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我が国皮革製品製造業の産業集積地における 競争力強化

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我が国皮革製品製造業の産業集積地における 競争力強化
平成 27 年度 経済産業省委託事業
我が国皮革製品製造業の産業集積地における
競争力強化のための戦略検討調査
報告書
平成28年3月
目次
第1章
本調査の概要 .............................................................................................................. 5
1-1.本調査の背景と目的 .................................................................................................... 6
1-2.本調査の進め方 ........................................................................................................... 7
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題 ...................................................................... 11
2―1.本章の概要 ................................................................................................................. 12
2-2.なめし革製造業の状況 .............................................................................................. 13
2-3.鞄・ハンドバッグ製造業の状況 ................................................................................ 19
2-4.革製履物製造業の状況 .............................................................................................. 25
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み .................................................................. 31
3―1.本章の概要 ................................................................................................................ 32
3-2.豊岡鞄に係る取り組み .............................................................................................. 33
3-3.今治タオルに係る取り組み ....................................................................................... 39
3-4.高岡銅器に係る取り組み........................................................................................... 41
3-5.甲州ワインに係る取り組み ....................................................................................... 43
3-6.燕三条の鋳物に係る取り組み ................................................................................... 45
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討 .......................................... 50
4-1.姫路・たつののなめし革産業と豊岡の鞄産業の連携による活性化の方向性 ........... 51
4-2.浅草の革製履物産業の活性化の方向性 ..................................................................... 62
第5章
競争力強化や高付加価値化の方策の検討への示唆 .................................................... 76
参考資料 ................................................................................................................................. 82
1.関西検討会最終資料 ......................................................................................................... 83
2.関東検討会最終資料(浅草靴産業のビジョン発表会資料) ........................................... 97
第1章 本調査の概要
第1章
本調査の概要
1-1.本調査の背景と目的
我が国の皮革製品製造業は、国内の需要量は横ばいが続く一方、欧州やアジアからの輸入が年々増加
し、国内事業者にとって非常に厳しい状況となっている。国内の事業所数・従業員数も減少しており、
同産業の存続・発展を図るためには、国内市場において海外製品に打ち克つ競争力を身につけ、さらに
は海外市場への進出も狙う意識を業界全体としてもち、具体的な行動に移していかなければならない。
こうした厳しい状況を脱する変革を実現する上で、個々の事業者それぞれの創意や努力が重要である
ことは言うまでもない。一方で、我が国の皮革製品製造業は、いくつかの地域に事業者が集積している
という特徴がある。将来を見据えた競争力強化の取り組みを行う際に、同一地域の事業者同士が協力・
連携することで、より付加価値を高められる可能性もある。しかし、昨年度に全国中小企業団体連合会
が実施した「皮革産業の国際競争力強化に向けたシニア人材等の活用に関する調査」報告書によると、
必ずしも集積地の利益率が高くない現状が明らかとなっている。
以上を踏まえ本事業は、皮革製品製造業が集中している地域において、①競争力強化や高付加価値化
の実現のために、競合者でもある同一地域内の事業者同士がいかにして協力・連携することができうる
か、その手法とプロセスを体系化し、②さらに異業種も含めた同一地域の事業者同士の連携によって皮
革製品製造業の競争力強化や高付加価値化を実現する方策を提示することを目的とする 1。
これまでの事業について
なお、経済産業省ではこれまで、平成 25 年度に「我が国皮革産業の国際競争力強化手法に関する基本
調査」を、平成 26 年度に「我が国の皮革産業のブランド力強化に関する調査」を実施し、皮革産業に係
る個社の企業の競争力強化に向けた方策の検討を行ってきた。
平成 25 年度「我が国皮革産業の国際競争力強化手法に関する基本調査」
(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2014fy/004197.pdf)では、海外皮革産業におけるタンナーや
メーカー等の連携の実態について調査・分析することにより、我が国皮革産業におけるタンナーやメー
カー等の連携のあり方等を検討した。
また、平成 26 年度「我が国の皮革産業のブランド力強化に関する調査」
(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2015fy/000924.pdf)では、我が国の皮革産業の競争力強化を、
ブランド力強化により目指し、そのより具体的な手法(皮革製品のブランド化に向けた戦略)を検討し
た。
これらの事業は本事業とも関係が深いため、本報告書とあわせて参照いただきたい。
1
本事業仕様書からの引用
6
第1章
本調査の概要
1-2.本調査の進め方
本調査は「
(1)我が国の皮革産業集積地の状況と課題の整理」
、
「
(2)皮革産業以外の産業集積地での
取り組みの調査」
、
「
(3)皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討」
、
「
(4)競争力強化や
高付加価値化の方策検討への示唆」によって構成されている。
図表・1 本調査の構成と本報告書との対応
(3)皮革産業集積地の競争力強化や
高付加価値化の方策検討
(1)我が国の皮革産業集積地の状況と課題の整理
本報告書
2章に該当
・セミナーの実施
・検討会での検討
(2)皮革産業以外の産業集積地での取り組みの調査
本報告書
3章に該当
本報告書
4章に該当
(4)競争力強化や高付加価値化の方策検討への示唆
本報告書
5章に該当
1)我が国の皮革産業集積地の状況と課題の整理
「我が国の皮革産業集積地の状況と課題の整理(本報告書 2 章に該当)
」では、なめし革、鞄・ハン
ドバッグ、革製履物などの国内の産業集積地の状況と課題を整理している。
2)皮革産業以外の産業集積地での取り組みの調査
「皮革産業以外の産業集積地での取り組みの調査(本報告書 3 章に該当)
」では、皮革製品製造業の
集積地における取り組みの検討に参考となる成功事例について調査を行っている。
具体的な調査対象と調査項目は以下のとおりである。
図表・2 調査対象
・豊岡鞄(兵庫県豊岡市)
・甲州ワイン(山梨県甲州市)
・今治タオル(愛媛県今治市)
・燕三条(新潟県燕市・三条市)
・高岡銅器(富山県高岡市)
図表・3 調査項目
・取り組みの概要と成果
・取り組みの詳細(取り組みの目的、変遷、体制、等)
7
第1章
本調査の概要
3)皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
本事業では皮革産業事業者等からなる「地域皮革産業将来戦略検討会」(以降、検討会)を開催し、
「皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討(本報告書 4 章に該当)」を行った。また、
検討会での議論の参考となる情報を共有するため、検討会構成員等を対象としたセミナーを開催した。
各検討会やセミナーは基本的に㈱野村総合研究所が主導するとともに、各テーマにおいて知見のある
外部講師にも必要に応じて参加頂いた。
検討会及びセミナーで対象とした地域とテーマは、
「①姫路・たつの地区のなめし革産業と豊岡地区
の鞄産業の連携による活性化」
(以降、関西検討会)
、
「②浅草地区の革製履物産業の活性化」
(以降、
関東検討会)の 2 つとした。それぞれの検討会のメンバー、開催日時、外部講師は以下のとおりであ
る。
図表・4 関西検討会メンバー
区分
氏名
福本 真也
㈱三昌
金田 陽司
協伸㈱
森脇 和成
㈱モリヨシ
松岡 哲矢
松岡皮革
石本 晋也
エルヴェ化成
足立 哲宏
㈱足立
宮下 栄司
ナオト商店
黒崎 將志
㈱クロサキ
姫路
村田 浩司
(公財)姫路・西はりま地場産業センター
豊岡
林 健太
豊岡まちづくり㈱
小林 新也
合同会社シーラカンス食堂
姫路
タンナー
たつの
鞄製造
その他
所属
豊岡
アドバイザー・外部講師
図表・5 関西検討会・セミナー開催日時
区分
開催日時
会場
第 1 回セミナー&検討会
11 月 5 日(木)14 時~18 時
豊岡市民会館
第 2 回セミナー&検討会
12 月 7 日(月)13 時~17 時
豊岡鞄協会
12 月 7 日(月)17 時~19 時
工場見学会(豊岡)※1
12 月 8 日(火)9 時~17 時
第 3 回セミナー&検討会
豊岡鞄メーカー等
1 月 18 日(月)14 時~17 時
姫路市民会館
1 月 19 日(火)9 時~17 時
姫路・たつのタンナー等
第 4 回検討会
2 月 29 日(月)14 時~18 時
㈱三昌(姫路)
第 5 回検討会
3 月 7 日(月)14 時~17 時
㈱三昌(姫路)
工場見学会(姫路・たつの)
※2
※1:㈱足立、マスミ鞄嚢㈱、木和田㈱、㈱由利の工場を見学するとともに、トヨオカ・カバン・アルチザン・
アベニュー、豊岡市鞄縫製者トレーニングセンター、柳の宮神社などを見学。
※2:協伸㈱、㈱三昌、㈱モリヨシ、エルヴェ化成の工場を見学するとともに、松岡皮革の商品サンプルを確
認。
8
第1章
本調査の概要
図表・6 関東検討会メンバー
区分
氏名
所属
金井 将樹
㈱ヤングシューズ
山田 裕亮
㈱パナマシューズ
皿井 美緒
サラヰ製靴㈱
吉見 鉄平
㈱スタジオヨシミ
革卸
藤田 晃成
富田工業㈱
その他
川島 武雄
浅草エーラウンド・㈲川島商店
鈴木 淳
台東デザイナーズビレッジ
戸村 亜紀
クリエイティブディレクター
木田 茂樹
㈱ルミエール
大木 貴之
ローカルスタンダード㈱
革製履物製造
アドバイザー・外部講師
図表・7 関東検討会・セミナー開催日時
区分
開催日時
会場
第 1 回セミナー&検討会
11 月 4 日(水)16 時~20 時
都立産業貿易センター(浅草)
第 2 回セミナー&検討会
11 月 24 日(火)16 時~20 時
TKP スター貸会議室(浅草)
第 3 回セミナー&検討会
12 月 14 日(月)16 時~20 時
浅草文化観光センター(浅草)
第 4 回検討会
1 月 20 日(水)16 時~20 時
浅草文化観光センター(浅草)
第 5 回検討会
2 月 8 日(月)16 時~20 時
浅草文化観光センター(浅草)
浅草靴産業のビジョン発表会
3 月 4 日(金)17 時~18 時
浅草文化観光センター(浅草)
4)競争力強化や高付加価値化の方策検討への示唆
「皮革産業以外の産業集積地での取り組みの調査」
、「皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化
の方策検討」を踏まえ、我が国の皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策の検討を行う上
での示唆を「①産業集積地において連携を行う利点」
、
「②産業集積地において連携を行ううえでの課
題」
、
「③産業集積地において同様の検討を行ううえでの留意点」の視点から整理している。
9
第2章 我が国の皮革産業集積地の状況と課題
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
2―1.本章の概要
本章では、なめし革製造業、鞄・ハンドバッグ製造業、革製履物製造業につき、我が国の皮革産業の
状況(各節の第 1 項に該当)として、事業所数の推移、製造品出荷額の推移、輸出入額の推移、輸入額
が製造品出荷額に占める割合の推移などを、また、各産業集積地の状況(各節の第 2 項に該当)として、
各県の事業所数や製造品出荷額が全国に占める割合とその推移、主要産地の 1 事業者あたりの製造品出
荷額、そして本事業において検討会の対象とした地域につき該当県の製造品出荷額と全国に占める割合
の推移を分析した。
加えて、各節の第 3 項では、検討会の対象地域について、その衰退もしくは活性化の要因を分析して
いる。
図表・8 本章の概要
なめし革
鞄・ハンドバッグ
革製履物
製造業(第 2 節)
製造業(第 3 節)
製造業(第 4 節)
我が国の皮革産業の
・事業所数の推移
状況(各節第 1 項)
・製造品出荷額の推移
・輸出入額の推移
・輸入額が製造品出荷額に占める割合の推移
各産業集積地の状況
・各県の事業所数や製造品出荷額が全国に占める割合とその推移
(各節第 2 項)
・主要産地の 1 事業者あたりの製造品出荷額
・兵庫県の製造品出荷額
・兵庫県の製造品出荷額
・東京都の製造品出荷額
と全国に占める割合の
と全国に占める割合の
と全国に占める割合の
推移
推移
推移
産業衰退・活性化の
・姫路・たつののなめし
要因(各節第 3 項)
革製造業の衰退の要因
・豊岡の鞄製造業の活性
化の要因
12
・浅草の革製履物製造業
の衰退の要因
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
2-2.なめし革製造業の状況
1)我が国の皮革産業の状況
日本全体のなめし革製造業の事業所数、製造品出荷額を示したものが、図表・9 と図表・10 である。
事業所数は 1992 年の 682 ヶ所から 2013 年には 185 ヶ所に減少し、
また、
製造品出荷額は 1992 年の 1,946
億円から 2013 年の 460 億円まで減少している。
図表・9 なめし革製造業の事業所数の推移
800
682
20年間で
73%減少
700
579
600
527
496
457
500
388
所 400
359 364
320 316
252 252 259 237
300
212 194
185
200
100
2013年
2012年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1998年
1999年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
図表・10 なめし革製造業の製造品出荷額の推移
250
20年間で
76%減少
195
200
166
138 137
150
124
112 116
98 99
100
86 82 85 87
73 67 71
62
49 45 43 46
50
2013年
2012年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2002年
2003年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
0
1992年
十
億
円
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
13
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
なめし革 2の輸出入額を示したものが図表・11 である。輸出額は 1992 年の 282 百万ドルから 2015
年の 184 百万ドル(224 億円)に減少している。輸入額も 1992 年の 693 百万ドルから 2015 年の 296 百
万ドル(360 億円)に減少している。これまで常に輸入超過であり、2015 年は輸出の約 1.6 倍の輸入を
行っている。
また、なめし革の輸入額が製造品出荷額に占める割合の推移を示したものが図表・12 である。1992
年は国内生産額に対して約 4 割のなめし革を輸入していたが、2013 年はその割合が約 8 割に増加して
いる。
図表・11
なめし革の輸出入額の推移
800
輸入
693
700
輸出
600
500
百
万 400
ド
ル
300
200
296
282
184
100
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0
出所)UN Comtrade を元に野村総合研究所作成
図表・12 なめし革の輸入額が製造品出荷額に占める割合の推移(為替は固定)
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0
出所)工業統計、UN Comtrade を元に野村総合研究所作成
2
統計上の項目は「Raw hides and skins (other than furskins) and leather」
14
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
2)各産業集積地の状況
本事業の検討会において対象としている姫路・たつの地域が存在する、兵庫県のなめし革製造業の
事業所数が全国に占める割合は 60%、製造品出荷額が全国に占める割合は 52%と共に全国で最大の産
地となっている(図表・13)
。
また、兵庫県の製造品出荷額も全国と同様に減少しており、1992 年には 953 億円あったが、2013 年
には 240 億円になっている。
全国に占める割合は、
分析を行った期間内において 1998 年が最も高く 55%
であったが、以降は減少傾向にあり 2006 年には 43%まで低下した。直近の 2013 年は 52%である(図
表・14)
。
図表・13 なめし革製造業の各県の事業所数(左)/製造品出荷額(右)が全国に占める割合
千葉
3%
奈良
3%
その他
13%
その他
11%
北海道
5%
和歌山
3%
埼玉
5%
東京
8%
兵庫
52%
兵庫
60%
東京
16%
山形
21%
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
図表・14 兵庫県のなめし革製造業の製造品出荷額と全国に占める割合の推移
120
60%
55%
52%
49%
100
50%
43%
85
80
66
40%
70
63
64
58
60
30%
51 51
41 41 40 40
33
40
29
32 32
27 24
22 24
20%
兵庫県の製造品出荷額等(十億円)
2013年
2012年
2010年
2008年
2009年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1996年
1997年
0%
1995年
0
1994年
10%
1993年
20
1992年
十
億
円
95
製造品出荷額等の全国に占める割合
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
15
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
主要産地のなめし革製造業の 1 事業者あたりの製造品出荷額を比較したものが図表・15 である。兵
庫県は 2.2 億円で山形県、北海道、奈良県を下回る。山形県は最大手のミドリホクヨー㈱(現ミドリオー
トレザー(株))が拠点を構えるため額が大きくなっていると考えられる。
また、兵庫県では製造品出荷額と事業所数が同程度の割合で減少してきたため、なめし革製造業の 1
事業者あたりの製造品出荷額の推移に大きな変化は生じてこなかった(図表・16)。
図表・15 主要産地のなめし革製造業の 1 事業者あたりの製造品出荷額
35
32.2
30
25
20
億 15
円
10
6.9
5
3.0
2.2
1.2
0
兵庫
(110社、
240億円)
山形
(3社、
97億円)
東京
(30社、
37億円)
北海道
(3社、
21億円)
奈良
(5社、
15億円)
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
図表・16 兵庫県のなめし革製造業の 1 事業者あたりの製造品出荷額の推移
3.0
2.5
2.4
2.2
1.9
2.0
2.1
2.0 2.0
1.9
1.8
2.0
1.9
2.1
2.1
2.1
2.0 2.0
2.2
1.7
億 1.5
円
1.0
0.5
2013年
2012年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0.0
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
16
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
主要産地のなめし革製造業の付加価値割合 3を比較したものが図表・17 である。兵庫県は 23%となっ
ており、主要な産地のなかで最も低い。兵庫県では 2006 年には付加価値割合が 32%であったが、以降
減少傾向にあり 2013 年は 23%まで低下している。この間に競争力を低下させていたと考えられる(図
表・18)
。
図表・17 主要産地のなめし革製造業の付加価値割合
57%
60%
52%
48%
47%
山形
(3社、
97億円)
東京
(30社、
37億円)
50%
40%
30%
23%
20%
10%
0%
兵庫
(110社、
240億円)
北海道
(3社、
21億円)
奈良
(5社、
15億円)
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
図表・18 全国と兵庫県のなめし革製造業の付加価値割合の推移
45%
40%
35%
34%
30%
32%
25%
23%
20%
15%
10%
5%
全国
2013年
2012年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0%
兵庫県
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
3
付加価値額は、従業者 30 人以上の場合、付加価値額=製造品出荷額等+(製造品年末在庫額-製造品年初在庫額)+(半製品及び仕掛
品年末価額-半製品及び仕掛品年初価額)-(消費税を除く内国消費税額+推計消費税額-原材料使用額等-減価償却額として計算さ
れている。また、従業者 29 人以下の場合は、粗付加価値額=製造品出荷額等-(消費税を除く内国消費税額+推計消費税額)-原材料使
用額等として計算されている。本報告書では、付加価値額と粗付加価値額を合算したものを付加価値額と呼んでいる。
また、付加価値割合は、付加価値割合=付加価値額/製造品出荷額として算出している。
17
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
3)姫路・たつののなめし革製造業の衰退の要因
上記のとおり兵庫県(姫路・たつの等)のなめし革製造業は、近年、製造品出荷額を大きく減少さ
せ、また、付加価値割合も低下している。
この大きな要因の 1 つとして「競争力のある海外製品(バッグ・靴)の流入」が挙げられる。1990
年代以降は、グローバル化に伴い鞄・革製履物等の輸入額が大きく拡大し、その内訳はイタリアやフ
ランスなどからの高価格製品、そして中国などからの低価格製品が占めている。これらの製品の輸入
拡大の影響により、国内メーカーの製造品出荷額は減少しており、その製造において調達していた国
内の皮革の購入額も減少したと考えられる。
また、要因の 2 つ目として「製品メーカーの海外への生産移転」が挙げられる。国内メーカーは低
価格な製品に対抗するために、アジアに生産拠点を移転し、現地国または周辺国から皮革を調達する
ようになったと考えられる。
これらの要因により、兵庫県のなめし革製造業の生産量は減少し、多品種少量生産化による生産の
非効率化が進み、各事業者の利益率が悪化したのではないかと推測される(次図①②③に該当)
。利益
が減少すると、新規の設備や人材の採用・育成への投資力が低下し、これが中長期的には、技術力の
停滞を招き、製造品の品質の低下も招く可能性がある(次図④⑤⑥に該当)
。結果として、海外製品の
コストパフォーマンスが相対的に高くなり、消費者から選好され、その結果、さらに我が国の事業者
の生産量が減少するという悪循環に陥っていると推測される(次図⑦⑧に該当)
。
さらには、近年の国際的な革製品の需要の高まりと、牛肉消費量の減少から、原皮の需給バランス
が変化し、生産量が減少し発注ロットが小さくなっている国内事業者は良質な原皮を調達できなく
なっていることも、品質の低下の一因となっている(次図⑨⑩に該当)。
また、利益の減少は国内のなめし革製造業者の廃業や事業の非継承を招き、姫路・たつのにおいて
一定の市場規模があったから事業が成立していた薬品・機械メーカー等の皮革関連事業者も廃業した
り撤退したりするようになった。これらを現地で調達できていたなめし革製造業の非効率化や、設備
投資への非積極化も招いており、悪循環に拍車がかかっていると想定される(次図⑪⑫⑬に該当)
。
図表・19 姫路・たつのなめし革製造業の構造
競争力の
ある海外製品
(鞄・靴)の流入& 1
製品メーカーの海外
への生産移転
各事業者の
生産量の減少
生産の
非効率化
2
3
9
13
8
海外製品の
選択
原皮の調達力の
低下
利益の
減少
日本の
事業者の廃業
(非継承等)
11
10
4
14
7
品質の低下
6
技術力の
停滞
5
投資への
非積極化
(設備・人材)
18
15
地域内の
競争環境の
緩和
12
皮革関連業の
廃業・撤退
(薬品、機械等)
13
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
2-3.鞄・ハンドバッグ製造業の状況
1)我が国の皮革産業の状況
日本全体の鞄・ハンドバッグの事業所数、製造品出荷額を示したものが、図表・20 と図表・21 であ
る。事業所数は 1994 年には 1,760 ヶ所存在したが、2013 年には 419 ヶ所まで減少し、製造品出荷額は
1992 年に 2,687 億円あったが、2013 年には 827 億円まで減少している。
図表・20 鞄・ハンドバッグ製造業の事業所数の推移
2,000
1,760
1,800 1,625
20年間で
74%減少
1,600
1,319
1,223
1,400
1,200
1,050
865
所 1,000
736 723
800
618 635
560 555
634
517
600
466 441 419
400
200
2013年
2012年
2009年
2010年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1998年
1999年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
図表・21 鞄・ハンドバッグ製造業の製造品出荷額の推移
269 270
250
20年間で
69%減少
225 225
196
182
200
194
158 159
129
119 113
107 103 105 104 110
86
100
77
84 83
2012年
十
億 150
円
2010年
300
50
2013年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
19
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
鞄・ハンドバッグ 4の輸出入額を示したものが図表・22 である。輸出額は 1992 年が 50 百万ドル、2015
年は 51 百万ドル(63 億円)とこれらの期間内でほとんど変化がない。一方、輸入額は 1992 年が 1,707
百万ドルであったが、2015 年には 5,291 百万ドル(6,443 億円)に大きく増加している。これまで常に
大きな輸入超過であり、2015 年は輸出の 63 倍の輸入があった。
また、鞄・ハンドバッグの輸入額が製造品出荷額に占める割合の推移を示したものが図表・23 であ
る。1992 年は国内生産額に対して 9 割の鞄・ハンドバッグを輸入していたが、2013 年は国内生産額の
8 倍もの製品を輸入するようになっている。
図表・22 鞄・ハンドバッグの輸出入額の推移
7,000
6,000
5,291
5,000
百 4,000
万
ド
ル 3,000
1,707
2,000
1,000
51
50
2015年
2014年
2013年
2011年
2012年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1998年
1999年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0
出所)UN Comtrade を元に野村総合研究所作成
図表・23 鞄・ハンドバッグの輸入額が製造品出荷額に占める割合の推移(為替は固定)
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0
出所)工業統計、UN Comtrade を元に野村総合研究所作成
4
「Trunks, suit-cases, camera cases, handbags, etc」と「Sacks and bags of a kind used for packing of goods」の合算
20
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
2)各産業集積地の状況
本事業の検討会において対象としている豊岡地域が存在する、兵庫県の鞄・ハンドバッグ製造業の
事業所数が全国に占める割合は 18%で全国 3 位、製造品出荷額が全国に占める割合は 22%で全国 2 位
の規模である(図表・24)
。
また、兵庫県の製造品出荷額も全国と同様に減少し、1992 年に 345 億円あった製造品出荷額が 2002
年には 139 億円に減少している。ところが 2003 年以降は上昇に転じ、2013 年には 179 億円となってい
る。また、製造品出荷額が全国に占める割合は 1992 年には 13%であったが、これまで上昇傾向にあり、
2013 年には 22%となっている(図表・25)。
図表・24 鞄・ハンドバッグ製造業の各県の事業所数(左)/製造品出荷額(右)が全国に占める割合
東京
22%
その他
25%
その他
23%
東京
29%
埼玉
6%
愛知
7%
大阪
20%
埼玉
8%
千葉
6%
兵庫
22%
大阪
14%
兵庫
18%
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
図表・25 兵庫県の鞄・ハンドバッグ製造業の製造品出荷額と全国に占める割合の推移
40
30%
34
35
33
22%
28 27
30
25
20
十
億 20 13%
円
15
20%
22 22
22
25
25%
22
18
14
15
16 17
18
21
19
17
18
15
15%
10%
10
5%
5
兵庫県の製造品出荷額等(十億円)
2013年
2012年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
0%
1992年
0
製造品出荷額等の全国に占める割合
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
21
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
主要産地の鞄・ハンドバッグ製造業の 1 事業者あたりの製造品出荷額を比較したものが図表・26 で
ある。兵庫県は、千葉県、東京都に次いで大きい。
また、兵庫県では製造品出荷額が 2003 年以降増加しているが、事業所数は 95 ヶ所(2003 年)から
75 ヶ所(2013 年)に減少しているため、1 事業者あたりの製造品出荷額は 2002 年の 1.3 億円から 2013
年の 2.4 億円に増加している(図表・27)。
図表・26 主要産地の鞄・ハンドバッグ製造業の 1 事業者あたりの製造品出荷額
5
4.7
4
3
2.6
2.4
億
円 2
1.4
1.4
1
0
東京
(93社、
241億円)
兵庫
(76社、
97億円)
大阪
(83社、
120億円)
千葉
(10社、
47億円)
埼玉
(34社、
47億円)
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
図表・27 兵庫県の鞄・ハンドバッグ製造業の 1 事業者あたりの製造品出荷額の推移
3.0
2.7
2.5
2.4
2.2 2.3
2.1
1.9
2.0
1.6
2.0
1.6
1.6
1.5
1.4
億 1.5
円
2.0
1.8
1.3
1.3 1.2
1.0
0.5
2013年
2012年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0.0
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
22
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
主要産地の鞄・ハンドバッグ製造業の付加価値割合 5を比較したものが図表・28 である。兵庫県は
49%となっており、主要な産地のなかで最も高かった。2010 年まではほぼ全国と同水準で推移してき
たが、2012 年以降に上昇している(図表・29)
。
図表・28 主要産地の鞄・ハンドバッグ製造業の付加価値割合
60%
49%
50%
47%
41%
39%
40%
43%
30%
20%
10%
0%
東京
(93社、
241億円)
兵庫
(76社、
97億円)
大阪
(83社、
120億円)
埼玉
(34社、
47億円)
千葉
(10社、
47億円)
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
図表・29 全国と兵庫県の鞄・ハンドバッグ製造業の付加価値割合の推移
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
全国
2013年
2012年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0%
兵庫県
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
5
付加価値額は、従業者 30 人以上の場合、付加価値額=製造品出荷額等+(製造品年末在庫額-製造品年初在庫額)+(半製品及び仕掛
品年末価額-半製品及び仕掛品年初価額)-(消費税を除く内国消費税額+推計消費税額-原材料使用額等-減価償却額として計算さ
れている。また、従業者 29 人以下の場合は、粗付加価値額=製造品出荷額等-(消費税を除く内国消費税額+推計消費税額)-原材料使
用額等として計算されている。本報告書では、付加価値額と粗付加価値額を合算したものを付加価値額と呼んでいる。
また、付加価値割合は、付加価値割合=付加価値額/製造品出荷額として算出している。
23
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
3)豊岡の鞄製造業の活性化の要因
我が国では 1990 年代以降、アジアで製造された安価な製品の輸入が急増しており、その影響で中価
格帯の鞄を受託製造(OEM 製造)していた豊岡のメーカーの生産額も減少したと考えられる(次図①
に該当)
。これらの状況への対策として、豊岡では 2006 年 以 降 「 豊 岡 鞄 」 を 商 標 登 録 し 、 オ リ ジ
ナ ル 製 品 を 展 開 し て い る 。 各 製 品 と も に 「 廉 価 で 品 質 が 良 く 」、 末 永 く 使 え る 「 ス タ ン ダ ー ド
なデザイン」であり、また「アフターサービスが充実」しているという明確なポジショニン
。
グ に よ り 次 第 に 消 費 者 や 小 売 の 支 持 を 得 る よ う に な っ て い る (次図②③に該当)
豊 岡 で は 依 然 と し て OEM 製 造 の 割 合 が 高 い も の の 、オ リ ジ ナ ル 製 品 を 消 費 者 か ら 選 択 し て
も ら い 、 鞄 産 地 豊 岡 と い う 知 名 度 が 高 ま っ て い る こ と を 背 景 に 、 OEM の 受 託 に お い て も メ ー
カーが積極的に豊岡のメーカーを選択する動機が強まり、豊岡のメーカーの交渉力も強く
。それが豊岡の製造品出荷額の持ち直しと付加価値割合
な っ て い る と 考 え ら れ る (次図④⑤に該当)
の増加に結実していると推測される(次図⑥に該当)。
豊岡ではさらに、個社の売上・利益増加を背景として、各社が積極的な設備投資や採用・人材育成
を行っている。また、特筆すべきは、トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー、豊岡市鞄縫製者
トレーニングセンターなど地域として人材育成を行っており、中長期的に技術力やサービス力の向上
し、消費者の満足につながり、豊岡鞄が選好につながると考えられる(次図⑦⑧⑨⑩に該当)
。豊岡で
は、このような好循環サイクルが生まれはじめている。
図表・30 豊岡の鞄製造業の構造
価格競争力の
ある海外製品の
流入
明確に
ポジショニング
されたオリジナル製品
&豊岡ブランド
の展開
3
各事業者の 2
生産量の減少
1
4
消費者満足の
向上
オリジナル製品
の消費者の
選択
10
OEM製品の
対メーカーの
交渉力強化
5
6
6
9
技術力・サービス
の向上
8
個社&地域に
よる投資への
積極化
(設備・人材)
24
7
生産量の拡大・
利益の確保
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
2-4.革製履物製造業の状況
1)我が国の皮革産業の状況
日本全体の革製履物製造業の事業所数、製造品出荷額を示したものが、図表・31 と図表・32 である。
約 20 年間のあいだに、事業所数は 69%、製造品出荷額は 76%減少している。
事業所数は 1992 年には 1,283 ヶ所存在したが、
2013 年には 394 ヶ所まで減少し、製造品出荷額は 1992
年に 4,909 億円あったが、2013 年には 1,199 億円まで減少している。
図表・31 革製履物製造業の事業所数の推移
1,400 1,283
1,200
20年間で
69%減少
1,060
992
973
934
1,000
864
740
800
695
625 603
所
600
554 561 575
502
456
402 394
400
200
2013年
2012年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2003年
2004年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1992年
1993年
0
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
図表・32 革製履物製造業の製造品出荷額の推移
600
20年間で
76%減少
491
500
451
388 384
400
351
346
330
300
十
億 300
円
285
252
221
197 197 188
200
178
193
174
149 136
120 120
100
2013年
2012年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
25
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
革製履物 6の輸出入額を示したものが図表・33 である。輸出額は 1992 年に 32 百万ドルであったが、
2015 年には 14 百万ドル(17 億円)に減少している。一方、輸入額は 1992 年の 506 百万ドルから、2015
年には 1,304 百万ドル(1,588 億円)に大きく増加している。これまで常に大きな輸入超過であり、2015
年は輸出の 17 倍の輸入があった。
また、革製履物の輸入額が製造品出荷額に占める割合の推移を示したものが図表・34 である。1992
年は国内生産額に対して 2 倍の革製履物を輸入していたが、
2013 年はその割合が 10 倍に増加している。
図表・33 革製履物の輸出入額の推移
1,600
1,304
1,400
1,200
百
万
ド
ル
1,000
800
600 506
400
200
32
14
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0
出所)UN Comtrade を元に野村総合研究所作成
図表・34 革製履物の輸入額が製造品出荷額に占める割合の推移(為替は固定)
12
10
8
6
4
2
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0
出所)工業統計、UN Comtrade を元に野村総合研究所作成
6
Footwear with uppers of leather
26
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
2)各産業集積地の状況
本事業の検討会において対象としている浅草地区が存在する、東京都の革製履物製造業の事業所数
が全国に占める割合は 24%、製造品出荷額が全国に占める割合は 24%と、共に全国で最大となってい
る(図表・35)
。
また、東京都の製造品出荷額も減少しており、1992 年には 1,523 億円あったが、2013 年には 287 億
円になっている。
全国に占める割合は分析を行った期間内では 2000 年が最も高く 36%であったが、2013
年には 24%まで減少している(図表・36)。
図表・35 革製履物製造業の各県の事業所数(左)/製造品出荷額(右)が全国に占める割合
東京
24%
東京
24%
その他
30%
その他
37%
秋田
5%
兵庫
18%
兵庫
23%
大阪
9%
山形
6%
埼玉
9%
埼玉
8%
福島
7%
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
図表・36 東京都の革製履物製造業の製造品出荷額と全国に占める割合の推移
160
152
140
123 124 121 119
35%
116
120
30%
102 101
100
24%
86
76
80
60 59 58
56
60
64
25%
20%
58
46
15%
40
29 29
40
10%
東京都の製造品出荷額等(十億円)
2013年
2012年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
0%
1995年
0
1994年
5%
1993年
20
1992年
十
億
円
40%
36%
135
製造品出荷額等の全国に占める割合
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
27
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
主要産地の革製履物製造業の 1 事業者あたりの製造品出荷額を比較したものが図表・37 である。東
京都は 3.0 億円で山形県、福島県を下回る。
また、東京都では事業所数の減少よりも製造品出荷額の減少スピードの方が大きいため、1 事業者あ
たりの製造品出荷額が減少している(図表・38)
。
図表・37 主要産地の革製履物製造業の 1 事業者あたりの製造品出荷額
6
5
4.8
4.5
4
3.0
2.9
3
億
円
2.3
2
1
0
東京
(94社、
287億円)
兵庫
(91社、
211億円)
埼玉
(34社、
100億円)
福島
(18社、
82億円)
山形
(15社、
72億円)
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
図表・38 東京都の革製履物製造業の 1 事業者あたりの製造品出荷額の推移
5.0
4.4
4.3
4.5
4.4
4.0
4.0
3.8
4.0
3.8 3.7
3.5
3.9 4.0
3.6
3.4 3.4
3.3
3.5
3.1 3.0
3.0
億 2.5
円
2.0
1.5
1.0
0.5
2013年
2012年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0.0
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
28
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
主要産地の革製履物製造業の付加価値割合 7を比較したものが図表・39 である。東京都の割合は 33%
となっており、埼玉県、兵庫県よりも低かった。また、東京都の割合は直近 20 年間においてほぼ横ば
いである。
(図表・40)。
図表・39 主要産地の革製履物製造業の付加価値割合
45%
41%
40%
37%
33%
35%
31%
28%
30%
25%
20%
15%
10%
5%
0%
東京
(94社、
287億円)
兵庫
(91社、
211億円)
埼玉
(34社、
100億円)
山形
(15社、
72億円)
福島
(18社、
82億円)
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
図表・40 全国と東京都の革製履物製造業の付加価値割合の推移
45%
40%
35%
30%
25%
20%
15%
10%
5%
全国
2013年
2012年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0%
東京都
出所)工業統計を元に野村総合研究所作成
7
付加価値額は、従業者 30 人以上の場合、付加価値額=製造品出荷額等+(製造品年末在庫額-製造品年初在庫額)+(半製品及び仕掛
品年末価額-半製品及び仕掛品年初価額)-(消費税を除く内国消費税額+推計消費税額-原材料使用額等-減価償却額として計算さ
れている。また、従業者 29 人以下の場合は、粗付加価値額=製造品出荷額等-(消費税を除く内国消費税額+推計消費税額)-原材料使
用額等として計算されている。本報告書では、付加価値額と粗付加価値額を合算したものを付加価値額と呼んでいる。
また、付加価値割合は、付加価値割合=付加価値額/製造品出荷額として算出している。
29
第2章
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
3)浅草の革製履物製造業の衰退の要因
これまで浅草は、産業集積地としての様々な恩恵を享受してきたと考えられる。例えば、浅草地区
では革製履物製造業のほか、履物卸、履物部品製造業、皮革卸など様々な革製履物関連事業者が集積
しており、物理的な輸送コストが低く、また、革製履物を取り扱う卸・小売にとっても、浅草地区に
行けば複数のメーカーと交渉・取引ができ、取引がしやすいというメリットが存在した。
そのほか、事業者間の情報のやり取りも集積地では密になる傾向があり、ビジネス上、重要な情報
も人づてに効率的に伝達されていたと考えられる。また、集積していることにより、各製造工程を分
業しやすくなり、作業効率が向上し、各事業者が専門性を特化してきたと考えられる。結果として、
多くの技能者(職人)を育成したり、浅草において革製履物事業を開業したりする者も多かったと考
えられる。
これらのメリットから浅草地区は日本の一大履物産地として振興していたが、徐々にトラック等の
国内輸送網の発達により、流通コストは下がり、むしろ人件費(あるいは土地代)の高い浅草の他地
域に対する競争優位は小さくなっていった。また、インターネットの普及により、国内外の情報は集
積地でない事業者でも容易に獲得できるようになった(情報コストの低下)
。
また、1990 年代から国外からの輸入が急増し、あわせて、国内事業者がコスト競争力を求めて国外
に生産拠点を移転していったことにより、浅草地区の革製履物製造業の集積度も下がり、分業の効率
も落ちていったと考えられる。
そのほか、従来の浅草のメリットは、良い品質の製品を効率的に製造するという点において特に機
能してきたが、履物の一定の市場浸透により、顧客の嗜好は多様化し、また、品質だけではなく、履
物を購入する、使用するという体験の全てを評価するように変化しており、これまでの強みに加えて
顧客視点から評価される新たな強みを構築する必要性に迫られている。
図表・41 浅草の革製履物製造業の構造
流通・情報コストの低下
 物理的な輸送コストの低さ
 卸・小売にとっての取引のし易さ
安価な海外製品の輸入
 事業者間の効率的情報交換
生産拠点の国外への移転
 事業者間の分業による効率化
 技能者の集中
顧客の嗜好の変化
顧客視点から評価される新たな強みを構築する必要性
30
第3章 皮革産業以外の産業集積地での取り組み
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
3―1.本章の概要
本章では、皮革製品製造業の集積地における取り組み検討に参考となる成功事例について調査を行っ
ている。具体的な調査対象と、参考としている取り組みは以下のとおりである。
図表・42 調査対象と主な取り組み
調査対象
主な取り組み
・地域ブランド:豊岡鞄(2006 年~)
豊岡鞄(兵庫県豊岡市)
・鞄縫製者トレーニングセンター(2013 年~)
・トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー(2014 年~)
今治タオル(愛媛県今治市)
・地域ブランド:今治タオル
高岡銅器(富山県高岡市)
・共通ブランド:KANAYA
甲州ワイン(山梨県甲州市)
燕三条(新潟県燕市・三条市)
・ワインツーリズムやまなし(2008 年~)
・Koshu of Japan(2009 年~)
・工場の祭典
本検討会の対象にもなっている兵庫県豊岡市では、兵庫県鞄工業組合が 2006 年より地域ブランドとし
て豊岡鞄を展開している。また、2013 年からは兵庫県鞄工業組合の加盟事業者のうち、有志の 12 事業者
によって「鞄縫製者トレーニングセンター」を整備するとともに、2014 年からは豊岡市が、地場産業で
ある鞄に特化した拠点施設である「トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー」が整備されている。
愛媛県今治市では、四国タオル工業組合が 2007 年より地域ブランドとして今治タオルを展開、また富
山県高岡市では、2011 年より有志の 14 社によって金屋町にちなんだ高岡銅器のブランド「KANAYA」
を展開している。
山梨県甲州市では、2008 年から一般社団法人ワインツーリズムにより「ワインツーリズムやまなし」
という甲州のワイナリーをめぐることができるイベントが実施されている。また、あわせて 2009 年から
は日本のワイン生産地である山梨県内のワイン生産者 15 社と甲州市商工会、甲府商工会議所、山梨県ワ
イン酒造協同組合によって Koshu of Japan が設立され、国外において共同プロモーションを実施してい
る。
また、これと類似の取り組みとして、新潟県燕市・三条市において 2013 年より両地域の約 50 の工場
の見学を行うことができる「工場の祭典」というイベントが行われている。
32
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
3-2.豊岡鞄に係る取り組み
(1)地域ブランド:豊岡鞄(2006 年~)
・兵庫県鞄工業組合は 2005 年 12 月頃から、豊岡鞄の製品の審査システムや品質基準を守ることな
どを会員が誓約するマニフェストの整備を行い、2006 年 4 月から運用が始まった地域団体商標制
度に出願、地域ブランド「豊岡鞄」の運用が認められた。
図表・43 「豊岡鞄」の認証方法
出所)豊岡鞄公式 Web サイト
33
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
・
「豊岡鞄」の商標は兵庫県鞄工業組合に所属し、
「豊岡鞄」地域ブランドマニフェスト(図表・44)
に署名した事業者が製造し、かつ、兵庫県鞄工業組合「豊岡鞄」地域ブランド委員会が製品基準
に基づき審査し合格の認定を与えた製品にのみ使用が認められている(図表・45)
。
図表・44 「豊岡鞄」ブランドマニフェスト
出所)「豊岡鞄」地域ブランド 参加マニュアル
図表・45 「豊岡鞄」応募製品の条件
企画
・自社企画・共同企画及び国内外は不問
製造
・兵庫県鞄工業組合企業の工場(協力工場・内職)で製造すること。
・海外生産は対象外
・半製品の輸入で地域内加工品は対象外
種類
・鞄の種類は不問
ブランド
・自社・他社のブランドとの併用は不問
材料
・生地・金具・部品などの原産地は不問
出所)「豊岡鞄」地域ブランド 参加マニュアルを基に野村総合研究所作成
34
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
・
「豊岡鞄」の認証を受けた商品の欠陥については交換・無料修理を保証している(図表・46)
。
・現在、
「豊岡鞄」地域ブランドマニフェストに署名した企業は 18 社。
・兵庫県鞄工業組合では、保証書、縫着織ネーム、下げ札、取扱い説明書などを販売しており、こ
れらをブランドの運用の原資としている。なお、保証書、縫着織ネームに関しては装着を必須と
している(図表・47)
。
・
「豊岡鞄」は豊岡の鞄産業の高付加価値化に向けた重要なきっかけとなっている。
図表・46 「豊岡鞄」の製品保証
出所)豊岡鞄公式 Web サイト
図表・47 「豊岡鞄」の認証マークの使用料金とパターン
出所)豊岡鞄公式 Web サイト
35
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
(2)鞄縫製者トレーニングセンター(2013 年~)
・兵庫県鞄工業組合では、加盟 50 数社を対象にアンケートしたところ「縫製者の人手不足と高齢
化」が課題として指摘されたことを受け、兵庫県鞄工業組合の加盟事業者のうち、有志の 12 事
業者によって「市鞄縫製者育成組合」を 2013 年 5 月に設立し、同年 9 月より「鞄縫製者トレー
ニングセンター(以下、トレーニングセンター)
」を運営している 8。
・トレーニングセンターは豊岡市の空き施設を活用し、豊岡で鞄作りを行っているベテランの職人
が指導を行っている。
・トレーニングの全行程は 3 ヶ月に設定されており、2 ヵ月間の実技指導の後、1 ヵ月間メーカー
で実習を受ける(平日 9 時~17 時、土日祝日は休み)。
・各期約 10 名の実習生を受け入れており、受け入れはこれまで 8 回行われている(合計約 80 名)
。
・修了後は、ハローワークによる職業斡旋も行われ、豊岡の鞄メーカーに就業する方も多い。第 1
期(2013 年 9 月~11 月)の生徒 10 名のうち、7 名が市内の鞄メーカーに就業している 9。
・本センターは当初厚生労働省の緊急雇用創出事業を活用(年 1,750 万円の助成)した豊岡市の委
託事業として行われており、実習生は時給 800 円とともに通勤手当が支払われる 10。
図表・48 鞄縫製者トレーニングセンターの外観と内観
出所)豊岡市公式 Web サイト
2013/06/28 神戸新聞地方版
2013/11/30 神戸新聞地方版
10 豊岡市 Web サイト
8
9
36
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
(3)トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー(2014 年~)
・2014 年 4 月、豊岡市は豊岡駅から徒歩 10 分ほどの宵田商店街に、鞄に特化した拠点施設である
「トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー(以下、アルチザン)
」の整備を行った 11。
・アルチザンは、大型空き店舗を改装した施設で、1F の鞄ショップ、2F の鞄のパーツを販売する
。
専門店、そして 3F の鞄職人育成専門校で構成されている 12(図表・49)
図表・49 トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニューの外観と内観
(左上・外観、右上・1 階、左下・2 階、右下・3 階)
出所)トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー公式 Web サイト(写真撮影:下村康典)
11
12
2015/08/10 日経消費インサイト、トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー公式 Web サイト
トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー公式 Web サイト
37
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
・1 階の鞄ショップには、アルチザンオリジナルブランドである「A&D27」や「BELCIENTO」の
他、豊岡産の様々なブランドが置かれている。
・3 階の鞄職人育成専門校では、年間プログラムで上限 10 名の生徒を受け入れている(2014 年度:
6 人、2015 年度:9 名)
・生徒の大半は豊岡市外から入校し、多くの卒業生が市内の事業者で就業している(第 1 期の 6 人
は企業派遣の 1 名を除き全員が豊岡市の事業者に入社)13。
・約 1,380 時間/年の授業を行っており、授業料は年間 126 万円である。応募の条件は、
「入学時の
年齢が 18 歳から 40 歳までの男女」
、
「高等学校卒業(見込み)以上」等となっている。
・アルチザンは、豊岡市、商工会議所、商店街らによって作られた豊岡まちづくり㈱が設立・運営
を行う。
・設立にあたっては、豊岡市が整備費として 1 億 3,000 万円(土地・建物取得費:2,900 万円、建
物設計費等:1,100 万円、建物改修工事費:9,000 万円)を補助するとともに、豊岡商工会議所等
が 1,500 万円の支援を行った。
・現在、アルチザンは豊岡の鞄産業の振興において重要な拠点となっている。
図表・50 トヨオカカバンアルチザンスクールの特徴
出所)トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー公式 Web サイト
13
2015/08/10 日経消費インサイト
38
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
3-3.今治タオルに係る取り組み 14
・タオルの業界団体である四国タオル工業組合では、衰退の危機感から「産地ビジョン策定委員会」
が設置され、1995 年に「産地ビジョン」
(今治産地に未来はあるか)を策定した。
・しかし、既に輸入量が国内生産量を逆転した当時ですら、タオルメーカーの危機意識は大きくは
なく、
「技術や品質では輸入品に負けない」、
「いいものをつくっていさえいれば売れる」、
「いつか
は見直される日が来る」という、漠然とした期待感が漂っており、
「産地ビジョン」は事業者に浸
透しなかった。
・その後も市場の衰退は進み、2001 年に日本タオル工業組合連合会は経済産業省にセーフガード
の発動を要請した。しかし、4 度の決定見送りののち、2004 年 4 月に調査が打ち切りとなり、産
業はさらに厳しい状況に追い込まれることとなった。
・2004 年 5 月には、
「新産地ビジョン策定委員会」が設置され、産地ビジョン「「MADE IN 今治」
で差別化」が策定された。タオル事業者の自立の方向性を示したビジョンを示したことで、卸か
らは一定の圧力の圧力を受けたが、下請けビジネスは限界であるという危機感からこのビジョン
を実行していった。
・2006 年にはプロジェクト費用の 2/3 が補助される中小企業庁「JAPAN ブランド育成支援事業」
に「Imabari タオルプロデュース~「新 Towel ライフ」の演出~」」というプロジェクトに応募し、
採択された。
・本事業予算により佐藤可士和氏がクリエイティブディレクターに就任し、はじめに、今治タオル
の提供価値である「安心・安全・高品質」を伝達するブランドロゴを設定し、今治の表記を「imabari」
に統一した。
・このロゴは各商品に、商品に縫い付ける織りネームとして取り付けることとした。
図表・51 今治タオルのブランドロゴ
出所)今治タオル公式 Web サイト
14
佐藤可士和・四国タオル工業組合「今治タオル 奇跡の復活 起死回生のブランド戦略」を参考に記述。
39
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
・当時、今治タオルの事業者は技術に自信を持っていたため、様々な柄を表現したいと考えていた
が、顧客にとっての「安心・安全・高品質」のわかりやすさを重視し、商品は白に統一した。
・また、今治タオルに関して厳格な品質基準を設定した。具体的には吸水性、脱毛率、パイル保持
率、耐光、洗濯、汗、摩擦、引張強さ、破裂強さ、寸法変化率、メロー巻き部分の滑脱抵抗力、
遊離ホルムアルデヒドという 12 の試験項目を設け、それをクリアしたもののみを今治タオルとす
ることにした。
・今治タオルのお披露目イベントとして、2007 年 2 月に青山のスパイラルホールにて、5 日間の「今
治タオルプロジェクト展」を行うとともに、初日にはマスメディアを対象としたプレス発表会を
行った。
・2012 年 6 月は南青山に直営店舗を設けている。この店舗は必ずしも売上をあげることを目的と
した店舗ではなく、今治タオルの PR を目的としたものであった。
・また、国内外の各種展示会に積極的に出展してきた。国内ではじめて、出展した「インテリア・
ライフスタイル展」は伊勢丹百貨店新宿店での取り扱いのきっかけとなり、また国外では近年、
インテリア等における影響力の大きな展示会に出展することができるようになっている。
・また、国内外の展示会ともに、今治タオルの「安心・安全・高品質」のイメージを伝えるために、
ブースは白木による日本調に統一している。
図表・52 今治タオルの国内外プロモーションイベント例
国内
・インテリア・ライフスタイル展(2007 年、東京・ビッグサイト)
・インテリア・ライフスタイル展(2008 年)
・今治タオルメッセ(2007 年、2008 年)
・今治タオルメッセの東京開催(2009 年)
国外
・ハビターレ 09(2009 年、フィンランド)
・上海インターナショナルギフトショー(2011 年)
・マチェフ展(2011~2013 年、ミラノ)
・メゾン・エ・オブジェ・アジア(2014 年、シンガポール)
・100%デザイン(2014 年、ロンドン)
・スプリング・フェア・インターナショナル(2015 年、バーミンガム)
図表・53 南青山店の内観
出所)今治タオル公式 Web サイト
40
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
図表・54 国外展示会での展示ブース
出所)今治タオル公式 Web サイト
3-4.高岡銅器に係る取り組み
・高岡銅器の卸など 62 社によって構成される高岡銅器協同組合では、2010 年から「販路改革 10
年計画」に取り組み、高岡市金屋町で鋳物が発祥して 400 周年にあたる 2011 年に、有志の 14 社
によって金屋町にちなんだ高岡銅器のブランド「KANAYA」を立ち上げた 15。
図表・55
KANAYA の商品郡
出所)KANAYA 公式 Web サイト
・本取り組みは、中小企業庁「JAPAN ブランド育成支援事業」の補助を受け行ったもので(補助
は 2010 年~2013 年の 4 年間受けていた)
。補助 1 年目は、燕三条などの先行プロジェクトの視察、
勉強会、パリやフランクフルトの見本市見学や市場調査などを行い 16、2 年目に「KANAYA」を
立ち上げている。
15
16
2011/05/11 北日本新聞朝刊
2011/05/11 北日本新聞朝刊
41
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
・同組合では「KANAYA」のプロデューサー業務を富山県デザインセンターに 20 年間、非常勤で
勤務しており、高岡の産地の気質や、生産のレベルなども熟知している桐山登士樹氏に依頼し、
既存商品を利用した新商品を展開している。
・KANAYA の設立当初は、桐山氏に全てのデザインを委託していたが、現在は商品のバリエーショ
ンも増えてきたため、桐山氏と相談のうえ、8 人(組)の 30~40 代の若手のデザイナーと協業し
ている 17。
・トレンドの移り変わりが早すぎないため、地方の産地が取り組むには適正であると判断され、イ
ンテリアを中心に企画・販売されている。
・2011 年 7 月には東京にてブランド発表会を行い、
「KANAYA」ブランドの商品約 25 点を展示す
るとともに、同年 10 月にも発表会を行った 18。
・2012 年には「KANAYA」を株式会社化するとともに、ショップを構えている。また、フランス・
パリ市で開催される世界最大級のインテリア見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展している(2012
年~2014 年に出展)
。
・現在、
「KANAYA」は 9 社によって運営されており、専任はパートタイムの 1 名のみである。9
社の経営者が財務、営業、開発などを分業している。
・展示会などを基にした引き合いなどで、現在、KANAYA は主に大塚家具の店舗、百貨店の企画
展、個人のセレクトショップなどで販売されている。2014 年時点の年間売り上げは約 2,000 万円
とされている 19。
図表・56
KANAYA の直営店の外観と内観
出所)KANAYA 公式 Web サイト
17
18
19
2011/09/21 日経 MJ
2011/07/08 東京読売新聞
2014/01/24 東京読売新聞
42
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
3-5.甲州ワインに係る取り組み
(1)ワインツーリズムやまなし(2008 年~)
・山梨県では 2008 年より「参加者が自分たちで行動スケジュールを考え、ワインが造られる地域
「ワインツーリズムやまなし」が実施されている。
を自らの足で体感する 20」イベント、
・このイベントは毎年実施されており、
初回となる 2008 年には甲州市の 30 のワイナリーが参加し、
1 日の開催期間中に 1,284 人が来場した。
・現在、
「ワインツーリズムやまなし」には甲斐、山梨、笛吹、甲府のワイナリーが加わり、60 に
拡大している。
・開催当初のフリーパスは 2,500 円に設定していたが、年々来場者数が増加し、ワイナリー側が十
分に対応できるキャパシティの観点から、2012 年には 2 倍の 5,000 円に値上げし、1,500 人限定と
した。2013 年は定員に満たなかったものの、その後、受け入れ体制の整備を徐々に行うとともに、
人気がさらに拡大し、2014 年には 2,000 人、2015 年には 2,500 人に限定枠を拡大している。
図表・57 ワインツーリズムやまなしの参加者数の推移
出所)2015/11/06 日本経済新聞電子版
・イベントの当日は、ワイナリーを巡る参加者専用の循環バスが用意されており、参加申し込み者
には事前に簡易マップ、時刻表、ワイナリー情報が送付され、参加者は計画を立て参加する。当
日は試飲用のワイングラス(プラスチック製)もプレゼントされる。
・このイベントは 2000 年に甲府市市内にレストランを開業した大木氏が仕掛け人となり行われた
ものである。大木氏は山梨県出身で、東京でコンテンツを提案する業務を経験した後、甲府に U
ターンを行った。山梨のレストランでは、必ずしも山梨産のワインが楽しまれていないことを問
題視し、一般社団法人ワインツーリズムを立ち上げ、このような取り組みを行っている 21。
・大木氏は当初甲州ワインに関する作り手の思いなどを盛り込んだ小冊子を作り、800 円で販売を
行った。また、2007 年には地域の名所や旧跡などを盛り込んだ「ワイナリーマップ」を作成し、
500 円で販売した 22。
20
21
22
2015/11/06 日本経済新聞電子版
2015/10/26 日本経済新聞
2015/11/06 日本経済新聞電子版
43
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
(2)Koshu of Japan(2009 年~)
・日本のワイン生産地である山梨県内のワイン生産者 15 社と甲州市商工会、甲府商工会議所、山
梨県ワイン酒造協同組合によって 2009 年 7 月に Koshu of Japan(以下、KOJ)が設立された。そ
の後、一部企業が入れ替わり現在は 12 社が参加している。
・KOJ では、
「日本を代表する「甲州」の品質向上をはかり、世界市場において認知を向上させ、
適切なマーケットプレイスを獲得すること」を目的としている 23。
・具体的には、甲州ブドウや産地の歴史を説明した冊子、各社の製品を紹介するカタログ、Web
サイトなどを英語でも用意し、プロモーション活動を行っている。また、毎年、ロンドンなどで、
ワイン関連のジャーナリストや料飲関係者などを招く試飲会を実施している。
・2011 年度はロンドンに加えパリで、2015 年度にはストックホルムでもプロモーション活動を実
施している。
・また、2010 年度からは英国在住でワイン業界の世界的権威である「マスター・オブ・ワイン」
の資格を持つリーン・シェリフ氏をコンサルタントとして迎えている 24。
・本取り組みは、中小企業庁「JAPAN ブランド育成支援事業」の補助(2/3 補助)を受けて行わ
れていた。2010 年度の活動費は 3,000 万円で 2,000 万円を中小企業庁の補助で、1,000 万円を山梨
県、甲州市、甲州市商工会などの負担でまかなっている(補助は 2009 年~2011 年の 3 年間受けて
いた) 25。
23
24
25
Koshu of Japan 公式 Web サイトより
Koshu of Japan 公式 Web サイトより
2010/06/15 日本経済新聞
44
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
・このような活動の結果、KOJ 加盟ワイナリーは、2010 年度:1,992 本、2011 年度:3,388 本、2012
年度:6,168 本、2013 年度:16,818 本、2014 年度:22,284 本を輸出している 26。
・また、2012 年度までは全て EU 向けの輸出だったが、2013 年度以降は香港や台湾、オーストラ
リア、インドネシアなど EU 以外の国々にも輸出されるようになっている(2014 年度は EU 以外
が全輸出量の 71.4%を占める) 27。
図表・58
2009 年度
KOJ の国外プロモーションイベント例
・ジャパン・ソサエティー会員ら約 100 人を対象に、日本大使館でイベントを開
催(1 月 12 日)
・世界のワイン流通に影響力を持つジャーナリスト 20 人以上を日本料理店に招
待(1 月 13 日)
・現地のレストランや酒類小売店、報道関係者ら約 100 人を招待し、試飲・商談
会を開催(1 月 15 日)
2010 年度
・具体的に輸出を目指すワイナリーが個別に商談(1 月 17 日)
・現地のすし店に食のジャーナリストを招待し、和食と甲州ワインの相性を体験
(1 月 18 日)
・豪州のワイナリー各社がロンドンで開く大規模試飲会「ワイン オブ オースト
ラリア」を視察(1 月 19 日)
・業界関係者 150 人ほどを招き大規模商談会。夜は日本文化の親睦会「ジャパン・
ソサエティー」の会員ら 100 人と懇談会(1 月 20 日)
・ワイン専門店の担当者と意見交換会(1 月 21 日)
※プロモーション事業には、KOJ に加盟する 14 社のワイナリー経営者のほか、
県商工労働部長、甲州市長ら約 30 人が参加
出所)2009/12/25 日本経済新聞、2010/11/26 日本経済新聞、2011/01/18 山梨日日新聞、2011/01/22 山梨日日新聞を基に野村総合研究所作成
3-6.燕三条の鋳物に係る取り組み
・燕三条では 2013 年より「工場の祭典」というイベントが行われている。
・工場の祭典は、燕市、三条市、燕三条地場産センターなどによる実行委員会形式により実施され
ており、年 1 回数日間のみ両地域の約 50 の工場の見学を行うことができる。
・2013 年は 54 事業者が参加し、来場者は当初目標の 2 万人を下回り、来場者は 10,708 人であった
が、2014 年には 59 事業者が参加し 12,661 人が来場、2015 年は 68 事業者の参加で 19,312 人が来
場するなど年々人気が拡大している 28。
・例年、来場者の約 4 割が県外客で占められており、また、20 代~30 代が 5 割弱を占めている 29。
・2015 年の「工場の祭典」では、12 コースのバスツアーを用意するとともに、工場や寺院などで
レセプションを開催し、来場者には飲み物や食べ物が提供された 30。
26
27
28
29
30
2013/07/01
2016/03/13
2016/02/10
2013/10/30
2015/09/18
山梨日日新聞、2016/03/13 山梨日日新聞
山梨日日新聞
新潟日報
日経 MJ
新潟日報、2015/08/13 日刊工業新聞
45
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
図表・59 第 4 回「燕三条 工場の祭典」の概要
開催期間
2016 年 10 月 6 日(木)~10 月 9 日(日)9:00-16:00(12:00-13:00 を除く)
開催場所
新潟県三条市・燕市全域
主催・運営
「燕三条 工場の祭典」実行委員会
共催
一般財団法人燕三条地場産業振興センター、三条市、燕市
監修等
method/イベント全体監修
SPREAD/アートディレクション、デザイン
HOW INC/PR
出所)工場の祭典第4回「燕三条 工場の祭典」参加募集要項
図表・60 第 2 回「燕三条 工場の祭典」の様子
出所)工場の祭典 PressRelease(2015 年 6 月)写真撮影:Jingu Ooki
46
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
・元々、三条市では 2007 年より「越後三条鍛冶まつり」を実施し、製品製造の体験や展示販売を
行っていたが、来場者からは工場見学へのニーズが高く、ツアー形式で工場をまわれるイベント
として発展させた 31。
・また、当初のイベントは三条市のみで実施する予定であったが、「県外や世界に売り込むには三
条単体でなく、食器や調理機器で知られる燕と一緒の方が効果的だと判断 32」し燕三条共同のイ
ベントとした。
・本事業では、実行委員を務めてきた㈱タダフサの曽根社長が従来から関係を持っていた㈱メソッ
ドの山田遊氏がイベントの全体監修を行っている 33。
・また、アートディレクションはデザイン会社 SPREAD の小林弘和氏が行っている。期間中はイ
ベント関連場所がピンクにデザインされている。
「燕三条の起源である鍛冶屋が鉄の黒と火の赤で
表現されることをヒントに「危険で入りづらい工場を入りやすくする」ために黒をグレー、赤を
ピンクに変えてポップにした」という 34。
図表・61 「工場の祭典」公式ガイドブック
出所)経済産業省 Web サイト
31
32
33
34
2013/07/17
2013/09/25
2013/10/24
2013/10/30
日本経済新聞
日本経済新聞電子版
産経新聞
日経 MJ
47
第3章
皮革産業以外の産業集積地での取り組み
・事業の実質的な主体は公益財団法人燕三条地場産センターが行っている。センターは 1988 年に
三条市と燕市が、地域の産業・観光振興の支援をするため一般財団法人として設立した 35。
・また、公益財団法人燕三条地場産センターでは、燕三条ブランド「燕三条プライドプロジェクト」
として中小企業庁「JAPAN ブランド育成支援事業」の補助を受けていた(補助は 2010 年~2013
年の 4 年間受けていた)
。
・2016 年からは「工場の祭典」を拡充し、農業現場も「耕場の祭典」と題して公開する。燕三条
地場産センターは予算として 2,300 万円を用意している 36。
図表・62 「燕三条 工場の祭典」への事業者の参加概要
対象
・三条市・燕市内の工場・耕場等で見学及びワークショップを実施しようとす
る法人および個人 ※業種に制限なし
・単独企業ではなく、メンバー1 社の工場・耕場等に集まり、グループによる
参加も可能
参加形態
・フリー:下記 3 つの指定時間の中から選択し、その指定時間内であれば、い
つでも見学・体験等が可能。
①午前 9:00~12:00 ②午後 13:00~16:00 ③上記①、②の両方
・時間制:下記 6 つの開始時間から選択(複数選択可)し、指定の開始時間ま
でに、来場者が集合(受付)して、見学・体験等を実施。
①9:00~ ②10:00~ ③11:00~
④13:00~
⑤14:00~ ⑥15:00~
※各時間帯ともに 30 分-60 分程度の見学・体験
募集数
・50~100 事業所程度
参加費
・従業員 20 名以下の事業所等 10,000 円、
従業員 21 名以上の事業所等 20,000 円
※参加費はガイドブック作成費、装飾費等に充当
出所)工場の祭典第4回「燕三条 工場の祭典」参加募集要項
35
36
2014/09/03 日刊工業新聞
2016/03/01 新潟日報
48
第2章
49
我が国の皮革産業集積地の状況と課題
第4章 皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
4-1.姫路・たつののなめし革産業と豊岡の鞄産業の連携による活性化の方向性
1)検討過程
第 2 章で示したとおり、兵庫県のなめし革製造業では、製造品出荷額を大きく減少させており、ま
た近年は付加価値割合も低下させている。姫路市・たつの市及び組合(日本タンナーズ協会)におい
てはこれらの産地のてこ入れを課題としている一方で、豊岡の鞄産業は、近年、勢いを取り戻してき
ている。豊岡では基本的にはこれまで布・ナイロン製の鞄の製造割合が高かったが、一部では革製の
鞄も製造している。
日本の革と鞄の一大産地が兵庫県という同じ県に存在しているものの、これまで明確に組織的に連
携した取り組みは行われてこなかった。経済産業省では、このような状況を受け、両産地の競争力強
化に向けた連携の方向性を定め、その実現に向けたアクションプランの検討を行うための検討会を設
けることとした。
検討会では姫路市・たつの市のタンナー、豊岡市の鞄メーカーの担当者、そして姫路から姫路・西
はりま地域における地場産業振興をミッションとした地場産業センター、豊岡市の鞄に特化した拠点
施設であるトヨオカ・カバン・アルチザン・アベニューの担当者にも参加頂いた。
そのほか、検討会でのアドバイザー・外部講師として、兵庫県に拠点を置くデザイナーである小林
氏にも協力頂いた。
図表・63 関西検討会メンバー
区分
姫路
タンナー
たつの
鞄製造
その他
氏名
所属
福本 真也
㈱三昌
金田 陽司
協伸㈱
森脇 和成
㈱モリヨシ
松岡 哲矢
松岡皮革
石本 晋也
エルヴェ化成
足立 哲宏
㈱足立
宮下 栄司
ナオト商店
黒崎 將志
㈱クロサキ
姫路
村田 浩司
(公財)姫路・西はりま地場産業センター
豊岡
林 健太
豊岡まちづくり㈱
小林 新也
合同会社シーラカンス食堂
豊岡
アドバイザー・外部講師
51
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
検討会はのべ 5 回、セミナーはのべ 3 回実施した。1 回目のセミナーでは、野村総合研究所より皮革
産業の構造などを紹介し、2 回目や 3 回目のセミナーでは野村総合研究所より皮革産業のブランド化に
向けたプロセスや小林氏の取り組みの紹介、トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニューの視察など
を行った。また、2 回目と 3 回目の検討会とあわせて豊岡、姫路・たつの両産地のメーカーの工場見学
会を行い、相互の取り組みや強みの理解を促進した。
図表・64 関西検討会・セミナー開催日時
区分
開催日時
会場
第 1 回セミナー&検討会
11 月 5 日(木)14 時~18 時
豊岡市民会館
第 2 回セミナー&検討会
12 月 7 日(月)13 時~17 時
豊岡鞄協会
12 月 7 日(月)17 時~19 時
工場見学会(豊岡)※1
12 月 8 日(火)9 時~17 時
第 3 回セミナー&検討会
豊岡鞄メーカー等
1 月 18 日(月)14 時~17 時
姫路市民会館
1 月 19 日(火)9 時~17 時
姫路・たつのタンナー等
第 4 回検討会
2 月 29 日(月)14 時~18 時
㈱三昌(姫路)
第 5 回検討会
3 月 7 日(月)14 時~17 時
㈱三昌(姫路)
工場見学会(姫路・たつの)
※2
※1:㈱足立、マスミ鞄嚢㈱、木和田㈱、㈱由利の工場を見学するとともに、トヨオカ・カバン・アルチザン・
アベニュー、豊岡市鞄縫製者トレーニングセンター、柳の宮神社などを見学。
※2:協伸㈱、㈱三昌、㈱モリヨシ、エルヴェ化成の工場を見学するとともに、松岡皮革の商品サンプルを確
認。
検討会では、はじめに「
(1)それぞれの産地が抱える課題と両産地が連携することで成し遂げたい
ことの設定」を行い、
「
(2)活かすべき両産地の強みの検討」を行った。これらの議論を踏まえ、
「
(3)
両産地が連携産地して実施すべき事項」を検討し、
「(4)アクションプランの策定」
(体制、スケジュー
ル、等)を行った。
図表・65 関東検討会の議論の進め方
(1) それぞれの産地が抱える課題と両産地が連携することで
成し遂げたいことの設定
(3) 両産地が連携産地して実施すべき事項の検討
(4) アクションプランの策定
52
両産地工場見学会による
相互理解
(2) 活かすべき両産地の強みの検討
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
2)検討結果
(1)それぞれの産地が抱える課題と両産地が連携することで成し遂げたいこと
検討会でははじめに、姫路・たつの及び豊岡の課題の整理と本検討会を通して成し遂げたいことを
検討した。検討の結果、姫路・たつのでは、なめし革の生産量が減少傾向にあり、本検討会の参加
事業者も新しい販売先の獲得による皮革の拡販を課題としていることがわかった。
また、豊岡では産地として比較的良好な状況にはあるものの、さらに付加価値を高め、顧客の商品
選択の幅を拡大するために皮革を使った鞄作りを望んでいることがわかった。
「両産地が連携した商品展開」を行うことでこれらのニーズを満たすことが可能であると考えられ
る。
図表・66 両産地が連携することで成し遂げたいこと
豊岡
姫路・たつの
付加価値&顧客選択の拡大
革の拡販
(新しい販売先の獲得)
皮革を使った鞄作り
両産地が連携した商品展開
検討会での意見
『姫路・たつのが成し遂げたいこと』
・売り先からは、品質に対して高い評価を得ているので、事業は上手くいっており、現状には満足して
いる。しかし、20 年後を考えると産地として衰退するかもしれないという危機感がある。
・この業界に 20 年間携わっているが、課題が 20 年前から変わっていない。ゆるやかに衰退していると
いう実感はある。
・グローバル化が進む中で、日本の皮革製品は海外製品に押されると思う。
・豊岡とたつの・姫路が手を組むことで、何か面白いことができるとよい。
・豊岡とたつの・姫路がコラボレーションして商品開発ができるとよい。
・タンナーが日本国内で生き残るために、豊岡とコラボレーションができるとよい。
・たつの・姫路が出したものと、豊岡が出したものをダブルネームなどの形で商品化できるとよい。
・タンナーはほとんどが OEM である。豊岡も OEM が多い。どちらも OEM でやっている以上、成功
しても長続きしない。従って、この検討会のアウトプットとして、何らかのものを作るのはどうか。
海外の展示会をターゲットにして、その展示会の来場者の属性も事前にリサーチし、出展する。
検討会での意見
53
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
『豊岡が成し遂げたいこと』
・豊岡は、鞄産地として景気が良くなってきていると感じているが、皮革をあまり取り扱っていないの
で、今後、皮革を取り扱えるようになると良い。
・これまでは、スクール鞄をメインに生産してきたので、あまり皮革を使ったことがない。今回を機会
に皮革の勉強をしたいと考えている。
・この会議を機に皮革の知識を身につけ、今後、海外展開できるようにしたい。
・革だと 1 製品あたりの単価が高い傾向にある。豊岡のほとんどのメーカーは OEM なので、革製品を
要望されたら作るしかない。最近は革の依頼が増えた。しかし、今は革の知識が不足しているので最
高の品質で作れているか分からない。
・今は豊岡という名前や、豊岡の職人やミシンのイメージとともに商品が売れているが、その先のステッ
プとして革製品に取り組みたい。
・現在はどの革をどの商品に使うのがよいのかわからない状況である。
・豊岡が姫路・たつのを理解するための入り口作りを今回のゴールとするのも一案である。
54
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
(2)活かすべき両産地の強み
両産地の強みを整理したところ、姫路・たつのでは、事業者の強みとして多品種少量生産・短納期
生産、品質の安定性、個性的な材料加工などが挙げられ、また、地域全体としてはなめし革製造の
長い歴史や姫路城等の観光資源の充実とそれに伴う国際的な知名度の高さなどが挙げられた。
一方で、姫路・たつのでは必ずしも皮革製品の特徴が皮革関連事業者以外には浸透しておらず、ポ
ジショニング(市場における位置付け)が明確ではないことが豊岡側から指摘された。
豊岡では、事業者の強みとして、事業者同士の連携が密であること、積極的に設備投資を行ってお
り最新の設備が揃っていること、後継者が比較的充実していること、そして地域全体としては柳行
李をルーツとする鞄の歴史や、コウノトリ、城崎温泉などの観光資源が充実していることなどが挙
げられた。また、豊岡の製品は各社で特徴的な製品を展開しているものの、豊岡鞄全体でみると「廉
価で品質が良い」
、
「スタンダードなデザインである」、「アフターサービスが充実している」などの
特徴が消費者から認知されており、ポジショニングが明確になりつつあると考えられる。
両産地が連携した商品展開を行っていくためには、両産地のそれぞれの強みやポジショニングを活
かした、消費者への魅力の訴求が重要であり、姫路・たつののポジショニングの明確化が課題とし
て認識された。
図表・67 活かすべき両産地の強み
豊岡
姫路・たつの
強み
皮革
事業者
地域
多品種少量生産・
短納期生産
品質の安定性
個性的な
材料加工
革の歴史
事業者間の
連携
積極的な
設備投資
後継者の
存在
国際的知名度
鞄の歴史
観光資源の充実
廉価で品質が良い
スタンダードなデザイン
アフターサービスが充実
???
ポジショニング
(両産地の連携)
???
検討会での意見
55
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
『姫路・たつのの強み』
(多品種少量生産・短納期生産+品質の安定性+個性的な材料加工)
・強みとしては、多品種少量、短納期、細かな交渉が簡単であること、品質が安定していることが挙げ
られる。
・現在の強みは、多品種少量生産が可能であることと、短納期に対応できることである。この点は、他
のどの国にも負けないので、日本のなめし産業が生き残ることができたと思っている。
・これまでは、品質の安定を川下から求められたので、強みとしてきたが、今後は個性的な材料の加工
ができることが強みになる可能性もあると考えている。日本の技術力を使えば、他の国には真似でき
ない色の革などを生産することもできる。
(革の歴史)
・姫路の革の歴史はイタリアよりも古いが、そういったことを今は説明できていない。説明すれば、絶
対的な強みを確立することができる。
・姫路・たつのの革の歴史は古い。姫路の白革は、川でなめしていたら白くなったというところに起源
があり、世界的にも珍しい。ヨーロッパはタンニンなめしが主流なので、色がつく。エスキモーの革
は、いぶしているのでまた少し違う。
(国際的知名度)
・姫路は、姫路城のおかげで認知度が高い。この点は有利である。
検討会での意見
『姫路・たつののポジション』
・たつの・姫路のタンナーが革の賞を受賞したという話を聞くことがあるが、どのような賞なのかがわ
からないので、製品の凄さが分からない。
・たつのレザーの立ち上げに関与しているが、何を PR して売るべきかがわからない。一通りの生産方
法には対応できるので、何でもでき、何でも強みにできるが、何を強みにするべきかがわからない。
・姫路・たつのと豊岡で絶対やらないといけない理由を共通認識として持っておく必要がある。姫路・
たつのの革はなんでもできることが強みだと言ったが、革を絞り込んで生産する取り組みを進める必
要があるのではないか。
検討会での意見
56
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
『豊岡の強み』
(事業者間の連携)
・メーカー同士の協力体制ができている点は強みである。
・豊岡のメーカーは競合であっても技術的なことを互いに隠そうとせずに、教えてくれる。各社の個性
があるからこそ出来ることだと思う。
・各メーカーの横のつながりが強いことが強みである。
・協力体制が確立されているのは、豊岡に高校が 1 つしかないためである。鞄産業の関係者が先輩後輩
関係にあるので、協力体制ができやすい。
(積極的な設備投資)
・設備投資に積極的で、新しいミシンがたくさんある
・また、他産地に比べ、設備が整っているのも強みである。各メーカーの向上心が強いため、設備を刷
新してよりよいものづくりをしようという気概がある。
(後継者の存在)
・他の地域に比べ、後継者がいる点が強みである。
・今は、若手職人が増えて、代替わりがうまく進みつつある。
(鞄の歴史)
・柳行李をルーツとしておりルイ・ヴィトンよりも歴史がある。
(観光資源の充実)
・コウノトリなどの観光資源も豊富なので、観光業を発展させることで、鞄産業も活性化されるとよい。
検討会での意見
『豊岡のポジション』
・人件費が日本の中では安い。ものづくりが丁寧。今はデザインに頼らない鞄づくりができているが、
デザインがうまくいけばもっとよいと思う。
・豊岡鞄は特徴がないのが特徴である。メーカーそれぞれに特徴があるので、豊岡でまとまらないと思っ
たが、今はそれが消費者に受けている。
・豊岡鞄の良さは、きちんと作っている点である。価格のつり上げもない。
・豊岡の強みは、安くて大量に作れ、品質が悪くない。職人の顔が見える、修理ができる点である。
57
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
(3)両産地が連携産地して実施すべき事項
来年度以降は、姫路・たつの及び豊岡メンバーが一体となってコラボラインを立ち上げるために、
豊岡メンバーの視点を入れながら、姫路・たつのメンバー(5 事業者)の強みや製品の特徴の整理を
行い、それを関連する事業者向けにテキスト・ビジュアル面で整理することが必要であるとの結論
に至った。
また、その議論と並行して、将来的なコラボラインの展開に向け、相互の事業者の理解の促進、既
存の既存の豊岡鞄のデザインによるプロトタイプの製作、デザイナーの確保や検討におけるコー
ディネーターの確保が必要だと考えられる。
そのほか、既存の豊岡メンバーでは、鞄製造を行っている事業者が 3 事業者に留まるため、コラボ
ラインの展開に関心がある他の事業者の巻き込みを行うこととした。
検討メンバー以外の事業者の巻き込みや両産地の相互理解の取り組みとして「産地相互見学会」を
行い、また、タンナー5 社の強み・製品の整理、セールスポイントのテキスト・ビジュアル面での整
理、両産地の連携におけるポジショニング・ブランディングの在り方の検討などを行う「兵庫皮革・
鞄ブランド化検討」を行うこととした。
図表・68 両産地が連携産地して実施すべき事項
実施内容1:
産地相互見学会
タンナー5社の強み・
製品の整理
検討メンバー以外の
事業者の巻き込み
海外展開の
戦略の検討
両産地の連携における
ポジショニング・ブランディング
の在り方の検討
コラボラインの立ち上げ
セールスポイントの
テキスト・ビジュアル面での
整理
実施内容2:
兵庫皮革・鞄
ブランド化検討
検討会での意見
『タンナー5 社の強み・製品の整理』
+『セールスポイントのテキスト・ビジュアル面での整理』
・各社が生産する革の特徴を整理し、どの革がどういったかばんに向いているかを可視化するのはどう
か。
(豊岡メンバー)
・革を一覧表にまとめたりしてもらえると、とてもわかりやすい。(豊岡メンバー)
・各タンナーは何でもできるが、得意な製品がある。例えば、自社はソフトな革が得意。最も得意な革
を出してコラボレーションしていきたい。
(姫路・たつのメンバー)
・たつの・姫路が自信を持って提供できる革の見本帳を作れると良い。
(姫路・たつのメンバー)
・情報交換ができる場を設け、タンナーの革の特徴や使い方を伝えられるとよい。
(姫路・たつのメンバー)
58
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
・鞄産業や靴産業にとって活用しやすい革の一覧表を作ったうえで、たつの・姫路の革もブランド化で
きるとよい。(姫路・たつのメンバー)
・革でも、目が詰まった革は靴に向いている。やわらかい革は衣料に向いている。このようにそれぞれ
の革で特徴はあるので、ある程度、整理はできるかもしれない。
(姫路・たつのメンバー)
検討会での意見
『両産地の連携におけるポジショニング・ブランディングの在り方の検討』
+『コラボラインの立ち上げ』
(相互理解・検討の必要性)
・姫路・たつのの革で鞄を作るとしても、現在のものとどう違うのかを消費者に訴求できる気がしない。
価格は高くなると思うが、その価値をお客さんに説明できない。今治タオルは吸水力が高いといった
ことを訴えているように、分かりやすい項目で消費者に説明できるとよい。
・商品として展開するためには、そのストーリーを語れるようになる必要がある。
・新しい取り組みを行うにしても、まだお互いのことを知らなさすぎる。相互理解のためには、少なく
とも 1 年は必要である。
・中途半端な段階で何かを作るなら、もう少し議論を重ねた上で実施するほうがよい。
・まずは産地同士で理解を深めるために、議論することが重要である。近い産地同士であるにも関わら
ず、お互いに分かり合えていないので、まずは情報整理をしたうえで議論する必要がある。情報整理
の方法は、プロトタイプを作ることだけではない。ビジュアルで表現できることもある。今の段階で
は、コラボするきっかけがない。お互いを知らなさすぎる。
(既存の豊岡鞄のデザインによるプロトタイプの製作)
・デザインから行うとなると大変なので、異なる素材で同じデザインの鞄を作るだけでも、素材の違い
はわかる。
・今後、既にあるオリジナルの商品を見返してはどうか。新商品をわざわざ作る必要はない。
・プロトタイプとして、色々なパターンの革とかばんを組み合わせて作ってみるのはどうか。
(コラボラインのデザイナーの確保)
・とにかくプロトタイプを作成し、差別化できるようなブランドを新たに立ち上げるのも一案である。
売り方を考える必要もあるが、特徴的なデザインにできるとよい。
・過去、色々な取り組みをやったが、実になったものは少ない。大きな展示会をやったり、商品開発を
やったり、色々やった。今回の取り組みも、やるだけでは不十分である。自社は、メーカーなので生
産はできるが、デザインはできない。したがって、デザイナーが必要である。
(コーディネーターの確保)
・たつの・姫路も豊岡も OEM なので、販売機能を担う人が必要である。また、お互いの情報を交通整
理できる人がいれば、なお良い。
・産地連携検討会では、豊岡にも、たつの・姫路にも属さないファシリテーターの人がいないので、ま
とまらないのではないか。
検討会での意見
59
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
『検討メンバー以外の事業者の巻き込み』
・今後、是非、定期的に工場見学も実施していきたい。
・工場見学を行ったうえで、お互いの強みを再確認したうえで、製品を作りたい。
・プロが薦める一級品を消費者に伝えることも大事である。触らないとわからないものもたくさんある。
自社の製品を、展示会でサンプルとして配ったときの反響はすごかった。
・豊岡で展示会をできればと考えている。交流の第 1 歩になればと考えている。
・まずは見学会を複数回実施し、お互いの理解を深めるところから始めるべきである。
(4)アクションプラン
来年度以降の実施事項を示したアクションプランは次図のとおりである。
「産地相互見学会」
は 2016
年度の上期にそれぞれの地域にて実施するとともに、豊岡において姫路・たつのメンバー5 事業者に
よる皮革展示会を実施することとなった。
また、
「タンナー5 社の強み・製品の整理」を 2016 年度の上期に行い、下期には「セールスポイン
トの整理」、
「ポジショニング・ブランディングの在り方の検討」などを行い、2017 年度には「コラ
ボラインの立ち上げ」を目指すこととした。これらを議論するための検討会は適宜実施するととも
に、検討に必要な資金(デザイナー、コーディネーターへの謝金、プロトタイプ製作費、市場調査、
等)を調達するための各種補助にも申請予定である(一部は 2015 年度に申請済)
。
図表・69 各実施事項の想定スケジュール
2016年度
2017年度
実施内容1:産地相互見学会
●(4~6月@姫路)
●(7月下旬@豊岡)
●(皮革展示会@豊岡、7/1・2)
●(@姫路)
●(@豊岡)
2018年度
●
●
実施内容2:兵庫皮革・鞄ブランド化検討
各種補助への申請
タンナー5社の
強み・製品の整理
タンナー5社のセールスポイントを
テキスト・ビジュアル面で整理
両産地の連携におけるポジショニング・
ブランディングの在り方の検討
海外市場のスタディ・
海外展開の戦略の検討
検討会の実施
豊岡×姫路・たつの
●(展示会@国内)
コラボラインの立ち上げ
(展示会@国外)※具体的な時期は対象国に依存
※適宜実施(第1回は7/1夕方~)
60
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
現在、想定している具体的な実施内容は以下のとおりである。
図表・70 各実施内容の詳細
実施内容1:産地相互見学会
【実施事項】
【予算】
 産地相互見学会
 豊岡の鞄や姫路・たつのの革にまつわる場所・企
業に訪問
 1回あたり20~25人程度が訪問
参加者による自己負担
【スケジュール】
平成28年度から年2回程度実施
※1~3班に分かれて訪問
平成28年度は4~6月上旬(姫路・たつのメン
バーが豊岡を訪問)、7月下旬(豊岡メンバーが
姫路・たつのを訪問)に実施予定
【体制】
(主導)
 林様(豊岡まちづくり株式会社)
【備考】
産地に訪問した際には、受け入れ側企業と訪問側
企業のそれぞれがどの企業と今後取り組みを深めて
みたいかを把握するためのアンケートを実施。
(訪問+受け入れ企業)
 検討会メンバーの企業
+本検討会メンバーが推薦する企業(豊岡のみ)
 豊岡メーカーに、姫路・たつのメーカー(5社)の取り組み・商品を周知するための展示会を7月1日(金)・2
日(土)に実施予定(@豊岡稽古堂)。
 費用は姫路・たつのメーカー(5社)の負担。
 本展示会でさらに姫路・たつのの皮革に興味を持った事業者も見学会参加の候補とする。
実施内容2:兵庫皮革・鞄ブランド化検討
【実施事項】
【スケジュール】
 豊岡×姫路・たつのコラボラインの立ち上げに向けた以
下の事柄と検討会の実施
平成28年度から適時実施
第1回は7/1の17時~実施
 タンナー5社の強み・製品の整理
 タンナー5社のセールスポイントをテキスト・ビジュ
アル面で整理
 両産地の連携におけるポジショニング・ブランディ
ングの在り方の検討
【備考】
検討会には両産地において最低4名以上は出席するこ
とを前提とする。
 海外市場のスタディ・海外展開の戦略の検討
【体制】
 本検討会メンバー
【予算】
 参加企業による自己負担
+
 以下の関連補助金への応募
▪ 中小企業庁:
平成28年度ふるさと名物応援事業補助金
(JAPANブランド育成支援事業)
▪ 経済産業省クリエイティブ産業課:
平成27年度補正TPP対策JAPANブラン
ド等プロデュース支援事業
(MORE THANプロジェクト)
61
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
4-2.浅草の革製履物産業の活性化の方向性
1)検討過程
第 2 章で指摘したとおり、東京都の革製履物製造業ではこれまで製造品出荷額を大きく減少させて
きており、また付加価値割合も他地域と比較して高くなく、産業集積地としての競争力が低下してい
ると考えられる。
経済産業省では、このような状況を受け、浅草の革製履物産業の将来のあるべき姿を定め、その実
現に向けたアクションプランの検討を行うための検討会の実施を呼びかけ、東都製靴工業協同組合な
どの協力のもと、革製履物製造業、革卸業らのメンバーからなる検討会を設置した。将来のあるべき
姿は長期的な視点(10~20 年後)に立ったものを想定していたため、これらのメンバーは比較的中堅・
若手の方々から選定した。
既に浅草地区では、
「浅草エーラウンド」とよばれる、「職人や工場などの「つくり手」と語れる」
、
「革を中心としたモノづくりを体験できる」
、
「浅草の街歩きができる」
、
「ショッピング、グルメ、エ
ンターテイメントも味わえる」こと 37をコンセプトとしたイベントを実施しており、経済産業省では
革製履物産業と観光産業との連携の方向性もあわせて検討するため、浅草エーラウンドを担当する川
島氏にも議論に参加頂いた。
そのほか、検討会でのアドバイザー・外部講師として、
「台東区南部・徒蔵(カチクラ)エリアを歩
きながら、
「街」と「ものづくり」の魅力に触れるイベント」である「モノマチ」を担当している鈴木
氏、平成 27 年度経済産業省「我が国の皮革産業のブランド力強化に関する調査」に協力頂いた戸村氏、
そして、甲州ワインを基軸としたツーリズムを展開している木田氏、大木氏などに協力頂いた。
図表・71 関東検討会メンバー
区分
革製履物製造
所属
金井 将樹
㈱ヤングシューズ
山田 裕亮
㈱パナマシューズ
皿井 美緒
サラヰ製靴㈱
吉見 鉄平
㈱スタジオヨシミ
革卸
藤田 晃成
富田工業㈱
その他
川島 武雄
浅草エーラウンド・㈲川島商店
鈴木 淳
台東デザイナーズビレッジ
戸村 亜紀
クリエイティブディレクター
木田 茂樹
㈱ルミエール
大木 貴之
ローカルスタンダード㈱
アドバイザー・外部講師
37
氏名
浅草エーラウンド Web サイトより
62
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
検討会はのべ 5 回、そして検討会の前提となるセミナーは 3 回実施した。
1 回目のセミナーでは、野村総合研究所より皮革産業の構造などをご紹介し、2 回目のセミナーでは
野村総合研究所より他産地の成功事例や戸村氏の取り組みの紹介などを行った。3 回目のセミナーでは
木田氏、大木氏より甲州ワインの取り組みを紹介していただいた。
図表・72 関東検討会・セミナー開催日時
区分
開催日時
会場
第 1 回セミナー&検討会
11 月 4 日(水)16 時~20 時
都立産業貿易センター(浅草)
第 2 回セミナー&検討会
11 月 24 日(火)16 時~20 時
TKP スター貸会議室(浅草)
第 3 回セミナー&検討会
12 月 14 日(月)16 時~20 時
浅草文化観光センター(浅草)
第 4 回検討会
1 月 20 日(水)16 時~20 時
浅草文化観光センター(浅草)
第 5 回検討会
2 月 8 日(月)16 時~20 時
浅草文化観光センター(浅草)
浅草靴産業のビジョン発表会
3 月 4 日(金)17 時~18 時
浅草文化観光センター(浅草)
検討会では、はじめに「
(1)長期的(10~20 年後まで)に浅草が目指すべき姿の設定」を行い、
「
(2)
活かすべき浅草の強みの検討」を行った。また、設定した強みを踏まえ、
「(3)強みを活かせるターゲッ
トの設定」を行った。また、これらの議論をあわせて、第 1 回検討会からブレインストーミング的に
「産地強化に向け実施すべき事柄の検討」を行い、広い視点から様々な意見を頂戴した。
これらの意見や、目指すべき姿、ターゲットなどを踏まえ、
「
(4)目指すべき姿を実現するために実
施すべきことの検討・絞り込み」を行い、それらを実現するための「
(5)アクションプランの策定」
(体
制、スケジュール、等)を行った。
図表・73 関東検討会の議論の進め方
(1) 長期的(10~20年後まで)に浅草が目指すべき姿の設定
(3) 強みを活かせる
ターゲットの設定
(4) 目指すべき姿を実現す
るために実施すべきことの
検討・絞り込み
(5) アクションプランの策定
63
産地強化に向け
実施すべき事柄の検討
(2) 活かすべき浅草の強みの検討
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
2)検討結果
(1)長期的(10~20 年後まで)に浅草が目指すべき姿
検討会メンバーと議論を行い、長期的(10~20 年後まで)に浅草が目指すべき姿を「消費者は、
Made in 浅草の靴を買うことで満足が得られ、メーカーは、OEM・オリジナルともに十分な利益が
確保できる条件で取引ができること」と設定した。
検討会での意見
・浅草の靴ということで 1 万円の靴が 1 万 2 千円で売れるようになることが理想。
・浅草で買ったという経験が付加価値になるようになるとよい。
・「安売りのまち」にはしたくない。
(2)活かすべき浅草の強み
検討メンバーでは、浅草の革製履物事業者の強みを「高い製造品質」であるとしているが、一方で、
その品質を商品そのもので伝えることの難しさも指摘している。
検討会での意見
・自分たちは技術力が強いと思っているが、はたしてそれが伝わるのかと思う。必ずしも、技術力だけ
で伝える必要はない。
・商品を見ても日本の細やかなものづくりというのはなかなか伝わりづらいと思う。イメージとして伝
えていく必要がある。
・フィレンツェのオーダー靴メーカーの工房には、必ず日本人が 1 人はいるくらい、日本人が靴を作る
技術は高い。日本人は器用。ヨーロッパでは非常に器用な人が一部存在するが、日本は平均的に存在
する。
・神戸、中国などと比べると、一番長持ちする靴を作っている。高品質の材料を使っているので、壊れ
にくい。
・職人が多く、老舗のメーカーも多いので品質を担保できている。
64
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
同時に、浅草という土地の強みに目を向けると、東京都の平成 26 年度の日本人旅行者は約 5 億 600
万人 38であったが、台東区の同期間の日本人旅行者数は 4,504 万人であった 39。さらに、浅草地区を
訪れた人数はうち 3,050 万 40人であった。浅草地区の人口(西浅草、浅草南、浅草北の合計)が約 3
万 3,000 人 41であるので、人口のおおよそ 1,000 倍の人々が年間に訪れていることになる。
また、台東区への年間観光客数は 2008 年の 3,934 万人から 2014 年の 4,504 万人に増加(1.14 倍)
しており、さらに外国人客数は 191 万人から 526 万人(2.8 倍)に大きく増加している。浅草には観
光地としての魅力という大きな強みが存在する。
図表・74 台東区への年間観光客数の推移
5,000
4,504
4,383
4,500
4,084
3,934
4,000
うち3,050万人が
浅草地区を訪問
3,500
3,000
万 2,500
人
2,000
1,500
1,000
500
191
413
426
526
2010年
2012年
2014年
0
2008年
年間観光客数
うち外国人客数
出所)台東区「平成 26 年度 台東観光統計・マーケティング調査」
あわせて、浅草では革製履物製造業のほか、履物卸、履物部品製造業、皮革卸など様々な革製履物
関連事業者が限られたエリアに集積しており、世界の革製履物産地で類似の地域が少ないことも、
土地の魅力として挙げることができる。
検討会での意見
・浅草は自転車で移動できる範囲内で革靴に関する様々なものが手に入ることが魅力である。
・街が小さいから買い回りやすいのが浅草の特徴である。東急ハンズより低価格で、分かりやすい。築
地のようなイメージで提案することができる。
・靴だけでなく、かばんなどの皮革製品や、その材料・道具がそろうことをアピールしてはどうか。
38
39
40
41
東京都「平成 26 年訪都旅行者数等の実態調査結果」
台東区「平成 26 年度 台東観光統計・マーケティング調査」
台東区「平成 26 年度 台東観光統計・マーケティング調査」
台東区「緑の実態調査 調査結果報告書」
65
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
現状では、浅草の多くのメーカーでは OEM による製造を行っており、また、これまで十分に PR
をしてこなかったため、浅草が日本の一大革靴産地であると一般の方々には浸透していないと推測
される。まずは一般消費者に浅草が靴の産地であると認知してもらうことにより、靴を購入する際
に浅草製の製品が選択されやすくなり、浅草の靴の品質が消費者の満足するものならば、再度浅草
の製品が選択されるのではないかと期待される(次図①②③に該当)
。
浅草の靴が消費者から選好されるようになると、浅草の靴メーカーの OEM 発注者に対する交渉力
が強化され、これまで以上に好条件の取引や注文量が増加することにより、利益が確保しやすくな
る(次図④⑤に該当)
。その結果、積極的な設備や人材に投資が可能になり、その結果、製品の品質
を向上させたり、サービスを充実させたりすること等により、経験価値を向上させ、浅草の靴を購
入することによる消費者満足をさらに高めることができる(次図⑥⑦⑧に該当)
。
また、メーカーの利益確保や人材への投資への積極化は、浅草地区の革製履物産業の集積度の向上
をもたらし、その結果、土地の魅力が向上し、浅草が靴の産地であるという認知も進むという好循
環が期待できる(次図⑨⑩⑪⑫に該当)
。
ただし、青く囲まれた部分(地域として対応する領域)が本検討会の議論の対象とした部分である
が、この好循環が生まれるには赤枠で囲われた部分(個社が対応する領域)を各社が推進すること
が前提となる。
図表・75 浅草の革製履物産業の好循環モデル
個社が対応する領域
2
浅草=靴の
産地という
認知
浅草の靴を
浅草の靴の
買うことによる
品質への
消費者満足の
消費者満足
向上
浅草の靴の
選択
1
4
品質&
経験価値
の向上
8
3
7
メーカーの
交渉力の
強化
12
メーカーの
利益確保
5
6
9
土地の魅力の
向上
11
地域として対応する領域
66
投資への積極化
(設備・人材)
10
集積度の向上・
メーカー小売の
増加
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
これらを総括すると、浅草の土地の魅力(観光地・皮革産業集積)を活かしつつ、個社の努力によ
り高い品質と経験価値といった強みを強化し、中期的(2~3 年後)に目指すべきは、浅草が靴の産地
という認知度向上であり、それが長期的(10~20 年後)には、消費者は Made in 浅草の靴を買うこ
とで満足が得られ、メーカーは OEM・オリジナルともに十分な利益が確保できる条件で取引ができ
る、という状態に結びつく可能性がある。
図表・76 浅草の革製履物産業の中長期の目指すべき方向性と強み
長期的(10~20年後)に目指すべきは、
消費者は、Made in 浅草の靴を買うことで満足が得られ、
メーカーは、OEM・オリジナルともに十分な利益が
確保できる条件で取引ができること
中期的(2~3年後)に目指すべきは、
浅草=靴の産地という認知度向上
活かすべき強みは、
強化すべき強みは、
浅草の土地の魅力
(観光地・皮革産業集積)
高い品質&経験価値
検討会での意見
・燕三条、今治タオル、岡山デニムのように浅草といえば革靴と言われるようになりたい。
・まずは、浅草が靴の街であるという認識を浸透させたい。
・浅草の靴は良い製品であるというイメージをまずは持ってもらいたい。
67
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
(3)強みを活かせるターゲット
浅草が靴の産地という認知度向上を目指した場合、次図のような様々なターゲットが想定される。
まずは既に浅草に来ている人々や浅草が惹き付けやすい人々に対する認知度を向上させ、中長期的
には一般の人々への波及を期待している。
既に浅草に来ている人々に関しては、シニアの日本人観光客、修学旅行生、一般の外国人観光客な
どが有力なターゲットとして考えられる。また、革製履物の産地である浅草が惹き付けやすい人々
として、靴好きの日本人や外国人観光客が想定される。
図表・77 認知度向上におけるターゲット
既に浅草に来ている人々
浅草が惹きつけやすい人々
シニアの日本人観光客
修学旅行生
一般の外国人観光客
靴好きの日本人
靴好きの外国人観光客
一般の人々への認知の波及
検討会での意見
【観光客】
・浅草には既に観光客がたくさん来るので、そういった人にまずはアピールできるとよい。
・旅行客に日本製の靴を買っていって欲しい。
・日本人に日本の靴のよさをわかってほしい。まずは日本人にアピールしたい。
・現在、60~70 歳になっても、今売っている靴よりもかっこいい靴がほしい人はいると思う。
【修学旅行生】
・浅草に来た学生に、中敷きなどカスタマイズを行うサービスを提供すれば売れると提案したことがあ
る。修学旅行をきっかけに、職人にあこがれ職人になるかもしれない。
・小学生・中学生などに革製品について浅草に来たら知ってもらうことが重要。
・浅草に来る修学旅行生も多い。浅草寺だけではなく、体感できるような、ものづくりの現場を提供で
きるとよい。ワークショップを行ってもいいかもしれない。
【外国人観光客】
・日本人観光客よりも外国人観光客をターゲットとし、履き心地など日本製の特徴をアピールしてはど
うか。
・海外に認められることによるブランディング効果を狙っても良い。日本人には逆輸入が効果的である。
・日本人が日本人に訴えるより、海外で成功して海外から訴えるほうが、影響力があるかもしれない。
海外から言われると自信を持つことができる。
・富裕層の外国人が買ってくれれば、その方々が自国で評判を広げていき、ブランド価値が高まるので
はないかと考えている。
68
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
【靴好きの日本人・外国人観光客】
・ターゲットは、靴好きな日本人や外国人がよいのではないか。
・安売りの靴を売るのではなく、興味のある人が来てくれるようなものにできるとよい。
・観光バスで来た人ではなく、わざわざ靴を見にきてくれる人をつくるムーブメントの構築が必要では
ないか。
・ファッション関係者はまず来ないといけない場所という位置づけにし、ファッション好きの女性が来
るようにすればよい。
【その他】
・足と靴が合っていると思っていても、意外と合っていない。サイズや形のあった靴を履くことで、ト
ラブルが出にくくなる。そういうことを理解してくれる人に、売りたい。靴に強い興味がある人が対
象となるのではないか。
・足にコンプレックスがある人は、機能性とデザイン性の両方を備えた靴がなくて困っている。そういっ
た人をターゲットとするのも一案である。
(4)目指すべき姿を実現するために実施すべきこと
検討会では、浅草が靴の産地として認知されるために、まず優先的に取組むべきこととして「①靴
作り見学ツアーの実施&見学コースの整備」
、
「②広報活動の強化」が挙げられた。そのほか、
「③浅
草ブランドコンセプト・ビジュアルイメージの作成」
、
「④象徴的な製品の製作」を実施することが
望ましい。
また、浅草の産地としての認知を消費者による浅草の商品の選択に結びつけるためには、
「⑤販売
拠点・ショーケースの整備」
、
「⑥地域商標の運用」が必要であると考えられる。
そのほか、浅草の革製履物産業の集積度を向上させるためには「⑦革製品を作りたいデザイナー等
のコーディネート機能の整備」
、
「⑧皮革関連事業者起業支援(制度、施設、等)
」も有効であると考
えられる。
図表・78 目指すべき姿を実現するために実施すべきこと
①靴作り見学ツ
アーの実施&見学
コースの整備
②広報活動の
強化
③浅草ブランドコ
ンセプト・ビジュアル
イメージの作成
④象徴的な
製品の製作
⑤販売拠点・
ショーケースの
整備
浅草=靴の
産地という
認知
⑥地域商標の
運用
浅草の靴の
選択
浅草の靴を
浅草の靴の
買うことによる
品質への
消費者満足の
消費者満足
向上
品質&
経験価値
の向上
メーカーの
交渉力の
強化
メーカーの
利益確保
投資への積極化
(設備・人材)
土地の魅力の
向上
69
集積度の向上・
メーカー小売の
増加
⑦革製品を作りたいデ
ザイナー等のコーディ
ネート機能の整備
⑧皮革関連事業者
起業支援
(制度、施設、等)
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
①靴作り見学ツアーの実施と見学コースの整備
検討会では浅草が靴の産地として認知されるためには、浅草の強みを活かした「靴作り見学ツ
アーの実施と見学コースの整備」を行うことが最も効果的であるという結論に至った。
このアイディアの構成要素は以下のとおりである。
 靴作り見学ツアーに協力頂ける事業者の開拓・選定
 見学ルートの整備
 マップやカタログ、携帯用アプリ等の紹介ツールの作成
 モデルツアーの設計
 靴製作ワークショップ等の実施
 ガイドスタッフの整備
 多言語への対応
検討会での意見
・浅草の職人の気質などを伝えられるとよい。
・エーラウンドは 1 年に 1 回しか行わない、開催期間以外にも発信する取り組みが必要。
・浅草のツアー会社からエーラウンドで修学旅行向けのパックを販売してもらえないかという声があ
る。工場を見て回ったり、革細工を作ったりすることを考えている。
・燕三条の諏訪田製作所のように工場見学用のルートを整備できたりするとよい。
・ツアーに重きを置いて毎月実施できるとよい。月毎にデザイナーや職人と回れるとよい。
・受入れ態勢(小売店や、将来的には工場)も構築していく必要がある。
・浅草を世界的に有名にするのであれば、それにそぐう工場を見学地とする必要がある。
・靴の工場を紹介した冊子がないので、そういった冊子を作れるとよい。
・携帯用アプリを活用したツアーも面白い。
・台東区の靴メーカーにはアトリエ化を進めている所もあるが、第 3 者が入って、ツアーを組まないと
なかなか来てもらえない。
・㈱ヒロカワ製靴ではブランド化を目的に既に見学をツアー化しているが、浅草も靴のイメージを持っ
てもらうのであれば、ツアーを行う必要がある。
・例えば、部品を買いまわり、最後に靴が完成するツアーであれば、評判となる。
・既成靴ではない靴をつくる体験をしてもらう。ルームシューズならオーダーメイドで直ぐに完成し販
売可能である。
・浅草は日本人観光客も多いが、観光地がスカイツリーや浅草寺くらいしかないので、ワークショップ
などができるとよい。
・ツアーガイドも必要である。燕三条には様々な工場を案内できるガイドがいる。
・言語が障害になるケースもある。
70
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
②広報活動の強化
見学とあわせて、積極的に浅草が靴の産地だという広報を行っていくことも重要である。この
アイディアの構成要素は以下のとおりである。
 各種機関との連携(観光センター、旅行代理店、ゲストハウス、等)
 パブリシティ(テレビ、雑誌、新聞、等)
 Web サイトの制作

観光産業に訴えられる展示会への出展(ツーリズム EXPO ジャパン、等)
検討会での意見
・観光センターに職人が作業しているスペースを設けるのも一案である。
・民泊やゲストハウスと連携して、浅草のよいところを伝えたり、宿泊所からの道の途中に浅草を強調
する店舗を構えたりできないか。
・浅草に靴のイメージを植えつけたい。そのためには、メディアで取り上げてもらう必要がある。
・テレビへの露出も増やしたほうがよい。そのための準備は行ったほうがよい。
・一般の人にアピールする前に、インフルエンサーの活用も検討しないといけない。
③浅草ブランドコンセプト・ビジュアルイメージの作成
見学や広報の実施においては、浅草がどのような特徴を持ったの靴の産地であるかを明確にし、
発信することが必要である。
検討会では、履物の歴史の活用や旅といったテーマが挙がった。
検討会での意見
・何をしているのかを明確にする、世界観を明らかにすることが重要である。
・履物や下駄やルームシューズという風に、地域に特化し、歴史を語る文化で展開したほうがよいので
はないか。
・履物文化にフォーカスし、今は靴をつくっているというストーリーを押し出せるとよい。
・旅や移動をコンセプトにした商品を提供してはどうか。
・浅草の街としてのブランディングを活用したほうがよい。国際的な街、芸能が栄える街というイメー
ジを使えば、業界外の人を呼び込むことができる。
71
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
④象徴的な製品の製作
浅草の革製履物の発信力を高めるためには、マイノリティ向けの靴、発信力のある方とコラボ
レーションした靴など、非常にニッチかつ象徴的な靴の製作も効果的であると思われる。
検討会での意見
・女装を趣味とする男性も増えてきているので、そういったマイノリティ向けの靴を作ったりしたら面
白い。
・靴にタトゥーが入れられると面白い。
・日本らしいハイテクの靴を作ってはどうか。舘鼻則孝氏が下駄から発想した靴を作り、レディ・ガガ
が使って話題になっている。
・有名人とコラボレーションした数量限定の靴なども広報効果があるだろう。
⑤販売拠点・ショーケースの整備
浅草に訪れた人々や見学を体験した方々などが、浅草製の靴を購入できるような場所が存在す
ることが重要であるが、浅草の多くのメーカーは OEM を主体としており、オリジナル製品を展
開している場合でも浅草に販売店舗を持っているところは少ない。
浅草のメーカーの靴を集め販売するとともに、浅草の靴の歴史や特徴を紹介できるような
ショーケースの整備が、好循環を生むためには重要である。
検討会での意見
・浅草の靴の質の高さを効果的にアピールする機会・場所が必要。例えば、浅草のどこかにショーケー
スを作ってはどうか。
・期間を決めて、様々なデザイナー、企画者が店頭にいると良いのではないか。
・認知の方法としては、各 OEM メーカーが置きたい靴を置ける場所を作って、その代わりに工場見学
を受入れる、という仕組みにするとよいのではないか。
・革の良さをアピールするなら、ケア、修理が肝である。例えば、美容室にいる間に、靴を磨いたりす
るのもよい。
・靴を磨いている間に飲食を楽しめる(シューズバーなど)ような場所があると良い。浅草の周辺産業
も巻き込んでいったほうが良い。
・足のマッサージと靴の手入れを組み合わせたものなども面白いのではないか。
・靴を脱ぐなど、日本らしさを体験できつつ、靴を試履できるような場所・サービスが有効である。
⑥地域商標の運用
浅草が靴の産地として認知され、浅草の商品を購入してもらうためには、浅草製とその他の商
品を見分ける仕組みが必要である。その仕組の 1 つとして、地域商標を作り、認証・運用を行う
ことが効果的である。
検討会での意見
・甲州ワイン、J クオリティなどのような浅草で一貫して生産されたことを保証する仕組みが必要。
72
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
⑦革製品を作りたいデザイナー等のコーディネート機能の整備
浅草の地域としての魅力を向上させるためには、革製品を作りたいデザイナー等のコーディ
ネート機能を整備し、魅力的な製品が浅草で作られるという状況を作ることが有効である。既に、
このようなニーズが顕在化しており、そのような対応を行ってくれるメーカーの整理が前提とな
る。
検討会での意見
・浅草はマッチングが悪く、若いデザイナーが来るが工場が作ってくれないという。工場は生産が少な
くて悩んでいるところも多い。連携がもう少し取れると良いし、それを行う機関があれば良いと思う。
・業界内にいても、どの企業がデザイナーのプランの実現に対応できるかわからない。まずは、これを
整理することが大事。
・エーラウンドにも「このようなものを作りたいが誰にお願いすればいいのか」といった相談が多い。
⑧皮革関連事業者起業支援(制度、施設、等)
浅草の革製履物産業の集積度を再度高めるためには、創業を行う事業者を浅草に惹きつけるこ
とも重要である。そのための起業支援の制度や施設も中長期的には整備が必要となる。
検討会での意見
・浅草は、小規模なアトリエを開こうと思っても、家賃が高い。
・IT 家賃補助の靴バージョンがあるとよい。IT は地域に根付く必要がなかったので、失敗したが、靴
は地域に根付くことができる。
・世界的に成功した靴のデザイナーがいるが、それを強烈に支援した人がいた。そのような重点的に投
資を行う仕組み・システムがあれば良い。いろいろなものを誰かがマッチングしていかなくてはいけ
ない。
・アメリカでは、大きな場所を貸し切って、縫製、パタンナー、デザイナーが共同で仕事をして、次第
に互いに連携していくという場所があると聞いた。そのような場所があってもいいのではないか。
73
第4章
皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策検討
(5)アクションプラン
これらの実施事項は、少なくとも 3 年以内に実施もしくは実現可能性や実現方法を検討することが
必要である。現在想定しているスケジュールを示したものが図表・79 である。
優先的に取り組まなくてはならない、「①靴作り見学ツアーの実施と見学コースの整備」や「②広
報活動の強化」は 2016 年度の下期には取り組んでいることが重要である。そのためには 2016 年度
の前半にはこれらの事項を実施する体制を整備することが重要である。
図表・79 各実施事項の想定スケジュール
2016年度
2017年度
2018年度
2019年度
2020年度
実施体制の整備
①靴作り見学ツアーの実施&見学コースの整備
②広報活動
③浅草ブランドコンセプト・ビジュアルイメージの作成
⑦革製品を作りたいデザイナー等のコーディネート機能の整備
④象徴的な製品の製作
実現可能性・
実現方法の検討
⑤販売拠点・ショーケースの整備
⑥地域商標の運用
⑧皮革関連事業者起業支援
これらの事項を実施するためには少なくとも 2~3 名の専属のスタッフが必要であると思われ、また
そのスタッフを支援するような外部のクリエイティブディレクター、デザイナー、プランナーなど
の専門家も必要となる。本検討会では「浅草の革製履物産業の将来のあるべき姿を定め、その実現
に向けたアクションプランの検討」を目的としたメンバーによって構成されているため、必ずしも
結論を実行するための予算・人員などが担保されているものではなかった。
今後は浅草地域の革製履物産業の活性化に係るステークホルダーとなる行政(東京都、台東区、等)
や企業、組合(日本皮革産業連合会、東都製靴工業協同組合、等)による支援に向けた折衝が必要
となる。
検討会での意見
・現在は受け皿や運営する機関がない。
・ブランド化をやっていかないといけないのはわかっているが、ノウハウがなくてできない。やったこ
とがないので、何をやればいいのかわからない。
・クリエイティブディレクターが入ってくれるのなら、入ってほしいが、予算がないと難しい。
・プロデューサー活用でいうと、海外の人をプロデューサーとするのも有効である。日本人は海外で評
価されたというセリフに弱い。
74
第5章 競争力強化や高付加価値化の方策の検討への示唆
第5章
競争力強化や高付加価値化の方策の検討への示唆
本章では、
「皮革産業以外の産業集積地での取り組みの調査」、
「我が国の皮革産業集積地の競争力強化
や高付加価値化の方策の検討」を踏まえ、我が国の皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策
の検討を行う上での示唆を「①産業集積地において連携を行う利点」、
「②産業集積地において連携を行
ううえでの課題」
、
「③産業集積地において同様の検討を行ううえでの留意点」の視点から整理している。
技術者の育成、研究開発、市場調査、国外市場開拓など1社ではリスクと負担
が大きな取り組みを、複数社で分け合うことで実施しやすくなる。
事業者同士の相互理解が進んでおり、取り組み内容への合意形成がされた後は
展開スピードが早い場合が多い。
①産業集積地において連携を行う
利点
地域ブランドを立ち上げた場合、各社が商品展開を行うことができ、ブランド全
体として幅広い商品・サービスを顧客に提案することができる。
ツーリズムとしての価値提供をあわせて行いやすい。
該当の産業が基幹産業として認識されている場合、行政の支援を受けやすい。
②産業集積地において連携を行う
うえでの課題
補助金に頼っているケースが多く、補助期間が切れた際の継続的な取組に課題
がある。
ステークホルダーとなる事業者が多く、取り組みの内容が凡庸なものになったり、
スピードが遅くなったりする懸念がある。
組合を起点としながらも一部の有志が推進すべき。
体制構築
外部からプロデューサーを招聘することが重要である。
業界内の重鎮のバックアップのもとに実務上は中堅が推進することが有効である。
③産業集積地
において同様
の検討を行うう
えでの留意点
各種補助金の申請をきっかけとして議論を行うことも有効である。
取り組みを推進する事業者の身銭による投資も重要である。
検討・実施
地域ブランド等の認証・ツーリズムの活動では参加のハードルは低めに設定し、
活動の広がりを優先すべき。
共通ブランドを作るだけで顧客に訴求できるわけではない。プロモーションに経営
資源を積極投下すべき。
77
第5章
競争力強化や高付加価値化の方策の検討への示唆
①産業集積地において連携を行う利点
○技術者の育成、研究開発、市場調査、国外市場開拓など 1 社ではリスクと負担が大きな取り組みを、複数
社で分け合うことで実施しやすくなる。
豊岡鞄では有志の 12 事業者によって鞄縫製者トレーニングセンターを立ち上げ、また、今治タオ
ルや高岡銅器では有力なプロデューサーを招聘し、また、今治タオル、甲州ワインでは、複数社が
集まって地域ブランドとして国外での販路を開拓している。
このように、1 社では経営資源(金銭的、人的)の面から実現できないようなことも、産業集積地
であれば共同で行うことでリスクと負担を分散させ、実現しやすくなる。
○事業者同士の相互理解が進んでおり、取り組み内容への合意形成がされた後は展開スピードが早い場合が
多い。
産業集積地において事業者は従来から互いの事業内容・特徴などを十分に理解しており、取り組み
の方向性や実施内容について取り組みを行う事業者間で合意形成がなされた場合は、取り組みの推
進力が高い場合が多い。
○地域ブランドを立ち上げた場合、各社が商品展開を行うことができ、ブランド全体として幅広い商品・サービ
スを顧客に提案することができる。
地域ブランド等を立ち上げた場合、同一のブランドのもとに参加事業者が商品企画・開発、展開を
行うことになるため、ブランド全体としては様々な顧客に対して訴えかけられるような商品・サー
ビスを取り揃えやすい。
○ツーリズムとしての価値提供をあわせて行いやすい。
甲州ワインのワインツーリズムやまなし、燕三条の工場の祭典など、集積地が一般の人々にも産地
として認知されている場合、それをツーリズムの目的地としても位置づけることができ、観光客の
増加と集積地の製品販売額の増加・利益率向上の好循環を作りやすい。
○該当の産業が基幹産業として認識されている場合、行政の支援を受けやすい。
本調査において取り上げた事例の全ては、該当地域において、行政、産業界、住民から該当の産業
が基幹産業であると認識されている。そのような場合、各種公的支援などのバックアップを得られ
やすい。
78
第5章
競争力強化や高付加価値化の方策の検討への示唆
②産業集積地において連携を行ううえでの課題
○補助金に頼っているケースが多く、補助期間が切れた際の継続的な取り組みに課題がある。
本調査で取り上げた事例も中小企業庁の「JAPAN ブランド育成支援事業」や地方自治体の支援を
受けて取り組みを行っているケースが多い。ブランド化には長い時間を要するものの、一方でこれ
らの支援は時限的なものが多く、その期間が終わった際に、参加事業者の持ち出しの意思や体力な
どがない場合には、取り組みを中止・縮小しなくてはならないリスクがある。
○ステークホルダーとなる事業者が多く、取り組みの内容が凡庸なものになったり、スピードが遅くなったりする
懸念がある。
産業集積地には様々な思いの事業者が存在し、取り組みを行う前にステークホルダー全体の合意形
成を図ろうとしても、その難度は高い。どの事業者にとっても不都合が少ない方向性で合意した場
合、その方向性は凡庸なものとなってしまうリスクを孕んでいる。
また、これらのプロセスは非常に時間を要することも多く、そのことにより好機を逃してしまった
り、途中で頓挫してしまうリスクも高い。
③産業集積地において同様の検討を行ううえでの留意点
○(体制構築)組合を起点としながらも一部の有志が推進すべき。
本調査で取り上げた事例の多くは組合として取り組みに関わっているものの、組合の全事業者では
なく、そのうちの一部の事業者が取り組みを推進・積極的な関与を行っている。
前述の「ステークホルダーとなる事業者が多く取り組みの内容が凡庸なものになったり、スピード
が遅くなったりする懸念がある」という状況を避けるためにも、このように一部の事業者によって
取り組みを推進していくことが重要である。
○(体制構築)外部からプロデューサーを招聘することが重要である。
集積地の取り組みにおいては、ステークホルダーが多く、また、互いに同業者・既知であることか
らむしろ合意形成が難しい場合がある。また、長い間、産地の論理でビジネスを行っており、客観
的に自身の状況を見極められていない状況も多く見受けられる。
本調査で取り上げた事例では、このような状況を突破するために、産地とのしがらみのない外部か
らプロデューサーを招聘して取り組みを推進している。
「我が国の皮革産業集積地の競争力強化や高付加価値化の方策の検討」においても、適宜外部のプ
ロデューサーに参加いただいたが、その際には議論が活性化し、皮革産業におけるプロデューサー
の有効性も確認できている。
○(体制構築)業界内の重鎮のバックアップのもとに実務上は中堅が推進することが有効である。
厳しい状況におかれている産地においては、短期的に状況を好転させることは難しい。競争力強化
は長期的な取り組みとなるため、検討及び実施内容の推進は事業者内の中堅のスタッフが担うこと
が望ましい。一方で、前述のとおり、地域内での調整も必要なため、これらのスタッフを強力にバッ
クアップしてくれるような重鎮の存在も重要である。
79
第5章
競争力強化や高付加価値化の方策の検討への示唆
○(検討・実施)各種補助金の申請をきっかけとして議論を行うことも有効である。
中小企業庁「JAPAN ブランド育成支援事業」をはじめ、我が国には産業集積地の競争力強化や高
付加価値化に向けて利用可能な補助金が各種用意されている。このような補助金の歴史は長く、行
政側にノウハウも蓄積されており、申請の際に必要になる論点(提案書の項目、等)にあわせて議
論を行うことで、産地として実施すべき内容が整理されやすい。このように、各種補助金の申請を
きっかけとして議論を行うことも有効である。
○(検討・実施)取り組みを推進する事業者の身銭による投資も重要である。
実施に必要な資金の 100%を行政の資金や組合費から賄おうとするのではなく、取り組みを推進す
る事業者は、自身の身銭を切ることが重要である。そうすることにより、組合全体の合意形成の難
度も下がるとともに、参加事業者の当事者意識も増し、推進力が高まる。
○(検討・実施)地域ブランド等の認証・ツーリズムの活動では参加のハードルは低めに設定し、活動の広がり
を優先すべき。
地域ブランドでは認証の仕組みを設けたり、ツーリズムでは参加企業を募ったりしているが、本章
で取り上げた事例は商品やサービスの質を損ねない程度に、参加のハードルはなるべく低く設定し、
多くの企業の巻き込みと活動の広がりを優先している。
○(検討・実施)共通ブランドを作るだけで顧客に訴求できるわけではない。プロモーションに経営資源を積極
投下すべき。
各取り組みでは地域ブランドなどの共通ブランドを構築しているが、これらはあくまでも産業集積
地の競争力強化や高付加価値化に向けた出発点であり、このブランドを浸透させるための国内外で
の積極的なプロモーションを行うことが重要である。
80
参考資料
参考資料
1.関西検討会最終資料
経済産業省
「我が国皮革製品製造業の産業集積地における競争力強化のための戦略検討調査」
姫路・たつの×豊岡プロジェクトの今後の展開
2016年3月7日(打合せ後修正)
姫路・たつの×豊岡プロジェクト 検討会メンバー
検討の背景
プロジェクトが目指す方向性
今後の実施事項
83
参考資料
検討の背景
プロジェクトが目指す方向性
今後の実施事項
姫路・たつのの
なめし革製造業の状況
84
参考資料
我が国のなめし革製造業の事業所数・生産額は減少の一途
なめし革製造業の事業所数と製造品出荷額の推移
90 820億円
400
80
350
359所
70
300
60
十億円
50
460億円
40
10
0
250
200
185所 150
30
20
事業所数
製造品
出荷額
100
参考:
1992年は682所、
1946億円
02
03
04
50
05
06
07
08
09
10
11
13
0
年
出所)工業統計を基に算出
4
兵庫(姫路・たつの)は我が国のなめし革の一大産地
なめし革製造業の県別事業所数(左)と製造品出荷額(右)(2013年)
その他
その他
14%
21%
北海道
北海道
山形 2% 2%
東京
16%
4%
東京 8%
59%
52% 兵庫
兵庫
21%
山形
出所)工業統計を基に算出
85
5
参考資料
兵庫県のなめし革生産額も大きく減少している
兵庫県のなめし革製造業の製造品出荷額と全国に占める割合の推移
55
50
52%
410億円
35
40
30
十億円
35
240億円
30
25
%
15
15
0
25
20
20
5
製造品
出荷額
全国に
占める
割合
40
45
10
45
10
参考:
1992年は
953億円(49%)
02
03
04
5
05
06
07
08
09
10
11
13
年
0
出所)工業統計を基に算出
6
出所)工業統計を基に算出
7
兵庫の付加価値割合は4大産地のなかで最も低い
日本のなめし革製造業の産地別の付加価値割合(2013年)
57%
48%
47%
山形
東京
23%
兵庫
86
北海道
参考資料
2007年以降、兵庫では付加価値割合が減少傾向
兵庫県のなめし革製造業の付加価値割合の推移
40
全国
兵庫
38
36
34
%
32
30
28
26
24
22
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
年
13
出所)工業統計を基に算出
豊岡の
鞄・ハンドバッグ製造業の状況
87
8
参考資料
我が国の鞄の事業所数・生産額も減少の一途
鞄・ハンドバッグ製造業の事業所数と製造品出荷額の推移
1190億円
120
110
800
736所
100
事業所数
製造品
出荷額
700
90
830億円
80
600
十億円
500
70
60
419所
50
400
300
40
30
200
参考:
1992年は1625所、
2687億円
20
10
0
02
03
04
100
05
06
07
08
09
10
11
年
13
0
出所)工業統計を基に算出 10
我が国において兵庫は事業所数で3位、生産額で2位の産地
鞄・ハンドバッグ製造業の県別事業所数(左)と製造品出荷額(右)(2013年)
東京
その他
22%
25%
23%
29%
東京
埼玉 6%
愛知 7%
埼玉
その他
20%
8%
千葉
大阪
6%
14%
18%
大阪
兵庫
22%
兵庫
出所)工業統計を基に算出 11
88
参考資料
兵庫県の生産額・全国に占める割合は10年前から上昇
兵庫県の鞄・ハンドバッグ製造業の製造品出荷額と全国に占める割合の推移
26
22
24
20
22%
22
20
180億円
18
十億円
16
14
10
0
%
8
8
2
16
12
10
4
18
14
140億円
12
6
製造品
出荷額
全国に
占める
割合
6
参考:
1992年は
345億円(13%)
02
03
04
4
2
05
06
07
08
09
10
11
13
年
0
出所)工業統計を基に算出 12
兵庫の付加価値割合は5大産地のなかで最も高い
日本の鞄・ハンドバッグ製造業の産地別の付加価値割合(2013年)
49%
41%
39%
東京
兵庫
大阪
43%
千葉
47%
埼玉
出所)工業統計を基に算出 13
89
参考資料
近年、兵庫の付加価値割合が急上昇
兵庫県の鞄・ハンドバッグ製造業の付加価値割合の推移
65
全国
兵庫
60
55
50
%
45
40
35
30
25
20
02
03
04
05
06
07
年
08
09
10
11
13
出所)工業統計を基に算出 14
参考)付加価値の定義
従業者30人以上
付加価値額=
製造品出荷額等+(製造品年末在庫額-製造品年初在庫額)+(半製品及び仕掛品年
末価額-半製品及び仕掛品年初価額)-(消費税を除く内国消費税額+推計消費税
額)-原材料使用額等-減価償却額
従業者29人以下
粗付加価値額=
製造品出荷額等-(消費税を除く内国消費税額+推計消費税額)-原材料使用額等
出所)工業統計 15
90
参考資料
姫路・たつので起こっていること
多品種大量生産
↓
多品種少量生産
競争力の
ある海外製品
(鞄・靴)の流入&
製品メーカーの海外
への生産移転
各事業者の
生産量の減少
海外製品の
選択
品質の低下
生産の
非効率化
利益の
減少
技術力の
停滞
投資への
非積極化
(設備・人材)
16
姫路・たつので起こっていること
競争力の
ある海外製品
(鞄・靴)の流入&
製品メーカーの海外
への生産移転
各事業者の
生産量の減少
生産の
非効率化
海外製品の
選択
原皮の調達力の
低下
利益の
減少
日本の
事業者の廃業
(非継承等)
品質の低下
技術力の
停滞
投資への
非積極化
(設備・人材)
地域内の
競争環境の
緩和
皮革関連業の
廃業・撤退
(薬品、機械等)
17
91
参考資料
豊岡で起こっていること
事業者間連携が
進みやすい文化も
1つの要因
価格競争力の
ある海外製品の
流入
各事業者の
生産量の減少
明確に
ポジショニング
されたオリジナル製品
&豊岡ブランド
の展開
消費者満足の
向上
オリジナル製品
の消費者の
選択
OEM製品の
対メーカーの
交渉力強化
優良メーカの
受託増加
技術力・サービス
の向上
個社&地域に
よる投資への
積極化
(設備・人材)
生産量の拡大・
利益の確保
18
検討の背景
プロジェクトが目指す方向性
今後の実施事項案
92
参考資料
両産地の本プロジェクトへの期待
姫路・たつの
豊岡
付加価値&顧客選択の拡大
革の拡販
(新しい販売先の獲得)
皮革を使った鞄作り
両産地が連携した商品展開
20
両産地の強みとポジショニング
現状では「姫路・たつの」のポジショニングが必ずしも明確でない。
豊岡
姫路・たつの
強み
皮革
事業者
地域
多品種少量生産・
短納期生産
個性的な
材料加工
積極的な
設備投資
後継者の
存在
品質の安定性
革の歴史
事業者間の
連携
観光資源の
充実(姫路城等)
鞄の歴史
観光資源の
充実(城崎等)
廉価で品質が良い
スタンダードなデザイン
アフターサービスが充実
???
ポジショニング
(両産地の連携)
???
21
93
参考資料
両産地の連携の進め方
タンナー5社の強み・
製品の整理
検討メンバー以外の
事業者の巻き込み
海外展開の
戦略の検討
両産地の連携における
ポジショニング・ブランディング
の在り方の検討
コラボラインの立ち上げ
タンナー5社の
セールスポイントを
テキスト・ビジュアル面で整理
22
検討の背景
プロジェクトが目指す方向性
今後の実施事項
94
参考資料
合意した実施事項
実施内容1:
産地相互見学会
タンナー5社の強み・
製品の整理
検討メンバー以外の
事業者の巻き込み
海外展開の
戦略の検討
両産地の連携における
ポジショニング・ブランディング
の在り方の検討
コラボラインの立ち上げ
タンナー5社の
セールスポイントを
テキスト・ビジュアル面で整理
実施内容2:
兵庫皮革・鞄
ブランド化検討
24
実施内容1:産地相互見学会
【実施事項】
【予算】
 産地相互見学会
 豊岡の鞄や姫路・たつのの革にまつわる場所・企
業に訪問
 1回あたり20~25人程度が訪問
参加者による自己負担
【スケジュール】
平成28年度から年2回程度実施
※1~3班に分かれて訪問
平成28年度は4~6月上旬(姫路・たつのメン
バーが豊岡を訪問)、7月下旬(豊岡メンバーが
姫路・たつのを訪問)に実施予定
【体制】
(主導)
 林様(豊岡まちづくり株式会社)
【備考】
産地に訪問した際には、受け入れ側企業と訪問側
企業のそれぞれがどの企業と今後取り組みを深めて
みたいかを把握するためのアンケートを実施。
(訪問+受け入れ企業)
 検討会メンバーの企業
+本検討会メンバーが推薦する企業(豊岡のみ)
 豊岡メーカーに、姫路・たつのメーカー(5社)の取り組み・商品を周知するための展示会を7月1日(金)・2
日(土)に実施予定(@豊岡稽古堂)。
 費用は姫路・たつのメーカー(5社)の負担。
 本展示会でさらに姫路・たつのの皮革に興味を持った事業者も見学会参加の候補とする。
95
参考資料
実施内容2:兵庫皮革・鞄ブランド化検討
【実施事項】
【スケジュール】
 豊岡×姫路・たつのコラボラインの立ち上げに向けた以
下の事柄と検討会の実施
平成28年度から適時実施
第1回は7/1の17時~実施
 タンナー5社の強み・製品の整理
 タンナー5社のセールスポイントをテキスト・ビジュ
アル面で整理
【備考】
検討会には両産地において最低4名以上は出席するこ
とを前提とする。
 両産地の連携におけるポジショニング・ブランディ
ングの在り方の検討
 海外市場のスタディ・海外展開の戦略の検討
【体制】
 本検討会メンバー
【予算】
 参加企業による自己負担
+
 以下の関連補助金への応募
▪ 中小企業庁:
平成28年度ふるさと名物応援事業補助金
(JAPANブランド育成支援事業)
▪ 経済産業省クリエイティブ産業課:
平成27年度補正TPP対策JAPANブラン
ド等プロデュース支援事業
(MORE THANプロジェクト)
今後5年間のアクションプラン案
実施スケジュールイメージ
2016年度
実施内容1:産地相互見学会
●(4~6月@姫路)
●(7月下旬@豊岡)
●(皮革展示会@豊岡、7/1・2)
2017年度
●(@姫路)
●(@豊岡)
2018年度
●
●
実施内容2:兵庫皮革・鞄ブランド化検討
各種補助への申請
タンナー5社の
強み・製品の整理
タンナー5社のセールスポイントを
テキスト・ビジュアル面で整理
両産地の連携におけるポジショニング・
ブランディングの在り方の検討
海外市場のスタディ・
海外展開の戦略の検討
検討会の実施
豊岡×姫路・たつの
●(展示会@国内)
コラボラインの立ち上げ
(展示会@国外)※具体的な時期は対象国に依存
※適宜実施(第1回は7/1夕方~)
27
96
参考資料
2.関東検討会最終資料(浅草靴産業のビジョン発表会資料)
経済産業省
「我が国皮革製品製造業の産業集積地における競争力強化のための戦略検討調査」
浅草靴産業のビジョン発表会
2016年3月4日
浅草靴産業のビジョン 検討会メンバー
検討の背景と目的
浅草が向かうべき方向性案
今後の実施事項案
97
参考資料
検討の背景と目的
浅草が向かうべき方向性案
今後の実施事項案
我が国の革製履物の生産額は減少の一途
日本の革製履物の国内製造品出荷額と輸出入額の推移(為替変動)
550
500
450
輸入額
400
十億円
350
300
250
221
200
-5%
197
197
188
178
193
174
150
149
136
120
133
100
50
0
国内生産額
輸出額
02
03
04
05
06
07
年
98
08
09
10
11
12
出所)国内生産額は工業統計、輸出入額はUN Comtradeを基に算出
3
参考資料
東京は我が国の革製履物の一大産地
日本の革製履物の産地別製造品出荷額の割合(2013年)
その他
東京
21%
24%
岩手 6%
山形
6%
18%
7%
福島
兵庫
8%
埼玉
出所)工業統計を基に算出
4
出所)工業統計を基に算出
5
東京の付加価値割合は3大産地のなかで最も低い
日本の革製履物の産地別の付加価値割合(2013年)
41%
37%
33%
東京都
兵庫県
99
埼玉県
参考資料
台東区(浅草)の地域としての利益率は必ずしも高くない
日本の革製履物の産地別企業の利益率平均
2.8%
2.6%
1.2%
0.3%
0.0%
兵庫県神戸市 東京都台東区 大阪府大阪市 東京都足立区
その他の地域
出所)商工リサーチ企業情報を基に算出
6
浅草ではこれまで以下の様な集積地としての強みを活かしてきた
流通・情報コストの低下
 物理的な輸送コストの低さ
 卸・小売にとっての取引のし易さ
安価な海外製品の輸入
 事業者間の効率的情報交換
生産拠点の国外への移転
 事業者間の分業による効率化
 技能者の集中
顧客の嗜好の変化
顧客視点から評価される新たな強みを構築する必要性
7
100
参考資料
集積地においては、
個社の強みと地域の強みを両輪で強化していくことが有効
個社の
強み
地域の
強み
※「個社の強み」の強化方法については、
経済産業省「我が国の皮革産業のブランド力強化に関する調査」参照
(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2015fy/000924.pdf)
8
経産省事業にて、浅草の地域としての
革靴産業の強みの強化に向けた方向性を検討
事業名:
検討メンバー:
開催日時:
我が国皮革製品製造業の産業集積地における
競争力強化のための戦略検討調査
㈱ヤングシューズ
金井将樹
㈱パナマシューズ
山田裕亮
サラヰ製靴㈱
皿井美緒
㈱スタジオヨシミ
吉見鉄平
富田工業㈱
藤田晃成
㈲川島商店・エーラウンド
川島武雄
台東デザイナーズビレッジ
鈴木淳
第1回(11月4日)、第2回(11月24日)、
第3回(12月14日)、第4回(1月20日)、第5回(2月8日)
9
101
参考資料
検討の背景と目的
浅草が向かうべき方向性案
今後の実施事項案
長期的(10~20年後)に目指すべきは、
消費者は、Made in 浅草の靴を買うことで満足が得られ、
メーカーは、OEM・オリジナルともに十分な利益が
確保できる条件で取引ができること
活かすべき強みは、
???
11
102
参考資料
浅草の大きな強みの一つは、来訪者の多さ
台東区への年間観光客数の推移
5,000
3,934
4,000
4,383
4,084
4,504
年間観光客数
うち3,050万人が
浅草地区を訪問
万人
3,000
2,000
1,000
191
413
426
526
2010
2012
2014
うち外国人客数
0
2008
年
12
特に、日本への訪日外国人客数は急増
日本への訪日外国人旅行者数の推移
1,974
外国人旅行者数
2,000
1,500
1,341
万人
1,036
1,000
500
521
0
2003
2005
2007
2009
年
103
2011
2013
2015
13
参考資料
長期的(10~20年後)に目指すべきは、
消費者は、Made in 浅草の靴を買うことで満足が得られ、
メーカーは、OEM・オリジナルともに十分な利益が
確保できる条件で取引ができること
活かすべき強みは、
浅草の土地の魅力
(観光地・皮革産業集積)
14
浅草が靴の産地だということで浅草の靴が選択される可能性
浅草=靴の
産地という
認知
浅草の靴の
選択
浅草の靴の
品質への
消費者満足
15
104
参考資料
長期的(10~20年後)に目指すべきは、
消費者は、Made in 浅草の靴を買うことで満足が得られ、
メーカーは、OEM・オリジナルともに十分な利益が
確保できる条件で取引ができること
中期的(2~3年後)に目指すべきは、
浅草=靴の産地という認知度向上
活かすべき強みは、
浅草の土地の魅力
(観光地・皮革産業集積)
16
既に浅草に来ている人々、浅草が惹きつけやすい靴好きの人々
の認知を高めることで、一般の人々の認知に波及させる
既に浅草に来ている人々
浅草が惹きつけやすい人々
シニアの日本人観光客
靴好きの日本人
修学旅行生
靴好きの外国人観光客
一般の外国人観光客
一般の人々への認知の波及
17
105
参考資料
認知が利益確保の好循環のきっかけとなる可能性
浅草=靴の
産地という
認知
浅草の靴の
選択
浅草の靴を
浅草の靴の
買うことによる
品質への
消費者満足の
消費者満足
向上
品質&
経験価値
の向上
メーカーの
交渉力の
強化
メーカーの
利益確保
投資への積極化
(設備・人材)
集積度の向上・
メーカー小売の
増加
土地の魅力の
向上
18
長期的(10~20年後)に目指すべきは、
消費者は、Made in 浅草の靴を買うことで満足が得られ、
メーカーは、OEM・オリジナルともに十分な利益が
確保できる条件で取引ができること
中期的(2~3年後)に目指すべきは、
浅草=靴の産地という認知度向上
活かすべき強みは、
強化すべき強みは、
浅草の土地の魅力
(観光地・皮革産業集積)
高い品質&経験価値
19
106
参考資料
検討の背景と目的
浅草が向かうべき方向性案
今後の実施事項案
まずは、観光客や靴好きを惹きつけるコンテンツづくりと広報を行う
靴作り見学ツアーの
実施&見学コースの
整備
広報活動の強化







靴作り見学ツアー協力頂ける事業者の開拓・選定
見学ルートの整備
マップやカタログ等の紹介ツールの作成
モデルツアーの設計
靴製作ワークショップ等の実施
ガイドスタッフの整備
多言語への対応 等
 各種機関との連携
(観光センター、旅行代理店、ゲストハウス、等)
 Webサイトの制作
 パブリシティ
 展示会への出展 等
21
107
参考資料
利益確保の好循環につなげるために以下の事柄なども有効
靴作り見学ツアー
の実施&見学コー
スの整備
広報活動の強化
浅草ブランドコンセ
プト・ビジュアルイ
メージの作成
販売拠点・ショー
ケースの整備
地域商標の運用
浅草=靴の
産地という
認知
象徴的な
製品の製作
浅草の靴の
選択
浅草の靴を
浅草の靴の
買うことによる
品質への
消費者満足の
消費者満足
向上
品質&
経験価値
の向上
メーカーの
交渉力の
強化
メーカーの
利益確保
投資への積極化
(設備・人材)
集積度の向上・
メーカー小売の
増加
土地の魅力の
向上
革製品を作りたいデ
ザイナー等のコーディ
ネート機能の整備
皮革関連事業者
起業支援
(制度、施設、等)
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これらを実施するためには専属の体制と外部サポートが必要
実施体制イメージ
プロジェクトチーム
外部サポーター
リーダー
プロデュー
サー
適宜
サポート
メンバー
メンバー
観光
プランナー
デザイナー
23
108
参考資料
2016年上期には実施体制を立ち上げたいが、
後ろ盾が無いのが現状
実施スケジュールイメージ
2016年度
2017年度
2018年度
2019年度
2020年度
実施体制の
立ち上げ
靴作り見学ツアーの実施&見学コースの整備
広報活動の強化
浅草ブランドコンセプト・ビジュアルイメージの作成
象徴的な製品の製作
実現可能性・
実現方法の検討
販売拠点・ショーケースの整備
地域商標の運用
皮革関連事業者起業支援
明るい浅草の靴産業を創るために
ご助言・ご支援よろしくお願いします
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