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白川 千洋

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白川 千洋
デジタルシネマへの取り組み
主役登場
映画のネットワーク配信の夢を
現実のものに
白川 千洋
NTT未来ねっと研究所
主幹研究員
私がデジタルシネマにかかわるようになったのはおよそ
の活動の成功が現在の結果を生んだと思います.第1は,
3年前です.事業会社で大手アニメ制作会社の制作ネット
プロデュース制度案件としてビジネスクリエーション担当
ワーク化を経験して研究所に戻ってきたところでした.
のプロデューサの下に開発が始まったこと,第2は,事業
NTT未来ねっと研究所では光ファイバ上でのキラーアプ
会社とともに第17回東京国際映画祭に参加し,日本の映
リケーションとして800万画素超高精細映像技術を10年
画関係者に4Kデジタルシネマが広く認知されたことで
以上研究開発してきており,コンテンツの王様でありデジ
す.前者により,ビジネス化に向けたさまざまな環境づく
タル化の波を受けようとしていた映画にターゲットを絞っ
りをプロデューサの支援の下で行えるようになりサービス
て攻め始めていました.そのころ,ハリウッド7大スタジ
全体を実現するシステム開発ができるようになりました.
オ が デ ジ タ ル シ ネ マ 標 準 化 の た め に 設 立 し て い た D CI
後者により,お客さまとなる日本の映画配給興行界に対し
(Digital Cinema Initiatives, LLC)にその品質を認めら
て,4Kデジタルシネマが十分サービスに耐え得る品質で
れ,デジタルシネマの標準化案に正式に採用されました.
あることを認識していただき,デジタルシネマの普及の可
NTT未来ねっと研究所の映像技術は,ハリウッドの人々
能性を最大限にアピールすることができました.
から横方向解像度が4,000画素なので4Kデジタルシネマ
その後,ハリウッドメジャースタジオのワーナー・ブラ
と名付けられ,その普及活動が期待されていました.ただ,
ザーズ,日本の大手興行会社の東宝という強力なパートナ
システムとしては,短い十数分程度のデモができる程度の
を得て,事業会社とともにデジタルシネマ共同トライアル
実績しかなく,商用化にはまだ程遠いという状況でした.
「4K Pure Cinema」を実施できたことは大きな喜びです.
私の最初の仕事は,DCIの後押しの下ヨーロッパの映画
これまで,NTTグループが対等な立場で封切り映画を配
業界関係者に対して4K品質を認めてもらい事実上の世界
信させてもらったことはありませんでしたし,トライアル
標準とすることでした.イギリス,イタリア,フランスで
とはいえ何百億円の価値のあるコンテンツを預けていただ
の関係者へのデモを通して,4Kデジタルシネマを実現し
けたことは大きな自信となっています.
ているのはNTTをはじめとする日本の技術者であり,そ
ただ,今はまだトライアルとして一歩を踏み出したばか
の品質はオリジナルフィルムと同等以上であるとの評価を
りで,お客さまの要求するサービスを継続的に提供できる
受けました.この結果,4Kデジタルシネマが主な映画制
技術やノウハウ確立を行うことができなければ商用化はお
作国の業界に認知され,最後に残された課題がビジネス展
ぼつきません.ぜひともお客さまの信頼を得て,光ファイ
開でした.
バによる映画配信の夢を実現させたいと思います.
大きな転機が訪れたのが2004年でした.この年の2つ
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N TT技術ジャーナル 2006.4
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