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2012年度入試の出題傾向

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2012年度入試の出題傾向
特集 地理A・地理B
2012年度入試の出題傾向
学校法人 河合塾 講師 佐 藤 裕 治
1.
はじめに
表1 地理B(本試)出題分野別一覧
2012年度の大学入試は、現行課程に移行して7回目に
自然環境
あたり、2013年度からの新課程のカリキュラム(入試は
地形
気候
2016年度から)も視野に入れたと思われる問題も見受け
植生・土壌
自然災害
られた。一方、2011年3月11日の東日本大震災に見舞わ
資源と産業
れ、地理という教科がこうした自然災害にどう向き合う
農業
べきかを考えさせるような出題もみられた。
エネルギー・鉱産資源
林業・水産業
工業
生活と文化
2.
センター試験の出題傾向
村落・都市
文化・衣食住
■出題傾向、テーマに変化なし
消費・余暇活動
地域調査
センター試験の地理Bの出題分野(表1)は、大問6
地図・図法
地形図
題で、自然環境、資源と産業、生活と文化、地域調査、
2007 2008 2009 2010 2011 2012
◎
◎
◎
◎
◎
◎
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
◎
◎
◎
○
○
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○
○
◎
○
○
○
○
○
○
◎
○
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○
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◎
◎
◎
◎
◎
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
◎
◎
◎
◎
◎
◎
○
○
○
○
○
○
○
国際交流
地球的課題、地誌の各分野から1題ずつ出題する形式で
○
○
○
◎
○
国家・国家群
交通・通信
定着しており、2012年度もこの傾向に大きな変化はな
貿易・直接投資・援助
地球的課題
かった。マーク数は35個で昨年度と同様である。解答と
人口・食料問題
素材の形式(表2)でみると、昨年度は正誤文の判定形
都市・居住問題
式が6問と少なかったが、今年度は13問と例年並みに
民族・領土問題
○
◎
○
○
環境・エネルギー問題
○
◎
○
●
○
地 誌
戻った。気象衛星画像を含め、写真を使った問題が5問
アジア
あり、使用された写真の枚数ともセンター試験では最多
アフリカ
である。問題冊子のページ数は日本史、世界史が26〜28
CIS
ページに収まっているのに比べ、地理では昨年同様35
南アメリカ
ヨーロッパ
○
北アメリカ
○
◎
○
○
○
○
◎
●
○
◎
○
○
○
◎
◎
○
○
●
○
◎
○
○
○
○
◎
○
◎
○
○
○
●
●
○
○
◎
○
○
●
○
オセアニア
ページもあり、ほぼ1ページに1題を費やしている。こ
日本
○
○
○
○
○
○
58.4
66.4
64.5
65.1
66.4
62.2
複合地域
れは図表を多用するためだが、図表は数の多さだけでな
平均点
く、受験生にとっては初めて目にするようなものも多い
◎大問のテーマ ●地誌の大問で取り上げられた地域 ○小問のテーマ・地域
ため、判読には手間取る場合もある。センター試験では、
限られた時間の中で資料を的確に読み取ることが要求さ
表2 過去10年間のセンター試験(地理B、地理Aは2012年度のみ)の解答形式と素材形式
地理B
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
地理A
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2012年
11
14
17
14
12
(13)
15
15
15
6
13
12
組合せ解答
13
12
10
13
19
11
12
12
18
11
11
図
21
18
18
18
22
20
27
26
24
23
15
(内地形図 )
(4)
(1)
(1)
(1)
(3)
(2)
(2)
(3)
(3)
(4)
(5)
表
5
6
3
3
4
4
2
5
6
6
5
写真*3
3
(3)
1(3)
0
1
0
0
2(5)
2(5)
1(3)
5(10)
6
(14)
正誤文判定
*1
*2
マーク数
平均点
35
35
35
35
36
36
37
36
35
35
33
55.0
62.1
70.2
65.1
58.4
66.4
64.5
65.1
66.4
62.2
47.4
*1括弧内はマーク数を示す。*2地勢図を含む。*3括弧内は写真の枚数を示す。2006年以降は現行課程による入試。
3
れている。
例題1 センター試験 地理B 本試 第3問 問4
こうした見慣れない図の形式の一つが、
第3問 問4(例題1)のような分布図
の一部を切り取り、その位置を判定させ
るもの(いわば「のぞき窓式」分布図)
である。この形式は2011年度に初めて用
いられ、連続して出題されたが、全体の
分布傾向がわかれば判定できるので、昨
年度とも正答率は比較的高かった。この
形式は地図を読み取るスキルも問われて
おり、地域やテーマを変え、今後も出題
されると思われる。また、日本付近の気
象衛星画像を使った問題(第1問 問6
問題省略)は1996年度第1問でも扱われ
たが、以前は季節の判定にすぎなかった
が、自然災害と関連させる工夫がなさ
れている。『新詳地理B 初訂版』
(p.59)
では、気象衛星画像と自然災害を関連さ
せた解説があり、こうした問題にも対応
している。
地理Aは、地理の基礎的事項、国際交
流、地誌、地球的課題、地域調査(地理
図1 センター試験の得点分布
(河合塾センターリサーチによる)
Bと共通)の大問5題で定着している。
■地理は標準偏差が小さく高得点が難しい
2012年度のセンター試験地理Bの平均点(62.2点)は昨年度に比べ、
4.2点ほど低下したものの、平均点だけみると日本史(67.9点)
、世界
史B(60.9点)と比べてとくに地理受験生が不利であったとはいえ
12000
8000
6000
に比べ、地理Bは14.40と低く、この値は過去4年間でも最低であっ
4000
た。図1は河合塾のセンターリサーチにおける得点分布を示したもの
2000
0
で、各教科とも受験総数の82%程度をカバーしており、実際の状況と
12000
点が50点以下の割合は低いものの、80点以上の割合も低く、とりわけ
10000
90点を超える受験生の割合は非常に低いことがわかる。これは、セン
8000
ター試験の地理受験生は理系が多く、私大あるいは国公立二次も同じ
6000
教科で受験しようとする世界史、日本史の受験生に比べ、受験勉強に
4000
費やしている時間が違うこともあるかもしれないが、設問ごとの難易
2000
0
度にもその理由があるように思われる。地理Bでは、基本的な知識(一
している。こうした傾向は例年みられるが、2012年度はとくに顕著で、
高得点をねらう受験生にとっては、地理が不利であったといえる。
0
10
20
30
40
50
60
70
80
点
90 100
12センターリサーチ(128936人)平均点68.9 標準偏差18.2
11センターリサーチ(124686人)平均点65.3 標準偏差18.5
10センターリサーチ(122249人)平均点62.7 標準偏差19.8
(人)
大差ないと思われる。これによれば日本史、世界史に比べ地理では得
り力のある受験生でも誤ってしまう問題も数題あり、高得点を難しく
地理B
10000
ない。しかし、標準偏差をみると日本史Bの20.28、世界史Bの18.48
般常識)で正解できる問題もある一方で、正答率が非常に低く、かな
12センターリサーチ(110678人)平均点62.7 標準偏差14.4
11センターリサーチ( 94459人)平均点66.9 標準偏差16.2
10センターリサーチ( 90890人)平均点65.6 標準偏差14.9
(人)
14000
日本史B
0
10
20
30
40
50
60
70
80
点
90 100
12センターリサーチ( 74703人)平均点62.3 標準偏差19.9
11センターリサーチ( 70856人)平均点62.8 標準偏差20.7
10センターリサーチ( 72679人)平均点60.9 標準偏差20.2
(人)
6000
世界史B
5000
4000
3000
2000
1000
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
点
90 100
4
■正答率の低い問題
表3は、受験生の再現答案による設問
別正答率(河合塾調べ)を示したもの
表3 再現答案による設問別正答率(河合塾調べ)
(2012年度センター試験地理B)
設問
番号
5問 問4(例題2)である。正解の③
1
解答
番号
正答率
75.6
13
2
84.2
3
46.6
4
75.8
5
51.6
設問
番号
解答
番号
正答率
43.0
25
64.5
14
74.3
26
40.9
15
67.4
27
41.9
16
87.9
28
18.1
17
75.4
29
67.8
18
95.7
小計
46.6
68.3%は④をマークしていた。受験生の
小計
72.7
30
90.5
世代にとっては湾岸戦争での重油の流失
7
60.3
19
72.5
31
66.7
による海洋汚染の映像は、リアルタイム
8
66.6
20
91.1
32
52.5
9
76.2
21
20.9
33
40.7
10
85.1
22
71.6
34
82.5
11
75.7
23
85.8
35
57.9
12
80.5
24
55.3
小計
63.5
小計
74.1
小計
66.2
合計
66.7
沙群島の領有を主張する国にインドネシ
アが入っていないことは、私大ではしば
しば問われる内容だが、センター試験の
みの受験生にとってはやや細かい知識で、
正答率が低いのは無理からぬところがあ
るが、再現答案で受験生の学力ランク別
第 6 問
90.7
71.0
第 4 問
6
小計
第 2 問
をマークしたものは18.1%で、受験生の
で体験したものではないだろう。一方南
注)サンプル数は3129人(現役生2228人、高卒生901人)。
サンプルの平均点は66.1で、地理B受験生全体の平均点(62.2)より3.9点高い。
大問ごとの小計、合計は得点率を示す。
表4 正答率の低い問題のレベル別正答率
の正答率をみると(表4)
、上位層ほど
例題2
第5問 問4
例題3
第4問 問3
例題4
第3問 問1
S(〜65.0)
53.4
33.2
83.2
4問 問3(例題3)では、上位層(偏
A(64.9〜60.0)
28.1
20.8
70.9
差値55.0以上)の正答率が21.9%、中位
B(59.9〜55.0)
15.9
19.2
49.2
C(54.9〜50.0)
13.4
20.4
36.7
D(49.9〜45.0)
11.2
17.5
26.9
E(44.9〜40.0)
10.1
21.2
23.1
F(39.9〜)
13.0
24.5
17.4
18.1
20.9
43.0
正答率が高い傾向がみられる。
レベル(偏差値)
しかし、同様に正答率の低かった第
層(同54.9〜45.0)が19.1%、下位層(同
44.9以下)22.7%で、下位層の正答率が
上位層を上回っていた。もっとレベルを
細かく分けた表4でみると、最上位層こ
そ正答率が最も高いものの、次いで正
答率が高いのが最下位層であった。4択
問題なので、何も考えずにランダムに答
えれば正答率が25%で最も高くなるとい
う皮肉な結果であった。受験生全体の
75.6%が①のヨーロッパ系を選択してい
た。
『新詳 資料地理の研究』
(p.270)で
はアメリカの人種・民族の経済格差を示
したグラフで、富裕層の割合はアジア系
がヨーロッパ系を上回ることが示されて
おり、アジア系の教育水準の高さは注目
すべきことではあるが、センター試験で
は難問である。なお本問については、大
学入試センターの見解として「小問作成
当初は、ヨーロッパ系ではなくヒスパ
ニックを選ばせること、数値も絶対値
5
設問
番号
第 3 問
であった。最も正答率の低かったのが第
第 1 問
7問あり、うち2問は正答率が20%程度
正答率
第 5 問
で、正答率が50%を下回る設問が35問中
解答
番号
全体
例題2 センター試験 地理B 第5問 問4
で問うことを想定していたが、あまりに
易問すぎるとの意見が根強く断念した
(一部抜粋)
」
(
『平成24年度大学入試セン
ター試験問題評価委員会報告書(本試
験)』
)
と述べている。
これまでのセンター
試験での4択問題では、すべてが判定で
きなくても問われるのは最も特徴がはっ
きりしているもので、このことが受験生
の負担を軽減してきたと思われる。また
図2 『新詳 資料地理の研究』p.270
世界各地での天候異変について述べた文
の正誤の組合せを答える第1問 問5
(正
答率51.6%、問題省略)でも、
「エルニー
ニョ発生時のアメリカ合衆国西部での多
雨」の判定が難しく、こうした「難問」
が地理の高得点を困難にしている。
■得点差がついた問題
例題3 センター試験 地理B 本試 第4問 問3
学力ランク別で見たときに、上位層と
中位層で最も差が大きかった問題が第3
問 問1(例題4)であり、上位層と中
位層では30.2ポイントの差がみられたが、
細 か く み る と A ラ ン ク( 偏 差 値64.9〜
60.0)とBランク(同59.9〜55.0)との間
での正答率の差が21.7ポイントで、とく
に大きい(表4)
。中位・下位層では、④
を選択したものが多いことをみると、ト
ルコの人口最大都市が首都ではないこと
を知っているか否かあたりが、センター
試験で高得点するための地名に関する知
識のレベルの基準とみることができる。
一方、中位層と下位層で差が大きかっ
例題4 センター試験 地理B 本試 第3問 問1
たのが第6問 問2(問題省略)で、中
位層の正答率が61.4%であるのに対し、
下位層では34.5%にとどまった。この設
問の内容は地形図から読み取れることを
述べた文の下線部の正誤の判定だが、い
ずれも地図記号の読み取りに関するもの
で、地形図の基本的な学習に対する経験
の有無がそのまま得点差に表れている。
言い換えると、地形図の読図に関しては
基本をきちんとやっておけば確実に得点
できるとみられる。
6
3.
国公立二次・私大の出題傾向
例題5 一橋大 Ⅱ
■東日本大震災は入試でどう扱われたか
近年の地理の入試問題では、自然災害に関する
出題が目立つが、2011年3月11日の東北地方太平
洋沖地震(東日本大震災)に見舞われたことが、
地理の入試問題にどう反映されているのかをみて
みよう(表5)。この地震が沈み込む型のプレー
ト境界で発生したものであったため、高崎経済大
の問題のようにプレートの名称やタイプを答えさ
せ、同類の地震としてスマトラ島沖地震や今後危
惧される南海トラフ沿いの地震にも言及する内容
の問題が多かった。これに対して、一橋大と関西
大(3月3日実施)の問題では、地形図を示し、
津波がどこまで到達したかということに重点をお
いた、より具体的内容に踏み込んだ点で、異色で
あった。関西大の問題は、浜堤や防潮林の存在が
津波の被害を軽減したことや自然堤防の分布境界
と津波到達線がほぼ一致していることなど、地形
の判読が中心であった。一方、一橋大(例題5)
では、問題では都市名は伏せているが、大船渡市
と陸前高田市の中心市街地を含む地形図を示し、
まずは客観問題として市役所や病院、警察署など
の公共施設の標高を答えさせ、さらに津波に被災
したかどうかを判断させている。次いで、
「どち
らの都市が効果的な復興により適した都市計画を
行っていたといえるか」を判断させ、その理由を
求めている。また、被災20日後の鉄道と道路の写
真を示し、両者の復興状況の違いや被災者への影
響などを論述させている。この問題に関しては、
被災からまだ一年を経ていない時点での入試問題
としては、かなり生々しい内容であり、被災地の
受験生にとっては冷静に取り組むことが難しかっ
たのではないかとの声もあった。一方、震災後、
全国各地で海抜高度分布図や津波ハザードマップ
などの作成が進められており、新課程でもこれま
で以上に地図を活用するスキルが求められ、とく
に地理Aでは「自然環境と防災」を学習項目にあ
げている状況を考えると、入試問題でもこれくら
い踏み込んだ出題が必要との意見もある。自然災
害と地図の活用といったテーマを入試問題でどう
取り扱うかを考えさせる問題であった。
図Ⅱ- 1、図Ⅱ-2の地形図は、省略しています。
7
表5 東日本大震災に関連する問題
大学
内容
一橋大
例題5参照
高崎経済大(前期)
関西大
(2/4実施)
関西大
(3/3実施)
西南学院大
(文・法)
東京経済大
(前期)
東日本大震災を引き起こした巨大地震の発生メカニズムと同タイプの地震(スマトラ島沖地震)や今後危惧される南海トラフ沿い
の地震についての文章の空欄補充。東日本大震災の被害をふまえ、防災計画の樹立と実行に重要な事柄についての考えを論述。
東北地方太平洋沖地震に直接かかわらないプレート名称の選択。
南海トラフ沿いで発生確率がもっとも高いとされている地震の名称の選択。
阿武隈川河口南部の地形図に津波到達線を示し、地形と津波到達線との関係を述べた文章の空欄補充。
東日本大震災の概況(津波被害の状況、液状化現象、臨海工業地帯の火災など)及び南海トラフ付近の発生する可能性の高い地震
について説明する文章の空欄補充。被災した都市名の選択。
日本の自然災害の説明文中で東北地方太平洋沖地震についても触れ、プレートの名称、防災の取り組みに関する適切な文章の選択。
東日本大震災の概況を説明する文章の空欄補充。津波被害を受けた宮城県の水産業都市名。
「高田松原」に関する地形図記号の判定。
明治大
(農学部)
日本のエネルギー供給割合の推移のグラフから原子力の判定。揚水式発電の名称。被害が甚大であった東北地方の産業に関する統
計の判定など。
■身近なスケールの主題図
ここでも自然災害が意識されている。同様に東京大でも
身近な地域の地図を使った問題では、地形図だけでな
都市部の地形について主題図を用いた出題がみられた
くさまざまな主題図が用いられた。名古屋大では、濃尾
(例題7)。こちらは国土地理院『数値地図5mメッシュ
平野の地形分類図を示し、凡例の判定を求める問題が出
(標高)』が示されたが、人為的影響による地形の改変の
題された(例題6)
。こうした図を見慣れていない受験
例として河川の流路変更と名古屋大の問題でも取り上げ
生にとってはやや戸惑うが、リード文で誘導されている
られた地下水のくみ上げによる地盤沈下を答えさせるな
ので、判定は難しくはない。高潮の被害に触れるなど、
ど、両問題のテーマの類似性をみることができる。
例題6 名古屋大 問題Ⅰ 図
例題7 東京大 第3問 設問B 図2
8
の判読とその理由や要因、背景などを答えさせる形式が
4.
論述問題の形式とテーマ
非常に多い。したがって、単なる知識ではなく論理的な
表6・表7は、2012年度の国公立大の二次試験におけ
説明ができるかがポイントとなるが、『新詳 資料地理の
る論述問題の設問内容と解答の分量(一部解答欄の大き
研究』は図表が豊富で、簡潔な解説は論述問題の解答の
さや解答すべき内容から推測)を示したものである。論
手本として活用できる。やや先取りではあるが、新課程
述問題の総字数や1問あたりの解答分量は大学によって
の『新詳地理B』の見本をみると図表の読図のポイント
異なるが、昨年度と比較しても、各大学とも大きな変化
やリードとして課題が示されており、論述問題で問われ
はみられない。
る論理的な思考力を身につけさせる上で、役に立つと思
論述問題で問われている内容をみると、図表など資料
われる。
表6─1 国立大二次の論述問題の分量とテーマ:その1(2012年度)
論述
問題数
総字数
1題あたり
テーマ(設問内容)
平均字数
■地形図読図(製紙工場の立地条件、IC付近に工場団地が立地する利点、狩野川中下流の洪水常襲地帯の
北海道大学
8
480字程度
60字
自然条件)。■多国籍企業の説明。■パレスチナ問題が発生した歴史的経緯。■オイルショックの原因となっ
20〜120
たアラブ産油国の行動。■1980年代半ばの西アジア産油国の石油値下げの要因。■オーストラリアのワーキ
ングホリデー制度の目的。
筑波大学
(地球学類)
筑波大学
(地球学類以外)
3
750字
4
1600字
250字
150〜300
■地形図読図(地形〈河岸段丘・扇状地〉と土地利用の特色)。■アフリカの熱帯地域における農業の特徴。
■世界の陸上における降水量分布の特性とその要因。
■地形図読図(地形〈河岸段丘・扇状地〉と土地利用の特色)。■燃料燃焼による二酸化炭素排出量に関す
400字
る国別統計表の国名判定の理由。■アフリカの熱帯地域における農業の特徴。■日本の高度経済成長期にお
ける国内人口移動の特徴。
■気温年変化のグラフによる地点判定と冬期の気温が地点ごとに異なる理由。■バイカル湖とアラル海の湖
水深と水質の特徴と最近の変化。■アメリカ合衆国の州別統計をもとに2005年以降の雇用変化の地域的特徴
とその要因。■アメリカ合衆国の地域別統計による1967〜1987年と1997〜2008年の製造業被雇用者数の変化
の違いとその要因。■ベトナムにおける1988〜2008年の間のコーヒーと米の輸出額上昇の共通する理由。
東京大学
16
1020字
64字
■コーヒーや茶で割高であっても購入しようとする動き(フェアトレード)が見られるようになった理由。
30〜90
■中国で油脂類が大量に輸入されている背景。■中国で加工食品が主要な輸出品になっている背景。■南米
やアフリカにおける森林の炭素蓄積量減少の要因。■ヨーロッパと北米における森林の炭素蓄積量増加の要
因。■緯線(北回帰線・北極圏)が境界となる自然現象。■オルテリウスの地図(1570年)作成時の位置決
定に使われた方法と、それに起因する地図の正確さ・不正確さの内容。■位置決定の方法以外の地図の不正
確さの原因。
■日本における河川流量の地域的特徴。■日本の気候情報の以前の平年値と最新の平年値の変化の特徴とそ
の要因。■都市型水害の原因。■発展途上国の死亡率が高い理由。■発展途上国における都市人口の急増に
東京学芸大学
11
1400字程度
130字
60〜300
よって生じている問題。■先進国における少子化対策の内容。■日本の高度経済成長期から現在までの人口
動態の地域的特徴とその背景や要因(3つの時期の都道府県別人口増加率の階級区分図の読み取り)。■ア
ルゼンチン、ブラジル、ペルー、メキシコの人種民族構成が異なる理由。■南北アメリカにおける自由貿易
地域・国家群を2つあげそれぞれの特徴を説明。■オーストラリアの大鑽井盆地における水取得の方法と関
連付けた農牧業の特徴。■移民からみたオーストラリアの特徴と変化(新旧の2つの政策にふれる)
。
■アルゼンチンの国土で小麦やトウモロコシの栽培に適した地域の名称とその地理的特徴。■アルゼンチン
で農作物A(大豆)の生産量が急増した理由。■アルゼンチンで家畜C(羊)の頭数が減少傾向にある理由。
■アルゼンチンで羊の主要飼育地域の名称とその地域が羊の飼育に適している理由。■(2011.3.11津波被害
一橋大学
12
1125字
94字
75〜150
を受けた地域の地形図に示した)A・B両市の津波被害状況の比較と効果的な復興により適した都市計画を
行っていたと考えられる都市の判定とその理由。■(被災後20日後の道路と鉄道の写真をもとに)道路と鉄
道の復興状況とその相違点。■道路と鉄道の復興状況に違いが生じた理由。■交通インフラの復旧状況が被
災者の生活に及ぼした影響。■サハラ以南アフリカ域内の国際線の運行状況からみた特徴。■ドバイ、ムン
バイ、ホンコンがアフリカの三つの国際空港(アディスアベバ、ナイロビ、ヨハネスバーグ)と定期便で結
ばれている理由。■B国際空港(ヨハネスバーグ)が三大ハブ空港中最大の旅客輸送量をもつ理由。
■火山灰が火山の東側に広く厚く積もる理由。■火山の大規模噴火が世界経済に与える影響。■火砕流の発
新潟大学
7
400〜520字
70字
30〜100
生プロセス。■タイガの特徴(林産資源としての利用法に留意)。■アラル海の面積が急激に縮小した理由。
■フランスの鉄鋼業の中心が内陸部のロレーヌ地方から臨海部のダンケルクやフォスへと移動した理由。
■鉄鋼業で合理化や企業の提携・合併による再編が進んでいる理由。
福井大学
9
8
800字
100字
程度
60〜160
■地形図(諫早湾)読図(干潟の成因、農地の造成方法、堤防の役割、堤防建設が環境に与える影響)
。
■古期造山帯の説明(地下資源に触れつつ)。■一次産品の説明。■オーストラリアにおける土壌の塩類化
が生じるプロセスとその被害。■オーストラリアの農業と鉱工業の特色。
表6─2 国立大二次の論述問題の分量とテーマ:その2(2012年度)
論述
問題数
総字数
1題あたり
テーマ(設問内容)
平均字数
■地形図(長崎県五島市黄島)読図(水資源に恵まれない理由)。■日本の地体構造の説明。■2003年を境
愛知教育大学
7
700字程度
100字
40〜200
に日本の鶏肉輸入相手国が変化した理由。■日本の食品関連企業の中国での立地の特徴と中国の農業地域と
の関わり。■日本の食生活が中国からの輸入食材と強く結びついている理由。■ECSCが成立した理由。
■田園都市構想が日本の全国総合開発計画に取り入れられた次数とそれ以前の全国総合開発計画との違い。
■氾濫原の形成メカニズムの説明。■地盤沈下の要因。■名古屋城、江戸城、大阪城が立地する共通の地形
とその立地要因。■熱帯に分布する農業に適さない土壌の名称、特徴、形成要因。■熱帯雨林の消失によっ
て引き起こされる環境問題。■焼畑地域で人口増加が森林破壊に結びつく理由。■食品工業製品(チョコレー
名古屋大学
12
1200字程度
100字
ト菓子、ワイン)の原料(カカオ豆、ブドウ)生産上位国の判定理由と原料生産国と加工国の特徴。■製造
30〜200
業で海外での生産比率が高い業種の特徴と近年の海外生産比率上昇の理由。■中国、インド、ブラジルのよ
うな国で近年自動車生産台数が高い増加率を示している理由。■日本列島の5つの緯線に沿った地形断面図
の判定の考え方の説明。■地形断面図に示した2市(東北地方の山間部と東京大都市圏の郊外)の人口ピラ
ミッドの判定と人口構成の特徴の比較。
■バングラデシュで懸念される地球温暖化の影響。■アジアと南アメリカにおける熱帯林破壊の要因。■熱
帯林の回復を難しくする土壌の変化。■地形図の読図(山間部の行き止まり道路の利用目的、林業のかかえ
京都大学
15
570字
38字
10〜80
ている主要な問題)■ヨーロッパ近海を漁場とする国々で漁業が発達した文化的、社会的条件。■漁業水域
と採算性の面で近年日本がかかえる遠洋漁業の問題。■表中の都市(バンコク)の郊外地区で進められてい
る住宅開発以外の都市整備や開発。■表中の都市(メキシコシティ)の立地条件に関係して直面している環
境問題。■ナイジェリア北部地域からの人口流出の要因と考えられる自然環境の変化。■地中海性気候の特
徴とその特徴を生じる理由。■酪農の説明。■欧州統合の流れが東欧にも及ぶようになった政治的変化。
■日本の対外直接投資残高に見える中国、アジアNIES、ASEAN四ヵ国、インドの四つの国・地域について
大阪大学
5
900字
180字
認められる変化の特徴と背景。■日本の直接投資のうち、発展途上地域に対する投資と先進地域に対する投
100〜200
資の背景、性格のちがい。■先進地域に対する投資が輸送コストの節約をもたらしている背景。■林業経営・
国際市場・林業労働力・木材自給率等の点からみた日本林業の問題。■熱帯雨林の急速な減少・破壊の原因。
■地形図の読図(氾濫原における集落立地と地形条件との関わり、河岸段丘における農業的土地利用と地形
和歌山大学
9
(不明)
(不明)
条件との関わり、集落形態の違いとその理由)。■地中海沿岸の農業形態の特徴。■イタリアの南北問題の
内容。■スペインの複数の少数民族問題の内容。■日本の過疎地域で若年層の流出が高齢人口割合の上昇を
導く理由。■出生率と死亡率における日本全体と比較した南関東4都県の共通した特徴。
表7 公立大二次の論述問題の分量とテーマ(2012年度)
論述
問題数
総字数
1題あたり
平均字数
テーマ(設問内容)
■東日本大震災の被害をふまえ、防災計画の樹立と実行に重要な事柄について考えるところ。■1次エネル
高崎経済大学
(前期)
7
700字程度
100字前後
ギーと2次エネルギーの違い。■わが国において自主開発油田の獲得が思うように進まない原因。■天然ガ
(推測)
(推測)
スを液化天然ガスに変換するメリット。■保護貿易体制が世界大戦の原因となった理由。■ウルグアイ・ラ
ウンドの合意が日本にもたらした影響。■日本がTPPに参加した場合の国内への影響。
高崎経済大学
(中期)
5
500字程度
100字前後
(推測)
(推測)
■用語・語句の説明(ブラジルの奇跡、焼畑農業、ブミプトラ政策、日本国内の世界遺産、屯田兵)
。
■カリフォルニア海流がカリフォルニア半島付近の気候に与える影響。■北アメリカ大陸の太平洋岸に地震
が多い理由。■日本の河川の侵食速度が諸外国に比べて大きい理由。■天井川が形成される原因。■日本の
首都大学東京
(文系)
11
1200字程度
(推測)
100字前後
4河川の1993年(冷夏多雨年)と1994年(暑夏少雨年)の流域面積当たり河川流量の年変化のグラフの判定
20〜300
とその判断理由。■河川上流部に貯水池や砂防ダム、分水路を建設することによる海岸部の地形変化。■地
(推測)
域調査:地形図の判読(住宅地の立地する地形、道路沿いの現地観察のフィールドノートの記録、土地利用
図と対応させた農地、森林、建物用地の分布傾向)。■地域調査:統計の判読(農業と農業的土地利用の特徴、
人口や産業からみた地域の特徴と変化の傾向)。
■オーストラリアでは州都が観光の中心になっている理由。■オーストラリアの国立公園の分布と自然環境、
人文環境との関連。■写真(エアーズロック)の地形の成因。■オーストラリアで近年アジアからの観光客
首都大学東京
(理系)
12
1200字程度 100字前後
(推測)
(推測)
が増加した理由。■新旧地形図の判読(右岸・左岸の判定理由、水田と果樹園の分布の特徴と変化、地形条
件と市街化の進展の違い、河川の両岸に同一の地名がある理由)。■日本のエネルギー供給にとって新エネ
ルギーが期待されている理由。■風力発電施設の分布と地熱発電所の分布の自然的・人文的側面からみた要
因。■小規模水力発電が可能な自然条件。■大規模水力発電所の分布の要因。
10
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