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Tadashi Suenaga Piano Recital with Masanori Oishi
Bernat Vivancos
“ WATER REFLECTS EVERYTHING”
Moustik's etude
Domenico Scarlatti
JacobTV
Sonata in h-moll K.87 L.33
May this bliss never end
Sonata in f-moll K.481 L.187
Claude Debussy
Kurtág György
10 selected pieses from [Játékok]
Images 1
Reflets dans l'eau
Hommage à Rameau
Bartók Béla
Mouvement
Rumanian Folkdance Sz.56
1. Jocul cu bâtă (Stick Dance)
Franz Liszt
2. Brăul (Sash Dance)
Les jeux d'eaux a la Villa d'Este from [Annees de pelerinage Troisieme annee S.163]
3. Pe loc (In One Spot)
Ballade Nr.2 in h-moll S.171 R.16
4. Buciumeana (Dance from Bucsum)
5. Poargă românească (Romanian Polka)
6. Mănunţel (Fast Dance)
Benjamin Britten
From [Six metamorphoses after ovid op.49]
Pan
Phaeton
Narcissus
Domenico Scarlatti (1685 - 1757)
7.
Sonata in h-moll K.87 L.33
Búcsú Kadosa Páltól
パール・カドサへの別れ
Sonata in f-moll K.481 L.187
8.
A kis zivatar (Kocsis Zolinak)
⼩さな雷⾬(ゾルタン・コチシュのために)
ドメニコ・スカルラッティ(1685-1757)は「近現代鍵盤楽器奏法の⽗」と呼ばれたイタ
リアの作曲家。しかし鍵盤楽器のためのソナタと呼ばれる個性豊かな555曲のほとんどの
9.
Les Adieux (in Janáčeks Manier)
告別(ヤナーチェク⾵に)
作品はポルトガル・スペインで作曲された。
10.
…és mégegyszer: Virág az ember…
そしてもう⼀度、花、それは⼈間・・・
彼のソナタは構成上の無駄を⼀切省いた極端にシンプルな楽曲である。鍵盤楽器奏法の⽗
と呼ばれるだけあって作品のほとんどが技巧的なものだが、今回は数少ない静かな宗教的調
べをもったゆったりとした作品を演奏したい。シンプルの中に⽰された楽想の多様性には⽬
を⾒張るものがある。1つ1つの単純な1⾳が⼼に語り掛けてくるようである。
ルーマニア出⾝のハンガリー⼈作曲家。
「ヤテコック」とは「遊び」という意味である。6
冊ある作品集から 10 曲を抜粋。1 曲数秒で終わってしまうものもあり、クラスター(平⼿
打ち奏法)などを使う現代曲。しかしそれぞれの聴き⽅をもってすれば、「ヤテコック」の
作品の背後にある世界観は⾊々と姿かたちを変えファンタジー溢れる作品となる。
Kurtág György (1926 -)
10 selected pieses from [Játékok]
「遊び」より
それぞれに名前が付いているが、実際⽿で聴き、体で感じ、⾃分なりの“各作品の意味”と
いうものを探してほしい。現代⾳楽に関して「百年も⼆百年も昔の⾳楽よりも、現代に⽣き
1.
Versetto: Temptavit Deus Abraham…(apocryphal organum)
神はアブラハムを試した
(真偽の怪しいオルガヌム”中世ヨーロッパでの2声の合唱”)
2.
Üzenet Szőllősy Andrásnak
ている今世紀の⾳楽の⽅が本当は理解しやすい」と⾔われることもあるが、これは完全には
否定できない。現代に⽣きる芸術家の⽅が今の我々の⽣活に近いことは明らかなわけで、そ
こにある様々な共通点から無意識レベルで我々の⼼の奥底へと通じ合う部分はあるのでは
ないか。
アンドラーシュ・シュツォロスィへのメッセージ
3.
A megvadult lenhajú lány
亜⿇⾊の髪の⼄⼥ -狂乱-
4.
…humble regard sur Olivier Messiaen…
Bartók Béla (1881 - 1945)
Rumanian Folkdance Sz.56
ルーマニア⺠族舞曲
・・・オリヴィエ・メシアンへの謙虚な眼差し・・・
5.
Virág az ember…(4a)
花、それは⼈間・・・(4a)
6.
Szemtől-szembe
向かい合って
1. Jocul cu bâtă (Stick Dance)
棒踊り
2. Brăul (Sash Dance)
飾り帯の踊り
3. Pe loc (In One Spot)
⾜踏みの踊り
Benjamin Britten (1913 - 1976)
Six metamorphoses after ovid op.49
オヴィディウスによる 6 つの変⾝物語
作品 49 より
4. Buciumeana (Dance from Bucsum)
ブチュム⼈の踊り
5. Poargă românească (Romanian Polka)
ルーマニア⾵ポルカ
6. Mănunţel (Fast Dance)
速い踊り
1. Pan
パン
2. Phaeton
ファエトン
3. Narcissus
ナルシス
ハンガリーの作曲家。全体の演奏時間が5分程度の⼩曲。1909 年トランシルヴァニアで
採集されたルーマニア⼈の⺠謡が⽤いられている。バルトークが 34 歳(1915 年)の時に作
ベンジャミン・ブリテンは前衛の時代に活躍しながらも、イギリスの保守性を彼の調性的、
曲された。この年はバルトークの作曲において「ルーマニア⾳楽の年」と呼ばれ、この曲の
旋律的作品とうまく結びつけ、イギリス⼈の⾳楽感を世界に知らしめた作曲家である。オー
ほかに、《ソナチネ》、《ルーマニアのクリスマスの歌》など、ルーマニアの⺠謡の多くの編
ボエの為に書かれたこの「オヴィディウスによる 6 つの変⾝物語
曲が作曲されている。
く、この楽器のもつヴィルトゥオーゾ的な効果よりも、楽器の⾳⾊、限定された⾳域、吐き
作品 49」も例外ではな
出される上質な旋律線を⽣かして、詩的な性格を引き出そうとしている。この「変⾝物語」
もともと《ハンガリーにおけるルーマニア⺠俗舞曲》というタイトルをもっていたが、作
は紀元前 43 年に⽣まれた古代ローマの詩⼈、オヴィディウスがギリシャ神話に由来する物
曲当時、ハンガリー領にあったルーマニアは第⼀次世界⼤戦により領⼟の⼤半を失ったこと
語を書いた物で、そこから題材を求めたブリテンが 6 つの物語を選び短い曲を書いた。その
もあり、ハンガリーの名がとられ現在のタイトルになった。
中から、愛するシリンクスの化⾝である葦笛を吹く「パン」、太陽の⾺⾞に乗り、雷によっ
てパデゥス川に投げつけられた「ファエトン」、⽔⾯に映る⾃分⾃⾝の姿に恋をして花に変
第1曲:「ジョク・ク・バータ」戦いを模した踊りで、若い男⼥が激しく踊る。
各節の終わりに杖で地を打つリズムがついている。
第2曲:「ブラウル」トロンタール県に伝わる舞踏。
第3曲:「ぺ・ロック」異邦を深く感じるゆったりとした旋律が特徴的。
第4曲:「プチュメアーナ」3 拍⼦のトランシルヴァニア地⽅のゆったりした舞踏曲。
第5曲:「ポアルカ・ロマネアスカ」ポルカは本来ボヘミア地⽅の舞曲だが、
この曲ではかなり情熱的で野性味豊かなものになっている。
第6曲:「マヌンツェル」ビーハル県で採取した 2 種の舞曲がつながっている。
後半はテンポ、リズム、ダイナミックスにおいても勢いを増し華やかにしめくくる
⾝してしまった「ナルシス」の 3 曲をお届けしたい。
この作品はジャズトランペット奏者、そしてヴォーカリストとしても名を馳せた、チェ
Bernat Vivancos (1973 -)
Moustik's étude
ット・ベイカーをトリビュートしたものである。天才ミュージシャンのベイカーはかつて
現代奏法の為の練習曲より「蚊」
マイルス・デイヴィスを凌ぐほどの⼈気を誇ったが⽣涯ドラッグとの関係を切る事が出来
なかった。1998 年、ベイカーはアムステルダムに滞在し⾃⾝の経歴についてインタビュー
バルセロナで⽣まれたスペイン⼈作曲家。スペインで⾳楽を学んだ後、渡仏しパリ国⽴⾼
等⾳楽院で作曲を学ぶ。ヴィヴァンコスと⼤⽯は同時期にパリ国⽴⾼等⾳楽院に在籍し
ていた。その美しくキャッチーなメロディー、シンプルな性格の⾳楽が他の学⽣たちのアカ
デミズムな作品の中で、良い意味で異彩を放っていたことを思い出す。
を受け、その時のスピーチがこの作品で使われてる。そしてこのインタビューの後にホテ
ルの窓から転落して⼈⽣を終える。
⿇薬漬けで⾃分の死が近い事を悟っているかのような⾔葉の中に、ふと⽣への執着や未
来へのかすかな希望を感じさせる⾔葉が時折織り交ぜているこのスピーチからは、
JacobTV が作品でよく取り上げる、死が⾝近にある状況の中で⽣きることの価値を認識す
この作品はサクソフォンの現代奏法の為の練習曲集の中の1曲である。この練習曲「蚊」
は、循環呼吸(⾳を出し続けたまま途切れさせる事なく息を吸うテクニック)と早い指まわ
しのための練習曲であり、その難しいテクニックのためにシリアスになりがちな⾳楽に「蚊」
というテーマを結びつけてコミカルな作品にしてしまうのがヴィヴァンコスの個性的かつ
⾯⽩いところと⾔えるであろう。
JacobTV (1951 -)
May this bliss never end
この⾄福よ永遠に終わる事なかれ
JacobTV こと、ヤコブ=テル・フェルドハウス Jacob ter Veldhuis は、1951 年オラン
ダ⽣まれの作曲家。⾳楽家としてのキャリア初期においては、ロック・ミュジシャンとして
の活動がメインだったが、いつしか作曲の世界へと傾倒。JacobTV は⾃らが創り出す⾳世界
を"アヴァン・ポップ"と称し、ポップなゲンダイオンガク、世間⼀般に蔓延する現代⾳楽の
イメージを根本からひっくり返し、ジャズやロックといった⾳楽ジャンルを取り込んで、ま
るでポップ⾳楽のような感覚で楽しめるような作品を次々に産み出していく。ポップな⾳楽
の秘密は楽器の演奏とともに流れるサウンドトラック、サクソフォンを始めとするソロ楽器
と、⼈の声をコラージュしたサウンドトラックを組み合わせる事でポップな⾳楽に仕上げて
いる。スピーチミュージックと呼ばれるその⾳楽はスティーブ・ライヒなども作品の中に取
ること、メメント・モリ(⽣の中で死を想え)ならぬ、メメント・ヴィヴェレ(死の中で
⽣を想え)のメッセージを読み取る事ができる。
Try to be quiet
Claude Debussy (1862 - 1918)
Images 1
映像第1集
It's that kind of tune you know
Those chords are in the first measure !
A lot of fucking attitudes going on here...
1.
Reflets dans l'eau
⽔の反映
Getting the shock treatment
And at the same time
2. Hommage à Rameau
ラモーを讃えて
Kind of put myself in a trance and a
Dadada dadada dada
3.
Mouvement
運動
So it was kind of tricky business
Do my business
I didn't know that would be possible
Oh ssz bwh... I guess they call it a speed bowl !
フランス⼈作曲家。⾳楽史上既存していた旋法、和声機能にとらわれない⾃由な和声法や
旋法を独⾃に⽣み出した。それらの試みにより⽣まれたいわゆるドビュッシーの⾳楽芸術世
界は更に深みを増していく中期の⼤傑作である。
「・・・その神経素材がまだ反射作⽤を受け⼊
There was a bright blue color
れられる間に、花や瞬間的なものを⾒つめなさい。様々な印象を集めなさい・・・」と⼿紙に
Somebody put that down there
残っているように、⽔の諸様相の描写ではなく、曖昧になっていく輪郭の中にも響きのヴェ
There was a bright blue color
ールが⾊彩豊かに絡み合い融合し離れる微妙な「⼼理描写」が特徴。これほどまでに精神的
When I say blue, I mean blue
または内的な⼒を持って⼼の蠢く描写を表現している作品があるだろうか。全てを司る⽔に
He almost died that day
映し出されるもの・・・「⽔の反映」、フランス古典⾳楽作曲家ジャン・フィリップ・ラモーへ
の賛辞・・・「ラモーを讃えて」、現代⾳楽を予⾒するかのような無窮動的リズム・・・「運動」、
It was a dream you know
ドビュッシー⾳楽の真髄を体験できるであろう。
Things like that don't happen
There's pain in my heart
Every memory I'll keep
Franz Liszt
Les jeux d'eaux a la Villa d'Este from
[Annees de pelerinage Troisieme annee S.163]
There's pain in my heart
Devastating feeling..
Man that was a rude awakening let me tell you
May this bliss never end....
巡礼の年第 3 年より「エステ壮の噴⽔」
ハンガリー⽣まれのドイツ系作曲家。「ピアノの魔術師」とうたわれるほどの超絶技巧の
持ち主であった。しかし彼にとって技巧とはただの通過点に過ぎず、あくまでも芸術表現を
するひとつの要素でしかなった。晩年には宗教⾳楽の傾倒を⾒せており、精神的、内的な
⽅向へと向かう。華々しく輝かしい成功に溢れていたと同時に常に波乱と苦悩に満ちた⼈⽣
であったことは否定できない。
「エステ荘」とは、エステ家出⾝の枢機卿イッポリト2世によって 1550 年に着⼯された
ベネディクト派の修道院であった。その後、豪華な別荘と美しい庭園に改築された。豊富な
⽔資源を⽣かし、
「⽔オルガンの噴⽔」や「ドラゴンの噴⽔」など⼤⼩ 500 の噴⽔が存在し、
現在もティヴォリ随⼀の観光地として⼈気がある。リストはそのエステ荘に 1868 年よりグ
スターフ・フォン・ホーエンローエ枢機卿の客⼈として滞在していた。
⾳楽⽂法より⾳の響きを重視し、調性を離脱した⼤胆な⾳の展開、天才ピアニストならで
はの多彩な⽔の描写、それらの試みは 20 世紀⾳楽に⼤きな影響を与えた。ラヴェル
(1875-1937)の《⽔の戯れ Jeux d'eau》(1901)やドビュッシー(1862-1918)の《⽔の反映
Reflets dans l'eau》(1904〜05)を先取りしたと⾔及されている。当時としては驚くべき、
俗に⾔う《印象主義的》のさきがけの傑作である。
途中、ヨハネ福⾳書より引⽤された「わたしが与える⽔はその⼈のうちで泉となり、永遠
の命に⾄る⽔が湧き出る」との標題がある。劇的な転調によりそれをドラマチックに表現し
ている。ピアニスト、作曲家、そして聖職者へという波乱の⼈⽣。⼈⽣の挫折を味わったリ
ストだから⽣み出せた、⾃分の内⾯を⾒つめた奥深い名曲である。
Ballade Nr.2 in h-moll S.171 R.16
バラード第 2 番
ドイツのワイマールで作曲された。本来「バラード」とは中世フランスにゆかりのある詩
形の1つである。19 世紀になりショパンによって初めて器楽曲の名称に転⽤された。ショ
パンの作品は、古い歴史物語を詠んだ詩に基づいていることを暗⽰しているが、この「バラ
ード2番」がどのような叙事的内容を持っているのかは、リスト⾃⾝が語っていないので不
明であるが、私個⼈としてはショパン同様に「歴史的」または「⺠族的」なものを語ってい
るように思える。
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