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再使用高頻度宇宙輸送システムの研究
共通様式 再使用高頻度宇宙輸送システムの研究 ISAS事業 計画No, 研究代表者(所属) 費用(概算で もOK) 3-‐2-‐1(例) 事務局記 入 野中 聡 宇宙飛翔工学研究 系 21,500千円 研究成果のハイライト 再使用高頻度宇宙輸送システムの研究 再使用高頻度宇宙輸送システムの研究において以下の成果(一部見込み)を得た。 それぞれの研究において新たな知見を得るとともに実験機システムへの適用に向 けた技術課題を明らかにした。 ①電鋳および樹脂ライナーによる複合材液体酸素タンクの新しい製作技術の確立 ②ハードウェアも含めた誘導制御系の総合的な評価を行う環境の構築と開発ス ピードを加速する可視化による知的財産の蓄積・共有化 ③寿命評価と艤装検討による搭載型再使用RCSの構築 ④1本の炭素繊維束からなるC/SiC複合材料の製作手法とプロセスの確立 ⑤極低温推進剤の数値解析における相変化モデル改良による圧力変化までを含 めた数値予測手法の構築 ⑥安全審査方式等、システム安全に関する検討と再使用型宇宙輸送システムに 対する安全基準整備 ⑦垂直着陸型ロケットの空力制御と帰還着陸時の推進剤消費の最小化 成果の社会的意義・価値 大量宇宙輸送を必要とする将来の輸送システムの構築に向けた普 遍的な技術課題ついて取り組むことで宇宙輸送システム研究、宇宙 利用研究に広く貢献できる.宇宙輸送系の研究にとどまらず,来るべ き水素社会と共通の技術の確立を目指すことで、水素に関わる新た な産業の発展とイノベーションを期待する活動である. 電鋳ライナー試作 高度補償ノズル試作 © 2011, Covalent Materials Corpora 極低温推進剤解析 帰還飛行研究 成果創出に至る取組・克服状況 今年度は基軸プログラムから戦略的予算での研究へ年度途 中で移行することとなり、限られた予算と時間の範囲内で研 究計画の見直しが必要となったが、年度内に必要な試験や 解析などを実施し最大限の成果をまとめる計画である。 上記研究成果に関するエビデンス(査読付き論文、学会発表等) 佐藤文音,西田浩之,野中聡,「貫通流路からの吹き出しを伴う大迎角細長物体の実験的研究」,第47回流体力学講演会,東京,2016.※優秀発表賞受賞 中内結以子,後藤健,米山聡,有川秀一,「C/SiC繊維束 複合材料の強度劣化機構」,第7回日本複合材料会議,京都,2016. 他外部発表5件、卒論修論6件 平成27年度戦略的開発研究(工学)報告書 研究課題名 再使用高頻度宇宙輸送システムの研究 研究代表者(所属) 野中 聡(宇宙飛翔工学研究系) 共同研究者(所属) 小川博之,成尾芳博,丸祐介、佐藤英一,後藤健、竹内伸介,月崎竜童、稲谷芳文(宇宙飛翔工学研究 系)、川崎繁男(宇宙機応用工学研究系)、山本高行、佐藤峻介、坂井智彦、久木田明夫、宮澤優(第一 研究ユニット)、八木下剛、水谷忠均、志田真樹、小林弘明、竹崎悠一郎(第二研究ユニット)、鈴木直洋、 餅原義孝(基盤技術グループ)、伊藤隆(観測ロケット実験室) 研究協力者(所属) 姫野武洋(東京大学大学院工学系研究科)、米本浩一(九州工業大学)、岡崎慎司、北村圭一(横浜国立 大学)、西田浩之(東京農工大学) 活動区分 □WG ■RG □衛星運用 研究活動期間 平成21年度 から 平成30年度(予定) 平成27年度 研究費 21,500(千円) 平成28年度 研究費要求額 30,000(千円) 平成27年度 研究成果 再使用高頻度宇宙輸送システムの研究において以下の成果(一部見込み)を得た。それぞれの研究にお いて新たな知見を得るとともに実験機システムへの適用に向けた技術課題を明らかにした。 ①電鋳および樹脂ライナーによる複合材液体酸素タンクの新しい製作技術の確立②ハードウェアも含め た誘導制御系の総合的な評価を行う環境の構築と開発スピードを加速する可視化による知的財産の蓄 積・共有化③寿命評価と艤装検討による搭載型再使用RCSの構築④1本の炭素繊維束からなるC/SiC複 合材料の製作手法とプロセスの確立⑤極低温推進剤の数値解析における相変化モデル改良による圧力 変化までを含めた数値予測手法の構築⑥安全審査方式等、システム安全に関する検討と再使用型宇宙 輸送システムに対する安全基準整備⑦垂直着陸型ロケットの帰還着陸時の推進剤の消費の最小化。 評価ポイント 本研究は高頻度で運用可能な再使用宇宙輸送システムの構築に向けて本質的に必要とされる効率的な 運用技術、推進系技術、超軽量化技術、故障許容・ヘルスマネジメント技術などの研究に取り組むもので あり、実験機/実証機でシステムレベルでの技術実証を行うことで再使用型宇宙輸送システムアーキテ 2 クチャを開発するとともに、水素エネルギなど宇宙開発以外の分野との連携を促進する活動を目指す。 本研究の目的 本研究の背景,目的,意義など (背景) H20年度まで戦略的開発研究として行われてきた「再使用ロケットの研究」では将来の宇宙輸送システム研究の第一段階として 繰り返し運用が可能な完全再使用型観測ロケットの実現を目指して開発研究を実施してきたが、「再使用観測ロケット技術実証」 が立ち上がったことにより、「ロケット再使用化」,「垂直離着陸」,「1日1回繰り返し運用」などの研究は再使用観測ロケットに引き 継がれた。宇宙輸送の究極のゴールは大量高頻度な物資輸送を可能とするシステムの構築であり,ロケットを高頻度で繰り返し 再使用するためには重要な技術課題が多くある。そこでこれまで戦略的開発研究「再使用高頻度宇宙輸送システムの研究」とし て取り組み、昨年度は基軸プログラム(軌道上再使用型インフラ構築プログラム)において再使用実験機、実証機に適用すべき高 頻度運用に必要な技術について要素研究を行ったが、本年度から戦略的開発研究として改めて取り組んでいる。 (目的) 宇宙輸送システム長期ビジョンに掲げられている高頻度大量宇宙輸送を実現する2040年代の将来型宇宙輸送システムを目指し た研究として,航空機的に繰り返し飛行が可能なシステムに必要とされる技術について要素レベル研究およびそれらのシステム レベル技術実証を行う.再使用のメリットを最も活かすことができる高頻度再使用運用(1日複数回)を目指して,水素を安全に取 り扱い,高効率(小人数,短時間)・超低コストを目指した運用手法についての研究を行う.本研究は基軸プログラムにおいて「将 来型輸送機のシステムレベル・要素レベル技術研究」として主要課題に設定されている推進系技術、超軽量化技術、故障許容・ ヘルスマネジメント技術など将来の輸送システム構築に本質的に必要な要素技術研究に取り組むものであり、基軸プログラムに おける実験機への適用に向けた研究を行い、エネルギなど宇宙開発以外の分野との連携を促進する活動を目指す. (意義) 太陽光発電衛星の建設など大量宇宙輸送を必要とする将来の輸送システムの構築に向けた普遍的な技術課題について取り組 むことで将来の宇宙輸送システム研究および宇宙利用研究に広く貢献できる.宇宙輸送系の研究にとどまらず,来るべき水素社 会に活かすことができる技術の確立を目指すことで、水素に関わる新たな産業の発展とイノベーションを期待する活動である. 本研究のゴール 宇宙への大量高頻度輸送を可能とするシステムに必要な要素技術の基礎的研究を行い、それらを運用技術とともにシステムレベ ルで実証することで、システム構築のための技術課題を明確にする。それらの課題に対する解決策を見出し、システムを構築する ための手法を確立することで再使用型宇宙輸送システムアーキテクチャを開発する。さらに水素の取扱いやヘルスマネジメント技 術を成熟させ、再使用宇宙輸送システム研究が水素エネルギ社会の構築へ貢献するための技術を確立する。本研究で得られた 成果をJAXAレベルで議論されている再使用ロケット実験機に反映しシステムレベルの技術実証を行う。 3 研究計画と方法 研究計画・方法(開始年度から) 平成21年度 (研究費:51,500千円) 機体システム知能化研究:搭載計算機(OBC)、フライトシミュレータの構築と確認試験 地上運用効率化研究:運用自動化検討、地上系計算機(GSC)の構築、OBCとのI/F確認試験、ハード/ソフトウェア検討・準備 要素技術研究:水素酸素RCS燃焼試験、統合推進系の機体搭載検討、C/SiC複合材料による高度補償ノズルの試作、液体水素 マネジメント技術要素試験(極低温推進剤タンク断熱材の断熱性能劣化試験、液体水素スロッシング可視化試験、光ファイバによ るAE計測、光ファイバ水素センサの液体水素暴露試験) 平成22年度 (研究費:58,700千円) 機体システム知能化研究:搭載計算機(OBC)の構築と機能試験、地上燃焼試験によるシステムレベル試験 地上運用効率化研究:運用自動化検討、地上系計算機(GSC)の構築、OBCと連動した機能試験、ハード/ソフトウェア開発、地上 燃焼試験によるシステムレベル機能実証 要素技術研究:水素酸素RCS燃焼試験、C/SiC複合材料高度補償ノズルの試作、液体水素マネジメント技術要素試験(極低温推 進剤タンク断熱材の断熱性能劣化試験、極低温スロッシング試験、複合材配管極低温耐圧試験、水素ガス拡散基礎試験) 平成23年度 (研究費:54,000千円) 機体システム知能化研究:搭載計算機(OBC)ソフトウェアの改善と機能試験、推進系ヘルスマネジメントシステム異常判別アル ゴリズ検討、地上燃焼試験によるシステムレベル機能実証 地上運用効率化研究:運用自動化の改善と拡張、地上系計算機(GSC)の改善、OBCと連動した機能試験、ハード/ソフトウェア開 発、光ファイバセンサシステム機能試験、地上燃焼試験によるシステムレベル機能実証 要素技術研究:水素酸素RCS燃焼試験、C/SiC複合材料による高度補償ノズルの試作と地上燃焼試験、ワイヤレスセンサネット ワークシステム通信試験、液体水素マネジメント技術要素試験(電鋳ライナータンク液体水素充填加圧試験、極低温スロッシング 可視化試験、複合材液体酸素タンク実液充填加圧試験) 平成24年度 (研究費:58,800千円) 機体システム知能化研究:ヘルスマネジメントコンピュータ(HMC)の構築/搭載計算機(OBC)ソフトウェアの改良によるOBCHMCネットワーク構築/機能試験、MT法による系HMC異常判別アルゴリズ研究、地上燃焼試験によるシステムレベル機能実証 地上運用効率化研究:運用自動化・効率化の改善と拡張、地上系計算機(GSC)の改善およびOBC/HMCと連動した機能試験、 ハード/ソフトウェア開発、地上燃焼試験によるシステムレベル機能実証 要素技術研究:水素酸素RCS燃焼器試作、統合推進システム検討、C/SiC複合材料による高度補償ノズルの試作と地上燃焼試 験、ワイヤレスセンサネットワークシステム開発および通信・機能試験、極低温スロッシング解析、複合材液体酸素タンク実液充 4 填加圧試験、光ファイバセンサ研究 研究計画と方法 研究計画・方法(つづき) 平成25年度 (研究費:50,000千円) 機体システム知能化研究:MT法によるヘルスマネジメント高度化、異常判別アルゴリズ研究、フライトシミュレータ試作、OBCHMC-GSCネットワーク構築、フライトシミュレータ機能確認、システムレベル機能試験 地上運用効率化研究:推進系ステータス情報共有システム構築による運用効率化拡張/機能試験、 要素技術研究:水素酸素RCS燃焼試験、統合推進システム検討、C/SiC複合材料による高度補償ノズルの試作、ワイヤレスセン サネットワークシステム試作および通信・機能試験、複合材液体酸素タンク材料試験、光ファイバセンサ研究 平成26年度 (研究費:12,500千円)※基軸プログラムにて実施 機体システム知能化研究:MT法によるヘルスマネジメント研究、リアルタイムシミュレータ構築研究、各機能確認試験 地上運用効率化研究:ロケットエンジン燃焼室の高エネルギーX線CT撮像による非破壊検査手法の研究 要素技術研究:ワイヤレスヘルスモニタリングセンサシステムの研究、液体窒素を用いた極低温スロッシング試験、急減圧時突沸 基礎試験、複合材液体酸素タンク研究(液体酸素適合性試験、オートクレーブ成形試験) 平成27年度 (研究費:21,500千円)※基軸プログラムにて申請後、戦略予算にて実施 機体システム知能化研究:リアルタイムシミュレータ構築研究(M/T試験応用研究)、再使用ロケット空力/帰還飛行の研究 機体軽量化研究:電鋳ライナー複合材LOXタンクの研究、樹脂ライナー複合材LOXタンクの研究 推進系研究:GH2/GOX RCSの研究、炭素繊維強化型高度補償ノズルの研究、極低温スロッシング/急減圧時突沸現象の研究 飛行安全研究:再使用型宇宙輸送システムの安全基準の検討 平成28年度 (研究費:30,000千円)※戦略予算にて申請予定 効率的で安全な再使用運用の実現に必要とされ,かつ将来のシステム高性能化につながる再使用システム構築技術の研究とし て,ヘルスマネジメント/シミュレータ構築,複合材による機体軽量化,統合推進システム,極低温推進剤マネジメント,ヘルスモ ニタセンサネットワーク,エンジン効率点検,飛行安全基準検討などの研究に取り組む。再使用輸送系研究の実施については JAXAレベルでの議論が始まっており,再使用ロケット実験機を構築しそれによるシステムレベルの研究が構想の一つとして議論さ れている。本研究で取り組んでいるシステムレベルおよび要素レベルの技術研究を実験機に適用しシステムレベルでの実証を行 いたいと考えており、宇宙研内外の活動と連携して今後の計画を立案する。 研究費内訳 機体システム研究:5,000千円 機体軽量化研究:15,000千円 推進系研究:5,000千円 飛行安全研究他:5,000千円 平成29年度 (研究費:45,000千円) 平成30年度(研究費:30,000千円) 高頻度再使用運用を実現するための技術に関する研究を行い、各システム研究、要素研究の成果を実験機によりシステムレベ5 ルで技術実証する。 平成27年度研究成果の概要 研究成果 ①複合材による機体軽量化研究では電鋳および樹脂を用いた液体酸素タンクの研究に取り組んだ。電鋳ライナーではこれまでにφ100の 発泡型を試作して電鋳条件をほぼ確定できた。年度内に発泡型を用いた電鋳による複合材タンク製作技術を確立する計画である。樹脂ライ ナーではPEEK樹脂をライナーとした複合材タンクの試作を進め、レーザーによる特殊処理により極めて高い融着力が発現することが判明し、 樹脂ライナーによる軽量複合材酸素タンクの新たな製法の確立を目指す。 ②機体システム知能化研究では実際のフライトを模擬したリアルタイムシミュレータと機体搭載品を組み合わせて,M/T試験装置を用いること でハードウェアも含めた誘導制御系の総合的な評価を行う環境の構築を進めた。また研究者と親和性の高いモデルベース開発手法を用い、 言語ベースでは到底不可能な開発スピードと可視化による知的財産の蓄積・共有化を目指す。 ③統合推進システム研究として機体搭載が可能なGH2/GO2-‐RCSの研究を行い、140N級Si3N4製スラスタを用いて再使用型RCSシステムとして スラスタの寿命を検証するための燃焼試験を昨年度までに実施した。今年度は得られた表面温度データを用いてスラスタの100回再使用性 についての強度評価を進めるとともに艤装検討を行い、寿命評価された搭載型再使用RCSを設計する。 ④炭素繊維強化型高度補償ノズルの研究としてSiCをマト リックスとする複合材料を用いて30回以上の再使用可能なノズルの実現を目指す。 FRP中間体の製作を実施し高温曝露後の残存強度を取得した。1本の炭素繊維束からなるC/SiC複合材料の製作手法を確立し、強度を落と さない製造プロセスの検討を開始した。酸化挙動の理解と組成比率の最適化に関する指針が得られた。 ⑤極低温推進剤マネジメントの研究では自由表面流の数値解析における相変化モデルをさらに改良し、密閉容器内のプール沸騰 について、 圧力変化までを含めた数値予測が可能となる見通しを得た。 ⑥再使用型宇宙輸送システムの安全基準を検討し、システムの安全設計に反映することを目的として安全審査方式等、システム安全に関す る検討を進めた。再来年度以降に、再使用型宇宙輸送システムに対する安全基準として全体を整備する計画である。 ⑦再使用ロケットの空力/帰還飛行の研究において推重比が小さな機体では空気抵抗が大きくなる姿勢で降下し空気力により十分に 減速することが帰還着陸時の推進剤の消費を最小化することに重要であることがわかった。 目標の達成状況 再使用輸送関連研究は昨年度から基軸プログラムへ移行したため今年度当初「軌道上再使用型インフラ構築プログラム」において今後進め られる計画の実験機に必要な要素研究として基軸プログラムの中で申請をした。しかし、基軸プログラムがなくなったため9月に戦略的予算に 本研究を追加申請した。その結果、予算配算が11月となったため、研究内容・計画を見直し各要素レベル研究については1月末時点で実証 試験等を行うレベルには達しておらずまだ成果が出ていないものもある。またこの2年ほど基軸プログラムへの移行やその廃止などで研究計 画を年度毎に見直すこととなっており、システムレベルでの技術実証に達していない。ただし、研究計画に見直しにおいて、複合材による機体 軽量化、機体システム知能化、極低温推進剤マネジメント、帰還飛行などそれぞれについて新たな研究課題にも取り組み、来年度以降の研 究で取り組むべき課題を明らかにした。 来年度以降の研究方針 本研究としてはこれまでに高頻度で運用可能な再使用宇宙輸送システムの構築に向けて要素レベル/システムレベルの研究を進めており、 今後取り組むべき技術課題も明らかとなりシステムレベルでの技術実証が必須である。再使用輸送系研究の実施についてはJAXAレベルで の議論が始まっており,再使用ロケット実験機を構築しそれによるシステムレベルの研究が構想の一つとして議論されている。本研究で取り 組んでいるシステムレベルおよび要素レベルの技術研究を実験機に適用しシステムレベルでの実証を行いたいと考えており、宇宙研内外の 6 活動と連携して今後の計画を立案し、さらなる将来の宇宙輸送研究に拡大したい. 平成27年度研究費内訳 研究内容 研究費(単位:千円) ①高頻度運用を目指した機体システム知能化研究 1,000 ②複合材による機体軽量化研究 8,500 ③統合推進システム(水素酸素RCS)研究 2,000 ④炭素繊維強化型高度補償ノズルの研究 3,000 ⑤極低温推進剤マネジメントの研究 2,000 ⑥安全基準の検討 2,500 ⑦再使用ロケット空力/帰還飛行の研究 1,000 ⑧ヘルスモニタセンサ、推進系関連機器 1,000 ⑨旅費 500 合計 21,500 7 平成27年度研究業績(研究発表,特許,表彰など) 学会シンポジウム,受賞等 中内結以子,後藤健,米山聡,有川秀一,「C/SiC繊維束 複合材料の強度劣化機構」,第7回日本複合材料会議,京都,2016.3 田中大樹,久保田 勇希,井上 遼,向後 保雄,後藤 健,「UHTC複合材料の耐酸化性評価」,日本機械学会第23回機械材料材料加工 技術講演会,広島,2015.11 佐藤文音,西田浩之,野中聡,「貫通流路からの吹き出しを伴う大迎角細長物体の実験的研究」,第47回流体力学講演会,東京, 2016.7.※優秀発表賞受賞(発表者:佐藤文音) 小西慎吾,佐藤峻介,山本高行,野中聡,稲谷芳文,「垂直離着陸型再使用ロケットにおける空気力による減速を利用した着陸の最適 制御」,平成27年度宇宙航行の力学シンポジウム,相模原,2016.12. 青柳 祐基,稲谷芳文,「細長飛翔体の超高機動性のための空力特性のモデル化と制御」,平成27年度宇宙航行の力学シンポジウム, 相模原,2016.12. Yusuke Maru, Yoshiaki Nakaue, Yoshifumi Inatani, Hatsuo Mori, “Conceptual Study on Hydrogen-‐Based IntegraSon of Propulsion and Power in Space TransportaSon System”, 2015-‐o-‐1-‐09, 2015/7/9 30thposium on pace Technology and Science, July 4-‐10, 2015, Kobe ConvenSon Center, Kobe-‐Hyogo, Japan 水谷忠均,丸祐介,舛澤慧,岡崎慎司,「多点計測可能な水素漏えい監視デバイスの検討」,第59回宇宙科学技術連合講演会,鹿児島. 2016.11. 卒業論文/修士論文:6件 8 平成27年度研究成果の詳細 ②高頻度運用を目指した機体システム知能化研究 リアルタイムシミュレータの研究 昨年度は,リアルタイムシミュレータ構築に向けた研究としてOBC/ HMC/GSCの機能に関して事前検証を実施する環境を構築するた め機体/飛翔環境/地上運用モデルを有するリアルタイムシミュ レータの開発を行い,構築したエンジン燃焼モデル,燃料・酸化剤 の充填モデルについて機能確認試験を実施し、地上運用,エンジ ン燃焼の模擬試験が可能であることを実証した。本年度は,実際 のフライトを模擬したリアルタイムシミュレータと機体搭載品を組み 合わせて,M/T試験装置を用いた誘導制御系の総合的な評価を 行う環境を構築する.これによりソフトウェアだけでなく,ハードウェ アも含めた誘導制御系の検証ができることを実証する。 研究者による最速アビオニクス開発の研究 研究者と親和性の高いモデルベース開発手法(Simulink/LabView) を用い、理論 ⇒ SILS ⇒ HILS ⇒ フライト実証まですべての過程を シームレス化することで、言語ベースでは到底不可能な開発ス ピードと可視化による知的財産の蓄積・共有化を目指す。この作 業の一環として本年度M/TのSimulink化を検討している。 ③統合推進システム(水素酸素RCS)研究 機体システムに必要な全エネルギを主推進系の推進剤(LOX/ LH2)で賄うクリーンで運用性の良い統合推進システムの研究の一 環として、機体搭載が可能なサブシステムを目指したGH2/GO2-‐ RCSについて、耐熱材料製スラスタの耐久性評価のため燃焼試験 を実施している.耐久性試験用として製作した140N級Si3N4製スラ スタを用いて、将来の再使用型RCSシステムとしてスラスタの寿命 を検証するための燃焼試験を昨年度実施した。本試験シリーズで 合計100回の繰り返し燃焼試験(1回の燃焼時間6秒)を行い、スラ スタおよび点火器やバルブなどの健全性に問題のないことを確認 している。今年度は得られた表面温度データを用いてスラスタの耐 久性についての強度評価を進めている。またこのスラスタを用い た艤装性について検討を進めている。 非公開希望の有無 無 10 非公開希望の有無 無 平成27年度研究成果の詳細 40 Fracture stress [MPa] 35 FRP中間体 30 25 20 15 10 coating coating 5 1000 800 0 0 C/SiC複合材ノズル 昨年度まで試作した ノズルに生じたクラック 2 4 6 8 10 Mass decrease [%] 1000℃での大気曝露後の 引張り強度page 2 © 2011, Covalent Materials Corporation 振幅 小 : 線形応答 振幅 中 : 砕波発生 振幅 大 : 砕波発生 page 4 © 2011, Covalent Materials Corporation 加振停止 加振開始 ④炭素繊維強化型高度補償ノズルの研究 高頻度宇宙輸送システムの推進性能向上を目指した高度補償ノ ズルの研究を行う。高度補償ノズルの開口部はシステム簡略化の ために、耐熱材料を無冷却で使用する必要がある。再使用、耐損 傷特性を考慮すると、炭素繊維で強化したSiCの複合材料が適し ている。本研究では、SiCをマト リックスとする複合材料を用いて、 30回以上の再使用が可能なノズルを実現する。 機械加工時のクラック発生に対策するためにノズルの板厚を増や すためにFRP中間体の製作を実施した。連続炭素繊維強化型ノズ ル材料の高温曝露後の残存強度を取得した。不連続繊維との高 温曝露時の残存強度の比較を実施するために不連続繊維を使用 した複合材料を製作した。強度向上の材料設計指針を得るために 1本の炭素繊維束からなるC/SiC複合材料の製作手法を確立し、 強度を落とさない製造プロセスの検討を開始した。SiC,ZrC,ZrB2, を含むUHTCをマトリックスとする耐熱複合材料の試作・試験を実 施した。酸化挙動の理解と組成比率の最適化に関する指針が得 られた。 ⑤極低温推進剤マネジメントの研究 極低温流体を用いた極低温スロッシングを再現性良く実施できる 実験手法を確立し、数値解析の検証に足る可視化映像と温度・圧 力データの取得を進める。 実験では、スロッシングに伴う気液間相変化の促進によって、タン ク内圧力が急変化する事象に注目した基礎試験を実施した。初期 条件を調整する新たな工夫により、実験の再現性を大幅に向上さ せることに成功した。 自由表面流の数値解析に関しては、気泡生成を含む安定な相変 化モデルをさらに改良し、液体窒素に加えて液体水素についても 解析を実施した。地上重力環境と微小重力環境のそれぞれにお ける密閉容器内のプール沸騰 について、圧力変化までを含めた 数値予測が可能となる見通しを得た。 液体窒素スロッシングに伴うタンク減 圧の一例と、対応する可視化画像 液体水素タンク減圧時の気泡発生と 11 液位上昇シミュレーション 平成27年度研究成果の詳細 非公開希望の有無 無 ⑥安全基準の検討 【目的】 再使用型ロケットは、推薬を有する状態で帰還し、また短いターンアラウンドで再打上げを実施する、従来の宇宙輸送システムにない 機能を有するロケットである。しかし、JAXA含め我が国は、再使用型宇宙輸送システムに対する安全基準を有さない。本研究は、再使用 型宇宙輸送システムの安全基準を検討し、システムの安全設計に反映することを目的とする。また、安全審査方式等、システム安全に関 する検討も行う。 【FY27研究概要】 今年度は、昨年度識別された重要課題を検討する。再来年度以降に、再使用型宇宙輸送システムに対する安全基準として全体を整備す る。 ①Ec(傷害予測数)による安全評価 再使用型宇宙輸送システムに対する米国・FAAの基準によると、Ecのみで安全解析を行っているように見える。今年度は、Ecのみによ る安全評価で十分なのか検討する。そのため、FAAの文献、実態を調査し、また、JAXAの安全基準との整合性を考え検討する。 FAAの要求、文献(Flight Safety Analysis Handbook Version 1.0 )を精査し、またFAAに対し実態を確認したところ、米国の商業輸送に対 し打ても、Ecだけではく、システム安全を適用しており、結果的に、別途FAAが定める飛行安全の基準が再使用型宇宙輸送システムに 対しても適用されていることが判明した。 再使用ロケットと「使い捨てロケット」の間に飛行安全の目的の違いがないため、 JAXAの安全基準との整合を考えてもJAXAの飛行安全 基準は適用すべきである。 結果として、Ec解析は必要であるが、システム安全の観点からハザード解析を行い、各ハザードに対しJAXAの飛行安全の基準を適用 する必要がある。 ②自動車の安全規格(ISO26262)を調査し、再使用型宇宙輸送システムへの反映事項をまとめる。 i) 文献調査 ISO26262と適用例 ii) 背景となる安全への考え方の抽出 iii)再使用ロケットへの反映事項検討 ③帰還時の安全要求を検討する。また、帰還前、帰還後の機体アクセス前、打上前と言った、各ポイントで安全上、何を確認すべきか検 討し、根拠とあわせて整理する。 i) 帰還時の安全要求の検討 ii)各ポイントの安全上の観点の整理 :再使用観測ロケットを元に簡単なハザード解析を実施 iii)航空機産業との比較検討 12 平成27年度研究成果の詳細 非公開希望の有無 無 ⑦再使用ロケット空力/帰還飛行の研究 低速域における大迎角時の流体制御の研究 細長物体形状のロケットが大迎角を伴う際には非対称剥離渦が 発生し大きな横力が発生することが知られている。この非対称流 れの発生を抑えるために機体ノーズ部に貫通孔を設けて流体を制 御するための研究を行い、先端付近に設けた貫通流路が横力の 抑制に効果的であることを明らかにした。 帰還/垂直着陸方式による推進剤消費についての研究 垂直着陸での帰還を目指すFalcon9の1段目では減速および着陸 垂直着陸のための帰還飛行方式 点への誘導は主にエンジン推力により行われる。帰還着陸時に必 要な推進剤を最小限とするためには空気力を利用して十分な減速 を行い、エンジン推力は着陸直前の減速だけに利用する必要があ る。本研究では将来の単段式宇宙輸送システムを目指すべき輸 送システムのゴールであると考え、打ち上げ性能を重視し、着陸に 必要な推進剤を最小限とする宇宙輸送システムの飛行方式につ いて研究する。最適制御シミュレーションを用いて帰還時の推進剤 消費量を機体システムの推重比により比較したところ、推重比の 違いにより推進剤を最小とする着陸前の飛行方式が異なることを 明らかにした。 推重比が小さな機体では空気抵抗が大きくなる姿 勢で降下し空気力により十分に減速することが推進剤の消費を最 小化することに重要であることがわかった。 ⑧ヘルスモニタリングセンサの研究 多点型光ファイバセンサネットワークをベースにした水素ガス検出 方式について、水素感応物質の基礎特性取得およびセンサ実装 方法について検討を行った。Pt/SiO2を水素感応物質として利用し 化学反応による温度変化をFBGセンサで検知する原理を考案した。 検知デバイスを構成するセンサユニットは光ファイバを接続するだ けで計測可能となる設計を行った。小型・軽量化も可能と考えられ るが、主な課題はユニット内部のハンドリング性,組立性である。 13