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三里浜砂丘地畑作農業振興ビジョン【坂井地区】

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三里浜砂丘地畑作農業振興ビジョン【坂井地区】
(1)地勢および社会経済条件
都道府県名
地 区 名
福 井 県
地 目
面 積
三里浜砂丘地
所 在 地
坂井市三国町下野・西野中・山岸・
黒目・米納津・沖野々
水 田 普通畑 樹園地 その他
ha
ha
ha
ha
108
225
-
229
受 益 戸 数
411戸
備 考
計
ha
562
三里浜砂丘地は、福井県北西部に位置し、かつ
て三国港から海岸線に沿って南西に長さ12㎞巾
1~3㎞にわたる起伏のなだらかな砂丘地があ
り、浜の長さから「三里浜」と呼ばれていた。
対馬暖流の通る日本海側に有るため、北陸地方
の中でも比較的温暖な気候で過ごしやすい気象環
境になっている。冬の北西からの季節風は強い
が、積雪は県内で最も少ない地域である。
周囲には、昭和53年に海の玄関口として開港
した福井港があり、主に韓国・ロシア・中国・台
湾などとの貿易港として発展し、年間約169万
トンの荷物を扱っている。また、福井港をとり囲
む形で県内最大の工業地帯であるテクノポート福
井がある。さらにスポーツ施設として、テクノ
ポート福井サッカー場が整備されており、年間約
1万1千人が合宿や試合を行い、観客も約1万5
千人が訪れている。
交通面では砂丘地の中央部を国道305号が縦
断し、その沿線に道の駅「みくに」と農産物直売
所「ふれあいパーク三里浜」が併設され、地元産
の加工品(らっきょう等)や生鮮野菜を求める人
で賑わっている。
三里浜砂丘地
(2)営農状況
三里浜砂丘地には、従来しっかりした水源がな
く、浅井戸による水に依存し、主にラッキョウな
どを栽培していた。一風吹くごとに砂が移動し耕
作には不向きな土地であった。この地に昭和44
年福井臨海工業地帯造成マスタープランが作成さ
れ、その用地として林地・耕地を含めた約800
㏊が買収された。その後、減少した畑の対策とし
て、県営による土地改良事業が導入され、盛土に
よる畑造成、農道・排水路整備などが実施され、
新たな畑地が生み出された。
現在は露地とハウスによる作付けが行われてお
り、露地ではラッキョウ、スイカ、ダイコンが主
流であり、ハウスではメロン、コカブ、コマツナ
といった軟弱野菜が栽培されており、本県を代表
する園芸産地となっている。しかし、当地区で
は、水源である井戸水の塩水化や水量不足によ
り、初期生育の遅れや生育障害などが問題となっ
ており、水の確保が課題となっている。また、近
年農産物価格の低迷や農業従事者の減少、遊休地
の増加が進行しており、その対策が急務となって
いる。
1
坂井市三国町黒目付近の写真
(3)主要野菜の作付状況・販売額の推移
荒地
3%
作付状況
(24年秋)
休耕地
37%
作付状況
(25年春)
荒地
5%
宅地・そ
の他
1%
休耕地
35%
作物
59%
宅地・そ
の他
1%
作物
59%
調査面積
211ha
調査面積
211ha
主要野菜の作付面積
㏊
三里浜砂丘地では、砂丘地の特性を活
かした野菜栽培が盛んであり、全国第4
位の生産量を誇るラッキョウをはじめと
し、ダイコン・スイカ・メロンを主な品
目として園芸振興を行ってきたが、生産
者の高齢化に伴い、作付面積が徐々に減
少している。
特に、重量野菜であるダイコン、スイ
カが著しく減少傾向にあり、代わってコ
カブなどの軟弱野菜の生産が伸びてい
る。
このため、九頭竜川下流農業水利事業
による水源転換に併せ、新規作付品目の
選定や耕作放棄地の解消、新規園芸農家
の育成など、砂丘地の特性を活かした新
たな営農体系を導入することが大きな課
題となっている。
50.0
45.0
40.0
35.0
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
18年
20年
22年
ラ
ッ
キ
ョ
ウ
(
1
年
掘
)
ラ
ッ
キ
ョ
ウ
(
3
年
子
)
ダ
イ
コ
ン
ニ ス メ コ 二 ミ 軟 そ
ン イ ロ カ 十 デ 弱 の
ジ カ ン ブ 日 ィ 野 他
ン
大 ト 菜
根 マ
ト
園芸作物の販売金額
千万円
60
三里浜砂丘地全体における園芸作物の
販売金額は減少傾向にある。部門別に見
みると、系統出荷分が減少し、直売部分
(道の駅直売所)が年々伸びているのが現
状である。
この原因としては、重量品目であるダ
イコン、スイカの作付面積の減少、更に
消費動向の変化等による価格の低迷が考
えられる。そこで、新たな園芸品目の作
付拡大と消費者ニーズに応じた販路の確
保が課題である。
50
40
道の駅
三協
JA花咲
6.39
6.83
7.56
20.79
19.08
30
15.73
20
28.89
10
24.44
24.14
20年度
22年度
0
18年度
2
(4)農業従事者
農家数の推移については、平成12年には専業農家が48戸あったが、10年後の平成22年
には26戸に、第一種兼業農家も81戸あったが34戸に減少している。一方で、第二種兼業農
家は多少の増減はあるもののほぼ横ばいである。
年齢別就業人口については、59歳までの働き盛りの就業人口が、平成12年の535人から
平成22年には292人に減少している。一方で、65歳以上の高齢者も減少しているが、就業
人口に占める割合は高まってきている。
今後、新規就農者の育成や企業的な農業生産法人、集落園芸組織の育成が課題である。
農林業センサスより
農家数の推移
第二兼業
農家数の推移
区分
専業
第一兼業
第二兼業
合 計
農林業センサスより
300
平成12年 平成17年 平成22年
250
48
81
149
278
32
46
167
245
26
34
144
専業
149
200
167
150
144
100
204
第一兼業
81
46
50
34
48
32
26
平成12年
平成17年
平成22年
0
農林業センサスより
年齢別農業就業人口の推移
農林業センサスより
平成12年 平成17年 平成22年
15~29歳
30~39歳
40~59歳
60~64歳
65歳以上
93
98
344
71
283
72
77
289
54
259
41
58
193
82
212
合 計
889
751
586
人
年齢別農業就業人口の推移
400
350
300
250
平成12年
平成17年
平成22年
200
150
100
50
0
15~29 30~39 40~59 60~64 65歳以
歳
歳
歳
歳
上
3
三里浜砂丘地における、認定農
業者は30名で、その約7割に当
たる22名が野菜の認定農業者で
ある。また、当地区には法人の認
定農業者はいない。
認定農業者の状況(三里浜地区 平成25年4月1日現在)
区分
下野
西野中
山岸
黒目
米納津
沖野々
合 計
三里浜砂丘地における新規就農
者(就農時39歳以下)は、平成9年
度以降平成17年度までの間で、
7名となっており、メロン、スイ
カ、ダイコン、ラッキョウ、トマ
ト、コカブと幅広く生産してい
る。
なお、平成18年度以降に若手
の就農者が見られないため、育成
と確保が課題である。
野菜
1
1
水稲
5
坂井市資料より
花き
果樹
畜産
その他
0
0
0
0
2
11
7
2
22
1
8
計
6
1
2
11
8
2
30
新規就農者の現状
支援開始年度
平成9年度
平成11年度
平成12年度
平成15年度
平成16年度
平成17年度
人数(名)
平成18年度以降
合 計
1
2
1
1
1
1
0
7
(5)営農(生産)施設等(位置はP5参照)
共同利用施設
施 設 名
①西瓜選果場
②野菜集荷場
③浜四郷野菜集出荷場
④浜四郷キュアリング貯蔵施設
規 模
2,974.53㎡
600㎡
951㎡
486㎡(6室)
備 考
整備年度
昭和53年 昭和52年度第二次農業構造改善事業
平成8年
平成2年
平成4年
平成7年度ふるさと特産産地拡大事業
平成元年度ふるさと特産産地拡大事業
平成3年先進的農業生産総合推進対策事業
直売所及び加工所
施設名
施設等の概要
⑤加工・流通施設
「三里浜特産農業協同組合」
大正10年頃に任意の組合でらっきょうを県外、各青果市
場に出荷していたが、昭和7年にそれを合併し三里浜花らっ
きょ組合連合会を結成した。昭和25年に農業協同組合を設
立している。加工部門で、味付けらっきょう・沢庵・浅漬け
など併せて約5億円の販売実績がある。
⑥農産物直売所
「ふれあいパーク三里浜」
平成10年7月にオープンした施設であり、国道305号
に面した道の駅「みくに」に併設され、直売所総面積約8,
000㎡の広さをもち、現在では売上げも6億1千万円で、
客数も物販とレストラン併せて約31万人の人が訪れ活気を
見せている。
4
営農(生産)施設等位置図
⑥
③
②
①
⑤
④
5
園芸用ハウスの設置数
ガラス温室
パイプハウス
合 計
31 棟
302 棟
333 棟
野菜指定産地の指定状況
事業
区分
指定野菜
事業
品目区分
対象品目
産地名(対象市)
重要野菜
秋冬だいこん
坂井台地(坂井市・あわら市)
一般野菜
夏秋トマト
福 井(坂井市・福井市)
※ 指定産地…野菜生産出荷安定法に定める作付面積および共販率を満たす産地について
農林水産大臣が指定する。
(6)土壌条件
三里浜砂丘地の土壌は、砂丘未熟土に分類され、腐食含量および塩基置換容量※1が非常に低い
砂土である。なお、水田に海砂を客土した圃場は約140haあり、これらの下層土は水田土壌で
あるが、上層土1mは砂丘未熟土である。
砂土は土壌の乾湿度差が大きく、保肥力が低いため、良質な堆肥等有機物を積極的に施用し、
地力の維持・増強に努める必要がある。pH5~6未満の土壌が多く、石灰質資材を用いた酸度矯
正※2が必要であり、砂土は他の土壌に比べ締まりやすいので、深耕も必要である。
注※1:塩基置換容量
・・・ 土壌が肥料を吸着できる能力、いわゆる「保肥力」のことで
CECともいわれる。数値が大きいほど肥効が持続する。
注※2:酸 度 矯 正
・・・ 酸性土壌にアルカリ性の石灰質資材を施用して、作物が生育
しやすい土壌に改良すること。
6
(7) 農地等の整備状況
福井臨海工業地帯の造成に伴う買収により、1戸当たりの耕作面積は平均1㏊であったものが
半減したため、県営水田転換特別対策事業を導入し、農地造成(盛土)農道、用排水路、防風林(黒
松の植林)を整備した。更に翌年には水源確保のため、県営畑地帯総合土地改良事業により、水源
(深井戸)と散水施設(スプリンクラー)を整備し、減少した畑を従来あった面積の約7割までに戻
す耕地の整備を図った。
更に、平成9年度からは、県営畑地帯総合整備事業(担い手育成型)により国営事業の完了に
合わせた既存の用水施設の再整備事業が行われている。
また、近年、用水の塩水化による農作物への被害が増加していることから、国営九頭竜川下流
農業水利事業により、水源を九頭竜川の鳴鹿大堰に転換し、水質の向上と用水の安定供給を図る
こととしている。
①圃場等の整備状況
県営水田転換特別対策事業工事概要
・ 工 期:昭和48年度~昭和52年度
・ 総事業費:8.7億円
・ 工事概要
農地造成(盛土1.0m) A=143.2㏊
農道:18,513m
排水路(アーム柵工):19,071m 防風林:2年生の黒松(巾=3.0m)
②用水施設等の整備状況
県営畑地帯総合土地改良事業工事概要
・ 工 期:昭和49年度~昭和59年度
・ 総事業費:12.9億円
・ 工事概要
受益面積:A=160.3㏊
深井戸:6本
施設:圧力タンク(コンプレッサー加圧)6基
散水施設:スプリンクラー(20m間隔)
電気施設:電磁弁288個、制御盤8面
県営畑地帯総合整備事業(担い手育成型)工事概要
・ 工 期:平成9年度~平成27年度
・ 総事業費:33.4億円
・ 工事概要
揚水施設:ファームポンド3ヶ所、配水管:13,858m
(山岸・黒目・米納津)
揚水機場(ポンプ各2台):3ヶ所、農地保全:11,700m
(防砂ネット)
受益地:222㏊(坂井市200.8㏊・福井市21.8㏊)
国営九頭竜川下流農業水利事業工事概要
・ 工 期:平成11年度~平成27年度
・ 総事業費:1,133億円 ・ 工事概要
受益面積:水田10,309㏊ 畑1,231㏊ 樹園地102㏊ 合計11,642㏊
用水施設:幹線用水路(パイプライン)54.8km
7
2 産地の体質強化の将来方向
(1)三里浜砂丘地振興目標(平成29年度目標)
・地域特産物販売量(生産拡大品目) 103t増(増加率19.96%)
〔3年子ラッキョウ・ニンジン・コカブの販売実績516tを619tに増やす〕
・遊休農地解消面積 27.6ha
〔遊休地(休耕地含む)75haのうち27.6haを解消していく〕
(2)推進品目の選定
①重点推進品目として6品目を選定する
生産拡大品目:ラッキョウ、ニンジン、軟弱野菜(コカブ等)
品質向上品目:スイカ、メロン、ダイコン
②一般推進品目として野菜3品目、果樹1品目を選定する。
野 菜:二十日大根、カンショ、トマト
果 樹:ブドウ
(3)園芸振興に係る基本的な視点
①省力機械の導入による露地野菜の生産拡大
②砂丘地土壌を活用した高品質フルーツ産地の育成
③施設を利用した周年型園芸の生産拡大
④多方面での販路・販売方法の拡充
⑤新たな担い手の育成
⑥生産基盤の整備
8
3 推進品目の課題と振興方向
(1)重点推進品目
品 目
ラッキョウ
スイカ
メロン類
野菜
ダイコン
ニンジン
軟弱野菜
(コカブ等)
現 状
振 興 方 向
生産者の高齢化及び生産者
の減少により個別の作付面積
は減少しているが、生産組織
等での機械植えの割合が増え
ているため、面積は増えてい
る。しかし、三年子は切り子
の不足により処理能力が頭打
ちになっている。
関西市場等で一定の評価は
得ているものの、重量野菜で
あり、生産者の高齢化ととも
に栽培面積が年々減少してい
る。
気象の変化により作柄が安
定しにくい。
ハウス抑制栽培を中心に作
付されている。土壌病害やウ
イルス病の発生が増加傾向に
あり、生産の安定化が望まれ
る。
市場単価が以前より安い。
年間2作(春・秋)作付けが
でき、肌つやの良いものが生
産できる。
重量野菜であり、高齢化と
ともに、作付面積が大幅に減
少している。
省力化・機械化が期待でき
る品目として有望である。
夏まき冬どりのほか、春ま
き夏どりや施設栽培等、新た
な作型の導入拡大が見込め
る。
砂丘地の特性を生かした高
品質のコカブとして、市場評
価が高い。冬期間の作付けの
ほか、比較的生育期間が短い
ため、施設利用の高度化が見
込まれる。
・機械化体系の推進と生産の安定
・農薬の適用拡大による生産の安定化
・生での販売を促進するために乾燥機の導入
・生食利用の推進(漬物以外での利用法の発信)
・切り子の確保
・らっきょう端切りの機械化
・品質及びブランド化の向上
・作業効率化や省力化による産地規模の維持拡大
・優良品種の選定
・施設と露地の組合せによる継続出荷
・販売促進や契約取引等による価格の安定化
・雇用や作業分業化等の検討
・小玉スイカの導入拡大と作期幅の拡大
・品質およびブランド力の向上
・耐候性ハウスの主要品目として作付拡大の推進
・耐病性品種の導入による生産品質の安定
・雑メロン等消費者ニーズにあった品種の導入拡
大
・多様な販売ルートの確立
・土づくり、防除等の徹底による生産の安定化
・作期幅の拡大
・作業場の改善、機械化による出荷調製の効率化
・契約取引等による価格の安定化
・砂丘地の特性に応じた品種の選定
・加工・業務用への積極的な取り組みと契約取引
の推進
・機械化体系の導入と共同洗浄選別等施設の利用
による作業効率化、規模拡大の推進
・ハウス果菜類の跡作の有効利用や耐候性ハウス
導入による作付拡大
・冬期間の収益確保や周年作付による施設の高度
利用
・契約取引や多様な取引等による価格の安定化
(2)一般推進品目
品 目
二十日大根
野菜
カンショ
トマト
果樹
ブドウ
現 状
振 興 方 向
漬物(浅漬け)として県内
外への販路が確立しているも
のの、原料供給が追いつかな
い時がある。
高系14号を中心に作付け
されているが、栽培面積が少
ない。主に直売所等での販売
にとどまっている。
水耕栽培と土耕栽培があ
る。大玉トマトを中心にミ
ディトマトも栽培されてい
る。
平成23年度から新たに2
組織において、31aの栽培
が始まった。
9
・収穫に関して、受託作業の導入
・品質、収穫量の向上を目指した栽培体系の確立
・施設での栽培面積の拡大
・機械化体系による栽培管理の省力化ならびに軽
作業化
・生産者組織の強化
・消費者嗜好の変化に応じた品種の導入
・品質およびブランド力の向上
・高糖度と生産安定技術の確立
・直接販売等多様な販売ルートの確立
・実践圃(2か所)による有望品種の絞り込み
・栽培技術の確立
・販売ルートの確立
・新たな生産者による栽培面積の拡大
(3)栽培面積および生産量
九頭竜川農業振興ビジョンより
現況(22年度)
目標(29年度)
品目
備 考
面積(ha)
産出額(千円)
面積(ha)
産出額(千円)
ラッキョウ(1年掘り)
8.7
25,252
11.5
32,200
ラッキョウ(3年子)
25.3
89,366
37.5
123,750
スイカ
10.3
38,139
11.0
44,000
メロン類
7.2
66,555
10.0
92,000
ダイコン
19.0
97,015
25.0
125,000
ニンジン
1.0
1,971
10.0
35,000
コカブ
8.3
55,644
14.0
98,000
軟弱野菜
4.4
17,225
10.4
46,800
二十日大根
2.0
2,640
5.0
7,000
カンショ
3.0
6,000
4.0
8,000
トマト
0.1
817
1.1
13,750
ブドウ
0.0
0
1.0
15,000
その他
7.4
46,000
31.4
合計
96.7
446,624
171.9
10
内、新規就農者による
144,000 作付(25.0ha)含む
784,500
4 目標と具体的施策
(1)省力機械の導入による露地野菜の生産拡大 《具体的施策》
① ラッキョウ機械化栽培体系の導入による栽培面積の拡大
福井県で開発された定植機などの活用による機械化栽培体系を導入し、生産組織、大規模農
家、農家グループによる作付面積の拡大を図る。
② 新規露地野菜の生産拡大
パイプライン化による水源転換により水量が確保され、秋冬野菜の栽培が可能となることから、
砂丘地での栽培に適した品種の選定を行うとともに、大規模な生産を可能にする省力機械化体系
を実証し、坂井北部丘陵地とリレー出荷できる「砂丘地ニンジン」の産地化を図る。
また、ダイコンやカンショについても、青果に加えて加工原料向け等、実需者のニーズに適し
た品種の選定を行い、大規模に生産・供給できる園芸専業農家を育成しながら生産拡大を図る。
【ラッキョウ定植機による植付】
【ラッキョウ掘取機による収穫】
11
(2)砂丘地土壌を活用した高品質フルーツ産地の育成 《具体的施策》
① フルーツ野菜の作期拡大
土壌水分がコントロールしやすい砂丘地土壌を活用し、春作メロン、スイカ(大玉、小玉)、
秋作メロン及びミディトマトなどの複数品目を組み合わせて、春から秋までの長期にわたり継続
出荷できるフルーツ野菜産地の育成を図るため、耐候性ハウスを導入する。
② 新たな果樹産地の育成
砂丘地の気象条件に適したブドウなどの新たな果樹産地の育成を図るため、栽培実践圃の設置
を推進し、生産農家の掘り起こしを図る。
さらに、観光客をターゲットにした、ブドウやブルーベリーなどの収穫体験ができる農園の設
置を推進する。
【高糖度ミディトマト】
【砂丘地ブドウの栽培】
12
(3)施設を利用した周年型園芸の生産拡大 《具体的施策》
① 砂丘地コカブや二十日大根の作付拡大
施設栽培中心の農家グループ等に対して耐候性ハウスの積極的な導入を図り、基幹となるスイ
カやメロンの後作として、砂丘地の特性である肌つやのきれいな砂丘地コカブや、二十日大根等
の作付拡大を図る。
② 軟弱野菜の周年生産拡大
耐候性ハウスを活用した、ホウレンソウ、コマツナ、ツマミナなどの軟弱野菜を周年出荷でき
る作付体系を確立する。
【砂丘地コカブ】
【二十日大根の浅漬け】
(4)多方面での販路・販売方法の拡充
《具体的施策》
① 販路拡大による価格の安定
市場流通の強化に加え、多方面での販売ルートを確立し、価格安定を図る。特に近年実需者の
ニーズが高まっている加工・業務用への積極的な取り組みや、契約栽培推進、農産物直売所での
販売拡大、学校給食への食材供給、インターネットの活用等での販路開拓を図る。
② 砂丘地特産物のオリジナルブランド化と六次産業化による地域の活性化
関係機関が連携し、砂丘地で生産された特長ある品目について、高品質や良食味の積極的なP
R活動の強化、産地情報や栽培情報の発信力の向上により、砂丘地オリジナル商品としてのブラ
ンド化を図る。
また、商工業者等と連携し、生産だけでなく、加工・流通等関連する第2次、第3次産業との
融合等により、新たな農業関連ビジネスの創出を推進する。
13
(5)新たな担い手の育成 《具体的施策》
① 優良農地の確保と新規就農者のマッチング促進
砂丘地農業を支援する体制を整備するため、土地利用状況を把握した地図情報の整備を行うと
共に防砂ネット設置や土壌改良などにより、耕作放棄地を再整備し、優良農地への転換を促進す
る。
さらに、これらの斡旋できる農地の面積に合わせて、意欲の高い新規就農者を公募・育成する
とともに、園芸農家が地域に定着できるような仕組みを構築することにより定住を促進する。
② 企業的農業生産法人、集落園芸組織の育成
規模拡大を目指す経営プランの作成支援、経営・労務管理などの研修の実施、独自の販売ルー
トの開拓への支援を行い、企業的農業生産法人や集落園芸組織の育成を図る。
(6)生産基盤の整備
《具体的施策》
① 土層改良の実施
消費者や実需者ニーズに応じた安全安心で、品質の高い園芸農産物の安定生産のためには、生
産の根幹となる優良な土壌が必要不可欠であることから、土壌診断に基づいた適正な土壌改良を
推進する。
・土壌の実態を的確に把握するため、土壌診断を実施する。
・土層改良は、作付品目に応じ、酸度矯正、有機質資材投入、通気性改良、透水性改良等を
行い、施用量等については、土壌診断結果に基づき適正な対策を講ずる。
② 低コスト耐候性ハウスの導入
地域の推進品目であるコカブ等の軟弱野菜やスイカ、メロンの安定生産及び作付拡大を図るに
は、土層改良と併せて、施設化により、高品質かつ定量の継続的な生産・出荷体制を構築する必
要がある。そのためには、年間を通じて生産・出荷できる施設整備が必要であり、風雪に耐えら
れるハウスの導入を推進する。
・果菜類や軟弱野菜等の作付けにより、ハウスの有効利用と冬季間の所得増大を図る。
・推進品目は、メロン、スイカ等の果菜類、コカブ等の軟弱野菜を基本とする。
③ 防砂ネットの整備
当地の転換畑は砂粒が細かい海砂を約1m盛土して造成されたものであり、風による飛散を防ぐ
ため、防砂ネットを設置している。しかし、その防砂ネットも設置後20年以上が経過し、損傷
著しく耕作に支障を来しているため、防砂ネットの整備を推進する。
・土層改良と併せて防砂ネットを整備し、強風やこれに伴う飛砂を防止する。これにより、
発芽苗立ち期や幼果期の茎葉損傷、収穫物の損傷、トンネルのまくれ等による農作物への
被害を軽減し、収量品質の安定や経営の安定を図るとともに就農環境、住環境の向上を図
る。
④ スプリンクラーの整備
砂土は土壌の乾湿度差が大きく、保水力が低いので農業生産にかん水は欠かせないものである
が、経年劣化により均一な散水が出来ない為、スプリンクラーの整備を推進する。
・農作物の成長に伴う適時灌水を基本とし、防砂ネットと併せ、強風やこれに伴う飛砂を防
止する。
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5 推進体制
(1) 基本方向
農業振興ビジョンの実現に向けて、関係機関が一体となって各種施策を推進し、生産振興に関
する諸施策を総合的、かつ計画的に推進するため、三里浜砂丘地営農推進協議会を設置し、その
事務局を三里浜砂丘地農業支援センターと称する。
(2) 振興対策
三里浜砂丘地の園芸産地確立と活性化を進めるため、三里浜砂丘地営農推進協議会を設立し、
協議会は各関係機関の連絡調整を図り、効率的かつ効果的なビジョンの実現に向けた中心的役割
を担うとともに、年度ごとに振興対策の検討と実施内容の検証をしながら指導支援の徹底を図
る。
(3) 農業振興ビジョン実現のための推進体制
・市は、農業従事者の意欲喚起に努め、生産構造改革に係る支援強化を図る。
・普及組織は、産地強化、担い手育成に係る指導機能の強化を図るとともに、生産者が意欲
を持って構造改革に取り組める環境づくりを担う。
・農協は、営農指導を強化し、業務加工用の販路拡大と併せて、高品質な生産物を目指しな
がらビジョン実現に向けて先導的な役割を担う。
・三里浜地区土地改良区は、施設の補修・保全を図り、意欲ある担い手が定着しやすい
生産基盤を整備する。
・生産者は、消費者ニーズの把握に努めるとともに、労働生産性の高い効率的な農業経営を
目指す。
推進体制図
三里浜砂丘地
営農推進協議会
北陸農政局
九頭竜川下流農業
水利事業所
福井県 園芸畜産課
助言・指導
三里浜砂丘地
農業支援センター
支援
相談
農
15
家
福井県坂井農林総合事務所
連携 坂井市
花咲ふくい農業協同組合
三里浜特産農業協同組合
三里浜地区土地改良区
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