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The Environmental Regulation Effect

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The Environmental Regulation Effect
ABCD
【ご留意頂きたい事項】
・本資料は、KPMG INTERNATIONAL で作成した「The Transformation of the Automotive Industry: The
Environmental Regulation Effect」(英語版) を日本語訳したものであり、本書はあくまで英語版であ
ります点にご留意頂けますと幸いです。
1
ABCD
要旨
低炭素排出車に対する消費者ニーズの高まりを受けて世界の自動車産業は根本的な変質を遂げつつあ
る。各国政府は排出物質の抑制と燃費効率に関する厳しい環境規制を自動車メーカーに課すことでこう
した動きやその他の市場からの圧力に対応した。こうした規制は地域ごとに著しく異なり、自動車メー
カーが世界で販売している車両の種類をより複雑なものにしている。その結果、世界の自動車メーカー
と部品メーカーは数々の地域的な規制要件を満たすために、常に自社製品のポートフォリオの更新を要
求されており、生産コストの大きな増加につながることが予想される。
世界的に見ると道路運輸(乗用車及び商用車)は人によるCO2 排出の 14%を占めている。 1
新しい
車のCO2 排出はかなり減っているものの、道路運輸は依然として排出量が増え続けている数少ないセク
ターの一つである。貨物輸送の増加、自動車の保有及び走行距離の増加がその原因である。例えば欧州
連合(EU)では 1995 年から 2003 年にかけて自動車利用者の年間走行距離が 16.4%増加している。従来
の車両ではタンクに入れた燃料が生むエネルギーの僅か 15%が車両を動かすことに使われ、残りは摩擦
損失として無駄になる。 2 これは燃費効率改善のとてつもない機会が未だに存在することを示唆している。
自動車メーカーは CO2 排出量の削減を優先度の高い目標として掲げた。自社のモデル群の炭素排出量
を大きく削減するために、自動車メーカーは大量生産モデルに適用可能な最もコスト効率の優れた技術
に重点を置いている。「万人に環境に優しい車を」提供するという戦略に沿ったものである。この目標
を達成するための自動車メーカーの戦略は殆どが以下に集中している:
•
燃費効率の改善と炭素及び汚染物質の排出削減
•
化石燃料(天然ガス)又は再生可能燃料(バイオ燃料)で走る代替燃料車の開発
•
ハイブリッド車及び EV のコスト効率の向上による電動化技術
政府による奨励制度はこうした技術の大規模な採用を加速する上で極めて大きな役割を果たすと予想
されるが、政府の対応は世界各地で大きく異なっている。米国政府はこのところ自動車用電池や電気自
動車の分野における新規事業への資金提供によってベンチャー・キャピタリストとして行動しイニシア
チブをとっているが、日本政府は低燃費車に対する時限的な補助金の支給を通じてこうした事業に間接
的に資金を提供するにとどまっている。中国政府は新エネルギー車(NEV)や電池開発の熱烈な支持者
となっているが、従来の内燃機関技術の開発によって欧米のメーカーに追い付き追い越すことは不可能
であることを中国の自動車メーカーや部品メーカーは承知しているからである、
1
2
www.globalwarmingart.com
CSM Auto
2
ABCD
規制の枠組みが世界各国で異なり、各地域の基準を単一のグローバル基準に統一する意志も方向性も
存在しないことから、リスクを最小限に抑えリターンを最大化するために企業は多面的な戦略の展開を
選択するかもしれない。全ての自動車メーカーが種々多様なグリーン技術を模索しているが、特定の市
場で提供される解決策の選択は地域的な嗜好によって決定される。例えば、ストップ・スタート技術は
日本と欧州では幅広く採用されるが、北米での取り込みは限定的になると予想される。同様に、中国の
自動車メーカーは小型車の生産を増やすことに軸足を移しており、この結果 2013 年までに同国が最大の
NEV 生産国になる可能性もある。
消費者、政府機関及び自動車関連会社が自動車業界の構造転換に与える影響力の度合いは世界各地で
大きく異なる。世界的な不況、過剰設備、そして厳しい環境規制による圧力の組み合わせは広範囲にわ
たるセクターの統合へと繋がっており、それはこの先何年も増え続ける可能性がある。第三節で詳述さ
れているが、KPMG の調査結果は最も魅力的な M&A 取引の組み合わせは北米=アジア、次いで欧州=
アジア、北米=欧州の順である可能性を示唆している。こうした潜在的な傾向はフォルクスワーゲン=
スズキ、ボッシュ=サムスン、PSA=三菱自動車等々の最近の国境を越えた合併や提携に向けた動きとも
整合性がある。企業が更に水平・垂直統合の機会を求める中でこうした傾向は強まることが予想される。
将来最も打撃を受ける部品メーカーは燃費改善又は排出抑制の要求を満たさない月並みな製品の企業
かもしれない。一方、今日自らの立ち位置を変えるだけの目端が利くその他多くの部品メーカーは今後
益々厳格化が見込まれる規制から恩恵を受ける可能性がある。業界が新たなビジネスモデルに向かって
代替パワートレイン(伝導機構)や低燃費技術によって革新を進める中、将来の業界地図が今日とは大
きく異なるものになることは明白である。
KPMG による本レポートは北米、欧州、アジア及びラテンアメリカにおける政府規制の概略を紹介し、
世界の自動車産業に与える影響を分析している。
3
ABCD
Regional CO2emission regulations
CO2 equivalent/km converted to NEDC test cycle
300
250
200
150
100
50
0
2003
2006
2009
2012F
2015F
2018F
2021F
2024F
2027F
2030F
Australia
Canada
South Korea
China
Japan
Europe
US (Obama 2009)
US (EISA 2007)
Note:
NEDC – New Europe Drive Cycle
Source:
The International Council on Clean Transportation, Passenger Vehicle Greenhouse Gas and Fuel Economy Standards: A
Global Update
Regional Fuel economy and GHG emission standards
Regional Fuel economy and GHG emission standards
Region
Standard
Measure
North America-USA
Fuel
mpg
European Union
CO2
Asia-Japan
Fuel
Asia- China
Fuel
l/100-Km
South America-Brazil
Source:
Targeted Fleet
Test Cycle
Implementation
New
US CAFÉ
Mandatory
g/Km
Structure
Single standard for cars and size based
standard for Light trucks
Single Standard
New
NEDC
Voluntary
km/l
Weight-based
New
JC08
Mandatory
Weight-based
New
NEDC
Mandatory
No local standards as the majority of vehicles run on ethanol mix
The International Council on Clean Transportation, Passenger Vehicle Greenhouse Gas and Fuel Economy Standards: A
Global Update, KPMG research
引用:
「自動車メーカー及び部品メーカーは排出規制と技術を喜んで受け入れ、競争上の優位
として利用すべきである」米国自動車研究センター会長デービッド・コール
4
ABCD
目次
1.
2.
政府による規制と奨励制度

北米- 米国

欧州連合(EU)

アジア – 日本

アジア – 中国

ラテンアメリカ- ブラジル
規制遵守のための自動車メーカー及び部品メーカーの戦略

北米- 米国

欧州連合(EU)

アジア – 日本

アジア – 中国

ラテンアメリカ- ブラジル
3.
規制による自動車産業への影響
4.
結論
5
ABCD
1. 政府による規制と奨励制度
北米- 米国
現行規制
企業平均燃費 (CAFE 3)基準 は乗用車 4及び小型(light)トラック 5を対象として 1975 年に米国高速道
路交通安全局(NHTSA)によって制定された。CAFE (発音は「キャフェイ」)とは各自動車メーカー
の乗用車又は定格車両総重量(Gross Vehicle Weight Rating)8500 ポンド以下の小型トラックのフリート
(車両)の燃費経済性を販売台数で加重平均し、1 ガロン当たりのマイル数(mpg)で表したものである。
CAFE基準は米国での販売を目的に製造された全ての車両に適用される。自動車メーカー毎の平均燃費の
算出は環境保護庁(EPA)が行う。
2007 年エネルギー自立・安全保障法が北米自動車産業に適用される環境基準を規定している。同法は現
行 27.5 mpg (自動車メーカーの乗用車及び小型トラックのフリートの合算ベース)の CAFE 基準を 2020
年のモデル年(MY)までに同 35 mpg (14.8 km/L) に引き上げるとともに、2020 年までの 35mpg 達成
に向けた自動車メーカーの研究開発コストに対する政府の奨励制度や補助金を盛り込むための措置をと
った。またバイオ燃料増産のための資金も提供した。ガソリンに混入されるバイオ燃料の総量は 2007 年
3
燃費経済性又は燃費効率はガソリン消費 1 ガロン(又は他の燃料の同等量)当たりの車両の平均走行距離と定義される。
「乗用車」とはオフロード用の設計でない四輪車両で 10 人以下の人の輸送を主たる用途として製造されたものである。
5
「トラック又は小型トラック」とは 四輪車両で、オフロード作業用に設計されたもの(四輪駆動又は定格車両総重量 6000 ポンド
超)、10 人超の人を輸送するもの、一時的な居住空間を提供するもの、無蓋の後部荷台で財を輸送するもの、乗客搭載容積を上回
る貨物積載能力が可能なもの又は後部座席撤去により無蓋の荷台車両に転換可能なものをいう。
4
6
ABCD
の 47 億ガロンから 2022 年までに 360 億ガロンへの増加が義務付けられているが、同法は 2022 年の総量
の内 210 億ガロンはコーン・スターチ以外の農産物(砂糖、セルロース等)から生産することを義務付
けている。
2009 年 3 月 30 日発行の NHTSA の「燃費経済性のまとめ」によると、米国で販売された 2009 モデル年
の乗用車及び小型トラックの平均的なフリートは共に規定の CAFE 基準を満たした。2009 モデル年の乗
用車フリートの平均は 32.6mpg で、CAFE 基準の 27.5mpg を上回った。2009 モデル年の小型トラックフ
リートも平均 24.2mpg と、現行の CAFE 基準の 23.1mpg を上回った。2009 モデル年の CAFE 基準を達成
しなかった自動車メーカーはダイムラー(小型トラック)、フェラーリ(輸入乗用車)、フォード(輸
入乗用車)、ジャガー及びランドローバー(輸入乗用車及び小型トラック)、マセラッティ(輸入乗用
車)及びポルシェ(小型トラック)であった。
各自動車メーカーの乗用車及び小型トラックのフリートの燃費を毎モデル年算出するのは環境保護庁の
役目である。フリートが CAFE 基準を満たさない場合の罰金は、0.1mpg 基準量を下回る毎に 0.1mpg 当た
り 5.5 ドルに当該モデル年に生産されたフリートの車両総数を掛けた額である。罰金については自動車メ
ーカーによる支払い、CAFE クレジットによる相殺又は翌年のフリート構成の変更合意による取り消しが
可能である。
自社フリートの燃費水準が該当モデル年の基準を上回った場合、自動車メーカーは CAFE クレジットを
獲得できる。クレジットの額は罰金と同様の方法で計算され、クレジット獲得モデル年の直前又は直後
の連続する三年間への適用が認められる。クレジットを自動車メーカー間又はフリート間で融通するこ
とはできない。
手持ちのクレジットがない場合、自動車メーカーは罰金を支払うか NHTSA にキャリーバック・プランを
提出することができる。キャリーバック・プランとは次の三年間に CAFE 基準を達成・超過するための
計画を記したものである。NHTSA が計画を審査し、承認されれば将来見込まれるクレジットが現在の罰
金の相殺に使用される。
規制案
米国では、2009 年米国クリーン・エネルギー及び安全保障法案等、自動車業界を対象とした新たな燃費
基準を導入する法案が現在審議されている。同法案は、運輸省及び環境保護庁が提案している制度とと
もに、自動車メーカーが全ての連邦規制並びにカリフォルニア州及び他州の基準を満たす単一の全国向
け軽量(light duty)フリート(乗用車及び小型トラック)を生産することを提案している。法案は 2016
モデル年に乗用車と小型トラックのフリートの合算ベースで 35.5mpgのCAFE基準と、1 マイル当たり合
7
ABCD
算ベースで平均 250 グラムというCO2 排出水準 6を設けている。これは環境保護庁が設ける初の全国的な
排出基準となる。
奨励制度
2007 年エネルギー自立・安全保障法(EISA)を受けて米国政府による多くの奨励制度が存在する。以下
はその一部である:
•
国内生産設備改造助成金制度 – 生産設備の刷新と熟練労働者の再研修が含まれる。制度実施のために
割り当てられた資金の額は不特定。
•
先進バッテリー融資保証制度 – 米国内で開発・生産される先進的な車両バッテリー並びにバッテリ
ー・システムの生産設備建設のための融資を保証。
•
先進技術車両生産 (ATVM)奨励制度 – 国産車両によるより厳しい燃費規制の達成を助け外国産石油
への依存を低減するプロジェクトのファイナンスを目的に米国自動車産業に負債性資金を提供するた
めの 250 億ドルの直接融資を行う制度。制度は米国内での先進技術車又は先進技術車向け部品の生産
設備の再装備、拡張又は建設のために自動車メーカー又は部品メーカーに融資を提供する。
•
エネルギー貯蔵競争力 – 電動車両向けエネルギー貯蔵システム(電池、圧縮空気エネルギーシステム、
熱管理システム、エネルギー貯蔵媒体としての水素等)の研究開発に年間 2 億 9500 万ドルを(2009
年から 2018 年まで)提供する。
•
軽量素材の研究開発 – 燃費改善のための車両向け重量軽減素材の開発・実証に 8000 万ドル(2008 年
から 2012 年までの合計)を提供する。
2009 年 10 月 27 日、米国エネルギー省はテネコによる先進技術車向けの低燃費の排出制御部品の開発に
対して 2400 万ドルの融資を発表した。テネコはエネルギー省の ATVM 制度に基づき条件付き融資の確
約を受けた最初の部品メーカーである。融資はガソリン、ハイブリッド及びディーゼル駆動の車両エン
ジン向けの排出制御部品の設計、開発、生産に充てられる。2010 から 2014 のモデル年に生産される 200
万台以上の自動車・小型トラックがテネコの排出制御技術を装備することになる。エレクトリック・ト
ランスポーテーション・エンジニアリング(eTec)はクリーン送電・貯電技術分野のトップ企業の一つ
であるが、史上最大規模の EV(電気自動車)投入と充電インフラ整備のために 9980 万ドルの助成金契
約をエネルギー省と交わした。二番手グループに属するコンデンサーメーカのケメットはハイブリッド
部品増産のためのシンプソンビル工場(サウスカロライナ州)の拡張に 1510 万ドルの助成金をエネルギ
ー省から獲得した。拡張により工場は最大で電動車両 10 万台分のコンデンサーの生産が可能になる。
6
CO2 排出:米国は従来 CO2 排出を規制してこなかった。米国の CO2 排出の図は燃費基準を CO2 排出に換算する計算に基づいてい
る。
8
ABCD
2009 年 8 月 6 日、政府は次世代の電気自動車・レジャー車両の開発を目的として 48 案件、総額 24 億ド
ルの企業向け助成金交付を発表した。助成金の配分は以下のとおりである:
•
セル、電池及び素材の生産設備に 12 億ドル
•
先進バッテリーメーカーの生産設備に 2 億 4500 万ドル
•
電気駆動部品生産設備に 4 億 6500 万ドル
•
電気駆動サブコンポーネント生産設備に 3230 万ドル
2009 年 6 月 23 日、オバマ大統領はエネルギー省の ATVM 奨励制度を通して総額 85 億ドルの融資を自動
車メーカーに供与した。フォードは内燃機関から電動車両への移行支援に 59 億ドルを手にした。融資は
二つのトラック工場の乗用車工場への転換にも使用される。日産はテネシー生産拠点における電気自動
車とバッテリーパックの生産の支援として 16 億ドル受領。融資は新規のバッテリー生産工場の建設と既
存工場の変更にも充てられる。テスラ・モーターズは 250 マイル/ガロン相当の達成が期待される「テ
スラ・モデル S セダン」の生産設備の資金として 4 億 6500 万ドルの融資を受けた。モデル S の生産は
2011 に開始され、2013 年末までに年間 2 万台に増産される。その後フィスカー・オートモーティブが同
社初の EV「カルマ」の技術完成と、閉鎖された GM のデラウェア工場で組み立てされるより安価な EV
モデル「ニーナ」の開発に合計 5 億 2800 万ドルの融資を受けた。
2009 年 4 月、エネルギー省は燃料電池の商業化と利用を加速し、燃料電池の生産、設置・維持及びサポ
ートに携わる雇用を創出するための 4190 万ドルの資金提供を発表した。また、2008 年 12 月 3 日には
(1)電池素材の性能向上、(2)プラグイン・ハイブリッド EV の性能向上とコスト低減を実現する改良
された生産プロセスの開発、(3)エンジン負荷の軽減と燃料効率の向上を実現するする車内暖房・換
気・空調(HVAC)用の熱電気システムの開発及び(4)重量トレーラートラックの燃料消費削減を企図
した先進的空気力学によるトレーラー研究開発プロジェクト向けに最大 2930 万ドルの資金提供を発表し
た。
自動車業界におけるベンチャー・キャピタル(VC)としての米政府の役割の増大は、同業界に対する
2009 年中の資金提供が政府の十分の一以下であった民間 VC に影響を及ぼしている。今や民間 VC は政
府の資金提供を自動車セクターのベンチャーに投資するための目印としている一方で政府は既に民間資
本の裏付けのある新規ベンチャーへの資金提供を目指している。その結果は、常に水面下から遠からぬ
ところに政治が存在する分野における公共セクターと民間セクターの利害の絡み合いである。
技術の増加と規制による後押しにも関わらず、消費者が支持する価格水準を前提とした場合、こうした
投資の商業化を持続させることは困難となるかもしれない。ガソリンが比較的安価な燃料である限り消
費者は運転習慣や購入習慣を変える気にならない恐れがあると米自動車研究センターのデービッド・コ
9
ABCD
ール会長はいう。より安価な代替エネルギーの出現と商業化を確実にする最も有効な方法はガソリンの
最低価格の制定であるとコール博士は考えているが、現在米国ではそのような本格的な議論はない。
欧州連合(EU)
現行規制
米国に比べて EU の燃料価格は割高であるため、自動車メーカーが欧州で開発し販売するモデルの種類は
より小型のエンジンやより低燃費のディーゼルエンジンを搭載したものとなっている。EU には燃費経済
性基準がないものの、高い燃料税が最低燃料価格として働き、平均的なドライバーが運転する距離の大
きな抑止力となっている。
EU の排出基準は加盟国で販売される新車の排ガス排出物質の許容限度を定めており、より厳しい基準を
段階的に導入していく一連の EU 指令に規定されている。規制は基準質量 2610kg 以下のカテゴリーM1、
M2、N1 及び N2 の車両を対象としており、火花点火エンジン(ガソリン、天然ガス又は LPG)又は圧縮
点火エンジン(ディーゼルエンジン)を搭載しているべき乗用車両、バン及び商用車両(乗客・物品の
輸送又はその他の特定の用途を持つ車両。例:救急車)等が含まれる。
現在は窒素酸化物 (NOx)、 全炭化水素 (THC)、非メタン炭化水素 (NMHC)、一酸化炭素 (CO)
及び粒子状物質 (PM)の排出が自動車、トラック、列車、トラクター及び類似機械並びにバージ船を含
む殆どの種類の輸送手段について規制されているが、航海船と航空機は対象外である。それぞれの輸送
手段に異なる基準が適用され、適合性はエンジンを標準の試験モードで運転して判定される。基準を満
たさない車両は EU での販売が認められないが、新規の基準は既に走っている車両には適用されない。基
準設定の際には利用可能な技術が考慮されるものの、基準達成のために特定の技術の使用を義務付けて
はいない。新たに投入されるモデルは現行又は既定の将来基準を満たさなければならないが、小幅なラ
イフサイクル・モデルチェンジの際には以前の基準に則ったエンジンで継続して販売することが認めら
れている。
A. 一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)の排出基準
乗用車及び小型(light)商用車量の排出基準が下表にまとめられている。ユーロ 2 ステージ以降、EU 規
制はディーゼル車とガソリン車で異なる排出制限を導入している。ディーゼルはより厳しい CO 基準が
課せられるが、より多くの NOX 排出が認められている。ガソリン車はユーロ 4 ステージまで粒子状物質
(PM)基準が免除されているが、直噴エンジンの車は 0.005 g/km の制限がユーロ 5 とユーロ 6 では課せ
られる。 粒子数基準(P 又は PN)がユーロ 5 及び 6 では含まれるが、最終決定しておらず、可及的速や
かに、遅くともユーロ 6 ステージの開始までに決定されることになっている。
10
ABCD
表に記載された期日は全て新規の型式承認に関するものである。EC 指令は過去に型式承認された既存の
車両モデルの第一回目の登録日(使用開始)に適用される第二の期日(一年後)も設けている。
European emission standards for Pas. cars (Category M*) & Light Com Veh. (<=1305 kg), g/km
Tier
Date
CO
THC
NMHC
NOx
HC+NOx
PM
Euro 1†
Jul-92/ Oct 94*
2.72 (3.16)
-
-
-
0.97 (1.13)
0.14 (0.18)
Euro 2
Jan-96/ Jan-98*
1
-
-
-
0.7
0.08
Euro 3
Jan-00
0.64
-
-
0.5
0.56
0.05
Euro 4
Jan-05
0.5
-
-
0.25
0.3
0.025
Euro 5
Sep-09
0.5
-
-
0.18
0.23
0.005
Euro 6 (future)
Sep-14
0.5
-
-
0.08
0.17
0.005
Euro 1†
Jul-92/ Oct-94*
2.72 (3.16)
-
-
-
0.97 (1.13)
-
Euro 2
Jan-96/ Jan-98*
2.2
-
-
-
0.5
-
Euro 3
Jan-00
2.3
0.2
-
0.15
-
-
Euro 4
Jan-05
1
0.1
-
0.08
-
-
Euro 5
Sep-09
1
0.1
0.068
0.06
-
0.005**
Euro 6 (future)
Sep-14
1
0.1
0.068
0.06
-
0.005**
Diesel
Petrol (Gasoline)
* For Light Commercial vehicles
** Applies only to vehicles with direct injection engines
*** A number standard is to be defined as soon as possible and at the latest upon entry into force of Euro 6
Note: Applies only to vehicles with direct injection engines
CO = carbon dioxide, HC = hydrocarbons, NOx = nitrogen oxides, PM = particulate matter
Source: euroactiv.com.en/transport/cars
† Values in brackets are conformity of production (COP) limits
11
ABCD
B. 二酸化炭素(CO2)排出基準
欧州委員会は欧州域内の共通目標である CO2 排出量 120 gCO2/km 以下を 2012 年以降に達成することを目
指し、EU で新たに登録される車については CO2 排出制限を自動車メーカーに課すことにした。2008 年
12 月 17 日、欧州議会及び理事会は乗用車向けの新たな CO2 排出規則を承認、2009 年 4 月 23 日付で
Regulation 443/2009 として制定された。主な内容は以下のとおり:
•
新乗用車の CO2 排出枠が 130gCO2/km と定められた。また、補完的手段によってさらに 10gCO2/km
削減しなければならないとされている。
•
自動車メーカーは 2012 年 1 月 1 日より暦年で、130gCO2/km を基準値として新乗用車数量によって調
整算出される各社の CO2 排出規制を達成しなければならない。
•
2012 年までに 65%、2013 年までに 75%、2014 年までに 80%、2015 年までに 100%の新車が排出規
制を満たさなければならない。
•
EU は、排出量が 50gCO2/km 以下の車に対する特別措置を盛り込むことも目標としている。この特別
措置により、2012 年と 2013 年において、各自動車メーカーは排出枠算定における車両数算出にあた
って当該車両を 3.5 台とカウントしてよい。ただしこの措置は 2016 年に廃止される予定である。
•
E85(15%石油、85%エタノール)で走行可能な車両に対し、当該車両が登録されている EU 各国に
おいてガソリンスタンドの整備状況が一定の基準を充足する場合に限り、最長 2015 年まで特定自動
車メーカーの排出枠が 5%削減される。
•
「技術革新の存在」いわゆるエコ改革に対しては最大 7gCO2/km まで排出枠が削減される。
•
欧州域内で 10,000 台以下の登録しかないニッチ・メーカーに対する特別規定あり。
•
上記ニッチ・メーカー以外のメーカーは、一定の登録を条件に、企業連合単位で排出規制を遵守する
ことも選択できる。
•
2020 年に僅か 95 g CO2/km という新たな目標が決定された。これは影響評価が前提条件となる。
•
スライド制の罰金が適用される。目標超過が 3 グラムを上回った場合、超過 1 グラム毎に一台当たり
95 ユーロを支払う。より軽度の違反に対する罰金は 5~25 ユーロである。2019 年以降、罰金は全て
95 ユーロになる(2013 年に見直しあり)。
•
2014 年にその前三年間の車の平均質量(重量)の推移の評価が行われる。
•
2010 年 1 月 1 日より、EU 各国は自国で新たに登録される乗用車に関するデータの照合を行わなけれ
ばならない。
C. バイオ燃料基準
バイオ燃料は植物素材等のバイオマス又は生物分解性の廃棄物から生産される。現在最も一般的に使用
されているバイオ燃料(「第 1 世代バイオ燃料」と総称される)は:
•
FAME (Fatty Acid Methyl Ester)。菜種油、ひまわり油、大豆油等の植物性油脂の一種若しくは
その混合又は動物性脂肪から作られ、ディーゼル油に混入される。
12
ABCD
•
エタノール混合ガソリン(EU ではエタノールは主に穀物から生産されており、小麦が圧倒的に
多く原料として使用される。ブラジルではサトウキビが、米国ではトウモロコシが原料油として
好まれている)。
EU ではディーゼルに FAME、ガソリンにエタノールの混入がそれぞれ 5%まで認められており、こうし
たブレンドは市場で販売されている車両と適合性がある。ディーゼルに FAME を 5%混入したブレンド
は B5、ガソリンにエタノールを 5%混入したものは E5 と称される。「ニート(ストレート)」なバイオ
燃料(即ち 100%FAME 又は 100%エタノールの燃料)はそれぞれ独自の国際品質基準によって規制され
ている。
「第二世代バイオ燃料」の生産プロセスを商業ベースに乗せるべく企業は現在研究開発に取り組んでい
る。第二世代のバイオ燃料は主に非食用農産物、材木及び藁等の農業廃棄物から作られる。第一世代の
バイオ燃料に比べて、第二世代は更に温室効果ガス排出の低減が期待されている。また、実質的に炭化
水素の産物(ガソリンやディーゼルのように)であるため車両への使用に遥かに適している。
2010 年までには全ての新たな欧州モデル車が B7(FAME7%、ディーゼル 93%)及び E10(エタノール
10%、ガソリン 90%)で走ると予想される。欧州議会の環境委員会は 2015 年までに運輸に消費される燃
料の 4%を再生可能エネルギー源が占めるとする計画を支持している。2020 年までに 8~10%のレベルへ
の前進が EU で可能となるのに先立ち、2015 年に詳細な見直しが必要となるだろう。
アジア – 日本
Source:
Fuel efficiency – Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism. http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn10_000001.html
Emissions
1) “The Motor Industry of Japan 2009.” Japan Automobile Manufacturers Association, Inc.
2) Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism http://www.mlit.go.jp/hakusyo/transport/shouwa50/index.html
http://www.aia-net.jp/gaskisei48.htm
http://www.env.go.jp/air/car/gas_kisei/kisei.pdf
Note:
1. In Japan, the standard is essentially the target fuel efficiency and is determined by vehicle weight class. We have assumed the average vehicle weight
as the standard. Fuel efficiency standards prior to 1999 were not available.
13
ABCD
2. In Japan, a passenger car is defined as a vehicle seating ten or fewer people, which includes SUVs and “kei” cars (minicars), a category of small
vehicles under 660cc, which is extremely popular in Japan due to the compact size as well as the tax and insurance advantages. According to JAMA, in
2008, 33.8 percent of all new passenger car registration in Japan was kei cars. The prevalence of kei cars is a key contributor to the high average fuel
efficiency in Japan.
3. Test cycles used to calculate emissions standards were changed with the introduction of the “new long-term” standards in 2005.
4. Emissions standards shown are the average regulatory value.
現行規制及び規制案
燃費効率
1997 年の気候変動京都会議のホスト国として日本人は環境問題に対する意識が比較的高い。リ
サイクリング活動からアイドリングストップ・キャンペーンに至るまで、2012 年までに温室効果ガス排
出を 1990 年比 6%削減するという京都議定書の目標を達成するために日本は大きく前進している。 7
目標達成に向けて日本は 1999 年の「トップ・ランナー」制度に始まる厳しい燃費効率基準を設
けた。同制度は省エネ法の改正によって全国的に導入され、自動車から家電に至る様々な製品のエネル
ギー効率の向上を目指した。自動車セクターに関しては、現在市場で入手可能な最も効率性の高い車両
を特定し、それを将来の製品に対する最低要件として義務化した。乗用車、トラック及びバスに関する
直近の基準は 2007 年 7 月に導入され、2015 年を目標年とした。下表は、車両型式別、車両総重量別の日
本の現行燃費基準である。
Fuel efficiency standards - 2015 Target
Gross vehicle weight (kg)
km/L
Gasoline/diesel passenger vehicle
km/L
Truck
km/L
Bus
Test
cycle
JC08
Under
600
22.5
601740
21.8
3.5-7.5 7.5-8
8.12 7.24
3.5-6
6-8
Heavy
9.04 6.52
Heavy
741- 856- 971- 1081- 1196- 1311- 1421- 1531- 1651- 1761- 1871- 1991- 2101855
970 1080 1195 1310 1420 1530 1650 1760 1870 1990 2100 2270 2271+
21.0 20.8 20.5 18.7 17.2 15.8
14.4 13.2 12.2 11.1 10.2
9.4
8.7
7.4
Gross vehicle weight (ton)
8-10 10-12 12-14 14-16 16-20
6.52 6.00 5.69 4.96 4.15
8-10 10-12 12-14 14-16
16+
6.37 5.70 5.21 4.06 3.57
20+
4.04
Source: Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
2015 年の目標が達成された場合、すなわち生産された車の加重平均燃費効率が基準を上回った場合、乗
用車の燃費効率は 16.8km/Lとなり、2004 年時点の 13.6km/Lから 23.5%改善すると推定される。 8 小型ト
ラックは 2004 年の 13.5km/Lから 12.6%の改善となる 15.2km/Lの達成が 2015 年までに求められている。
目標の 2015 年が近づく中、日本はそれ以降の燃費効率基準を更に引き上げることが予想される。コペン
ハーゲンで行われた国連気候変動会議において日本は他国がグローバルな枠組みに合意することを条件
に 2020 年までに CO2 排出量を 1990 年比 25%削減すると宣言した。これは京都議定書に比べてかなり高
7
8
国連気候変動枠組み条約 http://unfccc.int/cop3/fccc/info/indust.htm
2004 年の水準 14.6km/L は 2009 年に導入された JC08 試験モードを用いた計算であることに注意。
14
ABCD
いレベルの公約となることから、将来より厳しい燃費効率基準が義務付けられるのではないかと予想さ
れる。今のところ正式発表は無いが、朝日新聞によると政府は 2020 年までに 21km/L という燃費効率目
標を現在検討中とされる。
排出基準
日本は 1966 年に車の排出物質規制を始めた。車載式故障診断(OBD)システムの装備義務化と
2000 年から適用された「新短期」基準によって、CO、HC及びNOXに関する排出規制はかなり厳しくな
った。2005 年には「新長期」基準が導入されガソリン車、ディーゼル車とも排出試験モードが変更され
た。また、2009 年に導入された「ポスト新長期」規制は更に基準を強化し、世界で最も厳しい排出制限
を課した。 9
下の表は日本の現行排出基準である。
Motor vehicle emissions regulations in Japan
Vehicle type
Passenger cars
Ligh duty truck/bus
(GVW<1.7t)
Medium-duty truck/bus
(1.7t<GVW<3.5t)
Heavy-duty truck/bus
(GVW>3.5t)
[Note:
Emission
CO
NMHC
NOx
PM
CO
NMHC
NOx
PM
CO
NMHC
NOx
PM
CO
NMHC
NOx
PM
New short-term standard
(2000-04)
Test Gasoline/L
cycle
PG
Diesel
10/15M
0.67
0.63
(g/km)
0.08
0.12
0.08
0.30
0.056
10/15M
0.67
0.63
(g/km)
0.08
0.12
0.08
0.28
0.052
10/15M
2.10
0.63
(g/km)
0.08
0.12
0.13
0.49
0.06
G13M
16.0
2.22
(g/kWh)
0.58
0.87
1.40
3.38
0.18
Post-new long-term standard
(2009)
New long-term standard (2005)
Test Gasoline/L
Test Gasoline/L
cycle
PG
cycle
PG
Diesel
Diesel
10/15M+
1.15
0.63
JC08
1.15
0.63
11M
0.05
0.024
(g/km)
0.05
0.024
(g/km)
0.05
0.15
0.05
0.08
0.014
0.005
0.005
10/15M+
1.15
0.63
JC08
1.15
0.63
11M
0.05
0.024
(g/km)
0.05
0.024
(g/km)
0.05
0.12
0.05
0.08
0.013
0.005
0.005
10/15M+
2.55
0.63
JC08
2.55
0.63
11M
0.05
0.024
(g/km)
0.05
0.024
(g/km)
0.07
0.25
0.07
0.15
0.015
0.007
0.007
JE05
16.0
2.22
JE05
16
2.22
(g/kWh)
0.23
0.17 (g/kWh)
0.23
0.17
0.70
2.00
0.70
0.70
0.027
0.01
0.01
1. Amounts shown are the average regulatory value
2. Only heavy-duty trucks and buses use the JE05 test cycle for both standards, which is measured in g/kWh.
Source:
“The Motor Industry of Japan 2009.” Japan Automobile Manufacturers Association, Inc.
Ministry of Environment. http://www.env.go.jp/air/car/gas_kisei/kisei.pdf
全国的な法令に加えて、日本には地域的な環境規制も幾つか存在する。例えば 2001 年に導入された自動
車 NOx-PM 法は東京、大阪等の大都市で新しいバスやトラックに対してより厳しい排出基準を設けた。
違反すると該当地域で車両が登録できなくなることもある。また、2003 年には地方自治体のディーゼル
車規制条令が発表された。この規制は PM 排出基準を満たさない重量(heavy-duty)ディーゼルトラック
及びバスが首都圏を始めとする一部の都市部を走行することを禁じた。
9
国土交通省
http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk10_000001.html
15
ABCD
日本の現行法令には政府の排出基準を満たさない自動車メーカーに対する直接的な刑罰や罰金はないが、
強制的な車検制度のもとで政府基準を満たさない車両は公道での走行を禁止されている。政府の排出基
準を満たさない新車には、政府補助金の支給要件を満たさないため実質的に価格が見劣りするという間
接的な販売面での影響もある。
16
ABCD
奨励制度
近年政府は補助金や税制上の優遇措置を通じて環境に優しい車の奨励に大きく力を入れている。
日本で最も盛り上がりを見せている政策は環境に優しい新車を購入した場合の補助金である。政策は
2009 年 4 月の導入から 12 ヶ月間有効で、基準を満たす場合の補助金の下限は乗用車の 10 万円、上限は
大型バス・トラックが対象の 90 万円である。13 年超経過している車を下取りに出す場合は補助金が増額
され、乗用車は 25 万円、大型バス・トラックは 180 万円になる。 10
更に、基準を満たす新車に対して燃費効率と排出レベルに応じた自動車取得税と自動車重量税の
軽減措置がある(EV やハイブリッド車等の「次世代車」は全額免税)。基準を満たせば中古車も税金や
価格の軽減措置が受けられる。しかし、米国等の他の先進国と異なり、日本はまだ環境配慮型車の増加
促進を目的とした自動車メーカーに対する資金提供制度や直接的な補助金を実施していないことが注目
に値する。
ますます環境規制を重要視する政府の姿勢に対して日本の自動車メーカーの多くは複雑な見方を
している。短期的には排出規制の強化は通常利幅の厚いより大型の車(トラック、SUV 等)の販売減少
をもたらした。環境に優しい車を奨励する最近の政府の奨励制度は販売を促進したが、奨励制度が終了
すれば尚のこと、それが長くは続かないことを自動車メーカーは懸念している。だが、次世代車を奨励
するために技術やインフラに巨額の資金が投資されるため、長期的にはこうした環境規制が業界の利益
になることには大半の自動車メーカーが同意している。
アジア – 中国
Fuel consumption standards for light-duty vehicles in China
2005-2012
Carbon monoxide (CO) emission standards for light-duty vehicles in China
2000-2012
Limits of fuel consumption
for passenger cars
(GB19578-2004)
12
8
11.5
Limits of fuel consumption
for light duty commercial
vehicles (GB20997-2007)
L/100km
11
• Law of the PRC on the prevention and control of
atmospheric pollution (2000)
• Limits and measurement methods for emissions of
pollutants from light-duty vehicles (Ⅰ) - GB 18352.12001 (2000)
7
6
Law of the PRC on
conserving energy (2007)
g/km
5
10.5
4
3
10
2
1
9.5
2006
2007
Passenger car
2008
2009
2010
2011
2012
0
20
00
20
01
20
02
20
03
20
04
20
05
20
06
20
07
20
08
20
09
20
10
20
11
20
12
2005
Light duty commercial vehicles
Passenger cars
Note:
Source:
(a) For passenger cars, fuel consumption standards are divided into 32 sub-classes based on the
complete vehicle kerb mass, type of fuel and various characteristics of the vehicle
(b) For light duty commercial vehicles, fuel consumption standards are divided into 22 sub-classes
based on the maximum design total mass, type of fuel and engine displacement of the vehicle
(c) Figures in the graph indicates the midpoint of the fuel consumption standards applied to
different sub-classes for the specific vehicle class
(d) Enforcement dates indicated in the graph apply to newly designed vehicles only; enforcement
dates for licensed vehicles under production are one year after the corresponding dates for newly
designed vehicles
(1) Limits of fuel consumption for passenger cars - GB19578-2004)
(2) Limits of fuel consumption for light duty commercial vehicles - GB20997-2007
Note:
Source:
10
社団法人日本自動車工業会「日本の自動車工業 2009 年」45-46 ページ。
Light-duty commercial vehicles
(a) Carbon monoxide emission standards are divided into various sub-classes based on the type of
engine, type of fuel and the relevant mass of the vehicle
(b) The shaded areas indicate the range of the carbon monoxide emission standards based on
different sub-classes for that particular year
(c) Enforcement dates indicated in the graph apply to newly designed vehicles only; enforcement
dates for licensed vehicles under production are one year after the corresponding dates for newly
designed vehicles
(d) The first regulation regarding limits for emissions of pollutant from light-duty vehicles was first
issued in 1989; the first revised version was issued in 1993. The figures for previous regulations in
1989 and 1993 were not listed as they are based on different methodologies and were no longer
comparable
(1) Limits and measurement methods for emissions of pollutants from light-duty vehicles (Ⅰ) (GB
18352.1-2001)
(2) Limits and measurement methods for emissions of pollutants from light-duty vehicles (Ⅱ) (GB
18352.2-2001)
(3) Limits and measurement methods for emissions of pollutants from light-duty vehicles (Ⅲ) (Ⅳ)
(GB 18352.3-2001)
17
ABCD
燃費効率
中国では燃料経済性は燃費効率ではなく燃料消費で表され、走行 100 キロメートル当たりに車両
が消費したガソリンのリットル数(又は他の燃料の同等量)として定義される。中国の燃料消費基準は
乗用車 11と軽量(light-duty)商用車両 12に分類されている。
これまで中国は CO2 の排出を規制していないが、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸
化物(NOx)及び粒子状物質(PM)を含む排ガス汚染物質の排出を規制する基準は存在する。法規制に
よる基準は段階的に実施され、その都度より厳しいガイドライン又は基準が義務付けられてきた。
実際の CO2 排出に関する一般に入手可能なデータは無いが、CO2 排出基準案の最近の草稿は評価
プロセス中に 75%を超える車両の燃料消費水準が要求される基準を 5%以上下回っていたと指摘してい
る。CATARC の最近の調査によると、乗用車(SUV を含む)全般の燃費効率(燃料消費から換算)は
2006 年で平均 28.4mgp であった。
現行規制
現在燃料消費基準を規制している法令は「乗用車の燃料消費制限」と「軽量商用車量の燃料消費
制限」で、それぞれ 2004 年と 2007 年に制定された。燃料消費制限に加えて、これらの基準には全ての
基準を満たした場合に該当する基準の証明書をメーカーに発行するためのサンプル試験の手続きと方法
も含まれている。
一酸化炭素(CO)等の他の排ガス汚染物質の排出基準に関する現行の規制は 2005 年に制定され
た「軽量車両による汚染物質の排出制限及び測定方法」である。この基準はフェーズ I(2007 年から
2009 年)及びフェーズ II(2010 年以降)中の乗用車及び軽量商用車両による排気汚染物質の排出制限を
カバーしている。
11
乗用車とは四輪(又は最大全積載物質量が 1,000kg 超であれば三輪)の車両で、火花点火又は圧縮点火エンジンを搭載し、最大
時速 50km 以上、最大全積載物質量 3,500kg 以下、(ドライバーを除く)乗客座席数 8 以下のものを指す。
12
軽量(Light-duty)商用車量とは最大全積載物質量 3,500kg 以下の四輪(又は最大全積載物質量が 1,000kg 超の場合は三輪)以上
の貨物積載車両又は最大全積載物質量 5,000kg 以下で、(ドライバーを除く)最大乗客座席数が 8 超の乗用車両を指す。
18
ABCD
規制案
中国政府は燃費効率を改善するための CO2 排出基準の草案を最近まとめた。草稿が現在検討され
ており、近い将来実施される可能性が高い。
Proposed C02 standards for passenger cars in China
Complete vehicle kerb
Normal types
Special types
(g/km)
(g/km)
CM≤750
140
149
750<CM≤865
147
156
865<CM≤980
158
167
980<CM≤1,090
170
181
1,090<CM≤1,205
183
194
1,205<CM≤1,320
194
206
1,320<CM≤1,430
208
222
1,430<CM≤1,540
219
233
1,540<CM≤1,660
231
244
1,660<CM≤1,770
242
256
1,770<CM≤1,880
251
267
1,880<CM≤2,000
260
276
2,000<CM≤2,110
269
285
2,110<CM≤2,280
278
294
2,280<CM≤2,510
296
314
2,510<CM
314
332
mass (CM)/kg
Note:
Source:
Special types are passenger cars with any of following characteristics: 1) with automatic
transmissions; 2) number of rows of seats ≥3; 3) Off-road vehicles which meet certain
criteria regarding CM, climbing capacity and angles between vehicle and ground level
Technical requirements for environmental labelling products - Light-duty Vehicles (Draft)
更に、中国政府は国内で生産又は販売される全ての車両に燃料消費水準に関する情報の貼付を義務付け
る規制の制定を検討している。
自動車業界に対する政府の環境規制を満たさないメーカーに科される罰金は現在存在しない。し
かし、中国で車両を生産又は販売する場合、メーカーは車に関する環境規制に関する種々の証明書を取
得する必要がある。政府が現在規定する基準のもとでは、各メーカーは該当基準の定める方法・手続き
に則り自社の各モデルについて試験を行わなければならない。
奨励制度
中国政府は自動車業界向けの環境技術の開発を強力に支持しており、新エネルギー車(NEV)の
開発に焦点を当ててきた。国務院は 2006 年以来低エネルギー消費とNEVを優先開発分野として「科学技
19
ABCD
術開発計画」に挙げている。 13
更に国家発展改革委員会 (NDRC) はNEV開発を規制する「新エネル
ギー車の生産許認可管理規則」(生産試験を含む)を 2007 年に定めている。
2009 年 1 月、中国政府は自動車産業の研究開発を支援するために 100 億元の特別資金を供与する
「自動車産業の再編成と再活性化計画」を発表した。また、同計画は 2010 年 1 月 1 日から排気量 1.6L 未
満の乗用車について自動車取得税を 10%から 7.5%に削減することで国民に燃料消費の少ない乗用車を購
入するインセンティブを与えた。
更に政府は 13 のパイロット都市でハイブリッド車、EV及び代替燃料車の購入に定額補助金を与
える「低燃費・新エネルギー車サンプル計画に対する国庫補助金の暫定支給」を最近発表した。同計画
は 2012 年までに国内で 6 万台のNEVの投入を目指している。地方政府は国内メーカーの支援に補助金を
回す傾向がある。例えば、大連市は合計 2000 万元の補助金で一汽(FAW)からNEVを 100 台購入し、武
漢市は 1 億 6000 万元相当の 3 年間の補助金で東風(DFM)からEVを 100 台購入した。また、北京市は 5
億元相当の補助金でフォトン(福田)からNEVを 800 台購入した。 14
科学技術省は、他の政府部門の協力も得つつ、持続的な技術開発を促進するための投資の拡大、
NEVの浸透を拡大するための全国的な実物宣伝の企画、適切な刺激策を採用するための海外の経験の利
用等の施策によって更にNEVの研究開発支援を図っている。中国の自動車ブランドも積極的にNEV開発
に参加しており、計画を長期戦略に盛り込んでいる。 以下はそうした開発の一例である。 15
•
上海汽車工業(SAIC): NEV 開発に 20 億元投資済み
•
長安汽車: NEV 合弁を設立、初代ハイブリッド車を 2009 年に予定
•
一汽/東風: 現在ハイブリッド・バスをパイロット運転中
•
奇瑞汽車: ハイブリッド車、電気自動車計画を導入
•
比亜迪汽車(BYD): デュアルモード電気自動車計画を導入
一般的に「863 プログラム」として知られる「国家ハイテク技術研究発展計画」も新技術の開発
を支援する取り組みである。産業の垣根を越えてハイテクセクターにおける革新を促進するために立ち
上げられたものである。自動車業界における最近の重要な支援策の一つは、世界有数のリチウムイオン
電池メーカーである中国比克(BAK)電池の「電気自動車用リン酸リチウム電池工業化プロジェクト」
に対する 310 万元の助成金である。 16
13
Gerson Lehman Group, "China Auto Trend 4: Investment in New Energy Vehicles & Related Infrastructure", 22 Aug 2009
China CBN.com, “NEVs sample program in 13 pilot cities”, May 13, 2009 http://www.chinacbn.com/s/n/015/20090427/000000113694.shtml にて中国語で入手可能。
15
Gerson Lehman Group, "China Auto Trend 4: Investment in New Energy Vehicles & Related Infrastructure", 22 Aug 2009
16
The Autochannel, "China BAK Funded by National 863 Program for its Electric Vehicles Battery Project", 29 Dec 2008
14
20
ABCD
ラテンアメリカ – ブラジル
世界中の殆ど発展途上地域と同じように、ラテンアメリカの国々もこれまで自動車の排出物質や
燃費効率の規制にあまり積極的ではなかった。ブラジルは 1975 年に始まった取り組みを通じて代替燃料
(具体的にはエタノールとガソリンの混合)の法制化に最も積極的であった。ラテンアメリカ諸国は環
境保護に積極的であると一般的には見られていないが、最近の事例は気候変動が天然資源の保護の在り
方に影響を与え始めていることを示唆している。アマゾン地域の産出物に大きく依存するブラジルでは
気候変動が経済に対する脅威となってきており、同国はより積極的に排出物質を管理するようになると
予想される。この影響に対応して、ブラジルは益々厳しい排出基準を開始ないし採択している。自動車
メーカーや消費者への補助金に加えて、中古車に対する大きな需要の存在にも拘わらず、ブラジルは輸
入中古車に数量制限を設けた。
現行規制
国家アルコール計画は石油危機と輸入燃料に対する全面依存への対応として 1975 年に始まった。ブラジ
ル政府は外国石油に対する依存の引き下げと再生可能で環境に優しいエネルギーの生産という二つの目
標を念頭にアルコール計画(プロアルコール)を採用した。ブラジルにおけるエタノールの広範な使用
と生産は環境問題への対応というより実際にはサトウキビ生産者への補助、外国石油に対する依存の低
減そして貿易収支の改善を主に企図して進められてきた。1975 年以降、全国でアルコールが 25%ガソリ
ンに混入され、1985 年から 1990 年にかけてはブラジルで生産された車の約 90%がアルコールを燃料と
していた。90 年代初頭には国内のアルコール不足によってプロアルコールは沈滞した。しかしガソリン
車より安価であることとフレックス燃料車(FFV)の新技術によって車がガソリン、純粋アルコール又
は両者の混合のいずれでも走れるようになったことが消費者を魅了し、2000 年までには再びアルコール
車が好まれるようになった。
1986 年に国家環境審議会(CONAMA)は自動車メーカーに排出目標を与えるべく「車による大気汚染制
御計画(PROCONVE)」を策定した。しかし自動車と重量(heavy)車両の排出制限が初めて法制化され
たのは 1992 年である。2012 年向け法案をもって第六世代(PROCONVE L-6)となるこれらの規制は車両
重量区分別に汚染物質のレベルを規定した。
消費者行動を導くためにブラジル政府は伝統的に政府規制と税制優遇措置の組み合わせを用いてきた。
当初の法令の一つは貨物や乗客の輸送の大半を担っていたバスとトラックにディーゼル燃料の使用を義
務付けた。この規定は現在も存続しており、トラックとバスはディーゼルで、小型(light)車両はガソ
リン(アルコールを混入したもの、E25)と純粋アルコール(E100)で走っている。E25 がブラジルの標
準であるが、同国ではエタノールが安いため E100 に人気がある。アルコール燃料車に対する課税の軽減
21
ABCD
や燃料価格がより安価であることを含め純粋アルコール(E100)への転換を消費者に促すインセンティ
ブはあるものの、天候の寒冷な時期に E100 を使うことに障害もある。だが、良い面は車両燃料としてア
ルコールが多く使われているため、ブラジルの CO2 排出は大気浄化政策センターの調査によると 2004 年
時点で 124 g/ km と非常に低いことである。その結果、エタノールの多用とそれに関連する低い CO2 排出
水準のため、ブラジルには車の燃費効率基準が存在しない。しかし最近では既に米国や欧州で行われて
いるものに似た、全ての新車の燃費効率や排出物質等の車両情報を表示した任意の窓用シールの制度の
提案も出てきている。
2. 規制遵守のための自動車メーカー及び部品メーカーの戦略
興味深いことに、燃費効率基準達成のために世界の各地域で採用されている方法は多様である。北米と
日本ではマイルド・ハイブリッド、シリアル方式、パラレル方式のハイブリッド、プラグイン・ハイブ
リッド車(PHEV)及び EV における種々の電動化技術を試みているようである。欧州は今も先進ディー
ゼル・パワートレイン(伝導機構)を非常に重視しており、ラテンアメリカはエタノールで走るフレッ
クス燃料車に注目している。ある地域で自動車メーカーや部品メーカーが提供する解決策の選択にはロ
ーカル市場と地政学的な力が影響しているようである。EV は今日では経済的に魅力的な選択肢には見え
ないかもしれないが、2020 年までには回収期間が 6 年未満となるであろうことから、普及率が高まる可
能性が高い。直噴ターボチャージャー等の他の技術は今日北米以外では経済的にも成立しているが、技
術のコストが下がるにつれ、すぐに世界中で魅力的になるだろう。
OEM electrification strategies (2015) for emission reduction
Hybrid vehicles
Electric vehicles
Plug-in hybrid Vehicles
Fuel cell vehicles
S. America- Brazil [95% of vehicles to be Flex fuel by 2013]
Asia- China
Asia- Japan
Europe
North America- USA
Source:
CSM, WardsAuto
世界各地で提供されている電動化の選択肢に加えて、従来の内燃機関向けの燃費効率改善技術の幅広い
採用が予想される。中でも可変バルブタイミング機構(VVT)は北米や幾つかの先進国で 2015 年までに
標準装備となる見込みである。その他にもガソリン直噴エンジン(GDI)、ターボチャージャー、デュア
ル・クラッチ・トランスミッション(DCT)等の劇的な増加が予想される。
22
ABCD
Installation of fuel efficiency technology –
Global
70%
Forecast
Market penetration
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
2007
2008
2009F
2010F
VVT
GDI
Ethanol
Source:
2011F
2012F
Diesel
Turbo
DCT
2013F
2014F
A6+
Hybrid
CSM Auto
Payback period of fuel efficiency improvement
technologies (2010-20)
~64% Quicker Payback
2020 Payback Period
2010 Payback Period
N. AmericaUSA
15.3
9.2
11.0
6.7
Europe-UK
6.5
3.9
4.7
2.9
Asia-Japan
11.5
6.9
8.3
5.0
S.AmericaBrazil
7.6
4.6
5.5
3.4
-
2.0
4.0
6.0
Economically Viable
Technology
8.0
10.0
12.0
14.0
16.0
18.0
Payback Period (Years)
Pure battery electric vehicle technology
EV with range extender hybrid technology
Parallel hybrid technology
DI gas-turbo with stop start technology
Note:
Source:
1) Additional technology cost per vehicles is assumed to be $1000 for Pure battery electric vehicles, $ 3000 for Parallel Hybrid vehicles, $10,000
for EV with Range Extender Hybrid vehicles and $20,000 for Pure Battery Electric vehicles
2) Technology driven efficiency gain (% additional miles per gallon gas) is assumed to be 10% for Pure battery electric, 20% for Parallel Hybrid
and 200% for EV with Range Extender Hybrid. Operating cost for Pure Battery Electric vehicles is assumed to be 25% of traditional gas-engine
vehicles
3) Cost for each technology is assumed to reduce by an average annual rate of 15%
4) It is assumed that gas prices will remain unchanged between 2010 and 2020 on real dollar basis
5) Average miles driven per gallon is assumed to be 27.5 in 2010 and 40.0 in 2020
6) Average distance traveled is assumed to be 15,000 miles per year, other than Asia-Japan which is assumed to be 10,000 miles per year
KPMG Analysis
23
ABCD
北米 –アメリカ
現在利用可能な技術によって米国自動車メーカーは 2016 年の CAFE 基準が達成できるかもしれ
ない。2009 年の米国車両の推定燃費効率 30.5mgp は利用可能技術の採用によって 2015 年までに 42.7 mpg
に改善することが可能であると自動車業界の業界誌ワーズ・オート・ワールドはしている。依然として
課題は費用対効果と消費者がこうした付属品のコスト吸収を受け入れるかである。上述の通り、ターボ
付き GDI やスタート・ストップ (シリンダーの非活性化)等、こうした燃費改善策の一部はまだ米国で
は回収期間がかなり長く、ニッチのポジションを得ている。しかしコストが下がれば、それらは将来の
モデルでより一般的になるだろう。これらの伝導機構のハイブリッド化によって更に 20~40%の燃費効
率改善に繋がる可能性がある。
Various technologies under development are expected to increase
fuel efficiency between 2% and 16%.
Estimated fuel efficiency improvement from various technologies
5%-10%
Turbo-charging
Turbo-charger bearings
(Turbine design)
2%-4%
~10%
Stop/Start
Selective Catalytic
reduction
~5%
Exhaust gas
recirculation
~16%
Sources:
Gasoline
~10%
6-spd transmission
Note:
Standard engine
~16%
8-spd transmission
2009
30.5
Hybrid add-on
12.2
2015
42.7
2009
43.7
17.1
~2%
4%
8%
12%
16%
Estimated fuel-efficiency improvement
(a) Improvement indicated represents relative improvement over 4-speed
transmission.
(1) Ward’s Auto, July 2009; (2) "How Dual-clutch Transmissions Work",
HowStuffWorks.com; (3) DetroitDiesel.com.
20%
Diesel
0%
Estimated average fuel efficiency of US vehicle fleet, 2009 & 2015
~10%
Direct injection
5-spd transmission
Implementation of fuel efficient technology may allow manufacturers
to comply with CAFÉ standards by the 2016 deadline.
~10-13%
Dual clutch technology
2015
-
17.5
65.2
26.1
10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
Miles per gallon
Source:
(1) Ward’s Auto, July 2009.
24
ABCD
Cost/Benefit of Competing Technologies
3,500
3,000
Strong HEV
2,500
2,000
Diesel
$
More expensive solutions to
improve fuel economy
1,500
1,000
Mild HEV
500
0%
Cost/Benefit of Competing Technologies
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
Fuel economy improvement
600
Lean GDI
500
$
400
300
VVT*
200
Weight
100
Low cost solutions to
improve fuel economy
Turbo
CVT**
GDI***
DCT****
Cyl. Deact.
6-Speed AT
0%
2%
4%
6%
8%
10%
Fuel economy improvement
Note:
*
**
***
****
Variable valve timing
Continuously variable transmission
Gasoline direct injection
Dual clutch transmission
Source:
KPMG LLP Analysis 2009
環境保護庁の最近の報告書によると、フォードは主要自動車メーカーの中で最も大きく燃費効率を改
善している。一連の燃費効率改善プログラムを採用した結果、2009 年の同社フリート全体の排出レベル
270 g CO2/ km は全自動車メーカーの中で最も大きく改善している。この改善は以下のような様々な設
計・製造上の燃費改善策の結果である。
•
6 段自動変速装置 – フォードはフリート全体を 2013 年までに 6 段変速に移行させる予定である。
•
直噴ガソリンターボ技術「エコブースト」– 燃費効率の 20%改善と CO2 排出の 15%削減をもたらす。
フォードはオプションとして車両への装備率を 20%から 90%に引き上げることを想定している。
•
空気力学的改善
•
重量削減 – 最近の調査によると、より軽量な材料への変更はハイブリッド技術とほぼ同じくらい重要
である。
•
電動アシストステアリング (EPAS) – ステアリングの動力を油圧ポンプではなく電気モーターにす
ることで燃費効率が 3%改善する。
•
電動化 – フォードは電池システムの設計・開発・生産を中核能力として内製化する計画である。同社
は「フォード・トランジット・コネクト」バンの純粋な電池式電気自動車を 2010 年に米国及びカナ
ダ市場向けに生産するためにアズール・ダイナミクスと提携した。ジョンソン・コントロールズ・サ
フトがトランジット・コネクト向けのリチウムイオン電池とバッテリーパックを供給する。
GDI エンジン車や E85 の代替燃料車の劇的な増産を想定して作られた燃費基準に適合させるため
に、GM 等の他の自動車メーカーは、同様に VVT と最新のトランスミッションといった技術に依存して
いる。
25
ABCD
32.3 mpg
(2016)
General Motors - Road map for
fuel efficiency improvement
VVT
93%
6 Speed AT
85%
GDI
70%
E85
65%
Cylinder deactivation
31%
Gas-Turbo
Hybrid/ EV
25.4 mpg
(2008)
2009
6%
2016
4%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
Fleet penetration
Source:
CSM
将来の車をより低燃費で、融通性があり(複数の燃料源に対応可能)、最新の燃料技術を利用できる進
んだものにするために、自動車メーカーは最初の開発と設計の段階で多くの努力をしている。また、再
生可能資源の使用を増やすことで生産工程までより「グリーン」になってきている。メーカーは様々な
自動車部品により多くのリサイクル素材を混ぜる一方で重金属や車室内揮発性有機化合物(VOC)の排
出を減らしている。こうした取り組みには廃棄物の削減、節水、リサイクル量の拡大も含まれる。
GM はフル充電した EV の走行距離を約 1 マイル伸ばす新たな省エネタイヤ(「グッドイヤー・アシュア
ランス・フュエル・マックス・タイヤ」)の使用でグッドイヤーと提携した。グッドイヤーによると
「フュエルセービング・トレッド・コンパウンド」を使用したこのタイヤは耐用期間中に 2600 マイル分
のガソリンを節約することでエネルギー損失の低減に貢献するという。
電子制御の安全装置や工場で装備されるオーディオシステム等の部品の省エネは殆どの自動車メーカー
が見過ごすかもしれないが、GM などの一部のメーカーは車両のあらゆる側面で効率を追求するための
もう一段の努力を行っている。ボーズは従来の自社製品に比べて 30%小さく、40%軽く、エネルギー消
費が 50%少ないエネルギー効率の高いオーディオシステムを開発しており、大きな期待を集めている
GM の EV「ボルト」で同製品を発表する。一定の使用状況及び運転状況のもとで、このオーディオシス
テムの省エネ効果は「ボルト」を 50 ポンド軽量化することに相当することもある。
クライスラー・グループ LLC は、エンジン排出物質を削減し燃費効率を改善するフィアットの革新的先
端技術を使って北米市場向けに先進的な低燃費エンジンの生産を開始する計画である。「フーリー・イ
ンテグレーティッド・ロボタイズド・エンジン(FIRE)」と称されるこの 1.4L、16 バルブのエンジンは
26
ABCD
ミシガン州にあるクライスラーのグローバル・エンジン・マニュファクチャリング・アライアンス
(GEMA)工場で生産され、同社の拡大する低燃費車のフリートに搭載される。
日産ノースアメリカは、ゼロ・エミッション車と動力源のリチウムイオン・バッテリーパックを生産す
るためのテネシー州スマーナ工場の改造用に 16 億ドルの融資の承認(ATVM 融資制度に基づくもの)を
今年初めにエネルギー省から得た。日産は更に電力会社との提携も予定している。最近では、アメリカ
の大手非公益電力供給会社の一つであるテキサス州ヒューストンのリライアント・エナジーとの間で米
国でのゼロ・エミッション・モビリティ推進に合意したことが発表されている。
欧州連合(EU)
欧州自動車製造工業会によると、近年欧州の自動車メーカーは自動車生産が環境に与える影響を大きく
減らしたとのことである。生産台数一台当たりのエネルギー消費、CO2 排出、廃棄物、水使用及び VOC
排出が全て減少している。これは変化する市場構造、R&D の進歩、サスティナビリティ(持続可能性)
へのシフト又は国内的、国際的な政策立案者による規制の枠組みの影響に主としてよるものである。
持続可能なモビリティの達成は R&D 活動の主たる目的となっている。欧州の自動車産業の研究開発支出
(200 億ユーロ)の大きな部分は環境関連の改善又は装置に向けられている。そうすることで業界は大気
汚染や騒音レベルに車が与える影響を劇的に軽減した。メーカーは自社製品のリサイクリングを進め、
或いは廃棄物管理や節水・省エネという生産工程の近代化と改良を行った。こうした戦略に加えて、業
界は CO2 排出の削減についても明らかに自らに実行の義務を課している。
幾つかの取り組みが業界と政策立案者による共同のアプローチの重要性を強調している。欧州委員会と
欧州の自動車業界による「グリーンカー構想」は更に 50 億ユーロを再生可能で無公害なエネルギー源の
利用における飛躍的な進展、交通安全及び渋滞解消のために割り当てることを目指している。構想は乗
用車の他にトラック、バス、輸送システム、インテリジェント・インフラそして燃料補給・充電インフ
ラの整備をも対象としている。構想は長期の R&D に特化しており、主に既存のプロジェクトを明確な政
策的方向性のもとに束ねている。
欧州の自動車メーカーは環境規制の強化と消費者志向の変化という背景に速やかに対応した。生産工程
の環境へのインパクトを低減することは欧州企業の公約となった。近年では欧州のメーカーは開発、生
産から使用、リサイクリングに至る自社製品のライフサイクル全体の環境へのインパクトに注目し始め
ている。例えばフォルクスワーゲンはライフサイクル評価に基づいて環境賞を授与している。この賞は
それぞれの先行モデル又は基準モデルに対して環境保護上の進歩を実証した車や技術に授与される。
27
ABCD
ボルボなどの自動車メーカーは自社の車両が環境に与えるインパクトを低減するために燃料効率(スト
ップ・スタート)、再生可能燃料(バイオ燃料)、電動化(プラグイン・ハイブリッド、シリアル・ハ
イブリッド、電池式 EV)という三つの主なアプローチを追求している。これが今日中期的な製品計画
の主たる推進力となっている。
その結果以下を含む多くのトレンドが出現している:
•
自動車メーカー間の統合又は協働。最近のフォルクスワーゲンによるポルシェの買収やスズ
キとの提携は自動車という製品の両極端で起きた事例である。フォルクスワーゲンとポルシ
ェは力を合わせることでシナジー効果の利用と最先端技術の共有が可能になる。スズキに対
する出資は新たな低価格車の提供が目的である。吉利によるボルボの買収も環境技術の入手
と共有を望んだものである。ニッチの高級車メーカーは、より大きな大量生産メーカーとの
提携を通して排出物質を「プール」し、それによって EU のペナルティーを回避することが潜
在的に可能である。これはアストン・マーティンとトヨタによるシティーコミューター「シ
グネット」の共同開発のような興味深い提携関係を将来もたらすかもしれない。
•
新技術の利用と資源の共同利用のための合弁や提携の増加。一例としてボッシュ、ドイツ及
びエーバーシュペッヒャーの 3 社によるディーゼル排気後処理システム分野の合弁
•
軽量構造の研究の重視。例えば BMW は自動車生産に使用される炭素繊維及び繊維半製品を生
産する SGL グループとの合弁を発表した。車両重量と排気物質の削減を狙ったものである。
•
バッテリー技術開発のための国際提携が出現している。例えば BMW の「プロジェクト i」EV
計画での SB リモーティブ(ボッシュとサムスンの合弁)の利用等。
•
日常的な使用に適する代替伝導機構技術を備えた車の供給増。例えばリチウムイオン電池技
術に基づいたメルセデスの電気駆動「スマートフォーツー」、オペルの「LPG」レンジや電動
の「ミニ E」等。PSA プジョー・シトロエンは電動エンジンと新興市場における小型燃焼機関
の大量販売が狙いであった三菱自動車との提携を深化させる考えを明らかにした。この戦略
は日本のトヨタとホンダ及び独ダイムラーのメルセデスと競合するものである。
•
EV のサポートに必要なインフラ整備のための公益企業、自動車メーカー及び政府による協働。
これは一般に利用可能な充電スタンドや水素充填スタンドを通して提供可能である。EV やプ
ラグイン・ハイブリッド車の利用拡大をサポートするために、PSA プジョー・シトロエンは
2008 年にフランス電力公社 EDF と提携関係を結んだ。提携の対象分野は EV の商業的発展を
牽引しうるビジネスモデルの定義、リチウムイオン電池等のエネルギー貯蔵技術、再充電中
の車両とネットワークのコミュニケーションを可能にするための再充電システムとプロトコ
ールの標準化等である。また、ボルボとエネルギー供給会社ヴァッテンフォールとのジョイ
ントベンチャーはプラグイン・ハイブリッド車及びエネルギー・インフラを開発する予定で
ある。
28
ABCD
•
自動車メーカーは生産設備による大気汚染を削減するために風力等のグリーンなエネルギー
源の利用を益々拡大している。例えば、再生可能なエネルギー源の使用を拡大する取り組み
の一環として日産は風力発電の設備を英国工場に導入した。これは同生産拠点の電力所要量
の 5%を発電し CO2 の排出とエネルギーコストを削減することが期待されている。
•
環境基準とサスティナビリティに対する約束。殆どの自動車メーカーが今ではサスティナビ
リティ・レポートを発行し、ランドローバーの CO2 オフセット・プログラムのような自社の
「グリーン証明」を強調するための他の戦略も備えている。ダイムラーは、グループ全体の
大掛かりなサスティナビリティ施策をコーディネートし、事業部門による解決策の実施を支
援するサスティナビリティ担当の中央経営委員会を設置した。同様に、部品メーカーも自社
の環境戦略をウェブサイトの重要な要素として強調している。
•
環境又はエコ証明を強調するための車のブランド化。フィアットの「エコドライブ」やフォ
ルクスワーゲンの「ブルーモーション」等のコンセプトがこれに当たる。BMW は「エフィシ
エント・ダイナミクス」プログラムを立ち上げ性能や乗り心地で妥協することなく環境意識
と効率性を融合する可能性を強調する。仏自動車メーカー(ルノー、プジョー)は CO2 排出
量 140 g CO2/km 未満の車の販売(PSA プジョー・シトロエンは 2008 年に 100 万台以上、ルノ
ーは 2008 年に 100 万台)によって自社のエコ証明を示し、2015 年までに欧州における新車の
平均排出量を 120 g CO2/km 以下とする EU の目標を達成するために適切な措置をとり更に環
境に優しい車の生産に関して真剣であることを示した。
•
低炭素技術を奨励するための政府による取り組み。英国政府は種々の取り組みの支援に約 4 億
ポンドを約束した。
•
2008 年 12 月に可決された EU の法令では新車は 85%リサイクル可能でなければならない。自
動車メーカーは耐用期間経過後の自社製品に責任を持ち、部品の大半がリサイクルできるよ
うにしている(BMW は 95%のリサイクル率を約束)。ダイムラーのリサイクリング管理シス
テム(MeRSy)は耐用期間を終えたパーツがより多数自発的にリサイクルされるよう支援し
ており、廃棄物の削減につながっている。また、全ての EU 加盟国で現地の輸入業者や国有の
廃棄物処理企業と協力して耐用期間を終えた車を引き取るネットワークの整備も行っている。
PSA プジョー・シトロエンは危険物質除去、リサイクリング、資源回収を行う専門業者によ
って耐用期間を終えた車と部品の回収と処理を円滑化している。
当面は内燃機関が最も優勢な推進技術であり続けることから、エンジン効率の改善が重視されて
いる。これは変速機技術、燃料ポンプ監視、ステアリング機構、排気システム、「ストップ・ス
タート」にわたる種々の機械的、電子工学的革新を通じて達成されている。PSA プジョー・シト
ロエンはアイドリング時にエンジンを停止させる(街中運転の場合 15%の炭素排出削減につなが
る)ストップ・スタート技術をほぼ全ての PSA プジョー・シトロエンモデルに装備することを約
束している。ボッシュなどの部品メーカーは自動車メーカーと共同で内燃技術と電気駆動の組み
29
ABCD
合わせに取り組んでいる。この数年間に 4 気筒エンジンの性能は劇的に向上しており、3 気筒技術
でも同様の向上が見込まれている。これは比較的小さい 3 気筒エンジンが大きさで上回る今日の 4
気筒エンジンと同等の出力を生みだす可能性を意味する。
European Union – Technology Matrix by OEM
OEM
2006 CO2
Rating
Sustainability initiative
StopStart
GDI
Turbo
BMW
184
EfficientDynamics
✔
✔
Daimler
188
BlueEFFICIENCY
✔
✔
✔
Fiat
144
Natural Power Multijet + Multiair
✔
✔
✔
Ford
162
Econetic
✔
✔
✔
General Motors
157
ecoFLEX
✔
✔
PSA
142
Hybride HDI BioFlex
Renault/Nissan
157
Eco2
Toyota
153
EVAS
Volkswagen
166
BLUEMOTION
Key:
✔ Key technology focus
Source:
OEM interviews, KPMG analysis 2009
Diesel
DCT,
CVT, A6+
Bio-Fuel
Hybrid
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
30
ABCD
アジア – 日本
日本の自動車関連メーカーは様々な新しい環境・安全規制に国内外で対応してきた。世界で販売されて
いる日本車の半分は国内で生産されているため、これは自動車メーカーにとってとりわけ関わりの大き
い問題である。また、2008 年に日本国内で生産された 1160 万台のうち、670 万台は最終的に海外に輸出
された。 17 こうした海外需要への依存のため日本の自動車メーカーは海外の法令により注意を払わざる
を得なかった。その結果、大半の自動車メーカーでは単一のグローバル戦略を採用し、必要に応じロー
カルの法令遵守に向け必要な調整を行っている。
日本の自動車メーカーによると、最近の環境規制によって最も影響を受けているのは伝導機構技術であ
る。今日、日本の自動車メーカーはエネルギー多角化を通してこの競争の激しい産業での生き残りを図
っており、ガソリンやディーゼルの伝統的エンジンと代替燃料エンジンに加えて、EVや燃料電池技術に
も対応している。例えばトヨタは 18これら各種の伝導機構の開発に取り組んでおり、同社のハイブリッ
ドシステムを利用して更にこれらのシステムの向上を目指している。マツダは
19
はストップ・スタート
システム付きのガソリンエンジンと、ハイブリッドシステムを採用した水素ロータリー・エンジンの開
発を手掛けている。日産 20とホンダ
21
は低燃費のガソリンエンジンとディーゼルエンジンの他にEV、
HEV及び燃料電池車の開発を行っている。
興味深いことに、スズキは他社のブランドと合わせて日本の新車販売の約 3 分の 1 に当たる軽分野での
圧倒的優位を維持するために伝統的なガソリンエンジンに特化し続ける模様である。高コストのハイブ
リッド車の開発より既に平均を上回る燃費効率を備えた安価な軽自動車を改良して提供し続ける方が得
という考え方である。
自社の戦略と開発の進み具合に応じて各社はそれぞれ異なる伝導機構の商業化を優先させている。ハイ
ブリッド分野において現在トヨタとホンダはそれぞれ「プリウス」と「インサイト」で先行している。
日産(「リーフ」)、三菱自動車(「i-MiEV」)及びスバル(「ステラ」)は既に EV を発売済みか
2010 年に一般への販売開始が見込まれている。ある上位自動車メーカーによると「将来新たな規制を満
たすためには(ガソリンに依存しない)次世代車の実現が不可欠となる。」
17
社団法人日本自動車工業会「日本の自動車工業 2009 年」
18
トヨタ自動車ウェブサイト
19
マツダウェブサイト
20
日産自動車ウェブサイト
21
本田技研工業ウェブサイト
31
ABCD
常に自動車メーカーからコストや重量の削減圧力に晒されている日本の部品メーカーは伝導機構
などの部分における新技術の実現に重要な役割を果たしてきた。例えばアイシン精機
22
は「プリウス」
の新エンジンの冷却にガソリンではなく電気で作動するウォーターポンプを開発した。これはエンジン
重量の軽減とベルト駆動式ポンプで必然的に生ずる摩擦の除去によって燃費効率を向上させる。また、
同社は 2 モーターハイブリッドシステム、2 モーターハイブリッド・トランスミッション、8 段自動変速
機、軽量フレーム構造(ダイクエンチ工法により)等の革新技術も開発している。
弊社が取材したある部品メーカーは、高付加価値部品の生産コストは必ずしも自動車メーカーに
転嫁できないため、環境規制強化の傾向は内装部品メーカーに悪影響を与える可能性があるとコメント
したが、「技術開発がもたらす業界の変化は部品メーカーにとって他の自動車メーカーとの提携関係を
築くチャンスとなるかもしれない」とも付け加えた。大半の自動車メーカーは消費者がどの程度「より
グリーンな」車に対してプレミアムを払う用意があるか不確かであった。あるメーカーは環境配慮型の
製品に対して消費者は 2~5%余計に払うのではないかとしたが、他の部品メーカーは上乗せが 10%にも
なるかもしれないと推測した。しかしその他の回答者の大半は、現在の補助金や減税措置が終了すれば
尚のこと、よりグリーンな車がより高い価格を要求できるのか確信が無かった。
業界が現在直面している課題は様々な統合・再編のチャンスを作り出しているようである。既存プレー
ヤーの一部が「よりグリーンな」自動車産業への転換に失敗する可能性もあり、水平統合の可能性が多
数存在する。相手企業が特定分野に持つ強みからシナジー効果を実現するために自動車メーカー同士が
合併することもあるかもしれない。セクターを跨ぐ統合、特に自動車メーカーと電機、電力、電池産業
の主要メーカーとの統合も広く予想されている。更に、業界の変遷に伴い自動車メーカーと部品メーカ
ーの伝統的な系列関係がそれほど明確でなくなる可能性もある。新たな部品メーカーが参入し、最終的
に新たな自動車メーカー=部品メーカー関係の形を定義するかもしれない。
EV の前途が明るくなる中、自動車メーカーは内燃機関と同様の能力を備えた電池を開発する重
要性に気付いている。大半の自動車メーカーはこれまでの 10 年間に大手電子機器メーカーと合弁ないし
戦略的提携を行っている。例えばトヨタはパナソニックと合弁を設立し、日産は NEC と提携している。
同様にホンダは有力電池メーカーの GS ユアサと提携している。こうした戦略的提携は国内企業だけのも
のではない。多くの外国自動車メーカーが自社の EV や HEV 向けの部品に日本の電子機器メーカーを利
用している。例えば GM はハイブリッド車に現在日立の電池を使っているし、フォルクスワーゲンと三
洋電機はリチウムイオン電池の開発で提携した。PSA プジョー・シトロエンは、既に EV 技術の研究で
協力している三菱自動車に出資を検討しているといわれている。
22
アイシン精機ウェブサイト
32
ABCD
国際提携は電池開発以外の分野、特に新興市場への食い込みを狙ったものへの拡大が予想される。
フォルクスワーゲンは最近スズキと株式の相互持合いに関する計画を発表した。スズキはこの調達資金
によって国内外でニッチを確立している軽自動車をはじめとする分野で研究開発支出の増額が可能にな
る。日本の自動車メーカーは主に現地メーカーとの合弁を通じて中国市場にも参入している。
アジア – 中国
中国は既に世界有数の自動車生産国であり、2030
China's automotive sales by engine capacity
100%
80%
2.9%
11.7%
2.4%
11.9%
18.6%
21.3%
2.1%
12.9%
2.0%
11.4%
25.7%
24.5%
年までには国内走行車数が 3 億 3000 万台を超え
1.5%
9.6%
て米国を抜いて世界一になる可能性もあると予測
19.2%
されている。 23 車が増え続け環境に対する懸念が
60%
40%
42.5%
高まる中、中国政府は車の排出物質の削減と再生
47.0%
57.2%
47.4%
51.6%
17.5%
11.9%
10.5%
12.6%
2006
2007
2008
Jan - Oct
2009
20%
24.3%
ている。
0%
2005
<=1.0L
Source:
可能エネルギーで走る車の奨励を真剣に推し進め
1.01L-1.60L
1.61L-2.0L
2.01L-2.50L
>=2.51L
Nomura, “Autos & Auto Parts – Beijing outlines auto stimulus package”, 15
Jan 2009; Wind database
再生可能エネルギーに関しては、新エネルギー車
(NEV)の購入に補助金を与え、自動車向け研
究開発の資金支援も行っている。また、排出物質
を抑制(かつ販売を促進)するために、政府は古
い車両をより低燃費のものに買い替えるための補助金を地方の農家に提供し、2009 年に導入された 1.6L
未満の小型エンジン車に対する減税措置を 2010 年まで延期した。
中国の自動車メーカーと部品メーカーはこうした機会をとらえて環境政策の方向性に自らを一致させて
いるようである。殆どの自動車メーカーが小型車の開発拡大を実施又は計画している。例えば、上海汽
車工業-VWはモデルのラインアップに小型車の生産能力を増やし、既存車の小型エンジン版の投入も行
っている(例えば、1.8L車「マゴタン」の 1.4L版が 2010 に登場する予定である)。 24 これまでより大型
の車にフォーカスしてきたトヨタ等の自動車メーカーは比較的売り上げの伸びが鈍く、成長を求めて現
在小型車分野に進出している。 25
出現しつつある NEV 分野で優位に立つために、自動車メーカーはパイロットテスト都市で NEV を投入
したり、モーターショーで新規のモデル開発の展示を行ったりして研究開発に多大な投資をしてきた。
比亜迪汽車(BYD)がEV及びハイブリッド車計画で見出しを飾ったが、実際には上海汽車工業(SAIC)、
第一汽車(FAW)、北汽福田汽車、奇瑞汽車、吉利汽車等の他の中国メーカーもハイブリッド車投入計
23
McKinsey Quarterly “China’s Green Opportunity”, May 2009
China Economic Net “Small-displacement cars lead auto market”, November 24 2009
25
Global Times “Toyota to tap China's small car market for growth”, September 30 2009
24
33
ABCD
画で遅れをとってはいない。例えば上海汽車工業(GM及びフォルクスワーゲンの上海におけるパートナ
ー)は 2010 年に自前のNEVブランドを発売する計画で 18 億ドル以上をNEV計画に投資している。また、
上海万博との提携でセダンからバスまで様々なNEVを万博の交通手段として提供することになってい
る。 26
自動車メーカーや部品メーカーは多くの新規投資でエンジンや新エネルギー源にも重点を置いている。
例えば奇瑞汽車は走行距離 150 キロ、最高時速 120 キロの能力を持つ「S18」EVを開発した。また、ハイ
ブリッド技術を自社製品の標準装備にする計画でもある。中国航空工業集団公司(AVIC)もEVやエンジ
ンの開発を目指して国内の大手自動車メーカーと提携し、2009 年から 2020 年にかけて約 200 億元の投資
を予定している。 27
今日NEVは中国市場のほんの一部に過ぎないが、2013年までに中国は世界最大のNEV生産国になる可能
性もあると業界関係者はコメントしている。ローランド・バーガー氏は2020年までに中国の車両の伝導
機構の15%が(160万台)がEV又はPHEVになると予測している。TNSオートモティブの最近の調査によ
ると、現在中国の自動車購入者の75%はNEVに対して10%のプレミアムを払う用意があるという。中国
の自動車メーカーや部品メーカーは伝統的な内燃機関技術の開発によって欧米のメーカーに追い付き、
追い越すことは不可能だと承知しているため、政府の政策はEV、PHEVを非常に優遇している。同様に、
金の使い道としてPHEV又はEVの方がバイオ燃料やディーゼル技術、LNG/LPG、その他のエネルギー源
よりも中国にとって生産的だともいえる。しかし、中国やその他の国々はまだNEVのサポートに必要な
インフラを整備してその広範な実施に向けた課題に対処しなければならない。これには自動車メーカー、
政府及びその他のインフラ提供者の間で更に大掛かりな連携が必要となるだろう。中国政府と国有企業
セクターは政策的なフリート購入者としてPHEV・EV関連政策の影響力を更に強化することも可能だろ
う。
公共交通機関と政府関係輸送(NEVパイロットテストプログラムの主な対象である)による利用が主と
はいえ、太陽光発電によるものを含む再充電スタンドが開発され上海等のパイロット都市で利用に供さ
れている。2020 年までには一人当たりGDPが 1000 ドル以上の都市(40 以上)、つまりEV売り上げ全体
の 46%を生みだす都市をEVインフラがカバーする可能性があると予測されている。興味深いことに、こ
れは従来自動車セクターと無関係であった企業からの投資を惹きつけている。中国最大の送電企業であ
る国家電網公司は北京、上海、天津でバス及び乗用車両向けの充電スタンドを建設すると発表し、 28 石
油大手の中国海洋石油総公司(CNOOC) はEV向けの電池充電スタンドのネットワークを全国的に構築
する可能性を検討している。
26
China Daily “SAIC Group to invest 12b Yuan in new energy cars”, July 7 2009
ChinaEV.org “AVIC establishes electric vehicle system base in Zhengzhou”, 11 December 2009
28
McKinsey Quarterly “China Charges Up: The Electric Vehicle Opportunity”, October 2008
27
34
ABCD
しかし自動車メーカーにとっては電池容量と再充電に要する時間も一般への EV の販売に対するハードル
となる可能性が高い。EV 向けのインフラ提供を専門としている設立間もない米企業、ベタープレイスが
生み出した構想は電池のレンタルと交換のためのインフラを提供するというものである。奇瑞汽車も電
池交換のビジネスモデルを追求する可能性を示唆している。
ベター・プレースと提携してきた日産とルノーの共同事業、ルノー日産アライアンスは、中国の 13 都市
でEVのパイロット・プロジェクトを展開する合意を 2009 年 4 月に中国工業情報化部と締結し、そのモデ
ルを一歩現実に近づけた。ルノー日産アライアンスはゼロ・エミッション車両のバイロット都市として
武漢市政府と了解覚書を締結し、2011 年初めに「電池充電ネットワークの青写真」と車を中国で提供す
ることを目指している。 29
政策は省エネの度合いに応じてインセンティブが異なるという方向へと進み、純粋なEVが恐らく最も大
きな補助金を受け、ハイブリッドが最も少なく、PHEVがその中間となるはずである。現在PHEVとEVで
先行している企業は比亜迪汽車、万向電動汽車、長安汽車、上海汽車工業、 奇瑞汽車及び天津清源電動
車両である。しかし他の企業も急速に追いつくであろうし、新たな企業も出現するだろう。EV向けのリ
チウムイオン技術を持っていると主張する企業は25社以上存在する。
中国がエコ部品の技術ハブとなる可能性もあり、現地の部品メーカーには幾つかの固有な利点があるか
もしれない。原材料コストや生産コストが低いこと、国内製の安価な工作機械器具やその他の設備を使
用していること、相当なリチウムイオン電池の生産基盤が既にあること、同分野の研究・増産に莫大な
資源が投入されていること等である。また、 中国は世界のネオジム(永久磁石に不可欠な材料)の80%
を保有し、リチウム埋蔵量でも世界第三位である。中国の部品メーカーは既にLiFePO4電池を開発してい
るが、中国は周辺分野及び消費電力・熱管理に関わる電子機器とソフトウェアを生産する能力を欠いて
いる。 将来のクロスボーダーM&Aや提携がこの分野に対処できるかもしれない。
ラテンアメリカ ― ブラジル
ブラジル政府は排出物質を規制することで環境保護重視の姿勢を強め、自動車メーカーはその結
果としてより厳しく監視されるようになった。これまでの PROCONVE 基準を受けて自動車メーカーや
部品メーカーは規制を満たすために触媒コンバーター、電子燃料噴射装置、排気ガス再循環(EGR)バ
ルブ、酸素センサー、高エネルギー点火、二次空気供給装置等の部品や技術の装備を余儀なくされてき
た。
29
China Economic Review “The Long March”, June 2009
35
ABCD
最近ブラジル環境省は一部のカーモデルが排出する汚染のランキングをPROCONVE規制で採用
された基準に基づいて発表した。リストは 250 モデルのアルコールエンジン・ガソリンエンジン車をラ
ンキングし、CO2 排出、窒素酸化物、一酸化炭素及び炭化水素の水準を比較している(ガソリンエンジ
ン車両による汚染の 99%を占めている)。 30
各モデルは 0 から 10 までのいわゆる「グリーン格付け」
を付与される。グリーン格付けは、生産試験で測定された三つの温室効果ガス(一酸化炭素、炭化水素、
窒素酸化物)の平均排出をPROCONVE規制で認められる最大排出量と比較することにより計算される。
試験とランキングの手続きに全国自動車工業会(ANFAVEA)が異議を唱えたものの、自分の車のランキ
ングを消費者が閲覧できるウェブサイトを政府が作成したため、このニュースは社会とメディアの大き
な注目を集めた。
より最近では、規制と社会による圧力の増大に対応して自動車メーカーは車の排出物質の削減を
焦点とする技術の開発を加速している。排出目標は欧州のものと似ているものの、ブラジルで販売され
る車両は殆どがフレックス燃料車であり潜在的には E100 燃料(エタノール 93%、水 7%)でも走行でき
るため、ブラジル市場ではカスタマイズした策を実施しなければならない。
直近の規制を満たすために自動車メーカーに要求されている変更の一例を 2009 年の「シボレ・
アストラ」に見ることができる。同車に搭載されている新たな 2.0L「フレックスパワー」エンジンは、
直近の PROCONVE フェーズの制定(2009 年 2 月 1 日)以降適用されている新技術要件を満たしている。
このエンジンの進化している点は重量軽減、トルクカーブの変更、低摩擦のバルブトレイン、貴金属の
負荷分散を最適化しシステム効率を改善する二つの触媒コンバーター、触媒コンバーターの効率を常に
分析し適宜ミックスを調整する第二の酸素センサー等である。
E100 エンジンを導入している他の自動車メーカーは、適切な再起動ができるようフード下に第
二のガソリンタンクを備える必要性などの顧客にとっての不便さに速やかに対応している。エタノール
は高温では蒸発するため、気温がある一定レベルを下回る場合ブラジルでは E100 エンジンはガソリンで
始動し最初の数分間を走行する。このため別のガスタンクが必要となり、従来はエンジン・コンパート
メントに搭載されてきた。
ブラジルの市場特性と同国の車両生産規模を踏まえて大手のパワートレイン 部品メーカーはど
こも現地に開発チームを置いており、その狙いは現地基準を満たすことに加えて純粋エタノール
(E100)車に関する新技術のテスト市場としてブラジルを利用することである。車両始動前にエタノー
ルを予熱することがこのような問題を解決する潜在的な方法の一つではあったが、こうしたシステムは
従来不便であった。点火プラグを燃料レールに直接設置した、エタノールを予熱する燃料噴射システム
が最近ボッシュとマグネティ・マレリによって開発された。それでもエンジンを始動できるまで若干の
30
“Consulta dos níveis de emissão dos veículos novos brasileiros”, www.ibama.gov.br
36
ABCD
遅れがあるものの、現行のシステムに比べて大きな改善である。また、マグネティ・マレリは車のエン
ジンが四種類の燃料(ガソリン、エタノールミックス、純粋エタノール、圧縮天然ガス)に対応可能に
なる「テトラフュアル」システムも開発した。 31
他の部品メーカーは噴射装置自体に加熱部分を組み
込んだ新しいタイプの燃料噴射装置の開発に取り組んでいる。
3. 規制による自動車産業への影響
ローカル規制や市場動向が多くの企業に統合、売却又は特定地域や事業からの完全撤退を迫るか
もしれない。自動車関連企業は、複雑で変化する世界の規制環境の中で競争力を維持するために製品ポ
ートフォリオと生産拠点の見直しを迫られるかもしれない。例えば、経営難に陥っている北米や欧州の
企業には成長に必要な資本を調達するために資産の一部をアジア又は欧州の同業者に売却するという選
択もありうるだろう。また、新たな燃費・排出基準に照らして製品ポートフォリオをリバランスするた
めに、そしてコストを削減するために企業が域内統合を行う可能性もある。民間資本や政府による奨励
制度(クリーン技術に対する米政府の資金援助や中国政府による海外資産獲得の後押しなど)の有無も
自動車産業の将来像の決定に重要な役割を果たすかもしれない。
域内、域外の取引が起こる蓋然性をマクロレベルで世界的に推定するために KPMG は各地域の
規制の影響や市場動向を分析した。取引には合併、買収、売却、合弁、技術供与及び複数企業間の重要
な供給関係の形成が含まれる。分析にあたっては現行の排出レベルと政府規制による基準の開き、規制
の適用度合い、現在の市場規模、経営難の部品メーカーの数、クリーン技術力、資本の有無等を勘案し、
取引の起こりやすさを反映させるために域内・域外結合の魅力の程度を「高」、「中」、「低」として
区分した。
31
マグネティ・マレリ社ウェブサイト
37
ABCD
Projected Automotive Transactions
(Mergers & Acquisitions, Divestures, Joint Ventures etc.)
Assessment Criteria
North
America
Europe
Asia
South
America
Market size
($B)
150
200
100
5
Number of
suppliers (No)
3500
3800
3700
250
% Distressed
suppliers
50%
30%
10%
10%
Criteria
M
Regulatory
pressure
H
H
M
M
H
M
High number of transactions
Medium number of transactions
Note:
Source:
Low number of transactions not shown on chart
KPMG Analysis
Emission
standards
Clean Tech
capability
Capital
availability
= High
= Medium
= Low
弊社の調査結果では、最も魅力のある取引が北米=アジア間のもので、欧州=アジア、北米=欧
州の順で続くことが示唆されており、現在の業界のトレンドに関する弊社の全般的な理解とも整合して
いる。
北米では、厳しい規制環境のもと相対的に低い市場成長、経営不振の部品メーカーの相対的な多
さ、平均車両サイズの大きさ、既存企業におけるクリーン技術経験の相対的な未熟さ等の要因が組み合
わさり、アジアや欧州の企業との取引を手掛ける素地が形作られている。北米企業は益々自社の不採算
事業をそのブランドや資産、市場プレゼンスから恩恵を受けられる企業に売却することを目指すかもし
れない。最近では、高燃費車「ハマー」を中国での同モデルの人気上昇に目を付けた地元小企業に売却
する GM がその一例といえるのではないか。北米自動車メーカーがアジア又は欧州で技術を先導する企
業と供給関係や合弁を築く可能性もある。例えば GM とフォードは独立系バッテリー部品メーカーであ
る韓国の LG と契約を結んでいる。フォードは自社のディーゼルエンジン及び直噴エンジンの技術供与と
引き換えにトヨタからハイブリッド技術のライセンスを受けており、トヨタグループに属する日本の自
動車部品メーカーのアイシン精機はフォードのハイブリッドモデルの一部にハイブリッド変速機を供給
している。
こうしたダイナミックな環境では、優先的パートナーとして台頭する部品メーカーはそのグロー
バルな規模を利用して技術のコストを更に下げ、それによって業界での存在感を増すことができるかも
しれない。ディーゼル技術の開発を先導し、より小型で燃費効率の高い車を生産する欧州の企業は、小
型ディーゼル車の需要が急増している他の地域でもその経験を活かせるかもしれない。ディーゼル伝導
38
ABCD
機構が徐々に米国で好感される中、BMW、アウディ、ボルボ等の大手欧州企業は既に強力にディーゼ
ル・モデルを米国市場で売り込んでいる。
39
ABCD
相対的に成長率が高く、低コストで、クリーン技術のノウハウを備えたアジアの企業は、益々相
対的に成熟した市場から魅力的な資産を獲得するようになるかもしれない。例えばインドのタタ自動車
はノルウェーの EV メーカー、ミルヨ・グレンランド・イノベーションを買収し、インドモデルのノルウ
ェー向け EV 版である「エレクトリック・インディカ」を生みだすためにその技術を利用した。低コスト
メーカーが新モデルを引き下げて海外市場に進出するためにその地域で戦略的な資産を買収する似たよ
うな案件が益々増えるかもしれない。同様に、アジアの企業も技術ノウハウを増やし、カバーする市場
を拡大するために米国その他で自動車部品メーカーの買収を試みるかもしれない。日本の三菱製鋼は
2009 年 6 月に米国の自動車部品製造・卸大手、メリター・サスペンション・システムの株式の過半数を
取得した。資本の存在と成長する国内市場に主として由来するアジアの強みは、近い将来更に多くの取
引に対する関心に火を付けるかもしれない。新技術の分野に強みを持つアジアの自動車部品メーカーが
既存の自動車メーカーと競うべく川下統合を選択する可能性もある。元々はバッテリーメーカーであっ
たが拡大する EV 市場で競争するために低コストの EV を作り始めた中国の比亜迪汽車(BYD)が良い例
である。
上記の域外取引の他に、北米と欧州では経営不振の企業がビジネスモデルの再構築を図る中で域
内の統合や売却が続くと予想される。資本調達力のある強い企業にとって苦境にある企業を潜在的なタ
ーゲットとして評価するのにこれほど良いタイミングは無い。スイスのエクイノックス・グループは破
綻した車体修理用部品メーカー、セレット SA の株式の 96%を最近取得した。この環境を利用して急速
に拡大するために小さな自動車関連会社が経営不振の大企業の吸収を試みることもありうるだろう。ア
ジアでは似たような取引が起きている。破綻した日本の部品メーカー・卸業者である砺波製作所の全事
業をアルファ・デザインが買収した。欧州でも同じような動きが起きている。フォルクスワーゲンは
2009 年 11 月に破綻して買い手を探していた独自動車メーカー、ヴィルヘルム・カルマンの買収に合意し
た。
規制の枠組みが世界各国で異なり、各地域の基準を単一のグローバル基準に統一する意志も方向
性も存在しないことから、リスクを最小限に抑えリターンを最大化するために企業は多面的な戦略の展
開を選択するかもしれない。例えば、好調なハイブリッド計画をスタートさせた現在、トヨタはクリー
ンなディーゼルエンジンの投入を計画している。また、電池を供給するパナソニックとの合弁を通じて
一部の市場でリチウムイオン・ハイブリッド車を導入する計画も持っている。クラス最高の技術を最低
のコストで市場にもたらすために、企業は部品メーカー、そして時にはライバル企業の関与を益々増や
していくかもしれない。技術のコストは生産の規模と高い相関があるため、特定の分野で大きな技術基
盤を持つ少数の部品メーカーが大きな競争上の優位を持つコストリーダーとして出現する可能性もある。
こうした部品メーカーの一部が政府の奨励制度やその他の有利な経営条件をベースに地域的な企業グル
40
ABCD
ープを形成することもありうるだろう。米国政府が導入したクリーン技術の研究開発や既存設備の再整
備に向けた連邦資金は米国でのプレゼンスの拡大を企業に促すかもしれない。
41
ABCD
4. 結論
今後 5 年から 10 年は自動車産業に大きな構造的変化をもたらす可能性がある。世界の自動車産
業の状況は概ね未だに厳しいが、長期的に成功するためには企業は短期的な生き残りのための課題の先
を見据えなければならない。より長期の戦略には製品ポートフォリオのリバランスと不採算事業の整理
に加えて、複雑に入り組んだ他企業とのグローバル・ネットワークを通して戦略的な成長分野に投資す
ることも含まれる。その結果、成功を収めている企業は益々グローバルで、身軽で、市場の変化に迅速
に対応するようになるだろう。明確に定義されたグローバルな M&A 戦略が勝ち組と負け組の峻別に支
配的な役割を果たし、最終的に世界の自動車産業の将来像を決定するだろう。
照会先
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Gary Silberg
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ABCD
Ryo Eguchi
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Hideharu Kojima
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Kenichiro Ogawa
Restructuring Services
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