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平成25年度 新興国での新中間層獲得による日本再生事業

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平成25年度 新興国での新中間層獲得による日本再生事業
平成25年度
新興国での新中間層獲得による日本再生事業
(インドネシア信用情報制度整備支援調査)
報告書
平成 26 年 3 月
株式会社野村総合研究所
1
目次
1.
本事業の背景および目的 .................................................................................... 4
2.
本事業の実施内容 ............................................................................................ 5
3.
(1).
概要 .......................................................................................................... 5
(2).
本事業の実施工程 ..................................................................................... 6
本事業における調査結果 .................................................................................... 8
(1).
インドネシア信用情報制度に関する調査 ......................................................... 8
1). SID データを有償提供する際の価格決定手法................................................ 8
2). 他国において中央銀行が PCB に信用情報を有償提供している事例 ............... 11
3). インドネシアにおける PCB 事業者の適正数................................................... 14
4). インドネシアにおける BIK の現状について ...................................................... 19
(2).
現地担当者向けのワークショップの開催 ......................................................... 25
1). 実施概要 ................................................................................................. 25
2). 参加者からの意見・要望 ............................................................................ 25
(3).
4.
BI に対する提言書の提出 .......................................................................... 26
インドネシアの PCB 発展に向けた示唆................................................................ 27
2
主な略語
Bank Indonesia (インドネシア中央銀行)

BI

BIK Biro Informasi Kredit (BI が運営する公的信用情報機関)

OJK Otoritas Jasa Keuangan (金融サービス庁)

PCB Private Credit Bureau (民間信用情報機関)

PCR Public Credit Registry (公的信用情報機関)

SID Sistem Informasi Debitur (Debtor Information System:BIK が保有する債務者
情報システム )

SID データ(SID に保管されている信用情報関係のデータセット)
3
1. 本事業の背景および目的
アジアを始めとする新興国では、著しい経済成長が続いているが、耐久消費財の普及率を見ると、我
が国の 1960 年代頃の普及率よりも低い国が多い。他方、我が国の高度成長期に耐久消費財が飛躍
的に普及したのは、個別クレジットやクレジットカード、リースといった販売金融が貢献したことが理由の一
つでもある。今後新興国においては、経済成長が続き、所得が増え、耐久消費財の購入量も増加する
ことが期待される中で、販売金融の利用率向上は更なる我が国製品の販売の促進にも繋がると考えら
れる。
現地における販売金融の利用率向上を図るためには、我が国販売金融事業者にとって事業展開し
やすい環境、特に信用情報制度が適切に整備されている必要がある。所得増加により耐久消費財の
普及拡大が大いに見込まれるインドネシアにおいては、我が国販売金融事業者(オートローン等)が多
数進出し、我が国製品(自動車・二輪等)の販売拡大に貢献している。しかし、公的な信用情報機
関が十分に機能していないことから、販売金融事業者は個別に消費者の自宅を訪問し相対審査を実
施せざるを得ないなど、我が国に比して審査を行う上で多大なコストをかけることとなっている。つまり、消
費者の信用情報制度の未整備が事業拡大に当たっての制約となっている状況といえる。
こうした状況を踏まえ、経済産業省では 2012 年 10 月、日インドネシア経済合同フォーラム(大臣級)
にて、「新たな信用情報制度構築に向けた実現可能性調査を日本が実施すること及び官民ワークショッ
プを共催すること」に合意。同合意に基づき、インドネシア中央銀行(Bank Indonesia: 以下 BI)と
共同で実現可能性調査を実施した。さらに、2013 年 2 月 27 日、28 日に経済産業省と BI の共催に
より開催された「日・インドネシア信用情報制度セミナー」において、BI より上記の実現可能性調査の結
果を踏まえ、「民間信用情報機関設立に関する規則(BANKINDONESIA REGULATION
NMBER15/1 /PBI/2013)」が公表され、新制度の大枠が示されたところである。
同規則施行のため、BI は、同規則に基づく細則策定に向けて、我が国の知見提供を要請した。そこで、
経済産業省では、インドネシアにおける信用情報制度整備をさらに加速すべく、細則で規定すべき事項
やインドネシアの信用情報制度構築にあたって留意すべき事項の提案を行うことを、本事業の目的とした。
本事業を通じて、インドネシアの信用情報制度の整備し、我が国販売金融事業者の事業拡大、ひいて
は我が国製品の販売拡大に繋げていく。
4
2. 本事業の実施内容
(1). 概要
本事業では、インドネシアにおける信用情報制度整備のために、細則で規定すべき事項に係る調査
分析及び具体的な提案を主な事業内容とした。なお、本事業の実施にあたっては、BI をはじめとするイ
ンドネシア政府当局や関連企業、経済産業省商務流通保安グループ消費経済企画室と定期的に協
議を行った。
本事業における実施内容は下記である。
○ インドネシア信用情報制度に関する調査・分析

「民間信用情報機関設立に関する規則」(以下 BI 規則)の細則で規定すべき事項につい
て調査分析を行った。BI より検討の要請のあった事項は、①BI が BIK 1で保有している信用
情報(SID データ)を有償提供する際の価格決定手法、②他国において中央銀行が民間
信用情報機関(Private Credit Bureau: 以下、PCB)に信用情報を有償提供している
事例、③インドネシアにおける PCB 事業者の適正数、の三点であった。こうした事項につき、
文献調査や統計調査を行うとともに、PCB としてインドネシアで免許申請を企図する事業者
等を対象としてヒアリングを実施した。
○ 現地担当者向けのワークショップの開催

上記調査・分析結果の内容を共有するために、BI の担当者等向けにワークショップを開催し
た。
○ BI に対する提言書の提出

上記調査・分析結果を踏まえ、BI 規則の細則で規定すべき事項や今後留意すべき事項等
を取りまとめ、BI に提出した。
○ 現地調査、ワークショップの結果等も踏まえた報告書の提出

本事業実施報告書の提出
BI が運営する信用情報機関。商業銀行は与信審査に際して登録と利用が義務付けられて
いるが、ノンバンクについては任意での登録・利用となっている。
1
5
(2). 本事業の実施工程
本事業は5回にわたる現地渡航を通じ、BI 関係各課との打ち合わせや PCB 候補事業者へのヒア
リングを行うことで実施した。
第一回現地渡航(8 月 27 日~28 日)においては、本事業に係る BI 側の要請事項の把握に焦点
を当てた打合せを実施した。その結果、BI からは下記 3 点について調査を希望する旨の要請を受けた。
① SID データを有償提供する際の価格決定手法
② 他国において中央銀行が PCB に信用情報を有償提供している事例
③ インドネシアにおける PCB 事業者の適正数
第二回現地訪問(9 月 25 日~9 月 27 日)では、上記②に関するベーシックリサーチ結果を BI に
報告するとともに、①に関して PERBARINDO(地方銀行協会)および IFC(国際金融公社)にヒ
アリングを実施した。また、①に関するヒアリングに際して、ヒアリング先事業者が妥当な価格を想起しやす
いように、インドネシアにおける公的信用情報機関である BIK の概要と、SID データの内容や規模および
品質等に関するヒアリングを実施した。本ヒアリングを通じ、SID データのデータ項目やデータ規模・品質を
はじめ、商業銀行による登録や利用のフロー、名寄せの仕組みなどを把握することができた。詳細は、本
報告書「3. (1) 4). インドネシアにおける BIK の現状について」において記載する。
第三回現地訪問(10 月 16 日~10 月 24 日)においては、①について PCB として免許申請を企
図する事業者等に対するヒアリングを行った。ヒアリングの成果物として、各事業者の事業組成の進捗を
取りまとめるとともに、SID データの価格決定に関する基本的なニーズ、各事業者として支払い得る上限
の金額等について BI に報告を行った。
第四回現地訪問(11 月 26 日~11 月 28 日)においては、BI より要請のあった①②③の 3 点につ
いて、報告書草案を用いてワークショップを実施した。主な参加者は BI 信用情報課の職員(係員~課
長補佐クラス)であり、PCB への免許交付を担う実務担当者としての質疑応答が交わされた。
第五回現地訪問(1 月 16 日~1 月 17 日)では、今回の調査結果を受け BI 細則 2が平成 25
年 12 月 5 日に公表されたことを受け、PCB 候補事業者の細則への反応に関するヒアリングを行うととも
に、報告書最終草稿のプレゼンテーションを行った。まや、今後の我が国による支援のあり方について BI と
協議を行った。
上記の日程詳細を次ページに示す。
"No.15/ 49 /DPKL Jakarta, 5 Desember 2013, SURATEDARAN, Lembaga Pengelola
Informasi Perkreditan."(仮訳:No.15/ 49 /DPKL, ジャカルタ, 2013 年 12 月 5 日 通達
文書, 信用情報管理機関)
2
6
図表 1
日付
1st
時間
訪問先
目的
議題
8 月 27 日
9:00 BI 信用情報課
キックオフ
本事業の進め方
8 月 28 日
9:00 BI 信用情報課
総括
今後の実施方針
インタビュー
価格策定手法の他国事例
13:00 PERBARINDO
インタビュー
SID データの有償提供
16:00 IFC
インタビュー
SID データの有償提供
9:00 BI 情報サービス課
インタビュー
BIK の制度詳細
13:00 BI 情報サービス課
インタビュー
BIK の制度詳細
9:00
9 月 25 日
2nd
9 月 26 日
BI 信用情報課
BI 規制監督課
9 月 27 日
9:00 BI 信用情報課
総括
総括
10 月 16 日
9:00 BI 信用情報課
キックオフ
インタビュー日程確認
10:00 PCB 候補事業者 A 社
インタビュー
14:00 PCB 候補事業者 B 社
インタビュー
9:30 PCB 候補事業者 C 社
インタビュー
14:00 PCB 候補事業者 D 社
インタビュー
10 月 21 日 14:00 PCB 候補事業者 E 社
インタビュー
10:00 PCB 候補事業者 F 社
インタビュー
10 月 17 日
10 月 18 日
3rd
本事業の実施工程
SID データの有償提供
10 月 22 日 14:00 PCB 候補事業者 G 社 インタビュー
16:00 PCB 候補事業者 H 社
10 月 23 日 10:00 PCB 候補事業者 I 社
10 月 24 日
4th
15:00 PCB 候補事業者 J 社
インタビュー
総括
インタビュー結果
インタビュー
SID データの有償提供
ワークショップ準備
11 月 26 日
9:00 BI 信用情報課
キックオフ
11 月 27 日
9:00 BI 信用情報課
ワークショップ 調査結果と提案の骨子報告
11 月 28 日
9:00 BI 信用情報課
総括
9:00 PCB 候補事業者 K 社
インタビュー
10:30 PCB 候補事業者 L 社
インタビュー
1 月 16 日
5th
9:00 BI 信用情報課
インタビュー
今後の日程
BI 細則に関する所感
14:00 PCB 候補事業者 M 社 インタビュー
インタビュー
16:00 OJK
11:00 PCB 候補事業者 O 社 インタビュー
1 月 17 日 14:00 BI 信用情報課
16:30 IFC
7
PCB 所管官庁について
BI 細則に関する所感
報告会
最終報告書のプレゼン
インタビュー
BI 細則に関する所感
3. 本事業における調査結果
(1). インドネシア信用情報制度に関する調査
本事業による調査結果については、BI 向けの報告書に取りまとめ、BI に対して報告と提言を行った。
下記に BI 向け報告書の要旨を示す。
1). SID データを有償提供する際の価格決定手法
本検討事項においては、BI が PCB に対して SID データを有償提供する際に、どのような価格形態で、
どのような条件の下、どの程度の価格を設定するべきか、調査を実施した。本調査の一環として、PCB と
して免許申請を企図する事業者等に対してヒアリングを行い、SID データの価格に関する意見集約を行
った。ヒアリング結果に基づく調査結果を下記に示す。
図表 2
SID データの提供価格および条件等に関するヒアリング結果
Pricing Methodology
Condition
Setting
Initial Grace Period
Annual Fee
Percentage of
Annual Revenue
×
Percentage of
Annual Usage
Making SID service
Fee Basis
Or
Quitting SID service
for banks
Making usage of
PCB Mandatory
Price
if conditions are fulfilled
Fixed(majority)
100Thousand
USD/year
Variable(minority)
5% of Revenue of
PCB
出所)関係事業者へのヒアリングより NRI 作成
価格形態に係る PCB 候補事業者の見解
価格形態については、ヒアリング先の PCB 候補事業者の見解は概ね 3 種に分類された。一つは、
PCB としての会員登録料として年固定の価格(Annual Fee)を設定するというものである。年固定の
価格であれば、PCB 事業者間で公平にコストを折半する形になり、年間必要経費の見立ても立てやす
いというメリットを有する。事実、この価格形態を希望する PCB 候補事業者が大半を占めた。一方、事
業規模や SID データの利用状況の多寡により、PCB 事業者間で負担感に差異が生じてしまうことは否
めない。そこで第二の形態として、PCB の事業規模に応じて、「年間売上高の○○%」(Percentage
8
of Annual Revenue)という形で変動型の価格を設定する手法が指摘された。第三には、PCB によ
る SID データの利用実績に応じて変動型の価格を設定する(Percentage of Annual Usage)とい
うものであり、第二、第三の形態は SID データの利用実績の多寡に応じて PCB 事業者間で公正を期
すことができる一方で、事業運営に必要なコストを試算しづらいという側面も有する。
価格設定条件に関する PCB 候補事業者の見解
ヒアリングを通じ、PCB 候補事業者からは、PCB としてデータベースを一括取得できる点で、SID データ
の有償提供を受け入れる意向があることが確認された。BI による SID データの提供がなければ、PCB は
自らインドネシア国民の信用情報を収集しなければならないため、たとえ有償であったとしても SID データ
の提供は必要という認識に立つ意見が多数を占めた。
しかしながら、PCB 候補事業者からは、SID データの取得費用を支払う代わりに、いくつかの支払条件
を設定してもらいたい旨の要望が寄せられた。
例えば、PCB としての事業設立初期における支払い免除期間の設定(Setting Initial Grace
Period)である。事業設立初期段階においては、多くの PCB は十分な売上高をあげることが難しい。こ
うした中、データ取得費用がかさめば、PCB としての損益分岐点が先延ばしになり、財務状況を向上さ
せることが難しいということが理由であった。そこで、複数のヒアリング先から、数年間の支払い免除期間の
設定を希望する意見が把握された。
また、BI が銀行に対して行っている SID データ提供サービスの継続に関する要望も上がった。現況、
BI は銀行に対して SID データを無償で提供するサービスを展開しているが、PCB 設立後も同様の無償
サービスを継続した場合、PCB の競争優位性が損なわれ、PCB として事業を拡大していくことが難しいと
いうことが理由であった。そこで、ヒアリング先からは、BI による SID データ提供サービスを有償化する
(Making SID Service Fee Basis)などして、銀行によっては PCB のサービスが魅力的になるよう取
り計らってほしい旨の要望が寄せられた。
ただし、現行法制下では、商業銀行が PCB を使う義務はなく、BI が SID データ提供サービスを有償
化すれば、与信審査における信用情報活用の慣行自体が危ぶまれるとの声も上がった。そこで、与信審
査に際して PCB の利用を義務化するなどして、PCB の事業が保証されるような制度的支援を行っても
らいたいという要望も寄せられた。
価格に関する PCB 候補事業者の見解
上記の価格形態や価格設定条件を踏まえ、実際に支払い可能な価格としては、年間 10 万米ドル
(約 1,000 万円程度)が上限であるという意見が寄せられた。PCB の事業設立初期においては、年
9
間売上高が数百万米ドル(数億円程度)になると見込まれることから、100 万米ドルの支払いについて
は不可能であるが、売上の数%程度である 10 万米ドルならば可能という判断であった。また、同様の観
点から、年間売上高の 5%程度であれば支払可能であると回答する PCB 候補事業者も存在した。
10
2). 他国において中央銀行が PCB に信用情報を有償提供している事例
公的信用情報機関(Public Credit Registry: 以下 PCR)と PCB がどのような関係にあり、どの
ように役割分担がされているかを把握するため、他国事例調査を実施した。調査対象国は、BI の要請
に基づき、モロッコとエクアドルとした。
モロッコにおける信用情報制度
モロッコでは、改正銀行法に基づき、信用情報サービスが中央銀行の Bank Al-Maghrib (BAM)か
ら PCB に移管されつつある。例えば、2007 年には、Experian Morocco が事業認可を受け、信用情
報サービスの提供を行っている。BAM としては、「公正な競争を促すための開かれた市場を築く」という立
場から、信用情報の問い合わせに関する PCR としてのサービスを廃止した。また BAM は PCB に対して
無償で信用情報データの提供を行っている。この点で、SID データの有償提供を企図しているインドネシ
アとは制度的に大きな差異があることが判明した。
図表 3
モロッコにおける信用情報制度の概要
3
Regulated entities are required to obtain
a credit report on their applicants before
granting any credit to their clients.
Required to provide credit data to BAM.
Borrowers consent is not required.
Regulated Financial Entities
Central Bank (BAM)
- Credit Data
Credit information from
regulated financial
entities are provided to
PCB for free.
- Credit Data
Public Credit Registry
Banks
NBFIs
Centrale des Risques
Abolished in 2007
(Delegated to Experian)
MFIs
Non regulated entities are required to
get borrower’s consent before inquiry
Non Regulated Entities
Private Credit Bureau
Financial Entities
Credit Data
Experian
- Credit Data
Commercial Entities
Borrowers consent is required.
-Credit Report of own for free (once a year)
(50 dirhams/report for more than one per year)
Consumers
- Credit Report
出所)Oscar Madeddu, “The Status of Information Sharing and Credit Reporting Infrastructure in
the Middle East and North Africa Region”, (The World Bank, JUNE 2010)より NRI 作成
略記の意味は下記。NBFIs(Non-Bank Financial Institutions)ノンバンク金融機関、
MFIs(Micro Financial Institutions)マイクロファイナンス機関
3
11
エクアドルにおける信用情報制度
エクアドルでは、2005 年に信用情報制度が整備され、6 社の PCB が事業認可を受け、PCB としての
サービスを行っていた。しかしながら 2012 年、信用情報制度の廃止を目的とした法律が施行された。同
法に基づけば、今後、PCB は PCR である DINARDAP との共存はできるものの、自社で信用情報を
保有することが禁じられる見込みである。
このような状況を受け、2013 年 10 月時点ではエクアドルの PCB は 2 社を残すのみとなっている。これ
ら PCB は、マイクロファイナンス機関などを対象に 1 件当たり 8~50 セントの利用料を徴収し、事業を営
んでいる。しかしながら、PCB は DINARDAP に対して年間 7 万 5,000 米ドルの費用支払いを義務付
けられており、厳しい事業環境の中にあることが推察される。なお、2013 年 2 月、米国政府はエクアドル
による信用情報制度の改正に関して批判を寄せたが、エクアドルによる制度再改正の実現には至ってい
ない。
2014 年以降には DINARDAP が信用情報サービスを全面的に展開することが予定されているが、制度
的には PCB の存続も可能である。しかし、自社での信用情報保有が禁じられる点で、事業環境はより
一層厳しさを増すものと考えられる。
図表 4
エクアドルの信用情報制度概要(2013 年まで)
SBS
(Superintendencia de Bancos y Seguros del Ecuador)
Financial Institutions
(Regulated)
Public Credit Registry
Database of
Loan
Central de Riesgos
- Data registration
-Membership fee
Financial Institutions
(Non Regulated)
- Tariffs for registry
- Credit data
($ 75,000 per year)
Private Credit Bureaus
Consultation
(Credit Report)
8 ¢ - 50 ¢
CREDIT REPORT C.A. Buró de
Información Crediticia (Equifax)
ACREDITA Buró de Información
Crediticia S.A.
MULTIBURO, Información Crediticia
S.A.
CALTEC Buró de Información
Crediticia, S.A.
There were two more PCBs (Cinfocredit and Teletec) when PCBs started
business in Ecuador in 2002.
Companies
Consumers
Only two PCBs (both are
owned by Equifax) are left in
Ecuador at the time in 2013.
One of the reason may be the
cost of Membership fee paid to
Central de Riesgos every year.
出所)DINARDAP(http://www.dinardap.gob.ec/), SBS(http://www.sbs.gob.ec/practg/p_index),
REVISTA LIDERS.ec (http://www.revistalideres.ec/) Agencia Municipal de Desarrollo
Económico CONQUITO(http://www.conquito.org.ec/joomla_sites/htdocs/financiamiento/),
“Credit Reporting at the Base of the Pyramid” (CGAP, Sep 2011)より NRI 作成
12
インドネシアに対する示唆
PCR が PCB に対して何らかの形での課金をしている事例としては、エクアドルの事例を挙げることができ
る。しかしながら、上述のようにエクアドルの PCB は厳しい事業環境に置かれている。さらに、経済規模や
人口の面などからインドネシアとは信用情報制度を整備していく上での条件が大きく異なるものと考えられ
る。こうした観点から、インドネシアがエクアドルをベンチマークとすることは、適切とは言い難い。
モロッコについては、PCR と PCB が併存している事例として位置づけられるが、PCB に対するデータ提
供は無償で行われており、世界銀行からもその革新的な制度構築を評価されているところである。
本調査を通じ、上記 2 カ国における PCR と PCB の関係は、BI の目指す信用情報制度と様相を異に
するものであることが分かった。インドネシアの制度は他国に例を見ない独自のものであるので、PCB 候補
事業者に対して入念な説明責任を果たしていくことが BI には求められる。
13
3). インドネシアにおける PCB 事業者の適正数
各国ではそれぞれ何社程度の PCB が存在し、どのような社会的要因と結びついているのか調査・分
析を行った。対象国としては、OECD 加盟国 4を対象とし、人口や銀行及び銀行支店数との相関を調
査した。各国の PCB 数、人口、銀行及び銀行支店数の一覧を下表に示す。
図表 5
Country Name
Australia
Austria
Belgium
Canada
Chile
Czech Republic
Denmark
Estonia
Finland
Greece
Hungary
Iceland
Ireland
Israel
Japan
Mexico
Netherlands
New Zealand
Norway
Poland
Portugal
Slovak Republic
Slovenia
Sweden
Switzerland
Turkey
United Kingdom
OECD 加盟国における PCB 数とカバー率
Number
of PCBs
2
2
1
2
5
2
1
1
2
2
1
1
2
1
3
3
3
2
2
2
1
2
1
2
1
1
3
Population
(million)
23
8
11
35
17
11
6
1
5
11
10
0
5
8
128
121
17
4
5
39
11
5
2
10
8
74
63
Number of
PCB Coverage
Bank Branches (% of adults)
5,847
100
1,153
53
3,926
0
7,129
100
2,344
4
2,123
74
1,579
7
192
33
615
19
3,545
84
1,362
16
120
100
902
100
1,150
100
37,590
100
12,455
99
2,721
82
1,178
100
404
100
10,982
77
5,484
23
1,221
59
678
99
1,731
100
3,328
27
10,223
63
12,535
100
出所)世界銀行および国際金融公社公表資料より NRI 作成
ここで、「人口(百万人)」、「銀行及び銀行支店数」の常用対数をとり、PCB 数との相関を分析し
た。その結果、相関係数はそれぞれ 0.47、0.35 であり、弱い正の相関が認められた。
4 米国・フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、スペインは、PCB の事業免許制度を有して
おらず、PCB の数を把握できないため、分析対象からは除外した。
14
OECD 加盟国における PCB 数と人口・銀行及び銀行支店数の相関
Correlation
Coefficient: 0.47
Population (million)
1,000
100
10
1
0
0
1
2
3
4
5
Number of Bank Branches
図表 6
Correlation
Coefficient: 0.35
100,000
10,000
6
1,000
100
10
1
0
Number of PCBs
1
2
3
4
5
6
Number of PCBs
出所)世界銀行および国際金融公社公表資料より NRI 作成
次に、調査対象国のうち PCB の人口カバー率がほぼ 100%(99%以上を対象)の国に対象を絞り、
同様の分析を行ったところ、相関係数はそれぞれ 0.85、0.81 であり、高い正の相関があると認められた。
図表 7
OECD 加盟国のうち、PCB の人口カバー率 99%超の国
Country Name
Australia
Canada
Iceland
Ireland
Israel
Japan
Mexico
New Zealand
Norway
Slovenia
Sweden
United Kingdom
Number
of PCBs
2
2
1
2
1
3
3
2
2
1
2
3
Population
(million)
23
35
0
5
8
128
121
4
5
2
10
63
PCB Coverage
Number of
Bank Branches (% of adults)
5,847
7,129
120
902
1,150
37,590
12,455
1,178
404
678
1,731
12,535
100
100
100
100
100
100
99
100
100
99
100
100
出所)世界銀行および国際金融公社公表資料より NRI 作成
15
PCB の人口カバー率 99%超の国における PCB 数と人口・銀行及び銀行支店数の相関
Population (million)
1,000
Correlation
Coefficient: 0.85
100
10
1
0
0
1
2
3
4
Number of Bank Branches
図表 8
Correlation
Coefficient: 0.81
100,000
10,000
1,000
100
10
1
0
Number of PCBs
1
2
3
4
Number of PCBs
出所)世界銀行および国際金融公社公表資料より NRI 作成
これらの結果に基づけば、人口や銀行及び銀行支店数が PCB 数を決める要因として大きな影響を
果たしているといえる。すなわち、人口もしくは銀行及び銀行支店数が増加するほど、PCB の数も増加す
る傾向が認められる。例えば、インドネシアの直近の人口・銀行および銀行支店数のデータに基づけば、3
~4 社の PCB が存在しうると推測できる。
なお、PCR と PCB が併存する国についても相関分析を実施したが、相関係数はそれぞれ 0.28、
0.25 と低い結果となった。こうした国々においては、PCR の存在がどの程度 PCB の参入障壁になってい
るのかにより、PCB 事業組成の難易度は異なるため、一概に相関を出すことが難しいとも考えられる。
16
図表 9
Country Name
PCR と PCB が併存する国一覧
Number of
PCBs
Population
(million)
1
2
2
1
5
5
2
2
1
3
2
1
1
5
2
3
4
1
3
1
2
1
1
1
3
8
10
4
17
5
11
10
81
15
8
76
2
29
6
169
179
7
30
11
5
2
74
9
Armenia
Austria
Bolivia
Bosnia and Herzegovina
Chile
Costa Rica
Czech Republic
Dominican Republic
Egypt, Arab Rep.
Guatemala
Honduras
Iran, Islamic Rep.
Macedonia, FYR
Malaysia
Nicaragua
Nigeria
Pakistan
Paraguay
Peru
Portugal
Slovak Republic
Slovenia
Turkey
United Arab Emirates
Number of
PCB Coverage PCR Coverage
Bank Branches (% of adults)
(% of adults)
494
1,153
658
981
2,344
848
2,123
737
2,601
3,363
1,171
15,787
434
4,270
292
5,429
10,557
437
14,809
5,484
1,221
678
10,223
941
56
52.6
34.7
4.8
3.5
100
74.2
60
16.4
8.7
32.9
31.9
72.2
81.8
29.5
4.1
2
47.5
42.5
22.9
58.5
98.9
63
31.7
20.5
1.8
14.8
36.2
37.4
28.3
6.1
44.1
4.3
18
20.7
25.9
34.8
56.1
10.8
0.1
7.2
16.7
31.2
96
2.7
3.4
23.5
5.9
出所)世界銀行および国際金融公社公表資料より NRI 作成
図表 10
PCR と PCB が併存する国における PCB 数と人口・銀行及び銀行支店数の相関
Correlation
Coefficient: 0.28
Number of Bank Branches
Population (million)
1,000
100
10
1
0
0
1
2
3
4
5
6
Correlation
Coefficient: 0.25
100,000
10,000
1,000
100
10
1
0
Number of PCBs
1
2
3
4
5
6
Number of PCBs
出所)世界銀行および国際金融公社公表資料より NRI 作成
しかし注意すべきなのは、本分析における対象国の多くは成熟した信用情報制度を有する国々であり、
信用情報制度が萌芽期にあるインドネシアとは様相を異にする点である。インドネシアは新たに信用情報
17
制度を策定し、PCB 事業者間の公正かつ健全な競争を促進していく局面にある。こうした局面において
は、認可する PCB の数を限定するのではなく、申請要件を満たした申請者に対しては事業を認可し、
信用情報制度の拡充を目指すことが望ましい。
18
4). インドネシアにおける BIK の現状について
インドネシアにおける公的信用情報機関である BIK の概要や、BI による SID データ提供サービスの概
要を把握するため、BI に対して制度の運用手法や主体に係るヒアリングを実施した。
BIK の維持運営に係る IT インフラ
BIK の運用の IT インフラとしては、BI の負担によって銀行支店と BI でデータの送受信を行うための
「Extranet」が基本インフラとして整備されている。また、銀行支店に対しては債務者データを蓄積するデ
ータベースとして、Microsoft SQL Server Express Edition(無償版)が BI より提供されている。だ
し、無償版では、400 万件のデータしか蓄積できないため大手の銀行では費用自弁で有償版にアップグ
レードして利用している。さらに、銀行支店が Extranet を通じてデータの送受信を行うためのアプリケーシ
ョンとして、SID Client(データ更新・請求用)や IDI Viewer(ダウンロードデータの閲覧用)が無償
で提供されている。
上記の IT システムの利用主体については、銀行側では各支店の担当者が直接 Extranet にアクセス
し、データの更新及び送受信を行っている。一方、BI 側は、基本的にシステムでの自動応答に留まる。
図表 11
BIK の維持運営に係る IT インフラの概要
Members
Bank Indonesia
Import Text File
SID
Server
SID Applications
Data
Base
BI’s Extranet
BI’s
Intranet
Server
SID Applications
Web
BI
Branch
BI
Branch
Others Users
出所)BI 提供資料
19
DIN(Debtor Identification Number:債務者番号)の要求
BIK においては、DIN(Debtor Identification Number:債務者番号)をもとに、個人の特定を
行っている。銀行支店側では下記のフローで BI に対して DIN の要求を行っている。
① 銀行側から BI のサーバーにアクセスする。
② キーとなるデータ項目(氏名、住所、納税者番号、誕生日、母親の旧姓)を入力する。
③ 上記データをもとに DIN を検索する。

BIK の過去のデータと一致した項目毎の配点に応じ、合計点が算出され、70 点以上の場合
は同一人物と判定される。

法人の名寄せについては納税番号、個人の名寄せは母親の旧姓の重みが大きい。
④ 検索にヒットした DIN をテキストファイルでダウンロードする。
⑤ 検索にヒットしなかった場合には、新規に DIN の発行を BI 側に依頼する。
⑥ BI 側で新規に DIN を作成し、銀行側に提供する。
⑦ DIN をテキストファイルでダウンロードする。
図表 12
DIN(Debtor Identification Number:債務者番号)の要求フロー
Request DIN
Members
1
2
Bank Indonesia
Connected to BI’s Server
• User Authentication
• Connecting to the Web Server
• User logon
Entering the Key Data :
- Name
- Address
- Tax ID
- ID No (KTP/Passport/KIMS) /
Notary Document Number
- Date of Birth / Date of Notary
Document Issued
- Mother’s Maiden Name
- Download DIN, or
4
- Request New DIN
6
3
- Search DIN based on combination
of Key Data
- If found, DIN show on the screen
& Save (text file)
Application
Server
BI’s Extranet
WEB
Server
5
Download New DIN
Database
Server
- Create New DIN
- Show on Screen & Save
(text file)
出所)BI 提供資料
20
SID データの更新フロー
BIK における SID データの更新は下記のフローにより行われている。
① 銀行の各支店によるデータの入力。

手法としては、支店によるデータのマニュアルでの入力、銀行の基幹系システムと連動させたデ
ータの反映、の二種類があるが、入力後のレポーティングラインは同一。
② BI サーバーへの接続。
③ Extranet への送信。

送信・閲覧用の PC 数は限定されていない。

基本的にはレポーティングは銀行の支店ごとに行われており、銀行の本部で他支店のデータを
取りまとめて送受信が行われることはない。

銀行の支店側は、前月の取引内容に基づく情報を月次で BI に送信する。
④ BI 側でのデータの受付、更新の実施。

BI 側でのデータ更新はシステム上で自動的に行われる。
⑤ BI 側でデータの更新がなされた旨の連絡。
図表 13
SID データの更新フロー①
Reporting Mechanism (1)
Members
BANK INDONESIA
Importing Text File
Connected to The BI’s
Server :
• User Authentication.
• Connecting to The Web
Server.
2
4
• User Logon.
3
1
Data Reports
Initiation (Text
File).
• Import The Data.
• Internal Validation.
5
Send Reports
Processes :
- Create Data’s Receiving
Approval.
- Updates Data.
- Create Bank’s Absents.
Application Server
(Receive Data)
BI’s Extranet
Network
WEB
Server
Data Base
Receive Approval
BI’s
Intranet
21
Application
Server (Inf ormation)
図表 14
SID データの更新フロー②
Reporting Mechanism (2)
Members
BANK INDONESIA
Data Entry – Batch
Connecting to The BI’s
Server
• User Authentication
• Connecting to The Web
Server.
2
4
• User Logon
3
1
Data Initiation :
• Data Entry
(Multi User)
• Internal Validation
5
Processes :
- Create Data’s Receiving
Approval.
- Updates Data.
- Create Bank’s Absents.
Send Reports
BI’s Extranet
Network
WEB
Server
Application
Server
(Receiving Data)
Data Base
Receive Approval
Application Server
(Inf ormation)
BI’s
Intranet
出所)BI 提供資料
22
銀行による SID データの照会フロー
銀行による SID データの照会は下記のフローで行われている。
① 銀行の各支店で Web ブラウザを使って BI サーバーへ接続。
② 銀行側が(氏名、生年月日、納税者番号、ID カード No)を入力。個人の場合、氏名と生年月
日は必須項目。
③ BI 側のシステム上で検索を実施、検索結果をリスト表示。
④ 銀行側で DIN を選択(複数 DIN がリスト表示された際には、銀行側で適切な DIN を特定す
る。)
⑤ BI 側で選択された DIN に基づく詳細な SID データを検索、銀行に提供。
⑥ 銀行側で提供されたデータを入手・保存。閲覧には IDI Viewer を使用。
図表 15 銀行による SID データの照会フロー
Debtor Information Look Up Mechanism
Members
BANK INDONESIA
Requesting For The
Individual Debtor
Information
Connecting to The BI’s
Server
• User Authentication
• Connecting to The Web
Server
• User logon
Data Entry :
- Name
- Tax ID
- ID Card No
- Date of Birth
6
3
1
- Search f or The Debtor
Inf ormation accordingly to a
certain Combination Key
- Show all the Debtor List by
pages
5
Create the detail and
comprehensive report
f rom the selected
Debtor
2
4
Bank Indonesia’s
Extranet Network
Selecting Debtor f rom The
List to get its detail and
comprehensive Inf ormation
WEB
Server
Application Server
(Receive Data)
Data Base
Application Server
(Inf ormation)
Save and Print The Given
Debtor Inf ormation
BI’s
Intranet
出所)BI 提供資料
SID データの詳細
BIK に保管されている SID データは、銀行の各支店によって収集され、月次で BI に提供されたもの
である。データの収集対象者としては融資全件の借手が対象であり、国籍や居住地を問わない。銀行に
よるデータ提供が遅延した際には、BI によって罰則金が賦課されるため、銀行からのデータ提供率は高い
ものとみなされている。2013 年 7 月時点で、7268 万件のデータが保有されており利活用可能である。た
23
だし、データの正確性については、BI 内でも十分な把握がなされていないため、データクレンジングが必要
視されている。SID データの詳細を下記に示す。
図表 16
SID データに含まれる債務者情報

銀行コード

電話番号(市外局番を含む)

債務者カテゴリ(個人/法人)

氏名

住所(番地、郵便番号、市区町村[Kelurahan]、管区[Kecamatan]、地域コード)

敬称/役職/学位/ステータス

敬称の備考

納税者番号

ID カード/ 暫定滞在許可証[KIMS]/パスポート番号/公証文書番号

出生地/公証文書発行地

生年月日/公証文書登録日

母親の旧姓

性別
出所)BI 提供資料
図表 17

Form 01 – 債務者情報

Form 02 – 管理、所有

Form 03 – ローン、融資制度
SID データに含まれる信用情報
 Form 03A – 場所
 Form 03B – 債権者の保有する証券
 Form 03C – 長期負債
 Form 03D – その他債権
 Form 03E – 資本参加状況
 Form 03F – 取消不能信用状
 Form 03G – 銀行保証


Form 03H – チャネリング
Form 04 – 担保、保証人
 Form 04A – 担保
 Form 04B – 保証人

Form 05 – 銀行による月次報告

Form 06 – 債務者(法人)の財務状況
出所)BI 提供資料
24
(2). 現地担当者向けのワークショップの開催
1). 実施概要
期日
2013 年 11 月 27 日
開催場所
インドネシア中央銀行 Radius Prawiro Tower
参加者
インドネシア中央銀行 信用情報課 職員一同
BI and METI Project for Development of Credit Information System Draft
Report
資料
2). 参加者からの意見・要望
他国事例について

信用情報の提供価格について可能な限りの情報を収集してもらいたい旨の要望が BI よりなされた
ため、エクアドルとモロッコに関する他国事例を追加で調査するとともに、PCB として免許申請を企
図する事業者や関係機関などの意見も収集した。

エクアドルによる制度変更措置は、国際的にどのように認識されているのか情報を把握したい旨の要
望が BI よりなされたため、エクアドル政府に対する米国政府の反応について追加調査を実施した。
SID データの価格設定について

PCB 候補事業者がどの程度のサービス提供価格を想定しているのか把握したい。ワークショップ開
催時点では、細則案に SID データの価格算定に関する基本方針を盛り込み済であるが、PCB 候
補事業者の意見をもとに善処したい。

PCB 候補事業者には、SID データをクレンジングしたうえで利用してもらいたい。その際、PCB の持
つ技術力が強みを発揮するだろう。

PCB 候補事業者へのヒアリングでは、BIK の維持運営費用をもとに SID データの価格算定をすべ
きという意見が把握された。ただし、BI からすると BIK の維持運営費用の明確化は必ずしも容易で
はない。初期投資や政策調整コスト等を除外し、いかに SID データ提供サービスの経費のみを抽
出するかが課題である。
PCB の適正事業者数について

インドネシアには多数の商業銀行の支店が設置されているが、展開しているサービスの幅は支店によ
って大きく異なる。こうした事情を踏まえて推計を行うことも有用である。
25
(3). BI に対する提言書の提出
(1)で実施した調査・分析の結果を取りまとめ、BI に対して” BI and METI Project for
Development of Credit Information System Final Report”[February 28, 2014] を提出した。
(英文、72 ページ、提言書の内容については BI が対外秘として取り扱うため非公表)
26
4. インドネシアの PCB 発展に向けた示唆
上記の調査分析に基づき、本事業では下記の点を BI に対して提言した。
インドネシアにおける BI と PCB の関係のあり方について、十分な説明責任を果たしていくこと
中央銀行と PCB の関係(一部の国では PCR と PCB の関係を含む)のあり方に関する他国調
査で論じたとおり、BI は PCB への SID データの提供に関して、他に例を見ない特殊な関係を構築しよ
うとしている。一方で、PCB として免許申請を企図する事業者からすれば、インドネシアと他国において、
PCB の事業運営上どのような点が異なり、どのようなことを留意すべきなのか必ずしも十分に理解が進ん
でいないように思われる。そこで、インドネシアにおける信用情報制度を広く周知するとともに、PCB 候補
事業者の疑問等に対しては具に見解を提示していくことが有用かつ必要と考えられる。
SID データの今後の取り扱い方針について、広く議論を喚起していくこと
SID データの有償提供については、萌芽期にあるインドネシアの PCB にとって過度な負担とならな
いような価格設定を行うことが必要である。また、設定した価格が妥当であることを示すため、BIK の維
持運営等に係るコストを開示していくことが必要である。例えば、SID データの価格についての幅広い意
見を集約し、制度改正に向けた検討材料としていくため、BI が主催する形でワークショップ等を開催する
ことも有用な策と考えられる。
PCB の成長を支援するとともに、公正な競争を促進していくこと
他国における PCB の事業者数に関して述べた通り、中央銀行が PCB の認可事業者数を事前に
設定している例は見られなかった。むしろ、一国における PCB 事業者数は、PCB 事業者間の公正な競
争や市場原理に基づく収斂の結果である。また、インドネシアにおける PCB が萌芽期にあることを踏まえ
れば、BI は、認可事業者数に予め上限を設定すべきではなく、PCB 事業への参入を促し、PCB の設
立や育成を支援すべきであり、これと併せて適切な監督を行うことを通じて公正な競争を促進していく必
要がある。
同様に、インドネシアにおける信用情報業界に多数の外国企業が注目する中、徒に外資規制をす
べきではない。他国で PCB としての事業実績を有する外国企業の実績や経験を活かしつつ、インドネシ
ア現地の企業との提携を促進し、有能な PCB 候補事業者が積極的に PCB としての免許申請を行え
るよう、制度環境を改善していくべきである。
27
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