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ベトナムにおける日本文学の翻訳·出版·研究

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ベトナムにおける日本文学の翻訳·出版·研究
ベトナムにおける日本文学の翻訳·出版·研究
-『今昔物語集』を中心に-
グエン ティ オアイン*
9)
<目 次 >
1. はじめに
2. ベトナムにおける日本文学の翻訳·
出版について
3. ベトナムにおける日本文学研究に
ついて
4.『今昔物語集』の翻訳について
5. 終わりに
Key Words: 日本古典文学(Japanese classical literature) 、翻訳(Translation)、説話(A
folktale)、『今昔物語集』(Konjaku-monogatari-syu)
<要旨>
ベトナムにおける日本古典文学の翻訳·出版·研究
-『今昔物語集』を中心にグエン ティ オアイン
ベトナムでは一九六〇年代から九五年までに、『雨月物語』、『源氏物
語』『平家物語』などの日本古典文学が、主に英語、フランス語、中国語な
どから翻訳されてきた。近·現代文学では『羅生門』、『鉄道員』など多くの
小説が翻訳·出版されてきた。その内、英語からベトナム語に翻訳したもの
* ベトナム漢喃研院 歴史·地理研究室長 日本古典文学、東アジア比較文学
44 日語日文學研究 제85집
と、日本語の原著から翻訳されたものとを比較すると、前者の方が多く、し
かもその翻訳は間違ったところも多々ある。しかし二〇一〇年までには『日
本霊異記』、『百人一首』など、日本語の原著から直接翻訳されたものも見
られるようになってきた。
日本文学の翻訳·出版が全国的に展開されてきているのと同時に、日本古典
文学研究も発展してきている。近年、日本文学研究は新たな局面に入り、発
表される論文も毎年増加している。日本文学の教育も各大学で重視されるよ
うになってきた。日本文学専攻を設けた大学もあり、文学研究を志す者も生
まれて来ている。とはいえ日本語の原著から翻訳·研究を進めている人はまだ
少ないのが現状である。
ベトナムにおける日本文学の翻訳、出版、研究についてはすでに幾つかの
論文があるが、研究事情と課題についてはいまだ十分に言及されているとは
いえない。
本稿では先行研究者の業績を参考にして、今まで自身の日本文学の翻訳·出
版·研究過程で得られた体験を提示しながら、現状と課題を検討し、幾つかの
提案もしていきたい。また『今昔物語集』の翻訳問題、中でも文化、歴史に
関する翻訳問題などについて論じ、本作品の漢字·訓読などを言語学的側面か
ら考察し、ベトナム語に翻訳した時に役に立つ訓読方法を明らかしていく。
また『今昔物語集』がベトナムにおいて日本古典文学として欠かせない作品
であることを明らかにし、東アジアにおける『今昔物語集』の意義を述べて
みたい。
1. はじめに
ベトナムでは一九六〇年代から九五年までに、『雨月物語』、『源氏物
語』『平家物語』などの日本古典文学が、主に英語、フランス語、中国語な
どから翻訳されてきた。近·現代文学では『羅生門』、『鉄道員』など多くの
小説が翻訳·出版されてきた。その内、英語からベトナム語に翻訳したもの
と、日本語の原著から翻訳されたものとを比較すると、前者の方が多く、し
かもその翻訳は間違ったところも多々ある。しかし二〇一〇年までには『日
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