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Title 日本における類似難民の保護の課題と展望(1)

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Title 日本における類似難民の保護の課題と展望(1)
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日本における類似難民の保護の課題と展望(1): 平等原
則アプローチとEU Qualifi cation Directive の2011年改正か
らの示唆
神坂, 仁美
国際公共政策研究. 18(2) P.139-P.156
2014-03
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/11094/51325
DOI
Rights
Osaka University
国際公共政策研究 第18巻第 2 号
寄稿論文
139
日本における類似難民の保護の課題と展望(1)
― 平等原則アプローチと EU Qualification Directive の2011年改正からの示唆 ―
Problems with, and Future Prospects for,
Complementary Protection in Japan
An Insight from the Principle of the Non-Discrimination Approach and
the Revised 2011 EU Qualification Directive
*
神坂仁美
Hitomi KOSAKA*
Abstract
There is a strong trend of adopting “complementary protection” as part of refugee protection policies in
the world. Japan also grants so-called “status of humanitarian consideration” to those who fall outside the
refugee definition under the Refugee Convention. In this paper, however, the author will argue that there is
still much room for improvement in the complementary protection in Japan. By introducing international
discussion on the “protection gap” and the impact of the 2011 revision of the European Union
Qualification Directive, it will conclude that Japan must adopt a more advanced complementary
protection policy to comply with the principle of non-discrimination.
キーワード:補完的保護、平等原則、人道配慮による特別在留許可
Keywords : complementary protection, principle of non-discrimination,
Special permission to stay in Japan based on humanitarian grounds
* 大阪大学大学院国際公共政策研究科博士前期課程修了生
⑩
140
国際公共政策研究
第18巻第 2 号
序章
1 .問題の背景
現在、難民問題へ対処する制度として、難民条約のもとで定義される難民(以下、条約難民)を
1)
受け入れる制度に加え、条約難民の定義 に当てはまらない者に対しても保護を提供する法制度や
政策が、世界中のあらゆる地域及び諸国でとられている(UNHCR 2000: 1)
。難民条約上の難民概念
には該当しないが、国際条約により国籍国(無国籍者の場合は常居所を有していた国)へ送還する
ことを禁じられており、条約難民と同様の保護を必要とする者を、本稿では「類似難民」と呼ぶ。
国際的には、このような者の保護は「補完的保護(complementary protection)」と呼ばれている。ア
フリカ及びラテンアメリカでは、多くの紛争が生じ、大量の人々が国外に流出したという歴史的背
2)
3)
景 を反映し、地域的な条約 により、国籍国において生じている「無差別的な脅威から逃れた者」
にも難民の定義を拡大している(UNHCR 2007a: 4; OAU 条約 1 条A項(2); カルタヘナ宣言 III 条
4)
」というカテゴリーを
(3)
)
。ヨーロッパでは、難民とは別に、「補完的保護 (subsidiary protection)
設け、難民同様の保護を提供するよう欧州連合加盟国に義務付ける制度が構築されている。また、
5)
6)
国レベルでも、カナダ、アメリカ 、ニュージーランド、オーストラリア などの諸国で、難民条約
を補完する形で、類似難民を保護する法制度が発達してきている。我が国日本においても、後述の
ように、類似難民の保護であると見受けられる制度が存在する。保護の根拠、制度のあり方は様々
であるが、現在の世界情勢に対応し、各国が条約難民以外の者に対しても、保護が必要な場合には、
何らかの形で庇護していることは明確である。
2 .問題の所在
日本における類似難民の保護は、人道配慮による在留特別許可の付与に特徴づけられている。法
務省は、その難民認定者数等の報道発表資料において、庇護数として、条約難民と認定された者に
1)条約難民は、1951年難民条約及び1967年議定書により、以下のように定義される。
人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという
十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないもの又は
そのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの( 1 条A項(2))。
2)アフリカの年と言われる1960年前後に、ヨーロッパ諸国からの脱植民地化に伴い多くの紛争が起こり、大量の人々の移動が生じ
た。また、ラテンアメリカにおいても、1980年前後に「中央アメリカの多くの国での戦争、国内紛争、武力衝突、政変の激変」
により、人々の大量の移動が余儀なくされた(UNHCR 2007a: 5)。
3)難民の大量発生地域であるアフリカでは、
「1969 年のアフリカにおける難民問題の特殊な側面を規定するアフリカ統一機構(OAU)
条約」
(以下、OAU 難民条約)が、また、ラテンアメリカ地域では、1984年の難民に関するカルタヘナ宣言が、難民条約の難民
の定義よりもより広範な定義をしている。
4)欧州における subsidiary protection と、より一般的に使用する complementary protection という用語との間で、日本語における訳し
分けは、通常、特になされない。したがって、本稿では、ヨーロッパにおける類似難民の保護を国際的な文脈での「補完的保護」
と区別するために、「補完的保護(subsidiary protection)」、または「欧州連合における補完的保護」と表記する。
5)カナダでは、2001年に補完的保護に関する法律が採択(2002年に施行)された(UNHCR 2012: 1)。アメリカにも、補完的保護の
メカニズムが存在する(McAdam 2010: n.pag.)。
6)ニュージーランドでは、類似難民も、条約難民と同様の手続きを通じて保護の申請を行う。オーストラリアでは、「補完的保護
法案(complementary protection bill)」が導入され、2012年 3 月に発効した(DIAC 2012: 1)。
141
日本における類似難民の保護の課題と展望(1)
7)
加え、
「人道的な配慮が必要なものとして特に在留を認めた者」を扱っている 。難民認定手続きの
中で「人道的な配慮が必要」と判断された者の数及び事例に関しては公表されていないが、現代の
世界情勢を考慮すれば、また、UNHCR(2005a: 5)によれば、人道配慮により在留特別許可を得た
者の中に、類似難民が含まれていることはまず間違いないと言える。
しかし、後述のように、問題は、類似難民の保護の詳細がほとんど明らかにされておらず、制度
としても未発達の状態にあることである。どのような者が人道配慮により日本で保護されるのか、
これまでのところその基準や実例は明確にはされていない。さらに、本稿で「類似」と表するよう
に、条約難民と同様の状況下にある者に対して、その保護が決して十分ではなく、条約難民と類似
難民との間で、合理的に正当化することのできない取扱いの差異が生じている。中でも最も重大な
取扱いの差異が、第 3 章で紹介する生活保護受給資格の有無である。日本が難民保護において、世
界の状況に対応し、条約難民の保護に加えて補完的に類似難民を保護していることは賞賛できるが、
制度上及び実行上、多くの点が不明確であり、改善の余地が多く残されている。
3 .先行研究
しかしながら、日本の文脈における類似難民の保護に特化した研究は、これまでのところ見られ
ない。日本における難民保護制度全般に関しては、これまで、難民条約の解釈、難民認定手続き、
庇護希望者(asylum seekers)の収容、インドシナ難民の日本での統合、第 3 国定住などの観点から、
8)
多くの研究が蓄積されてきた 。また、国際的文脈における補完的保護についても、学術的議論、及
9)
びいくつかの地域で実行されている補完的保護制度の問題点の議論がなされてきた 。しかし、日本
10)
における類似難民の保護に関し、実務上その問題点が指摘されることはあるが 、学術的に当該問題
を考察したものはこれまでに見られない。
4 .本稿の目的及び構成
そこで、本稿の目的は、日本における類似難民の保護の問題点を明らかにし、日本の法的義務の
観点から考察、及び、欧州連合における補完的保護(subsidiary protection)の制度改革の背景の分析
から、一定の政策的示唆を与えることである。第 1 章で、条約難民の受けられる保護と、類似難民
のそれとの間に存在する「プロテクション・ギャップ(protection gap)」が、国際法上正当化される
か否かに関し、先行研究の中でも核となる McAdam、Hathaway、Pobjoy の議論を紹介する。第 2 章
では、実際にプロテクション・ギャップが小さくされた現実の政策の例として、欧州連合における
補完的保護(subsidiary protection)制度の概要の紹介、及び、2011年の法律改正の背景の分析を通
7)たとえば、法務省(2013c)を参照のこと。
8)たとえば、小泉(2010)、滝澤(2011)、本間(1990; 2005)、村上(2006)、渡邉ほか(2010)。
9)たとえば、ECRE(2004)、Goodwin-Gill and McAdam(2007)、Gorlick(1999)、Hathaway(2010)、Karlsen(2009)、McAdam(2005;
2007; 2010; 2011)、Pobjoy(2010)、Storey(2008)、UNHCR(2002; 2005c; 2005e; 2007b; 2012)。
10)たとえば、全国難民弁護団連絡会議は、2010年 4 月に、人道配慮による在留特別許可を有するものにも生活保護の受給資格を与
えるよう申入れをしている(全国難民弁護団連絡会議 2010)。
142
国際公共政策研究
第18巻第 2 号
じ、日本における類似難民保護への政策的示唆の可能性を模索する。第 3 章
11)
では、日本における
類似難民と条約難民の保護の現状を紹介及び比較し、第 1 章での議論に基づき、日本の難民保護に
見られるプロテクション・ギャップを法的に正当化できるか否かについて検討する。さらに同章で、
第 2 章で紹介する欧州連合における補完的保護(subsidiary protection)を参考に、類似難民というカ
テゴリーを明確にした難民保護制度を構築するべきであるという政策的示唆を加える。結論として、
日本における類似難民保護には改善の余地が残されており、より明確で国際的基準に見合った制度
構築をしていく必要があると括る。
第 1 章 補完的保護の議論:プロテクション・ギャップ
条約難民の定義には当てはまらないが、国際条約により国籍国(無国籍者の場合は常居所を有し
ていた国)へ送還することを禁じられており、条約難民と同様の保護を必要とする者の保護に関し
12)
ては、これまで学術的に多くの研究及び議論がなされてきた 。本稿で言うところの「類似難民の保
護」は、国際的には「補完的保護(complementary protection)」と呼ばれ、国連高等難民弁務官事務
所(UNHCR)のような難民を支援する機関においても、そのような保護を要請している。特に学術
上議論の的となっているのが、補完的保護の受益者の享受する権利・利益についてである。条約難
民に関しては、具体的にどのような権利を締約国が保障するべきか、1951年難民条約及び1967年議
13)
定書により明確に示された 。しかし、補完的保護の受益者の保護に関しては、国際的な条約はな
く、各地域または各国の法政策または行政に委ねられている(UNHCR 2005b: 1)
。
本章では、条約難民と類似難民との権利・利益における差、すなわち、プロテクション・ギャッ
プを、人権法上の平等原則を用いてその合法性を問うアプローチ
14)
を紹介し、日本における類似難
民のプロテクション・ギャップへの応用の可能性を示唆する。まず、第 1 節で、国際的文脈におい
て類似難民の保護を意味する補完的保護の概念及び国際法上の基本原則を整理する。第 2 節におい
て、条約難民と補完的保護受益者との間のプロテクション・ギャップの合法性に関して、主要な 3
人(McAdam、Hathaway、及び Pobjoy)の法的議論、特に、人権法上の平等原則に基づきプロテク
ション・ギャップの国際人権条約違反を議論する Pobjoy の議論に着目し、紹介する。最後に、日本
における類似難民の保護への平等原則アプローチの応用の可能性を示唆する。小括として、Pobjoy
の平等原則アプローチが、プロテクション・ギャップの違法性を示す上で法的に最も妥当なアプロ
ーチであり、日本における類似難民保護の展望を示す上で有用なアプローチであると示唆する。
11)次号参照のこと。
12)たとえば、ECRE(2004)、Goodwin-Gill and McAdam(2007)、Gorlick(1999)Hathaway(2010)、Karlsen(2009)、McAdam(2005;
2007; 2010; 2011)、Pobjoy(2010)、Storey(2008)、UNHCR(2002; 2005c; 2005e; 2007b; 2012)。
13)実質的な権利として、職業に従事する権利(17-19条)
、福祉に対する権利(20条(配給)、21条(住居)、22条(公の教育)
、23
条(公的扶助)、24条(労働法制及び社会保障))
、行政上の措置に関する権利(25条(行政上の援助)、26条(移動の自由)、27
条(身分証明書)、28条(旅行証明書))などがある。
14)本稿では、このようなアプローチを「平等原則アプローチ」と呼ぶこととする。
143
日本における類似難民の保護の課題と展望(1)
1 .基本的事項
1 .1 補完的保護の定義
国際的な文脈において、
「補完的保護」という用語を明確に定義することは容易ではない。現段階
で、補完的保護という言葉を定義または規定した国際条約は存在せず、国家の実行においても単一
の意味を有しているわけではない(McAdam 2007: 40)
。たとえば、アフリカ及びラテンアメリカに
おいては、条約難民とは別に補完的保護というカテゴリーが設けられるかわりに、地域的取極めに
基づき、難民の定義そのものを拡大しており、その中には紛争などが原因で移動を強いられた者も
含まれる。他方、ヨーロッパにおいては、後述のように、国籍国に送り返されれば死刑判決及び死
刑判決の執行を受ける恐れのある者、という同地域の法政策を背景とした要素も、補完的保護
(subsidiary protection)の範疇に入っている。したがって、補完的保護の意味は、各国及び各地域に
おける法制度によって異なるのが現状である。
ただし、単一の定義が存在しない一方、 2 つの共通の要素を見出すことができる。まず、1951年
難民条約に定義される条約難民としての保護を受けないという要素である(UNHCR 2000: 1; 2005d:
viii; 2012: 1; McAdam 2007; Pobjoy 2010: 182)。第 1 の要素は、「補完的(complementary)」という用
語にも現れている。次に、紛争や重大な人権侵害等の様々な理由で、国籍国(無国籍者の場合は常
居所を有していた国)への返還が不可能である、または、望ましくないという要素である(UNHCR
2000: 1; 2012: 3)。第 2 の要素の背景にあるのが、国際法上のノン・ルフールマン(non-refoulement)
15)
の原則
である(UNHCR 2012: 3)。以上の 2 点については、補完的保護という概念の中枢をなす要
素として広く受け入れられている(Pobjoy 2010: 182)
。
1 .2 ノン・ルフールマンの原則
ノン・ルフールマンの原則は、1951年の難民条約だけでなく、他の国際人権諸条約にも見られ
16)
「締約国は、難民を、いかなる方法によ
る 。1951年難民条約33条 1 項(追放及び送還の禁止)は、
っても、人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見のため
のその生命または自由が脅威にさらされる恐れのある領域の国境へ追放し又は送還してはならない」
と規定している。1984年に採択された「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱
い又は刑罰に関する条約」
(以下、拷問等禁止条約)においても、ノン・ルフールマンの原則は明記
されている。同条約は 3 条で、
「拷問が行われるおそれがあると信じるに足りる実質的な根拠がある
他の国へ追放し、送還し又は引き渡」すことを禁止している。さらに、明文では追放及び送還を禁
止していない人権条約にも、ノン・ルフールマンの義務が含まれるとされる。「市民的及び政治的権
17)
18)
「児童の権利条約」
(1989
利に関する国際規約」
(1966年採択)
(以下、自由権規約)6 条 及び 7 条 、
15)日本語では、「追放・送還禁止の原則」とも訳される(杉原ほか 2007: 239)。
16)ただし、ノン・ルフールマン原則の正確な範囲に関しては未だ決着がついておらず、議論が続いている。詳細は、Pobjoy(2010:
脚注42)を参照のこと。
17)
「すべての人間は、生命に対する固有の権利を有する。この権利は、法律によって保護される。何人も、恣意的にその生命を奪
われない」(自由権規約 6 条 1 項)。
18)
「何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける〔degrading〕取扱い若しくは刑罰を受けない」
(自由権規約 7 条
144
国際公共政策研究
年採択) 6 条
19)
第18巻第 2 号
20)
及び37条 、
「人権及び基本的自由の保護のための条約」
(1950年署名)
(以下、ヨー
ロッパ人権条約) 3 条
21)
22)
にも、判例法及び履行監視機関の見解
に基づき、ノン・ルフールマンの
義務が含まれると解釈されている。
ただし、1951年難民条約のノン・ルフールマン原則と、その他の国際人権諸条約の同原則とでは、
保護の対象範囲が異なる。第 1 に、難民条約は難民の送還を禁止しているのに対し、他の人権諸条
約で対象としているのは、すべての者である。第 2 に、例外が認められるか否かが異なる。難民条
約上の同原則は、確かに「難民が重大な損害を受ける真の危険に直面する国への送還の義務」を締
約国に課しているが(ハサウェイ 2008: 26)
、一定の例外を認めている。すなわち、同条約33条 2 項
は、ある者が条約に定義する難民である場合であっても、
「国の安全にとって危険であると認めるに
足りる相当な理由がある」場合、または、重大犯罪による有罪判決が確定しており、
「当該締約国の
社会にとって危険な存在」となる場合には、同条 1 項の規定による利益を享受することができない、
と規定している。他方、1951年難民条約以外の国際人権諸条約では、利益衡量の許容されない絶対
的(absolute)且つ逸脱不可能(non-derogable)なノン・ルフールマンの義務が含まれているとされ
ている。拷問禁止の規定に絶対的なノン・ルフールマンの義務が含まれると最初に判決したのは、
ヨーロッパ人権裁判所(European Court of Human Rights)である。Ireland v. The United Kingdom 判
23)
決
において、同裁判所は、ヨーロッパ人権条約 3 条が、場合や理由のいかんを問わず制約を受け
ない絶対的禁止を義務付けていることを初めて認定した(Ireland v. The United Kingdom: para. 163; 戸
波ほか 2008: 131-132)
。その後、絶対的で逸脱不可能な同条約 3 条の規定に、ノン・ルフールマン
24)
の義務が含まれることが犯罪人引渡しに関する Soering v. The United Kingdom 判決
において初めて
25)
。ヨーロッパ人権条約
認定された (Soering v. The United Kingdom: paras. 81-91; 戸波ほか 2008: 132)
3 条(追放等の禁止)にかかる同裁判所のこれらの判決は、拷問等禁止委員会の判断、自由権規約
前段)
。
19)
「締約国は、すべての児童が生命に対する固有の権利を有することを認める」( 6 条 1 項)。
20)
「いかなる児童も、拷問または他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けないこと」(37条(a)
前段)
。
21)
「何人も、拷問または非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない」(ヨーロッパ人権条約 3 条)。
22)自由権規約人権委員会は、国家の一般的義務を定めた自由権規約 2 条にかかる一般的意見(31)において、 2 条の義務の中に
「領域内にある個人、及び、その管轄のもとにあるすべての個人」に対する権利の尊重及び確保だけではないとし、以下の義務
も含まれるとした。
移転が実行されることになる国もしくはある個人が結果的に移転させられる先の国において、規約第 6 条や 7 条に規定され
ているような回復し得ない危害が及ぶ真のリスクがあると信じうる十分な証拠があるとき、その者を本国に送還したり、国
外追放したり、もしくは領域から移転してはならない義務を必然的に伴う (HRC 2004: para. 12; 日本弁護士連合会 2013:
para. 12)
。
また、児童の権利委員会は、その一般的意見(6)において、児童の権利条約 6 条及び37条にノン・ルフールマンの義務が含ま
れるとの見解を示した(Committee on the Rights of the Child 2005: paras. 26-27; Pobjoy 2010: 191)。
23)Ireland v. The United Kingdom(Judgment)App No. 5310/71(18 January 1978).
24)Soering v. The United Kingdom(Judgment)App No. 14038/88(7 July 1989).
25)追放に関しても、3 条違反の認定こそなされなかったが、Cruz and Others v. Sweden 判決(Cruz Varas and Others v. Sweden(Judgment)
App No. 15576/89(20 March 1991))において、裁判所は 3 条の規定にノン・ルフールマンの義務が含まれるとしている(paras:
68-70 )
。ま た、同 じ く 追 放 に 関 し て、Cruz and Others v. Sweden 判 決 と 同 年 の Vilvarajah and Others v. The United Kingdom 判 決
(Vilvarajah and Others v. The United Kingdom(Judgment)App No. 13163/87; 13164/87; 13165/87; 13447/87; 13448/87(30 October
1991)
)
(paras: 102-103)も参照のこと。
日本における類似難民の保護の課題と展望(1)
26)
人権委員会の立場 、及び諸国の国内裁判所の判例
145
27)
に多大な影響を及ぼした(戸波ほか 2008: 127,
132)
。現在では、ヨーロッパ人権条約の拷問等禁止( 3 条)だけではなく、自由権規約 6 条及び 7
条においても、例外の許容されないノン・ルフールマンの義務が含まれると解釈されている。すな
わち、人権条約上のノン・ルフールマンの義務の方が、難民条約の同原則よりも保護対象範囲が広
いという特徴を持つ。
2 .プロテクション・ギャップに関する国際法上の議論
このように、ノン・ルフールマン原則は難民条約だけではなく、その他の主要な国際人権諸条約
において規定されている。しかしながら、難民条約においては条約上の難民の地位によりノン・ル
フールマン以外の権利を付与されるのに対し、補完的保護の受益者に関しては、そのような他の権
利が保障されていない(McAdam 2007: 199)。そこに、McAdam は条約難民と類似難民との間でプ
28)
。すなわち、条約難民と同様の状況
ロテクション・ギャップが生じていると議論する (2007: 201)
に置かれているにもかかわらず、類似難民の得られる権利・利益に関しては具体的なルールが存在
せず、十分な保護が受けられていないという状況が生じている。
確かに、国際人権諸条約
29)
は存在し、すべての人に対し人権を保障している。すなわち、類似難
民に特化したルールが存在しなくとも、一般の人権条約に基づき、最低限の権利は保障されるので
はないかという議論も可能である。しかしながら、国際人権諸条約上の権利の規定は非常に広範で、
且つ定義も明確になされていない(McAdam 2007: 202)
。そのため、条約上人権保障の「理論」と、
実際に締約国が権利保障を確保するという「現実」との間には、大きなギャップが存在している
(Hathaway 1991, cited in McAdam 2007: 202)
。つまり、人権諸条約が効力を有していたところで、実
際に類似難民が必要な保護を受けているとは限らないのである。
2 .1 McAdam(2007)の特別法アプローチ
このような、補完的保護に関するルールの欠如、及びより一般の国際人権諸条約の欠点を受け、
McAdam は、ノン・ルフールマン原則により送還が禁止されている者の状況の難民との類似性、及
び一般的人権条約に対する特別法(lex specialis)としての難民条約の機能に着目し、保護の根拠法
が異なるからといって、権利・利益に差異を設けることを法的に正当化できないという主張を展開
30)
。1951年難民条約
している (2007: 197-251)。McAdam の議論は、次の通りである(2007: 209-210)
は、難民について具体的な権利及び国家の義務を定めており、「適切な保護レジーム(appropriate
26)たとえば、Kindler v. Canada事件( Kindler v. Canada, Comm No. 470/1991, U.N. Doc. CCPR/C/48/D/470/1991(11 November 1993)
)、
Charles Chitat Ng v. Canada 事 件( Charles Chitat Ng v. Canada, Comm No. 469/1991, U.N. Doc. CCPR/C/49/D/469/1991( 7 January
) を参照のこと。また、自由権規約人権委員会の一般的見解(20)(HRC 1992: para. 9)も参照のこと。
1994)
27)ただし、9. 11テロ直後のカナダ連邦最高裁判所の Suresh v. Canada 判決(Suresh v. Canada( Minister of Citizenship and Immigration)
(Judgment)Case No. 27790(11 January 2002))では、拷問の禁止に関し、
「例外的事情においては、拷問に直面する退去強制が正
当化されうる可能性を排除しない」と判決し、議論を醸した(Suresh v. Canada: para. 78; 北村 2011: 97)。
28)プロテクション・ギャップの存在については、Hathaway(2010: 528)及び Pobjoy(2010)も指摘している。
29)条約上「すべての人」には、締約国内の外国人や無国籍者も含まれている。
30)このような特別法の機能に着目した McAdam のアプローチを、本稿では「特別法アプローチ」と呼ぶ。
146
国際公共政策研究
第18巻第 2 号
protection regime)
」を提供している。人権条約の特別法としての難民条約は、
「全体としての国際人
権レジームの一部を構成」しており、したがって、条約改正や議定書による拡大ではなく、人権条
約上のノン・ルフールマン原則の拡大により、難民条約の適用範囲も拡大した。これを後押しする
ように、条約 1 条A項(1)も、1951年以前の法的文書(legal instruments)により保護される者に関
31)
しては、必ずしも条約難民の定義に該当しなくとも、条約難民としての地位を与えるとしている 。
すなわち、条約上、A項(2)の定義に当てはまらない者、特に類似難民のような条約難民と類似し
た状況にある者に対しても、条約の地位を拡大することを妨げるような「本質的(intrinsic)
」な要
素は、条約上存在しない。McAdam の主張は、したがって、送還することのできない(non-returnable)
者はすべて、条約難民と同様の権利・利益を享受することができる、というものである(Hathaway
2010: 528)
。
2 .2 Hathaway(2010)による批判
Hathaway は、McAdam による補完的保護の議論を一部賞賛するものの、その主張の根拠は何ら
「規範的なものでも、平等な取扱いの法的義務に基づくものでもない」
、として批判している(2010:
528-530)
。Hathaway は、以下のように議論する(2010: 528-534)
。確かにプロテクション・ギャッ
プが存在するのは事実であり、具体的な権利を定めた難民条約が「望ましい(desirable)
」保障体制
であることは事実である。しかし、ノン・ルフールマンの義務により送還されない者という共通項
に基づく McAdam の主張は、難民というのは単にノン・ルフールマンにより送還されない者である、
という推論に基づいていることとなるが、難民条約は、ノン・ルフールマンにより送還されない者
のための条約ではない。むしろ、条約の「核」となる部分は他に存在する。このことは、条約作成
の歴史的な背景に照らしても明らかである。さらに、条約がノン・ルフールマンにより送還されな
い者の条約であるならば、草案の時点で提案されていたように、33条の送還禁止義務は、事前に条
約難民であると認定された者のみに適用されることになっただろうが、実際の条約では、条約難民
との認定がない者についても、認定・不認定の結果が出されるまでの間は、締約国にノン・ルフー
32)
ルマンの義務が課されている 。したがって、McAdam の推論は誤りであり、条約法条約に基づく条
約改正、あるいは、慣習または一般的原則の規範が生まれない限り、ノン・ルフールマンを共通項
に、補完的保護の受益者についても条約上の権利を保障すべきであると法的に主張することはでき
33)
ない 。
31) 1 条A項(1)で「1951年以前」という限定が付けられているのは、1951年の難民条約が当初、難民の定義として 1 条A項(2)
で、「1951年 1 月 1 日前に生じた事件の結果として」という時期的・地理的制約を設けていたからである。これは、第 2 次世界
大戦によってソビエト圏から西側諸国へ大量の難民が流出したという時代背景を反映している。その後の1967年議定書により、
このような制約が削除され、適用範囲は実質的に拡大された。
32)Hathaway(2005)の難民の権利説によると、ノン・ルフールマン原則が適用されるのは、条約難民に限られない。条約に定義さ
れるように、難民とは、国籍国の外にいるものである。したがって、事前に国籍国において条約難民であると認定された者にし
かノン・ルフールマン原則が適用されないとする議論は本末転倒である。締約国に「物理的に存在」してさえすれば、ノン・ル
フールマン原則の適用があると考えるのが適当である(Hathaway 2005: 207)。国際空港などの「国際ゾーン(international zone)」
や海上での問題等に関しては、Hathaway(2005: 307-342)を参照のこと。
33)McAdam(2010: n.pag.)は、Hathaway のこの批判に以下のように反論している。
「国際的法律文書は、解釈時に普及している法制
度全体の枠組みの中で解釈し適用」しなければならない。したがって、「条約の趣旨及び目的が現代的法体系(contemporary
jurisprudence)及び法の社会的機能の観点から理解されるならば、条約上の地位を補完的保護の受益者に与えることは、法律文書
147
日本における類似難民の保護の課題と展望(1)
さらに、Hathaway は、McAdam の特別法(lex specialis)に基づく議論を、以下のように否定する
(2010: 532-534)。特別法には、 2 つの機能がある。まず、その主要な機能として、ある同一事項に
関し、特別法とより一般的な国際法との間に衝突が生じた場合、両者の締約国は特別法に従わなけ
ればならないというものである。たとえば、ある条約の規定が宗教の自由(freedom of religion)に
関し「絶対的(absolute)」であり何ら制限が許容されないと定めており、他方で別の条約がより一
般的な表現の自由(freedom of expression)に関し一定の制限を許容している場合、両者の締約国は
宗教の自由について、より特定の表現の自由を規定している前者の規定に従わなければならず、よ
ってその自由を何ら制限してはならない。しかし、条約難民と類似難民との間に、そのような特別
法とより一般的な国際法との衝突は存在しない。したがって、第 1 の特別法の機能に基づき類似難
民に難民条約を適用するという主張を正当化することはできない。
次に、特別法の 2 次的機能として、ある事柄に関し、より特別な規範による規定が存在する場合、
同一の事柄に関するより一般的な規定の「解釈補助(interpretation aid)」として特別法を援用すると
いう機能がある。国際司法裁判所(International Court of Justice; ICJ)は、核兵器使用の合法性事件
34)
の勧告的意見
において、平時にも適用される自由権規約 6 条の恣意的生命の剥奪の解釈は、武力
紛争時に適用される法の言及なしには決定できないとし(Legality of the Threat or Use of Nuclear
Weapons: para. 25)、特別法の議論を持ち出している。イスラエルの壁事件の勧告的意見
35)
において
も、同様である。すなわち、これら特別法の機能 2 つに共通しているのは、
「規範の衝突の回避(the
avoidance of normative conflict)
」であるが、ノン・ルフールマンにより送還されない者は、難民条約
の規定に何ら抵触することなく人権条約上の権利を享受することができる。つまり、そこには何ら
規範の衝突のようなものは見受けられず、したがって特別法の議論は、McAdam の主張を法的に根
拠付けるものではない。
Hathaway は、このように McAdam の議論を論破するが、難民条約上の少なくとも一部の権利につ
いては、人権条約に基づき、類似難民にも保障すべきであるという法的議論の可能性を示唆してい
る( 2010: 534, 536 )。す な わ ち、McAdam も 言 及 し た、平 等 原 則( ま た は、無 差 別 原 則(nondiscrimination))を用いて、難民条約をそのまま類似難民にも適用するという議論をせずとも、特定
の権利については類似難民と条約難民を平等に扱うことを法的に正当化できるのではないかという。
これを実際に論じたのが、次に紹介する Pobjoy(2010)である。
2 .3 Pobjoy(2010)の平等原則アプローチ
Pobjoy(2010)は、誰が補完的保護の受益者かという先行研究が多く蓄積されてきた部分につい
の保護の目的を損なうというよりも、むしろそのような目的の自然の拡大と見なすことができる」
。さらに、難民条約と人権法
の下での拡大されたノン・ルフールマン原則との間に厳格な違いを設けることは、難民条約が人権法の枠組みの中に位置づけら
れているという事実を見過ごしているとしている。また、ここでも無差別原則に触れているが、詳細な検討はなされていない。
34)Legality of the Threat or Use of Nuclear Weapons(Advisory Opinion)ICJ Rep 1996, 226(8 July 1996).
35)Legal Consequences of the Construction of a Wall in the Occupied Palestinian Territory(Advisory Opinion)ICJ Rep 2004, 136(9 July
2004)
.
148
国際公共政策研究
第18巻第 2 号
てではなく、彼らの享受する権利・利益に着目した。McAdam 及び Hathaway が言及した平等原則
36)
を用いることにより、条約難民と補完的保護の受益者の間のプロテクション・ギャップの違法性を
検討した。Pobjoy は、検討の対象として欧州連合における補完的保護の制度(後述)に内在する「保
護のヒエラルキー(protection hierarchy)」
、すなわち McAdam が言うところのプロテクション・ギャ
ップに着目し、政治的及び市民的権利に限らず法の前の平等を規定する自由権規約26条の平等原則
37)
に基づき、その違法性を議論した。内戦が続き、政治的にも不安定、かつ政府による重大な人権侵
害が横行している架空の同一国 X から、欧州連合の締約国である仮想国へ逃げて来た、一方は条約
難民である家族Aと、他方は条約難民ではないが補完的保護の射程に入る家族Bの 2 家族がいると
仮定し、
( 1 )同様の状況に置かれる個人間で異なる取扱いが存在するか、
(2)そのような取扱いの
差異の理由が、26条に規定される理由
38)
に当てはまるか、及び、(3)そのような異なる取扱いが、
「
『合理的で客観的な基準』に基づいていたか」、すなわち、単なる異なる取扱いであるのか、禁止さ
れる差別に該当するのか、の 3 点について、以下のように議論している(2010: 181-228)。
第 1 に、問題となっている異なる個人が比較可能であるか、及びそれら個人が異なる取扱いを受
けているかである。家族A及び家族Bともに、重大な人権侵害の危険またはその激化から逃れ、国
境を越えて移動しているという点で、その状況は共通している。そして、改正前の欧州連合におけ
39)
る補完的保護制度においては 、居住許可の期間、家族統合及び統合プログラムへのアクセス、並び
に、ヘルスケア、社会保障、及び就労へのアクセスにおいて、補完的保護の受益者と条約難民との
間に差異を設けることが締約国に許容されていた(後述)。したがって、第 1 の要件は満たされるこ
ととなる。
第 2 に、条約難民である家族Aと、補完的保護の対象となる家族Bとの間の差別の理由が、26条
に規定されるところの差別の理由に当てはまるか否かである。家族Bが「共通の地位を共有する特
別な集団(distinct group of individuals who share a common status)
」であり、個人通報制度に基づく
40)
Vos v. The Netherlands 事件
で示された「他の地位」の要件を満たしている。さらに、国籍または市
民権に基づく差別は「他の地位」に基づく差別に該当するとする自由権規約人権委員会の見解に基
づき、問題となっている異なる取扱いは、「他の地位」に基づくものであると言える。
第 3 に、問題となっている取扱いの違いが、条約の禁止する差別に該当するか否かである。「合理
的で正当な」目的のない異なる取扱いは、差別に当たると解されているが(後述)、国家が両家族の
間に差異を設ける理由として考えうるものとして、以下の 3 点が考えられる。すなわち、①条約難
民と補完的保護の受益者とでは、
「危険の性質(nature of the risk)
」が異なる、すなわち条約難民は
36)McAdam は、26条に言及こそになかったものの、プロテクション・ギャップが平等原則に反する可能性を示唆している(2007:
219-223)
。また、Hathaway も、平等原則に基づき違法性を議論する可能性を示唆している(2010: 534, 536)。
37)平等原則の詳しい説明は、第 3 章を参照のこと。
38)自由権規約26条は、「人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、出生又
は他の地位」等の理由に基づく差別を禁止している。
39)Pobjoy の当該論文が出版されたのは2010年であるが、その翌年の2011年にヨーロッパにおける制度が改正された。
40)Vos v. The Netherlands, Comm No. 218/1986, U.N. Doc. CCPR/C/35/D/218/1986(29 March 1989).
日本における類似難民の保護の課題と展望(1)
149
「彼らが誰であるか、または何を信じているか」により、差別を受けていること、②条約難民は、国
籍国の保護が受けられない故に、国際的な保護を与えられていること、及び、③条約難民よりも補
完的保護の受益者の方が保護を必要とする期間がより短期的であること、の 3 点である。まず、③
に関しては、条約難民であるか補完的保護の受益者であるか否かによって、一般的にどちらの方が
庇護国に滞在する期間が長いということはできないため、差異を設ける合理的な正当事由であると
は言えない。次に、①及び②は、すなわち条約難民であることの「特殊性(uniqueness)」に関する
ものである。しかし、一方で「根本的な社会的失権(fundamental social disenfranchisement)」を被る
恐れのある集団と、他方で、「重大な人権侵害の継続またはその進行(perpetuation or furtherance of
a serious human rights violation)」を被る恐れがあり、ノン・ルフールマン原則によりその送還を禁
じられている集団との間で、差異のある取扱いをすることが、合理的で客観的な基準に基づいてい
るということはできないように思われる。むしろ、実際に両者が置かれている状況は類似しており、
両者の間に取扱いにおいて差異を設けることに合理的正当化事由は見られない。したがって、類似
難民と補完的保護の受益者との間に権利・利益の差を設けることは、26条の平等原則に反する。
2 .4 プロテクション・ギャップに関する議論の評価及び日本への応用の可能性
Pobjoy の議論は、以下の点で評価できる。まず、国際人権法上の平等原則に基づき、法的にプロ
テクション・ギャップを検討している点である。Hathaway(2010)が指摘するように、McAdam の
ように特別法の概念を用い、補完的保護の受益者についても条約難民と同一の権利・利益を保障し
なければならないという論理は、特別法の本来の機能を無視した強引な議論であると言わざるを得
ない。難民条約を補完的保護受益者にも適用することで類似難民の保護を確保するという議論では
なく、 2 つの異なる非市民(non-citizens)の集団である条約難民と補完的保護受益者の間の「ギャ
ップ」を小さくすることで、結果として類似難民に条約難民と同様の権利・利益を保障するという
Pobjoy の議論が、現段階でプロテクション・ギャップを小さくするための妥当な法的アプローチで
あると言えよう。
さらに、Pobjoy の議論で評価できるのは、平等原則アプローチが他の国・地域にも応用可能であ
る点である。日本には、日本国憲法だけではなく、自由権規約及び社会権規約上の平等原則を遵守
する義務がある(後述)。従って、Pobjoy の議論を用い、日本の事例において、権利・利益における
差異の合法性を検討することが可能である。但し、Pobjoy(2010: 225)も指摘しているように、プ
ロテクション・ギャップについて、その合法性を争う実際の事例が存在せず、あくまで学術的議論
に終始する点は否めない。さらに、後述のように、日本の難民保護制度は国家の裁量に基づき運用
されている分野も多く、必ずしも平等原則アプローチのみでは、日本における類似難民の保護全体
の展望を示唆することができない。したがって、本章で紹介した法的議論に加え、次章で、具体的
な補完的保護の政策を紹介及び検討することで、より包括的な示唆をすることが期待される。
150
国際公共政策研究
第18巻第 2 号
3 .小括
補完的保護の内容については、国際的には単一の法的取極めは現段階では存在せず、学術的にも
議論の的となっている。国際法上のノン・ルフールマンの義務により送還が禁止されている者の法
的地位及び彼らの権利・利益について、McAdam は特別法(lex specialis)の論理を用い、補完的保
護の受益者にも条約上の権利・利益を拡大しようと試みている。しかし、特別法アプローチには瑕
疵があり、プロテクション・ギャップを是正する法的な根拠にはならないことが、Hathaway による
批判からも明らかである。そこで、難民条約の拡大ではなく、条約難民と補完的保護受益者との間
の権利・利益のギャップそのものに着目し、人権の平等という観点からアプローチする Pobjoy の議
論が、法的にプロテクション・ギャップの是正を主張する上で最も妥当であると述べた。さらに、
本稿の目的である日本の難民保護制度への示唆のために、平等原則アプローチが応用可能である。
但し、法律の観点からの示唆だけでは難民保護制度全体に関する示唆は不十分であり、次章におい
て実際の類似難民保護制度も紹介することで、日本の難民保護制度の展望について、より包括的な
示唆をすることができよう。
第 2 章 ヨーロッパにおける類似難民の保護
序章で触れたように、日本への難民申請数及び現在の世界情勢に鑑みれば、その中に類似難民が
含まれている可能性は十分にあると言える。そこで、第 1 章では、国際法においてプロテクション・
ギャップの違法性を検討した。しかし、あくまで学術的議論にとどまること、さらに、日本の難民
保護の在り方を考慮すると、本稿の最終目標である政策的示唆を行うには、実際の類似難民保護制
度を参照する必要がある。そこで、本章では、類似難民保護の実例として、現在政策として補完的
保護を実施している国及び地域の中でも、欧州連合で行われている補完的保護(subsidiary protection)
をその検討対象とする。ヨーロッパにおける制度を紹介する意義は、補完的保護の実行の蓄積があ
ることにとどまらない。後述のように、欧州連合における補完的保護は、国家の既存の難民保護の
慣習を欧州連合国間で統一化するという、ヨーロッパ共通庇護政策(Common European Asylum
System; CEAS)を打ち立てる潮流の中で、最も着目すべき発展である、補完的保護を含む「指令」
として制度化された。その指令が、2011年に改正され、難民と補完的保護受益者のプロテクション・
ギャップが見直され、両者の権利・利益が近似化された。すなわち、当該制度の検討は、学術的に
議論になっているプロテクション・ギャップが狭められた生きた例として、その改正の背景が参考
になる、という意義を有する。
本章では、プロテクション・ギャップが縮小された現実の例として、欧州連合における補完的保
護制度を紹介及び2011年改正の背景を検討し、日本における類似難民保護の課題に対する示唆の可
能性を模索する。そのため、第 1 に、欧州連合における補完的保護制度、すなわち、2004年に出さ
れた「難民または国際的保護を必要とする者としての第三国国籍者または無国籍者の資格及び地位
日本における類似難民の保護の課題と展望(1)
151
と、付与される保護の内容の最低基準に関する2004年欧州連合理事会指令」(Council Directive
2004/83/EC of 29 April 2004 on Minimum Standards for the Qualification and Status of Third-country
Nationals or Stateless Persons as Refugees or as Persons who Otherwise Need International Protection and
the Content of the Protection Granted)
(以下、2004年指令)の成立背景とその内容を紹介する。第 2
に、2011年に改正された指令、すなわち「難民または補完的保護を享受する資格を有する者の統一
的地位と、付与される保護の内容のための、第 3 国国籍者または無国籍者の補完的保護の受益者と
しての資格の基準に関する2011年欧州議会及び欧州連合理事会指令」(Directive 2011/95/EU of the
European Parliament and of the Council of 13 December 2011 on Standards for the Qualification of Thirdcountry Nationals or Stateless Persons as Beneficiaries of International Protection, for a Uniform Status for
Refugees or for Persons Eligible for Subsidiary Protection, and for the Content of the Protection Granted
41)
( Recast))(以下、2011年指令) の成立背景について、それ以前の国家実行と、改正に関わった機
関による議論に基づき、紹介する。さらに、2011年指令により2004年指令が改正された理由、すな
わち、難民と補完的保護受益者の権利・利益が近似化された理由を検討し、日本の類似難民保護へ
の示唆の可能性を模索する。
1 .欧州連合における補完的保護と2004年指令
ヨーロッパでは、欧州連合指令に基づき、難民の保護に関して 3 層構造がとられている。すなわ
ち、①難民、②補完的保護の受益者(beneficiaries of subsidiary protection)、③その他各国の国内法・
42)
制度により保護を受ける者 、の 3 層である。この 3 段システムの土台となったのが、2004年に出さ
れたヨーロッパ指令である。
1 .1 背景と目的
2004年指令は、補完的保護受益者の要件とその地位に関してヨーロッパ内で法律を統一させるた
め、ヨーロッパ共通庇護制度構築の、第 1 フェーズの一環
43)
として作成された(Commission of the
European Communities 2009b: 4; Goodwin-Gill and McAdam 2007: 325; Peers 2011: 1-2)
。国家が各々異
なる保護の形態を有していた中、1970年代から制度を統一化する声が高まり、2001年にヨーロッパ
指令が提案された(McAdam 2007: 325)。「初の国家横断的補完的保護制度」として2004年指令が出
され、2006年10月10日までに各締約国内で実施されることとなった(McAdam 2007: 325)
。2004年
41)中坂(2010: xvii-xviii)によると、EU 法において「指令(directive)」は、以下のような性質を持つ。「規則(regulation)」、「決定
(decision)」、
「勧告(recommendation)」、
「意見(opinion)」に並び、第 2 次法に分類される。構成国において直接適用が可能であ
り、実施のために国内法を制定することは要求されない。指令の実施の形式や手段は構成国に委ねられているが、指令を完全に
実施することが求められる。また、「欧州議会(European Parliament; EP)」は、EU 各加盟国の人口比に応じて議員数が決まって
おり、議員は各加盟国において直接選挙により選ばれる(中坂 2010: xv)。
42)ヨーロッパにおいては、この第 3 の保護の形態を、第 2 の形態である subsidiary protection に対比して complementary protection と
呼ぶこともある(ECRE(2009)を参照のこと)。第 2 章で紹介した国際的文脈における補完的保護(complementary protection)
は、より広義の意味を持つ。
43)第 1 フェーズでは、上述の2004年指令に加え、以下の 3 つの法律が提案され(2000-2001年)、採択された(2003-3005年)
(Peers
2011: 1)
。すなわち、庇護手続きに関する指令(2005/85指令)
、庇護希望者の受け入れ水準(reception conditions)に関する指令
(2003/ 9 指令)、及び庇護申請にかかる責任に関する規制(または、「ダブリンシステム」)(343/2003規制)である(Peers 2011:
1- 2 )
。
152
国際公共政策研究
第18巻第 2 号
指令の目的は、 1 条に示されているように、
「第 3 国国籍者または無国籍者に、難民あるいは国際的
44)
な保護を必要とする者としての資格要件と、与えられる保護の内容の最小限の基準を規定 」するこ
とである。また、同指令は既存の国際的義務、ヨーロッパにおける地域的義務、及び、当時の締約
国の実行を基盤にしており(McAdam 2007: 57)
、締約国間における法制及び実行の不均衡を無くす
ことで、欧州連合内において一貫した最小限の基準を確保し、さらに、国家間で享受できる権利・
利益が異なることから発生する「 2 次的移動(secondary movement)」を減少させることを目的とし
ている(McAdam 2007: 57-58)。
1 .2 保護対象 ― 補完的保護
2004年指令は、
「補完的保護を受ける資格を有する者(person eligible for subsidiary protection)」を
45)
以下のように定義している 。
[…]第 3 国国籍者または無国籍者であり、難民には該当しないが、母国に、または無国籍者の
場合当該常居所を有していた国に送還されれば、15条に定義する重大な損害を被る実質的な恐
れがあると信じるに足る実質的な根拠があり、17条(1)及び(2)に該当せず、当該国の保護
を受けることができない者またはそのような恐怖を有するためにその国の保護を受けることを
46)
望まない者 […]( 2 条(e)、筆者訳)
ここで、ある者が補完的保護を享受できるか否かの重大なポイントは、15条に定義される「重大な
危害(serious harm)」の解釈である。2004年指令の15条は、
「重大な危害」を以下のように規定する。
重大な危害は、以下から成る :
(a)死刑判決又はその執行;又は
(b)申請者に対する母国における拷問または非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしく
は刑罰;又は
(c)国際的あるいは国内武力紛争における無差別的暴力による文民の生命または身体に対する
47)
深刻で個別的な脅威 (15条、筆者訳)
欧州連合における補完的保護の定義の特徴は、難民条約の難民の定義と同様に「[国籍国(無国籍者
の場合には、常居所を有していた国)の]保護を受けることができない」または「そのような恐怖
を有するために保護を受けることを望まない」という言葉づかいをし、保護を受ける理由を「国際
的あるいは国内武力紛争における無差別的暴力により文民の生命または身体に対する深刻で個別的
な脅威」を含む「重大な危害」に拡大している点である。「重大な危害」の(a)
「死刑判決またはそ
44)2004年指令 1 条。
45)他方、「難民」は、第三国国籍者という限定を除いては、1951年難民条約及び1967年議定書における条約難民と同一の定義であ
る。
46)2004年指令 2 条(e)。
47)2004年指令15条。
また、この条文の解釈に関しては、近年の欧州連合司法裁判所の事例で、15条(c)の解釈に関して重要な判決をした Elgafaji v.
Staatssecretaris van Justitie 判 決( Elgafaji v. Staatssecretaris van Justitie(Judgment)Case No. C-465/07( 17 February 2009 )
)、及 び
Errera(2010)を参照のこと。
日本における類似難民の保護の課題と展望(1)
153
48)
の執行」は、ヨーロッパの文脈に独特な要素であり 、
(b)
「申請者に対する母国における拷問また
は非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは刑罰」は、難民条約の迫害要件と重なる部分
49)
(c)は、現在の世界の紛争及び難民発生の状況を反映しており、その意味で同指
が多い 。しかし、
令は保護対象を難民条約よりも拡大したと言えよう。
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48)15条
(a)
の法的根拠は、ヨーロッパ人権条約の第 6 議定書(死刑の廃止に関する人権及び基本的自由の保護のための条約の第 6 議
定書)であり、さらに、フランスを除くすべての EU 加盟国は、第 6 議定書と同様の内容を定めている自由権規約の第 2 選択議
定書の締約国である(McAdam 2007: 67)。
49)Goodwin-Gill 及び McAdam は、少なくとも拷問に関しては、 5 つの理由に基づくか否かを除き、常に迫害に該当するとの立場を
とっている(2007: 脚注133)。UNHCR は、迫害は一般に、拷問、残虐な若しくは非人道的な取扱いまたは刑罰を「含む」方法で
の人権侵害の形式として起こるという見解を示している(UNHCR 1998: para. 6)。本間は、拷問が重大な人権侵害の「一形態」で
あり、迫害の一部を構成するが、
「迫害のすべてではない」としている(2005: 64)。Goodwin-Gill 及び McAdam も、迫害概念の方
が拷問の概念よりも広いとしている(2007: 脚注133)。
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