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オートモテ ィブシステム
オートモティブシステム 1 小型ステレオカメラ ペネトレーション (世界最短) 日立オートモティブシステムズ株式会社は,自動車事故 の防止や被害軽減をめざし,外界および自車の走行状態を 認識する「外界認識走行システム」のセンサーとして,歩 行者・自転車なども検知し,ブレーキ制御による衝突回避・ 旋回室 液膜 被害軽減を可能にしたステレオカメラを自動車メーカーへ 噴霧粒径 (世界最小) 納入している。 今回開発した小型ステレオカメラは,左右のカメラ間距 インジェクタ 離(基線長)を従来の約半分とし,小型車両など限られた レイアウト要件においても搭載を可能としつつ,従来とほ 2 スワール噴霧方式 マルチスワール式ポート噴射インジェクタと噴霧方式 ぼ同等の衝突回避・被害軽減性能を達成した。 今後は低コスト化によるさらなる普及と性能向上を図 り,将来の自動運転を実現するセンサー開発を進めていく。 (日立オートモティブシステムズ株式会社) 2 マルチスワール式ポート噴射インジェクタ マルチスワール式ポート噴射インジェクタは,PFI(Port Fuel Injection)システムに用いられるガソリン噴射イン ジェクタであり,噴射されるガソリン粒径の微粒化と低ペ ネトレーション(低噴霧速度)を実現するために,世界で 始めて※ 1)スワール噴霧方式を採用した。 ソリンを旋回させて得るエネルギーを,効率よく噴霧の微 粒化エネルギーに変換することができる噴霧方式である。 カメラ間距離を従来の半分とした。 この噴霧方式を採用するために,日立が有するシミュレー ション技術と精密加工技術による噴霧コントロール技術を フィルタ オプティカル レンズ CMOS ビデオデータ (デジタル) ビデオデータ (デジタル) タイミングコントロール DRAM 左カメラ タイミングコントロール ASIC (画像処理) 電源 電源 項 目 サイズ 重量 DRAM ROM フィルタ オプティカル レンズ CMOS 認識マイコン (認識処理) 制御マイコン (車両制御処理) S/W入力 右カメラ 構築し,世界最小※ 2)の粒径と,世界最短※ 2)のペネトレー ションを併せ持った噴霧を実現した。この噴霧により,燃 費の向上と,排出ガスの低減が可能となった。 (日立オートモティブシステムズ株式会社) (量産開始時期:2013 年 11 月) CAN ※1)2013年10月時点,日立オートモティブシステムズ調べ。 ※2)2015年10月時点,日立オートモティブシステムズ調べ。 仕様(開発品) 幅:270×奥行き:130×高さ:40(mm) 3 モールドパッケージ型エアフローセンサー 650(g) 内燃機関への吸入空気流量を計測するエアフローセン 注:略語説明 CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor), DRAM(Dynamic Random Access Memory ), ASIC(Application Specific Integrated Circuit),ROM(Read Only Memory), S/W(Switch),CAN(Controller Area Network) 1 小型ステレオカメラの外観(上) ,構成(中)とその仕様(下) 日立評論 サーを,高精度・低価格で提供することを目的とし,従来 必要であったプリント基板を使わない樹脂モールドパッ ケージ構成をコンセプトとした新型センサーを開発した。 2016.01-02 109 オートモテ ィブシステム スワール噴霧方式とは,燃料通路に作られた旋回室でガ (内蔵) 専用IC カバー エアフローセンサー モールド パッケージ リード 従来製法 2段モールド ハウジング 新製法 パッケージを一体成型し, リードをレーザ溶接 吸入空気温度 センサーチップ (内蔵) 接着剤レス 吸入 空気 センシング素子 回路基板をハウジングへ 接着剤により熱硬化し, ワイヤボンディング 従来製法 カバーをハウジングへ 接着剤・熱硬化 カバー センシング素子 新製法 カバーをハウジングへ レーザ溶着 車両吸気管通路 モールド パッケージ A A 接着剤レス 薄膜 ダイアフラム A−A エアフローセンサー分解図 3 モールドパッケージ型エアフローセンサー 具体的には,以下の 4 点を開発し,製品適用を図った。 より,車室内騒音(音圧)を予測することが可能である。 (1)これまで必要であった外部電子部品を内蔵集約化した 車両伝達特性は,量産車や開発車を加振し,車室内の音圧 を測定することによって求めることができる。車両伝達特 専用 IC(Integrated Circuit) (2)厚さ数マイクロメートルの薄膜ダイアフラムを形成し たセンシング素子を,部分的に露出させ,IC,吸入空気 性があれば解析上で車載状態の車室内騒音予測が可能と なる。 今後は精度をより高め,さまざまな製品に活用できるよ 温度センサチップとともに樹脂一体封止したモールドパッ う進めていく。 ケージ (3)接着剤を用いずにパッケージをハウジングへ固定する (日立オートモティブシステムズ株式会社) 2 段モールドハウジング (4)従来必要であった接着剤を用いずに,樹脂カバーを レーザにより接合する技術 この結果,素子実装精度が向上し,センサーの高精度化 加振力予測 (シミュレーション) プロセス廃止などの工数低減を達成した。 起振源+振動伝達 モータモデル 今後は,高機能化とさらなる部品の集約化を進め,高性 空圧モデル + 加振力 Fs Fs 機構・構造モデル Fs 音圧 (日立オートモティブシステムズ株式会社) 音圧/加振力 能エンジンに適したセンサーの開発に取り組んでいく。 (生産開始時期:2014 年 4 月) P s=H s F s 周波数 4 周波数 音低減がより必要となっている。しかし,コンポーネント 周波数 80 だけで騒音低減を行っても車両搭載した状態で騒音レベル て,開発段階で車両搭載状態の騒音を予測する手法の構築 予測音圧 (固体伝播音) 周波数 40 20 0 に取り組んでいる。 −40 101 エアサスペンション用コンプレッサを対象として,コン える加振力を求める。これに車両伝達特性を乗じることに = 周波数 z −20 プレッサ単体での作動状態の振動解析を実施し,車両に与 加振力 × テスト シミュレーション 60 を満足できないことがある。そこで,解析主導型設計とし 予測加振力 Z方向 音圧/加振力 Y方向 音圧/加振力 音圧/加振力 X方向 近年,車両の静粛性向上に伴いコンポーネント製品の騒 110 車両伝達特性 (実測) 車両伝達特性 (実測) 車室内騒音予測技術 Hs 周波数 車室内騒音予測 音圧 (dB) オートモテ ィブシステム が可能となった。また,部品数の大幅削減,接着剤熱硬化 4 y 102 周波数 (Hz) x 103 車室内騒音予測手法の概要(上),車室内騒音予測シミュレーションの結 果(下) オートモティブシステム をリリーフすることで油圧を適正に制御していた。すなわ ち,むだな仕事をしているという課題があった。 エンジン要求油圧 今回開発した VDVP は,吐出容量を可変にすることで 消費動力/吐出圧力 従来ポンプ むだ仕事領域 従来ポンプではリリーフしていた余剰オイルの削減を実現 VDVP すると同時に,2 本のスプリングを使いエンジン低回転側 従来ポンプ 吐出圧力 から油圧を 2 段階に制御する。これにより,従来ポンプに 消費動力 対しモード燃費領域で 2%の燃費改善(消費動力 40%低減) を実現している。 消費動力40%低減 今後は製品ラインアップを拡充し,グローバルな顧客 (モード燃費2%低減) エンジン回転数 ニーズに応えていく。 (日立オートモティブシステムズ株式会社) フロントカバー (量産開始時期:2014 年 10 月) VDVP 6 油圧2段制御用スプリング 周波数感応型ダンパー 近年,タイヤの大径低 (へん)平化やエコタイヤ採用 によるタイヤの高剛性化により,さまざまな路面の走行で VDVP 5 伝わる不快な振動(ゴツゴツ,ビリビリ)が乗り心地の悪 VDVP油圧・動力の特性(上),フロントカバー一体型VDVP(下) 化を引き起こしている。しかし,従来のダンパーでは,車 両のフワフワした低周波の大きな動きの抑制(減衰力を高 くする)と,路面から伝わる高周波の不快な振動の遮断(減 衰力を低くする)の両立が困難であった。 5 今回,電子制御を使わずにメカニカルな機構のみで,振 エンジン潤滑用可変容量オイルポンプ 動の周波数に応じて減衰力を切り替え,振動の抑制と遮断 を両立させる周波数感応型ダンパーを量産化した。ダン としたエンジン潤滑用オイルポンプの可変容量化のニー パーの油の通路の途中にピストン型のアキュムレータ室を ズが高まってきている。このような中,今回,フロントカ 設け,簡素なゴム部材でバネとシール両方の機能を構成さ バ ー 一 体 型 可 変 容 量 オ イ ル ポ ン プ[VDVP(Variable せることで,違和感の少ない減衰力の可変特性と機構部の Displacement Vane Pump)]を開発した。 小型化を実現することができた。 吐出容量が一定の従来ポンプでは,エンジンの回転数上 今後は,さらなる性能向上を図り,製品のラインアップ 昇に伴い吐出容量および吐出圧力が増加し,また,エンジ 拡充と適用車種の拡大(小型車への展開)に取り組み,顧 ン高回転域ではエンジン要求油圧に対して過剰な油圧とな 客のニーズに応えていく。 (日立オートモティブシステムズ株式会社) ゴム部材 (Oリング) (N) Reb側 減衰力 るため,リリーフバルブを介してオイルパンに余剰オイル アキュムレータ室 ピストン 周波数感応型ダンパー機構部 6 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 0.1 従来ダンパー 周波数感応型ダンパー 1 10 周波数 (Hz) 減衰力特性線図 100 @Vp0.05 m/s 周波数感応型ダンパー 日立評論 2016.01-02 111 オートモテ ィブシステム 近年,環境・燃費規制の強化を受けて燃費の向上を目的 (日立オートモティブシステムズ株式会社,日立ビークル エナジー株式会社) 8 業務車両向けAndroid車載端末SOLID AD-1 業務車両向けの新車載端末 SOLID AD-1 シリーズはク 項 目 ラリオン株式会社が 2014 年 11 月に市場投入した業務用車 仕 様 サイズ (mm) 120×80×12 重量(kg) 0.24 平均電圧(V) 3.7 容量(Ah) 5.2 出力密度 (W/kg) 000 5, 載機である。OS(Operating System)に Android を搭載す ることで,業種ごとに求められるさまざまなアプリケー ションの追加が可能となり,堅牢(ろう)性・耐久性を保 エネルギー密度(Wh/kg) 80 7 つプラットフォームなど,業務車両用車載端末で強く求め られるニーズへの対応が可能となった。 角形リチウムイオン電池セルとその仕様 主な特長は,以下のとおりである。 (1)外部からのナビコントロール,マルチセンサーを使用 した正確な位置情報の提供と 24 時間・365 日の連続使用を 7 考慮した堅牢・耐久設計となっている。 ハイブリッド自動車用角形リチウムイオン電池 (2)ソフトウェア開発キット提供によるサードパーティの 日立オートモティブシステムズ株式会社は,米国ゼネラ アプリケーション開発の容易化が図れる。 ル・モーターズ社が 2016 年に販売するシボレー・マリブ・ (3)安全運転解析や動態管理に必要な走行ログ取得機能 ハイブリッドの新型モデル向けに,日立ビークルエナジー (位置情報,時間,車輌データなど)を使用したセンター 株式会社が製造する 5,000 W/kg の高出力密度の角形リチ とのデータ通信や USB(Universal Serial Bus)メモリへの ウムイオン電池セルを納入する。 走行ログ蓄積による業務管理支援に活用できる。 今回納入が決定した角形リチウムイオン電池セルは,電 (4)USB スティック型データ通信端末と PTT(プッシュ・ 池の正極・負極間のイオン伝導性を確保する耐熱セパレー トゥー・トーク) マイクを接続することでカーナビゲーショ ターの採用により,5,000 W/kg の高出力密度を高い安全性 ンと IP(Internet Protocol)無線機能の一体化を実現した。 のもとに実現している。また,マイナス 30℃の寒地にお 今後も業務用カーナビゲーションのノウハウを生かし, オートモテ ィブシステム いても高い出力密度を保つ性能を備えていることなどが評 安全経済運転支援や業務効率化を支援する業務用車載端末 価され,今回の採用に至った。 の開発に取り組んでいく。 今後も,この角形リチウムイオン電池セルをさらにグ (クラリオン株式会社) ローバルに展開し,顧客ニーズに応えるとともに,電動パ ワートレイン製品の強化をとおして,電動化車両の発展に 貢献していく。 8 112 業務車両向けAndroid車載端末SOLID AD-1 オートモティブシステム