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様式第2号 平成23年度 独 創 的 研 究 助 成 費 実 績 報 告 書 平成24

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様式第2号 平成23年度 独 創 的 研 究 助 成 費 実 績 報 告 書 平成24
様式第2号
平成23年度
独 創 的 研 究 助 成 費 実 績 報 告 書
平成24年3月30日
申
請
者
調査研究課題
学科名 保健福祉
氏 名
近藤理恵
印
日韓仏の子ども虐待をした親に対するプログラムに関する研究
氏
代
表
調査研究組織
職 名 准教授
名
近藤 理恵
所属・職
専門分野
役割分担
保健福祉学部・保健福 社 会 学 ・ 社 会
調査実施、研究総括
祉学科・准教授
福祉学
分
担
者
調査研究実績
の概要○○○
1.調査研究目的
本研究の目的は、国家の家族問題への介入が大きいため、子ども虐待の対応においても
世界で最も進んでいるといわれているフランスと、儒教的家族意識が強く国家の家族問題
への関与が極めて小さい、日本と韓国において、子ども虐待対応システムを比較しなが
ら、虐待をした親に対するプログラムの比較検討をすることにあった。
2.調査研究内容
(1)以下の機関・アソシアシオンにおいて、インタビュー調査を行った。
フランス:子ども虐待対応システムを理解するために不可欠な機関に行くことができた。
① ONED (Observatoire national de l’enfance en danger)” (Green telephone “119” 、
Juge des enfantsとの面会を含む)
(国の子ども虐待の統計処理や政策提言を行っている国家機関)
② CRIP”(Cellule de recueil des informations préoccupantes)(子ども虐待のアセスメン
トを行っている県の機関)
③ ASE(Aide sociale à l’ enfance ) パリ市の子ども福祉機関(児童相談所のような所)
④ Centre d’etudes cliniques des communications familiales(虐待された子とその親へ
の介入を行っているアソシアシオン)
⑤ Centre français de protections de l’enfance(同上)
韓国:中央児童保護専門機関(国の子ども虐待の統計処理や政策提言を行っている機関)
(2)パリ社会科学高等研究院において開催された日仏コローク(社会学部門)におい
て、家族と暴力(La famille et la violence)というタイトルのもと、日本と韓国の虐待をし
た親支援プログラムに関して、フランスの状況とも比較しながら発表を行った。また、そ
の内容についてフランスの研究者と議論を行った。
調査研究実績
の概要○○○
成果資料目録
(3)日本、韓国、フランスの子ども虐待の政府統計と制度について比較検討を行った。
3.調査研究結果
調査研究結果は、以下の通りである。
(1) 日本、韓国、フランスの子ども虐待に対する司法関与の増大の必要性について
報告者は、日本の子ども虐待対応の最大の問題は、司法関与が極めて小さいことにある
と考える。今回収集してきた最新のデータによれば、フランスでは、75%が司法関与、25
%が行政関与であった。それに対して、日本は1%が司法関与、99%が行政関与である。
韓国も、日本と似たような値である。また、日韓では、フランスとは異なり、家庭裁判所
が、虐待をした親に対して、直接プログラム受講を命令する法システムになっていないこ
とが最大の問題である。それでも、韓国では、司法関与を増大させる議論がなされてい
る。だが、日本では、その議論さえほとんどなされていない状況にある。こうしたなか、
報告者は、今後、司法関与の強化の必要性を論文において訴えていく予定である。
(2) フランスの子ども虐待システムから日本が学ぶべき点について
今回の調査で、日本のシステムがいかにお粗末であるか、強く認識させられた。限られ
た紙面においてすべてを執筆することはできないが、フランスから学べるべき点につい
て、以下、簡単に列記する。
① フランスには、子ども虐待の情報を取得し、その状況をアセスメントした後、行
政か司法かに振り分けることだけを行っているCRIPという県の機関がある。日本
では、少ない人員で、児童相談所が子ども虐待の情報の取得・アセスメントから
その後のソーシャルワークまで、すべてを担当しているため、様々な問題が起こ
っている。こうしたなか、子ども虐待事例の振り分けだけに特化した機関がある
ことは注目に値する。また、リスクアセスメントシートも、日本のものよりも、
より良いものであると思われた。
② 行政が担当することになった事例においても、親はソーシャルワーカーの指導に
従うという契約を結び、もし親がソーシャルワーカーに反抗した場合には、その
事例はすぐに司法に回されるという点も、親とソーシャルワーカーとのトラブル
が絶えない日本の問題を解決するために有効だと思われた。
③ 虐待した親と子が分離された後の親と子に対する介入が極めて充実していた。ま
ず、親は、プログラムを受けなければならない。フランスでは、日本や韓国と違
い、決められたプログラム内容があるわけでもなく、また、グループワークもな
されていなかった。その代り、2人以上の専門家がその親に個人的に会って介入
していく方法が取られていた。フランス人は、マニュアル化されたプログラムを
好まず、個々人にあったプログラムが展開されていた。そして、注目すべき点
は、ソーシャルワーカーが、子どものために、親が最終的に変化できなくても、
親への介入を止めない点にある。また、虐待をされた子どもに対しても、アソシ
アシオンの専門家が、子どもの回復のために、定期的に介入を行っていた。さら
に、親子分離された子どもは、施設ではなく、里親のもとで育てられる場合が多
いのだが(里親率:フランス60%、日本10%)、里親のもとで育てられている間
も、子どもの権利擁護のために、虐待をした親と子どもとが専門家の前で定期的
に面会する実践がなされていた。日本では、以上のような実践が極めてお粗末で
あるため、フランスでの実践を参考に、システムの立て直しが求められる。
(3) 韓国の中央児童保護専門機関との議論
上記のようなフランスの状況を踏まえ、日韓の今後のシステムのあり方について議論を
行い、今後のあり方について検討した。
以上の研究結果を踏まえ、今後論文化する予定である。
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