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要約 平成 14 年度 石油・天然ガス資源開発等支援 およびエネルギー

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要約 平成 14 年度 石油・天然ガス資源開発等支援 およびエネルギー
要約
平成 14 年度
石油・天然ガス資源開発等支援
およびエネルギー使用合理化調査
「イラン~クウェートガスパイプライン事業化調査」
報告書
住友商事株式会社
現在イランでは豊富な埋蔵量を誇る天然ガスの有効利用が課題であり、天然ガスの開発を
進めると共に、その需要拡大を目的として LNG,DME,GTL 等による天然ガス利用 プロジ
ェクトを推進している。この状況下、イランは斯かるプロジェクトへの海外企業の積極的
な投資を推進している。
一方、クウェートは今後、増大する電力需要に対応するべく、その燃料となる天然ガスの
確保が急務であるが、自国の天然ガス生産は既に限界を向かえており、輸入に 頼らざるを
得ない状況である。
本調査はこのような両国の状況下、イランからクウェートへの天然ガス輸出を実現 させる
為に不可欠なガスパイプライン事業化調査を行い、パイプライン輸送事業 についての経済
性、実行計画を検討立案したものである。
実施国のエネルギー事情
1) イラン
イランは石油輸出国機構(OPEC)で第二位の産油国であり、世界全体の約 9%の原油埋蔵
量及び約 15%の天然ガス埋蔵量を保有しており、ロシアについで世界第二位の天然ガス埋
蔵国である。
OPEC Annual Statistical Bulletin 2001 では、2001 年末時点でのイランの 原油及び天然
ガス埋蔵量は、それぞれ約 990 億バーレル、約 939 Trillion Cubic Feet (Tcf)と報告されて
いる。
1999 年の天然ガス生産量及び消費量内訳を表-1 に示すとおり、イランは豊富な天然ガス埋
蔵量を保有しているが、天然ガス需要の開拓並びにガス田開発を推進し天然ガス生産量を
増大させることが課題となっている。
表-1
イランの天然ガス生産量及び消費量内訳
項目
総天然ガス生産量
放散及びフレアー焼却量
数量(Bcf)
3,623.32
370.81
ガス圧入量
1,059.45
ドライガス生産量
2,041.21
ドライガス消費量
2,111.84
ドライガス輸入量
70.63
ドライガス輸出量
0.0
2) クウェート
クウェートは世界全体の約 9%の原油埋蔵量を保有している。
OPEC Annual Statistical Bulletin 2001 では、2001 年末時点でのクウェートの原油及び天
然ガス埋蔵量は、それぞれ約 965 億バーレル、約 54.9 Tcf と報告されている。
1999 年度のクウェートの天然ガス生産量及び消費量内訳を表-2 に示すとおり、クウェート
で生産される随伴ガス量及び天然ガスの有効利用は、現状では上限に近づきつつある。
表-2 クウェートの天然ガス生産量及び消費量内訳(1999 年)
項目
総天然ガス生産量
放散及びフレアー焼却量
数量(Bcf)
358.09
17.66
ドライガス生産量
305.12
ドライガス消費量
305.12
ドライガス輸入量
0.0
クウェート電力事情として、2001 年時点での発電能力は 9.3 GW であるが、既設発電所の
老朽化、及び電力需要の伸びから今後数年の間にさらに 9,000MW の新規発電所を建設する
ことが計画されている。また、現状の発電所では、特に、夏場のピーク時に一部原油、軽
油、重油等を燃料として使用しているが新規発電所は環境の観点及びクウェートの収入源
である原油を含めた液体燃料の輸出優先の観点から、天然ガスを燃料とした発電所とする
予定である。従って、今後、増大する電力需要に対応するため、燃料としての天然ガス確
保並びに油から天然ガスへの燃料転換の推進の観点からもイランを含めた他国からの天然
ガスの輸入が必須の状況となっている。
本プロジェクトの必要性
クウェートは天然ガス輸入先の開拓・確保の観点から、イランからの天然ガス 輸入に加え、
カタールからの輸入を検討しているものの、カタールとの交渉は 現在政治上の問題で棚上
げ状態にあるため、本プロジェクトは、天然ガスを輸入する必要のあるクウェートにとっ
ては安定供給エネルギーが得られることで 更なる産業の育成が期待でき、自立的な社会開
発を促すものと期待される。一方、イランにとっては豊富な天然ガスの有効利用並びに天
然ガスの輸出から外貨獲得が可能となることから両国双方に利益をもたらすものである。
加えて、我が国にとってもイラン石油・ガス部門への投資企業の収益力向上に つながる可
能性があること、我が国石油(開発)政策・体制にとってもイランでの投資機会が重要な
役割を果たす可能性があること及び我が国の対産油国対策等の対外政策においても対イラ
ン投資あるいは協力関係強化が大きな意味を 持ちうることから本プロジェクトは、広角的
な視野で我が国へのエネルギー安定供給を導く物となり非常に高い価値あるものである。
プロジェクト計画検討
1) パイプラインルート検討
現地調査の結果、当該プロジェクトの天然ガスソースはイラン西部ペルシャ 湾に面するカ
ンガンにて処理された天然ガスを利用し、ガス受入はクウェートのアズズールとなった。
尚、イラン側の強い意向として、海上パイプラインの起点はガナベであると表明したこと
から、ガナベを含むカンガンから アズズール迄のパイプラインルートを検討した。パイプ
ラインルートを図-1
に示す。
2) 概念設計検討
本プロジェクトの概念設計につきガス配管仕様(配管サイズ・グレード)、 ガス輸送設備
(ガス圧縮設備・ガス受入設備)につき、各パイプラインルートにつき、輸送量別に検討
した。設備のフローダイアグラムを図-2
に示す。
3) プロジェクトスケジュール
プロジェクトが採択され、基本設計及び設備発注・工事並びに操業開始までに要する期間
は 28 カ月である。代表的な総合工程を図-3
に示す。
4) 初期投資金額の検討
天然ガス輸送量を 200MMSCFD~1,000MMSCFD と設定し、上記パイプ ラインルート毎
に必要な配管の規格、コンプレッサー能力・基数を検討した 上でパイプライン工事費は過
去の実績に基づいた中近東に於けるコスト データに基づいて算出した。プラント内建設費
の算出は、主要機器類の調達 価格を出し、得られた機器コストの合計に対し、土木、建築、
配管、電気、 計装工事のコストを適切な比率を乗じて算出した。設定したケースに対する
クウェートへのガス移送量に相当する初期投資金額を表-3 に示す。
表-3 初期投資金額
通貨単位:MMUS$
ケース 1
クウェート
ガス移送量
(MMSCFD)
ガナベ→
アズズール
ケース 2-1
ケース 2-2
カンガン→
カンガン→
ガナベ→
ガナベ→
アズズール
アズズール
ケース 3
カンガン→
アズズール
海洋 240Km 陸上 318Km+海洋 240Km 陸上 318Km+海洋 240Km 海洋 427Km
200
99.97
409.67
358.26
205.20
300
128.68
483.56
415.92
248.42
400
150.74
606.90
462.22
318.21
500
191.66
643.28
533.12
364.35
600
208.76
713.81
571.89
411.50
700
223.48
786.49
617.35
458.49
800
246.39
872.16
666.24
506.62
900
267.55
869.47
709.42
582.27
1000
291.43
917.78
750.46
628.73
プロジェクトストラクチャー
本プロジェクトは、住友商事を含めた民間企業主導による BOT ベースの事業 形態で実施
する計画である。本プロジェクトの事業手法として事業参画型 ビジネスモデルの一つであ
る BOT 方式を採用することは、日本の民間企業 ならびにクウェート、イラン両国の実施
機関双方にとって、最適で有益な事業 手法である。計画している BOT 事業の実施体制を、
実施済のスタディに基づき、想定しうるプロジェクトのストラクチャーを図-4 に示す。
経済評価
1) 前提条件:
イラン側の要望が強いケース 1 をベースとして以下を前提条件として事業性を検証した
プロジェクト: イランのガナベよりクウェートのアズズールまで海上 ガスパイプライン及
び付帯設備を建設、運営する BOT プロジェクト。
プロジェクト:
イランのガナベよりクウェートのアズズール
まで海上 ガスパイプライン及び付帯設備を
建設、運営する BOT プロジェクト。
事業主体/借主:
イランにおいて住友商事、イラン石油公社(以
下、「NIOC」)、クウェート石油公社(以下、
「KPC」)他が設立する特別目的会社。
ガス販売者:
NIOC
ガス購入者:
KPC
最大ガス輸送量
400MMSCFD
稼動日数
330 日/年
BOT 運営期間:
15 年
初期投資金額:
150 百万米ドル(建中金利、運転資金は含ま
ず)
操業費:
7 百万米ドル(エスカレーション無し)
借入/出資比率:
70/30
出資額:
47.9 百万米ドル
借入金額:
159.7 百万米ドル
税金:
25%
配当利回り(ROE):
20% p.a. (税引後)
2) 事業収益基盤
パイプライン使用料を次の二つの要素より算出した。
(1)Capacity Charge
ローン契約上の借入返済他の支払合計金額(減価償却費が上記支払合計金額を上回る場合
は、減価償却金額)を賄う要素
(2)Commodity Charge
操業費用と株主の目標収益(ROE20%を目標)から成る要素により構成。
3)分析結果
上記前提条件を基に作成したフィナンシャルモデルを作成した。主要な要素はパイプライ
ン使用料の算出であり、結果は 20%の税引後投資収益率を得る ためのパイプライン使用料
金(US$/mmbtu)として次の結果を示した。
Capacity
Charge
Commodity
Charge
合計
平均価格
最低価格
最高価格
[0.102]
[0.091]
[0.125]
[0.201]
[0.201]
[0.201]
[0.303]
[0.292]
[0.326]
平 均 値 で あ る US$0.303/mmbtu に イ ラ ン の 本 パ イ プ ラ イ ン で の 受 け 渡 し 金 額 を
US$1.0/mmbtu と想定すると、実際のクウェート購入ガス価格は平均で US$1.303/mmbtu
となり、一つの指標である 1985 年から 2000 年までの European Union の平均 CIF 価格
(US$2.65/mmbtu)に比べ充分価格競争力があることが検証された。
尚、ROE20%を前提とした場合の ROI は 14.19%を示し、イラン側が BOT 事業としての
適正リターン水準としている ROI 15%の範囲内に収めることが可能である事も確認された。
4)感度分析
クウェートに販売するガス量(最大 400MMSCFD)につき、輸送量を 10%, 20%減少させ
た場合の平均パイプライン使用料金はそれぞれ US$0.330/mmbtu , US$0.365/mmbtu との
結果が示され、上記 3)の分析 結果に反映させても十分に吸収力が有ることが確認された。
本プロジェクトの社会効果
本プロジェクトの実施により、以下のような社会面に及ぼす効果が期待される。
1) 技術移転
本プロジェクトの実施を通して、パイプラインならびにガス処理プラントの 設計、プロジ
ェクト・マネジメント、パイプライン敷設ならびにプラント建設、操業・保守に係わる最
新技術の移転が行われることで、当該国の技術レベルの向上と人材育成に貢献できる。
2) ガスパイプライン網の整備
本プロジェクトは、イランにとってはガス処理プラント及びガスパイプラインの操業・保
守に係わる技術移転、技術レベルの向上ならびに人材育成に寄与 すると共に、他国への天
然ガス輸出も含めイラン国内のガスパイプラインの 輸送能力増強並びにガスパイプライ
ン網の整備に寄与するものと思われる。
3) 雇用創出
本プロジェクトでは、イラン及びクウェートの陸上に新設されるガス処理 プラント並びに
ガスパイプラインの運転・保守要員の雇用創出効果が期待 される。さらに、プラント操業
が開始されれば直接のプラント運転要員に限定されず、その他の雇用創出機会が生まれ、
地域的な活性化・発展へも繋がる ことが期待できる。
特にイランでは若年層の人口が増大しており、これら若年層に対して雇用の 機会を提供す
ることは、イラン経済の発展並びに雇用不安を抑制して社会的 秩序・安定を図ることに寄
与することと思われる。
結論
本事業化調査ではイランの天然ガスをクウェートに輸出する為の海上 パイプライン建
設・運営事業についての事業性を検討した。適切なパイプラインルート選定においては、
イラン側の意向を踏まえ、ガナベよりアズズールまでの約 240Km の海上パイプラインをベ
ースとしてパイプライン使用料の算出を 行ったところ、20%の税引後投資収益率を得るた
めの使用料は平均で US$0.303/mmbtu を示し、充分な価格競争力が確認された。本プロジ
ェクトの 実現はクウェートにとっての安定供給エネルギーの確保、イランにとっての豊富
な天然ガスの有効利用並びに天然ガスの輸出から外貨獲得が可能となることから、両国双
方に利益をもたらすものである。
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