Comments
Description
Transcript
「情報技術イノベーション 今昔物語」
於:大谷大学講堂 2015 年 6 月 26 日 親鸞聖人御命日講話 「情報技術イノベーション 今昔物語」 大谷大学 文学部人文情報学科 特別任用教授 池田佳和 1 “今は昔・・・” (今となっては昔のことだが) イノベーション1:文字 1.1 文明の誕生:集約農業、都市(王朝成立、階級分化)、金属器、文字(=情報表現) 1.2 文字の発明(記録、書記職の発生) 1.3 メソポタミア、エジプト、インダス、黄河 (文字のない文明もあった:消滅) ・シュメル:人類最古文明、ウルク古拙文書(3200BC) 、ギルガメシュ叙事詩(アッカド語) ・フェニキア文字(音素文字) 、ラテン・アルファベットやギリシャ文字:西欧に拡散 2 漢字:東アジアの共通言語(表意文字、表語文字)>文書言語として、広く普及し定着 2.1 甲骨文字[亀甲獣骨文](殷墟、14 世紀 BC) 、金石文、 「説文解字」 (100AD、9353 字) 2.2 日本への伝来:吉野ケ里遺跡連弧文鏡(1 世紀 BC) 、志賀島金印(57AD) 、七支刀(4 世紀) ・・ 卑弥呼(邪馬台国 3 世紀)は漢字が書けたか? ・言霊思想が漢字を阻んだ [1] 引用[1]加藤徹“漢文の素養” 、光文社新書 2006 年 2.3 王仁(わに) 「論語」 「千字文」 (百済から 5 世紀渡来)、史部(ふひとべ)、和化漢文:稲荷山 古墳出土鉄剣銘(471) 、純正漢文:倭王武の上奏文(国書) (478)、五経博士(儒教) 2.4 仏教伝来(538/552) :欽明天皇へ百済聖明王から丈六仏像と仏典が献上、新興の蘇我氏が信仰。 用明天皇が帰依、飛鳥時代その子の聖徳太子(女帝推古天皇を補佐)が中央集権国家(十七条 、漢字漢文の定着 憲法) ・大陸文化導入・仏教興隆(三経義疏[さんぎょうぎしょ]著作) 3 “今は昔・・・” 3.1 イノベーション2:メディア 記録媒体 紙の発明:中国(150BC) 、大陸経由でイスラム・欧州へ、日本:7 世紀までに百万塔 陀羅尼 (ひゃくまんとう だらに)法隆寺、世界最古印刷物 3.2 パピルス:エジプト、アレキサンドリア図書館(300BC~5 世紀、アラブ文化・科学の知識集 積) 、以降科学の暗黒時代(キリスト教の学術研究支配、天動説、十字軍、魔女狩り) 3.3 グーテンベルク活版印刷機(15 世紀、ドイツ、金属活字) :聖書印刷、プロテスタント成立、 書籍、新聞(マスメディアの端緒)・・木版印刷は既に存在していたが 4 “今は昔・・・” 4.1 イノベーション3:電気通信 情報伝達 マラソン:450BC 名将ミルティアデスはマラトンでペルシャを撃退した。その知らせを伝令 フィディピディスに託しマラトンから約 40km 離れたアテナイ(現アテネ[ギリシャ])までを 駆け抜け「我勝てり」と告げた後に力尽きた 4.2 暗号:シーザー暗号(1 世紀 BC)、伝令に託した文書を秘匿する文字置換暗号を発明 4.3 伝達手段:使者、手紙、飛脚、早馬、駅制、伝馬制、のろし(狼煙) -1- 4.4 腕木通信(テレグラフ) :フランスでは全国土に整備、テレグラフ・ヒル(サンフランシスコ) 4.5 電気磁気の発見:B.フランクリン(雷実験 1752) 、マックスウエル(理論 1864 年) 4.6 有線通信:ボルタ電池、モールスの電信事業化(1844) 、海底電信ケーブル、大英帝国・植民 地通信 4.7 無線通信:ヘルツ実験(1884) 、マルコーニの無線通信事業化、タイタニック号悲劇(1912)、 SOS 制定 5 “今は昔・・・” イノベーション4:コンピュータ 機械式から電子式へ 5.1 C.バベッジ:階差機関(19 世紀後期、英国)計算機の父だが機械は未完成(電子式ではない) 5.2 Ada(エイダ・ラブレス:初のプログラマで女性) 、英国詩人バイロンの娘、バベッジ機関論 文(自著)にプログラム記述 5.3 戦争(20 世紀)が勃発、無線通信で暗号通信使用、敵は「解読」努力>情報処理システム急 速進歩 5.4 エニグマ(ドイツ暗号機) :天才アラン・チューリングが解読機械開発(Bombe) (電気機械式) 5.5 Colossus(コロッサス) :別のドイツ暗号の解読システム(英国)、 (電子式、戦後も長く秘密) 5.6 ENIAC:戦後いち早く完成した電子式(真空管)コンピュータ(米国、ペンシルバニア大学) 5.7 フォン・ノイマン: (現代)計算機方式の提唱、オーストリアから移住したユダヤ系天才(数 学・物理) 、原爆開発にも参画 5.8 トランジスター発明:ショクレーなど(真空管の置換、故障率圧倒的改善、桁違い小型化・省 電力) 、集積度の持続的・指数的向上(ムーアの法則) 6 “今は昔・・・” 6.1 イノベーション 5:電話 電信(電報)から電話へ:自分の声で会話(通信士不要)、アメリカで大発展、巨大企業誕生 “Ma Bell” (現 AT&T) 、ベル研究所(ノーベル賞多数) 、シャノン(情報伝送理論) 7 8 9 6.2 長距離電話(国内) 、国際電話:当初は交換手(女性)が接続 6.3 自動接続(ダイヤル通話) : エピソード1 “今は昔・・・” 7.1 ラジオ 7.2 テレビ “今は昔・・・” イノベーション 6;放送とマスメディア イノベーション 7:通信衛星 8.1 静止軌道衛星(SF 作家アーサー・C・クラークの小説) 、距離の克服 8.2 大陸間弾道ミサイル発射実験(米ソ) 、アポロ計画でロケット技術進歩 8.3 人工衛星の平和利用、その用途拡大・・GPS、気象衛星、偵察衛星 “今は昔・・・” 9.1 イノベーション 8:アナログからディジタルへ IC コスト低下、メモリ素子の劇的価格低下、信号処理の高速化 -2- 10 “今は昔・・・” イノベーション 9:光ファイバー 10.1 カオ(香港大)理論的提案(1965 年) 、コーニング社原型ファイバー成功、開発競争勃発 10.2 NTT 研究所高性能ファイバー作成方法(1977 年) 、光素子高性能化(東工大、KDD) 、ケー ブル実装技術、光海底ケーブル(大洋) 10.3 FTTH 推進(住宅、事務所ビルへの光ファイバー設置)(従来の銅線電話線を置換) 11 “今は昔・・・” イノベーション 10:インターネット 11.1 冷戦時代(米ソ) :核攻撃に一部は生き残れるネットワーク(分散制御) 、パケット、V.サーフ と R.カーン ARPANET 実験(TCP/IP、1974 年) 11.2 WWW(ウェッブ) :プログラミング知識不要 11.3 “Last One Mile”問題:ADSL エピソード2 11.4 Wi-Fi、携帯電話無線、G3、LTE(無線技術の飛躍的進歩) 11.5 電話、ファックス、写真、動画までインターネットで運べる(2000 年以降) :エピソード3 12 “今は昔・・・” イノベーション 11:検索サービス(広告モデル) 12.1 Yahoo!誕生、Googl 誕生:なんでも「無料」革命 13 “今は昔・・・” イノベーション 12:ソーシャルメディア、CGM(消費者発信メディア) 13.1 Web2.0、Twitter、FaceBook、Mixi、Line、モバゲー、 、 、 13.2 読者投稿サイト(CGM) 、口コミサイト:YouTube、食べログ、カカクコム、クックパッド、 、 14 “今は昔・・・” イノベーション 13:スマートフォン 14.1 iPod、iPad、タブレット PC、 、 、 15 これから・・ クラウド(雲) 、ビッグデータ、IoT(インターネット・オブ・シングス)、クラウド ソーシング(群衆) 、AI(人工知能) 、ロボット、 、 、 エピソード 1 スティーブ・ジョブズとのニアミス: 「ブルーボックス」対策=長距離電話信号方式開発(国際) [2] Ikeda et al“Error Control Criteria in the Message Transfer Part of CCITT S.S.No.7”(1990)、 [3] Ikeda: IEEE Fellow 称号受賞(1992) 2 孫正義社長との直接激論対決(毎週 8 時間数ヶ月間、TTC) :ADSL 標準化、ブロードバンド・イン ターネット・アクセス普及拡大、ベンチャ企業経営(ADSL、半分外資系) [4] Ikeda“Spectrum Management Standard for DSL Systems” IEEE Tencon 2004 [5] 総務大臣表彰(池田佳和「ADSL 国内標準化」 :2004) 3 パケット音声通信(VoIP)発明を逃したことは残念無念 [6] Ikeda”Virtual Circuit Switched Network” JARECT(1984) -3- 以上