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エンジニアの理想を叶えた 本格HiFiスピーカーの誕生

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エンジニアの理想を叶えた 本格HiFiスピーカーの誕生
Soavo開発ストーリー
( Soavoシリーズ開発エンジニアが語る )
エンジニアの理想を叶えた
本格HiFiスピーカーの誕生
飛世真博
岡崎浩二
田中克哉
商品開発
プロジェクトリーダー
ユニット
開発担当
キャビネット
開発担当
このたび、ヤマハとしては本当に久々となるHiFiオーディオのためのスピーカーの
「Soavo」
(ソアヴォ)シリーズが登場しました。
特にトールボーイタイプのメインスピーカー「Soavo-1」は、
ヤマハ伝統の技が随所に活かされているというその音質はもちろん、
喜多俊之氏の手による斬新なスタイリングも
大いに話題を集めそうです。
本日は、商品開発プロジェクトリーダーの飛世真博さん、
ユニット開発担当の岡崎浩二さん、
キャビネット開発担当の田中克哉さんの
3名のエンジニアにお集まりいただき、
新しいSoavoシリーズの魅力や技術的な特徴、
製品開発の裏話といったあたりまで、
大いに語っていただきたいと思います。
このインタビュー記事は、2006年10月16日ヤマハ株式会社
ホームシアタールームでのインタビューをもとに再構成されています。
構成:内藤 毅・岡 周
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Soavo開発ストーリー
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エンジニアの理想を叶えた
本格HiFiスピーカーの誕生
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世界のリスナーが求める
新しいナチュラルサウンドを目指して
音づくりの思想
中域を大切にしながらワイドレンジを獲得する
真の3ウェイ構成
‥‥‥‥今回発売されたSoavo-1、ヤマハ
存在感はアピールはで
としては久しぶりのHiFiオーディオのための
きたとしても、それこそ
スピーカーということになりますね。
打ち上げ花火のように
なってしまうでしょう。
飛世:はい。ミニスピーカーのNS-pf7という
モデルはわりと最近でしたが、本格的なブック
‥ ‥ ‥ ‥ たしか にそう
シェルフやフロア型ということになると、
かも知れませんね。
ウンドスピーカーもシリーズとして用意してい
1987年から99年まで販売されていた「NS-1
Classics」以来です。
飛世:私たちとしては、実際に多くの方に選ん
ますので、マルチチャンネルオーディオや高級
で使っていただきたいので、値段は1本20万円
なシアター用としてもお楽しみいただけます。
を切るぐらいで、サイズも使いやすいものでな
ただ、あくまで設計の基本は2ch再生という
ければならないと思うんです。逆に音質的には、
ことです。
このぐらいの価格帯が私たちのやりたいことを
実現できる最低ラインではないかなと。
‥‥‥‥なるほど。王道を行きました、という
ことですね。
NS-pf7
NS-1 Classics
‥‥‥‥こう言っては失礼なんですけど、こう
いうトールボーイのフォルムだと、これってシア
飛世:はい。もちろんSA-CDやDVDオーディオ
‥‥‥‥NS-1ですか、懐かしいですね。HiFi
タースピーカーなんじゃないの、と言われたり
の2ch/マルチチャンネル再生のことも想定はし
オーディオ向けのスピーカーというのは、特に
しませんか?
ていますが、HiFiスピーカーをお求めになる方が
普段楽しんでいらっしゃるのは、今でも圧倒的に
日本国内ではマーケットが読めないじゃな
いですか。ビジネスという観点から、敢えて
飛世:うーん、どうでしょう。開発する側として
ここへ参入するのはかなりチャレンジング
は、2chのピュアオーディオ再生に特化して設
な感じがするのですが?
計し、音質チューニングも行っていまして、シ
‥‥‥‥よくわかりました。音づくりについては、
アター用の対策ということは特に考えませんで
前回ご紹介いただいたNS-525シリーズと同じく
飛世:そうですね(笑)。実はひところは、
した。ただ、2chでしっかり音楽が聴ければシ
「ナチュラルサウンド」というのがキーワー
もっと高額な、ペアで100万円クラスのも
アター用としてお使いいただいてもまったく問
ドになっているようですが、そのあたりは今
のを検討していたんです。ただ、それでは
題ありませんし、センタースピーカーやサラ
回も変わっていないんですね。
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CD中心だと思いますので。
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のが薄くなってきている気がするんですね。
‥‥‥‥うーん、そう言われてしまうと悔しいで
そう考えると、現代のナチュラルサウンドに
すねえ。
求められるのは、アーティストが音楽に込めた
想いをそのまま再生することなんじゃない
飛世:われわれ日本のメーカーにも、たしかに反
かと思うんです。家に帰って音楽を聴いて、そ
省すべき点はあったと思うんです。たとえば、どう
れに浸りながらホッとしたり、いろいろなこ
しても音楽ではなくて音を聴いてしまう。素材の
とに想いを巡らせるような、そういうライフスタ
音を聴いてしまっていたんですね。
イルを提供できるスピーカーをやりたかったん
ですよ。
‥‥‥‥たしかに日本のオーディオシーン
‥‥‥‥携帯音楽プレーヤーでいつでも音楽
素材や新技術が投入されていないと物足
というのは、新しいモデルが出るたびに新
が聴ける時代だからこそ、ホームオーディオ
りないというか、商品として注目されない
というのはそういうものであって欲しいです
ところがありますよね。
よね。ところで今回のSoavo-1は前回のNS525と同じく、日本とヨーロッパを何度も行
き来しながら音質を仕上げていったそうですね。
飛世:たしかにそれはありますよ。かつて、
とにかく物量投入で1グラム何円みたいな
(笑)
、
Soavo-1
飛世:はい。今度のSoavoシリーズは日本市
音楽を聴くこととは関係のない方向にオーディ
場はもちろんですが、ヨーロッパを中心とした
オ製品が走ってしまった時代がありました。まあ、
飛世:そうですね。ヤマハのオーディオと
海外市場での評価も大いに狙っていきたい
メーカーとしてはあの時代に素材をひととおり
いうのは、昔からナチュラルサウンドというの
ので、ヨーロッパの人たちが考えるナチュラ
研究できたというメリットはあったんですけど。
が基本コンセプトになっていまして、このモデル
ルというのを相当に意識しています。
でもそれは変わりません。ただ、具体的にどの
ような音を目指すのか?という部分は時代ととも
‥‥‥‥日本とヨーロッパとでは、やはりナチュ
に変わっていかなければいけないと思うんですよ。
ラルサウンドの概念自体が違うものなんですか?
かつてのアナログオーディオ時代はレコー
ドプレーヤーなど使いこなしの難しいコン
飛世:もちろん共通する部分もありますが、違うと
ポーネントと組 み 合 わせて、楽 器 の 音 色
ころもかなりありますね。まず、彼らが重視するの
がちゃんと自 然に出 せるスピーカー、という
はサウンドステージ、つまり音による空間表現です。
のがナチュラルサウンドだったんですが、その
これまでの日本のスピーカーというのはNS-
当時とはソースも違うし、あの頃は日本市場中
1000Mのような特別なモデルは別にして、まとめて
心だったのに対して、今は比率から言えば欧
「ジャパニーズ・スピーカー」
と呼ばれているんです
州などの海外マーケットのほうが大きくなっ
が
(笑)
、スピーカーから前には音が出るんだけど、
ている。
後ろに音が広がらない。クラシックなどを聴いても
‥‥‥‥たしかにアナログレコードとデジタル
コンサートホールのようなイメージで聴けないんで
‥‥‥‥その点、ヨーロッパのメーカーという
物足りないと。
のは同じ素材を何十年も使い続けるところも多
いですよね。
オーディオとではスピーカーに求められる性能も
違いますよね。
‥‥‥‥なるほど。
飛世:そうですね。20年、30年と同じ素材
飛世:それと、最近は携帯音楽プレーヤーが
飛世:それから低音ですね。彼らの言うところの
を使いこなしていくことが当たり前になって
普及して、音楽を聴く時間というのは増えてい
「ディープ&タイト」
な低音が出ていない。あげく、
いる。ヤマハもいいものなら10年ぐらいは使
るんだけど、アナログレコードに針を降ろしてい
音が特殊過ぎて音楽を聴くのに適さない、と
うんだけど、本音を言えばもっともっと長く
た頃と比べると、音楽との関わりといったも
まで言われてしまうのが現実だったんですよ。
使いたい(笑)。
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‥‥‥‥目標とする音を出すために自分たち
‥‥‥‥なるほど、たしかにそうですね。こ
‥‥‥‥小口径ウーファーのパラレルという
がコントロールしやすい素材を使い続けて
のウーファーは裏に12Ωって書いてあります
のは音質的なメリットもあるでしょう?たとえば
いくべきなんでしょうか。
けど、2本をパラレルに接続しているんです
低音のレスポンスがいいとか‥‥‥‥。
飛世:使い続けるかどうかはともかく、はじめに
発ということですか?
ね。ということはこのモデルのための専用開
飛世:もちろんそれはあります。専用設計の16cm
素材ありきではなくて、こういう音にしたいからこ
を2本使いすることで量感は充分なので、コーンを
の素材を選んだ、というものであるべきでしょう。
薄く軽く
してレスポンスを良くすることができました。
たとえばこのSoavo-1はナチュラルサウンドが
テーマですから、とにかく素材そのものが素直
‥‥‥‥16cmのウーファーに対して、ミッド
でなければならない。その点、今回ウーファー
レンジが13cmというのは結構大きくありま
に使っているA-PMDは素材の開発に4年ほど
せんか?10cmぐらいでちょうどいいような気
かけて、素直で立ち上がりのいい音というのを
もするんですが‥‥‥‥。
ゼロベースから追求してきたんです。
16cmφA-PMDウーファー
飛世:歌声、特に男性の声をしっかり出して、
胸 板が 鳴るような感じまで 再 現するには、
‥‥‥‥A-PMDというのはNS-525と同じ
素材ですよね。振動板そのものは同じよう
な設計なんですか?
飛世:そうです。これは16cmウーファーが2本
10cmだとちょっと辛い。僕の個人的な考え方
で大口径1本に見立てているんです。
でもあるんですけど、人間の声を自然に出す
には、やはり12cmから13cmぐらいの口径が必
岡崎:いえいえ、全然
‥‥‥‥大口径1本じゃダメなんですか?
要だと思っているんです。
違います。素材だけ
は同じですけど、ユニ
飛世:いえいえ、ダメということではなくて、
ットの特性に合わせ
むしろ大口径1発というのもやってみたいん
て最適化しています
ですが(笑)
、やはりスペースファクターの問題
よ。見比べていただ
は無視できないでしょう。家庭に入ってくる
ければ厚みも形状も
TVはどんどん大きくなっているし、日本だけ
違いますし、サラウン
じゃなくてヨーロッパの人だって限られた
ドの部分も違います。
広さの住宅に住んでいるわけですからね。
‥‥‥‥それがさっき話に出た、同じ素材
の使いこなしということなんですかね?
飛世:そのとおりです。それとシステム構成
なんですが、今度のSoavo-1はあくまでも13cm
ツィーター
アルミダイキャスト製
ツィータープレート
のミッドレンジが核になっていて、その上と下に
ツィーターとウーファーを足した、完全な3ウェイ
A-PMDミッドレンジ
構成になっているんです。実はこれ、考え方とし
てはNS-1000Mとまったく同じなんですよ。あれ
もベリリウムの大きなミッドレンジがあって、それに
ツィーターとウーファーを足した構成ですから。
A-PMD
ダブルウーファー
4
13cmφA-PMDミッドレンジ
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デザイナー喜多俊之氏との
コラボレーションで新しいヤマハの顔を創る
キャビネット構造
喜多俊之 Toshiyuki KITA
平行面をなくしたSoavoのキャビネットは
(プロダクトデザイナー)
まさに手作り
1969年よりイタリアと日本でデザ
インの制作活動を始める。イタリ
アやドイツ、日本のメーカーから
家具、家電、家庭用品など多くの
ヒット製品を生む。作品の多くは、
ニューヨーク近代美術館など世界
のミュージアムにコレクションさ
れている。日本各地の伝統工芸、
地場産業の活性化にも携わる。
‥‥‥‥‥ところで今回のSoavoシリーズ
では、家具、照明などのデザインで世界的に
知られている、デザイナーの喜多俊之さんに
デザインを依頼されたそうですね。
もあったんですよ。喜多さんのデザインとい
を削ぎ落とした造形がとてもよくわかります。
うと、私たちとしてはMoMA(編注:ニューヨー
同じような形なのに、原形のほうは全部ウッ
なHiFiスピーカーでしたから、音だけでは
ク近代美術館)
に展示されているWinkやこの
ドだからとても平凡に見える。デザインの
なくて外観にも革新的な要素を入れたかった。
Soavoのカタログにも掲載させていただいてい
力といったものを感じますね。
もともとヤマハのスピーカーデザインとい
るDODOといった曲線的なチェアのイメージが
うのは凝縮感というか、たとえ同じ容積で
強くて、木材加工の難しい曲面の多用された
飛世:そうでしょう、オーディオ機器にとって
もできる限り小さく見せたい、というところが
デザインを提案されたらどうしよう、と
(笑)
。
デザインというのは大切な要素だと思うん
飛世:はい。私たちとしても久々の本格的
あるんですね。たとえば昔、モニタースピー
です。なにせ鳴らしていない時のほうが絶
カーと言えばJBLの4343とか4344のサイ
‥‥‥‥そこへ登場したのが、このモック
ズが当たり前だった時代に、NS-1000Mは
アップなんですね。
物凄くコンパクトだったでしょう。NS-1Classics
にしても、最近のNS-pf7にしても、ヤマハ
飛世:そうです。スピーカーというのは形が直
のスピーカーというのは、小型高性能とい
接音に影響してしまうので、デザイナーにとって
うのがひとつの特徴となっている。今回の
は物凄く制約条件が多かったはずなんですが、
Soavo-1でも、それを目に見える形で表現
インテリアに調和しながらも存在感があり、同時
したかったんです。
に音響設計の要望を昇華したデザイン提案
を最初からいただけました。ちなみに、ここに
‥‥‥‥たしかにそうですね。小さいというか
置いてあるチェリーの光沢仕上げのものが、
無駄がない。それにしても、外部のいわゆる有
喜多さんに依頼する前の原形なんです。
名デザイナーにデザインを依頼するというのは、
日本のオーディオ機器、特にスピーカーでは
‥‥‥‥全体のフォルムにはたしかに共通の
ほとんど前例がないんじゃないですか?
要素がありますが、モックアップのほうはツィー
飛世:そうだと思います。こちらとしても初め
の形状など、とてもインパクトがありますね。
ての経験でしたので、正直な話、最初は不安
このプレートが付くことで、遠くから見ても角
ターの部分の金属的なアクセントやスタンド
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対的に多いわけですからね。
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飛世:ダイキャストにすることで、結果的にウー
岡崎:結果としては、このツィーターのデザ
ファーやミッドレンジの振動をツィーターが受
インはSoavo-900MやSoavo-900Cといっ
けにくくなる、という効果もありました。最終的
たSoavoシリーズ全体のイメージをリードす
にはツィーターのネットの部分にゴムリン
る役目を担う重要なポイントになりましたね。
グを加えて振動をコントロールすることで、
音質的にもいいものになりましたね。
田中:ネットにしようと決まってからも線径とか、
そういった部分にはかなり検討を重ねました。
‥‥‥‥ツィーターのネットまわりも抜け
具合が良さそうというか、こだわりを感じさ
飛世:今考えてみると、このダイキャストプレー
せる雰囲気がありますね。
トとゴムリングの組み合わせ、実はNS-1000M
のミッドレンジまわりと同じ考え方なんですよ。
岡崎:もともとNS-525やNS-325のシリーズ
では、ユニットの持つ素直な高域を確保するた
‥‥‥‥ああ、本当だ。こういう部分にも
めにツィーターをむき出しにしてつけているんで
ヤマハの伝統というか、ノウハウが活かさ
すが、なにせ振動板が30ミクロン厚ですから設
れているんですね。
置や移動の際にちょっとでも触れるとへこんで
しまう、というので営業サイドから大変不評で。
田中:正直な話、この形は本当に難しいん
です。まあ、ヤマハの木工技術の見せ所で
‥‥‥‥そう言われるとそのとおりですよね。
飛世:実はモックアップをいただいた時点
飛世:Soavoにはかならずツィーターをガー
はあるんですけど、このフロントの左右は
ドするパーツをつけてくれと強く要求されて
角をカットしているのではないんです。側
いたんです。
板を折り曲げているんですよ。この方が、
ではツィーターの部分はアルミを曲げて貼
音質的にも良いし、見た目も木目が繋がっ
り付けるという処理になっていたんですね。
‥‥‥‥それでこの半球状のネットが付い
でも、それはきっと音響的には良くないだ
たんですね。
て美しいんです。
ろうなと思って、ここはダイキャストにしま
しょうかとこちらからも提案させていただ
飛世:これに決定するまでには、実はなか
いた。すると、生産ロットからしてダイキャ
なか難航したんですよ。デザインサイド
スト成型ではコストが合わないのではない
からも、やはりツィーターまわりが最も目
かと思って提案しなかったのだが、ダイキャ
に付くパーツですから、良い音をイメージ
ストに出来るのであればぜひそうしましょう、
させる高級感のあるデリケートなデザイン
というご回答をいただけて、アルミダイキャ
にしたいということでいろいろとご提案を
ストのプレートが誕生したんです。
いただいていたんです。プレートのほうが
ダイアフラムを中心にして同心円状のモー
田中:しかもここ、プレートが出っ張ってしまう
ルドに細かいアールで創られたやわらかい
飛世:実は、ヤマハの三方留め構造ってい
とこれまた音響的に良くありませんから、キャビ
陰影がついていて、球面を感じさせる美しい
うのは、NS-525シリーズのような直方体で
ネットのウッドを削ってはめ込んでいるんですね。
デザインになっていますから、ガードの部分も
も難しいんです。NS-1000Mのように、裏
球面状のプレートと一体感のあるデザインで、
側が突き板仕上げでなく塗装してあるだけ
というご提案でした。我々としてはそのデザ
なら、そこへ加工誤差を逃がす方法もあるん
インを踏まえた上で開口率を高くして音的
ですが、裏側も仕上げてある総三方留めは
に抜けのよいものにしよう・・・といった
逃げる場所がないでしょう。まして、Soavo
感じで、そのためにはどんな素材にすれ
のように複雑な形を別々に組み合わせて作
ばいいのかさんざん悩んで、結局こうなっ
るには、材料の寸法が完璧に合っていない
たというわけです。
と必ず口が開いてしまうんです。
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ないラインというのがありますから。営業サイ
総三方留め構造
ツィーター
ドにはなんとかご理解いただきましたが。
‥‥‥‥あと、木製のポートというのも贅沢と
アルミダイキャスト製
ツィータープレート
いうか珍しいというか、このクラスのスピーカー
で採用されることはほとんどないですよね?
スラントパーテーション
A-PMDミッドレンジ
田中:ほとんどないでしょうね。ヤマハの製品
でも、YST-SW1000Lという、スペシャルバー
バーチカルラダー補強
A-PMD
ダブルウーファー
ジョンのサブウーファーに使っていた程度です。
‥‥‥‥音質的にも効いてくるんですか?
田中:非常に効いてきますね。樹脂製のポー
トを使っていたノーマルのYST-SW1000と
木製フレア形状ポート
比べると音質が相当違うんです。ただ、コス
トが非常に高くて、ひとつでユニット1個分ぐ
らいかかってしまうものですからなかなか実
アルミダイキャスト
レッグ
現できない。
飛世:もともと、ポートを木でやろうという
のは喜多さんのアイデアだったんです。ヤ
田中:辺の長さも角度も、それこそ誤差ゼロ
飛世:しかも、カットモデルの中をご覧いた
マハといったら木でしょう、木工技術を見
で完全に合っていないと組み立てられません。
だくとわかるんですが、外の形が複雑なだ
せるべきじゃないですか、と。
だから一辺を切ったらゲージを当てて確認して、
けじゃなくて中にも補強桟が複雑に組み合
また一辺切ったら別のゲージで確認して、切るた
わさっているでしょう。こういった中の桟を
‥‥‥‥この木製ポートも、材質とか形状
びに角度を合わせていくんです。専用ゲージだ
外側の板にきっちり当てながら、なおかつ
はいろいろと検討されたんでしょう?
けでも、45枚もあるんですよ。
外側の稜線が開いてしまわないように組み
立てるのが難しいんです。
音質が変わりますし、デザイン面でも見せ
‥‥‥‥えっ、その45枚のゲージって、1台
を組み立てるたびに全部使うんですか?
‥‥‥‥こういう複雑な形のほうが、剛性
場となる部分ですので木目の美しさも大切
にも効いてくるんですか?
です。で、何種類も試作を作って試聴を繰
り返した結果、堅く重量があって木目も美
田中:そうなんです。直方体の普通のキャビ
ネットでしたら、長いノギスが1本あれば足りるん
田中:しっかり組み立ててあれば複雑なほ
ですけど、これは本当に45枚必要なんです
うが剛性は高いと思います。ただ、これも
(笑)
。それと、材料の湿度の問題もあります。
組み立てた後の締めかたがとても複雑で、
きちっと隙間なく締めるのは大変なんです。
‥‥‥‥湿度、ですか?
‥‥‥‥話を聞いているだけで頭がパン
田中:材料の乾き具合が違うと、組み立て
クしそうですね(笑)。こうなると、コスト的
るときに精度が狂ってしまうんです。だから、
にもどんどん上昇していってしまうんじゃな
1台のスピーカーに使う材料は必ず同じも
いですか?
の から切り出さな いとい けな い で すし、
製材したらすぐに使わなければなりません。
飛世:当初の目標よりは少し高くなってしまった
んですが、われわれとしても久々のHiFiスピー
‥‥‥‥うわあ。
田中:そうですね。材料によっても非常に
カーということで、音質にも見栄えにも妥協でき
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しい素材を使っています。
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ルとブラウンの木目2種類という展開です
‥‥‥‥へえ、面白い話ですね。それはそ
が、この突き板にもNS-1000Mなどと同じ
うと、キャビネットの内部を見せてもらうと、
材料を使っているそうですね。
何やら意味ありげにいろいろな種類の吸音
材が貼り付けてありますね。
飛世:そうですね、ヤマハのHiFiスピーカーに
はバーチ(樺)材というのを伝統的に使って
田中:材料としては4種類使っています。白いの
きています。ところがこの材料はもともと
がエステル、クリーム色がウール、黒っぽいのが
東北から北海道にしかなくて、最近はあま
ポリウレタン、あとはおなじみのフェルトです。
り採れなくなってきているんです。バーチ
そのものはヨーロッパにもあるんですが、
使い慣れた日本の材料にこだわっているも
のですから。
‥‥‥‥これ、相当奥行きがありますけど、
加工も大変なんじゃないですか?
田中:Soavoは、世界的にはナチュラルと
ブラウンのほかにダークブラウンとブラッ
田中:はい。木工旋盤で削り出していくん
クの4色が用意されているんですが、特に
ですが、とにかく時間を掛けてひとつずつ、
日本向けの2色はどちらも木目の美しさを
丁寧に削っていくしかありません。
活かした仕上げでしょう。天然のバーチ材
には白っぽいものもあれば、赤みがかった
‥‥‥‥お話を伺っていると、著名なデザ
りのも青みがかったのもあって、狙った色
イナーとのコラボというのは、デザインだけ
を出すのが難しいんです。
ではなくて製品開発の上でずいぶん刺激に
なっているようですね。
岡崎:あと、色によってちょっとずつ音が違
うんですよ。塗膜は同じはずなのに、どう
飛世:プロダクトデザイナーとして豊富な
して差が出るんですかね?
経験をお持ちの喜多さんから、斬新であり
つつ極めて合理的なアイデアを沢山いた
‥‥‥‥あらら、そんなこと言っちゃって大
だけて、本当に刺激的でした。
丈夫なんですか?
‥‥‥‥これって、場所も材料もみんな意
味があるんでしょう?
‥‥‥‥音とデザインのマリアージュとで
飛世:まあ、比較して
も言うべきでしょうか。
みてかろうじてわかる
飛世:もちろんです。実は、ヨーロッパで中
程度だけど事実です
域や低域をチューニングした成果がここに
飛世:本当にそうだと思います。個々のア
からね。たぶん染料
活かされているんですよ。これが結構シビ
イデアそのものもそうなんですが、これま
の影響なんだと思い
アで、位置を少しでも動かすとダメです。こ
で社内的に提案しても実現不可能だったも
ます。何度か話が出
この角の折れているところにもおまじない
のが、外部から意見をもらえることで可能
ているNS-1Classics
みたいに付いているんですけど、これがま
になるということもあります。木製ポートに
というスピーカーを
た怖いほど効く
(笑)。
せよ平行面をなくすキャビネットにせよ、音
やったときに、とにかく生成りのスピーカーにし
質にいいことは分かっていても非常にコス
ようということで、あらゆる材料から色を抜いて
‥‥‥‥へえ、そうなんですか。このバッ
トが掛かりますから、多分我々設計が言っ
いったんです。そうすると、やっぱり明るい色の
フルもずいぶん分厚いですね。
たのではそう簡単には実現できない(笑)。
ほうが音も明るいんですよ。黒っぽくするために
カーボンなどの顔料が入ると、損失といったも
田中:そうですね。37mmあります。ウー
‥‥‥‥なるほど、それは素晴らしい効果
のが出るんでしょう。だから天然木じゃなくて塩
ファーのパワーが相当上がっていますし、
じゃないですか。ところで、今回は今まで
ビシートで仕上げたスピーカーでも、チェリーと
しかもダブル構成ですからこのぐらいの厚
のシアタースピーカーと違って、ナチュラ
ブラックなら、必ずブラックのほうが音が沈む。
みが必要ですね。
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全ユニットのボイスコイルに「平角リボン線」
を投入してパワーと情報量を追求
HiFi専用ユニット
一体成型ダイヤフラムとリボン線によるツィーター生産は
挑戦の連続
‥‥‥‥それでは、
そろそろユニットのお話を伺っ
なる材料なんです。だからウーファーには基本的
ていきたいと思います。今回のシステムで中心的
に適していない。仮にいいものを造ろうとすると、
岡崎:非常にオーソドックスな手法なんです
な役割を果たすのが13cmのミッドレンジだと思
大きさもコストも凄いことになってしまう
(笑)
。
けど、すべてのユニットのボイスコイル線を
うんですが、ネオジウム磁石が使われていますね。
平角のリボン線にしまして、隙間なく密着さ
‥‥‥‥なるほど、適材適所ということなんで
せて線を巻くことで効率を極限まで上げて
岡崎:そうですね。磁気回路をなるべくコンパ
すね。あと、良く見ると振動板の形状やエッジ
感度を高め、情報量やレスポンスも改善し
クトに仕上げてエアを後ろに効率的に抜きた
の素材も525のものとはかなり違っていますね。
ています。で、次にスパイダーなどの振動
いのと、ユニットの感度を上げることで情報量
系やサラウンドについても応答性を重視し
をできる限り引き出して、S/N感も高めたいと
岡崎:はい。コーンの色が同じなので一見同じ
まして、両面から情報量やレスポンスを高
いうのが採用の理由です。
ものにも見えるんですけど、A-PMDを使ってい
めるように設計しました。
ること以外はすべて違います。今回はHiFi用
‥‥‥‥ウーファーがフェライトというのも、ま
ということで、材料はすべて選び直しているん
‥‥‥‥すべてのユニットをリボン線に変えると
た理由があるんですよね。よく、ウーファー用は
です。エッジはSBRを使った発泡ゴムですが、
いうのは相当手が込んでいますね。特にツィー
フェライトのほうがいいなんて話を聞きますけど。
これも試作品をたくさん造りまして、ソリッドの
ターにリボン線を巻くというのは相当難しいん
ゴムを含めてひととおり試しました。コーンの
じゃないですか?
飛世:ウーファーの低音には相当な反力がある
ので、単純に重いほうがいいというのもあります。
厚みも、最終的にミッドレンジが0.45mm、ウー
ファーが0.7mmになりましたが、これも0.05mm
岡崎:そうなんですよ。ヘロヘロの平角線を縦に
単位で試作を繰り返しました。
巻いていくだけでも高度な技術が必要なんで
岡崎:それとウーファーについて言えば、とにかく
すが、何しろ
「線」
というよりは
「箔」
と呼びたいぐ
ストロークを確保したいわけですよ。実はネオジ
‥‥‥‥それもまた大変そうですね。あと、
らい薄くて弱いので、これを端子板に直接つな
ウム磁石というのは、形状を厚くするほどダメに
ボイスコイルのほうはどうですか?
ぐと、音が入って振幅しただけで切れちゃう。
16cmφA-PMDウーファー
13cmφA-PMDミッドレンジ
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‥‥‥‥ああ、そんなに細い、というか薄い
‥‥‥‥小さなツィーターをパワフルに鳴ら
ものなんですね。
すというのは、とても大変なことなんですね。
岡崎:だから、リボン線の端にもっと丈夫な
岡崎:そうなんです。ついでにもうひとつ言
リード線をハンダ付けして、端子板と結ばない
わせていただくと、ツィーターのサラウンドの
といけないんですが、それにはドームをNS-525
部分にもいろいろと工夫が要るんですよ。今
のときよりもう少し深く絞ってリード線をハンダ
回は磁気回路を強力にして、ミッドレンジや
付けするスペースを確保する必要がある。
ウーファーと同じように感度を高めているんで
すが、このままでは磁気回路が強過ぎてボ
リュームを上げていくと音が崩れてきてしまうんです。
‥‥‥‥えっ、振動板用の生地ってことですか?
‥‥‥‥ほう、それは何が原因なんですかね?
岡崎:実はそうなんですよ。これ、あの当時
3cmφDC-ダイヤフラムツィーター
‥‥‥‥それで、
あとどのぐらい必要なんですか?
岡崎:まずツィーターというのは、基本的にサ
に開発されたものだからとても贅沢に造られ
ラウンドだけの1点支持で支えているので、音
ていて、ゴムが3回か4回コーティングしてあるん
量を上げるとおかしな動きをするようになって
です。普通のサラウンド用生地は1回しかコー
しまって、音量も上がらないし歪みも出てし
ティングしていなくて光にかざすと星がたくさん
まう。そのためにサラウンドを厚く丈夫なもの
見えるんですが、これはどんなに強い光でもまっ
にしようとしたんですが、基本的にツィーター
たく見えない。ちなみに厚みも0.3mmと、通
のサラウンドというのは軽くて薄いという特性
常のサラウンド用のものの3倍あります。
岡崎:ドームの立ち上がりのところで、あと
が求められているので、そんな厚いサラウン
0.2ミリぐらいです。
ド用の生地はないんです。
‥‥‥‥えっ、たったそれだけでいいんですか?
‥‥‥‥造ってもらうわけにはいかないんですか?
岡崎:いやいや、その0.2ミリが難しいんで
岡崎:それはとても無理ですね。一般に、こ
S/N感がアップしますし、もちろん大入力にも対
‥‥‥‥それは面白いですね。でも、そんな
に厚いもので音質的には大丈夫なんですか?
岡崎:狙いどおり、おかしな動きがなくなるので
すって(笑)。もともとこの振動板は厚みが
ういう生地のメーカーというのは何千mもの
応できて本来の情報量が出てくるようになりまし
30ミクロンしかなくて、これは家庭用のアル
生地をいっぺんにコーティングしていって、ス
たね。あと、
ドームの立ち上がりの部分に垂直
ミ箔よりも薄いんですね。それを、破れたり
ピーカーのメーカーはそれを小さく切り売りし
に接着する製造技術を開発したので、この部分
シワにならないようドーム型に絞っていくん
てもらうんです。散々駆けずり回ったあげくに、
の剛性もさらに高めることができました。
ですが、NS-525でも限界まで絞っている
たどり着いたのがNS-10Mなどに使っていた
ので、これには本当に苦労させられました。
ツィーターのソフトドームの生地なんです。
‥‥‥‥それはいいことずくめじゃないですか。
ミッドレンジユニット内部構造
サラウンド
ボイスコイル
ダストキャップ
トリムリング
A-PMD振動板
トッププレート
ハイリニアリティ
サスペンション アルミダイキャスト
フレーム
10
ネオジウム磁石
センターポール
ヨーク
Soavo開発ストーリー
( )
エンジニアの理想を叶えた
本格HiFiスピーカーの誕生
I
n
t
e
r
v
i
e
w
人の声の再現性を、
感情表現ができるレベルにまで高めたい
Soavoが目指した世界
いつまでも聴き続けていたい、身体に自然に染みわたる
大吟醸のような音
「美しい声が聴きたいんだよ」といったら、
彼女が、ああ商品企画の担当者は女性だっ
たんですが、イタリア語で「優美な」という
意味の「Soave」
と
「声」
という意味の「Voce」
身体の中に入っていくような、そういうスピー
で「Soavo」と名づけてくれたんです。
カーができればいいなと思っているんです。
大吟醸というのは米をどんどん磨いていって、
‥‥‥‥そこには、たとえばNS-1000Mの時
真ん中の本当においしいところだけを使うじゃ
代から受け継がれた伝統といったものもあ
ないですか。音楽を再生するときに、スピーカー
るわけですよね。
の存在が消えて、音楽のエッセンスというか、
表現している人だけがそこにいるような音とい
飛世:はい、あの時代から脈々と受け継がれ
うのが理想とするイメージなんですね。
‥‥‥‥ところで、Soavoという名前の由来
ているものはたしかにあります。その上で、
はどのあたりから来ているんでしょうか?
なるべく色づけのない、現代のナチュラル
‥‥‥‥なるほどね。日本人ならではの音
サウンドというのがあるんじゃないかと思う
というお話が出ましたが、それは今までの日
飛世:そもそものはじまりは、商品企画の担
わけです。ただ、そう言ってもあまりイメー
本製やヨーロッパ製のスピーカーとは、聴い
当者との話の中で、エンジニアというのは
ジが湧かないですよね。たとえばヨーロッ
て違いがわかるということなんですね。
何を考えながら製品を開発しているんだと
パで「ヴィンテージワインのような音」とか
いう話になったんです。僕はもともと女性
「よく寝かされたウイスキーのような音」とか
飛世:けっこう新鮮な音だと思いますよ。たとえば
ヴォーカルが好きなので、単純に美しい声
そういう表現があるでしょう。そういう言い
日本で売れているヨーロッパのスピーカーって、
が聴きたいと思ってスピーカーを造り続け
方をすると、われわれとしては大吟醸のような、
メーカーによっても、それこそシリーズによっても、
ているわけですよ。声が奇麗に聴こえるなん
日本人にしか出せない日本人ならではの音
音のキャラクターがはっきりしているでしょう。
て当たり前じゃないかと思われるかも知れ
にしよう、ということを考えてきました。
でもSoavoは、そういうキャラクターは薄いかも
知れないけれど、ソースに入っている音の違い
ないんだけど、人間の耳にとってもっとも敏
感な声の再現性を、それこそ感情表現がで
‥‥‥‥大吟醸、ですか。
とか、つないだアンプのキャラクターの違いな
どは克明に出してくる。
きるレベルにまで高めれば、オーケストラと
か他の楽器でも、アーティストが訴えたかっ
飛世:まあ、おいしいお米とか水とかでもい
たことが表現できるんじゃないか、それがナ
いんですけど、毎日飲んだり食べたりしても
‥‥‥‥かといって、モニター的というのとも違
チュラルサウンドなんじゃないかと。それで
まったく飽きなくて、何の抵抗もなくどんどん
うんですよね?
11
Soavo開発ストーリー
( )
エンジニアの理想を叶えた
本格HiFiスピーカーの誕生
I
n
t
e
r
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i
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w
飛世:モニターというのは音を聴くということです
もいろいろな要素がありますから、これだ
から、それは違いますね。このスピーカーでは、もっと
け長くやっていても自分自身が100%理
素直に音楽が聴けるものになっていると思います。
想と思うような製品はなかなか造れない。
それは音質ももちろんですが、それだけ
岡崎:その話と少し関連するんですが、実は
ではなくてヤマハのオーディオとしてのデ
Soavoの発表会を東京・広尾のカフェ・デ・
ザインも大事だと思うんですね。その意
プレで行ったとき、ゲストとしてヴォーカリ
味で今回のSoavo-1は、自分としても心か
ストのアン・サリーさんに来ていただいたん
ら満足できる音になったし、喜多さんとの
ですね。それで本番の前に、試聴コーナー
コラボレーションでデザイン的にも今まで
でSoavo-1を使ってCDを再生したとき、
「こ
にない新しい方向性が打ち出せたと思っ
ています。技術者としてこういう機会は本当
の音、私がレコーディングしたときの空気を
感じます」と言ってくれまして‥‥‥‥。
Soavo発表会の様子1:
フォトセッションでSoavoと並ぶアン・サリーさん
にめったにあるものではないと思うし、自分は
運が良かったと思いますね。
‥‥‥‥ああ、それは嬉しいですよね。
‥‥‥‥そうですか。でも、こちらとしては
岡崎:スピーカーのエンジニアというのは
次のモデルに向けてさらなる発展を期待し
毎日同じ曲を聴き続けているわけですが、
たいですね。それにスピーカーだけじゃな
チューニングに使っている作品のアーティ
くて、これに見合ったアンプとかプレーヤー
ストと直接会える機会なんて、本当にないんで
関係も欲しくなってきます。
すよ。このときほど、やってて良かったと思った
ことはありませんでしたね。長かったSoavoの開
発にも、ようやくピリオドが打てたというか
(笑)
。
Soavo発表会の様子2:
ステージ上で会話するアン・サリーさんと飛世さん
飛世:そうですね。われわれはスピーカーの
チームですのでそのあたりについては何とも
言えないんですが(笑)
、それなりの準備は進
飛世:最初はCDを再生して、次にSoavo-1を
‥‥‥‥いろいろな意味で、ヤマハのAV製
PAに使って生歌を聴いていただいたんですが、
品の歴史の中でもエポックメイキングなモ
後から彼女に感想を聞いたら、演奏のニュアン
デルとなりそうですね。
めているようだ、とだけ申し上げておきます。
‥‥‥‥その言葉、大いに期待して待たせ
ていただきたいと思います。本日はありが
スが良く出ていてとても歌いやすかったと言っ
てくれました。僕もアン・サリーさんのCDは、
飛世:考えてみたら、僕はもう20年間ぐらい
チューニング用というよりはプライベートで以前
スピーカーの開発をやってきているんです。
から聴いていたので、もう嬉しかったですよ。
でも、メーカーの方針、コストの制約、他に
12
とうございました。
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