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カンボジア・シェムリアプ川流域における陸水の水質

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カンボジア・シェムリアプ川流域における陸水の水質
日本大学文理学部自然科学研究所研究紀要
No.49(2014)pp.103 − 114
カンボジア・シェムリアプ川流域における陸水の水質特性
大八木英夫*・Hang Peou **・塚脇真二***
Characteristics of Water Quality in the Siem Reap River Basin, Cambodia
Hideo OYAGI *, Hang PEOU ** and Shinji TSUKAWAKI ***
(Received November 16, 2013)
A development of the Siem Reap River basin has been recently planned in Cambodia. In addition, tropical lowland is
a fragile area where global climatic change has a great effect on its physical environment. From such point of view, fundamental data on physical as well as human conditions should be collected and scientifically analyzed. The purpose of the
present study is to evaluate the flowing and physicochemical properties of Siem Reap River as affected by human activity.
It is important to make clear the hydrological characteristics and their factor in Siem Reap River as a basic study in order
to advance the environmental preservation in the Angkor monument area. During the rainy season the quality of river
water has little influence by human activity. By comparing water quality in dry season with that in rainy season, difference is mainly recognized in the downstream of the river. Especially, the phenomenon of high concentration of chloride
ion was admitted after the flowing of the city area. Furthermore, the situation in the dry season is much worse when
reduced water volumes make the concentrations of dissolved substances to increase in the water. It is considered that the
phenomenon of the increase in chloride ion is caused by anthropogenic contamination.
Keywords: いえるものである。一方,アンコール遺跡観光のために
1 .はじめに
同国に訪れる外国人観光客の数は,1994 年以降年々増加
アンコール・ワット寺院で知られるカンボジアのアン
し,2005 年には 100 万人を突破し,2011 年には 290 万人
コール遺跡群は,1992 年に世界遺産(文化遺産)に登録
に急増したともいわれている。これにともなって,無計
され,8 世紀から 14 世紀にかけてクメール(アンコール)
画に発展し続ける観光産業や河川整備をはじめとした社
王朝が繁栄した。北方のクーレン山地から扇状地をへて
会基盤整備事業などによって,環境問題をはじめとする
南方の低地にいたるその広大な登録区域には,熱帯モン
諸問題が顕在化するとともに複雑なものとなりつつあ
スーン地域に特有の変化に富んだ自然環境やそれらに適
る。世界有数の観光地であるアンコール遺跡群が位置す
応したさまざまな生態系が存在する。これに加えてこの
るシェムリアプ州でこれはとくに顕著であり,上述の複
世界遺産は,登録地域に約 10 万人の地域住民が通常の
合体の重要な一角である同国の豊かな自然は,観光産
生活を営むという世界でも珍しいところである。このよ
業の発達とともに壊滅の危機に瀕している(塚脇ほか,
うに世界遺産であるアンコール遺跡群は壮麗な文化財と
2006)
。
豊かな自然,そして伝統的な地域社会の巨大な複合体と
*
**
***
日本大学文理学部:
〒 156-8550 東京都世田谷区桜上水 3-25-40
カンボジア国立アンコール世界遺産管理機構:
Bangkoung Village, Ampil District, Siem Reap Town, Siem Reap
Province, CAMBODIA
金沢大学:
〒 920-0813 石川県金沢市角間町
カンボジアの陸水に関する記載は,フランス統治時代か
*
**
***
─ 103 ─
Nihon University : 3-25-40 Sakurajousui, Setagaya-ku, Tokyo 156-8550,
Japan
Authority for the Protection and Management of Angkor and the
Region of Siem Reap(APSARA Authority): Bangkoung Village, Ampil
District, Siem Reap Town, Siem Reap Province, CAMBODIA
Kanazawa University : Kanazawa Univ. Kakuma-cho, Kanazawa,
Ishikawa pref. 920-0813, Japan
( 59 )
大八木 英夫・Hang Peou・塚脇 真二
ら行なわれ,J. N. Annandale や R. Bourret などがあげら
した。
れ( ラ オ,1992), 日 本 で も Mitsushio and Meas(1970)
観測地点は,上流域(SRR1)
・中流域(SRR2∼SRR4)
・
をはじめとして 1970 年まで学術的な調査が行なわれて
下流域(SRR5∼SRR7)とし,河川に橋が架かる調査に
きた。しかし,1970 年以降の戦乱により途絶え,それま
適した場所を選定し,また,アンコール・ワット寺院の
で収集されていたデータも散逸した。内戦も収まり 1990
環濠およびスラ・スラン(沐浴場)の 3 地点(AKP1∼3)
年代になると再び学術調査が行なわれ(奥村ほか,2007),
を加え,図 1 のように設定した。
現在に至る。しかしながら,水資源や生態系の究明に関
現地における調査は,多項目水質計(JFE アドバン
する本格的な学術調査は,まだ始まったばかりであると
テック社製,Rinko-profiler)にて水深・水温・EC(電気
いえる。そこで,本研究では,アジアモンスーンの影響
伝導度)・DO(溶存酸素量)
・濁度・Chl.(クロロフィル
により雨季と乾季とで河川水量が大きく異なり,またト
濃度)を測定し,EC/pH 計(HORIBA 社製,D-54)にて
ンレサップ湖の水理特性と密接に関連し,同湖の水質に
pH を測定した。また,現地において,4.8 アルカリ度法
影響を与えているシェムリアプ川に着目し,乾季と雨季
により HCO3 − を,その他の溶存主要成分(Na +,K +,
における季節変動と流下に伴う水質の空間分布について
Ca2 +,Mg2 +,Cl −,NO3 −,SO42 −)については,実験室
考察する。
に持ち帰りイオンクロマトグラフ法によって測定を行っ
た。流量については,各地点で簡易測量を実施し,流速
2 .地域概要
は電磁流速計(JFE アドバンテック社製,AEM213-D)
シェムリアプ川は,クーレン山に源を発し,主なアン
にて観測した。
コール遺跡群の地域を流れトンレサップ湖に流入する。
北方に砂岩で形成された山地(クーレン山),ペディメ
4 .結果
ント,沖積錐,低平地,湿地と続いており,南西方向に
4-1 流量変化について
緩勾配扇状地が形成されている(深野ほか,2010)
。本地
年間降水量のほぼ 90%は 6 ∼11 月に降り(図 2 )
,雨
域での年間の平均降水量は,約 1,300∼1,800mm である
季の後半にもなると河道から水があふれることも多い
が,雨季( 6 月∼11 月)と乾季(12 月∼翌年 5 月)の差が
(写真 1・2 )
。図 3 には,SRR1∼SRR7 までの流下に伴う
明瞭である(石澤・中島,1996)
。トンレサップ湖に流入
流量変化を雨季と乾季の季節ごとに示した。また,雨季
する河川水のほとんどは枯れてしまうが,シェムリアプ
と乾季では,河道を流れる水量の季節による差異が大き
川は一年間とおして河川水が認められる。シェムリアプ
かったため対数グラフによって示した。
川の全長は,約 90km であり,源流より約 70km の地域
低水位期にあたる雨季初期の 2012 年 6 月に観測した地
ではアンコール遺跡群が集中し,アンコール・ワット寺
点のシェムリアプ川の全地点の平均流量は 1.4 m3/s であ
院等の環濠や灌漑用水として一部取水されている。ま
り,雨季後期にあたる 10 月の最高水位期においては
た,遺跡群の中を流下した約 80km 地域より下流では,
27.2 m3/s となった。乾季になった後の水位が低下して
市街地を流れ,川に沿って家が建ち多くの住民が洗濯や
いく期間である 12 月には 6.5 m3/s(全地点平均値)とな
水浴び,川遊び,漁業など,生活に密着して河川水を利
り,その流量はおよそ 2 ヶ月で 1/4 程度に減少したとい
用し,かつ,排水路としての役割をもつ。
える。翌年 2013 年 5 月は,乾季後期で 0.2 m3/s(全地点
平均値)となり,どの季節と比較してももっとも少なく
3 .研究方法
最低水位期であり,2012 年 10 月と 2013 年 5 月の差はお
現地調査は,2012∼2013 年に集中して定期調査を実施
よそ 100 倍以上になった。
最高水位期(2012 年 10 月)における流量の変化は,上
し,本研究では,乾季と雨季の違いについて検討するた
流域から中流域(SRR1 から SRR6)にかけて 15.7m3/s か
め以下のように調査データを整理した。
1 )2012 年 6 月 :雨季初期(低水位期)
ら 39.9 m3/s と増加が認められた。しかし,最下流観測
2 )2012 年 8 月 :雨季中間期
地点にあたる SRR7 では 17.4 m3/s へと減少した。これ
3 )2012 年 10 月:雨季後期(最高水位期)
は,2013 年 5 月の最低水位期においても傾向は同様であ
4 )2012 年 12 月:乾季初期
り,SRR1 か ら SRR6 に か け て 0.1∼0.3 m3/s の 間 で 微 増
5 )2013 年 5 月 :乾季後期(最低水位期)
するが,SRR7 においては 0.1 m3/s 未満となった。本結
これに加えて,水質の経年的変化について比較するた
果のような傾向は,観測全期間においてほぼ共通してお
めに 2008 年の水質結果を Oyagi et. al.(2009)より参照
り,特にアンコール遺跡群区域内の SRR2 から SRR5 に
( 60 )
─ 104 ─
カンボジア・シェムリアプ川流域における陸水の水質特性
Rain Voleume (mm)
図 1 アンコール遺跡群(世界遺産)と調査地点
0
0
50
50
Siem Reap
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
2005
2006
図 2 2005∼2006 年におけるシェムリアプ市街地の降水量
─ 105 ─
( 61 )
大八木 英夫・Hang Peou・塚脇 真二
100.0
2012 年 10 月(雨季:雨季後期・最高水位期)
10.0
流量(m3/s)
2012 年 12 月(乾季:乾季初期)
1.0
2012 年 6 月(雨季:雨季初期)
0.1
2013 年 5 月(乾季:乾季後期・最低水位期)
0.0
30
40
50
60
70
80
90
100
源流からの流下距離(km)
図 3 シェムリアプ川の流下に伴う流量変化
( 62 )
写真 1 河岸の上限そばまで水位が上昇
(2011 年 8 月 31 日筆者撮影)
写真 2 河川水位が上昇し一部の道路に流れ込む
(2011 年 8 月 30 日筆者撮影) 写真 3 堰上流側(2011 年 8 月 31 日筆者撮影)
写真 4 堰下流側(2013 年 5 月 28 日筆者撮影)
─ 106 ─
カンボジア・シェムリアプ川流域における陸水の水質特性
おいて時期によって違いがあるものの SRR1 から SRR5
ムリアプ川の最高水位期(2012 年 10 月)と最低水位期
にかけて水量は増加し,SRR1(観測最上流地点)に比
(2013 年 5 月)において,明瞭な違いがえられた。図 4
べ,1.6∼2.3 倍に増加した計算となる。しかし,SRR5
には,電気伝導度の流下に伴う変化を示した。シェム
と SRR6 の間には堰があるために(写真 3・4 ),特に SRR7
リアプ川における最高水位期の電気伝導度は,SRR1 で
では流量は減少し SRR1 と比べその量比は 0.9∼1.2 倍と
は 2.56 mS/m で,流下に伴い SRR7 に至るまで 2.44∼
なった。
2.83 mS/m で変化するが,変化量としては小さく溶存成
分の増加はほとんどないと示唆される。一方,最低水位
4-2 シェムリアプ川における流下に伴う EC・Chl.・濁
期の電気伝導度は,SRR1 では 1.99 mS/m となり,流下に
伴い SRR5 に至るまでは,1.83∼2.04 mS/m の間で変化
度の変化
表 1 には,シェムリアプ川に観測地点の水温・EC・
し,同じく大きな差は認められないのは雨季と同様であ
Chl.・濁度・DO・流量の一覧を示した。各要素は,雨
る。しかし,下流域(SRR5・SRR6・SRR7)の地点では,
季と乾季のいずれの時期も後期に調査することで,シェ
2.04 mS/m・3.37 mS/m・3.94 mS/m と な り,SRR1 と 比
表 1 水文情報
地点番号
2012 Jun.
2012 Oct.
2012 Dec.
2013 May
2013 Aug.
流量
SRR1からの
[m3/s] [流量比]
水温
[℃]
EC
[mS/m]
Chl.
[ μg/L]
濁度
[FTU]
DO
[%]
Chl./濁度
SRR1
SRR2
SRR3
SRR4
SRR5
SRR6
SRR7
0.8
-
28.1
4.36
4.8
34.3
79.4
13.9
1.4
1.7
30.5
4.38
3.0
42.9
90.5
7.0
1.7
1.9
1.0
2.1
2.2
1.2
30.2
31.5
30.5
4.58
5.18
5.54
6.3
2.7
3.3
45.1
44.5
34.8
88.1
81.5
54.7
13.9
6.2
9.4
SRR1
SRR2
SRR3
SRR4
SRR5
SRR6
SRR7
15.7
29.0
36.5
33.7
17.4
1.9
27.1
28.5
28.4
28.3
28.1
28.3
28.6
2.56
2.56
2.52
2.52
2.44
2.83
2.65
1.7
2.0
3.6
2.9
3.8
3.3
3.4
17.3
24.9
59.8
25.8
28.3
28.4
32.4
70.2
79.9
92.0
89.2
90.8
88.1
83.7
10.1
8.1
6.1
11.3
13.5
11.5
10.3
SRR1
SRR2
SRR3
SRR4
SRR5
SRR6
SRR7
4.3
6.8
9.6
6.8
6.2
5.3
1.6
25.5
27.4
27.4
27.2
27.6
28.5
28.3
1.68
1.74
1.74
1.81
1.89
2.27
2.47
1.4
2.4
2.9
9.6
4.5
4.7
3.8
12.6
22.8
29.0
37.3
28.6
45.7
46.4
79.1
85.8
84.8
83.8
81.8
83.2
72.9
11.0
10.6
10.1
25.8
15.8
10.2
8.1
SRR1
SRR2
SRR3
SRR4
SRR5
SRR6
SRR7
0.1
0.2
0.3
0.2
0.2
0.1
1.4
2.2
1.6
1.3
0.7
28.7
30.3
30.7
30.0
30.4
34.3
33.0
1.99
2.04
1.83
1.96
2.04
3.37
3.94
3.1
2.6
4.4
2.4
2.1
3.1
3.0
20.5
32.1
36.0
20.7
24.5
35.2
30.9
84.4
75.0
5.9
84.0
86.4
84.2
19.5
15.2
7.9
12.2
11.4
8.6
8.8
9.7
SRR1
SRR2
SRR3
SRR4
SRR5
SRR6
SRR7
5.7
7.3
1.3
26.7
27.7
2.16
2.22
3.3
2.6
54.7
38.8
77.7
85.0
5.9
6.8
3.7
2.9
2.8
2.6
0.6
0.5
0.5
0.5
28.3
29.4
30.6
29.9
2.41
2.54
3.18
3.84
2.1
1.9
2.5
2.4
26.6
25.6
30.4
33.2
86.9
85.8
92.3
60.1
7.7
7.3
8.1
7.2
2.3
2.1
1.1
2.2
1.6
1.5
1.2
─ 107 ─
( 63 )
大八木 英夫・Hang Peou・塚脇 真二
表 2 水質分析結果
Na+ NH+
4
K+ Mg2+ Ca2+
mg/L
Cl− NO−
SO2−
3
4 Na+ NH+
4
K+ Mg2+ Ca2+
meq/L
2−
−
Cl− NO−
3 SO4 HCO 3
SRR1
SRR2
SRR3
SRR4
SRR5
SRR6
SRR7
0.96
0.02
0.58
0.54
1.81
1.22
0.00
0.73
0.04
0.00
0.01
0.04
0.09
0.03
0.00
0.02
0.15
1.25
0.06
0.47
0.60
2.23
1.35
0.00
0.57
0.05
0.00
0.01
0.05
0.11
0.04
0.00
0.01
0.17
1.26
1.73
2.12
0.02
0.22
0.56
0.47
0.63
0.76
0.60
0.67
0.66
2.25
2.72
2.88
1.52
1.71
2.02
0.06
0.04
0.07
0.83
0.98
1.01
0.05
0.08
0.09
0.00
0.01
0.02
0.01
0.02
0.02
0.05
0.05
0.05
0.11
0.14
0.14
0.04
0.05
0.06
0.00
0.00
0.00
0.02
0.02
0.02
0.17
0.21
0.25
2012 Oct.
SRR1
SRR2
SRR3
SRR4
SRR5
SRR6
SRR7
1.36
1.36
1.58
1.40
1.53
1.70
1.60
0.03
0.06
0.08
0.04
0.04
0.05
0.03
1.13
0.87
1.17
1.22
0.71
0.98
0.84
0.72
0.74
0.71
0.69
0.86
0.78
0.79
2.06
2.30
2.19
2.07
2.51
2.46
2.54
1.81
1.76
1.99
1.79
1.93
2.13
2.00
0.08
0.11
0.12
0.08
0.00
0.00
0.00
0.84
0.79
0.82
0.93
1.02
1.49
1.16
0.06
0.06
0.07
0.06
0.07
0.07
0.07
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.03
0.02
0.03
0.03
0.02
0.03
0.02
0.06
0.06
0.06
0.06
0.07
0.06
0.06
0.10
0.11
0.11
0.10
0.13
0.12
0.13
0.05
0.05
0.06
0.05
0.05
0.06
0.06
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.02
0.02
0.02
0.02
0.02
0.03
0.02
0.18
0.18
0.18
0.18
0.17
0.18
0.18
2012 Dec.
SRR1
SRR2
SRR3
SRR4
SRR5
SRR6
SRR7
1.28
1.29
1.45
1.61
1.68
1.84
2.06
0.05
0.05
0.04
0.03
0.04
0.02
0.03
0.33
0.29
0.34
0.40
0.42
0.45
0.46
0.60
0.05
0.04
0.05
0.64
0.59
0.58
1.86
1.91
2.05
2.02
2.10
2.23
2.33
2.37
1.75
2.08
1.84
1.91
2.62
3.35
0.22
0.00
0.00
0.00
0.00
0.22
0.28
0.76
0.00
0.77
0.87
0.93
1.00
0.94
0.06
0.06
0.06
0.07
0.07
0.08
0.09
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.01
0.01
0.01
0.01
0.01
0.01
0.01
0.05
0.00
0.00
0.00
0.05
0.05
0.05
0.09
0.10
0.10
0.10
0.10
0.11
0.12
0.02
0.00
0.02
0.02
0.03
0.03
0.03
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.02
0.00
0.02
0.02
0.02
0.02
0.02
0.10
0.12
0.10
0.13
0.12
0.13
0.15
2013 May
SRR1
SRR2
SRR3
SRR4
SRR5
SRR6
SRR7
1.42
1.34
1.31
1.53
1.64
2.52
2.84
0.05
0.06
0.06
0.07
0.20
0.45
0.15
0.57
0.58
0.49
0.60
0.56
0.64
0.78
0.79
0.67
0.59
0.60
0.53
0.53
0.60
2.21
2.17
1.72
1.83
1.99
2.80
2.70
3.89
3.87
3.41
3.87
2.61
3.67
4.35
0.04
0.00
0.09
0.10
0.08
0.49
1.03
0.82
1.03
0.90
1.11
1.18
2.30
1.42
0.06
0.06
0.06
0.07
0.07
0.12
0.11
0.00
0.00
0.00
0.00
0.01
0.01
0.03
0.01
0.01
0.01
0.02
0.01
0.02
0.02
0.07
0.06
0.05
0.05
0.04
0.05
0.05
0.11
0.11
0.09
0.09
0.10
0.13
0.13
0.11
0.11
0.10
0.11
0.07
0.12
0.15
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.02
0.01
0.02
0.02
0.02
0.02
0.02
0.03
0.04
0.14
0.10
0.08
0.10
0.12
0.15
0.15
2013 Aug.
SRR1
SRR2
SRR3
SRR4
SRR5
SRR6
SRR7
1.47
1.32
0.02
0.00
0.72
0.40
0.71
0.68
2.17
2.15
2.85
1.74
0.26
0.11
1.14
0.87
0.06
0.06
0.00
0.00
0.02
0.01
0.06
0.06
0.11
0.11
0.08
0.05
0.00
0.00
0.02
0.02
0.11
0.13
1.86
1.86
2.35
3.05
0.08
0.06
0.07
0.04
0.57
0.54
0.60
0.77
0.76
0.73
0.73
0.78
2.36
2.26
2.92
3.35
1.98
1.96
3.41
4.96
0.11
0.11
0.26
0.88
0.99
0.67
1.44
1.57
0.08
0.08
0.10
0.13
0.00
0.00
0.00
0.00
0.01
0.01
0.02
0.02
0.06
0.06
0.06
0.06
0.12
0.11
0.15
0.17
0.06
0.06
0.10
0.14
0.00
0.00
0.00
0.01
0.02
0.01
0.03
0.03
0.20
0.20
0.19
0.18
地点番号
2012 Jun.
較して SRR7 では 2 倍ほど溶存成分量が増加したことが
ては,河川の流量の差異に関係なく,対する Chl. の濁度
示唆される。
の量比が概ね 5 ∼16%の範囲で変化し,濁り成分の大半
表 2 には,水質分析の結果を示す。特に Na や Cl が,
+
−
最低水位期からの下流域において最上流域より約 1.5∼ 2
がラテライトを代表とする粘土・シルト質の懸濁物質と
示唆され,淡黄褐色の河川水となっているといえる。
倍に増加しており,前述の EC の増加は,主として人為
本研究で使用された機器は,蛍光式クロロフィル計で
的な汚染の指標となる Na や Cl が要因であると示唆さ
ある。その蛍光量の値とクロロフィルの関係については,
れる。
田中ほか(2004)によれば,クロロフィル色素量との相
+
−
次に,流下に伴う濁度および Chl.(クロロフィル)の
関はよいが,クロロフィル a との相関は悪いことが確認
変化を図 5 に示した。最高水位期の濁度は 17∼56 FTU
されており,本結果における Chl. は,植物プランクトン
の間で変化し,Chl. は 1.38∼9.61 μg/L の間で変化した。
の葉緑体に存在する光合成色素の総量を示すことにな
濁度および Chl. は,比較的上流域で濃度が低く,下流域
る。また,本地域の Chl. は,湖沼の指標に基づけば貧栄
では増加傾向が認められるが明瞭ではない。また,最低
養湖と位置づけられ,人間活動による栄養塩の増加が考
水位期における変化も同様であり,溶存成分のような下
えられる本地域の特性から考えても,極めて少ない値で
流域での明瞭な増加傾向は認められない。本河川におい
あることが示唆される。本結果については,生態学的・
( 64 )
─ 108 ─
カンボジア・シェムリアプ川流域における陸水の水質特性
5.00
4.50
4.00
3.50
EC(mS/m)
3.00
2012 年 10 月(雨季:最高水位期)
2.50
2.00
2013 年 5 月(乾季:最低水位期)
1.50
1.00
0.50
0.00
30
40
50
60
70
源流からの流下距離(km )
80
90
100
図 4 流下に伴う EC の季節変化
70.00
10.00
濁度
9.00
Chl.
60.00
2012年10月(最高水位期)
8.00
2013年 5 月(最低水位期)
7.00
50.00
40.00
5.00
Chl. (µg/L)
濁度(FTU)
6.00
4.00
2013 年 5 月:濁度
2013 年 5 月:Chl.
30.00
3.00
2.00
20.00
2012 年 10 月:Chl.
1.00
2012 年 10 月:濁度
10.00
30
40
50
60
70
源流からの流下距離( km )
80
90
0.00
100
図 5 流下に伴う Chl. および濁度の季節変化
─ 109 ─
( 65 )
大八木 英夫・Hang Peou・塚脇 真二
地球化学的な調査研究をさらに進める必要があると思わ
降水に近い水質成分になっていると指摘されており,河
れる。
川水も同様の結論に基づくものと考えられる。また,
2008 年 3 月の SRR7 において Na − Cl 型が認められた結
5 .考察
果は,人為的な汚染が原因であり生活排水の影響ではな
5-1 シェムリアプ川における流下に伴う水質変化
いかと考えられる。本考察については,後述することと
図 6 に は, 乾 季(2008 年 3 月・2013 年 5 月 )と 雨 季
する。さらに,AKP2・AKP3 において Na−Cl 型を示し
(2008 年 9 月・2012 年 10 月)のシュティッフダイアグラ
たのは,アンコール・ワット寺院の環濠の水に周辺地下
ムにて示した。これによれば,シェムリアプ川の水質型
水の影響もあったと考えられる。シェムリアプ川からの
は,Na−Cl 型・Ca−Cl 型・Ca−HCO3 型に種別できる。
供給もあると考えられるが,浅井ほか(2012)では,ア
2012 年 10 月(最高水位期)におけるシェムリアプ川の
ンコール・ワット寺院周辺地下水の水質が報告されてお
水質は,すべて Ca−HCO3 型であった。一方で,2013 年
り,アンコール遺跡地域の地下水水質の Na +と Cl −の比
5 月(最低水位期)における結果は,上流域では Ca−Cl
が 1:1 のラインに沿って分布していることから,生活
型,下流域では Ca−HCO3 型であった。これは,2008 年
排水の影響を受けた地下水が確認されていることから
の雨季と乾季の差異とは異なる結果となった。SRR1 で
も,環濠周辺の地下水からの影響しているものと考えら
は,雨季および乾季それぞれの時期で比較しても水質型
れる。
が異なっており,上流域で変化が示唆される。しかし,
さらなる人為的影響の度合いについて考察を深めるた
SRR1 と SRR2 の間には,川沿いに多くの住民はおらず
め,図 7 には,人間活動の指標となる Na + と生活排水
人為的な影響は大きくなく,Na +や Cl −の増加傾向が認
などには多量に含まれていない Ca2 + の流下に伴う水質
められるのは SRR5 より下流域である。また,近年,こ
変化について示した。
の地域では,河川整備に伴い川沿いの住宅が移動するこ
2012 年・2013 年の高水位期における人間活動の指標
とによりその軒数は減少しており,人為的影響は軽減さ
と な る Na + は,SRR1 で 0.06meq/L に 対 し,SRR7 で は
れていることが考えられる。
0.07meq/L であった。一方,低水位期においては,SRR1
+
ま た,AKP1 ∼ AKP3 に つ い て は, 陽 イ オ ン の Na
では 0.06meq/L に対して,SRR7 では 0.11meq/L であっ
(2012 年 10 月の AKP1 のみ Ca )が,陰イオンでは雨季
た。本結果から,低水位期において,下流域における人
には HCO3 が乾季には Cl が卓越した。シェムリアプ
間活動の影響による水質汚染が生じていることが指摘で
川からの河川水が水源とひとつとなっているアンコー
きる。これは,生活排水などには多量に含まれていない
ル・ワット寺院の環濠では,近年,生活排水の流入に
Ca2 + は,流下に伴い 0.11meq/L(SRR1)から 0.13meq/L
よって植物プランクトンが多量に発生し,同寺院内の聖
(SRR7)へと変化しているがわずか 0.03meq/L ほどしか
池にはいわゆる水の華が発生するようになったことが報
増加していないことからことからも熱帯地域における蒸
告されている。シェムリアプ川の河川水は,アンコー
発濃縮で生じたことではないと確認できる。Ca2 +と Na +
ル・トムの環壕へまず導かれ,東側の環壕を流れた水が
の増加量は,SRR7/SRR1 の比がそれぞれ 1.2(Ca2 + ),
その南方にあるアンコール・ワット寺院の環壕へ流入す
2.0(Na +)であった。すなわち,乾季に流下に伴い Na +
る。スラ・スラン沐浴場にもこの河川水の水が引き込ま
のみ大きく増加していることが示され,Na +が 2 倍ほど
れてはいるが,そのほとんどは雨水および地下水でまか
増加したことになる。このように,乾季と雨季に水質差
2+
−
−
なわれている。したがって,アンコール遺跡群区域の水
異が明瞭であり,特に,源流より 80km 地点より下流域
系ネットワークについては,降水・地下水についても,
(SRR5∼SRR7)の乾季においての Ca2 + の変化はほとん
水収支・物質収支の視点からより詳細に解析する必要が
ど見られないが,人間活動の指標ともいわれる Na + や
ある。
Cl −の増加が認められた。また,2008 年の雨季と乾季の
Na−Cl 型は,2008 年乾季および雨季のクーレン山,
差異は明瞭であり,このときは,Na +のみおよそ 5 倍の
2008 年 3 月の SRR7,2013 年 5 月の AKP2,AKP3 で認め
増加が認められた。乾季における下流域において電気伝
られた。クーレン山の河川水は,雨季・乾季の差に関係
導度の増加も認められたとおり,Na +や栄養塩の代表的
なく恒常的に流水が認められ,地下水からの供給よって
な物質の NO3 −などの増加も認められ,人為的な汚染に
形成されている。浅井ほか(2012)によれば,クーレン
よるものであると示唆できる。すなわち,市街地を流れ
山の湧水の水質結果ではあるがほぼ同等の結果が得られ
るシェムリアプ川は,乾季に河川流量が減少し生活排水
ており,この湧水は,本地域の土壌が貧栄養な特性から
に対する河川水の希釈作用が弱まり,人間活動の影響が
( 66 )
─ 110 ─
カンボジア・シェムリアプ川流域における陸水の水質特性
2008 年 3 月
2008 年 9 月
2012 年 10 月
2013 年 5 月
低水位期
高水位期
高水位期
低水位期
クーレン山
SRR1
遺跡区域
SRR2
河
川
の
流
下
方
向
SRR3
SRR4
市街地
SRR5
SRR6
SRR7
meq/l
1
0
AKP1(アンコール・ワット寺院環濠北)
1
Cl- +NO3 -
K+ +Na+
Ca2+
HCO3 Mg2+
AKP2(アンコール・ワット寺院環濠南)
SO4 2-
AKP3(スラ・スラン)
図 6 シェムリアプ川およびアンコール遺跡区域における水域の水質
─ 111 ─
( 67 )
大八木 英夫・Hang Peou・塚脇 真二
0.25
Na+乾季
等量値(meq/L )
0.20
0.15
0.10
Ca2+ 乾季
Na+ 雨季
Ca2+ 雨季
0.05
2008年
0.00
等量値(meq/L )
0.20
0.15
Ca2+ 乾季
Ca2+ 雨季
Na+乾季
0.10
Na+ 雨季
0.05
0.00
2012年・2013年
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
源流か らの流下距離(km)
図 7 シェムリアプ川における流下に伴う雨季と乾季の Na +と Ca2 +の変化
(上段:2008 年,下段:2012・2013 年)
水質汚染となって表面化したためと考えられる。この雨
Cl − の相関関係は弱く 1:1 のラインに沿うこともない
季と乾季の流量の季節変動が,シェムリアプ川の水質の
ため,人為的起源(食塩)に由来するものではなく,降
季節変化に寄与していることが明らかとなった。これに
水および地下水からの涵養によるものであると結論づけ
加えて,人為的な汚染の指標として,栄養塩の代表物質
られる。2008 年期の下流域における Na +と Cl −の相関関
の NO3 − の挙動については,NO3 − が流下に伴い検出は
係は,強く(R2 = 0.99)となっており,1:1 のラインほ
されるがその濃度は低く,Na +や Cl −のように下流域に
ぼ沿って分布していることがわかる。これは,乾季の下
おける急激な増加の傾向ではなく,時期によって,場所
流域における EC の増加傾向(図 4 )から溶存成分の増加
によって変化の度合が異なるため,栄養塩類の挙動の解
については,生活排水などの人為活動に起源をもとめら
明についてはさらなる研究が必要であるといえる。
れると考えられる。一方,2012・2013 年期では Na + と
Cl − の相関関係は強い(R2 = 0.80)ものの 2008 年度に比
べて Na +の増加量が Cl −の増加量に比べさらに多いこと
5-2 水質の経年変化
特に下流域で人為的な影響で水質変化が認められたこ
が示された。
とは上記のとおりであるが,2008 年と 2012・2013 年で
これに加えて,図 9 には,SRR1(上流域)
・SRR2(遺
は,その水質変動パターンが異なることとなった。図 8
跡区域内)
・SRR5(市街地上流部)
・SRR7(最下流観測
は,上・中流域(SRR1∼SRR4)と下流域(SRR5∼SRR7)
地点)の Na +と Ca2 +の季節変化を示した。特に,実線で
を区別し,Na +と Cl −の比を示した。特に,2008 年およ
示された Na + の各地点の季節変化については顕著であ
び 2012 年・2013 年の両期間の上流域おいては,Na と
る。高水位期の Na + は,上流域と下流域の水質の濃度
+
( 68 )
─ 112 ─
カンボジア・シェムリアプ川流域における陸水の水質特性
0.50
1:1 ライン
0.45
0.40
0.35
2012・2013
Cl- ( meq/L)
0.30
上流域
下流域
2008
0.25
下流域
上流域
0.20
y = 1.3416x - 0.04
R² = 0.80
y = 0.8434x - 0.0039
R² = 0.99
0.15
0.10
0.05
0.00
0.00
0.05
0.10
0.15
0.20
0.25
0.30
0.35
0.40
0.45
0.50
Na (meq/L)
+
図 8 シェムリアプ川における上・中流域および下流域の Na +と Ca2 +の関係
雨季
0.20
等量値(meq/L)
0.15
乾季
SRR1Ca 2+
SRR1Na+
SRR2Ca 2+
SRR2Na+
SRR5Ca
2+
SRR5Na+
SRR7Ca
2+
SRR7Na+
雨季
0.10
0.05
0.00
2012/4/1
2012/5/21
2012/7/10
2012/8/29
2012/10/18
2012/12/7
2013/1/26
2013/3/17
2013/5/6
2013/6/25
2013/8/14
2013/10/3
日時
図 9 SRR1・2・5・7 における Na +と Ca2 +の季節変化
─ 113 ─
( 69 )
大八木 英夫・Hang Peou・塚脇 真二
の差異が小さいことが認められる。これは,降水が河川
に流入することによる希釈作用によって人為的物質が増
6 .おわりに
えることによって,その影響が表面化しなくなったと考
本研究では,観光都市シェムリアプにとって貴重な水
えられる。一方で,乾季の後半,すなわち低水位期にお
資源である,シェムリアプ川の水質の特徴から雨季と乾
いては,濃度の差異のばらつきが大きくなることが確認
季の流量の季節変動が,シェムリアプ川の水質に与える
できる。これは,前述の通り,高水位期に比べ低水位期
影響について示した。観光都市シェムリアプの発展に
では河川水の減少に伴い生活排水などによる人為的な物
は,水の利用方法についても多岐にわたり,水資源の確
質が降雨によって希釈されることもないため濃度が高く
保が不可欠である。しかし,利用後の排水まで考えなけ
なったことによるものであると考えられる。
れば,急速な開発にともなって,本地域のみならずトン
しかし,図 6 や図 7 からも読み取れるとおり 2013 年 5
2+
レサップ湖およびその下流域(メコン川流域)へのその
月の Ca の濃度が 2008 年に比べ高く,時に下流域で変
影響は,小さくないと想像できる。本論文では,観測地
化が生じていることが示唆される。本結果は,流下に伴
点数や調査回数は不十分でありながら,水質の経年変化
う Na と Cl の人為活動の起源に加えて,近年のさらな
に関して短期的にも長期的も変化しつつある特徴を捕え
る河川整備により,水系ネットワークの変化や水環境の
ることができたといえる。一方,シェムリアプ川の水質
利用方法について変化してきたことによるものであると
特性をより深く理解するためには,さらなる水収支およ
推定される。以上のように,2008 年と 2012・2013 年で
び土地利用変化,地下水との相互作用に関する解析を進
+
−
2+
水質を比較すると,Ca の増加の要因などは合理的に
める必要があることが今後の課題としてあげられる。
説明するのは容易ではなく,河川水と地下水の相互の関
係についても考慮する必要はあるが,下流域おける人為
起源に由来する混入は両年とも確認されたといえる。ま
た,浅井ほか(2012)によれば,アンコール遺跡地域の
浅層地下水は,地下水年代も古く(約 20∼30 年),
井戸直
近の土地利用状態などに大きく依存しており,季節変動
がある地下水とほとんど認められない地下水が不規則に
分布しており,地下水流動の観点からも水質の連続性や
地下水水質の進化の明瞭な傾向は確認できなかったと指
摘している。このことからも,河川水と地下水と相互作
謝辞
終わりに,本稿を草するに際して,調査に同行し貴重な示
唆をいただいた EMSB 調査グループおよび EMSB U-32 メン
バーさらに ERDAC 調査メンバーに心より感謝を申し上げる
次第です。また,カンボジア政府には調査の便宜はかってい
ただき協力をいただきました。査読者および編集委員の方々
には懇切なご指摘をいただきました。ここに記して厚くお礼
を申し上げます。
本論文は,日本大学文理学部自然科学研究所 2013 年度共
同研究費(代表者:森和紀)および文部科学省学術研究助成
基金助成金(若手研究(B)
)課題番号 23701032,代表者:大
八木英夫)によって行なった。
用についても不明点が多く,水環境の有効利用をするた
めに,今後の水環境についてより正確に把握すべくさら
なる調査を進める必要があると思われる。
参考文献
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ボジア・トンレサップ湖の電気伝導度の変化について.
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田中勝久・児玉真史・熊谷香・藤本尚伸(2004):有明海筑
後川河口域における冬季のクロロフィル蛍光と濁度変
動.海の研究,13(2),163-172.
塚脇真二・荒木祐二・石川俊之・本村浩之・向井貴彦・大八
木英夫・坂井健一(2006):カンボジアの大気環境―ト
ンレサップ湖生物多様性維持機構保全の視点から―.J.
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