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新しい地誌学習への提言

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新しい地誌学習への提言
社会系教科教
育学会
『社会
系教科教育学研究』第20
号 2008
(pp.31-40)
新しい地誌学習への提言
」を中心に
して−
一
中学校社
会
科
地
理
的
分
野
「
日
本
の
諸
地
域
Proposal to New Regional Geography S
米 田 豊
べ兵庫教育大学)
I はじめに
,平成20
年版中学校学習指導要領
2008
年4月
に
,9月にはそれぞれの教科等の解説が
が告示さ。
れ中学校社会科地理的分野においては,
出された
。従前の平
地誌学習,
の平
お
り
方
が
大
き
く
改
善
さ
れ
た
成10
年版においては,国
(地域)や
成元年版
,高校入試
都
道
府
県
を
選
択
す
る
学
習
で
あ
っ
た
た
め
への対応をは
じめとして,中学校の教育現場に学
。
習指導要領の趣旨が,
根付
か
な
い
と
い
う
課
題
が
あ
っ
た
従前の中学校学習指導要領
本提言論文では
,
[社会
]
地
理
的
分
野
に
お
け
地
誌学
,
検
討
す
る
。
そ
し
て
,る
平
成20
年習
版に
中つ
学い
校て
学習
分析
,新しい地
指導要領
[社会]地理的分。
野における
誌学
り
提案
るおりである。
研習
究の
のお
概
要方
はを
,以
下す
のと
,平
① 昭和52
年版中学校学習指導要領
[社
会
]
,
平
成10
成元年版中学校学習指導要領
[社会]
年版中学校学
指
導
要
領
[社
会
]
に
お
け
る厂
世
」習
匚
日
本
の
諳
地
域」
の
学
習
に
つ
いて
,
界の諳地域 ,それぞれの時期の中学校の
その変遷を整理し
教育現場における課題を抽出する。
(2)平成20
年版中学校学習指導要領
[社会]に
おける
「日本の諳地域」学習の主張を分析,検
討する。
,匚
日本の諳地域」学
(3)
(2)
の成果をもとに
して
習の理想型を示す。
,厂
日本の諳地域」
(4)
(2)
(匚
3)
の
成
果
を
も
と
に
し
て
生活
・文化を中核とした考察」を中心
学習の,授業構成の理論と授業モデルを示す。
に
し
平
成て
元年版以降の中学校社会科地理的分野の授
,教科書を使いこなすだ゛
けでは成立しなく
業は 。本論文が,中学校社会科教員への
な
てい
るの提言となることを願っている。
授っ
業づ
くり
H 従前の学習指導要領における地誌学習の変遷
と課題
,昭和52
年版から平成20
年版までの中
ここでは
匚
世界の諳地
学校
学
習
指
導
要
領
[社
会
]
に
お
け
る
」匚
日本の諳地域」の学習について,その変遷
域 ,その課題を分析,検討する。
を整理し,匚
世界の諳地域」匚
日本の諸地域」の学
表
Iは
。①この表をもと
習の流,
れそ
を整
理し
た時
も期
ので
ある
れぞ
れの
の特
徴と課題について論
にして
。なお,ここに言う課題は,筆者の10
年間の
じる
,教
中学校社会科担当指導主事としての経験から
現場の声としてまとめたものである。
育
1 昭和52
年版中学校学習指導要領
[社会]
(ア)
,
∼
(エ
(オ
))
の視点で,
6大陸
・
この時期は
,匚
窓方式」の学習と
7地方をめ
学習
行理
わ
れ
。ぐ
まる
た,
世が
界地
先
習となり,学習の窓が
言われた ,網羅的な学習に一定の改善がなさ
4つに
整理
さ,
れ
。し
か
し
単調な学習が繰
り返され
,知識注入
・
れた
。②
暗
記
型
の
社
会
科
と
な
る
と
い
う
課
題
を
持
っ
て
い
た
2 平成元年版中学校学習指導要領
[社会]
への批判を克服す
昭和52
年
版の
繰
り
返
し域
の
学学
習習では,まとまり
,
「世
界
の
諳
地
」
るために
のある地域ま。
たは
を
つ
程
度
選
択
し
て
学
習
す
る
ま国
た,
「3
 ̄
日
本
の
諳
地
域
」
学
習
で
は
,
こととなった
,動態地誌をめざした静態
[ ̄
窓方式]が継承され
地誌の内容となった。
」学習では,学習しない地域や
「’
世界,
の中
諳地
域
学校の教育現場では高校入試への対
国があり
った。また,学習指導要領の
応が大きな課題と
な
,
匚
視点と方法」を学ぶ学習が提
[解説]において
,その内容が明示されていないた
唱さ
れ
た
も
の
の
,従来の学習方法で,選択された地域または国
め
の学習が行われた。③
−31−
表 I 【 世 界 の諸 地 域 ・ 日本 の 諸 地 域 の 学 習 の変 遷 】
世 界 の諸 地域
*6 大 陸 を そ れ ぞ れ 4 つ の 窓 で 見 る
(主要な国は、国別 に扱 う)[ 静 態 地誌]
昭 の 位 置と歴史的 背景
和 (ィ)自然 の 特 色
52 (ウ)住 民 と 生 活
年 (工)
資源 と産業
版
日本 の 諸 地 域
*7 地 方 を そ れ ぞ れ 5 つ の 窓 で 見 る
[静 態 地誌]
(ア)位 置 と歴 史 的 背 景
(イ)自 然 の特 色
(ウ)資 源 の 開発 と 産 業
(工)
人 口 と居 住
(オ)他 地 域 と の 結 び つ き
キーワー ド ◆全 体、 ◇社 会 科
◆ 教 育 の 人 間化
◆「 ゆ と り の 時 間」 の 創
設
◇地理 ・歴史平 行学習
け 型)の原 則
(課 題 ) 各 地 域・ 国 で 同 じ よ う な 学 習 ( 課 題 ) 各 地 方 で 同 じ よ う な 学 習
単調 ・ 暗記が多 い感 じる生 徒も
産 業重視 の授業傾 向
(指 導 順 ) ①世 界 の 諸 地 域 → ② 身 近 な 地 域 → ③ 日 本 の 諸 地 域
* ま とまりの ある地域 または国 を
3つ 程度選択
[動態 地 誌 ・ 静 態 地誌 心ヒ 較 関 連 地誌]
東アジア
枦
アメリカ合 衆国
EC
*7 地 方 を 軽 重 を つ け 4 つ の 窓 で 見 る
[動 態 地 誌 を め ざし た 静 態 地 誌]
(ア)自然 と 人 々
(ィ)産 業 と 地 域
(ウ)居 住 と 生 活
(工)
地域 の結びつ きと変化
◆ 基 礎・ 基 本 重 視
◆ 自 己 教 育力 の 育 成
◆新 し い 学 力 観
◆「 生 活 科」 の 導 入(小)
平
成
一
兀
年
◇課題 学習 の導入
版
◇ 選 択 教 科「 社 会」 導 入
( 課 題 ) 学 習 し な い 地 域 ・ 国 か お る。(課 題 ) 網 羅 的 に な る場 合 も あ る 。
( 指 導 順 ) ① 世 界 の 諸 地 域 → ②身 近 な 地 域 → ③ 日本 の 諸 地 域
平
成
10
年
版
*2 つ ま た は 3 つ の 国 を 選 択
*2 つ ま た は 3 つ の 都 道 府 県 を 選 択
一
一
(近 隣の国を必 ず入 れる)
(学校 所在地 の都道府 県は 必ずい れる)
(大規模 な国ば かり はダメ)
[動 態 地 誌・ 静 態 地 誌・ 比 較 関 連 地 誌]
[動 態 地 誌 ・ 静態 地 誌 ・ 比 較 関連 地 誌]
中華人 民共和国
兵 庫県
例
ア メリカ合 衆国
囮 福 岡 県
イ タ リア
東京 都
( 課 題 ) 学 習 し な い 国 が多 い
◆ ゆとり教育
◆完全 週 5日制
◆総合 学習創設
◇内容 の厳選
◇学び 方を学 ぶ学習
◇社会 の変化 への対応
◇ 3分 野 の 関 連
(課 題 ) 学 習 し な い 都 道 府 県 が多 い
( 指 導 順 ) ① 身 近 な 地 域 → ② 日本 の 諸 地 域 → ③ 世 界 の 諸 地 域
平
成
20
年
版
*6 つ の 州 を す べ て 取 り あ げ る
[動 態 地 誌 ・ 静態 地 誌 ・ 比 較 関連 地 誌]
の アジア
(イ)ヨ ー ロ ッ パ
(ウ)ア フ リ カ
(工)
北 ア メ リカ
(オ)南 ア メ リカ
(力)オ セ ア ニ ア
*世 界 の 様 々 な 地 域 の 調 査[動 態 地誌]
*い くつ か の 地 域 に 区 分 し 、 7 つ の
視 点 で み る [
動 態 地 誌]
(ア)自 然 環 境 を 中核 と し た 考 察
(ィ)歴 史 的 背 景 を 中核 と し た 考 察
(ウ)産 業 を 中核 とし た 考 察
(工)
環境問題や環境保全を中核とした考察
(オ)人 口や 都市・村 落を 中核 とした考 察
(力)
生 活 ・文 化 を 中核 と し た 考 察
(キ)他地域との結び付きを中核とした考察
( 指 導 順 ) ① 世 界 の 諸 地 域 → ② 日 本 の諸 地 域 → ③ 身 近 な 地 域
― 32
◆第 3の教育 改革
命学力 低下論争
令授業 時間数増加
◇ 基礎 的 ・基 本的 な 知
識や概 念 の習得 ・探究
◇ 知識 ・概 念 ・技 能 の
活用
◇社 会参画
◇伝 統文化 教育
◇ 世 界 の地 理や 歴 史 に
関す る内容 の充 実
3 平成10
年版中学
指
導
要
領
[社
会
]
」校
学学
習習
で
は
地
域
が
はず
さ
れ,
2
「 ̄
世界の諳地域
。
また,
は3
つ
国
を
選
択
し」
て
学
習に
す
るい
ここ
なっ
匚
日
本
の
諳
地
域
学
習
お
てと
も,
学た
校所
また
在地の都道府県を含こ
む2
こつ
とま
なた
っは
た3
。つの都道府県
を選択して学習する
」ことが提唱されたものの,学
「’
学び方を学ぶ
習しない国や都道府県が多く√世界を大観
したり
日本の地域的特色を把握
したり
で習
き指
ない
,学
導と
要い
領う
の中
趣
学校の教育現場の批判が多く
旨が徹底されなかった。④
4 平成20
年版中学
要
領
[社
会]
」校
学学
習習
で指
は導
,6
つ
の州を
すべて
匚
世界の諳地域 。匚
ウ
(世界の諳地域
:
取り上げることと
な
っ
た
,
州
ご
とに様々な面から地域的
米田)について,
はその上で主題を設けて地域的特
特色を大観させ
。
」と匚
内容の取
色を理解させるようにすること
,次
扱い」に示された。このことを
[解説]では
のように述べている。
(略,
)ま
そず
れ,
ぞ基
れ礎
の
州
的
・
の地
基
域
本
的特
な知
色
を
識
を
理解
習
さ
得
せ
す
る
には ,それ
らの知識
を活用
して中学校第
学習を行い
工
学年,
の生徒の関
生心
活と
に結び付く
きや
地す
理い
的主
事象
題
を設
取
り上げ
,地域的特色が明らかになる
定
し追究する中で
ように学習を展開
していくことが大切で
ある。
(⑤,p.32)
・基本的な知識」の内容や
ここに言う
「 ̄
基礎的 。
6つの州において
学習方法が明示されていない
,中学校の
それぞれの知識内容を抽出することが
喫緊の課題である。
教育現場の,
藤原正治の提唱する匚
地誌学の3方
こ
こ
で
は
」を学習方法として活用
し,これ
をもとに
して,
法
・基本的な知識」を次の
それぞれの州の匚
基
礎
的
ことが考えられる。
ように抽出する 」の静態地誌で学習する場
○ 主,
題を匚
それ窓
ぞ方
れ式
の匚
窓」の厂
基礎的
・基本的
合は
な知識]を抽出する。
○ 主題を
連地
誌で
,動
そ態
れ地
ぞ誌
れや
の比
主較
題関
で習
得さ
せ学
た習
いす
概る
念
場合は
,分析的知識,
的知識や説明的知識を構成する
記述的知識を匚
基礎的
・基本的な知識」とし
て抽出する。
Ⅲ 新しい地誌学習への提言
,中学校社会科地理的分野における新
こ
こ
で
は
しい地誌学習への提言を行うために,次のように
論じる。
下匚
指導
1 新中学校学習指導」
要
領
[社
会
]
(以
)
お
よび
『中
学校学習指
要領
[社会]という 下匚
導要領解説社会編』
「以 解説」という)で
示された匚
日本の諸地域」の学習について,
」匚
学習内容」匚
中核考察」
「本論文では,
「 ̄
地域区分
」を匚
中核考察」と呼ぶ)
匚
○
○
を
中
核
と
し
た
考
察
匚
指導内容の構成』について分析,検討する。
2 「 ̄
解説」に示された中核考察ごとの学習構
想を,分析,検討する。
3 1・2の成果から新しい地誌学習の理想型を
提示する。
,解説の分析
1 新中学校
学
習
指
導
要
領
[
社
会
]
,匚
日本の諸地域」の学習について,
ここでは
,匚
指導要領
[社会]
」と
先に
示した4つ
の
視
点,
で
,検討する。
「解説
」を分析
(1)地域区分
,次の
3点に整理できる。
地域区分は
。
① 日本
を幾つかの
地域に区
分
す
る
,機能地域といった地
・地域の規模や等質地域
域の
とらえ方に留意す
る。
・指導の観点や学校所在地の事情などを考慮
し
切
に
決
め
る
。
て適
。
② 最低でもフつに区。
分す
る
③ 分化
し
(2
)細
学
習
内
容すぎない
(ア
,
)から
(牛)の
それぞれの地域について
考察の仕方
(後述)で動態的に地域的特色
をとら
えさせ
る。
。
① 地域の特色ある事象や事柄を中核に
す地
る域の
。
② ①
を,
他様
の
事な
象と
有が
機的
に付
関き
連
付影
ける
々
事象
結び
,
響
を及ぼ
し
特色は
,地域的
合って成
り立っていることに着
目して
特色を中核
と,
なそ
るの
地成
理
的立
事ち
象を
と考
他察
のす
事る
象。
との関
り
連からとらえ
。地理
③ 地域的特色
を追究するようにすること,事象
的
見い
し
そ
の特
色を
べた
り
間事
の象
関を
連
を
考だ
察
して
た
り
し
て
,
地調
域的
特
色
をとら
33
一1
,都市化,情報化などの社会の変化に
。
え
て
い
く
IV 国際化,地域の動向や課題をとらえるのに適
④ 学習活動
対応
して
。
地域的特色
を追究するための適切な課題を設
た観
定する。
(4し
)指
導点
内で
容あ
のる
構こ
成と
ii 様
々な資料
を適切に活用
して地域的特色を考
察
し,追究する
。
,追究の過程や結果を適切に表現す
る。
沮 考察
,
iv 地理
的な見方や考え方及び地図の
読図や作図
景観写真の読み取
りな
どの地理的技能を身に付
ける
ことができるように系統性に留意
して計画
的に指導する。
中核考察
(ア)か
ら
(牛)とは次の
とお
りである。
f
り
臼①
・1
(ア)
自然環境を中核と
した考察
(イ)
歴史的背景
を
中核
と
し
た考察
し
た
考
察
(ウ)
産業を中核
と
(エ)
環境
問題や
環境
保
全
を
核
と
し
考察
・
村落
を
中中
核
と
し
たた
考察
(オ)
人口
や都
・
文市
化を中核と
した考察
(カ)
生活
(キ)他地域
との結
,
び
地
付
域
き
的
を
特
中
色
核
を
と
追
し
究
た
し
考
考
察
察す
(ア)
から(
キ)
は。中核考察の
学習
を通
して地
る方法
を示
している
。
理
的
な
見
方
や
考
え
方
の
基
礎
を
培
う
② 中核考察の
留意点
,学習する
(ア
)
か
ら
(キ
)
の
考
察
の
仕
方
は
地域
ごとに一つ選択する。 ,
「日本の
諸
ii(ア
)
か
ら
(キ
)
の
考
察
の
仕
方
は
」の学習においてすべ
て取
り扱
う。
地
域
③
(ア)か
ら
(キ)の
中核考察の理
由
・︱
内容」
(
のの
2)
の匚
イ 世
界
と
比
べ
た
日
本
の地
域
(ア
)
自然
環
境
,
(
イ
)
人
口
(
,
ウ)
的特
色エネルギーと産業,
・
(エ)地域間の結び
資源
。
n付
きの四つの小項目との関連を踏まえたこと
「地域の諸事象を
置れ
や
空地
間域
的の
な規
広模
が
り
の
」位
厂
そ
を
にと
応じ
かかわりでとらえ
」
て
環
境
条
件
や
人
間
の
営
み
な
ど
と
関
連
付
け
て
考
察
(地域)は相互に関係
匚
し合っていること
(…
(目標の
」
(2)
(3)
)の地理的な
を
理
解
さ
せ
る
)
見方や考え方の基礎を培
うことを踏まえたことO
」を基
① 「
(ア
)
か
ら
(キ
)を
で示
た示
考察
の理
仕方
,
地
域
の特色
端し
的に
す地
的事象を
にして,それ
を中核にして指導内容を構成する。
選択
し
,他の事象ともかか
② 中核とした地理的事象は
,それ
わり合って成り立っていることに着目し
らを有機的に関連付ける。
,追究する学習活動を通して地域的特色
③ 調べ
をとらえさせる。
このように指導内容を構成することによって,
,我
学
習
し
た
地
域
の
特
色
が
あ
る
程
度
総
合
的
に
と
ら
え
が国の国土に関する認識を深めることが期待される。
2 中核考察ごとの学習構想の分析
」における中核考察の記述は,
「中核と
「解説,
「有機的な関連」
「考察の内容」で構
,
なる事象」
成されているO
,
「自然環境を中核とした考察」では,
例えば
次のようになる。
A 地る
域の
然中
環核
境と
にな
関る
す事
る象
特=
色あ
事地
象形や気候などの自
B 有機的な関連=人々の生活や産業など
C 考察の内容=自然環境っ
が地
域る
の人
てい
。々の生活や
産業などと深い
,関
匚
自
係
然
を環
も
境を中核とした考察」
考察の内容は
。
において習得させたい概念と考える
こ
と
が
で
き
る
一つは,主要な
新
学
習
指
導
要
領
の
大
き
な
特
徴
の
ーワー
ドとして
「概念」という用語が登場した
キ
。 しか
し,匚
解説」には
「基礎的
・基
ことである
」と
「概念」の峻別がなされていない。
本的な知識
このことについて,岩田一彦は次のように述べ
ている。
社会
目
を
目
と
し
表
現。
する
ため
,科
知の
識
と標
概
念到
の達
峻
別標
が
欠
かて
せな
い
英米
の
には ・カリキュラムやナシ
ョナル
・スタ
ナシ
ョ
ナで
ルは,それが明示されている。我が国
ー
ド
ンダ
でる
も
こ
方
向性
に明確に踏み
出すことが必要で
あ
(
。の
⑥
,p.16
)
・多角的に追究
し,
血 生徒が地理的事象
を多面的
そ
の特
事象
の関
連
を
する学習を展開 て中
核
考,
察で
たい
識と
明示
し
具習
体得
的さ
なせ
考察
の概
内念
容を
が概
複念
数的
の知
説明
的し
知
する
の色
にや
適
し
た間
観
点
であ
る説
こ明
と。
-
34−
。この
こと
識と
して抽出される
ことが必要である
によ
り,その地域の地域的特色
を考察
した
ことに
なる。 ,
「解説」に記された中核考察ごとの学
そこで,A中核となる事象
,B有機的な関連
,
習構想を
−
1概念
的知識,C ―2説明的
C考察の
内容
(C
知識,C」
―
の
他記
表皿
中核考察
を3そ
作成
し
た述
。)として匚
の分析表 ,次の
ことが明らかになった
。
分析の結果
,方向的な記述に
(1)中核となる事象については
なっている。
,具体
的な例示が
あ
(2)中核となる事象について
察とない考察かおる。,中核考察それ
ぞれ
る考
(3)有機的な関連については 。
に具体的な事例が提案
さ,
れ
て
概
い,
念
る概念的知識で
(4)考察の内容については 。また
,具体
的な
明示され
ていることが少な
い
。
事例
を説明的知,
識中
で核
明示
さ
れ
ていて
ない
考
察に
お
地域を選択
以上の
こ,
と次
か
ら
の
ことが重要となる。
する際には
(1)中核となる地理的事象と考察の
内容となる概
的知識を関連付ける。
,
念
(2)解説に概念的知識
が
明
示
さ
れ
て
い
る
と
き
は
。
明
示
さ
れ
て
い
な
い
と
き
は
,
その
内容
を検討す
る
社会諸科学の
研究成果から,概念的知識
を抽出
する
。
,概念的知識を構
(3)社会諸科学の研究成果か
ら 。
成する複数の説明的知識を抽出する
(4)
れ
た
説明
選
択
し
た地域の地域
的抽
特出
色さ
とな
っ
て
い的
る知
か識
をが
検討
す
る
。
資料を活用
して日本全体の視野か
ら地域の特色
を見る。
③ 景観
を地図や景観写真な
どの資料か
ら読み
取
り,比較する
。
,匚
環境問題や環境保全を中核と
これ
以外
に
も
」では
,匚
環境白書」等の文献資料の活
した考察 。また
,
「 ̄
生活
・文化を中核とし
用が考
え
ら
れ
る
」では
,自治体の観光課や伝統文化の保存
た考察
。
会等への聞き取
り調査
も有効な手段
となる ,
最後の追究の過程や結果を表現する段階では
説明
や概
得する
こ
と
にな
の
,的
見知
い識
だ
さ
れ念
た的
地知
理識
的を
事習
象
を匚
な
ぜ
疑
問
」る
の
問
で
。
いの形にすることが
重要となる ,次のような
例示された日ヒ
海道地方」では
匚
なぜ
疑問」が提示できる。
,北海道では大規模に区画された農
Ql なぜっているのだ
ろう
,市街地が碁盤の
目につくられ
てい
地が広が
Q2 なぜ
るのだろう。
,地域の産業の歴史的背景に関す
前者の
問いは
,後者が地域の
開発の歴
る特色
ある地理的事象で
。それ
ぞれ
史に関す
る特色ある地理的事象であ
る
。
に説
明,
的知
識
の習
得が
め
ざ
れ
るでは,次の
例示
さ
れ
た
匚
中
部さ
地方
」
よう
また
な地理的事象が見いだ
される
O ,全国的に
A
1 太平洋側の愛知県や
静
岡
県
は
。
大
規
模
に区画され
た
見て工業生産額が高い
地が広が
っている。
農
。
A2 日本海側は全国的にみ
て水田率が高
い
A3 中央部の長野県や山梨県では果樹の生産
額が高い。
3 新
しい地誌学習の理想型
A4 太平洋側に輸送機械工業が集積
している
,匚
解説」に示された中核考察の学習
地
域
が
み
ら
れ
る
。
ここでは
,八ヶ岳周辺
,検討
しながら,中学校社
A5 中央部の盆地では果樹園が
展開例
を批判的に分析
では畑の分布がみ
られ
る。
会科地理的分野における新
しい地誌学習の理想型
を示す
。
A6 日本海側では平野部
を中心に田が卓越
し
」
て
い
る
。
(1)見
いだ
し
た
地理
事象
「
な
ぜ
疑問
」
に
示
さ
れ的
た地
域の
の
特
色を
示
す地理的事
「解説
AIか
らA3
までは全国規模の主
題図
や
都道府
,A4
か
らA6
ま県
で
,次の
ように整理できる
。
象
を見いだす手立ては
別,
の地
統
計
な
ど
の
資
料
を
活
用
し
て
図帳の読み
取
りか
ら見
いだされた地理的事
① 内容
(
の
2
)
の厂
イ 世
界
と
比
べ
た
日
本
の
地
域
は
。それ
ぞれに地域の農業や工業などの産
」の学習成果を活用する。
象
で
あ
る
的特
色規模の主題図や都道府
② 全
国
県別の統計な
どの 業に関する特色ある事象となってお
り,厂
なぜ疑
― 35
―
ユ 疣
艮四ノ
」 邱
A
匈 利
ドr兄 夕yi
宍
,
j衵
命 典 佃 9 翼
訟
jミ 々
レ
リ
ル
G
°万
球
U
り
万万
が ゝjyC
聡 い
翁
{
皿
皿 逝 瑕 。
巨 り
→ C つ
し
卜樋寸
卜叙9
昌 ]
と
で
乱W
墟 9
遡 絋り
嶺 拙 い
七
衵
雑 恆肖
0 袒 9
九
回
刪 梟 φe 厮 御 訟 仔 目 嶌
丿 佃 々
嬋ら ぺ
巨 磐 信
拙 躙 旦
珊々 撼
扣 詣 。
寤 翕
祠
⊃ 。
9
聹 哥
砿り
二疣
聡
嫋
水
生U
a]
球 万
心
八
剔云芬
円
年
年
年
窟
髱
謬
U
昌斃心
言
四
大
生生
いか詐
言 ブ?
門 ジ
々 9 作
物
万
廿
訓
郷
九
金莎
パネル 仁
夲徊 廱
賢
台門
対
匚
べ 尽 衵こ こ
長
ぶ
席
9
痢
獣 釁
霖
9 り 痢
卜 卜 超
恩巨 訟
趾 趾り
頭 頭卜
数 数巨
坦 坦 趾
桐胴 桐
幽 回 幽
9 9 9
齢
M
U
宕
弌丿
蓉
≪
回 11
付
9 9 9
回
答
ミ
|
丑-
{Ⅲ
収
g
刪
幽 黼
U
勹
果言
貼
示
宍
昌
芸 苓対
滾
圧白水1
白鴬
踞
升
の
疣
言
ル]
回 旻 万
報
卜
回
徊 翌々
肘
肩
斜
匸
ザズ
牡
万万
と
七 万js jE
でyE
9
痢
回
蓉
││
9
ホミ
以
ツ?
匈
々
ヤで
ル
万万
V
テタ
回
手
答
万
万
万
作
回
昌
付 ヅ
獣yス
|
音
頭μ
。目示
言
対
聯
ド
A」匈
昌
] 世蘂
言
々対
回 挫
特 払
雅 言
八 戸
討 嘩
回特
回び
門ミU
日
巨
ぬ 言
門
難 だ
90 ぐ
万響乱
暼
牡
七夕
瀧
蜩 傴
恥
姐指
川
米 9
竹
衣 口
熟
百巨徊
毋]
口
と
侑9
ポ
ミ
ル田
言
飛ミこ
幃
々 0 べ 匈
雨
万│
c
毋]巨 ぐ
言 9 り囿
9 瑕 二無
牡
打
々ョ 9 旦
川
手
尽^
万万
1
万年
報
半
々
圉旨聹
AJ
11
釧, 号笥
咎蔀写亘糺言
拙
圖 燉
芻
駆
芻 隋
階 や 釧
36
恥
4〉
く
-く 姙
戝
刪4=!
刈
贇
涸
邸
忿
竃)
罌
e 鞫
問」に変換することができる
ノ
」の
中核考察を貫
く問い
(Q)と下
「 ̄
中部地方
,次の
ように設定
され
る。
位の問
い
(q1
か
らq4
)
は
,全国的にみ
て,各産
業に占める中部
Q なぜ
いのだ
ろう。
地方の
,
割
日
合が
本海
高側で稲作が盛んなのだろう。
qi なぜ
,愛知県や静岡
県で輸送機械工業が発
q2 なぜ
達
しているの
だろう。
q3 なぜ
,中央部の盆地では
,果樹生産が盛ん
なのだろう。
q4 なぜ
,八ヶ岳では野菜の生産が盛ん
なのだ
ろう。
」の例示をもとに
して,見いだ
された地
厂
解説
」を抽出
し,厂
問いの構
理的分野から厂
な
ぜ
疑
問
。このことで習得
させる説
明的知
造化」を行った
識
を決定す
ることができる
。
も重要であ
,る
複。
数の探究の
結果
(複
数の説
明的知識)
さらに,地域的な共通性
をとらえさせ,概念的
を比較
し
。匚
解説」の例
示に従えば,東
知識を習得させ
る
海地方と
央
高
地
の
野
菜
生
産
の
説
明
的要
知
識を
習得
,中
厂
野
菜
産
地
を
成
立
さ
せ
て
い
る
因
は,
気
した後
,消費地
との位置関
候や土壌などの自然的条,
件生
と産に携わる人々の
工
係や他産地との競合関係
。
」という概念
夫などといった社会的条件で
あ
る
。
ま
た,東海地方と
的知識を習得することになる ,
「 ̄
名古屋や東京
中央高地の野菜生産の
共通点は
」こ
な
どの,
大消
費
地
と
の
立
地
関
係
が
影
響
しの
て発
い達
るや他
厂
地
域
の
産
業
の
動
向
は
,
技
術
とか
ら
。
」という
地域
との関係などによ
り変容
して
い
る
。
概念的知識を習得,
す新
る学
こと
に導
な要
る領に
習指
おける中学
以上のことか
ら
」における
校社会科地理
的分野の
「 ̄
日本の諳地域
中核考察の地誌学習の理想型は
,次の
ように提案
できる
O
」
(2)関連付ける事象の
「知識の構造
中核にした地理
事
象
を
他
の
地疑
理問
的」
事象
と下
関連
。的
そ
の
際
,
厂
な
ぜ
から
位
付けて追究する
コ,説明的知
))
新し
い
地誌
学習つ
の)
理想型
の問いを導き出し
(
「 ̄
問いの構造化
。 (4
(1
地
域
区
分
(7
識
を構成す
る
分
析
的
知従
識え
や記
知識
得
さ
せ
る
」
の
例
示
に
ば述
,的
匚
北
海を
道習
地
方
で
は
,
匚
解説
(2)7つの中核考察におけるそれぞれの中核と
なる地理的事象の決定と中核考察における概
どのようにして特色ある
農
地
の
開
発
やる
街。
づく
。
」
の
問
い
と
な
そり
のが
解
念的知識の抽出
進,
め北
ら海
れ道
ての
い開
っ拓
たの
の
か
歴
史に関する事柄として,開
(2)の概念的知識を構成する複数の説明的
は
,石狩平野の開発,十勝平 (3)
知識の抽出と匚
なぜ疑問」の決定
拓使や屯,
田根
兵釧
村台
の地
設の
置開発で構成される。その内
野の,
開分
発析的知識,記述的知識として,北海道地 (4)
(3)に関連付ける複数の地理的事象の決定
,
容は
(4)
の地理的事象を構成する説明的知識
,自然環境へ働 (5)
分析的知識,記述的知識の抽出と厂
なぜ疑問」
方の冷涼な気候や土壌などの特色,稲作拡大の様
の
決
定
きかけ開,
発に
みで構成される。
酪尽
農力
地し
域た
の人
分々
布の営
特色
(6)中核考察で習得した説明的知識を他の地域
子や畑作
の地理的事象に応用した考察
地
域
の
産
業
や
開
発
の
動
向
を
自
然
環
境
へ
の
働
き
か
け
,
(2)から
(5)の順に知識の構造化が進
という観点から関連付けて探究することになる。
なお
む事例と,(4)
関
する
,
((5)
(2
3)で
)
の連
順で
複地
数理
の的
説事
明象
的の
知知
識識
が
(3)探究の結果
(説明的知識)と概念的知識の が構造化さ
れ
,概念的知識が抽出される事例が考えら
習得,表現
抽出さ
れ
。予め概念的知識を決定して授業を設計する
れ
る
探究の結。
果こ
を分
布
図説
等明
の的
地知
図で
表反
現映
す
るこ
と
が
,中核となる地理的事象と関連する地
の
際
,
識
を
し
た
表現
の
で
は
な
く
考
えられ
る
,
的事象から帰納的に説明的知,
識を
抽を
出設
す計
るこ
と
の内容にな
っ
て
い
る
こ
と
が
重
要
で
あ
る
O
授業
する
」
に
つ
い
て
の
解
を
,
事
象
間
の
関ま
連た
を説 理
が
重
要
と
な
る
。
こ
の
プ
ロ
セ
ス
は
匚
な
ぜ
疑
問
明
す
る
説
明的知識
(解説文)で表現する言語活動 過程でもある。
37
,経済,政治,生活に
内
これまでの社会科は。今回の改訂では,その
容の
中心を置
い,
てき
た
伝統
,文化,歴史の比重を大
方
向
性
を
修
正
し
きくしようとしている。伝統
,文化では,
世界
,今
後
文
化
遺
産
や
伝
統
的
な
日
本
文
化
の
教
材
化
か
の
課題
となって
くる。
この場
合には
,
社会
科の性格
(
。
⑨p.69)
を破壊
し
な
いよ
う
な
配
慮
が
であ
る年版以降,社
,
「
生
活
」
が
登
場必
し要
た1989
岩田は
匚
伝統文化教育」を
会科学の眼で社会科における。今回の改訂では,
構想することを主張している
匚
経済,政治,生活」
社会科教育,
の内
容,
の中
文化
歴心
史が
」にシフ
トしたことを危
から
「
 ̄
伝
統
,
「社会科の性格を破壊しないような配慮が
惧し 」と強調している。伝統文化を政治や
必要,
であ
経る
済の反映としてとらえることの主張は,
社会
従前の
中
学
校
学
指
領
[社
会⑩
]の指導書や
」
に
も
見
ら習
れ
る導
こ要
とで
ある。
「 ̄
解説
社会科は社会諸科学の研究。
成果
み込
んで
中を
核組
考察
で匚
伝社
統
会認」
識を
形成
を
図
る
教
科
で
あ
る
扱う場合も,社会諸科学の眼で地域的特
文
化
色をとらえさせることが重要である。
2 「生
活
・
を
と
し
とし
た
新
しい
地文
誌化
学
習中
の核
授
業
モた
デ考
ル察」を事例
(1)地域
区分
,従
来の7地方区分
本
カリキ
ュ
ム
モ
デ
ル
で
は生活
。ラ
匚
近
畿
地
方
」
で厂
・文化を中核
を採用する
」を行
い,具体的な事例
を提案する。
と
した考察
(2)中核となる地理的事象の決定と中核考察にお
ける中
概念
知識
の抽
核的
とな
る地
理出
的事象
① 」に従えば,中核となる地理的事象は
「解説
・文化に関する特色ある事
厂
地
域
の
伝
統
的
な
生
活
」で,厂
伝統的な町並みの保存や伝統行事の継
象
,伝統的な地場産
業など」が例示され
ている。
承厂
近畿地方」で次のようなことが考えられる。
・︱
w 新
しい地誌学習の授
業モデル
,最初に,社会科教育に
おける
「生活
ここでは
」
「伝統文化教育」の
あり方について論
文化。
学習
次に
,Ⅲの
3の
(4)で示
した
「新
しい地
じる
」をもとに
して
,
「生活
・文化を
誌学習の理想型
,新
しい地誌学習の授
中核と
した考察」を事例に
業モデル
を提案す
る。
1 社会認識教育としての伝統文化教育
,身近な
生活文化や伝統
文化を取
り扱
うことで
扎,
氛
か
ら
生
き
生
き
と
社
会
事
象
を
と
ら
。
しか
し,それだけでは学
習
内え
容る
がこ
科と
学が
的で
に
きる
らないという課題がある。
な 一彦は,1989
年版学習指導要領の鍵概念は
岩田
」である
とし,厂
『生活』の重視は
,具体的
「生活
,科学性の
喪失に進むのか
,
内容の提示へ進
む
のか
」
(
⑦,p.6l)
と指摘
している。
両刃の
剣で
あ
る
,
厂
生
活
を扱うことが
,風俗
・習慣の社会
そ
してってはならない。社会科学の眼で生活を分
科
析に
す陥
る研究が重要である。
」
(⑧,p-9)
と提案
し
ている。
,岩田は,
2008
年版の学習指導要領の
「伝
また
統文
化教
育」に
ついて,次のよ
うに述べている
。
奈
良県明日香村の景観や今井町の伝統
的な
町並みの保存
ii 京都の三大祭
りの継承
血 繊維,陶磁器,酒造業などの伝統
(地場)
産業
中核考察における概念的知識の抽出
② [ ̄
解説]を参考に概念的知識を抽出すると,次
のようになる。
・通信が発達し,都市化や国際化厂贋
① 交通
報化
し
流が
る中
,か
各進
地展
域
のて
人地
々域
の間
生の
活交
は同
質活
化発
か化
進す
み,
伝
で
・文化が変容している。
統的な生活
② 各,
地域
はを
同質
か,
進ん
地の
域人
の々
伝の
統生
や活
文化
見化
直し
そで
れい
をる
守
のでてる活動が盛んになってきている。
り育
(3)
(2)
の概念的知識を構成する複数の説明的知
の抽出と匚
なぜ疑問」の決定
識
,交通
・通
① 奈良県の,
今井
町
や
明
日
香
村
で
は
都市化や国際化,情報化が進展
信が発達し
,地域の
して地域間の交流が活発化,
する
中
で
建物の増改築や
人々の生活は同質化か進み
,景観が
周辺地域を含めた宅地造成によって
変容している。
,人々の生活の同質化
② 奈良県の今井町,
では
①の状況を食い止めるた
が進,
んで
い
る
の
で
条例により町並みの景観を保存
しよう
めに
と,地域の人々は様々な組織をつくって活動
している。
−38−
,人々の生活の同質
③ 奈
良県の
明日香村
で
は
,①の状況を食い止める
化か進
ん
で
い
る
の
で
,古都保存法によ
り歴史的風
土,景観
ために
,地域の
人々は様
々な組織
を
を保存
しようと
つくって活,
動
し
人て
々い
のる
生。
活の同質化か進んでい
④ 京都
で地
は域の伝統や文化である町並みの景
,
るの
で
,それ
を守
り育てる活
観や三大祭
りを
見
直
し
ってきている
。
動か盛んにな ,中世
・近世か
らの伝統的な
⑤ 近畿地方では
,繊維
,陶磁
技術が守
り育て
られているの
で
器
,酒造
業などの伝統
(地場)産
業が発達
し
ている。
(4)
(3)
に関連付ける複数の地理的事象の抽出
このことについて,
「 ̄
解説」では次の
ように述
べ
ている。
:米田)を自然環
「それ
(抽出
し,
た他
地地
理的
域と
事の
象交流などと関連付
境」
や歴史的背景
,伝統的な生活
・文化に関する
け については
環境
や歴
,
他地
域
と
諸事象,
を自
成然
立
さ
れ
て
い史
る的
諸背
条景
件
やそ
の諸
事の
象交
の
変容
を
流など
と関連付けて追究するひとが考えられ
る。
(⑤,
p.32)
,冂 奈良県明日香村の景観や今井
ここでは
,
「解説」
町5
のつ
伝統
的
な
町
並
み
の
保
存
」
に
つ
い
て
の視点から検討するO
の
① 事象
・古
都を
保成
存立
法さ
やせ
条て
例い
のる
制諸
定条件
・明日香古京を守る会や今井町並み保存会の
活動
② 事象の変容
・明日香古京を守る会や今井町並み保存会の
活動に触発されて,移
り住む人が増えてき
た。
③ 然環
・自
該当
事境
項なし
④ 歴史的背景
・
明日
は古
の都
・中
世香
から
の代
町並
みや遺跡の存在
⑤ 他地域との交流
・今井町の町並み保存については,F
 ̄
全国町
並みゼミ」を輪番で開催し,町並み保存の
啓発に努めている
。
,分
(5)
(4)
の
地
理
的
事
象
を
構
成
す
る
説
明
的
知
識
析的知識
,記述的知識の抽出と匚
なぜ疑問」の
決定
冂 奈
良県明日香村の景観や今井町の伝統的
な町並みの保存
」に
つ
い
て,
(4)
受
て抽出
,
次
の
とお
りを
で
あけ
る
。
された説明的知識は
,中世か
古代か
らの
明日香の都や遺跡
のそ
存れ
在
,
らを保存
らの
町並み
の古
歴史
的
背法
景や
の条
もと
,
都
保存
例の制定,明日香
するために
,匚
全
古京を守る会
や
今
井催
町
並
み
保
存
会
の
活
動
」
の
開
が
原
因
と
な
っ
て
,
明日香
国
町
並
み
ゼ
ミ
・今井町の伝統文化は守られ
ている。また
,
村
その成果として,両地へ移
り住む人が増
えてき
ている。
なお,分析的知識,記述的知識については省略
する。
(6)中核考察で習得
した説明的知識を他の地域の
用
地理的事象に応した考察 ,以下の
地域の
歴史的な町並み保存については
。
町並み保存に応用
して考
えることが
できる
萩市の武家町 南木曽町の妻籠宿
倉
の商
下
の
大
宿
祇敷
園市
新町
の家
茶町 屋町 関郷
町町
の関
宿内
等
々
,社会認識教育の視点で匚
生活文化学習」
以上
」を推進することの
重要性
と,
や匚
伝統文化教
育
」の
「生活
・文化を中核と
した考
匚
日
本
の
諳
地
域
」
を匚
近畿地方」で行
う場合の具体例
を匚
奈
良
察
県
明
日
香村
の景
や今
井町の伝統的な町並みの保
存
」
を中
心に
提観
案
し
た
。
V おわ
りに
,新学習指導要領における匚
日
本提言論文
で
は
」
の
学習における,
「中核考察」の
あ
本の諳地域,その具体的な内容を
「近畿地方」
り方を提
案
し
・
文化を中核
とした考察」で示
した。
の
「 ̄
生活
,中
7つの中核考察
をどの地域
区分で行
う
。
7か
つは
の中核
学校の教育現
場
の
大
き
な
課
題
で
あ
る
,
7
つ
の
地
域
区
分
を
縦
軸にとったマ
考察を横蚰に,従前の教科書や地理学等の研究
ト
リ
成
果ッ
をク
埋ス
め表
込に
んでいけば,考察するに足る最も適
― 39
。
「
`
近畿地方」で
切な地
理
的
事
象
が
浮
か
び
上
が
る
・文化を中核とした考察」を示
したのは
,
「生活
最も
多くの
生活
・文化の事例
で学習できるか
らで
ある
。
,中学校の教育実践に
生かされ
る
本提言論文が
ことを期待
している。
地理的分野における
『地域の規模に応じた調査』を
事例にして」 2001
年度兵庫教育大学大学院修士論
文 2001.12.20
この論文では,事例国の学習のあり方を地誌学の3
,動態地誌,比較関連地誌)に依拠
方法
(静態地誌。表工
の作成には,これらの方法を
して論じている
分析視点として組み込んでいる。
⑤ 文文
部教
科出
学版
省
『中
学
校学習指導要領解説社会編』
日本
株式会
社 2008.09
田一彦
「新旧比較で見る中学校社会科一目標と
⑥ 岩
内容の改善点とポイン
トー」 岩田一彦
・米田豊編
」授業設計プラン一新旧
著
『中
学
校
社
会
科
「新
教
材
比較で授業はこう変わるー』明治図書 2009.03
田一彦
「
『生
 ̄活』を鍵概念とした新学習指導要領」
⑦ 岩
『社
会科
教
育J
岩田一
彦
「
『人
々No.323 の工夫明
や治
努図
力書 1989.04
』
・『生活』の内容
⑧ の科学
『社
会
科
教
育J
No.321 田化
一]
彦
「社
会
科
改
訂の内
容の明
方治
向図
を書 1989.03
解説する」
⑨ 岩
・
安彦忠彦編
『平成20
年版中学校新教育課程教科
領域の改訂解説』 明治図書 2008.03
昭和44
年版中学校学習指導要領
[社会]の
『中学
⑩ 校指導
社
会
編
(
』
,
「書
文
化
現
象
だ大
け阪
を書
切籍
り株
離式
し会
て社1970.05
取り扱う)
のに
でお
はい
な
て
は
くその時代の政治,社会
・経済などの時代的背景の
<注及び引用文献>
,兵庫教育
① 谷聡
(奈
良県宇陀市立榛原中学校教
諭
大学大学院社会系コース
院生)作成
,この状況
を次のように整理
している。
② 澁澤
文隆は
。
”
地名物産の地理’・
という指摘に象徴され
るような
地理学習に陥
りやす
い。
・諸要素を関連付けて地域的特色を追究するプロセ
,資料活用や思考
・判断を伴
ス
を重視
した学習や
,知識中心の
うような活動の
場が少な
くなるため
一面的な能力
しか育たないような学習に陥
りやす
くなる。
・取
り上げた地域は変わっても,見方や考え方を養
,同
じような
うとい
う
方
法
概
念
の
観
点
か
ら
見
る
と
ー
ン,程度の学習の繰
り返
しとな
りやす
く,
パタ ,固有名詞的な応用性のない知識は身に
このため
。
付
いても地理的な見方や考え方は育ちにくい
澁澤
文隆
編
『新
学
習
指
導
要
領
中
学
社
科
。(p.258
ー
ワ
ー
ド3 世
界
の
事
例
地
域
の
精校
選
と会
組
合地
せ理
』
−
のキ
中
で
と
ら
え
さ
せ
る
こ
と
は
従
前
と
変
わ
り
な
い
,
社
会
認
識
教
育
と
し
て
の伝統文
一部要約,米田
傍
線
:
米
田
)
」
と
述
べ
明治図書 1990.06 p.8 ,匚
視
点と方法」に傾斜
した学
化教育を位置付けている
。
方法概念
を
重
視
し
,次の論
文に詳
しい。
っ
た
た
め,内容教科と
して社会科のあ
習内容であ
この
ことについては
った。今回の中学校地誌
り方が問われ
ること
にと
なに配慮
,
の
こ
していると考える
米
田
「歴
習の
中で
『伝
は
こ
う
一
伝豊
統
文化史
教学
育を
通
し
た
社会統
認文
識化
形』
成
を
ー
」教
岩え
田
学習の改訂は
る
ことができる
。
一彦
・米田豊編著
『中学校社会科
・
「新教材」プラ
,
「世界の諸地域
」学習の
あ
ン一新旧比較で授業は
こう変わる一』明治図書
③ 平成元年版に
対応
し,
て
以下の論
文がある。
。
2009.03
り方
を
案
し
た
研
究
に
田提
豊厂
中
学
校
社
会科地理的分野における事例地
米
域の選択の視点と内容構成」社会系教科教育学会
『社会
系教科教
育
学
研
究
』
第
6域
号1994 pp.33-40
,
事
例
国
(地
)の選択の視
点と内
この論文では
。また
,アメリ。
力合衆国を
容構成の視
点
を
提
案
し容
た
,
学
習
内
を構造
図で示
した
。
事例国と
して
,匚
世界の諸地域
」学習の
あ
④ 平成10
年版に
対応
して
研究に
,以下の論文がある。
り方
を
提
案
し
た
藤原正治
「
『地域の特色』
をとらえる視
点と方法−
-
40−
Fly UP