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銀行監督当局と 銀行の外部監査人との関係

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銀行監督当局と 銀行の外部監査人との関係
IFAC
International Auditing Practices Statement
International
1004
2001年12月公表
日本公認会計士協会国際委員会訳
Auditing
Practices
Committee
銀行監督当局と
銀行の外部監査人との関係
Issued by the
International
Federation of
Accountants
1
IAPS1004
この国際会計士連盟(IFAC)の国際監査実務ステートメント(IAPS)は国際監査実務委員
会(IAPS)により作成された。2001 年 12 月に承認されている。
国際監査基準の序文は本国際監査実務ステートメントの目的及び権威を規定している。
承認された IAPC の IAPS の正文は英文で公表されたものである。
Copyright © December 2001 by the International Federation of Accountants. All
rights reserved. No part of this publication may be reproduced, stored in a retrieval
system, or transmitted in any form or by any means, electronic, mechanical,
photocopying, recording, or otherwise, without the prior written permission of the
International Federation of Accountants.
International Federation of Accountants
535 Fifth Avenue, 26th Floor
New York, New York 10017, USA
Web site: http://www.ifac.org
IFAC COPYRIGHT AND ACKNOWLEDGEMENT FOR TRANSLATIONS:
Copyright © International Federation of Accountants
All standards, guidelines, discussion papers and other IFAC documents are the copyright of the
International Federation of Accountants (IFAC), 535 Fifth Avenue, 26th Floor, New York, New York,
10017, USA; tel: 1-212/286-9344, fax: 1-212/286.9570, Internet http://www.ifac.org
All rights reserved. No part of this publication may be reproduced, stored in a retrieval system, or
transmitted, in any form or by any means, electronic, mechanical, photocopying, recording or otherwise,
without the prior written permission of IFAC.
The IFAC pronouncements in this volume have been translated into Japanese by/under the supervision of
The Japanese Institute of Certified Public Accountants and are reproduced with the permission of IFAC.
The approved text of all IFAC documents is that published by IFAC in the English language.
翻訳に関する国際会計士連盟(IFAC)のコピーライト及び承認について:
Copyright © International Federation of Accountants
全ての基準、ガイドライン、ディスカッション・ペーパー及びその他の IFAC の文書に、IFAC
はコピーライトを持つ。International Federation of Accountants(IFAC), 535 Fifth Avenue,
26th Floor, New York, New York 10017, USA; tel: 1-212/286-9344, fax: 1-212/286.9570,
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全ての権利は IFAC が保有する。IFAC の書面による事前許可なしに、本出版物のいかなる部
分も、電子的、機械的、写真複製、録音、その他のいかなる形態又はいかなる方法によっても
複製し、検索システムで保存し、又は転送することは認められない。
IFAC の本公表物は、日本公認会計士協会国際委員会により日本語に翻訳されたものであり、
IFAC の許可の下に複製されている。承認された全ての IFAC の文書の正文は、IFAC により英
文で公表されるものである。
IAPS1004
2
国 際 会 計 士 連 盟 ( IFAC) の 国 際 監 査 実 務 委 員 会 ( IAPC ) は 、 監 査 人
が 国 際 監 査 基 準 ( ISA ) を 実 施 す る 際 の 実 務 的 支 援 を 提 供 す る た め 、 あ
るいは健全な実務を促進するために、国際監査実務ステートメント
( IAPS)を 公 表 し て い る 。本 ス テ ー ト メ ン ト は 、ISA の 権 威 を 有 す る も
のではない。
本 IAPS は 、銀 行 監 督 当 局 の バ ー ゼ ル 委 員 会 ∗( バ ー ゼ ル 委 員 会 )と の
提 携 の も と 提 供 さ れ て い る 。 本 ス テ ー ト メ ン ト は IAPC 及 び バ ー ゼ ル 委
員 会 に よ り 公 表 さ れ て い る 。本 ス テ ー ト メ ン ト は 2001 年 10 月 1 日 既 存
の ISA に 基 づ い て い る 。
銀 行 は 経 済 の 世 界 及 び に お い て 重 要 な 役 割 を 担 っ て お り 、継 続 的 な 力
強 さ 及 び 銀 行 シ ス テ ム の 安 定 は 公 共 の 利 益 の 問 題 で あ る 。銀 行 監 督 当 局
と 外 部 監 査 人 の 分 割 さ れ た 役 割 は こ の 点 に お い て 重 要 で あ る 。銀 行 業 務
の複雑化は、相互理解、及び適切な銀行監督当局と、外部監査人とのコ
ミュニケーションの増加をより重要なものとしている。
本 ス テ ー ト メ ン ト の 目 的 は 、銀 行 の 監 査 人 と 監 督 当 局 と の 関 係 に お い
て 、ど の よ う に し て 相 互 の 利 用 を 強 化 で き る の か に つ い て の 情 報 及 び ガ
イ ダ ン ス を 提 供 す る こ と で あ り 、こ れ は 、バ ー ゼ ル 委 員 会 の 銀 行 監 督 へ
影響を与える主要原則に含まれている。
しかしながら、この関係は国によって、さまざまな違いがあり、全て
の 国 で 完 全 に 適 用 さ れ る わ け で は な い 。 IAPC 及 び バ ー ゼ ル 委 員 会 は 、
銀 行 監 督 当 局 と 外 部 監 査 人 の 、そ の 関 係 に つ い て 、よ り 密 接 な 又 は 模 索
し て い る 多 く の 国 に お い て 、期 待 さ れ る 役 割 に つ い て の 有 用 な ガ イ ダ ン
スを提供できることを希望している。
IFAC の 公 的 部 門 委 員 会 が 公 表 し た 「 公 的 部 門 の 考 慮 事 項 」 は 、 国 際
監 査 実 務 ス テ ー ト メ ン ト の 末 尾 に 記 載 さ れ て い る 。「 公 的 部 門 の 考 慮 事
項 」が 追 加 さ れ て い な い 場 合 に は 、そ の 国 際 監 査 実 務 ス テ ー ト メ ン ト は 、
すべての重要な点において公的部門に適用される。
∗
銀行監督のバーゼル委員会は、1975 年に 10 ヶ国の中央銀行統治者により銀行監督機関の委員
会として設立された。ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ルクセンブルグ、
オランダ、スエーデン、スイス、英国、米国の銀行監督機関の上級代表及び中央銀行からなる。
委員会は通常、常設の事務局があるバーゼルの国際決済銀行において行われる。
3
IAPS1004
銀行監督当局と銀行の外部監査人との関係
目次
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
序 説
銀行の取締役会と経営者との関係
銀行の外部監査人の役割
銀行監督当局の役割
銀行監督当局と外部監査人との関係
外部監査人の監督プロセスに対する貢献の追加的要求
銀行監督当局と会計士との継続的対話の必要性
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4
パラグラフ
1−7
8−13
14−27
28−45
46−55
56−67
68−70
序
説
1.銀行は、経済のなかで中心的な役割を果たしている。銀行は社会の貯蓄を維持し、財
貨及びサービスのための支払手段を提供し、また、商取引の発展の資金を提供してい
る。これらの機能を安全かつ効率的に果たすために、個々の銀行は、社会及びそれら
が取引する者の信認を集めなければならない。したがって、銀行制度の安定性は、国
内的にも国際的にも公共全般の利益の問題と認識されるようになってきた。この公共
の利益は、ほとんどの国の銀行が、他のほとんどの営利企業と異なり、中央銀行又は
特定の公的機関による慎重な監督を受けるという点で反映されている。
2.銀行の財務諸表はまた、外部監査人による監査も受けている。外部監査人は、独立性、
客観性、職業専門家としての適格性及び正当な注意、並びに適切な計画と監督を要求
する基準を含む、適切な倫理及び監査の基準に準拠して監査を実施する。監査人の意
見は財務諸表に信頼性を与え、銀行制度への信認を促進する。
3.銀行業のビジネスが国内的にも国際的にも複雑になるにつれて、銀行監督当局及び外
部監査人が果すべき役割への要求はますます高まりつつある。多くの点で、銀行監督
当局及び外部監査人は同様の難題に直面し、そして、ますますその役割は互いに補い
合うものであると認識されている。銀行監督当局は外部監査人の作業から利益を得る
だけでなく、それらの作業がその監督当局の役割の実践に貢献する場合には追加的な
作業を要求することがある。同時に、外部監査人もまた、その役割を果たす際に、そ
の責任をより有効に果たすうえで役立つ情報を銀行監督当局に期待する。
4.国際監査実務委員会とバーゼル銀行委員会は、それぞれの役割と責任についてのより
深い理解、そして適切な場合には、双方の意思疎通が銀行の財務諸表の監査及び監督
の有効性を向上させ、両方の専門領域の利益となるとの見解を共有している。
5.それぞれの国における銀行の取締役会1及び経営者、銀行の外部監査人、並びに監督当
局の役割と責任は、法、慣習に由来し(帰因)
、そして外部監査人に関しては職業専門
家としての実務に由来する。本ステートメントは、これらの役割又は責任の正当性を
問題にし、あるいは変えようとするものではない。むしろ、本ステートメントは、銀
行の取締役会及び経営者、銀行の外部監査人、並びに監督当局の役割の性質について
のよりよい理解を提供しようとするものである。なぜならば、そのような役割につい
ての誤認は、一方の他方の作業に対する不適切な依拠という結果になるからである。
本ステートメントは、起こり得る誤認を取り除き、それぞれが、他者によって実施さ
れる作業をどのようにより効果的に利用するかを提唱しようとしている。したがって、
本ステートメントの内容は以下のとおりである。
1
「取締役会」及び「経営者」の概念は、法的な構成体を指すためにではなく、むしろ銀行内の
二つの意思決定機能を呼ぶために用いられている。ISA の用語解説では、経営者は、役員及び上
級の経営機能を果たすその他の者から成る。バーゼル・コア原則は、銀行の統治責任者の機能を
説明するために、取締役会の機能と呼ぶ。本文書で述べられているその原則は、銀行が本拠を置
く国の企業統治機構に従って適用されることが予定されている。1999 年 9 月に公表されたバー
ゼル銀行委員会の文書である「銀行組織体のための企業統治の強化」を参照のこと。
5
IAPS1004
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
取締役会と経営者の主たる責任を述べ(第 8−13 項)、
外部監査人の役割の基本的な特質を検証し(第 14−27 項)、
銀行監督当局の役割の基本的な特質を検証し(第 28−45 項)、
銀行監督当局と銀行の外部監査人との間の関係を検証し(第 46−55 項)、そして
外部監査人と職業会計士が監督プロセスに貢献できる付加的な方法について述べ
る(第 56−70 項)。
6.1997 年 9 月、バーゼル銀行委員会は、バーゼル・コア・プリンシプルとして知られて
いる実効的な銀行監督のためのコアとなる諸原則を公表した。バーゼル・コア・プリ
ンシプル(世界銀行や国際通貨基金のような組織体による国の評価において用いられ
る)は、国際的にそしてすべての国における有効な監督システムのための基本的な参
考文献としての役割を果たそうとするものである。本ステートメントは、バーゼル・
コア原則を考慮して作成されている。
7.本ステートメントは、国の制度及び規制上の枠組み、特に会計基準、監督の技術、並
びに国による外部監査人が現在銀行監督当局の要請によって実施している作業の重要
な相違を十分認識して作成されている。国によっては、銀行監督当局と外部監査人は、
本ステートメントに示されているよりも緊密な関係を持っている。本ステートメント
で提唱されている協定は、現在の関係に取って代わるものではない。本ステートメン
トは明らかにあるいくつかの国の状況を他の国よりも直接的に取り扱っているが、本
ステートメントは規範的であることは意図されていない一方で、本ステートメントで
述べられている指針はすべての状況にとって適切になることが望まれる。
銀行の取締役会と経営者との責任
8.銀行のビジネスの遂行に関する主たる責任は、取締役会及びそれによって任命される
経営者に与えられている。この責任は、なかでも以下のことを確実にすることを含ん
でいる。
・
・
銀行の職務を委ねられた者は十分な専門的技術と誠実性を持っていること、並び
に主要な地位に経験のある職員がいること。
それぞれの活動に関連した適切な方針、実務及び手続が確立され、遵守されてい
ること。それには以下が含まれる。
−高度の倫理及び専門の基準の推進
−すべての重要なリスクを正確に識別・測定し、そしてそれらのリスクを適切に
監視・統制するシステム
−適切な内部統制、組織構造及び会計手続
−資産の質の評価並びにその適切な認識及び測定
−銀行が意図的又は意図的ではなく犯罪に利用されることを防ぐ、「顧客を知れ」
というルール
−銀行の規定された業務遂行、情報及び法令遵守という目標を達成することを目
的とした、適切な統制環境の採用
−内部監査機能による遵守性の検査及び内部統制の有効性の評価
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6
・
・
・
・
適切な経営情報システムが確立されていること。
銀行は適切なリスク管理の方針と手続を持っていること。
支払能力及び流動性に関する指令を含む、法令による指令が守られていること。
株主だけでなく、預金者及び他の債権者の利益が適切に保護されていること。
9.経営者は、適切な財務報告の枠組みに準拠して財務諸表を作成すること、並びに財務
諸表の裏付けとなるのに十分な文書の維持を規定する会計手続を確立することに責任
がある。この責任は、財務諸表を監査し、それに対して報告する外部監査人が財務諸
表に重要な影響を与える可能性のあるすべての必要な情報に完全で妨げのないアクセ
スをし、また提供されることを確実にすることを含んでいる2。経営者はまた、監督機
関に対して、そのような機関が法令によって入手する権限が与えられているすべての
情報を提供する責任もある。
10.多くの国では、内部統制の適切なシステムの存在と維持を確実にする職務を遂行する
取締役会に生ずる実務上の困難な問題に対処するために、監査委員会が設置されてい
る。さらに、そのような委員会は、内部統制システムと内部監査機能の両方を強化す
る。監査委員会の有効性を強化するために、内部監査人及び外部監査人は監査委員会
の会議に出席することが認められるか、あるいは奨励されるべきである。監査委員会
の内部監査人及び外部監査人との定期的な会議は、外部監査人の独立性及び内部監査
人の信頼性を強化するのに役立ち、そして監査委員会が企業統治を強化することに関
して不可欠な役割を果たすのに役立つ。国によっては、法令によってそのような会議
が開かれなければならないと規定している。
11.取締役会又は適用される法令によって要求される場合は、経営者はその業務の規模と
性質にとって適切な、銀行内の常設の内部監査機能の確立と有効な運用に責任を負う。
この機能は、内部統制システムの継続的な監視の一部である。なぜならば、その機能
は、銀行の確立された方針と手続の適切性及びその遵守の評価、銀行のリスク管理及
び統制手続の適切性、有効性及び持続可能性に関する保証、並びにその方針と手続を
遵守することに日々の責任を負う者から独立したインフラストラクチャーを提供する
からである。その義務と責任を果たす際に、経営者は、継続的で適切な内部監査機能
があることを確実にするためにすべての適切な処置を講じければならない。
12.内部監査機能は、十分に有効であるためには、それが監査又は検証する組織の活動か
ら独立していなければならず、また日常の内部統制プロセスからも独立していなけれ
ばならない。すべての活動並びに部門、子会社又は銀行業組織体の他の構成部分は、
内部監査機能の検証の範囲に入らなければならない。それぞれの内部監査人及び内部
監査機能全体の職業専門家としての適格性は、その機能の適切な遂行にとって不可欠
である。したがって、内部監査機能は、業務の責任のない、適切な技能と技術的的確
性を持った職員によって適切に配置がされていなければならない。内部監査機能は、
内部監査の遂行及びリスク管理システム並びに内部監査機能の目的の達成に関して、
2
国によっては、外国銀行の支店は連結会計方針又はその国の規則に準拠して作成された(省略
された財務諸表を含む)財務情報を提供することだけが要求されている。この財務情報は、外部
監査の要求を受けることもあれば、受けないこともある。本ステートメントの指針はまた、その
ような外部監査に対して適切で実行可能な方法で適用できる。
7
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定期的に取締役会及び経営者に報告しなければならない。経営者は、内部監査機能の
勧告の検討、そして適切な場合には勧告の実践を確実にする手続を確立し、承認しな
ければならない。
13.取締役会及び経営者の責任は、銀行監督当局による銀行の監督のための制度あるいは
銀行の財務諸表が外部監査人によって監査されるからといって、決して小さくなるこ
とはない。
銀行の外部監査人の役割
14.外部監査人による銀行の財務諸表の監査の目的は、外部監査人が、銀行の財務諸表が
すべての重要な点で特定された財務報告の枠組みに準拠して作成されているかどうか
について意見を表明することを可能にすることである。財務諸表は、通常その本店の
ある国の財務報告の枠組みに準拠し3、そしてその国の規制当局によって定められた関
係規則に準拠して作成されてきたであろう。財務報告の枠組みは国によって異なり、
どの国でも、銀行のための財務報告制度は他の営利企業の制度と異なっているかもし
れない。したがって、財務諸表に対する監査人の意見は、適用されるその国の枠組み
と規則に基づいて表明されるであろう。さまざまな枠組み及び規則に従って作成され
た財務諸表は、適用される国内の要求事項に準拠しているが、相当に異なることがあ
り得る。このために、ISA700「財務諸表の監査報告書」は、その財務報告の枠組みが
国際会計基準ではない場合には、監査人に財務諸表を作成するために用いられた財務
報告の枠組みの出所国を特定することを要求している。
15.外部監査人の報告書は、業務契約の状況によって要求されているように、適切な宛先、
通常は株主又は取締役会のどちらか宛てである。しかし、報告書は、預金者、他の債
権者及び監督当局のような、多くの他の当事者にとって利用可能であることがある。
監査人の意見は財務諸表の信頼性を確立するのに役立つ。しかし、監査人の意見は、
銀行の将来の生存能力に関する保証、あるいは経営者による銀行業務の効率性と有効
性についての意見を提供するものと解釈されてはならない。なぜならば、それらは監
査の目的ではないからである。
16.監査人は、財務諸表に重要な虚偽表示がある場合に不適切な監査意見を表明するリス
クを許容できる低い水準に抑えるために監査手続を立案する。監査人は、発生する重
要な虚偽表示の固有のリスク(固有リスク)並びに事業体の会計及び内部統制システ
ムが重要な虚偽表示を防止するか、又は適時に発見し是正しないリスク(統制リスク)
を評価する。監査人は、重要な虚偽表示を防止するか、又は適時に発見し是正しそう
な統制手続を特定し、統制リスクのより低い評価を裏付ける統制手続のテストを実施
しないならば、統制リスクは高いと評価しなければならない。固有リスクと統制リス
クの評価に基づいて、監査人は、全体としての監査リスクを許容できる低い水準に抑
えるための実証手続を実施する。
17.監査人はどのように財務諸表が重要な虚偽表示となるか検討し、そして不正な財務報
3
国によっては、国際会計基準審議会によって公表されているか採用されている基準のような、
国際的に受け入れられている会計基準に準拠した報告もまた認められている。
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8
告又は資産の不正流用の可能性を示す、不正リスク要因があるかどうか検討する。監
査人は、財務諸表全体にとって重要な不正及び誤謬から生じる虚偽表示が発見されな
いリスクを許容できる水準に抑えるように監査手続を立案する。ISA240「財務諸表の
監査における不正及び誤謬を検討する監査人の責任」は、その存在によって、監査人
に不正が存在している可能性に気づかせるかもしれない不正リスク要因を列挙してい
る。国によっては、監査人は、不正の証拠が存在していると判定した場合には、銀行
監督当局にその情報を開示することが要求されている。
18.銀行の財務諸表の監査を実施する際に、外部監査人は、ほとんどの他の営利企業と一
般的に区別される以下の特徴を持っていることがわかる。監査人は、固有リスクの評
価においてその特徴を考慮する。
・ 銀行は、その物理的な安全が振替及び保管されている間守られなければならない現金
や流通証券を含む、多額の貨幣項目を預かっている。銀行はまた、電子的形式で容易
に振替えられる流通証券やその他の資産を預かり、管理している。それらの項目の流
動性という特徴によって、銀行は流用や不正にさらされる。したがって、銀行は、正
式な業務手続、個々の一任裁量に関して適切に定義された限度、及び内部統制の厳重
なシステムを確立する必要がある。
・ 銀行は、しばしばある管轄区で開始され、別の管轄区で記録され、さらにその他の管
轄区で管理される取引を行う。
・ 銀行は、非常に高いレバレッジ(すなわち、資本の対総資産資本比率が低い)で経営
を行う。そのことによって、銀行は不利な経済的事象の影響を受けやすくなり、倒産
リスクが高くなる。
・ 銀行は、価値が急速に変化し、かつその価値がしばしば決定するのが困難な資産を持
っている。その結果、資産価値の比較的小さい減少がその資本に対して、そして潜在
的にその規制上の支払能力に重要な影響を与えることがある。
・ 銀行は、一般的に短期の預金(付保されているか又はされていないかのどちらか)か
らその資金を大量に得る。銀行の支払能力に対する預金者の信認を失うと、直ちに流
動性の危機という結果になり得る。
・ 銀行は、保有している他者に帰属する資産に関して受託者の義務がある。これは、信
託の不履行による法的責任の原因となることがある。したがって、銀行は、その資産
が銀行に移転されることになる条件に準拠した場合にのみそのような資産を売買す
ることを確実にするように設計された業務手続及び内部統制を確立する必要がある。
・ 銀行は、その価値が重要な大量の様々な取引を行う。これは、必然的に複雑な会計及
び内部統制システム並びに情報技術(IT)の広範囲な利用を必要とする。
・ 銀行は、通常地理的に分散している支店及び部門のネットワークを通じて業務を行う。
これは、必然的に権限のより大幅な分散と会計及び管理機能の分散を伴う。その結果、
特に支店のネットワークが国境を超える場合は、統一的な経営実務及び会計システム
を維持することが困難になる。
・ 取引はしばしば、例えば、インターネットあるいは自動入出金機(ATM)を通じて、
銀行の従業員による介在がなく顧客によって直接開始され、完了されることがあり得
る。
・ 銀行は、しばしばある場合は手数料の支払い以外に資金の当初の移転を伴わない重要
なコミットメントを引き受ける。これらのコミットメントは備忘的会計記録だけを伴
9
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・
・
・
・
うことがある。その結果、その存在は発見することが困難なことがある。
銀行は、その規制上の要求事項が、銀行が従う会計原則にしばしば影響を与える政府
機関によって規制されている。規制上の要求事項、例えば、適正資本量を遵守しない
ことは、銀行の財務諸表又はその中の開示事項に影響を与えることとなる。
監査人、補助者、又は監査事務所が銀行との間で持つかもしれない顧客関係は、他の
組織体が持つことはない顧客関係という点で、監査人の独立性に影響を与えることが
ある。
銀行は、一般的に小切手、資金振替、外国為替取引などのための交換及び決済システ
ムに独占的にアクセスする。そのシステムは、国内及び国際的決済システムの不可欠
の部分であるか、それに結合されており、その結果として、その銀行が業務を行って
いる国に対してシステミック・リスクを引き起こすことがあり得る。
銀行は、そのいくつは財務諸表に公正価値で記録されることが必要なことがある複雑
な金融商品を発行し、売買することある。したがって、銀行は適切な評価及びリスク
管理手続を確立する必要がある。その手続の有効性は、選択された方法及び数学的モ
デル、信頼性のある現在及び過去の市場情報へのアクセス、並びにデータの完全な状
態での維持次第である。
19.銀行のすべての取引の詳細な監査は、時間と費用がかかるだけでなく、実行不可能で
ある。したがって、外部監査人は、監査の基礎を、重要な虚偽表示の固有リスクの評
価、統制リスクの評価及び重要な虚偽記載を防止するか、又は発見し是正するよう設
計された内部統制の評価、並びに試査ベースにより実施される実証手続に置く。その
ような手続は、以下の一つ以上より成る。すなわち、実査、立会、質問及び確認、計
算突合並びに分析的手続である。特に、外部監査人は、財務諸表に表示される貸出金、
投資及びその他の資産の回収可能性、従ってその帳簿価額、並びにすべての重要なコ
ミットメントと法的債務、偶発債務などの識別及び財務諸表上の適切な開示に関心を
持つ。
20.外部監査人は監査報告書並びに監査手続の種類、実施時期及び範囲を決定することに
唯一の責任を負うが、内部監査の多くは、財務諸表監査において監査人にとって有益
となり得る。したがって、監査人は、監査手続の種類、実施時期及び範囲の決定に関
係があるだろうと考える限りにおいて、監査の一部として内部監査機能を評価する。
21.ISA610「内部監査の作業の検討」は、外部監査人に内部監査人の活動と、外部監査人
の手続の種類、実施時期及び範囲に対する影響の可能性を検討することを要求してい
る。外部監査人は、内部監査部門の作業を評価するとき、内部監査機能の組織上の地
位、その機能の範囲、その構成員の技能的適格性及び彼らが行使する職業専門家とし
ての注意を検討する。
22.判断は、監査人の作業に浸透している。監査人は、以下のような領域で職業専門家の
判断を用いる。
・
・
固有リスク及び統制リスク並びに不正及び誤謬による重要な虚偽記載のリスクの
評価、
監査手続の種類、実施時期及び範囲に関する決定、
IAPS1004
10
・ それらの手続の結果の評価、
・ 財務諸表の作成において経営者によってなされた判断及び見積りの合理性の評価。
23.外部監査人は、銀行の財務諸表に表示される財務情報に関連して、個別に又は合計し
て重要な財務諸表上の虚偽表示が発見されるとの合理的確証を得るために監査を計画
し、実施する。何が重要であるかの評価は、監査人の職業専門家としての判断の問題
であり、財務諸表の利用者がその財務諸表に基礎を置くであろう経済的意思決定によ
って影響される。監査人は、全体としての財務諸表レベル並びに個々の勘定残高、取
引群及び開示に関連して重要性を検討する。重要性は、法令上の要求事項のような他
の検討事項並びに個々の財務諸表の勘定残高及びその関係に関連した検討事項によっ
て影響されることがある。そのプロセスは、検討されている財務諸表の側面によって
異なった重要性の水準をもたらす。同様に、銀行の財務諸表に対して報告するときに
監査人によって用いられる重要性の水準は、銀行監督当局に対する特殊報告書を作成
するときに用いられる水準と異なるかもしれない。ISA320「監査上の重要性」はこの
ことをより詳細に論じている。
24.財務諸表に対する意見を形成する際に、外部監査人は、財務諸表がすべての重要な点
で特定された財務報告の枠組みに準拠して作成されているとの合理的確証を得るため
に立案された手続を実施する。監査は、判断に使用する要因、試査の利用、内部統制
の固有の限界、並びに監査人が入手できる証拠の多くは法律的に人を確信させるほど
決定力のあるものでは無く、むしろ説得力のあるものであるという事実のために、す
べての重要な虚偽表示が発見されることを保証しない。不正の結果として生じる重要
な虚偽表示を発見しないリスクは、誤謬の結果として生じる重要な虚偽表示を発見し
ないリスクより高い。なぜならば、不正は、偽造、取引を意図的に記帳しないことあ
るいは監査人に対してなされている意図的な不正確な陳述のような、不正を隠蔽する
よう仕組まれた手の込んだ、そして注意深く整えられた計画を伴うからである。その
ような隠蔽の試みは、共謀を伴う場合はさらに発見することが困難なことがある。そ
の上、経営者の不正の結果生じる重要な虚偽表示を発見できないリスクは、従業員の
不正の場合より高い。なぜならば、取締役会と経営者は、しばしば誠実性を装い、正
式に設置された統制手続を無効にすることができる地位にいるからである。したがっ
て、監査人は、財務諸表に重要な虚偽表示を引き起こす状況が存在しているかもしれ
ないことを認識して、職業専門家としての懐疑的態度で監査を計画し実施する。
25.監査人は、不適切な会計方針又は資産評価の使用あるいは不可欠な情報の非開示を含
む、財務諸表全体にとって重要な虚偽表示を発見したときは、経営者に財務諸表を修
正し虚偽表示を取り除くことを要求する。もし経営者が訂正することを拒否したなら
ば、監査人は財務諸表に対する限定付意見か又は不適正意見報告書を発行する。その
ような報告書は、銀行の信用及び安定性にさえ深刻な影響を与えることとなり、した
がって経営者は通常そのことを回避するために必要な処置を講じる。同様に、もし経
営者が監査人にすべての情報あるいは監査人が要求する説明を提供しないならば、監
査人は、限定付意見か又は意見拒否報告書を発行する。
26.監査の追加的ではあるが必ずしも不可欠ではない部分として、外部監査人は、通常経
営者に一定の情報を伝える。この情報は、慣習的に、監査の過程で監査人の注意を引
11
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いたが、監査報告書の修正の正当な理由とはならない内部統制の重要な弱点あるいは
虚偽表示(内部統制の弱点に関しては追加の手続が実施されたか、あるいは虚偽表示
は財務諸表上訂正されたか又はその状況では重要ではないかのいずれかであるため)
のような事項に関するコメントを含んでいる。外部監査人はまた、銀行の統治責任者
に統治に関する事項を伝える。国によっては、外部監査人はまた、法定による要求事
項の一部か又は慣行としてのどちらかにより、勘定残高又は貸出金ポートフォリオの
構成、流動性及び利益、財務比率、内部統制システムの適切性、銀行業務のリスクの
分析、あるいは法的又は監督上の要求事項の遵守のような特定の事項に関して経営者
又は銀行監督当局に対して長文形式の報告書を提出する。
27.国によっては、外部監査人は以下のことになりそうな事実又は決定を直ちに銀行監督
当局に報告することが要求されている。
・
・
・
法令の重要な違反を構成するか、
継続企業として存続する銀行の能力に影響するか、又は
修飾報告書という結果になる。
銀行監督当局の役割
28.慎重な監督の重要な目的は、金融システムの安定性と信認を維持し、それによって預
金者や他の債権者にとってのリスクを抑えることである。さらに、監督はまた、しば
しば銀行とその活動を統制する法令の遵守を検証することに注意が向けられる。しか
し、本ステートメントにおける焦点は、銀行監督当局の役割の慎重な側面に当てられ
る。
29.銀行業の監督は許認可のシステムに基づいており、そのことによって監督当局は監督
されるべき母集団を特定し、銀行制度への参入を管理することができる。銀行業の免
許の資格を得、そして維持するために、事業体は、一定の慎重な要求事項を守らなけ
ればならない。この要求事項は、その厳密な特定においては国によって異なることが
ある。すなわち、ある国では規則中に綿密に定義されており、他の国ではより幅広く
作成され、その解釈において監督機関にある程度の裁量を許している。しかし、銀行
業の免許のための以下の基本的な要求事項は、通常ほとんどの監督システムに見られ
る。
・
・
・
・
・
銀行はふさわしい株主と取締役会のメンバーを持っていなければならない(この
概念は、すべての主要株主の財務的資質だけでなく、誠実性とビジネス界での地
位を含んでいる)。
銀行の経営者は、誠実で信用できなければならず、そして安定した慎重な方法で
銀行を経営するための適切な技能と経験を持っていなければならない。
銀行の組織及び内部統制は、その経営計画及び戦略と首尾一貫していなければな
らない。
銀行は、その組織構造と調和した法的構造を持っていなければならない。
銀行は、その経営の性質及び規模に固有のリスクに耐えるだけの十分な資本を持
っていなければならない。
IAPS1004
12
・
銀行は、資金の流出に応じるだけの十分な流動性を持っていなければならない。
30.銀行の資本と流動性の適切性についての最低限の数値比率を含め、さらに詳細な要求
事項がしばしば規定される。しかし、規則の形式がどのように精密であっても、その
目的は、銀行がそのビジネスを慎重に行い、不利な状況を克服し、預金者を損失から
保護するだけの適切な財務的資源を持つことを確実にするために条件を設定すること
である。
31.新しい銀行に許認可を与えることに加え、ほとんどの銀行監督当局は、現在の銀行の
重要な所有権あるいは支配権を他の当事者に移転する計画を検査し、却下する権限を
持っている。
32.銀行業の継続的な監督は、通常勧告と指針に基づいて実施される。しかし、銀行監督
当局は、ある銀行が慎重な要求事項を満たすことができないか、法令違反があるか、
あるいは預金者が重大な損失のリスクに直面しているときは、適時な是正措置を遂行
するためにその処置において法的権限に頼る。極端な状況では、監督当局は銀行の免
許を取り消す権限を持っていることがある。
33.慎重な監督の一つのよりどころは、適正資本量である。ほとんどの国では、新しい銀
行の設立に関して最低資本の要求事項があり、適正資本量のテストは継続的な監督の
正規の要素である。2001 年 1 月にバーゼル委員会によって公表された一括諮問「新バ
ーゼル資本協定」において、バーゼル委員会は、三つの相互に補完する柱である最低
資本の要求事項、監督当局の検査プロセス及び市場の統制に基づいた適正資本量の枠
組みを提唱している。
・
・
・
一番目の柱は、三つのリスクの幅広いカテゴリーである信用リスク、市場関連リ
スク及び事務リスクについて最低資本の要求事項を定義している。
二番目の柱である監督当局の検査プロセスは、以下の原則に依拠している。銀行
は、そのリスク概要に関連した十分な支払能力を持っていなければならず、監督
当局は銀行が最低限度を超えた資本を持つことを要求する能力を持たなければな
らない。銀行は、その現在及び将来のリスク概要に基づいた適正資本量を内部的
かつ継続的基準で評価しなければならず、監督当局は銀行の内部的な適正資本量
の評価手続を検査しなければならない。最後に、監督当局は、ほとんどの銀行の
資産の流動性のない性質及びほとんどの銀行が直ちに資本調達する際に限られた
選択肢しかないことを考慮して、比較的早期に介入しなければならない。
三番目の柱である市場の統制は、銀行が適正な水準の資本を持つことを促進する
際に、市場の参加者の役割を強化する。この点で、銀行は、その資本及びリスク
概要についての量的及び質的情報を開示しなければならない。
34.銀行は様々なリスクにさらされている。監督当局は、信用リスク、市場関係リスク(金
利リスクや外国為替リスクを含む)
、流動性及び資金調達リスク、事務リスク、法的リ
スク並びに評判リスクのような、銀行業務のリスクの範囲を監視し、そして制限する
ことがある。ますます、監督当局は特定のリスク(例えば、デリバティブ金融商品に
伴うリスク)に対するエクスポージャー(「危険度」、「債権額」、「与信残高」などの意
13
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味−訳注)の程度を把握する測定システムを開発しようとしている。これらのシステ
ムは、しばしばエクスポージャーの様々な種類に関する特定の統制手続あるいは限度
についての基礎を形成する。
35.歴史的損失の経験の見地から、銀行業務のリスクの最も重大なものは、顧客又は取引
相手が,期限又はそれ以降のいつでも全額について債務を決済しないリスク(時には
信用リスクと呼ばれる)である。銀行の貸出方針を指図することは銀行監督当局の役
割ではなく、銀行監督当局にとって銀行が信用リスクのための強固なシステムを採用
していることを確信することが肝要である。監督当局はまた、銀行の貸出金の質を評
価するための方針及び実務の有効性を評価する。監督当局は、引当金を計算するため
に経営者によって採用された方法及びなされた判断が、適時に、適切な方針及び手続
に準拠して、見積もられた信用供与損失を吸収するのに十分である特定の及び一般的
な引当金の合計金額を算出していることに納得しようとする。さらに、監督当局はま
た、個々の債務者、産業又は商業部門、あるいは特定の国又は経済区域の観点のいず
れであろうと、信用リスクが適切に多様化されていることを確かめようともする。
36.評価するのは難しいが、銀行の貸出金及びその他の資産の質は、財政状態の最も重要
な決定要素の一つである。したがって、資産の正確かつ慎重な評価は監督当局にとっ
て非常に重要である。なぜならば、そのことは銀行の資本の報告された金額の決定に
直接影響するからである。すでに示したように、資本は、それに対してエクスポージ
ャーが測定されるか又は限定される監督上の基準として広く用いられている。資産の
適切な評価は経営者の主たる責任の一つであるが、評価プロセスは、しばしばかなり
の判断を伴う。一般的に、監督当局が、その正確さ並びに文書化された方針及び手続
の遵守を判定するためにこのプロセスについて自らの評価を実施しない限り、監督当
局は、資産の適切な評価に関する経営者の判断及び財務諸表に表れる評価額は外部監
査を受けているという事実に大部分依拠する。
37.監督当局は、銀行がそのビジネスの性質、範囲及び規模にとって適切な内部統制を持
つ必要性を相当に重要視する。内部統制の目的は、実行可能な限り、経営者の方針の
遵守、資産の保全、不正と誤謬の防止及び発見、会計記録の正確性及び完全性並びに
信頼性のある財務諸表の適時な作成を含む、ビジネスの規律正しく効率的な遂行を確
実にするという経営者の目的を達成するのに役立つことである。
38.高度なリアルタイムのコンピュータ化された情報システムの開発は、管理のための能
力を著しく向上させてきたが、その結果、コンピュータの故障あるいは不正の可能性
から生じる追加的なリスクをもたらした。電子商取引の導入もまた、重大な新しいリ
スクをもたらしており、その結果、追加的な統制手続を必要としている。
39.監督当局は、経営者の質がビジネスの性質及び範囲にとって適切であることを確かめ
ることに関心がある。臨店検査が定期的に実施されている規制上の環境においては、
検査官には経営者の欠陥の兆候に気づく機会がある。その他の場合は、監督当局は定
期的に経営者にインタビューするように手配し、欠陥が生じているときは、接触の機
会を求める。どのような規制上の環境の性質であろうと、監督当局は、経営者の経営
計画及び戦略並びに経営者がどのようにそれらを達成するつもりであるのかを理解す
IAPS1004
14
るためにこれらの機会を利用しようとする。同様に、監督当局は、銀行がそのスタッ
フの技能及び適格性並びに設備の観点からその機能を果たすために適切な備えをして
いるかどうかをわかろうとする。経営者との接触から得られた情報は、監督当局が経
営者の適格性についての意見を形成する際に役立つ。
40.有効な監督は、監督される銀行についての情報の収集と分析を必要とする。例えば、
監督当局は、銀行からの慎重な報告書及び統計的な報告書を検査し、分析する。これ
らは、基本財務諸表及びさらに詳細な記述を提供する裏付け書類を含んでいる。これ
らの報告書は慎重な要求事項の遵守を調査するために利用され、それらはまた、銀行
の経営者との討議のための基礎を提供する。臨店ではない監視は、特に臨店検査と臨
店検査の間で、しばしば潜在的な問題点を識別することがあり得る。それによって、
問題点がより重大になる前に早期の発見並びに早期是正措置をもたらす。
41.監督当局は、臨店検査又は外部監査人の利用を通じて彼らが知る情報についての確証
を得るための方法を持っていなければならない。臨店作業は、銀行監督当局自身のス
タッフによってなされるか、あるいは監督当局によって委託され、外部監査人によっ
て引き受けられるかを問わず、監督当局が命じる特定の規準を満たす、適切な内部統
制システムが個々の銀行に存在しているかどうか、並びに銀行から提供された情報は
信頼性があるかどうかの独立した確証をもたらすよう体系化される。
42.銀行の企業統治及び経営システムの理解を促進するために、監督機関によっては、銀
行の監査委員会又は取締役会と定期的に会談する。これは、監査委員会又は取締役会
が銀行の管理について持っているかもしれない懸念について討議する機会を与え、監
督当局が監査委員会の有効性についての見解を形成することを可能にする。
43.銀行監督当局は、外部監査人によって実施されるすべての作業は以下の要素を備えた
監査人によって実施されることについての確証を得ることに関心を持つ。
・
・
・
・
・
・
適切なライセンスを持ち、評判がよく、
適切な専門家としての経験と適格性を持っており、
品質保証プログラムに従っており、
監査される銀行に対して事実としても外観上も独立性があり、
客観的で公平であり、そして
他の適用される倫理に関する要求事項を遵守している4。
44.国によっては、銀行監督当局は、外部監査人の指名又は解任の権利、及び独立監査を
委託する権利のような、法定の権限を持っている。これらの権限は、銀行が指名する
外部監査人がその状況における必要な経験、資源及び技能を持っていることを確実に
することを意図している。外部監査人の交代に関する明白な理由がない場合は、監督
当局はまた、通常銀行が監査人を再指名しないことの原因となった状況を調査するで
あろう。
4
監査人は、関連するその国の倫理基準及び国際会計士連盟によって公表された「会計士の倫理
規定」
(規定)を遵守する。
15
IAPS1004
45.監督当局は、高い基準の銀行監査を確実にすることに明確な関心を持っている。さら
に、監督当局の重要な関心は、特に監査人が銀行に対してあるタイプの非監査業務を
も提供する場合の、銀行監査を実施する外部監査人の独立性である。したがって、監
督当局は、相互に関心のある事項を取り扱うために、国の職業監査団体と密接な接触
を維持しようとする。
銀行監督当局と外部監査人との関係
46.多くの点で銀行監督当局と外部監査人はそれぞれの関心の焦点は異なるが、同じ事項
について補完的な関心を持っている。
・
銀行監督当局は、預金者の利益を保護するために銀行制度の安定性を維持するこ
と並びに個々の銀行の安全性と安定性を育成することに主に関心がある。したが
って、監督当局は、銀行の現在及び将来の生存能力を監視し、その状況及び実績
を評価する際に財務諸表を利用する。他方、監査人は、通常株主又は取締役会の
どちらかに対する銀行の財務諸表に対する報告に主に関心がある。その際に、監
査人は、経営者が継続企業の前提を用いることの妥当性を検討する。監査人は、
経営者が用いたその評価の期間を検討し、その期間が 12 か月より短いときは、経
営者にその評価期間を貸借対照表日より最低 12 か月に延長するよう要請する。経
営者がそうすることを拒絶した場合には、ISA570「継続企業」は監査人の作業の
制限の結果として監査報告書を修正する必要性を検討することを監査人に要求し
ている。監査人はまた、経営者が用いた評価期間を超えて銀行の継続企業として
存続する能力に対して重大な疑義を生じさせるかもしれない事象又は状況を知っ
ているかどうかについて経営者に質問する。
・ 銀行監督当局は、銀行のビジネスの安全で慎重な管理のための基礎として、強固
な内部統制システムの維持に関心を持っている。外部監査人は、ほとんどの状況
では、監査を計画し実施する際に、内部統制システムに対して依拠すべき程度を
決定するために内部統制の評価に関心を持つ。
・ 銀行監督当局は、それぞれの銀行が、その財政状態及びそのビジネスの収益性を
監督当局が評価することを可能にする、継続性のある会計方針及び実務に準拠し
て作成された適切な記録を維持していること、並びに銀行が財政状態を適正に反
映する財務諸表を定期的に発行又は利用可能にしていることに納得しなければな
らない。外部監査人は、重要な虚偽表示を含まない財務諸表を事業体が作成する
ことを可能にし、したがって、外部監査人がそれらの財務諸表に対して意見を表
明することを可能にするために適切で十分な信頼性のある会計記録が保持されて
いるかどうかに関心を持つ。
47.銀行監督当局は、通常の監督過程で監査済財務諸表を利用するとき、以下の要素を心
に留めておく必要がある。
・
・
・
監督上のニーズは、必ずしも財務諸表が作成された主たる目的ではない。
ISA に準拠した監査は、財務諸表が全体として重要な虚偽表示がないとの合理的
な保証を提供するよう立案される。
財務諸表の作成において財務報告の枠組みとして用いられた会計方針の重要なこ
IAPS1004
16
・
・
・
・
とは、その適用上判断の行使を必要とし、一定の方針あるいはその適用方法にお
いて選択を認めていることがあることである。
財務諸表は、判断に基づいた情報、並びに経営者によってなされ、監査人によっ
て監査された見積り額を含んでいる。
銀行の財政状態は、財務諸表が作成された後の後発事象に影響を受けているかも
しれない。
監督当局は、監督当局と監査人によって評価されテストされる内部統制の目的が
異なっていることを考えれば、監査のための監査人による内部統制の評価は、監
督当局が評価を必要とする目的のために必然的に適切であると仮定することはで
きない。
外部監査人が検討する統制手続及び会計方針は、銀行監督当局のために情報を作
成する場合に銀行が用いるものではないことがある。
48.それにもかかわらず、監督当局と外部監査人の作業が互いに有益である多くの領域が
ある。監査人から経営者への伝達書類や監査人が提出する他の報告書は、銀行の経営
の様々な側面への洞察を提供することができる。そのような報告書を監督当局にとっ
て利用可能にすることは、多くの国での実務である。
49.同様に、外部監査人は、銀行監督当局に由来する情報から役立つ洞察を得ることがあ
る。監督上の検査あるいは経営者へのインタビューがなされるとき、検査又はインタ
ビューから引き出された結論は慣行として銀行に伝えられる。これらの伝達は、貸倒
引当金の適切性のような重要な領域での独立した評価を提供し、監督上の関心の特定
領域に注意を集中させるため、監査人にとって有益である。監督機関はまた、銀行に
とって利用可能にし、分析的レビューを実施する際に監査人の助けとなり得る、一定
の非公式の慎重な比率あるいはガイドラインも開発することがある。
50.経営者との連絡を取るとき、銀行監督当局も外部監査人もそのような伝達のなかに含
まれている事項の知識からそれぞれに伝わる利益になることを知っている。したがっ
て、他の当事者がアクセスすべき銀行の記録の一部を形成するよう、伝達の種類は文
書によるのが都合がよい。
51.それぞれの機能を果たす間に得られた情報の機密性に関して両方の当事者の関心を保
つために、銀行監督当局と外部監査人との接触が必要となるとき、銀行の経営者もま
た、出席するか、又は少なくとも知らされることは正常なことである。適用される法
令に準拠して監督機関に対して誠実に開示された情報に関して監査人が法的に責任を
問われることがないように、適時で適切な処置が取られることが奨励される。これら
の処置は、法的な先導的行為の形式をとるか、あるいは銀行、その経営者、外部監査
人及び監督機関の間の合意ということもあり得る。これは、特に、例えば、経営者が
不正な行為に関与していると監査人が信じる場合に、経営者の出席が討議を弱めると
きに正当なことである。
52.ISA260「統治責任者とのコミュニケーション」は、統治の利益に関する事項を特定し、
17
IAPS1004
監査人に統治責任者に対して適時にそれらの事項を伝達することを要求している5。統
治に関する監査事項は、監査の実施の結果として監査人の注意を引いた事項のみを含
んでいる。監査人は、ISA に準拠した監査において統治関係の事項を識別する特別な
目的のために手続を立案することは要求されない。統治に関する一定の監査事項は、
特にそれらの事項が監督当局によって緊急措置を必要とするかもしれない場合には、
銀行監督当局の利益になることがある。監督上、法的、又は規則上の枠組みあるいは
正式な合意又は協約によって要求される場合には、監査人は、そのような事項を適時
に銀行監督当局に報告する。そのような要求、合意又は協約がない状況では、監査人
は、銀行監督当局にとって緊急の関心事になるかもしれないと監査人が判断した事項
を銀行の経営者又は統治責任者が適時に伝達することを奨励する6。さらに、そうする
ことの要求がない場合であっても、経営者又は統治責任者が伝達しないときは、監査
人は、そのような事項を銀行監督当局に伝達することを検討する。そのような状況で
は、監査人は、そのような伝達がされるとき、法律が監査人を保護するかどうか検討
する。
53.以下は、監査人の注意を引くかもしれず、かつ銀行監督当局による緊急措置を必要と
するかもしれないその他の事項のタイプの例である。
・ 銀行業の免許のための要求事項のどれかを満たすことができないとの情報、
・ 意思決定機関との重大な衝突又は重要な地位にある管理者の予想しなかった退任、
・ 法令あるいは銀行の定款、免許書又は内規に対する重大な違反を示す情報、
・ 監査人の辞任の意図又は事務所による解任、
・ 銀行のビジネスのリスクにおける重要性のある不利な変化や進んでいる可能性の
あるリスク。
5
通常そのような事項は以下を含んでいる。
・ 予想される監査範囲の制限、又は追加的要求事項を含む、監査の全般的アプローチ及び全
体としての範囲、
・ 事業体の財務諸表に対する重要な影響を与えるか、与える可能性のある重要な会計方針及
び実務の選択、又は変更、
・ 財務諸表に開示されることが要求される、係争中の訴訟のような重大なリスク及びエクス
ポージャーの財務諸表への影響、
・ 事業体によって記帳されたかどうかに関わらず、その財務諸表に重大な影響を与えるか、
又は与える可能性のある監査上の修正事項、
・ 事業体の継続企業として存続する能力に対して重大な疑義を抱かせる可能性のある事象
又は状況に関連する不確実性、
・ 事業体の財務諸表又は監査報告書に、個別に又は全体で、重大な影響を与える可能性のあ
る事項についての経営者との意見の相違、これらの伝達は、当該事象の解決の有無、重要
性の検討を含むものである。
・ 監査報告書の予想される修正、
・ 内部統制の重要な弱点、経営者の誠実性に関する疑念及び経営書が関与した不正のような、
統治責任者の注意を喚起するのに正当な理由となるその他の事項
・ 監査契約の条項で合意されたその他の事項。
6 監査人から銀行監督当局への伝達に関する明確な要求は、法、監督上の要求あるいは正式な合
意又は協約によって、多くの国ではすでに確立されている。これは、監査人と銀行監督当局の両
方にとって互いに利益となる。そのような要求がない国では、銀行監督当局及び会計士団体は、
このことに関して、適切な処置について率先又は支持を検討することが奨励される。
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18
多くの場合、外部監査人はまた、これらの事項を統治責任者に伝達する。
54.多くの国では、外部監査人は、法令に準拠するか、又は銀行監督当局の要請により監
督当局の機能を遂行するうえで補助するために、特定の任務を果たすか、又は特殊報
告書を発行する。これらの任務は以下の点について報告することを含んでいる。
・
・
・
・
・
・
免許の条件は遵守されているかどうか。
会計及びその他の記録を維持するためのシステム並びに内部統制は適切であるか
どうか。
銀行監督当局に対する報告書を作成するために銀行が用いる方法の適切性並びに
その報告書に含まれる負債対資本の比率やその他の慎重な要求事項を含む情報の
正確性。
組織は、監督機関によって提供された規準に基づいて適切であるかどうか。
法令は遵守されているかどうか。そして
適切な会計方針に準拠しているかどうか。
55.銀行監督当局並びに内部監査人及び外部監査人は、監督プロセスへの貢献をより効率
的かつ効果的にするために互いに協力する。その協力は、それぞれの当事者がその義
務に集中することを可能にすると同時に、監督を最も効果的にする。国によっては、
その協力は、監督当局と外部監査人及び内部監査人との定期的な会議に基づくことが
ある。
外部監査人の監督プロセスに対する貢献の追加的要求
56.監督当局の外部監査人に対する特定の職務において補助する要求は、適用される法又
は銀行と監督当局との間の契約に基づく合意の中で述べられた適切に定義された枠組
みの中でなされるべきである。これらの要求は、場合によっては別の業務契約の主題
となることがある。この場合は、以下の規準が確立されるべきである。
57.第一に、銀行監督当局に完全で正確な情報を提供する基本的責任は、銀行の経営者に
ある。外部監査人の役割は、その情報又は特定の手続の適用に対して報告することで
ある。そのような機能において、監査人は、いかなる監督上の責任も引き受けること
はないが、その報告書を提供することによって、監督当局が銀行についてより効果的
な判断をすることを可能にする。
58.第二に、外部監査人と監査される銀行との通常の関係は保護される必要がある。外部
監査人の作業を統制する法律上の要求又は契約に基づく合意がない場合には、銀行監
督当局と監査人との間の情報伝達は、典型的には、例外的な状況を除いて銀行を通じ
て行われる。したがって、銀行監督当局は、必要な情報を監査人から入手するため銀
行へその手配を要請し、そのような情報は銀行を通じて監督当局に提出されるであろ
う。外部監査人と銀行監督当局とのいかなる会議にも、パラグラフ 51 及び 52 で示さ
れる場合を除き、銀行の代表が出席し、監査人が経営者への伝達書類や他の報告書の
19
IAPS1004
写しを監督当局に提出する前に銀行の承認が必要とされる7。
59.第三に、銀行監督当局とのいかなる取決めをする前でも、外部監査人は利害の不一致
が生じるかもしれないかどうか検討する。もしそうであるならば、通常はその任務を
引き受けるために銀行の経営者から前もって承認を得ることによって、作業の開始前
に満足のいくように解決される必要がある。
60.第四に、監督上の要求は、要求される情報に関連して具体的で明確に定義されなけれ
ばならない。これは、監督当局は、監査人がその基準が目的を達成しているかどうか
について報告することができるように、可能な限り、銀行の実績が測定され得る基準
を説明する必要があることを意味している。もし、例えば、貸出金資産の質に関して
情報が必要とされるならば、監督当局は、貸出金をリスクの種類に従って分類する際
にどのような規準が用いられるべきか特定しなければならない。同様に、可能なとき
はいつでも、重要性の概念について銀行監督当局と外部監査人との間で了解が得られ
なければならない。
61.第五に、銀行監督当局が外部監査人に実施することを要請する作業は、技術的にも実
務上も監査人の能力の範囲内である必要がある。監査人は、例えば、特定の借主又は
国に対する銀行のエクスポージャーの程度を測定することを要請されることがある。
しかし、明確で具体的なガイダンスがなければ、監査人はいかなるエクスポージャー
も過度であるかどうか評価できる立場にはならないであろう。さらに、監査は、継続
的にではなく間隔をあけて実施されるため、一定期間にわたる作業の進行中のプログ
ラムによる場合を除いて、例えば、外部監査人が、監査を実施するために必要な作業
に加え、内部統制の完全な評価を実施するか、あるいはすべての監督上の規則の遵守
を監視することを期待するのは合理的ではない。
62.第六に、銀行監督当局のための外部監査人の作業は合理的な基礎を持たなければなら
ない。これは、特別な状況を除き、その作業は正規の監査にとり補完的でなければな
らず、監査人の専門の技能があるためか、あるいはそのことによって重複が避けられ
るために、監督当局によるよりも経済的に又は迅速に実施され得ることを意味してい
る。
63.最後に、機密保持の一定の側面、特に外部監査人が他の監査クライアントとの職業上
の関係を通じて入手した、その銀行又は社会にとって入手可能ではない情報の機密保
持は保護される必要がある。
64.外部監査人の役割が拡張され得る方法は、その国の監督上の環境の性質次第である。
例えば、銀行監督当局が頻繁で厳格な検査によって活発なアプローチを実践する場合
は、外部監査人に要請される補助は通常ごくわずかである。他方、直接的な監督の歴
史が浅い場合には、主として検査とは対照的に銀行の経営者によって提供、報告され
た情報分析に基づくか、あるいは監督上の資源が限られている場合には、監督当局は、
外部監査人が入手した情報に対する保証の付与、提供から補助的に利益を得ることが
7
多くの銀行は、外部監査人による経営者への伝達書類やその他の報告書の写しを監督当局に直
接提出する。
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20
できる。
65.しかし、現在、多くの国が検査と報告された情報の分析の両方の要素を含む、監督上
のアプローチを実践している。銀行が複雑化するにつれて、検査は監督上の資源の点
でますます厳しくなってきている。したがって、臨店検査を実践する多くの監督機関
は、報告される情報により多く依拠し、監査人の技能が特に適した領域において補助
を外部監査人に期待を寄せることを余儀なくされている。
66.銀行監督当局は、以前に慎重な報告書の分析にのみ依拠していた場合は、ある程度の
現場での検査が望ましい保護手段であることがわかってきた。それゆえ、これらの国
では、監督当局は、外部監査人が特別な作業(パラグラフ 54 参照)を実施することに
よって彼らを補助することに以前より依拠しつつある。
67.外部監査人と銀行監督当局との連絡が長い期間にわたって緊密である国では、相互の
信頼のきずなは作り上げられており、広範な協力の経験によって、それぞれが相手の
作業から利益を得ることができている。それらの国の経験は、監査人が原則として監
督当局との緊密な協力を妨げるものと認めるかもしれない利害の対立は実際にはあま
り重要ではないのは当然のことであり、効果的な意見の交換にとっての障害を生じさ
せてはいないことを示している。
銀行監督当局と職業会計士との継続的対話の必要性
68.銀行監督当局は、外部監査人の作業から継続的に利益を得ようとするならば、会計プ
ロフェッション全体と現在の監督上の関心領域について討議すべきである。これは、
監督機関と会計プロフェッションとの間で、国レベルでの定期的討議を通じて達成で
きる。そのような討議は、相互の関心領域を対象とすることとなろう。監査人が、そ
のような事項に対する監督当局の知識と態度についてできるかぎり明確な理解をしよ
うとするならば、その討議は監査人が判断を行う場合に相当役立つ。そのような討議
の過程で、監督当局はまた、会計方針及び監査基準全般並びに特に具体的な監査手続
に対する見解を表明する機会も持つ。これは、銀行の財務諸表の監査に関する全般的
基準を向上させるのに役立つ。すべての当事者の見解が考慮されることを確実にする
ために、例えば、内部監査機能の長を通じて、銀行自身の業界団体がそれらの主題に
関する討議に関与することが望ましい。
69.銀行監督当局と職業会計士団体との間の討議はまた、新たに開発された金融商品、そ
して金融の進化や証券化という他の側面に関する適切な会計処理方法のような、重要
な監査上の問題やタイムリーな会計上の問題を含むのが有益であろう。この討議は、
銀行による最も適切な会計方針の採用の助けとなろう。
70.銀行監督当局も会計プロフェッションも、銀行の適切な会計方針の適用における銀行
間の均一性を達成することに関心がある。外部監査人が、しばしば実際の会計方針の
適用を監視又は検証することがより易しい立場に置かれているのに対して、銀行監督
当局は、しばしばその規制上の権限によって銀行が均一性のある方針を達成すること
に対して説得力のある影響力を行使することができる。したがって、銀行監督当局と
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会計プロフェッションとの継続的対話は、国レベルでの銀行のための会計基準の調和
化に著しく貢献することとなろう。
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