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2 望ましい滋賀県の森林の姿 基本方針に掲げた「滋賀県らしい森林づくり
2 望ましい滋賀県の森林の姿 基本方針に掲げた「滋賀県らしい森林づくり」を推進していくに当たり、さしあたり 50 年後、100 年後の望ましい森林の姿として目標とすべきものを掲げておきます。 県土の 50 パーセントを占める滋賀県の森林はそれぞれの地域の特徴を備えています。再生可能な優 れた資源としての森林、琵琶湖の水源かん養に欠かせない森林、琵琶湖と一体化して滋賀県独特の景観 を形成する森林、多様な生物種に生息環境を提供する森林、二酸化炭素の吸収・固定・貯蔵機能を持っ た森林、いずれも森林が生き生きしているときに発揮できる大切な森林の機能です。わたしたちはひと つひとつの森林に対して、 綿密な整備計画を立案し、 きめ細かい森林整備につとめなければなりません。 多様な自然を基盤としたいろいろな自然の能力を最大限に引き出すことが新しい森林文化の創生につ ながります。 琵琶湖を取り囲む滋賀県の山地はかつて、深い森林に覆われていました。県北部の山地は日本の冷温 帯に属し、天然生のスギを交えたブナ林が優占しています。人里は山地に入り込み、山村を形成してい ました。奥山では炭焼きが行われていました。天然更新によって、植生の回復した二次林が広く見られ ます。炭焼きをしなくなってから、奥山林は長期間にわたって、放置されたままになっています。ここ はもともと自然生態系の森林維持機構が備わっているところで、やたらに手を出す必要はありませんが 自然生態系の保全に努める必要があります。 県南部の低平地は早くから集落が発達しました。ここは暖温帯に属し、常緑広葉樹のシイ・カシが優 占していました。人々は集落に近い山地で薪を採り、柴を刈りました。水田耕作と密接な関係をもった 里山が作られました。 早くから山に人が入っていたために、 原生的な自然林は少なくなっていましたが、 それでもなお、学術的に貴重な植生を見ることができます。 里山林は人々の生活圏内にあったのですが、利用されることもなく、管理されなくなり、荒廃しつつ あります。特に竹林の近くではタケが跳梁するに任せられています。早急に整備、手入れする必要があ ります。里山の生産物をうまく利活用し、整備できれば、里山の自然を身近に感じることができるでし ょう。里山の森林文化の創生に大きな貢献ができることになります。 集落に近い谷沿いにはスギが植林され、樹高 30 メートルに達する美林が作られてきました。択伐に よる多段林をつくったところもありました。県中部に広がるスギ、ヒノキ造林地の美しさは見事としか 言いようがありません。先人の努力によって、スギの見事な大径木、ヒノキの美林がつくりあげられて きました。生産される木材は価値の高い優良材です。残念なことに滋賀県がそのような優良材を産出し ていることが、消費地には十分伝わっていません。木材資源を賢明に利用することは森林を活性化する ことにつながります。消費地と連携して森林文化のさらなる発展に努めることも必要です。 人工林の中には、厳しい自然環境のために十分な成長が見込めないところや、はげしい獣害にさらさ れているところがあります。林業不振により管理放棄され荒廃の危機に瀕している造林地もあります。 これらの造林地については、森林所有者と協議して、針・広混交林化に誘導するなど自然林化を図る必 要があります。 - 14 - 森林の整備目標を取りまとめたのが次の表です。 森林整備目標 琵琶湖の水源かん養、新しい木の文化づくり、生物多様性の保全、地球温暖化の防止 人工林 森林区分 現在の 植生区分 森林 現 スギ ヒノキ クヌギ 竹林 天然林(二次林) 原生林 アカマツ コナラ シイ・カシ ブナ シイ・カシ/ブナ 利用区分 造林地 里山林 奥山林 況 間伐遅れによる 過密林の増加 管理放棄による荒廃 利用放棄による 自然状態の森林 自然林化 環 境 水 源 林 目標とする森林像 一斉、複層の美林 ・ 非皆伐 ・ 長伐期化 環境に配慮した ・ 複層林化 整備の方向 ・ 不成績造林地の自然林化 ・ 針広混交林化 ・ 林齢構成の平準化 ・ 森林資源の循環利用 期待される効果 ・ CO2 の高蓄積 雑木林、竹林モザイク ・ 抜き伐り ・ 枯損木の整理伐 ・ 放置竹林の管理 ・ 空間利用のための歩道整備 針葉樹・常緑/落葉広葉樹混交林 モザイク ・ 除伐 ・ 針広混交林化 ・ 自然生 態系に即し た厳正保護 ・ レクリェーション、憩い、交流、・ 生物多様性の保全 環境学習の場など森林と人との・ 琵琶湖と一体化した独特の景観形成 ・ 多種異齢、複層混交林の森林モザイク 接触機会の増加 ・ 多面的利活用によるライフスタ による森林の多面的機能の発揮 イルの創造 - 15 -