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第5章 民間住宅ローンをチェックする
第5章 民間住宅ローンをチェックする 〔Q26〕どんな金融機関が住宅ローンを扱っているの? 〔A〕〔Q21〕で「フラット 35」を紹介しましたが、そこでは、特殊な形態の民間住宅ローンとして位置 付けています。ここでは、それ以外の一般的な民間住宅ローンを取り上げることにしましょう。 どんな住宅ローンを民間住宅ローンとするのかといえば、それは、民間の金融機関が自前の資 金で貸し付ける住宅ローンのことだといえます。自前の資金とい うのは、預金等として顧客から 集めた資金を住宅ローンとして商品化し貸し付けるというものです。“自社で調達した資金を自己 のリスク負担で貸し出す”こと から、プロパーローンという場合もあります。 では、どんな金融機関がこの民間住宅ローンを扱っているのでしょうか。系統としては、下の表 のように6つぐらいのグループに分けることができます。なお、このグループ分けは、手がける住 宅ローンの実態も加味したものとなっています。 区 分 住宅ローンの特徴 イ:銀行系・一般派 都市銀行および地方銀行が扱っている住宅ローン。どちらか といえば横並び的で、金利等の融資条件も似たり寄ったり。 最近、35 年固定の超長期固定型を扱い始めたところもある ロ:銀行系・ユニーク派 銀行系だが、通常の住宅ローンのほかに、一味違った商品 を出しているようなところ。外資 系や地方銀行などで、顧客 のニーズに合った商品を展開しているところが多い 信 用金庫は地域密着型の金融機関として全国各地に展 開。出資を通じて会員になることで住宅ローンの利用が可 ハ:信用金庫・信用組合 能。全国の信用金庫の元締めである信金中央金庫の 商品 系 を扱うところもある。信用組合は地域だけではなく職域や業 種ごとに展開。一般の人も出資組合員になることで住宅ロー ンの利用が可能 ニ:労働金庫系 関東エリアで展開の中央労働金庫の場合、一般の人でも「レ インボー倶楽部」に加入すれば住宅ローンの利用が可能。 働く女性が対象のローンを利用すれば各種特典が受けられ る ホ:農協系 JAバンクの住宅ローンで、「長期固定金利型住宅ローン・J A安心計画」や頭金不足に対応する商品などがある。農協 組合員以外の人が利用するには一定の手続きが必要 ヘ:ノンバンク系 「フラット 35」が主体の金融機関が多いが、プロパーローンを 用意しているところもある。インターネットを通じて、申し込み から審査・契約等まで行える金融機関もある 利用する場合のポイントとしては、次のような点が挙げられます。 (a)「銀行系一般派」は都市部に集中しており、主に企業のサラリーマンを顧客対象にする。給与 振込や公共料金の支払いなど、日常取引のあるところにまず相談を。 (b)「銀行系ユニーク派」はどちらかといえばマイナーな金融機関が多く、住宅ローンにしても都 市銀行には見られない変わり種商品(預金連動型のもの、手 数料無料で自動繰り上げ返済可 能なもの、つなぎ融資不要の新築戸建て向けのものなど)がある。資料を取り寄せて研究してみ るとよい。 (c)「信用金庫・信用組合系」「労働金庫系」「農協系」は会員や組合員になることが住宅ローンを 利用するための前提条件。地域・職業等によって区分され ているケースが多く、そういった条件 に合うか否かも要チェック。地域密着・職域密着型なので、自営の人に利用しやすい金融機関も ある。 (d)「ノンバンク系」はネット金融時代を反映して新規参入のところが多い。店舗を持たずに効率 の良い営業展開を図っているので、金利面では他の系統より 相対的に低めになっている。住宅 金融専門会社、損害保険・生命保険会社、ファイナンス系、住宅メーカー系、ネット・通信系、不動 産業界団体系など、顔ぶれ は実に多種多様。取り扱っている住宅ローンも自前の資金を手当て する必要のない「フラット 35」を主体にしているところが多い。無店舗の機関が多いので、 インタ ーネットを通じて利用条件等を調べることから始めることになる。 〔Q27〕民間住宅ローンはどんな住宅ローンなの? 〔A〕〔Q26〕で紹介した金融機関が扱っている住宅ローン(「フラット 35」を除く)は、建設・購入する 住宅に対する条件よりは、融資を受ける人に対する条件を厳しく設定しているのが一般的です。 具体的には、職業とか年収にポイントを置き、表向きはオープンであっても審査段階ではじかれ るケースも多いようです。要するに、“安定した職業で安定した収入のある人”にとっては利用しや すいといえます。以下、一般的な融資内容についてふれることにしましょう。 〔融資額〕 金融機関で異なりますが、多くは上限を 3000 万~1億円としています。ただし、年収に対する年 間返済総額の割合に よって、融資額を決めているケースもあります。例えば、年収が 300 万円 以上 400 万円未満の人に対しては、年間返済総額の割合が 30%以内に収まるよう に融資額を 算定します。 〔金利〕 変動型と固定期間選択型、それに長期固定型などがあります。固定期間選択型には1年固定 から 30 年固定まであり、都市銀 行の多くは3年ないし5年、あるいは 10 年固定をメーンにしてい ます。長期固定型は一部の信用金庫やノンバンク系などが採用していますが、最近、都市銀行 を中心に「超長期固定型住宅ローン」(返済期間 35 年)を扱うところも出てきています。また、返済 期間を3年とか 10 年、20 年と定めた上で、その全期間 を固定金利とするタイプもあります。団体 信用生命保険が付いていながら、かなりの低金利になっており、返済期間を短・中期にしても返 済可能な人は、検討してみる価値があります。 〔返済期間〕 一般的に最長 35 年となっています。ただし、完済時の年齢制限によって最長の 35 年が選べな いケースもあります。年齢制限は完済時 80 歳とか同 75 歳としている金融機関が多く、40 歳前後 から 45 歳前後の人は要チェックです。 なお、民間金融機関といっても多種多様です。従来型の金融機関(〔Q26〕〔A〕の表でいえばイ ~ホ)対ノンバンク系(同ヘ)といった対抗図式も考えら れます。「なじみのある金融機関が多い が、横並び的なところもある従来型」対「金利などに魅力があるが、不安の面もある新規参入型」 といった見方もありま す。 〔Q28〕民間住宅ローンを上手に利用する方法は? 〔A〕民間住宅ローンの金利は「フラット 35」などに比べて高いイメージがありましたが、最近では 金利優遇措置が定着したこともあって、それほどでもありません。また、固定金利選択型の短期 固定タイプでは、変動型の金利よりも低めに設定しているケースが多いといえるでしょう。 さらに、長期固定型の「フラット 35」の人気がこの2、3年で急速に高まってきたこともあって、従 来横並びの傾向が強かった民間住宅ローンがかなり変化 してきています。たとえば都市銀行な どでは、35 年の超長期固定型住宅ローンといった「フラット 35」に対抗する商品を出し始めていま す。 民間住宅ローンの魅力は、変動金利型、金利上昇によるリスクを抑えた上限付き変動金利型、 そして固定期間選択型、固定金利型など、すべての金利体系の商品を用意していることです。 特に固定期間選択型では、固定期間が終われば変動金利型にすることも、あるいは再度、固 定期間選択型にすることもできます。つまり、市場金利の動向を見ながら融通を利かせることが 可能というわけです。 また、自前の住宅ローン(プロパーローン)を扱いながら、「フラット 35」も扱っている金融機関も 多く、たとえば「『フラット 35』+自前の住宅ローン」といった組み合わせが可能です。 まだ低金利といえる現在は、「フラット 35」の長期固定型で安心感を確保し、変動金利型ないし 固定期間選択型で金利の動きに併せてお得度アップの融通を利かせる、そんな組み合わせパタ ーンが望ましいといえるでしょう。 民間住宅ローンの場合、融資金は土地を購入する資金に充てることができます。とりあえず土 地だけ先行して取得し、何年後かにマイホームを建てる、そんな ケースで民間住宅ローンを活 用してもよいのではないでしょうか。「フラット 35」も土地購入資金も融資対象にしていますが、あく までも建物建設資金と併せて申し込むことが条件なので、土地購入のための融資を先行させるこ とはできません。 また、民間住宅ローンには「借り換えローン」もあります。それについては、〔Q30〕で紹介しま す。 〔Q29〕金利優遇の住宅ローンを利用したい! その条件は? 〔A〕民間住宅ローンの中で金利優遇サービスが登場してきたのは、5、6年ほど前です。当初は、 期限付きの特別キャンペーンという形で展開されていましたが、いまでは当たり前の感がありま す。 わざわざ金利優遇とうたわなくても、当初から店頭金利を低くすればよいものを、と思いますが、 そこには、金融機関の顧客獲得に向けた戦略的な意味合いも含まれているようです。 ある都市銀行の金利優遇適用条件を紹介してみましょう。 (1)住宅ローンを新規に利用する人(借り入れ時 20 歳以上 70 歳まで。ただし、21 年以上の固定 コースの場合には 20 歳以上 59 歳まで。完済時 80 歳まで) (2)同一勤務先に満3年以上勤務している人で、給与振込を利用している人 (3)キャッシュカードやクレジットカードも含めたトータルなサービスが受けられる制度を利用中ま たは利用予定の人 これらが基本的な条件です。このほかいくつかの留意点はありますが、まずは、住宅ローンを 利用できる資格があって、金融機関と日常的な取引関係があれば、特に問題なく金利優遇措置 を受けられるでしょう。 〔Q30〕民間金融機関が対応している「借り換えローン」ってなに? 〔A〕金利の高かった時に借りた固定型の住宅ローンは、市場金利が低くなっても高い金利のまま で返済し続けなければなりません。そんなとき、高い金利で借りていた住宅ローンを、より金利の 低いものに切り替えます。それが、「借り換え」です。 具体例を挙げましょう。1989 年から 91 年ごろはほぼすべての金利のピーク時で、たとえば固定 金利型の公庫融資(当時)の基準金利は、当初 10 年間が 5.5%、11 年目以降が最高で 7.4%に 達していました。 以降、急速に金利は下がり続けましたが、高金利時代に固定金利を利用した人は、その恩恵を 受けることなく、高い利率のまま返済し続けなければいけないの です。特に公庫融資の場合、11 年目以降から金利が上がる段階制金利となっていたため、現在との金利差は4%ほどにもなりま す。 そうした金利差を解消しようというのが、「借り換えローン」です。借り換えた資金によってローン の残債務を完済し抵当権を抹消した上で、「借り換えロー ン」の抵当権を新たに設定する、という 手続きを行います。そのためには、むろん手続きための費用(「借り換えローン」の借入金が 1000 万円程度なら約 30 万円)がかかります。つまり、手続き費用がかかることを見込んだ上で、損か 得かの判断を下します。 判断基準のポイントは、(1)金利差1%以上(2)残債務の金額 1000 万円以上(3)残りの返済 期間 10 年以上――などです。いずれにしても、比較 的、高い金利の固定型で返済を続けている 人は、日常的に取引のある金融機関に相談し、シミュレーションなどをしてもらうとよいでしょう。