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若手研究グラント成果実例集30 vol.1

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若手研究グラント成果実例集30 vol.1
NEDO
New Energy & Industrial Technology
Development Organization
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究開発推進部 若手研究グラントグループ
〒212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町1310 ミューザ川崎セントラルタワー20F
電話:044-520-5174 Fax:044-520-5178
URL:http://www.nedo.go.jp/itd/teian/ e-mail:[email protected]
NEDO
New Energy & Industrial Technology
Development Organization
若手研究グラント成果実例 全国MAP
30 の研究成果を掲載しています。
1 ∼□
※本パンフレットには□
51 25 92
4 26 29 31 32 43 82
29
63
73 88
3
37
8
11
44
79
14 30 19 84 57 75 90
2
24
4
78 22 22
47
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
68
52
(略称:NEDO技術開発機構)
20
93
21
1 3 17 38 42 67
7
21
80
27
62
9
6 15 69 91
5
8
16
48
40
87
1 23 36 23
86
83 61 85
72
7
26
20 9 81 53 28 89
30
10 13
11 17 18
<川崎本部>
研究開発推進部 若手研究グラントグループ 松崎 肇、千田 和也
〒212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町1310 ミューザ川崎セントラルタワー20F
電話:044-520-5174
FAX:044-520-5178
URL:http://www.nedo.go.jp/itd/teian/
e-mail:[email protected]
24 14 16 58 70
27 10
12
お問い合わせ先
<北海道支部>
イノベーションオフィサー 佐々木 淳
〒060-0003 北海道札幌市中央区北3条西3-1-47 NORTH33ビル8階
電話:011-281-3355
FAX:011-221-4349
URL:http://www.nedo.go.jp/nedohokkaido/index.html
e-mail:[email protected]
60
ライフサイエンス分野
情報通信分野
<関西支部>
イノベーションオフィサー 古川 信二、竹田 隆一
〒530-0001 大阪市北区梅田3丁目3番10号 梅田ダイビル16階
電話:06-4306-5021
FAX:06-6344-4575
URL:http://www.nedo.go.jp/nedo_kansai/index.html
e-mail:[email protected]
環境分野
エネルギー分野 <九州支部>
イノベーションオフィサー 松崎 治洋
〒812-0011 福岡市博多区博多駅前2-19-24 大博センタービル10階
電話:092-411-7853
FAX:092-471-6975
URL:http://www.nedo.go.jp/nedo_kyushu/index.html
e-mail:[email protected]
産業技術に関する社会科学分野 ☆最新の情報はNEDO技術開発機構若手研究グラントHPにてご確認下さい。
ナノテクノロジー・材料分野 製造技術分野 融合的・横断的・統合的分野
インターナショナル分野
制作協力:(株)アイワード
撮影場所:ミューザ川崎、川崎ルフロン
(作成日:2008年9月16日)
2
研究者INDEX
●研究者インデックスは、本パンフレットに掲載している成果
実例の研究テーマと、研究代表者の業績等を一覧にしたも
のである。
●実用化フェーズの段階分け
段階名
各段階のイメージ例
Phase1
基礎研究段階
実験・シミュレーション等による基本原理や要素技術の検証。
• 「海外特許」の出願数においては、PCT出願は1件、直接外国政府特許庁に出願
した場合も1件と数えている。登録は、国毎に1件と数えている。
Phase2
応用研究段階
特定の応用用途に向けた応用研究、検証実験。
• 「学生養成数」については、本研究に携わって育成された(現在育成している)
学生数をカウントとしている。
Phase3
実用化研究段階
連携先企業における、実用化
(製品化)
を視野に入れた研究。
“無償”サンプルの
作成、技術やコストの優位性・量産化技術等の課題把握、ライフサイエンス分野
における臨床試験
(治験)
等の実施。
• 「新規連携希望」:新たな企業との共同研究や保有する特許のライセンス先等を
希望する場合は「○」
、特定の企業と独占契約済み等で新たな企業連携を希望し
ない場合は「−」としている。
Phase4
実用化達成段階
連携先企業における“有償”でのサンプル、試作機出荷、事業化に向けた製造
プロセスの構築、顧客の探索。
Phase5
事業化段階1
連携先企業による市場での取引。当該商品・製品等により継続的に売上を上げ
ること。
Phase6
事業化段階2
連携先企業による市場での取引。当該商品・製品等により継続的に利益を上げ
ること。
4
3
− − −
− − − −
4
5
8
3
−
交渉中
−
新規連携希望
6
− − − − 14 4
1
士
5
− − 30 25 4
契約済
−
士
1
5
2
博
吉崎悟朗
0
6
7
士
東京海洋
大学
海洋科学部
准教授
2
−
6
修
生殖細胞の異種間移植によ
る代理親魚生殖技術の確
立。クロマグロ等、これま
で養殖が困難だった大型魚
生殖細胞の異 種について、大型魚種の始
種間移植によ 原生殖細胞や精原細胞を小
05A07006d る代理親魚養 型魚種の免疫機能が未熟な
殖技術の確立 孵化稚魚期の生殖腺に移植
することで、飼育が容易な
サバ等に代理出産させると
いう世界初の代理親魚養殖
技術を確立。
櫻谷英治
1
2
学生養成数 連携企業数
学
ユニークな機能性構造脂質
の微生物生産プロセスの開
発。人間の体内で生理活性
物質へと変換されることか
ら近年注目を集め、サプリ
メントとしての販売や粉ミル 京都大学
ク等にも添加されているア 大学院
ラキドン酸や医薬品健康食 農学研究科
品等への応用が期待される 助教
ジホモ-γ-リノレン酸、ミー
ド酸などの有用脂肪酸。こ
れら有用脂肪酸をつくるカ
ビの遺伝子操作系を構築し、
生産性向上を達成。
渡部裕輝
3
海外登録
ユニークな機
能性構造脂質
05A07003d の微生物生産
プロセスの開
発
山形大学
大学院
理工学研究科
准教授
小野正博
1
海外出願
簡単に非走査で2次元カメ
ラが作り出す光干渉断層画
像、高速画像化を実現。簡
単な光干渉計
(反射光強度
神経機能分析
を測定する装置)
と2次元カ
用光波断層画
05A03009a 像測定の試作 メラで走査を行わずに、神
経活動や生体組織の光干渉
研究
断層画像
(光を測定対象物
にあてて戻ってきた光の干
渉を解析して得られる2次
元の画像)
を撮影する技術。
京都大学
大学院
薬学研究科
准教授
7 46 9
特 許
国内登録
アルツハイマー病の早期診
断を可能にする老人斑アミ
ロイドの分子イメージング技
術。アルツハイマー病の原
因物質である老人斑アミロ
イドを体外から画像化。こ
れまで困難だった早期診断・
早期治療につながる技術と
して注目される。
3
文
アルツハイマ
ー病の早期診
断を可能にす
05A03002a る老 人 斑アミ
ロイドの 分 子
イメージング
技術の開発
浜瀬健司
査読付論文
文
光学異性体を
区別する全ア
05A01033d ミノ酸 高 感 度
一斉分析装置
の開発
微量D-アミノ酸の一斉分析
技術を開発し、新しい薬創
りや疾病診断に役立てる。
九州大学
分析装置がないため研究が
大学院
進んでいなかったD型アミノ
薬学研究院
酸について全種類を全自動
准教授
で一斉に定量分析する技術
を開発し創薬や疾病診断へ
の道を拓く。
代表者
氏名
国内出願
機関・役職
英
サブタイトル
和
研究テーマ
実用化フェーズ
プロジェクト
ID
2
お問い合わせ
住所
TEL
FAX
e-mail
研究室URL
2
日本分析化学会奨
励賞
(2003年9月)
日本薬学会奨励賞
(2006年3月)
イノベーション実用
− −
化助成「次世代戦
略技術実用化開発
助成事業」
(2007
年)
の採択に繋がっ
た。
福岡県福岡市
東区馬出
3–1–1
TEL:
092–642–6598
FAX:
092–642–6601
(e-mail)
hamase@phar.
kyushu-u.ac.jp
京都府京都市
左京区
吉田下阿達町
46–29
TEL:
075–753–4608
FAX:
075–753–4568
(e-mail)
ono@pharm.
kyoto-u.ac.jp
3
科学研究費補助金
「若手研究A」
、医薬
基盤研究所「保健
医療分野における
− −
基礎研究推進事業」
の採択、日本核医
学会研究奨励賞の
内定に繋がった。
− − − ○
1
受賞歴など
(他の競争的資金への
つながりを含む)
(URL)
http://210.233.60.66/
~bunseki/
(URL)
http://www.
pharm.kyoto-u.
ac.jp/byotai/
(e-mail)
ywata@
山形県米沢市
yz.yamagata-u.
平成20年度科学研 城南4–3–16
ac.jp
究費補助金
(2008 TEL:
年)
の採択に繋がっ 0238–26–3292
(URL)
FAX:
た。
http://ywata-lab.
0238–26–3292
yz.yamagata-u.
ac.jp/
第8回 酵 素 応 用シ
ンポジウム研究奨
励賞
(天野エンザイム㈱
− 2007年)
平成19年度科学研
究費補助金
(2007
年)
の採択に繋がっ
た。
−
1
1
農林水産技術会議
若手研究者賞
農林水産技術会議
− − (2006年2月2日)
日本学術振興会賞
日本学術振興会
(2006年3月2日)
(e-mail)
京都府京都市
esakura@kais.
左京区
kyoto-u.ac.jp
北白川追分町
TEL:
(URL)
075–753–6114
http://www.
FAX:
hakko.kais.
075–753–6128
kyoto-u.ac.jp/
東京都港区
港南4–5–7
(e-mail)
TEL:
goro@kaiyodai.
03–5463–0558
ac.jp
FAX:
03–5463–0558
研究者INDEX
−
2
− 25 17 −
− − −
− − −
− − −
− − −
1
2
9
9
交渉中
− 12 2
− − − 18 16 2
−
1
新規連携希望
2
31 5
士
田中 徹
1
1
契約済
佐賀大学 シンクロトロン
光応用研究
センター
助教
8
2
士
低コスト製 造
法による高効
05A25005d 率純緑色発光
ダイオ ードの
開発
低コスト製造法による高効
率純緑色発光ダイオードの
開発。
Ga
(ガリウム)
、In
(インジウ
ム)
などの稀少金属
(レアメタ
ル)
を含まない新材料テルル
化亜鉛
(ZnTe)
をベースとし
た、低コストで製造できる
緑色LEDを開発。既存の緑
色LEDを超える高効率化に
期待が集まる。
1
−
5
博
大阪府立
大学大学院
工学研究科
物 質・化 学 林 晃敏
系専攻応用
化学分野 助教
− 10 2
士
全固体リチウ
ム二次電池の
創製にむけた
05A24024a 電極−固体電
解質ナノ界面
の構築
究極の電池、全固体リチウ
ム二次電池の実現にむけた
新しい電極−電解質界面構
築手法の開発。発火・液漏
れなどの危険性がある有機
電解液を使用せず、無機固
体電解質を用いた全固体二
次電池の高速電荷移動を実
現。
2
8
4
修
矢野勝也
2
3
4
− − −
学生養成数 連携企業数
学
名古屋大学
大学院
生命農学研
究科生物圏
資源学専攻
助教
田村真治
4 15
8
1
海外登録
3価 イオン 伝
導性固体電解
05A18011d 質を用いた環
境汚染ガスセ
ンサの開発
環境保全に向けたガスセン
サの開発。次世代の安全・
安心のために。環境汚染ガ
ス拡散低減のため、実用化
が待たれる特定ガスを検知 大阪大学
する環境モニタリング用ガ 大学院
スセンサ小型で軽量、長期 工学研究科
連続使用可能な「その場測 応用化学専攻
定用」センサを目指して、3 助教
価イオン伝導性固体電解質
を用いたセンサを開発SO2、
NOx、NH3センサの長期安
定評価へ。
小峰啓史
−
2
海外出願
茨城大学 工学部メディア
通信工学科
准教授
1
1
特 許
国内登録
次世代超高密
度垂直磁気記
録 ハ ードディ
ス クドライブ
05A12007d のためのパタ
ーンドマス タ
ー磁気転写技
術開発
垂直磁気記録ハードディス
ク装置出荷にかかる時間を
桁違いに短縮。出荷時の垂
直磁気記録ハードディスク
へのサーボ記号
(磁気ヘッド
の位置情報)の書き込み時
間は現在約1時間かかると
ころ、これをわずか数秒に
短縮し、高精細にサーボ記
号を書き込むことができる
パターンドマスター磁気転
写法を開発。
落合秀樹
2
国内出願
横浜国立
大学大学院
工学研究院
准教授
小室 孝
査読付論文
文
高周波数利用効率と低消費
電力を両立するディジタル
低 消 費 電 力・
変調方式の研究開発。高い
高速無線通信
05A12006d システムの研 周波数利用効率と低い消費
電力を両立するユビキタス
究開発
&低炭素社会が求める無線
送信技術。
新発想!植物で植物を灌漑
する技術。深根性植物の水
圧リフト
(Hydraulic lift)
機能
を活用することで、地下の
Hydraulic lift 深層水を表層の乾燥した土
「植物スプ
を利用した植 壌へ浸透させる。
05A20002a 物で植物を灌 リンクラー」未利用のまま
地下に流出してしまう乾燥
漑する技術
地域の降水を、大規模投資
を伴わずに灌漑用水として
活用することを可能にする
技術。
東京大学 情報理工学
系研究科シ
ステム情報
学専攻
講師
代表者
氏名
文
機械制御向けインテリジェ
ント画像センサ「画像モー
メントセンサ」の開発。イメ
ージセンサと画像処理回路
画像モーメン
をワンチップ化した高速・
05A11014a トセンサの開 高機能な視覚センサ。セン
発
サ単体で撮像と画像処理を
行い、産業用ロボットなどの
リアルタイム制御に威力を
発揮する。
機関・役職
英
サブタイトル
和
研究テーマ
実用化フェーズ
プロジェクト
ID
○
− − ○
1
− −
受賞歴など
(他の競争的資金への
つながりを含む)
お問い合わせ
住所
TEL
FAX
e-mail
研究室URL
−
(e-mail)
Takashi_Komuro@
東京都文京区
ipc.i.u-tokyo.ac.jp
本郷7–3–1
TEL:
(URL)
03–5841–6936
http://www.
FAX:
k2.t.u-tokyo.
03–5841–8604
ac.jp/index-j.
html/
第6回 船 井 情 報
科学奨励賞
(2007
年4月21日)
第19回安藤博記念
学術奨励賞
(2006
年6月24日)
総務省戦略的情報
通信研究開発推進
制度
(SCOPE)
の採
択に繋がった。
神奈川県横浜市
保土ヶ谷区
常盤台79–5
TEL:
045–339–4327
FAX:
045–338–1157
−
茨城県日立市 (e-mail)
中成沢町
komine@
4–12–1
mx.ibaraki.ac.jp
TEL:
0294–38–5103 (URL)
http://fermi.dmt.
FAX:
0294–38–5103 ibaraki.ac.jp/
(e-mail)
[email protected]
(URL)
http://www.
ochiailab.dnj.ynu.
ac.jp/
(e-mail)
[email protected].
osaka-u.ac.jp
1
電気化学会学術賞
(2007年3月 )
、今
中信人、井上学術賞
−
(井上科学振興財団)
(2008年2月 )
、今
中信人
大阪府大阪府
吹田市山田丘
2–1
TEL:
06–6879–7353
FAX:
06–6879–7354
− − −
1
文部科学省科学研
究費補助金基盤研
究
(B)
「土壌不均一
○ 系における植物パ
フォ ー マン ス 」
(2008年)
の採択に
繋がった。
(e-mail)
kyano@agr.
愛知県名古屋市
nagoya-u.ac.jp
千種区不老町
TEL:
(URL)
052–789–4024
http://www.agr.
FAX:
nagoya-u.
052–789–5558
ac.jp/~sakumotu/
yano/index.html
9
2
電池技術委員会賞
(2007年11月)
The Woldemar A.
Weyl International
Glass Science
− −
Award
(2007 年 6
月)日本セラミック
ス協会第60回進歩
賞
(2006年5月)
他2件
大阪府堺市
学園町1–1
TEL:
072–254–9334
FAX:
072–254–9334
3
平成20年度科学研
究費補助金
(2008
年)
、JSTシ ーズ 発
掘試験
(2008年)
の
採択に繋がった。
佐賀県佐賀市
本庄町1番地
TEL:
0952–28–8872
FAX:
0952–28–8855
8
4
1
1
−
−
− −
(URL)
http://www.
chem.eng.
osaka-u.
ac.jp/~imaken/
(e-mail)
hayashi@chem.
osakafu-u.ac.jp
(URL)
http://www.
chem.osakafu-u.
ac.jp/ohka/
ohka2/index.html
(e-mail)
ttanaka@
cc.saga-u.ac.jp
(URL)
http://www.sc.
ec.saga-u.ac.jp/
研究者INDEX
産業技術
総合研究所
環境化学技
術研究部門
研究員
井村知弘
2
− 11 4
− 12 4
1
1
4
− 12 8
− − − 19 12
− − −
1
1
交渉中
経済性かつ機能性に優れる
バイオサーファクタントをリ
ガンドとした新しい抗体分離
技術。抗ガン剤、バイオメ
ディカル材料などの開発に
欠かせない抗体。酵母を利
用して大豆油から作ったバ
イオサーファクタントを基に
分離・精製する画期的なリ
ガンド物質を開発。
2
5
2
1
新規連携希望
バイオサーフ
ァクタントをリ
ガ ンドとし た
05A33008c 有用タンパク
質の高効率分
離システムの
開発
荻野博康
8
− − −
1
士
大阪府立
大学大学院
工学研究科
准教授
3
1
6
5
2
契約済
有機溶媒下でも安定して高
活性を示す酵素を開発。〜
難水溶性のファインケミカ
ル製品製造プロセスの触媒
として応用可能〜
2
1
− − −
3
士
非水系バイオ
プロセスで用
いられる有機
05A33005d
溶媒耐性生体
触媒の開発
椎木 弘
1
1
− − −
4
博
大阪府立
大学
産学官連携
機構
准教授
3
0
2
士
ワンステップ
ナノめっき 法
によるプラス
05A33001a チックビーズ
の導電化技術
の開発
低環境負荷なナノ粒子めっ
き法による導電性マイクロ
ビーズの作製。携帯電話な
ど液晶ディスプレイ
(LCD)
等
に使用されているマイクロ
ビーズについて、従来の無
電解めっき法に比べ作業が
容易で、精度も高く製作す
ることができる省資源、低
環境負荷な「ナノ粒子めっ
き法」を開発。
小関道彦
4
1
1
修
X線CT画像の高精度化と画
像情報に基づく非破壊検査
技術。
東京工業
高精度マイク
X線CT画像に発生するノイズ
大学大学院
ロX線CT装 置
(メタルアーチファクト)
を低
理工学研究
によ るMEMS
05A29002d デバイスのリ 減させる3つの手法を開発。 科機械制御
材料別に鮮明な撮影画像を
バースエンシ
システム専攻
実現。非破壊型検査の精度
ニアリング
助教
向上に貢献し、CT技術を広
く製品検査技術に活用する
ことを可能にした。
2
4
− − −
学生養成数 連携企業数
学
東京大学 生産技術研
究 所 人 間・ 岸 利治
社会系部門
准教授
2
5
海外登録
能動的なひび
割れ自己治癒
05A27012d 機能を有する
コン クリート
の開発
構造物の維持管理費用の低
減、防水工不要!?ひび割れ
を自ら閉塞する自己治癒コ
ンクリートの開発。ひび割
れを自ら閉ざす自己治癒コ
ンクリートの開発。トンネル
など構造物の維持管理費用
を低減し防水工事も不要と
なる技術。
平田 敦
8
海外出願
東京工業
大学大学院
理工学研究
科機械物理
工学専攻 准教授
4
特 許
国内登録
ナノカ ー ボン
閉構造体によ
る固体潤滑表
05A26011c
面システムの
創出
ナノカーボン閉構造体によ
る固体潤滑表面システムの
創出。
ナノメートルサイズのボール
ベアリング球形の微粒子カ
ーボンオニオンの生成法を
確立し、固体潤滑材として
の優れた特性を持つことを
明らかにした。
3
文
池上啓太
査読付論文
文
自動車排ガス浄化のキーテ
クノロジー〜大容量酸素吸蔵
(ストレージ)
物質〜。酸素吸
大容量酸素ス
蔵放出量が中高温域で既存 熊本大学
トレ ージ 機 能
物質を8倍近く上回る大容 大学院
物質の創製と
05A25007d 次世代自動車 量酸素吸蔵物質を開発。自 自然科学
動 車 価 格 の 約1割 を占 め、 研究科
触媒技術への
自動車の排ガス浄化として 助教
展開
使用されている貴金属の使
用量を大幅に低減する技術
として期待される。
代表者
氏名
国内出願
機関・役職
英
サブタイトル
和
研究テーマ
実用化フェーズ
プロジェクト
ID
− −
− − − ○
1
−
2
1
2
2
受賞歴など
(他の競争的資金への
つながりを含む)
受賞1件
−
東京都目黒区
大岡山
2–12–1
TEL:
03–5734–2163
FAX:
03–5734–2893
4
3
JST独 創 的シ ー ズ
展開事業
(大学発ベ
− ○ ンチャー創出推進)
(2008年)
の採択に
繋がった。
−
3
2
東京都目黒区
駒場4–6–1
TEL:
03–5452–6394
FAX:
03–5452–6395
(e-mail)
ahirata@ctrl.
titech.ac.jp
(URL)
http://musashi.
ctrl.titech.ac.jp/
(e-mail)
[email protected].
ac.jp
(URL)
http://wdnsword.
iis.u-tokyo.ac.jp/
(e-mail)
koseki@mech.
東京都目黒区
titech.ac.jp
計測自動制御学会 大岡山2–12–1
第24回センシング TEL:
(URL)
フォーラム学術奨 03–5734–2822
http://www.
FAX:
励賞
mech.titech.
03–5734–2822
ac.jp/~inouhp/
indexjp.html/
1
−
e-mail
研究室URL
(e-mail)
ikeue@chem.
kumamoto-u.
熊本県熊本市 ac.jp
黒髪2–39–1
(URL)
TEL:
096–342–3653 http://www.
chem.
FAX:
096–342–3653 kumamoto-u.
ac.jp/~lab0/
machida/index.
htm/
第1回 自 己 治 癒 材
料国際会議「Travel
Award受賞」
(安合
− −
浩)
(2007年4月18−
20日)
○
お問い合わせ
住所
TEL
FAX
大阪府堺市
中区
学園町1–2
TEL:
072–254–9875
FAX:
072–254–9875
(e-mail)
shii@riast.
osakahu-u.ac.jp
(URL)
http://tokachi.
riast.osakafu-u.
ac.jp/Esentan1/
home.html
(e-mail)
ogino@chemeng.
osakafu-u.ac.jp
平成19年度酵素工
学奨励賞 受賞(荻
野博康、2007年10
月12日)
○
YABEC 2007
Poster Award受 賞
(荻野博康、2007年
10月21日)
、他2件
大阪府堺市
中区
学園町1–1
TEL:
072–254–9299
FAX:
072–254–9911
○
(e-mail)
茨城県つくば市
t-imura@aist.
東1–1–1
go.jp
中央5–2
TEL:
(URL)
029–861–4738
http://unit.aist.
FAX:
go.jp/isc/ci/
029–861–4660
index.html/
−
(URL)
http://www.
chemeng.
osakafu-u.ac.jp/
group4/indexJ.
html
研究者INDEX
交渉中
新規連携希望
士
1
契約済
士
5
8 10
博
6 10 −
− −
士
0
修
3
学生養成数 連携企業数
学
−
9
海外登録
2
0
海外出願
尾崎弘一
3
特 許
国内登録
ウイルス検出をもっと簡単、
迅速に。グローバルサーベ
イランス適用を目指して。ヒ 鳥取大学 トや鳥・獣のウイルスを電 農学部獣医
気的な信号変化をとらえて、 学科
即座に、高感度に検知する 助教
まったく新しい測定原理の
バイオセンサ。
曽我公平
国内出願
東京理科
大学
基礎工学部
准教授
査読付論文
文
バイオ・ナノフォトニクスの
ためのUPCナノ粒子の合成
と機能化。細胞内の物質移
動を可視化する蛍光バイオ
イメージングはバイオテクノ
ロジーやバイオメディカル
分野のためのキーテクノロ
ジーといわれている。新開
発の蛍光マーカーは、長時
間かつ深度が深い観察を可
能にするとともに「からだ
にやさしいバイオイメージ
ング」を実現する。
代表者
氏名
文
迅速・高感度
なインフルエ
05A34014a ンザウイルス
検出システム
の構築
機関・役職
英
バイオ・ナノフ
ォトニ クス の
05A34013a ためのUPCナ
ノ粒子の合成
と機能化
サブタイトル
和
研究テーマ
実用化フェーズ
プロジェクト
ID
− − ○
− − − − − − −
お問い合わせ
受賞歴など
住所
TEL
FAX
(他の競争的資金への
つながりを含む)
千葉県野田市 (e-mail)
山崎2641
[email protected]
TEL:
04–7122–9689 (URL)
http://sogalabo.
FAX:
04–7124–1526 jp
受賞3件
−
e-mail
研究室URL
・抗原の特異的
検出に関する技
術について
尾崎弘一
鳥取大学農学部
獣医学科・助教
住所:
鳥取県鳥取市
・抗原の特異的検
湖山町
出に関する技術に
南4–101
ついて
TEL/FAX:
(e-mail)
0857–31–5545
ikazo-h@muses.
tottori-u.ac.jp
・CNTセンサの
作 出、検 出 装
・CNTセンサの作
置に関す る技
出、検出装置に関
術について
する技術について
末岡和久
(e-mail)
北海道大学
sueoka@ist.
大学院情報科学
hokudai.ac.jp
研究科・教授
住所:
北海道札幌市
北区北13条西
8丁目 工学部
Q棟256号室
TEL/FAX:
011–706–6539
没入歩行感覚
呈示装置を用
い
たリハビリ
05A35002d
テーションシ
ステム
健康な人の歩行と歩行時の
映像を体験しながら歩行リ
ハビリテーション。リハビリ
患者がより現実に近い移動
感覚で歩行機能の改善訓練
をできる装置と、訓練中の
飽きを防ぎリハビリ効果の
向上を実現する、球面ディ
スプレイを組み合わせた新
しい歩行リハビリテーション
システムの開発。
筑波大学
大学院
システム情報
工学研究科
知能機能シ
ステム専攻
准教授
微少試料内全
元素分析用パ
ルス同期マル
05A37005d チガスプラズ
マ分析装置の
開発
大気圧マルチガス高純度プ
ラズマを開発。半導体プロ
セシング、大気圧CVDの高
速化や新物質の創造に貢
献。iPS細胞など、単一細胞
分析への扉を開く極微少量
試料の分析装置への応用に
も成功。
ITス マ ート タ
ーミナルを用
いた自動構造
05A42001d ヘルスモニタ
リングシステ
ム
老朽化構造の自動劣化診断
システムの開発。センサを
取り付けるだけで構造物の
老化診断を可能とする自動
群馬大学
モ ニ タリン グシス テムと、
大学院
損傷時データなど事前情報
工学研究科
を必要としない『統計的無
准教授
学習損傷診断法』を開発。
橋梁など鋼構造建造物から
車軸など動体物まで用途多
彩。
東京工業
大学大学院
総合理工学
研究科創造
エネルギー
専攻
准教授
矢野博明
沖野晃俊
岩崎 篤
3
3
2
2
3
2
2
1
5
1
6
− − −
1
3
5
3
−
− − 14 2
− − − −
5
5
1
2
5
1
− ○
−
3
2007年 35th Colloquium
Spectroscopicum
Internationale (CSI
XXXV), CSI Excellent
Poster Award(Xiamen,
China ) “Mult i-ga s
Microplasma Source
○
for Trace Elemental
Analysis”
文部科学大臣表彰若手
科学者賞
(2005年)
文部科学省科学研究 費補助金基盤研究(A)
(2008年)の採択に繋が
った。
1
日本機械学会関東
支部ブロック合同
講 演 会2007さ い
たま「 ヤングオー
サーアワード」
JSTシ ーズ 発 掘 試
験助成金
(2006年)
の採択に繋がった。
○
(e-mail)
茨城県つくば市
[email protected].
天王台1–1–1
ac.jp
TEL:
029–953–5062
(URL)
FAX:
http://intron.
029–853–5062
kz.tsukuba.ac.jp/
(e-mail)
神奈川県横浜市
aokino@
緑区長津田町
es.titech.ac.jp
4259–J2–32
TEL:
(URL)
045–924–5688
http://www.
FAX:
es.titech.ac.jp/
045–924–5688
okino/index.html/
(e-mail)
iwasaki@
群馬県桐生市 me.gunma-u.
天神町1–5–1 ac.jp
TEL:
0277–30–1535 (URL)
http://www.
FAX:
0277–30–1535 me.gunma-u.
ac.jp/zai1/iwa/
indexj.html/
研究者INDEX
1
− − − − − − 15
3
− − − − −
2
−
1
2
−
−
1
1
2
−
− −
1
交渉中
− − −
3
− −
新規連携希望
1
3
3
士
− − − −
2
1
契約済
2
− − −
士
松山一紀
3
2
− −
博
バイオ産業キャリア開発コ
ンソーシアムの設立と、キ
ャリア・ナビゲーション・プ
ログラムの開発。主にバイ
オ産業に従事する研究開発 近畿大学 者が企業戦略に即応しなが 経営学部 ら、研究者キャリアを開発 准教授
するためのデザインや企業
マネジメントのモデルと、最
適な手法を開発するための
機関モデルの創出。
丹澤祥晃
1
2
2
士
バイオ・情 報
産業に於ける
イノベーション
促進型の専門
05B53004a 技術者キャリ
アのナビゲー
ション・モ デ
ルの研究開発
日本工業
大学
工学部機械
工学科
准教授
2
−
5
1
修
鳥翼型垂直軸タービン流れ
の可視化。よりたくさんの
風を「受け」より効率よく風
鳥翼型垂直軸
を「避ける」しなやかで鳥
05A51007c タービン流れ の翼のような風力発電シス
の可視化
テム。鳥翼型垂直軸風力タ
ービンと風を効率的に風車
へ流す集風器。
大原 智
2
−
−
学生養成数 連携企業数
学
DNAをテンプレートとした
金属ナノ構造制御技術によ
る、革新的ハイブリッドナノ
大阪大学 水素ガスセンサーの開発。
接合科学研
DNAとパ ラジウムによる、
究所
ハイブリッドナノ構造体を水
准教授
素センサーに応用。従来よ
り高速・高感度での水素ガ
ス検知を可能にする。
近藤 淳
2
1
海外登録
パラジウム−
DNAハイブリ
ッドナノワイヤ
05A50004c ーを用いた超
高性能室温作
動小型水素セ
ンサー
静岡大学 創造科学技
術大学院 准教授
泰岡顕治
4
海外出願
弾性波式小型液相系センサ
の開発。次世代モバイル電
源として期待される、ダイ
弾性波式小型 レクトメタノール燃料電池の
05A49009c 液相系センサ 実現に不可欠なメタノール
濃 度 セン サ。弾 性 表 面 波
の開発
(SAW)素子を用いて小型・
軽量・安価・高精度なメタノ
ールセンサを実現する。
慶應義塾
大学
理工学部
機械工学科
准教授
−
特 許
国内登録
高効率なガス貯蔵・輸送の
ためのクラスレート水和物
シミュレータを開発。天然ガ
ス成分や水素の新しい貯蔵・
輸送方法として注目される
クラスレート水和物。その
相平衡条件を分子動力学シ
ミュレーションを用いて予測
するシミュレータを開発。天
然ガス等の貯蔵・輸送に係
るコスト削減のための予測
を可能にした。
文
クラスレ ート
水和物を用い
た高効率エネ
ル ギ ー 貯 蔵・
05A45004c 輸送技術のた
め の 相 平 衡・
連続生成シュ
ミレ ー タの 開
発
村井祐一 3
査読付論文
文
混相流パイプ
ライン のリア
05A45002d ルタイム成分
流量計測技術
の開発
超音波パルスによるリアル
タイム混相流量計の開発。
現場配管にクランブオンす
るだけで計測開始。配管の 北海道大学
外側をセンサージャケット 大学院
で覆うだけで、気体・液体・ 工学研究科
固体が混在する管内の成分 エネルギー
別の流れをリアルタイムに 環境システ
計測。成分流量計測誤差範 ム専攻
囲は5%以内と高精度、パ 准教授
イプラインによる資源や原
料の効率的・計画的な輸送
に寄与。
代表者
氏名
国内出願
機関・役職
英
サブタイトル
和
研究テーマ
実用化フェーズ
プロジェクト
ID
受賞歴など
(他の競争的資金への
つながりを含む)
−
お問い合わせ
住所
TEL
FAX
北海道札幌市
北区
北13条西8丁目
TEL:
011–706–6372
FAX:
011–706–7889
1
−
2
神奈川県横浜市
港北区
分子シミュレーショ 日吉3–14–1
○ ン 研 究 会 学 術 賞 TEL:
(2006年11月)
045–566–1523
FAX:
045–566–1495
(e-mail)
murai@eng.
hokudai.ac.jp
(URL)
http://ring-me.
eng.hokudai.
ac.jp/murai/
index.html/
(e-mail)
yasuoka@mech.
keio.ac.jp
(URL)
http://www.
yasuoka.mech.
keio.ac.jp/
(e-mail)
j-kondoh@sys.
静岡県浜松市
中区城北3–5–1 eng.shizuoka.jp
TEL:
053–478–1221 (URL)
http://www.sys.
FAX:
053–478–1221 eng.shizuoka.
ac.jp/~j-kondoh/
2
−
1
化学工学会「第20
回生体機能関連化
学部会・部会講演賞」
(2005年)
、
Material Research
S o c i e t y「 M R S
○
Best Poster
Awards」
(2008
年)
、他2件。平 成
18年度科学研究費
補助金基盤研究
(B)
の採択に繋がった。
(e-mail)
ohara@jwri.
大阪府茨木市
osaka-u.ac.jp
美穂ヶ丘11–1
TEL:
(URL)
06–6879–4370
http://www.jwri.
FAX:
osaka-u.ac.jp/
06–6879–4370
division/
sprc1-aphm.htm
−
−
埼玉県
(e-mail)
南埼玉郡
tanzawa@nit.
宮代町学園台 ac.jp
4–1
(URL)
TEL:
0480–33–7638 http://www.nit.
ac.jp/kyoin/m13.
FAX:
0480–33–7645 html/
−
(e-mail)
大阪府大阪市
kmatsuyama@
小若江3–4–1
bus.kindai.ac.jp
TEL:
06–6721–2332
(URL)
FAX:
http://biocareer.
06–6729–2493
jp/
1
− − −
−
e-mail
研究室URL
若手研究グラントの概要
若手研究グラント(産業技術研究助成事業)は産業界や社会のニーズに応える産業技術シーズの発
掘・育成や若手の産業技術研究人材の育成を図っています。産業技術力強化のために、大学・研究
機関などの若手研究者(個人、チーム)が取り組む産業応用を意図した研究開発を助成しています。
①対 象 者
② 対象分野
大学・研究機関などの若手研究者(個人またはチーム)
1.ライフサイエンス分野
2.情報通信分野
3.ナノテクノロジー・材料分野 4.製造技術分野 5.環境エネルギー分野 6.革新的融合分野 7.産業技術に関する社会科学分野 8.インターナショナル分野 ③ 助成期間 4年または2年 ④ 助成形態 定額助成 ⑤ 助成金額 〈直接経費〉
1.∼5. 5000万円以内/4年 3000万円以内/2年
6.
5000万円以内/4年(1∼2年目3000万円以内)
7.
1000万円以内/2年
8.
5000万円以内/4年(1∼2年目3000万円以内)
〈間接経費〉
直接経費の30%相当額を所属機関に助成します。
8
CONTENTS
産業技術研究助成事業 若手研究グラント成果実例集
若手研究グラント研究価値創造30
若手研究グラント成果実例全国MAP
研究者INDEX
若手研究グラントの概要
2
3
8
産業技術研究助成事業は、若い世代の研究者の創造性を支援し、
産業技術シーズを社会に還元します。
10
研究開発推進部プログラムディレクター 佐々木義之
成果実例30
ライフサイエンス分野
九州大学 大学院薬学研究院 京都大学 大学院薬学研究科 山形大学 大学院理工学研究科 京都大学 大学院農学研究科 東京海洋大学 海洋科学部
浜瀬健司
小野正博
渡部裕輝
櫻谷英治
吉崎悟朗
14
15
16
17
18
東京大学 情報理工学系研究科 横浜国立大学 大学院工学研究院 茨城大学 工学部メディア通信工学科
小室 孝
落合秀樹
小峰啓史
19
20
21
大阪大学 大学院工学研究科 名古屋大学 大学院生命農学研究科
田村真治
矢野勝也
22
23
大阪府立大学 大学院工学研究科 林 晃敏
佐賀大学 シンクロトロン光応用研究センター 田中 徹
熊本大学 大学院自然科学研究科 池上啓太
東京工業大学 大学院理工学研究科 平田 敦
東京大学 生産技術研究所
岸 利治
24
25
26
27
28
東京工業大学 大学院理工学研究科 大阪府立大学 産学官連携機構 大阪府立大学 大学院工学研究科 産業技術総合研究所
小関道彦
椎木 弘
荻野博康
井村知弘
29
30
31
32
東京理科大学 基礎工学部 鳥取大学 農学部獣医学科 筑波大学 大学院システム情報工学研究科 東京工業大学 大学院総合理工学研究科 群馬大学 大学院工学研究科
曽我公平
尾崎弘一
矢野博明
沖野晃俊
岩崎 篤
33
34
35
36
37
北海道大学 大学院工学研究科
慶應義塾大学 理工学部機械工学科 静岡大学 創造科学技術大学院 大阪大学 接合科学研究所 日本工業大学 工学部機械工学科
村井祐一
奏岡顕治
近藤 淳
大原 智
丹澤祥晃
38
39
40
41
42
松山一紀
43
情報通信分野
環境分野
ナノテクノロジー・材料分野
製造技術分野
融合的・横断的・統合的分野
エネルギー分野
産業技術に関する社会科学分野
近畿大学 経営学部
実用化を研く01
44
タンパク質の結晶を育成する、革新的な技術を武器に、潰れないベンチャーを目指す
大阪大学大学院工学研究科 准教授 高野和文
株式会社創晶 代表取締役社長 安達宏昭
実用化を研く02
48
柔軟な発想で、
「自分らしい」研究を発展させることが実用化への第一歩
群馬大学 大学院工学研究科 准教授 上原宏樹
競争的資金制度および提案公募型事業一覧表
52
産
業
技
術
シ
ー
ズ
を
社
会
に
還
元
し
ま
す
。
若
い
世
代
の
研
究
者
の
創
造
性
を
支
援
し
、
産
業
技
術
研
究
助
成
事
業
は
、
佐々木 義之
研究開発推進部プログラムディレクター
若
手
研
究
グ
ラ
ン
ト
プログラムディレクターとして産業技術研究助成
事業全般に目を配り、制度の改善などを図る。
平成17年度第1回採択(研究期間3年)の産業技術研究助成事業(若手研究グラント)
に係る研究成果報告会が2008年5月に開催されました。写真は報告会の様子。
10
Message for NEDO Readers
平成12年度にスタートした産業技術研究助成事業は、
若手研究者への研究開発環境の整備として定着している。
プログラムディレクター
その運営に携わる PDに、事業のポイントやテーマ採択の基準などを尋ねる。
若手研究者に研究開発のための
環境整備の制度
佐々木
経済産業政策ツールとしての
研究開発の一環という位置づけですが、
事業の主旨を踏まえた
五つのポイント
−
−
−そもそも、産業技術研究助成事業、
ナショナルプロジェクトが当面の社会
−
−
−若手研究グラントの運営に当たって、
いわゆる若手研究グラント(以下、若
ニーズに基づいているのに対して、本
どのようなことがポイントになりますか。
手研究グラントという)が創設される
制度はより長期的な政策目標の実現に
佐々木
に到ったのは、どのような背景があっ
資する研究開発ということで、「産業技
ちが意図している主なポイントは五つあ
たのでしょうか。
術シーズの発掘・育成や産業技術研究
ります。まず、「アイデア重視の革新的
佐々木
より革新的な産業技術シーズを
人材の育成を図る」のが目的です。創
テーマの発掘」ということ。中長期的な
発掘するためには、発想の柔軟な若手研
設の経緯から、応募者は、環境・エネ
というより、より長期的な政策課題の実
究者を活かすことが有効であるというこ
ルギー関連の研究を除いて、原則とし
現を目指して、幅広い視野でサイエンス
と、また、産業界と連携して新規産業技
て40歳未満としています。
にまで遡ってブレークスルーを見出すと
術を創造するプロジェクト・リーダーと
−
−
−「産業応用を意図した研究開発」へ
いうことです。2番目のポイントは、
なる人材の養成が大学や国立研究所等に
の助成ということで、対象となる研究
求められている、というような考え方に
の範囲が絞られることになりますね。
の育成」です。1番目の先端的な研究開
基づいて、産業技術力強化法の制定を機
佐々木
発を行う中で、プロジェクトマネジャー、
に、平成12年度に創設されています。
象となります。産業応用を意図してい
技術移転スペシャリスト、知財マネジメ
一方、NEDO事業の大きな柱の一つに、
るもので、かつ明確な出口を指向した
ント人材としての育成も推進していくと
「産業技術に関する研究開発関連事業」
基礎研究であることが必要です。つま
いうことです。3番目は、基礎的な研究
というのがありますが、今言ったような
り、スムーズに実用化に移行できるも
から実用的な研究へ、迅速にステップア
ことから、若手の研究者を対象に、産業
のということですね。税金で運用され
ップすること。ここで得られた成果を、
応用を意図した研究開発の環境を整備し
ている以上、産業技術シーズを社会に
ナショナルプロジェクトといわれる応用
て優れた成果を挙げてもらおう、という
還元することも重要になりますから…。
研究、さらには実用化研究へとシームレ
ことで始まった制度です。
−
−
−なるほど。若手研究グラントの位置
スに発展させ、シーズを社会に還元する
−
−
−目的と応募要件が明確なんですね。
づけがはっきりしました。
ことです。4番目は、国際的な取り組み
「柔軟かつタフな思考が可能な産業人材
▲
目的指向型基礎研究が主な対
事業の目的に基づき、わたした
産業技術研究助成事業(若手研究グラン
ト)の位置づけ
目的指向型基礎研究を助成し、産業技術
人材を育成することを目的としている
11
合的に評価しなければなりません。
いずれにしても、その研究の重点、
セールスポイントが入り口にあるのか、
中間にあるのか、出口にあるのかを、
本人も、評価する側も十分に分かって
いることが重要です。いずれにしても、
を推進させること。研究によっては、外
一つは、そもそもその研究において、
わたしたちにとって、テーマを採択す
国との協力が有利なことがあります。特
何が問題になっているかということ。
るというのは、とても難しいことをし
に、ISOなど標準化が必要な技術などで
研究者の方々は、あれやこれや色々な
ているということです。基礎的な研究
それがいえます。内容がよくても標準の
ことをやってみたいと考えているもの
というものは、社会におけるエンジン
獲得が諸外国に遅れていることがあるの
ですが、第三者から見て、なぜその問
であり根源ともいえるものです。中に
で、研究の初期段階から国際協力をして
題に取り組む必要があるのかが容易に
は、無駄になるところもありますが、
いくことが必要です。また、それによっ
分かるものでなければなりません。研
その重要性を一般の方々にも、ぜひ分
て国際競争力も高まります。5番目は、
究においては、どこに問題があるかを
かってほしいと思います。
コンプライアンス意識の強化です。
発見できれば、研究の7割方は終わって
基礎研究は、企業等が行っている開発
提出されたテーマは、
厳格にふるいにかけられる
研究とは異なり、直接何らかの製品を実
そして、その問題の解決を社会がどれ
現するというものではなく、実際の成果
程必要としているかを考えなければな
−
−
−提出されたテーマは、どのような流
物としては特許や論文など実生活では目
りません。次に、その問題をどうやっ
れを経て採択に到るのでしょうか。
に見えないものが中心になりますから、
て解決するかということ。解決のため
佐々木
データの改ざん等、不正行為が起こりえ
には、異なる既成概念の連合であるア
て提出されます。提案書が出されると、
ます。技術的な面や経理面等で不正行為
イデアが必要です。大きな問題であれ
まず、ピアレビュアーという、予め登録し
があった際は、厳格に対処するという姿
ば、それ以前にいろいろな人が取り組
ていただいている方々に審査してもらい
勢で臨む必要があると考えています。
んでいるはずですから、その提案者が
ます。ピアレビュアーは、さまざまな分
−
−
−そういう考えが根底にあって運営さ
どういう点に独自性をもち、どれくら
野の研究者の方々で、1テーマを、6人の
れているわけですね。
い新規性があり、また、どれくらい実
ピアレビュアーが審査します。審査では、
現可能なのかを考慮します。三つめは、
技術的観点から、いくつかの項目に関し
テーマ採択は、
社会との関わりを考慮
−
−
−次に、テーマを採択する際には、ど
ういう観点が重要になるのでしょうか。
佐々木
12
いると言っても過言ではありません。
その問題が解決すればどういう良いこ
研究者のテーマは、提案書とし
公募の予告 NEDOホームページ等
とがあるのか、社会においてどういう
メリットがあるのかということです。
公募開始
たとえば、100万人に1人しか発症し
実用化に近い研究は誰が見て
ないような非常に稀な難病を治療でき
も役に立つかどうかの判断がしやすい
るようになれば、特定の人にとっては
のですが、基礎研究は分かりづらいで
非常に大きな意味を持ちますが、万人
す。たとえば、予算が限られている中
に役立つというものではありません。
で、ガンの特効薬の研究とガス検知器
これに対して、例えば高感度センサー
の研究のどちらが重要かを判断するの
を開発することは、誰かが無茶苦茶喜
は難しいことです。基礎研究の場合、
ぶというほどのことではないかもしれ
どの研究を優先させるのかを見極める
ませんが、より普遍的な分野で役立つ
のは特に難しいのですが、一番重要な
可能性があります。ですから、研究開
ことでもあります。そこで、採択に当
発の影響という点では、こうした深さ
たっては、三つの点に留意しています。
方向の効果と横の広がりの両面から総
提案書の提出
ピアレビュー レピュアー(大学等3、産業界3)による審査
審査委員
(大学等4、
産業界4)
による
分野毎の審査委員会 審査(一部分野ではヒアリング)
プログラムディレクターによる採択案の作成
NEDO契約・助成審査委員会
交付・研究開始
▲テーマ採択までの流れ
ピアレビューによる審査と審査委員会が核になる
Message for NEDO Readers
て、それぞれ点数をつけます。こうして
うのが研究開発の一連の流れになりま
ついた6人のピアレビュアーの評点のう
“研究を研究する”ことで、
よい研究を見出す
ち、現在は最高点と最低点を除き、残りの
−
−
−産業技術“研究”というものをどのよ
は、単なる思いつきではなくて、客観的、
4人の評点の平均点をそのテーマの評点
うにとらえていらっしゃるのでしょう。
必然的に導き出されるようなものです。
としています。その評点の上位テーマが、
佐々木
わたしたちの仕事は、研究を研
ところで、概念が現象に厳密に対応す
次に分野ごとの審査委員会に提出されま
究しているわけです。そうでないとより
るというのは科学の場合に言えることで
す。100件のテーマが出されたとすると、
よい研究を見出すことはできません。そ
あって、一般的にはそうではありません。
だいたい10件から15件が審査委員会に
れで、研究とは何かということを考えて
例えば、
「仁義」でもいいですし、
「椅子」
進みます。審査委員会に進んだテーマは、
います。まず、概念と現象は存在の表と
でも何でもいいのですが、このような概
審査委員会の先生方の協議によって絞ら
裏であり、概念は定性的、現象は定量的
念は概念世界の中で客観的な位置を占め
れます。審査委員会の委員は、7、8名で
なものです。科学の本質は、概念世界の
ていますが、定性的なものにとどまって
す。その審査委員会を通ったテーマが、
客観性、そして、概念と現象の良好な対応
います。ナノテクで高さ10ナノメート
予算との兼ね合いを見ながらですが、最
性に基づいています。要するに、シミュ
ルの「椅子」を作ることができたとして、
終的な採択テーマとなります。採択と不
レーションの世界ですね。シミュレーショ
それは椅子として現象したと言えるでし
採択のボーダーは微妙で、僅差で不採択
ンが可能ということは、計算値と実験値、
ょうか?実は、研究開発の重要性を考察
になるテーマもあるわけで、ときとして
つまり概念と現象が対応しているという
するときには、このようなものごとの定
そういうものにいいテーマもあり、今後
ことです。それが科学の本質です。です
性的な面と定量的な面を明確に区別する
の検討課題であると思っています。
から、産業技術研究に限らず、現象を概
ことが特に重要になってくると思ってい
−
−
−採択されたテーマでも、中間評価で
念で把握し、把握された複数の概念を関
ます。この点については、もう少し深く
淘汰されることがあるのですね。
連づけることによって新しい概念を導出
考えてみたいと思っています。
佐々木
し、その新しい概念を現象化する、とい
−
−
−ありがとうございました。
研究期間4年のテーマについて
す。そのとき、その新しい概念というの
は、2年間の課題解決育成ステージの後
区分
に中間評価ゲートを設けているものもあ
A
ります。それまでの成果を評価して、7割
評価項目
が次の企業連携育成ステージに進めます。
−
−
−7割という割合は、どういうことか
らきているのでしょうか。
佐々木
9割や8割だと大半が通過すると
技術的
観点からの
評価
いうことで危機感が薄れます。かと言っ
て、5割しか通過できないのでは、せっか
く積み上げてきたのに無駄になる割合が
高すぎるということで7割にしています。
産業応用化の
観点からの
評価
−
−
−ある程度危機感を与えつつ、研究へ
のモチベーションも保つという絶妙な
割合なんですね。助成額はテーマごと
B
C
D
E インターナショナル分野
ライフサイエ
ンス、 情報通 環境エネルギー 革新的融合分野 産業技術に関す 国際的技術融合 社会ニーズ対応
る社会科学分野
信、ナノテクノ 分野
ロジー・材料、
製造技術分野
1 研究開発目標の妥当性
10%
10%
10%
15%
10%
10%
2 研究開発計画の妥当性
15%
15%
15%
15%
30%
30%
研究開発内容の
3
新規性・独創性・革新性
35%
25%
50%
35%
30%
25%
4 実用化の可能性
20%
15%
5%
25%
10%
10%
5 産業・社会への波及効果
5%
5%
10%
10%
10%
15%
6 産業界との連携可能性
10%
10%
10%
−
5%
5%
省エネルギー効果又は
7
石油代替効果
5%
20%
−
5%
5%
現象1
現象2
概念1
概念2
−
▲研究評価項目と区分ごとの重みづけ(平成20年度第1回公募時)
評価項目のどれに重みをつけるかは、区分ごとに異なる。特徴
点を色付けしている。
に異なるのでしょうか。
佐々木
いえ、区分ごとの差はあります
が、一定です。定額助成ということです。
アイデア
定性的
定量的
アメリカなどでは、芽が出ている研究に
すが、若手研究グランドの助成も、それ
に近い意味合いもあります。
概念3
(特許、論文)
データ
現象3
(熱、
光、
音、
電気、
運動、
物質、
材料、
デバイス、
システム、
プロセス、
生物、
環境等)
▲
は賞金的に助成することが行われていま
「産業技術」研究の成り立ち
概念と概念の関連を見出すことで新しい
概念(アイデア)を発見し、概念と現象
の対応が研究の特徴となる
13
ライフサイエンス分野
微量D-アミノ酸の一斉分析技術を開発し、新しい薬創りや疾病診断に役立てる
分析装置がないため
研究が進んでいなかったD型アミノ酸について全種類を
全自動で一斉に定量分析する技術を開発し
創薬や疾病診断への道を拓く
全てのアミノ酸(注1)の光学異性体(D型・L型)について、全自動で二次元一斉分析を行う技
術を開発。実用化・市販が見込まれる分析装置により、アミノ酸・タンパク質の研究が飛躍的
に進展し、新生理活性物質や病気の診断マーカー等の発見が期待される。
▲アミノ酸光学異性体を区別する全分析装置
従来の技術(ジアステレオマー法、キラル固定相法など)では不可能だった哺乳類体内の微
量D型アミノ酸を一斉に、しかも全自動で分析することが可能になります。
● アミノ酸を分析するカラム(注2)をミクロ化することに成功し、溶媒使用量を従来の10分の
1に減らすことができました。
●
▲
(注1)タンパク質に含まれる全アミノ酸20種にプロリン水酸
化体2種、アロ体2種を加えた24種。
(注2)カラム:クロマトグラフィーに用いる物質を分離する媒体。
(注3)光学異性体:原子の数・種類だけでなく結合順も同じだが、
鏡像関係にあって重なりあわない立体的構造をもつ分子。
マウス血清中全アミノ酸光学
異性体二次元分析の結果。図
は、Serセリン、Alaアラニン、
Proプロリン、Leuロイシン、
Lysリジン、の結果を表してい
る。一次元分析(図中の1D)
で分析した個別のアミノ酸を
二次元分析(2D)により、D
型とL型に分けて取り出した。
競合技術への強み
D型L型
一斉分析 自動化
(分析次元)
(1)ジアステ
○
○
レオマー法 15種程度
(従来技術)(一次元) 自動化できる
感度
△
(2)キラル
○
×
○
固定相法 1種のみ
自動化できる (1)の
(ニ次元)
(従来技術)
10∼100倍
(3)マニュアル
○
○
×
分取法
18種程度 自動化できない (1)の
(従来技術)(ニ次元)
10∼100倍
◎
(4)本研究で
開発した 全24種が
可能
技術
(ニ次元)
◎
全自動
◎
(2)(3)の
さらに10倍
アミノ酸
1種類あたり
の測定時間
◎
10分
△
価格
◎
500万円
程度
○
60分
1000万円
程度
×
◎
2時間
◎
10分
500万円
程度
■サクセス・キー
△
2000万円
程度
▲アミノ酸D型L型分析装置に関する従来技術と本研究技術の比較
①全アミノ酸を二次元で一斉に分析:生体内の微
量D-アミノ酸分析には二次元法が不可欠です。従
来の二次元分析法では、単一のアミノ酸をD型とL
型に分けることはできましたが、全アミノ酸を一
斉に二次元分析する装置はこれまでにありません。
②全自動:非常に複雑な、しかも長時間を要する
分析のプロセスを、人手を使わずに行うことがで
きます。
③省資源・低環境負荷:分析装置をミクロ化した
結果、溶媒の量を大幅に低減、省資源だけでなく
廃液による環境負荷も減らしました。
④医療への貢献:D型アミノ酸による新しい診断法
や予防法の開発の可能性を拡げ、創薬や機能性食
品の開発も期待されます。
⑤市販・実用化へ:連携企業と一斉分析装置の市
販に向けた実用化研究を推進中です。
ここがポイント
アミノ酸には、互いに光学異性体 (注3)となるD
型(D体)とL型(L体)が存在しますが、ヒトを含
む哺乳類の体内にあるアミノ酸は全てL型であると
長い間考えられてきました。しかし近年、哺乳類の
体内から数種のD型アミノ酸が発見され、脳やホル
モン分泌組織などでD型が重要な役割を担っている
ことが明らかにされ始めています。しかし、全アミ
ノ酸のD型・L型を区別して定量できる高感度な分析
法がなかったため、生体内のD型アミノ酸の研究は
停滞しています。この分野の研究が進めば、D型ア
ミノ酸が未知の生理活性物質として働いていること
や、疾患のマーカーとして利用できることが明らか
になると期待されます。その結果、病気の診断・予
防への応用や医薬品・機能性食品等の開発を通し
て、医療や人々の健康維持に大きく貢献できると考
えています。こうした背景から、D型アミノ酸の一
斉分析技術を開発する研究を進め、その技術を確立
しました。現在、連携企業とともに装置の実用化と
市販に向けた研究を行っています。
14
▲個別のアミノ酸の(D型・L型)光学分析を
行うセミミクロキラルカラム
ブレイクスルーへの道のり
2002年:科学研究費補助金(若手研究B)に採択。
D型アミノ酸二次元分析の基盤を作製。D-アラニンの
高感度選択的二次元分析法を開発。アミノ酸迅速光
学分割に関するウィーン大学との共同研究を開始。
2003年:D-アラニンについて哺乳類体内における
組織分布を初めて明らかにし、下垂体前葉と膵臓に
局在することを発見。微量のD型アミノ酸が哺乳類
において生理機能を持つ可能性を世界で初めて示し
た。それまでD型アミノ酸の研究は停滞しており、
それは全アミノ酸のD体・L体を区別して定量できる
高感度分析法の欠如が原因だった。したがって、こ
れを可能にする分析装置の開発は、D体を考慮に入
れたアミノ酸・タンパク質研究を飛躍的に進展さ
せ、遊離D型アミノ酸の機能解析やアミノ酸残基D
化に伴うタンパク質異常の解析を通して、人類の健
康と安心に貢献できると考え、本研究を着想した。
武田科学振興財団薬学系研究奨励に採択され、二
次元一斉分析装置開発に不可欠となるマルチループ
システムを完成。後のNEDO産業技術研究助成事業
申請において基盤特許となる「液体クロマトグラフ
装置及び試料に含まれる光学異性体の分析」を出願。
2004年:科学研究費補助金(若手研究B)に採択。
NEDO産業技術研究助成事業の基盤となる疎水性D
型アミノ酸の一斉分析試作装置を完成させた。D型
アミノ酸に関する株式会社資生堂との共同開発研究
を開始。
2005年:平成17年度第1回産業技術研究助成事業
に資生堂を連携企業として応募、採択。分析装置の
自動化と9割の省エネを達成。
2006年:アミノ酸逆相分離に関する京都大学との
共同研究を開始。全自動省資源化試作装置を完成さ
せた。また、最終装置の技術基盤となる全アミノ酸
の逆相一斉分離条件の確立、並びに各アミノ酸の迅
速光学分割条件の確立を達成。
2007年:最終装置「光学異性体を区別する全アミノ
酸高感度一斉分析装置」を目標より約1年前倒しで
完成させる。この成果を受けて連携企業(株)資生堂
と平成19年度イノベーション実用化助成「次世代戦
略技術実用化開発助成事業」に応募、採択される。
アミノ酸は疎水性のものもあれば親水性のものもあ
り、酸性のものもあればアルカリ性のものもありとい
うように非常に多様なので、それを一斉に分析する技
術の開発には多くの困難が伴いました。そんな中にあ
って、試作装置によりD型アミノ酸の可能性を実証で
きたことが、高いモチベーションの維持につながりま
した。多くの方の協力にも感謝しなければなりません。
連携企業である資生堂の全面的なバックアップは、大
学の研究室のみでは不可能な高度のハードウェア、ソ
フトウェアの開発を可能にしてくれました。ウィーン
大学、京都大学等の研究者をはじめ、九大学内におい
ても広く共同研究を展開することで各分野の専門家か
ら多彩な助言、協力を得ることができました。
■ネクスト・ストーリー
現在は分析装置の実用化・市販に向けた研究を、
連携企業の資生堂とともに推進しています。これと
並行して、全D型アミノ酸を対象として疾病や生理
状態の変化に伴うマーカー分子の探索・発見と、新
規診断法構築への研究を展開していきます。さらに、
哺乳類体内における機能性D型アミノ酸の探索・発
見と創薬・機能性食品の開発などへの展開も行って
いきます。今後、本装置は高いミクロHPLC実用化
技術を持つ資生堂との共同開発を進めていきます。
現在、NEDO次世代戦略技術実用化開発助成事業で
実用試作装置を共同開発中であり、これらの試作装
置を用いる実試料、臨床試料などの測定を通した市
場テストを検討中です。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A01033d「光学異性体を区別する全アミノ酸高感
度一斉分析装置の開発」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
浜瀬 健司
九州大学 大学院薬学研究院 准教授
ライフサイエンス
アルツハイマー病の早期診断を可能にする老人斑アミロイドの分子イメージング技術
アルツハイマー病の原因物質である
老人斑(注1)アミロイドを体外から画像化
困難だった早期診断・早期治療につながる技術として注目される
アルツハイマー病における初期段階の脳の病変として知られる老人斑の主要な構成成分、アミロイド(注2)に選択
的な結合性を発揮し、老人斑アミロイドの体外からの画像化を可能とする放射性薬剤(注3)を開発。SPECT(注4)あ
るいはPET
(ポジトロン断層法)
を用いて生体の老人斑を体外から高感度に画像化し、
初期診断を実現する技術です。
▲本事業で開発したアミロイドイメージングプローブ
により老人斑を画像化したもの
80歳でアルツハイマー病と診断された患者の場合、発症過程のもっとも初期段階とされる50歳ごろから老人斑の沈着が始まることが確認されていま
す。しかしながらアルツハイマー病の確定診断は、患者の死後、脳の解剖による病理学的変化の確認に委ねられているのが現状です。
● 本技術の開発により、アルツハイマー病の生前・早期の診断が可能になるだけでなく、老人斑をターゲットにしたアルツハイマー病治療薬の開発、
病状の進行評価や治療薬の効果判定にも役立つと考えられます。
● 実用化が実現すると、アルツハイマー病患者とその家族の精神的・経済的負担の軽減にも大きく寄与することが見込まれています。
●
競合技術への強み
比較項目 分子骨格 検出方法 標識核種
従来・ コンゴーレッ PET
類似技術 ド、チオフラ
ビンT
技術の汎用性
C-11、C-11, F-18標識化合物による
F-18 PET診断は可能であるが、PET
施設の数は少なく限られており、
予防的診断を行うためには汎用
性が低い。日本に約150施設
提案技術 フラボンおよ SPECT Tc-99m 本研究で提案した化合物は、CI-123 11、F-18標識化合物を用いた
びその類縁化 or
PET
C-11 PET診断に加え、
合物
Tc-99m、I-123
F-18 標識化合物を用いたSPECT診断
にも応用可能であり、汎用性が
高い。国内で約2000施設
▲アミロイドのイメージングプローブに関する従来技術と本技術との比較表
アルツハイマー病の早期診断に対する社会的ニー
ズは高く、その技術開発が強く望まれています。現
在、脳内のアミロイドの蓄積を可視化するアミロイ
ドイメージングプローブの研究は、ピッツバーグ大学、
ペンシルバニア大学、カリフォルニア大学ロサンゼ
ルス校などをはじめとする世界中の研究グループで
鋭意進められています。現在までに、アミロイドの
蛍光染色試薬であるコンゴーレッドおよびチオフラ
ビンTの化学構造をもとに分子設計された化合物に
よる臨床研究が行われ、アミロイドイメージングプ
ローブの有用性が報告されています。しかし、これ
らのプローブには血液脳関門(注5)の透過性が低いこ
と、脳内での老人斑アミロイドへの特異的結合性が
低いなどの問題が指摘されています。
本研究ではコンゴーレッド、チオフラビンTとは
異なる分子骨格を探索し、開発した新規アミロイド
イメージングプローブである「フラボン誘導体」は、
阻害定数(注6)10nMという低い値を示し、アミロイ
ド凝集体への高い結合親和性、4∼5%injected
dose/gの移行性(注7)と速やかな浄化率(注8)老人斑ア
ミロイドへの特異的結合性を示しました。さらに高
性能なプローブとして、スチリルクロモン、カルコ
ン、フェニルクマリン、オーロン等の各種フラボン
誘導体(11種類)を開発しました。
ここがポイント
フラボン、スチリルクロモン、カルコン、フェニルクマ
リン、オーロンを基本骨格とする新規アミロイドイメ
ージングプローブ(アミロイド造影剤)
の候補化合物を約
100種類合成しました。合成した新規化合物でアミロイ
ド凝集体を用いた生体外
(In vitro)結合実験を行い、ア
ミロイドへの高い結合性を示す26種類の化合物を見出
しました。アミロイドへの高い結合性を示した化合物
に関して、正常マウスを用いた体内放射能分布実験を
行い、投与後早期の高い脳移行性と速やかなクリアラ
ンス(浄化性能)
を示すフラボン誘導体11種類(スチリ
ルクロモン、カルコン、フェニルクマリン、オーロン等)
の化合物を選出しました。これらの化合物は、いずれ
もアルツハイマー病モデルマウス脳およびアルツハイ
マー病患者のアミロイド斑への結合性を示し、新規ア
ミロイドイメージングプローブ(老人斑アミロイドの
イメージング剤)として期待される。
ブレイクスルーへの道のり
2001年:ペンシルバニア大学に留学し、Hank F.
Kung教授に師事。博士研究員としてアミロイドイ
メージングプローブの研究に参画する。
2004年:アメリカより帰国後も長崎大学大学院医
歯薬学研究科にて、アミロイドイメージングプロー
ブの開発研究を継続。その後、フラボン誘導体がア
ミロイドイメージングプローブとして機能すること
を発見(科研費研究)
。特許出願を行う。
2005年:平成17年度第1回産業技術研究助成に採
択され、助成研究をスタート。実験機器の大幅な拡
充を行う。
2006年:研究も軌道に乗り、フラボンのほか、カ
ルコン、オーロンなどのフラボノイド化合物も有望
なアミロイドイメージングプローブになることを明
らかにした。
2007年:助成研究も残すところ半年となり、アル
ツハイマー病モデルマウスでの検討の真っ只中、京
都大学大学院薬学研究科准教授として異動。京都大
学での研究立ち上げとともに、隔週ペースで長崎に
戻って助成研究も続行。
2008年:2008年研究期間中に、アミロイドへの
結合性を示す数十種類の新規化合物を発見、分子構
造とアミロイド結合性との関連、分子構造と生体内
動態との関連などの国際論文6件の成果を出しつつ、
6月に助成研究を終了。
性もあり、実際プリオン病に関する研究は進めてい
るところです。現在、わが国でPET施設がある病院
は150余りですが、本格的な高齢化社会の到来とと
もにアルツハイマー病患者が増えれば、診断はそれ
らの病院だけではとても対応しきれないでしょう。
したがって当面は、より汎用性が高く、全国に
2,000以上あるSPECT施設で使えるような診断薬
(老人斑を画像化する造影剤)をつくりたいと考え
ています。今後、共同開発パートナーと技術開発を
進める予定です。
(注1) アルツハイマー型認知症の発症に20年∼30年前から先
だって見られるもの。老人斑アミロイドの沈着によるも
ので、脳内にこの老人斑(老人斑アミロイド)や神経原
線維変化が多量にできると認知症を発症するとされる。
(注2) アミロイドβペプチドともいい、体内のタンパク質の1
種。アミロイドβペプチドは約40のアミノ酸から成る
凝集性の高いペプチドであり、アルツハイマー病の神経
病理学的変化のひとつである老人斑の主要な構成成分で
ある。
(注3) 微量の放射能を混ぜたブドウ糖を造影剤として使うPET
等、非常に低いレベルの放射性であり人体への影響は殆
ど無い。
(注4) 単一光子放射断層撮影(Single photon emission
computed tomography)のこと。体内に投与した放射
性同位体から放出されるガンマ線を検出し、その分布を
断層画像にするものであり、PETと同じく脳血管障害、
心臓病、癌の早期発見に有効とされる。PETに比べると
感度は劣るが、PETより安価かつ取り扱いが容易。
(注5) 血液と脳中枢神経系の組織液(脳脊髄液)との間の物質
交換を制限する機構である。
(注6) この阻害定数が小さい値程、アミロイドβ凝集体への結
合性が高いということを表す。既知放射性化合物と試験
化合物をアミロイドβ凝集体の存在下で共存させ、試験
化合物の濃度を変化させることによって、放射性化合物
のアミロイドβ凝集体への結合阻害定数を評価する。
■サクセス・キー
アメリカ留学中、Hank F. Kung教授からアミロ
イドイメージングプローブの研究開発についてドラ
ッグデザインや評価技術など多くのことを学ぶこと
ができました。国際学会での発表では800人が発表
するなか学会ハイライトにも選ばれ、研究内容につ
いてアメリカの中でも大いに注目を集めました。そ
の結果、数社の製薬メーカーから引き合いを受け、
現在共同開発研究を検討するに至っています。
(注7) injected dose/gとは、投与した放射性プローブ(造影
剤)全体に対する、脳1グラムあたりに集積した放射能
の割合を示す。これが高いほど、鮮明な脳内のアミロイ
ド蓄積の可視化が可能となる。
(注8) 脳内へ移行した放射能の80-90%の放射能が脳から消失
することを意味する。
■ネクスト・ストーリー
今後は、共同研究・ライセンス契約を交渉中の連
携企業とともに、本研究で開発した化合物群の最適
化および安全性の評価を経て、アルツハイマー病の
早期診断を可能とする老人斑アミロイドイメージン
グプローブの開発を推進していく予定です。また、
「アミロイド」が全身の臓器の細胞外に沈着する、
アミロイド病にはアルツハイマー病以外にもパーキ
ンソン病、プリオン病、2型糖尿病などがあります。
今回、開発に成功したアミロイド凝集体を認識する
プローブは、ほかのタンパク凝集体を検出する可能
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A03002a「アルツハイマー病の早期診断を可能に
する老人斑アミロイドの分子イメージング技術の開発」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
小野 正博
京都大学大学院薬学研究科 准教授
15
ライフサイエンス分野
簡単に非走査で2次元カメラが作り出す光干渉断層画像、高速画像化を実現
簡単な光干渉計(反射光強度を測定する装置)と2次元カメラで走査を行わずに、
神経活動や生体組織の光干渉断層画像(光を測定対象物にあてて戻ってきた光の干渉を
解析して得られる2次元の画像)を撮影する技術
これまで脳や神経系などの肉眼では捉えられない動きの速い現象が、1ms単位で測れ、
わずかな光量の変化を検出できる高いSN比を持つ光学的計測法(高速/高感度イメージングシステム)で測定されていた。
この従来の方法では得ることができない“深さ情報(一定の深さまでの断面方向の情報)”について、
1ms以下の時間分解能で計測できる高速OCT (Optical Coherence Tomography、光干渉断層画像)を開発した。
●
従来の走査型のOCT では“深さ情報”は取得できますが、2軸の機械走査を行って干渉信号を点検出で測定する為、画
像は1秒に数枚程度しか得られず、脳や神経系などの1ms以下の動きの速い現象を捉えることができません。そこで、
超高速CMOS カメラ(フレームレート3000fps)やInGaAs カメラ(同60fps、シャッター時間1ms)を用いた新し
い技術を開発し、神経活動のセンシングを行える見込みが得られました。
競合技術への強み
深さ情報 時間分解能 検出器
撮影速度
従来システム
[市販品]
×
走査型OCT
[市販品]
○
△
100ms程度 単一検出器
(数フレーム/秒)
非走査型
OCT
[研究試作品]
○
○
1ms以下 2次元カメラ
(1000フレーム/秒)
1ms以下
―
○
(1000フレーム/秒)
▲従来システムと研究試作品の比較
神経興奮などを計測する従来の手法は、吸収や蛍
光の変化を察知する膜電位感受性色素を用いた外因
性の光シグナルや、神経活動変化時の組織の代謝上
昇に起因した内因性光シグナルをイメージングして
行っていました。この光学的な計測法の特徴は、神
経活動という高速な電気現象をトレースするために
1msの時間分解能と神経活動に伴うわずかな光量の
変化を検出する高いSN比を有することです。です
が、表面からの変化しか捉えることができず、どの
深さで変化が起きているのかという情報は欠落して
いました。こうした問題を解決するため、表面から
2∼3mmの範囲を数μmから数十μmの高分解能で
イメージングを行うOCTの利用が提案されていま
す。しかし、利用されているOCT技術は、横と深さ
方向への走査を交互に行い、点検出器で光干渉信号
を検出する方式であるため、断層画像化の速度は数
フレーム/秒(fps)であり、上記の神経活動の光計測
法に比べ格段に遅くなります。そこで本研究では、
高い時間分解能を有するOCTの試作開発を目的と
し、取り組みを進めてきました。
ここがポイント
開発した高速非走査OCTシステムにおいては、
測定範囲5.8×2.8×2.0mm 3 (x × y × z)、画素数
512×250×512 が1/6 秒で測定でき、空間分解
能は、35μm(x軸)、42μm(y軸)、11μm(z軸)と
の結果を得ました。
また波長1.3μm帯のOCTシステムでは、長波長
の光のほうが光散乱の影響が少ないため、生体に対
して進達度が高いことはよく知られていますが、
1.3μmの光は、超高速度CMOSカメラでは検出で
きないため、この波長に感度のあるInGaAsカメラ
を使用する必要がありました。このInGaAsカメラ
のフレームレートは、60fpsとあまり速くないため、
1msの短いシャッター時間で測定しても、2枚の干
渉画像からOCT画像を求める方法では、サンプル
の動きの影響が出てしまいます。そこで1枚の干渉
画像からOCT画像を抽出する画像処理法について
検討しました。検討を進めていく過程で、十分な感
16
度で生体計測を行うためには、干渉
画像から非干渉(DC)画像を差し引く
ことが必要であると分かり、この方
法は完全なシングルショットOCT と
は言えないので、「擬似シングルショ
ット(quasi single shot)OCT」と呼
ぶことにしました。
ブレイクスルーへの道のり
2003年:光計測による画像処理
の研究に従事。山形大学任期付助
手のポストに応募するにあたり、2
次元カメラを用いて鉛直断面方向
( X Y面)を得るフルフィールドO C T
▲非走査光干渉断層画像測定装置
の研究を開始する。1998年に2
次元カメラを用いて横−−深さ方向
(XZ面)を計測する非走査OCTの基
本的なところは論文として公表されていたが、
■サクセス・キー
実際に生体で実験した事例は当時まだなかった
2次元カメラによってXY面を得るフルフィール
ので、チャレンジしようと決意。3月に同ポスト
ドOCTから、同じく2次元カメラによってXZ面を
に着任。
得る非走査OCTへと方針を転換したことが、最大
2004年:2003年頃からの研究成果であるアク
の成功の鍵であったと思います。通常2次元カメラ
ロマティック位相シフトをフルフィールドOCT
ではXY面を撮ることが常識とされていますが、そ
の論文採択。科研費若手研究Bに応募し、翌年採
れを打ち破ってXZ面の撮影にチャレンジしなけれ
択される。
ば、現在の成果は得られていませんでした。
2005年:佐藤、西舘らと平成17年度産業技術
研究助成に応募し、これもみごと一発で採択さ
れる。神経活動の画像化を目指して、高速OCT
計測技術の開発を開始。フルフィールドOCTと、
超高速CMOSカメラを組み合わせたシステムを
構築する。検出感度があまり得られなかったこ
ともあり、生体内部の深いところまで測定でき
ずに研究は停滞。しかし、同じころに着手した
横―深さ方向( X Z面)を計測する非走査O C Tの研
究によって、こちらの方が鉛直断面方向よりも
高感度で、簡単に断層画像が得られることが分
かる。方針転換を図り、再び研究が進み始める。
2006年:非走査OCTに一軸走査をプラスした3
次元断層画像撮像システムの開発。3000フレー
ム/秒の超高速C M O Sカメラを用いて、1/6秒と
いう世界最速の生体の3次元断層画像が得られ、
その内容が「O p t i c s E x p r e s s 」(米国光学会発
行)に掲載。また高速なOCT技術として「Laser
F o c u s W o r l d ( 2006年10月号)」に紹介され
る。
2007年:画像化領域の選択性向上のため、光学
ズームレンズと高次回折光を利用した非走査
OCTシステムを発表。
2008年:これまでは2回のカメラ計測で1枚の
OCT画像を得ていたが、フレーム間の影響が出
てしまうため、擬似的に1回のカメラ計測で1枚
のOCT画像を得る方法を提案する。
■ネクスト・ストーリー
基礎研究レベルでは成功の感触を得ていますの
で、今後は開発したOCTシステムによって、ラッ
ト脳を用いた神経活動のセンシングを行い、その解
明・分析をめざします。
また、神経機能分析用として研究開発を進めてき
ましたが、非走査OCTは生体の断層画像の計測だ
けでなく、工業製品の表面形状計測においても有効
と考えられますので、今後は産業分野における連携
先を探し、実用化・事業化への展開を目指したいと
思います。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A03009a「神経機能分析用光波断層画像測定の試作
研究」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
渡部 裕輝
山形大学大学院理工学研究科 准教授
ライフサイエンス分野
ユニークな機能性構造脂質の微生物生産プロセスの開発
人間の体内で生理活性物質(注1)へと変換されることから、近年注目を集め、
サプリメントとしての販売や粉ミルク等にも添加されているアラキドン酸(注2)や今後、医薬品、
健康食品等への応用が期待されるジホモ-γ-リノレン酸、ミード酸などの有用脂肪酸
これら有用脂肪酸をつくるカビ(注3)の遺伝子操作系を構築し、生産性向上を達成
アラキドン酸を生産する油脂蓄積糸状菌Mortierella alpina 1S-4(野生株)から変異処理(ある種の化学薬品で菌体を処理し、遺伝子の改変を行
うこと)によって生み出された実用的有用変異株をさらに遺伝子操作し、アラキドン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、ミード酸など特定の多価不飽和脂
肪酸(PUFA:polyunsaturated fatty acid)の効率的生産プロセスを開発し、安定供給をめざします。
アラキドン酸は母乳に含まれる成分であり、実際に粉ミルクにも添加されています。また、年齢とともにその生合成能は低下するため、老化予防の健
康食品として販売されています。
● アラキドン酸以外にこのカビがつくるジホモ-γ-リノレン酸、ミード酸、8,11,14,17-エイコサテトラエン酸などは、医薬品、食品、健康食品への応用が待たれています。
●
競合技術への強み
高度不飽和脂肪酸(注4)
n-6
n-9
n-4/n-7
ミード酸
自然界に
動物体内で特に脳 リノール酸を摂取 動物の血中脂 哺乳類や甲殻類
存する状態 に多く存在する して体内で生成 肪として含有 に微量含有
本技術
(各種 ST1358
S14株(△5不 JT−180株(△12 M 1 株( 鎖 長 延
変異株の形質 変異株で生産 飽和化酸素欠損 不飽和化酸素欠損 長酸素活性低下
変異株)で生産 変異株)で生産 変異株)で生産
転換系構築)
アラキドン酸 ジホモ-γ-リノレン酸
▲高度不飽和脂肪酸が自然界に存する状態と本技術で生産できるものの内容一覧
ドコサヘキサエン酸(DHAのこと。C 22H 32O 2)
などのn-3系PUFA(注5)は魚類から安価で大量に得ら
れ、食品などへ工業的に利用されています。一方で
アラキドン酸やジホモ-γ-リノレン酸などのn-6系
PUFA、ミード酸のようなn-9系PUFAは、実用的供
給源がなく、応用が遅れているのが現状です。また、
この他にもn-4系PUFAは甲殻類に、n-7系PUFAは
哺乳動物に微量ながら存在が確認されている希少脂
肪酸ですが、生理学的機能はまったく解明されてい
ません。このような状況のもと、油脂蓄積性糸状菌
Mortierella alpina 1S-4とその誘導変異株がこれら
n-6/n-9/n-4/n-7系PUFAを蓄積することを世界に
先駆けて見出しました。PUFAのなかでもアラキド
ン酸は用途開発が進んでいますが、ジホモ-γ-リノレン
酸、ミード酸、n-4/n-7系PUFAの生産も可能とする
本研究成果は世界で唯一であり、きわめてオリジナリ
ティが高いものであるとともに、これらのPUFAの実
用的供給源として期待されています。さらに近年で
は、野生株M.alpina 1S-4の形質転換系の開発にも
成功しました。これにより野生株で有用脂肪酸合成
に関わる酵素遺伝子の発現制御が可能となり、アラ
キドン酸などの有用脂肪酸の生産性を遺伝子組み換
えにより、より向上させる研究が可能になりました。
ここがポイント
摂取する油脂あるいはその構成脂肪酸の量や種類
が、コレステロール血症、動脈硬化、がん、アレルギ
ーなどの生活習慣病の発症に大きくかかわっているこ
とが明らかとなり、近年、油脂と健康をめぐる関心が
高まっています。特にPUFAは多岐にわたる生理機能
を有し、上記の生活習慣病と密接に関係しているため、
現代人に必須の機能性素材として注目されています。
アラキドン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、ミード酸など
のPUFAは性状・機能とも、従来の植物や動物から得
ることのできないユニークなものであり、これまでに
糸状菌Mortierella alpina 1S-4から誘導した変異株が
これらを蓄積することを見出しているものの、その生
産性は十分とはいえません。
本研究では、特定のPUFAを生産する変異株を用い、
遺伝子操作(PUFA生合成にかかわる酵素遺伝子の過
剰発現と遺伝子破壊)と育種技術を駆使して、安価な
原料からde novo合成(注6)によるPUFAやPUFAと結
合したトリアシルグリセロール等の有用脂質等、機能
性構造脂質の効率的生産プロセス開発をめざしまし
た。アラキドン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、ミード酸、
n-4/n-7系PUFAをターゲットとし、4種類の有用変異
株の形質転換系を構築。また並行して、有用遺伝子素
材を探索し、担子菌Coprinus cinereusから高活性な
△ 1 2 不 飽 和 酵 素 (注7)を コ ー ド す る 遺 伝 子 を 、
M.alpina 1S-4から脂肪酸鎖長延長酵素遺伝子をそれ
ぞれクローニングすることにより、酵素の機能や基質
特異性を解明しました。これら脂肪酸生産向上の成果
として、M.alpina 1S-4を使った遺伝子組換えにより、
n-3系PUFA 二つの脂肪酸の生産性向上を実現しまし
た。具体的には、エイコサペンタエン酸(EPA)の生
産量を3倍、エイコサテトラエン酸(ETA)を6倍増
加させることに成功しています。
ブレイクスルーへの道のり
∼2002年:1987年にアラキドン酸をつくるカビ
(Mortierella alpina)が京大農学部のキャンパス内土壌
より単離された。その後、ニトロソグアニジンによる
変異処理により、アラキドン酸以外の有用脂肪酸を蓄
積するような変異株が数多く見出された(櫻谷もこの
研究に参画)
。これにより、カビによる脂肪酸発酵な
る概念が誕生、微生物(カビ)によるPUFA生合成経
路が提案され、櫻谷は「微生物を使った発酵生産」を
研究開発の目標に定める。安価に有用脂肪酸を生産す
るために変異株育種を繰り返したが、有用脂肪酸によ
っては十分な生産性に達しないものもあり、より高い
生産性向上が求められた。PUFA生合成にかかわるさ
まざまな酵素遺伝子をこのカビから単離し、それらの
機能が解明された。
2003年∼2004年:胞子のプロトプラスト化にこだ
わっていたためになかなかうまくいかなかったこのカ
ビの形質転換は、胞子に遺伝子銃で直接遺伝子を打ち
込むことでうまくいくようになった。遺伝子の発現と
抑制という必要最小限の技術がこの頃に備わった。
2005年:平成17年度第1回産業技術研究助成事業に
応募し、採択される。遺伝子発現系に用いるために、
脂質生合成にかかわる酵素遺伝子をこのカビからだけ
でなく、いくつかの微生物からも単離した。
2006年:有用変異株4株の形質転換系を構築した。
これまでに得られた有用遺伝子を操作して有用脂肪酸
生産性向上を試みた。
2007年:選択マーカーの拡充や新たな形質転換法
の開発により、さらに応用性の高い形質転換系構築
を達成した。
2008年:野生株や変異株の遺伝子操作により、いく
つかの有用脂肪酸生産性向上を実現した。
■ネクスト・ストーリー
ジホモ-γ-リノレン酸のアトピー性皮膚炎への効能
が報告されるなど、アラキドン酸以外のPUFAの機能
が最近になっていくつか明らかになっています。医
薬・健康食品としてのさらなるニーズに応えるため、
いくつかの有効な遺伝子の過剰発現や遺伝子転写抑制
を組み合わせて、PUFAをより安価で大量に供給でき
るよう連携企業と共同して研究を進めていく計画で
す。同時に、セルフクローニングによる安全性の確認
も行っていきます。作られた脂質の菌体外生産やプロ
モーター(注8)の改良なども今後の研究課題です。ま
た、微生物とは言え、糸状菌は高等な部類に属するた
め、脂質代謝の制御メカニズム等も詳しくわかってい
ませんので、ベーシックな機構の解明にも力を注いで
いきたいと考えています。本技術は、脂質蓄積能の高
い糸状菌の遺伝子操作によって有用脂肪酸の生産性向
上を目指したものです。今後、脂肪酸だけでなく、
様々な中性脂質や極性脂質の生産にも応用したいと考
えています。本糸状菌の形質転換系を利用した脂質生
産に興味がある企業・研究機関はご連絡ください。
(注1) 生体の特定の生理的調節機能に作用する性質で、この物
質を疾病治療に応用したものが医薬品である。
(注2) からだ全体に存在し、特に細胞膜中のリン脂質を構成す
る大切な必須脂肪酸のひとつ。人間の記憶や学習などと
の関わりが明らかになりつつある成分であり、体内に取
り込んだ植物油などに含まれているある種の脂肪酸から
合成できるが加齢とともにその合成能力は低下するた
め、老化予防の健康食品として販売されている。
(注3) Mortierella alpina 1S-4株のこと。
(注4) 不飽和結合を2つ以上持つ不飽和脂肪酸のこと。表中の
「n-」とは、たとえば、n-6は、カルボキシル基と炭化
水素鎖で構成される脂肪酸のメチル基末端側の最初の二
重結合が、メチル基末端側から数えて6番目と7番目の
炭素の間にある脂肪酸の総称である。
(注5) 我々のからだにはn-6のアラキドン酸だけでなく、n-3
のドコサヘキサエン酸も必要で、両方のバランスが重要
です。現在、市販されているアラビタ(健康食品)には
当該株由来のアラキドン酸と魚油由来のドコサヘキサエ
ン酸が等量ずつ配合されています。
(注6) グルコースなどの単純な栄養素から、その生物がもつ生
合成経路によって化合物がつくられること。
(注7) オレイン酸をリノール酸へ変換する酵素のこと。具体的には、
オレイン酸のカルボキシル基から数えて12と13番目の炭素
原子間に二重結合を導入する反応を起こす酵素。
(注8) mRNA合成の開始に関与するDNA上の特定領域の短い塩
基配列。
■サクセス・キー
連携企業先であるサントリー(株)の研究員の方々
と、毎年5∼7人の大学院生と共に継続して研究が行
えたこと、研究の進捗状況を密に相談し、研究と現場
の相互理解を深められたことが大きな力となりまし
た。また、第8回酵素応用シンポジウム研究奨励賞の
受賞やNEDO産業技術研究助成を土台として、平成
19年度科学研究費補助金(若手A)等の競争的資金獲
得につながりました。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A07003d「ユニークな機能性構造脂質の微生物生
産プロセスの開発」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
櫻谷 英治
京都大学大学院農学研究科 助教
17
ライフサイエンス分野
生殖細胞の異種間移植による代理親魚生殖技術の確立
クロマグロ等、これまで養殖が困難だった大型魚種について、大型魚種の始原生殖細胞(注1)
や精原細胞(注2)を小型魚種の免疫機能が未熟な孵化稚魚期の生殖腺に移植することで、
飼育が容易なサバ等に代理出産させるという世界初の代理親魚養殖技術を確立。
クロマグロをはじめとする大型回遊魚は、資源量が世界的に減少しているにもかかわらず、親魚は魚種によっては最大で600kgを超えるため、卵
の採取には多くの困難があり、養殖には広い海面上の生け簀(イケス)を必要とします。さらに、成熟するまでに長期間を要することや技術的に
産卵回数を増やせないという問題もあります。このような大型魚種の卵を、同属のマサバのように小型魚を
代理親として産ませることができれば、養殖の効率を大きく改善できる可能性があります。
大型親魚からの採卵をマサバ等の小型魚種が入る程度の小型水槽でできるので、スペースと労力、コスト
の低減となり、水産資源の保護・保全にもつながります。また、一年を通じた(周年)採卵も可能です。
● 凍結した始原生殖細胞あるいは精原細胞を代理親魚に移植することで、生きた個体が生産できるので、商
品的に価値のある魚種の増産や絶滅危惧種の遺伝子資源の保存をはかれます。
●
▲ヤマメの稚魚へのニジマスの始原生殖細胞の移植
競合技術への強み
種苗生産の方法
(1)
クロマグロの種
苗生産
(現状の方法)
親魚の体長
△
約3m
親魚の体重
△
約100∼
300kg
成熟までの期間 採卵の時期
△
3∼5年
△
海域によっ
て季節が限
定される
(2)
サバを親魚と
○
○
○
◎
(1)の1/2∼1/5 周年採卵が
したマグロの
(1)の1/10程度 (1)の1/100∼
可能
程度
種苗生産
1/500程度
(本研究)
▲クロマグロを例にした種苗(卵)生産方法に関する従来技術と本
技術との比較表
①スペース、労力、コストの削減:体長3m、体重
100∼600kg(最大種のタイセイヨウクロマグロは
全長4.5m、体重680kgを超える)もあるクロマグ
ロの親魚からの採卵が、サバからできれば、必要な
スペース、労力、コストが大幅に削減できます。
②周年採卵が可能:自然の海域では採卵できる時期
が限られますが、小型水槽であれば水温、照明を調節
することで、年間を通じての採卵が可能になります。
③技術の習得が容易:2週間程度の研修で、技術を
習得できると予想されますので、容易に技術の普及
がはかれます。
ここがポイント
クロマグロのように大型の魚種の種苗を確保して
成魚を生産することは容易ではありません。その解
決策としては、小型の魚種を代理親魚として種苗を
生産させる技術が考えられます。本研究では、同属
であるヤマメからニジマスの個体を産ませることを
通じて、大型魚種(クロマグロ)への応用技術へ適
用することを検討しました。孵化したばかりのヤマ
メの稚魚は、免疫系が十分に確立されていないため、
異種の始原生殖細胞を移植されても拒絶反応を起こ
しません。この事実を手がかりにして、孵化したば
かりのヤマメの稚魚の腹腔にニジマスの始原生殖細
胞を移植します。移植された始原生殖細胞は、宿主
(ヤマメ)の生殖腺の位置を探り出して自力で移動
していきます。移動したニジマスの始原生殖細胞は、
ヤマメの生殖腺に取り込まれてニジマスの始原生殖
細胞として増殖し、機能的な精子か卵に分化します。
しかし、この手法では宿主は、自分自身の配偶子も
もっていますので、ヤマメも産む可能性があります。
そこで、不妊の性質をもつ3倍体(注4)のヤマメの稚
魚に2倍体(通常)のニジマスの精原細胞を移植し
ました。その結果、3倍体のヤマメの両親からニジ
マスだけを生産させることに成功しました。3倍体
ヤマメの作出は、ヤマメの受精卵を10℃で培養し、
受精から15分後に27℃で15分間処理して行われま
す。またマウス以外の動物では世界で初めて遺伝子
導入技術を使ってニジマスの始原生殖細胞をGFPで
標識させることに成功しました。これにより、始原
生殖細胞の移動の確認が容易となり、また親魚から
生産された稚魚が育つのを待たなくても実験の結果
18
がわかり、研究の迅速化が可能となりました。しか
し、GFP遺伝子を遺伝子組み換え技術によって導入
することは、食品としての安全性、商品性を損なう
可能性があること、さらに海洋への放流により生態
系を乱しかねないという課題が残ります。そこで、
精原細胞の細胞膜上にだけあるタンパク質を同定し
た上で、このタンパク質分子の細胞外ドメインに対
する抗体を作成して、蛍光抗体や磁気抗体を使って
精原細胞を特定して濃縮する方法を考え、その研究
を開始しました。この方法は、まず生殖腺の体細胞
では発現せず精原細胞のみで発現している遺伝子を
特定します。次にこの遺伝子により精原細胞のみで
産生されているタンパク質に免疫反応を起こす抗体
を作成します。そこで精巣組織に免疫反応を起こし
ている細胞だけを着色する色素を作用させて精原細
胞を着色して、識別できるようにします。このよう
な精原細胞のみで発現している遺伝子および産生さ
れるタンパク質の同定は、魚類では、この研究が初
めての報告になりました。従来は、精原細胞は成魚
の精巣内に存在していて、精子の元になる細胞と考
えられていました。ところが、本研究では精原細胞
を雄の宿主に移植すると機能的な精子を生産します
が、雌の宿主に移植すると機能的な卵を生産するこ
とが明らかになりました。この発見は、希少な数少
ない始原生殖細胞ではなく、精巣に大量に存在して
いる精原細胞を「始原生殖細胞」の替わりとして利用
できるため、有用な魚種を大規模に増産する上で大
きな意味をもっています。
ブレイクスルーへの道のり
1998年:生殖細胞は精子や卵に分化し、受精を介
して個体に改変できる細胞であるとの考えから、ニ
ジマスの生殖細胞を操作する研究を開始。
2000年:マウス以外では初めて、ニジマスの始原
生殖細胞にクラゲ由来のGFP (注5)を導入して標識
することに成功。
2002年:ニジマスの始原生殖細胞が発する緑色蛍光
を指標に始原生殖細胞の大量単離技術の開発に成功。
2003年:始原生殖細胞の移植技術を開発。孵化直後
の稚魚は異個体由来の細胞を免疫的に拒絶しないこ
と、腹腔内に移植した始原生殖細胞は宿主の生殖腺に
誘引されて移動し、そこに取り込まれることを発見。
2004年:ニジマスの始原生殖細胞をヤマメに移植
することで、異種間でも拒絶反応が起きずニジマス
由来の精子を生産させ、得られた精子を用いて正常
なニジマスを生産することに成功。本研究成果は
Nature誌(注6)(2004年8月5日)に掲載された。
2005年: 産業技術研究助成に採択される。
2006年:成魚の精巣由来の精原細胞を孵化稚魚に
移植すると、移植細胞は宿主の生殖腺に取り込まれ、
機能的な配偶子を生産することを発見。特に、雌の
宿主に移植した精原細胞は卵に分化することを見出
し、全動物種を通じて初めて精原細胞の性的可塑性
を証明。本研究成果は、米国科学アカデミー紀要(注7)
(2006年2月9日)に掲載された。
2007年:ニジマスしか産まないヤマメの作出に成功。
本研究成果はScience誌(注8)(2007年)に掲載された。
■サクセス・キー
研究を成功させる原動力は、生き物をじっくりと飼
うこと、じっくり見ること、そして生き物の持つ“すご
い能力”を見い出し、それを組み合わせることです。
■ネクスト・ストーリー
サバにクロマグロの種苗を生産させるためには、ま
ず、クロマグロの精原細胞を濃縮する技術の確立が必
要です。クロマグロの精巣は大部分が筋様細胞(注9)
で精原細胞が少ないため、本研究で作出した特異抗体
を用いて、精巣から精原細胞のみを濃縮し、得られた
細胞をシャーレ内で増殖させた上で宿主であるサバに
移植する研究を進めています。絶滅危惧種の保存への
利用も考えています。サケマス類は、水系ごとに適応
した特異な遺伝子をもっている可能性がありますの
で、各水系それぞれのサケマス類を保全するためにも
異種間移植の技術を役立てたいと考えています。
(注1)始原生殖細胞:受精卵から胚発生(多細胞生物が成体になる過程)の
初期に分化(注3)する生殖細胞で、胚が分化している際にも増殖す
るが、体細胞性の生殖巣の分化が進むとその中に移動し、精巣内では
精原細胞を経て精子に、卵巣内では卵原細胞を経て卵に分化する。
(注2) 精原細胞:精子の元となる細胞で、従来は精巣で精子にしかならな
いと考えられてきたが、本研究で全動物種を通じて世界で初めて雌の
稚魚の腹腔に移植すると卵になることが発見された。本研究成果
2006年2月9日発行の米国科学アカデミー紀要に掲載された。
(注3)多細胞生物に於いて個々の細胞が構造機能的に変化すること。
(注4)3倍体:通常の染色体は2セットで1対となっていて、動物では配偶子
を形成する際に1セットずつに減数分裂し、減数分裂で染色体数が分
裂前の細胞の半分の娘細胞をつくる。精子と卵(それぞれ1セットの
染色体を有する)が受精して再び2セットの対になるが、何らかの原
因で3セットになったものを3倍体という。
(注5)GFP:Green Fluorescent Protein、緑色蛍光蛋白のこと。
(注6)Natureは、自然科学全般を対象とする世界最高の学術雑誌である。イ
ギリスのNature Publishing Group (NPG) によって発刊されている。
(注7)米国科学アカデミー紀要は、1915年に創刊された米国科学アカデミ
ーの機関誌。総合学術雑誌として、ネイチャー、サイエンスと並び世
界で最も権威のある学術雑誌の一つである。
(注8)サイエンス(Science)は、Natureと並んで世界で最も権威がある学術雑誌
の一つである。アメリカ科学振興協会 (AAAS)の発行している学術雑誌。
(注9)精巣内に存在する筋繊維様の細胞のこと。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A07006d「生殖細胞の異種間移植による代理親魚
養殖技術の確立」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
吉崎 悟朗
東京海洋大学 海洋科学部 准教授
情報通信分野
機械制御向けインテリジェント画像センサ「画像モーメントセンサ」の開発
イメージセンサと画像処理回路をワンチップ化した
高速・高機能な視覚センサ
センサ単体で撮像と画像処理を行い、
産業用ロボットなどのリアルタイム制御に威力を発揮する
従来型ビジョンチップの解像度が48×32画素だったものを
128×128画素とし、かつ、感度を向上させることで
強力な照明を不要にし、毎秒1,000という高フレームレートを実現。
センサはCMOSイメージセンサの画素ごとに簡便な処理回路を付加し、画像内に映った複数の
対象の大きさ、位置、形状、重心、傾きなどの情報を取得。
● 産業用ロボットの制御や工作機械の位置決め、三次元計測のほか、各種検査、監視・セキュリテ
ィ、微生物の継続観察、入力インターフェイスといった幅広い用途への適用が見込まれる。
●
競合技術への強み
一般の画像
処理装置
機 能
速 度
サイズ
コスト
◎
×
×
×
多機能で
フレキシブル
∼30フレーム/秒 カメラ+PC 約10∼50万円
ポジション
×
◎
◎
センサ
単一対象の
∼1,000フレーム/ ワンチップ
(PSD)
位置情報のみ取得
秒
◎
約100円
○
画像モーメ
◎
○
◎
ントセンサ 複数対象の大きさ、 ∼1,000フレーム/ ワンチップ 1,000円
(目標)
位置、傾き、
形状な
(試作品)
秒
どの特徴量を取得
▲画像処理装置に係る従来技術と本技術との比較表
①高フレームレート:センサ面状で画像処理を行う
ため、画像の転送が不要です。
②装置が小型・安価:画像そのものではなく機器制
御に必要な情報のみ出力するので、小型・安価に装
置を構成できます。PCとはUSBコネクタで接続可
能です。
③多機能:複数対象のモーメント量(傾き)が個別に
取得できることや、二値化により背景を除去できる
こと、大きさ・形状など多彩な情報を得られるなど
の利点があります。
④演算が高速:センサ内の専用回路により画素単位
で並列処理を行うため、高速にリアルタイムで演算
を行うことができます。
⑤高解像度化・高感度化が可能:従来のビジョンチ
ップに比べて大幅(13% =7.4分の1)に回路面積
を縮小しました。
ここがポイント
画像モーメントセンサは撮像対象の大きさ、位置、
形状、重心、傾きなど多様な情報を得ることができ
ます。たとえば、対象を形によって分類したり、あ
らかじめ形状がわかっている三次元物体の姿勢を求
めたりすることも可能です。また点滅照明と併せて
利用することにより、光が当たっている部分のみ情
報のみを得ることもできます。対象の形や姿勢がわ
かることで、産業用ロボットがその対象を操作した
り、情報端末に用いることで人間の手や指の動きを
縦・横・奥行き方向で認識し、さまざまなコントロ
ールをすることも可能となります。
画像処理をセンサ内で行うことで1,000フレー
ム毎秒という高フレームレートのリアルタイム視覚
情報処理を小型・安価な装置で実現しました。高速
ビジョンをセンサフィードバックに用いることで、
ロボットの高速制御や微生物トラッキングなどの新
しいアプリケーションも考えられます。
ブレイクスルーへの道のり
1994年:東京大学卒業研究で石川研究室に所属と
なる。ロボットの視覚制御な
どに利用できるようにするた
め、ビジョンチップの1チッ
プ集積化に着手。本ビジョン
チップは1992年に当時の担
当教官である石川正俊教授
(当時助教授)が、原型となる
プロトタイプを開発していた。
1997年:石川教授指導のも
と、ビジョンチップの1チッ
プ集積化に成功。
2000年:日本プレシジョン
サーキッツ株式会社(現セイ
コー NPC)との共同研究を行
い、高速対象追跡に特化した
産業用途向けビジョンチップ
の開発を実施。のちに開発者
向けテスト製品を出荷し、好評を得る。
2001年:3月に博士号を取得し、翌々年度4月に
石川研究室の助手として着任。継続してビジョンチ
ップの研究に取り組む。この頃よりビジョンチップ
に関心を持った民間企業の方々との交流が増え、シ
ーズ指向からニーズ指向に。
2004年:メーカの方々にサンプルで使用頂いた結
果、「画像数及び速度が不足」等との多数の課題を
受け、更なる研究を実施。現行のビジョンチップの
抱えている課題を克服する新しいビジョンチップの
アーキテクチャと回路技術を発案。映像情報メディ
ア学会情報センシング研究会などで発表。特許出願。
2005年:平成17年度第1回産業技術研究助成事業
に応募し、採択される。7月から本格的に研究がス
タート。LSI開発は総じて、つくるところは比較的
簡単にできる。だが、つくったモノを実際に動かし、
評価するのが難しい。産技助成研究では、回路の構
成にも新たなチャレンジを盛り込んでいったので、
テストにこぎつけるまでが大変だった。
2006年:新しいアーキテクチャの採用と、4画素
で一つの演算器を共有する回路技術により、これま
でに開発したビジョンチップの画素数を大きく上回
る128×128画素チップの開発に成功。
2007年:9月にイノベーションジャパン新技術説
明会で講演。それに関連して日経産業新聞の取材を
受け、9月19日付の1面に掲載。全国から問い合わ
せが多数あった。12月にはSEMICON JAPANに出
展。
▲ビジョンチップを内蔵する画像モーメントセンサと その活用イメージ
究に陥ることなく、実用的なデバイスシステムが開
発できました。
■ネクスト・ストーリー
これまで既に、ファクトリー・オートメーション
や計測関連の企業から「使ってみたい」「評価して
みたい」という引き合いが多くありました。これら
の引き合いのあった用途向けの実用化に向けた検討
の結果によっては、実用化に向けたスピードは加速
する可能性もあります。量産効果が生まれれば1台
1000円台で販売することも可能と思われます。ま
た、シリコンを使った場合、製品の量産体制が必須
のため、一定量以上の需要を創出しうるようなキラ
ー・アプリケーションの開発が必要課題のひとつと
いえます。
今後、共同開発パートナーを募集し、LSIメー
カ・画像機器メーカへの技術移転、アプリケーショ
ンの開拓、センサの感度向上、その他、画像処理
LSI、高速・高フレームレート画像処理に関する研
究等の技術開発を進めていく予定です。
■サクセス・キー
95年から取り組んできたビジョンチップの開発
経験により、克服すべき課題――解像度、感度、機
能の向上が明確であり、研究開発目的がはっきりし
ていました。
産業界の人々との交流を欠かさず、つねに社会の
ニーズに敏感であり続けることで、自己満足的な研
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A11014a「画像モーメントセンサ」の開発
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
小室 孝
東京大学情報理工学系研究科
システム情報学専攻 講師
19
情報通信分野
高周波数利用効率と低消費電力を両立するディジタル変調方式の研究開発
高い周波数利用効率と
低い消費電力を両立する
ユビキタス&低炭素社会が
求める無線送信技術
無線通信のディジタル変調方式において、周波数利用効率と電力利用効率は
両立が困難だった。信号を増幅する前にディジタル信号処理でピーク電力を
落とす本技術は、高い周波数利用効率を維持したまま、高い電力利用効率
(低消費電力)の無線通信を可能にする。
トレリスシェイピング(注1)を用いた本技術は、送信機だけでなく受信機で
も利用することにより、無線送信につきもののエラーを少なくすることがで
きます。
● 上記により、雑音に対する耐性が向上するため、所要の送信電力を減少させ
ることも可能となり、一層の低消費電力が期待できます。
●
▲本研究開発で用いた伝送実験装置
(注1)シェイピング技術:無線などでデータを送るときは、雑音、干渉、減衰などのエラー要
因が多く、雑音によるエラーを防ぐには送信電力を上げる必要がある。しかしながら送
信する信号系列のパターンをうまく制御すれば、雑音への耐性を保ったまま平均送信電
力を下げることができる。このような技術を一般にシェイピング技術という。特に、送
信系列パターンの制御に誤り訂正符号(注2)の構造を用いる手法をトレリスシェイピン
グという。本研究では、このトレリスシェイピングを用いて平均電力ではなくピーク電
力を低減することを実現した。
(注2)誤り訂正符号:通信によりデータを送るとき、エラー(誤り)
が生じて送ったデータと受
け取ったデータが異なる場合がある。その際、受け取った側で、そのデータが正しいか
どうか判断し誤りを訂正できるようにするために追加のデータ列を付け加えて送ること
がある。このような技術を「誤り訂正符号」という。
競合技術への強み
回路規模・ 電力効率
の改善
コスト
備 考
(1)
◎
π/4-QPSK 非常にシン
変調技術
プル
△ 単純な位相回転のみで実装できま
すが、ピーク電力低減効果は小さ
∼ 数 % く、また多値変調方式等への拡張
程度
性がありません。
(2)
△
パワーアン アナログ回
プの効率化 路で実装・
設計が困難
技術
∼20%
程度
(3)
○
本研究で開 ディジタル
発した技術 回 路 で 実
装・集積化
可能
○
◎
10∼
30%程
度
複数のアナログ回路を組み合わせ
て実装されるものが多く、その場
合は回路規模が大きくなります。
また回路損失が設計に大きく依存
します。特に広帯域信号に対して
は高効率な回路設計が難しいとい
われています。
ディジタル信号処理で実装でき、
周波数利用効率の高い多値変調方
式への拡張も容易です。回路規模
と電力効率の改善量にはトレード
オフの関係がありますが、ASIC
により実装すれれば回路規模を大
幅に抑えることが可能です。
▲送信電力の効率化技術(ソフト技術・ハード技術)に関する従来
技術と本技術との比較表
①通信するときに必要な送信電力エネルギーを10∼
30%減らすことができ、省エネの実現により地球温
暖化の防止にも貢献する技術です。
②私たちが使える無線通信の周波数資源は飽和に近
づいています。高い周波数効率は、周波数資源の有
効利用につながります。
③高い周波数効率を維持したまま消費電力を抑える
ので、電池により駆動する通信システムの場合、こ
れまで以上の長時間駆動が可能になります。
④無線通信だけでなく、有線の通信にも応用できる
と考えられます。
ここがポイント
ユビキタス社会を迎え、無線通信には高い周波数
利用効率と同時に、高い電力利用効率(低消費電力)
を持つシステムが求められています。
中距離以上の通信には、パワーアンプによる信号
波形の電力増幅が必要ですが、増幅するときに入力
信号の平均電力ではなく、出力信号のピーク電力が
制限されます。それゆえ、アンプに信号を入力する
際に、平均電力を落とさなければなりません。そう
なると電力利用効率が劣化し、増幅に使われなかっ
たエネルギーは熱になります。
周波数利用効率を上げるためには、いくつかの方
法が提案されていますが、いずれもピーク電力の上
昇が避けられません。ピーク電力が上がるとアンプ
の電力利用効率が落ち、発熱が大きくなります。
私たちの究極のテーマは、高い周波数利用効率を
保ったまま、ピーク電力を低減することです。その
解決法として、増幅する前にディジタル信号処理で
ピーク電力を落とす方法を探究しました。
20
▲本技術によるピーク電力の低減を行わなかった場合(左)とピ
ーク電力の低減を行った場合(右)の時間波形(縦軸:送信信
号の振幅、横軸:時間):左は波が0になったりピークを示し
たりするので、平均電力と電力利用効率は低くなる。具体的に
は電力増幅の際には出力信号のピーク電力が制限されるので、
ピークの値が高いと平均電力を落とさなければならず、電力利
用効率が劣化する。右は決して0になることはなく変動が緩や
か。したがって、ピークが低く抑えられるので平均電力が高く
なり、電力利用効率は向上する。
そこで注目したのが「トレリスシェイピング」と
いう技術で、誤り訂正符号を用いて信号に冗長度
(自由度)を与える手法です。私たちは、この符号の
選び方を工夫すれば平均電力やピーク電力を下げる
ことができると考えてシミュレーションを行い、ま
た送信機を実装した信号出力装置による伝送実験で
効果を確かめました。その結果、高い周波数利用効
率を維持したまま、これまでの10∼30%低い消費電
力での通信を可能にする技術の開発に成功しました。
ブレイクスルーへの道のり
2002年:電気通信大学において助手として勤務中、
今回の研究開発のきっかけとなる、直交周波数分割
多重(OFDM)変調信号のピーク電力を低減するシェ
イピング技術を考案。国際会議で発表をするととも
に、国外論文誌へ投稿する。本研究テーマを発展さ
せるために総務省の競争的研究資金制度に応募する
が、不採択となる。
2003年:横浜国立大学へ移り、文部科学省科研費、
財団法人テレコム先端技術研究支援センター、電気
通信普及財団から支援を受けて関連研究を行う。ま
た10月より一年間米国ハーバード大学で別の研究プ
ロジェクトにも従事する。
2004年:帰国後、自ら立ち上げた研究室において、
本研究プロジェクトを再開する。先に投稿した論文
が国外論文誌に掲載される。
2005年:十数年来、社会の強いニーズである無線
通信における高い周波数効率と消費電力の低減の両
立をテーマに研究を重ねてきたが、その結実が見通
せるようになったので、平成17年第1回産業技術研
究助成公募に応募。採択され、プロジェクトを本格
的にスタートする。これまでの研究において、実験
のために大がかりに機材を購入したり、実験設備を
設計・製作したりする経験はほとんどなく、ディジ
タル回路の設計も一から始めなければならず、苦労
が多かった。
2006年:大学院生とともにシングルキャリアのシ
ェイピング技術を発明した。ここまでの成果を出し
ている例は世界にない。実際に私たちも、本当にこ
んな成果が出て良いの!?というぐらいに驚いた。特
許出願、国際会議および国外論文誌へ投稿。IEEEと
いう国際的にレベルの高い論文集にも採択された。
2007年:大学院生とともにシェイピング技術の
FPGAによる実装を行う。また、企業から本プロジ
ェクトに関連する受託研究を受ける。
2008年:先に投稿した論文が投稿から14ヶ月を経
て国外論文誌への採択が決定する。
■サクセス・キー
本研究プロジェクトを主体的に担ってくれた優秀
な大学院生に恵まれたことが、成功の鍵でした。実
際にプログラムを組んだのはこの大学院生でした
が、彼がシミュレーションの結果を持ってきたとき
に、え!こんなに下がるの!と驚くほどの成果でし
た。情報通信システム分野のみでなく、パワーアン
プ等の高周波アナログ回路を扱う学会・国際会議に
も積極的に参加し、研究動向の調査および発表を行
ったことが、研究の進むべき方向性やアイデアを生
む土壌となりました。
■ネクスト・ストーリー
現時点の技術では送信にかかる計算量が多いので、
それを減らして簡易に使えるように改良していきま
す。本技術の用途としては、携帯電話にも適用可能で
すが、標準化など規格化が実現されないと利用されな
いので、まずは独自に開発、実装できるようなシステ
ム、例えばセンサーネットワークなどに適用していき
たいと考えています。
また技術の洗練、適用という視点とは別に、社会へ
のアピールも考えています。無線通信の発熱問題は世
の中にほとんど認知されていません。本研究の実証実
験を行うことにより、どれだけ省エネルギーに貢献で
きるのか明らかにしていきたいと考えています。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A12006d「低消費電力・高速無線通信システムの
研究開発」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
落合秀樹
横浜国立大学 大学院工学研究院 准教授
情報通信分野
垂直磁気記録ハードディスク装置出荷にかかる時間を桁違いに短縮
出荷時の垂直磁気記録ハードディスクへのサーボ記号(磁気ヘッドの位置情報)の
書き込み時間は現在約1時間かかるところ、これをわずか数秒に短縮し、
高精細にサーボ記号を書き込むことができるパターンドマスター磁気転写法を開発
従来、サーボ信号の書き込みは一つひとつの信号を磁気ヘッドで丁寧に書いていたため、サーボ信号を書くだけでディス
ク1枚あたり約1時間もかかっていた。
開発した技術ではサーボ信号を一括して数秒で書き込むことができ、所要時間(秒数)を2桁以上縮めることができる画
期的な技術であり、HDの出荷にかかる時間を大幅に短縮、コストを削減することができる。
2.5吋マスター(FUJI一般サーボパターン)
●
現在、複数のHD装置メーカが本技術の導入を検討しており、本技術がHD製造技術
のグローバルスタンダードになる可能性があります。
競合技術への強み
比較項目
サーボ信号
書き込み時間
△
サーボ信号 機器導入による
コスト
品質
△
△
300
1時間(約300
サーボ
2
記録密度が
トラック Gbit/inch 2 で )記 Gbit/inch
増加するたびに
録密度が増加する
ライタ
×
設備投資が必要
(従来技術)につれて、時間増加
1
(磁気ヘッドで記録)Tbit/inch2
磁気
転写法
(本技術)
◎
数秒
記録密度に
依存しない
○
○
300
初期投資は必要
Gbit/inch2 だが、記録密度
が増加しても、
○
マスター媒体作
1
Tbit/inch2 製のみ
▲サーボ信号書き込み技術に関する従来技術と本技術との比較表
書き込みに要する時間(秒数)は従来技術の2桁
以上縮めることができ、しかも記録密度に依存しま
せん。従来技術では記録密度が増加するたびに設備
投資が必要でしたが、本技術では初期投資は必要で
すが記録密度が増加してもマスター媒体の作製だけ
ですみ、コスト的にも大幅に有利です。
ここがポイント
本研究で開発した2.5インチ垂直磁気記録HD
用マスター媒体は、次世代媒体の記録密度にお
けるサーボ信号(AGC、アドレス信号、バー
スト信号)の転写が可能です。従来のサーボト
ラックライタでは垂直磁気記録HDの磁性膜の
能力を十分に使いきっていないという計算結果
も報告されています。本技術は従来技術と同程
度以上の性能を確認しているだけでなく、さら
にその上の記録密度(1Tbit/inch 2 )を射程に入
れています。
ブレイクスルーへの道のり
2001年:茨城大学の当時の指導教授であった杉
田龍二教授がサーボ信号書き込みのためのパタ
ーンドマスター磁気転写技術を提案。杉田教授
の指導のもと、助手として富士フイルム(株)とと
もに、基礎検討および実用化検討を粘り強く続
ける。当時は面内磁気記録方式が主流であった
ため、面内磁気記録H Dをターゲットにした検討
を行う。当時、垂直磁気記録方式が実用化され
ることは情勢的に考えにくかった。
2004年:面内磁気記録のための磁気転写を検討
していたが、念のため「垂直磁気記録H Dへの展
開も検討しておこう」と基本的な方式検討およ
び解析を始める。いくつかの解析結果からは書
き込みができそうな感触を得る。
東芝(株)が垂直磁気記録方式を用いたH Dを出
荷すると発表。東北大学の岩崎俊一名
誉教授が提案された垂直磁気記録方式
が約30年の歳月を経て結実する。当時
の記録密度は約120Gbit/inch 2 。
2005年:垂直磁気記録向け磁気転写の
本格的な実用化検討はほとんど行われ
ていなかったため、急ぎ本助成事業向
けの提案書を作成。みごとに採択され
Bit長80nm
る。この年、ドライブメーカ各社が相
Tp 150nm
次いで垂直磁気記録H D出荷を発表。こ
パターン
の分野の研究が再び活気づく。当時は
マスターSEM
垂直磁気記録H Dが品薄であり、入手が
大変困難な状況であったため、並行し
▲現行以上の記録密度を有する2.5インチ垂直磁気記録ハードディスク用マス
ター媒体。
(写真提供:富士フイルム(株))
て研究室内での垂直磁気記録H D媒体の
作製技術の研究も始めていたが、次第
に垂直磁気記録H Dが入手できるように
なり、実験材料の入手面の障害は解消。
をパターンで制御しようという点がポイントで
計算機シミュレーションを中心に基礎特性を検
す。現状の制御パラメータには、磁性膜の形状
討し、本パターンドマスター磁気転写技術に
と、磁場をどれくらい印加するかという二つし
より、当時の倍以上の記録密度である、
かなく、細かい調整をするにはさらなるパラメ
3 0 0 G b i t / i n c h 2 程度の磁気転写が可能であるこ
ータの設定が鍵となります。新たに最適な制御
とを示した。
変数を設定できれば、今まで書けなかったパタ
2006年:計算機シミュレーションおよび転写実
ーンが書けるようになると期待され、媒体の密
験を通じて、垂直磁気転写での基本特性が見え
度が飛躍的に向上する可能性があります。
てくる。連携企業である富士フイルム(株)では、
ただ一方で、HDの特性は装置メーカ各社で
パターンドマスター媒体の試作を行い、
かなり異なり、最適値が予想と違う媒体もあり
30Gbit/inch 2 の記録密度でのサーボ信号動作を
ます。こうした場合、磁気転写に効くパラメー
確認。実用化が現実味を帯びてくる。
タも変わってきます。結果的に各社の製品すべ
2007年:各H D装置メーカが興味を示す。次世
てを網羅する転写方法を考えなければならない
代および次々世代の記録密度における転写特性
可能性もあり、苦労は尽きませんが、粘り強く
の解析を進め、本技術により提案当初は夢のよ
今後も研究を続けて実用化を目指したいと考え
うであった1Tbit/inch 2 の磁気転写が原理的に可
ています。
能であることを明らかにした。
今後も、超微細加工技術と転写技術を有する
2008年:富士フイルム(株)およびHD装置メー
富士フイルム(株)との共同研究により、実用化推
カが事業化並びに実用化検討を進めている。
進と共にさらに短ビットをより高品位に転写す
■サクセス・キー
る技術を開発していきます。
垂直磁気転写とは原理が異なるものの、面内
磁気記録のための実用化検討により、パターニ
ング、転写プロセスに関する多くの技術が蓄積
されていました。
時代の潮流を捉えられたことも大きな要因で
す。垂直磁気記録方式の実用化と時を同じくし
て、この研究をスタートしたため、垂直磁気記
録に長くチャレンジしてこられた研究者の方々
から温かい支援、激励をいただき、研究推進の
モチベーション向上につながりました。
■ネクスト・ストーリー
本手法による垂直磁気転写技術は実用化の一
歩手前にあります。今後、磁気転写のさらなる
高記録密度化への可能性を探索します。
本技術は原理的にはシンプルで、時間の流れ
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A12007d「次世代超高密度垂直磁気記録ハードデ
ィスクドライブのためのパターンドマスター磁気転写
技術開発」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
小峰 啓史
茨城大学 工学部 メディア通信工学科
准教授
21
環境分野
環境保全に向けたガスセンサの開発 −次世代の安全・安心のために−
環境汚染ガス拡散低減のため、実用化が待たれる特定ガスを検知する環境モニタリング用ガスセンサ
小型で軽量、長期連続使用可能な「その場測定用」センサを目指して、3価イオン伝導性固体電解質
を用いたセンサを開発 SO2、NOx、NH3センサの長期安定評価へ
開発されたSO2、NOx、NH3センサは一種類のイオンのみを伝導させる性質をもつ固体電解
質((Al0.2Zr0.8)20/19Nb(PO4)3)を用いたセンサであり、センサ起電力値と各種環境汚染ガスの
濃度の変化が一致することを発見して実用化へのメドをつけました。
本センサは固体電解質(イオン伝導性固体)と呼ばれる材料を「キーマテリアル」に用い、さ
らに検出極の開発を行い、理論応答を示す信頼性の高いセンサです。
● 汚染ガス別の濃度測定をその場で精度良く監視計測可能なセンサとして活用できるため、迅速
な環境対策を行う上で産業界に広く導入が期待できます。
●
競合技術への強み
形式 検知原理 ガス種別検知 長期安定期
不可
一般的なセンサ 半導体 ガス吸着
(従来技術)
個体 イオン
可能
3価イオン
電導性固体 電解質 電導 (SO2ガス)
(NOxガス)
電解質センサ
(NH3ガス)
(本技術)
(CO2ガス)
コスト
良好
数千円∼数万円
(小型センサ)
良好
数千円∼数万円
(目標)
(Cl2ガス)
▲従来のガスセンサとの比較表
応答速度(SO2ガスセンサ) 作動温度(NOxガスセンサ)
初
期
7分
450∼550℃
250℃
4分
現 在
▲3価イオン電導性固体電解質センサの改善状況
①他のガスの影響を受けないセンサ:半導体式セン
サは、半導体表面への吸着機構が同じガスを区別で
きないため特定のガス検知を行うには不向きです
が、固体電解質を用いたセンサは固体電解質の選択
的なイオン伝導を利用するため特定する環境汚染ガ
ス検知が可能となります。
②固体電解質型SO2ガスセンサ:SO2ガスの測定方
法には赤外分光分析、半導体ガスセンサ(例:ガス
漏れ検知器)などがありますが、前者は装置が大型で
高価、後者はガス選択性が低いという弱点がありま
す。固体電解質型のセンサは小型でガス選択性があ
り、その場計測用のセンサとして最も優れています。
③NaAl
(SO4 )
2 検出極を用いたSO2ガスセンサ:
SO2ガス濃度変化に対して起電力値とSO2ガス濃度
との間には良好な1対1の関係が認められ、SO 2ガ
ス濃度は起電力値により正確に決定できることが明
らかになりました。
④長期安定性:1ヶ月以上の理論応答を維持し長期
安定性を実証しました。
⑤検出極高導電率化:一方で検出極の導電率が低い
ため応答速度が遅い
(約7分)
ことがわかり、検出極の高
導電率化への改善を行った結果、N a A l N a A(SO
l
4)
2
検出極の11倍の導電率を持つ新しい検出極の開発に
成功。応答速度の改善にもつながりました(約4分)
。
⑥低温作動型NOxガスセンサの開発:これまでは
450∼550℃の高温作動型のセンサだったため、ア
ルミニウム金属を参照極として用いたセンサ素子を
開発、250℃でのNOガス濃度変化に対しセンサ起
動電力との関係が1対1となることが判明し、NOガ
ス濃度の検知が起電力値により決定できることを明
らかにしました。
ここがポイント
環境汚染ガスの大気中への拡散を低減するために
は、排出されるガス濃度のその場計測が必要であり、
これを実現するために実用的なガスセンサの開発が望
まれています。さらに大気汚染問題の解決は世界的な
緊急課題でもあり、速やかにセンサを普及させる必要
があることから、実用的なセンサは個々の排煙中に設
22
置できる小型、軽量、安価である事が望まれます。小
型ガスセンサとしては半導体上へのガス吸着による抵
抗変化によりガス濃度を計測する半導体式のセンサが
すでに商品化されています。しかし半導体表面へのガ
ス吸着がガス検知の原理であるため、他のガスの影響
を受けます。つまり複数のガスを同時に排出する化学
工場といった厳しい環境下での選択的なガス検知を行
うには半導体センサは不向きなのです。これに対し固
体電解質を用いたセンサは固体電解質の「ただ1種類
のイオンのみが固体中を伝導する」という特異な性質
を有しており、この原理上、高選択的なガス検知が可
能です。このような背景のもと、3価イオン伝導性固体
電解質の開発とガスセンサへの応用を検討していた
我々の研究チームは、3価イオン伝導体を用いた環境
汚染ガスセンサ向けの開発を行いました。センサの実
用化への課題としてあげられていたのは3価イオン伝
導体の低いイオン伝導率が主な原因での高温作動が必
要なことでした。500℃近い高温が故に消費電力が大
きく、この解決も研究目的の一つでした。今回開発した
センサはいずれも理論値に沿う応答が得られ、消費電
力等の問題も解決できたことから、本研究のセンサは
実用的なセンサとして今後の実用化が期待されます。
ブレイクスルーへの道のり
1995年:固体電解質中を3価イオンが移動すること
が初めて発見されるが、センサ材料として用いるには
化学的安定性が不十分であった。
1997年:学部4年生の卒業研究テーマであるアンモ
ニアガスセンサに関する研究を通じ、センサが環境改
善のための基本技術として重要であるにも関わらず、
理想的なガスセンサが開発されていないことを知った
ことをきっかけに、実用的な3価イオン伝導体(固体
電解質)の研究を開始(2年後の日本学術振興会特別
研究員奨励研究に向けての予備実験)
。
1999年:準備研究の成果を踏まえ、さらに実用的な
3価イオン伝導体に関する研究を推進(日本学術振興
会特別研究員奨励研究)
。また、同時期に、研究代表者
らが開発したA l3+イオン伝導体を用いたC02ガスセン
▲環境モニタリング用
ガスセンサ
得られていたが、2年目後半には、一部の対象ガスに
対してセンサ作動温度の低温化という課題に直面し、
センサ素子構成の再検討に入る。
2007年:研究開始後2年経過時、試行錯誤の末、セ
ンサ作動温度の低温化(250℃)に成功し、新しいタ
イプのセンサ素子構成を構築。また、研究3年目に入
り、アンモニアを検知できるガスセンサの開発に取り
組み、みごと成功。現在、これまでに開発したセンサ
(NOx、S02、NH3)の長期安定性評価を行っている。
また、センサ作動温度のさらなる低温下及びポータブ
ルタイプセンサの開発を目指し、センサ構成材料の薄
膜化技術の確立も目指している。
■サクセス・キー
本研究では、ガスセンサに用いられてきた固体電解
質が1価イオン伝導体のみであったことに疑問を感
じ、より化学的に安定した3価イオンが固体中を移動
する固体電解質を用いるのなら、実用的なセンサが構
築できるのではないか? と考えたのが研究の発端で
した。
「素朴な疑問にこそ新しい発見がある」発想の
源は常に自らの近くにあるということです。3価イオ
ン伝導体の初期研究では、化学的安定性に乏しい材料
しか得られていませんでしたが、これまでの固体電解
質に関する膨大な研究例を調べ上げ、研究に取り入れ
ることで、3価イオン伝導体に関しても化学的安定性
が付与できると信じ、1年以上におよぶ成果の出ない
苦悩の期間を乗り越え、実用的な3価イオン伝導体を
得ることに成功した。
「直感(信念)を信じること。
」
この強い信念が必ず成果をもたらすものと思います。
■ネクスト・ストーリー
今後の課題としては、センサ素子の小型化(薄膜化)
による素子抵抗の低減と低消費電力化です。また今回
作成したセンサの実用化のために、次の段階として各
センサの長期安定性(3年以上)の評価を行っていきま
す。そして3価イオンの伝導性向上を目指し新たな3
価もしくは4価イオン伝導体の開発にも取り組んでい
きます。またC l 2 用検出極の探索やプロトタイプセン
サ素子の作製と評価についても進めていく予定です。
サの開発に着手。
2001年:研究を行ってきたC02センサが実用レベル
の特性を示すことが分かり、研究代表者が所属する研
究室の現教授の指導の下、民間企業との共同開発に移
行。
その間、新しいセンサ用3価イオン伝導体の開発と
他のガスセンサに関する基礎研究を行う
(科研費研究)
。
2004年:それまでの研究成果を踏まえ、平成16年度
第1回産業技術研究助成へ提案したが、研究体制、研
究計画の具体性がない等の指摘を受け落選。
2005年:不採択コメントを踏まえ、研究計画等を練
り直し、平成17年度第1回産業技術研究助成へ提案し、
採択。晴れて若手研究者が獲得できる研究費としては
潤沢な研究資金により、研究を開始。
2006年:研究開始後1年経過し、予定通りの成果が
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A18011d「3価イオン伝導性固体電解質を用いた
環境汚染ガスセンサの開発」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
田村真治
大阪大学大学院工学研究科
応用化学専攻 助教
環境分野
新発想!植物で植物に灌漑する技術
深根性植物の水圧リフト(Hydraulic lift)機能(注1)を活用することで、
地下水を表層の乾燥した土壌へ浸透させる「植物スプリンクラー」
未利用のまま地下に流出してしまう乾燥地域の降水を、
大規模投資を伴わずに灌漑用水として活用する技術
低ダム建設、大型スプリンクラーでの空中からの散水等、従来の大規模灌漑法の欠点である低い水資源利用効率
(灌漑効率。約50%程度)や高い設備投資コストを克服するために、灌漑効率が90%程度の多数の小型スプリン
クラーを設置する方法や点滴灌漑技術(ホースから少量ずつ水を滴下)等が開発されましたが、高いコストが障
壁となっています。
「植物スプリンクラー」は、高い灌漑効率と低いコストを兼ね備えた新しい灌漑技術です。
● 散布する淡水中に含まれる塩分(注2)により土壌への塩類集積が起こる従来のスプリンクラーと異なり、
「植物スプ
リンクラー」は塩類集積の回避にも寄与し、農業生産のみならず、砂漠防止や緑化事業にも役立つ低環境負荷技
術として期待されます。
●
競合技術への強み
単位面積あたり
の灌漑設備の設
置・稼動コスト
(1)地表灌漑
○
農業用水の
利用効率
△
(大規模スプリンク
比較的低い
低い(50%前後)
ラーによる灌漑等)(初期投資は大きい)
(2)マイクロ
スプリンクラー
(3)点滴灌漑
△
高い
△
高い
○
塩類集積
を起こす
可能性
△
大きい
○
高い(90%前後) 小さい
○
○
高い(90%前後) 小さい
◎
(4)植物スプ 極めて高い
◎
◎
リンクラー
(主に地下水を利用 (2)
、
(3)
(1)より低い投資で
(本技術)
するので、農業用 より小さい
実現できる見込み
水は補助的な使用
だけで済む)
▲灌漑技術に関する既存技術と本技術の定性比較表
①高い灌漑効率:乾燥による作物生産の損失を回避
するため、人類は工学的手法に基づいた灌漑設備の
導入で主に対応してきました。しかし、灌漑設備の
規模が大きくなるほど、農作物に利用されることな
く蒸発で失われる水の割合が増加します(灌漑効率の
低下)
。本技術植物の根を介した地中点滴灌漑技術と
位置づけられる本技術は、地域に適応した土着の植物
を活用できるため、高い灌漑効率が期待できます。
②農業用水の節減:灌漑効率を上げることにより、
農業用水の節減にダイレクトにつながります。
③塩類集積の回避:灌漑効率の低下は水資源の浪費
となるだけでなく、地表面に塩分を集積させる弊害
も招きます。植物の生理機能を利用した本技術によ
り、塩分集積を回避できます。
④マイクロスプリンクラーや点滴灌漑にない低コスト:
灌漑効率の低下を克服する目的でマイクロスプリン
クラーや点滴灌漑などの技術開発も行われてきまし
たが、これらは高い灌漑効率を達成できるものの、
設備やその維持に費やされるコストの高さが障壁と
なっています。本技術は設備をいっさい必要としな
いため、低コストの灌漑を実現します。
⑤低環境負荷:土着の植物の力を利用するだけなの
で、環境にやさしい技術といえます。また地域に適
応した土着の植物を活用するため植物の生態系を崩
す心配もありません。
ここがポイント
近い将来、水資源の需要が供給を今以上に大きく
上回り、人類の生存に深刻な問題となることが懸念
されています。2025年における人口一人当たり利
用可能な水量を予測すると、「壊滅的な状況」を迎
える地域が大幅に増加すると言われ、まさに『水問
題』はエネルギー問題と並んで、21世紀における最
重要課題の一つとなっています。また、開発途上国
の30%は乾燥地域であり、そこでは水不足による作
物の減産が著しいが、灌漑インフラは未整備な場合
が多く、各農家も独力で設備を導入することが経済
的に困難な状況であります。そこで、深根性植物の
水圧リフト(Hydraulic lift)機能を活用することで、
地下水を表層の乾燥した土壌へ浸透させる技術の開
発を行いました。その結果、地中深く根を張った植
物(キマメなど)が蒸散を停止する夜間に、土壌深
層から吸収した水を乾いた表層土壌に放出する現象
(hydraulic lift)を確認し、さらに表層土壌に放出さ
れた水分は近隣の浅根性作物(トウモロコシなど)
にも供給されることを立証しました。この現象をう
まく制御できれば、植物で植物を灌漑する「植物ス
プリンクラー」という新しい発想がも可能となりま
す。本研究では、深根性植物の葉を切って水の供給
を促進するなど、スプリンクラーとして機能させる
ための基礎技術を探索し、フィールドでの検証とシ
ミュレーションモデルによる解析を通じて、「植物
スプリンクラー」の有効性と課題を明らかにしまし
た。
▲ 人口一人当たり利用可能な水量(出典:Shiklomanov(1999))
ブレイクスルーへの道のり
2001年:研究代表者と修士学生の関谷信人氏がア
フリカのザンビア共和国でフィールド実験を実施
し、本研究のアイデアの源となるHydraulic Llift現
象を農耕地では世界で初めて確認した。このとき、
この現象をうまく活用すれば灌漑技術として応用で
きるのではないかという発想が芽生えた。
2002年:修士学生が博士課程に進学して新しい研
究テーマに取り組むことになり、本研究は一時中断。
2004年:Hydraulic Lift現象に関する総説を執筆する
際、この現象を積極的に活用するための研究を構想。
共同研究者の関谷氏が根研究会学術奨励賞を受賞。
2005年:平成17年度第1回産業技術助成事業公募に
応募した結果採択となり、7月より研究を本格的に開始。
2006年:プランターを用いた室内実験で、植物の
根を介した水の移動は当初予想していた以上に大き
いことを確認。この解析を卒業論文とした学部生は、
平成18年度名古屋大学総長顕彰を授与された。従来
の常識に囚われない柔軟な発想に基づいて困難な課
題を解決しようとする姿勢が、名古屋大学学術憲章
▲キマメを一定間隔で植えたトウモロコシ畑
の実証サイト(ザンビア共和国)
植物スプリンクラー(右端の深根性植物)に
近づくほどトウモロコシの生長が良好。
の「論理的思考力と創造力に富んだ勇気ある知識人」
を体現するものとして高く評価された。
2007年:国内・海外を含めた3地域(島根県砂丘
地・ザンビア・中国河北省)で、フィールド実証試
験を本格的に展開。ただし、いくら条件の良い候補
地でも海外のフィールドにずっと滞在するわけには
いかず、信頼できる現地のスタッフを見つけるのが
一番のネックだった。試験の結果は良好で、いずれ
の地域でも「植物スプリンクラー」が有効に機能す
ることを確認できた。
■サクセス・キー
●これまでの常識(植物の根は水を吸収するためにあ
る)のみに囚われずに、柔軟な発想を楽しんだこと。
● 冷ややかな反応が多い中であっても、賞賛の声も
聞けたこと。
● 自らの力で常識を打ち破ろうとする意志を持つ共
同研究者に恵まれたこと。
■ネクスト・ストーリー
本研究の実証段階はすでに終了しており、現在取
りまとめを進めている研究成果を論文として公表し
た後に、成果やノウハウをわかりやすく解説した資
料をホームページなどで一般に公開し、本技術の試
用を促進します。本研究成果の利用は原則自由とし
つつ、「植物スプリンクラー」に栄養をとられて目
的とする植物の生長が阻害されるという逆効果も考
えられなくはないので、適用した結果については報
告を要請して事例収集につとめます。国内・海外を
問わず、広く一般に本技術の試験者を募ることで普
及活動と適用事例の拡張を目指し、ゆくゆくは実施
箇所とその面積の広がりを世界地図上に表示したい
という希望を持っています。
(注1)ギニアグラスやキマメ等、深根性の植物の深根が日中に深層
水(地表下2m前後)を吸収し、夜間に表層付近の根を通じ
て乾いた表層土壌(地表下50cm前後)に放出する現象。こ
れを用いてトウモロコシ等、一般に浅根性の農作物に深層水
を供給することが可能。
(注2)一般に海水の塩分濃度は3%程度である一方、淡水にも塩分
濃度で0.05%以下程度だが塩分が含まれており、多量に淡
水を散布すると土壌への塩類蓄積が生じる。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A20002a「Hydraulic liftを利用した植物で植物を
灌漑する技術」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
矢野 勝也
名古屋大学大学院生命農学研究科
生物圏資源学専攻 助教
23
ナノテクノロジー・材料分野
究極の電池、全固体リチウム二次電池の実現にむけた新しい電極−電解質界面構築手法の開発
発火・液漏れなどの危険性がある有機電解液を使用せず
無機固体電解質を用いた全固体二次電池の高速電荷移動を実現
液体電解質の導電率に匹敵する5.0×10-3 S cm-1(室温)という高い導電率を持ち、かつ広い電位窓(注1)を有する固体電解質材料を開発。
従来の有機電解液に代えて開発した固体電解質を用いることにより、安全性に優れる全固体二次電池を作製しました。
本技術では、電極−電解質間の固体界面を構築する新規な作製プロセスを開
発し、従来の粉末を混合しただけの電極−電解質複合体の場合に比べて、全
固体電池の作動電流密度を大幅に向上させることに成功しました。
● 今後は究極の電池である全固体二次電池の実用化を目的として、
電極−電解
質間の界面構造を詳細に検討することによって、電池特性向上のメカニズム
の解明と、より一層の電池の高性能化に取り組んで行きます。
●
競合技術への強み
容量密度
安全性 (LiCoO2正極重
量あたり)
電流密度
寿命(充放電回数)
△
従来のリチウ
○
○
ムイオン電池(大型化にと
○ (一般的には最大
(通常500サ
も
な
い 、発
[市販品]
(100∼160 10∼20mA/cm2 イクルまでの
火・液漏れの
(従来技術) 危険性あり) mAh/g)(注2) で作動可能)
評価が多い)
全固体電池
○
◎
○
○ (現在10 mA/cm2
[試作品] (無機物な
(500サイク
(110mAh/g) での作動を確認) ルまで確認)
の
で
危
険
(本技術)
▲全固体化による電池の安全性向上
グ(電力負荷平準化)用電源としての応用が大いに
たことが、数々の若手研究者賞の受賞につながっ
期待されます。
たと思います。また電池関連の研究者とディスカ
ッションすることで、界面形成に関するアイデア
性なし)
▲従来技術と本技術との比較表
ブレイクスルーへの道のり
2005年:本来のテーマであるイオン伝導体・固体
を得ることができたことも、本研究で成果が得ら
れた大きな要因でした。
■ネクスト・ストーリー
①安全性の向上:現在は電解質として、有機電解液
電解質について研究を行っていたとき、「イオン伝
を使用していますが、これを無機固体電解質に置き
導体は全固体電池に利用できるのでは」というアイ
これまでに開発してきた電極−電解質界面の構
換えることで、発火・液漏れなどの危険性がなくな
デアを着想したが、当時はそのような技術もなくま
築手法の中で、全固体電池の出力特性の向上が最
ります。
②固体電解質材料の特性向上:硫化物系をベースと
た、ほとんど研究例がなかったので、自ら全固体電
も期待できるのは、電極活物質の表面処理です。
池を作製することを決意。全固体電池の高出力化を
今後はこの手法にターゲットを絞り込み、表面処
する固体電解質の作製プロセスを検討し、従来の硫
図るためには、固体電解質材料そのものの性能向上
理プロセスに用いる材料の最適化を行うことで、
化物電解質の2倍以上の室温で5.0×10-3 S cm-1
だけでは不十分であり、良好な電極−電解質界面形
電池の作動電流密度の向上を図ります。また、電
という極めて高い導電率を示す固体電解質の開発に
成が不可欠であるとの考えに至る。この課題に取り
極−電解質界面の微細構造について詳細に検討す
成功しました。
組むべく、平成17年度第1回産技助成へ提案し、見
ることによって、電池特性向上のメカニズムの解
③電極−電解質界面の特性向上:電極活物質の周り
事採択。助成研究を開始。
明に努めて行きます。
にイオン伝導性の固体電解質相を自己的に形成させ
2006年:アイデア→試作→特性を調べる→問題が
また、硫化物材料の化学的安定性を高めて、安
ることで、電極−電解質間の良好な固体界面を構築
あれば構造を調べる→結果をフィードバックして再
全性のさらなる向上も図っていきたいと思います。
することに成功しました。また電極活物質の表面処
びトライ、というサイクルの繰り返しで何度もくじ
これにより全固体電池のより一層の高性能化を図
理によって、全固体電池の特性が向上することも分
けそうになったが、固体電解質の作製プロセスを検
ることが期待でき、実用化が少しでも早く実現で
かりました。
討することによって、導電率と電気化学的安定性を
きるようにしていきたいと考えています。
兼ね備えた固体電解質を開発。具体的には、Li 2S-
ここがポイント
Scm-1の極めて高い導電率を示す固体電解質で、さ
小型携帯電子機器の爆発的普及によって、リチウ
らにP 2S 5の一部をP 2O 5で置換することにより、ガ
ムイオン電池が近年大発展を遂げました。今後の電
ラスセラミック電解質の電気化学的安定性が向上す
気自動車やハイブリッド車への応用展開を考えた
ることも見出した。
際、リチウム二次電池の大型化や高エネルギー密度
2007年:当初の研究計画予定にはなかったが、電
化、そして安全性の飛躍的な向上が必要となってき
極活物質の表面修飾によって全固体電池の作動電
ます。そのために、現状の有機電解液を無機系固体
流密度を大幅に向上させることに成功。従来は導
電解質に置き換える“電池の全固体化”による電池
電助剤として用いてきたアセチレンブラック(AB)
の画期的な高性能化が期待されています。この全固
に代えて、ファイバー形状を有する気相成長炭素
体電池は、高水準の安全性・信頼性から、“究極の
繊維(VGCF)を使用して正極複合体を作製したとこ
電池形態”と言われています。
ろ、In/LiCoO2系全固体電池において、これまで作
全固体電池では電極−電解質間の固体界面で電気
動が困難であった電流密度1.3mAcm-2で50サイク
化学反応が生じるため、全固体型電池の出力特性を
ルの充放電が可能となり、約40mAhg-1の容量を保
向上させるためには、両者の固体界面接触をいかに
持するという結果を得た。また、メカノケミカル
向上させるかが極めて重要になってきます。
法を用いた電極−電解質複合体の作製にも成功し、
これまでの研究を通して、電極−電解質界面の自
これについては特許を出願。固体電解質の開発に
己的形成および電極活物質の表面処理が、全固体電
関して某企業と共同研究契約を締結。共同研究を
池の出力特性の向上に極めて有効であることを明ら
開始。
かにしました。今後この技術をベースとして、安全
■サクセス・キー
性の高い全固体電池について高出力化への道筋を示
すことができれば、移動体用電源やロードレベリン
24
P 2 S 5 系をベースとした、室温において5.0×10 -3
国内、国外の学会等で積極的に研究発表を行っ
(注1)電位窓:電解質・電極の組み合わせにおいて、電気化学
測定が可能な電位領域のことをいう。これが広いほど多
種多用な電解質・電極の組み合わせを用いることができ
る。
(注2)参考文献:R. Moshtev and B. Johnson, Journal of
Power Sources, 91 (2000) 86-91.
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A24024a「全固体リチウム二次電池の創製にむけた電
極−固体電解質ナノ界面の構築」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
林 晃敏
大阪府立大学 大学院工学研究科
物質・化学系専攻 応用化学分野 助教
ナノテクノロジー・材料分野
低コスト製造法による高効率純緑色発光ダイオードの開発
Ga(ガリウム)、In(インジウム)などの稀少金属(レアメタル)を含まない
新材料テルル化亜鉛(ZnTe)をベースとし、低コストで製造できる緑色LED
既存の緑色LEDを超える高効率化に期待が集まる
緑色領域の発光効率が著しく低下するこれまでの発光ダイオード(LED)の課題を克服する技術
開発に成功。これは、テルル化亜鉛の特性解明と要素技術の高度化を図ることにより、低価格製
造法による純緑色LEDの製造をもたらすものです。
材料のテルル化亜鉛は、既存の緑色LED材料とは異なり、ガリウム(Ga)
、インジウム(In)な
ど稀少金属を含まないため低価格であり、かつ資源枯渇の心配がありません。
● 低温・低圧でバルク結晶成長が可能であり、デバイス構造もシンプルであることから、製造コ
ストの抑制が見込まれます。
● 本技術開発は、既存の緑色LEDを超える高効率化が期待でき、省エネルギーに寄与します。
●
競合技術への強み
資源量
発光強度比 バルク結晶成長 材料価格
1
ZnTe
1∼2
(研究試作品)(現時点)
難
易
1
希少金属(Ga)を含み、資源
枯渇・価格高騰の懸念あり
▲緑色LEDに関する従来・競合技術との比較表
基礎となる物質を把握・制御し、要素技術の高度
化に取り組むことで、発光効率は本事業開始前に比
べ30倍以上向上し、ホモ接合構造ながら、市販の緑
色ガリウム燐(GaP)LEDと同レベルのパワー効率
「0.1∼0.2%」を達成しました。
また、ZnTe/ZnMgTeシングルへテロ構造を採用
した場合には自己吸収効果の抑制が確認され、さら
なる効率向上への指針を得ています。
ガリウム燐のバルク結晶を得る場合には30気圧以
上の環境が必要とされますが、テルル化亜鉛は1気
圧程度でよく、製造装置も大がかりなものを必要と
しません。
テルル化亜鉛の材料価格はガリウム燐の約3分の1
以下であり、低コストかつ安定的な供給が見込まれ
ます。
▲本技術(ZnTe)によるLEDの発光スペクトルと発光写真
ここがポイント
白熱電球に比べ、長寿命、低消費電力、小型軽量、
メンテナンスフリーといった特長があるLEDは近
年、その利用範囲が飛躍的に広がっています。LED
は光の三原色である赤・緑・青がすでに実用化され
ていますが、緑色領域にはグリーンギャップと呼ば
れる効率の谷間が存在し、パワー効率が0.1%程度
まで低下します。しかし、この波長領域は照明や電
光表示器としての用途のほか、プラスチックファイ
バ通信用光源、携帯機器用光源などへの応用が期待
されるため、かねてから高効率・高輝度光源の開発
が待望されていました。
▲ZnTe緑色発光ダイオード(発光部を横に5本並べて作成したもの)
LEDの作製プロセスを確立。ホモ接合構造でありな
がら、市販のGaP緑色LEDと同レベル以上の発光効
率を実現。だが、この段階に至ると技術的なハード
ルが高くなるだけでなく、周囲からのプレッシャー
も厳しくなってくる。LED開発は目で見えるものだ
けに、実際の成果物を示さなければならいのが難し
いところである。
3分の1 Zn,Teともに資源枯渇
の心配が無く、低価格
パワー高率 (%)
GaP
(従来市販品)
今回、開発に成功した純緑色LEDは市販品と同レ
ベルの発光効率を実現しただけでなく、原料および
製造コストが安価というメリットを有していること
もあり、電子部品メーカやLED応用製品製造メー
カなどから注目を集めています。
■サクセス・キー
発光ピーク波長 (nm)
▲市販LEDのパワー効率
ブレイクスルーへの道のり
2000年:佐賀大学に助手として着任。ベンチャ
ー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)および佐賀県
産官学プロジェクトとして進められていたZnTe緑
色LED開発にデバイス化技術開発担当の研究分担者
として参画。
2001年:Al熱拡散法によるLED開発を開始。
2002年:ブリッジマン法で作製したp-ZnTe基板を
使用して、熱拡散によるLED作製条件を詳細に検討。
早い段階で液体窒素中での発光を確認。さらに作製
条件を追求した結果、発光強度は弱いが室温緑色発
光に成功。
2004年:ZnTe LEDの室温動作が評価され、経済
産業省地域新生コンソーシアム研究開発事業に採
択。LEDデバイス開発担当の研究分担者として参画
し、熱拡散によるLED開発を担当。熱拡散プロセス
においてAl/ZnTe界面が重要であると考え、Al膜堆
積直前のZnTe表面処理を詳細に実験・検討。その
結果、酸素ラジカルを用いた表面処理がLEDの発光
強度の向上に有効であることを見出し、形成された
酸化膜が拡散するAl濃度を制御する“拡散制御層”
として振る舞うことを発見。
2005年:上記、拡散制御層を用いた独自の熱拡散
技術の特許出願を行うとともに、さらなるLED性能
の高度化を目指し、平成17年度第1回産業技術研究
助成に提案、採択。
2006年:LEDの要素技術開発に取り組む。p-ZnTe
エピタキシャル成長膜の高品質化、平坦化技術を開
発し、特許出願。ZnTeにおけるAl熱拡散特性を正確
に掌握。
2007年:熱拡散における新たな拡散制御層材料を
見出し、LEDの効率が3倍向上。
2008年:光取り出し効率改善のため、薄膜型ZnTe
約20年前から緑色発光材料の基礎研究を継続して
きた佐賀大学、並びにLED開発に適した装置が導入
されている佐賀大学VBLにて研究を推進できたこと
は幸運でした。長年ZnTeの研究を行ってきた2名の
佐賀大学教授より研究協力をいただき、物性評価か
らLEDデバイス開発、性能評価に加えて、LEDパッ
ケージング技術まで、ZnTe LED開発に必要なすべ
てのプロセスを一貫して行える環境を構築できたこ
とも大きな要因です。これにより、LED試作後の課
題抽出から、ただちに材料開発、構造設計へのフィ
ードバックを行うことができました。
また、ひとつの考えにとらわれず、目的実現のた
めに考えられる種々のアプローチを試みました。そ
のほとんどが失敗に終わりましたが、これにより多
くのノウハウを蓄積することができ、次のステップ
につなげられたと思います。
■ネクスト・ストーリー
欠陥の少ない高品質なヘテロ構造界面の活用によ
りキャリア閉じ込めを実現できれば、発光効率は格
段に向上し、実用化のレベルに達すると考えられま
す。今後、ZnTe LEDのさらなる高効率化を図るた
め、高品質なヘテロ接合構造を有するLED開発を進
めていく予定です。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A25005d「低コスト製造法による高効率純緑色発
光ダイオードの開発」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
田中 徹
佐賀大学シンクロトロン
光応用研究センター 助教
25
ナノテクノロジー・材料分野
自動車排ガス浄化のキーテクノロジー∼大容量酸素吸蔵(ストレージ)物質∼
酸素吸蔵放出量が中高温域で既存物質を8倍近く上回る大容量酸素吸蔵物質を開発
自動車価格の約1割を占め、自動車の排ガス浄化として使用されている貴金属の使用量を
大幅に低減する技術として期待される
酸素吸蔵物質は、自動車排ガス浄化用三元触媒において排ガス中の酸素分圧の
自動制御に広く利用されていますが、既存の酸素吸蔵物質(CeO2-ZrO2)は、SO2
の吸着性が高いうえ高濃度のH2Sを放出するという問題点があり、吸蔵物質の構
造上、酸素吸蔵量の大幅な向上が期待できませんでした。
本研究は光触媒の原料研究という従来物質と全く異なった着眼点から出発し、
その8倍ものストレージを可能にしました。すなわち、既存セリア系物質の酸素吸
蔵量0.25mol/mol以下に対して、2mol/molを達成すると同時に、吸蔵速度も既
存セリア系物質の2倍を実現しました。より広範なエンジンモードへの対応、自動
車排ガス浄化に十分な速度、SOx耐性、粒子状物質の燃焼活性をもつことが実証
できましたので、今後、次世代自動車触媒として期待されます。
本研究の大容量酸素吸蔵物質の適用先としては、
①排気をより理想的な量論組成に近づけ貴金属元素使用量を大幅に低減する手法。
②量論燃焼からリーン(燃料濃度が希薄な状態)もしくはリッチ(燃料濃度が高い)
状態への逸脱が長い時間にわたるような長周期非定常運転。
③突発的なエンジン側の理由により瞬時に大量の酸素を吸蔵放出する条件。
④耐SOx性が求められる雰囲気などが考えられます。
いずれも現行の触媒では対応が困難であり、本研究で開発した大容量酸素吸蔵物
質の実用化が期待されます。
●
競合技術への強み
酸化
還元反応
ブレイクスルーへの道のり
酸素吸蔵量
(OSC)
コスト面
Sox 粒子状物質
耐性 の燃焼活性
セリア系物質
Ce4+⇔Ce3+間 0.25mol‐O2‐mol‐1 優れる なし
(CeO2)
2‐
あり
‐1
希土類
S ⇔S 間 2mol‐O2‐mol
オキシ
(セリア系物質の やや劣る あり
硫酸塩
8倍のOSC)
(Ln2O2SO4)
6+
あり
▲セリア系物質と希土類オキシ硫酸塩との比較
希土類オキシ硫酸塩L n2O 2S O4はH 2、C O、
C 3 H 6 などによってL n 2 O 2 Sへと還元され(酸素
放出)、O 2 などによって可逆的に再酸化される機
能を持ちます(酸素吸蔵)。一連のLnの中でPr系
の還元・再酸化が最も速く、低温で作動するこ
とを明らかにしました。酸素ストレージの低温
作動性を向上させるためにドデシル硫酸塩(DS)
を始めとする界面活性剤を用いたテンプレート
法によってオキシ硫酸塩ナノ多孔体の合成に成
功し、従来の合成法で得た試料よりもストレー
ジ速度が8倍も増加することを実証しました。本
酸素吸蔵物質を自動車用の排ガス浄化触媒と併
せて活用することで排ガス浄化能がより向上し、
これにより自動車に使用されている貴金属の使
用量を大幅に低減することができます。
ここがポイント
開発したオキシ硫酸塩は、酸素吸蔵放出量が
中高温域で既存物質を8倍近く上回り、より広範
なエンジンモードに対応できること、自動車排
ガス浄化に十分な速度を持つこと、SOx耐性を
有することがラボスケールのみならず模擬実用
条件でも実証され、当初の目標を上回りました。
P r(プラセオジム)の資源的リスクに関しては、
よりクラーク数(地殻中に含まれる元素の割合
を算出した数値)上位で希土類元素の中でも資
源的に豊富なLa-Ce複合系で代替し、Pr系以上
の性能を発現させるという元素戦略を確立しま
した。
26
▲三元触媒系への応用イメージ図
2003年:当時光触媒として研究していたランタ
ノイドオキシ硫化物の原料に用いていたオキシ
硫酸塩の反応性を調べる中で、本研究の基本原
理であるオキシ硫酸塩の大容量酸素ストレージ
を発見。関連特許2件出願。初めは基本原理の大
容量・長時間な酸素吸蔵の持続という特性を生
かす応用分野がなかなか見つけられなかった。
2004年:オキシ硫酸塩の耐熱性および酸化還
元特性を詳細に調べていた際、自動車触媒とし
ての可能性に気づき、急遽この用途への適用可
能性について多面的に検討し、基礎データを蓄
積した。
2005年:平成17年度産業技術助成へ提案し、
一度目の挑戦で採択。助成研究を開始。ランタ
ノイド元素依存性を構造面から解析し、Pr系を
最適元素として絞り込む。
2006年:多 孔 質 化 に よ る 性 能 の 飛 躍 的 向 上 を
達 成 。 投 稿 論 文 が 英 国 王 立 化 学 会 の Journal
of Material Chemistry誌 の 表 紙 を 飾 り 、
Chemical Technology誌で「酸素ストレージ触
媒の革命」として紹介されるなど、国内外の雑
誌、新聞等で報じられる。学会でのトピックス
講演採択。大学院生が学会で受賞。自動車関連
企業を中心に15件の問い合わせがあった。
2007年:開発した試料の触媒化に成功して企業
との応用研究が進み3、4件目の特許出願。レア
メタルPrのLa-Ce複合系による代替にも成功し
て実用性が高まる。
2008年:自動車排気浄化での有用性を発見し、
5件目の特許出願。PCT海外出願も。6月に成功
裡に助成研究を終了。現在は高効率・低価格の
触媒の実用化に取り組んでいる。
■サクセス・キー
偶 然 に 予 想 外 の 幸 運 な 発 見 を す る 能 力(セレン
ディピティ)
:2 0 0 3 年 に 光 触 媒 の 原 料 と し て 研 究
していた硫酸塩が硫化物との間で酸化還元を繰
り返すことに気付き、酸素ストレージ物質とい
う全く違う方向に研究が進展しました。
過去10年来の研究蓄積があったこと:合成法
として10年前に研究していた希土類メソ多孔体
のテンプレート合成を応用した結果、大幅な性
能向上が達せられました。
■ネクスト・ストーリー
従来から連携関係にある自動車企業と密接に
協力しながら、自動車価格の約1割を占める触媒
用貴金属の使用量を低減するための基盤技術と
しての展開を図っていく予定です。
試験的には500時間を想定していますが、実
用化(10年間使用)のシミュレーションをして
データを取得していきます。
これまで実現困難とされたディーゼル燃料や
硫黄分を含む軽油にも適用可能な次世代の自動
車排ガス浄化触媒の開発を目指します。
本成果をもとに、酸素ストレージ物質の新規
用途を開拓します。特に次世代エネルギーとし
て待望されている水素を大容量で吸蔵する機能
を設計し、環境浄化技術だけにとどまらず、水
素エネルギー技術としての新しい応用を世界に
先駆けて展開する予定です。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A25007d「大容量酸素ストレージ機能物質の創
製と次世代自動車触媒技術への展開」(平成17年度第
1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
池上 啓太
熊本大学大学院自然科学研究科 助教
ナノテクノロジー・材料分野
ナノカーボン閉構造体による固体潤滑表面システムの創出
ナノメートルサイズのボールベアリング球形の
微粒子カーボンオニオン(注1)の生成法を確立し
固体潤滑材としての優れた特性を持つことを明らかにした
(注1)直径5∼10ナノメートル程度の炭素原子のみで構成される球状でナノカーボン
閉構造体(炭素原子の直径:0.2nm)同種のナノカーボン閉構造体であるフラー
レンは球状の中空構造であるが、カーボンオニオン球の内部にも炭素原子が詰
まっており球状構造体の最外層にダングリングボンド(未結合手)が無く、分子
間結合力が極めて小さいのが特徴
「カーボンオニオン」は、直径5∼10ナノメートルの炭素原子(原子直径:0.2nm)から
なる球状の微粒子。カーボンオニオンが大気中・真空中を問わず、常温から数百℃の高
温まで幅広い環境で優れた潤滑特性を持つことを明らかにし、固体潤滑材としての可能
性を広く問いかける研究。
カーボンオニオンは、グリースをはじめとする潤滑油の使えない宇宙・航空機器、半
導体関連製造装置などの現場で、黒鉛グラファイトなど従来の固体潤滑剤に替わる、
新しい固体潤滑材として期待されます。
● 既存の固体潤滑材と同等またはより優れた潤滑特性を示します。
● 一般の機械においても潤滑油を使わない“オイルフリー”を目指す技術です。
●
▲カーボンオニオンを生成する高周波誘導加熱炉。ダイヤモンドナノ粒子またはカーボンブ
ラックを不活性雰囲気中で高速加熱(最高加熱温度:約2,500℃)
することにより生成する
競合技術への強み
摩擦係数 摩擦係数 潤滑 材料の入手
(真空中)(空気中) 性能 しやすさ
(1)
△
黒鉛グラファ 0.5以上
イト(従来品)
○
(2)
○
△
二硫化モリブ
デン(従来品)
0.04
高湿度の
空気中で
性能劣化
(3)
◎
△
本研究で試作の 0.02∼
0.2
カーボンオニオ 0.03(高 (高温空気
ン(研究試作品) 温真空中) 中)
○
△
0.1
◎
0.04∼ 0.05∼
0.13(常 0.08(常
温真空中) 温空気中)
○
コスト
◎
◎
容易
二硫化モリブデ
ンの1/2∼1/10
△
△
モリブデンはレ モリブデン鉱は
アメタルであり ¥5500/kg程度
今後資源枯渇や
価格高騰が懸念
される
◎
◎
○
資源的に供給の
問題の無い、安
価な原料を元に
しており材料入
手は容易である
原料のカーボンブラッ
クは¥500/kg以下、
ダイヤモンドナノ粒子
は¥5000/g(左記の
最高スペックはダイヤ
モンドナノ粒子のもの
であり、カーボンブラ
ックによるものは少し
性能が劣るが、今後、
さらに研究を進め、カ
ーボンブラックでも実
現できる見込み)
▲固体潤滑剤に関する従来品と研究試作品(本技術)の比較表
1 過酷環境対応:常温∼数百℃の高温環境下の真空中
○
でも、固体潤滑材として摩擦係数0.02∼0.03という
優れた潤滑特性を示します。
2 機械の固体潤滑材としても有望:オイルによる液体
○
潤滑が困難で、圧力や温度の変化が激しい環境下で使
用される機械システムの潤滑材として期待されます。
3 環境に優しい:従来から広く利用されている固体潤
○
滑材の二硫化モリブデン、二硫化タングステンは、環
境に有害とされる硫黄の化合物。カーボンオニオンの
構成元素は無害な炭素です。
4 レアメタルの使用を低減:二硫化モリブデン、二硫化
○
タングステンはレアメタルとされるモリブデン、タング
ステンを含みます。カーボンオニオンを用いれば、これ
らの使用を低減できます。
ここがポイント
潤滑剤というと機械自動車のエンジンオイルに代表
されるように、液体の潤滑剤を用いるのが普通です。
しかし、宇宙・航空機器、半導体関連製造装置などで
液体潤滑剤が使えない場合では、固体潤滑剤が求めら
れます。また、オイルによる液体潤滑は、廃油の処理
など環境面でも大きな問題を抱えています。カーボン
オニオンは、黒鉛(グラファイト)がタマネギのよう
に層になって重なった直径5∼10ナノメートルの球状
の微粒子で、球殻構造をしているため大気中・真空中
に関わらず極めて低い摩擦係数を示します。液体潤滑
の摩擦係数約0.001に対して、私たちが作ったカーボ
ンオニオンは約0.02と一桁劣りますが、現在、気相合
成反応容器内でのウエハ搬送装置に用いられている歯
車等で使われている固体潤滑剤の約0.1と比較すると
大変優れていることがわかります。
本研究では、ダイヤモンド微粒子とカーボンブラッ
▲ダイヤモンドナノ粒子から生成したカーボンオニオン(a)及
びカーボンブラックから生成したカーボンオニオン(b)の電
子顕微鏡写真
■サクセス・キー
▲温度を変化させたときの空気中、真空中における摩擦特性。横
軸にほぼ平行した下の2本のグラフは、高温の真空中でカーボン
オニオンの摩擦係数が0.02∼0.03と安定していることを示して
いる(縦軸は温度、横軸はしゅう動試験の回転数)
ク(工業的に生産される炭素の微粒子)からカーボン
オニオンを安定的に生産する方法を確立し、空気中や
真空中で温度等の条件を変えて実験を行い、カーボン
オニオンの潤滑材としての特性を明らかにしました。
ブレイクスルーへの道のり
1998年:ダイヤモンドナノ粒子を原料としたカーボ
ンオニオンの多量生成技術の開発に着手。このすぐ後、
カーボンオニオンが潤滑特性に優れていることを示唆
するデータを得て、これをオイルや既存の固体潤滑剤
に替わる新規の固体潤滑材として開発できれば世界に
貢献できると考え、研究テーマに据えた。
2000年:カーボンオニオンの基礎的なトライボロジ
ー(摩擦・摩耗・潤滑のメカニズムなどを扱う科学技
術)特性を把握。科学研究費補助金を獲得。
2001年:ダイヤモンド微粒子からカーボンオニオン
を生成。
2002年:カーボンオニオンと同様のトライボロジー
特性をもつカーボンナノチューブコーティングを形成。
2003年:触媒を利用したカーボンオニオンの低温合
成。科学研究費補助金を獲得。
2004年:カーボンオニオン潤滑層の長寿命化を自己
組織化単分子膜上で確認。
2005年:NEDO平成17年第1回産業技術研究助成に
採択。潤滑特性のさらに優れるカーボンオニオンおよ
びカーボンナノチューブの生成に関する研究開発を開
始。カーボンオニオンの生成と基本的な特性の解明ま
ではスムーズに研究が進展した。
2006年:カーボンオニオンを研究開発の主対象とし、
固体潤滑材としての機能を高度化。カーボンオニオン
添加複合材の作製に着手。最終製品を見据えて、どの
ように実用化させていくか、周辺技術の開発も含めて
ここが難しく、2008年の現在もその困難は続いている。
2007年:潤滑システムの観点から温度、しゅう動
(すべって動くこと)部材の表面形状などしゅう動条
件の検討を開始。
本研究で得られた成果は、一緒に研究を進めてくれた
学生の努力の賜物と思っています。彼らとの協働により
研究開発の結果に繰り返しの精査を加え、着実に目標を
達成してきました。一部の学生は卒業後も関連の産業分
野に進み、本研究のよき支援者となりました。ニューダ
イヤモンドフォーラムにおいて、他の様々な分野の研究
者からナノカーボンを含めた高機能カーボン材料関連の
最新の研究成果について情報が得られたことも、研究を
推進する強力なエンジンとなりました。また、装置の製
作、生成物の分析などの際に、大学の設備を効果的に利
用することができ、技能の高い技術職員の協力が得られ
たことも書き落とせません。
■ネクスト・ストーリー
基盤的な要素技術の確立を目指した本研究は、その目
標をほぼ達成しました。本研究の技術を幅広く受け入れ
てもらうには、安定した潤滑層を形成するための表面加
工技術の開発が重要です。その中で、本研究の初期に最
終目標とした摩擦係数0.01(達成値は0.02)の実現を
追求していきます。さらに次のステップとして、どこに
カーボンオニオンの固体潤滑を応用するか、具体的なア
プリケーションの提案を行わなければなりません。これ
により、どのような周辺技術の開発が必要か明らかにな
ります。長期的には、環境への負荷が大きいオイルによ
る液体潤滑を、炭素を材料とした固体潤滑に置き換え
る−すなわち、オイルフリー社会の実現をゴールに掲げ
て研究を推進していきたいと思います。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A26011c「ナノカーボン閉構造体による固体潤滑表面
システムの創出」
(平成17 年度第1 回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
平田 敦
東京工業大学 大学院理工学研究科
機械物理工学専攻 准教授
27
ナノテクノロジー・材料分野
構造物の維持管理費用の低減、防水工不要!?ひび割れを自ら閉塞する自己治癒コンクリートの開発
ひび割れを自ら閉ざす自己治癒コンクリートの開発
トンネルなど構造物の維持管理費用を低減し防水工事も不要となる技術
コンクリートにひび割れが生じても、コンクリート自らがひび割れを閉ざす
「自己治癒」技術。トンネルなど地下水に触れることが多いコンクリート構造
物は漏水に悩まされてきたが、この技術により維持管理費用を大きく低減する
ことが期待されます。
●
本技術は、自己治癒が起こりにくいとされる日本の軟水環境において、通常の
水セメント比(注1)で確かな自己治癒を実現します。
● 竣工後の維持管理費用を低減するだけでなく、コンクリート構造物の長期的な
信頼性を向上させます。
将来的には、施工時の防水工事を不要にすることを目指しています。
▲作製したセメントペースト
(砂や砂利等の骨材を除いたコンクリート中の接着材部分)
を120日放置した後にひびを入れ
(左)水を浸すと、3日でひび割れが自己治癒(右)
した。
(注1)コンクリートの水とセメントの配合比を表す指標で、強度の目安となる。一般に水を減らすと高い強度を得ることが
できる。水量をW、セメント量をCとし、
〔W/C〕の百分率で示す。一般的なコンクリートの水セメント比は45∼60%。
ブレイクスルーへの道のり
競合技術への強み
コスト
ー
①生物反応を利用し
(実現していない
た自己治癒技術(注2)
ので評価不可)
自己治癒に
要する時間
自己治癒性能
(耐水性)
ー
×
(実現していない
ので評価不可)
②低水セメント比と
○
×
膨張材大量使用によ
28日
るひび割れ自己治癒 (通常のコンク (コンクリート
技術(2001年に発表 リートの約2倍) での場合)
○
した同研究室の技術)
③通常の水セメント比
◎
○
による自己治癒技術 (通常のコンクリ 最短3日
(最新バージョン ートの約1.3倍) (セメントペー
ストでの場合)
の本技術)
○
▲コンクリートの自己治癒技術に関する従来・競合技術と本技術
との比較表
①補修工事不要:ひび割れを自ら治癒し漏水を止め
るので、漏水対策としてのひび割れの補修工事をす
る必要がなくなります。
②美観の維持:漏水が少ないので美観を損なわず、
快適な地下空間を維持することができます。
③信頼性向上:セメント親和性材料の化学作用を利
用した自己治癒性能をコンクリートに与え、構造物
の長期的な信頼性を向上させます。
④地上構造物にも適用:道路や鉄道等の地上のコン
クリート構造物の場合でも、雨や人工的な散水によ
り自己治癒させることが可能と考えられます。
ここがポイント
ひび割れはコンクリート構造物の大敵ですが、
セメント中の水酸化カルシウムが二酸化炭素と反
応して炭酸カルシウムを生じたり、セメントの未
反応部分が流れてきた水と追加反応する等により、
ひび割れが自然に修復(自己治癒)することが稀
にあります。私たちはこうした自己治癒を確実に
行わせることができるコンクリート材料の開発を
行ってきました。
2001年には、水とセメントの比率(水セメント
比)を低くして未反応部分を多くし、膨張材を大
量に使用して自己治癒させる技術を開発しました。
しかし、この方法はコストが嵩むため、その後通
常の水セメント比でも実現できる新しい自己治癒
技術の開発を目指して研究してきました。
新手法の基本的な考え方は、①膨張材、②膨潤
する材料、③ひび割れ部分に析出した生成物の結
晶性を高める材料、の3つを添加して、これらの複
合効果によりコンクリートを自己治癒させるとい
うものです。この考え方に沿って研究開発を重ね
た結果、作製したセメントペーストを120日∼
200日後放置した後にひびを入れ水に浸すと、3日
でひび割れが自己治癒(自己閉塞)するという結
果を得ています。
28
2001年:低水セメント比・膨張材大量使用による
ひび割れ自己治癒(自己閉合)コンクリートの開
発に成功。
1996年: 荷重によりひび割れを導入した膨張コ
ンクリート(注3)に水をかけると膨張してひび割れ
が閉じるのを目にして、ひび割れを自己治癒でき
るのではと思い立ち、翌1997年、膨張材を用いた
自己治癒コンクリート(膨張コンクリート)の研
究に着手。コンクリートのひび割れは、水漏れや
構造物の耐久性低下を招き、設計・施工者や管理
者を悩ませ続けてきたので、この問題の解決に貢
献できるのではと考えた。
1999年:低水セメント比で膨張材大量使用の場合
にのみ、発生したひび割れ中への水の浸入により
大きな追加膨張が生じることを確認し、研究に弾
みがつく。
2001年:低水セメント比・膨張材大量使用による
ひび割れ自己治癒(自己閉合)コンクリートの開
発に成功。
2004年:JR東日本(株)および横浜国立大学 細田
暁研究室との共同研究体制が本格的にスタート。
ひび割れの「自己閉合」から、ひび割れ部への生成
物の析出による「自己閉塞」にコンセプトを転換。
2005年:平成17年度第1回産業技術研究助成事業
に申請し、無事採択。無機表面改質材の反応メカ
ニズムに着目した研究開発を行う。ひび割れ部に
生成した水和物の化学的耐久性と基礎分析を実施。
2006年:新たなコンセプトに基づいた自己治癒セ
メント組成物の開発に着手。最適な材料の組み合
わせを見つけるまで、試行錯誤の連続で大変苦労
した。コンクリートの自己治癒性能評価および、
新しいセメント組成物がコンクリートの耐久性に
及ぼす影響度の定量評価を行う。さらにセメント
モルタル (注4)、補修材等としての2次的な活用の
可能性を模索。
2007年:4月オランダで開催された第1回自己治
癒材料国際会議に参加して、研究成果の一部の発
表を行い、建設材料分野で大きな関心を集める。
実行委員会より、プロジェクトチームメンバーの
安台浩に“Travel Award”が授与される。一連の
研究が高く評価されて大きな喜びを得る。11月に
はJR東日本(株)と共同で、実構造物対応の施工試
験を実施。
▲自己治癒の実証試験。コンクリート貯水容器にひびを入れ、内
部に水を入れて自己治癒の状況を観察する(この写真はひびを
入れた直後)
確実なニーズの把握と各種実証試験の効率的な実
施が可能となり、無駄なく成果に結びつけること
ができました。
■ネクスト・ストーリー
現在、実施工における施工性確認試験を完了し、
本技術を用いた小規模な適用事例も出てきました。
今後は、地下構造物・トンネル構造物などへの適
用を進めていく予定です。開発技術や製品の商用
化および事業化の検討も課題ですが、例えば、地
上の道路や鉄道の構造物にもひび割れが問題とな
る箇所が多くあり、雨も降るので適用先として有
望と考えています。また、セメントモルタル、補
修材などに自己治癒性能を持たせる商品開発も視
野に入れています。現時点での自己治癒技術は最
終形ではないと考えているので、さらに優れた効
果を生む技術開発を続ける必要があります。
今後、コンクリートの能動的なひび割れ自己治
癒技術について、実構造物での施工実績を少しず
つ重ねていくとともに、更に効果的で信頼性の高
い技術を模索し、地上構造物の補修技術としての
展開を進めていく予定です。
(注2)バクテリアが炭酸カルシウムを析出するしくみを利用したオ
ランダでの研究。
(注3)膨張材として粉体状のアウイン・生石灰・セッコウの焼成物ないし
その一部を主成分とする鉱物混和材をセメントに添加して製造した
コンクリート。
(注4)砂とセメントと水とを練り混ぜて作る建築資材。施工性が良く、仕
上材や目地材(レンガの間への埋め込み)等として使用され、構造
材料として単独で用いられることは少ない。
■サクセス・キー
材料および化学分野を専門に研究してきた博士
課程留学生、安台浩氏(韓国)が研究に参画し、
異なる分野の融合による研究体制をとることがで
きました。これにより、新たなコンセプトで自己治
癒技術を開発することができました。JR東日本(株)
との共同研究という形をとることができたため、
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A27012d「 能動的なひび割れ自己治癒機能を有す
るコンクリートの開発 」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
岸 利治
東京大学生産技術研究所 人間・社会系部門
准教授
製造技術分野
X線CT画像の高精度化と画像情報に基づく非破壊検査技術
X線CT画像に発生するノイズ(メタルアーチファクト)を
低減させる3つの手法を開発し、材料によらず鮮明なCT画像出力を実現
非破壊型検査の精度向上に貢献しCT技術を広く製品検査技術に活用することを可能にした
X線CT画像は人工物の製品検査にも有用と考えられているが、金属を含む人工物の場合にはメタルアーチファクト(注1)
と呼ばれるノイズが発生するため製造現場での活用があまり進んでいない。
本研究での理論的・実験的な検証から確立された新たなCT撮影手法・画像再構成手法によって検査技術の高度化が期待される。
単純な構造の試験片を大量に検査する用途に適した手法(A)、製造ミスの選別などに適した
手法(B)、単一の検査対象物を精査するのに適した手法(C)という、3種の手法を構造や材
質などを考慮し使い分けることで鮮明なCT画像が得られます。
● CT画像に基づくリバースエンジニアリング(注2)によって、歯などの生体組織やデザイン模型
など、図面が存在しない対象物のCADデータ生成およびNC加工(注3)が可能になります。
●
競合技術への強み
従来技術との比較①X線CT画像再構成原理
来
被写体の周囲からX線を照射して得られる投影デー
タをそのまま利用
本研究
被写体の周囲からX線を照射して得られる投影デー
タを補正してから利用
従
従来技術との比較②投影データ補正方法
従
来 補正なし
手 法 A 金属を透過した領域のデータを抽出し、この部分を
(本研究) 補正
手 法 B 2種類のX線を照射して得られる投影データを合成
(本研究)
手 法 C 複数のX線を照射して得られる投影データから矛盾
(本研究) のない投影データを算出
従来技術との比較③CT画像精度
従
来 メタルアーチファクトが発生
手 法 A メタルアーチファクトをほぼ除去、対象物形状が不
(本研究) 適切になる場合あり
手 法 B メタルアーチファクトを低減、ただしノイズの多い
(本研究) 画像となる場合あり
手 法 C メタルアーチファクトを低減、ただし撮影に時間を
(本研究) 要す
▲X線CT画像再構成技術に関する従来技術と本技術との比較表
①従来技術ではメタルアーチファクトによりCT画
像が不鮮明であったが、当技術によって明確なCT画
像が得られるようになった。
②金属と樹脂が混合している場合、従来は樹脂の部
分の構造検査が困難であったが、当技術では金属だ
けでなく樹脂部分の非破壊検査も可能になる。
③二次元的な断層画像の画質が改善するだけでなく、
三次元構造の解析においても鮮明な表現が実現した。
④従来は画像情報からCADデータへの変換が煩雑
であったが、当技術ではCAD/CAMデータ生成
までを一括処理するアプリケーションの構築を可能
としている。
⑤X線CT画像に基づき撮影対象物の構造を個体別に
モデル化する技術の性能が向上し、MEMS (注4)の
ような金属と樹脂で構成される微小な人工デバイス
への荷重や熱による変形挙動について計算機シミュ
レーションによる予測が可能となる。
(注4)MEMS=「Micro Electro Mechanical Systems」の略であ
り、日本語では「微小電気機械素子」などと訳されることが
多い。半導体製造技術を応用して作られる電子回路と機械構
造が一体化したものであり、インクジェットプリンタヘッド
やハードディスク・光ディスクの読取ヘッドなどに使われる。
ここがポイント
三次元情報を直接的に得られるX線CTは、デバイ
スの非破壊検査技術として有効であると期待されて
います。しかしCT画像内に生じるメタルアーチファ
クトと呼ばれる放射状のノイズによって観察が困難
な場合があり、電子部品・機械部品の品質保証に有
用な非破壊検査技術の確立が要望されていました。
本研究では、X線CT画像にメタルアーチファクト
が発生する物理的要因を明らかにし、これによって
得られた知見にもとづき、検査対象物の構造や検査
(注1)メタルアーチファクト=撮影対象がX線を吸収しやすい金属
を含む場合にX線CT画像に発生する画像ノイズのこと。
(注2)リバースエンジニアリング=ソフトウェアやハードウェアを
解析し、その仕組みや構成を明らかにして再現すること。
(注3)NC加工=Numerical Control machiningの略で、数値制
御(NC)による加工方法のことで、切削用工具の刃先の動
作を座標値によって定義し、目的の形状に関する数値情報を
もとに工具や被加工物を動作させ加工を行うことを指す。
目的に応じた三種類のCT
画像再構成アルゴリズムを
開発したものです。
メタルアーチファクトが
発生するのは投影データが
X線照射方向によって一様
でないためであることを突
き止めたのち、物質の吸収
▲従来技術と本技術(手法A、B、C)との
▲従来技術と本技術(手法A、B、C)による
係数はX線の波長によって
メタルアーチファクト発生状況比較(立体)
メタルアーチファクト発生状況比較(平面)
異なること、X線CT装置
が搭載しているX線源は加
紹介。発表時およびその後にも数社から提案技術に
える電圧の変化によって出力するX線の波長スペク
関する問い合わせおよび試験の申込があり、社会的
トルが変化することなどを捉え、結果、三次元CT
ニーズの高さを改めて実感。
画像の高精度化を実現させたものです。
2008年:これまでの成果の実用化について検討を
ブレイクスルーへの道のり
開始。
1990年代:X線CT画像に基づき生体組織の個体別
有限要素モデルを自動的に構築する技術について検
討をスタート。この課題は歯学部との共同研究であ
り、情報源として用いるCT画像には虫歯治療の貴金
属によるアーチファクトが激しく発生していた。当
時は、CT技術に関する知識不足により「これは仕
方がないもの」と諦めていた。
2002年:CT技術について研究するに従い、アーチ
ファクトの問題はCT装置の内部で処理されている画
像再構成アルゴリズムを工夫することによって解決
可能であると考えるようになる。
2003年:実機を用いた検証のため複数の医療用CT
装置メーカに声をかけるが、実績不足のため内部処
理の詳細を公開してもらえなかったことが最初の壁
となる。そこで、計算機シミュレーションによる検
討を開始。
2004年:平成16年度産業技術研究助成事業に提
案。このときはアーチファクト低減と骨体の個体別
モデリング技術の性能向上を目的として、ライフサ
イエンス分野に「軟組織用X線CT装置の開発と個体
別筋骨格モデルの構築」と題して提案。しかし、準
備不足に加え、医療分野で業績がある企業との連携
が必要であるとの指摘を受けて不採択となった。
2005年:CT技術について検討を継続していたとこ
ろ、工業用X線CT装置メーカとの連携が強まり、非
破壊検査分野でもCTの利用が望まれていながら、
工業製品ではアーチファクトの影響が大きいことに
着目。ここが当研究の進展につながった。平成17年
度第1回産業技術研究助成の製造技術分野にデバイ
スの非破壊検査技術・リバースエンジニアリング技
術として改めて提案し、見事採択。7月から本恪的
に助成研究を開始。
2006年:X線CT装置を購入。実験および数値解析
を繰り返し、メタルアーチファクトの物理的要因を
明らかにするとともに、検査対象物や検査目的に応
じたメタルアーチファクト低減手法を開発。
2007年:イノベーションシャバン2007にて研究
■サクセス・キー
ライフサイエンス分野での応募に不採択になった
ことを機会に、それまで行ってきた医療系との研究
とは全く異分野であるデバイスの非破壊検査分野と
いう新たな具体的ニーズを見い出すことができたの
が大きかったと感じています。また、X綿CT装置メ
ーカとの綿密な連絡体制の構築も重要でした。近年
のデバイスはその材料や構造が多岐に渡っており、
CT撮影に発生する問題も様々であるため、当該メー
カが有する問題認識やノウハウを共有することが本
研究を効率的に進める上で非常に役立ちました。
■ネクスト・ストーリー
今後は、散乱X線やX線検出器に由来するノイズ
を考慮することによってさらなるCT画像の高精度
化にチャレンジしていきます。また現状でのメタル
アーチファクト低減技術の性能は十分に実用レベル
にありますが、高速化などの改良によって電子機械
分野での製造工程の高度化・高効率化が可能なこと
から、この技術の活用について関心の深い企業との
ディスカッションを希望しています。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A29002d 「高精度マイクロX線CT装置による
MEMSテバイスのリバースエンジニアリング」(平成17
年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
小関 道彦
東京工業大学 大学院理工学研究科
機械制御システム専攻 助教
29
製造技術分野
低環境負荷なナノ粒子めっき法による導電性マイクロビーズの作製
携帯電話など液晶ディスプレイ(LCD)等に使用されている
マイクロビーズについて従来の無電解めっき法に比べ作業が
容易で、精度も高く製作することができる省資源、低環境負荷
な「ナノ粒子めっき法」を開発
1μm
1μm
携帯電話など液晶ディスプレイ
(LCD)を使った製品には立体的に重なる回路を電気的に
接続する異方導電性膜(注1)が使われています。開発した「ナノ粒子めっき法」は、これ
を作る重要な要素技術のひとつである導電性マイクロビーズ(注2)の金めっきを、導電性、
工程の簡素さ、省資源、低環境負荷などの面で大きく向上させています。
従来の無電解めっき法(注3)により作られたものと比較し、導電性(1Ω以下)、めっ
き表面の均一性、分散性、さらには歩留まり(80∼90%)の点で、優れた品質の金
めっき導電性ビーズを大量に作ることができます。省資源の面でも、従来法より約
40%も金を節約できます。
● 従来の無電解めっき法では、作業者に高度な技能や経験が必要でしたが、今回確立
したナノ粒子めっき法は、それらを必要としないやさしい技術です。
●
▲ナノ粒子めっき法で一度めっきしたマイクロビーズの表面とその拡大(左上)と、
再還元(2度目のめっき)をしたマイクロビーズの表面とその拡大(右)
。左下は、
めっきする前のマイクロビーズ。
(いずれも電子顕微鏡写真)
(注1)異方導電性膜(ACF):導電性を持つ微細なマイクロビーズをエポキシ樹脂などの絶
縁性粘着剤と混ぜ合わせたものを膜状に成型したフィルム。プリント基板の電極と
部品の電極の間にACFを挟んで圧力を加えると、分散しているマイクロビーズのう
ち電極間にあるものは上下の電極と接触して導電する経路を形成する。電極のない
部分はビーズが電極と接触しないので、横に並ぶ電極間の絶縁は保たれる。
(注2)マイクロビーズ:微少なプラスチック製ビーズ。本研究で使用したものは直径 6マ
イクロメートル。
(注3)電気めっきとは異なり、通電による電子ではなく、めっき液に含まれる還元剤の酸
化によって放出される電子により、液に含浸することで被めっき物に金属ニッケル
皮膜を析出させるめっき法。
競合技術への強み
(1)
無電解めっき
〈従来技術〉
(2)
コーティング
〈従来技術〉
(3)
ナノ粒子めっき
法〈本研究〉
簡易な
工程
環境
負荷
(金の使用量)
△
△
△
○
◎
△
(6工程)
(4工程)
◎
(3工程)
省資源
◎
◎
電気抵抗
の制御
コスト
◎
△
○
△
(∼2 Ωcm)
(5 Ωcm∼)
◎
粒子間の空隙を金で埋めることを着想、金イオンを含む
溶液中で再めっきする手法を開発し、一気に最終目標値
(1Ω以下)を達成した。ビーズ以外の材料についてナ
ノ粒子めっき法に関する2件の共同研究を開始。
2007年:導電性ビーズの大量合成化、異方導電性膜作
製に本格的に着手。
2008年:均一な複合膜の作製に成功。導電性ビーズの
大量合成へ道が拓ける。またこれまでの研究成果を踏ま
えて、JST独創的シーズ展開事業(大学発ベンチャー創
出推進)に応募した結果、採択。今後さらに実用化研究
を進めていく予定。
◎
金の使用量は
(1)、(2)の
(1)、(2)の約 (∼2 Ωcm) 約1/2
60%
▲「金めっき導電性マイクロビーズの作製技術」に関する従来技術
と本技術との比較表
1 簡単な作業:金ナノ粒子とバインダーの混合液にプ
○
ラスチックを浸して攪拌するだけで、高品質のめっき
ができます。
2 少ない工程:従来のめっき法では、6工程の作業が
○
必要でしたが、ナノ粒子めっき法ではエッチング、感
受化処理、触媒化処理などの工程が不要のため、3工
程で済みます。
3 省資源:マイクロビーズの導電性獲得のための金め
○
っきにおいては、従来の製法に比べて、金を約40%
も節約することができます。
4 低い環境負荷:めっきの工程に有害物質を使いません。
○
5 低い製造コスト:上記により、導電性マイクロビー
○
ズおよびこれを使用した異方導電性膜を約2分の1の
低コストで製造することができます。
ここがポイント
携帯電話に代表される個人用携帯情報端末など液晶
ディスプレイ(LCD)を使った製品の薄型化、小型化
の需要はますます高まっています。それに伴いLCDお
よび画像信号を送る集積回路には、高密度、多接点、
積層の実装が必要であり、三次元の回路を電気的に接
続する異方導電性膜が欠かせません。この異方導電性
膜には、導電性を得るために金めっきを施したマイク
ロビーズが使われています。
従来の無電解めっきにおいて良質なめっき皮膜を得
るには、めっき浴の管理が難しく、作業者に高度な技
能や経験が求められてきました。加えて、マイクロビ
ーズなど微小材料へのめっきは表面積の増大にともな
う製造工程の複雑化や大量のめっき浴を必要とするな
ど、コストや効率面でも問題が少なくありません。さ
らに、得られた皮膜の導電性、密着性、均一性などの
品質の維持、管理とその評価もサイズの縮小にともな
い困難になります。金ナノ粒子とバインダーの混合溶
液にプラスチックを浸け攪拌するだけで精度の高いめ
っきができるこの技術は、これらの問題をクリアした
30
■サクセス・キー
▲ナノ粒子めっき法による、マイクロビーズのめっきと再めっきを模式的に示した図
だけでなく、熟練の技術、特別な操作や特殊な装置が
不要であり、省資源や環境負荷の低減をも実現してい
ます。
ブレイクスルーへの道のり
2001∼2003年:山口大学に着任後、古い論文をもと
に学生と共に金イオンと還元剤を含む溶液を攪拌し金ナ
ノ粒子の作製を試みたが実験はうまくいかず、代わりに
ビーカー中のテフロン製攪拌子が金ぴかになった。その
失敗を繰り返すうち「これは新しいめっき法として有用
ではないか?」と考え、プラスチック片を反応溶液中に
投入するとやはり金ぴかになった。このことが発端でナ
ノ粒子を使ったナノめっき法の開発を試みることになっ
た。様々なプラスチックにナノめっきを施し表面観察&
電気抵抗測定する日々が続いたが、バインダーにチオー
ル分子を用いることで金ナノ粒子をプラスチック基板に
固定できることが分かり、この方法をナノ粒子めっき法
として確立した。ナノ粒子めっきに関する初めての論文
掲載&特許出願。
2003年:秋、大阪府立大学へ異動。引き続き、金を用
いたナノ粒子めっき法に関する研究を深める。
2004年:ある企業の経営者から、従来のめっき法では
高い熟練が必要とされるマイクロビーズの金めっきにつ
いて相談を受け、ナノ粒子めっき法がその要望に応えら
れると考えて共同研究が始まる。
2005年:平成17年度第1回産業技術研究助成へ応募、
採択された。自作マイクロ電気伝導計完成。
2006年:自作マイクロ電気伝導計により高精度計測が
可能になったが、1回の金めっきを施したマイクロビー
ズで計測したところ、改善すべき抵抗値(20Ω)より
も100万倍も大きな値が得られ愕然。落ち込むが、ナノ
実験担当学生(当時4年生)と金ナノ粒子の作製を試
みて数ヶ月間失敗を繰り返しましたが、この結果を再評
価することで研究がスタートし、基板に固定化したナノ
粒子を再還元することで太らせ粒子間の空隙を金で埋め
ることにより、結果的に成功を得ることができました。
ご協力いただいた企業との連携、長岡教授(研究分担者)
との連携(ナノ粒子めっき膜のセンサへの応用で得られ
た知見を樹脂ビーズのナノ粒子めっきへ利用)がなけれ
ば、この研究は成し遂げられませんでした。
■ネクスト・ストーリー
今回、開発したのはナノ粒子めっき法による導電性マ
イクロビーズの作製法という要素技術です。この研究で
得ようとしたのは導電性でしたが、この要素技術をさら
に拡げて、たとえば金ナノ粒子を光を通すように並べる
などの研究に発展させることができると考えています。
また、バイオ系の研究者から、金ナノ粒子を標識として
使えないかという相談も寄せられており、こちらの研究
も進めています。導電性マイクロビーズの作製法につい
ては、分散剤の添加量の最適化と循環式製造技術の開発
により、大量合成を目指します。また、品質、製造の両
面から、実用化を前提とした検討を行っていきます。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A33001a「ワンステップナノめっき法によるプラスチ
ックビーズの導電化技術の開発」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
椎木 弘
大阪府立大学 産学官連携機構 准教授
見出された有機溶媒耐性酵素
(PST-01 プロテアーゼ)の構造
▲
製造技術分野
有機溶媒下でも安定して高活性を示す酵素を開発
難水溶性のファインケミカル製品製造プロセスの触媒として応用可能
今回新たに開発された有機溶媒耐性酵素は、有機溶媒耐性微生物が作り出す有機溶媒耐性酵素
(プロテアーゼ(注1))
を改良することで、有機溶媒存在下でのペプチド合成反応を迅速に触媒する高活性酵素(有機溶媒耐性PST-01
プロテアーゼ等)を開発したものです。
●
従来酵素(サーモライシン)と比較して、有機溶媒存在下で16倍以上の安定性と3.4倍以上のアスパルテーム(注2)
前駆体合成活性を有します。有機溶媒耐性と高い合成活性の両方の特徴を有した酵素の開発は世界初です。
ファインケミカル製品の多くは水に不溶性であり、製造の過程では有機溶媒が用いられることが多くあります。
一方でファインケミカル製品を合成する酵素は、特定の化合物を特定の生成物に変換する特異性が高いが、有機
溶媒存在下では活性を失いやすい等の課題がありました。
● 本研究で開発した酵素は、有機溶媒中の50%ジメチルスルフォキシド存在下においてアスパルテーム前駆体を収率83%で合成可能であることが明
らかとなる等、有機溶媒存在下でも安定性して高活性を示し、ファインケミカル製品の合成酵素としての有用性を確認しています。
● 従来の合成反応酵素において必要だったカルシウム等の安定化剤の添加やその洗浄プロセスを不要とすることで高効率な連続生産プロセスの構築も
可能です。また有機溶媒の使用量を低減し、環境負荷低減を可能とする省資源・省エネルギーのケミカルプロセスの構築が期待されます。
●
競合技術への強み
比較項目
耐熱性サーモ
ライシン
(従来酵素)
有機溶媒存在下での活性の半減期
(高い活性が維持できる時間) 反応溶液への
エタノール メタノール D M S O カルシウムの
添加
存在下 存在下 存在下
△
3日
有機溶媒耐性
PST-01プロ ◎
100日
テアーゼ
(新規開発酵 以上
素)
△
5日
○
△
3日
アスパルテーム
合成活性
△
△
◎
◎
必要:カルシウムス 50.7 [μmol・(min・
ケール(垢)の原因 g-enzyme) ー1]
○
174.9 [μmol・(min・g50日 不要:連続生 enzyme) ー1 (
] PST以上 産プロセスの 01-Y114Sプロテア
構築も可能
ーゼを用いた場合)
▲耐熱性サーモライシンと有機溶媒耐性PST-01プロテアーゼの比較表
50日
以上
有機溶媒耐性酵素には、次の特徴があり、有機溶
媒耐性酵素(PST-01プロテアーゼ)は、耐熱性酵
素(サーモライシン)と比べ、有機溶媒存在下での
安定性に優れています。そのため、有機溶媒存在下
で長期間使用することが可能になります。(表参照)
●有機溶媒耐性酵素は、水に難溶性のファインケミ
カル製品等の合成に用いられる有機溶媒存在下でも
安定して触媒機能を発揮します。
●酵素は常温・常圧で機能し、基質特異性が高いた
め、工程数低減、副生成物低減、収率増加、使用原
料低減、使用溶媒量低減、使用エネルギー低減、ユ
ーティリティー低減、環境負荷低減し、省資源・省
エネルギーの環境調和型プロセスが構築できます。
●プロセスの簡略化により大幅なコストダウンが期
待できるため、極めて経済的なプロセスの構築が可
能になります。
より高いアスパルテーム前駆体合成活性を有する酵
素(PST‐01‐Y114S)の作成に成功しています。
(図参照)
また、サーモライシンを用いる場合に、安定化剤
としてカルシウムイオンの添加が必要であり、製造
過程ではカルシウムの垢の形成によるトラブルが懸
念されますが、開発した酵素はカルシウムイオンの
添加が不要であり、高効率な連続生産プロセスの構
築も可能です。プロテアーゼ以外に有機溶媒耐性リ
パーゼ(注3)等の開発も進んでおり、これらの有機溶
媒耐性酵素を用いれば、副生成物を生じずに種々の
ペプチドやエステルを合成でき、合成甘味料の他に、
ポリアミノ酸、
バイオディーゼル、
高付加価値食品油、
エステル系香料、医薬中間体等の合成が可能です。
ファインケミカルの製造には多段階の反応過程を
必要とするため、最終的な収率が低く、多量の廃棄
物や環境負荷の原因となる副生成物を生じていま
す。酵素は常温・常圧で反応を促進し、特定の化合
物を特定の生成物に変換する特異性が高いため、こ
のようなファインケミカルの製造の触媒として用い
ると、省資源・省エネルギーかつ、副生成物を生成
しない環境負荷を低減したケミカルプロセスの構築
が可能ですが、難水溶性のファインケミカル製品製
造プロセスの溶媒として用いられる有機溶媒存在下
では、酵素の安定性が悪く、活性が失いやすいとい
う課題がありました。
今回新規に開発した酵素は、有機溶媒耐性微生物
が作り出す有機溶媒耐性プロテアーゼのアミノ酸の
一部を遺伝子組み換えにより改良したもので、有機
溶媒存在下で高いペプチド合成活性を有していま
す。プロテアーゼは本来、ペプチド結合を加水分解
する酵素ですが、有機溶媒存在下ではペプチド結合
の合成反応を促進します。例えば、有機溶媒耐性酵
素(PST‐01プロテアーゼ)は合成甘味料(アスパ
ルテーム)の前駆体を合成することが可能です。タ
ンパク質工学的にサーモライシン(thermolysin)
■サクセス・キー
通常の酵素は有機溶媒存在下では不安定であるた
め、酵素に物理的・化学的修飾を施し、酵素の安定
化が行われていました。既存の常識にとらわれず、
物理的・化学的修飾しなくても有機溶媒存在下で安
定な酵素はないものか?という考えから、有機溶媒
耐性酵素の探索を開始し、結果的に世界最初の有機
溶媒耐性酵素の発見につながりました。
■ネクスト・ストーリー
▲種々のPST-01プロテアーゼとサーモライシンを用いたアスパル
テーム前駆体の合成
ファインケミカルの製造の触媒として用いること
のできる有機溶媒耐性酵素の開発を今後も推進する
と共に、有機溶媒耐性酵素の上市、有機溶媒耐性酵
素の利用拡大、酵素への有機溶媒耐性付与技術の確
立を目指します。共同研究や研究成果の社会への還
元を推進していただけるパートナーを募集していま
す。
(注1) タンパク質中のペプチド結合を加水分解する酵素のこ
と。一般に、タンパク質中のアミノ酸間のペプチド結
ブレイクスルーへの道のり
ここがポイント
在下での酵素・微生物反応の工学的解析。本助成期
間中に、特許出願4件、査読つき英語論文11報、著
書(海外からの執筆依頼・章を担当)1冊、総説1件、
国際会議等発表20件、国内学会等発表43件。研究
成果は、日経産業新聞(2007年12月4日)や日刊
工業新聞(2008年1月18日)で取り上げられる。
酵素工学研究会酵素工学奨励賞受賞
(2007年10月)
、
国際会議でのPoster Award受賞(2007年10月)
。
合(アミド結合)部分を加水分解する。タンパク質中
の特定のペプチド結合部位だけを、特異的に切断する
20世紀後半:日本人研究者による酵素工学的手法に
よる有機溶媒存在下での酵素反応に関する多くの研
究成果、有機溶媒耐性微生物の発見。
1991年:有機溶媒耐性酵素のスクリーニングの開
始。
1994年:世界最初の有機溶媒耐性酵素を産生する
有機溶媒耐性微生物の発見。
1995年:有機溶媒耐性酵素や有機溶媒耐性微生物
の基礎的知見の収集。
1999年:有機溶媒存在下で有機溶媒耐性酵素を用
いると高効率に合成反応が進行することを確認。
2001年:有機溶媒耐性酵素の遺伝子を取得、米国
カリフォルニア大学バークレイ校での研究開始。
2005∼2008年:NEDO産業技術研究助成事業「非
水系バイオプロセスで用いられる有機溶媒耐性生体
触媒の開発」を実施。以下①∼⑥の研究開発に取り
組み、ほぼ全てのテーマについて所望の成果を得た。
①酵素の有機溶媒耐性に関する新しい知見の蓄積。
②タンパク質工学的手法による有機溶媒耐性酵素の
作製。③異種宿主を用いた有機溶媒耐性酵素の高発
現系・高活性化。④遺伝子工学的手法による有機溶
媒耐性微生物の作製。⑤有機溶媒存在下での発酵の
実施、新規有機溶媒耐性酵素の発見。⑥有機溶媒存
という切断する機能(高度な選択性)を有する酵素を
「基質特異性が高い」と言う。
(注2) 人工甘味料の一つ。フェニルアラニンのメチルエステル
と、アスパラギン酸とがペプチド結合した構造を持ち、
甘味は砂糖の約200倍。アスパルテーム(アスパラギ
ン酸フェニルアラニンメチルエステル)の前駆体は、
年間世界中で1万5000トンの生産されている。
(注3)脂質のエステル結合を加水分解する酵素のこと。一般
にトリグリセリドのエステル結合部分を分解して脂肪
酸を遊離する。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A33005d「非水系バイオプロセスで用いられる有
機溶媒耐性生体触媒の開発」(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
荻野 博康
大阪府立大学大学院工学研究科 准教授
31
製造技術分野
経済性かつ機能性に優れるバイオサーファクタントをリガンドとした新しい抗体分離技術
抗ガン剤、バイオメディカル材料などの開発に欠かせない抗体
酵母を利用して大豆油から作ったバイオサーファクタント(注1)
を基に分離・精製する画期的なリガンド(注2)物質を開発
医薬品開発、医療、バイオ研究などの分野で需要が高まる抗体(注3)の分離技術。
これまで主流だったタンパク質系リガンドの短所(高価、限定的な機能、扱いの難しさ)
を克服し、取って代わる可能性を持つ、生体由来の糖脂質を用いた新しい抗体分離技術。
これまで広く使われてきたタンパク質系リガンド、プロテインAは100万円
/kg。本研究で開発したBSリガンドは、数千円∼数万円/kg(1/100程度の
低コスト化)とコスト面で非常に優れています。
● 本研究で開発したBSリガンドは、酵母を利用して大豆油から作ります。こ
のリガンドを用いた抗体分離装置により、免疫抗体の一種であるIgGの効率
的な分離に成功しています。
●
拡張性
コスト
IgGの結合量 (IgA・IgMを分離) 溶出条件
(1kgあたり)
×
100万円
◎
(2)より結合
量は大きい
(2)
MEL-A (本
◎
研究で開発
数千円∼数万円
したBSリガ
ンド)
○
(1)の約1/7
×
分離できない
○
分離できる
強酸性
中性
温和
▲タンパク質系リガンドと本研究で開発したBSリガンドとの比較表
①圧倒的な低コスト:プロテインAの価格(100万
円/kg)と比べ、圧倒的に安価(数千円∼数万円/kg)
なので、抗体の製造コスト引き下げに貢献できる可
能性があります。
②多くの抗体に対応:BSリガンドは、プロテインA
などのタンパク質系リガンドとは結合部位が違いま
す。図3は抗体の基本構造ですが、タンパク質系リ
ガンドのプロテインAは、図のFcで抗体と結合しま
す。それに対してBSリガンドは、F(ab’
)2サイトで
抗体と結合します。他クラスの抗体(IgM・IgA)は、
構造上Fcを結合に使えないので、プロテインAでは
分離することができませんが、BSリガンドは抗体の
F(ab’
)2サイトと結合するのでIgM・IgAも分離する
ことができます。
(図3.参照)
③扱いやすさ:BSリガンドはタンパク質系リガンド
のように抗原性の懸念(精製した製品中に残留し、
ヒトの体内で抗原抗体反応を起す)がないばかりで
なく、有機溶媒を用いても活性を失うこともないの
で、扱いが大変容易です。
ここがポイント
体内の免疫システムにおいて重要な役割を担って
いる抗体は、抗ガン剤などの医薬品や血漿交換等に
用いるバイオメディカル材料、機能性食品など幅広
い分野で、需要が拡大し2010年には6兆円の市場規
模と予測されています。抗体の分離にはこれまでプ
ロテインAというタンパク質系のリガンドが広く用
いられていましたが、プロテインAは非常に高価で
ある上、IgAやIgM、IgY(注5)といった抗体の分離に
は使えないという短所があります。私たちは、酵母
を利用して大豆油から作ったバイオサーファクタン
トであるマンノシル・エスリトールリピッド(MEL)
という糖脂質が、抗体に親和性を示すことを発見し、
これを新しいコンセプトのリガンドとして利用する
研究を行いました。その結果、MEL-Aという糖脂質
は、プロテインAに比べて約4倍もIgGとの親和性が
高いこと、さらに、プロテインAがほとんど親和性
を示さないIgA、IgMの他ニワトリの抗体であるIgY
とも結合することを明らかにしました。こうした成
果をもとに、MEL-Aを固定したカラム(注6)を開発
し、IgGをプロテインAの約1/7の効率で分離するこ
とに成功しました。コストがプロテインAの約100
32
Fab(抗原結合部位)
プロテインA(1,000,000円/kg)
×1/100程度
MEL-A(数千万円/kg)
分の1程度ということを考えると、現時点でも十分
対抗しうる技術と考えられます。
競合技術への強み
(1)
プロテインA
(タンパク質
系リガンド)
(図1)本研究で用いたバイオサーファクタント、マンノシル・エスリトール
リピッド(MEL)の生産プロセス。MELにはA、B、Cの種類がある。
ブレイクスルーへの道のり
2002年:産業技術総合研究所において、微生物由
来のバイオサーファクタント(BS)に関する研究
を実施していたところ、予備的な検討によって、あ
る種のBSが抗体に対してアフィニティー(親和性)
を示すことを発見。
2005年: 関連企業への技術動向の調査。抗体への
社会的ニーズが高まる中でプロテインAが非常に高価
であることなども考慮し、BSをリガンドとした抗体
分離技術の開発には大きな意義があると確認した。
研究チームを編成。平成17年第1回産業技術研究助
成公募に応募。 採択となり、6月から本格的に研究
がスタート。BSのリガンドとしての性能の解明に精
力的に取り組む。バイオによるモノづくりに始まり
化学による性能評価まで、分野横断的な成果を積み
重ねていく研究なので、どこか1つのステップに問題
が生じると、そこまで戻って原因を突き止める必要
があった。こうした問題の解決には苦労が多かった。
2006年:BSリガンドの結合部位・作用機構の解明
に成功。BSリガンドは、プロテインAでは対応できな
い、他クラスの抗体(IgM・IgA)や各動物種由来の抗
体と結合可能であることが判明。これらの研究成果を
発信したところ、複数の企業からの引き合いがあった。
2007年:カラム担体へのリガンドの物理的・化学
的な固定化に成功し、プロトタイプカラムを作製。
抗体の製造プロセスのみに限定せず、抗体の分離が
必要とされる様々な用途展開を目指して研究成果を
積極的にアピール。本研究成果は、著名な国際誌
(Biotechnology Letters, Colloids and Surfaces
B: Biointerfaces, Journal of Oleo Science等)に
掲載され学術的にも高い評価を得た。その結果、企
業からの引き合いもさらに増えた。
■サクセス・キー
普段使っている言葉さえ違う全くの異分野(界面
化学・応用微生物・有機合成)の若手研究者が、共
通の明確な目的意識のもと、綿密な議論を重ねるこ
とによって、これまでなかった新しい抗体の分離技
術を開発することができました。このチームワーク
が一番の成功の鍵です。また、関連企業の担当者と
話をすることによって、技術動向を収集するととも
に、研究の方向性を明確にすることができました。
このことは、研究者のモチベーションを高め、ゴー
ルを近づけたと思います。
■ネクスト・ストーリー
BSリガンドはコスト面では優れていますが、分離
の効率がプロテインAと同等のレベルに達していな
いので、2年以内にプロテインAと同等の性能達成を
(図2)カラムを用いた抗体分離
性能の比較
(図3)抗体(免疫グロブリン)の
基本構造
目標に引き続き研究を進めていきます。ただ、私た
ちの開発したBSリガンドがどんなに優れていても、
医薬品製造においては認可等の問題があり、既存の
リガンドに置き換わるには時間がかかります。この
ような問題のない、抗体分離が必要な医薬品製造以
外の用途、バイオメディカル、機能性食品、化粧品
などの分野には近いうちにBSリガンドが使えるので
はと考えています。一番期待しているのは、血漿交
換への応用です。リウマチや膠原病などの自己免疫
疾患に対して、自己抗体を除去する血漿交換療法が
有効であることが知られています。コストや扱い安
さの利点から、私たちの開発したBSリガンドによる
抗体分離技術は、血漿交換用のバイオメディカル材
料として大きな可能性があると考えており、その実
用化に向けた研究にも力を入れていきます。
(注1)バイオサーファクタント(BS)
:微生物が作り出す脂質、界面
活性剤の機能を持つ。
(注2)リガンド:蛋白質などの特定の受容体(レセプター)に特異
的に結合する物質。
(注3)抗体:ヒトの免疫グロブリン(Ig、immunoglobulin)のこと。
リンパ球の一種が産生する糖タンパク分子で、特定のタンパ
ク質などの分子(抗原を認識して結合する働きを持つ。抗体
は主に血液中や体液中に存在し、例えば、体内に侵入してき
た細菌・ウイルスなどの微生物や微生物に感染した細胞を抗
原として認識して結合し、その抗原と抗体の複合体を、白血
球等の食細胞が認識・貪食して体内から除去するように働い
たり、リンパ球等の免疫細胞が結合して免疫反応(注4)を引
き起こしたりする。ヒトの体内では以下、5種類のクラスの
免疫グロブリンが形成される。IgG
(ヒト抗体の70-75%を占
め、血管内外に平均して分布する)
、IgM(ヒト抗体の約10%
を占め、通常血中のみに存在し、感染微生物に対して最初に
産生され、初期免疫を司る)
、 IgA(ヒト抗体の10-15%を占
め、血清、鼻汁、唾液、母乳、腸液中に多く存在する)
、IgD
(ヒト抗体の1%以下)
、IgE(ヒト抗体の0.001%以下と極微量
しか存在せず、
寄生虫に対する免疫反応に関与していると考
えられるが、寄生虫の稀な先進国においては、特に気管支喘
息やアレルギーに大きく関与しているとされる)の5種類。
(注4)免疫反応:一度侵入してきた異物に対して、特異的な抵抗性
(応答性)を持つからだの仕組みで、その異物が原因で引き
起こされる病気に対して抵抗できる機能。免疫反応を生じさ
せる異物のことを抗原といい、異物に反応して結合する物質
のことを抗体と呼ぶ。アレルギー反応も免疫反応の一種。
(注5)鳥類(ニワトリ) 由来の抗体の一種。鶏卵由来の抗体を分
離・精製する際も本BSリガンドが活用できる。
(注6)カラム:クロマトグラフィーに用いる物質を分離する装置。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A33008c「バイオサーファクタントをリガンドとし
た有用タンパク質の高効率分離システムの開発」
(平成
17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
井村 知弘
産業技術総合研究所
環境化学技術研究部門 研究員
融合的・横断的・統合的分野
バイオ・ナノフォトニクスのためのUPCナノ粒子の合成と機能化
細胞内の物質移動を可視化する蛍光バイオイメージングは、バイオテクノロジーや
バイオメディカル分野のためのキーテクノロジーといわれている
新開発の蛍光マーカーは、長時間かつ深度が深い観察を可能にするとともに
「からだにやさしいバイオイメージング」を実現する
励起光として近赤外光を用いるので、従来の紫外光励起による蛍光バイオイメージングで懸念さ
れていた退色、光毒性、光散乱といった問題を一気に解決。UPC発光ナノ粒子は生理環境下で
高い分散安定性を示し、ターゲットとするタンパク質に特異的に吸着します。
励起に用いる980nmのレーザーは半導体レーザーなのでハンドリングが容易で、スペースも
取りません。
● 発光は可視光なので、現在用いられているCCDやフィルターをそのまま使用可能です。
● 希土類のイオン種(
(Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Pr(プラセオジウム))を変えることで
赤、緑、青の発光プローブを用意可能。カラーラベリングも容易に行なえます。
●
競合技術への強み
比較項目 蛍光マーカー 励起光源 退色速度
従来
技術1
蛍光タンパク 紫外線
×
質(有機系蛍 (200約20秒
400nm)
光体)
従来
技術2
短波長可
半導体量子ド
視光
○
ット(無機系
(400約60分
蛍光体)
500nm)
本研究
近赤外光
◎
UPC発光ナノ (NIR)
半永久的
粒子
に発光
(980nm)
ここがポイント
安全性
△
紫外線による細
胞のダメージ
△
Cd, Hgなどの
元素毒性
◎
光毒性・プロー
ブ自体の毒性と
もになし
▲従来技術と本研究の比較
①現在、広く行われている蛍光バイオイメージング
では、マーカーに蛍光タンパク質に代表される有機
系蛍光体を用いています。しかし、その多くは紫外
線を励起光とするため、紫外線の高い量子エネルギ
ーにより有機蛍光体自体が分解し、数十秒以内で退
色してしまうこと、色素以外の生体組織も紫外線の
ダメージを受けること、さらにマーカー以外の物質
(特に生体を構成するたんぱく質をはじめとする有
機物質)が発する自家蛍光がバックグラウンドとし
て観察されてしまうなどの問題があります。
②これらを解決するため、近赤外光(NIR)を励起
光源とする蛍光マーカーの開発が1990年代後半よ
り盛んに行われましたが、発光効率と耐久性の問題
から有機分子系では実用的なものは得られていませ
ん。一方、励起光源に非紫外線である短波長可視光
を用いる半導体量子ドット(無機系蛍光体をナノ粒
子化したもの)の登場は退色の問題をある程度解決
し、数十分の観察が可能となりましたが、水環境中
におけるそれ以上の長い観察は難しく、さらに直接
遷移型半導体に特有の元素毒性が問題となります。
強い光散乱による観察深度の低下や、自家蛍光がバ
ックグラウンドを招くことも解決課題とされ、長波
長の近赤外光で励起する蛍光マーカーの開発が望ま
れていました。
③本研究開発ではアップコンバージョン(UPC)と
呼ばれる赤外―可視変換現象(注1)を用いて励起光
源を近赤外光に変えることにより、以上のような問
題点を解決し、現在よりもはるかに長時間、深い深
度での蛍光バイオイメージングを可能としました。
(注1) 蛍光は紫外線や可視光線が照射され、蛍光物質がそのエ
ネルギーを吸収することで電子が励起し、それが基底
状態に戻る際に余分なエネルギーを電磁波として放出
する現象。蛍光灯は、低圧水銀灯の内側面に水銀の発
する紫外線を吸収し、蛍光として可視光線を発する物
質を塗布したものである。このように通常、蛍光は入
射光線と同一あるいはより長波長の電磁波(エネルギ
ーが低い電磁波)が放出されるが、UPC発光は赤外光
を照射し、2段階以上、上のエネルギー状態に励起す
ることで入射光線よりも短波長の(エネルギーが高い)
可視光を発光させることができる技術である。
生命現象を高感度、多色、動画によって可視化す
る蛍光バイオイメージングは、細胞工学をはじめと
するバイオテクノロジー、医療分野における予防・
診断・治療のための重要技術と言われています。励
起光源に近赤外光を用いるメリットとしては、蛍光
マーカーと生体組織へのダメージ軽減のみならず、
紫外光や短波長可視光を励起光源とした場合に問題
となる光散乱が軽減できること等も挙げられます。
これにより、視野深度を拡大できるため、3次元的
なバイオイメージングに有利となります。
本研究開発ではまず、効率よくアップコンバージ
ョン発光を示し、かつ10∼200nmで均一に粒径が
制御されたUPC発光ナノ粒子の合成を行いました。
次に、得られた粒子上に二層の高分子で修飾を施す
ことにより、ターゲットのみに特異的に吸着する特
異吸着能を付与しました。実験の結果、UPC発光ナ
ノ粒子は980nm励起でアップコンバージョン発光
を示し(右上図参照)、分散安定型と特異吸着性を
有する優れたバイオイメージングプローブであるこ
とが証明されました。
ブレイクスルーへの道のり
2004年:東京理科大に着任。無機発光体等の材料
工学研究を専門とする曽我 公平氏と生体機能高分子
を専門とする長崎 幸夫氏が、発光プロープのユーザ
にあたる細胞工学が専門の辻 孝氏も交えて異分野交
流を始める。長崎「アップコンバージョン発光粒子
は、小さくすると光らなくなるんですよね」。曽我
「ちゃんと光りますよ。でも生体適合性が問題」。長
崎「それは簡単ですよ」。辻からの「とにかく長く
光るプローブをつくってほしい。それができればい
くらでも使い道はある」という熱い要望を受けて、
基礎的な研究をスタート。
2005年:曽我の希土類発光体、長崎の生体機能高
分子、渡辺友亮のナノ粒子合成の実績をもとに平成
17年度産業技術研究助成へ提案し、一発採択。本格
的に研究開発を開始。
2006年:日本バイオイメージング学会学術集会に
初乗り込み。曽我のポスター発表が「ベストイメー
ジオリンパス賞」を受賞。学会へのネットワークが
広がる。学術的共同研究の申し入れが増え始める。
2007年:日本バイオイメージング学会学術集会で
長崎研の大学院生のポスター発表が「ベストイメー
ジカールツァイス賞」を受賞。プロジェクトで2年
連続受賞となる。
2008年:6月助成研究を終了。現在、企業との連
携を検討中。
▲マクロファージのUPCイメージング(980nm励起、550nm発光)
まず大事なスタンスは“自分がわからないこと、で
きないことを排除しない”です。また、相手に興味
を持ち続けることも大切で、興味を失った途端にコ
ミュニケーションは途絶えてしまいます。我々はお
互いに共通のマインドを持っていたので、専門のあ
いだに壁を設けないスタンスを維持することができ
ました。
最初からユーザーの切実な要望があり、課題が明
確だったことも大きかったと思います。条件がゆる
ければ、それだけ問題解決は難しくなります。条件
を絞り込むこと、さらにいえば出口をはっきりさせ
ることで、研究開発のスピードは自ずと上がってく
るのではないでしょうか。
■ネクスト・ストーリー
現段階では、がん細胞可視化のための細胞表面
イメージングには成功していますが、細胞中の現
象を解明するためには粒子サイズを50nm以下に抑
える必要があります。よって、このサイズでの粒
子合成、凝集沈降の抑制と粒子表面修飾が今後の
検討課題となります。また、プローブを簡便に使
えるマーカーとしてキット化するなど、ユーザー
の便宜を図る開発も求められます。
既存の半導体レーザーやCCDが使えるというア
ドバンテージがあるため、個人的な目算としては
2010年ごろの実用化を目指しています。さらに
「近赤外光で励起して可視発光を観察する」UPC蛍
光バイオイメージングから、「近赤外光で励起して
近赤外光を観察する」NIR蛍光バイオイメージング
へと、研究開発を継続していく予定です。また、
将来的には光と薬剤を使った治療法である近赤外
励起フォトダイナミックセラピーへの応用もにら
んでいます。現在は、複数の大手光学機器メーカ
ーや、半導体量子ドット関連企業から連携の打診
を受けています。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A34013a「バイオ・ナノフォトニクスのための
UPCナノ粒子の合成と機能化」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
■サクセス・キー
曽我 公平
東京理科大学基礎工学部 准教授
融合的・横断的・統合的分野の研究開発において
33
融合的・横断的・総合的分野
ウイルス検出をもっと簡単、迅速に。グローバルサーベイランス適用を目指して
ヒトや鳥・獣のウイルスを電気的な信号変化をとらえて
即座に、高感度に検知するまったく新しい測定原理のバイオセンサ
迅速・高感度なインフルエンザウイルス検出システムの構築
新型インフルエンザの出現が確実視され、ヒトと動物に感染するウイルスのグローバルな監視が喫緊の課題となっている。
ナノテクとウイルス学、異分野の研究者が共同開発したカーボンナノチューブ(CNT)利用のバイオセンサは、
その課題へ高次元に応え、感染したウイルスのスピーディかつ高感度な検出を実現する。
全く新しい測定原理を利用したバイオセンサで、インフルエンザウイルス等の病原体を即座に
検知し、予防医療や養鶏の産業等ウイルス対策に大きく貢献します。
● 様々な特異的抗体を固定したチップを用意することで、ウイルスだけでなく広範な抗原を検出
することができる、小型・低コストのセンサです。
●
競合技術への強み
検査時間
コスト
感度
結果共有
の即時性
△
(1)ウイルス △
分離法
(数日)
◎
(2)イムノク
○
ロマト法
(15∼30分)
△
(1検査あたり
約1000円、
専用の施設・
装置が必要)
○
(1検査あたり
約1000円)
◎
(3)本センサ
◎
◎
(試作
(2)の10∼(1検査あたり2∼
(20分以内)
システム)
100倍程度 300円にしたい)
△
△
◎
▲既存システムと試作システムの比較表
①高感度・高速:従来の検出方法では感度に問題
があったため、ウイルス感染初期の摘発が困難で
した。本研究で開発したセンサにより、すばやく
高感度な摘発・診断が可能になります。
②小型化:携帯電話サイズまで小型化できます。
③低コスト:デバイスが安価で構造が複雑でない
ため、大量生産すれば安価に供給することができ
ます。
④結果は自動的に集積・共有可能:検出結果は電
気信号として取り出されるため、人の手を介さず
にデータが集積され、ネットワークと組合わせる
ことで広範囲での情報の共有が可能になります。
※従来から行われてきたウイルス分離法は、家畜が感染したとい
う報告を受けると、獣医がサンプルを採取し、ウイルスを分
離・増殖して型を同定していた。時間も手間もかかるこの方法
を簡便化するイムノクロマト法(特異的な抗体が固定されてい
る濾紙にウイルス液を滴下すると濾紙に染みこみ、反応が起こ
ると発色する)は、感度に問題がある。また、人の眼で確認し
て結果を入力するので結果の記録・集積に手間がかかる。
ここがポイント
本研究で開発したセンサチップは、CNT(カーボン
ナノチューブ)
を2つの電極間に渡したCNT-FET(注)
素子を用いています。特定のウイルスのタンパク質
に特異的に結合する抗体をチップ裏面のディテクタ
ー部に固定し、抗原(ウイルス)を含む液を滴下す
ると抗体が抗原と結合し、そのときCNTを流れる電
流に変化が起きます。その電気的な変化を拾うこと
で、ウイルスの型を高感度かつ、迅速に検出します。
インフルエンザのような人獣共通感染症の制圧に
は、ワクチンや抗ウイルス薬の開発、医療機関の整
備に加え、野生生物や家畜・ニワトリなどの家禽さ
らにはヒトも含めて、寄生する病原体の全世界規模
の監視体制(グローバルサーベイランス)が不可欠
です。本研究で開発したセンサシステムは、迅速・
34
▲バイオセンサのしくみ
▲バイオセンサ試作機
高感度にウイルスの検出を行うことができ、量
産の道が開ければセンサ本体を携帯電話サイズ
まで小型化し安価に提供できるので、高いレベ
ルのグローバルサーベイランスを実現すること
ができます。
(注)FET:電界効果トランジスタ(Field effect transistor)
ブレイクスルーへの道のり
∼2004年:末岡がカーボンナノチューブ(CNT)
を用いた特性試験中、電極間に渡したCNTが環境の
変化により電気特性に変化を示すことを見出し、尾
崎と共同でバイオセンサへの応用を探り始める。
2004年:日本での鳥インフルエンザ発生に伴い、
迅速・高感度なウイルス検査法のニーズが高まる。
CNTを用いたウイルス検出システムによりそれに応
えられると考え、開発に着手した。バイオ(獣医)
系とナノ(物理)系という異分野の共同研究のため、
最初は相互理解やコミュニケーションに苦労があっ
た。平成16年度第1回産業技術研究助成に提案し
たが、開発領域を獣医領域に限定したため不採択。
2005年:その後もセンサ基盤の開発は継続しつ
つ、前年度の不採択コメントを踏まえ、より広範に
適応できるシステムの構築を練り、平成17年度第1
回産業技術研究助成に応募し採択された。7月より
本格的な研究を開始。
2006年:実験を積み重ね、センサ基盤を一定の個
数、持続的に生産する技術に目処がつき、研究室内
でミニラインを構築。企業、共同研究先も精力的に
募ったところ多数のサンプル提供依頼が寄せられ、
BSE検出、残留農薬検出、環境ホルモン検出など、
あらゆる分野での応用が可能であることが明らかと
なる。本流のインフルエンザウイルス検出システム
もバイオ系・ナノ系双方から意見を出し合い、試作
キット作出へ向かう。大学内で手工業的にCNTを組
み込んだチップを製作するため、作れる量に限りが
あるうえ全く製作できない期間もあり、研究が思う
ように進まないという困難と戦い続ける。
2007年:試作したセンサキットを用いて繰り返し
検出試験を行い、システムの煮詰めを実施する。
■サクセス・キー
バイオ系とナノ系という専門の異なる集団からな
るチームだったので、分担を細かく設定し情報共有
を徹底しました。また、専門外の学会等にも参加し、
異なる分野のトピックスを身につけるようにしまし
た。これらにより、最初は難しかったコミュニケー
ションもスムーズになり、各セクションが有機的に
結びついた研究態勢を構築することができました。
■ネクスト・ストーリー
北海道大学内の設備ではチップをたくさん作るこ
とが難しいので、現時点では実験データが十分とは
いえません。共同研究先企業の協力を得てチップを
大量生産し、実験を重ねて実用化を達成するシステ
ム構築を進めていきます。これまでは病原性のない
安全な抗原を実験に使用してきましたが、今後は安
全性を確立した上で、実際の動物から採取した体液
をサンプルに用いて応用試験を展開する予定です。
このシステムにおけるCNTが示す現象の原理はよく
分かっていません。その物理的、電気的な原理を解
明するための研究も進めていきます。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A34014a「迅速・高感度なインフルエンザウイルス
検出システムの構築」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
尾崎 弘一
鳥取大学農学部獣医学科 助教
融合的・横断的・統合的分野
健康な人の歩行と歩行時の映像を体験しながら歩行リハビリテーション
リハビリ患者がより現実に近い移動感覚で歩行機能の改善訓練ができる装置と
訓練中の飽きを防ぎリハビリ効果の向上を実現する球面ディスプレイを
組み合わせた新しい歩行リハビリテーションシステムの開発
歩行機能の回復が見込めないとされていた人々に対し、球面没入型ディスプレイおよび歩行感覚呈示装置に
よって、健常者の歩行を反復して体験する介護予防・機能回復促通システムを開発。複数名の患者の協力を
得て長期のリハビリテーションプログラムを実施し、近赤外光によって脳の働きを観察する装置である光ト
ポグラフィによる脳活動計測などの医学的評価により、本装置の効果を実証した。
歩行機能回復の見込みは低いと考えられている“プラトー”と呼ばれる機能回復カーブが横ばいになった患
者でも機能改善がみられました。
● 高齢者の介護予防訓練装置として、観光地などを自分の足で歩く疑似体験ができます。
● 副次的な用途として、ロールプレイングゲームなど、大人から子どもまで楽しめるエンターテインメントシ
ステムとしても利用できます。
●
競合技術への強み
身体的拘束性
トレッドミル
[市販品]
−
Lokomat
[市販品]
本研究の
技術
[研究試作品]
価 格
特 徴
訓 練
約200万円
×(単調)
いわゆる
ウォーキングマシン
高い
約5000万円
×(単調)
足や手、腰などをテープバ
ンドで機械に固定し、支え
ながら歩行訓練をする装置
低い
約800万円
◎(視覚との連動) 靴を履くような感覚で装
着できる ▲市販品と研究試作品の比較
▲
従来のリハビリテーションは、トレッドミルや
Lokomatなどのロボットによる方法が行われていま
すが、身体拘束が適切になされていないために腰の
回旋などの訓練に難がありました。加えて着脱は困
難、設備は高価、単調な訓練という欠点が指摘され
ていました。しかし本研究で開発したシステムでは、
歩行感覚呈示装置で患者に合わせた任意の足の軌跡
を示すことができます。しかも足のみを装置に固定
する形なので、適度な拘束と容易な着脱が実現され
ます。球面没入ディスプレイでユーザの周囲に映像
を呈示することで、観光地や自宅近所の映像と歩行
動作を同期させ、リハビリ訓練をしながら実際に現
地を歩いているような感覚を提供することにより、
ウォーキングマシンのように機械と向かい合って歩
行訓練をする場合と比べ、単調さをなくし、やる気
を持続させる効果が認められました。また、脳の活
性状態にも大きな違いが見られました。下図は本シ
ステムとトレッドミルを使ったときの脳の活動を光
トポグラフィで計測した結果ですが、トレッドミル
歩行は脳の活性が全体的に見られますが、本装置で
はトレッドミルでは見られなかった足の一次運動野
など(図の濃い部分)の活発化が顕著で、本システ
ムは足に関する脳の制御部位を効率的に刺激できる
ことが認められました。
ある片麻痺患者の歩行
訓練時の脳の賦活状況
左:本システム 右:トレッドミルは脳
全体が賦活している
本システムでは足の一次運動野の賦活が顕著である
ここがポイント
歩行感覚呈示装置は、通常歩行と同じ1m/secの歩
行速度を実現するために前後方向の軌跡呈示用に直線
運動を回転運動に変換するスライダクランク機構を採
用し、上下方向には直動アクチュエータを用いました。
また、ユーザが足を乗せるフットパッドには圧力セン
サおよび、かかと上げ機構を付け体重移動に応じてフ
ットパッドが健常者の足の動きを模擬して動き、かか
とを上げるタイミングや角度を再現しています。実際
に患者での評価実験を行った結果、体重80kgの人が
歩幅最大800mm、歩行速度1m/secの目標達成を確
認しました。また没入型ディスプレイにはなるべく大
きな視野角を確保しつつ、歩行感覚呈示装置と同時に
使用するため、直径1600mm、水平画角270度、仰
角30度、俯角45度としました。SXGA+(解像度
1400×1050ピクセル)のプロジェクタを3台使用し、
それぞれが映像を水平画角90度ずつの映像を映し出
します。映像コンテンツはCGだけでなく実写映像を
投影することができ、本研究では患者にとって身近な
自宅近隣の公園などを散策するさまざまなコンテンツ
を用意しました。これにより入院前の健康時の歩幅で
自宅付近を歩く疑似体験をすることで、患者自身が早
く治したいという気持ちになり、モチベーションが向
上するという精神面での効果も報告されています。ま
た、副次的な用途として、ロールプレイングゲームな
ど、大人から子どもまで楽しめるエンターテインメン
トシステムとして利用が期待されます。
ブレイクスルーへの道のり
2000年:ATR((株)
国際電気通信基礎技術研究所)
との共同研究で、バーチャルリアリティ研究の一環と
して「バーチャル二人三脚」システムを開発。その時、
歩行リハビリテーションに使えるのではないかと思
い、医学系の先生に相談する。紹介された連携企業で
もある筑波記念病院の先生にもこのアイデアに共感し
ていただき、装置開発を始める。
2001年:システム評価実験に協力してくれる患者さ
んを紹介してもらい、歩行感覚呈示装置で週1回3ヶ
月間の訓練を行う。通常のリハビリでは考えられない
ような歩行機能の改善が観察される。
2003年:実験のたびに患者さんが大学に来るのは大
変なので、分解再設置を容易にすることを意識した2
台目の歩行感覚呈示装置を開発する。
2004年:ようやく稼働状態になった2台目の装置を
病院に設置。外来リハビリテーションに来ている患者
さんの協力も得て、評価実験を行う。ここでも機能回
復が確認できた。
2005年:平成17年度産業技術助成事業に採択され、
人間の通常歩行速度1m/secの速度を達成する装置お
よび球面ディスプレイの開発に着手。人の歩行時の軌
跡データを計測して仕様を策定したが、なかなか簡単
には目標速度を達成できる機構の組み合わせが見つか
らなかった。しかし、数値シミュレーションを繰り返
したことで、ようやくそれらしい解が見つかり、設計
を開始する。
2006年:装置は完成したが、所望していた性能が出
なかった。よく確認をすると、足の軌跡データとして
旧来の歩行軌跡データを流用してしまっていた。人間
は歩行速度によって、足を動かす軌跡だけでなく、左
右の足の動くタイミングも変えているため、これらを
忠実に再現する必要があったのだ。これに対応するこ
とで所望の性能を確認できた。装置を使った評価実験
を開始。患者ごとに状況は異なるが、何らかの歩行改
善を観測。前後方向の軌跡呈示用にスライダクランク
▲没入型歩行感覚呈示装置全景
機構を採用することで、通常歩行と同じ1m/secの歩
行速度を実現。
2007年:連携先企業である筑波記念病院とつながり
のあったオリンパス(株)が、
連携企業として参加するこ
とになる。薬事法取得に向けて情報収集を始める。
■サクセス・キー
実際にリハビリテーションを行っている理学療法士
(連携先企業の筑波記念病院所属)と、本研究の初期段階
から協力体制をとることができ、システム開発→現場
での実証および評価→研究にフィードバックという相
互補完的な流れが構築できたことが、成功の鍵としても
っとも大きなことだと思います。また、システムに興味
を示し積極的に評価実験に参加してくれた患者各位の
協力も重要で、歩行速度は1m/sec、球面没入型ディス
プレイは視野角水平270度・垂直60度が最適であるな
ど、
研究への数多くのヒントをもらうことができました。
■ネクスト・ストーリー
脳内出血による右麻痺の患者に本システムを利用し
て訓練を行ってもらったところ、歩行の平均速度は
0.51m/sec→0.84m/secに、歩幅の平均についても
32.1cm→46.2cm と、歩行速度・歩幅ともに大きく
改善されました。本システムが実用化されれば、より
高度な機能回復が期待でき、これまで脳卒中でやむな
く本格的な社会復帰ができなかった人の多くが、社会
復帰を果たすことができると考えます。また、家族の
負担が減るだけでなく、これまで失われてきた患者自
身の貴重なスキルを再び社会に還元することによる効
果も期待できます。今後、システム実用化への残され
た課題としては、さらなる長期のリハビリテーション
プログラムの開発や、装置の安全対策、薬事法取得に
よる医療制度としてのサポート体制づくりがありま
す。さらに患者のモチベーションの向上・維持の具体
策として、たとえば平坦な道だけでなく、坂道や階段
などの感覚にも対応するシステム開発などを考案して
いきたいと考えています。また今後、このような歩行
リハビリテーションシステムの実用化に向け、企業・
研究機関と意見交換を行う予定です。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A35002d「没入歩行感覚呈示装置を用いたリハビ
リテーションシステム」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
矢野 博明
筑波大学大学院システム情報工学研究科
知能機能システム専攻 准教授
35
融合的・横断的・統合的分野
大気圧マルチガス高純度プラズマを開発 半導体プロセシング、大気圧CVDの高速化や新物質の創造に貢献
iPS細胞など、単一細胞分析への扉を開く
極微少量試料の分析装置への応用にも成功
大気圧下でアルゴン、ヘリウム、窒素、酸素、二酸化炭素、亜酸化窒素、空気やそれらの
混合ガスを安定的に熱プラズマ化できる、マルチガス高純度プラズマ源の開発。
(図1)
プラズマ源は電極を使用しないため、高純度のプラズマが生成でき、プラズマ中に液
体を直接導入することも可能なため、半導体プロセシング、大気圧CVD、新物質創造、
液体・気体の直接分解処理などに応用が可能であり、各工程の高速化や材料の低減、
(図1)大気圧マルチガスプラズマ源(アルゴン、空気、酸素、ヘリウム、窒素、二
酸化炭素の大気圧プラズマ)
低コスト化などへ期待。
マルチガスプラズマ源を用いた微少量試料分析装置の開発を行いました。毎分1mL程度の大量の
分析試料を必要とした従来の微量元素分析装置とは異なり、わずか1nL程度の分析試料中の元素
を高感度に分析することが可能です。
● iPS細胞など、一個の細胞や大気粉塵などの個別分析への応用、さらには医療分野で高感度分析
の要望が高かったフッ素、塩素、臭素などのハロゲン元素の高感度分析が可能になります。
●
競合技術への強み
分析試料消費量 細胞の分析
ハロゲン元素の
高感度分析
従来装置
毎 分 1 m L 程 の 多数の細胞 ア ル ゴ ン プ ラ
(誘導結合プラズマ
試料を霧状にし の平均情報 ズ マ を 使 用 す
質量分析装置
るため原理的
て連続的に導入 を得る
ICP-MS)
に困難
本装置
1nL程度のドロ 一個の細胞
(パルス同期マルチガ プレットを1粒 を個別に分
析可能
スプラズマ分析装置) だけ導入
全元素中最大イオ
ン化エネルギーの
ヘリウムプラズマ
を用いて実現
▲プラズマ元素分析装置に関する従来技術と本技術との比較表
大気圧プラズマ源
①今回開発したマルチガスプラズマ源では、アルゴ
ン、ヘリウム、窒素のほか、従来は困難であった酸
素、二酸化炭素、亜酸化窒素、空気やこれらの混合
ガスも、一つの装置で安定に大気圧プラズマ化する
ことができます。
②プラズマ生成中にガスの混合比を変更することも
可能です。
③プラズマ源は電極を使用しない誘導結合方式であ
るため、プラズマ中に電極材料が混入せず、高純度
なプラズマを生成できます。
④プラズマ中に液体を直接導入することが可能です。
⑤このプラズマ源を採用した開発装置は、大気圧下
で任意の気体を用いてプラズマを生成し、その中に
任意の材料を混合させることが可能です。
これらにより、それぞれのプラズマ処理にとって理
想的な原子・分子組成の大気圧プラズマを生成する
ことが可能になります。
元素分析装置
①微少量の液体を一粒ずつ噴出する「ドロプレット
ネブライザ」の開発により、分析試料の消費量を従
来の1/10,000以下に低減しました。
②ドロプレットの飛来とプラズマの高出力化の同期
に成功したことで、パルス同期時には約5倍の信号
強度を得ました。
③ヘリウムガスを用いることで、これまでは困難で
あった、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン元素の
高感度分析を可能にしました。
④発光分析において、8.0 fgのマグネシウムの検出下
限絶対量(約1,000倍の分析感度)を実現。
ここがポイント
大気圧プラズマ源について
半導体プロセシングなど、従来のプラズマ処理は真
空容器中の低気圧下で行われていますが、ここ数年、
真空容器を必要としない大気圧プラズマの開発が注目
を集めています。真空容器の開閉を必要としない大気
圧プラズマは、連続的な処理が可能で、従来の低気圧
プラズマよりも高密度のプラズマを生成できるため、
36
桁違いの高速処理が期待できます。しかし、大気圧下
でプラズマを生成することは原理的に容易でないた
め、これまでに開発されている大気圧プラズマ装置で
は、使用できるプラズマガスはアルゴン、ヘリウム、
窒素などのプラズマ化しやすいガスに制限されていま
した。開発したマルチガスプラズマ源では、アルゴン、
ヘリウム、窒素、酸素、二酸化炭素、亜酸化窒素、空
気やそれらの混合ガスを安定的に熱プラズマ化でき、
一つの装置でこれだけ多種多用なガスを大気圧熱プラ
ズマ化できる装置は世界初です。また、
「二酸化炭素」
の大気圧熱プラズマ化も世界で初めて実現しました。
元素分析装置について
微少量の溶液試料を一粒ずつプラズマ中に噴出でき
るドロプレット方式ネブライザを開発し、マルチガス
プラズマ源に適用しました。従来は毎分1mL程度の
大量の分析試料が必要でしたが、新装置ではわずか
1nL程度の試料を噴出し、分析する事を可能にしまし
た。(図2)さらに、上記のマルチガスプラズマ源の
ヘリウムプラズマを用いる事で従来は困難であったハ
ロゲン元素の高感度分析も可能にしました。
ブレイクスルーへの道のり
1995年:某分析機器メーカーの依頼により、微量
元素分析用大気圧ヘリウム誘導結合プラズマ源の開
発に着手。1年後、その開発に成功し、大気圧ヘリ
ウム誘導結合プラズマの安定生成法を世界に先駆け
て解明。引き続き、他のガスの生成法およびプラズ
マ中への液体導入法の研究を行う。
2004年:マルチガスプラズマを用いた微量元素分
析装置の開発を産業技術研究助成に応募するが不採
択。この頃、次世代半導体リソグラフィ用極端紫外
線光源開発の研究会に出席し、ドロプレットをレー
ザーターゲットにする技術を見て、本研究の基礎ア
イデアを思いつく。
2005年:そのアイデアを用いたパルス同期プラズ
マ分析法を日本および海外に特許出願。この特許を
含んだ研究テーマを平成17年度第1回産業技術研究
助成に応募した結果、採択。大気圧プラズマ源の開
発について文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞。
2006年:マルチガスプラズマ源を完成。従来のア
ルゴン、ヘリウムのほか、窒素、酸素、空気、二酸
化炭素なども自由にプラズマ化することに成功し
た。微量元素分析以外への展開を考え始め、大気圧
プラズマを用いた高速半導体プロセシング技術の開
発がJST産学共同シーズイノベーション化事業顕在
化ステージに採択される。
2007年:ドロプレットネブライザの開発に成功。
2008年:本研究の成果をベースとした研究が文部
科学省の科学研究 費補助金基盤研究(A)に採択さ
れる。「微少量試料分析用超高出力パルスマイクロ
プラズマ分析装置の開発」をテーマに、本研究で得
(図2)飛翔するドロプレット(上段の高速シャッターで撮影した
ものでは約1nLの試料の液滴が見えている)
られた高出力化が高感度化に直結するという知見を
もとに、プラズマを超小型化、超高出力化し、電力
密度は本研究で開発したプラズマ源の10万倍以上を
達成していくことを目標とした研究である。
■サクセス・キー
いくつかの分野の専門家が集まることで、新しい
アイデアが生まれましたが、当初の予想ほど小さな
粒子での噴射ができませんでした。しかし、結果的
にできあった粒子サイズが単一細胞の分析に適して
いることがわかり、医療分野への応用の道を開いて
くれました。ただし、現在も当初の大きさの粒子を
飛翔させる研究を続けています。
■ネクスト・ストーリー
本研究で開発したマルチガスプラズマ源は高温プ
ラズマであるために熱が利用でき、電極を使用しな
いため、電極の材料物質のコンタミの心配が無く、
極めて高純度なプラズマです。このため、高速半導
体プロセシング、CVD、地球温暖化ガス分解処理、
金属等の表面処理等への応用展開を検討中です。特
に、全身麻酔による手術に使われる笑気ガス(亜酸
化窒素)は二酸化炭素の310倍も地球温暖化を促進
させるのですが、今回開発したマルチガスプラズマ
を使うことで、このガスを99.9%以上高効率に分解
することができます。手術室への導入がすすめば、
地球温暖化ガスの低減に寄与できると考えています。
また、開発した微量元素分析装置が実用化されれ
ば、一個の細胞の個別分析も可能になります。ガン、
パーキンソン病、アルツハイマー病等の発生メカニ
ズムの解明や、iPS細胞の分化メカニズムの解明に
も役立つ可能性があります。疾病予防・早期発見のた
めの診断技術、創薬のための細胞レベルでの薬効診
断等、医療、製薬部門などでの利用も考えられます。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A37005d「微少試料内全元素分析用パルス同期マル
チガスプラズマ分析装置の開発」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
沖野 晃俊
東京工業大学大学院総合理工学研究科
創造エネルギー専攻 准教授
融合的・横断的・統合的(製造技術系)分野
老朽化構造の自動劣化診断システムの開発
センサを取り付けるだけで構造物の老化診断を可能とする自動モニタリングシステムと
損傷時データなど事前情報を必要としない『統計的無学習損傷診断法』を開発
橋梁など鋼構造建造物から車軸など動体物まで用途多彩
構造に発生する損傷・異常に対する事前情報不要、老朽化が問題となっている構造に対して現
時点から設置して現状からのさらなる劣化の評価を可能とする。各種センサの組み合わせを可
能とし、ネットワーク型計測にも対応するシステム。道路トンネル用ジェットファンの異常発
生モニタリングシステム「ジェイシグマ」として実用化済み。
本システムは、橋やビルなどの建造物のほか、交通車両の車軸などの金属疲労も察知する事が
可能であり、人と社会の安全に寄与する技術としてその適用範囲は大きい。
● 特徴は構造の痛みの度合いを正確に知るシステムではなく、
どのあたり? どの程度? とおおまかに把握
するシステムであり、
「違和感を感じるシステム」を構造に付与するという考え方に基づく画期的なもの。
●
競合技術への強み
損傷診断法 損傷事前 データ 高ノイズ
データ 送付量 環境下使用
コスト
正確性
一般的な
パラメータ
損傷診断手法
変動
(経験的手法等)
必要
統計的無学習 パラメータ
損傷診断
間相関変動
(当システム)
不要 数10KB 自動で メンテナンス 対象とする損
程度 対応可能 コストのみ 傷に対する検
出確率を定量
的に導出可能
数GB
程度
困難
[ 集中監視シ
ステムおよび
熟練検査員の
人的コスト]
+メンテナン
スコスト
個々のセンサ
の精度および
観測者の練度
に依存
▲一般的な損傷診断手法と当システムの比較
①人の痛覚は痛点(痛みを感じる場所)
20∼30万個と
それを結ぶ神経網の存在に基づき成立しますが、
「多数
の痛点」ではなく「違和感を感じるシステム」とするこ
とで、従来の診断システムとは異なり、少数のセンサ
で構造の劣化を自己診断するシステムを開発しました。
②任意の計測量・計測パラメータの変動ではなく、
計測量間の相関の確率論的な変動検出に基づき損傷
発生の評価を行うので、ノイズに強く損傷に対する
事前情報(過去からの情報蓄積)を必要としません。
③よって老朽化した既設構造に対して、現在からセ
ンサの敷設のみで自動モニタリングシステムの構築
が可能です。
④構造劣化の評価には人的判断を要せず作業員の錬
度に左右されない定量的診断が可能となりました。
⑤データ転送量が軽減される。異常と判断されたと
きだけ診断結果のみを送信(数10KB程度)するた
め、2世代前の携帯電話のネットワークで十分です。
⑥車両などの物体については停止点検をせずに連続
運転中での評価が可能です。
⑦現時点ではほとんどの分野でCBM(モニタリングに
基づくコンディションベースドメンテナンス)と検査の
意志決定は直接連動していません。当技術のように
CBMによる損傷評価が検査の意志決定として使われ
るようになれば、検査業務の平準化が期待でき
(過
剰に検査員や機器を待機させる必要がなく)
この点に
つき大幅なコスト削減につながると期待されます。
ここがポイント
当研究は供用中の既存の構造物(都市構造や生産施設
等)に対し現時点から設置可能な、健全性の自動診断法
の構築およびシステム化を目的としたものです。実際の
破壊試験等による構造の損傷時の挙動解明や、構造物の
現在の状態の正確な把握が不要な診断手法であり、経年
構造物の老朽化度のモニタリングを実施する作業員の
錬度に左右されない定量的診断(絶対的診断)を実現し
ます。具体的には、有線・無線LANによるデータ収録や
自動診断手法・異常発生時のネットワークを通じた自動
的な警報発令を組み合わせることにより簡便な実用性
と利便性を兼ね備えた自動劣化モニタリングが可能です。
ブレイクスルーへの道のり
2000年:地震災害等でたびたび問題視されてきた高
速道路、橋梁等の老朽化問題。この経年構造体の効率
的なメンテナンス手法の確立が急務とされることか
ら、本研究で用いる損傷診断法としてパラメータの変
動ではなく複数のパラメータ間の相関の変動に基づく
損傷評価手法の基礎的な研究を開始。
2001年:配管の変形に対する本手法の適用性の検証
を行う中、相関の同等性評価に用いるパラメータの―
つが対象によらず常に特定の確率分布に従い変動し、
このパラメータの監視により原型が検知できることが
判明。経年構造に有効な損傷評価手法として、当時在
学した東京工業大学
「ベンチャービジネスラボラトリー
シンポジウム」
にて発表したところ、現共同研究先であ
る
(株)
電業社機械製作所との関係が始まり、道路トン
ネル用ジェットファンを対象とした研究がスタート。
2002年:手法はまだ未成熟な段階であったが、
(株)
電業社機械製作所にてジェットファンのモニタリング
システムの制作および実機試験を開始。
2003年:当時在籍した東京大学にて、東京大学・東
京工業大学のチームで平成15年度産業技術研究助成
公募に応募するが残念ながら不採択。実機試験着手か
ら2年間は思うような成果が得られず忍耐の時期が続
いたが、センサが感知するノイズ問題を解決してから
は、小型の端末の開発に着手。同端末を用いた道路ト
ンネル用ジェットファンの実機試験を行った。また、
ジェットファン専用のモニタリングシステム「ジェイ
シグマ」の開発が開始される。
2004年:前年と同様、東京大学・東京工業大学の研
究者との共同で平成16年度公募に応募するが、残念
ながら不採択。その間、
「ジェイシグマ」の開発に携
わると共に、研究を粘り強く進め、ジェットファンの
信頼性確保のために必要な診断精度が明確化される。
2005年:再度平成17年度第1回公募に応募し採択。
任意の構造に対して適用可能な手法としての本手法の
開発・高精度化に本格的に着手。この時点で「ジェイ
シグマ」実用化のための実証試験から多くのデータが
得られており、本助成のバックアップもあり、相関同
定モデルに必要な条件など、汎用化・自動化のために
必須の多くの知見が得られる。
「ジェイシグマ」も商
品としての第1号が納入される。また、のちの共同研
究先である(株)石川島播磨重工業(現(株)
IHI)との
共同研究を開始し、機械システム内の疲労き裂評価を
対象とした研究に着手。
2006年:計画段階の有線でのセンサに代わり、多くの
無線を用いたセンサが実用化され活用するようになっ
た。大型構造のモニタリングシステムをより容易にする
ため、有線だけではなく無線型センサを用いるモニタリ
ングシステムの開発へと計画を拡張。併せてそれに対す
る各種検討および同時性補正法の研究開発に着手。以
前から交流のあった(株)IHIと疲労き裂の発生段階での
検知を目的としたモニタリングシステムの検討を本格化。
2007年:本研究により得られた基礎技術を用いた疲
労き裂進展評価手法を提案し、
(株)IHIおよび(財)
エン
ジニアリング振興協会が(財)
機械システム振興協会に
提案し採択された「機械システム等の疲労劣化診断モ
ニタリング技術の開発に関するフィージビリティスタ
ディ」に一部参加。
(株)IHIでの大型試験機をもちいた
▲既存構造の後付
自動診断システム
各種試験・疲労試験の計測データから多くのデータを
得、本手法の適用限界の明確化など多くの成果を得る。
2008年:6月に助成研究を終了。今後は機械、構造
物、動体物など、幅広く適用される汎用ヘルスモニタ
リングシステムの実用化を目指して研究を続行する。
■サクセス・キー
群馬大学、東京工業大学、静岡大学と研究チームが
分散しているため、定期的に共同研究先企業を含め本
テーマに関する研究会を実施し共同研究体制を構築し
たことが、多くの研究シーズの発見、研究の進展へと
繋がりました。助成公募の不採択に何度も会いました
が、研究テーマの決定、研究体制の構築から採択まで
に期間を要したことが、結果として研究の速やかな開
始、進展となり、これが平成18年JSTのシーズ発
掘試験の助成金獲得などにつながりました。不採択に
あきらめず、粘り強く研究を進めることが重要である
と改めて実感しています。
■ネクスト・ストーリー
当システムは「ジェイシグマ」として道路トンネル用
ジェットファン向けに実用化されていますが、損傷発生
の評価だけでなく損傷の進展の評価も可能であること
から、今後さらに航空機、燃料電池車の素材である炭
素繊維強化複合材料のはく離損傷診断や工場プラント
の施設の劣化診断等の損傷進展度合いの評価法として、
あるいは損傷評価ではなく誤検出に悩まされている既
存の警報システムで真の警報を検出する補助システム
として活用する等、積極的に活用範囲を広げていきた
いと思います。また、測定結果の高精度化および交通
車両などへの汎用化を目指して、現在の提携企業以外
にも共同研究先を求めていく予定です。また、本技術
を利用したこれら以外の他分野への応用についても関
心の高い企業との技術的ディスカッションを募集して
います。一方、センサ間の相関が強い場合は微少な損
傷を兆候段階で診断可能であるが、相関が弱い場合に
は検知可能な損傷程度が大きくなります。このため当
面の課題としては、解析的検討・実験的な検討から
様々なケーススタディを行い、診断可能な損傷程度の
ガイドラインを設定することが必要と考えています。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A42001d「ITスマートターミナルを用いた自動構造
ヘルスモニタリングシステム」
(平成17年度1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
岩崎 篤
群馬大学大学院工学研究科 准教授
37
エネルギー分野
超音波パルスによるリアルタイム混相流量計の開発
現場配管にクランブオンするだけで計測開始。配管の外側をセンサージャケットで覆うだけで
気体・液体・固体が混在する管内の成分別の流れをリアルタイムに計測。成分流量計測誤差
範囲は5%以内と高精度パイプラインによる資源や原料の効率的・計画的な輸送に寄与
金属や塩ビの配管の外側から開発した計測装置を装着するだけで、管内部の成分別流量モニタリングが可能。
超音波を利用したこの計測システムは、従来の手法である「通常停留装置に放流して正確に容積換算する方法」との計測誤差は5%以内であり、
なおかつ配管設備を稼働しながら正確に成分別流量計測ができるシステムとしては唯一の技術です。
●
開発したシステムは、超音波ドップラー法(注1)による界面検知方法を確立すると共に、これにエコー強度法(注2)
を導入し、ドップラー信号とエコー強度のハイブリッド処理によって、超音波パルスによる成分別流量測定を
可能としています。
● 気体、液体、固体が混ざった混相流の計測精度を高めることで、これまで経験的法則に頼っていて定量的な計測
が困難であった石油、天然ガスのパイプラインなどの資源計測を明確にすることができ、資源売買などの経済
面、温暖化ガス排出量の換算係数での誤差縮小などに役立つものと期待されています。
競合技術への強み
混相流量計
性能比較表
混入液体
成分同時 相分離 リアルタイム 配管移動 任意部位
液 気 固 計測 必要性 計測
計測
停止
体 体 体
○ ○ ○
○○ ○
フロート式流量計 ○
タービン式流量計 ○ ○
超音波混相流量計 ○ ○○ ○
従来計測 コリオリ流量計
[単相
流量計]カルマン渦流量計
本技術
[混相 (超音波ドップラー
流量計]法+エコー強度法)
不要
1s(△)不要
必要
1s(△)必要
(×)必要
必要 10s
必要
1s(△)必要
不要 0.1s(◎)不要
×
×
×
×
○
▲単相流量計と混相流量計の比較
①非接触:管外部に装着する計測器(超音波)で管
内部の流量計測をするため、リアルタイムで計測が
可能です。
②流動条件に拘束されない:内部が見えない不透明
管路でも、センサーを周方向に2本以上配置するこ
とで内部の流れの状態を超音波パルスで可視化して
把握することができます。流量の出力は最大20Hz
のサンプリングレートまで実現可能です。
③広い応用範囲:本計測器が内部情報として持つ断
面速度分布・相分布の結果を利用するオプションを
活用すると、流量だけでなく、成分ごとの体積率、
最大流速、淀みの有無の検出など目的にあわせた必
要な情報が出力可能です。
④計測誤差範囲5%:超音波ドップラー法とエコー
強度法を組み合わせて気液界面の計測制度を高め、
この結果を単純速度分布積分することで時間平均流
量で誤差5%以内を確認しました。
⑤資源輸送の高度管理化へ:パイプラインの稼働を
止めることなく流量分量の測定を可能とするため、
輸送管理水準の向上をもたらします。
ここがポイント
大流量の混相流をリアルタイムで、しかも成分別
に計測する装置はこれまでに存在しませんでした。
例えば石油、天然ガス混合流体のパイプラインでの
計測では、一旦大規模な停留装置に放流して相分離
をさせてから容積換算するという方法がとられてお
り、多大な時間と人的労力が伴っていました。
また混相流パイプラインでは、長距離輸送の間に
流れの状態、形式が変化しやすく、このためパイプ
ラインの任意の場所での局所流量のその場モニタリ
ング等の管理上のニーズが存在していました。そし
て流量の誤差はそのまま経済的な誤差や石油の二酸
化炭素排出換算などに直結するため、より実態に近
い形で計測できる技術開発が求められていました。
開発した技術は超音波を利用して、金属、塩ビな
ど管の材質を問わず、外部から成分別の流量計測を
誤差5%の範囲でおこなうものであり、配管の稼働
を止めることなくガスや液体別の流量を任意の場所
で測定することができるので、管の運転・管理上、
38
(注1)超音波ドップラー法=移動する物体に
超音波を照射するとき、その反射波の
周波数が元の周波数からずれることを
利用して、物体の速度を逆算によって
求める方法。
(注2)エコー強度法=超音波が異物に当たっ
て反射するとき、その反射強度から異
物の種類や位置を特定する方法である。
有益な技術です。
石油、天然ガスなど既存のパイプライン網の管理
水準を向上させるに留まらず、化学工場等プラント
内、上下水道などにおいて、災害時の流体物質漏洩
をリアルタイムで検知することができる等、都市災
害時における社会への安心・安全の提供にも貢献す
る技術です。
ブレイクスルーへの道のり
2003年:世の中にないものを作るという純粋なエ
ンジニア魂を背景に、新しい流体計測機材の開発を
目的として、本研究グループのメンバーが北海道大
学に集結。それまで武田教授(北海道大学)が開発
してきた超音波パルスドップラー法を混相流の新し
い計測技術として展開するプランが画策される。と
くに技術課題となる「いかに流体─流体の界面を超
音波で捕らえるか」に討論が集中。
2004年:技術課題を予め全てピックアップするた
め、最も難易度の高い円管内高速スラグ流(3次元
圧縮性二相乱流)で、超音波パルスドップラー法を
適用。流速分布の時空間2次元データの特殊なフィ
ルタリングで界面検出が可能であることを発見して
NEDO産業技術研究助成へ応募、採択となる。
2005年:NEDO研究契約期間に入り、超音波パル
スドップラー法に関するこれまでのノウハウを投
入。超音波パルス固有の界面での反射過程で厚さ1
程度の局所定在波がドップラーシフトを相殺する
現象を確認。計測原理を確立・証明した。
2006年:実験範囲を広げて試験。混相流の成分体
積率計測の確度改善に研究力を注ぐ。流体─流体界
面からの反射波の残響を排除するセンサージャケッ
トを新規開発。層流界面・乱流界面という区別を定
義することで、前者はフィルタリング法(注3)、後者
はエコー強度法で解決。
(注3)フィルタリング法=出られた速度分布を特定の関数で変
換し、目的の量だけを抽出する方法
2007年:本手法において超音波パルスを複数発生
させることで、流れの非軸対称性・3次元性ならび
に著しい非定常性にも対応するシステムを設計・試
験した。この結果から20Hzまでのサンプリングレ
ートで瞬時流量誤差10%以内、時間平均流量誤差
5%以内となるハード・ソフトウエアー体型システ
ムを完成させた。また一連の開発について特許を出
願。現在、連携企業との実用化研究に入っている。
超音波関連の初期研究においては、当初海外の信号
処理技術企業に依存していた時期があったが、研究
が進むに従って自作の器材を製作したため、その依
存度は下がり、その結果当研究は順調に進んだ。
■サクセス・キー
2003年に研究グループを構成する武田教授が超
音波パルスドップラーの基本知識・ノウハウを提供
▲混相流量計の設置概念図と測定データ図
するとともに、研究代表者の混相流ダイナミクスの
研究経験を活かしてこれを混相流計測ツールに拡張
したことが本研究推進の柱となった。さらに液体金
属など不透明液体の超音波計測に詳しい田坂助教が
NEDO産業助成研究途中から研究チームに加入した
ことが計測法開発への加速となった。
また、2005年にスイスの連携企業から世界での
市場性に関する調査情報を入手できたことも大き
く、これで熱意倍増となった。どんな研究でも困難
は付き物ですが、情熱があれば難問もクリアできる
ことを体現しました。
■ネクスト・ストーリー
次の段階は、提携企業を中心として産業界に広
く活用できるツールへと汎用化設計に入ることで
す。課題は実際のパイプラインやプラントで実地
試験をおこない、実用化のためのデータを揃えて
いきます。現在は海外の天然ガスのポンプ製造会
社や国内の企業などからのリクエストが来ている
ので、これら企業との連携を強め製品化への実現
を目指していきます。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A45002d「混相流パイプラインのリアルタイム成
分流量計測技術の開発」
(H17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
村井 祐一
北海道大学大学院工学研究科
エネルギー環境システム専攻 准教授
エネルギー分野
高効率なガス貯蔵・輸送のためのクラスレート水和物シミュレータを開発
天然ガス成分や水素の新しい貯蔵・輸送方法として
注目されるクラスレート水和物
その相平衡条件を分子動力学シミュレーションを用いて
予測するシミュレータを開発、天然ガス等の貯蔵・輸送に
係るコスト削減のための予測を可能にした
開発したプログラムは、分子動力学シミュレーションを用いて、クラスレート水和物の相平衡条件
を計算するためのものであり、既に実験データがある物質の相平衡条について分子動力学シミュレ
ーションで計算した結果と良い精度で一致することを確認しました。また実験データがないものに
ついて、シミュレーション計算で最適な相平衡条件を予測した上で、相平衡測定の実験を行ったと
ころ、効率的に実験を行うことができ、本シミュレーション計算の有用性を確認しています。
現在、天然ガスはLNG(注1)やCNG(注2)の形態で貯蔵・輸送を行っています。これをLNGより高温
(0℃以上)でCNGより低圧(30atm程度)で生成することができるのが、クラスレート水和物です。
本クラスレート水和物により固定化し、貯蔵・輸送する手法では、試算では貯蔵・輸送コストはLNG
に比べて20%程度の低コスト化が可能であり、省エネルギーな貯蔵・輸送技術となり得るものと期待
されています。
●
競合技術への強み
測定可能な
ゲスト物質
実験法
相平衡条件の測
定に要する時間
正確性
コスト
△
×
○
△
可燃性や反応性
の強いゲスト物
質には特別な装
置が求められる。
1つのゲスト
物質あたり物
によって3∼
6ヵ月
温度・圧力測
定の不確かさ
は0.1 K、10
kPa以内。
1つのゲス
ト物質あた
り50万円∼
200万円。
△
○
△
○
1つのゲスト
物質あたり1
∼3ヵ月(一
般に実験法の
2∼3倍早い)
正確性を定量的に
評価することはで
きない。実験的に
探索する前に当た
りを付け、目的に
合致した物質のみ
実験で検証するこ
とを可能にするこ
とが本技術の強み。
ゲスト物質
によってコ
ストは変わ
らない。計
算のための
コンピュー
タだけが必
要。
シミュレー 可燃性や反応性の
強いゲスト物質で
ション法
も計算可能である
(本技術)
が、あらかじめ電
荷などの分子に特
有のパラメータが
必要となる。
▲クラスレート水和物の相平衡データの取得方法に係る従来技術
との比較表
これまでも炭化水素系のゲスト物質(天然ガス
等、貯蔵・輸送の対象ガス)を中心に、クラスレ
ート水和物の相平衡データの整備が進んできたが、
天然ガス成分や水素を高密度貯蔵させるためにク
ラスレート水和物を利用する場合には、天然ガス
成分や水素以外の大分子量のエネルギー物質
(例:2,2-ジメチルブタン、2,2,3-トリメチルブ
タン)を含むクラスレート水和物を用いることが
提案されています。しかしながら、天然ガス成分
や水素以外のゲスト物質を含むクラスレート水和
物の相平衡データはあまり整備されてなく、デー
タがない新規ゲスト物質の相平衡条件を見いだす
ためには、相平衡測定の実験(ベテランの研究者
でも通常、3∼6ヵ月かかる)を数多く行う以外あ
りませんでした。本研究では、実験による相平衡
データがないゲスト物質に対して、通常、3∼6ヵ
月かかる実際の測定実験を行うことなく分子シミ
ュレーション及び分子シミュレーションと熱統計
力学モデルを組み合わせた方法の2つのシミュレ
ーションにより、実験を行うことなく1∼3ヵ月と
いう短時間で相平衡データを取得し、クラスレー
ト水和物での貯蔵・輸送に適したゲスト物質を見
出すことを可能にしました。また、クラスレート
水和物生成時の動的な過程の予測を可能にする計
算機シミュレーションの手法を開発しました。
ここがポイント
実験値が存在しない新規ゲスト物質2,2,3,3tetramethylbutaneについて分子シミュレーショ
ンにより予測することができ、目標のひとつを達
成しました。また、熱統計力学モデルを用いたシ
ミュレーションでは、本研究で導出したパラメー
タを用いると、メタン+水系およびエタン+水系
の広い温度領域(特に高温域)において良好に相
平衡条件の実験値をシミュレーションで再現でき
ており、その優位性が明白となりました。
ブレイクスルーへの道のり
2001年:クラスレート水和物を用いた天然ガス
の貯蔵・輸送のため、クラスレート水和物の生
成・分解過程の理解を分子レベルで行うことを目
指し、平成12年度NEDO産業技術研究助成のもと、
シミュレーション研究を行った。分子動力学シミ
ュレーションを高速化するため、分子動力学専用
計算機MDGRAPE-2を用いたプログラムの開発を
地道に続け、メタンをゲスト物質とするクラスレ
ート水和物の分解過程の計算をした。
2002年:引き続き計算の高速化(専用計算機に
依存しない計算手法の検討)と分解過程のシミュ
レーションを行い、シミュレーションにより分解
の様子を分子レベルで把握。クラスレート水和物
の生成には天然ガスをより分子レベルで水に溶解
させることが必要であることを見いだした。
2003年:より低い圧力(高い温度)条件で生成
するハイドレート水和物を利用することで、貯
蔵・輸送に利用する提案をJOGMECにし採択され
た。研究代表者泰岡氏は分担者として参加し、ハ
イドレート水和物の分解過程をさらに詳細に調べ
た。
2004年:前年に引き続き分解過程について計算
を行う。この頃から、本研究プロジェクトで開発
した相平衡予測のアイディアを考案し、産業技術
として活用するためには、相平衡予測を行うこと
が一番と考えたこと、分子シミュレーションで分
子レベルの知見を生かしつつ、予測できる方法を
提案したいと考えたからである。
2005年:本研究プロジェクトを平成17年度第1
回NEDO産業技術研究助成に応募し採択された。
自由エネルギーの計算を行う部分の開発を始め
る。理論的に正しく、かつ結果が妥当であるもの
を出すのに時間を要した。
2006年:分子動力学シミュレーションで自由エ
ネルギーを計算し、相平衡条件を予測することに
成功する。実験でも確認し、特許を出願した。ま
た、熱統計力学モデルを用いた計算プログラムの
開発も行い、新たな結果を特許出願した。
2007年:相平衡、連続生成のシミュレータのま
とめを行った。更なる特許出願を検討している。
▲分子動力学シミュレーションで計算したクラスレート水和物
(注3)の系
(水分子は表示せず、水素結合を棒で表した)
(注1)液化天然ガス。-162℃以下に冷却され液化した状態で
輸送される。
(注2)圧縮天然ガス。高い圧力で圧縮されて液化した状態で輸
送される。
(注3)あるゲスト物質が水分子の水素結合により作られる籠の
中に閉じ込められた構造
■サクセス・キー
計算による予測に興味を持ち、分子動力学シミ
ュレーションを用いた研究を行っていた代表研究
者の泰岡氏と、実験による研究を精力的に行って
いた分担者の森康彦氏が常日頃からお互いのアイ
ディアを相談し合い、計算と実験を組み合わせて
できることが無いかと考えていた。また助成研究
期間中も常にお互いに議論して研究に取り組んで
ていきた。専門が違う研究者が本気で連携して研
究を行うことができた点が成功の鍵である。また
特許出願の他、投稿論文を多数発表し、学会での
発表を行うことも重要であり、学会発表の場を通
じて、研究者間のみでなく、企業の方とも話す機
会が持つことができた点が、産業応用への一歩と
なった。
■ネクスト・ストーリー
今後、クラスレート水和物の相平衡予測や連続生
成計算をさらに行い、本方法の実用化を目指してい
きます。また他の利用用途についても、例えばハイ
ドレート冷凍機(クラスレート水和物を高温で生成
し低温で分解させることによってヒートポンプを実
現する)における新規ゲスト物質の探索にも応用す
る予定です。実験的に探索する前にシミュレーショ
ンにより当たりを付け、目的に合致した物質のみ実
験で検証することで、実験に要するコストの大幅カ
ットと時間の節約、研究開発スパンの短縮化が可能
になります。分子レベルのシミュレーションを用い
た取り組みは今後さらに拡大して行くのではないか
と考えています。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
00B60007「クラスレートハイドレートによる高密度天
然ガス貯蔵・利用技術の開発」
(平成12年度第1回公募)
05A45004c「クラスレート水和物を用いた高効率エネル
ギー貯蔵・輸送技術のための相平衡・連続生成シミュレ
ータの開発」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
泰岡顕治
慶應義塾大学理工学部機械工学科 准教授
39
エネルギー分野
弾性波式小型液相系センサの開発
次世代モバイル電源として期待される
ダイレクトメタノール燃料電池の実現に不可欠なメタノール濃度センサ
(注1)
弾性表面波(SAW)
素子を用いて、小型・軽量・安価・高精度なメタノールセンサを実現する
携帯電話などに電子部品として使われる弾性表面波(SAW)素子を利用し、浮き電極をもつ一方向性電極(FEUDT)に活用することより、小型で
低コストかつ温度、濃度領域によらず誤計測の可能性が無い安定なセンサを実現。FEUDTを用いたSAWセンサは本研究が世界初。メタノールだけ
でなく、他の液体の濃度センサとしても活用できる。
従来技術である、音速による計測センサは特定の濃度に対して最大値を持つ2次関数となりますが(計測結果から温度領域により2種類の濃度が導かれる)、
一方、誘電率や密度は濃度に対して単調に減少するので、誘電率や密度の変化量から1つの濃度が特定できます。しかし、濃度変化に対する密度の変化率
は誘電率の変化率に比べて小さいため、誘電率計測によりメタノール濃度推測が容易となります。
● 携帯電話等に使われている安価な小型電子部品をコアとしているので、小型、軽量、安価な実用品を実現することができます。
●
(注1)弾性表面波素子:水晶やLiNbO3結晶のような圧電性材料で作られ、物体の表面に沿って伝わっていく波(弾性表面波:Surface Acoustic Wave)を発振したり、逆に液体粒子の表面を伝わる弾性表
面波をセンシングすることにより,液体の物性を検出することもできる。
競合技術への強み
コスト
分解能
△
(1)
◎
音波測定法 センサ単価
はSAWセン 0.1%以下
(従来技術)サより高額
(2)
△
密度測定法 センサ単価 ◎
0.1%以下
(従来技術)はSAWセン
サより高額
(3)
SAWセンサ
(本研究技術の
実用化時のス
ペック目標)
◎
◎
コンパクトさ
誤計測の可能性
○
音速値は濃度領域により2つ
の濃度に対応する可能性が
あり、音速の測定値だけでは
1つの濃度に特定できない
○
密度は濃度に対し単調に減
少するので、濃度が一つに
特定できる。
○
○
△
○
SAW素子は1
試作システムの寸法
個100円以下 センサ単体 は10cm×10cm× 誘電率は濃度に対し単調に
なので従来技 では0.1% 5cm。システムをIC 減少するので、濃度が1つ
術よりコスト を達成
チップ化して実用化 に特定できる。
ダウンが可能
する計画
▲メタノール濃度センサに関する従来技術と本技術との比較表
①高い分解能:液体の弾性表面波(SAW)の誘電率を
測定することで、燃料電池のメタノール濃度を理論
的には0.1%の分解能で検出することができます。
②低コスト:SAW素子は1個100円以下と安価なた
め、コスト面でもたいへん優れています。
③温度の影響を受けにくい:本センサシステムは、
SAW信号発生器を内蔵することにより、液体の温度
からの影響を低減しています。
④広い応用分野:本研究で用いた技術は、液体識別、
液体評価、水計測、バイオセンサなど様々な分野に
応用できます。
⑤世界初:FEUDT(浮き電極をもつ一方向性電極)
を用いたSAWセンサは本研究が世界初。発表したと
ころアメリカやスイスでも好評でした。
ここがポイント
弾性表面波(SAW)素子の上に液体を載せると、
液体表面のわずかな変化によって波の極性(例えば
振幅や速度)が変わります。その変化分を検出する
ことで、液体を細かく識別することができます。本
研究では、SAW素子のこうした特徴を利用し、浮
き電極をもつ一方向性電極(FEUDT)を用いて、
ダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)のメタノ
ール濃度を計測するセンサを開発しました。
機能が高度化する次世代モバイル機器の電源とし
て期待されるDMFCは、メタノール濃度に依存する
ため、安価で精度の高い濃度センサが必要とされま
す。
既存技術としては、音速測定法や密度測定法が
ありますが、開発したセンサは音速や密度ではな
く、メタノールの誘電率変化を捉えて濃度を測定
します。このセンサの利用により、電池切れを予
告するなどDMFCの管理が容易になります。弾性
表面波を用いた濃度センサは、液体の密度と粘度
の積、誘電率、導電率を同時に測定可能なので、
液体識別、液体評価、水計測、バイオセンサなど
様々な分野での応用が可能です。
40
▲開発したセンサの構成図
ブレイクスルーへの道のり
1989年:恩師の研究室に卒研生として加わり、
恩師が取り組んでいる弾性表面波センサの研究を
目にする。この研究は始められたばかりであり、
かつオリジナル研究ということで興味を持ち、自
らのテーマとして修士研究に入り本格的に研究を
行うようになった。
2001年:SAWセンサは密度と粘度の積という一
般に用いられない液体の物理量に応答する。そこ
で、センサ表面形状を工夫することにより密度と
粘度の分離計測法を発表。また、本研究の基礎と
なるセンサシステム構成方法を発表した。
2002年:SAWセンサによる水(市販のミネラル
ウォータ)の計測を行い、水に含まれているわず
かな成分によりセンサの応答が異なることを示し
た。
2003年:液体中に微小粒子が含まれる場合に測
定可能かについて検討を行った。実験により、微
小粒子のセンサ表面への堆積に伴いセンサ近傍の
電気的特性(導電率・誘電率)が変わることを明
らかにした。この頃、学会や大学の研究室等で企
業関係者と話をする中で、メタノール濃度センサ
の必要性が高いことを知り、開発しようと考えた。
2004年:室温でメタノール水溶液の濃度が測定
可能(シーズ)であることが分かったため、産業
技術研究助成に応募。
2005年:温度を考慮した数値解析と基礎実験を
行うことにより、誘電率を検出するSAWセンサを
用いれば、DMFC用メタノールセンサが実現でき
ることを明らかにした。実際のセンサ開発のため、
連携をお願いした企業より承諾が得られた。
2006年:位相ひずみ改善のためFEUDTを採用し
たところ、改善効果に加えて低損失センサを実現
することができた。周辺システムも含めたセンシ
ングシステムの開発においては、試行錯誤を重ね
る時期があり、多くの時間と労力を費やさねばな
らなかった。
2007年:FEUDTを用いたSAWセンサの特性につ
いて発表したところ、高い評価を得た。このSAW
センサを小型化し、2006年度の成果に基づいて
開発した小型センサシステムに組み込んで測定を
行った。その結果、所望の結果を得ることができ
た。
▲開発したセンサシステム。○で囲った部分がSAWセンサ
■サクセス・キー
学生時代にすばらしい恩師と巡り会い、卒業研
究以来現在に至るまで弾性表面波を用いた液相系
センサの研究を継続、基礎理論の確立、新しい応
用分野の開拓を行うことにより、SAWセンサの可
能性を広げることに成功しました。最適な企業と
連携できたため、基礎研究やシステム開発を効果
的に進めることができ、さらに大勢の方からご意
見をいただき、研究に還元して大きな成果を得る
ことができました。
■ネクスト・ストーリー
現在、連携企業の協力を得て温度による影響を
受けないセンサを開発しています。これを利用す
ることによって、メタノール濃度に対するシステ
ムとしての分解能を0.1%にまで高めるための技
術的検討を行っています。システムの低消費電力
化についても追究していきます。そして、実際に
DMFCを開発している企業との共同研究の実現を
目指していきます。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A49009c「弾性波式小型液相系センサの開発」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
近藤 淳
静岡大学 創造科学技術大学院 准教授
エネルギー分野
DNAをテンプレートとした金属ナノ構造制御技術による革新的ハイブリッドナノ水素ガスセンサーの開発
DNAとパラジウムによる
ハイブリッドナノ構造体を水素センサーに応用
従来より高速・高感度での水素ガス検知を可能にする
水素エネルギー社会の実現に向け、水素ガスの漏れを高感度・高速で検知で
きる小型センサーは必要不可欠です。新規開発したパラジウム-DNAハイブリ
ッドナノ構造体を用いたセンサーは、高速(検知に1秒以内)と高検知濃度
(濃度500ppm以上)をともに実現しました。
家庭用燃料電池、燃料電池自動車、燃料電池パソコンの実用化および普及に欠かせない水素ガスの漏れ検知が、
高速かつ高感度、さらに室温でできるようになります。
● 本研究で開発したハイブリッドナノ材料や高次構造制御技術が、従来のナノテクノロジーでは実現し得なかった
革新的なナノテクノロジー領域を開拓すると期待できます。
●
競合技術への強み
応答速度
感度
検知濃度 ガス選択性 耐久性
パラジウム
△
△
△
△
○
薄膜型
電気抵抗
数秒
水素以外の 繰り返し
(室温作動)
の増加現 0.05%
による劣
(従来技術) (H2濃度=3%) 象を利用 (500ppm) ガスも検知 化が課題
メソワイヤー
○
△
◎
△
○
アレイ型 (注1)
1秒以内 オン・オフ 0.5% 水素のみを 繰り返し
(室温作動)(H2濃度=3%)(体積の増加
による劣
(5000ppm)
検知
(競合技術)
現象を利用)
化が課題
パラジウム○
◎
○
○
○
DNAハイブ
オン・オフ 0.05%
リッドナノ
1秒以内 (体積の増加(500ppm) 水素のみを 20回ま
で安定
構造体型 (H2濃度=3%) 現象を利用) 今後100ppm
検知
を確認
(室温作動)
の検知感度の実
現を目指す予定。
(本技術)
▲パラジウム室温作動型センサーに係る従来・競合技術と本技術
との比較表
(注1)電気堆積法により電極間に数十本のパラジウムナノワイ
ヤーを作製し、パラジウム堆積時に偶然できるナノワイ
ヤーの切断部分をセンシング部として利用
①応答速度:水素濃度3%の条件下で、1秒以内とい
う実験結果を得ています。
②感度:水素ガスに対するナノ構造体の体積変化型
の電気応答性を示し、電気信号のオン・オフスイッ
チング機構による検知が可能なので、より高感度の
センサー特性が期待できます。また、室温での検知
が可能です。
③検知濃度:500ppmという希薄な濃度での検知が
可能です。
④ガス選択性:水素以外のガスを吸着しても電流変
化が生じないため、ガス選択性に優れます。
⑤耐久性:繰り返し特性に優れます。
ここがポイント
地球環境保全の見地から、水素エネルギーを利
用する社会の実現は喫緊の課題となっています。
そのためには、水素の製造技術、貯蔵・輸送技術、
利用技術と並んで、安全性を確保するための水素
検知技術が必要不可欠となります。水素は爆発の
危険性が高く、しかも人間の五感では検知できま
せん。にもかかわらず、その漏れを高感度かつ高
速で検知できるセンサーは現状では実現されてい
ません。
本研究は、DNAの折り畳み構造相転移を活用し、
新しく作製に成功したパラジウム-DNAハイブリッ
ドナノ構造体を利用して、超高性能室温作動小型
水素センサーを開発するものです。
DNAは表面に金属イオンを濃縮する性質があり、
この性質を利用することによって、金、白金、銅、
コバルトなどの金属ナノワイヤーを作製できます。
DNAは通常ひも状ですが、カウンターイオン(陽
イオン)濃度が増すと折り畳み構造相転移を示し、
この構造を活用することで、ナノパーティクル、
ナノネックレス、ナノリングという構造体の作製
▲DNAにより高次構造制御した
パラジウム-DNAハイブリッドナノ構造体
に成功しました。
作製したパラジウム-DNAハイブ
リッドナノ構造体は、水素ガスに対
して良好な応答速度と感度および安
定性を持つことが確認できました。
また、水素を吸蔵することで体積膨
張依存型の電気応答性を持つこと、
水素以外のガスは検知に影響しない
ことなどから、従来型に比べ、より
高感度で優れたガス選択性を有する
水素センサーを実現することができ
ました。
▲水素ガスセンシング原理の比較
ブレイクスルーへの道のり
2003年:ナノバイオという融合領域が注目され始
め、共同分担者と相談し、金属とDNAの組み合わ
せ、すなわちナノハイブリッドによる水素センサ
ーの開発を目標に研究をスタート。無機材料と生
化学と、専門分野がまったく異なっていたため、
当初は議論がかみ合わず。
2004年:ナノワイヤーの作製にとりかかるが、マ
リモのように丸い粒子状のものばかりができる。
失敗作と思っていたが、当時たまたまDNAの勉強
会で読んでいた専門書に丸い粒子状DNAの記述が
あり、実はこれがDNAの折り畳み構造相転移によ
るものであることに偶然気づく。このようなDNA
の折り畳み構造を利用した金属ナノ構造制御は例
がないことを知る。
2005年:マリモ状のハイブリッドナノパーティク
ルが、水素ガスに対して応答性を示すことを確認。
構造制御により新しい機能を発現できたのは世界
初と思い、平成17年度第1回産業技術研究助成に
応募し採択される。
2006年:最終目標をクリアできないことがわか
り、方針を大きく転換する。基礎研究を地道に続
け、DNAの折り畳み構造相転移に関する状態図を
作成した。
2007年:状態図をもとに、DNAを三次元テンプ
レートとした金属ナノ構造制御技術を確立、最終
目標をほぼ達成できる見通しを得る。東北大学か
ら大阪大学への異動により、新しい連携企業と出
会えた。
ったのに対し、21世紀は材料のサイズや構造の制
御 ―― ナノプロセシング、ナノファブリケーショ
ン ――が重要な時代となる」という方向性を受け、
常にこれを研究開発遂行上のバックボーンとした
こと。
■ネクスト・ストーリー
本研究を応用したパラジウム-ポリマーハイブリ
ッドナノ粒子の作製とそれを用いた水素センサー
は特許を取得済みです。今後は実用化に向け、パ
ラジウム-DNAハイブリッドナノ材料のパッケー
ジ・素子化を進めています。その後、水素ボンベ
ストッカーやカートに搭載して実証実験を行いま
す。また、数万円以下での販売という低コスト化
を実現する必要があり、従来製品に関するコスト
分析に取り組む予定です。また性能としては今後、
100ppmの検知感度(現状、500ppm∼4%以上)
と実用レベルでの耐久性の実現を目指します。
将来的には、DNA三次元テンプレートプロセス
をもとにした機能性セラミックスナノ粒子の構
造・集積化技術基盤の確立や、ハイブリッドナノ
材料のドラッグデリバリーシステム等、医療分野
への応用も視野に入れ、研究を進めていきます。
■サクセス・キー
東北大学の助手時代に梅津と出会い、材料工学
とバイオ工学という専門分野のまったく異なる研
究者間の研究体制を緻密に構築できたことと、可
能な限り異分野を含む様々な学会で発表し、異分
野の研究者から多数コメントを受け、それを素直
に聞き、参考としたことが成功の鍵です。また、
東北大学在籍当時の指導教授(阿尻教授)から学
んだ「20世紀が新物質創成――合成――の時代であ
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A50004c「パラジウム−DNAハイブリッドナノワ
イヤーを用いた超高性能室温作動小型水素センサー」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
大原 智
大阪大学 接合科学研究所 准教授
41
エネルギー分野
鳥翼型垂直軸タービン流れの可視化発
よりたくさんの風を「受け」より効率よく風を「避ける」
しなやかで鳥の翼のような風力発電システム
鳥翼型垂直軸風力タービンと風を効率的に風車に流す集風器
このシステムは台風の際に起きる強風時に、主に安全面のため強制停止させ、発電できな
かった従来の風力発電に対し、強風時には風を「避ける」ことで発電を持続させ、風速
50m/sec以上での稼動も実現するという風力発電システムです。
風を効率よく風車に誘導するための集風器で1.6倍もの風力エネルギーを集めることに成
功し、その発電量は集風器を使わない場合に比べて2倍の発電量が得られています。
● 今後、耐強風性と騒音低減の研究と発電力の向上、小型化が実現できれば、家庭用屋上
設置型の風力発電システムとして活用が期待できます。
●
競合技術への強み
▲緑色
強風時発電
年間発電量
一般的な
×
小型風力
(風速50m/sec以
発電
上で停止)
集風器付
○
き鳥翼型 (風速50m/sec以
風力発電
上でも稼働)
800kwh
(計算値)
集風器
×
集風器はつけて
いない
○
1500kwh 風量1.6倍、
(計画値) 発電量2倍を実現
発電量の3倍の計
画あり
▲一般的な小型風力発電と集風器付き鳥翼型風力発電(本技術)
との比較
▲集風装置あり、なしの効果比較
①独創的形状:鳥翼型風車の発想は他に類例を
見ない形状。鳥が翼を動かす時に生み出される
空気抵抗の違いを風車設計に活かせないかと考
えた点が本技術開発アプローチの原点。
②風力エネルギーの効率的利用(1.6倍):集風
器を風車のまわりに設置して風を風車に誘導す
ることで、集風器がない場合に比べ1.6倍もの風
力エネルギーを得ています。これは従来の風力
発電とは異なる仕組みです。
③発電量(2倍)
:集風器を使うことで風力エネル
ギーを集中できるとともに鳥翼型風車が風を柔軟
に受け止める特性から、その発電量は集風器を使
わない場合と比べて2倍の発電量が得られます。
ここがポイント
現在、風力発電技術はプロペラ型を主体に商用利
用として導入が進んでいますが、風向・風量の安定
した地域に限られるなど、クリーンエネルギーとし
て期待される一方で、不安定な風向・風量を持つ自
然な風エネルギーの特性を踏まえ、このエネルギー
についてどう「安定化」を図るかが課題です。当技
術開発は、風力エネルギーを安定・効率よく利用す
るための「集風器」と、集めた風を効率よく電気に
変えるための風車(垂直軸タービン)を開発し、家
庭用風力発電としてクリーンエネルギーの社会的普
及に貢献する技術です。
従来の風車技術と異なるのは、鳥の翼をイメージ
42
した柔軟構造の縦型風車という点。そして風を受け
る面はより抵抗を受けやすく、しなり、風を受けて
はいけない面は抵抗を少なくする点です。また台風
など強風時には風を受けにくくするためにスリット
を設けて風を逃がすなど、翼自体に工夫があります。
集風器は風車のまわりに設置し、どの風向からで
も風車に風を誘導するよう角度をもたせて設置され
ており風向によらず風力エネルギーを効率よく風車
に伝えます。その結果、少ない風力でも発電が可能
です。
ブレイクスルーへの道のり
1999年:本研究のきっかけは、柔軟翼を持つ風
車の研究を一緒にしませんかと、当時は工作機械
周辺機器メーカに勤めていた佐藤隆夫氏が、研究
室を訪ねて来られたのが始まりです。ちなみに佐
藤氏はそれまでも企業で設計の仕事をする傍らラ
イフワークとして色々な風車を考案してきておら
れ、今回のものを是非、日本工業大学の風洞で試
験して欲しいという要望からの来訪であった。そ
の後佐藤氏が製作したごく簡易な手作りの原理モ
デルについて風洞実験を行う形で研究を開始。
2000年:佐藤氏が勤務する工作機械周辺機器メ
ーカが、佐藤氏を研究代表として革新的な技術開
発の提案公募に応募し採択される。そこに丹潭が
主力メンバーとして加わり、ここから工作機械周
辺機器メーカと丹潭の本格的な共同研究を開始し
た。
2001年:基本的な形の検討。また、柔軟翼の効
果で発電電力の増加を確認。しかしこの時は、風
速9m/secでの最大出力は3Wであった。
2002年:形の検討を継続。形は決まってきたが、
最大出力は5W。
2003年:風速20m/secまでの風洞を導入。小型
なモデルを作成し、風速14m/sec以上では回転力
が限界に達し出力が飽和することを確認。これは大
きな発見であった。強風に強い風車の製作に力を
入れることにした。この時の出力は15W。
2004年:大きなモデルを作成し、風速9m/ sec
での出力は12W。この頃の課題は、発電機への取
り組みと、騒音対策、翼の改良であった。
2005年:丹潭がこれまでの研究成果を踏まえ、
NEDO産業技術研究助成に応募し採択が決定。高
速ビデオカメラによる翼自体の動きの観察と、ミ
スト(霧)を流すことで翼周辺の空気の流れを可
視化し、出力を上げる検討を開始。発電機は別途、
佐藤氏が検討し、同年11月JSTの革新技術開発研
究事業の助成金を獲得。
2006年:発電機とのマッチングも検討し、出力
は約50Wと飛躍的に向上。CFD(数値流体力学)
によるシミュレーションも開始。
2007年:本風力タービンに適した集風装置を検
▲集風器付き鳥翼型垂直軸風力発電機の概念図。右図は真上から
見たもので、中心の風車の周りに4枚置かれている集風器によ
り、風を集める効果があることを示す。
討。風の流れをうまく作ることで、集風の効果以
上の出力が出ることを確認。強風時にも発電でき、
弱い風でも集風器が効果を発揮することで年間の
発電量が見込め、実用化が見えてくる。
本研究における壁となった時期は、2001年の
研究開始当初は予想よりも出力が出ず発電力がな
かったこと、2004年までは翼の形をどうするか
試行錯誤の状態だったことでした。
■サクセス・キー
2001年からの翼の形を考える試行錯誤の時代
を振り返ると、地道に前向きに研究を続けること
の大切さを感じます。それも広い視野で幅広く捉
えて考えてみること、そして考えてばかりいるよ
り必ず結果がついてくると信じ、取り組むことが
重要です。またNEW環境展に出展したところ、強
風域発電が可能なことなど、高い風力発電技術に
関心を持つ人が多いことがわかり、それも励みに
もなりました
■ネクスト・ストーリー
当初のパワー係数(風力タービン回転領域の時
間当たりの風力エネルギーに対する風力タービン
の軸出力)は0.05程度でしたが改善が進み現在
は約0.09まで向上しました。今後は、安全性確
認のための寿命試験、フィールドでの実証試験な
どを行う中で風車効率の改善を施す必要がありま
す。そして通常家庭の使用電力量の50%(年間
1500Wh程度)の供給ができるよう開発を進め
ていきます。また本技術開発成果の製品化を目指
して、高性能化、量産化、コストダウン手法の開
発、意匠デザインの検討なども行う必要がありま
すので、今後は、現在の提携企業との共同開発を
さらに進めつつ、資本力のある提携先を探して行
きます。
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05A51007c「鳥翼型垂直軸タービン流れの可視化」
(平成17年度第1回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
丹澤 祥晃
日本工業大学工学部機械工学科 准教授
産業技術に関する社会科学分野
バイオ産業キャリア開発コンソーシアムの設立とキャリア・ナビゲーション・プログラムの開発
主にバイオ産業に従事する研究開発者が企業戦略に即応しながら
研究者キャリアを開発するためのデザインや企業マネジメントのモデルと
最適な手法を開発するための機関モデルの創出
バイオ・情報産業では専門技術者が競争能力の中核を担っているにも係わらず、
グローバル競争に対応した技術革新を促進するような専門技術者のキャリア開発に関する理論と方法が十分に確立されていない。
そこで、先端技術革新を促進する研究開発人材のキャリア開発マネジメントの日本型モデルを研究・開発。
一人前の研究者としてふさわしい課題対処方略および行動様式を身につけさせ、プロジェクト・マネジメント能力の開発を促し、組織ニーズに対
応する理想的な人材像を意識させるような、自己能力開発(キャリア・ナビゲーション)シートを開発しました。
● キャリア開発コンソーシアム(キャリア開発を目的とした企業・研究機関・産業団体間の提携関係)のモデルについては、
「コンソーシアムの必要
性はあるが、参加団体が共有化できる能力開発ニーズが明確ではない」という実務家委員会での評価や、「産学連携や戦略提携などのほうがよいの
では」という企業ヒヤリングの結果から、コンソーシアムを実現させるために、開発すべき能力を特定化しなければならないという課題が明らか
となり、今後、これら課題へ対応して行くことにより、より実用度の高い自己能力開発シートへ発展させていきます。
●
競合技術への強み
本研究では、競合する技術(プログラム)は現
在日本になく、またモデルとしている欧米とは、
労働市場背景が大きく異なるので、欧米の技術と
の比較はできません。よってここでは仕組み作り
の開発を行うために踏んだ3つのステップを紹介し
ます。
第1のステップ:キャリア管理把握の実態と経営サ
イドのニーズを理解するために研究会を開催し、
製薬・化学・食品などの産業を対象に、技術者の
キャリア開発ニーズとその状況に関するアンケー
ト調査を行って回答を得ました。その結果、バイ
オ産業の研究開発部門において、プロジェクトを
管理・開発する能力が求められていることが明ら
かになりました。
第2ステップ:研究開発人材に対するキャリア開発
マネジメントの実態の調査を行い、技術能力開発
促進型キャリア・ナビゲーションの理論的な検討
とモデル開発を行いました。調査の結果、キャリ
ア開発の実態としては、一人前の研究者と認めら
れるためにはプロジェクト・リーダーとしての資
質を備えていることが必要条件であることが明ら
かになりました。
第3ステップ:「キャリア開発コンソーシアム」と
いうモデルを提案し、その開発と産業界における
ニーズの検証を行いました。具体的には、研究機
関(理化学研究所・大学など)、産業団体(関西経
済連合会・日本製薬工業協会・欧州製薬団体な
ど)、企業関係社などの実務家委員会をアドバイザ
リーボードとした会合の開催や、欧州製薬産業団
体における開発研究者のための共同研修事業の実
態についての調査を行いました。さらには「バイ
オ・情報産業キャリア・サポート・センター」を
設置し、研究者向けキャリア・セミナーの実施、
ホームページを通じて研究開発に力を入れている
企業500社のデータベース化および無償公開を行
い、研究者のキャリア・ネットワーク形成の促進
に結びつくかの検討を行いました。
ここがポイント
日本のバイオ産業においては、プロジェクト・マ
ネジメント能力の開発を、重要なキャリア・コンピ
テンシーとみなしていることがわかりました。
キャリア開発に関する企業、研究機関、産業団体
の提携については、マルチ・セクター・パートナー
シップのNPO法人もしくは有限事業責任組合が、業
界ワイドに共通な技術能力のマーケティングと特定
化、およびその技能標準化とキャリアモデルの開発
を行い、さらに内部の信頼関係を構築する必要があ
るとの結論に達しました。
ブレイクスルーへの道のり
2004年:研究分担者の若林氏が行ったシリコン・
バレーでの調査が契機となって、技術者に対する業
界標準的なキャリア形成モデルを確立することがで
きないかの検討を開始した。
2005年:平成17年第1回産業技術研究助成公募に
応募し、見事採択。7月から本格的に研究がスター
ト。当初から10名近いプロジェクトであったため、
近畿大学経営学部内に専用の個室を設け、プロジェ
クト・ルームとして活用した。この部屋はのちに、
BICS(バイオ・情報産業キャリア・サポート・センタ
ー)の拠点にもなる。バイオ関連の産業諸団体も参
加したバイオ産業キャリア開発委員会を設立し、第
1回目の委員会を東京で開催した。また、東京と大
阪間の旅費を軽減するためにテレビ会議システムを
利用し、月に1回のペースで外部講師を招いての勉
強会を開始する。
2006年:主にバイオ関連企業を対象にしたアンケ
ート調査を実施し、その結果をバイオ産業キャリア
開発委員会において検討。その後、その結果を踏ま
えて、さらに事例調査等を実施した。キャリア開発
コンソーシアムの設立を準備する事務局として
「BICS」を設立。広く衆知するためにホームページ
を開設し、オープンセミナーを実施。また、キャリ
ア・ナビゲーション・プログラムのツールとして「一人
前の研究者アセスメント・シート」を開発すべく、大
手医薬品メーカとの共同研究をスタートさせる。
2007年:しかし、アセスメント・シートの共同研究相
手先企業が不測の事態に陥り、撤退。大きな軌道修正
を余儀なくされた。新たな共同研究先企業を模索し
ながら、製薬会社をはじめとするバイオ産業の企業
の研究者の協力を得て、アセスメント・シ ート開発を
進める。BICSでは、新たに研究開発に重点的に取り
組んでいる企業500社をランキングし、希望企業にデ
ータ配信を開始。また海外調査も同時展開し始めた。
▲ バイオ・情報産業キャリア・サポート・センター ホームページTOP画面
(http://biocareer.jp/)
富で、近畿大学の学生でもあった小上氏の存在がな
ければ、BICSは設立できなかったと思われます。
■ネクスト・ストーリー
本研究開発は、企業側の持つ研究開発者のキャリ
ア・コンピテンシーを実現するという観点を主眼と
して、その背景、ナビゲーション・システムおよび
キャリア開発提携モデルの理論的検討とその実証的
検証を行った点で意義があります。けれども、ナビ
ゲーション・システムおよびキャリア開発コンソー
シアムの実証は不十分であることは否めません。今
後は、企業等を巻き込み、実証研究を積み重ねて、
より実用度の高いモデルの開発を行う必要がありま
す。また、それに関して国際的比較検証も不十分で
あり、そうした点を今後の研究で明らかにしていき
たいと思います。
具体的には、引き続き共同研究先企業を模索し、
「一人前の研究者アセスメント・シート」を開発し
さらにはBICSを発展させキャリア開発コンソーシア
ム設立へ向けた事務局とし、コンソーシアムの実行
が有効となるのは、どのような能力の開発に対して
なのかの特定、および具体的な訓練プログラムの開
発を目指していきます。
■サクセス・キー
バイオ産業キャリア開発委員会に結集した日本製
薬工業協会や大阪医薬品協会、欧州製薬産業団体、
米国研究製薬工業協会といったバイオ関連産業団体
や、産業技術総合研究所や理化学研究所といった研
究機関等の協力があったことは、たいへん大きなこ
とでした。本研究の性質上、スタンダードなものを
作るためには、サンプルの絶対数は可能な限り多く
必要で、しかもナビゲーション・シートの作成では、
質問内容が企業にとっては重要な部分にまで踏み込
むものになるので敬遠されがちでした。これら団体
の窓口となって頂いた多くの担当者の協力がなけれ
ば、委員会の発足はおろか、各種の調査も円滑には
実施できませんでした。
また、大学内のスペースや設備を恒常的に使用で
きたことは大きかったです。さらに、企業経験が豊
プロジェクトID・研究テーマ名・年度
05B53004a「バイオ・情報産業に於けるイノベーショ
ン促進型の専門技術者キャリアのナビゲーション・モデ
ルの研究開発」
(平成17 年度第 1 回公募)
代表研究者・所属機関・所属部署名・役職名
松山 一紀
近畿大学経営学部 准教授
43
みが
実用化を研く―――― 01
タンパク質の結晶を育成する、
革新的な技術を武器に、潰れないベンチャーを目指す
大阪大学大学院工学研究科生命先端工学専攻
高野 和文
准教授
株式会社創晶
安達 宏昭
代表取締役社長
高野先生(左)と安達社長(右)
(NEDO産業技術研究助成)
◆タンパク質結晶の次世代デバイス化に向けた溶液状態制御による創製およびプロセッシング技術の開発(平成15∼20年度)
新機能結晶の開発に携わる研究者とタンパク質研究者との連携により、 有機やタンパク質などの結晶育成が難しい材料の新し
い結晶育成技術を開発することを目的として2002年に始動した「創晶プロジェクト」(Crystal Design Project)。そして、
創晶プロジェクトにおける目覚ましい成果を受け、事業化とともに社会貢献をめざすべく、大阪大学発ベンチャーとして
2005年に設立された株式会社創晶。両者のキャッチフレーズはズバリ「結晶が創生する新時代∼CRYSTAL BIG BANG∼」
である。中心メンバーとして創晶プロジェクトを牽引してきた高野和文准教授と、株式会社創晶の立ち上げとともにビジネス
の世界に飛び込んだ安達宏昭社長。同じ志を持ち、お互いの仕事を認め合い、強固な信頼に結ばれたお二人の関係からは、新
しいベンチャーのかたちが浮かび上がってくる。
あるが、そのためにはタンパク質の良
り、世界に先駆けて技術開発に取り組
質な単結晶が必要とされる。しかし、
むことは、今後のバイオ半導体技術に
タンパク質の結晶育成は難しく、高品
おいてわが国が主導権を握る可能性が
ロテオーム研究(ヒトの体内に存在し
質かつ大型の結晶が得られにくいため、
あった。
ているタンパク質全体を解析する研究)
研究の障壁となっている。特にタンパ
以上のような背景のもと、NEDO産業
と呼ばれるポストゲノム研究が盛んに
ク質複合体などの巨大分子の構造解析
技術研究助成において「タンパク質結
なっている。その中でもひときわ注目
や、タンパク質の構造中の水素原子位
晶の次世代デバイス化に向けた溶液状
されているのが、タンパク質の3次元構
置決定に必要な高分解能データ収集、
態制御による創製およびプロセッシン
造を解き明かす構造ゲノム科学の研究
中性子線回折解析には、育成がきわめ
グ技術の開発」に取り組んだ高野先生
だ。タンパク質の構造解析や機能解明
て困難な1mm角以上の大型結晶が必要
は、研究の目的として以下の3点を掲
は病気の治療や創薬に直結するため、
なことから、解析例は非常に少なく、
げた。 ①タンパク質溶液状態の制御と
詳細なタンパク質の立体構造決定が不
大型タンパク質結晶の育成技術開発が
いう新しい手法を導入して、大型・高
可欠であり、国際的にも激しい構造解
強く求められている。これまで時間、
品質なタンパク質結晶を高速で安定か
析競争が繰り広げられている(わが国
労力、資金を要したタンパク質結晶化
つ結晶形状を制御して育成するシステ
においては文部科学省が、5年間で全基
が容易になればバイオ研究の推進を大
ムを開発 ②タンパク質結晶をダメージ
本構造の約3分の1にあたる3,000種以
幅に加速させ、さらにいえばタンパク
なく自由自在に切断、エッチング、表
上の解析を目的とした「タンパク3000
質を用いた次世代デバイスへの道も拓
面加工、接合、積層などを施す光ソフ
プロジェクト」を推進していた(2007
かれるはずだ。デバイス化には結晶の
トプロセッシング技術や結晶複合体創
年に終了)
)
。
切断、表面加工、積層などの加工技術
製技術の確立 ③タンパク質結晶のデバ
一般にタンパク質の立体構造を決定
が必須であるが、タンパク質結晶にお
イス応用探索および設計
するにはX線結晶解析法が有効な手段で
いてはこれら技術の開発は未着手であ
研究開発の背景 ―
― 異分野連携のパワー
ヒトゲノム解読が終了した今日、プ
44
ここで高野先生の研究がとりわけユ
研究グループメンバー
株式会社創晶の実験棟と事務所は大阪大学の
キャンパス内にある
タンパク質の結晶はレーザーによって切断され、
より高精度な解析が可能に
フェムト秒レーザーを用いて、溶液中で強制的に核を発生させる。結晶
化の確率がアップするとともに、時間短縮と高品質化・大型化を実現
ニークなのは、工学系とバイオ系の連
ところですが、旧知の仲ということで
液状態を積極的に制御することはまっ
携―
―つまり新機能結晶の開発に携わる
気楽に話せたのが良かったのでしょう
たく新しい試みでした。中でも我々が
研究者とタンパク質研究者との異分野
ね。『タンパク質とは何ぞや』『レーザ
技術を確立した溶液攪拌による結晶成
連携によるパワーが存分に発揮されて
ーとは何ぞや』というレベルから始ま
長は、従来からのタンパク質研究者に
いることだ。
って遠慮なく話し合っているうちに、
とっては考えられないことでした。ま
「私は理学部出身で、タンパク質の構
『何かおもしろいことできるんじゃない
た、タンパク質にレーザーを当てるこ
造はいかにしてできるか、その構造は
か』『とりあえずやってみよう』という
とも、その発想自体が規格外だったか
どのように維持されているかといった
ことになった。ですから最初は、研究
もしれません。通常、レーザーを打ち
物性を調べる研究に携わってきました。
開発のビジョンも到達点もないところ
込めば、タンパク質は変性して壊れて
そもそも今回の異分野連携が始まった
からスタートしたわけです(笑)
」
しまうと考えるのが常識だったからで
す」
のは、電気電子情報工学専攻の森勇介
こうして始まった2人の研究は、タン
教授(現在)との出会いにあります。
パク質や医薬候補化合物である有機低
出会いといっても実は、森先生は高校
分子などの結晶育成が難しい材料の新
時代のクラブ(バスケ部)の先輩であ
しい結晶育成技術を開発する「創晶プ
り、かねてから面識はありました。と
ロジェクト」に発展。フェムト秒レー
はいえ、私はタンパク質の研究者で森
ザーをタンパク質溶液中に照射するこ
「大学等発ベンチャー創出支援制度」
先生はレーザーの研究者ですから、互
とで強制的に結晶を発生させたり、得
(平成14年度)に採択されて本格的に始
いの専門分野についてはほとんど何の
られた結晶を加工したり、これまでの
動、さらには大阪大学発ベンチャーと
知識もありません。普通であれば『相
常識を覆すような画期的な成果を生み
しての「株式会社創晶」の設立へとつ
手の専門分野を知らないことは恥ずか
出すことになる。
ながっていく。代表取締役社長を務め
しいし、失礼だ』と尻込みしかねない
「タンパク質結晶の育成において、溶
ベンチャーの設立へ
創晶プロジェクトは文部科学省の
る安達宏昭さんは、会社設立の経緯を
45
次のように語る。
「私は森先生が在籍していた佐々木孝
友研究室でマスター(修士)を取得後、
いったん民間の日本ガイシ株式会社に
就職しました。サラリーマンを辞めて
2001年に佐々木研究室に大学院生とし
て戻ってからは、森先生の薦めもあり、
タンパク質の結晶育成を手がけること
になります。そこでもっとも大きな転
機となったのは、大学等発ベンチャー
創出支援制度(文部科学省)の公募に
応募したことでした。これを高野先生
が見つけてきて、あまり深く考えもせ
ずに『やりましょうか』ということに
なった(笑)。締切間際ということもあ
り、周囲からは『やめておけ』なんて
いわれながらも2人で申請書を書いて応
募したところ、幸いにも採択されたこ
とが本当の意味でのきっかけです。こ
こから創晶プロジェクトの内部で、タ
ンパク質の結晶化技術からどういうビ
ジネスモデルが考えられるかを議論し
ていきました。また、技術開発の面に
株式会社創晶の安達さん。同社はタンパク質や医薬候補化合物
である有機低分子の結晶化受託を事業の柱としている
おいては2003年からスタートした
NEDO産業技術研究助成が大きな力にな
ったことはいうまでもありません。
もうひとつの契機は、2004年に日本
あだち ひろあき――1996年、大阪大学工学部電気工学科卒。1998年、大阪大学大学院工学研究科電
気工学専攻博士前期課程修了、同年、日本ガイシ株式会社に入社。2003年、大阪大学大学院工学研究
科電気工学専攻博士後期課程修了、博士(工学)。同年、大阪大学大学院工学研究科助手、2005年、
特任助教授を経て2007年より特任准教授。2005年、株式会社創晶の代表取締役社長に就任。
の大手製薬メーカー22社(当時)から
46
なる「蛋白質構造解析コンソーシアム」
との指摘を受けてすべてを白紙撤回し、
て、大学である程度確立されたものを
と共同研究契約を交わすことになった
みなさんに事情を説明して謝罪し、代
創晶に受け渡して、ビジネスとして回
ことです。その際に製薬メーカー側か
表権(代表取締役)を森先生と私の2
してもらう。そういった仕組みがいっ
ら、大学ではなく法人対法人で契約し
名とし代表者を集約しました。それは
たんできてしまえば、体制としてはか
たいとの要望が出されたことで、一気
私の中では非常に大きな出来事で、正
なり確固たるものになるはず、と考え
にベンチャーをつくる気運が加速して
直苦しかったですね。ただ、いま振り
ました。」
いきます。そういう意味では顧客あり
返ってみると、あそこでリセットして
また逆に、現在に至るまで株式会社
きでできた会社ですから、非常に珍し
よかった、リセットしていなかったら
創晶が着実に業績を上げてきた要因に
いケースと言えるかもしれません」
既に会社がつぶれていたかもしれない
ついて、お2人はそれぞれの立場から
当然ながら、会社設立に至るまでは多
と、本当にそう思います。創晶がいま
こう見ている。
くの苦労があったと安達さんは当時を
現在安定して経営できるのは、私や森
「私を代表とする株式会社創晶と、高
振り返る。
先生が代表権を持ち、意志決定を迅速
野先生を代表とする大学の研究チーム
「社長としてもっとも苦労したのは出
にできることが相当に大きいですから」
の利害関係がぶつからないところです
資構成で、かなりの紆余曲折がありま
この点については高野先生も同感のよ
ね。そこがうまく融合したことが大き
した。創晶プロジェクトで研究を続け
うだ。
いと思います。これは別の意味での異
分野連携といえるかもしれません」(安
てきた中でメンバーは等しく貢献して
「研究者たちは敢えてリスクあるもの
います。当初は“一口いくらの出資”
にトライします。対照的に、リスクの
と安易に考えて設立の直前まで行った
ない研究は全然おもしろくありません。
「阪大の、特に工学部のフレキシビリ
のですが、ビジネスパートナーの三菱
しかし会社経営はリスクを最小にしな
ティのあるサポート体制には助けられ
商事さんや、顧問の鈴木寛さんからダ
ければならず、そのギャップをいかに
ました。当時から産学連携やベンチャ
メ出しをいただくことになります。『仲
埋めるかが重要です。大学と株式会社
ー起業、兼業を推奨するスタンスで、
良しベンチャーでは必ず失敗する。“船
創晶は並列であり、技術開発はリスク
特許に関しても積極的に出願する風土
頭多くして船山に登る”ことになる』
は考えずにどんどん大学でやる。そし
がありました。一般的に大学側の縛り
達さん)
創晶プロジェクト、株式会社創晶の沿革
2000年 大阪大学佐々木研究室にてタンパク
質結晶育成の研究開始
2002年 9月文部科学省の平成14年度大学
等発ベンチャー創出支援制度に採
択。「創晶工学プロジェクト」∼工
学からバイオへの挑戦状∼として
始動
2003年 10月「創晶プロジェクト」
(Crystal
Design Project)に改名。結晶が
創生する新時代∼CRYSTAL BIG
BANG∼をキャッチフレーズに選
定。NEDO平成15年度産業技術研
究助成事業に採択
2004年 3月レーザー照射による有機単結晶
の形成方法の特許が成立
4月文部科学省の平成16年度知的
クラスター創成事業に採択
12月蛋白質構造解析コンソーシア
ムと共同研究契約を締結。タンパ
ク質結晶化専用分注ロボット
「TASCAL」を発売
タンパク質の結晶化プロセス
を解説する高野先生
たかの かずふみ――1993年、大阪大学理学部高分子学科卒。 98年、大阪大学大学院理学研究科高分子学専
攻博士課程終了。博士(理学)。2002年、大阪大学大学院工学研究科物質・生命工学専攻助手、2004年、大
阪大学大学院工学研究科物質・生命工学専攻助教授。2005年、株式会社創晶の顧問(技術)に就任。2007年
より現職。
がきつくなると実用化研究においては
が、今後は化学、食品の分野にも市場
身動きが取れなくなることもあるよう
を開拓していくことが最大の使命だと
ですが、阪大には仕事を進めやすい適
考えています。国内においては波及効
した環境があります」(高野先生)
果を広げる一方で、将来的には海外展
開も視野に入れています。また、私の
ベンチャーの未来に向けて
最後に、お2人の今後の取り組みを、
課題も含めてうかがった。
「私は大学が中心ですので、リスクがあ
っても新しい研究を推進していく。誰
思いとしては、ベンチャー=ハイリス
クという定説を打ち破り、いかに会社
を継続させていくかも重要な課題です。
あとに続く人たちへの責任を果たす意
味でも、株式会社創晶をさらに発展さ
2005年 3月温度スクリーニング装置
「TAON」
を発売
4月第5回バイオビジネスコンペ
JAPANの最優秀賞を受賞
7月株式会社創晶を設立。本社を大
阪府茨木市彩都、実験棟を大阪大
学吹田キャンパス内に設置。研究
開発に関して大阪大学と共同研究
契約を締結。業務支援に関して三
菱商事株式会社と業務委託契約を
締結
10月〈池銀〉地域起こし優秀賞を
受賞。JSTの平成17年度戦略的創
造研究推進事業のチーム型研究
(CREST)に採択
2006年 3月本社を大阪市中央区に移転
4月2006年(第16回)「日経BP技術
賞」大賞を受賞
5月第三者割当増資を実施
6月第4回産学官連携功労者表彰
「科学技術政策担当大臣賞」を受賞
7月 第20回独創性を拓く先端技術
大賞 特別賞を受賞
10月第1回モノづくり連携大賞特別
賞を受賞
11月 2液法による結晶育成法の特
許が成立
せていく所存です」(安達さん)
もやっていない、誰も思いつかないよ
安達さんがいうように、ベンチャー
うなことに着手して、その中からひと
のイメージは決して芳しいものばかり
つでも足がかりを見つけ、株式会社創
ではない。
晶を受け皿にして実用化を模索してい
曰く(繰り返しになるが)ベンチャ
く。もうひとつは元来からやっていた
ー=ハイリスクといった按配である。
タンパク質の物性の研究も、どちらか
しかしもちろん、大手企業に比べてス
というと理学的な観点から地道に続け
ピーディできめの細かい対応が可能で
ていきたいと思っています」(高野先生)
あるといった、ベンチャーならではの
「株式会社創晶としては、いまある技
優位性も数多い。ベンチャーとしての
術を水平展開していろいろなところで
大いなる可能性を秘めた株式会社創晶
使っていただく。現在は製薬メーカー
の取り組みに、今後も注目していきた
を中心に使っていただいているのです
い。
2007年 3月タンパク質X線結晶構造解析に
関してファルマ・アクセス株式会
社と業務提携
10月第5回日本バイオベンチャー
大賞「大阪科学機器協会賞」を受賞
レーザーによる結晶核の製造方法
および結晶化条件スクリーニング
方法の特許が成立
2008年 1月粘着式タンパク質マウントツー
ル「Crystal Catcher」を発売
4月タンパク質生産サービスに関し
て、片倉工業株式会社と業務提携。
平成20年度科学技術分野の文部科
学大臣表彰「科学技術賞(研究部
門)」を受賞
47
みが
実用化を研く―― 02
柔軟な発想で、
「自分らしい」研究を
発展させることが
実用化への第一歩
群馬大学大学院工学研究科 応用化学・生物化学専攻
上原 宏樹
准教授
(NEDO産業技術研究助成)
◆ペレタイズ・レス技術を用いた高分子重合パウダーからの直接成
形法の開発(平成12∼14年度)
◆高分子材料のテーラー・メード成形加工を目指したシンクロトロ
ン放射光回折及び多核磁気共鳴/イメージングによるインプロセ
ス計測技術の開発(平成16∼21年度)
大学・大学院時代は理学部に籍を置き、主に高分子の結晶構造を調べていた上原先生は、工学部に移ったことを契機に「基礎
研究を元にして産業利用をめざすべきではないか」と思い至る。連携先の企業も皆無の状態でスタートした上原先生の研究は
徐々に結実し、現在では確かに産業界へと広がっている。自らの手でシーズを創出して掘り下げ、企業のニーズを的確に捉え
ていく上原先生の手法と発言は、多くの示唆に満ちている。
研究の背景 ―― 高分子らしさに注目
「着任後、偶然、大学時代の後輩が社
のテーラー・メード成形加工を目指し
会人ドクターで入学してくれました。
及び多
彼と研究以外の話もするうちに、大学
原先生が代表者として取り組んできた
核磁気共鳴/イメージングによるイン
と企業のスタンスや価値観の違いにつ
研究は2つある。そのひとつが「ペレタ
プロセス計測技術の開発」(平成16∼
いて認識することができました。教育
イズ・レス技術を用いた高分子重合パ
21年度)へと発展していきました。特
と研究をリンクさせるためにはどうし
ウダーからの直接成形法の開発」(平成
に、当該研究の核磁気共鳴計測の高度
たらよいのか、産業界に貢献できる人
12∼14年度)だ。
化については山延健先生の協力なしに
材を輩出するために何ができるのか、
「簡単にいうと、高分子材料をペレッ
は達成し得なかった技術です。1人の
さまざまなヒントが得られたような気
ト化(ペレタイズ)せず、重合パウダ
研究者ができることは限られています。
がします。また、タイミング的には理
ーの特性を活かして高強度・高弾性率
共通の研究対象・興味に対して、異な
学部から工学部に移ったことで、より
のフィルムを得る研究です(重合とは、
る手法(上原:放射光回折、山延:核
世の中の役に立つ研究をしたいと思う
分子化合物が2つ以上結合して分子量の
磁気共鳴)でアプローチできる研究室
ようになっていました。たんぱく質や
大きな別の化合物を生成する現象、ま
であったことは教育面だけでなく産業
DNAは自然が作った分子ですので結晶
たはその反応をいう)。この研究を進め
応用の面からも非常に幸運でした」
構造を調べること自体に意味がありま
NEDO産業技術研究助成において、上
48
もうひとつの研究である「高分子材料
たシンクロトロン放射光回折
※1
ていく中で、所望のフィルムを得るた
上原先生は東京理科大学理学部の出
すが、合成ポリマーは人間が作った人
めにはポリマーの構造や物性を成形加
身で、大学・大学院時代は主に高分子
工物ですので実際に使えるかどうかが
工過程でダイレクトに見ていく必要が
の結晶構造などを調べていたという。
非常に重要です。それで、今までやっ
あると痛感するようになります。そこ
そして、あいだにアメリカ留学を挟み、
てきた基礎研究を産業利用にも繋げら
で、成形加工過程のポリマーの性状変
1997年に助手として群馬大学工学部に
れないかと考えるようになりました」
化をリアルタイムで見ることを目的に、
着任する。
とはいえ、およそ10年前のことであ
実用的インプロセス計測システム
「いろいろな方の協力で実現した」
インプロセスNMR計測システム
上原准教授(中央)
、山延教授(左隣)と山延研究
室の学生。
「学生と一緒に楽しく研究している」
X線計測データをリアルタイムで追跡。
重合パウダーからの直接成形用に開発した真空プレス装置 「現在、結晶化度・配向度などを自動解析するソフトを設計中」
り、現実的には連携すべき企業とのパ
して異方性を発現させるだけでなく、
ートルオーダーの規則構造を創出する
イプは無きに等しい状況だ。自分自身
絡み合い自体を積極的に利用する成形
技術にも取り組んでいます。この研究
の手でシーズを創出すべく上原先生は、
加工が創出できないか、『高分子らしさ』
の過程で協力して下さった多くの連携
それまで取り組んできた高分子の中で
を最大限に引き出して産業に使える方
企業の方々に深く感謝しています」
もあえて最も単純な“ポリエチレン”
法論が見いだせないかと考えたわけで
※1
を研究対象に選ぶ。
す。対象にはポリエチレンを選びまし
「高分子には分子同士が絡み合ってい
た。単純な構造のものの方が『高分子
るという性質があります。この性質を
らしさ』がより顕著に発揮されると考
うまく利用した成形加工ができないか
えたからです」
円形の加速器により粒子を加速させることで放射
光を発生し、これを材料に当て、回折光を測定す
ることで材料の分子構造を測定する技術。
「開発ニーズ抽出の方法論」と
「事業化・実用化に向けたポイント」
その端緒となったのが前出の「ペレ
上原先生の研究はその後、目覚まし
が鎖状であるために異方性(物質の物
タイズ・レス技術を用いた高分子重合
い成果を次々と生み出していく(次表
理的性質が方向によって異なること)
パウダーからの直接成形法の開発」だ。
参照)。それらは新規の製造技術はもと
も有しています。強度でいえば、ある
「高分子重合パウダーはもともと絡み合
より、既存の製造工程の最適化や品質
一方向への引っ張りには強さを発揮し
いが少ないので、異方性を引き出しや
管理を可能にする装置開発まで多岐に
ても、別の方向(それと直角な方向)
すい。当初は絡み合いがないものを重
わたっている。上原先生はまた、研究
には弱くなります。ポリエチレン製の
合によって調製していくスタンスでし
開発の進展にともない、さまざまな企
荷造り紐が良い例です。また分子鎖を
たが、やがて最初から絡み合っている
業と積極的に連携を推し進めていった。
引き伸ばすためには絡み合いをほぐさ
ものでも引き伸ばして高性能化する技
今日に至る豊富な経験を踏まえた上で、
なければなりません。分子が短ければ
術へと発展していきました。この点は
上原先生は「開発ニーズ抽出の方法論」
絡み合いませんが、それでは物性も上
産業界のニーズとも合致していました。
として以下の5点を掲げている。それぞ
がってきません。絡み合いを解きほぐ
最近では、絡み合いを利用してナノメ
れについて簡潔に説明していただいた。
と考えました。高分子は、分子の形態
49
本研究で開発した応力検知可能なニ軸延伸装置。インプロセスX線計測に
も対応。(写真左)超高分子量ポリエチレンの溶融ニ軸延伸膜。縦横に書
いたマス目が均等に延伸されている。試料フィルムの固定はエアーチャ
ック・システムを採用。
(写真上)
うえはら ひろき―
―1992年、東京理科大学理学部化学科卒
業。97年、東京理科大学大学院理学研究科化学専攻博士課程
修了。博士(理学)。95年、米国マサチューセッツ大学博士
研究員。97年、群馬大学工学部助手。2007年より現職。
99年、高分子学会研究奨励賞受賞。
1 研究シーズの掘り下げ
「自分らしい」研究を発展させる
3 産業側への提案
柔軟な発想でアプローチ
5 開発ニーズとのマッチング
提案作成を共同で行う
「開発ニーズをつねに把握しておくこと
「自分の持っている研究シーズは大切で
「充分に意思疎通が図れれば、研究提案
はもちろん重要です。しかし、開発ニ
すが、ある一面だけにこだわっては
の作成自体が共同作業になります。そ
ーズに敏感すぎるあまり、振り回され
『共同』研究にはなりません。柔軟な発
うすることで、必然的に大学の持って
てしまっては本末転倒です。企業と共
想でとらえることで、多様性が生まれ
いる研究シーズと企業の求める開発ニ
同研究をする場合でも、自分の持って
てきます。学会発表などにも発展的な
ーズを組み合わせることができます。
いる研究シーズを大切にすべきです。
アイデアを盛り込むように意識してい
共同研究の場合には、お互いの立場に
そのためには、普遍的なコンセプト・
ます。また、民間企業による「課題設
配慮した内容にできるかが連携を進め
問題意識の上に立脚した研究の柱が必
定型の共同研究公募」にも積極的に申
る上で非常に重要です」
要になります」
し込んでいます」
2 研究シーズを「役立てる」アイデア
提案(企画書)のつくり込み
4 契約前に予備期間を設定
お互いの実行力・本気度を確認
さらに上原先生は「事業化・実用化
に向けたポイント」として下記の3点を
挙げている。
1 研究シーズの具体化(大学側が行う)
50
「企業に限らず、他の研究者と共同で研
「企業と共同研究する際には、技術相談
究を進める際には、説得力のある企画
を受けたり予備実験を進めたりする期
が発信できるかがポイントになります。
間(おおむね半年程度)を設けてから、
「研究シーズを産業応用に繋げるための
私の場合はこの過程でアイデアがまと
契約手続きをするようにしています。
装置・システム開発、試料調製などは
まってくることが多いです。大学にお
お互いにデータや意見を持ち寄るなか
大学側が担当します。この過程自体は
ける教育と同様、企業においては人材
で、研究シーズと開発ニーズをより深
特に論文や特許等に繋がるものでなく
育成も重要です。研究提案であっても、
く理解することができるほか、広範な
ても学生と一緒に研究を進めていくこ
企業側での人材育成効果の観点にも配
アイデアを共有することで別テーマへ
とで人材育成(教育)の効果が充分得
慮した内容であることが望まれます」
の展開など副次的な効果を得られるこ
られます。したがって、大学での研究
ともあります」
であっても、必ずしも「論文や特許等
論文、特許等の文書的成果にこだわらない
の」文書的成果にはこだわることはな
り、自然と一体感が醸成されて楽しく
事業化後の発展を見守る姿勢になるこ
いと思っています」
研究ができます。そのために、大学・
とが重要です。双方が努力した結果と
2 開発への強い意志(企業側が持つ)
企業のどちらが欠けても実用化・事業
しての共同研究の満了は、実用化に向
化は実現できないとの認識を共有でき
けスタートが切られたということであ
るように努力しています」
り、その成果が事業化されなかった場
実用化するための目標を明確化
「連携企業には目指すべきレベルを具体
これら3つのポイントは、最終的に大
的に数値化していただいています。ス
学・企業双方の「立場の違い」を理解
ケジュールにも日付を入れ、期限を明
することに繋がると上原先生は言う。
合でも次の開発研究、新しいチャレン
ジに発展する契機になると思います」
このほか上原先生には、NEDO産業技
確にします。設定した目標を大学側が
「学生の教育、学会発表、論文の執筆
術研究助成の効果的な進め方、産業技
クリアーしたならば、必ず事業化につ
などをミッションとする大学と、商品
術研究や大学における人材の育成、さ
なげるという強い意思と的確な見通し
の製造、利潤追求、社会貢献などをミ
らには産学連携に向けた大学組織、競
が企業側にも求められます」
ッションとする企業とでは、利害が一
争的資金のあり方などについて、興味
3 人的なつながり(連携)
致しない部分もあります。特に、共同
深いお話をうかがうことができた。研
研究が成功してある段階に達するとこ
究開発の成果を着実に実らせていくだ
の違いが顕在化してくることになりま
けでなく、次世代に向けた体制づくり
「『 双 方 』 に と っ て よ り 良 い 選 択 肢 を
す。したがって、事業化の一歩手前に
にも尽力するその姿勢からは、ご本人
『双方』が考えるようにできれば、お互
お互いに補い合っている共通認識
なると大学側には主に技術的な後方支
はたぶん恐縮されるかもしれないが、
いの長所を組み合わせるだけでなく、
援や顧客対応へのサポートが求められ
まさに“プロフェッショナルな研究者”
短所も補い合うことができます。何よ
るようになります。それにあわせて、
という印象を受けた。
研究プロジェクトの成果(一部)
高強度ポリエチレンフィルムの
連続成形
高分子パウダーを原料に製品をつくる
際に行われるペレット化の工程(ペレタイ
ズ)をスキップし、高強度のポリエチレン
等の樹脂フィルムを直接成形する方法を
開発。
【波及効果】
● 総合化学メーカーA社から特許買い取
りの申し出あり
● 自動車部品メーカーB社が内装材とし
ての適用を検討
● 素材メーカーC社でパイロット・プラ
ントを建設中
シンクロトロン放射光による
計測システム
溶融状態から結晶化に至るプロセスで
起こっている特異な変化を調べるため、
シンクロトロン放射光を利用した計測シ
ステムを独自に開発。高時間分解能で、
延伸などの成形加工の過程でもインプロ
セス対応できる。
メタロセン系ポリエチレンの差別化
シンクロトロン放射光による計測シス
テムを使うことで、チーグラー系触媒で
合成された従来型ポリエチレンと、メタ
ロセン系触媒で合成された分子量分布が
狭い新型ポリエチレンの差別化が可能
に。
【波及効果】
● A社が2件の特許出願
(現在、審査請求中)
NMR解析による結晶性評価
NMR(核磁気共鳴)を用いた結晶性評
価法を確立。数分の測定時間でポリエチ
レンの結晶化度および密度が算出可能
に。
【波及効果】
● A社にてポリエチレン重合パウダーの
製造管理に適用
テーラー・メード成形加工
従来、トライ&エラーで行なっていた
超強力ポリエチレンフィルムおよび繊維
の成形加工を、最適化条件を予測するこ
とによりテーラー・メードで可能に。
【波及効果】
●(株)
シマノの超強力ポリエチレン釣り
糸
「DURA AR-C」
として上市
(平成18年)。
PTFEの溶融延伸による高強度化
溶融延伸技術によって溶融粘度が高く成
形加工しにくいPTFE(ポリテトラフルオ
ロエチレン)の高強度フィルムの成形に成
功。同時に、ETFE(エチレンテトラフロ
ロエチレン共重合体)フィルムの二軸延伸
と高性能化にも取り組んでいる。
【波及効果】
● 総合化学メーカーD社と共同研究を推進中
実用的インプロセスX線計測システムおよ
びインプロセスNMR計測システムの開発
ラボ実験設備での加工評価を可能にす
るインプロセスX線計測システムを開発。
さらに、延伸過程でも測定できるインプ
ロセスNMR計測システムも開発。
【波及効果】
● 装置メーカーE社と装置開発で連携
● 商社F社から装置販売予定
ポリエチレンおよび
PTFEの溶融二軸延伸
応力を検知できる二軸延伸装置(縦・
横2方向への延伸技術)を開発し、溶融
延伸技術との組み合わせによりポリエチ
レンおよびPTFEの重合パウダーから高性
能フィルムを成形することが可能に。規
則的に配列したナノメートルオーダーの
微細孔を有する膜材料の調整も可能であ
るため燃料電池膜、リチウムイオン電池
セパレーター、細胞の増殖基材や体内埋
め込み型のグルコースセンサー(糖尿病
患者の血糖値をモニターする)などへの
応用が期待される。
「ナノ空間」プロジェクト
群馬大学では現在、分野横断型の「ナ
ノ空間」プロジェクトを推進中。山延研究
室(山延教授、上原准教授)が担当する有
機材料分野のほか、無機材料分野(白石
壮志准教授)
、生体材料分野(桑原正靖助
教)の3つのNEDO産業技術研究助成課題
が連携して、ナノ空間における分子制御
と機能計測に関する学際共同研究をスタ
ートさせている。将来的には産業応用先
として、バイオ関連(医療材料)
、光・電
子関連(デバイス)
、生体分析関連(プロ
ーブ)を想定し、研究を進めていく予定。
51
競争的資金制度および提案公募型事業一覧表
●
NEDO
(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構
担当部署・機関
1
事業名
産業技術研究助成事業(若手研究グラント)
概 要
1件当たりの助成・委託規模
●募 集区分A、B(ライフサイエンス分
野、情報通信分野、ナノテクノロジー・
材料分野、製造技術分野、環境エネ
ルギー分野):
産業技術力強化の観点から、産業界のニーズや社会 (1) 5,000万円/4年
のニーズに応える産業技術シーズ発掘・育成や産業 (2) 3,000万円/2年
:5,000
技術人材の育成を図るため、技術領域・課題を提示 ●募集区分C(革新的融合分野)
万円/4年(1〜2年目:3,000万円)
した上で、大学、独立行政法人等の若手研究者から
研究開発テーマを募集し厳正な外部評価により独創 ●募集区分D(産業技術に関する社会科
学分野):1,000万円/2年
的かつ革新的なテーマを厳選し、助成金を交付する。
●募 集 区 分E( イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル 分
野 ):5,000万 円/4年(1〜2年 目:
3,000万円)
(定額助成)
資金提供事業者(民間企業等)が提供す
る金額の2倍を限度として助成
研究開発事業(「R&D」):1億円程度ま
で/年*
(2/3以内助成)※新規提案時の下限は年
間1,000万円とする。
研究開発期間
対象者等
直近の公募受付期間
4年又は2年
原則40歳未満の者で、大
学・ 大 学 共 同 利 用 機 関・
短大・高専・国立研究所・
独立行政法人・公設試験
研究機関・特殊法人(非株
式会社)・財団法人・社団
法人に勤務する研究者。
た だ し、D区 分 で は、 財
団法人、社団法人に勤務
する研究者を除く。
H20年
7月2日〜
8月29日
①「F/S」:
3ヶ月以内
②「R&D」:
3年度以内
企業(団体等を含む)
、大
学、独立行政法人等、技
術移転機関(TLO)
H20年
4月30日〜
6月30日
2
大学発事業創出実用化
研究開発事業
大学等における研究成果の技術移転による事業化を
促し、新たな産業や雇用を創出することを目的とし
ています。企業側が研究資金を拠出し大学等と連携
して行う研究開発について、技術移転を扱う組織に
対して助成金を交付する。
3
産業技術実用化開発
助成事業
研究開発型ベンチャー
技術開発助成事業
次世代戦略技術実用化
開発助成事業
民間企業における実用化開発を支援するため、新市
場の開拓を可能とする技術開発の成果を実用化して 1億円程度まで/年*
イノベーションにつなげ、社会に普及することを目 (1/2~2/3以内助成)
的として助成金を交付する。
2年
※次 世代戦略技
術 枠 は、 必 要
なものについ
ては1年延長す
る場合がある
民間企業
研究機関、大学等
H20年
4月1日~
5月28日
エコイノベーション
推進事業
エコイノベーションの創出に資する研究開発に向け
た課題解決方法、事業化可能性、市場ニーズ等に関
する調査研究(フィージビリティ・スタディ)を実施
500万円程度/年*
します。具体的には、環境重視・人間重視の技術革
(委託)
新・社会革新(エコイノベーション)の創出に資する
研究テーマ、革新的な温暖化対策につながる技術
シーズ等を対象として公募する。
3ヶ月程度
企業(団体等を含む)
、大
学、独立行政法人等
H20年
5月7日〜
6月6日
F/S:
1年以内
R&D:
1年間程度
ベンチャー企業・中小企
業等(原則として、中小企
業基本法に定める中小企
業者)
H20年
8月6日〜
9月5日
研究開発
推進部
イノベーション推進事業
4
5
SBIR技術革新事業
ベンチャー企業及び中小企業の技術開発力を活用し
新規市場の創出につなげ、我が国のイノベーション
F/S:1,000万円程度まで/年*
に資することを目的として、公的機関のニーズ等を
R&D:5,000万円程度まで/年*
踏まえ国が設定した技術開発課題について、事前調
(委託)
査(F/S)及び研究開発(R&D)を実施する。
※SBIRとはSmall Business lnnovation Researchの略
6
知的基盤研究開発事業
知的基盤整備を行うべき分野について研究テーマを
公募し、採択テーマを決定し、当該研究テーマを提 数百万〜数千万円/年*
案した民間企業等との間で委託契約を締結して、研 (委託)
究開発を行う。
3年以内
民間企業、大学、独立行
政法人等
H20年
2月27日 〜
3月27日
7
産業技術フェローシップ事業
技術シーズを迅速に実用化・事業化につなげていく
ことのできる優れた資質を有する産学連携人材の養
成を図ることを目的として、産業技術養成技術者を
雇用して、養成事業を実施する。
原則3年以内
実用化支援業務に従事す
る博士号取得者、修士号
取得者及び相当する実務
経験者
H20年
4月17日〜
5月16日
フェロー1人当たり数百万円/年*
8
企画
調整部
提案公募型開発支援研究協力事業
途上地域の技術開発を支援するため、日本法人と途
7,000万円以内/年*
上地域の企業・政府機関・大学等との共同研究プロ
(定額助成)
ジェクトに対し助成金を交付している。
2年以内
民間企業、大学、独立行
政法人等
H20年
4月18日~
5月19日
9
機械
システム
技術開発部
福祉用具実用化開発推進事業
福祉用具の実用化開発を行って、高齢者、心身障害
3,000万円以内/3年*
者等の自立や社会参画、介護者の負担の軽減を図る
(2/3以内助成)
ことを目的に助成金を交付する。
3年以内
民間企業等
H20年
1月25日 〜
2月4日
エネルギー使用合理化技術戦略的開発
省エネルギー分野の技術開発テーマを公募し、その
選定及び研究管理を効率的・効果的かつ柔軟に進め
ながら、基礎研究から実用化・実証研究までを一体
的に行うことで、開発技術の市場導入促進を図る。
先導研究フェーズ:
数千万〜1億円程度/年*(100%委託)
実用化開発フェーズ:
数千万〜2億円程度/年*(2/3NEDO負担)
実証研究フェーズ:
数千万〜2.5億円程度/年*(1/2NEDO負担)
事前調査:1,000万円未満/年*
2年又は3年
※事前調査は
除く
民間企業、大学、独立行
政法人等
ナノテク・先端部材実用化研究開発
本研究開発は、川上と川下の垂直連携、異業種・異
分野の連携で行うデバイス化開発について、ステー
ジゲート方式によって絞り込みを行うことを前提
に、ステージⅠは委託、ステージⅡは助成する。な
お、本研究開発は、ステージⅡ終了後3〜5年で実
用化につながるレベルであることとする。
ステージⅠ:
3,000万〜7,000万円程度/年*(委託)
ステージⅡ:
2億円程度/年*(2/3助成)
2〜3年以内
複数で委託事業(ステージ (下期)
Ⅰ )ま た は 助 成 事 業( ス H20年
テ ー ジ Ⅱ )を 希 望 す る 企 7月25日 〜
業、独立行政法人、大学 H20年
9月8日
等の研究機関
バイオマスエネルギー転換要素技術開発
バイオマスエネルギーの利用技術の分野で2015年
頃の実用化と循環型社会の実現を目指す。
バイオマスエネルギー先導技術研究開発
従来技術に比べ、新規で画期的に優れた日本独自の
バイオマスエネルギー技術等の種を発掘、支援する
先導的基礎技術の研究開発をNEDO技術開発機構か
らの委託事業として実施する。
省エネルギー
10 技術開発部
11
ナノテクノロ
ジー・材料技
術開発部
12
新エネルギー
技術開発部
13
(1/2〜2/3助成)
8,000万円/年まで(助成率により総事
H20年度
業費は異なる)
※企業が単独で行う場合は1/2をNEDO 〜H22年度
が負担
(最大3年間)
※企 業が大学、公的研究機関と連携し
て行う場合は2/3をNEDOが負担
①中長期的先導技術:2,000万円以下
②加速的先導技術:数千万円〜数億円
①は2年間
②は3年間
企業(団体等を含む)
、大
学・独立行政法人等(国立
大学法人含む)
H20年
6月17日〜
7月16日
企業(団体等を含む)
、大
学・独立行政法人等(国立
大学法人含む)
H20年
4月24日〜
5月26日
(注1)「1件あたりの助成・委託規模」は原則、直接経費で表しているが、直接経費と間接経費の配分が分からないものについては*印を付記している。
(注2)本一覧表は2008年7月現在で直近1年間での省庁およびNEDO・JSTでの公募案件について公開HP情報をベースに㈱アイワードにて取りまとめたもの。最新の情報はNEDO若手研究グラントHPを参照。
52
(第2次)
H20年
8月18日
9月16日
●
経済産業省
担当部署・機関
14
事業名
概 要
(独)石油天然
16 ガス・金属鉱
物資源機構
( 財 )エ ネ ル
17 ギー総合工学
研究所
●
対象者等
直近の公募受付期間
地域イノベーション創出研究開発事業
①一般枠:
(研究期間1年)約7,692万円以内/年
地域において新産業・新事業を創出し、地域経済の活性化を図る
(研究期間2年)初年度目:約7,692万
ため、産学官の研究開発資源の最適な組み合わせからなる研究体
円以内、2年度目:約3,846万円以内
を組織し、最先端の技術シーズをもとに新製品開発を目指す実用
②農商工連携枠:
化技術の研究開発を実施する。
初年度目:約7,692万円以内、2年度目:
約3,846万円以内
①は1年以内と
2年以内
②は2年以内
地域資源活用型研究開発事業
地域において新産業・新事業を創出し、地域経済の活性化を図る
ため、地域における産学官の強固な共同研究体を組織して行う、 初年度目:約2,308万円以内
地域に存在する資源(地域資源)を活用した、新製品の開発を目指 2年度目:約1,538万円以内
す実用化技術の研究開発を実施する。
2年以内
地 域 の 試 験 研 究 機 関( 大
学、公的研究機関等)と民
間企業等が共同研究体を
構成すること。
H20年
4月1日 〜
4月22日
石油・天然ガス開発・利用促進型 大型研究提案公募事業
我が国企業等による天然ガス田開発を促進するため天然ガス供給
チェーン全体からみた技術課題、又は石油・天然ガスの探鉱開発
に関する技術課題のうち、基礎〜応用段階における独創的・革新
的な技術課題につき、研究開発を公募により実施する。
1年〜2年度以内
日本国内に在住する、個
人または法人
H20年
6月16日 〜
7月15日
革新的実用原子力技術開発費補助事業
原子力の基盤技術分野強化プログラム
我が国の原子力発電及び核燃料サイクルの安全性、経済性の一層
の向上に資する革新性の高い実用原子力技術開発を促進するため、
2,000万円以内/年/件*
経済産業省では革新的実用原子力技術に関する研究開発提案を公
募し、そのうち優れた提案に対して補助を行う。
原則として
3年以内
日本の大学、高等専門学
校に所属する研究者
H20年
6月30日 〜
7月30日
1億円以内/年/件*
総務省
担当部署・機関
事業名
概 要
18
ICTイノベーション
創出型研究開発
イノベーションを創出する独創性や新規性に富む基
礎的・萌芽的な研究開発課題の提案に対して研究資
金を支援する。
①新世代ネットワーク技術 ②ICT安心・安全技術
③ユニバーサル・コミュニケーション技術
19
ICTイノベーション
促進型研究開発
イノベーションの結実を促進する開発・実証フェー
ズにある研究開発課題の提案に対して研究資金を支
援する。
①新世代ネットワーク技術 ②ICT安心・安全技術
③ユニバーサル・コミュニケーション技術
20 情報通信国際
戦略局
23
(独)情報通信
24 研究機構
2,000万円/年
5,000万円/年
研究開発期間
対象者等
直近の公募受付期間
最長3年間
日本国内に設置された大
学、民間企業、独立行政
法人、国又は地方自治体
等の研究機関に所属する
研究者
H19年
10月1日 〜
10月31日
最長3年間
日本国内に設置された大
学、民間企業、独立行政
法人、国又は地方自治体
等の研究機関に所属する
研究者
H19年
10月1日 〜
10月31日
H19年
10月1日 〜
10月31日
若手ICT研究者育成型
研究開発
次世代を担う若手人材を育成するために、若手研究
者(個人またはグループ)が提案する研究開発課題に
対して研究資金を支援する。
●提案区分A:500万円〜1,000万円/年
●提案区分B:500万円以下/年
最長3年間
地域ICT振興型研究開発
ICTの利活用により、地域固有の社会的・経済的課
題を解決し、地場産業の振興や創出、地域住民の生
活向上など地域社会・経済活動を活性化するために
提案する研究開発課題に対して研究資金を支援す
る。
1,000万円/年
最長2年間
日本国内に設置された大
学、民間企業、独立行政
法人、国又は地方自治体
等の研究機関に所属する
研究者
H19年
10月1日 〜
10月31日
国際競争力強化型研究開発
日本発の優れたICTを世界に普及させるため、例え
ばICT分野の研究開発により得られた成果を国際標
準に反映するなど、世界市場への展開を視野に入れ
て戦略的に研究開発を実施することが必要です。本 3,000万円/年*
プログラムでは、研究成果が国際標準になるなど、
将来的に世界市場の開拓が見込まれる研究開発を支
援する。
最長3年間
日本国内に設置された大
学、民間企業、独立行政
法人、国又は地方自治体
等の研究機関に所属する
研究者
H19年
10月1日 〜
10月31日
消防防災科学技術研究推進制度
安心・安全に暮らせる社会の実現を目指し、消防防
災科学技術の振興を図るため、消火・救急活動に関
する科学技術の高度化、災害対応策への情報化の促
進、環境保全の推進などについて、総合的に消防防
災科学技術に係る研究を促進する。
1年間、2年間、
3年間のいずれか
産 学 官 の 研 究 開 発 機 関、
調査機関、学協会、NGO
等の機関、団体又は研究
者個人、もしくはこれら
機関等で構成されるグ
ループ
H19年
12 月 3 日
〜 H20 年
1月31日
先進技術型研究開発助成金
情報通信分野の新規事業の創出に資する先進的な技
術の研究開発を行うベンチャー企業等に対し、研究
開発経費の一部を助成する。
申請する年度を
含み3年以内
ベンチャー企業
※産学連携枠
H20年
6月5日 〜
6月26日
戦略的情報通信研究開発
推進制度(SCOPE)
22
消防庁
消防技術
政策室
1件当たりの助成・委託規模
日本国内に設置された大
学、民間企業、独立行政
法人、国又は地方自治体
等の研究機関に所属する
研究者
(1)35歳以下の研究者
(2)40歳以下の研究者で
あ っ て、 出 産・ 育 児・ 社
会人経験等、研究に従事
していない期間について
研究提案書に記述し申請
する場合
(3)40歳以下の研究者で
あって、過去5年以内に博
士号を取得した研究者
21
●
研究開発期間
地域の大学・公的研究機
関と民間企業等が研究開
発共同体を構成すること。
H20年
提案は管理法人が行うこ
4月1日 〜
と。②については農林水
4月22日
産業を対象とする研究機
関又は民間企業等を含む
研究体であること。
全国の
経済産業局
15
1件当たりの助成・委託規模
●A区分:100万円〜400万円/年
●B区分:400万円〜2,000万円/年
●一般枠:3,000万円以内/年
●産学連携枠:4,000万円以内/年
●重点技術分野枠:4,000万円以内/年
(いずれも1/2助成)
内閣府
担当部署・機関
食品安全
25 委員会
(財)沖縄県
26 産業振興公社
事業名
食品健康影響評価技術研究
沖縄イノベーション創出事業
概 要
科学を基本とする食品健康影響評価の推進のため、研究領域を設
定し公募を行い、リスク評価に関するガイドライン・評価基準の
策定等に資する研究として実施する。
IT、農業、環境、健康食品等の分野において、沖縄が有する資源
や特性等を活用した産学官連携による、新事業創出及び地場産業
振興等に資する共同研究開発の支援(提案公募方式)に取組む。
1件当たりの助成・委託規模
最高4,000万円程度/年*
①顕在化ステージ:
1,000万円以内/年*
②事業化ステージ:
5,000万円以内/年*
※②はマッチングファンド形式採用
研究開発期間
対象者等
直近の公募受付期間
原則3年以内
(1)国以外の研究機関(大
学、試験研究機関等をい
う。以下同じ)に所属する
研究者 (2)国の研究機関
に所属し、研究委託費の
管理及び経理を所属機関
の長に委任することがで
きる研究者
H19年
12月26日
〜 H20 年
2月8日
①は1年以内
②は3年以内
沖縄県内に本社を有する
民間企業が必ず1社以上参
画すること。
民間企業の視点で事業化
に繋がる可能性のあると
思われる研究成果を有す
る大学・公設試・民間研
究機関等が1つ以上参画し
ていること。
管理法人(民間企業又は公
益法人)を設定すること。
H20年
2月12日 〜
3月14日
53
競争的資金制度および提案公募型事業一覧表
●
厚生労働省
担当部署・機関
事業名
27
(1)
政策科学総
合研究事業
行政政策
研究事業
28
概 要
1件当たりの助成・委託規模
1〜3年
イ.
統計情報総
合研究事業
以下の研究について公募する。
①保健、医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に
係る統計調査の調査手法や精度向上に関する研究
②統計分野における情報通信技術を利用した高度処
【一般公募型・若手育成型】
理システムの開発に関する研究
200万〜500万円程度/年
③蓄積された統計データの高度分析に関する研究
④統計データの効果的な情報発信に関する研究等を
実施し、政策決定及び評価の過程における統計
データの一層の活用
1〜2年程度
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
2年程度
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
社会保障分野での国際協力をより重点的・戦略的に
推進していくために、特に国際機関へのメジャード
【一般公募型】
ナーとしての視点、二国間援助の実施主体としての
400万〜600万円程度/年
視点、経済・科学技術・社会保障制度先進国として
の視点に基づいた研究を推進する。
30
(1)
再生医療実用化研究事業
(仮称)
新たな再生医療技術の開発について、疾患への応用
を見据えた研究開発の実施、安全・品質に配慮した
技術開発の推進を図る。
特に臨床応用により近い段階にある研究に対して、
支援の重点化を図る。
先端的
基盤開発
研究事業
33
官房厚生
科学課研究
助成係
厚生労働
科学研究費
補助金
【一般公募型】
3,000万〜5,000万円程度/年
【若手育成型】
500万円程度(上限)/年
【一般公募型】
3年
【若手育成型】
2年(中間評価に
よる途中終了あ
り)
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
①ヒトゲノム分野で明らかになった疾患関連遺伝子
やその機能、ファーマコゲノミクス分野で明らか
になった医薬品の反応性に関与する遺伝子、その
他ゲノム関連の様々な知見を総合的にとらえ、バ
イオインフォマティクス技術を駆使して、がん、
認知症、生活習慣病、その他日本人に代表的な疾 【一般公募型】
患について個人の遺伝子レベルにおける差異を踏 ①3,000万〜5,000万円程度/年
まえた診断、治療法の実用化に向けた研究を通じ、 ②2億円程度/年
個別化医療の実現を目指す。(ただし、肝炎に関
する研究は除く。)
②新たにがん関連ゲノムのアトラス作成のための国
際的な共同研究を支援するプロジェクトを推進す
る。
1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
創薬バイオ
マーカー
探索研究
(仮称)
トランスクリプトーム分野では、旧トキシコゲノミ
クス研究にて構築した動物におけるトキシコゲノミ
クス・データベースの活用を促進する研究とともに、
ヒトへの安全性評価の外挿性の向上や、肝・腎毒性
以外のターゲットへの拡大等の研究など、創薬を効
率的に実施することを可能とする包括的なトランス
クリプトーム解析を実施する。
たんぱく分野では、疾患関連たんぱく質を検索し、
質量分析装置を利用した配列同定研究に加え、タン
パク構造解析、画像情報研究を組合せ、創薬ターゲッ
トに活用できるバイオマーカー・タンパク質の探索、
機能解析及び臨床研究を推進する。
1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
生 物 資 源・
創薬モデル
動物研究
(仮称)
生物資源(培養細胞、ヒト組織、遺伝子、実験動物、
霊長類、薬用植物)の整備、及び薬効評価に利用で 【一般公募型】
きるモデル動物(細胞等の評価系を含む)を作成し、 500万〜1,000万円程度/年
厚生労働科学研究を支える基盤を整備する。
3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
ヒトゲノム
テ ー ラ ー
メード研究
(2)
創薬基盤推
進研究事業
【一般公募型】
4,000万〜6,000万円程度/年
【若手育成型】
500万円程度/年
34
次世代ワク
チン開発研
究(仮称)
感染症のみならず、がん、認知症等に対するワクチ
ンの開発による疾患の予防や、組織培養や遺伝子組
【一般公募型】
換たんぱく技術等のワクチン製造技術の低コスト
2,000万〜4,000万円程度/年
化・効率化などにより、国民の健康福祉を増進させ
ることを目的とする研究を支援する。
3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
35
生体内情報
伝達分子解
析研究
(仮称)
生体内糖鎖の構造・機能及びそれが関与する生体反
応のメカニズムに係る研究を推進し、その成果に基 【一般公募型】
づいた画期的な医薬品を開発することによって、患 3,000万〜4,000万円程度/年
者へのより効果的な医療技術の提供に結びつける。
1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
36
ナノメディ
シン研究
ナノスケールの超微細技術(ナノテクノロジー)を医
【一般公募型】
学へ応用することにより、非侵襲・低侵襲を目指し
3,000万〜5,000万円程度/年
た医療機器等の研究・開発を、産学官の連携をもっ
【若手育成型】
て推進し、患者にとってより安全・安心な医療技術
500万円程度/年
の提供の実現を目指す。
3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
産官学に患者の視点を組み入れた「産官学患連携」
により、超高齢化社会における医療・介護負担の低 【一般公募型】
減をもたらし、高齢者等の自立と充実した生活を可 5,000万円程度/年
能とする、革新的医療機器の開発を目的とする。
3年(中間評価に
よる途中終了あ
り)
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
(3)
医療機器
開発推進
研究事業
37
活動領域拡
張医療機器
開発研究
(仮称)
38
基礎研究成
果の臨床応
用推進研究
我が国で生み出された基礎研究の成果を、臨床現場
【一般公募型】
に迅速かつ効率的に応用していくために、必要な技
1,000万〜8,000万円程度/年
術開発、探索的な臨床研究等を推進する。
課題により
原則1年または3
年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
39
臨 床 研 究・
予防・治療
技術開発研
究(仮称)
医薬品や医療機器を用いた治療法等の医療技術につ
【一般公募型】
いて、臨床において適切に実施されるようエビデン
500万〜6,000万円程度/年
スを確立する研究を推進する。
課題により
原則1年または3
年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
臨床疫学基
盤整備研究
(仮称)
患者背景データ等の臨床疫学の基礎となる分野別の
【一般公募型】
疾患の診療・処方実態情報などの診療コホートの
300万〜5,000万円程度/年
データベース構築を行う。
3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
3年
・臨床研究基盤整備推進研
究事業(臨床研究実施基
盤整備研究)を実施して
いる研究機関
・医政局研究開発振興課の
治験活性化拠点事業を
受託している医療機関
・文部科学省の橋渡し研究
支援推進プログラムを
受託している医療機関
40
41
臨床応用
基盤研究
事業
(1)
医療技術
実用化総合
研究事業
臨床研究支
援複合体研
究(仮称)
臨床研究の推進のため、臨床研究ネットワークのハ
【一般公募型】
ブ機能を果たす医療機関の人材育成を行う研究を推
5,000万円程度/年
進する。
(注1)「1件あたりの助成・委託規模」は原則、直接経費で表しているが、直接経費と間接経費の配分が分からないものについては*印を付記している。
(注2)本一覧表は2008年7月現在で直近1年間での省庁およびNEDO・JSTでの公募案件について公開HP情報をベースに㈱アイワードにて取りまとめたもの。最新の情報はNEDO若手研究グラントHPを参照。
54
直近の公募受付期間
ア.
政策科学推
進研究事業
(2)
社会保障国際協力推進
研究事業
32
対象者等
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
29
31
研究開発期間
人文・社会科学系を中心とした、人口・少子化問題、
年金・医療・介護等、社会保障全般及び個々の分野
【一般公募型・若手育成型】
に関する研究等に積極的に取り組み、社会保障に係
300万〜1,500万円程度/年
る基礎データの提供等、厚生労働行政施策の企画立
案及び推進を図る。
H19年
10月29日 〜
12月10日
担当部署・機関
事業名
(1)
障害保健福祉総合研究事業
42
障害関連研
(2)
究 事 業/長
感覚器障害研究事業
寿科学総合
研究事業
43
(3)
長寿科学総合研究事業
44
45
第3次
対がん総合
戦略研究
事業
47
厚生労働
科学研究費
補助金
研究開発期間
対象者等
直近の公募受付期間
1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
感覚器機能障害の原因となる疾患の発症予防、早期
診断及び治療、重症化防止、リハビリテーション及
【一般公募型・若手育成型】
び機器等による支援等、感覚器障害対策の推進に資
1,000万〜3,000万円程度/年
する研究開発を推進し、研究成果を障害者に還元す
る。
1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
高齢者の介護予防や健康保持等に向けた取組を一層
推進するため、高齢者に特徴的な疾病・病態等に着 【一般公募型】
目し、それらの予防、早期診断及び治療技術等の確 ①②1,000万〜3,000万円程度/年
立に向けた以下分野の研究を推進する。
③1,000万〜1億円程度/年
①老年病等長寿科学技術分野
④1,000万〜1億2,000万円程度/年
②介護予防・高齢者保健福祉分野
【若手育成型】
③認知症総合研究分野
①〜④500万円程度/年
④運動器疾患総合研究分野
【一般公募型】
①②1〜3年
③④課題により
1〜3年 ま た は1
〜5年
【若手育成型】
①〜④1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
(1)
第3次対がん総合戦略
研究事業
がんの本態解明の研究とその成果を幅広く応用する
トランスレーショナル・リサーチの推進、及びがん
の実態把握とがん情報の発信に関する研究を推進す
る。
3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
(2)
がん臨床研究事業
【一般公募型】
1,000万〜3,000万円程度/年
がん医療水準の均てん化を目的とした効果的な治療 (但し、「小児がんに対する標準治療・
法の確立、緩和ケア等の療養生活の質の維持向上に 診断確立のための研究(分野2−③)」に
関する研究、及び均てん化を促進する体制整備等の つ い て は4,000万 〜6,000万 円 程 度/
政策課題に関する研究を推進する。
年)
【若手育成型】
1,000万〜2,000万円程度/年
1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
(1)
循環器疾患等の生活習慣病の予防から診断、治療に
循環器疾患 至るまで生活習慣病対策に関する研究を体系的に実
【一般公募型・若手育成型】
等生活習慣 施する。
1,000万〜3,846万円程度/年
病対策総合 (ア)循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業
研究事業
(イ)糖尿病戦略等研究事業
1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
(免疫アレルギー疾患分野)
発症原因と病態との関係を明らかにし、予防、診断
(2)
及び治療法に関する新規技術を開発するとともに、
免疫アレル
自己管理方法や治療法の確立を行うことにより、国
ギー疾患等
民に対してより良質かつ適切な医療を提供する。
予防・治療
(移植医療分野)
研究事業
社会基盤を確立し、免疫応答をコントロールするこ
とにより、良質かつ安定的な移植医療を提供する。
3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
48
官房厚生
科学課研究
助成係 1件当たりの助成・委託規模
子どもが健康に育つ社会、子どもを生み、育てるこ
とに喜びを感じることができる社会の実現のため 【一般公募型・若手育成型】
に、次世代を担う子どもの健全育成と、生涯を通じ 1,000万〜5,000万円程度/年
た女性の健康の支援に資する研究を募集する。
子ども家庭総合研究事業
46
49
概 要
地域生活支援を理念として、身体障害、知的障害、
精神障害及び障害全般に関する予防、治療、リハビ
リテーション等の適切なサービス、障害の正しい理
【一般公募型・若手育成型】
解と社会参加の促進方策、地域において居宅・施設
300万〜2,000万円程度/年
サービス等をきめ細かく提供できる体制づくり等、
障害者の総合的な保健福祉施策に関する研究開発を
推進する。
循環器疾患等生活習慣病
対策総合研究事業/
免疫アレルギー疾患等
予防治療研究事業/
難治性疾患克服研究事業
2,000万〜4,000万円程度/年
【一般公募型】
1,000万〜3,846万円程度/年
【若手育成型】
500万〜1,500万円程度/年
50
(3)
難治性疾患
克服研究
事業
原因が不明で、根本的な治療法が確立しておらず、
かつ後遺症を残すおそれが少なくない難治性疾患の
うち、患者数が少なく研究の進みにくい疾患に対し 【一般公募型】
て、重点的・効率的に研究を行うことにより進行の 約1,538万〜3,846万円/年
阻止、機能回復・再生を目指した画期的な診断・治
療法の開発を行い、患者のQOLの向上を図る。
3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
51
(1)
エイズ対策
研究事業
最新の治療法の開発、治療ガイドラインの作成や、
社会的側面や政策的側面にも配慮した医学的・自然
科学的研究等、エイズに関する基礎、臨床、社会医
学、疫学等の研究を総合的に推進する。
また、人権に配慮しつつ予防と医療の両面における
エイズ対策研究の一層の推進を図る。
1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
(2)
肝炎等克服
緊急対策
研究事業
【一般公募型】
肝炎ウイルスの病態及び感染機構の解明、並びに肝
1,000万〜1億5,000万円程度/年
炎、肝がん等の肝疾患予防及び治療法の開発等を目
【若手育成型】
的とした研究を推進させる。
500万〜1,500万円程度/年
1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
52
エイズ・肝炎・
新興再興感染症研究事業
(3)
国内外の新興・再興感染症に関する研究を推進させ、
新興・再興 これら感染症から国民の健康を守るために必要な研
感染症研究 究成果を得ることを目的とする。
事業
(但し、肝炎、HIVに関する研究を除く)
53
【一般公募型・若手育成型】
800万〜8,000万円程度/年
【若手育成型】
800万〜1,500万円程度/年
【一般公募型】
1,000万〜1億5,000万円程度/年
【若手育成型】
1,000万〜1,500万円程度/年
(1)精神疾患分野と(2)神経・筋疾患分野において、
心理・社会学的方法、分子生物学的手法、画像診断
【一般公募型・若手育成型】
技術等を活用し、病因・病態の解明、効果的な予防、
(1)500万〜5,000万円程度/年
診断、治療法等の研究・開発を推進する。
(2)1,000万〜5,000万円程度/年
また、障害者自立支援法や心神喪失者等医療観察法
等による新たな行政課題への研究的な対応を図る。
54
こころの健康科学研究事業
55
地域医療基盤開発推進研究事業(仮称)
良質な医療を合理的・効率的に提供する観点から、
既存医療システム等の評価研究、医療安全体制確保
に関する研究、根拠に基づく医療に関する研究等を
支援し、より質の高い効率的な医療サービスを提供
することを目的とする。
56
労働安全衛生総合研究事業
職場における労働者の安全と健康を確保するととも
【一般公募型】
に、快適な職場環境の形成を促進するための研究を
500万〜1,500万円程度/年
総合的に推進する。
【一般公募型】
200万〜2,000万円程度/年*
【若手育成型】
300万〜500万円程度/年
【一般公募型】
1〜3年
【若手育成型】
3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
1〜2年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
55
競争的資金制度および提案公募型事業一覧表
●
厚生労働省
担当部署・機関
事業名
57
食品医薬品等リスク
分析研究事業
58
官房厚生
科学課研究
助成係 厚生労働
科学研究費
補助金
59
61 (独)医薬基盤研究所
研究開発期間
対象者等
農林水産
62 技術会議
事務局
(独)農業・食
63 品産業技術総
合研究機構
(2)
医薬品・
医療機器等
レギュラト
リーサイエ
ンス総合研
究事業
薬事法や麻薬及び向精神薬取締法等の規制の対象と
なっている医薬品、医療機器等の安全性、有効性及
び品質の評価、及び乱用薬物への対策等を、政策的 【一般公募型】
に実行するために必要な規制(レギュレーション)に 300万〜2,000万円程度/年*
ついて、科学的合理性と社会的正当性に関する根拠
をもって整備する。
1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
(3)
化学物質
リスク研究
事業
化学物質の総合的な評価を加速し、国際的な化学物
質管理の取組に貢献するために、以下の研究を推進
する。
①化学物質の有害性評価手法の迅速化、高度化に関 【一般公募型】
する研究
①3,000万〜1億円程度/年
②化学物質の子どもへの影響評価に関する研究
②2,000万〜7,000万円程度/年
③ナノマテリアルのヒト健康影響の評価手法に関す ③、④4,000万〜7,000万円程度/年
る総合研究
④化学物質の情動・認知行動に対する影響の毒性学
的評価方法に関する研究
1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
【一般公募型】
地域レベルあるいは国家レベルにおける、健康危機
①500万〜1,000万円程度/年
管理に関する体制について研究を推進する。
②500万〜6,000万円程度/年
①地域健康安全の基盤形成に関する研究分野
③1,000万〜3,000万円程度/年
②水安全対策研究分野
【若手育成型】
③生活環境安全対策研究分野
①300万〜500万円程度/年
1〜3年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
保健医療上重要な疾患領域に対する画期的な医薬
品、医療機器等を開発することを目指す基礎的研究
であって、次の①から④までのいずれかに該当する
もの。
①核酸医薬品、抗体医薬品等の画期的な新世代型医
薬品の開発を目指す研究
②これまでに治療等の手段がないか、又は既存の治
療薬等が十分に開発されていない領域において新
規の作用機序やコンセプトに基づく画期的な医薬
品又は医療機器の開発を目指す研究〔(1)に掲げ
るものを除く。〕
③がんにおけるゲノム変化の網羅的把握(がん関連
ゲノム異常アトラス作成)のための国際共同研究
④独創的な発想に基づく医薬品・医療機器開発プロ
セスに関して、若手研究者(37歳以下)が単独で
行う研究
①②③は5年以内
※年 次 評 価(2年
目・4年目)
、中
間評価
(3年目)
④は3年以内
国立試験研究機関、大学
等、独立行政法人、特殊
法人、特別認可法人、公
益法人に所属する研究者
H20年
1月31日〜
2月28日
対象者等
直近の公募受付期間
保健医療分野における基礎研究推進事業
①②は5,000万〜1億円/年*
③1億〜2億円/年*
④1,000万円〜2,000万円/年*
※間接経費を含む
【一般公募型】
1〜3年
【若手育成型】
1〜2年
厚生労働省の施設等機関、
地方公共団体試験研究機 H19年
関、大学等、民間研究所、 10月29日 〜
独立行政法人等に所属す 12月10日
る研究者
事業名
概 要
新たな農林水産政策を推進する
実用技術開発事業
イノベーション創出基礎的研究推進事業
1件当たりの助成・委託規模
産学官の研究能力を結集し、幅広い分野のシーズを活用しつつ、
●研究領域設定型研究:約3,846万〜
機動的な対応が可能である競争的資金制度の特徴を生かして、農
4,545万円/年
林水産業・食品産業の生産及びこれに関連する流通、加工等の現
●現場提案型研究:約2,308万〜2,727
場の技術的課題の解決に向けた実用技術の早急な開発を推進する
万円/年
ことを目的として実施する。
基礎から応用まで一体的に推進することにより、革新的な技術の
開発を促進し、生産性の飛躍的向上や農林水産物の高付加価値化
等の生物系特定産業における諸課題の解決に必要な技術的障害の
解決や革新的な技術の開発を促進するとともに、生物系特定産業
の発展の可能性を広げる新たな分野を創出する。
研究開発期間
原則3年以内
(1)技 術 シ ー ズ
(1)
技術シーズ開発型研究
開発型研究
①一般枠:約5,384万円以内/年
①は5年以内
②若 手研究者育成枠:約2,307万円以
②は3年以内
内/年
(2)発展型研究
(2)
発展型研究
①は3年以内
①一般枠:約4,615万円以内/年
②はフェーズⅠ:
②ベンチャー育成枠
1年以内
フェーズⅠ:約384万円以内/年
フェーズⅡ:2年
フェーズⅡ:約2,307万円以内/年
以内
下記の1〜4のセクターの
うち、2以上のセクターの
研究機関から構成される
共同研究グループ
1 都 道府県、市町村、公
立試験研究機関及び地
H20年
方独立行政法人
1 月 17 日
2 大 学及び大学共同利用
〜3月5日
機関
3 独 立行政法人、特殊法
人及び認可法人
4 民 間 企 業、 公 益 法 人、
NPO法人、協同組合及
び農林漁業者
大学、独立行政法人、国
立試験研究機関、民間企
業等に所属する常勤の研
究者又は共同研究グルー
プ
H20年
4月1日〜
4月15日
国土交通省
担当部署・機関
事業名
64
大臣官房技術
調査課
65
概 要
1件当たりの助成・委託規模
基礎・応用研究開発公募
建設以外の他分野を含めた広範な学際領域との連携
を積極的に行い、将来(概ね10年後の実用化を想
定)、実社会での波及効果の大きい研究開発課題に
対して公募する。
実用化研究開発公募
地域のニーズ等に応じた実用化に近い(概ね5年後
の実用化を想定)技術研究開発のテーマに対して、
地域の産学官連携等により研究開発を推進する課題
約1,538万円まで/2年
に対する公募。研究開発実施体制としては地域の産
学官連携により、他地域への応用性のあるものとす
る。
●Aタイプ:約3,846万円まで/3年
●Bタイプ:約1,538万円まで/3年
研究開発期間
対象者等
直近の公募受付期間
最長3年まで
・大学等の研究機関の研究者
・研究を主な事業目的として
いる公益法人及び所属す
る研究者
・国土交通大臣が指定した法
人及び所属する研究者
※Bタイプは40歳未満を条
件とする
H20年
2月12日〜
3月12日
最長2年まで
・大学等の研究機関の研究者
・研究を主な事業目的として
いる公益法人及び所属す
る研究者
・国土交通大臣が指定した法
人及び所属する研究者
H20年
2月12日〜
3月12日
建設技術研究開発助成制度
(注1)「1件あたりの助成・委託規模」は原則、直接経費で表しているが、直接経費と間接経費の配分が分からないものについては*印を付記している。
(注2)本一覧表は2008年7月現在で直近1年間での省庁およびNEDO・JSTでの公募案件について公開HP情報をベースに㈱アイワードにて取りまとめたもの。最新の情報はNEDO若手研究グラントHPを参照。
56
直近の公募受付期間
農林水産省
担当部署・機関
●
1件当たりの助成・委託規模
(1)
食品の安心
安全確保推
進研究事業
健康安全・危機管理対策総合研究事業
(仮称)
60
●
概 要
食品供給行程全般におけるリスク分析のうち、厚生
労働省が担当するリスク管理及びリスクコミュニ 【一般公募型】
ケーション並びにリスク評価に必要な科学的知見の ①500万〜2,000万円程度/年*
収集等を実施し、国民の安全な食生活と食品に関す ②1,000万〜6,154万円程度/年
る国民の安心を確保することを目的とする。
③1億〜1億1,538万円程度/年
①食品の安心・安全推進研究分野
④1,000万〜2,000万円程度/年*
②食品リスク分析調査研究分野
⑤1,000万〜2,308万円程度/年
③牛海綿状脳症対策研究分野
⑥1,000万〜1,923万円程度/年
④添加物及び汚染物質に関する研究分野
【若手育成型】
⑤食品中の微生物対策分野
①〜⑥500万円程度/年
⑥表示に関する研究分野
担当部署・機関
大臣官房技術
66 調査課
( 独 )鉄 道 建
67 設・運輸施設
整備支援機構
●
事業名
運輸分野における基礎的研究推進制度
1件当たりの助成・委託規模
基礎的研究を通じて、陸上運送、海上運送及び航空
運送の円滑化に資する技術の著しい向上を図り、こ
れらの運送の利用者の利便の増進、運送の安全の確
保等に寄与する新たな技術の確立を図ることを目的
とする。
約3,846万円〜5,384万円/3年
研究開発期間
対象者等
直近の公募受付期間
最長2年まで
・大学等の研究機関の研究
者
・研究を主な事業目的とし
ている公益法人及び所
属する研究者
・国土交通大臣が指定した
法人及び所属する研究
者
H20年
2月12日〜
3月26日
原則3年
国内の大学等、国公立試
験研究機関、独立行政法 H20年
人、特殊法人、認可法人、 2月21日〜
公益法人、民間研究機関 4月17日
に属している者等
環境省
担当部署・機関
68
総合環境
政策局総務課
総合環境政策
69 局環境保健部
環境安全課
地球環境局
70 研究調査室
71
●
政策課題解決型技術
開発公募
建設技術研究開発助成制度
概 要
国土交通省が定めた具体的な推進テーマに対して、
迅速に(概ね2〜3年後の実用化を想定)成果を社会
に還元させることを目的とした政策課題解決型
(トップダウン型)の公募。技術開発に関する研究の
約2,692万円まで/2年
内容が我が国の直面する国土交通行政に係る課題の
解決にとって、実用的な意義が大きいものであり、
イノベーションを創出することが想定される研究ま
たは技術開発を強力に推進する。
廃棄物・リサ
イクル対策部
廃棄物対策課
事業名
環境技術開発等推進費
戦略一般研究「地域枠」
概 要
以下の研究分野に関して募集する。
①自然共生型社会の構築領域
②安全・安心で質の高い社会の構築領域
・大気・都市環境
・水・土壌環境
・自然環境
・生態リスク評価
環境リスク要因が健康に及ぼす影響についての評価
に必要な以下のテーマを対象とする。
①新しい環境リスク評価手法に関する研究
戦略指定研究
②高感受性集団のリスク評価に関する研究
「健康リスク評価技術分野」
③大気環境汚染物質の健康影響に関する研究
④ダイオキシン類の健康リスク評価に関する研究
⑤環境リスクに関する法的アプローチに関する研究
環境技術開発等推進費
地球環境研究総合推進費
廃棄物処理等科学
研究費補助金
1件当たりの助成・委託規模
約384万〜2,307万円/年
①〜④は約231万〜769万円/年
⑤は約231万円以内/年
研究開発期間
対象者等
直近の公募受付期間
2年又は3年
次に示す試験研究機関等
に常勤の研究員として所
属する者
・国立試験研究機関、独立
行政法人試験研究機関
・国公私立大学、高等専門
学校
・地方公共団体研究機関
・特殊法人、認可法人
・民間企業、公益法人等
H20年
2月15日〜
3月5日
2年
次に示す試験研究機関等
に常勤の研究員として所
属する者
・国立試験研究機関、独立
行政法人
・国公私立大学、高等専門
学校
・地方公共団体研究機関
・特殊法人、認可法人
・民間企業、公益法人等
H20年
2月15日〜
3月5日
H19年
10月12日 〜
11月15日
地球環境研究
革新型研究領域
新規性・独創性・革新性に重点を置いた若手研究者
向けの研究課題で、地球環境問題の解決に資する研
究課題を広く公募する。
・地球環境に影響を及ぼす新規発見物質の発生と推
移(fate)に関する研究
・地球環境研究に関する新たな研究手法、観測・測
定技術の開発
・現時点で想定されていない新たな政策提言、国際
的枠組みの構築につながる政策研究 など
約1,000万円/年
1年間又は2年間
産学官を問わず、国内の
研究機関に研究者として
所属している者(国籍は問
わず)。
※研 究代表者及び研究参
画者のすべてが研究開
始初年度の4月1日時点
で40歳以下とする。
循環型社会形成推進
研究事業
廃棄物の処理等に係る科学技術に関する研究を促進
し、もって廃棄物の安全かつ適正な処理、循環型社
会の形成の推進等に関する行政施策の推進及び技術
水準の向上を図ることを目的とする。
①廃棄物処理に伴う有害化学物質対策研究
②廃棄物適正処理研究
③循環型社会構築技術研究
約7,692万円以内/年
3年以内
個人(研究機関に属する研
究者)
H19年
12 月 17 日
〜H20年
1月28日
対象者等
直近の公募受付期間
JST(独)科学技術振興機構
担当部署・機関
科学技術
72 理解増進部
活動推進課
事業名
74
国際部
75
H20年
4月18日 〜
5月14日
日米両国の政府間合意に基づき、文部科学省が特に
重要なものとして設定した米国との協力分野(「安
全・安心な社会に資する科学技術」)における研究交
流を実施することにより、日本の科学技術の将来の
発展に資することを目的とする。
約1,364万円/3年
最長3年
日本国内の大学や研究機
関、企業などで研究に従
事している研究者
H20年
6月20日〜
8月29日
日印両国の政府間合意に基づき、文部科学省が特に
重要なものとして設定したインドとの協力分野(「情
日本(JST)−インド(DST)
報通信技術と他の分野を結合した複合領域」)におけ
研究交流
る研究交流を実施することにより、日本の科学技術
の将来の発展に資することを目的とする。
約1,364万円/3年
原則3年
日本国内の大学や研究機
関、企業などで研究に従
事している研究者
H20年
6月3日〜
8月15日
環境・エネルギー、防災および感染症等をはじめと
する地球規模課題に対し、JSTとJICAが連携して地
球規模課題を対象とする途上国との国際共同研究を
推進する。
約769万〜3,846万円/年
原則3〜5年
大学、公共性のある活動 H20年
を 行 っ て い る 研 究 機 関、 5月22日
公益法人等
まで
国が社会・経済ニーズを踏まえて定める戦略目標の
達成に向け、卓越した研究リーダーの下に、産学官
及び海外から優れた研究者を結集し、研究領域に応
じた柔軟な研究体制を構築して、新技術の創製に資
する基礎的研究を推進。
①チーム型研究CREST
Ⅰ 3,000万円〜5,000万円程度/年
Ⅱ 6,000万円〜1億円程度/年
②個人型研究さきがけ
a. 3,000万円〜4,000万円程度/3年
b. 5,000万円〜1億円程度/5年
①は 原則5年(評
価の結果に応
じて継続が可
能)
:
②はa:3年、b.
5年間
①は、大学、国立試験研究
機関、独立行政法人、その
他公的研究機関及び民間
企業等所属する研究者
②は、特に制限なし
①(第2期)
H20年
5月15日まで
②(第2期)
H20年
5月13日まで
研究実施体制を構築し、研究に必要な
予算を措置する。
総額3億円(上限)/年*
5年程度
推薦者の要件:
大学、公的研究機関、民
間企業研究開発部に所属
する者
(自薦不可)
H19年
11月20日
まで
公募型研究
政略的
創造事業本部
研究推進室
77
公立あるいは非営利の機
関・団体、及び個人
「地球規模課題対応国際科学技術協力事業」研究提案
76
戦略的創造研究推進事業
研究開発期間
7ヶ月
H20年
日本−米国研究交流課題
(高度化センサー技術)
戦略的国際科学技術
協力推進事業
1件当たりの助成・委託規模
●単独型:上限50万円/7ヶ月 ●機関連携型:上限100万円/7ヶ月
地域科学技術理解増進活動推進事業「地域活動支援」
73
概 要
地域の児童生徒や住民を対象とした科学技術に関す
る体験型・対話型の学習活動等を推進するため、こ
うした活動に取り組む機関・団体や個人が、その特
徴や実績を活かして実施する、参加者にとって身近
な場で行われる科学技術理解増進活動を支援する。
国が社会・経済ニーズを踏まえて定める戦略目標の
達成に向け、卓越した研究リーダーの下に、産学官
及び海外から優れた研究者を結集し、研究領域に応
ERATO型研究(推薦・他薦) じた柔軟な研究体制を構築して、新技術の創製に資
する基礎的研究を推進。総括実施型研究とは、研究
総括の独自な視点からの研究対象(研究領域)をもと
に、研究者を結集し研究を推進するものをいう。
57
競争的資金制度および提案公募型事業一覧表
●
JST(独)科学技術振興機構
担当部署・機関
78
社会技術研究
開発センター
企画運営室
79
社会技術研究
開発センター
企画運営室
事業名
社会技術研究開発事業
社会技術研究開発事業
80
81
戦略的創造
事業本部
研究企画
調整室
先端計測分析技術・
機器開発事業
先端計測分析技術・
手法開発事業
82
技術展開部
83 新規事業
創出室
企業家開発
事業本部
84 技術展開部
独創的シーズ展開事業
1件当たりの助成・委託規模
研究開発期間
社会問題の解決に取り組む関与者と研究者が協働す
るためのネットワークを構築し、競争的環境下で研
究開発を推進して、現実社会の具体的な問題解決に
資する成果を得るとともに、得られた成果の社会へ
の活用・展開を図る。
①地 域に根ざした脱温暖化・環境共生
社会:3,000万円(上限)/年
②犯罪からの子どもの安全
a. 研究開発プロジェクト:
5,000万円程度/5年
b.プロジェクト企画調査:
300万円程度/6ヶ月
③科学技術と社会の相互作用
a. 研究開発プロジェクト:
数百万〜数千万円程度/1〜5年
b. プロジェクト企画調査:
数百万円/6ヶ月
①5年
②・③はいずれも
a. 研究開発プロ
ジェクト:1〜5年
b. プロジェクト
企画調査:6ヶ月
国内の、大学、独立行政
法人、国公立試験研究機
関、特殊法人、特別認可 H20年
法人、公益法人、学校法人、 4月17日 〜
企業等の法人に所属する 6月10日
研究者等(外国籍研究者も
含む)
500万円以内/年
1年以上
〜3年以内
実装責任者は日本国内の
法人格を有する機関(特定
H20年
非 営 利 法 人、 公 益 法 人、
6月2日 〜
民間企業、国公私立大学
7月15日
など)に所属しており、所
属機関の承認を得た者
※特に定めなし
大学・独立行政法人等の
研究機関(学・官)又は企
業等の機関(産)に所属す
る者
※特に定めなし
大学、公立試験研究機関、
独立行政法人その他研究
H20年
機関の研究者を、民間企
2月19日 〜
業の技術者又は研究者と
4月10日
が密接に連携して構成さ
れるグループ
研究開発成果実装支援
プログラム
社会問題の解決に取り組む関与者と研究者が協働す
るためのネットワークを構築し、競争的環境下で自
然科学と人文・社会科学の知識を活用した研究開発
を推進して、現実社会の具体的な問題解決に資する
成果を得るとともに、得られた成果の社会への活用・
展開を図る。
要素技術プログラム
独創的な計測分析技術・手法を開発する事業です。
計測分析機器の性能を飛躍的に向上させることが期
待される新規性のある独創的な要素技術の開発を行
うことを目的とする。
機器開発プログラム
産と学・官の各機関が密接に連携して開発チームを
編成し、チームリーダーの強力なリーダーシップの
もと、要素技術開発から応用開発、プロトタイプに
よる実証までを一貫して実施することによって、最
先端の研究ニーズに応えられるような計測分析・機
器及びその周辺システムの開発を行うことを目的と
する。
プロトタイプ実証・実用化
プログラム
産と学・官の各機関が密接に連携して開発チームを
構成し、参加企業の強力なコミットメントのもと、
世界トップレベルのユーザー等との共同研究を通じ
て、プロトタイプ機の性能の実証、並びに高度化・
最適化、あるいは汎用化するための応用開発を行い、
実用可能な段階まで仕上げることを目的とする。
大学発ベンチャー創出
推進制度
大学等の研究成果を基にした起業及び事業展開に必
要な研究開発を支援することにより大学発ベン
チャーの創出を促す。
独創モデル化
研究開発型中堅・中小企業が有する新産業を生み出
す可能性のある新製品・新技術等の構想(新技術コ
ンセプト)を企業、大学等(研究者)が協力して、試
作品として具体的な形にすることや実用化に向けて
必要な実証試験等を実施すること(モデル化)により
育成する。
委託開発
国民経済上重要な科学技術に関する大学等で生まれ
た研究及び開発の成果であって、特に企業化が困難
な開発課題を選定し、企業に委託して企業化開発を
実施することにより、新技術の実用化を促進するこ
とを目的とする。
技術育成課
85
概 要
※上限の定めなし
〈目安〉
数百万〜2,000万円程度/年
総額:2,000万〜5,000万円程度
※上限の定めなし
87
産学事業本部
技術展開部
イノベーション
創出課
約3,846万円まで/年
※側 面支援組織が参画している場合、
最長3年間程度
側面支援経費が支給される(500万円
/年・件)
大学等に常勤の研究者と
して所属する者
H20年
3月11日 〜
4月18日
1,500万円〜2,500万円程度/年(一般
管理費を含む)*
原則1年間
日 本 の 法 人 格 を 有 す る、
資本金10億円以下の企業
※大学等、財団法人、社
団法人、協同組合、企業
H20年
組合、医療法人、社会福
2月8日 〜
祉法人、特定非営利活動
3月31日
法 人 は 応 募 で き な い が、
所属の研究者が協力研究
者として参加することは
可能
1億〜20億円程度/2〜7年(企業化開発
の最小規模、返済が可能な規模)*
2〜7年程度
※医薬品開発な
ど、開発期間が
長期となる課題
については、評
価に応じて柔軟
に対応
国公私立大学、高等専門
学校、国立試験研究機関、
公立試験研究機関、研究
開発を行っている特殊法
人、独立行政法人、公益
法人、技術移転機関
①は最長5年
②は最長5年
①開 発実施企業は、日本
の法人格を有する設立
登記後10年以内かつ資
本金10億円以下の非上
場企業であること
②開 発実施企業は、高い
H20年
研究開発能力をもとに、
3月17日 〜
新しい技術の研究開発
6月10日
を実施できる日本の法
人格を有する資本金
300億円以下の企業で、
自己資金単独では、当
該開発が困難であるこ
と
国公私立大学、国公立試
験研究機関、独立行政法
人等の個人研究者と民間
企業の共同申請
88
89
90
①一 般プログラム:2,000万〜5,000
万円/年(間接経費を含む)*
②創薬イノベーション プログラム:1
億〜2億円/年(間接経費を含む)*
顕在化ステージでは、大学等の基礎研究から産業界
の視点でシーズ候補を見出し、産学共同でシーズと
して顕在化されるためのフィージビリティスタディ
を行う。育成ステージでは、顕在化されたシーズの
実用性を検証し、イノベーション創出に資する目的
で産学共同による研究(マッチングファンド形式)を
行う。
①顕在化ステージ:
800万円程度/年(間接経費を含む)*
②育成ステージ:
5,000万円程度/年(間接経費を含む)*
①は最長1年
②は最長4年
シーズ発掘試験
各府省・大学(知的財産本部・地域共同研究センター
等)・地方自治体・独立行政法人・TLO等に配置さ
れている各種コーディネータ等が発掘した大学等の
研究シーズの実用化を促し、イノベーションの創出
に資するとともに、コーディネータ等の活動を支援
することを目的とする。
①発掘型:
上限200万円(間接経費を含む)*
②発展型:
上限500万円(間接経費を含む)*
委託研究契約締
代表研究者を中心とした
結日から、H21
研究者と共同研究企業の
年3月31日(火)
連名
まで
地域ニーズ即応型
地域の中堅・中小企業のニーズ(技術的課題)に対し、
大学・公設試・高専等のシーズを活用した研究開発 200万〜500万円/5ヶ月(間接経費を
を推進することで企業のもつ課題の解決を目的とす 含む)*
る。
H20年10月〜
原則H21年3月
まで
※研究開発内容
によってはH22
年3月 ま で と す
ることが可能
育成研究
大学等の研究成果(特許)に基づくものであり、数年
以内に企業化開発に移行することが見込まれ、企業
化に向けての試験研究を必要とする課題が対象。研
究者と当該技術の企業化を推進する企業(代表権を
持つ者)の連名での応募に限る(複数機関の参加も
可)。
2年間または
3年間
産学共同シーズイノベーション化事業
地域事業
推進部
プラザ事業
推進課
重点地域研究開発推進
プログラム
2,600万円以内/年*
(第2回)
H20年
6月11日 〜
8月20日
①は
(第3回)
H20年
8月4日
②は
H20年
6月2日〜
8月18日
H20年
1月15日 〜
3月14日
公設試等が調整役となり、
H20年
参画する中堅・中小企業、
5月15日 〜
大学・公設試・高専等と
6月27日
連名
大学等と企業との連名で
(複数の大学等や企業が参
加する場合でも応募可能)
(注1)「1件あたりの助成・委託規模」は原則、直接経費で表しているが、直接経費と間接経費の配分が分からないものについては*印を付記している。
(注2)本一覧表は2008年7月現在で直近1年間での省庁およびNEDO・JSTでの公募案件について公開HP情報をベースに㈱アイワードにて取りまとめたもの。最新の情報はNEDO若手研究グラントHPを参照。
58
H20年
2月19日 〜
4月10日
H20年
2月19日 〜
4月10日
※特に定めなし
研究開発型ベンチャー企業を活用することによりイ
ノベーションの創出が期待されるものについて企業
化開発を推進し、企業化につなげることを目的とす
る。
革新的ベンチャー活用開発
直近の公募受付期間
大学・独立行政法人等の
研究機関(学・官)と機器
開発を担う企業等の機関
(産)が密接に連携するこ
とにより実用の機器につ
ながる開発を行うチーム
※上限の定めなし
開発費(直接経費)を申請し、同額以上
の資金を企業側から支出する
(マッチングファンド形式)
産学連携事業
本部開発部
開発計画課
86
対象者等
H20年
7月1日 〜
8月18日
担当部署・機関
事業名
重点地域研究開発推進
プログラム
91
研究開発資源活用型
産学連携
事業本部
地域事業
推進部
92
●
地域結集型研究開発プログラム
概 要
1件当たりの助成・委託規模
対象者等
直近の公募受付期間
国公私立大学、国公立試
験研究機関等の研究者と
当該技術の企業化希望企
業との共同申請
H20年
4月1日 〜
5月15日
H21年1月1日〜
H26年3月31日
(但し、研究期間
は H25 年 12 月
31日まで)
国公私立大学、国公立試
験研究機関等の研究者(都
道府県経由)
H20年
5月19日 〜
6月20日
1件当たりの助成・委託規模
研究開発期間
対象者等
直近の公募受付期間
人文・社会科学から自然科学までの全ての分野にわ
たり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研
究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させ
ることを目的とするものであり、ピア・レビュー(専
門分野の近い複数の研究者による審査)により、豊
かな社会発展の基盤となる独創的・先駆的な研究に
対する助成を行う。
①特別推進研究:総額5億円程度*
②特 定領域研究:領域総額2,000万円
〜6億円程度*
③基盤研究:
(S)総額5,000万円以上2億円程度ま
で*
(A)
総 額2,000万 円 以 上5,000万 円
以下*
(B)総 額500万 円 以 上2,000万 円 以
下*
(C)総額500万円以下*
④萌芽研究:総額500万円以下*
⑤若手研究:
(S)総額3,000万円以上1億円程度*
(A)総 額500万 円 以 上3,000万 円 以
下*
(B)総額500万円以下*
①3〜5年
②3〜6年
③(S):5年
(A)
(B)
(C):
3〜5年
④1〜3年
⑤(S):5年
(A)
(B):2 〜
4年
国公私立大学、国公立試
験研究機関、企業、独立
行政法人等の研究者(1人
又は複数)
H19年
11月12日 〜
11月15日
脳内情報を解読・制御することにより、脳機能を理
解するとともに脳機能や身体機能の回復・補完を可
能とする「ブレイン・マシン・インターフェース
(BMI)の開発」、及び脳科学研究の共通的な基盤と
なる先進的なリソースの「独創性の高いモデル動物
の開発」について、研究開発拠点の整備等を行う課
題の実施機関を選定し、事業を委託する。
①研究開発拠点整備事業:約3億〜6億
円程度*
②個 別研究事業:1,000万〜3,000万
円*
①は原則5年間
②は原則3年間
大学、高等専門学校及び
大 学 共 同 利 用 機 関 法 人、
H20年
国公立の試験研究機関及
3月14日 〜
び独立行政法人の試験研
4月14日
究機関、法人格を有する
民間等の研究機関・企業
初年度総額:
約2億6,000万円/年
始期は契約が締
結された日と
し、終期はH23
年度末(H24年3
月)を限度
国内の産学官の研究開発
機関・組織(なお、国立試
験研究機関(一般会計の機
関)、研究者個人は対象と
ならない。)
H20年
5月13日 〜
6月16日
最長10年
光科学技術研究に関わる
相互補完的な機能を有す
る複数の研究機関からな
る連携・協働体制である
こと。全体を取りまとめ
る「幹事機関」及び「そ
の他の参画機関」により
構成されるものとする。
H20年
4月14日 〜
5月23日
①②最長5年
量子ビーム技術開発に関
わる相互補完的な機能を
有する複数の研究機関か
らなる連携・協働体制で
あること。全体を取りま
とめる「幹事機関」及び「そ
の他の参画機関」により
構成されるものとする。
H20年
4月14日 〜
5月23日
原則3年間
・大学及び大学共同利用機
関法人
・独立行政法人、特殊法人
及び認可法人
・法人・民間企業
・特定非営利活動法人
H20年
1 月 23 日
〜3月4日
プラザ・サテライトにおける育成研究等により地域
に蓄積された研究成果、人材、研究設備等の研究開
発資源を有効に活用し、実機レベルのプロトタイプ
開発等、産学官共同により企業化に向けた研究開発
を行って地域企業への円滑かつ効果的な技術移転を
図り、地域におけるイノベーション創出を目指す。
2,308万〜7,692万円程度/年
地域として企業化の必要性の高い分野の個別的研究
開発課題を集中的に取り扱う産学官の共同研究事業
であり、大学等の基礎的研究により創出された技術
シーズを基にした試作品の開発等、新技術・新産業
の創出に資する企業化に向けた研究開発を実施す
る。
初年度:
2億1,000万〜2億4,000万円/年*
概 要
研究開発期間
最大3年
文部科学省
担当部署・機関
日本学術
93 振興会
事業名
科学研究費補助金
社会のニーズを踏まえたライフ
サイエンス分野の研究開発
脳科学研究戦略推進
プログラム
94
研究振興局
95
次世代IT基盤構築のための研究開発「eサイエンス実現のためのシステム統合・
連携ソフトウェアの研究開発」
全国に分散する様々なコンピュータを、ユーザがそ
のニーズに応じてシームレスに利活用することを可
能とするためのソフトウェアを開発することを目的
とする。
(最先端の光の創成を目指
したネットワーク研究拠点
プログラム)
新しい光源・計測法等の研究開発、次世代の光科学
技術を担う若手人材を育成するための具体的なプロ
グラム、構想段階からユーザー研究者・研究機関等
と効果的に連携する仕組みの構築等を実施するネッ
トワーク研究拠点を公募する。
2億3,077万〜3億8,462万円/10年
(量子ビーム基盤技術開発
プログラム)
将来的な加速器開発に役立つ基盤技術の構築に向け
た革新的な加速器技術などの要素技術開発を行う①
次世代ビーム技術開発課題と、新たな量子ビーム利
用の基盤技術の構築に向けた汎用性の高いビームラ
イン技術等の要素技術開発を行う②高度化ビーム技
術開発課題の2つの課題それぞれについて、実施す
るプロジェクトチームを公募する
①次世代ビーム技術開発課題:3億〜5
億円程度/年(間接経費を含む)*
②高度化ビーム技術開発課題:1億円程
度/年(間接経費を含む)*
キーテクノ
ロジー研究
開発の推進
96
研究振興局
基礎基盤
研究課
光・量子化
学研究拠点
形成に向け
た基盤技術
開発
97
原子力システム研究開発事業
我が国の原子力政策において有意義な位置を占め、
国の「原子力政策大綱」に示された研究開発の方向
性との整合性を有し、かつ、エネルギー対策特別会
計の要件を満たす革新的原子力システムに関する研
約2億3,077万円程度/3年
究開発を実施。基盤研究開発分野では、革新的原子
力システムや革新的な技術及びそれらの開発を支え
る共通基盤技術を創出するための研究開発を対象と
する。
99
原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブ
原子力利用に係る技術基盤を高い水準に維持すると
ともに、新たな知識や技術を創出し、人材の養成等
我が国の原子力の利用と発展を支える原子力基礎・
基盤研究分野において、政策ニーズを明確にし、よ
り戦略的なプログラム・テーマを設定することによ
り、競争的環境の下、研究を推進する。
①戦 略的原子力共同研究プログラム:
2,000万円〜3,000万円程度/年*
②究 炉・ホットラボ等活用研究プログ
ラム:4,000万円程度/年*
③若 手原子力研究プログラム:1,000
万円程度/年*
①は3年程度
②は3年程度
③は2年程度
①は 大 学、 国 研、 独 法、
民間企業等
H20年
②は大学、大学共同利用機
3月14日 〜
関法人、公的研究機関
4月25日
③は 研究機関等に属する
40歳以下の若手研究者
100
人文学及び社会科学における共同研究拠点の
整備の推進事業
大学に蓄積された人的・物的資源を活用し、国公私
立大学を通じた共同研究の促進及び研究者ネット
ワークの構築、並びに学術資料等の共同利用の促進
等、研究体制や研究基盤を強化するために、人文学
及び社会科学分野における共同研究拠点の整備を私
立大学等にも拡大することを目的とする。
9,000万円/年*
5年間
・大学附置の研究所、研究
施設(センター)
等
・上記を組み合わせたネッ
トワーク型
近未来の課題解決を目指した実証的社会科学
研究推進事業
「豊かな経済活力を生む社会経済制度の設計」「生活
の豊かさを生む新しい雇用システムの設計」という
2つの研究領域の下、実証的な研究方法による現状
把握や将来予測を前提として、政策や社会の要請に
応える課題解決を目指したプロジェクト研究を、大
学等への委託により実施する。
1,500万〜2,000万円/年*
3年以上5年以内
国 内 の 大 学、 短 期 大 学、
高等専門学校、独立行政
法人研究機関、公設試験 H20年
研究機関、特殊法人又は 7月30日
民法第34条に基づき設置 まで
された法人が設置する研
究機関
グローバルCOEプログラム
「21世紀COEプログラム」の基本的な考え方を継承
しつつ、世界的な卓越した教育研究拠点形成を重点
的に支援する。特に、若手研究者の育成機能と国際
的な拠点形成を強化する。
5,000万〜5億円程度/年*
※5千万円以下の申請も可能
原則5年間
国公私立大学
98
研究開発局
原子力協力課
研究振興局
学術企画課
101
高等教育局
102 大学振興課
H20年
5月28日 〜
5月29日
H20年
2月14日 〜
2月15日
59
競争的資金制度および提案公募型事業一覧表
●
文部科学省
担当部署・機関
事業名
科学技術・
学術政策局
103 調査調整課
科学技術振興
調整費室
概 要
1件当たりの助成・委託規模
(1−1)
若手研究者の自立的
環境整備
若手研究者が自立して研究できる環境の整備を促進
するため、世界的研究拠点を目指す研究機関におい
て、テニュア・トラック制(若手研究者が、任期付
きの雇用形態で自立した研究者としての経験を積
み、厳格な審査を経て安定的な職を得る仕組みをい
う。)に基づき、若手研究者に競争的環境の中で自立
性と活躍の機会を与える仕組みの導入を図る。自然
科学全般を対象とする。
2億5,000万円/年(間接経費を含む)*
(1−2)
イノベーション創出
若手研究人材養成
イノベーション創出の中核となる若手研究人材(博
士後期課程の学生や博士号取得後5年間程度までの
研究者)が、狭い学問分野の専門能力だけでなく、
1億円/年(間接経費を含む)*
国際的な幅広い視野や産業界などの実社会のニーズ
を踏まえた発想を身に付けるシステムを機関として
構築する取組に対し支援する。
若手研究者
養成システ
ム改革
104
科学技術・
学術政策局
調査調整課
105
106
科学技術・
学術政策局
調査調整課
科学技術振興
調整費室
110
科学技術・
学術政策局
調査調整課
原則5年間
大学または大学共同利用
機関、国公立試験研究機
関、独立行政法人
H19年
12月25日
〜H20年
2月25日
原則5年間
大学または大学共同利用
機関、国公立試験研究機
関、独立行政法人
H19年
12月25日
〜 H20 年
2月25日
H19年
12月25日
〜 H20 年
2月25日
女性研究者支援モデル育成
5,000万円/年(間接経費を含む)*
原則として
3年間
先端融合領域イノベーション
創出拠点の形成
長期的な観点からイノベーションの創出のために特
に重要と考えられる先端的な融合領域において、産
学官の協働により、次世代を担う研究者・技術者の
育成を図りつつ、将来的な実用化を見据えた基礎的
段階からの研究開発を行う拠点を形成する。(先端
融合領域例)
5億〜10億円/年/件(間接経費を含む)*
※当初3年間は3億円/年
原則10年間
H19年
大学又は大学共同利用機
12月25日
関、国公立試験研究機関、
〜 H20 年
独立行政法人
2月25日
地域再生人材創出拠点の形成
大学が有する個性・特色を生かし、将来的な地域産
業の活性化や地域の社会ニーズの解決に向け、地元
で活躍し、地域の活性化に貢献し得る人材の育成を
行うため、地域の大学(又は地域の大学のネットワー
ク)が地元の自治体との連携により、科学技術を活
用して地域に貢献する優秀な人材を輩出する「地域
の知の拠点」を形成し、地方分散型の多様な人材を
創出するシステムを構築する。
上限5,000万円程度/年
原則5年間
大学又は
大学共同利用機関
H19年
12月25日
〜 H20 年
2月25日
(5−1)
戦略的環境リーダー育成
拠点形成
イノベーション25に掲げる「世界に開かれた大学
づくり」と「世界の環境リーダーの育成」の一環と
して、また、「科学技術外交の強化」に掲げる「世
界の環境リーダーの育成」を推進するため、途上国
における環境問題の解決に向けたリーダーシップを
発揮する人材(環境リーダー)を育成する拠点を形成
する。
1億円/年(間接経費を含む)*
原則5年間
大学・大学共同利用機関
H19年
12月25日
〜 H20 年
2月25日
(5−2)
国際共同研究の推進
科学技術外交の強化の一環として、我が国と中国、
韓国、シンガポール等、アジア・アフリカ諸国にお
①先 端技術創出国際共同研究:3,000
ける先端技術を有する国々との科学技術協力を強化
万円/年(間接経費を含む)*
するとともに、これら諸国の優れた研究機関との相
②科 学技術研究員派遣支援システム開
互補完的な国際共同研究の実施等を支援する。また、
発:5,000万円(間接経費を含む)*
途上国で共同研究等を行う研究者の選定に資するシ
ステムを開発する。
①は原則3年間
②は原則5年間
大学、国公立試験研究機
関、独立行政法人、民間
等の研究機関
H19年
12月25日
〜 H20 年
2月25日
以下の研究課題について公募する。
●課 題1:iPS細胞を始めとするライフサイエンス
研究の推進・支援体制整備に向けた戦略策定のた
めの内外調査研究
●課題2:ライフサイエンスの先端科学技術が社会
に与える影響の調査
●課題1:
原則1年間
●課題2:
原則2年間
大学、国公立試験研究機
関、独立行政法人、民間
等の研究開発機関その他
研究能力を有する国内の
機関
H19年
12月25日
〜 H20 年
2月25日
108
109
直近の公募受付期間
自然科学全般又は自然科
学と人文・社会科学との
融合領域の研究を行って
いる以下の機関を対象と
する。大学又は大学共同
利用機関、国公立試験研
究機関、独立行政法人
科学技術・
学術政策局
調査調整課
科学技術・
学術政策局
調査調整課
科学技術振興
調整費室
対象者等
女性研究者がその能力を最大限発揮できるようにす
るため、大学や公的研究機関を対象として、研究環
境の整備や意識改革など、女性研究者が研究と出産・
育児等を両立し、その能力を十分に発揮しつつ研究
活動を行える仕組みを構築するモデルとなる優れた
取組を支援する。
科学技術振
興調整費
107
研究開発期間
アジア・ア
フリカ科学
技術協力の
戦略的推進
重要政策課題への機動的対応の推進
●課題1:3,000万円程度/年*
●課題2:3,000万円程度/年*
(注1)「1件あたりの助成・委託規模」は原則、直接経費で表しているが、直接経費と間接経費の配分が分からないものについては*印を付記している。
(注2)本一覧表は2008年7月現在で直近1年間での省庁およびNEDO・JSTでの公募案件について公開HP情報をベースに㈱アイワードにて取りまとめたもの。最新の情報はNEDO若手研究グラントHPを参照。
60
若手研究グラント成果実例 全国MAP
30 の研究成果を掲載しています。
1 ∼□
※本パンフレットには□
51 25 92
4 26 29 31 32 43 82
29
63
73 88
3
37
8
11
44
79
14 30 19 84 57 75 90
2
24
4
78 22 22
47
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
68
52
(略称:NEDO技術開発機構)
20
93
21
1 3 17 38 42 67
7
21
80
27
62
9
6 15 69 91
5
8
16
48
40
87
1 23 36 23
86
83 61 85
72
7
26
20 9 81 53 28 89
30
10 13
11 17 18
<川崎本部>
研究開発推進部 若手研究グラントグループ 松崎 肇、千田 和也
〒212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町1310 ミューザ川崎セントラルタワー20F
電話:044-520-5174
FAX:044-520-5178
URL:http://www.nedo.go.jp/itd/teian/
e-mail:[email protected]
24 14 16 58 70
27 10
12
お問い合わせ先
<北海道支部>
イノベーションオフィサー 佐々木 淳
〒060-0003 北海道札幌市中央区北3条西3-1-47 NORTH33ビル8階
電話:011-281-3355
FAX:011-221-4349
URL:http://www.nedo.go.jp/nedohokkaido/index.html
e-mail:[email protected]
60
ライフサイエンス分野
情報通信分野
<関西支部>
イノベーションオフィサー 古川 信二、竹田 隆一
〒530-0001 大阪市北区梅田3丁目3番10号 梅田ダイビル16階
電話:06-4306-5021
FAX:06-6344-4575
URL:http://www.nedo.go.jp/nedo_kansai/index.html
e-mail:[email protected]
環境分野
エネルギー分野 <九州支部>
イノベーションオフィサー 松崎 治洋
〒812-0011 福岡市博多区博多駅前2-19-24 大博センタービル10階
電話:092-411-7853
FAX:092-471-6975
URL:http://www.nedo.go.jp/nedo_kyushu/index.html
e-mail:[email protected]
産業技術に関する社会科学分野 ☆最新の情報はNEDO技術開発機構若手研究グラントHPにてご確認下さい。
ナノテクノロジー・材料分野 製造技術分野 融合的・横断的・統合的分野
インターナショナル分野
制作協力:(株)アイワード
撮影場所:ミューザ川崎、川崎ルフロン
(作成日:2008年9月16日)
2
NEDO
New Energy & Industrial Technology
Development Organization
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究開発推進部 若手研究グラントグループ
〒212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町1310 ミューザ川崎セントラルタワー20F
電話:044-520-5174 Fax:044-520-5178
URL:http://www.nedo.go.jp/itd/teian/ e-mail:[email protected]
NEDO
New Energy & Industrial Technology
Development Organization
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