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「中国~大連外国語大学~留学を終えて」(グローバル・コミュニケーション
中国~大連外国語大学~留学を終えて 中国 大連外国語大学 協定留学生 留学期間 2013年8月 ~ 2014年1月 グローバル・コミュニケーション学科 2年 大川由紀子 私は2013年8月から2014年1月までの約5ヶ月間、中国の大連外国語大学という大学 に留学に行ってきました。私はこれが初めての海外で、ましてや一人で飛行機に乗っ たことすらなく、行きの飛行機の中は本当に不安でいっぱいでした。しかも飛行機は中 国のエアラインを利用したので、機内は中国語と英語だけ。客室乗務員の人が機内食 を配りだして私も食べたいと思ったのですが、勉強してきたはずの中国語を使うのがど うしても恥ずかしいし自信がないので使えない。仕方なく寝ることにして、お腹をすか せながら飛行機が早く着いてくれることを願っていたのを覚えています。出発する前に はやってやるぞという気持ちでいっぱいだったのに、もうすでにこんなんで私は大丈夫 かと、これからの中国生活を想像して少し自信がなくなりました。 まず中国の大学では普通、学生 たちは学校内の寮に住むのですが、 私たち留学生も同様、学校内の寮 で生活をします。私は6人部屋に配 置されました。大連という街は日系 企業が多く進出していて、この大学 の留学生も日本人がとても多いです。 他には韓国人、ロシア人も多く、大 部分はこの3カ国の国籍で占められ ています。だから6人も一緒に住むと したら、日本人が何人か同じ部屋になるだろうと思っていたのですが、なんと私の部屋 の日本人は私だけでした。更にこの大学は近年2つあるキャンパスを一つにまとめたば かりなので、空き部屋の調整がまだうまくいっていなかったらしく、その後更に2人のロ シア人が入ってきて、2週間程、8人で共同生活を送ることになりました。私のルームメ イトはトルコ人1人、朝鮮人1人、ロシア人5人(うち2人は空き部屋ができた時点で他の 部屋に移りました)、日本人の私1人といった、国際的で珍しい、面白い組み合わせに なりました。こんな感じで始まった私の留学生活ですが、今思い返してみても、本当に 充実した毎日でした。 まず授業が始まる前にはクラス分け テストを行い、大体の自分のレベルを把 握します。それから自分でクラスを選べ るのですが、私は分けられた通り、中級 クラスで授業を受けることにしました。ク ラスの人数は22人で、特に韓国人が多 かったです。日本人は私を含め4人でし た。やはり韓国や日本のように漢字を使 用している国の人たちは、中国語の読 み取り、書き取りが他の国の人たちに比 べて理解しやすいので、上のクラスに行くほど韓国人、日本人が多かったように思いま す。私のクラスには他にフランス人、ウクライナ人、ロシア人、ウズベキスタン人、コロン ビア人、トルコ人がいたので、全部で8カ国の国籍の人たちがいました。実はトルコ人と は私のルームメイトでもある子で、私たちは室友でもあり同学でもありました。 授業は毎週月曜日から金曜日まで、午前中2コマ、中国語の授業がありました。 始まったばかりの頃、先生が言う中国語を聞い ても到底意味が分からず、言葉が右から左へ 流れていくようでした。一つの単語をいちいち 頭の中で日本語に変換して何回も反復して、 やっと意味が分かった、というときにはもう先生 は違う話をしています。私には少しレベルの高 いクラスだったかな、なんて思いながらも、まあ 頑張るしかない、と思い、分からないところは先 生に質問したり、クラスメイトと話し合ったりして 習ったことは着実に定着させるように努力しました。と言っても、始めの一ヶ月はまとも な会話さえ思うようにできなかったので、始めの頃は授業が終わって自分で勉強したり、 ルームメイトと話をして、少しずつ中国語を使っていくようにしました。始めはとりあえず 中国語を耳から入れることが重要です。教材についている CD を何度も何度も聞き、中 国人の友達やルームメイトが話しているとき、分からない単語はその場で調べ、自分で も使ってみることで、少しずつ話せるようになっていきました。しかしそれでも日本人の 特性なのか私自身の問題なのか、間違った中国語を話すことが恐く、確実に合ってい ると自分で自信のある言葉しか話せませんでした。しかしそんな恐れも、友達のおかげ で薄れていきました。それというのも、ルームメイトもクラスメイトも、間違っていてもいい、 相手に自分の考えを伝えたい、伝えよう、といった心意気で私に話しかけてきたからで す。先生も、つたない私たちの中国語に真剣に耳を傾け、親身になって教えてくれま した。そんな周りの人たちの姿をみて、言語は正確に話せることが重要なのではない、 伝えようと意思を持ってコミュニケーションを図ること、それによって学ぶことが重要なの だと、強く気付かされたことを覚えています。せっかくこうして中国に来て、違う国籍の 人が隣に座っている環境なのだから、そういった人たちともっともっと沢山のことを話そ うという気持ちになりました。そう思ってからは本当に中国語の勉強が楽しく、話せる中 国語を話すのではなく、もしかしたら間違っていたかもしれませんが、話したいことを話 すようになりました。違う国籍の人といると、道端でも教室でも部屋でもカフェでも、電 子辞書片手に常に勉強でした。そしてお互い合っていると思っていた中国語を使って いて、それが間違いだと気付いたり、中国人ではない外国人同士の私たちが会話をし ていて、それを聞いていた中国人が、今のはこう言うんだよと教えてくれたり、そういうも のは印象が強く残るので、忘れることがありません。こうして一緒に勉強する、ということ の楽しさに気付きました。 一緒に勉強をするといえば、中国人の人たちとは よく相互学習をしました。中国の中で日本語を学びた いと言ったら大連外国語大学、と言われる程、この大 学は日本語を勉強している中国人が多く、レベルも 高いです。みんな日本人に対して積極的なので、私 にもあっという間に中国人の知り合いが沢山できまし た。彼らは本当に親切で、勉強も丁寧に教えてくれ、不案内な大連を案内してくれ、困 っていればすぐに助けてくれました。本当に温かかったです。そして彼らは熱心です。 私たち留学生に対する姿勢もそうですが、勉強に対する姿勢が日本の大学生とは大 違いでした。私は彼らの熱心さに何度も刺激を受けました。例えば私の場合、日本に いるときは中国人留学生とは日本語で会話をしていました。その理由は、中国語を専 門としていたとしても、専門と実用性は違う、と、勝手に自分の中で思っていたからで す。しかし日本語を専門としている中国人学生たちは、自分の学んだ日本語は使える かどうか、私たち日本人と交流をして積極的に日本語を話してくるのです。そうして中 国にいながらも日本語が話せるようになっていくのです。また彼らの授業は忙しく、宿 題も多いです。その合間をぬって日本のドラマや番組を見て、日本の言語のみならず 文化にも触れていました。勉強というより、これは彼らにとって興味なのだと言いますが、 日本の中国語専門の学生たちでこういったことをしている人は少ないのではないかと 思います。そう考えると、私たち日本人は、自分の専門はこれです、と自信を持って言 えるようにもっとしっかりと勉強をしなければならないなと思いました。 そういえば、中国と言えば最近は日中関係が悪くなってきました。私の家族も、私 が留学をするときにそのことをとても気にしていましたが、この約5ヶ月間、普段生活し ている中で、それを思わせるような体験はほとんどなかったです。実際にバスや道路に そのようなことが表記されているのは何度か目にしましたが、街の中でも学校の中でも、 私が日本人だからといって嫌な思いをすることはありませんでした。とは言っても、始め の頃は、日本のようにおもてなしの心や相手への配慮が欠けた中国人の接客や態度 に、これが日本人の私に対する仕打ちか、と大袈裟にも思ったものですが、これは単 なる文化の違いだということを知りました。 中国に行き感じたカルチャーショックや新たに知ったことは、山ほどあります。先に も書いたように、中国には日本のようなおもてなしや配慮と言ったものがないのだという ことを知りました。実際にはあるのかもしれませんが、それは日本のそれとは中身を異 にするものです。日本人の私はあくまで日本人の目線で見ていたのでそれに驚きまし たが、例えばロシア人の友達なんかはそういった中国人の様子に対して驚くこともあり ませんでした。これはやはりロシアではこの点において中国と大差がないからだと思い ます。日本人の私から見て驚くことといえば他に、中国人の時間観念です。これは本 当に驚きました。日本は電車やバス、人との待ち合わせにも時間に正確ですが、中国 は本当にルーズです。バスは時刻表があっても人がいっぱいにならないと発車しない し、友達との待ち合わせにも、5分10分は当たり前に遅れてきます。更に遅れて来たと 思ったら、あなたはご飯食べた?私はまだ食べてないから、先に買いに行っていい? と、こんな感じです。初めのころはそういったことに慣れずに唖然としましたが、段々と 慣れ、更には日本のように時間に追われている感覚もなく、ゆっくりとしたこんな感じも いいなと思うようになりました。他にも、食べ物は歩きながらでもお店を見ながらでも食 べたり、信号がなく車の通りが激しいのに平気で道路を渡ったり、大きい声で話してい たり、服装がとても奇抜だったり、驚くことは数えられない程たくさんありました。同時に 常に新たな発見がありました。初めは戸惑いが多かったのですが、中国人の友達に、 中国人の疑問に思った行動や言葉に対して、どうしてそうするのか、そう言うのか、とい うことを聞いて、それはこう思っているからだよと教えてもらうことで、更に中国人の性質 が見えてきたりしました。自分の考えとは全く違う角度から見ているのだなと知ることが できるだけでも、本当に異文化に触れてみることは面白いことだと思いました。 この留学生活で得たものは計り知れませんが、その中でも私にとって一番の収穫 は、友達です。特に、ルームメイトたちです。 私は産まれて初めて他人と共同生活という 体験をしました。お互い違う人間であるだ けでなく、違う価値観を持ち、違う言語を持 ち、違う習慣を持つため、初めは問題もあり ました。私ではありませんが、泣くようなケン カをしていたりもしました。同じ部屋に住ん でいる分、良いことだけではなく向き合わな ければならないことも沢山出てきます。特に 初めはみんな中国語もまだまだ思うように 話せず意思疎通が難しいですし、私が例外ではなく、みんなも異文化の人と生活を共 にするのは初めてのことで、手探りで様子を掴んでいるような感じでした。掃除のことや ご飯のこと、トイレの使い方、部屋の使い方など、小さなことに思えますが、一緒に住む 上では大切なことです。共同生活とはこんなにも大変なものなのかと、私はそのとき初 めて知りました。しかし時が経つに連れ、意思疎通もできるようになり、相手がどんな人 であるかも分かってきて、勉強も難しく なり質問をし合うようになり、共通の知り 合いもでき、どんどんと仲が深まってい きました。誕生日のときにパーティーを したり、料理を作って一緒に食べたり、 様々な国のテレビを見たり、歌を聴い たり歌ったり、ダンスをしたり、夜中に 散歩をしたり、学校前の毛糸屋に通っ たり、テスト前は夜食を食べながら勉 強したり、留学生や先生たちの噂話を したり・・・。本当に楽しかったです。悩 み事があれば相談して慰めてもらいアドバイスをもらうこともありました。年齢も国も違う ため、人によって考え方は本当に様々でしたが、どれもよく私のことを考えてくれている 言葉でした。また、様々な国のことや国交関係や歴史についても、話をしたことがあり ます。そのときにそれぞれが言ったことは、私のイメージや知っている内容と違うものも ありました。当たり前のことですが、国によって流されている情報には違いがあるのだと 実感しました。私が日本について教えられたこともたくさんあります。そこで日本人であ るのに私は日本のことをあまり知らない、ということにも気が付きました。日本は島国で あり、これまでわざわざ日本人だということを強く意識することもなかったから、というの もあり、単に私が勉強不足だったから、というのもあると思います。ルームメイトたちは私 に、考えたこともなかったことを、たくさん考えさせてくれました。そんな私たちを、多く の人たちは、「あなたたちは仲が良いね」と言いました。確かにそうだと私自身思いま す。初めは日本人が私だけで少し不安になったりもしましたが、今はそんなこと全く思 わないくらい、本当にルームメイトに恵まれたなと思います。違う国にこれ程信頼できて 大切な友達ができるとは思っていませんでした。帰国するときは、帰国も待ち遠しかっ たのですが、みんなと離れるのが本当に寂しくて、涙、涙の別れをしました。みんなが 私を見送る姿を、今でもはっきりと覚えています。もう一緒に生活することはないですが、 今でも連絡を取り合って、近況を報告し合ったりしたり、相談もしたりしています。私は この留学で得た一番大きなものは、異国の友達だと自信を持って言えます。 私は留学中に2度、旅行をしました。一度目は国慶節という休みで、西安に行きまし た。日本人と中国人の友達と行きました。西安は昔何度も首都になった歴史ある街で、 大連とは違った街並みや空気を見て触れられ、とても思い出深い旅行でした。 二度目は、日本に帰国する前です。仲の良い中国人の実家に行きお世話になり、そ のままその友達と上海を旅行しました。上海はとても近代的な都会で、東京に似た雰 囲気を感じました。中国はとても広く、旅行をしつくせない国だと思います。行く場所行 く場所に全く違った雰囲気があり、良さがあります。私はこの半年という短い留学期間 中に、2回も旅行ができて満足しています。留学に行くのであれば、旅行をしてみるの もその国の様々な顔が見られて面白いと思います。私はまた中国に行き、まだ行った ことのない場所へ旅行したいです。 私の留学中、私の家族が大連に遊びに来ました。中国に来たばかりの頃、私は頼 れる人がいなく辛いとき、家族と連絡を取って沢山励ましてもらいました。その時期が なければ私はここまで頑張ることができなかったと思います。家族には感謝の気持ち でいっぱいです。その家族に私の成長した姿を見てもらえること、また、私が大好きに なった中国、大連という街や私の周りの環境を見て、家族にもその良さが伝わるといい なと思い、ホテルの予約から観光、道案内、全て自分で頑張りました。それは中国に 行ってから4ヶ月が経った頃でしたが、そこまでできるようになり、自分でも成長を感じら れ、一生忘れられない思い出となりました。またこの時、私の家族が来ていることを知っ た中国人の先生が、ホテルではなく私の家族も宿舎内に泊まったら、と手配をしてくれ 広くきれいな部屋を用意してくれたことも、忘れられません。 帰りの飛行機は、行きと同じように中 国のエアラインを利用したのですが、牛 肉ご飯と水をしっかりともらいました。中 国に初めて行く飛行機の中では、中国 語を使うことが恥ずかしいのと自信のな さで空腹のまま中国に降り立ちましたが、 帰りはお腹も心も満たし、日本に降り立 つことができました。この5ヶ月間の変化 を、自分の中で噛みしめた瞬間でした。 最後になりましたが、私の留学を支えてくださったグローバル教育センターの先生 方に感謝の気持ちを述べたいです。本当にありがとうございました。先生方のサポート のおかげで、こうして無事に留学を終え、大満足で帰国することができました。また、大 学からの支援もとてもありがたかったです。本当に感謝しています。 これから、この留学から得た多くのことを生かして何事にも取り組んでいきたいと思 います。そして今留学を考えている人には、中国に限らず外に出てみることを強くお勧 めします。学生のうちしか時間も余裕も頑固な意志も柔軟な受け皿もありません。そん な時期に今の自分の視野を広げることは、後々自分の役に立ってくると思いますし、 頼れる人がいない土地で自分に向き合い頑張っていくことは、自信に繋がり、今よりも 奥行きのある人になれると思います。是非、試してみてください。