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フリースケールと エルイーテックで 共同開発。

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フリースケールと エルイーテックで 共同開発。
Success STORIES
Success STORIES
フリースケール ・セミコンダクタ・ジャパン株式会社
フリースケール ・セミコンダクタ・ジャパン株式会社
ノイズ環境でも安定動作。
フリースケールと
エルイーテックで共同開発。
ム的に異常を見えなくしている。「システムを
〜高信頼プロセッサ・ソリューション開発秘話〜
人間にたとえると、WDT は病気になった時に医
者に行くのと同じで、FUJIMI は定期検査の人間
ドックと同じです」
(エルイーテック石井氏)と
アミューズメント機器へのマイコン提供を行っているエルイーテックは、耐ノイズ性能を高める高レジリエンス技術「FUJIMI」
いう。
を持つ。フリースケールとエルイーテックでは、このFUJIMIの機能を ARM® 版 QorIQ(コアアイキュー)プロセッシング・プラッ
この度、フリースケールではエルイーテック
トフォーム(QorIQ LS1020A プロセッサ)に実装することで、高信頼性プロセッサ・ソリューションを共同開発した。これは、フォー
と、 最 新 の QorIQ LS1020A と FUJIMI を 組 み 合
ルトトレラントシステムをシングルチップで実現できるものだ。ここでは、FUJIMI 開発の経緯や特長、QorIQ LS1020Aの魅力など
わせることで高信頼性プロセッサ・ソリュー
を聞いた。
ションを実現した。「2012 の秋頃にマイコンで
はなくプロセッサで FUJIMI を実現できないか、
株式会社エルイーテック
常務執行役員
企画開発本部 本部長
辰野 功 氏
というお話をいただきました。ちょうどその頃
フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン株式会社
第三事業部
代理店技術統括部
マネジャー
QorIQ LS1 ファミリの開発にかかる頃で、当初
ユーザーロジックで実現しようとしたのですが、
金澤 正昭 氏
最終的にフレックスタイマの一部を FUJIMI 用に
解放することで CPU コアの周期リセットを実現
「環境により発生する静電ノイズやモーター
「エルイーテックはモトローラに自社ブラン
も暴走することがありました。そこで 30 年く
ドのチップを OEM していただいていました。フ
CPU をリセットするとソフトウェアの動作も
らい前に思いついたことが、CPU を周期的にリ
リースケールとの付き合いは、モトローラ時代
止まってしまう。そこで辰野氏は、割込みに注
セットするという方法でした」
(辰野氏)。
からのものです」
(石井氏)。
目したという。「割込み処理は、その直前の状
態を保持しており、ソフトウェアの動作に影響
一般産業システムへの展開を図っている。「エ
を与えません。そこで、割込み処理の一貫とし
ルイーテックは、実績ある耐ノイズ性のノウハ
てリセットを行うようにしました。OS が動いて
ウを一般産業システムへも展開しています」
(石
いようが他の処理をしていようが、問題なく動
エルイーテックは、この周期的な CPU リセッ
井氏)。知財関連を担当しているエルイーテッ
作できるようになりました」という。
トの原理を活かした「FUJIMI」を提供している。
クの長坂氏は、「特許は、日本で権利化済み、
ちなみに、FUJIMI は 2011 年の組込み総合技術展
米国、欧州、インド、中国などの主要国で審査
労した。「DMA が入って CPU が止まると時間的
中です」という。
に間に合わなくなってしまいます。QorIQ LS1
(ET2011)の ET アワードで最優秀賞を獲得した。
確実に戻せる方法はない
エルイーテックでは、外部からの改ざんを防
FUJIMI は、リセットの際に RAM はいじらな
いので、I/O をソフト的に再構築できる。周期的
一方で、DMA(Direct Memory Access)には苦
ファミリでは、バスに対する割込みを CPU に対
割込み処理の一貫として
リセットを実施
する割込みレベルより下げるという方法で対処
トは、ウオッチドックタイマ (WDT) によるもの、
止するセキュリティシステムに加え、異常時で
に CPU をリセットすれば、暴走は見えなくなる。
違法命令 ( 誤った命令 ) の検出、メモリや I/O に
も動作を継続する「高レジリエンス・システム」
その課題となるのが、ソフトウェアの実行であ
ソフトウェア的な暴走は、プログラムの検証
対する無効空間へのアクセス、コプロセッサに
を追求してきた。それは、同社がアミューズ
る。「FUJIMI では、割込み処理の一部としてリ
FUJIMI で は、CPU コ ア だ け を リ セ ッ ト し、I/
チェックし、暴走していれば割込み処理(NMI
ツールの充実によって減ってきている。ハード
よる監視などで行うことが多い。「リセット以
メント機器へのマイコン提供を行ってきた実績
セットを行っていますので、ソフトウェア的に
O 周りはそのままにしたい。そのためには、部
:Non Maskable Interrupt)の一貫として動作ロ
ウェア的な暴走は、回路設計時のバグ以外にも
外に動作を確実に戻せる方法はありません」
(エ
からだ。エルイーテックは、三井物産が主体と
も問題ありません」
(辰野氏)。
分リセットがかけられる CPU コアが必要となる。
グを保存してからリセットを実施している。そ
ノイズや熱、放射線などプロセッサ外部からの
ルイーテック辰野氏)という。しかし、一度リ
なって設立した会社で、アミューズメント機器
要因もある。
セットしてしまうと動作の継続ができず、初期
向けの高信頼性マイコンを提供している。
システムの暴走には、さまざまな要因がある。
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ることで復旧することは知られている。リセッ
状態からの再起動になってしまう。
は見つかりませんでした」
(辰野氏)。
エルイーテックでは、FUJIMI の特許を取得し
暴走は見えなくなる
プロセッサが暴走したとき、リセットをかけ
て、複数のリセット回路が入っている CPU コア
ノイズはとても高く、いくら EMI 対策を施して
周期的に CPU をリセットすれば
リセット以外にプロセッサの動作を
しました」
(フリースケール金澤氏)。
ARM PARTNERS SUCCESS
WDT は異常が発生してからリセットを行うが、
FUJIMI は周期的にリセットを行うことでシステ
しました」
(辰野氏)。
FUJIMI は、 割 込 み 処 理 の 開 始 前 に 暴 走 を
「FUJIMI の開発に際し、調べられる限りの CPU
れにより、暴走が起きても CPU はリセット以前
コアを調べましたが、マルチの CPU コアを除い
に保存していた復帰用データを用いて動作を復
ARM PARTNERS SUCCESS
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フリースケール ・セミコンダクタ・ジャパン株式会社
フリースケール ・セミコンダクタ・ジャパン株式会社
ARM コアを搭載した
3W 以下で動作しファンレスでも
初の QorIQ プラットフォーム
ができます」
(金澤氏)。
高性能を発揮
LS1020A
「現在、実地テストが始まっているものに、
屋外の気象観測機器があります。担当者による
QorIQ LS1 通信プロセッサ・ファミリは、い
株式会社エルイーテック
Executive Coordinator
石井 孝一 氏
QorIQ は、もともと PowerQUICC などと同じ
ずれの品種も ARM コアとして Cortex-A7 を複
対に止まってくれるな』といいます。たとえば、
Power Architecture コアを搭載したプロセッサ
数搭載しており、3W 以下の低消費電力で動作
電車の鉄橋にある風向風速計が止まってしまう
を展開していたが、2012 年にコアに依存しない
できる(LS1022A は標準で 2W 以下)。さらに、
と、それが復旧するまで電車の運行ができなく
ソフトウェア・アウェアな Layerscape システ
LCD コ ン ト ロ ー ラ、 内 蔵 SRAM の 信 頼 性 を 高
なります」
(辰野氏)。
ム・アーキテクチャを発表し、その第一弾とし
め る ECC 保 護 機 能、DDR3L / DDR4 メ モ リ サ
て ARM の Cortex®-A7 コアを搭載した QorIQ LS1
ポート、仮想化サポート、QUICC Engine テク
ファミリを発表した。
ARM コアを搭載した QorIQ プラットフォーム
フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン株式会社
デジタルネットワーキング製品本部
プロダクト マーケティング
LS1 ファミリには、QorIQ LS1020A プロセッサ、
浜野 正博 氏
QorIQ LS1021A プロセッサ、QorIQ LS1022A
QorIQ LS1020A + FUJIMI の
高信頼性プロセッサ・ソリューション
ノロジ、SATA3 および PHY 内蔵 USB 3.0 などを
株式会社エルイーテック
統合している。
QorIQ LS シリーズのQorIQ LS1020AでFUJIMI
「FUJIMI はいかにも日本人らしい技術といえ
機能を実現した。「われわれが求めていたのは、
るでしょう。同じようなことは、コストをかけ
ファンレスで高性能を発揮できるプロセッサ
て多重化すれば実現できますが、FUJIMI はシン
企画開発本部
新規事業 チーフ
長坂 義仁 氏
帰させることが可能だ(図 1)。周期的に CPU
プロセッサの 3 品種がラインアップされている。
の状態が記録されるので、ログとしても使用で
QorIQ LS1020A プロセッサ(図 2)は、エンター
ARM 版 と Power Architecture 版 と の 違 い と
でして、それに QorIQ LS1020A はマッチしま
グルチップで実現しています。FUJIMI には『不
てきました。それをベースに ARM コア搭載プ
きる。
プライズアクセスポイントや、マルチプロト
し て フ リ ー ス ケ ー ル の 浜 野 氏 は、「 お 客 様 や
す」
( 辰 野 氏 )。QorIQ LS1020A は、Cortex-A7
死身 ( 死なない )』と『富士見 ( 最高峰 )』という
ロセッサを充実させています。ARM アーキテク
一般的なリセットはできるのかという疑問が
コル IoT(Internet of Things)ゲートウェイ、セ
マーケットのニーズによって棲み分けていま
コアを 2 つ搭載し、低消費電力で動作しなが
意味があり、日本人の優れた発想で多くのソ
チャというとコンシューマというイメージがあ
わく。それに対して辰野氏は、「RAM の中まで
キュリティアプライアンスといったエンタープ
す。たとえば、通信系や産業系など既存のソ
ら も、5000 CoreMark 以 上 の 高 性 能 を 発 揮 し
リューションに活用していただきたいと思いま
りますが、フリースケールは ARM プロセッサ
初期化することで、はじめて一般的なリセット
ライズ用 / 民生用ファンレスネットワークアプ
フトウェア資産を活かしたいお客様は Power
ている。
す」
(長坂氏)。
でも高信頼性が要求されるアプリケーションで
ができるようなります。リセットの概念まで変
リケーションに向けたプロセッサとなる。QorIQ
Architecture 版を選ばれることが多く、民生系
「高性能なプロセッサであり、たとえば雷が
「現在は、さまざまな分野で CPU に頼ってい
えているということです」という。
LS1021A プロセッサは、ディスプレイコントロー
やコスト的に厳しい業界では ARM 版が多いと思
落ちるような屋外の計測器や、ノイズの多い
ます。しかし、CPU が暴走する可能性を完全に
今回、FUJIMI 技術と組み合わせることで、さら
ラと産業用インタフェースが追加されており、
われます。ARM 版は、ライブラリなどのソフト
工場内でのシステムで使えることから、産業
は排除できないため、常に最悪の状況を考えて
なる高信頼性を獲得しました。引き続き通信
ズが周辺回路(I/O)の設定を変更してしまうよ
ファクトリオートメーションやビルディング
ウェア資産やエコシステムも多く揃っています
用システムが当初のターゲットです。一般の
おくべきです。FUJIMI でプロセッサを日常的に
インフラや産業系などでもフリースケールのソ
うな暴走に対して、FUJIMI では OS のリマウント
オートメーション、M2M、プリンタ、航空宇宙
ので、これらを有効活用するには ARM 版が良
プロセッサで使用されている保護ダイオード
検診しておくことをお奨めします」
(石井氏)。
リューションが活躍し続けるでしょう」
(浜野
という処理を行っている。「リセットをかけた
などのアプリケーションに向けたものだ。QorIQ
いでしょう」という。さらに、ペリフェラルは
では、とてもまかないきれないほどのノイズ
「フリースケールはモトローラ時代から組込
後に、すべての I/O に対してリマウントを行っ
LS1022A プロセッサは、最適なコストパフォー
ARM 版も Power Architecture 版も共通している。
がある環境でも、安定して動作し続けること
みシステムに向けたソリューションを提供し
ています。ただし、データは変えていないので
マンスを実現する低消費電力化に優れた製品で、
「Power Architecture 版 と ARM 版 の い ず れ へ 移
処理の続行は可能です」
(辰野氏)。
極めて電力制約の厳しい産業アプリケーション
行しても、ペリフェラルに関しては同じように
向けに対し、高い信頼性を実現している。
扱えます」
(浜野氏)。
Security Fuses
Security Monitor
れ に 対 し て 辰 野 氏 は、「 割 込 み 処 理 が 一 つ 増
ウェア的には、すべてのコアに対して周期リ
セットがかけられるようにしています。実際に
は AMP で動作させることが多く、コア間通信
もしていることから、たとえ片方のコアに不具
割込み信号
QuadSPI Flash
暴走中
割込みプログラム
2x DUART, 6x LP UART
3x I2C, 2x SPI, GPIO
システム
正常判定
復帰情報
保存
リセット待ち
ループ
処理開始
復帰フラグ
判定
ARM PARTNERS SUCCESS
システム
チェック
リアルタイム
割込み処理
処理開始
復帰フラグ
判定
エラー
図 1:FUJIMI のタイミングチャート。
割込みからの
復帰
異常レベル
判定
エラー
一定の時間
合が起きても問題なく動作させることができま
す」
(辰野氏)。
DDR3L/4
Memory
Controller
128 KB
SRAM
回復処理
RAM
チェック
回復処理
システム初期化
Audio Subsystem:
4x I2S, ASRC, SPDIF
uQE
(HDLC,
TDM,
PB)
Security
(XoR,
CRC)
USB 2.0
Core Complex
Basic Peripheralsand Interconnect
セプトが入っており、フリースケールとの高
発したことにより、良いアイデアを持った多
FlexTimer, PWM
1x USB 3.0 w/ PHY
最後に浜野氏は、「FUJIMI は全く新しいコン
信頼性プロセッサ・ソリューションを共同開
Cache Coherent Interconnect (CCI 400)
1x SD/MMC
リセット・プログラム
割込み開始
予定だという。
32 KB
I Cache
512 KB Coherent L2 Cache
IFC Flash
応用プログラム
32 KB
D Cache
一括でフリースケールの代理店から受けられる
NEON
SATA 3.0
さらに、マルチコアでも問題ない。「ハード
System Interfaces
32 KB
I Cache
FPU
PCIe 2.0
という。
32 KB
D Cache
NEON
ARM®
Cortex®-A7
Core
PCIe 2.0
る 程 度 な の で、 ほ と ん ど 問 題 は あ り ま せ ん 」
DMA
CPUリセット信号
FPU
ARM®
Cortex®-A7
Core
Ethernet
え た だ け の た め、 実 測 で 1.5% 程 度 ロ ス が 出
Power Management
暴走発生
フ リ ー ス ケ ー ル の 最 新 プ ロ セ ッ サ QorIQ
ソフトウェアの提供やサポートは、デバイスと
System Control
Internal Boot ROM
速度が遅くなるのではという疑問もある。そ
氏)という。
ルイーテックからのソフトウェアが必要になる。
Ethernet
さらに周期的なリセットをかけると、動作
も充分に活用いただける製品を提供しています。
LS1020A で FUJIMI を使いたいユーザーには、エ
Ethernet
暴走のレベルにはさまざまあるが、特にノイ
14
と『データの 1 つや 2 つは欠けても良いが、絶
くのアプリケーションで活躍できることを楽
しみにしています。FUJIMI は、2014 年 10 月に
開 催 さ れ る FTF( フ リ ー ス ケ ー ル・ テ ク ノ ロ
4-Lane 6 GHz SerDes
Accelerators and Memory Control
Networking Elements
図 2:QorIQ LS1020A のブロック図。Cortex-A7 を 2 個搭載し、低消費電力ながら高い性能を発揮する。
ジ・フォーラム)2014 にも出展されますので、
そこでも存分にその効果を確かめてください」
とまとめた。
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