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Liaison News No.3

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Liaison News No.3
〈注:これまでの地域共同研究センター発行のニュースレターと知的財産本部発行の UTiP が統合され本誌となりました。〉
ご挨拶▷………………………………………… 1
大学発新技術の紹介⑴▷……………………… 2
大学発新技術の紹介⑵▷……………………… 3
企業からの共同研究便り▷……………………… 5
トピックス▷…………………………………… 6
今後の主な行事▷……………………………… 8
共同研究・受託研究の実施状況▷…………… 9
ご挨拶
産学連携推進機構長(理事・副学長) 濟
木育夫
富山大学 地域連携推進機
ダストリアルエンジニアコース” として開講されます。
構 産学連携部門では地域社
地元産業界でご活躍の中堅のキャリアーエンジニアの
会の産業界との窓口として,
方々のご協力の下,地域の産業技術の集大成を図ると
又,学内研究者の産学連携
共に,地域の産業界の次代を担う若手技術者の育成を
活動を支える中枢組織として業務を遂行してまいりま
企業間の垣根を超えて展開するユニークな事業です。
した。そして今後も大学発の研究成果を広く社会に還
本年度はアルミ加工産業分野,医薬製剤産業分野,電気・
元し,産業界への技術移転を推進すると共に,関係機
電子部品産業分野及び機械・部品工具産業分野の講義
関との連携により産学連携活動に邁進したいと考えて
が開講されます。より多くの方々が聴講され,活用さ
います。
れることを念願しています。
これまでに取り組んで来た①共同研究・受託研究の
また,これまで富山市が管理・運営されてきた富山
推進,②リエゾンフェスティバル(平成 21 年度は名
市新産業支援センター(五福キャンパス内地域共同研
称をコラボフェスタと改称して実施の予定)
,③イブニ
究センター隣)は 4 月から本学が指定管理者となり,
ング技術交流サロン,③サテライト技術相談オフィス
業務を産学連携部門が担当することになりました。こ
の開設,④技術研究部会の支援,⑤知的財産の移転等
れまでどおり新技術・新商品の開発や起業をお考えの
の事業は,富山大学交流振興会のご支援の下で今後も
方のご利用をお待ちしています。
継続する所存です。
今後とも本学が目指す社会のさまざまな課題に挑戦
新しい事業では,産学連携部門が展開している「キャ
する産学連携活動を推進して参りますので,関係各位
リアーエンジニアによる社会貢献・人材育成事業」
(経
のご支援とご協力を切にお願い申し上げます。
済産業省委託事業)がいよいよ 6 月 20 日から “イン
大学発新技術の紹介⑴
血糖値管理のための色変化応答型糖
センサー開発研究の展開
大学院理工学研究部(工学系) 教授 遠田 浩司
生 年 月:昭和 35 年 7 月
略 歴:平成 2 年慶応義塾大学大学院理工学研究科応用化学専攻博士課程修了,
同年北海道大学理学部化学科助手,平成 4 年東京大学大学院理学系研究科化学専攻助
手,平成 13 年ケースウエスタンリザーブ大学(米国)客員准教授,主席研究員を経
て平成 18 年より現職。平成 8 年日本分析化学会奨励賞,工学博士
専 門 分 野 : 分析化学,オプティカルバイオセンサー,環境分析,化学センサー
連 絡 先 : [email protected]
Ⅰ . はじめに
2
流ではなくセンサー自身の可逆的な色の変化を観るこ
現在日本では,成人の十人に一人は糖尿病あるいは
とによってグルコース濃度を測定するオプティカル糖
糖尿病を強く疑われる状態にあるといわれています。
センサーの開発研究をおこなってきました。このセン
これらの糖尿病患者は血糖値管理のために一日数回指
サーは図1に示すように,ハイドロゲルフィルムに細孔
先から採血し,血糖値測定計を用いて血液中の糖 ( グ
をあけ,ここにグルコース酸化酵素と機能性色素を坦
ルコース ) 濃度を測定する必用があります。なお,こ
持したビーズを詰め込み,ハイドロゲル薄膜で覆った
の自己採血型血糖値測定計の国内市場規模は平成 18
カプセル状のものです。このオプティカルセンサーの
年度で約 450 億円と大きく, 糖尿病患者の増加に伴っ
応答機構は,カプセル薄膜を横切りカプセル内に拡散
て年々その市場規模も増大しています。一方,糖尿病
した試料中のグルコースが酵素反応により酸化され,
患者の血糖値は食前食 後で急激に変動するので,血
生じたグルコン酸とカプセル中の機能性色素が相互作
糖値計を用いた一日数回の採血による血糖値管理だ
用し,センサーの色が変化するというものです ( 図2)。
けでは十分でなく,高血糖状態が長く続くため合併症
カプセル薄膜のグルコン酸に対する透過性を制御する
のリスクが高くなるという問題点があります。そこで,
ことによって,カプセル内グルコン酸が濃縮され,こ
この合併症のリスクを低減させるために血糖値を連続
れによりグルコースに対する色変化応答シグナルが増
的にモニターできるシステムの開発が盛んに行なわれ
幅されるため,生理的グルコース濃度領域でセンサー
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ています。ここでは,私がこれまで取り組んで来た血
の色が橙色から鮮青色へと可逆的かつ鮮明に変化し,
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糖値管理のための新規糖センサーの開発研究につい
センサーの色を観るだけでグルコース濃度を知ること
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て紹介します。
ができるセンサーとなります ( 図3)
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Ⅱ . 繰り返し使用可能で安価な色変化応答型糖セ Ⅲ.血糖値を連続的にモニターする皮下埋め込み ࡑ࡯ᓸ⚦ടᎿᛛⴚࠍ߅ᜬߜߩડᬺߩ⊝᭽ߣ౒ห⎇ⓥ߇ⴕߥ߃ࠇ߫ߣᕁߞߡ޿߹ߔ‫ߚ߹ޕ‬㧘⊹ਅၒ
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ンサーの開発
型センサー開発への展望
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現在一般に使用されている自己採血型血糖値測定
血糖値を連続的にモニターする低侵襲システムは,
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計は,表面にグルコース酸化酵素を固定化した電極を
痛みを伴う指先からの採血を不要のものとするため,
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用い酸化還元電流を測定する電気化学測定に基づく
その開発が切望されてきました。近年,針状のセンサー
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ものです。一方,私はグルコース酸化酵素を用い,電
を皮膚に突き刺し,皮膚直下の間質組織中の糖濃度
図2 色変化応答型糖センサーの応答機構
図 1 色変化応答型糖センサーの模式図
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を連続的にモニターする電気化学検出に基づくシステ
来の電気化学検出法に比べて簡便,安価なシステムと
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ムが開発されていますが,センサー電極に電力を供給
いえます。また,尿中糖の測定は現在試験紙が主に使
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し電流を検出するための皮膚を横切る導線が必用で,
われており,検出原理上使い捨てとなりますが,本セ
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これによる感染症の恐れもあり着装時の患者の負担は
ンサーの場合応答は可逆ですので繰り返し使用でき,
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軽くはありません。そこで私は上述の色変化応答型糖
簡易尿中糖チェッカーとしての利用も考えられます。
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センサーを間質組織に埋め込み,糖濃度の情報をセ
このような製品化のために,現在手作業で作製してい
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ンサーの色変化の情報に変換して体外に置いたカメラ
るカプセル状センサーを効率良く作製するためのポリ
でモニターするシステムの開発に取り組んでいます ( 図
マー微細加工技術をお持ちの企業の皆様と共同研究
4)。この色変化応答型糖センサーは,センサー駆動
が行なえればと思っています。また,皮下埋め込み型
のためのエネルギーを必要としない受動的な自律型セ
センサーを現実のものとするためには,生態適合性を
ンサーなので,皮膚を横切る導線等不要であり着装時
始め安全性やセンサー寿命等の数多くの課題をクリア
の患者の負担の少ないシステムとなることが期待され
する必要がありますが,糖尿病患者の血糖値の連続モ
ます。
ニタリングの方法論として有望だと確信しております。
クリアすべき課題が多く,製品化のためには少し時間
Ⅳ . おわりに がかかると思いますが,長い目で共同研究をしていた
採血中の糖濃度をセンサーの色変化で検出する方
だける企業の方をお待ちしております。
法は,電気回路や電極を使用する必要がないので,従
図 3 色変化応答型センサーのグルコースに対する応答
図 4 皮下埋め込み型センサーの概念図
大学院理工学研究部(理学系)准教授 岩坪 美兼
生 年 月:昭和 30 年 3 月
略 歴:昭和 62 年富山大学理学部技官,平成 5 年同助手,平成 6 年同講師,平
成 8 年同助教授 平成 19 年から現職 理学博士(金沢大学)
専 門 分 野 : 植物細胞分類学,植物細胞遺伝学
連 絡 先 : [email protected]
大学発新技術の紹介⑵
植物の交配における染色体情報の
必要性と倍数化の魅力
3
Ⅰ . はじめに
ともに,交配と選抜を繰り返すことによる品種育成が
植物の有効利用と新たな活用法の開拓は,食糧,建
行われてきました。品種の改良に革命をもたらした遺
築資材,生活用品の原材料の確保,さらにエネルギー
伝子組み換え技術とは異なり,伝統的な育種の方法は
源として,私たちの直面している地球規模での課題を
特別な設備を必要とせずに実施できます。しかし,交
解決する上で重要です。そのための優れた植物品種の
配と選抜を繰り返すことから,品種の作出にはかなり
作出には,偶発・人為的に生じた突然変異株の利用と
の年月を要するため,効率的な品種作出法の確立が望
3
まれます。
当研究室では,維管束植物を対象に染色体の分化
Ⅱ . 倍数体植物の魅力
度合いに基づく属内での類縁関係や種の多様性の解明
写真は二倍体と三倍体のフキ(図 2)および四倍体
を行ってきました。その結果,染色体数の異なる偶発
と六倍体のオオバコ(図 3)です。フキでは二倍体に
的に生じた個体が多くの種で見つかるとともに,ひと
比較して三倍体が大きく,オオバコでは四倍体に比べ
つの種が染色体数の異なる複数の個体群から構成され
て六倍体が大型になります。スイバ(通常は二倍体)で
ている場合が,しばしば存在することが判ってきまし
も偶発的に生じる三,四倍体はいずれも大型になりま
た。身近に生えるオオバコ,カキドオシ,セリ,タンポ
す。このように根・茎・葉を利用する植物の収量を増や
ポ,フキなどでさえも染色体数の異なる個体群から構
す点においては,倍数体化は有効であることがわかり
成されております(図 1)
。染色体数が異なる個体間の
ます。倍数体化は花のサイズも大型化するために,し
交配では,正常な有性生殖を行う個体を得ることは難
ばしば,花卉植物の品種のなかには倍数体が存在しま
しいことから,交配によって育種を行う場合には,両
す。またソバやクワなどでは,通常の二倍体を四倍体
親とする植物個体の染色体数はぜひとも知っておきた
化することで果実の大きい品種が作出されております。
い基礎的情報です。ウメ,サクラ,スギ,チャ,チュー
三倍体のような奇数倍数体植物では,通常,正常な花
リップをはじめとした栽培植物には,染色体数が異な
粉や種子ができません。フキの三倍体やカキドオシの
五倍体も奇数倍数体ですので果実が稔りません。種子
る倍数体品種が存在することが知られていますが,染
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によって次代を残すことができないことでは欠点です
色体数や核型の情報が不足している栽培植物が今なお
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が,この特徴を利用して,三倍体の種なしスイカ,種
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なしブドウが作出されてきたことはよく知られておりま
前処理,固定,染色の後,押しつぶし法によってプレ
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てタマネギ,ムラサキツユクサなどを対象に中学校・
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高等学校でも染色体観察が行われております。教材に
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は染色体の観察が易しい植物が用いられているので,
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観察は容易です。そのために植物全般に染色体の観察
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は簡単であると思われがちです。染色体の観察を行う
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場合には,プレパラート作製までの各処理がそれぞれ
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があり,その上,季節の推移と共に最適な処理条件が
図2 フキの二倍体(2n=60)と三倍体(2n=90)
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変化してしまう種も多数存在します。市販の染色液
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数多く存在します。植物の染色体の観察には,適切な
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酸カーミン染色液,酢酸オルセイン染色液)ではよく
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染まらない種類が多いこともあり,栽培植物において
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私の研究室では,約
15 年をかけて前処理と染色液の
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改良を行ってきた結果,植物の種類をほぼ問わずに中
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期染色体を効率的に観察できる方法を開発しました。
も染色体の情報が不足している原因となっております。
図3 オオバコの四倍体(2n=24)と六倍体(2n=36)
図 1 カキドオシの染色体 A: 2n=36, B: 2n=45, C: 2n=54
࿑㧝 ࠞࠠ࠼ࠝࠪߩᨴ⦡૕ A: 2n=36, B: 2n=45,
C: 2n=54
4
Ⅲ . 染色体観察の重要性
地下茎や匍匐枝(ランナー)などで栄養繁殖を行う
植物では,しばしば染色体数が多様化している場合が
あります。生薬の原料および園芸植物として使用され
࿑㧞 ࡈࠠߩੑ୚૕㧔2n=60㧕ߣਃ୚૕㧔2n=90㧕
るジャノヒゲは 2n=67,68,69,98,102 の五タイプが
体を調べることが特に重要です。
富山県内に自生します。いずれも栄養繁殖によって殖
Ⅳ . 染色体観察の勧め
えているものと思われます。
種子が稔り,種子繁殖を行う植物であっても,正常
スイバやフキの三倍体または四倍体個体のように,
な受精によって種子ができているとは限りません。ブ
偶発的に生じた倍数体個体は成長が早く,二倍体個体
ラックベリーやセイヨウタンポポは,果実がよく稔る植
に比較して大型になります。二倍体から四倍体を得る
物ですが,これらでは受精せずに母親のみの細胞から
倍数体化は,コルヒチンを用いて効率的に作出できる
種子が形成されています。したがって,このような植
ことが判っております。根・茎・葉を利用する植物にお
物では交配を行っても雑種を得ることは期待できませ
いては,倍数体化はもっと注目されてよい方法だと思
ん。ブラックベリーやセイヨウタンポポでは,染色体
います。倍数体化が行われたかどうかは,当研究室の
の数や形状を観察するだけで,種子が正常な減数分裂
技法によって短時間で正確に判断できます。品種間の
と受精を行わずに生じていることが予想できます。一
交配を行う場合にも,交配作業を徒労に終わらせない
年の中で,僅かな期間しか花が咲かない植物では,交
ために,富山大学での事前チェックの実施を期待して
配の作業を徒労に終わらせないためにも,事前に染色
おります。
企業からの共同研究便り
自立を支援する歩行器具の開発
カナヤママシナリー株式会社 営業部 稲葉 聡
〒 938-0013 黒部市沓掛 3259
Tel 0765-52-0888 Fax 0765-54-4688
E-mail [email protected]
カナヤママシナリー株式会社は,昭和28年に富山
各分野の専門家が集まる事で可能になります。反面,
県黒部市に創業し,以来半世紀以上にわたってものづ
日程や意見の調整や事務作業が大変ですが,コーディ
くりに貢献してきました。水中ポンプから始まり,造
ネータの方が間に入って調整役となって頂く事でスムー
船,工作機械,プラントなど時代と共に歩み,平成元
ズに運んでいます。
年からは真空技術に挑戦し,半導体,液晶,航空,宇
自立支援器具研究部会の方針は,高齢者,障害者な
宙など最先端産業のパートナーとして現在に至ってい
どの自立を支援し,気持ちよく,積極的に使いたいと
ます。そして「カナヤママシナリーの持つ技術を,目に
思う,福祉機器に見えない,優れたデザインの器具を
見える形で社会に還元したい。
」との思いから,福祉機
開発する事です。そして生活,市場で必要とされる自
器に挑戦を始め,単なる人を運ぶ道具でしかなかった
立支援器具のシリーズ化を推進しています。
車いすを根本的に見直し,新しい車いす「楽歩(らっぽ)
研究部会の成果第1号として,自立支援歩行器具を
®」
の開発に成功しました。
これは自立支援ができるティ
開発しました。寝た状態,床に座った状態,腰かけた
ルト・リクライニング採用のモジュラー車いすです。快
状態から,自分で立ち上がるための補助が可能な,木
適と活力ある社会を目指し,思いやりと最先端技術を
融合し,カナヤママシナリーの夢を形にし,その後も
様々な製品を送り出しています。
富山大学とは,地域共同研究センターの呼びかけで
2007年より共同研究を始め,
「自立支援器具研究部
会」
を発足しました。これは4学部を横断し,
工学,
老人,
地域看護医学,デザイン,人間工学等の6人の教員と
企業(カナヤママシナリー)で構成される全国でも非
常に珍しい試みです。メーカーだけではできない事も,
木製立ち上がり器具 立ち上がり歩行車
5
製の器具です。木製なので,優しさ,暖かさ,癒し効
から自分で立ち上がり,かつ歩行補助まで可能な製品
果があります。
です。どちらも今まで市場にない物で,特許を出願し
成果第2号は,自立支援歩行車です。木製の器具は
ています。
屋内で使用する物ですが,これは屋外でも使用し,活
これらの製品を開発するにあたり,単なる机上の会
動範囲を広げ更なる自立を促す事を目的としています。
議ではなく,使用する人の立場に立って,現場まで出
従来の歩行車は,単なる歩行の補助をする物ですが,
向き,様々な意見を聞き,それらを取り入れながら活
この製品は寝た状態,床に座った状態,腰かけた状態
動を行っています。
これらの成果が認められて,テレビ,新聞各紙に取
り上げられ話題になっています。
活動は今も続いており,現在は第3号を開発中です。
今後も様々な物を開発して行く予定です。
自立支援器具研究部会の大学側メンバー
工学部:小泉邦雄元教授,木下功士技術職員
芸術文化学部:丸谷芳正教授,河原雅典講師
医学部:中林美奈子准教授,新鞍真理子講師
人間発達科学部:鳥海清司准教授
コーディネータ:岩瀬洋一,永井嘉隆
トピックス
1月20 日(火)
,
21(水)に地域共同研究センター
その応用が紹介されました。県内企業から3名の受講
において大学院理工学研究部(地域連携推進機構 産
がありました。
学連携部門長)升方勝巳教授による「プラズマ技術を
用いた材料プロセス」と題する基盤技術研修-材料・
評価コース-が開講されました。プラズマ CVD やプ
ラズマエッチングなど、プラズマ固有の高い反応性を
利用した材料生成・加工技術は,半導体産業等におけ
る基盤技術として定着していますが,新たに高エネル
ギー密度のパルスプラズマを用いることにより、定常
プラズマでは実現できない特有の現象を活用する方法
が解説されました。通常のプラズマの性質と材料プロ
セスへの応用の外に,パルスプラズマの固有の性質と
6
2 月 6 日(金)17 時 30 分から平成 20 年度第 6
る「漢方薬の臨床効果における生薬の品質の影響につ
回イブニング技術交流サロンがパレブラン高志会館(富
いて」と題する話題提供がありました。前者では高等
山市千歳町)で開催されました。和漢医薬学総合研究
植物が産生する有用天然物の生合成酵素をコードした
所 黒崎文也准教授による「高等植物の細胞内情報伝達
遺伝子群の転写活性を人為的に制御し,高いレベルに
系の操作と多機能型ポリケタイド合成酵素の誘導」
,大
維持して,その生産性を上昇させるために,情報伝達
学院医学薬学研究部(医学系)柴原直利客員教授によ
関連遺伝子のクローニング,機能解析,組み換え植物
る話題提供がありました。紹介された大学有特許は貝
毒,きのこ毒等の神経性生物毒を簡便,迅速かつ感度
よく検出する方法の提案で,培養細胞,測定試薬をキッ
ト化して安価に提供する技術の提案でした。内容の斬
新さから参加者から国内特許だけてなく,海外特許の
取得も必要ではないかとの意見が出されました。
また,提供された後2者からの話題では,地域看護
活動として,後期高齢者の『閉じこもり』調査や高齢
者の移動動作に対する困難感の調査ならびに 30 歳代
の作成を解説されました。このような操作により植物
細胞内に誘導される生合成酵素のうち,天然物の骨格
を一挙に合成する「多機能型ポリケタイド合成酵素」
の有用性が紹介されました。後者では臨床において頻
用される生薬のうち,芍薬について起源の異なるボン
テン芍薬,洋種芍薬,中国産赤芍を取り上げ,その抗
酸化能,臨床的効果について検討した結果を示し,生
薬の品質は科学的に評価されるべきであることの指摘
がなされました。また,高等植物の多量のゲノムが持
つ潜在的な環境適応能力に驚嘆の声が寄せられました。
本サロンには 24 名の参加がありました。その後の交
流会でも楽しくて有意義な意見交換が活発に行われま
した。
4 月 10( 金 )16 時 00 分から平 成 21 年 度 第 1
回イブニング技術交流サロンがカナルパークホテル富
前後の男性勤労者や育児期の母親に見られる抑うつ症
状の実態について日頃気に掛かかる事柄について示唆
に富む話がありました。また,現在,企業と共同研究
で取り組んでいる自立支援型歩行器具の展示 , 試乗の
機会が設けられ,さまざまな感想,意見が寄せられま
した。一方,小熊教授からは,機械構造物の破壊原因
の約 80%が疲労破壊に由来するものであり,近年の
高強度鋼の破壊は鋼材の精製技術の向上から従来の表
面起点型破壊から微細介在物の応力集中に起因する内
部起点型破壊による高サイクル疲労破壊が現われるよ
うになり,その特徴と構造物の非破壊検査の重要性が
説かれました。この現象のその場検出法の 1 つにアコー
スティックエミッションの適用が有望視され,関連す
る研究の一端が紹介されました。このサロンには 23
名の参加がありました。
山(富山市牛島町)で開催されました。本技術交流サ
ロンに今年度から新たに盛り込まれた大学有特許の紹
介には大学院理工学研究部篠原寛明教授による「検体
の毒物検出法」
(特願 2008-265662)が選ばれま
した。その後,大学院医学薬学研究部中林美奈子准教
授による「地域看護活動の知恵とモノづくりの融合」
,
大学院理工学研究部小熊規泰教授による「構造部材の
新たな疲労現象の解明と破壊検知への取組み」と題す
3月 25 日(水)13 時 30 分より本学黒田講堂会
修了者には修了証及び「工学準修士」の称号が授与さ
議室において,本学と富山工業高等専門学校が共催し
れました。そして,本学西頭德三学長と富山工業高等
た文部科学省委託事業である働きながら学ぶ先導的技
専門学校米田政明校長から,はなむけの言葉がありま
術者育成事業「プロフェッショナルエンジニアコース」
した。
の受講生に対し,修了式を実施しました。平成 20 年
引き続き,同所において経済産業省委託事業である
度は 18 名の正規修了者と数名の単位履修者があり,
キャリアエンジニアによる社会貢献・人材育成事業に
7
よる「インダストリアルエンジニアコース」の企業講
元YKK副社長北野芳則氏による「次世代技術者育成
師による研修講演会が開催されました。主な参加者は
による富山の産業技術力強化について」と題する講演
講義を担当して戴く約 50 名の企業キャリアエンジニ
がありました。
アの方々でした。本学理事副学長鏡森定信教授及びこ
の事業の主催者である中部経済産業局地域経済部産業
人材育成課長瀬賀和也氏の挨拶及び本省産業技術環境
局大学連携推進課産業技術企画調査官二タ村森氏によ
る「産業連携人材育成パートナーシップ事業の概要に
ついて」と題する講演があり,次いで本学経済学部内
田康郎教授の「産業戦略とイノベーションの収益化」
,
北陸銀行取締役専務執行役員羽岡秀晃氏による「銀行
員の見た経済環境と地域と企業~金融の現場から」
,又,
今後の主な行事
行 事
第 2 回イブニング
技術交流サロン*
コラボ フェスタ 2009
第 3 回イブニング
技術交流サロン*
場 所
カナルパークホテル富山
(富山市牛島町 11-1)
カナルパークホテル富山
(富山市牛島町 11-1)
カナルパークホテル富山
(富山市牛島町 11-1)
開 催 日 時
内 容
6 月 5 日(金)
16 時 00 分~ 18 時 00 分
・大学有特許の紹介
・「地球環境,それとも…」
大学院理工学研究部(理学系)准教授
青木真一
・「企業の不祥事と自己統制の難しさ
-不正を告発したオリンパス社員の事例を
通じた心理分析-」
経済学部 経営法学科 教授 立石孝夫
7 月 7 日(火)
13 時 00 分~ 19 時 00 分
・特別講演会
「夢の実現 —ものづくりは人づくり—」
㈱アオキ 代表取締役社長 青木豊彦氏
・産学連携出会いの場
(口頭発表,ポスター展示)
・学生による研究夢プランコンテスト
・生涯学習シンポジウム
「多様な世代が学びあう社会を目指して」
・地域づくり座談会
「地域再生塾『高度差 4000』推進への
地域連携のあり方」
・地域健康保健シンポジウム
「健康社会の創成と地域再生」
・富山大学博物館
・情報交換会
8 月 7 日(金)
16 時 00 分~ 18 時 00 分
・大学有特許の紹介
・「細工蒲鉾のデザインの変容」
芸術文化学部 准教授 大熊敏之
・「富山の気候・文化に適した省エネルギー
住宅とは」
芸術文化学部 准教授 堀 祐治
*参加には http://www.ccr.u-toyama.ac.jp/ にある「お知らせ」をご覧戴き,事前申込が必要です。
8
共同研究の実施状況
全学の過去4年間の共同研究の受入れ実績の推移を
しばしば指摘されて来ていますが,文科系学部の取組
下図に示します。受入件数はこの4年間,年度を追う
みに一層の工夫と努力が必要といえます。医薬系以外
ごとに着実に増加してきています。この傾向は地域共
の分野別共同研究の実施状況を見ますと,分類法にも
同研究センターが創設されて以来変わらず,平成 20
依りますが,ここで採用した分類による分野別共同研
年度は 185 件に達しました。共同研究費の総額につい
究の実施状況は特に偏りは明確ではなく,ほぼ満遍な
ては年度毎に多少の出入りはありましたが,これも全
く各分野で実施されているといえます。各学部に所属
体的に増加で推移しています。平成 20 年度は後半に
する教員1人当たりの共同研究件数と研究費について
なり,米国発の世界的経済不況の影響で,急激な景気
も比較しました。件数,金額共に工学部が先行してい
後退に陥りましたが,年間を通して見ますと,総額が
ます。また,共同研究の相手企業の所在地を比較しま
14,091 万円に達し,大きな伸びを示しました。
すと,共同研究の相手企業としては必ずしも地域に限
本学の平成 20 年度の共同研究の取り組み状況を理
定されておらず,中部圏以外の地域からの企業が 45%
解するため,学部別の実施状況,共同研究の規模の実態,
に達しており,この傾向は平成 20 年度に限ってのこ
医薬系以外の分野別共同研究の実施状況を解析してみ
とではありません。県内ではやはり,富山市内が多く
ました。共同研究の取組みでは工学部が圧倒的に多く,
21%に達しています。今後は古くから産業基盤のある
件数で 45%,金額でも 47%に達しています。次いで
呉西地区の企業との連携をもっと密にして行きたいと
理学部と医学部がこれに続きます。なお,これまでも
考えています。
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受託研究の実施状況
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受託研究は主として国や地方自治体あるいは独立行
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政法人機関等からの委託あるいは再委託を受けて実施
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り,平成 20 年度は件数で 111 件,研究費の総額で
57,495 万円に達しました。受託研究の特徴は医学部
されることが多く,大学が主体的に受託研究費の獲得
が圧倒的に多く,件数で全学の 27%,研究費の総額で
に向けて活動することが難しい面があります。
同 51%に達します。総じて1件当たりの研究費は高額
受託研究の平成 17 年度から 20 年度における実施
になっています。各学部に所属する教員1人当りの受
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状況の推移を下図に示します。受託研究においても,
託研究件数と研究費についても比較しました。いずれ
年度を追うごとに件数,金額共に順調に伸びて来てお
も医学部,薬学部が群を抜いています。
11
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リサイクル適正 A この印刷物は、印刷用の紙へリサイクルできます。
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