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Ⅰ.ゴールキーパー育成の問題点

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Ⅰ.ゴールキーパー育成の問題点
Ⅰ.ゴールキーパー育成の問題点
(1)環境
日本においてゴールキーパーを取り巻く環境は、その育成にとって十分なものとはいえません。まず、
トレーニング環境ということに目を向けると、今の日本の現状では日常的に芝でプレーできる選手は限ら
れています。実際、中学・高校では堅い土のグランドで練習している選手がほとんどでしょう。このよう
な環境の中では、選手は「痛い、怖い、辛い」といった、ネガティブな気持ちを抱いてしまいやすいもの
です。
指導者がここで注意しなければならないことは、ゴールキーパーに恐怖心を与えないということです。
そのためには、砂場で行う、マットを用いる、肘や膝のサポーターなどの用具を着用させるなどの配慮が
必要です。
また、段階的な指導(漸進性)を行うことも忘れてはいけない重要な要素です。
(2)放置
サッカーのトレーニングの現場で、選手を「放置」していることも、指導者の大きな問題のひとつです。
練習が始まったらゴールキーパーはフィールドプレーヤーと別で練習を行うことが普通のことで、その
練習も選手に任せきりになっているチームが多いと思われます。そのような中で選手のレベルは上がって
いくと言えるでしょうか。チームの指導者はフィールドプレーヤーとしての経験しかなく、指導できない
と考えている方が少なくないと思います。しかし、それでもすべて選手に任せきりという現状は選手にと
って良いよは言えません。
ただ 経験がない ということで終わるのではなく、少しの発想の転換をしてみて下さい。フィールドプ
レーヤーの守備におけるマークの原則は、ゴールキーパーのポジショニング、プレーの原則と共通します。
たとえば、
「相手とゴールキーパーを結んだラインを意識」、これはゴールキーパーにおける「ゴール中
央とボールを結んだラインを意識する」と共通していますし、「裏をとられず、かつインターセプトも狙
える位置」というのは、「ゴールキーパーが頭越しにシュートされてもゴールを守れることができ、なお
かつ味方ディフェンスの背後をカバーできる位置どりをする」ということに共通しています。さらに、マ
ークの原則におけるアプローチについても、「ボールの移動中にできるだけ寄せる」ということは、ゴー
ルキーパーが相手スルーパスに対して行うときも同様のことがいえます。ゴールキーパーがフィールドプ
レーヤーの守備の原則を学ぶトレーニングをすることは、そのままゴールキーパーに必要な能力の向上に
つながるのです。
ですから、ゴールキーパーのプレーそのものを指導するときにおいても、フィールドプレーヤーのこう
した共通点を指導者が十分に理解することができれば、たとえゴールキーパーとしての経験がなくとも、
多くのことをゴールキーパーに対して指導できるようになります。
(3)ゴールキーパーの指導の欠落
ゴールキーパーも参加する5対5や8対8などのスモールサイドゲーム、つまりはゲーム形式のトレー
ニングがさまざまな指導現場で取り入れられ、指導者がフィールドプレーヤーへ戦術的指導を行っている
姿はよく見られます。しかし、ある局面においてのゴールキーパーのポジショニング、最終ラインの裏に
できるスペースへのカバーリング、攻撃への参加など、ゴールキーパーへの戦術的な指導は、あまり行わ
れていないのが現状です。
ゴールキーパーの育成においても、判断を伴ったプレーの実践、そしてその評価・分析、修正のための
指導は非常に大切なことではないでしょうか。
(4)ゴールキーパーがフィールドプレーヤーのトレーニングに参加していない
今の日本の現状を考えると、ゴールキーパーがフィールドプレーヤーの練習に参加する機会が少なすぎ
ると思われます。
すでに述べてきましたようにゴールキーパーの育成のために、ユース年代までは、まずフィールドプレ
ーヤーと同じトレーニングを十分にしてサッカー選手としての基本を身に付けさせることを優先させま
す。それが、ゴールキーパー育成のためにとても重要になってきます。
(5)トレーニングの発展性
現在、ビデオや海外からの情報など、たくさんの練習メニューを知ることができます。指導者の皆さん
もゴールキーパーの練習を行うために、これらの情報源からたくさんの練習メニューを取り入れているこ
とと思います。
このとき、これらの練習メニューを選手のレベルやトレーニングの目的をあまり考慮せず行ってはいな
いでしょうか。たとえば、技術を修得する年代においては、プロがやっているような連続でダイビングを
行うといった練習は最適ではありません。
ケガを起こす可能性も低くはありません。技術を修得する目的であるならば、その技術を単独で抜き出
して、トレーニングすることがもっとも効果的であるといえるのです。ただ見たことのあるトレーニング
を行わせるのではなく、トレーニングの目的、選手のレベルなどを考慮して、練習メニューを設定する必
要があります。
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