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経済性工学 第14回 - Keio University

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経済性工学 第14回 - Keio University
複数方策(案)からの選択問題
◆案の相互関係
経済性工学 第14回
独立案 : 複数の案の中から自由に組み合わせて選択できる案の集まり。
例)一定の手持ち資金があって,旧式の生産設備のいくつかを
改造したい場合。
排反案 : 複数の案の中からどれか1つしか案を選択できない案の集まり。
「投資混合案からの経済的選択」
例)生産ラインの改造において,人手案,半自動案,完全自動案
のいずれか1つを選択すべき場合。
混合案: 独立な関係にある複数のグループのそれぞれの中に,複数個
の排反的な案が含まれる案の集まり。
例)加工工程と組立工程のそれぞれに複数個の合理化案があっ
て,両工程でどの合理化案を採用すべきかを決める場合。
慶應大学 稲田周平 2016年度H
2
前回の復習:排反的投資案からの選択問題
正しい解の見出し方(その1)
例題 ある企業(仮に甲社と呼ぶ)では,新製品の製造・販売を計画してい
◆正味利益を指標として解を求める方法
るが,そのために必要な設備として,製造能力の異なる3つの候補案が挙
M A  1,500   P  M 6
 550  205.6万円
M B  2, 400   P  M 6
 780  228.9万円
M C  3,000   P  M 6
 890  201.2万円
10%
がってきた。設備の購入に必要となる初期投資額と,それぞれの設備で
製品を製造した場合に得られる毎年の報収は,次表のように見積もられ
10%
ている。製品の販売期間は6年間,資本の利率は10%とする。どの案を
選択することが経済的に有利だろうか。
10%
初期投資額
毎年の報収
A案
1,500万円
550万円/年
B案
2,400万円
780万円/年
C案
3,000万円
890万円/年
よって,B案を採用するのが最も有利
3
4
続いて,A案の採用を止めて,B案に乗り換えることで利益が増えるか
どうかを( A案とB案の利益の差額)考える。
正しい解の見出し方(その2)
投資額の増分:900万円, 年々の報収の増分:230万円/年
◆追加投資利益率(差の利回り)指標を用いる方法
<考え方>
230  900   P  M 6B A  0
r
まず,投資を行わない0案の採用を止めて,A案に乗り換えることで
利益が増えるかどうか(0案とA案の利益の差額)を考える。
rB  A  13.8%  i   10%  より,差の案B-Aの正味利益は正。
投資額の増分:1500万円, 年々の報収の増分:550万円/年
続いて,B案の採用を止めて,C案に乗り換えることで利益が増えるか
どうかを( B案とC案の利益の差額)考える。
この追加投資(差の案A-0)の正味利益が正かどうかは,次のように
判断することができる。
投資額の増分:600万円, 年々の報収の増分:110万円/年
550  1500   P  M 6A0  0
r
110  600   P  M 6C  B  0
r
rA0  28.5%  i   10%  より,差の案A-0の正味利益は正。
rC  B  2.8%  i   10%  より,差の案C-Bの正味利益は負。
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2016, Inada Laboratory, Keio University
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1
一連のプロセスを整理すると,
追加投資利益率の図形的解釈
0(ゼロ)案(設備投資を行わない案)
差の案:A-0案(追加投資=1,500万円,利益=550万円)
A案(初期投資額=1,500万円,利益=550万円)
MC
MB
差の案:B-A案(追加投資=900万円,利益=230万円)
B案(初期投資額=2,400万円,利益=780万円)
i  10%
MA
差の案:C-B案(追加投資=600万円,利益=110万円)
C案(初期投資額=3,000万円,利益=890万円)
 P  M 6
10%
差の案
追加投資額
利益の増分/年
A-0案
1,500万円
550万円
追加投資利益率
28.5%
B-A案
900万円
230万円
13.8%
C-B案
600万円
110万円
2.8%
追加投資利益率は,各案のプロットを結んだ線の傾きに対応する。
7
演習1:無資格案を含んだ問題
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混合案からの選択問題:今日のメイン・テーマ
混合案とは:
問題 ある企業(仮に甲社と呼ぶ)では,新製品の製造・販売を計画してい
独立な関係にある複数のグループのそれぞれの中に,複数個の
るが,そのために必要な設備として,製造能力の異なる3つの候補案が挙
排反的な案が含まれる案の集まり。
がってきた。設備の購入に必要となる初期投資額と,それぞれの設備で
排反案
製品を製造した場合に得られる毎年の報収は,次表のように見積もられ
毎年の報収
A案
1,000万円
250万円/年
B案
2,000万円
700万円/年
C案
3,000万円
900万円/年
B2
A4
B3
グループA
B4
C1
B5
グループB
2
A3
排反案
C
A1
選択することが経済的に有利だろうか。
初期投資額
排反案
B1
A2
ている。製品の販売期間は6年間,資本の利率は10%とする。どの案を
C3
グループC
独立な関係にある
例)加工工程と組立工程のそれぞれに複数個の合理化案があって,
両工程でどの合理化案を採用すべきかを決める場合。
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演習2:混合案からの選択問題
K製作所では,3つの職場A,B,Cのそれぞれで新設備の導入を検討中で
職場
ある。それぞれの職場には,設備の候補として,幾つかの代案(排反案)
が挙がっているが,設備導入のための初期投資額と,設備導入による毎
A
年の経費節減額(期ごとの報収)は次ページの表の通りである。いずれ
の設備もほぼ恒久的に使えると考えてよい。また,資本の利率 i=10 %
とする。
B
問1 全体の投資予算が,イ)十分にある場合,ロ)900万円の場合,そ
れぞれ,どの案を採用すべきか?
C
問2 職場B,Cについては,現有設備の老朽化が激しい為,必ず投資
現状とした場合の
年間の節減額
投資案
初期投資額
A1
300万円
95万円
A2
400万円
100万円
A3
500万円
112万円
B1
100万円
20万円
B2
200万円
50万円
B3
300万円
65万円
B4
400万円
90万円
C1
200万円
55万円
C2
300万円
73万円
(すなわち,少なくとも最小投資額以上の投資)を行う必要がある。全体
の投資予算が700万円のとき,どの案を採用すべきだろうか。
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2016, Inada Laboratory, Keio University
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解を求めるための考え方
解を求めるための考え方
各グループの中での追加投資利益率(差の利回り)に注目する。
報収
各グループの中での追加投資利益率(差の利回り)に注目する。
例えば,物件Aのグループでは,
例えば,物件Aのグループでは,
300   P  M 
r0 A1

95
 0.317
300
r0 A1  0.317  31.7%
120
8.5%
A1
100
(
年間節減額
0  A1
)
報収 (年間節減額 )
 P  M r
 95  0 より,
A3
A2
r
300   P  M 0 A1  95  0 より,
 P  M r
0  A1
80
60

95
 0.317
300
31.7%
r0 A1  0.317  31.7%
40
20
注)
 P  M i  i
0
0
200
400
投資額(万円 )
14
注)
 P  M i  i
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(問1)
<物件Bのグループ>
<物件Cのグループ>
報収 (年間節減額 )
報収 (年間節減額 )
(イ)十分な資金がある場合:
(ロ)900万円:
(問2)
<物件Cのグループ>
報収 (年間節減額 )
報収 (年間節減額 )
追加投資利益率 (%)
<物件Bのグループ>
投資制約=700万円
物件Bと物件Cは不可避投資なので,グラフの原点が移動する。
2016, Inada Laboratory, Keio University
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演習3:不可避投資(コスト型投資)を含む問題
投資額(万円)
K製作所では,A)工程の自動化設備,B)倉庫の自動化設備,C)廃液処
理設備の導入を検討している。それぞれに排反的な候補(代替案)が3
つずつある。A)とB)については投資額と年間の節減額,C)については
投資額と年間経費が,次ページの表のように見積もられている。設備は
いずれも恒久的に使えるものとし,資本の利率は年15%である。 C)だ
A1
1,000
A2
2,000
900
A3
3,000
1,020
B
(倉庫の
自動化)
B1
1,000
200
B2
2,000
380
B3
3,000
450
けは,投資を見送るわけにはいかない。
問1 全体の投資予算が5,000万円の場合,どの案を採用すべきか?
投資額(万円)
問2 全体の投資予算が,すべての案を採用するのに十分な額の場合,
C
(廃液処理)
どの案を採用すべきか?
年間節減額(万円/年)
A
(工程の
自動化)
300
年間経費(万円/年)
C1
1,000
500
C2
2,000
250
C3
3,000
150
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◆コスト型方策の処理(不可避投資)
解の求め方
C)については,最少額の投資は行うと考えたもとで,他の案に乗り移っ
た時の,投資の増加額とコストの減少額(効果)を考えて,追加投資利
益率(差の利回り)を計算する。
◆リターン型(報収型)方策の処理
A)とB)については,先の演習1と同様に,追加投資利益率(差の
利回り)を求めればよい。
A)工程の自動化
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C1: 投資1000万円,年間経費500万円
(1000万円だけ追加投資すると,
年間経費が250万円節約できる)
B)倉庫の自動化
C2: 投資2000万円,年間経費250万円
C)廃液処理
26
28
(問1)
(問2)
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2016, Inada Laboratory, Keio University
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