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気象観測 - 京都大学

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気象観測 - 京都大学
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気象観測!
著者: 飯澤 功
はじめに
これから紹介するデータロガーやセンサー類を組み合わせることで安価ながら時間的・空
間的に高密度な観測や、特殊な状況での観測を行うシステムが構築できます。この観測シス
テムの特徴の一つとして、得られるデータの精度・密度に対して、構築コストが割安になる
ということがあげられます。これにより少ない研究費で多地点観測が可能になり、これまで
検出できなかった現象が捉えられる可能性を増し、紛失や破損をあまり気にせず大胆な観測
計画が立てられます。一方で,安価な分,確かに製作・補正の手間はかかります。しかし、
これらの作業を学生・生徒への実習と考えれば、ロガーを組み立て、観測方法を工夫した上
で実際に観測を行うという従来の実習以上の教育効果が得られるのです。
観測プロジェクト例
•
京都都市観測
ヒートアイランド現象の発生の様子や、微細な構
造を把握するために,データロガー・温度計・ラジ
エーションシールドを用いて、京都市内 37 点で 2
週間の連続気温観測を季節毎に行っています。設置・
回収には 10~15 人程であたり、1.4km メッシュ,1
分間隔のデータを得ています。観測機の設置は歩道
や中央分離帯の木に左上図のように設置しています。
街路樹への設置許可は京都市緑地管理課から得まし
た。この観測の結果、温度変化の土地依存性や、天
候・日照量などの変化への時間応答を微細に知るこ
とができました。
尚、街中での設置作業中に近隣住民に不審がられ、
警察に通報もされたこともある HOT な観測プロジェ
クトです。
•
鉛直気温分布観測
ヒートアイランド現象の原因の一つと考えられて
いる都市部における接地逆転層の破壊が実際に生じ
ているかを観測するために、京都大学総合人間学部
吉田南 2 号館屋上から、ロガー・温度計・ラジエー
ションシールドを 4 セットつけた直径 1.8m のバルー
ンを上げることで、地上高度 100 mまでの気温鉛直
分布を 20m 間隔、サンプリング周期を 15~30 秒間隔
で行っています。
逆転層は夕刻から朝にかけて生ずるため、観測者
の生活時間帯も逆転する COOL な観測プロジェクト
です。
データロガー
著者: 梅谷 和弘
1. データロガーとは
データロガーとはセンサーの出力をデジタ
ル値に自動的に変換し、記録を行う装置です。
記録値は電子的にメモリ内部に書き込まれま
す。この装置を観測に用いることで、自動的
に無人で計測が行われるため人手が大きく削
減されます。
本機では、電圧を出力するアナログセンサー
を接続するように設計されています。データ
ロガーは、センサーの出力する電圧をそれに
応じたデジタルの数値に変換し(AD 変換)、
この数値を時刻と共に内臓メモリに記録しま
す。
PC と常時接続して AD 変換機としても使用できるほか、ワンダースワンと接続して操作でき
ます。軽量で低消費電力、小型であるため屋外での観測に適しています。
2. 仕様
本機は内部に 128k バイトのメモリを格納しておりま
す。6 チャンネルの入力を同時に変換してメモリに記録
すると、1 分に 1 回のサンプリングで 1 週間のデータが
記録できます。
乾電池単三 6 個で動作させると、2 週間は継続して観
測することができます。
入力電圧範囲とは、AD 変換デジタル値のマッピング
方式のことで、MIN の数値がデジタル値 0 に、MAX の数
値がデジタル値 4096 に対応します。この値は実際に基
準電圧を外部から与えることもでき、測定器に応じた
カスタマイズが可能です。
3. 使用方法
センサーは入力チャンネルに接続するだけで使用で
きます。
本機との通信は PC の RS232C ポートと本機を接続す
ることによって行うことができます。PC との通信は、
ソフトウェア Martini によって簡単に行うことができ
ます。このソフトウェアによって本機から観測記録を
PC にロードすることができます。また本機を AD 変換装
置として使用する際にも Martini を使用すると簡単に
行えます。
またワンダースワンによる通信ソフトウェアも開発
しており、ワンダースワンでの観測が可能です。ワン
ダースワンは軽量・小型であるため PC の持ち運びが困
難な屋外の観測点に訪れる際には便利です。
仕様
データロガー
AD 変換
遂次比較方式
インターフェース
RS232C
入力チャンネル数 6 チャンネル
入力電圧範囲
0 ~ 2.048V / 0
~ 4.096V /
2.048 ~ 4.096V
外部リファレン
ス電圧有
最大入力電圧
5V
入力インピーダン
ス
1MΩ
分解能
12 ビット
最小サンプリング
間隔
1 サンプル/秒
メモリ
128k バイト
電源
単三 6 個
消費電流
6mA(最大 15mA)
外寸
95mm×58mm×18m
m
重量
50g
温度・湿度計
著者: 矢島 新
1. 温度計・湿度計とは
•
温度計
温度を測る測定器です。都市スケールの場所によ
る気温変化を調べるという目的に沿うため、応答の
早いセンサを使用しています。測りたい温度の種類
に応じて、百葉箱、または黒球と組み合わせます
(各欄参照)。
•
湿度計
相対湿度を測るものです。市販のセンサユニット
にボルテージフォロワ回路を組み入れました。
仕様
2. 仕様
•
センサ
温度計
温度計
サーミスタ
(103JT050)
湿度計
CHS-UGS
温度(℃)
分解能
約 0.04℃
約 0.05%
センサ部分はサーミスタ抵抗を使っていま
す。これは、温度によって抵抗値が変わると
±5%
誤差
±0.1℃以内
いう特徴があります。その変化を利用して、
測定範囲
およそ 0~40℃ 0~100℃
回路部を通して、温度に応じた電圧をデータ
ロガーに出力します。そして、データロガー
外寸
写真参照
写真参照
でデジタル値に変えます。
重量
30g(ケーブル 2m)
出力電圧は、グラフ1のように、温度に対
して、厳密には S 字型に曲がっているものの、
ほぼ直線的に変化します。これを直線で近
似し、その式を使って、温度に変換します。
40
この時の分解能は、約 0.04℃です。
y = 0.0432x - 28.277
30
サーミスタ抵抗や、回路部の抵抗、基準
電圧素子には個体ごとに特性があり、それ
20
ぞれ誤差があります。その誤差をなくすた
10
めに、回路部に可変抵抗を組み込んであり
0
ます。抵抗値を変化させて、温度が 15℃の
600
900
1200
1500
時、出力電圧が等しくなるように、個々の
デジタル値
温度計を較正します。この作業により、一
つの変換式で、比較精度を±0.1℃以内にす グラフ 1:基準温度計のキャリブレーション
ることを実現しました(グラフ2)。都市ス
ケールの高密度観測をするにあたって、十
分に実用的だと言えます。
•
湿度計
湿度に応じて電気抵抗が変化する素子に、
駆動回路などを一体化したもので、湿度
0%に対して 0 V、100%に対して 1 Vの直
線的な出力が得られます。ただし、精度が
±5%であることから、高密度観測として
実用的なものにするには、さらに改良が必
グラフ 2:基準温度計とその他の温度計との誤差
要になります。
ミニ百葉箱
著者: 小野 耕作
1. ラジエーションシールドとは
いわゆる百葉箱で、温度計を覆うものです。大
気中の温度を計測する際、温度計が太陽の放射や
赤外放射を受けると大気の温度を正確に測ること
はできないので、このラジエーションシールドで
放射を遮ります。本体の色は白で、内部に大気が
こもらないように空間を設けて通気性のよい形状
になっています(左の写真 1 参照)。
仕様
材質
2. 仕様
ラジエーションシールド
塩化ビニル板(7 枚)
ビーズ(板の間に 3 個)
パイプソケット
測定誤差 市販品との誤差±0.2℃
市販ラジエーションシールド使用値との差(℃)
1
ラジエーション
シールド使用
温度計のみ
外寸
5.8cm×5.8cm×6.9cm
重量
55g
0.5
塩化ビニル板を加工して作製した本ラジエー
ションシールドが適当なものであるかを、気
象観測に一般的に用いる市販のもの(品名
UNIDATA 6501 D/TGH)と比較実験をおこない
-0.5
0:00
6:00
12:00
18:00
0:00 調べました(グラフ1)。
時刻
ラジエーションシールドを使用した温度値
グラフ 1:ラジエーションシールド比較実験(2004 と使用していない温度値の、市販のラジエー
年 7 月 17 日実施)
ションシールドを使用した温度値との差をグ
ラフにしてあります。市販のものとの熱容量等の違いから日の出あたりで差が大きく出まし
たが一日を通して差は±0.2℃の範囲に収まっているといえます。
また材質や形状を変えて同じような実験を行いましたが、本ラジエーションシールドが最
も良い結果を得ました。
0
3. 使用方法
本ラジエーションシールドを用いて屋外で温度を
測定する際には、塩化ビニルパイプを加工したもの
にソケット部を取り付けて、樹木などにくくりつけ
ます。また設置する高さは地面から約 1.5m にしま
す。
黒球温度計
著者: 飴村 尚起
1. 黒球温度計とは
黒球温度計<GT>は“太陽の直達日射量”“大気の散乱に
よる日射量”を測定するためにイギリスで考案されたもの
です。黒球温度計は黒体に近く、球であることから無指向
性で、効率よく輻射熱を吸収することが出来ます。現在、
黒球温度計は熱中症の予防のためにアメリカスポーツ医学
界(ACSM)が提唱した WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)の
値を算出するのに使われており、学校環境や高熱環境下の
職場での基準指標となりつつあります。
仕様
材質
球(ピンポン球)
通し棒(ボールペンの柄)、
支え(塩ビパイプ)
測定誤差
102*57*40mm (球直径
40mm)
外寸
21.0g (上図セット)
重量
平均誤差 0.21℃ 8 分間隔時
(日出日没前後を除く)
全平均誤差 0.66℃
2. 仕様
WBGT 算出に使われているベルノン式黒球温度計
<BGT>は黒く塗装した直径 150mm の銅球で、大きく
扱いが不便でした。そこで私たちは小型のピンポ
ン球型黒球温度計<PGT>を考案しました。これは名
前の通り卓球のピンポン球で出来ていて、誰でも
気軽に加工出来、軽量で設置作業も簡単に出来ま
す。しかも急激に温度変化するときを除き、ベル
ノン式と 0.2℃程度の差で観測できています。
3. 測定例
図 2 は 4/27~4/28 の気温と黒球温度計の変化
です。ベルノン式とほぼ同様の変化を示してい
ることがわかります。図 3 では各黒球温度計と
気温との差の相関図です。これを見ると日出日
没時にピンポン式がベルノン式より反応が早く、
それ以外の時間帯はほぼ直線状に乗っているこ
とがわかりました。
図1
図3
図2
黒球温度計
放射温度計
著者: 伊藤 文
1. 放射温度計とは
赤外線を用い、対象物の放射温度と自身
の温度との差をサーモパイルで検知する測
定器です。差を検知するだけなので、回路
は非常に簡単なものです。レインシールド
は、雨がかかるのを防ぐとともに、直射日
光その他のラディエーションによりサーモ
パイルの温度が上昇するのを防ぎます。
全天からの放射を検知する赤外線放射計
や、上下の放射を検知する放射収支計とは
異なり、指向性に優れています。
右:センサー部 上下:レインシールド
2. 使用方法・測定例
地上気温と組み合わせることで、上空の放射
温度を知ることができます。晴れ間と雲の放射
温度は大きく異なるため、この放射温度計で十
分検知することができます。即ち、この放射温
度計により、晴れや曇等の天気を知ることがで
センサー前部のフィルターの透過帯域(測定
きます。指向性に優れているため、街中のよう
な建物等に囲まれている場所においても空を狙っ できる放射の波長帯域を示している)
て設置することができます。
微気圧計
著者: 梅谷 和弘
1. 微気圧計とは
微気圧計とは微小な気圧変動を計測するこ
とを目的とした気圧計です。大気圧は通常海
水面で 1000hPa ほどあるため、1hPa 未満の気
圧変動を絶対圧計によって計測することは分
解能の点から困難です。この微気圧計では、1
時間を越える大きな周期の波動を物理的に減
衰させることによって、細かい周期の波動を
検出します。
左図は微気圧計の写真です。温度の変化を
極力抑えるため普段は発泡スチロールの箱の
中に水が入ったビニール袋に包まれて収めら
れています。写真は箱の内部のセンサー部分
を移したものです。
微気圧計によって、細かいスケールでの内部重力波や長周期
仕様
微気圧計
の音波による気圧変動をとらえることができます。
2. 仕様
微気圧計は外気の圧力変動を電圧として出力します。このた
め、デジタル値として得るためにはデータロガーによる AD 変換
が必要になります。当パンフレットのデータロガーを使用する
と、分解能は 0.1Pa 程度となります。
この微気圧計は一般に振幅の大きい長周期の気圧変動に対
しては感度が弱くなり、短周期の気圧変動に対しては直線的な
出力がでるようになっています。周期 T の気圧変動にたいして
出力が 1/e となる T は測定器ごとにばらつきがありますが、1
時間弱程度です。
3. 測定例
分解能
0.1Pa
測定範囲
-2.5hPa~
+2.5hPa
外寸
22cm×41c
m×19cm
重量
3.5kg
START
微気圧計を設置
するには風速によ
る動圧を計測する
のを避けるため、
屋内の部屋に静置
します。使用に際
しては、センサー
の入出力コネクタ
をデータロガーに
接続するだけで使
用できます。
下の図は微気圧計での測定例です。微気圧計をもってエレベータで 4 階から 1 階に下り、再
び階段で 4 階にもっていったときの微気圧出力を示しています。
出力は、階段を下がるに従って大きくなり、エレベータで戻るときには元に戻ります。階
段を下りる際に踊り場を5つ通ったことがはっきりとみられます。1 階を移動する間に出力が
少し下がってきているのは、長周期の変動を除去する微気圧計の仕様のためです。
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