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基地局エミュレータとMIMO チャネル・エミュレータを 使用した

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基地局エミュレータとMIMO チャネル・エミュレータを 使用した
次世代無線
基地局エミュレータとMIMO
チャネル・エミュレータを
使用したMobile WiMAX
デバイスの性能評価
この記事では、チャネル・エミュレータを使用して、MIMOレシーバの性能を評
価する方法を説明します。テストは単純なものから複雑なものへという順序
(AWGN条件でのテスト、既知の静的チャネルでのMIMOテスト、実環境に近いチャ
ネルでのテストの順)で実行しました。この文書では、これらの各段階でのテスト
により、デザインの信頼性を高めるとともに、複雑な実環境でのテストでは特定
が困難な問題を発見できる可能性があることを示します。
I
EEE 802.16ワーキング・グループは、ブロー
ドバンド無線アクセス規格の開発にフォーカ
スしています。この作業の一環として、携帯
機器向けの物理層仕様が作成されています1。こ
れは、OFDMA(直交周波数分割多重接続)と、
AMC(アダプティブ変調/コード化)、MIMO(マ
ルチ入力マルチ出力)などの高度な手法を組み合
わせたものです。AMCやMIMOなどの手法を使
用した場合のネットワークでの全体的な性能向
上は、ネットワーク内のクライアント・デバイ
スのレシーバ特性に大きく左右されます。例え
ば、高品質のレシーバに対しては、ネットワー
クは複雑な変調方式を容易に使用できるため、
スループットが向上します。この記事では、基
地局エミュレータとMIMOチャネル・エミュレー
タを使用して、市販のMobile WiMAXデバイス
のレシーバ性能を評価します。
E6651Aは、さまざまな変調およびコード化方式
で、MIMOありとMIMOなしの両方の条件で、ダ
ウンリンクの「pingテスト」を実行するために
使用しています。
E6651Aには2つのRFポートがあり、MIMO
テスト用のトランスミッタ出力を提供できます。
各 ダ ウ ン リ ン ク 信 号 は シ グ ナ ル・ ア ナ ラ イ ザ
(MXA)に入力され、シグナル・アナライザがRF
信号を差動ベースバンド・デジタル信号に変換
して、PXBへ入力します。
N5106A PXB MIMOユニバーサル受信機テ
スタは、ベースバンド・チャネル・エミュレー
タ で あ り、 さ ま ざ ま な シ ン グ ル・ チ ャ ネ ル/
MIMOフェージング条件をエミュレートできま
す。PXBは、ドップラー拡散や遅延拡散などの
チャネル特性に加えて、アンテナ間隔、極性、
アンテナ・ローブ・パターン、角度拡散などの
アンテナ特性もエミュレートできます。PXBは
ベースバンド構成で使用できます。ここでは、
PXBを信号源(MXG)に接続して、さまざまな無
線フォーマットでのレシーバ性能をテストしま
す。
測定セットアップ
図1と2に、テストに使用する機器の接続図と
写真を示します。E6651Aは、Mobile WiMAX
デバイスのテスト用に設計されたフル機能の基
地局エミュレータです。RFテスト、プロトコル
機能のエミュレーション、エンドツーエンドの
Michael Lawton、Peter Cain
アプリケーション・テスト、プロトコル・コン
フォーマンス・テストなどの、さまざまな使用 Agilent Technologies Inc.
モ デ ル を サ ポ ー ト し て い ま す。 こ こ で は、 (米国カリフォルニア州サンタ・クララ)
MICROWAVE JOURNAL®の許可を得て、Microwave Journal誌2009年11月号から転載
©2010 Horizon House Publications, Inc.
次世代無線
れた行列の固有値が、その行列の値の
わずかな変動にどれだけ影響されやす
いかを示す指標です。コンディション・
ナンバーが小さい場合は、固有値はわ
ずかな変動(ノイズ)の影響を受けにく
MXG
PXB MIMO
いので、チャネルは2つのMIMOスト
Agilent E6651A
DUT
MXA
チャネル・
WiMAXテスト・セット
リームをサポートするのに適していま
エミュレータ
す。コンディション・ナンバーが大き
30 dB
い場合は、チャネル行列はノイズの影
▲ 図1 レシーバ性能測定の機器セットアップ
響を非常に受けやすいため、複数の空
間ストリームをサポートするには、シ
わ か り ま す。
ステムに必要なS/N比を大幅に上げる
WiMAX Forum
必要があります。
のテスト・リミッ
図4に、2×2のMIMOチャネルの接
トは、理論的な熱
続図を示します。Tx/Rxペアのそれぞ
雑音パワーを計算
れに固有のチャネルがあります。これ
し、レシーバの雑
は一般的には時間変動する複素インパ
音指数による劣化
ルス応答で表現されます。簡素化した
と実装による損失
静的チャネルでは、h00、h01、h10、
を仮定して設定さ
h11をそれぞれ1つの行列内の複素定
れています。この
数 で 表 す こ と が で き ま す。 行 列
テストに合格する
(1,0,0,1)のコンディション・ナンバー
と、デバイスと測
は0 dBであり、直交する2つの空間ス
定セットアップの
トリームを持つ理論的に完全なMIMO
両方に対してある
チャネルを表します。図5のパケット・
程度の信頼性が得
▲ 図2 レシーバ・テスト用の測定セットアップの写真
エラー・レート曲線は、シングル入力
られます。
シングル出力(SISO)リンクと、2台の
1/2 CTC CPSK 5/8 CTC 64QAM
トランスミッタと2台のレシーバを使
1
静的フェージング
用 し た 理 想 的 なMIMOリ ン ク( コ ン
条件でのMIMO
ディション・ナンバー=0 dB)での、
0.1
性能
必要なS/N比の変化を示しています。
17 dBの差
MIMO手法は、 また、この図には、コンディション・
0.01
−84 dBm、0.0043 PER
−67 dBm、0.0043 PER
無線チャネルのマ ナンバーが異なるさまざまなチャネル
17 dBの差
ルチパス特性を利 のパケット・エラー・レート曲線も示
0.001
用して、リンクで されています。
高次のダイバーシ
Cain3がプロットしたグラフには、
0.0001
–90
–85 –80
–75
–70 –65
ティを利用できる コンディション・ナンバーと、与えら
受信プリアンブル・パワー(dBm)
ようにするか、分 れたエラー・ベクトル振幅(EVM)を維
割された空間スト 持するために必要な追加の搬送波対雑
▲ 図3 AWGN条件でのパケット・エラー・レート
リームを作成する 音(C/N)比の経験的な関係が示されて
こ の テ ス ト・ セ ッ ト ア ッ プ で は、 ことにより、伝送データのスループッ います。図6の例では、青のラインが
PXBからのデジタル出力を信号源で トの向上を目指すものです。空間スト 32 %のEVMを維持するために必要な
RFにアップコンバートしてから、被 リームによるデータ・スループットの 追加のC/N比を示します。このグラフ
試験デバイス(DUT)に接続します。フ 向上は画期的な技術であり、適切な条 上には、この記事で示す測定に対応す
ル機能の無線機をサポートするため 件では、Shannonの定理を超えるデー る3つのデータ・ポイント(黄色の円、
に、ケーブル接続にアイソレータを使 タ・レートの実現が可能です。MIMO 四角、三角)が示されています。この
用して、フェージングなしのアップリ はマルチパス・チャネルの特性を利用 グラフから、与えられたEVMに必要
ンク信号をE6651AのRF1ポートに供 しているため、単純なAWGNチャネ なS/N比と、特定のビット・エラー・
ルを使用して性能を評価することはで レート曲線に関連するS/N比との間に
給します。
きません。ただし、実環境をエミュレー は、高い相関があることがわかります。
トしたチャネルを使用して性能をテス さらに、この図から、コンディション・
熱雑音性能
図3に、熱雑音条件での被試験デバ トする前に、期待される動作がわかっ ナンバーが大きい場合は、レシーバの
イスの感度測定結果を示します。この ている単純な静的チャネルを使用して 実装にMIMO手法を使用しても実際的
図 に は、WiMAX ForumのRadio MIMO性能をテストしておくことは有 な利点はないことがわかります。シス
Conformance Test(RCT)仕様2に定 益です。
テムがエラー・レートを低減できない
チャネルが複数の空間ストリーム からです(コンディション・ナンバー
義されたテスト・リミットが注釈とし
を提供するのに適しているかどうかを =25 dBの曲線を参照)。
て記載されています。
この結果から、レシーバが相加性 評価する方法の1つは、コンディショ
白色ガウス雑音(AWGN)条件で要求さ ン・ ナ ン バ ー を 計 算 す る こ と で す3。
れている感度リミットを満たすことが コンディション・ナンバーは、与えら
デジタル
RF
デジタル
パケット・エラー・レート
RF
2
次世代無線
h00
h10
h01
s0、s1、...
シンボル
s0、s1、s2、...
r0、r2、...
MIMO
MIMO
エンコード
デコード
s0、s1、s2、...
h11
hRx、Tx
s1、s3、...
r1、r3、...
▲ 図4. 2×2のMIMOチャネル
コンディション・ナンバー=
5/6 64QAM (AWGN)
5/6 64QAM(歩行者B)
1/2 QPSK (AWGN)
1/2 QPSK(歩行者B)
1
1
0. 1
0.01
0.001
0.0001
0.00001
–80
–70
–60
–50
–40
受信プリアンブル・パワー(dBm)
パケット・エラー・レート
パケット・エラー・レート
0 dB 10 dB 15 dB 20 dB
5/6 64QAM-SISO
0. 1
0.01
0.001
0.0001
0.00001
–100 –90
▲ 図5 さまざまなコンディション・ナンバーの
静的チャネルでのMIMO性能
–70
–60
–50
–40
▲ 図7 ノイズおよび歩行者B条件でのQPSKと
64QAM
30
5/6 64QAM歩行者B(SISO)
5/6 64QAM歩行者B(SIMO)
5/6 64QAM歩行者B(マトリクスA)
5/6 64QAM歩行者B(マトリクスB)
25
20
15
1
0
良
5
10
15
20
コンディション・ナンバー
コンディション・ナンバー
25
悪
C/N比との差
0 dB
0 dB
10 dB
4.5 dB
15 dB
9 dB
25 dB
低減不可
変調/コード化:5/6レート64QAM、PER 10 %
▲ 図6 コンディション・ナンバーと必要なS/N
比の増加
パケット・エラー・レート
EVMが32 %のC/N比
35
10
–80
受信プリアンブル・パワー(dBm)
0. 1
0.01
0.001
0.0001
0.00001
–70
–65
–60
–55
–50
–45
–40
受信プリアンブル・パワー(dBm)
▲ 図8 WiMAX MIMOレシーバ性能
者Bチャネルを使用すると、感度が約
静的チャネルでのテストの利点は、 8 dB低下します。5/6レート64QAM
測定結果とMIMO動作の理論を比較で では、歩行者Bチャネル条件で測定す
きることです。しかし、システムの期 ると、レシーバのエラー・レートは低
待される性能を評価するには、時間変 減できません。この結果を検証するた
動する実環境のチャネルをエミュレー めに、別のDUTに対して同じ測定を実
トする必要があります。この記事では、 行したところ、同様の結果が得られま
実環境のチャネルの例として、ITU歩 した。
図8に、さまざまなSISO/MIMO構
(移動速度3 km/h)
行者プロファイルB
成 で の5/6レ ー ト64QAMの 性 能 を 示
を使用します。
図7に、1/2レートQPSKと5/6レー します。SIMOの緑のラインは、Rxダ
ト64QAMで のSISOレ シ ー バ の 性 能 イバーシティの利点を示し、低減不可
を、AWGN条件と歩行者Bチャネルの 能なPERが0.1 %にまで低下していま
両 方 の 条 件 で 示 し ま す。1/2レ ー ト す。これは、各チャネルのエラーを相
QPSKでは、1 %のPERレベルの歩行 互に排他的なランダム変数と仮定した
ITU-PedBチャネルのレシーバ性能
3
ときに、理論的に予想されることです
( す な わ ち0.01×0.01=0.0001)。 興
味深いことに、マトリクスA MIMO(送
信ダイバーシティ)を採用した場合は、
低減不可能なエラー・レートは、Rx
ダイバーシティで実現される0.01 %
ではなく、1 %になります。これは、
強いフェージング下での量子化の問題
によって説明できます。すなわち、Tx
ダイバーシティを使用すると、単純な
Rxダイバーシティの場合とは異なり、
各Rxはサンプリングされた1つの波形
から2つのTx信号を抽出する必要があ
り ま す。 た だ し、 マ ト リ ク スAの
MIMOでは、青のSISO曲線に比べて
ダ イ バ ー シ テ ィ 利 得 が 得 ら れ ま す。
WiMAXネ ッ ト ワ ー ク が 約10 % の
PERを最適化しようとしていることを
考えれば、マトリクスAの性能上の利
点はシステムにとって貴重です。最後
に、マトリクスBのMIMOでは、ここ
に示す歩行者Bチャネルの条件でも、
データ・スループットを2倍にできる
ことがわかります。ただしその代わり
に、必要なS/N比が増加します。
まとめ
この記事では、基地局エミュレー
タとチャネル・エミュレータの組み合
わせて、MIMO対応レシーバの性能を
評価する方法を説明しました。AWGN
と 静 的MIMOの 両 方 の チ ャ ネ ル 条 件
で、測定結果を理論と比較しました。
最後に、ITU歩行者Bプロファイルで
のMIMOレシーバ性能の結果を示しま
した。この結果から、ITU歩行者Bプ
ロファイルがレシーバにストレスを印
加すること(低減不可能なエラー・レー
トの存在によって示される)
、それに
も関わらず、この無線環境でも受信ダ
イバーシティとMIMOの両方の利点を
利用できることを示しました。
謝辞
この研究に関して洞察に満ちた分
析 を 与 え て く れ た 同 僚 のHong Wei
Kongに感謝します。
参考文献
1. 802.16e-2005 IEEE Standard for Local and Metropolitan Area Networks:Part
16 Air Interface for Fixed and Mobile Broadband Wireless Access Systems;
Amendment 2:Physical and Medium Access Control Layers for Combined
Fixed and Mobile Operation in Licensed Bands and Corrigendum 1.
2. WiMAX Forum(tm) Mobile Radio Conformance Tests mRCT Release 1.0
Approved Specification Revision 2.0.0.
3. P. Cain,“What You Should Know About MIMO Operation and
Measurement,”http:www.mwjournal.com/BGDownload/
MWJ1012AgilentInsertOct.pdf.
4. M. Alamouti,“A Simple Transmit Diversity Technique for Wireless
Communications,”IEEE Journal of Selected Areas of Communication, Vol.
16, No. 8, October 1998, pp. 1451-1458.
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Published in Japan, April 26, 2010
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