ プ ほ の 核 軍 縮 を強 調 し,安 全 管 理 や 予 防 ・救 援 を 強 調 す る発 言
は,実 は,最 終 的 な 核 兵 器 全 廃 を避 け よ う とい う動 き で あ る場 合 が 多 く,注
IG)
意 を 要 す る。 この 議 論 の状 況 は原 子 力 発 電 を全 廃 す る の か,安 全 管 理 を徹 底
し て再 稼 働 し よ うとす る の か の議 論 と非 常 に よ く似 て い る。
筆 者 は,「 核 兵 器 の 完 全 廃 棄 が核 爆 発 の危 険 性 を回 避 し,人 類 滅 亡 の 危 機
を 回避 す る た め の 唯 一 の 方 法 で あ る 」 とい う立 場 に賛 同 す る も の で あ る。 そ
9)"ViennaConferenceofttheIrminmanitarianIml)actofNuclearWeapons/8togDecember
20!4/Reporta1/(豊S鷲mmaryofFindingsoftheCoxxfereltce/Presentedundeertheso圭e
responsibilityofAttstria"及
(RECNA)<暫
び そ のYl本
語 訳(議
長 総 括
長 崎 大 学 核 兵 器 廃 絶 研 究 セ ン タ ー一
定 訳>
http:〃www.recna.nagasakFu.ac.jp/datebase/documaent/no7/
10)ノil崎
哲
「検 証:核
の 非 人 道 性 ウ ィ ー一 ン 会 議 で の 佐 野 発 雷 」(2014)}搬ps:〃kawasakiaklra,
fiies.wordpress.com/20M/03/201412!8
_sa1儀o。βtateme厩Lpdぞ
核兵器 の非入道性 と核兵器完全廃棄 への新たな潮流Z謬3
して,同 様 に,原 子 力 発 電 も全 廃 す る べ きで あ る と考 え て い る。 日本 が,福
島 に お い て原 発 の安 全 神 話 の崩 壊 を体 験 し な が らな お 原 発 を温 存 し よ う とす
るの は,核 兵 器 製 造 へ の 可 能 性 を温 存 し よ う とす る も の に ほ か な らい な い と
認 識 し て い る。 こ の 両者 が深 く結 び つ い て い る こ と を看 過 して は な らな い 。
核 兵 器 の 非 人 道 性 に関 す る 共 同 声 明 に お い て繰 り返 し強 調 され て い る よ う
に,民 衆 か ら の 声 ・市 民 社 会(civilS・ciety)の イ ニ シ ャ チ ブ に よ っ て,ま
ず
核 兵 器 の使 用 を禁 じ,核 兵 器 の廃 絶 に 向 けて 具 体 的 な法 的 拘 東 力 の あ る国 際
法 規 の成 立 を成 し遂 げ た い。
以上
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