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産業廃熱を利用した熱音響エネルギ回生システム

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産業廃熱を利用した熱音響エネルギ回生システム
平成24年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿
産業廃熱を利用した熱音響エネルギ回生システム
動力機械工学科
1. はじめに
管内に設置した狭い流路の束(以下蓄熱器)に閾値以
上の温度勾配を与えると管内流体が熱音響自励振動を起
こす(1).現在,熱音響現象を応用した熱音響エンジンに
関する研究が活発に為されている.熱音響エンジンは外
燃機関であるために,産業廃熱,自動車廃熱など多様な
熱源から高効率で仕事を取り出せる可能性がある.また
音波を利用してエネルギ変換するシンプルな構成である
為に,ピストンなどの可動部品を必要とせず,安価,長
寿命,メンテナンスフリーという利点を有する.またエ
ンジンとは逆に蓄熱器内の気体を強制的に振動させれば,
蓄熱器に温度勾配を作り出し冷却を行うことも可能であ
る.熱から音波を発生させる原動器と,音波を用いた冷
却を組み合わせることによって,熱入力で動作する可動
部を持たない冷凍機を実現することも可能である(2).し
かしながら実用化に向けた課題も存在する.工場廃熱の
大部分は 300℃以下であるが,熱音響エンジンの動作温
度は一般に 300℃~700℃程度と高温である(3).そこで本
報告では複数のエンジンで動作するダブルループ型音波
冷凍機を対象にて低温動作・高効率を実現可能な構成を
決定し性能を検証する.
2. 実験装置
本報告ではFig.1 に示す内径40mm の円筒パイプで構
成されるダブルループ型多段熱音響冷凍機を実験モデル
とする.常温熱交換器と高温熱交換器,蓄熱器からなる
ユニットを原動機ループ内に三ヶ所設置する.一方,冷
凍機ループには常温熱交換器と冷凍熱交換器,蓄熱器か
らなるユニットを一ケ所設置する.これらの蓄熱器の設
置位置と流路径は計算を用いて低温動作・高効率を実現
する組み合わせを決定した.作動気体は 10 気圧のヘリ
ウムとした.
3. 高温熱交換器温度と冷凍熱交換器温度
Fig.2 に冷凍機の冷凍熱交換器温度 TC を実現する際の
エンジンの高温熱交換器温度 TH を示す.このとき全ての
高温熱交換器温度 TH は同一となるようヒータに印加す
る電圧を制御した.また全ての常温熱交換器温度 TR も
chiller を用いることで 10℃に制御した.結果を確認
長谷川
真也
40
0
-40
TC [℃]
工学部
-80
-120
-160
-200
-240
100
150
200
250
300
350
TH [℃]
Fig.2 Cold heat exchanger temperature as a function of hot heat
exchanger temperature.
すると,高温熱交換器温度 150℃で冷凍熱交換器温度
-40℃を実現している.これは工場廃熱程度の低温熱源で
冷凍動作が十分可能であることを示している.高温熱交
換器温度を上昇させるに従い,冷凍熱交換器温度は低下
し,高温熱交換器温度 300℃において冷凍熱交換器温度
-106.3℃に達した.
4. 原動機の熱効率
次に熱効率について検討を行う.原動機に入力した熱
量は高温熱交換器に巻きつけたヒータに印可する電力に
より測定する.ここでヒータ加熱量には単純熱伝導や大
気放熱などの,仕事流増幅に直接関与しない熱量が含ま
れている.本報告では原動機効率をより明確に検討する
目的からヒータ加熱量から仕事流増幅に関与しない熱量
を除いた値を用いて検討を行う.また原動機ループの熱
効率を「枝管に流れ出す仕事流を原動機に入力される熱
量の総和で除したもの」と定義する.各高温熱交換器温
度を変更した際の原動機ループ効率を Fig.3 に示す.
Fig.3 を確認すると高温熱交換器温度 150℃で熱効率は
10%を超えており,300℃では 18%に達した.
25
20
Efficiency [%]
東海大学
15
10
5
Branch
TH
Unit 3
TR
TH
0
TC
Unit 4
TR
Unit 2
TR
TH
Refrigerator loop
Unit 1
TR
Prime mover loop
Fig.1 Experimental apparatus.
100
150
200
250
300
350
TH [℃]
Fig.3 Efficiency of the prime mover.
参考文献
(1) P. H. Ceperley, J.Acoust. Soc. Am.66(1979),
1508-1513.
(2) T. Yazaki, T. Biwa and A. Tominaga, Appl.Rev.Lett.
80(2002),157.
(3) S. Backhaus and G. W. Swift, Nature, 399(1998),
335-338.
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