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「東松山市地内発生の少年死亡事件に係る埼玉県教育委員会・ 川越市

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「東松山市地内発生の少年死亡事件に係る埼玉県教育委員会・ 川越市
「東松山市地内発生の少年死亡事件に係る埼玉県教育委員会・
川越市教育委員会・東松山市教育委員会合同検証委員会」
中間報告(主な論点の整理)【概要】
1
はじめに
・平成28年8月、東松山市地内で16歳少年が死亡し、加害者は、少年2名(17歳、16歳)
及び中学生3名であった。
・中学生3名は少年院送致となり、少年2名はさいたま地方裁判所に起訴された。
・事件を受け、埼玉県教育委員会、川越市及び東松山市の各教育委員会が合同で、調査・検証を
進めることとした。
・検証にあたっては、関係する少年ごとに、家庭環境や小学校から事件発生時までの成長過程を
調査し、成長過程ごとに課題と思われるものを取り上げ、その課題を論点として集約、整理し
たうえで、それぞれ協議することとしている。
・協議のなかでは、少年たちをこのような悲惨な事件の被害者にも加害者にもさせないために、
学校は何ができたのか、何をすべきなのかを中心に話し合い、検証を進めている。
2
検討の経過
平成28年 9月23日
第1回東松山市地内発生の少年死亡事件に係る埼玉県教育委員
会・川越市教育委員会・東松山市教育委員会合同検証委員会(以下、
委員会)開催
・事件の概要及び関係者のプロフィールについて
平成28年10月25日
第2回委員会開催
・関係者に係る論点等について
平成28年11月22日
第3回委員会開催
・中間報告(案)について
平成28年11月29日
3
中間報告
構成員
大学教授
澤﨑
俊之 (委員長・埼玉大学教育学部教授)
臨床心理士
枝久保
弁護士
佐世
芳
医師(精神科医)
奥野
洋子 (熊谷神経クリニック院長)
社会福祉士
川染
智子 (埼玉県社会福祉士会理事)
達夫(副委員長・埼玉県臨床心理士会長)
(埼玉弁護士会弁護士)
埼玉県PTA連合会 齋藤
芳尚 (埼玉県PTA連合会長)
埼玉県教育委員会
古川
治夫 (県立学校部長)
川越市教育委員会
中野
浩義 (学校教育部参事兼教育指導課長)
東松山市教育委員会 鈴木
寿
(学校教育課長)
4
中間報告の位置付け
・この報告は、現時点で把握した情報に基づいて、これまで委員会が進めてきた調査・検証の内
容を整理し、論点を明らかにするとともに、検証の方向性をまとめたものである。
・委員会は、事件そのものの事実に関する調査や関係者の責任の有無を判定するためのものでは
なく、その責任を追及することを目的としているものでもない。
・このような事件を防ぐため、主に教育委員会や学校にとって、今後に生かすことのできる対策
等のために、調査・検証を進めているものであり、今回の報告もそうした点からの論点整理と
なっている。
5
関係者に係る状況
「5 関係者に係る状況」においては、それぞれの少年に係る家庭環境及び成長過程とともに、
検証作業により見えてきた課題を取り上げた。
6
主な論点
「6 主な論点」では、
「5 関係者に係る状況」で取り上げた課題を3つの論点として集約、整
理した。
ここでは、その論点ごとにいくつかの課題を併せて示した。
(1)論点1「非行・問題行動等への対応」
ア
児童生徒への働きかけ
(ァ)学校は、問題行動を認知すると、まず本人に事実を確認し、反省文を書かせるなどの反省を
させ、保護者に連絡、被害者がいれば謝罪をさせるという一連の指導を行い、再度問題行動が
あれば、この一連の指導をさらに強い指導として反復することとしている。
ただし、結果を見ると問題行動を繰り返してしまう生徒への効果は、限定的だと考えざるを
得ない。従来からの教育指導をより発展させるため、生徒指導のあり方について検討を行う必
要がある。
(ィ)学校の生徒指導は、通常の生徒には効果が発揮されている一方で、非行傾向の強い一部生徒
への効果は、限定的である。
生活が乱れ、問題行動を繰り返すなど非行傾向が強まっている者に対しては、通例の学力向
上や生徒指導の取組が、受け入れられる状態になっていない。個別の対応に努めてはいるが、
さらに個々の児童生徒の状態に応じた生徒指導のあり方について、検討する必要があるのでは
ないか。
イ
家庭への働きかけ
(ァ)学校は、問題行動に対して父母との連携に努めているが、積極的な協力を得られていない。
再三にわたり、問題行動に対し家庭に働きかけているが、家庭との連携のあり方について、さ
らに検証が必要である。
(ィ)家庭環境による影響が非行傾向を強めてしまっている場合には、学校単独の対応では、有効
な指導が難しい。警察や福祉との具体的、計画的な連携が必要と考えられる。
(ゥ)学力低下や生徒指導上の問題行動が増える中、学校はたびたび保護者を学校に呼ぶなどして
いる一方で、家庭環境に対しては、関係機関を巻き込んだアプローチは多くない。
SSW(スクールソーシャルワーカー)や地域のネットワークを活用するなど関係機関と連
携して、家庭に対し生徒の生活改善を働き掛けられたのではないか。
ウ
関係機関との連携
(ァ)学校には、児童生徒の生活を観察するとともに、福祉行政や児童相談所に対して必要な情報
を提供する役割が求められる。
そのため学校はSSWを活用するなどして、本人や家庭の状況を的確に把握する努力が求め
られる。
(ィ)本件の場合、福祉行政では家庭の状況を適時に把握しており、子供の養育が困難を増してい
ることは承知していた。また、学校では、すでに指導効果が期待できない状況となっており、
さらに家庭環境が悪化すれば、非行傾向がより強まっていくことが容易に予想される状況にあ
った。学校と福祉との連携の下で、通常の中学校以外での教育も必要とされたのではないかと
思われる。
(ゥ)連携は学校側から福祉へのアプローチのみでは十分ではない。教育、福祉双方が子供の健全
育成に資すると思われる情報を積極的に相手方と共有し、連携することが大切である。
(ェ)学校は、地域のネットワーク会議を設けており、地域に関わる全体的な情報交換を行ってい
る。強い非行傾向があり、かつ複雑な家庭環境にいる生徒の場合は、さらに踏み込んだケース
会議が必要だと思われる。
(2)論点2「高校中途退学への対応」
ア
生徒への働きかけ
(ァ)問題行動に対し、学校からの指導を受け入れないとの生徒の意思は固く、指導を必要とする
学校との間で、中途退学は避けられなかったものと考えられるが、このまま退学となれば居場
所を失い、非行に走ってしまう恐れが高いことを考慮すれば、本人や保護者に対してもう少し
時間をかけて判断するよう誘導することもできたのではないかと思える。
一方、学校には、不登校や発達に障害があるなど多様な課題のある生徒が在籍しており、暴
力性のある非行傾向の生徒が在籍することによる影響は大きなものがある。
様々な生徒に対して、より適切な教育の場を確保すべきとの観点から、学校は機械的な指導、
対応をするべきではなく、個々の事情に応じて、慎重に検討したうえで判断をすべきである。
(ィ)中退した生徒は、社会性や人間関係スキルがほとんど身に付いておらず、就労、自立への支
援が必要な状態にある。
教育委員会や学校の中途退学を防止するための取組は重要であるが、やむなく学校を中途退
学したうえ、仕事がなく居場所を失った子供に対して、就労や自立を支援する大人の存在は大
切である。こうした存在に接続できる機会をより多く持つことができないか、学校等での対応
も求めたいとの意見が出されている。
イ
家庭への働きかけ
(ァ)中途退学に当たっては、家庭での生活指導が困難なことから、教員の間でも心配の声もあ
り、福祉行政との連携は不可能だったのか、さらに調査を深めたいとの意見が上がっている。
(ィ)このまま退学となれば居場所を失い、非行に走ってしまう恐れが高いことを考慮すれば、
本人や保護者に対してもう少し時間をかけて判断するよう誘導することもできたのではな
いかと思える。
ウ
関係機関との連携
(ァ)どうしても学校教育の中で包摂できない少年に対し、自立を支援し、居場所となるような
機会への接続が求められる。
(ィ)教育委員会や学校の中途退学を防止するための取組の充実は重要であるが、やむなく学校
を中途退学したうえ、仕事がなく居場所を失った子供に対して、就労や自立を支援する大人
の存在は大切である。こうした存在に接続することが、教育機関に求められるなどの意見が
交わされている。
(3) 論点3「問題行動の未然防止への対応」
ア
児童生徒への働きかけ
(ァ)高校では、基礎からの学びを大切にしており、学校生活では生徒がお互いに気持ち良く生活
できるよう「ルールとマナーを守ること」に力を入れている。こうした取り組みにより、多く
の生徒にとっては、学校が安定した学びの場となっている一方、問題行動を繰り返す生徒にと
っては、指導のあり様によっては学校への意欲を減退させることにもなりかねないと思われる。
(ィ)信頼できる大人との出会いを増やすことが重要だとの意見が出されている。家族や教員だけ
でなく、地域で就労や自立を支援する大人の存在が大切であり、こうした存在により多く接続
できるようにできないか、求められるところである。
(ゥ)学校の生徒指導にあっては、仲間への感謝の気持ちをもたせようとするなど、よりよい人間
関係を構築させようと取組んでおり、非行傾向のある生徒が複数いる中でも、全体では比較的
安定した運営が保たれている。一方、問題行動を繰り返す生徒に対しては、効果が限定的な状
態である。
(ェ)学校では生育状況を把握し、組織的で継続的な指導に努めており、生活が乱れ集中力が続か
ない者に対し、別室を用意するなど個別の指導を粘り強く行っている。
こうした取組で、生徒指導上のトラブルは多かったものの、比較的安定した教育が受けられ
ていた。
イ
家庭への働きかけ
(ァ)本人の様子を細かく捉えられていれば、家庭への対応が早期にできた可能性がある。
(ィ)急激に生活が乱れ、非行傾向が強まっていることから、学力向上や生徒指導といった通例の
対応でなく、さらに背後にある家庭環境からの影響も容易に考えられたことを踏まえれば、他
の機関との連携のあり方が課題となる。
(ゥ)困難な生育環境の下で、学力や規律・道徳といった一般的な生徒指導に効果は期待しづらい。
学校による指導効果を発揮させるためにも、少しでも安定した生活を確保してあげられなかっ
たか、学校や福祉機関の役割、あり方について意見が交わされている。
ウ
関係機関との連携
(ァ)中学校からは、家庭が複雑であるとの引継ぎがあったが、具体的な内容がなく、また、複数
あった問題行動なども引き継がれておらず課題がある。
高校では、病気に係る体調管理に集中しており、通常の学力や生徒指導面には注意が向けら
れていない。家庭の状況が初期の段階で高校に理解されていれば、より早期に適切に家庭への
対応が図れた可能性がある。
(ィ)非行グループとの関係については情報が得られておらず、家庭との連携協力が難しい中で、
非行グループに係る対応は難しかったことと思われる。
なお、非行グループに近づく生徒に対する学校単独の対応については、その指導効果に限
界があるため、警察や地域の防犯組織と連携した生徒個々への対応が必要であると思われる。
(ゥ)成長過程のある時期において、学習意欲の低下など大きな変化が見られることから、このよ
うな急激な変化への対応が特に重要であり、SCやSSWの活用など専門家との連携も含め、
学校ができる対応について意見が交わされている。
(ェ)学校にはSCやSSWなどを活用するなど、発達上の課題に対する適切な対応が求められた
と思われる。
7
今後の検証の方向性
「6 主な論点」で示した3つの論点を中心に、検証を進めることとしており、今後の検
証にあたっては、以下のような方向性が示されている。
(1)論点1「非行・問題行動等への対応」について
ア 児童・生徒への働きかけについて
(ァ) 児童生徒の心の変化を見逃さずに適切な対応を図るには、どのようなことが求め
られるのか。
会議での話題等:欠席や遅刻、身なりや言葉遣いなど学校生活の観察、家庭訪問、アンケートや面
談、関係機関との連携、SC・SSWの活用
(ィ) 急激に学力が低下した際など、学校や家庭の生活面への対応には、どのようなこと
が求められるのか。
会議での話題等:家庭訪問、二者・三者面談、組織的対応、SC・SSWの活用
(ゥ) 問題行動を繰り返し起こす児童生徒に対して、自らの行為を改めさせるためには、
どのような指導が効果的なのか。
会議での話題等:自発的な行動変化を促す指導方法、個々の状態や環境に応じた指導や懲戒、
関係機関との連携
(ェ) 問題行動を繰り返し起こす児童生徒が在籍する学校・学級には、どのような指導
方針や対応が求められるのか。
会議での話題等:チームティーチング、別室・個別指導、教員配当定数の改善、組織的な支援体制
の整備、関係機関との連携
イ 家庭への働きかけ
(ァ) 問題を繰り返す児童生徒に、自らの行為を改めさせるためには、家庭との連携に
どのようなことが求められるのか。
会議での話題等:家庭訪問、教育相談体制、SC・SSWの活用
ウ 関係機関との連携
(ァ) 非行傾向の強い児童生徒について、児童相談所及び福祉行政並びに警察との連携を
どのようにするべきか。
会議での話題等:通告、相談、協働のあり方、地域のネットワークの活用
(ィ) 虐待など家庭環境に課題がある児童生徒に、学校はどのように対応すべきか。
会議での話題等:児童相談所、福祉行政への通告の在り方等、警察との連携、SSWの活用
(2)論点2「高校中途退学への対応」について
ア 生徒への働きかけ
(ァ) 高校中途退学を防止するため、教育委員会や学校にどのような対応が求められる
のか。
会議での話題等:体験活動の充実、自己有用感の醸成、ソーシャルスキルの育成、居場所づくり、
自立支援機関との連携
(ィ) 高校中途退学の意向が示された際には、生徒に対して、どのような対応が求めら
れるのか。
会議での話題等:時間をかけた指導、退学許可に係る判断のあり方、自立支援機関への接続
イ 家庭への働きかけ
(ァ) 高校中途退学の意向が示された際、家庭に対して、どのような対応が求められる
のか。
会議での話題等:保護者との協力関係、退学許可に係る判断のあり方、自立支援機関への接続
ウ 関係機関との連携
(ァ) 高校中途退学者の社会的自立に対して、どのようなことが求められるのか。
会議での話題等:地域の多様な人材との連携協力、自立支援教育の充実、自立支援機関との連携
(ィ) 高校中途退学者が再入学する際、学校間の情報連携はどのように行うべきか。
会議での話題等:個人情報の適正管理との関係の整理、学校間の連携方法・内容
(3)論点3「問題行動の未然防止」に向けて
ア 児童・生徒への働きかけ
(ァ) 特定の児童生徒に、生活の乱れ等による欠席の増加や学力低下などが生じた場合、
クラス全体への指導はどのようにすべきか。
会議での話題等:生徒指導のあり方の検討、別室・個別対応、関係機関との連携、
(ィ) 学力の低下は、学校生活への意欲を失わせる大きな要因であることから、生活の乱
れ等による学力への影響を減らすためには、どのような対応が求められるのか。
会議での話題等:個別指導、別室・個別課題、家庭訪問、二者・三者面談、学生ボランティアの活
用、SSWの活用、関係機関との連携
(ゥ) コミュニケーションや人間関係づくりが苦手である等、ソーシャルスキルの不足
する者に対し、どのような教育支援ができるのか。
会議での話題等:ソーシャルスキルの育成、自立支援機関との連携、SC・SSWの活用
(ェ) 多様な問題をかかえた児童生徒を含め、子供が安心して学校・学級に溶け込み、学
ぶことができるようにするためには、どのような取り組みが求められるのか。
会議での話題等:すぐれた教育実践の学び、すぐれた教育プログラムの展開、教員研修、学習環境
の整備・美化、学校組織の整備、アクティブ・ラーニング、居場所づくり
イ 家庭への働きかけ
(ァ) 通常の教育活動において、家庭環境に適切に働きかけるためにどのようなことが求
められるか。
会議での話題等:教育相談体制、家庭訪問、SC・SSWの活用
ウ
関係機関との連携
(ァ) 問題行動の要因に、児童生徒本人の発達上の課題が疑われるとき、学校はどのよ
うに対応すべきか。
会議での話題等:教育委員会による教育相談・自立支援事業、SC・SSWの活用、家庭への支援、
関係機関との連携
(ィ) 本人及び家庭環境等に特別の対応が必要と認められる児童生徒について、学校種間
の連携はどのように行うべきか。
会議での話題等:幼稚園・保育園と小学校の連携、小学校と中学校の連携、中学校と高校との連携、
個人情報の適正管理との関係、連携方法・内容
(ゥ) 非行行動を未然に防ぐための適切な連携には、何が求められるのか。
会議での話題等:居場所づくり、人間関係づくり、ソーシャルスキルの育成、非行グループへの対
応、教員研修、自立支援教育、地域や関係機関との連携
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