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森林研究だより 《 さが》
佐賀県林業試験場 研究開発情報 2002 . 9 森林研究だより 《 さが 》 Forest Research Information < NO.4 > Saga ℡ 0952-62-0054 抵抗性クロマツの挿し木による増殖について ∼発根性と抵抗性が共に優れたクローンの選抜∼ 研究開発室 宮崎 潤二 はじめに 現在、いわゆる抵抗性クロマツ苗として出回っている苗は、「抵抗性クロマツ採種 園」産の種子から育成された実生苗にマツノザイセンチュウを接種し、生き残ったも のです。しかし、この方法では生産過程で歩留まりが悪くなり、価格が高いなどの欠 点があります。そこで、挿し木によって苗木生産ができないかと考え、種々の試験を 行っています。 なお、クロマツは挿し木してもほとんど発根しないとされていましたが、若い母樹 から採った挿し穂を使うなどの工夫により、かなりの確率で発根させることに成功し ています。 研究の方法 林試では、平成10年に抵抗性クロマツの採穂園を造成していますが、そこから母樹 別に採穂して挿し木試験を行い、発根率を調べました。さらに挿し木試験によって得 られた苗(挿し木苗)にマツノザイセンチュウを接種して、抵抗性の強弱を調べまし た。(接種検定) (左)写真-1 挿し木試験の状況 (右)写真-2 接種検定後の状況 成果の概要 ① 挿し木試験:採穂母樹(クローン)毎の発根性 挿し木試験の結果、全体の平均発根率は41%でした。なお採穂母樹毎の発根率は様々で、 なかには70∼100%の高い発根率を示すものがいくつかありました。これはスギやヒノキ の挿し木品種に見劣りしない発根性といえます。 ② 接種検定:採穂母樹(クローン)毎の抵抗性 挿し木苗に対して行ったマツノザイセンチュウ接種試験の結果、採穂母樹毎(つまりクロー ン別)の健全率は発根率と同じく様々でしたが、70%以上という高い健全率を示すものもあ りました。 (一般のクロマツの場合、健全率は数%以下) ③ 挿し木品種の候補となる優良クローンの選抜 挿し木試験と接種検定により、発根性と抵抗性がともに平均以上だった45クローンを第一 次選抜クローンと位置付けており、今後はこれらを重点的に調べていきたいと思います。なか でも、①,②で紹介したいくつかのクローンは極めて有望であり、これらのなかから新しい挿 し木品種を選抜する予定です。 (左) 写真-3 発根性、抵抗性ともに優秀 なクローンの苗 今後の課題 挿し木によって抵抗性クロマツ苗生産を実現するには、さらなる発根率の向上、 採穂時期の検討、採穂園の改良などが必要です。また、生産コストを抑えるため、 ミスト潅水施設などがなくても安定した発根率が得られるような方法を検討して いるところです。