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平成¾¾ 年度 研究成果報告書

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平成¾¾ 年度 研究成果報告書
平成 ¾¾ 年度 研究成果報告書
研究機関名
慶應義塾大学(研究責任者:徳田英幸)
ユビキタス・プラットフォーム技術の研究開発
ユビキタスサービスプラットフォーム技術の研究開発
研究開発課題名
状況情報サービス連携技術
イ サービス連携制御・支援技術
サービス連携支援技術
目次
研究開発の総括
研究開発の背景
研究開発の成果
研究成果の概要
クロスドメインサービス記述合成支援技術:
携帯を
利用したショッピングモールでのリアルタイム情報配信
はじめに
前提条件
アンケート結果と得られた知見
結論
を利用したチャネルの構築
クロスドメインサービス可視化支援技術:家庭内 におけ
るユーザとセンサノード間の距離に基づいた情報取得手法 はじめに
実空間型情報取得手法
関連研究
家庭内 におけるユーザとセンサノード間
の距離に基づいた情報取得手法の提案
の設計
の実装
!
の評価
!
"
結論
!
クロスドメインサービス可視化支援技術:全方位カメラを用い
た情報家電機器発見及び制御機構 #$%
!
はじめに
!
情報家電機器利用手法
!"
情報家電機器発見及び制御機構
"
実装
評価
結論
成果目標の達成について
&イ&&
クロスドメインサービス可視化支援技術
の研究開発
&イ&&
クロスドメインサービス記述・合成支援
技術の研究開発
研究成果の更なる展開について
その他
' () * の検討状況
第 回ミーティング 年 月 ! 日
第 回ミーティング 年 月 日
第 ! 回ミーティング 年 ! 月 日
!
第 " 回ミーティング 年 ! 月 日
!
第 回ミーティング 年 " 月 日
!
第 回ミーティング 年 月 日
!
!
第 回ミーティング 年 月 日
!
"
第 回ミーティング 年 月 日
!
資料編
論文
"
被引用論文数
"
特許申請件名
"
特許取得件名
"
受賞等
図目次
研究概要図
!
+,,-
タイムリー&タイムリーの情報が配信されたデジタルサイネージ . /
0%%.
!
チャネルの生成と手順
"
'
!
実証実験で使用したマップの例
"
貸出しに使用した 1&
参考文献 電波新聞社発行「センサーのしくみ」より参照
のスクリーンショット
/%.%
のイメージ
!
.'
のイメージ
!
センサネットワークにおける情報取得の概念図
23+0 でのセンサノードの選択画面例
$3
セカイカメラの利用例
物理的な制約のシナリオ図
!
センサノードの特定シナリオ図
!
"
問題の切り分けシナリオ図
"
4
センサノードに貼られた 4 コード
*/.. の構成図
*/.. の表示画面例
3.
のデータ表示画面
3.
のトポロジ表示画面
3)/ のデータ表示画面
近づける動作を用いた情報取得手法のイメージ
!
の動作概要図
!
"
システムの利用の流れ "
システムの利用の流れ システムの利用の流れ システムの利用の流れ システムの利用の流れ システムの利用の流れ 4
近づける動作のイメージ
近づける動作による画面遷イメージ
!
環境側アプリケーションのソフトウェア構成図
"
環境側アプリケーションのハードウェア構成図
の操作画面例
マーカ
マーカをセンサノードに取り付けたイメージ
ユーザ側アプリケーションのソフトウェア構成図
ユーザ側アプリケーションのハードウェア構成図
4*&5&*
%
4*&5&* の配置
#$ τ 実験スペース
!
!
!
実験環境と制御可能な情報機器
!
"
ネットワーク上に存在する機器
!!
#$% の操作画面とサービスが可視化されている状態
"
人間の検出の様子
"
深度センサによって取得した画像
"
特徴点の抽出
"
マーカを使わずに情報をオーバレイしている状態
"
背景差分の抽出
背景差分の絶対値を元に画像を二値化
二値化画像の欠損補完
!
ラベリング処理
の評価に用いた評価用紙
"
物体検知と情報のオーバレイ
情報家電機器発見及び制御機構のハードウェア構成図
!
情報家電機器発見及び制御機構のソフトウェア構成図
"
スマートスペースと 6#3 と . 6/.
/% /7
/%
の関係
/%
641
/% ,) 4
全方位カメラの設置
異なる色成分,明るさの実験環境
!
実験環境
"
異種サービスの発見に要した平均処理時間のグラフ
機器連携とデモの様子
表目次
サービスが利用者の役に立ったかを調査したアンケート結果
サービスを利用して面白かったかを調査したアンケート結果
どの情報が役にたちましたか。のアンケート結果
どの情報が面白かったですかのアンケート結果
どのくらいの頻度で情報を見ましたかのアンケート結果
既存手法における機能要件の満足度
!
既存の位置情報取得手法の精度
"
"
実験 被験者の性別分布
"
実験 被験者の年代分布
設問 「4 を用いた情報提供はわかりやすかった」の回答結果 !
設問 「情報の表示段階は三段階で十分だと思った」の回答結果 !
設問 「システムを操作する際に負担を感じた」の回答結果
設問 「日常的なセンサ管理を行う際に有用だと思った」の回
!
答結果
!
設問 「対象が多数存在する場合有用だと思った」の回答結果
!
設問 「異常の起こっているセンサを特定することが容易だっ
!
た」の回答結果
異常の起きているセンサノードの特定に要した時間
!
6#3
!
"
使用したセンサと対応する環境情報
取得するユーザの状態と取得方法
の実装環境
現在のユーザのニーズの状態
情報家電機器の認識速度及び精度評価実験結果
情報家電機器の認識速度及び精度評価実験結果
設定における負荷の大きさのアンケート結果
"
899
の有用性についてのアンケート結果
899
の利用環境についてのアンケート結果
実験用端末の性能表
研究開発の総括
本研究プロジェクトでは、ユビキタスサービス連携制御・支援を実現する
為に、クロスドメインサービスを各種プラットフォームで開発・利用可能に
することを目的としている。
次世代のユビキタスネットワークは、ネットワークロボットサービス、無線
センササービス、情報家電機器サービス、' サービス、スマートオブジェ
クトサービスをはじめとする、ドメインの異なる多様なサービスで構成され
ると考えられる。それらのサービスを合成し、円滑な連携を可能とするため
には、ドメインの異なる多様なサービスの機能や性能を共通の方式で記述し、
他のサービスから発見可能とする必要がある。さらに利用者は、自身が必要
とするサービスの機能や性能、またそれらの合成方法を柔軟に指定可能であ
る必要がある。そこで本研究では、53 を用いて各サービスの機能や品質、
入出力等を記述する クロスドメインサービス記述支援技術と、サービス
の存在やその情報、状態を視覚化する クロスドメインサービス可視化支
援技術の研究開発を行う(図1)。これらにより、ユーザの要求に合致し、周
辺環境の状態に合致したサービス連携を支援する。
図 研究概要図
本プロジェクトでは、クロスドメインサービスサービス連携制御に必須と
なる次の二つの要素技術に焦点を当てて研究開発を進めた。
クロスドメインサービス記述合成支援技術の研究開発
ドメインの異なる多様なサービスの機能や性能を共通の方式で記述し、
他のサービスから発見可能とするために、単体のサービス、および合
!
成サービスを共通の 53 フォーマットで記述可能とし、作成あるいは
合成されたサービスをネットワークから迅速に発見可能とする、クロ
スドメインサービス記述支援技術を構築する。同技術は、上述した方
式による単体サービス、合成サービスの記述、あるいはサービスクエ
リを読み込み、ローカルネットワークからのサービス発見を実現する。
このとき、ローカルネットワークに存在するネットワークロボットや無
線センサ等の異種ドメインから、柔軟にサービスを発見可能とする。さ
らに、ローカルネットワークにおけるサービス合成を支援する機能を実
現する。
クロスドメインサービス可視化支援技術の研究開発
ネットワークロボットや無線センサノード、スマートオブジェクト等
の異種ドメインサービスは多様な状態を取り、かつそれらの状態は利用
者にとって直感的に理解しづらいデジタル情報として表現される。状況
情報サービス連携を行う際に、周辺に存在するサービスの種類やそれ
らの情報、状態を利用者が直感的に理解できれば、自分自身の要求に合
致するサービスに対して直接インタラクションを行える。そこで本研究
では、サービスの存在やその情報、状態を視覚化する技術の研究開発を
行う。
今年度は、ユビキタスサービス技術言語である ,./ ,7 .7&
% /)/) のユビキタスネットワーキングフォーラムでの公開
に向けた取り組みを行い、 仕様書 年 月日本語版と、 仕
様書 年 月英語版の公開を行った。 仕様書 の公開への取り組み
は、 を複数機関で検討するために設立した 869: プロジェクト '
() * *
の活動を通して行われた。* における検討
状況は 節に示す。
今年度の研究成果として 本の論文発表を行った。具体的な発表内容につ
いては 節に示す。また、これまでの研究成果を一般に発表する場として、
ショッピングモールららぽーと柏の葉で 年 月 、、! 日の3日間に
わたり、実証実験としてタイムリー&タイムリーを行った。タイムリー&タ
イムリーの実証実験において我々は、多数の情報源を特定の意図に基づき指
定し、買い物客へ配信するための「チャネル」の構築および、/
携帯へ
の情報の配信を行う '
の開発を行った。各チャネルは、53 ベースの
ユビキタスサービスの記述言語である ,./ ,7 .7%
/)/)
を用いてチャネルを記述する。 で記述することで、柔軟な
チャネルの構築と検索が可能となる。また、'
を搭載した 携
帯 1& を 台用意し、買い物客への無料貸し出しを行い、アンケート
調査を行った。
"
研究開発の背景
電子タグやセンサーネットワーク等を活用したユビキタスネットワーク技
術は、様々な産業の生産性向上や安心・安全社会の構築等への貢献が期待さ
れている。しかし、現在の電子タグ等のアプリケーションは一般的に業務用
途が主流であり、また互換性等も十分ではないなど、システムの汎用性、拡
張性、低コスト性等の面で課題が残されており、国民が広くその恩恵を享受
できる状況には至っていない。そのため、幅広い利用者が、いつでも、どこ
でも、状況に応じたユビキタスネットワークサービスを容易に利用できる環
境を実現するため、ユビキタスネットワーク技術のさらなる高度化、汎用化、
低コスト化等を可能とする共通基盤(プラットフォーム)技術が必要である。
そこで、ユビキタスサービスを提供する開発者が汎用的に利用可能なユビ
キタスサービス記述言語が必要になる。各開発者は、その規格化されたサー
ビス記述言語を用いてサービスの記述を行うことにより、その他の開発者・
開発機関においてもサービス発見・共有・連携等の実現が容易になる。本研
究では、ユビキタスサービス技術言語として ,./ ,7 .7%
/)/) を策定・提案する。
一方で、遍在するサービスをユーザが発見・利用可能とするためには、ユ
ビキタスサービスの視覚化・可視化が必要になる。環境に存在するサービス
を視覚化することで、ユーザはその場で利用可能なサービスを理解し、サー
ビスとのインタラクションを実現することで、サービスを享受できる。
研究開発の成果
研究成果の概要
本年度の研究開発は、主に以下の テーマである。
¯ クロスドメインサービス記述合成支援技術:
携帯を利用した
ショッピングモールでのリアルタイム情報配信
ショッピングモールららぽーと柏の葉で行われた実証実験である は、センサ情報とレポーターのレポートをタイムリーにデジ
タルサイネージや、スマートフォンへ情報を配信するシステムである。
その中で我々は、多数の情報源を特定の意図に基づき指定し、買い物客
へ配信するための「チャネル」の構築および、/
携帯への情報の配
信を行う '
の開発を行った。各チャネルは、53 ベースのユビキ
タスサービスの記述言語である ,./ ,7 .7%
/)/) を用いてチャネルを記述する。 で記述することで、柔
軟なチャネルの構築と検索が可能となる。我々は、買い物客へ '
をインストールした /
携帯の無料貸し出しを行い、
携
帯を利用したショッピングモールでのリアルタイム情報配信サービスに
関するアンケート調査を行った。
¯ クロスドメインサービス可視化支援技術:家庭内 におけるユーザ
とセンサノード間の距離に基づいた情報取得手法 サービス可視化の一環として、一般家庭で生活するエンドユーザが操
作可能な手法でセンサの異常を発見することを可能にする を提案
する を使用することで,センサに関する知識のないエンドユー
ザは日常的にセンサネットワークに発生した問題を発見することが可能
になる 見ている対象に近づいていくことでより詳しい情報を取得する
ことができる動作である.本項目では,虫眼鏡の動作を用いた情報取得
手法である を提案し,実装を行う.最後に,提案した に対
して評価実験を行い, の有用性を検証する.
¯ クロスドメインサービス可視化支援技術:全方位カメラを用いた情報家
電機器発見及び制御機構 #$%
全方位カメラを用いた情報家電機器などのサービスの認識を行い,携
帯端末を用いてサービスの位置情報の提供と制御を行う機構として #&
$% を提案する.具体的には全方位カメラで室内を監視し,室内に
新たな物体が登場したときの時間を取得する.次にネットワーク情報
を監視し,室内に新たな情報家電機器が登場した時の時間を取得する.
両方の時間を参照し,情報家電機器の情報と,情報家電機器の室内の
位置情報をマッチングし,ユーザへ提供する.これによりユーザは,情
報家電機器の設置,発見,制御を専門的な知識を要する事なく行える.
従来の手法と比較しながらユーザビリティ評価を行い,#$% の
手法の有用性を確認した.また,#$% の手法が想定するアプリ
ケーションに置いて十分に動作可能である事を示す為にパフォーマンス
評価を行った.
各テーマにおける研究成果については次ページ以降で詳細を報告する。
クロスドメインサービス記述合成支援技術:
携帯
を利用したショッピングモールでのリアルタイム情報配信
はじめに
いつでも・どこでも・誰でも状況に応じた最適な情報通信サービスが利用
できる「ユビキタスネットワーク社会」の実現に向け、総務省の「ユビキタ
ス・プラットフォーム技術の研究開発」を平成20年から受託し、三井不動産
株式会社、柏の葉アーバンデザインセンター、千葉県柏市の協力を得て、2
010年11月から2010年12月にかけて、千葉県柏市の商業施設(三
井ショッピングパーク ららぽーと柏の葉)を舞台に、ユビキタス技術を利用
した実証実験「ユビキタスパーク」を実施した。
「ユビキタスパーク」の一環として、慶応大学,国際電気通信基礎技術研
究所; 東京大学、日本電気、大阪大学、日本電信電話の6機関で大型ショッピ
ングモールららぽーと柏の葉内の出来事をリアルタイムにセンシングして情
報配信を行うタイムリー&タイムリーのシステムを構築し、実証実験を行っ
た。タイムリー&タイムリーでは、ららぽーとで今起こっている出来事を、
何名かのレポーターや館内に設置されたセンサにより、店内に設置されてい
るデジタルサイネージや、買い物客の携帯端末にリアルタイムに届けること
を目的とする。
タイムリー&タイムリーでは、人感センサ、気象センサ、8+ センサといっ
た複数のセンサからの情報に加え、複数人のレポータから情報の入力を行う。
情報源が多数あり、また情報源が動的に増減する環境下で、買い物客の興味
のある情報をいかに配信するかは、タイムリー&タイムリーを実現する上で
の課題の一つである。我々は多数の情報源を特定の意図に基づき選択し、買
い物客に配信するするためチャネルの概念を導入した。各チャネルは、
,./ ,7 .7% /)/)
を用いて記述する。 は、ユ
ビキタスサービスの記述フォーマットである。 を用いることで、チャ
ネルをユビキタス空間において物と物、人と物の関係を機械的に処理できる
形式で記述できるため、ネットワークから迅速に発見可能となる。
我々は、タイムリー&タイムリーにおいて で記述したチャネルを
用い、
携帯上で配信したタイムリー情報を閲覧するためのアプリ
ケーション '
を開発した。また、ショッピングモールに来た買い物客
へ '
をインストールした 携帯を無料で貸出しを行いアンケー
ト調査を行った。
前提条件
実際のショッピングモールで実証実験を展開するにあたり、どのようなサー
ビスが、顧客、テナント、商業施設などに求められているのかを議論した。ま
た、ショッピングモールでの実証実験に際して様々な問題にも直面した。本
章では、こうした要求事項や制約事項についてまとめる。
要求事項
実際にショッピングモールでのサービスを展開するに当たって、
様々な要求事項に直面した。以下に、我々が議論した項目をまとめる。
顧客:お客様にとって価値のあるサービスの提供
展開するプログラムが本当に来館者(お客様)にとって価値あるサービ
スであることが重要である。お客様の目線に立ったサービス&コンテン
ツ開発を進めていく。
テナント:店舗&商品の魅力の発信による店頭の活性
商業施設における実証実験(いかに快適な消費行動を実現するか)の
ためにはテナントの協力が不可欠であり、そのためにもテナントのモチ
ベーションを高めていくという視点からのサービス&コンテンツ開発を
進めていく。
商業施設:商業施設に相応しいユニークな取り組み・展開
個々のサービス(実証実験)の良し悪しだけでなく、如何に、商業施
設としての優位性を高めていくかという視点が重要。そのためにも各
サービスを束ねた全体キャンペーンとして組み立てていくことが必要と
なる。
こうした要求事項に基づいて、センサなどの自動生成系や人のクチコミに
より情報を収集しショッピングモールの「今」がデジタルサイネージや携帯
へ配信されるタイムリー&タイムリーを実施した。
制約事項
実際にショッピングモールでのサービスを展開するに当たって、
様々な制限事項に直面した。以下に、我々が実際に直面した問題をまとめる。
ネットワークインフラの欠如ららぽーと柏の葉には、館内の一部をカ
バーする有料のホットスポットなどはあるが、全館をカバーするような
無線 や有線 はない。ユビキタスサービスを実現する上で、
有線 や 無線 といったネットワークインフラが施設にないこ
とは大きな障害となった。
買い物客が自由に発言することの禁止当初、我々は %-%% のような
ショッピングモールに関して自由に発言できるシステムの構築を考えて
いた。しかしながら、意図したメッセージ以外が配信されることは困る
という指示を受けた。例えば、お客様からネガティブな発言があると店
舗や商業施設にとって損失になるためである。従って、買い物客が自由
にに発言するシステムは諦める必要があった。
テナントの協力の制限本実証実験において、テナントの全面的な支援
をえることは難しい状況であった。例えば、ショッピングモールのテナ
ントの店員に負荷がかかるような作業を要請することは、慎むように
指示された。テナントの店員にお買得情報や店の情報を発言してもら
うことを考えていたが、店員の負荷になるため諦める必要があった。
こうした制約事項に基づいて、計画に修正を加える必要があった。まず、
ネットワークインフラの欠如の問題に対しては、無線 を全館に敷設す
る案も考量されたが、最終的には * ネットワークを利用した通信を行うこ
とに帰着した。また、自由に発言することの禁止やテナントの協力の制限と
いったことに対応するために、代替案として、実証実験期間中に何人かのレ
ポータを雇い、店舗情報やお買得情報などを発言してもらう方式を採用した。
タイムリー&タイムリーは、センサなどの自動生成系の情報と人のクチコ
ミ情報を統合的に扱い、ショッピングモールの「今」を配信するシステムで
ある。タイムリー&タイムリーは、以下のシナリオにおいて有効である。
¯ いつどんな楽しみがあるかわからない初めて来た客は、イベントやタ
イムセールなどの情報を知ることができて嬉しい。
¯ 母親の買い物待ちをしている未就学児連れの父親は、買い物待ちの時
間に、楽しい出来事がみつけることができて嬉しい。
¯ 昼の混雑時、フードコートの席がほとんど埋まっている中、フードコー
トで空いている席がある場所がわかれば助かる。
¯ 雨が降りそうなときに気象情報を教えてくれれば助かる。
¯ 館内放送を聞き逃してしまった客が、あとで参照できて助かる。
タイムリー&タイムリーの概要を図 に示す。タイムリー&タイムリーの
自動生成系の情報源としては、気象センサ、モーションセンサー、8+ セン
サの3種類がある。気象センサとしては、外部の , 0< =7% の気象セ
ンサを利用した。モーションセンサーは、フードコートの混雑状況がわかる
ようにフードコートの机に設置した。8+ センサは、にぎわっている場所を
把握することを目的として、全館に敷設した。人力系の情報源として、テナ
ント情報とレポーターのレポートの2種類がある。テナントの情報としては、
各店舗のイベント情報の他に館内放送の送信も含まれる。レポーターは、パ
パ役のレポーター、ママ役のレポーター、スタイリスト役のレポーター、+
役のレポータの4名を各実験日毎に雇う。各レポーターは、ショッピングモー
ルの中で感じたことやお買得情報などをレポートする。
自動生成系および人力系からのデータは 869: /%> 7$%7% で、
集約・変換を行いデジタルサイネージや各種携帯端末へ出力される。
Digital Signage
Cell-Phone
CUBIQ: Cross UBIQuitous platform Architecture
Channel generator
Message generation rules
Web I/F
Reporter
Smart Phone
Tennant
Motion sensor
Weather sensor
CO2 sensor
Information source
図 +,,自動生成系の情報は、メッセージ生成ルールを介してメッセージ化され、
人力系の情報とマージすることでタイムラインを構築する。タイムラインを
構築するメッセージは、レポータのレポート、イベント情報、館内放送、に
ぎわい情報、気象情報の5種類から構成される。タイムリー&タイムリーの
メッセージは、図 に示したようなショッピングモール内に15台設置され
ているデジタルサイネージに配信される。同様に、携帯電話やスマートフォ
ンへも配信される。デジタルサイネージは、スクロールせず客がインタラク
ションを行うことができないのに対し、スマートフォンでは過去ログの参照
やチャネルを介した情報の取捨選択が容易である。
図 タイムリー&タイムリーの情報が配信されたデジタルサイネージ
実際に、 で配信されたメッセージの一部を例として以下に
示す。
店舗達成 % +?? の アイテムはパパ、ママ、子
供達の誰かには必ずやヒットするはず!期間限定だから、今のうちに
チェックしてみてくださいね。 @/" 約 分前
女性なら気になるコラーゲン♪ドリンクとマスク、ありま
す!身体の内側からも外側からも美しくなっちゃいましょう☆ @/
約 分前
タイムリー&タイムリー、お楽しみいただけてますか?ユビキ
タスケータイをお持ちのお客様は17時までにクリスタルコート受付
までおまわりくださいませ。 約 分前
現在、4階 3+A95 付近がにぎわっているようです。 約 分前
柏の葉エリアの環境情報をお知らせします。外の温度は "
度です。 約 分前
お手軽なプチブーケ
円
ありますよ☆お花があるだけ
で、お家の雰囲気変わりますよね♪ 5/. らしい「ポインセチア」も
ご一緒にいかがですか? 約 分前
3階にございますフードコートですが、いずれのエリアもそ
れほど混み合っておりません。約 ! 分前
これは結構お買い得かも!機内持ち込みサイズのスーツケー
スが期間限定で千円 @/
@)=)
約 " 分前
!"#$ を利用したチャネルの構築
では、 ,./ ,7 .7% /)/)
を用いてチャネルの記述を行い、情報源の増減に対応した柔軟なチャネルの
構築を実現している。本章ではまず の概要に着いて述べ、次に によるチャネルの記述方法を説明する。最後に、
携帯上で実装した
'
について説明する。
!"#$ % ユビキタスコンピューティング技術の発達に伴い、屋
内・屋外に多種多様なユビキタスサービスが存在し始めている。このような
利用環境の異なる多様なサービスの機能や性能を共通の方式で記述し、他の
サービスから発見可能とするために、単体のサービス、および合成サービス
を共通の 53 フォーマットで記述可能とし、作成あるいは合成されたサービ
スをネットワークから迅速に発見可能とするのが である。これまで、
我々は を使い /% 8
や、&#$% 3' といったサービ
スを開発した。
を利用することで、ユビキタス空間において物と物、人と物の関係
を機械的に処理できる形式で記述しておくことによって、様々なアプリケー
ションを創出可能となる。 では、型を用いて人、物、空間を記述する。
同時に本言語では、型が持つセマンティクスを、明示的に記述する。型は継承
を許す。これらにより、型を用いた人、物、空間の検索 .,7 .7,、
意味を用いたそれらの検索 ./%7 .,7 .7,、あるいは複数の物
を複合して粒度の大きな物 複合サービスなど を定義した際にその物に対す
る型検査等が可能となる。 型は抽象的な概念を記述するのに対し、実空間ではそれを具現化する複数
の実体が存在する。従って、型の記述とは別に実体の記述を行う。実体の記
述ではまず、その実体が適合する型を指定する。指定できる型は一つとする。
次に、その実体に特有の情報を記述する。たとえば、その実体が存在する通
信プラットフォーム上で、その実体にアクセスする際のアドレスなどはこの
情報に該当する。型と実体の関係を図 に示す。図 では、型 空間の実体
として実体リビングルームを で定義している。また、リビングルーム
にある +'=7% を 型 +'=7% を継承した 型 空調、時計、テレビを定義し、リ
ビングルームにある実体 として 実体 リビングルームの空調、リビングルー
ムの時計、リビングルームのテレビを定義している。
USDL-enabled
Views
<Type>Space
<Entity> living room
USDL-enabled
Applications
Models described in USDL
<Type>Object
<Type>air conditioner
<Entity>Air conditioner
<Type>Object
in the living room
<Type>Watch
<Entity>Watch in the living room
<Type>Object
<Type>TV
<Entity>TV in the living room
図 . /
0%%.
を利用することで、人、物、空間を共通の形式で表現できる。また、
ユビキタスサービスの実デバイスに対する通信プロトコルや入出力するデー
タ形式とは非依存に、それらを記述できる はそれらの技術をアプリ
ケーション横断的に応用可能とする。結果として、 の利用により、多
様なユビキタスサービスに対応した実空間アウェアなユビキタスアプリケー
!
ションの創出が容易になる。
!"#$ によるチャネルの記述 各 %、%/%、% ..、-/%$
..; 8+ ..
といった を構築する各情報源を で記述する。チャネルは、どの情報源から構成されるかを踏まえて、 で
記述する。図 に示すように、 間を関連付けることでチャネルを構成
する。.%) に、レポーター 、%/%; % .. ; -/%$ ..;
8+ ..
から構築された男性用チャネルの例を示す。各情報源は、 タグを利用してチャネルに関連付けている。各情報源の では タグを利用して関連付けられたチャネルを記述する。このように チャネルの
記述を でおこなうことで、柔軟なチャネルの構築を実現している。
Reporter
Tennant
Motion sensor
Weather sensor
CO2 sensor
USDL
USDL
channel
USDL
USDL
(1) USDL download
USDL
(3) GET Message
channel
USDL
USDL
channel
USDL
Information source
USDL
ubiroid
(2) USDL parser
(4) Message display
Android Cell Phone
Channel generator
図 チャネルの生成と手順
ソースコード / /B. 7$/ 0%% 7%
! " #
$ %& %& $ % ! $ % % '% (%
%
()*+ , $ % ' % % # -./
% %& $ % %
#% % %
% # %
#% %
%
% %
%
"
% # # # # # ! ! % %& %& %& %& %& %& $ # %& $ 0 # %& $ % # %& $ # %& $ % # & の実装 タイムリー&タイムリーから発信した情報を 携
帯上で表示するアプリケーションとして を開発した。 の動作
手順を、図 に示す。まず、 上でユーザに指定されたチャネルの ファイルを既知の サーバからダウンロードする。次に、ダウンロード
した ファイルを パーサーによりパースし、接続するチャネル
を特定する。次に は、特定したチャネルに接続し、 形式で記
述されたタイムリー&タイムリー配信メッセージを取得する。最後に、
形式のメッセージをパースし 携帯上に配信メッセージを表示する。
図 に のスクリーンショットを示す。
図 '
のスクリーンショット
メッセージには、レポータが添付した画像へのリンクが含まれる。また、
店舗や空間を対象とした発言には、店舗や空間の場所を示す地図へのリンク
が含まれる。地図へのリンクをタッチすると、図 のような店舗や空間の位
置が記された地図が表示される。 のこの他の機能として、文字サイズ
の変更機能やレポータのプロフィールを参照機能があるる。情報元に対する
理解や共感を得ることで、有益な情報と感じるため、お客様にどのような人
物がレポータとして発言しているかを知ってもらうことは重要である。
図 ! 実証実験で使用したマップの例
アンケート結果と得られた知見
月 、、 日の3日間にわたり、ショッピングモール ららぽーと柏の葉
においてタイムリー&タイムリーの実証実験を行った。タイムリー&タイム
リーの実証実験において我々は、 を搭載した 携帯 を 台用意し、買い物客への無料貸し出しを行った。買い物客へは、返却
時間以外には特に制約を設けず、買い物を楽しむ間に端末を使用してもらっ
た。図
に実証実験で使用した を示す。実証実験期間中に 携帯を貸し出した人を対象にアンケート調査を行ない、 代から 代まで
の買い物客、合計で ! 件のアンケートを回収できた。また、レポータ4人
にも、別のアンケートを行い、タイムリー&タイムリーへの意見を聞いた。
図 " 貸出しに使用した 1&
アンケート結果
買い物客へのアンケートは、 " サービスの有効性に関す
る問い、" 情報の有効性に関する問い、" 閲覧頻度に関する問いの 項目
からなる。次に各質問項目の結果を検証する。
第1に、サービスに関する問いは、役に立ったか否かという軸と、面白かっ
たか否かという軸の2軸でタイムリー&タイムリーの携帯端末への情報配信
サービスの有効性を調査した。#$
と #$
に結果を示す。全体で見
ると、%
と の和は、#$
、 共に & を越えており、#'
(
# の和は、& 以下である。役立ち度の軸と面白さの軸を比較すると、
基本的には同じ傾向だが、面白さの軸の方が %
および の割合
が大きい。また、双方ともに、%
の割合は男性よりも女性が多くなっ
ている。特に、面白さの軸においてこの傾向は顕著である。この結果から、
タイムリー&タイムリーの携帯端末への情報配信サービスは、概ね好評価で
あり、買い物客には特に面白いと思ってもらえたといえる。また、男性と女
性で比較すると、女性により強い訴求力があるといえることがわかった。こ
れは、ショッピングモールでの買い物をターゲットとしていることから、4
人のレポーターのうち3人は女性であり、より女性に嬉しい情報が多く流れ
ていたことが原因と考えられる。
第2に、役に立ったか否かという軸と、面白かったか否かという軸の2軸
でタイムリー&タイムリーの携帯端末への情報配信サービスにおける情報の
表 サービスが利用者の役に立ったかを調査したアンケート結果
7$7 %
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表 サービスを利用して面白かったかを調査したアンケート結果
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表 どの情報が役にたちましたか。のアンケート結果
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表 どの情報が面白かったですかのアンケート結果
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有効性を調査した。このアンケートは複数回答可である。#$
と #$
!
に結果を示す。
)* は、レポーターがレポートした店舗情報や、お買得情
報を指す。全体で見ると、#$
' *#$
! 共に )* が最も高い構成比を得
ていて、次にイベント情報、にぎわい情報、天気情報と続く。男性と女性を
比較すると、女性は )* への評価がより高くなっている。また、男性は面
白さの軸において + & は無回答であり、面白いメッセージはなかったとい
う回答があるのに対し、女性の無回答は & である。ことことから、女性は
何らかのメッセージが面白く思っているといえる。結果として、レポータが
買い物客に役に立ちかつ面白い情報を提供したといえる。レポーターが魅力
的ななコンテンツを提供することはある程度想定できたが、役立ち度の軸で
見た場合、自動生成系のにぎわい情報は +&、気象情報は & と健闘して
いるといえる。また、女性は )* を中心に男性よりも配信されたメッセー
ジを面白いと感じているといえる。
表 どのくらいの頻度で情報を見ましたかのアンケート結果
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第3に、買い物客の閲覧頻度を調査した。#$
に結果を示す。全体で見
ると、& 以上の買い物客が 分に 度以上の頻度で情報の閲覧を行って
いることが分かった。男性と女性で比較すると、女性のほうがより細かい頻度
で情報の閲覧を行う傾向がある。女性で一名、閲覧頻度は 分以上と答えた
人がいたが、子供づれで子供から目を離せなかった、また子供が 携
帯を触って操作していたため中々情報を見ることができなかったとアンケー
トで回答している。
買い物客の閲覧頻度に合わせた情報の更新が必要になる。あまりに情報の
更新が多いとスクロールして過去の情報を遡るのが大変である。また情報が
少なすぎれば、閲覧をした意味がなく感じてしまい機会損失となる。
における情報閲覧の場合、一画面で6メッセージから4メッセージ程度であ
る。したがって、少なくとも 分間で ! メッセージ程度の更新が望ましい。
今回の実証実験において、 日間の平均メッセージ投稿数は、!, であった。
そのうち、人力系のメッセージは、,、自動生成系のメッセージは , で
あった。各日の実証実験は、 時から 時までおこなったため、 分あた
りのメッセージ数は、, メッセージとなる。これらの結果から、携帯端末
での情報閲覧を考えた場合、メッセージの流量を現状よりも増やすことでよ
り大きな効果が得られることが想定できる。しかしながら、気象情報やにぎ
わい情報といった自動生成系のメッセージを増やすのは簡単であるが、双方
のバランスが崩れると、買い物客にとって魅力的なレポータのレポートやイ
ベント情報が埋もれてしまうため自動生成系と人力系のバランスの維持も重
要であるといえる。
アンケート結果の考察
買い物客へとレポータへ、今回のサービスの良かっ
た点と改善をしたほう良い点を自由に回答してもらった。良かった点として、
以下のような意見が寄せられた
¯ メッセージを読んで、実際に商品を買いたくなった
¯ 普段立ち寄らない店にも興味が持てた
¯ マップや写真がみられてるので、広い館内を歩く指針になった
¯ 自分がいかなくても、イベント情報やタイムセール、フードコートの空
き情報が入手できる
¯ お得な情報がわかって買い物が楽しい
ショッピングモールは広い敷地を持つため、館内放送だけでは限界がありどこ
で何が行われているかを把握することは難しい。タイムリーな情報が、行動
の指針となったり楽しい買い物をサポートすることにつながることがわかっ
た。また、実際に商品の購入に結びついたり普段立ち寄らない店舗へ行くと
いった、買い物客の行動を消費行動へと結びつける効果があることが分かっ
た。これは、店舗および商業施設にとってビジネスチャンスがあることを示
唆している。
一方で改善したほうが良い点として以下のような意見が寄せられた。
¯ 自分の場所がわからないのでマップが出ても経路が分からない
¯ 混雑状況、店舗情報を必要なときに確認したい
¯ 店舗からの情報をもっと知りたい
¯ コメントの書き込みやランキング機能などがあると良い
この中で、自分の位置が知りたいという意見は数多く寄せられた。ユーザー
の館内での位置がわかれば、経路の指示だけでなくユーザの近隣の店舗の情
報を優先的に配信するなど、更に質の高いサービスが可能になる。現在、室
内での位置情報システムは多数研究されている。今後はこのようなシステム
を導入することで、お客様の満足度を更に高めることができるだろう。また、
今回全てのメッセージは時間と共に流れてしまう。従って、何か特定のもの
を探すという目的には使用しづらい面がある。この問題に対応するには、今
回のような *-**
ライクなシステムとは別に店舗情報や商品情報などを閲
覧、検索が可能なシステムと併用する必要があるだろう。この他に、今回は
制約事項として店舗との連携が最低限であったが、もっと連携することで魅
力的な情報を配信できたと考える。また、同様に制約事項として、買い物客
が発言することを禁じられていたが、現状では、情報の押しつけのみになっ
てしまいお客様が不満に感じてしまう。この問題を解決するために、ランキ
ング機能やコメント機能など買い物客の意見をフィードバックするようなシ
ステムは必要だと考える。
結論
本項では、大型ショッピングモール ららぽーと柏の葉で行われた実証実験
.
$ / .
$ と を用いたチャネルの記述および 携帯上
で動作する の設計と実装について説明した。 を用いることで柔
軟なチャネルの構築と検索を実現した。 をインストールした #
携帯 台用意し、買い物客へ貸出すとともに、アンケート調査を実施した。
アンケート結果から、商業施設での情報配信サービスに関する多くの知見を
得ることができた。特に、今回のサービスは買い物客にとっても店舗側にとっ
ても有用なサービスであることがわかった。今後は、アンケート調査を通し
て分かった改善すべき箇所を意識し、さらに有用なサービスへとつなげるこ
とが望まれる。
クロスドメインサービス可視化支援技術:家庭内 に
おけるユーザとセンサノード間の距離に基づいた情報取得
手法 はじめに
近年,環境情報から得られるアナログ信号のデータをデジタル信号のデー
タに変換するセンサノードと呼ばれるデバイスが広く普及している.センサ
ノードを用いることで環境のデータを取得することができる.このように,
センサノードを使用して環境の情報を取得することをセンシングという.下
図にあるようにセンシングするデータの種類により様々なセンサノードが存
在する.
図 参考文献 電波新聞社発行「センサーのしくみ」より参照
また,無線通信技術や半導体技術の進歩により,センサノードの小型化が
進み,無線通信機能を備えたセンサノードが急速に拡大している.これによ
りセンサノードを人やモノに付けたり,車などの動き回る機器にも取り付け
ることが可能になった.
また,それに伴い,センサノードが互いに通信し合う 0
$
*
-12以下 0" が普及している.0 では,センサノードは自身が得た
データを単に基地局に発信するだけではなく,複数のセンサノード同士が通
信するアドホック通信を可能にする.アドホック通信を用いることで,0
ではより広範囲のセンシングが可能になる.またセンサノードが故障した場
合,センサノード同士が通信しあい動的に新たなトポロジを形成する機能を
0 では備えている.
ユビキタスコンピューティングの分野では 0 を用いたアプリケーショ
ンが広く開発されている.
カルフォルニア大学バークレー校で開発された .#* * は照度センサや
加速度センサを内蔵した塵のように小さいセンサノードである.センサノード
同士がアドホックに通信するので小さいので至る所に埋め込むことで情報を取
得することが可能である.また, が火星の長期定点観測を行うために
開発している 0
と呼ばれるセンサネットワークがある.
3
と呼ばれる小型のセンサノードを火星表面に多数散布し,火星全域を長期モ
ニタリングする.プロトタイプは弁当箱程度のサイズのものでマルチホップ
通信をする.現在,火山活動の監視などを行っている.
図 /%.% のイメージ
図 .' のイメージ
今後,センサノードの小型化,低価格化が進むと,これらの 0 は私たち
の家庭といった身近な環境にも普及していくことは容易に想像できる.現在,
環境光の強さによって電灯の明るさを調節する電源管理システムや,外出す
る際に施錠を確認する施錠管理システムなどのセンサノードを内蔵した商品
が販売されており,私たちの生活にセンサノードは欠かせないものとなって
いる.
本研究では家庭におけるセンサネットワークやセンサノードを用いたアプ
リケーションの環境として,以下のような未来を想定している.家自体が高性
!
能なものになり,家庭内に設置されたすべてのセンサノードの値は各家庭に
あるセンサ管理サーバが管理している.そして,ユーザが家に必要なセンサ
ノードを用いたアプリケーションをインストールするようになると考えられ
る.また,近い将来,家電量販店やホームセンターなどで手軽にセンサノード
を入手することができる様になると想定しているので,アプリケーション毎
に必要なセンサノードをユーザが買い取り付けるようになると想定している.
本研究ではそうした環境が整えば,センサノードを用いたアプリケーショ
ンがエンドユーザにも普及すると考えている.センサ管理サーバがすべての
センサノードの管理を行っているので,エンドユーザの導入コストが軽減さ
れる.また,アプリケーションをインストールする際にシステムの動作に必
要なデータを取得するセンサノードが家に設置されていなければ,利用者は
センサノードを買い,自分で設置する.設置されたセンサノードのデータは
センサ管理サーバが管理するので,他のアプリケーションでも利用可能であ
る.本研究では以上の様な近未来の環境を想定環境としている.
センサを用いたアプリケーションを正しく動作させるためにはセンサノー
ドの管理を日常的に行う必要がある.センサノードでは電池が切れたり,セ
ンサノード自体が物理的に故障したりと様々なトラブルが起こりうる.
近未来の日常生活においてエンドユーザが家庭内のセンサノードの管
理をする必要性を述べた.しかし家庭内にセンサノードが複数存在する環境
で異常が起きた場合,既存のシステムでは異常が起きたセンサノードをエン
ドユーザが特定することは困難である.なぜなら,センサネットワークでは
様々な問題が起こりうり,それらの問題を解決するためには,問題の切り分
けを行う必要がある.
既存のセンサネットワークを管理するシステムとして,センサネットワー
クの状況を可視化するシステムが開発されている.それらのシステムを用い
ることで,異常が起きているセンサをシステムの管理画面内で見つけること
はエンドユーザでも可能であるが,実際に現場に行き異常の起きているセン
サノードを特定するのは,センサに関する知識がないので困難ある.なぜな
ら,管理画面では一般的に対象のセンサノードの などの情報を取得する
ことが可能であるが.実際に現場に行きセンサノードに書かれている を
もとに特定する必要がある.そして,異常の起きているセンサを発見した際
にもそのセンサにどういった種類の異常が起きているのかの問題の特定がエ
ンドユーザには困難である.
そこで,本研究ではセンサネットワークやデータベースに関する知識のな
いエンドユーザが操作可能な手法で,センサネットワークで起きている問題
を発見出来,センサネットワークの異常の原因を特定できる手法が必要であ
ると考えている.
本項目では,家庭内のセンサノードの異常を発見する手法として,情報を
知りたい対象に近づいていくという動作を用いた )
を提案する.本研究
"
では近づいていくという動作が虫眼鏡を用いて対象の情報を拡大縮小する動
作に似ていることから )
と命名した. )
では,ユーザの持つモバイル
端末をかざす動作を行うことで,家庭内のセンサネットワークで起きている
異常を発見することを可能にする.これにより,センサネットワークやデー
タベースに関する知識を持たずに,センサネットワークの異常を発見できる.
)
では既存の手法では出来なかった,センサネットワークの異常が起きて
いる現場での異常箇所の発見を可能にする.また,本研究ではエンドユーザ
が操作可能な手法を用いる.以下に,本研究の目的を達成するための機能用
件と,その用件を解決するためのアプローチをまとめる.
現実空間での位置関係制約の解消
従来のセンサノード管理システムでは,利用者がセンサノー
ドの問題を発見するのはディスプレイ内の管理画面においてであ
り,現実空間での位置関係を把握しにくいものとなっている.し
かし,本研究で想定しているセンサ管理を行う利用者とはセンサ
ノードやデータベースに関する知識のないエンドユーザなので.
管理画面内で異常の起きているセンサノードを発見してから現場
にいき,異常を起こしているセンサノードを特定するのは手間が
かかる.そして,本研究では環境に多数のセンサノードが埋め込
まれる近未来を想定環境としているので,センサノードのある位
置をエンドユーザが把握しきれなくなると考えている.そこで,
エンドユーザが操作可能な手法で家庭環境内のセンサネットワー
クで起きている異常を発見でき,異常のあるセンサノードを特定
できる必要がある.現実空間での位置関係の制約が解消されれば,
エンドユーザは管理画面を見てセンサノードの を覚えずに,セ
ンサネットワークで起きている問題を発見することが出来る.本
研究で提案する対象に近づくという動作を用いた情報の取得手法
では,ユーザがセンサネットワークで起きている問題をその場で
発見可能になるので,現実空間での位置関係制約の解消が可能に
なる.
複雑な操作の排除
家庭内のセンサネットワークを管理するのは,エンドユーザ
なので複雑な操作を必要としないセンサネットワークの取得を可
能にする必要がある.また,センサネットワークで起こる問題は
様々な要因が考えられるため,センサネットワーク内のどこで異
常が起きているのかの問題の切り分けを行う必要がある.
しかし,家庭内のセンサネットワークの管理をエンドユーザ
は日常的に行う必要があるので,複雑な操作を必要としてはなら
ない.本研究で提案する対象に近づくことでより詳しい情報を表
示するという手法では,特別な操作を行うことなく情報の表示レ
ベルを変更することが出来るので,エンドユーザが手軽にセンサ
ネットワークで起きている問題の切り分けを行うことが可能にな
る.これにより,エンドユーザは複雑な操作をせずに,センサネッ
トワークで起こっている問題を発見することが可能になる.
実空間型情報取得手法
ここでは,はじめに情報取得の概念について整理する.その後,本研究に
おける情報取得手法を定義し,情報取得手法の持つ機能を述べる.ついで,
情報取得手法を つに分類し,本研究で提案する情報取得手法の位置づけで
ある実空間型情報取得手法を説明する.つづけて,具体的なシナリオを挙げ,
実空間型情報取得手法における問題意識を洗い出す.最後に,問題意識から
実空間型情報取得手法の機能要件を導く.
センサネットワークにおける情報取得の概念
本研究における取得対象の情報とはセンサネットワークから得られる情報
である.一般的なセンサネットワークには得られた情報や設置されているセン
サノードに関する情報を管理しているサーバがある.センサネットワークに
参加しているセンサノードは自立分散協調的にデータのやりとりを行い,管
理サーバに情報を送信する.センサネットワークにおける情報取得では,管
理サーバ内のセンサ情報データベースより,ユーザが必要なデータを取得す
ることである.本研究におけるセンサネットークにおける情報取得の概念図
を示す.
情報取得の概念図からわかるように,センサネットワークにおける情報取得
はユーザ,センサネットワーク,センサネットワーク管理サーバ,アプリケー
ション,情報取得手法の つから構成される.複数のセンサノードから成るセ
ンサネットワークより得られた情報がセンサネットワーク管理サーバ内のデー
タベースに蓄積される.センサネットワーク管理サーバ内のデータベースに蓄
積される情報が,ユーザの情報取得を行う対象である.アプリケーションは,
情報取得の際にデータベースサーバ上の情報を取得するソフトウェアである.
ユーザがデータベースの情報を取得するための手段として )4)5. など
のデータベース接続クライアントが挙げられる.コマンドラインで直接 6
文を入力し,情報を取得する行為も本研究ではアプリケーションに分類され
る.そして,情報取得手法は,ユーザとアプリケーションの間にあり,ユーザ
がセンサネットワーク上の情報にアプリケーションから取得を行う際に,手
助けをするインターフェイスである. ベースのセンサ管理システムとし
てあげられる )$# は本研究における情報取得手法である.
ঘ‫ش‬२
७থ१ॿॵॺড‫ش‬ॡ
ੲਾ਄੭ਏ੷
७থ१ॹ‫ॱش‬
ੲਾ਄੭ু১
ॹ‫ॱش‬
७থ१ॿॵॺড‫ش‬ॡଵ৶१‫ش‬ং
図 センサネットワークにおける情報取得の概念図
一般的に,センサネットワークにおける情報取得は以下の手順で行われる.
また,下図には,以下の手順に対応した番号を記載する.
, 情報取得手法によるユーザの条件に合わせたセンサネットワークに関す
る情報の提示
, ユーザによる情報取得対象の選択
, 情報取得手法によるセンサ管理サーバ内のデータベースへの接続
!, 情報取得手法によるデータベース内の情報の取得
情報取得の手順から分かるように,情報取得手法は," ユーザにセンサネッ
トワーク上の情報を提示する機能," ユーザの情報取得対象の選択を受け付
ける機能," センサ管理サーバ内のデータベースへの接続機能.情報取得機
能と つ機能を持つ.そして本研究では,センサネットワークにおける情報
取得手法を,
前述した つの機能を持つ,ユーザがセンサネットワーク上の情報を取得す
る際に,手助けをするインタフェースであると定義する.
情報取得手法の持つ機能
前項で述べたように,情報取得手法はユーザにセンサネットワーク上の情
報を提示する機能,ユーザの情報取得対象の選択を受け付ける機能,センサ
管理サーバ内のデータベースへの接続機能,情報取得機能と つの機能を持っ
ている.以下に情報取得手法の持つ ! つの機能を説明する.
センサネットワーク上の情報を提示する機能
本研究における情報取得手法には,ユーザにセンサネットワー
ク上の情報を提示する機能を持つ必要がある.ユーザに取得する
センサネットワーク上の情報を選択させるために,あらかじめ選
択可能な情報をユーザに知らせる必要がある.センサネットワーク
の情報取得を行う空間にどのようなセンサノードがあるかをユー
ザに提示する必要がある.前述した ベースの情報取得手法
では取得対象の空間の地図上に設置されているセンサの一覧が表
示されユーザに情報の提示を行っている.環境情報センシングシ
ステムである 758 の管理画面である 7(
- を以下に示
す.管理画面より,取得対象のセンサノードを指定して情報を描
画可能である.
図 23+0 でのセンサノードの選択画面例
ユーザの情報取得対象の選択を受け付ける機能
本研究における情報取得手法には,ユーザの情報取得対象の
選択を受け付ける機能を持つ必要がある.ユーザに選択されるこ
とで,取得するセンサネットワークの情報を特定する.具体的に
はセンサノードの やセンサデータの種類などの選択を可能に
する必要がある.また,情報を表示する際に,時刻や期間によっ
て分類を行う.
センサ管理サーバ内のデータベースへの接続機能
本研究における情報取得手法には,ユーザの選択した情報取
得対象の情報を取得し,ユーザに提供する必要ある.センサ管理
サーバ内のデータベースより情報を取得するためには,各センサ
ネットワークを管理している,センサ管理サーバのデータベース
に接続する必要がある.そのためには,情報取得対象のセンサネッ
トワークがどのセンサ管理サーバのどのデータベースに情報を蓄
積しているのかを把握した上で,データベースに接続する必要が
ある.
また,センサネットワークの取得対象のデータベースに接続
した後,ユーザが指定した条件でセンサネットワークの情報を取
得できる必要がある.そのためには前述したユーザの情報取得対
象の選択を受け付ける機能により指定された条件を情報提供を行
う際に反映させる必要がある.
情報取得手法の分類
本研究では,情報取得を行う際に,その取得対象の情報を仮想空間,実空
間のどちらでしたかで情報取得を仮想空間型情報取得と,実空間型情報取得
の つに分類する.すなわち,それぞれの情報取得で利用する情報取得手法
を仮想空間型情報取得手法,実空間型情報取得手法とする.以下に,それぞ
れの情報取得手法について説明する.
仮想空間型情報取得手法
仮想空間内,つまりコンピュータの画面中で取得
対象の情報をユーザがする情報取得を本研究では,仮想空間型情報取得と呼
ぶ.)4)5. を用いたセンサ情報取得アプリケーションや,コマンドラ
インに 6 文を打ちこんでのセンサネットワーク情報取得手法を本研究で
は仮想空間型情報取得手法と呼ぶ.また,次章の関連研究で詳しく述べるが,
既存のセンサネットワーク管理システムは ベースでの管理が主流なの
で,仮想空間型情報取得に分類される.仮想空間型情報取得手法は,情報取得
の特定をコンピュータの画面内で行うので,現実空間との位置関係の対応付
けを行う必要がない.下図に )4)5. の管理画面を示す.)4)5.
では ベースの操作で取得したいセンサノードの情報を取得することが可
能である.また,データベースの管理も画面内で可能である.
実空間型情報取得手法
実空間型情報取得は,現実空間で情報取得対象の特
定を行う情報取得手法である.本研究では,取得したいセンサネットワーク
図 $3
の操作画面例
が設置されている現場に行き,その場で取得対象を特定し,情報を取得する
行為を現実空間型情報取得と呼ぶ.本研究では,実空間型情報取得手法にお
いて対象となるセンサノードが固定されている場合における問題を解決する
手法を提案する.そして,以降での実空間型情報取得手法では対象となるセ
ンサノードが固定されていることを前提とする.そのため,実際にセンサネッ
トワークが存在する現場に行き,センサの を確認し,コマンドラインに
6 文を用いてセンサ管理サーバ内のデータベースから必要な情報を取得す
るという手順を踏めば本研究では,現実空間型情報取得となる.また,実空
間型情報取得手法としてセカイカメラなどが挙げられる.セカイカメラでは
3 情報と共に保存された写真やメッセジージを他人と共有することができ
るシステムである.携帯端末のカメラで取得した映像に保存されている情報
がオーバーレイされ表示される.位置に応じた情報の取得を行えるため,観
光地などでその場ならではの情報発信を行えるメリットがある.
実空間型情報取得は,さらに情報取得対象のセンサノードが固定されてい
るか,または動くものについているかの つに分類出来る.本研究で対象と
している家庭内のセンサネットワークにおいては,設置されるセンサノード
は固定のものが多く,移動しないものがほとんどである.実空間型情報取得
手法では,ユーザのいる環境からユーザに負担をかけることなく情報取得対
象を特定することを可能にする必要がある.また,本研究では家庭内に多数
のセンサノードがちりばめられる環境を想定環境としてあげているので,そ
れらの中から情報取得対象の特定を可能にする必要がある.
図 セカイカメラの利用例
$& 本研究で提案する )
は,実世界型情報取得手法である. )
で
は,センサデータを取得する空間に実際にユーザが行き,その場でセンサネッ
トワークに関する情報を取得できる必要がある.実世界型情報取得手法を用
いることで,センサノードが複数ある環境において,センサネットワークで
起きた問題を発見することが可能になる.次節で,センサネットワークに関
するシナリオを挙げ,問題意識を述べる.
問題意識
本節では,本研究で想定する家庭内のセンサネットワークで起こりえる つのシナリオを述べ,その後,問題意識を洗い出す.
実空間型情報取得手法では,家庭内に設置されているセンサネットワーク
を対象とし,情報取得対象を家庭に設置されている固定のセンサノードとす
る.本研究では,これらの固定されたセンサノードが家庭内に多数設置され
るようになると考えている.第 ,, 項で述べたように,実空間型情報取得
手法では,現実空間においてユーザが情報取得対象を特定できる必要がある.
本研究で想定している家庭内のセンサネットワークにおいてユーザが実空間
型情報取得を行うには,さまざまな問題が発生する.以下に,本研究で想定
する家庭内のセンサネットワークで起こりうるシナリオを挙げ,問題意識を
洗い出す.
シナリオ
' 物理的な制約
君は家庭に電灯管理アプリケーションを導入している.電灯
管理アプリケーションとは家庭内の至る所に設置された照度セン
サが環境光を測定しており,暗くなると自動的に電灯が付き,明
るくなると電気が消えるというアプリケーションである.ある日,
前日まで動いていた電灯管理アプリケーションが,暗くなっても
電気がつかなくなった.居間にあるセンサ管理画面サーバの管理
画面をみると 君の自室に取り付けてあるセンサ 「」
というセンサの電池が切れているようだ.そこで, 君は管理画
面に示された位置を記憶して,自室に行き天井に設置されている
センサノードを探しにいった.しかし, が似ているセンサが
複数あるので,途中で を忘れてしまい,もう一度居間にある
センサ管理サーバの管理画面を見に行かなくてはならなくなった.
君は電源が切れているセンサノードを探すのにとても時間がか
かってしまった.
" " "
ࢭࣥࢧࢿࢵࢺ࣮࣡ࢡࡀ
タ⨨ࡉࢀ࡚࠸ࡿ✵㛫
図 物理的な制約のシナリオ図
シナリオ ' センサノード特定
君は引っ越しをすることになった.家庭内に設置している
センサノードを引っ越し先の家庭でも使いたい 君はセンサノー
ドを回収することにした.センサノードを見ただけではどのアプ
リケーションに使われていたものかを把握できないので,前述の
センサ管理サーバの管理画面を確認しながら回収しなければいけ
ない.センサノードの種類毎に回収しようと考えた 君は,管理
画面をセンサ毎の表示に切り替え探すことにした.しかし,似た
ような のセンサノードが家庭内に多数存在するので,とても
時間がかかってしまった.
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タ⨨ࡉࢀ࡚࠸ࡿ✵㛫
図 ! センサノードの特定シナリオ図
シナリオ '問題の切り分け
ある日,前述した電灯管理アプリケーションが故障してしまっ
た.センサ管理サーバの管理画面をみるとセンサノード間のトポ
ロジがおかしいようだ.そこで, 君はトポロジ図をみて通信経
路が確立されていない箇所のセンサノードを確認することにした.
君は電源の切れているセンサノードが原因なのではないかと考
え,問題の箇所付近のセンサノードの電源を入れ直してはセンサ
管理画面を確認するという作業を行うことにした.しかし,ある
センサノードだけが電源を入れ直しても起動することはなく,ど
うやらセンサノードが物理的に故障していたようだ. 君は新し
いセンサノードを購入して取り付け,電灯管理アプリケーション
を復旧させた.
以上, つのシナリオをもとに実空間型情報取得手法の問題点を洗い出し
た.第 ,, 項で述べたように実空間型情報取得手法では,ユーザが情報取
!
" " "
ࢭࣥࢧࢿࢵࢺ࣮࣡ࢡࡀ
タ⨨ࡉࢀ࡚࠸ࡿ✵㛫
図 " 問題の切り分けシナリオ図
得対象の特定を実空間上で行う.このため,シナリオ のように,情報取得
対象の特定を仮想空間で行う手法では現実空間に特化した特定を行うことが
困難である.また,シナリオ のように,特定の条件で情報取得対象を特定
したい要求がユーザにある場合にも同じ理由で特定を行うことが困難である.
そして,シナリオ であげたようにセンサネットワークでは色々な問題が起
こりうる.家庭内のセンサネットワークにおいても,問題を切り分けて特定
できる必要があるが,仮想空間型情報取得手法では問題の切り分けと情報取
得対象の特定を同時に行うことは困難である.このような問題点を解決する
実空間型情報取得手法を確立すべきである.また,本研究ではエンドユーザ
が実空間型情報取得手法を行うと考えているので,エンドユーザが操作可能
な手法が必要である.
機能要件
前節で述べたように,家庭内のセンサネットワークではさまざまな問題が
生じる可能性がある.本節では,このような環境でも利用可能な実空間型情
報取得手法としての機能要件を前節のシナリオを元に整理する.
物理的な制限の解消
シナリオ において, 君はセンサ管理サーバの管理
画面のある居間と実際に問題の起きている自室間の物理的な制約があり,電
池のきれている 「」のセンサノードの特定に時間がかかってし
"
まった.また,管理画面内で表示された と実際に問題の起きているセン
サのノード間でのひも付けるものが 君の場合は記憶だったので,忘れると
もう一度確認しにいくという手間が発生してしまっている.そして,現場に
は同じような のセンサノードが多数存在するので,特定する為にも一つ
一つのセンサノードの を確認するという手順が必要になる.このように,
家庭内のセンサネットワークにおいて,問題が起きているセンサノードを特
定するためには,ユーザに負担をかけてしまう.そのため,実空間型情報取
得手法では,ユーザと実空間上の情報取得対象との間に物理的な制限を設け
ない手法が求められる.
センサノードの特定
シナリオ において, 君はセンサノードの種類毎に
家庭内に設置されているセンサノードを回収する必要があったが,居間にある
センサ管理サーバの管理画面を見ながら探す必要がありとても時間がかかっ
てしまった.このように,環境内にセンサノードが多数存在する場合,特定
の種類のセンサノードだけを発見する必要があるシーンが起こりうる.また,
アプリケーションをアンインストールする際にも,そのアプリケーションが
利用していたセンサノードを発見する必要がある.そのため,実空間型情報
取得手法では,ユーザはセンサネットワークが設置されている空間にいなが
ら,ユーザの指定した条件にあったセンサノードを発見出来る手法が求めら
れる.
問題の切り分けの実現
シナリオ において, 君はセンサネットワークで
起こっているトポロジの問題を解決するために,周辺のセンサノードの電源
を入れ直すという手法をとった.この時点で 君は電池が切れているセンサ
ノードがあるのではないかと考えている.実際には,電池が切れているセン
サノードがあったのではなく,物理的に故障したセンサノードが原因でトポ
ロジがおかしくなっていた.このように,センサネットワークで起こる問題
では原因を正しく切り分ける必要がある.家庭内のセンサネットワークの管
理を行うのはエンドユーザなので,実空間型情報取得手法では,問題の切り
分けをエンドユーザにも可能な手法で実現する必要がある.
関連研究
既存の手法
既存の実空間型情報取得手法を示し,その手法の特徴や問題点などを説明
する.
"($ 文を利用する手法 一般的に,センサネットワークで得られた情報は
センサ管理サーバ内のデータベースに蓄積されている.そこで,既存の現実
空間型情報取得手法として,一般的にはコマンドライン操作によってデータ
ベースに蓄積されているセンサノードの情報を取得する.ユーザはセンサ管
理サーバにログインした状態で,データベースから情報を取得する際に,6
文という文章を用いる.以下に 6 文の例を示す.
例の 6 文では テーブル から の情報を *.
*#.) で降順に並べたときのうち つの情報を要求している. 6 文を用い
てユーザがセンサネットワークの情報を取得する際に以下の条件が必要とな
る.まず,第一にセンサ管理サーバにコマンドライン操作をし,ログインす
る必要がある.また,取得対象のセンサネットワークの情報がデータベース
内のどのテーブルに格納されているのかといった情報や,データベースの構
造を知る必要がある.そして,6 文を用いて実空間情報取得手法を行う際
には取得対象のセンサノードの を知る必要がある.これらの条件をクリア
することで 6 文を用いた実空間情報取得手法が利用可能である.故に,本
研究で想定しているエンドユーザはセンサネットワークに関する知識やデー
タベースに関する知識がないので,不適である.
)* マーカを用いた手法 下図に 9 マーカの例を示す.9 マーカの認識は,
マーカの周りの黒枠をまず判別した後,その中のパターンの認識を行ってい
る.以上の理由により,9 コードがすべて見える状況で,読み込まなければ
システムに認識されないという欠点がある.私の所属する研究室で 5
#
という研究が行われている.この研究ではセンサノードにつけられた 9 マー
カを読み込むことでセンサノードを特定しそのコードが貼られているセンサ
ノードの情報を表示する.この研究ではセンサノードに関する知識やデータ
ベースに関する知識のないエンドユーザを対象にセンサノードの情報を提供
を可能にしている.また,9 マーカを用いたセンサネットワークのトポロジ
の表示を行う島田らが研究した 8% というシステムがある.8% で
は, 5
#
では実現していない,センサ間のトポロジを表示可能にしてい
る.これらのシステムでは先に挙げた 6 文を用いたデータのリクエスト
を内部的に行っているので,ユーザは 6 文を入力せずに情報を取得可能な
ので,エンドユーザがセンサネットワークの情報を取得する際に適している.
しかし,本研究で想定している,家庭内にセンサノードが多数設置される環
境においては描画対象を認識することが困難なので,不適である.
機能要件をもとにした比較
つの機能要件をもとに,実空間型情報取得手法を比較する.ついで,実
空間型情報取得手法における問題意識の要因を考察する.
T
図 図 4 マーカ
既存の手法
センサノードに貼られた 4
コード
実空間型情報取得手法における つの機能要件をもとに,既存
の実空間型情報取得手法における満足度を示す.
下表の比較結果が示す通り,既存の実空間型情報取得手法には,本研究で
想定しているエンドユーザが利用する上で必要な つの機能要件を満足に満
たす手法はない.エンドユーザは 6 文を用いた情報取得を行うことが困難
であると考えるので,要件を満たしていないとした.また,9 マーカを用
いた手法では,取得対象となるセンサノードを見つけることが出来れば情報
の取得が可能であるので,物理的な制限の解消と,センサノードの特定につ
いては要件の半分を満たすとした.
表 既存手法における機能要件の満足度
既存手法
物理的な制限の解消
センサノードの特定
問題の切り分けの実現
: 文を用いた手法
×
×
×
4
△
△
×
マーカを用いた手法
エンドユーザが家庭内のセンサネットワークにおいて,情報を取得するた
めには以下の機能要件を全て満たす手法である必要がある.以下に,実世界
型情報取得手法を提案している関連研究を述べる.
関連研究
本研究における実空間型情報取得手法である関連研究を紹介し,その手法
の特徴や問題点などを説明する.
"+ : ;4.# らが研究した,)$# はセンサネットワークの
状況を可視化するフレームワークである.下図のようにセンサネットワーク
から得られたデータはゲートウェイノードに集めらた後,ビジュアライゼー
ションノードに送られる.レイヤリング機能を備えているのでビジュアライ
ズする際に,送られてくるデータ毎に表示する内容を変化させることが可能
である.また,ユーザが新たにセンサノードを追加した際にシステムに追加
可能なプラグイン機能を備えている.)$# システムはセンサネットワー
クの情報の表示が管理画面で行われるため,現実空間との物理的な隔たりが
ある.また,センサネットワークのリアルタイムな情報の表示が可能である
が,センサネットワークに問題が起こった場合に表示されないといった問題
がある.
図 */.. の構成図
図 */.. の表示画面例
," 3* らが研究した,5
は 0 の設計,開発,
モニタリング,制御を可能にするシステムである.0 のコネクションをシ
ミュレーションしたり,位置情報によるデータ取得を可能にしている.また,
0 のトポロジを表示することも可能である.このシステムを用いること
で,遠隔地において 0 の通信経路の設計から情報の取得まで可能になる.
しかし,先に挙げた )$# と同じく管理画面内での情報表示を行うため,
現実空間との隔たりがある.以下に 5
の動作画面を示す.
&,-
5
#
は徳田研究室の今枝らが研究したシステムである.セ
ンサノードの情報を 9 技術を用いて画面内にセンサノードの情報を表示す
ることでエンドユーザが取得可能な手法を実現した.ユーザは特別な操作を
することなく,センサノードの情報を取得することが可能である.また,セ
ンサノードが過去に取得した情報を表示するタイムマシーン表示を可能にし
ているので,センサが取り付けられた対象が現在までどのような動きをして
いたかといった情報を取得可能である.しかし, 5
#
で想定している表
図 3. のデータ表示画面 図 3. のトポロジ表示画面
示対象はセンサノードに貼られた 9 マーカをシステムが認識可能な距離に
存在するものであり,環境内に多数のセンサノードが設置された場合,セン
サの認識が困難であるといった問題がある.
図 3)/ のデータ表示画面
$&' 家庭内 ."/ におけるユーザとセンサノード間の距離に基づ
いた情報取得手法の提案
家庭内のセンサネットワークでの実空間型情報取得手法として,携帯端末
を近づける動作を用いた情報取得手法である )
を提案する.はじめに,近
づける動作における情報取得手法についての概要を説明する.ついで,本研
究で提案する近づける動作を用いた情報取得手法である )
についての説
明を行う.最後に, )
における研究課題を述べる.
近づける動作を用いた情報取得手法
実空間型情報取得手法として,対象のセンサノードにモバイル端末を近づ
ける動作を用いて情報に取得する手法を用いた )
を提案する. )
では,
家庭内に設置されたセンサネットワークの情報を携帯端末を通して可視化す
る.そして,取得対象となるセンサノードに携帯端末を近づけるという動作
を行うことで,表示する情報を詳しくする.これによりエンドユーザはセン
サネットワークに関する知識やデータベースの操作を直接することなく,セ
ンサネットワークの情報を取得することが可能になる.
ᑐ㇟ࡢࢭࣥࢧࡲ࡛ࡢ㊥㞳
図 近づける動作を用いた情報取得手法のイメージ
のアプローチ
ユーザが現実空間内に設置されたセンサノードの物理的な位置を把握せず
とも,取得対象となるセンサノードを特定可能にすることで,物理的な位置
の制約のない情報取得を実現する.動作として端末を近づける複雑な動作を
ユーザに課すことなく情報取得取得可能な手法である )
を提案する. )
では,複雑な操作を行うことなく,情報の取得対象の条件を指定可能にする
ことで,センサネットワークの情報を取得するというエンドユーザには敷居
の高い情報取得を実現する.また,表示する粒度を取得対象との距離によっ
て自動的に変化させることにより,エンドユーザが特別な操作を行うことな
く情報の表示モードを切り替えることを可能にする.そして,あらかじめ端
末の操作画面で,表示するセンサノードの種類や,アプリケーション毎の表
示を可能にすることで表示情報のフィルタリング機能を実現する.以下に実
空間型情報取得手法の機能要件に対する )
のアプローチを述べる.
物理的な位置の制約の解消
実空間型情報取得手法ではセンサネットワーク内の情報取得
対象の特定を物理的に行う必要がある.例えば,6 文を用いた
手法では,取得対象となるセンサノードの を現実空間で取得
した後,6 文を書かなくてはならない.また,センサ管理サー
バ内のデータベースの構造を知らないと,目的の情報を取得する
6 文を作成することが出来ない.また,9 マーカを用いた手
法では,9 マーカを認識可能な距離でシステムを動作させる必
要がある.
本研究では,家庭内のセンサネットワークの情報を取得する
際に,その場で携帯端末をかざして取得対象の発見を行う.また,
取得対象の大まかな位置を把握した後,ユーザは取得対象が存在
する方向に携帯端末を近づけてゆく.本手法を用いることにより,
ユーザは家庭内のセンサネットワークがどのようなセンサノード
によって構成しているかといった情報や,管理サーバのデータベー
スの構造を知ることなく,情報の取得を可能にする.そして,そ
れらの動作を全てセンサネットワークが設置されている環境で行
うので,物理的な位置の制約を受けることなく情報取得を可能に
する.
センサノードの特定
実空間型情報取得手法の多くは,操作が複雑であったり,情
報取得対象のセンサノードを物理的に発見し,センサノードの を取得する必要がある.携帯端末を近づける動作を用いた手法で
は,センサノードの特定を行う際に,複雑な操作を必要としない.
また,情報取得対象のセンサノードの を取得する必要もない.
家庭内のセンサネットワークにおける情報取得対象のセンサノー
ドの特定を,端末を近づけるという動作を用いることで大まかな
表示から詳しい表示へと段階的に切り替えて行うことで実現する.
このように,複雑な操作を行わずに情報取得の特定を行うことで
情報取得を可能にする.
問題の切り分け
実空間型情報取得手法では,6 文を用いて取得する情報を
変えることが可能である.また,9 マーカを用いた実空間型情
報取得手法では読み込む対象のセンサノードを切り替えることで,
表示する情報の切り替えを可能にする.端末を近づける動作を用
いた情報取得手法では,端末を近づける動作を用いることでユー
ザからの特別な入力をせずに表示する情報の切り替えを行う.ま
た,この機能により家庭内のセンサネットワークで起こった問題
を切り分けて特定することが可能になる.センサネットワークで
障害が起こった場合,様々な要因が原因として考えられるのでエ
ンドユーザがセンサネットワークで生じた問題を特定することは
困難である.本手法では,操作端末を近づけるという動作を行う
ことで,表示する粒度を変化させセンサネットワークで起こって
いる問題の特定を可能にする.
$& における情報取得手法
)
における情報取得手法での情報の抽象度のモデルと情報の提示ポリ
シーを述べる.
情報の抽象度のモデル
本手法では,エンドユーザが理解可能な表現で情報
を抽象化する必要がある.まず,情報の表示を行う際,携帯端末で取得した
映像に情報をオーバーレイすることで,取得した情報と位置情報のバインド
を行う.また,本手法では情報をエンドユーザが理解しやすい形に変換して
提供するために,センサネットワークの情報を文字で表現する.表示内容の
妥当性は評価を取り,本研究の評価の章で詳しく述べる.
情報の提示ポリシー
本手法では 段階の表示を行うことにより,センサネッ
トワークにおける問題の特定を可能にする.本手法では,センサネットワー
クに起きている問題を発見した際の表示,次いで問題が起きている箇所を詳
しく特定するための対象に近づいた際の表示,さらに対象のセンサノードを
特定した際に詳しい情報の表示がされる.一般的な家庭内の部屋においては,
以上の 段階での表示が適当であると考えている.表示段階の妥当性は評価
を取る.
$& の動作概要
)
の動作概要図を下図に示す.ユーザが携帯端末をかざした位置と向き
によってユーザが携帯端末をかざした位置や向きによってセンサデータリク
エストを変化させる.センサネットワーク管理サーバはユーザの持つ携帯端
末からリクエストがあった条件のデータを,ユーザに送信する.
以上の動作を実現するために )
では,センサノードを設置する際,設置
するセンサノードを空間ないのどの位置に設置したのかをシステムは登録さ
れている必要がある.ユーザがセンサネットワークの情報を取得するタイミ
ングで,センサネットワークに参加しているセンサノードが自律的に各セン
ࢭࣥࢧࢹ࣮ࢱ
ᦠᖏ➃ᮎࢆ࠿ࡊࡍ
ࢭࣥࢧࢹ࣮ࢱࣜࢡ࢚ࢫࢺ
ࢭࣥࢧࢿࢵࢺ࣮࣡ࢡࡀ
タ⨨ࡉࢀ࡚࠸ࡿ✵㛫
ࢭࣥࢧࢿࢵࢺ࣮࣡ࢡ⟶⌮ࢧ࣮ࣂ
ࣜࢡ࢚ࢫࢺࡉࢀࡓࢹ࣮ࢱ
図 ! の動作概要図
サノードの位置関係を算出できることが理想である.しかし,本研究ではセン
サネットワークの位置関係を取得することが目的ではないので,センサノー
ドの位置登録は設置する際にユーザが行うと想定している.近づける動作に
よってユーザが情報を取得する対象を特定するので, )
では表示対象を一
意になるような対象を決める必要がある.そこで,本研究ではセンサノード
を設置する際に,センサノードの と 9 マーカをデータベースに登録す
る.以上のような想定環境において,ユーザはセンサネットワークの情報を
取得するために,携帯端末を近づけるという動作を行う.これにより,ユー
ザはセンサネットワークにおいて必要な情報を取得することが可能になる.
システムの流れ
本節では,本研究で提案する実空間型情報取得手法である )
のシステ
ムの利用の流れ説明する.以下に. )
システムでセンサネットワークの問
題を発見する動作をユーザが行うステップに分けて示す.
ステップ
)
では,まず,ユーザが情報取得を行う際,取得したいセン
サネットワークが設置されている空間に行く.本研究では家庭内
のセンサネットワークを対象としているので,センサネットワー
クが設置されている部屋が対象の空間となる.下図のようにユー
ザはその空間でまず,携帯端末を部屋の中をぐるりとかざすよう
に見る.この動作を行うことで,部屋内のどの辺りに問題が起き
ているのかが発見できる.
!
ᦠᖏ➃ᮎࢆ࠿ࡊࡍ
ࢭࣥࢧࢿࢵࢺ࣮࣡ࢡࡀ
タ⨨ࡉࢀ࡚࠸ࡿ✵㛫
図 " システムの利用の流れ ステップ かざす動作を行うことで,ユーザの持つ携帯端末にセンサネッ
トワークに異常が起きている箇所付近に大まかな表示がされる.
下図は部屋の隅に設置されているセンサノードに問題が起きてい
ることを表している図である.以上により,大まかな問題の発見
を可能にする.
ステップ ステップ で得られた問題が起きている箇所に下図のように
近づいていく.ユーザはこのとき携帯端末をかざしながら移動す
る.この動作により,ユーザの取得する情報を詳しいものへと変
化させる.
ステップ "
電池の残量
Warning
3%
図 システムの利用の流れ 携帯端末に表示される情報がさらに細かい情報に切り替わる.
下図は電源がなくなっているセンサノードが携帯端末の先にある
ことを示している.
ステップ ユーザはステップ で得られた情報を元にさらに問題のセン
サノードに向かって進んでいく.ユーザは取得対象となるセンサ
ノードを発見し,問題の原因となる情報を取得する.
ステップ ユーザは携帯端末越しにセンサノードの問題の原因となる情
報を取得する.下図の例はセンサノードの電源が残り少ないこと
を示している.
ᑐ㇟࡟㏆࡙࠸࡚
ᦠᖏ➃ᮎࢆ࠿ࡊࡍ
図 システムの利用の流れ 近づける動作における要件
)
では,近づける動作によって情報を取得する対象を特定するため, )
に最適な近づける動作を設計する必要がある.本節では,本研究で提案する
実空間型情報取得手法の近づける動作における要件を整理する.
本研究で提案する携帯端末を近づける動作を用いる情報取得手法での近づ
0 情報取得対象を特定可能であること,0 近づく
動作だけで,問題の発見を可能であること,0 問題の特定が可能であること
ける動作の要件としては,
が挙げられる.以下で,これら つの機能要件について述べる.
情報取得対象の特定
本手法で用いる近づける動作は,情報の取得対象を特定でき
る必要がある.本研究において,家庭内のセンサネットワークの
情報を取得するのはセンサネットワークやデータベースに関する
知識のないエンドユーザである.そのため,センサネットワーク
において問題が生じた場合,エンドユーザがセンサネットワーク
電池の残量
電池切れの
3%
センサがあります
図 システムの利用の流れ において起きている問題を特定する必要がある.そこで,近づけ
る動作を行う前段階として携帯端末を空間でかざすことで,セン
サネットワークにおいて起きている問題の箇所を大まかに発見す
ることが可能になる.
近づく動作による問題の発見
本研究で提案する近づける動作では,表示する情報を情報取得
対象と携帯端末との距離に応じて変化させるので,ユーザが近づ
くことにより携帯端末に表示される情報も変化する.またこの近
づく動作による情報の表示の切り替えを行うことで,エンドユー
ザが特別な操作をすることなく取得する情報の粒度を変化させる
ことが可能になる.上記のシステムの概念図で示したが,本手法
ではユーザの持つ携帯端末と取得対象であるセンサノード間の距
離に応じた情報の表示を行う.以上の動作を行うことにより,エ
ンドユーザでも最終的には問題の起きているセンサノードを一意
に特定可能になる.
問題の特定
ྲྀᚓᑐ㇟ࡢࢭࣥࢧࣀ࣮ࢻࢆ
Ⓨぢࡋ㸪᝟ሗࡢྲྀᚓࢆ⾜࠺
図 システムの利用の流れ 本手法で用いる近づける動作により,エンドユーザは問題の
起きているセンサノードを特定可能であることを述べた.実際に
センサネットワークにおいて起きている問題を解決するためには
特定のセンサノードで起きている問題をエンドユーザが知る必要
がある.そこで,本手法ではセンサネットワークにおいて問題の
起きているセンサノードを一意に特定した場合,そのセンサノー
ドに関する情報を詳細に表示する.携帯端末を近づける動作を行
う上で,上記の機能によりエンドユーザは携帯端末を近づけると
いう動作を行うだけで,センサネットワークにおいて起こってい
る問題の発見と問題の原因を取得することが可能になる.
$& の設計
端末を近づける動作を用いた情報アクセス手法である )
を設計する.は
じめに, )
におけるセンサノードの設置場所や屋内におけるユーザ位置情
報の取得について述べる.ついで,近づける動作の設計を行い,近づける動
作に対するフィードバックの設計, )
システムのデータベースの設計を行
電池の残量
3%
図 システムの利用の流れ う.その後,用者側,管理者側アプリケーションによって実現される )
の
システム概要を説明する.最後に,利用者側,管理者側アプリケーションの
設計をソフトウェア・ハードウェアの双方について述べる.
センサノードの設置
)
を実現するためにはセンサノードの位置情報と,設置するセンサノー
ドの特定を一意に行う必要がある.本研究ではセンサノードを設置した後の
センサネットワークの管理を主眼においているので,以下の情報の登録はセ
ンサネットワークの管理者が行う.
位置情報
)
では,情報の表示を行うために,情報の取得対象となるセ
ンサノードの位置情報をシステムが知る必要がある.将来的には位置の登録
を人が行わなくとも,センサノード間による電波強度を用いた位置計測やス
マートハウスなどの研究の一部としてセンサノードの位置関係は自動的に登
録されることが予想される.以上のことより,本研究ではセンサノードの位
置情報の登録をユーザが登録作業をすることなく登録が完了するようになる
と考える.本実装では予めセンサノードの位置情報はセンサ管理サーバに登
録されている想定である.
)* マーカーとの対応付け )
で情報を表示する際にセンサノードを一
意に特定する為に,今回用いるセンサノードに下図のように 9 マーカとよ
ばれるマーカが印刷された紙を貼る.センサネットワークの管理者はセンサ
ノードの と 9 マーカの関連付けを行いセンサ管理サーバに登録する.以
下の例の場合,センサノードの が<,:<でマーカ が<<の様に
センサ管理サーバに登録される.
図 4 マーカをセンサノードに取り付けたイメージ
近づける動作の設計
)
では,近づける動作によって情報の取得対象を特定するため, )
に最適な近づける動作を設計する必要がある.近づける動作における要件を
もとに最適な,端末を近づける動作の設計を行う.
近づける動作
機能要件を満たす端末を近づける動作として,ユーザの持つ
携帯端末を情報の取得対象であるセンサノードに近づけるという動作を行う.
ユーザの持つ携帯端末とセンサノード間の距離の変化に応じて,表示する情
報を変化させる.下図に近づける動作による携帯端末の画面遷移イメージを
示す.以下で本節で提案した近づける動作が第 !, 節で述べた機能要件を満
たすことを示す.
情報取得対象の特定
ࢭࣥࢧࣀ࣮ࢻ
ᑐ㇟ࡢࢭࣥࢧࡲ࡛ࡢ㊥㞳
図 近づける動作のイメージ
本手法では,ユーザの持つ携帯端末と情報取得対象となるセ
ンサノード間の距離に応じて,携帯端末に表示される情報を変化
させる.下図で示したように対象となるセンサノードまでの距離
が離れている場合は表示される内容も大まかなものとなる.そし
て,徐々にセンサノードへユーザが近づいて行くと表示される情
報もより詳細なものへ変化する.最終的にはセンサノードに貼ら
れた 9 マーカを認識できる距離まで近づいた場合,対象のセン
サノードに関する詳しい情報が取得可能になる.以上の理由から
ユーザは携帯端末の画面を見ながら移動するだけで,情報取得対
象の特定を行うことが可能になる.
近づく動作による問題の発見
本手法を用いることにより,ユーザは大まかな問題の発見を
行い,上記で述べた近づく動作を行うことにより詳細な問題の状
況を取得することが可能である.ユーザとセンサノード間の距離
によって表示する内容を変化させるので,ユーザは特別な操作を
することなく,センサネットワークで起きている問題を切り分け
て特定することが可能になる.本研究ではユーザの部屋内での位
置情報取得における精度の制限により,表示の切り替えの段階を
段階と想定している.表示する段階の妥当性については評価の
章で述べる.
問題の特定
本研究で提案した手法ではあらかじめセンサノードに 9 マー
カを貼ってある想定なので,近づく動作を行うことで最終的に情
報取得対象のセンサノードを一意に特定することが可能である.
センサネットワークにおいて,起こりうる問題の原因は多岐にわ
たることを前述し,それらの問題の原因を特定することの難しさ
を述べた.
.本手法では近づく動作により一意に特定したセンサ
ノードに関する情報をエンドユーザがわかる形として,画面内に
情報を描画する.
情報表示の設計
本研究で提案する携帯端末を近づける動作を用いた情報取得手法である
)
は,携帯端末を近づけるという動作をすることで家庭内のセンサネット
ワークの情報を取得する.また本研究で提案する携帯端末を近づける実空間
型情報取得手法の機能要件としてユーザが特別な操作をすることなく表示す
る情報の粒度を変更する必要があることを述べた.本節では, )
の機能で
ある携帯端末と情報の取得対象との距離に応じた情報の表示きりかえ機能に
ついて述べる.前節で述べたように )
で用いる実空間型情報取得手法で
は情報取得対象に近づくことでより詳細な情報を表示する.
Warning
電池の残量
電池切れの
3%
センサがあります
センサノード
対象のセンサまでの距離
図 近づける動作による画面遷イメージ
情報の表示段階
本手法では屋内で取得可能な手法として考えられるレーザー
レンジファインダーを用いた位置情報取得手法を用いることを前節で述べた.
また,本研究で想定する環境において,取得対象であるセンサノードの位置
情報はあらかじめ登録されており,ユーザの持つ携帯端末に搭載されている
電子コンパスを用いて携帯端末の向きを取得できることも述べた.以下に,
)
における情報の表示段階を三段階に分けて述べる.
大まかな情報の表示
ユーザは家庭内のセンサネットワークが設置されている環境
において,携帯端末をかざすことでセンサネットワークの状況を
取得する.ユーザの持つ携帯端末と情報取得対象のセンサノード
の距離が離れている場合,大まかな表示を行う.この表示を行う
ことにより,センサネットワークにおいて問題が起こった場合,
ユーザに問題が起こっていることを知らせることが可能になる.
.
詳細な情報の表示
)
では携帯端末を近づける動作を行うことで表示する情報
の切り替えを自動的に行う.大まかな表示によりセンサネットワー
クに問題が起きていることを認識した後,ユーザはその方向に近
づいて行く.本手法ではユーザの持つ携帯端末と情報取得対象の
センサノード間の距離が大まかな表示を行う場合よりも近い場合
に詳細な情報の表示を行う.この表示を行うことにより,ユーザ
はセンサネットワークに起こっている問題の詳細な情報を得るこ
とが可能になる.
取得対象のセンサノードに関する情報の表示
本研究では各センサノードに一意となる 9 マーカが予め貼
られている想定である.ユーザは大まかな表示と詳細な情報の表
示を行いながら,携帯端末を近づける動作を行うことで情報取得
対象となるセンサノードを探す.そして,9 マーカが認識でき
る程,携帯端末とセンサノードが近づいた時に,取得対象のセン
サノードに関する情報の表示を行う.その際,表示する情報とし
ては電池の残量や送信しているデータの種類といったセンサノー
ド固有の情報を表示する.この表示を行うことにより,ユーザは
特定のセンサノードの情報を取得することが可能になる.
$& のシステム概要
本節では, )
のシステム構成について説明を行う. )
システムは大
きく分けて環境側のアプリケーションとユーザ側のアプリケーションの二つ
に分けられる. )
によって情報取得を行うには,あらかじめ家庭内ネット
ワークの管理者が設置するセンサノードに固有の 9 マーカを貼り,センサ
ノード管理サーバに設置する位置情報と共に登録する必要がある.また,本
手法を実現するために,レーザーレンジファインダーを用いた位置情報取得
!
手法を用いるためセンサノードを設置する環境に位置情報取得システムを構
築する必要がある.このため, )
で提案する情報取得手法を実現するため
に,環境側に設置するアプリケーションを構築する必要がある.
また,ユーザの持つ携帯端末で情報の表示を )
では行うので,ユーザ
側のアプリケーションを構築する必要がある.ユーザ側のアプリケーション
は,環境側のアプリケーションで得られた情報を元にした情報の表示を行う.
環境側アプリケーションの設計概要
本節では, )
における環境側アプリケーションの構成をソフトウェア,
ハードウェア双方について述べる.ソフトウェア構成では, )
を構成する
モジュール群を挙げ,各モジュール群の機能を述べる.ハードウェア構成で
は, )
で利用する機器を挙げ,各機器の機能を述べる.
ソフトウェア構成
)
における環境側アプリケーションは,大きく分けて
センサ情報管理層,センサデータ提供層,ユーザ位置情報取得層から構成さ
れる.これらは複数のモジュールとソフトウェアコンポーネントから構成さ
れる.下図に )
における環境側アプリケーションのソフトウェア構成図
を示す.また,以下にそれぞれの層の概要を述べる.
センサ情報管理層
センサ情報管理層は,環境に設置されたセンサノードに関する
情報を管理する.センサ情報管理層は,センサノード管理モジュー
ル,センサデータ管理モジュールが含まれる.センサノード管理
モジュールでは,センサノードの位置情報や,センサノードに貼
られた 9 コードとセンサノードの とのバインド情報を管理
する.また,センサデータ管理モジュールではセンサネットワー
クから得られるセンサデータをデータベースに保存する.
センサデータ提供層
センサデータ提供層は,センサ管理サーバ内のデータベース
に保存された情報を,ユーザ側のアプリケーションに送信する.
センサデータ提供層には,データ取得要求管理モジュール,情報
提供モジュールとデータベース接続モジュールが含まれる.デー
タ取得要求管理モジュールでは,ユーザ側のアプリケーションよ
り,リクエストのあった条件でのデータ取得を扱う.
ユーザ位置情報取得層
ユーザ位置情報取得層は, )
システムを利用しているユー
ザの屋内における位置情報を取得する.ユーザ位置情報取得層に
"
は,距離データ取得モジュールと位置情報管理モジュールが含ま
れる.距離データ取得モジュールでは,予め環境に設置された !
台のレーザーレンジファインダーより距離データを取得する.位
置情報管理モジュールでは,距離データ取得モジュールより得ら
れたデータを用いてユーザの屋内における位置情報を算出する.
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⎔ቃ࡟タ⨨ࡉࢀࡓࢭࣥࢧ
図 ! 環境側アプリケーションのソフトウェア構成図
ハードウェア構成
)
における環境側アプリケーションに必要なデバイス
は大きく分けて, つである.まず,センサノードに関する情報や,センサ
データを保存するセンサデータ管理サーバがある.また本研究では,センサ
データ管理サーバ上で,ユーザ位置情報取得層のモジュールを起動する.そし
て,本研究におけるユーザの屋内位置情報取得に必要なレーザーレンジファ
インダーを部屋の ! 隅に設置する.レーザーレンジファインダーは照射対象
までの距離を取得可能なデバイスである.下図に )
における環境側アプ
リケーションのハードウェア構成を示す.
࣮ࣞࢨࣞࣥࢪࣇ࢓࢖ࣥࢲ࣮
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ࢹ࣮ࢱ࣮࣋ࢫ
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図 " 環境側アプリケーションのハードウェア構成図
$& におけるユーザ側アプリケーションの設計概要
本節では, )
におけるユーザ側アプリケーションのソフトウェア構成に
ついて述べる.ソフトウェア構成では, )
を構成するモジュール群を挙げ,
各モジュール群の機能を述べる.ユーザ側アプリケーションは,利用の操作
のしやすさを目標として設計を行った.
ソフトウェア構成
)
におけるユーザ側アプリケーションは,大きく分け
てインタフェース層と情報取得層で構成される.これらは複数のモジュール
とソフトウェアコンポーネントから構成される.下図に )
におけるユー
ザ側アプリケーションのソフトウェア構成図を示す.また以下にそれぞれの
層の概要を述べる.
インタフェース層
インタフェース層は,ユーザの近づく動作に応じた情報の表示
を行う.インターフェイス層は,ユーザ位置情報取得モジュール,
ユーザ向き情報取得モジュール,情報表示モジュールから構成さ
れる.ユーザ位置情報取得モジュールは環境に設置されたセンサ
管理サーバから,携帯端末を持つユーザの屋内における位置情報
を取得する.ユーザ向き情報取得モジュールは,携帯端末に内蔵
された電子コンパスを用いてユーザの持つ携帯端末の向きを取得
する.インターフェイス層で得られたユーザの持つ携帯端末の情
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ࢭࣥࢧࢹ࣮ࢱྲྀᚓࣔࢪ࣮ࣗࣝ
㟁Ꮚࢥࣥࣃࢫ
図 ユーザ側アプリケーションのソフトウェア構成図
報を情報取得層に与え,センサデータを取得する.取得された情
報を情報表示モジュールにおいて,表示する.情報表示モジュー
ルはユーザの位置情報と向き情報に応じた情報の表示や,表示す
る情報の切り替えも自動的に行う.
情報取得層
情報取得層は主に,インターフェイスより要求があった際に
指定された条件のセンサデータをセンサ管理サーバより取得する,
センサ情報取得モジュールより成る.情報を取得する際にはセンサ
情報取得モジュールに対して携帯端末の向きや位置といったユー
ザの情報を与えることにより必要な情報を取得する.
ハードウェア構成
)
におけるユーザ側アプリケーションに必要なデバ
イスは携帯端末のみである.本研究で想定している携帯端末には電子コンパ
スが内蔵されている.携帯端末に内蔵されている電子コンパスを用いること
により,携帯端末を持つユーザの向いている向きが取得可能になる.下図に
)
におけるユーザ側アプリケーションのハードウェア構成を示す.
$& の実装
近づく動作を用いた実空間型情報取得手法である )
のプロトタイプ実
装について述べる.まず環境側アプリケーションにおけるハードウェア,ソ
フトウェア双方についての実装を述べる.最後に,ユーザ側アプリケーショ
ンにおけるソフトウェア実装について述べる.
ࣔࣂ࢖ࣝ➃ᮎ
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ࢹ࣮ࢱ࣮࣋ࢫ
図 ユーザ側アプリケーションのハードウェア構成図
環境側アプリケーション
本節では, )
における環境側アプリケーションの実装について述べる.
まず, )
の環境側アプリケーションに用いるハードウェアについて述べる.
ついで, )
の環境側アプリケーションのソフトウェアについて述べる.
ハードウェア
)
の環境側アプリケーションで用いるハードウェアについ
て,機器別に述べる.
レーザーレンジファインダー
ユーザの位置情報を取得するためにスキャナ
式レンジセンサである, 7= の 9!> を用いる.9
!> は ! 度の角度において約 . までの距離情報を取得可能なセ
ンサである. )
では 9!> を部屋の四隅に設置し,ユーザの
位置情報を算出する. 図 4*&5&*
"&" 本研究では,環境に設置されるセンサノードとして #;$
社の
)* を用いた.温度センサ,照度センサそして加速度センサが内蔵され
ており,外部入力ピンに他のセンサを取り付けることも可能である.また
)* は無線通信機能を備えており,各センサで取得したデータを複数の
ノード間でマルチホップしながら収集することが可能である.本研究では一
つのセンサノードが複数のアプリケーションに対してデータの提供を行うこ
とを想定しているので, )* を用いた.
図 %
ソフトウェアの実装
センサ情報管理層
1センサノード管理モジュール
センサノード管理モジュールでは,環境に設置されたセンサノードの場
所と を関連づけて管理している.センサノードに関する情報は予め
登録されていることを想定している.また,センサノードの とセン
サノードに貼られる 9 マーカの解決を行う.
1センサデータ受信モジュール
環境に設置されたセンサネットワークからセンサデータを取得する.
得られたセンサデータをセンサデータ送信モジュールに渡す.
1センサデータ送信モジュール
センサデータ受信モジュールより得られたセンサデータをセンサデータ
ベースに登録する. )
では 分毎にセンサデータをまとめてセンサ
データベースに登録している.
センサデータ提供層
1データ取得要求管理モジュール
ユーザ側アプリケーションより要求のあったタイミングでセンサデータ
を取得する.
1データベース接続モジュール
データ取得要求管理モジュールより要求のあったクエリを生成しセンサ
データベースサーバに問い合わせる.
1情報提供モジュール
データベース接続モジュールより得られたデータをユーザ側アプリケー
ションに対して送信を行う.
ユーザ位置情報取得層
1位置情報管理モジュール
本研究では 段階の表示を行うので,部屋を + 分割した精度で位置を
取得できれば十分である.そこで,以下のように部屋を分割し,レー
ザーレンジファインダーを部屋の四隅に設置する.本システムではレー
ザーレンジファインダーより得られる距離データの増減からユーザが ∼+ のどの位置にいるかを判別する.
85*/;8*
図 4*&5&* の配置
1距離データ取得モジュール
環境に設置されたレーザーレンジファインダーより距離データが常に
取得している.今回用いた,9!> では ! 度の視野角を
個に区切って取得している.以下にレーザーレンジファインダーよ
り得られる距離データの例を示す.本システムでは + 度の視野角を得
れば十分なので,得られたデータから + 度にトリミングして利用して
いる.
' ' ' ' ! ' ' ' ' ' + ' ' ' ' ' ! ' ' ' ' ' + ' '
' ' ' ! ' ' ' ' ' + ' '
' ' ' ! ' ' ' ' ' + ' !
' ! ' ! ' ! ' !! !' ! !' ! ' ! ' ! '
!+ ' ' ' ' ' ! ' ' '
!' ' + !+' !+' !+' ' ' ! !'
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∼中略∼
+
!
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!'
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!!'
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+
+
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' +! ' + ' + '
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!'
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!
+
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!'
!'
!'
!'
!'
!!'
!'
ユーザ側アプリケーション
本節では, )
におけるユーザ側アプリケーションの実装について述べ
る.まず, )
のユーザ側アプリケーションに用いるハードウェアについて
述べる.ついで, )
のユーザ側アプリケーションのソフトウェアについて
述べる.
ハードウェア
)
の利用者側アプリケーションでは,ユーザの操作端末と
して ))$
の 34
! 以下,34
を用いる.34
は,向き情報取得デ
バイスとして,電子コンパスを内蔵しているまた,カメラデバイスとディス
プレイを備えているので,本研究でユーザが操作する携帯端末として適して
いる.以下に )
のユーザ側アプリケーションで利用する 34
を示す.
ソフトウェアの実装
1向き情報取得モジュール
向き情報取得モジュールでは,34
に搭載されている電子コンパス
図 #$ を利用する.電子コンパスより得られた向き情報をユーザの持つ携帯
端末の向いている方向として利用する.得られた向き情報を,インター
フェイス層の表示情報管理モジュールの問い合わせが来たらデータを
送る.
1位置情報取得モジュールモジュール
位置情報取得モジュールでは,環境側のソフトウェアで得られる屋内に
おけるユーザの位置を取得する. )
では,屋内を + 分割に分けた番
号が距離情報として得られる.得られた位置情報は,インターフェイス
層の表示情報管理モジュールの問い合わせが来たらデータを送る.
1センサデータ取得モジュール
センサデータ取得モジュールでは,センサデータベースに蓄積されてい
るセンサデータを取得する.その際,インターフェイス層の表示情報管
理モジュールからの要求をクエリとした 6 文を発行しデータベース
より情報を取得する.
1表示情報管理モジュール
表示情報管理モジュールは,ユーザの持つ携帯端末に表示する情報を
管理するモジュールである.向き情報取得モジュールと位置情報取得
モジュールに対して一秒毎にデータのリクエストを行う.各モジュール
から得られたデータを元に携帯端末に表示する情報を決定する.更に,
センサデータ取得モジュールに対して,表示する内容の条件を送りデー
タを取得する.以上により,表示する際に必要なデータが得られ,情報
表示モジュールに表示内容を送る.
1情報表示モジュール
情報表示モジュールでは,表示情報管理モジュールから得られる情報を
元に情報の表示を行う.携帯端末から得られる映像に情報をオーバーレ
イすることで情報の提供を行う.
$& の評価
端末を近づける動作を用いた実空間型情報取得手法である )
を評価す
る, 本手法の評価を行うために,複数の被験者による評価実験を実施した.各
評価実験の概要を説明し,実験の結果を示し,最後に実験から得られた結果
をもとに )
について考察を行う.
評価実験の概要
)
実際に利用者に利用してもらい, )
に対する評価を得る実験につ
いてのを説明を行う.はじめに,実験環境や被験者,実験手順,アンケート
項目について述べる.ついで,実験結果を示し,本評価実験における考察を
述べる.
実験環境
本実験は,τ ! の徳田研究室の実験スペースで行った.τ ! は
ユビキタス空間を実現するためのスペースである.実験場所ではτ ! にセ
ンサノードを 個設置した.設置するセンサノードは )* を用いた.
)* は照度,温度,加速度が取得できるセンサノードである.設置され
た )* には予め 9 マーカが貼られ,位置情報がセンサ管理サーバに登
録されている.設置されたセンサノードから得られるデータを元に様々なシ
ステムを設置可能である.
図 τ 実験スペース
!
屋内におけるユーザ位置情報の取得
本手法を実現するためにはユーザの屋
内における位置情報を取得する必要がある.既存の位置情報取得手法として
3 や 0? の電波強度を用いた手法が挙げられる.しかし,3 を用いた
位置情報取得手法では屋内に置ける位置の認識率に問題があるので本研究の
想定している家庭での利用には不適である.また,0? の電波強度を用いた
手法も位置情報を取得する際の手段として考えられるが,やはり,精度の問
題で研究には不適である.以下にそれぞれの手法を用いた際の位置情報取得
精度の実験結果を表に示す.測定はτ ! で行い,各手法を 回行い位置情
報を取得した.結果をみると,屋内環境において,実際の位置情報取得位置
とかなりの誤差が生じるといえる.
表 ! 既存の位置情報取得手法の精度
*#
?
の電波強度を用いた手法
!
"
"
"
本手法を実現するためには部屋のどの位置にユーザがいるかという粒度で
位置情報が必要なので,既存の屋内位置情報取得手法では困難である.その
ため,本研究では高精度な位置情報サービスが提供される環境の実現を想定
し,ユーザの位置情報を取得するために以下の手法を用いる.今回,本研究
ではレーザーレンジファインダーと呼ばれる赤外線レーザーを発振して,目
標物との距離を取得するデバイスを環境に設置する.レーザーレンジファイ
ンダーから得られる距離情報からユーザが部屋内のどの位置にいるかを算出
する.
被験者
表 , に本実験における被験者の性別分布を示す.本実験の被験者
は男性 人,女性 人,合計 人である.男性の被験者が女性の被験者に
比べ多かった.大学の知人を中心に実験を行ってもらったので 代, 代
のみの分布となった.
表 " 実験 被験者の性別分布
被験者の性別 被験者数 人
男性
女性
合計
"
平均誤差 表 実験 被験者の年代分布
被験者の年代 被験者数 人
実験手順
代
代
合計
本評価実験では,部屋内に環境光が暗くなったら電灯がつく電灯
管理システムが設置されている想定で以下の実験を行ってもらった.被験者
には電灯管理システムが正しく動作していない原因を特定するという実験を
行ってもらった.既存の手法である仮想空間型情報取得手法を用いたアプリ
ケーションと本研究で提案している, )
を用いた場合で行ってもらい比較
した.最後に評価アンケートに記入してもらった.下図に実際に用いた評価
用紙を示す.
以下に実験手順を示す.
, 仮想空間型情報取得手法を用いたアプリケーションを用いて問題が起き
ているセンサノードを特定させる
, その際要した時間を計測する
, )
の利用方法を説明する
!, )
を用いて問題が起きているセンサノードを特定させる
, 発見までに要した時間を計測する
, アンケートに記入させる
アンケート項目
設問
評価用紙に記載した各設問の意図を以下に述べる.
9 を用いた情報提供はわかりやすかった
設問 情報の表示段階は三段階で十分だと思った
設問 システムを操作する際に負担を感じた
設問 日常的なセンサ管理を行う際に有用だと思った
設問 対象が多数存在する場合有用だと思った
設問 異常の起こっているセンサを特定することが容易だった
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ࡈ༠ຊ࠶ࡾࡀ࡜࠺ࡈࡊ࠸ࡲࡋࡓ
図 の評価に用いた評価用紙
!
設問 は,情報の提供方法として本研究では 9 を持ちいているが有用か
を問う.設問 は,情報の表示段階が三段階で十分であったかを問う.設問
は, )
を使用する際に負担にならないかを問う.設問 ! は, )
は日
常的に使うことを想定しているので,日常的な使用に耐えうるか問う.設問
は,本実験では 個のセンサノードしか集めることが出来なかったが,更
に多数存在する環境を本研究では想定しているので問う.設問 は,既存の
手法と比べて )
が容易に操作可能かを問う.設問 ∼ は, 段階評価で
の選択式である.
評価結果
以下に評価実験における評価結果を表 ,∼, に示す. に近い
数値ほど全くそう思わない, に近い数値ほどその通りだと思うという回答
である.
表 設問 「4 を用いた情報提供はわかりやすかった」の回答結果
!
"
平均
回答者数 人
!
表 設問 「情報の表示段階は三段階で十分だと思った」の回答結果
!
"
平均
回答者数 人
!
表 設問 「システムを操作する際に負担を感じた」の回答結果
!
"
平均
回答者数 人
アンケートで得られた感想
¯ コンパスの精度がもっと良ければよかった
¯ 携帯端末のカメラを通して情報を取得することが当たり前になれば説
得力があると思う
¯ センサノードが多数存在する環境においてはとても有用だと思った
¯ コンパスの精度がもっと良ければ,表示を二段階にしても十分でないか
¯ 一意に特定した際に表示する内容がもっと詳しい方がいい
!
表 設問 「日常的なセンサ管理を行う際に有用だと思った」の回答結果
!
"
平均
回答者数 人
"
表 設問 「対象が多数存在する場合有用だと思った」の回答結果
!
"
平均
回答者数 人
"
¯ プログラムの処理速度の問題で表示がおいついていない場面があった
¯ 一カ所にたくさんセンサが設置されている時に管理するのが楽になり
そう
¯ 表示段階をユーザの理解度によって変更できたらいいと思った
¯ 携帯端末をずっともっていないといけないので,手が疲れた
¯ マーカを使う以上見えないところに設置されたセンサノードの描画は
どうするのか
¯ 近づいたら情報が切り替わる手法はセンサネットワークに限らず他のシ
ナリオでも有効だと思った.
異常の起きているセンサノードの特定に要した時間 下表にユーザが部屋に
入ってから異常のあるセンサノードを特定するまでに要した時間を示す.既
存のシステムとは管理画面内にセンサネットワークの情報が表示される仮想
空間型情報取得手法を持ちたシステムである.
考察
設問 の結果として,ユーザに 9 を用いて情報を提供することは有用で
あると言える.感想で得られた中にカメラを通して情報を取得するという動
作が一般的になればより説得力があると思うというものがあったが,近年の
表 設問 「異常の起こっているセンサを特定することが容易だった」の
回答結果
回答者数 人
!
"
平均
!
表 異常の起きているセンサノードの特定に要した時間
被験者
!
"
平均
既存のシステム 秒
"
"
"
!
秒
9 技術の普及を考えたときに近い将来においては 9 を用いる取得取得手
法はより一般的になると考えられる.距離に応じて情報が切り替わるのが楽
しいという意見もあったので,9 を用いて現実空間にオーバーレイした描
画を行うことは情報を理解するという点においても有用であると言える.設
問 の結果として,情報を 段階での情報表示について問うたがスコアを見
る限り 段階で十分であると言える.しかし,感想をみると二段階で十分で
ないかという意見がいくつか見られたので検討する必要がある.また,本研
究で提案した実空間型情報取得手法である )
はエンドユーザが日常的に
使用することを想定としている.設問 では )
の操作負荷について問う
たが,おおむね負荷は少ないと言える.しかし情報を取得する間,ユーザは
携帯端末をかざすという動作を行わないといけないので,手が疲れるという
意見が感想にあった.設問 ! において, )
を日常的に利用する際に有用か
を問うた.本システムで対象となるエンドユーザが日常的に利用することを
想定していうるので,今回の結果は )
が日常的に利用することの有用性
を示せたと言える.設問 において,情報の取得対象が多数存在する場合に
おいて問うた.本実験は対象となるセンサノードが 個と決して多くはない
環境で行った背景があるので,この設問では多数あると考えたときに有用か
を問うた.自動的に表示される情報を切り替えることが可能なので,多数存
在する環境においては有用だという感想を得た.また,この設問は画面上で
情報を取得する評価用のアプリケーションと比較するために行った.設問 において,異常の起きているセンサノードを特定することが容易であったか
問うた.既存の手法を用いたシステムと比較してもらったが,あまり良い結
果が得られたとは言えない.設問 で得られたようにより対象となるセンサ
ノードの数が多い場合においてはさらにスコアが高くなると予想できる.
また,既存の手法を用いたシステムと, )
を用いた場合のいずれもユー
ザが問題のあるセンサノードを発見するまでに要した時間を計測した.結果
は表に示した通りだが,平均時間をみると )
を持ちいた場合の方が 秒
ほど多く時間がかかっていることがわかる.この結果についても設問 で得
られたようにより多数存在する場合においては,既存の手法を用いた場合で
はユーザがセンサノードの を確認していくという作業が増えることが予
想される.また,本評価実験で持ちいた )
が利用している電子コンパスの
誤差があり,ユーザが情報を取得する際に迷ってしまったという経緯がある.
!
結論
実際に,家庭内においてエンドユーザが )
を利用する際に,本研究で
の )
の設計,実装では十分ではない.本節では )
の設計@実装におけ
る問題点と解決策を述べ,今後の展望とする.本研究で提案した )
の実装
では情報の表示を 段階とした.しかし,得られた評価によると, 段階で
良いという意見もあり,より良い情報提供を行うことが可能であると考える.
また,本研究では家庭内のセンサネットワークにおけるセンサネットワー
クの異常発見を目的に行っているが,実際にセンサネットワークを運用して
いくためには様々な操作をユーザは行う必要がある.本研究では問題の起き
ているセンサノードの発見を実現したが,センサネットワークの管理を行う
ためには更に特定したセンサノードの設定をその場で変更可能な機構が必要
がある.
本研究で提案した )
では 34
に搭載されている地磁気コンパスを用
いているが,その精度の問題で描画する際にずれるといった問題が起こった.
本研究で行った評価実験において,地磁気コンパスのズレによって,正しく描
画することが出来ずユーザが混乱するといった場面が見られた.しかし,既
存の位置情報取得手法である 3 や無線の電波強度の測定による手法を用
いても精度が悪く,現状では地磁気コンパスとレーザレンジファインダによ
る位置取得が最適ではある.そこで,ユーザの持つ携帯端末の移動加速度の
変化を計算して補正するなどの手法を組み合わせることなどが考えられる.
本研究では,利用者が情報取得対象が設置してある空間において,情報を取
得する手法を実空間型情報取得手法と定義した.実空間型情報取得手法とは,
情報の取得対象が存在する空間においてユーザが情報を取得する手法である.
本研究で対象者としているエンドユーザにはセンサネットワークに関する知
識や,データベースに関する知識がないので既存の実空間型情報取得手法を
用いてセンサネットワークの管理に必要な情報を取得することは困難である.
しかし,今後家庭内などの身近な環境においてセンサネットワークは普及し,
センサノードが多数設置されることが予想される.故にエンドユーザが日常
的にセンサネットワークで起こっている異常を発見できる必要がある.
そこで,本研究では,ユーザの持つ携帯端末と取得対象であるセンサノー
ド間の距離に応じた情報取得手法である )
を提案した. )
では,セン
サノードとの距離に応じた三段階の表示を行う. )
を用いることでエンド
ユーザは特別な操作をせずに,家庭内のセンサネットワークにおいて起こる
問題の特定が可能になった.ユーザは異常が起こっている部屋において大ま
かな表示を行い,問題が起きている箇所に近づくという動作を行うことでよ
り詳しい情報を得る.更に,本手法では 9 マーカを用いて問題が起こって
いるセンサノードを一意に特定することを可能にした.異常の起きているセ
ンサノードを一意に特定した際には対象のセンサノードに関する詳しい情報
を表示する.
!
また本研究で行った実験において, )
の有用性を示した.評価では, )
との比較対象として仮想空間型情報取得手法である管理画面内にセンサネッ
トワークの情報を表示するアプリケーションを用意し利用してもらった.本
研究で提案した )
を用いることで,情報の取得対象であるセンサノードが
多数存在する環境において有用であるという評価を得た.また,エンドユー
ザが日常的に利用することを目的としているので,操作に負担があってはな
らないが評価結果を見る限り既存のシステムに比べ無駄な手間がなく操作の
負担は少ないと言える.
クロスドメインサービス可視化支援技術:全方位カメラを
用いた情報家電機器発見及び制御機構 はじめに
近年ユビキタスコンピューティング研究の発展に伴い,生活空間の至る所
にコンピュータや情報家電機器,センサ等の情報機器が設置されるようになっ
た.それらの情報機器を用いて,空間内に存在する人間を賢くサポートする研
究が行われるようになった.例えば,慶應義塾大学徳田研究室 では,#
プロジェクト や .#* ( 9. プロジェクト を通じて,生活空間を対
象とした情報機器制御に関する研究が行われ,実験環境が運用されている.こ
れらの実験環境の中では,ネットワークを通じて制御可能な情報機器を設置
し,様々なアプリケーションを介してそれらの情報機器を制御している.ユー
ザはそれらのアプリケーションを利用する事によって,室内の情報機器を制
御できる.例えば,.#* ( 9. プロジェクトが運用されている空間
では,ドアロック,プロジェクタ,モニタ,ライト,ネットワークカメラ,ロー
ルスクリーン,センサが実際に制御可能であり,ユーザは 0
ブラウザや,
携帯端末上の写真からそれらの機器を制御できる.
図 ! 実験環境と制御可能な情報機器
ネットワークを介して制御可能な情報機器は一般家庭にも普及し始めた.
!
本研究では,ネットワークを介して制御可能な家電機器を,情報家電機器と
定義する.実際に普及している情報家電機器の例として,冷蔵庫,エアコン,
照明機器,テレビ, レコーダ等が挙げられる.これらの情報家電機器は,
ホームネットワークを介した制御や,インターネットに接続可能な物であれ
ば,外出先からでも制御が可能である.さらに,家全体をホームネットワー
クを利用して制御するスマートホームも登場した.スマートホームは,家全
体の家電機器を一括で制御できるため,機器制御を容易にする他,家庭内の
電力管理も効率的に行う事が出来る.
また,ネットワークを介してそれらの情報家電機器を連携させる技術も発
展してきた.例えば,固有のメールアドレスを持つプリンタが挙げられる.こ
れは 3A がなくても携帯電話から画像を添付したメールを送信する事で,写
真の印刷が行える.さらに,無線 を搭載したデジタルフォトフレーム
は,ネットワークを介して写真を受信したり,インターネットを利用した写
真共有サービスと連携する事が出来る.また, や :$ **4 といった
異なる通信規格間での通信を実現するミドルウェアアプローチも研究されて
いる.
情報家電機器は生活空間の中で増加しており,研究レベルでも製品レベル
でも様々な技術が用いられている.しかし情報家電機器を利用する際に,ユー
ザは様々な手順を踏む必要がある.ユーザが情報家電機器を実際に利用する
際にユーザが踏む手順を,本研究では以下の3段階に分ける.
, 情報家電機器の設置
, 情報家電機器及び提供されるサービスの発見
, 情報家電機器の管理,維持
以下に,これらの手順を踏んで情報家電機器を利用する上での問題点を述
べる.
情報家電機器の設置
まずユーザは情報家電機器を利用する際,情報家電機器を設置する必要が
ある.この時ユーザが行わなければならない手順として,情報家電機器の物
理的な設置と,情報家電機器をネットワークを介して利用する為の設定であ
る.例えば,インターネットに接続可能な情報家電機器であれば,情報家電
機器の 3 設定や,ホームネットワークへ参加するための初期設定が必要とな
る.これは専門的な知識を持たないユーザへ負担がかかる作業であると考え
られる.このように,情報家電機器の設置はエンドユーザへの負荷が高いと
いう問題点が挙げられる.
!
情報家電機器及び提供されるサービスの発見
次にユーザが行わなければならないのは,設置された情報家電機器がどこ
にあるのか,どのようなサービスが提供されているかを発見する事である.
ユーザ自身が設定を行った環境では機器やサービスの発見は容易であるが,会
議室やホテル等の不特定多数のユーザが利用する環境において,機器やサー
ビスを発見する事は難しい.また,それらの機器やサービスをネットワーク
上で発見できたとしても,実際にどこにその機器があり,どこでサービスが
提供されるかが分からないといった問題点が挙げられる.例えば,5#; の
?
を利用すると図 ! のように,ユーザは同じネットワーク上にあるコ
ンピュータや機器を容易に発見できる.
図 " ネットワーク上に存在する機器
しかし,ユーザはこれらの機器が実際にどこにあるかが分からない.従っ
て,特定の機器にデータを出力しようとしても,どこに出力されるかが分か
らないといった問題点が挙げられる.
情報家電機器の管理,維持
情報家電機器が利用可能になった上でユーザが行わなければならないのは,
利用している情報家電機器の管理,維持である.例えば,ユーザが任意の機
器やサービスをいつでも利用できるように携帯端末や操作端末上に登録して
いた場合,それらの機器やサービスが除去されたり,設定に変更があった場
合,ユーザは情報家電機器の情報を再設定しなければならない.このように,
情報家電機器に変更があったとき,ユーザは利用する為の設定や情報家電機
器そのものの設定をし直さなければならないという問題点が挙げられる.
!!
研究目的
このように,情報家電機器の利用には様々な問題点がある.本研究の目的
は,ユーザに対して特別な知識や手順を要求する事なく,情報家電機器を利
用できるようにする事である.そこで,情報家電機器の情報と,情報家電機
器の空間内の位置情報を共にユーザへ提供する事で,情報家電機器利用にお
ける負荷軽減を目指す.本研究ではその目的を達成する為に,全方位カメラ
を利用して機器発見,制御を行う.具体的には,画像解析とネットワーク監
視により,機器が利用可能になった時間と設置された時間を元に,情報家電
機器の空間内の位置座標と,機器情報をマッピングする事で情報家電機器の
認識を行う.情報家電機器の認識を行った後,ユーザへ情報家電機器の情報
と,情報家電機器の位置情報を通知する.ユーザは携帯端末上でそれらの情
報を用いて,情報家電機器が利用可能になる.また,情報家電機器に変更が
あった際も,ユーザへ通知が行われる.従って,ユーザは情報家電機器の設
定を意識する事なく利用できる.これにより,設置,発見,管理の手順に置
けるユーザへの負荷を軽減する.
情報家電機器利用手法
まず情報家電機器利用に関する様々な手法を述べる.次に情報家電機器利
用に関するユーザへの負荷を軽減する為の研究について述べる.次に,本研
究で必要となるビジュアルマーカを使わない物体認識に関する関連技術を述
べる.最後に,既存の技術の特徴と本研究の比較をした上で問題点の整理を
行い,本研究における機能要件を明確にする.
情報家電機器制御の為の共通基盤
情報家電機器制御の為の既存の共通基盤技術について述べる.近年 3A や
その周辺機器,% 機器,電話,家電機器の発展に伴い,それらをネットワー
クで接続する事により,互いの機器の機能を提供し合うための技術が研究さ
れている.例えば,.
B%
*
)
#$*(以下 %)が挙
げられる.% は,家電メーカによって提唱された家庭内ネットワーク対
応 % 機器の仕様である.家電機器は,メーカごとに制御の規格が異なって
いる.例えば 社の開発した機器に対して : 社が開発したリモコンでは制
御が出来ない.しかしネットワークを通じて機器を相互接続した場合,メー
カによって制御規格が異なっていると,接続していても機器の連携が出来な
い.従って異なるメーカの機器間でも協調して制御可能にする為に提唱され
たものが % である.また,% と相互接続可能なネットワークアーキ
テクチャとして, 5;*
. によって開発された が挙げられる.
は処理のスピードなどが異なる様々な種類の機器をネットワーク接続す
!"
ることを目的としており,機器同士が非同期通信を行う手段を提供している.
これにより,家電機器が のクライアントを実装する事で,それらの家電
機器をネットワーク化できる.さらに,これらのネットワーク化された情報
機器を相互連携する技術として,5;C* の 33 や ))$
の :D が
挙げられる.これらの技術を利用する事により,ネットワーク化された情報
機器の相互接続が容易になり,さらに情報機器を利用するユーザはそれらの
機器の設定を行わなくても利用可能になる.また,それらの技術が実装され
た機器はネットワークに接続していれば簡単に検索が可能であり,ユーザは
ネットワーク上の機器を検索し,すぐに利用する事が出来る.また,家電機
器やセンサー類を通信機器によって接続しネットワーク化するための規格と
してエコーネット が挙げられる.エコーネットは,家庭内の電灯線や無線を
利用してホームネットワークを構築する為の規格である.これにより,大き
な工事や配線を行わなくても家庭内の機器をネットワーク制御できるように
なる.
既存の情報家電機器制御技術
現在,情報家電機器の普及に伴って,様々な情報家電機器に対応した情報
家電機器制御技術が商用化されている.以下に既存の情報家電機器制御技術
の例を述べる.
)2 ))$
が開発した 3* は,3#,34
,3 ;4 から
ネットワークプリンタにアクセスし,プリントを行えるようになる技術であ
る.3* は 0? 経由でネットワーク上のプリンタを自動的に見つけ出
し,プリントを行う.3* を利用する際は,利用するプリンタのデバイ
スドライバや専用のソフトは必要でなく,ユーザは ))$
の提供する携帯端
末を持っているだけで手元のドキュメントを印刷できる.ユーザはプリンタ
を利用する為の設定や,プリンタの検索を意図せずにプリンタを利用する事
が出来る.しかし,ユーザはネットワーク上でプリンタを発見しても,それ
が実空間上でどこに存在しているかを知る事が出来ない.
2 -$
** 3#;1# が開発した 3* は,インターネットに接続可能
なプリンタにメールアドレスを付与する.ユーザは印刷したいファイルをプ
リンタのメールアドレス宛に送信するだけで,ユーザ端末上のファイルを印
刷する事が出来る.メールアドレスを利用しているため,ユーザはプリンタ
のデバイスドライバや専用のソフトは必要でなく,専門的な知識を必要とせ
ずにプリンタを利用できる.しかし,これを利用する為にメールアドレスを
設定しなければならなかったり,ユーザは自分の携帯端末にメールアドレス
を登録しなければならない等の手順が必要となる.
!
情報家電機器利用におけるユーザ負荷軽減に関する研究
本節では,ユーザが情報家電機器を利用する際に,情報家電機器の設定,発
見,制御のユーザへの不可を軽減する事を目的とした研究を挙げる.
&2 まず,慶応義塾大学の徳田研究室で行われている 34* を挙げ
る. 34* は写真を用いてユビキタスコンピューティング環境の情報を保存
する.ユーザは情報家電機器をカメラを用いて撮影する事によって,機器の
操作情報や環境の状態等を写真と共に保存出来る.保存した機器は写真上で
操作する事が出来る.また,ユーザはカメラ画像にオーバレイされた情報を
見る事で,サービス発見が容易に行える.図 !+ にカメラ画像に情報がオー
バレイされている様子を示す.しかし,情報家電機器の認識にはビジュアル
マーカを用いているため,情報家電機器の管理者は,セットアップする際に
情報家電機器毎にビジュアルマーカを作成する必要がある.
%QPHKIWTCVKQP/QFG
%COGTC/QFG
2JQVQ/QFG
図 #$% の操作画面とサービスが可視化されている状態
) * ,- 3 4 ) !51
&& " 4 情報家電機器制御に関する研究として,7 )1
#*#$ (
* の 9
.*
5* # A*$ C .
))$
#;
E * .#* .
を挙げる.これは,外出先のユーザがイ
ンスタントメッセンジャを利用して家庭内の情報家電機器にアクセスし,制
御する事を目的とした研究である.これにより,ユーザは利用端末上で機器
特有の操作インターフェースではなく,統一されたインターフェースによっ
て機器を制御できる.また,自然言語処理を用いることで,ユーザは機器と
会話するように制御できるため,ユーザへの負荷が低いと考えられる.しか
しこれは対象が家庭内であり,会議室等の複数人で利用される空間において,
"
情報家電機器の追加,削除や設定の変更等が行われた時に,ユーザは手元の
端末の設定を再設定する必要がある.
カメラを利用した物体認識,実世界認識に関する技術
本研究ではユーザへの情報家電機器利用の負荷を軽減するため,情報家電
機器の空間内の位置座標を取得する.物体の空間内の位置座標には 9$1*
のような,ビジュアルマーカを用いた手法や,不過視マーカを用いた手法 等
が挙げられる.しかしこれらのマーカを用いた手法は,ユーザにマーカの作
成を要求したり,事前にマーカを用意しておかなければならないという問題
点がある.そのため特殊なマーカを用いた物体認識はユーザへの負荷軽減を
目的とする本研究において適していない.そこで,本節では,カメラを利用
して特殊なマーカを用いずに物や人等の認識を行う研究について述べる.
, 6 まず,5;C* 社の 7
;* を挙げる.7
;* は家庭
用ゲーム機の周辺機器として販売されたデバイスであり,9: カメラ,深度
センサ,マルチアレイマイクロフォンを一つにしたデバイスである. 7
;*
は,特殊なスーツやセンサ,マーカの装着を要求する事なく,ユーザの動作を
取得する事が出来る.ユーザの動きを常に追跡し続ける事で,より高精度に
ユーザの動作を取得する手法をとっている.また,複数人のユーザの動作を
同時に取得できる.7
;* が人間を検出している様子を図 ,図 に示す.
図 図 人間の検出の様子
深度センサによって取得した
画像
また,7
;* では異なる複数人を別の人物として認識可能であるが,それ
ぞれが誰であるかについて判別する事が出来ない.しかし,7
;* は人間の
骨格をモデリングしてモーションキャプチャを行っているので,人間以外の
物体は現在検出できない.従って本研究が想定するヴィジュアルマーカを用
いない物体認識手法とは対象が異なる.
"
2 7- ,- " )* .7 特殊な
マーカを使わずに実世界認識を行う研究として,;*(
% ##*
の 3##$$
$ #;1 # 5#)) C .#$$ 9 01)#;
を挙げる.こ
れは,最初にカメラ画像内の特徴点を抽出してキャリブレーションを行うこ
とによって,画像内に存在する物体を検出することが出来る.また,検出し
た物体に情報をオーバレイすることによって,マーカを使わずに .
*
9
#$* を実現できる.特徴点を抽出している様子と,実際に情報がオーバレ
イされている状態を図 図 に示す.しかしこれも 7
;* と同様に,物
体が何であるかまでは判別できない.
図 マーカを使わずに情報をオーバ
図 特徴点の抽出
レイしている状態
既存手法の問題点の整理
このように,現在様々な情報家電機器制御手法が提案されている.既存の
情報家電機器制御手法によって,ユーザは情報家電機器の 3 アドレスやデ
バイスドライバ等を意識せずにネットワーク上の情報家電機器を制御できる.
これにより,ユーザは専門的な知識を持たなくても情報家電機器が利用でき
る.しかし既存の手法を利用する場合,ユーザは情報空間上の 3 アドレス等
の識別子と現実空間の実デバイスのバインディングを行わなければならない.
従って,機器を設置して利用する為に以下のような手順を踏む必要がある.
, 機器の設置
, 機器の 3 アドレス等の情報空間上の識別子の発見
, 機器の情報空間上の識別子の抽象化(ビジュアルマーカ,メールアドレ
ス等の作成)
"
!, 機器へのビジュアルマーカの貼付け等の抽象化した情報の付加
, 機器の制御,利用
このように,情報家電機器を利用する為に情報空間上の識別子と現実空間
の実デバイスのバインディングを行う為には,ユーザは多くの手順を踏む必
要がある.例えば 3* は,メールアドレスという情報空間の識別子を手動
で登録する必要がある.また,ビジュアルマーカを利用する手法は,機器を
設置するごとにユーザはビジュアルマーカを印刷し,貼付けるという特殊な
動作を要求される.従って,従来の家電機器を利用するよりも利用する為の
手順が増えるため,情報家電機器の利用はユーザへの負荷が大きいと考えら
れる.
本研究の機能要件と想定シナリオ
このように,ユーザは情報家電機器を利用する際に情報空間上の識別子と
現実空間の実デバイスとのバインディングを行う為に様々な手順を踏まなけ
ればならない.従って,本研究の機能要件として,エンドユーザに負担をか
けない情報空間上の識別子と現実空間の実デバイスとのバインディング手法
が必要だと考えられる.具体的には,ユーザが機器を設置した後,バインディ
ングの為の特殊な作業や手順を行わなくても利用できるようにする必要があ
る.従って本研究では,今までユーザが行っていた情報空間上の識別子と現
実空間の実デバイスのバインディングを自動で行うことによって,この問題
を解決する.この問題が解決された時のユーザの情報家電機器利用シナリオ
を以下に述べる.
情報家電機器設置における負荷軽減シナリオ
ユーザ は家電量販店におい
て情報家電機器を購入して,部屋に設置を行った.通常では,機器の電源を
入れた後にネットワーク接続する為にアクセスポイントを指定したり,携帯
端末上で情報家電機器を検索する等の作業を必要とする.しかし本研究にお
ける情報家電機器認識手法によって,ユーザは情報家電機器の電源を投入す
るだけで,携帯端末上で機器が制御できるようになる.
情報家電機器管理における負荷軽減シナリオ
ユーザ は複数人で利用する
会議室 内の情報家電機器を携帯端末上で利用していた.しかしユーザ : が
新たな機器を追加して元々あった機器を除去してしまった.通常ではユーザ
の携帯端末上での機器情報をユーザ が構成し直さなければならない.し
かし本研究における情報家電機器制御手法によって,自動で再設定を行われ,
ユーザは設定の変更を意識せずに情報家電機器を携帯端末上で利用できる.
"
情報家電機器発見及び制御機構
機能要件の整理
本研究における機能要件は,情報空間の識別子と現実空間の実デバイスと
のバインディングを自動で行う事である.これによりユーザは特殊な作業や
操作を行うことなく情報家電機器を利用できる.この機能要件を整理すると,
以下のようになる.
¯ 情報家電機器の自動認識及び管理
¯ 情報家電機器の実空間の位置情報取得
情報家電機器の自動認識及び管理に関しては,今まで情報家電機器を認識
する為に様々な手順を踏まなければならなかったが,まずそれを自動で行う
ことで,ユーザへの負荷を軽減する.また,認識した機器に設定の変更等が
行われた時も,ユーザへ再設定等の負荷をかけないため,情報家電機器の情
報を管理し,変更があった場合は自動で再設定を行う.また,情報家電機器
の実空間の位置情報取得に関しては,ビジュアルマーカの貼付け等の特殊な
動作をユーザに要求する事なく,情報家電機器の位置情報を取得する.これ
により,ユーザは実空間上で情報家電機器を容易に発見できる.
機能要件に対するアプローチ
前節で述べた機能要件を満たすアプローチとして以下の 点を挙げる.
¯ ネットワーク監視と画像解析による情報家電機器認識機構の構築
¯ 画像解析による物体追跡機構の構築
まず,情報家電機器の設置時にかかるユーザの負担の軽減を実現するアプ
ローチとして,画像解析とネットワーク監視による情報家電認識を行う.こ
れにより,情報家電機器の電源が投入された時に自動的に情報家電機器の機
器情報,位置情報を抽出する.情報家電機器認識機構はユーザ端末へその情
報を送信し,端末上で利用可能にする.これにより情報家電機器の設置時に
かかるユーザ負荷の軽減及び,ビジュアルマーカを用いない情報家電機器認
識が実現できると考えられる.
また,ビジュアルマーカを用いない情報家電機器追跡を実現するアプロー
チとして,認識機構で抽出した情報と,画像解析を用いて物体追跡を行う.
"
想定環境
本研究における想定環境を述べる.本研究が対象とする空間は,室内公共
空間である.例えばオフィス,会議室等の空間や,家庭のリビングルーム等
が挙げられる.また室内公共空間ではある程度照明の変化が限られていると
想定する.従って,本研究では時間の変化による日光の影響やユーザの手に
よる照明変化は考慮するが,自動車のヘッドライトや想定外の照明変化につ
いては考慮しない.また,室内に全方位カメラが固定されている事を想定と
する.全方位カメラを使用する事によって室内空間を網羅的に監視できる.
情報家電機器認識機構
情報家電機器の認識は次の手順で行う.
, ネットワーク情報を監視し,情報家電機器の詳細情報とネットワークに
参加した時間を取得
, 全方位カメラを用いて室内を監視し,物体が設置された時間と室内の
空間座標を取得
, 情報家電機器の設置時間と,室内の物体設置時間を比較しマッチング
まず,情報家電機器がホームネットワーク等の既存ネットワークに参加し
た時間を取得する.次に全方位カメラを用いて室内を監視し,画像解析を用
いて室内に新たな物体が出現した時間を取得する.最後に情報家電機器がネッ
トワークに参加した時間と,室内に新たな物体が出現した時間を参照し,情
報家電機器の機器情報と位置情報をマッチングする.これにより情報家電機
器を発見し,認識する事が出来る.
ネットワーク情報の監視
情報家電機器認識機構はまず,ネットワーク情報を監視する.本研究にお
けるネットワークとは主に A3B3 ネットワークである.33 や :D などのゼロコンフィギュレーション技術のプロトコルが実装されている情報
家電機器は,A3B3 ネットワークに接続すると,それぞれに対応した情報
家電機器制御サーバへネットワークへ参加したという情報を送信する.各プ
ロトコルにおいて,情報家電機器を制御するサーバは情報家電機器の参加情
報を読み取る事によって情報家電機器を発見できる.本研究では,情報家電
機器の情報を取得し制御するプロトコルとして 33 を用いる.
"
!22 を用いた情報家電機器情報取得 本研究では 33 が実装された情
報家電機器を 33 デバイスと定義する.33 デバイスは,A3B3 ネッ
トワークに接続すると,4
.)$
(;
;(
3*;$ 2以下 3"
と呼ばれる 3 パケットを 3 で送信する.3 パケットの例をソー
スコード , に示す.
ソースコード # #/7(% > 87%
?= £ 3B , 89%89F 5#; >B , , 33B , A
1 B , , AA8 A9F .#G #
H
AF 4 * * ) F B B , , , F ! ! B ( ; ; ) * , G.$
F ) F # $ ( F F ;4
.# )) F ( ; F * C ; # * F F
F! # ; F F F ;4
.# )) F ( ; F * C ; # * F F + , , , F + ソースコード # #/7(% > .77%
?= £ 3B , F ) F F F ;4
.# )) F ( ; F * * F F
F! # ; F F F ;4
.# )) F ( ; F * * F F I ?? F F A J F + 3 パケットを用いる事によって,サーバは 33 デバイスの存在の有
無,存在しているデバイスの種類,デバイスの 3 アドレス,デバイスの詳細
やサービスの詳細が記述されている >5 ファイルの場所を知る事が出来る.
3 パケットは,33 デバイスが A3B3 ネットワークに参加した時,
A3B3 ネットワークから離れるとき,サーバが 33 デバイスを検索する
時に送信される.これにより,サーバは A3B3 ネットワーク上に存在する
33 機器の情報を取得できる.また,サーバは,それらの詳細が記述され
ている >5 ファイルを読み込む事で,デバイスの詳細情報とともに,利用
できるサービスのリストを取得できる.これらのリストを扱う事でサーバは
デバイスを制御できる.デバイスの詳細情報を記述した >5 の例をソース
コード ! に示し,サービスの詳細情報を記述した >5 の例をソースコード
に示す.
ソースコード ,7 .7%
@G.$ ( H<,< @
*
G.$H< F ;4
.# )) F ( ; <
) ; % .#D B.#D "
. B. B ) ; % ( ; ( ; ) F ;4
.# )) F ( ; F * * F B (;
)
C $ # . 5
# (
BC
$ #.
. # C # ; * 9 ;4 B.# C#;* .# C#;* 9 4 * * ) F B B---, 4 * , C ; , 1 , #; , D ) BK ; 4 B.# C#;* 9 . $ ; ) * 9 ;4
L 8 ( # $ # * (;
B. $ ; ) * .
$#.
8;4 B.
$#.
.
$ .
, B.
$ .
.
$9 4 * * ) F B B--- , 4 * , C ; , 1 , #; , D ) BK ; 4 B.
$9
# $ . ! + B #$ .
F ; 4 ( # $ # * ( ; B
3A ! + B3A
; * ; ..
*)
.#
B C B..
*)
- *4 ! B - *4 4 4 * B 4 4 * ) *4 B )*4 $ B ; ) * B ; , C B $ B; B ; * ( ; * ( ; ( ; ) F ;4
.# )) F ( ; F * C ; # * F B ( ; ) ( ; F ;4
.# )) F ( ; F * C ; # * F B ( ; A39B ( ; ; ) * , G.$ BA39
;*$9 B ( ; B * . B ; * $ B;*$9 (
* 9 B ( ; B * . B (
* B
(
* 9 B ( ; B ( ; * )
*#*9 B ) * # * B)
*#*9 B ( ; B * ソースコード ,7 .7%
@G.$ ( H<,<@ ; ) G.$H< F ;4
.# )) F ( ; <
"!
)
;%
.#D B.#D . B. B ) ; % # ; * * # ; * #.
* C ; # * B#.
# . * * # .
* #.
G* B#.
$ # * * # * % # # $ G* B $ # * * # * % # # $ ; * B ; * B# .
* # .
* #.
9
* G* B#.
$ # * * # * % # # $ G* B $ # * * # * % # # $ ; * * B ; * B# .
* B# . * * B# ; * B # ; * * ( ; * # * # $ * # * % # # $ 8 ( * H<<
#.
G* B#.
#*#)
* B#*#)
B * # * % # # $ B ( ; * # * # $ B;) サーバは A3B3 ネットワークへ 3 でデバイス検索メッセージを送信で
き,それを受信したデバイスはサーバに対してデバイスの存在を通知できる.
本研究では,33 デバイスが A3B3 ネットワークに参加した時に送信す
る 3 パケットを監視する.まず,A3B3 ネットワーク上に 3 で送信
される 3 パケットが存在していた時に 3 パケットを取得し解析する.
次に,3 パケットを送信したデバイスに接続し,
(;
;)* の
>5 ファイルを取得する.
(;
;)* 内に記述されている (;
)
タグの中身を参照し,3 パケットを送信した機器の種類を取得する.これ
により,ネットワークに参加した 33 デバイスの種類を取得できる.3
パケットを送信した機器が,情報家電機器であった場合,その 33 デバイ
スの情報を取得し,データベースに格納する.このとき,33 デバイスの
""
情報と,33 デバイスがネットワークに参加した時間の情報を格納する.
!22 機器の制御 33 機器の情報を取得することで,33 機器が制御
可能になる.具体的には,
(;
;)* 内に記述されている,
(;
;)* を参照して制御を行う.まず,33 機器の (;
;)*
から,利用可能なサービスのリストを取得する.サービスのリストを取得し
た後に #;* タグを参照し,実際に行える命令を取得する.取得した命令に
従って,33 機器に対して 3 メッセージを送る.これにより 33 機
器を制御できる.
全方位カメラを利用した室内監視
室内監視の手法は以下の手順で行う.
, 背景差分法を用いて,物体が設置された時の背景画像の差分を取得
, 差分が生まれた領域の中心座標と,差分が生まれた時間を取得
, 物体が存在している空間座標を管理し,背景画像を更新
情報家電機器認識機構はネットワーク情報と同時に全方位カメラを用いて
室内を監視する.室内全体を背景差分法を用いて監視し,新たな物体が室内
に設置された時,物体が設置された時間と,室内の空間座標を取得する.取
得した物体の空間座標,設置時間はデータベースに格納し,管理する.
背景差分法を用いた物体検出
背景の差分は,色の変化による誤検知を減ら
す為にグレースケール化した画像で取得する.まず,全方位カメラから最初
に読み込んだ画像をグレースケール化し,背景とする.次に,全方位カメラか
ら映像を取得していき,背景に差分が生じた画像内の場所を取得する.背景
の情報に対して,現在の画像において差分が生じている状態を図 ! に示す.
差分領域の取得とノイズ除去
背景差分を用いて新たな物体が画像内に現れ
た時の差分を取得した後,差分領域の取得とノイズ除去を行う.以下にその
手順を述べる.
画像の二値化
背景差分を取得した後,差分の絶対値を元に画像を二値化す
る.これにより,グレースケールの時に生じていた細かいノイズを除去する
事が出来,矩形として背景の差分を取得する事が出来る.画像の二値化の様
子を図 に示す.
"
図 背景差分の抽出
差分領域の欠損補完
画像を二値化した後,それを物体として認識する為に
差分領域の欠損補完を行う.二値化した段階では矩形に穴やちらつきが目立
ち,物体として認識する事が難しい.従って,一定の閾値以上の大きさを持っ
た矩形の差分領域を膨張させ,膨張させた後に収縮する.これにより,物体
の矩形をある程度正確に取得出来る.欠損補完の様子を図 に示す.
差分領域のラベリング
差分領域の欠損補完を行った後に,差分領域を独立
した領域として捉える為に,ラベリングを行う.ラベリング処理の様子を図
に示す.取得した差分領域が大きい順に番号をつけ,差分領域を管理する.
今回はラベリングされた差分領域が小さすぎる物を背景として除外し,それ
以外の部分を物体として認識する事で,ノイズ除去を行う.これにより,物
体の差分領域を取得できる.
物体情報の抽出と管理
背景差分法を用いて差分領域を取得した後,物体が
設置されたというコンテクストを取得する.まず,ラベリングした差分領域
の各中心座標を監視する.監視した中心座標のうち,一定期間中心座標が固
定されて動かない物を設置された物体と見なす.物体が設置された際に物体
に を付加し,設置された物体の ,設置された空間座標,設置された時
間をそれぞれ取得する.また,物体が設置されたコンテクストを取得した後,
背景画像を更新する.これにより,設置された物体に対して移動や除去が行
われた際に背景差分法を用いて移動や除去を検知できる.以下に物体設置コ
ンテクストの取得と,背景更新の詳細について述べる.
図 背景差分の絶対値を元に画像を二値化
物体設置コンテクストの取得
物体設置コンテクストを取得する際,ラベリ
ングされた差分領域の中心座標を監視する.しかし物体設置はユーザによっ
て行われる事と,全方位カメラを使用して室内全体を監視しているため,ユー
ザも物体として認識される恐れがある.従って誤認識を防ぐため,ユーザの
居る領域を物体領域として除外する必要がある.通常背景差分法を用いる時
は入力画像全体を背景として更新するが,本研究では部分的に背景画像を更
新する.ラベリングされた差分領域の中で,ユーザが物体を設置した後生ま
れる差分領域は,物体数Mユーザ数であると考えられる.本研究では,その
中で中心座標のずれが少ない物を物体として認識し,中心座標のずれが大き
い物をユーザとして認識する.実際にラベリングされた差分領域の中心座標
を監視する実験を行った.その結果,物体は中心座標のずれが少なく,ユー
ザは意図して静止しない限り,中心座標のずれが認められた.従って本研究
ではこの手法を用いて物体設置コンテクストを取得する.
部分的な背景更新
部分的な背景更新を行うため,本研究ではマスキング処
理を利用して背景更新領域を取得する.まず物体設置コンテクストを元に,物
体が設置された領域を取得する.次に背景画像における,物体が設置された
領域部分に対してマスキング処理を行い,背景画像から抜き取る.次に,物
体が設置された時のフレームのカメラ画像における,物体が設置された領域
部分に対してマスキング処理を行い,物体が設置された領域部分以外の場所
図 二値化画像の欠損補完
を切り取る.背景画像と,物体が設置された時のフレームのカメラ画像をマッ
ピングし,部分的に背景更新を行う.
照明変化による誤検知の防止
背景差分法は照明変化に弱く,照明変化が起
こることによって生じた室内の輝度の変化を物体と間違えて検出してしまう
事がある.そこで本研究では,提案する手法において照明変化が起こりうる
場合を以下の 通りに分類した.
, ユーザによって意図的に室内の照明が変えられたとき
, 時間によって室外の明るさが変化したとき
本研究において想定する空間は室内であり,ある程度室内の照明環境が一
定である.従って,照明変化はユーザが室内の照明を操作する事による照明
の変化,カーテンの開閉等による照明の変化,太陽光の変化による室内への
影響を対象として照明変化の誤検知防止を行う.
ユーザによる照明変化
ユーザによる照明変化は大きく室内の照明環境を変
化させる.例えば,室内で操作可能な照明が複数あったとき,そのうちの一つ
を消灯もしくは点灯しただけで大きな変化が生じる.実際に実験してみたと
ころ,照明の変化は室内全体に影響を及ぼしている事が分かった.また,多
くの照明は天井についているため,天井付近に大きく差分が見られる事が分
かった.従って本研究では,室内全体で大きな差分が発生している時,室内
の上部に特に大きな差分が発生している時に,その差分を物体と認識しない.
1
1
2
2
1
1
2
2
1
1
1
1
3
3
図 ! ラベリング処理
また,前述したような特徴的な大きな差分が見られた場合,室内全体の背景
を更新する.
時間による照明変化
時間による照明変化は,一時的な物ではなく長い期間
で少しずつ変化する.例えば朝と夜では室外光の強さが異なり,室内光の変
化に比べれば大きくはないが,物体検出精度に大きく影響する.従って本研
究では,定期的に背景画像を更新することで,時間による照明変化を軽減す
る.全方位カメラは室内を常に監視しているので,ある一定の時間を閾値と
して,現在差分が生じている領域以外の部分の背景を更新する.これにより,
時間による照明変化による検出精度低下を防ぐ事が出来る.
情報家電機器の特定
ネットワーク情報を監視して取得した 33 デバイスの情報と設置時間,
室内を監視して取得した物体情報と設置時間を比較し,情報家電機器の特定
を行う.まず,33 デバイスの情報をデータベースに問い合わせ,ネット
ワークに参加した情報家電機器が存在しているかどうかを確認する.もしネッ
トワーク上に新たな 33 デバイスが存在していた場合,33 デバイスの
情報,ネットワークに参加した時間を取得する.次に,室内の物体情報を管
理するデータベースを確認し,現在設置されている物体が設置された時間を
取得する.物体設置時間を参照し,33 デバイスがネットワークに参加し
た時間に近い時間で設置された物体があれば,その物体を検出された 33
デバイスとする.この時,33 デバイスの情報と,設置されている物体の
空間座標を紐付けし,新たにデータベースに情報を格納する.また,物体設
置時間を参照し,もし 33 デバイスに近い時間に設置された物体が存在し
なかった場合,ネットワークに参加した 33 デバイスは新たに室内に置か
れていないとする.これにより,空間内に存在する 33 デバイスの位置情
報が取得できる.
33 デバイスの位置情報を取得する事によって,カメラ画像への情報の
投影や,物体の位置情報を元に任意の機器を制御できるようになる.実際に
33 デバイスの位置情報を特定し,特定した情報を元に試験的にカメラ画
像上の 33 デバイスに情報をオーバレイした様子を図 に示す
図 " 物体検知と情報のオーバレイ
情報家電機器の管理,維持手法
本節では,情報家電機器の移動,除去,変更等に対する管理について述べ
る.情報家電機器が追加された場合は前節までに述べた情報家電機器認識機
構に従い,新たに機器を追加する.情報家電機器が移動した時は背景差分法
を用いて,情報家電機器の位置情報追跡を行い,位置情報を管理する.また,
除去,変更等が行われた際は,空間内の物体情報と情報家電機器のネットワー
ク情報を用いて管理を行う.情報家電機器の位置情報追跡と,管理の詳細を
以下に述べる.
情報家電機器の位置情報追跡
本研究ではビジュアルマーカを使わずに情報
家電機器の追跡を行う.追跡を行う為に,情報家電機器の設置された空間内
の座標を監視し,情報家電機器に変化があった際に背景差分法を利用し,物
体追跡を行う.まず,室内において物体が設置されている空間座標を監視す
る.次に,背景に差分が生じた空間座標を取得する.背景に生じた差分領域
が つ以上確認できたとき,物体の情報を管理するデータベースに問い合わ
せ,差分が生じた領域の中心座標と,物体が設置されている座標を比較する.
このとき,物体が設置されている座標と差分領域の中心座標が一致していれ
ば,設置されている物体が移動もしくは除去されたと見なす.次に,差分が
生じた領域が2つであり,既存の 33 デバイスがネットワークから離れて
おらず,新たな 33 デバイスが参加していない場合, 33 デバイスが新
たに生じた差分領域の中心座標へ移動したと見なす.また,このとき既存の
33 デバイスがネットワークから離れた場合,33 デバイスが除去され
たと見なす.また,2つ以上差分領域が生まれていた場合,ネットワーク上
の 33 機器の参加数と,ネットワークから離れた 33 機器の情報を参照
する.これにより,既存の物体が移動したか除去したかを確認できる.また,
ネットワーク監視と背景差分法のみの利用では,移動と設置が同時に行われ
た際移動先の座標を特定できない.従って,情報家電機器の色素情報を取得
し,背景差分領域に含まれる色素情報と比較し,移動先の座標を取得する.
情報家電機器の除去,変更等の管理
情報家電機器の除去,変更について,
考えられるものは以下の 点である.
¯ 情報家電機器が室内から除去される
¯ 情報家電機器が移動されずに電源が切られる
¯ 電源が切られていた情報家電機器に電源が投入される
まず,情報家電機器が室内から完全に除去されてしまう場合,あるいは他
の部屋へ移動された等の場合が考えられる.次に,情報家電機器の電源が切
られる事により,ネットワーク上で操作,認識が出来なくなった場合が考え
られる.また,移動されずに電源が切られていた情報家電機器に再び電源が
投入される場合が考えられる.この 点について以下に詳細を述べる.
情報家電機器が室内から除去された場合 情報家電機器が室内から除去され
る時,電源が切られて除去される場合と,バッテリ駆動の機器等,電源が投
入されたまま除去される場合の 通りが考えられる.電源が切られて除去さ
れる場合,まずネットワーク上で情報家電機器がネットワークから離れた事
を取得する.次に電源が切られた情報家電機器が設置されている空間座標を
監視する.監視していた空間座標に背景差分が生まれ,情報家電機器の移動
が行われていなかった場合,その情報家電機器は空間内から除去されたとす
る.次に,電源が投入されたまま除去された場合,まず空間内の情報家電機
器の位置情報を監視する.情報家電機器はネットワーク上に存在しているが,
機器が存在していた空間内の位置から,物体が除去されて居た場合,その情
報家電機器は除去されたと考える.
情報家電機器が移動されずに電源が切られた場合 情報家電機器が移動され
ずに電源が切られた場合,まず情報家電機器の存在している空間内の位置情報
を監視する.監視している位置情報に背景差分が生まれず,情報家電機器その
ものの移動や除去が認められない場合,情報家電機器の固有の識別子(33
デバイスであれば #$ .
タグに記述されている内容)を取得し,物体
情報とともに保存する.
情報家電機器に再び電源が投入された場合 空間内に存在している情報家電
機器に再び電源が投入された場合,移動されずに電源が切られた際に保存さ
れていた情報家電機器固有の識別子を元に,電源が切られる前と同じように
サービスを開始する.また,電源が切られてからしばらく移動されなかった
が,電源が切られたまま移動されて移動先で電源が投入されたときは,情報
家電機器発見手法と同じ手法で新しく機器を認識する.次に情報家電機器固
有の識別子を元に,新たに出現した物を最新として,保存してあった物体情
報を更新する.
設計
本研究の情報家電機器発見及び制御機構の設計について述べる.まず,本
研究で使用するハードウェアの構成とソフトウェアの構成を述べ,本研究に
おける情報家電機器認識及び制御機構の構成を明確にする.次にソフトウェ
ア構成の中で,モジュール間でやりとりされるデータの詳細について述べ,ソ
フトウェア構成の詳細を明確にする.
設計概要
本節ではまず,情報家電機器発見及び制御機構のハードウェア構成と,ソ
フトウェア構成について述べる.
ハードウェア構成
情報家電機器発見及び制御機構のハードウェア構成図を
図 + に示す.
情報家電機器発見及び制御機構において,まず室内の映像を網羅的に取得
する為に全方位カメラを用いる.また,全方位カメラから取得した情報と,情
報家電機器そのものから情報を取得し,統合して管理する機器情報管理サー
バを用いる.機器情報管理サーバでは,現在接続されている情報家電機器の
図 情報家電機器発見及び制御機構のハードウェア構成図
機器名称,機能等の詳細情報と,それらの情報家電機器の室内での位置情報
が管理される.それらの情報がアプリケーションサーバへ送られ,ユーザは
携帯端末を利用してアプリケーションサーバへアクセスし,情報家電機器を
制御する.
ソフトウェア構成
情報家電機器発見及び制御機構のソフトウェア構成図を
図 に示す.
入力は全方位カメラからの映像入力と,情報家電機器からの接続情報となっ
ており,それぞれ情報か電気認識機構内の画像監視部,ネットワーク監視部
へ送られる.画像監視部において,背景差分取得モジュールはカメラ映像か
ら背景差分を取得し,背景情報管理モジュール,機器移動追跡モジュールへ
背景情報を送る.ネットワーク監視部において,機器接続モジュールは情報
家電機器が接続された際の機器情報を取得し,機器情報管理モジュールへ送
る.機器情報管理モジュールは機器情報と接続時間を管理する.背景情報管
理モジュール内の背景情報と,機器情報管理モジュール内の機器情報と接続
時間は差分マッチングモジュールへ送られ,情報家電機器の位置情報と機器
情報が管理される.情報家電機器の位置情報と機器情報は,機器移動追跡モ
ジュール,機器位置情報管理モジュールへ送られ,機器移動追跡モジュール
では機器の移動情報,機器位置情報管理モジュールでは空間内の機器のベー
!
図 情報家電機器発見及び制御機構のソフトウェア構成図
スとなる位置情報を管理する.それらの情報は機器管理モジュールへ送られ,
室内の情報家電機器の位置情報と機器情報が管理される.それらの管理され
た情報は,情報家電機器制御アプリケーションへ送られる.
各モジュールの詳細
本節では,情報家電機器発見及び制御機構内の各モジュールの実際に行う
処理について詳細を述べる.
画像監視部
画像監視部は,全方位カメラから取得した映像を元に,室内の
背景差分とフレーム間差分を取得し,背景差分を背景情報管理モジュールへ,
フレーム間差分を機器移動追跡モジュールへ送る.背景差分は情報家電機器
が設置された事を認識するため,新たなオブジェクトが置かれた際の空間内
の位置情報と,置かれた時間を取得する.また,機器移動追跡を行うため,
情報家電機器が置かれている空間内の場所を監視し,変化が起こった時にフ
レーム間差分を取得し,機器移動追跡モジュールへ送る.
ネットワーク監視部
ネットワーク監視部は,情報家電機器がネットワーク
へ参加した時に,情報家電機器の名称や機器の持つ機能を取得し,さらに機
器が接続された時間を取得する.機器情報管理モジュールでは,現在利用可
能な情報家電機器を管理し,それらが接続された時間も同時に管理する.
"
差分マッチングモジュール
差分マッチングモジュールでは,画像監視部で
取得した新たなオブジェクトの空間内の位置情報,置かれた時間と,ネット
ワーク監視部で取得した情報家電機器の情報,接続された時間を元に,情報
家電機器の位置情報と機器の詳細情報をマッチングする.これにより,空間
内のどこにどの情報家電機器が存在しているかが分かる.それらの情報は機
器移動追跡モジュールと機器位置情報管理モジュールへ送られ,主に機器位
置情報管理モジュールで管理される.
機器移動追跡,機器位置情報管理,機器管理モジュール
差分マッチングモ
ジュールから送られた情報家電機器位置情報,詳細情報は,機器移動追跡モ
ジュール,機器位置情報管理モジュールで管理される.機器移動追跡モジュー
ルでは,情報家電機器の存在している空間内の位置を監視し,その位置に変
化があった際,画像監視部から取得するフレーム間差分情報を用いて機器の
移動を追跡する.機器位置情報管理モジュールは,機器が新たに設置された
際の初期位置情報を管理している.機器管理モジュールでは,機器移動追跡
モジュールで取得した位置情報の更新と,もともと存在している機器の位置
情報を元に,最新の機器の位置情報を管理する.
実装
:35 の実装概要を述べる.:35 が監視するセンサ情報は,温度,照
度,加速度,湿度である.加速度は,ユーザの位置を推定するために用いる.
椅子や,ソファなどの家具に加速度センサを取り付けることによって,ユー
ザがどこにいるかを推定する.ユーザの位置から,ユーザが作業中であるか
どうかを判別する.ユーザが作業中であるかどうかの判別は,手元の照明を
付ける必要があるかどうかなどに役立てる.また,:35 の動作状況を監
視するアプリケーションとして,
:#
.#* )#;
. $#*
を実装
する.スマートスペースと :35 と :#
.#* )#;
. $#*
の関係を図 に示す.
実装環境
本節では,本システムの実装環境を述べる.
開発環境
本システムで開発環境を表 に示す.
は 0->3 を使用し,開発言語は #(# を使用した.
使用センサ
本システムでは,温度取得と照度取得,ユーザが作業中である
かそうでないかの取得に 3#* を使用し,湿度取得に :9 を用いた.使
用したセンサと対応する環境情報を以下に示す.
Needs Based
Smart Space
Simulater
Smart Space
ືస࿨௧
ືస࿨௧
ືస≧ἣ
ືస≧ἣ
Needs Based
Profile Management
System
図 スマートスペースと 6#3 と . 6/.
/% /7 /%
の関係
図 641
図 /%
表 ! 6#3 の実装環境
8#
8 !" *1D
主記憶
*6
+
-.5#
=/,/A3
E2 表 " 使用したセンサと対応する環境情報
動作概要
使用したセンサ
対応する環境情報
#/%
温度,照度,ユーザの状態
641
湿度
ここでは,: の動作概要について述べる.: はスマート
スペースに存在するデバイスとセンサをシミュレートする.シミュレートし
たデバイスは温度,湿度,照度に作用し,環境情報はデバイスの動作によっ
て更新される.更新された情報はシミュレートしたセンサから取得できる.
/82," から取得する情報 ここでは,: が :35 から取得する情
報を挙げる.
現在のユーザの状態
: は :35 から現在のユーザの状態を取得する.
取得するユーザの状態の例を表 + に示す.
表 取得するユーザの状態と取得方法
取得方法
ユーザの状態
ユーザプロファイル
暑い,暗い,などのユーザプロファイルから読み取れる情報
現在のユーザの位置
作業中であるかそうでないかといった,センサから取得する情報
現在のユーザのニーズの状態 : は :35 から現在のユーザの状態か
ら判別されたニーズの数,種類,ニーズが満たされているかどうかを取得す
る.取得する現在のユーザのニーズの状態の例を表 に示す.
現在環境に存在するデバイス : は :35 から室内に存在しているデ
バイスを取得する.
表 現在のユーザのニーズの状態
数
現在発生しているユーザのニーズの数
種類
温度に関するニーズ,照度に関するニーズなどのニーズの種類
状態
それぞれのユーザのニーズが満たされているかどうか
スマートスペース内のデバイス構成のシミュレート 環境側プロファイルの
内容によって室内のデバイス構成が変化するので,スマートスペースの間取
りやレイアウトがある程度同じであり,センサの配置位置もある程度同じで
あると仮定すると,異なるデバイス構成のスマートスペースをシミュレート
できる.今回はこのデバイス構成のシミュレートによって評価実験を行う.
評価
情報家電機器認識及び制御機構の評価について述べる.まず,本研究にお
ける評価方針を明確にする.次に評価実験を行った場所,ハードウェア設置
の方針について述べ,実験環境を明確にする.次に,情報家電機器認識及び
制御機構について,定量的,定性的に評価実験を行い,評価実験結果につい
て考察を行う.
評価方針
情報家電機器認識及び制御機構の定量的,定性的評価の方針について述べ
る.定量的評価は,全方位カメラの処理速度,情報家電機器の認識速度,認
識精度,追跡精度について評価を行う.定性的評価は,前章で述べたアプリ
ケーションである A を用いてユーザビリティ評価を行う.実際にアプリ
ケーションをユーザに利用してもらい,情報家電機器設置の際の負荷が普通
に設置するのに比べて軽減されたかどうかをアンケートを用いて評価する.
実験環境
実験環境は慶応義塾大学τ館 ! 階にある,徳田研究室の実験環境である
.#* ( 9. にて行う.
全方位カメラは部屋の中央に設置する.設置の様子を図 に示す..#*
( 9. には照明機器としてスポットライト,蛍光灯がある.これらを
用いて定量的評価を行う際,様々な照明環境で実験を行う.
図 /% ,) 4
定量的評価
本節では,情報家電機器認識及び制御機構を定量的に評価する.情報家電
機器の認識及び追跡精度,速度は以下の図 に示す3種類の実験環境で行っ
た,3種類の実験環境はそれぞれ明るさ,色成分が異なっており,全てのス
ポットライトと蛍光灯を点灯した状態,スポットライトを半分点灯して蛍光
灯を点灯している状態,蛍光灯のみ点灯している状態である.以下に実験の
詳細を述べる.
情報家電機器の認識速度及び精度評価実験 はじめに情報家電機器の認識に
関する評価実験の実験手法を述べる.まず,機器設置者が室内に入る.次に
機器設置者は,機器を任意の場所に設置する.機器を設置した後,機器の電
源を入れて機器がカメラに写るよう移動する.このとき機器設置者は,機器
がカメラに写る場所であれば室内のどこに居てもよい.最後に,その状態で
情報家電機器が認識されるのを待つ.この時,認識されるまでにかかった時
間を認識速度として計測した.また,機器を設置して、設置した場所と取得
した場所と設置デバイス名が正しく認識できれば2点,取得した場所がずれ
ていた場合 点,認識できなかった場合は 点と評価する.各実験環境にお
いて 回ずつ試行を行い,各実験環境 点満点,合計 点満点で認識精
度を評価した.実験結果を以下の表 に示す.
認識速度
試行 回における情報家電機器の平均認識速度は , 秒だっ
た.情報家電機器がネットワークに参加した情報は平均で凡そ 秒以内で取
得できているため,背景差分の取得が速度上のボトルネックとなっていると
図 全方位カメラの設置
表 情報家電機器の認識速度及び精度評価実験結果
実験環境
回の平均認識速度
回の平均認識精度
秒
"C
秒
"C
" 秒
C
総合
! 秒
""C
考えられる.本研究では,画像処理に加えてカメラを 個使用している.従っ
て処理が重くなり全方位カメラを動作させた時の実際の ?3 は 前後となっ
ている.そのため平均認識速度は , 秒という結果になった.しかし,実際
に機器設置者が機器の電源を入れ,その場を離れるまでにかかる時間や,誤
検知の防止を含めると,実用的には問題ない速度であると考えられる.認識
速度について実際に妥当であるかどうかは,定性的評価の節で詳しく述べる.
また,実験環境が暗くなるにつれて,認識速度が落ちて行った.特に,実験
環境 は , と比較しても暗く,認識までにかかった時間は最長で,+, 秒
を要した.原因として,明るさが十分でなかったため ?3 が低下した事や,
鮮やかさが他と比べて低い為,ノイズが乗りやすかったなどの原因が考えら
れる.しかしこれは,この時の色成分をあらかじめ取得しておく事で,背景
の色成分と比較しながら,動的に背景差分領域取得の為の閾値を変更する事
で解決できる.
認識精度
試行 回における情報家電機器の平均認識精度は,
,&となっ
た. 回のうち,情報家電機器の情報が取得できたが,位置情報が実際に置
いた場所とずれていたのはその中でも 回のみだった.また,実験環境 ∼
R=170.37 G=110.20 B=51.17
R=168.18 G=112.82 B=54.64
R=142.51 G131.80 B73.88
図 異なる色成分,明るさの実験環境
になるにつれて認識速度は落ちていったが,認識精度は上がっていった.これ
は,照明の性質による物であると考えられる.スポットライトは照明として
の指向性が強く,物体がスポットライトの近くにあると陰が出来やすい.従っ
て,室内の設置者の動きやその他の物の動きに対して誤検知が置きやすいと
考えられる.また,指向性が強いため,光を反射する性質がある物は光を反
射してしまい,反射の仕方によっては,背景差分領域取得が困難になってし
まう場合がある.それに対して,蛍光灯の光は指向性が弱く陰も出来にくい
為,認識率が上がっていると考えられる.この問題は,差分領域をラベリン
グした後,監視する中心座標の移動誤差の閾値を,背景の色成分を元に動的
に変更する事で解決できると考えられる.また,一番精度の低かった実験環
境 においても,認識精度は
割以上を示しているので,十分実用可能な範
囲であると考えられる.
情報家電機器の追跡速度及び精度評価実験 次に,情報家電機器の追跡に関
する評価実験の手法について述べる.まず,機器設置者が室内に入る.次に
機器設置者は,機器を任意の場所に設置し,認識手法の評価実験と同じよう
に情報家電機器が認識されるのを待つ.次に,情報家電機器を室内の任意の
場所に移動する.移動した後,再び情報家電機器が認識されるのを待つ.追
跡が成功した場合,情報家電機器の位置情報が更新される.このとき,機器
設置者が情報家電機器を移動して再設置してから情報家電機器の追跡を認識
されるまでにかかった時間を追跡速度として計測した.また,機器を移動し
て移動した場所と取得した位置情報が正しければ 点,取得した位置情報が
実際の位置とずれていた場合 点,機器を追跡できなかった場合は 点と評
価する.認識に関する評価で用いた核実験環境において 回ずつ試行を行
い,各実験環境 点満点,合計 点満点で追跡精度を評価した.実験結果
を以下の表 に示す.
表 情報家電機器の認識速度及び精度評価実験結果
追跡速度
実験環境
回の平均追跡速度
回の平均追跡精度
秒
!C
" 秒
C
秒
C
総合
秒
"C
試行 回における情報家電機器の平均追跡速度は , 秒だった.
情報家電機器の認識と比べ,情報家電機器の追跡は画像解析のみを利用して
行っている.従って,画像解析を行った結果の速度がそのまま追跡速度に現
れていると考えられる.情報家電機器の移動が認識される際,移動元の情報
家電機器が全方位カメラのフレーム内から消えた時間と,新たな場所に現れ
た時間を参照している.従って,移動に大きく時間がかかってしまった場合,
移動が認識できない.そのため,移動の認識に成功した場合は認識と比べて
画像解析の速度が求められる.従って,平均追跡速度は認識速度に比べて早
かった.
追跡精度
試行 回における情報家電機器の平均追跡精度は ,&となっ
た. 回の試行のうち,移動先の座標がずれていたのは認識の時と同様に 回のみだった.また,認識精度とは逆に実験環境 ∼ になるにつれて追跡精
度は下がっていった.ある程度の時間の猶予がある情報家電機器の認識に対
して,情報家電機器の追跡は つの差分領域が出現した時間差を利用してい
るため,認識に比べて高速な物体認識が必要となる.従って,実験環境にお
いて認識に要する時間が長ければ長いほど,追跡精度が下がっていく結果と
なった.
考察
本研究で提案した手法について,定量的に評価した評価結果について
の考察を述べる.まず情報家電機器の認識については,リアルタイムでの運
用に耐え得るほどの速度は出なかったが,本研究が想定するシナリオにおい
て十分実用可能な範囲の速度を計測できた.また,認識精度についても + 割
近く認識が行えており,十分実用可能な範囲である事が確認できた.しかし
追跡については,速度は十分実用に耐え得る結果となったが,認識精度に比
べて精度が著しく低下した.情報家電機器の認識及び追跡ともに,速度,精
度の面でボトルネックとなっているのは画像解析の部分である事が分かった.
画像解析における問題点は以下の 点だと考えられる.
¯ 全方位カメラを利用する際の処理速度
¯ 照明の変化によるノイズ
¯ ユーザの移動等に伴うカメラによる明るさの自動補正
まず,全方位カメラを利用する事でマシンへの負荷が高まり,単眼カメラ
に比べて著しく処理速度が遅い事が問題点の一つとしてあげられる.これは,
全方位カメラを動作させるマシンを高速化する事によって解決できると考え
られる.この問題を解決する事で,認識速度に若干の向上が認められると考
えられるが,カメラのみである程度ユーザと機器を区別するため,劇的な速
度向上は見込めないと考えられる.次に,照明の変化によるノイズが問題点
として挙げられる.ノイズの除去は3章で述べた手法により行っており,欠
損補完の量や,機器監視の際の誤差値の閾値の調整等を調整する事である程
度向上は可能であるが,根本的な解決にはならない.従って,照明変化によ
り強いアルゴリズムを設計する事で解決できると考えられる.また,ユーザ
の移動や,カメラ付近を物体が通過した時に生じるカメラによる明るさの自
動補正等も問題点としてあげられる.これは,現在実験環境において室内の
三次元的な中央部分に機器が設置されているため生じる問題であると考えら
れる.従って天井や,物体があまり近くを通らない場所に全方位カメラを設
置する事で解決できると考えられる.また,天井や室内の天井に近い部分に
設置する事により,問題点の 点目である照明の変化によるノイズもある程
度改善できると考えられる.これは,スポットライト等の指向性の強い光に
対して,陰の影響等を受けにくいと考えられるからである.
定性的評価
本節では,本研究における提案手法を評価する為に,実装したユーザアプ
リケーション A を使用してもらう事で,ユーザビリティ評価を行った.
評価方針は本研究の機能要件である,実空間上の識別子と現実空間の実デバ
イスのバインディングへの負荷がいかに軽減できたかについての評価である.
これを評価するため,情報家電機器を利用する為の既存の手法と A を
ユーザに利用・比較してもらい,アンケートにより評価した.また,全方位
カメラが室内に設置されている事に対するユーザのストレスや,情報家電機
器認識までにかかる時間についても評価を行った.
!
実験手法
まず被験者に,情報家電機器の存在や既存の技術とその問題点,
本研究のモチベーション,目的について 分程度で簡単に説明を行った.次
に,被験者に実際に情報家電機器を実験環境に設置し,携帯端末上で利用す
る為の設定を行ってもらった.被験者に行ってもらった設定方法は,3 アド
レスを調べて 0
インターフェースに入力してもらい,設定を行う方法,69
コードを用いて機器の 3 アドレスを取得し,設定を行う方法,A を用
いて設定を行う方法の 種類である.この 種類の実験手法で実際に情報家
電機器を設置してもらい,アンケートの設問に回答してもらった.設問の項
目はまず,情報家電機器の設置,設定において最も負荷が高かったもの,最
も負荷が低かった物を選択してもらった.次に, 種類の手法を比較しても
らい,A の有用性を 段階評価で行った.また,A の実験環境に
ついて,カメラが室内に設置されている事へのストレスや,情報取得までに
かかった時間へのストレスについても回答してもらった.また,被験者は 人で,年齢は 代後半から 代後半だった.
実験結果
実験結果を,設置,設定における負荷の大きさ,A の有用性,
A の利用環境について項目別に述べる.
設置,設定における負荷の大きさ
情報家電機器の設置,設定における負荷
の大きさについてのアンケート結果を以下の表 に示す.
表 設定における負荷の大きさのアンケート結果
設問
9# アドレスを入力する手法
:4 コードを利用した手法
899
実験において
最も負荷が高かった
実験において
最も負荷が低かった
アンケートの結果から,実験において A は情報家電機器の設置,設定
において最も負荷が低いという結果が得られ,A の目的が達成できてい
る事が確認できた.設置,設定,利用までのステップ数を減らす事によって,
ユーザの負荷は従来の手法よりも少なくなったと考えられる.しかし,被験
者からのコメントとして,実際に情報家電機器にアクセスした実感がないと
いう意見が得られた.情報家電機器の設置,設定をユーザに意識させすぎな
い事で,逆にユーザに不安を抱かせてしまうという問題点が発見できた.こ
の問題点は,情報家電機器発見及び制御機構を利用したアプリケーションに
おいて,設置,設定が完了した事をユーザに通知する手法を改良する事で解
決できると考えられる.また,被験者のうち 人は情報家電機器の 3 アド
"
レスを調べられなかった.従って,3 アドレスを調べる手法が最も負荷が高
い結果となった.
#39)9 の有用性 既存の2つの手法と比較して,A が有用であるかに
ついてのアンケート結果を以下の表 ! に示す.
表 899 の有用性についてのアンケート結果
899
平均
!
"
!
!
は
機器の情報を取得するのに有用である
9# アドレスを調べる手法より
899
を使いたい
ビジュアルマーカを利用した手法より
899
を使いたい
情報家電機器を設置する際は
899
を使いたい
アンケートの結果から,参加者の多くは A が使いやすいと感じた事
が分かった.しかし,コンピュータに関する専門的な知識を持っている被験
者からは,自分で 3 アドレスを指定して機器を設定した方がしっくりくると
いうコメントが得られた.また,3 アドレスを調べる手法より,ビジュアル
マーカを利用した手法の方が設置,設定負荷に関するアンケートよりも評価
が低かったといえる.これは,印刷の手間等を考慮した結果であると考えら
れる.
#39)9 の利用環境 A の利用環境において,室内空間へのカメラの設
置や,情報取得までにかかった時間についてのアンケート結果を以下の表 に示す.
表 899 の利用環境についてのアンケート結果
平均
"!
室内にカメラが設置されている事は
気にならない
情報を取得するまでの時間に
ストレスを感じない
アンケートの結果から,室内にカメラが設置されている事について気にな
る被験者が多い事が分かった.近年,オフィスにおける監視カメラや,家庭
用ゲーム機等の市販の機器にカメラが搭載されるようになり,生活空間内で
カメラが普及しつつある.しかし,生活空間内へのカメラ単独での導入への
抵抗はまだ大きいと考えられる.また,情報を取得するまでの時間について
は,被験者によって大きく分かれた.平均の結果を見ると,被験者は遅くも
早くもないと感じたと考えられる.これは画像解析による物体の認識速度を
向上する事で,改善可能である.
考察
ユーザビリティ評価の結果として,A の有用性は確認できた.こ
れにより本研究の機能要件である,エンドユーザに負担をかけない情報空間
上の識別子と現実空間の実デバイスのバインディングは実現できたと考えら
れる.アンケートの結果,主に専門的な知識を持たない被験者からの評価が
高かった.従って A は専門的な知識を持たないユーザでも簡単に機器の
設置,設定が行える事が分かった.しかし,専門的な知識を持っている被験
者の中には,従来の方法の方が設定しやすいと考える被験者もいた.これに
ついては,ユーザアプリケーションや利用端末における機器の認識,制御機
構を本研究で提案した手法と従来の手法をハイブリッドに実装する事で解決
できると考えられる.知識を持たないユーザには A を提供し,知識を
持つユーザには従来の方法を提供する事によって,よりユーザのニーズに適
うと考えられる.また,A を利用する為にカメラを室内空間に設置しな
ければならないという条件が被験者の負荷になっているという結果も得られ
た.従って,会議室やオフィスなどのカメラが設置されて然るべき場所では
カメラを利用できるが,家のリビングルーム等のセミパブリックな空間にお
いては,異なるアプローチが必要である.これについては,室内の画像を取
得しないレーザーレンジファインダー等で室内の物体検知を行うことが出来
れば,解決できると考えられる.
結論
仮想 33 デバイスを実装し,A3B3 ネットワーク上で動作させる事で,
情報家電機器の監視を行った.しかし,情報家電機器が持ち得るネットワー
クインターフェースは,A3B3 以外にも考えられる.本研究では A3B3
ネットワークしかサポートしていない.例えば,:$ **4 や赤外線などの
ネットワークインターフェースを持つデバイスは本研究において認識できな
い.しかし,異種通信プロトコル間での通信を実現するミドルウェアを作成
するという解決方法がある.通信プロトコルが異なる場合でも,統一された
データフォーマットを用いる事により,本研究における認識機構や,機器連
携のコストが低下すると考えられる.複数の情報家電機器が同時に設置され
る事は想定としていない.従って,複数の情報家電機器が同時に設置された
場合,それぞれの情報家電機器を区別できない.解決方法として,画像解析
によって設置された機器が何であるかを,外見からある程度判別する手法が
挙げられる.これにより,機器の外見の情報とネットワークに参加した情報
家電機器の情報を比較し,同時に複数の情報家電機器を認識できる.また,
情報家電機器の電源等についている 8 を利用して可視光通信を行うとい
う解決方法もある.全方位カメラを用いて室内を監視する際,物体と人体と
を区別せずに背景差分を用いて物体検出を行った.これにより,人体の動き
を考慮して物体を検出しなければならなくなり,高速での物体検出が行えな
かった.しかし,物体と人体を別々に認識する事によって,物体検出の速度
向上,精度向上が行える.さらに,情報家電機器の追跡精度も向上すると考
えられる.また,人体認識を行うことによって,空間内に存在するユーザの
位置情報が取得できる.これにより,ユーザの位置情報と情報家電機器の位
置情報を利用したアプリケーションも実現できる.例えばユーザ に一番近
いデバイスにデータ を出力するといったアプリケーションや,ビジュアル
マーカを用いないリアルタイム 9 アプリケーションが想定できる.情報家
電機器を利用する際のユーザへの負荷軽減を目的とした,全方位カメラを用
いた情報家電機器発見及び制御機構を提案した.従来の情報家電機器利用に
おける問題点は,情報空間上の情報家電機器の識別子と,現実空間の実デバ
イスのバインディングの手間であった.そのため,専門的な知識を持たない
ユーザが情報家電機器を利用する際,バインディングを自ら行わなければな
らない.従って,情報家電機器の設置,利用に加え,機器の情報空間上の識
別子の発見,機器の情報空間上の識別子の抽象化,機器への抽象化した情報
の付加など,様々な手順を踏まなければならなかった.そのため,情報家電
機器の利用はエンドユーザへの負荷が非常に高いと考えられる.そこで本研
究では,情報家電機器の情報空間上の識別子と現実空間の実デバイスのバイ
ンディングを自動で行うことにより,ユーザへの情報家電機器利用に対する
負荷を軽減する事を目標とした.この目標を達成する為に,全方位カメラと,
ネットワークの監視を行い,それぞれの情報を利用した情報空間と現実空間
のバインディング手法を提案した.
バインディング手法としてまずネットワークを監視し,情報家電機器が新
たにネットワークに参加した時にその情報を取得し,ネットワークに参加し
た時間を取得した.次に全方位カメラを用いた画像解析により,未知の物体
が実空間上に出現した時,背景差分を取得してその物体が出現した空間座標
及び出現時間を取得した.情報家電機器がネットワークに参加した時間と,未
知の物体が出現した時間を参照し,それぞれの時間が近似していた場合,情
報家電機器の情報と未知の物体をバインディングした.これにより,ユーザ
が様々な手順を踏まなくても情報空間上の機器の識別子と,現実空間の実デ
バイスのバインディングが行える.また,画像解析とネットワークを監視し
続ける事により,情報家電機器の位置情報の追跡,情報家電機器の管理手法
を提案した.これにより,ユーザが情報家電機器の移動や除去,変更に対し
て意識しなくても,自動で情報家電機器を管理できる.
提案した手法をもとに,ハードウェア構成,ソフトウェア構成を設計した.
設計に従い,全方位カメラ,仮想 33 デバイス,情報家電機器発見及び制
御手法を実装した.また,本手法から得られた情報を利用したユーザアプリ
ケーションとして 3# を用いて,A を設計し,実装した.
実装したシステムを用いて,情報家電機器の認識速度,認識精度,追跡速
度,追跡精度について,実際に利用するに値するかを定量的に評価した.定量
的に評価を行った結果,認識精度,追跡精度ともに実用に耐え得ることがわ
かり,有用であることを示した.また,情報家電機器を利用する際のユーザ
への負荷軽減が既存技術と比較して実現できたかどうか,を A を用いた
アンケートにより,評価した.また同時に,全方位カメラを設置する事によ
るユーザへのストレスや,定量的評価で得られた認識速度が実用に耐え得る
物であるかどうかを評価した.評価実験の結果,本研究で提案した手法が情
報家電機器利用の際に有用である事が確認できた.また,定量的評価で得ら
れた認識速度に関しては,ユーザに対してストレスを与えることなく情報家
電機器の情報を取得できる事が分かった.従って本研究の目標である,ユー
ザに負荷をかけずに情報空間上の情報家電機器の識別子と,現実空間の実デ
バイスのバインディングは実現されたと考えられる.
最後に今後の展望を述べ,本研究で提案した手法の精度,速度向上に対す
る考察を述べ,本研究で提案した手法の応用アプリケーションと今後の可能
性について言及した.そして,情報家電機器利用に対するユーザへの負荷を
下げることによる,情報家電機器の普及,情報家電機器制御技術の向上に貢
献した.
成果目標の達成について
慶應義塾大学の担当する、
(3)状況情報サービス連携技術 イ" サービス
連携支援技術<の最終目標は、以下の二つである。
:01イ011 クロスドメインサービス記述・合成支援技術の研究開発 , 秒
以内に 個以上のクロスドメインサービス記述支援技術を用いて記述
されたサービスをネットワークから発見できる。
:01イ011 クロスドメインサービス可視化支援技術の研究開発 ロスドメイ
ンサービス記述支援技術を用いて記述されたサービスの、 万通り以
上の状態を可視化できる。
次に、それぞれの達成状況に着いて述べる。
実験環境
:01イ011 クロスドメインサービス可視化支援技術の研究開発
本実験では、図 に示すように右の環境を環境α、左の環境を
環境βと想定し、それぞれ端末は別環境に存在すると想定する。環境αの端
末がサービスハンドオフ元サービス提供端末で、環境βの端末がサービスハ
ンドオフ先サービス提供端末である。
図 ! 実験環境
また、実験用計算機として処理を行うユーザ端末、$ A*$ (
、
サービスハンドオフ元サービス提供端末、サービスハンドオフ先サービス提
供端末を用意した。それぞれ、ユーザ端末、サーバ端末、端末 、端末 : と
する。表 に各計算機の詳細を示す。
表 実験用端末の性能表
ユーザ端末
サーバ端末
端末
端末 !
!
!
!
メモリ
サービスハンドオフ元サービス提供端末は、 ;$ (
から必要
なサービスを発見する。サービスの発見は、サービスハンドオフ元サービス
提供端末が ;$ (
から $ ファイルを受信し、異種サービス
を発見するまでの処理を指す。
実験結果
図 のグラフに異種サービスの発見に要した平均処理時間を示
す。各処理時間はそれぞれ 回の処理の平均である。グラフより分かるよう
に、異種サービスの発見に要する処理時間は 発見するサービス数 2 $ ファ
イル数" に比例して増加した。 個のサービスの発見に約 , 秒必要であ
る。従って、, 秒につき , 個のサービス発見が達成できた。今後 , 秒
で 個のサービス発見は達成するためには、より高速なサーバ及びクライ
アントを用意し実験をする必要がある。
図 " 異種サービスの発見に要した平均処理時間のグラフ
:01イ011 クロスドメインサービス記述・合成支援技術の研究
開発
実験環境
図 + に示すような実験環境を構築した。
デジタルカメラは 1 製の A3> ; を用いた.また,デジタル
写真データを無線 を通じて転送するために 8
N 8G)$
I J を利用し
た.8
N は無線 機能のついた カードであり,これを内蔵してデ
ジタルカメラを写真で撮ることで, 3A などに写真を自動的に転送すること
ができる.デジタルフォトフレームは = 製の A#(# $
%?A3
を利用した.このデジタルフォトフレームも無線 のインタフェースを備
えており,外部に保存されているデジタル写真をネットワークを介して閲覧
することができる.これらを用い,
「デジタルカメラからデジタルフォフレー
ムへ」という機器連携の要求があった際に,デジタルカメラから送信されて
きた写真のうち,最も新しいものをデジタルフォトフレームが参照している
ファイルとして置き換えることで,デジタルフォトフレームが表示している
写真を差し替えるという連携を実現した.
仮想の防犯センサとして' 5;*
. 製のプログラマブルセンサ
ノード 3 を利用した.このセンサノードは加速度センサを搭載して
おり,,!4O 帯の無線による通信を行うことができる.防犯センサのシミュ
レーションとして,センサノードに対して一定以上加速度を加えるとアラー
トをスタンドライトのアクチュエーションサーバ,具体的には電源をコント
ロールするシステムに通信によって送信するようになっている.
スタンドライトはホームセンターで適当なもの購入し,電源をネットワーク経
由で制御可能なアプライアンス A 3+ を用いて電源の B??
切替を実現した.これらを用い,
「防犯センサからスタンドライトへ」という
機器連携の要求があった際に,防犯センサの加速度データを観察し,アラー
トがあった場合電源制御アプライアンスを用いてスタンドライトの照明の制
御し,点灯させるという連携を実現した.
図 機器連携とデモの様子
結果
サービスは、ディスプレイ、デジタルカメラ、フォトフレーム、プリ
ンター、スピーカー、 )* ' ライトの計 種類。これらのサービスを )
* ;4 上で可視化及び制御を行う。サービス毎に 4.
と Æ;
など仮想的
に インスタンスを持つとし、インスタンス数は 。 )* は * の温
度センサ、照度センサ、加速度センサをもつ。このうち、温度センサと照度
センサを可視化した。従って状態数は、 通り。連携は、上述した「デジ
タルカメラからデジタルフォフレームへ」と「防犯センサからスタンドライ
トへ」の他に、図 + に示すとおり、
「デジタルカメラからディスプレイへ」、
「デジタルカメラからプリンタへ」、
「デジタルフォトフレームからプリンタ
へ」、「ディスプレイからスピーカーへ」、
「ディスプレイからプリンターへ」
の計 通りを実現した。結果として、) * ;4 上で '' 通りの状態
の可視化を達成した。
研究成果の更なる展開について
クロスドメインサービス技術支援技術として, を公開することで,広
く一般に本研究プロジェクトの成果を公開する。また、クロスドメインサー
ビス可視化支援技術に関しても, 34* 技術の開発を継続して行う.
その他
の検討状況
本章では、E * (;
;)* # #
2" を複数機関で
検討するために設立した A:6 プロジェクト 01 ) 20"
の活動について報告する。0 は慶應義塾大学、、9 の 機関に
より構成され、 を A:6 プロジェクト全体で共通に利用できるよう
に、物・人・空間の関係を機械的に処理するための >5 をベースとした記
述様式の策定を行っている。本年度の活動状況は以下のとおりである。
第
回ミーティング : 年 月 日0
第 回ミーティングでは、実証実験の全体のイメージ図に対し、0 が
どのように対応するかを検討した。また、 公開について話し合った。
第 回ミーティング : 年 月
日0
第 回ミーティングでは、 の改善点について検討を行った。
第 回ミーティング : 年 月 日0
第 回ミーティングでは、前回に引き続き、 の改善点について検討
した。また、実証実験における の位置づけについて検討した。
第 回ミーティング : 年 月 日0
第 回ミーティングでは、 年 + 月度版の公開についてと話し
合った。また、実証実験に関しては、 端末の貸出方法の検討と、各
機関が担当する部分についての検討を行った。
第 回ミーティング : 年 月 日0
第 + 回ミーティングでは、 年 + 月度版および 年 月度版英語バージョン公開に関する最終的な調整を行った。
第 回ミーティング : 年 月 日0
第 回ミーティングでは、 + 月版(日本語)
・ 月版(英語)の公開
について専門委員会での改訂審議資料に関して意見交換を行った。また、実
証実験のデモに関する進捗確認を行った。
第 回ミーティング : 年
月 日0
第 回ミーティングでは、 + 月版(日本語)
・ 月版(英語)の公開
後の経過を確認した。また、実証実験のアンケート結果等の報告を行った。
第 回ミーティング : 年 月 日0
第 回ミーティングでは、 年 + 月度版英語バージョンの内容
について検討を行った。また、集中検討会での報告内容に関して意見交換を
行った。
!
資料編
論文
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;4 = #' 1 1' 5##1 *' 7#O #1#4'
1 1 #' < ;)* # #
C (
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C *
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3
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A.) *<' 888 *
#*#$ AC
;
*-1' E * ' # *-
*4 A.) * 2A "' -)* :
#;4' A#$C#' ' '
¯ 間 博人' 中澤仁' 徳田英幸' <センサネットワークにおけるパケットロ
ス耐性のあるコンテキスト検出手法の提案<' 情報処理学会論文誌 コン
ピューティングシステム 2A" %$,2"' 年 月,
¯ #1 # #1.*' #.#*#.
##' #1#O#-#' 7#O #1#4'
1 1 #' <8G*#*
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C *4 *
#*#$ 014) E * %
* #$ 9
#$* 20%9"' $1' ?$#,
¯ 唐津 豊' 中澤 仁' 高汐 一紀' 徳田 英幸' <9F加速度センサを利用
したマーカレス 9 によるセンサ情報可視化システム<' 電子情報通信
学会技術研究報告, ' ユビキタス・センサネットワーク' 年 月
¯ = *#1# 7##* ' #1#O#-#' 7#O #1#4' 1 1 #'
<9F% #$O
#*# C.#* .
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#$* -*4
* % #$ 5#1
<' ' ' 被引用論文数
特になし
特許申請件名
特になし
特許取得件名
特になし
"
受賞等
特になし
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