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放射性物質含有水の処理についての見解 (PDF,244KB

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放射性物質含有水の処理についての見解 (PDF,244KB
放射性物質含有水の処理についての見解
合同会社ナチュラルウォーター
平成 23 年 5 月 11 日
■放射性物質含有水の処理についての見解
1、はじめに
水の放射能汚染低減は、原発事故により排出された処理水に含まれる放射性物質をいかに効率
良く捕捉し、安全な水に処理して外部排出するか、という技術命題です。 一般に論じられる放射
能被害は放射性物質の摂取により体内で電離性放射が生じて、細胞内の遺伝子等に傷害を与え
るのが被爆被害であり、その物質から放出される α 線(粒子線)・β 線(粒子線)・γ 線(電磁波)が
主な被爆原因です。 しかし、α 線、β 線を遮蔽する事は容易で、放射性物質摂取に関しては γ 線
の遮蔽が重要となります。 すなわち原発事故により排出された放射性物質を、先ず水で捕捉し
た上で、次に閉じ込める作業によって如何に膨大な量の放射能汚染水を処理するかと言う事が
論点の主題となります。 透過性の高い γ 線は鉛・鉄・コンクリート等で遮蔽出来るので、まずは放
射能汚染水処理設備全体をこれらの遮蔽材で覆う事が必須条件となります。
2、処理命題の認識
処理対象となる放射性物質の主体は、ヨウ素131・セシウム134・セシウム137です。 それ以
外には、コバルト60・テクネチウム99m・ストロンチウム90等があります。 実際の水処理技術に
於いて溶解性汚染物質や懸濁性汚染物質の100%除去は物理的には不可能であり、主たる命
題は生体摂取・生体接触で安全なレベルまで汚染物質を低減する事を意味します。
3、アプローチ
本水処理技術において、重要な命題は水中または水溶中の放射性物質の低減ですが、通常の
水処理における特定物質の低減手段としては、吸着・凝集・沈殿・濾過・化合・分解・酸化・還元等
が考えられます。 よって、個々の手段で放射性物質に対する効能を検証し、その中から有効な
手段を組み合わせた総合効果としてどれだけ、又はどこまで放射性物質を低減出来る処理フロー
が可能になるかを構築するのが今回の研究のメインテーマと考えております。
(1)吸着
最も期待出来る手段です。 吸着によって捕捉出来る放射線物質が多い程効果が期待でき
ます。 吸着材でまず挙げられるのは活性炭です。 活性炭の吸着能力を測定するのには、
定量のヨウ素含有試液を透過させた時の吸着能力と言い換えられます。 放射性物質に対し
最も捕捉可能な活性炭を見いだす事で、より効率が高い低減処理が可能にとなります。 活
性炭はヨウ素同位体類を効果的に吸着する性質を持っていますが、その一方、セシウム系放
射性物質に対しても吸着能力が有ることが検証されています。 その他の放射性物質に関し
ても、放射性物質の分子構造が大きいほど吸着量が多くなる事になります。 よって、活性炭
のみならず、麦飯石・ゼオライト等の吸着性物質も研究対象にすることが重要であり、低減処
理の根幹と言えるものです。 ただし言うまでもありませんが、捕捉した放射性物質を如何に
処理するかが重要な命題となります。 できる限り放射性物質を凝縮して密閉遮蔽保存する
のかが二次命題と言えます。
(2)凝集
放射性物質が汚染水中に比較的大きな懸濁物質として存在する場合に有効と思われます。
それらは通常砂濾過で捕捉出来ますが、砂濾過はその粒子径が2μ m以下は捕捉出来ない
ので、粒子径が2μ m以上に凝集出来る手段を見つける事が重要となります。
(3)沈殿
凝集と同じような手段ですが、放射性物質に対して効果があるとは思えません。 ただ、汚染
土壌等としての除去効果は期待できます。
(4)濾過
凝集・沈殿により懸濁物質を粒径増大させて、砂などの濾材で捕捉する事を意味します。 ま
た濾過には二つの手段があり、供給原水を100%透過させて懸濁物質を捕捉する通常の濾
過(Filtration)と逆浸透膜のような分離膜(Separation)方式があります。 前者は懸濁物質
の粒径が2μ m以上に対し適した捕捉手段で、後者は分子の大きさで濾過する技術です。
よってこれらの濾過技術を複合的に応用することで、理論的には比較的分子の大きい放射性
物質は捕捉できる事になります。
(5)化合・分解・酸化・還元
未知な世界です。 基本的に放射性物質は自然界の影響を受けずに、その固有の半減期を
有し、放射線を放出します。 しかし、個々の放射性物質は特定の環境では、化合・分解・酸
化・還元という化学反応を生じます。 そういった意味で化学処理は将来的に有効な手段と成
り得ると考えられます。
4、オゾン処理(弊社固有技術を含む)
水溶中のオゾンは複雑な促進酸化反応を生じ、多くの物質を酸化・分解します。 放射性物質に
対する効能は不明ではありますが、何らかの反応があると考えられます。 つまり、地球のオゾン
層が宇宙からの放射線をブロックする性質から鑑みると、何らかの効果はあるものと考えられま
す。 オゾン処理が放射性物質に対しどのような反応があるのかを見極める事も重要なテーマと
考えます。
5、考察
このように現在確認されている技術において、水の中に含まれる放射性物質の捕捉は可能であ
ると思われます。 ただし 捕捉した放射性物質をどれだけコンパクトに濃縮して、地中深く埋没さ
せる事、あるいは宇宙投棄するかなどの最終処理問題をどう対処すべきかが重要です。しかし今
回は水処理技術の域を逸脱する事なので、ここではあえて論じない事とします。
6、システム処理の提案
以上のような事柄を考察すれば、水処理技術に求められるのは、如何に効率良く放射性物質を
捕捉するかがキーワードと言えるでしょう。 一考として、逆浸透膜だけでほぼ完全に放射性物質
を捕捉できるのではないかとも思われますが、逆浸透膜法は完全透過ではなく、基本的には分離
処理なので透過しないで濃縮された水をどう処理するかが新たな命題となります。 極論となりま
すが、水処理技術によって、わずかな水分で極限まで放射性物質を濃縮した状態まで到達させる
事ができるか、が重要な点であります。 一つの処理に付加が集中すると言う事は、膨大な汚染
水を処理するには余りにも負荷が大きすぎて、効率的とは言えません。 つまり、効率の良い処理
(多段処理)を行う事によって時間あたりの処理量を増やす結果が得られるものと確信していま
す。
そこで、これら全ての条件を考察した上で提唱できるシステム設計を次項に提言いたします。
7、システムフロー
汚染原水→オゾン処理→砂濾過→オゾン処理→活性炭濾過吸着→ゼオライト吸着→絶対2μ m
フィルター透過処理→(必要であれば 中空糸膜透過処理)→逆浸透膜処理
これを放射線遮蔽環境で行えば、砂濾過・活性炭およびゼオライト吸着工程では、流系の差圧管
理で、逆洗による活性化が可能となり、フィルターや逆浸透膜工程では、カートリッジの交換処理
において、 カートリッジの交換に人を介する事無く自動交換処理できるシステムを具現すれば良
いと言う事になります。
オゾンによる酸化還元現象を確認するためには、まずは原水の状況(水質)を把握することが必
須事項となります。従って、現段階で明確な結論を論ずる訳にはまいりませんが次の点で効果に
期待が持てると確信しております。つまり、オゾンの酸化還元現象は、それが直接的ではなくても、
水溶中の溶解鉄・マンガンを酸化して、水酸化物として懸濁物質となった段階で、ある程度の放射
性物質を包含する効果があると考えられるからです。 それを捕捉するのが、1段目の砂濾過で
す。
次にヨウ素131を吸着できるのが活性炭です。 しかし、オゾンと反応時間が必要な物質がある
ため、その前に再度オゾン注入して、その効果の是非を確認することが必要です。
その次のゼオライト吸着はセシウム類の吸着です。 吸着する能力は既に認められていますが、
効率まではハッキリとしていません。 しかし、その捕捉能力は注目すべきであります。
それらを経て、最終的に逆浸透膜処理された水は、恐らく飲用にも適した安全な水になると考えら
れます。 しかし、飲用には安全性が優先されるため、現段階では保証できるものではありません
が、今後、安全性が確認できる処理フローについても研究を重ねてまいります。
なお、水処理分野においてオゾンは一般的に活用されていますが、多段活用についてはオゾンの
酸化効果をより一層高めるといった我が方の海水淡水化技術におけるシステム特許とノウハウに
基づくものであります。
8、最後に
今回の提言は必ずしも決定的な回答になっているものではありませんが、当グループが今日まで
に積み重ねた水処理分野に関する最大限の見地に基づくものであります。同時に本提言に関す
る公的機関の御意見並びに実証テストに関するサポートを期待するものであります。
技術担当 酒井
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