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The First Monodzukuri Education in University Introduced

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The First Monodzukuri Education in University Introduced
シリーズ 未来を担う人づくり
大学初、江戸からくりを導入したものづくり教育
─ MONOからくりマシンコンテストの実施例─
ものつくり大学 教授 平 井 聖 児
ものづくり人材教育では、知育、徳育、体育のほかに身体的技法に基づく技育 1)の必要性が高まって
いる。本稿では、製造技能工芸学科におけるものづくり教育の特徴に触れ、さらに、筆者が大学教育
において、はじめて導入したからくり教育の実施例について紹介する。
1.はじめに
3.MONO からくりマシンコンテストとは
ものつくり大学は、古代蓮で有名な埼玉県行田市に
近年、ものづくりにおける技術者に求められる能力
位置し、実技と理論を融合した実践的工学を内含す
は、ものづくりのグローバル化と共に変わってきてい
る技能工芸学という新しい概念の下で設立された工
る。すなわち、技術力だけではなく、発想の豊かさや
科系単科大学である。本学では、創造的・実践的技術
問題解決能力、プレゼンテーション能力など、チーム
者を世の中に送り出すために、ものづくりに必要な科
プレーの中でも自ら能力を発揮できる人材が求められ
学、技術、技能、マネジメントなどをバランスよく教
ている。MONO からくりマシンコンテストは、新入
育する、理想的な工学教育を行っている。本稿では、
生に対して創造的・実践的な技術教育の導入科目とし
技能工芸学部 製造技能工芸学科におけるものづく
て位置づけられるフレッシュマンゼミの一貫として行
り教育の特徴に触れ、さらに、筆者が大学教育におい
われる。ここでは、「江戸からくり」と「ルーブ・ゴー
て、はじめて導入したからくり教育の実施例について
ルドバーグ・マシン」をヒントにし、さらに、機械と
紹介する。
しての「精巧さ」などが加味されたものを本学の「か
らくりマシン」として定義し、授業およびコンテスト
2.製造技能工芸学科の特徴
を通じて、特色、独自性のあるマシン製作に取り組ん
本学科では、実技と理論を融合した実践的工学教育
でいる。つまり、ものづくり日本にふさわしいメカニ
ズムを追求している。
(少人数制の体験重視型授業など)を実施し、確かな
技術と専門知識を身につけるのが狙いである。すなわ
ち、専門分野を細分化せず、関連性のある工学分野を
4.江戸からくり史から企画立案・製作まで
複合的に学ぶことで、総合力を持ったオールマイティ
本講義・実習はまず、江戸職人の粋でユーモラスな
なエンジニアを育成している。そして機械、電気・電
発想と手技によって発展・展開してきた「からくり」
子、制御・コンピュータ分野を横断的に学ぶ最新鋭の
の技術の歴史についての講義がおこなわれ、その後、
機器を備えた実習設備を使いながらこれらの分野を基
からくりマシンの企画・製作を行い、コンテストの開
礎的・実践的に学ぶことが可能となっている。また、
催(本年度は 7 月19 日)に至る。そして、コンテスト
3 年次からは「先進加工技術」「機械デザイン」「電気
という目的に向かい、複数名でものづくりを行う中で、
電子・ロボット」「情報・マネジメント」の 4 つのコー
チームワークを学ぶことに重点を置いていることから
スで、より専門性を高めることができ、さらに、長期
次のようなチーム編成で企画・製作を行っている。
インターンシップにより、技術と知識の専門性を高め、
<チーム編制(少人数制が有効)>
社会人としての人間的基礎力を身につけられるように
• 8 クラス(2 × 8 = 16 チーム)各 1 クラスが 2 チー
している。
ムに分かれ、製作は各チーム単位で行う。
Vol.51(2010)No.8
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• テーマは各クラスごとに決定し、最後に 2 チームの
からくりを連結して、1 つのからくりマシンとする。
• 1 チーム 8 名編制(1 クラス約 16 名)で、チーム内で
リーダー、資材管理、予算管理、日程管理、等の役
割を決める。
• クラス内を 2 チームに分け、アイデアを持ち寄り(写
真 1 参照)、各チームでからくりの内容をディスカッ
ションし、チームでからくりマシンを製作する(写真
2 参照)。ここで、個別のからくりを台の上に設置し、
関連する工程どうしが繋がっているのが重要である。
写真 3 大会の様子と泰日工業大学チーム(タイ王国)
6.停止回数(停止回数の数だけ一定量減点)
写真 1 アイデアスケッチ・議論の様子
次に、学生からの感想を紹介する(一部抜粋)。
1)それぞれのチームでアイデアを出し合い、一つに
まとめることが大変でした。しかし、互いに改善が
必要な部分を指摘し合い、切磋琢磨できたことはと
ても良いものだと思いました。
2)MONO からくりマシンコンテストは、様々なアイ
デアを生み出す力と、物理的な力をどれだけ自分が
持っているのか気付かせてくれました。
3)からくりマシンの製作で、団体でのものづくりの
写真 2 チーム製作の様子
難しさや楽しさを学ぶことができました。
5.コンテスト当日とその感想(写真 3 参照)
4)残り日数が少なくなっても、自分の担当箇所は何
コンテストの日程はオープンキャンパスと重ねるこ
(中略)コンテストで賞は取れませんでしたが、それ
とで、学生をはじめ、多くの人の前で実演することに
以上の達成感と嬉しさを味わうことができました。
としても完成させたいという一心で頑張りました。
なっており(各クラスの持ち時間:5 分(代表者によ
るからく装置の解説含む))、審査委員会は日刊工業新
聞社、㈳ 日・タイ経済協力協会など外部委員により構
成されている。評価基準は次のとおりである。
からくりマシンの評価基準
6.おわりに
MONO からくりマシンコンテストを行うことで、
ものづくりへの関心・動機付けが可能となったのがわ
かる。本年度 3 回目のコンテストには、ものつくり大
1.初期得点(2 チームのマシンがつながり、スター
学のチームのほか、埼玉県内の高校チームや泰日工業
トからゴールまで構造的につながっているか)
大学チーム(タイ王国)の参加が予定され、少しずつ
2.からくりの面白さ(動作の面白さ、観客を驚かせ
広がりを見せている。今後、ものづくり人材教育に必
る工夫など)
3.完成度(よく作り込まれているか、時間をかけこ
要な身体的技法に基づく技育手法の開発が益々なされ
ることを期待したい。
だわって製作されれいるかなど)
4.テーマの再現度(テーマを再現するためのからく
りの工夫など)
5.装飾(色、固定方法(ガムテープ止め等は減点)、
仕上げなど見た目の美しさ、こだわり)
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参考文献
1 )平井聖児,土居浩:ものづくり現場における教育概念
の 提 案 −身 体 技 法 に 基 づ く「 技 育 」− 型 技 術,2004,
vol.19,no.13,p.88 - 89
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