愛する愛と 愛される愛

愛《 愛 す る 愛 と
愛される愛》
書名：
著者：
御木徳近
出版社：ＫＫベストセラーズ
出 版 年 月 ： 1986 年 10 月
総 ペ ー ジ 数 ： 269 ペ ー ジ
「
ISBN： 4584300852
推薦者
草下實
鳴門教育大学大学院教授
～苦悩から救ってくれた本～
人は成長の過程で，多くの壁に行く手を阻まれる。苦悩の火中にあれば，これが火宅に
生きる人の運命だなどと冷静に自己分析をする余裕すら見出せぬ。煩悩がある以上，これ
が世の常である。諸行無常なのだからいたしかたない。今の年齢になって，他人ごとのよ
うに悠長なことを言っていられるのかも知れない。
1970 年 は ，小 生 に と っ て 最 も 忘 れ が た い １ 年 と な っ た 。失 恋 で あ る 。そ れ も 一 方 的 な も
のであった。それでも女々しくも小生は，相手の女性をあきらめられずにもんもんとした
日 々 が 続 い て い た の で あ る 。 小 生 は こ の 時 の 自 分 の 精 神 状 況 を 話 す 時 は ，“ 白 旗 を 揚 げ て
も嫌いになれない程の恋”と説明する。その結果，半年間で身も心もボロボロになってし
ま っ た 。 何 で ？ そ ん な 時 に 御 木 徳 近 氏 の 著 ，「 愛 《 愛 す る 愛 と 愛 さ れ る 愛 》」 を 手 に し た 。
御木徳近氏は宗教家である。しかし，その内容は宗教とは異なり，愛のあり方について書
か れ た も の で あ っ た 。 そ の 本 の 論 点 を 示 せ ば ，「 男 性 と 女 性 の 愛 の 形 は 異 な る 。 男 性 の 愛
は愛する愛であり，女性の愛は愛される愛なのである。しかも両者ともその代償を求めな
い 。」 単 純 で ， 端 的 な も の で は あ っ た が ， 何 故 か 当 時 の わ た し に は ， 極 め て 説 得 力 の あ る
内容であった。その一節の言葉で，それまでの重く暗い霧が一瞬で晴れるように苦悩から
脱し得た。全ての現実を受け入れ，相手の行為を許すことで自分自身が助かる。苦悩とい
う重い課題に対する単純明快な解答が与えられた。人はそんなことで悩むなんて，という
内容であっても，火中に居るものにとっては，笑っていられない真剣な悩みであることが
多い。
一冊の本が人を救うこともある。だから，読書は大切ですよという意味ではなく，軽い
気持ちで一度読んでみてはいかがでしょうか。お薦めするのは，そんな一冊です。