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包括外部監査の結果報告書の概要

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包括外部監査の結果報告書の概要
平成26年2月12日
各 位
名古屋市包括外部監査人
田
口
勤
包括外部監査の結果報告書の概要
平成25年度包括外部監査結果報告書の概要は下記のとおりです。
記
1
選定した特定の事件(監査のテーマ)
市民経済局の産業振興及び観光に関する財務事務の執行について
2
監査対象部局と団体
市民経済局、緑政土木局、住宅都市局、総務局及び教育委員会
3
特定の事件(監査のテーマ)を選定した理由
名古屋市を中心とする名古屋圏では、中部国際空港の開港、万国博覧会「愛・地球博」
の開催等が相次いだ2005年頃までは経済的に比較的盛況な時期があった。しかし、2
007年のサブプライム問題、2008年秋のリーマンショックに続く世界的な不況の影
響もあって、この地域の経済も低迷を続けてきた。この間、名古屋圏では、自動車産業を
はじめ輸送機械製造業を中心とする製造業依存の体質に変化はない。名古屋市は、その中
核都市として商業・サービス業の勢いが増しているが、トヨタ自動車のリコール問題を発
端に生じたトヨタショック後の商業・サービス業の凋落ぶりを見ると、名古屋市全体が製
造業の大きな影響下にあることを認めざるを得ない。
ところが、その輸送機械製造業の生産拠点の多くは1990年代以降海外に流出し、リ
ーマンショック後にはさらにその傾向が強まり、名古屋圏における産業の空洞化が懸念さ
れている。加えて、日本の人口は減少局面に入ったうえに少子高齢化が急激に進行し、団
塊の世代が順次定年を迎えて労働力人口も減少するなど、その影響は名古屋市でも同様と
考えられ、地域の活力という意味では否定的な印象の情報ばかりが目につく時期にきてい
る。
名古屋市では、このような状況に対応するため、まず、観光に関連して名古屋観光戦略
ビジョンを策定(2010年)、さらに産業振興ビジョンを策定(2011年)して、そ
れぞれ具体的な目標をかかげ、地域の活性化に取り組んでいる。
しかし、その策定後にも、2012年、竹島に韓国大統領が上陸、尖閣諸島を日本国が
1
国有化するなどの後に近隣諸国との緊張が高まり、産業や観光の振興策にとって逆風とも
いうべき状況があった。
最近でこそ、いわゆるアベノミクス効果で景況感が上向いているという報道も見られる
ようになったが、本格的な経済成長につながっていくかどうかは、消費税増税も控えてお
り不透明といわれている。
名古屋市では、平成25年度歳出予算1兆259億円のうち、約9.2%に相当する9
47億円が中小企業の経営支援、観光客の誘致など市民の経済にかかる経費にあてられる
予定である。このような時期に、名古屋市の産業振興や観光戦略について、有効性の観点
を中心に監査することには意味があると考え、監査テーマを選定した。
4
具体的な監査対象部局の絞り込み方法
産業振興、観光戦略、いずれも特定の部局のみが行う施策ではなく、多くの部局が連携
しながら実施しているのが現状であるため、本来であれば部局横断的に監査の対象とする
必要がある。しかし、時間的な制約の中で効率的な監査を実施するために、産業振興、観
光戦略の両施策にとって中核となる市民経済局を監査対象の中心と考えた。
加えて、観光戦略については、全国第2位の集客力を誇る東山動植物園を所管する緑政
土木局を監査対象部局に加えるとともに、名古屋の代表的なイベントである名古屋まつり
負担金を所管する総務局とマラソンフェスティバルナゴヤ・愛知を所管する教育委員会、
さらに歴史観光にも関連する「歴史まちづくり戦略」を策定したほか、揚輝荘を所管する
住宅都市局をも監査対象とした。
5
外部監査人補助者
弁護士 5名
6
税理士 1名
監査の実施期間
平成25年6月6日から平成26年2月4日まで
7
監査対象年度
平成24年度(ただし、必要な範囲でその他の年度に遡及した。)
8
外部監査の方法
6月13日に市民経済局から産業・観光施策に関する総括的なヒアリングを実施し、6
月24日からは名古屋市国際展示場、名古屋市国際会議場、工業研究所、中小企業振興セ
ンター、研究開発センター、名古屋城、東山動植物園などを実査した。その後、8月27
日以降、改めて市民経済局にヒアリングを実施した後は、対象部局に対する実査や文書に
よる質問と回答を繰り返す方法により監査を行った。
2
9
市民経済局の産業振興に関する外部監査の結果と意見
市は、昭和40年頃までは戦後復興と市域の拡大、重化学工業の急成長が見られたが、
その後、工業の中心は名古屋市外へ移っていった。名古屋の産業別従業者数のうち製造業
は昭和40年頃をピークに減少し、名古屋市は脱工業化し、東海3県を含む「名古屋圏」
を視野に入れた「広域流通拠点都市」の役割を担っていった。
市における製造業の事業所数は昭和56年をピークに減少傾向を示すようになった。平
成に入ると、工場や労働力が名古屋圏から海外に転出し、大事業所が減少した。
産業構造についてみると、製造業の集積は、平成19年度、名古屋圏では38.6%と
他の都市圏に比べ高くなっているものの、市では12.4%と小さく、反面、卸売・小売
業のシェアが27.8%と高くなっていた。平成20年秋のリーマンショックを挟んで平
成21年度には製造業の集積は32.8%(名古屋圏)、9.8%(名古屋市)といずれ
も低下した。市の脱工業化、産業の空洞化の進展を示す結果である。
市は、平成23年3月、名古屋市産業振興ビジョン(以下「ビジョン」という。)を策
定し、地域を活性化するべく産業振興の各種施策を実施している。
ビジョンでは、次の3項目を名古屋市経済の課題としてあげている。
①
産業構造の一層の多様化
②
グローバル化に対応した中小企業の競争力強化
③
少子・高齢化に対応した就労環境の整備、産業人材の確保
自動車をはじめとする輸送用機械器具製造業は、名古屋圏・名古屋市で高いシェアを占
めるが、自動車産業も近年海外生産が急速に拡大し、加えて国の次世代自動車普及目標と
の関係で、内燃機関製造に携わってきた企業の中には業態変更や新事業への転換が求めら
れるなど、産業構造の一層の多様化を推進する必要がある。また、グローバル化によるコ
スト競争の激化、新興国への技術流出などにより企業が苦境に立たされている。そのため
名古屋市の中小企業には、新興国が追随できない技術、既存技術の他分野への応用、ビジ
ネスモデルの転換、取引先の開拓などによる競争力の強化や経済基盤の強化が必要とされ
ている。さらに、少子・高齢化により生産年齢人口の減少と高齢化が進行するため、性別・
年齢にかかわらず働く意欲のある者のために就労環境を整備する必要があるとされてい
る。
【図表1】名古屋市産業振興ビジョンにおける重点産業分野と具体例
重点産業分野
具体例
(1)環 境 ・ エ ネ ル ギ ー 課 題 解 決 産 業
次 世 代 自 動 車 、 燃 料 電 池 、 資 源 リ サ イ ク ル 、 太 陽 光 、 有 機 EL 等
(2)医 療 ・ 福 祉 ・ 健 康 産 業
介護・福祉機器等
(3)ク リ エ イ テ ィ ブ 産 業
デザイン、ファッション、伝統産業、観光等
(4)先 端 分 野 産 業
航空宇宙、ロボット、プラズマ等ナノテクノロジー、機能性材
料、バイオ、炭素繊維、ICT、レアメタル等
(5)サ ポ ー ト 産 業
知的ビジネス支援サービス、ものづくり基盤技術
3
市は、ビジョンにおいて【図表1】記載の分野を重点産業分野とし、それらの振興を図
るための施策の方向性を次の①~③とし、それぞれについて「プロジェクト」を定めた。
それぞれの具体的施策と、今回監査の対象とした事業の関係は【図表2】のとおりである。
①
②
③
次世代産業の育成・支援
プロジェクト1
成長分野産業の振興
プロジェクト2
企業誘致・立地促進・創業支援
プロジェクト3
中小企業の新事業進出等支援
中小企業の育成・支援
プロジェクト1
競争力強化の支援
プロジェクト2
創造力活用の支援
プロジェクト3
経営基盤安定化の支援
就労支援・人材育成
プロジェクト1
就労支援等
プロジェクト2
次世代を担う産業人材の確保
【図表2】
施策展開
プロジェクト
成長分野産
業の振興
企業誘致・
立地促進・
創業支援、
中小企業の
新事業進出
支援
具体的事業等
なごやサイエンスパーク事業
事業全般
第 5、 1
プラズマ技術産業応用支援事業
事業全般
第 5、 1
シティセールス事業
事業全般
第 2、 2
地域連携による外資系企業誘致推進事業
外資系企業誘致推進事業
第 2、 3
産業立地の促進、創業等支援事業
ものづくり基盤技術の向上
競争力強化
の支援
報告書取
り上げた
記載箇所
国内外での販路開拓支援
企業立地促進事業
第 2、 4
産業立地促進助成事業
第 2、 4
都市型産業研究施設開設助成事業
第 2、 4
名古屋市新事業支援センターの活動
第 2、 5
工業研究所における技術支援、人材育成支援等
第 5、 2
中小企業販路開拓支援事業
第 3、 2
中小企業海外販路開拓支援事業
第 3、 3
工業研究所における販路開拓を視野に入れた技術
第 5、 2
指導
知的財産権に関する啓発や取得に関する支援
デザイン活用支援事業
第 3、 4
クリエイティブデザインシティなごやの推進
第 3、 5
ファッション産業の振興
ファッション産業振興事業
第 3、 6
若手クリエイターの育成
クリエイティブ産業創業支援事業
第 3、 7
名古屋市信用保証協会の保証付き融資制度
第 3、 8
(公財)小規模事業金融公社取扱いの融資制度
第 3、 9
ジョブマッチングの推進
なごやジョブマッチング事業
第 4、 2
誰もが働きやすい労働環境づくりの推進
勤労者融資事業
第 4、 3
デザインの活用支援による高付加価値化
創造力活用
の支援
伝統産業の振興
経営相談の充実
経営基盤安
定化の支援
就労支援等
資金調達の円滑化支援
4
⑴
地域連携による外資系企業誘致推進事業について(意見)
外資系企業誘致推進事業
事業名
概要
実施主体
根拠法令・要綱等
事業費(千円)
アメリカ、ドイツ、中国において対日投資関心企業調査を行い、継続的
な誘致活動を行う。
愛 知 ・ 名 古 屋 国 際 ビ ジ ネ ス ・ ア ク セ ス ・ セ ン タ ー ( I-BAC) や 、 グ レ ー
タ ー ・ ナ ゴ ヤ ・ イ ニ シ ア テ ィ ブ ( GNI) の 活 動 と 連 携 し な が ら 事 業 に 取 り 組
み、外資系企業を誘致する。
名古屋市市民経済局
名古屋市産業振興ビジョン
平成22年度実績
平成23年度実績
15,652
平成24年実績
20,444
13,982
外資系企業の誘致を一定数実現していることについては評価できるが、その誘致によ
り当地域のビジネス交流促進等に具体的にどのように寄与しているかは明らかではな
い。単に誘致企業数の報告にとどまらず、誘致により当地域のビジネス交流促進等に具
体的にどのように寄与しているかについて検証すべきである。
⑵
シティセールス事業と企業立地促進事業について(意見)
シティセールス事業
事業名
概要
実施主体
根拠法令・要綱等
事業費(千円)
パンフレットやホームページなどの広報媒体を活用し、当地域の産業や
投 資 環 境 を 始 め と し た 本 市 の 魅 力 を PRす る と と も に 、 企 業 情 報 や 企 業 と の
交 渉 に 精 通 し た 人 材 ( 民 間 企 業 OB) を 企 業 誘 致 専 門 員 と し て 配 置 し 、 企 業
誘致を推進する。
名古屋市市民経済局
名古屋市産業振興ビジョン
平成22年度実績
平成23年度実績
9,925
実施主体
根拠法令・要綱等
14,358
企業立地促進事業
事業名
概要
平成24年度実績
15,652
当地域への企業進出をより一層促進するため、当地域の魅力や投資環境
等について、県と連携した情報発信及び企業誘致を推進する。
名古屋市市民経済局
名古屋市産業振興ビジョン
平成22年度実績
平成23年度実績
平成24年度実績
0
0
4,700
シティセールス事業(名古屋への企業誘致を図るもの)と企業立地促進事業(県と市
事業費(千円)
が一体となって企業誘致を進めるもの)は、企業誘致を進めるための事業である点は共
通であり、あえて事業を分けて存続させる必要があるのか検討されたい。
⑶
産業立地促進助成について(意見)
産業立地促進助成
事業名
概要
実施主体
根拠法令・要綱等
事業費(千円)
市内産業の空洞化に対応し、地域経済の一層の活性化を図るため、土地・建物
を新たに取得・賃借し、オフィス、工場、研究施設を開設・増設した企業に対
し、その経費の一部を助成している。平成23年度より、名古屋市産業振興ビ
ジョンで設定した重点産業分野にターゲットを絞り、所有、賃借の立地形態に幅
広く対応した制度として運用している。
名古屋市市民経済局
名古屋市産業振興ビジョン,市産業立地促進補助金交付要綱
平成22年度実績
平成23年度実績
平成24年度実績
266,935
277,986
5
167,875
企業立地を実現することは、市内産業の空洞化に対応するものであり、地域経済の一
層の活性化に資するものである。そのためであれば1億円を超える事業費を投入する意
義もある。しかし、企業立地を実現すること自体がゴールではなく、助成した企業の事
業が地域経済の活性化につながっていかなければならない。そのためには、企業の事業
計画が履行されているか、営業成績や雇用者数の推移等に関するヒアリング等の調査を、
ある程度時間的な幅をもって継続的に行っていくべきである。このような調査なくして
本事業の有効性を検証することはできない。
また、平成23年度よりビジョンで設定した重点産業分野にターゲットを絞っている
が、この設定された重点産業分野についても国・県の動向等もふまえて変更も含めた柔
軟な対応が望ましい。
⑷
都市型産業研究施設開設助成について
都市型産業研究施設開設助成
事業名
概要
実施主体
根拠法令・要綱等
名古屋ビジネスインキュベータ(白金、金山)、クリエイション・コア名古
屋、サイエンス交流プラザ、名古屋医工連携インキュベータに入居する企業に対
し、テナント賃借料の一部を助成する。
名古屋市
名古屋市産業振興ビジョン
名古屋市都市型産業研究施設開設補助金交付要綱
平成22年度実績
平成23年度実績
事業費(千円)
ア
57,299
32,069
平成24年度実績
25,562
入居率について(意見)
都市型産業研究施設開設助成について、入居率(平成25年10月31日現在 nabi/
白金60%、nabi/金山72%)の改善は急務の課題である。インキュベート施設は創
業間もない企業や研究開発により新たな事業分野への進出を目指す企業が入居する
ことで成長し、より大きな企業となってもらうための施設である。そして、都市型産
業研究施設開設助成は入居企業の成長発展を後押しする支援策である。最終的な成果
として、入居企業が一定期間でインキュベート施設を退去し、独自にオフィスや工場
を構えることが理想的な形である。このような理想的な事例を多く生み出すためには、
まずは多くの企業に入居してもらうことが大前提である。施設の運営主体である(公
財)名古屋産業振興公社とともに、広報活動やセミナーを充実させることはもちろん、
金融機関や商工団体との連携を深めるなどして、入居率の向上に努めるべきである。
イ
事業報告のあり方について(指摘)
入居企業に課されている実績報告(名古屋市都市型産業研究施設開設補助金交付要
綱15条)のうち、
「事業報告」欄の記載が不十分なものが存在した。たとえば、
「事
業報告」欄がまったく記載されていないものや定款の目的と同様の記載で抽象的な内
容にとどまっているものが存在した。
「事業報告」欄については、決算書等とともに、業績の推移や雇用者数の推移等、
入居企業の現状及び成長の可能性を確認するための有効な資料となるよう、可能な限
6
り具体的な内容の記載を求めるべきであり、この点は改善を求めたい。
⑸
中小企業販路開拓支援事業について
中小企業販路開拓支援事業
事業名
概要
・中小企業見本市等出展支援事業補助金
市内中小企業が、首都圏・関西圏での展示会へ出展する際に、経費の一部を
補助
・「企業アピール大会」の開催
市内中小企業が、市内展示会で、来場者及び出展者に幅広くアピールする場
を提供する企業アピール大会を開催
・名古屋市次世代産業見本市等開催補助金
名古屋で次世代産業分野の大規模展示会を初開催する展示会主催者に、名古
屋市国際展示場使用料の一部を補助
実施主体
・中小企業見本市等出展支援事業:(公財)名古屋産業振興公社
※ 市から(公財)名古屋産業振興公社へ補助金を交付し、公社から出展
企業へ補助金を交付
・企業アピール大会の開催:名古屋市
・次世代産業見本市等開催助成:名古屋市
根拠法令・要綱
等
名古屋市次世代産業見本市等開催補助金交付要綱
平成22年度実績
平成23年度実績
中小企業見本市等出展支援事業補助金について
事業費(千円)
ア
3,323
平成24年度実績
15,922
(ア)明確な交付要件を定めた交付要綱を作成するべき(意見)
中小企業見本市等出展支援事業は、公益財団法人名古屋産業振興公社中小企業見
本市等出展支援事業実施要綱に基づいて新事業支援センターが行っている。しかし、
本要綱には、補助金交付要件は定められていない。
新事業支援センターのホームページによれば、「市内に主な事業所を有する中小
企業者」が応募資格を有する者とされているが、「主な事業所」の範囲は不明確で
ある。また、
「大規模展示会」への出展に対し支援を行うとされているが、
「大規模
展示会」の範囲も不明確である。
これでは、新事業支援センターによる恣意的な運用のおそれもあることから、市
が交付要件を自ら定めるか、(公財)名古屋産業振興公社に交付要件を明記した要
綱を定めるよう求めるべきである。
(イ)連続して補助金を受給することができる回数の制限を設けることを検討するべき
である(意見)
本補助金受給につき回数の制限はない。本要綱7条において、交付申請が多数あ
った場合は、過去の補助金交付実績が少ないものを優先すると規定されているのみ
である。よって、同じ中小企業者の同じ出展品であっても複数回連続して補助金を
受給することが可能であり、実際に平成23年度から平成24年度においては、2
社がそれぞれ同じ出展品で本補助金を受給している。
市内の中小企業の広域的な市場開拓を支援するという本事業の目的からすれば、
同じ中小企業者が同じ出展品で、複数回にわたり連続して、本補助金を受給しても、
7
その効果は回を重ねるごとに弱まると考えられることから、出展の主体または出展
品により、連続して補助金を受給することができる回数の制限を設けることを検討
されたい。
イ
名古屋市次世代産業見本市等開催補助金交付要綱の見直しについて(指摘)
名古屋市次世代産業見本市等開催補助金の補助対象事業は、市内で初の開催となる
見本市等で、
「開催地が持ち回り形式で決定されるもの」以外のものとされている。
しかし、国際航空宇宙展は、第8回(1991年)以降は千葉、東京、横浜、愛知
で開催され、第14回(2016年)は東京ビッグサイトで開催されることが決定し
ているなど一定の都市の間で開催されているため、「開催地が持ち回り形式で決定さ
れるもの」に該当するように見える。
一方市長は、平成24年11月14日、愛知県知事らとともに、国際航空宇宙展を
愛知・名古屋で再度開催するよう国に働きかけたが、これは市内への定着を図る必要
があると認められるからである。
そもそも「開催地が持ち回り形式で決定されるもの」は、本市への定着が一般的に
見込めないため、原則として補助対象としない方針としたものと考えられる。名古屋
市次世代産業見本市等開催補助金交付要綱4条6号が「第1号に関わらず、見本市等
の市内への定着を図る必要があると市長が特に認めるもの。」を補助対象としている
ことからもそのように理解される。しかし、最も重要なことは開催地決定形式ではな
く、市内への定着を図る必要があるかどうかである。
本要綱で使用されている「持ち回り」という文言は、その意味が明確でなく、市長
が市内への定着を必要と認めれば補助対象とできるのであれば「持ち回り」の場合を
除外する意味は大きくないばかりか、市内への定着を図るべき見本市等を誤って除外
しかねない文言である。
そこで、本事業の趣旨が一層徹底されるよう、名古屋市次世代産業見本市等開催補
助金交付要綱4条1号から「ただし、開催地が持ち回り形式で決定されるものは除く。」
との文言を削除するなど要綱の見直しをするべきである。
⑹
中小企業海外販路開拓支援事業について
中小企業海外販路開拓支援事業
事業名
概要
市内中小企業の海外販路開拓に向けて、専任アドバイザーを設置し、着手から商
談実施まで一貫した支援を実施する。
実施主体
名古屋市
※公募型プロポーザルにより、(一社)海外事業支援センター名古屋に委託
平 成 22年 度 実 績
平 成 23年 度 実 績
-
支援申込企業数を増加させるべき(意見)
事業費(千円)
ア
平 成 24年 度 実 績
-
9,194
本事業の支援対象企業数は20社を予定しているが、平成24年度は第1回の申込
期間(平成24年5月28日~6月29日)に10社からの申込しかなかったため、
8
平成24年7月13日から追加募集を行った。そして、支援申込をした企業すべてに
対し、支援が行われた。
支援申込企業に対する支援の可否の審査は行われているが、このように、募集定数
に対する支援申込企業数が少なければ、審査基準が甘くなり、支援に適さない企業に
対し支援が行われる可能性がある。実際、平成24年度の支援対象企業のうち、海外
での支援が行われるに至らなかった企業は5社(支援対象企業の4分の1)であり、
経営者が打ち合わせに参加しないなど適性が疑わしい企業もあった。間接的とはいえ、
このような企業のために市が委託料を支払うことは、無駄と思われる。
そこで、支援申込企業数が支援対象企業数を優に上回り、有望な企業が支援対象と
して選抜されるよう、セミナー、ホームページ、広報なごやなどの情報誌を活用し、
商工団体に協力を呼びかけ、さらには申込期間や申込時期を調整するなどあらゆる手
段を講じ、支援申込企業数を一層増加させるべきである。
イ
複数年度にわたる支援制度を検討するべき(意見)
本事業は年度ごとに行われ、平成24年度の支援期間は、平成25年3月31日ま
でである。よって、実際に支援が行われる期間は1年に満たず、追加募集に応募した
企業については、半年程度の支援期間しかない。これでは、海外での販路開拓を行う
期間としては短いと思われる。実際に、平成24年度支援対象企業のうち7社は、海
外での情報収集または市場調査段階で支援が終了している。
そこで、支援を中途半端に終わらせないために、複数年度にわたる支援制度を設け
ることを検討されたい。例えば、前年度における支援が、情報収集または市場調査の
一定の段階で期間満了により終了してしまった企業に対しては、その支援期間中、支
援対象企業として問題がない限りは、翌年度に限り、再支援を受けることが可能であ
るとすることなどが考えられる。
⑺
デザイン活用支援事業について(意見)
デザイン活用支援事業
事業名
概要
実施主体
中小企業の商品開発能力の強化を図るため、デザイン等の専門家を企業に派
遣し、指導することにより、デザインを有効に活用した新商品開発や商品の高
付加価値化を支援する。
名古屋市
平成22年度実績
平成23年度実績
7,568
委託先の多様性の確保に努められたい。
事業費(千円)
7,187
平成24年度実績
5,535
本事業の委託先は、平成12年度から連続して、国際デザインセンターである。平成
22年度からは、公募型プロポーザルによってはいるものの、平成22年度から同24
年度までの応募企業は国際デザインセンター1社のみであった。
国際デザインセンターは、市が32.97%出資する第三セクターであり、下記クリ
エイティブ・デザインシティなごや推進事業及びクリエイティブ産業創業支援事業にお
いても、市と関わっている。このように本事業は、市の第三セクターであり、市と関わ
9
りの深い国際デザインセンターが事実上独占的に引き受けている状況にあり、民間事業
者の参入による競争原理が働いていない。
そして、平成22年度から同24年度の支援対象企業となった35社のうち、本事業
により得られた成果を商品化した企業は11社(31.43%)、商品化に至らなかっ
た企業は5社(14.29%)、その他は現在開発中とのことである。国際デザインセ
ンターによる支援が、成功しているとは言い難い。よりよい事業にするためには、民間
事業者の参入による競争原理が働くことが理想である。
そこで、市は、公募型プロポーザル実施説明書を受け取りに来た企業に、情報の入手
経路をヒアリングしたりアンケート調査するなどし、有効な広報手段を検討のうえ、本
事業に係る公募型プロポーザルの周知を徹底し、民間事業者の応募を促し、競争原理を
働かせ、委託先の多様性の確保に努めるべきである。
⑻
「クリエイティブ・デザインシティなごや」の推進について(意見)
クリエイティブ・デザインシティなごやの推進
事業名
概要
平 成 20年 10月 に ユ ネ ス コ か ら デ ザ イ ン 分 野 の ク リ エ イ テ ィ ブ ・ シ テ ィ に 認 定 さ れ
たことを受け、名古屋の魅力を一層向上させるとともに、国内外に向けて広くクリ
エイティブ・デザインシティを発信するため、クリエイティブ・シティズ・ネット
ワークを活用した他都市との交流事業や、若手の人材育成などを実施する。
実施主体
クリエイティブ・デザインシティなごや推進事業実行委員会
( 構 成 : 名 古 屋 市 、 (株 )国 際 デ ザ イ ン セ ン タ ー 、 名 古 屋 商 工 会 議 所 、 中 部 デ ザ イ ン
団体協議会)
平 成 22年 度 実 績
平 成 23年 度 実 績
平 成 24年 度 実 績
21,992
18,298
本事業の成果、効果を、市民に具体的に説明するよう努められたい。
9,709
事業費(千円)
本事業は、他都市との交流やイベントの開催が主要な事業の内容である。そして、市
からは、平成24年度は1000万円程、平成22、23年度は2000万円程の事業
費が支出されている。市は、本事業について、上記のとおり人材の育成や交流による成
果等のメリットを挙げるが、具体的な成果、効果は非常に分かりにくい。
そこで、本事業を通じて、どのような人材がどのような分野で活躍するようになった
か、国際展示会などへの相互参加・出展、交流を通じてどのような成果が生まれたのか、
できる限り具体的に、市民の目に見える形で、その成果、効果を説明されたい。
⑼
クリエイティブ産業創業支援事業について(意見)
クリエイティブ産業創業支援事業
事業名
概要
市内で創業を目指す若手クリエイターを支援するため、クリエイター創業支援ス
ペース「クリエイターズショップ・ループ」を設置し、販売・デザイン等の専門家
によるアドバイスを受けながら自らの商品の試験販売や活動紹介を実施できる場所
を提供する。
実施主体
名古屋市
根拠法令・要綱等
「クリエイター創業支援スペース」賃貸借契約書
平 成 22年 度 実 績
事業費(千円)
平 成 23年 度 実 績
-
39,610
10
平 成 24年 度 実 績
30,528
事業報告の提出は出店終了後1年経過するごとに行うべきである。
クリエイターズショップ・ループ出店者利用規程によれば、出店者は、出店期間満了
後、市からの依頼に応じ、2年間年1回の事業報告をするものとされている。
そして、第1期(平成23年11月16日~平成24年5月13日)で出店を終了し
た2者からは、平成25年1月に出店終了後アンケートという形で、事業報告が提出さ
れている。しかし、出店期間満了後2年間、年1回しか事業報告の提出を義務づけてい
ないことからすれば、第1期終了者に対する出店終了後アンケートを、平成25年に行
ったアンケートと同様に、平成26年1月に行えば、それ以降、出店終了後アンケート
を行うことはできないことになる。
また、平成25年11月19日現在、第2期(平成24年5月18日~平成24年1
1月18日)終了者へは現在照会中とのことである。しかし、出店者利用規程によれば、
「出店期間終了後、名古屋市からの依頼に応じ、2年間年1回の事業報告をする」と規
定されているので、平成26年も同時期に照会を行った場合、規定の文言上は2年が経
過してしまうと、出店終了者は、事業報告に応じなくてもよいことになり、事業報告に
応じない出店終了者が生じる可能性がある。
出店終了者のその後の事業経過について、より有効な情報をより確実に取得するため
には、出店終了後1年弱経過するごとに、同期に終了した出店者に対し、出店終了後ア
ンケートを行い、1年が経過する日までに回答を求めることが最も妥当であると思われ
る。例えば、第2期については、平成25年11月18日までに第1回、平成26年1
1月18日までに事業報告を求めるべきである。
⑽
名古屋市信用保証協会について(意見)
中小企業者等のために信用保証の業務を行い、もってこれらの者に
対する金融の円滑化を図ることを目的とする。
設立年月日
昭和23年6月30日
所在地
名古屋市中区栄二丁目12番31号
基本財産
278億円
保 証 債 務 残 高 6535億円(平成25年3月末現在)
保証利用者
2万5772企業(平成25年3月末現在)
会長
林昭生
理事 16人
役員
監事 3人
職員
111名
目的
信用保証協会は47の都道府県のほか、横浜市、川崎市、岐阜市、大阪市及び名古屋
市の5市に存在する。これら5市においては、それぞれ都道府県の信用保証協会と市の
信用保証協会の2つの信用保証協会が存在することになり、二重行政であって無駄では
ないかが問題となる。
市内企業は、名古屋市信用保証協会だけでなく、愛知県信用保証協会の保証制度を利
用することも可能である。両信用保証協会を重複して利用している企業については、そ
の企業に対する貸付審査や求償権の行使について、それぞれの信用保証協会が別々に行
っているものと思われるが、両信用保証協会を統合することにより、企業の情報を一元
11
的に管理することができるようになり、無駄を省くことが可能となる。また、自治体か
ら見ても、信用保証協会を一元化することにより、重複した事務を省くことができ、事
務処理量が減る。そして、信用保証協会の運営コストをカットし、また、自治体側の事
務処理を合理化することにより、自治体の財政負担も減少することになる。
大阪市信用保証協会については、大阪府中小企業信用保証協会に吸収される形での統
合に向けた検討が進められている。
そこで、名古屋市信用保証協会は愛知県信用保証協会との統合を検討すべきである。
⑾ (公財)小規模事業金融公社(以下「金融公社」という)取扱いの融資制度について
小規模事業者等に対する金融・経営相談等を行うとともに、他より
事業資金を調達することが困難な小規模事業者等に対して貸付等を行
目的
い、もってその経営の改善、合理化及び活性化を図るなど、経営を総
合的に支援することにより、名古屋市内全域における商工業の振興に
寄与することを目的とする。
昭和36年4月4日(人格なき財団設立) 設立年月日
昭和40年4月1日(民法第34条による法人格取得)
所在地
名古屋市千種区吹上二丁目6番3号 名古屋市中小企業振興会館5階
基本財産
2億4千万円 (内名古屋市の出捐2千万円)
理事長
斯波 薫
評議員13名
理事8名(内常勤3名)
役員
監事1名
会計監査人1名
職員
33名(嘱託職員含む)
(1)小規模事業者等に対する金融・経営等に関する相談及び助言 (2)小規模事業者等に対する事業資金の貸付等
(ア)経営活性化の資金融資
事業内容
(イ)創業・事業展開支援の資金融資
(ウ)商店街活性化促進の資金融資
(エ)ものづくり設備導入の資金融資
ア
金融公社に対する貸付金額を必要な範囲に抑えるべき(意見)
金融公社の貸付残高及び市の金融公社に対する貸付金額を対照すると、直近5年間
では、毎年少なくとも16億円以上の余裕があり、平成24年度は44億5900万
円の余裕があった。
市から金融公社に対する貸付金については、市に返済されるものではあるが、金融
公社に貸し付けている間、市は貸付金を利用する機会を失っていることになる。市は、
結果的に無駄になる貸付金額を減らすため、貸付金額の算出方法を再検討すべきであ
る。
なお、今後も同様の貸付を行う場合は、結果的に余分になった市からの貸付金の額
に応じて、金融公社から市に対して普通利息相当額の金額(利得)を返還させること
も検討するべきと考える。
イ
損失補償割合について再考すべき(意見)
小規模事業者が返済不能となった場合、市は、当該小規模事業者に対する債権につ
いて、金融公社に対し、一定割合の損失補償を行う。損失補償の割合は、平成25年
度は45%、平成26年度は50%になる。仮に、平成26年度に平成24年度と同
12
等の損失が金融公社に生じれば、市から金融公社に交付すべき損失補償額は、2億6
53万円(平成24年度の損失補償額)×0.5(平成26年度の損失補償割合)/
0.35(平成24年度の損失補償割合)≒2億9500万円に及ぶ。
市によれば、損失補償割合が50%とされたのは、融資制度を設ける市と融資制度
を運用する金融公社とで等分で負担するのが相当であるとの考えからであるとのこ
とである。しかし、融資の原資は市が金融公社に貸し付けていること、そして、金融
公社は市からの貸付を原資に融資を行い、利息収入を得ていることからすれば、等分
で負担するのが相当とは思われない。また、経過措置として、平成22年度の15%
から段階的に10%ずつ上げるとのことであるが、何故このような経過措置が必要で
あるのか不明である。
確かに、金融公社の負担額を大きくすると、融資審査が厳格になり、他より事業資
金を調達することが困難な小規模事業者に対する金融の円滑化を図ることができな
くなる。他方で、融資審査が緩すぎても、破綻が強く懸念される事業者に対しても安
易に融資が行なわれ、返済不能となる小規模事業者が増え、その結果、市の財政負担
が増大する可能性がある。
そこで、適切な融資制度を運用するための相当な負担割合はいくらか、単純に等分
とするのではなく、段階的に損失補償割合を引き上げた平成22年度から平成25年
度までの金融公社の財務状況等を十分に検討し、再考するべきである。
ウ
経営者以外の個人の連帯保証人は原則として求めるべきではない(意見)
金融公社から融資を受けるには、連帯保証人が原則必要であり、法人の場合は代表
者以外の連帯保証人が必要とされている。
しかし、国は現在民法改正作業を進めており、民法(債権関係)部会第71回会議
(平成25年2月26日開催)において決定された「民法(債権関係)の改正に関す
る中間試案」では、代表者以外の個人を連帯保証人にすることは制限されている。こ
れは、個人の保証人が必ずしも想定していなかった多額の保証債務の履行を求められ、
生活の破綻に追い込まれるような事例が後を絶たないことから、これを防ぐためであ
る。
平成25年12月現在、保証を自ら進んで引き受ける意思を確認できた個人に限り、
例外的に保証人になることを認めるとの案も出ているが、いずれにせよ、法人の代表
者以外の連帯保証人が原則必要であるとする金融公社の融資制度は、民法改正後、修
正を迫られることになる可能性が高い。
民法改正にはまだ時間を要し不確定な要素があるとはいえ、個人保証制度、その中
でも特に経営者以外の個人保証制度には問題があるということは、現時点で既に社会
的に認識されていることから、市が関わる公的な融資制度において、経営者以外の個
人保証を原則として必要とすることには問題があると考える。
したがって、経営者以外の個人の連帯保証人は原則として求めないよう、新たな融
13
資制度を早期に検討するべきである。
⑿
なごやジョブマッチング事業について
なごやジョブマッチング事業
事業名
概要
平 成 23年 度 よ り 、 な ご や ジ ョ ブ サ ポ ー ト セ ン タ ー ( 名 古 屋 市 中 小 企
業 振 興 会 館 6階 ) 及 び 区 役 所 ( 8区 役 所 ) に お い て 、 愛 知 労 働 局 ( ハ
ロ ー ワ ー ク ) と 一 体 と な っ た 職 業 相 談 ・職 業 紹 介 事 業 等 を 実 施 し 、 失
業者に対する継続的な就労支援を実施する事業
実施主体
名古屋市市民経済局、受託事業者テンプスタッフ・ピープル㈱
根拠法令・要綱等
名古屋市産業振興ビジョン
平 成 22年 度 実 績
事業費(千円)
ア
平 成 23年 度 実 績
0
平 成 24年 度 実 績
31,179
28,785
業務委託契約書の契約形態(意見)
市が、本事業の委託業者と締結しているなごやジョブマッチング事業業務委託契約
書(以下「業務委託契約書」ともいう。)には、市と受託者との間の、
「なごやジョブ
マッチング事業」の委託に関する内容や条件が規定されている。ところで、一般に委
託契約は、「準委任契約」と解されるが、よく似た契約類型として「請負契約」があ
る。同契約は「準委任」契約と考えられるが、そのうち「契約の解除」(同契約書1
3条3項)の部分に、「請負」契約を想定した文言が残されている。これによると、
なごやジョブマッチング事業では、出来高検査に合格した部分について、物品のよう
に「引渡す」ことができることを想定して規定されている。しかし、仕事の完成を前
提とした「出来高部分」や、物品の納品時になされる「検査合格」という用語は請負
契約を前提としていると考えられる。すなわち、業務委託契約書は、準委任契約であ
るのに、一部、請負契約書の規定が混入しており、契約実態にそぐわない。このまま
では、契約内容に関する紛争が発生したときに、「準委任」と「請負」のどちらに近
づけて解釈すればよいかの判断が困難になるため、できるだけ契約内容を明確にして
おくことが望ましい。
そこで準委任を前提とするならば、業務委託契約書13条3項は、次のように修正
することが望ましい。「契約を解除したときは、甲は、直ちに委託業務の処理状況を
調査し、処理状況に応じた委託料を乙に支払うものとする。」
イ
契約更新拒絶の通知時期について(意見)
業務委託契約書3条によれば、事業期間は平成24年度から平成27年度までの4
年間、契約期間は、平成24年4月1日から平成25年3月31日までとされている。
なごやジョブマッチング事業が4年間の事業期間とされていても、会計年度独立の
原則があることから、契約期間は1年度単位とせざるを得ない。
ところで、業務委託契約書3条3項では、
「予算の変更又は削除」
「経済・雇用情勢
の変化」等、受託者が「次年度の契約の相手方と評価されない又は決定されない場合」
14
を規定している。しかし、次年度の契約更新直前に市から更新拒絶を通知された場合、
受託者にとって事業廃止の手続(特に人員整理)や、次の受託者への引継ぎ作業に手
間がかかるなど、混乱を生じる可能性がある。また、突然の更新拒絶は、受託者から
の損害賠償請求を招く可能性を否定しきれない。そこで、更新拒絶の通知をする場合
には、契約期間満了から一定期間前の時点ですべきことを、契約書上明記しておくこ
とが望ましい。例えば次のような条項案が考えられる。
(条項案)
3 条 本事業は平成 24 年度から平成 27 年度までの 4 年間を事業期間とする。た
だし、予算の変更又は削除があった場合は、本事業を変更又は中止すること
がある。また、経済・雇用情勢の変化により、事業期間に関わらず次年度に
本事業を継続しない場合がある。
2 本契約においては平成 24 年度分につき定めるものとする。契約期間は、平
成 24 年 4 月 1 日から平成 25 年 3 月 31 日までとする。
3 平成 25 年度以降の委託契約締結については、前年度の業務実績等の履行状
況につき、市委託業者選定委員会において評価を行い、市契約審査会の審査
を経た上で決定するものとし、乙が次年度以降の契約の相手方として決定さ
れなかった場合は、甲は乙に対し、契約期間満了日の●か月前までに、その
理由を付して通知する。
⒀
未組織労働者等福祉資金融資制度について
事業名
名古屋市未組織労働者等福祉資金融資制度
概要
市と愛知県とが、勤労者への生活資金等融資を円滑に行うため、東海
労働金庫に対し、未組織労働者等福祉資金の融資原資を貸し付け、同
金庫が窓口となって低利で融資を行う事業であり、東海労働金庫の貸
付については、日本労働者信用基金協会が債務保証をしている
実施主体
名古屋市市民経済局・東海労働金庫
根拠法令・要綱等
名古屋市未組織労働者等福祉資金融資制度要綱
平 成 22年 度 実 績
事業費(千円)
ア
平 成 23年 度 実 績
30,200
30,200
平 成 24年 度 実 績
30,200
預託契約書に名古屋市未組織労働者等福祉資金融資制度要綱で規定した事項も盛
り込むべきであること(指摘)
要綱とは、地方公共団体が行政指導の際の準則として定める内部的規範であり、法
規ではないことから、住民に対しては法的拘束力を持たないとされている。
市は、東海労働金庫(以下「労金」という。)と預託契約書を毎年締結しているが、
預託の趣旨、労金が預託金で行うべきこと等の労金の義務は規定されていない。しか
し、預託契約書4条には、「要綱(略)に違反したときは、預託金の全額または一部
を返還させることができるものとする」として、名古屋市未組織労働者等福祉資金融
資制度要綱の一部を、契約に取り込んだ体裁となっている。
しかし、要綱は、市が一方的に変更可能な行政機関の内部的規範であり、それを契
約に取り込んだ体裁を採ったとしても、労金に対する法的拘束力については疑義が残
15
る。
そうであれば、要綱の記載のうち労金を法的に拘束することを前提とした規定(例
えば融資状況報告義務)は、預託契約書にも直接盛り込んで、労金の明確な承諾を得
るべきである。
イ マイホーム取得支援資金、育児・介護休業者生活資金の廃止(意見)
マイホーム取得支援資金および育児・介護休業者生活資金は、制度開始から、融資
実績0件、融資額0円という状況が続いている。
この点市は「今後も利用が見込まれないため、制度の見直しを検討しているところ
である」とのことであった。
育児・介護休業者生活資金は、融資条件として「育児休業または介護休業を取得し、
同一事業所に復職することが確かなこと」とされているが、融資時点では就労してお
らず、将来の復職が「確かなこと」という条件を厳しく運用せざるを得ないし、回収
不能のリスクは労金(および保証団体)が負うこととなると、労金も積極的な融資事
業の展開が難しいのではないかと考えられる。大阪府も平成4年から始まった同種の
事業を、平成19年度で終了させている。
マイホーム取得支援資金の場合、要綱で定められた金利は、
「固定
変動
年3.91%、
年2.395%、固定選択(3年型)年2.39%」とされているが、平成2
5年11月時点での、労金における未組織労働者の住宅ローンは、「35年固定住宅
ローン
年3.20%、変動金利型
年1.75%」等と、要綱で定められた金利よ
りも、低い金利が掲示されている。毎年定められている要綱であっても、現時点での
金利設定は民間金融機関よりも不利になっている。
そこで、民間金融機関よりも有利な金利設定が困難であれば、要綱からマイホーム
取得支援資金を除くことを検討されたい。なお、金利の動向を見ながら、市の想定す
る利率が、勤労者福祉につながる情勢となった際には、改めて同制度の復活を検討す
る余地はあると考える。
ウ
労金に対する件数増加努力義務付け規定(意見)
預託契約書には、労金の市に対する義務について、①預託金の返還期限、②要綱に
違反した場合の預託金返還義務、③市から指示・調査を受けること等が規定されてい
るのみで、その他に義務規定はない。
一方、要綱には「融資目標」として「預託を受けた額(市融資と愛知県協調資金の
合計額)に対し、3.5倍以上の額を目標として融資」するべき義務が規定されてい
る(6条)。しかし、要綱のみでは労金を法的に拘束することはできず、預託契約書
に要綱を取り込む体裁を整えたとしても労金が明示的に承諾しない限りその拘束力
には疑義が残る。結局、現状のままでは未組織労働者等福祉資金融資制度の融資目標
に向けた取組を労金に求めることは困難である。
16
実際、労金のホームページには「自治体提携ローン」として「県や市町村とろうき
んが提携し、地域住民を対象にした制度です。住宅資金や生活資金などにご利用いた
だけます」とあるのみで、制度について詳しいページは見られない。たしかに、無担
保生活資金については結果的に実績を挙げているものの、労金が要綱記載の融資目標
に向けた取組を行っているようには思われない。
今後は、労金における、未組織労働者等福祉資金融資制度の広報手段・範囲や窓口
での紹介方法等について、市としても調査・確認し、件数を増加させる努力をすべき
ことを要綱に定めるだけでなく、預託金契約書にも明記すべきである。
⒁
なごやサイエンスパーク事業について
ア
サイエンス交流プラザについて(意見)
サイエンス交流プラザ内にある大会議室および中会議室の利用件数については、平
成21年度以降も大きな変化はみられず、依然として利用件数の増加に向けた改善は
見られない。利用件数の改善のために平成21年度以降どのような活動を行ってきた
のか(特に広報活動、利用料金の値下げ等)について検証するとともに、今後どのよ
うな活動を行っていくべきか改めて検討いただきたい。
次に、サイエンス交流プラザ内のインキュベータールームについては、A ゾーンに
設けているメリットを活かすためにも、インキュベータールーム利用企業と A ゾーン
の公的研究機関等との連携を更に促進していくべきである。これまでの連携事例は報
告されているが、その成果が当該インキュベータールームを利用するインセンティブ
として強くアピールできるまでには至っていないと思われるため、インキュベーショ
ンマネージャーによる支援等を最大限に活用し、A ゾーンの公的研究機関等との連携
の更なる促進を図っていただきたい。また、このようなインキュベータールーム利用
のメリットを対外的にアピールし、100%賃貸も実現していただきたい。
B ゾーンについて(意見)
イ
B ゾーンの事業化については、これまで行政評価や市議会からも厳しい声が出され
てきた。市は平成24年度に用地の一部を他の事業に活用することとし、残る用地に
ついても有効な土地活用策について全庁的に検討を進めているとのことであり、対応
に苦慮しているが、放置しているわけではない。
しかし、土地開発公社に対する金融機関への利子等の補助だけでここ数年2~3億
円が市民の税金から支出されているという現状は、一刻も早く改善すべきである。
そのためには、市民経済局から財政局に働きかけ、土地開発公社とともに金融機関
に対し利下げ交渉を早急に持ちかけるべきである。また、同公社からの早期の用地取
得により、利子等の補助にかかる経費を速やかに圧縮するべきである。
塩漬け土地の活用方法については、メガソーラーやアウトレットモール等大型商業
施設の誘致、民間企業への売却、等価交換等、他の自治体でも苦戦が報道されている。
これらの活用方法は、Bゾーンの地理、規模を考慮するとそのまま取り入れることは
17
困難かもしれないが、柔軟で幅広い観点からの検討が必要であると考えられるため、
土地開発に関するノウハウのある民間事業者に意見を聞くなど、多様な発想をすくい
上げることも検討してよいのではないだろうか。
C ゾーンについて(意見)
ウ
「テクノヒル名古屋」の企業立地面積の割合は9割を超えており、既になごやサイ
エンスパークにおける企業立地の促進という目的は実現している。今後は引き続き立
地企業とサイエンスパーク A ゾーンとの連携を図るなど、立地企業の研究開発の促進
に努めていただきたい。
エ
プラズマ技術産業応用支援事業について(意見)
プラズマ技術産業応用センター事業の目的は、市におけるモノづくり技術の向上に
よる、自動車、工作機械を始めとする製造業等の産業分野の振興を図り、ひいては中
小企業の新分野進出や商品開発、創業の促進を図ることにある。すなわち、本事業に
最も期待されているのは、先進プラズマ技術の成果を市を中心とした地域の中小・中
堅製造業へ技術移転し、ものづくり技術の向上を図り、具体的な製品化・事業化を実
現することにある。
プラズマ技術産業応用支援事業の基礎となった文部科学省の知的クラスター創成
事業(第Ⅱ期)が平成24年度において終了を迎える中、プラズマ技術産業応用セン
ターは平成20年の稼働より5年が経過し、プラズマ技術の成果が具体的な製品化・
事業化に至った事例件数は製品化2件、試作化1件、特許出願9件となっている。
確かに「機器トライアル」
(総計2520件)やより総合的な「可能性トライアル」
(総計14件)、実習(総計15回423名参加)なども実施されていることから、
中小企業に対するプラズマ技術の普及・人材育成を行っていることについては評価す
べきである。しかし、本事業に最も期待されているのは、具体的な製品化・事業化で
あることからすれば、それは未だ道半ばと言わざるを得ない。本事業を具体的な製品
化・事業化にいかにつなげていくかを明確にしていくべきである。
また、平成25年度には機器利用を有料化するなど、運営体制を見直し、運営経費
の見直しを行ったとのことであるが(運営予算額2400万円)、今後とも効果の薄
い事業の見直しを続け、効率的な運用を行っていただきたい。
⒂
名古屋市工業研究所について(意見)
工業研究所の業務成果を見ると、特に依頼試験・分析や受託研究については大きく数
字を伸ばし、業務収入も増加してきている点は評価できる。
しかし、平成24年度には工業研究所費として職員人件費8億円以上、その他事業費
2億円以上、合計11億円を超える支出をしていることからすると、市民の理解を得る
ためには、業務の費用対効果についてはさらなる検証を続けるべきである。
工業研究所は市直営の試験研究機関であって、単なる研究自体を目的とした機関では
ない。中小企業を支援し、ひいては市の産業振興に資する機関と評価されるためには、
18
工業研究所が関与したことで中小企業による製品化・実用化が実現した具体的成果をこ
れまで以上に多数集積し、そういった事例を一層アピールしていくことが求められる。
同時に、愛知県や他都市の公的試験研究機関との連携による効率的な研究開発を進め
ること等を通じて工業研究所運営の効率化をさらに進めていただきたい。
⒃
名古屋市国際展示場について
ア
見本市・展示会開催の潮流を分析し整備計画に活用すべきこと(意見)
全国の見本市・展示会開催状況を見ると、「名古屋」での見本市・展示会開催状況
は、東京、大阪、千葉、横浜といった大都市と比較して、少ないと言わざるを得ない。
世界的潮流に目を向ければ、ここ数年、アジア諸国での見本市等の開催が活発にな
ってきている。中でも、中国、韓国、香港、シンガポール、タイなどで盛んになって
おり、国境を越えて出展者や来場者の獲得競争が激化している。
2001年(平成13年)から2010年(平成22年)の10年間で、日本での
開催件数は45%も減少したのに対し、中国での開催件数は約3倍、香港は約2倍、
韓国も約3倍へ増加している。
もちろん、こういった傾向は、市、指定管理者のみが努力しても、如何ともしよう
がない潮流かもしれないが、第1展示館が整備される予定であるので、ライバルとも
いうべきアジア諸国での見本市・展示会の活況の原因を分析し、整備計画に活かして
いただきたい。
イ
利用者アンケートの充実等(意見)
(ア)市は指定管理者から、毎年度末に「名古屋市国際展示場管理運営収支決算報告書」
(以下「管理運営収支決算報告書」という。)の提出を受けている。そこには管理
運営収支決算報告、毎月の使用状況報告、管理実績等が記載されている。
市は、
「指定管理者制度導入施設における管理運営状況の点検・評価について」
(平
成21年5月、平成24年4月改正)を策定し、指定管理者制度導入施設が適切に
管理運営され、一層のサービス向上が図られるよう、指定管理者の管理運営状況を
点検・評価するために必要な事項を定めている。そして、P(計画)
・D(管理運営)・
C(点検・評価)・A(改善、点検・評価結果の活用)サイクルの一環として点検・
評価することを求めている。また、指定管理業務実施中に行うべきこととして、
「ア
指定管理者による自己点検・定期報告」のほかに「イ
利用者意見等の把握」を挙
げている。利用者意見等の把握は、指定管理者が適切な行政サービスを行っている
かどうかを判断するための重要な手段である。
そのようなことから、指定管理者との間の「名古屋市国際展示場管理運営協定書」
(以下「展示場協定書」という。)29条にも指定管理者は、市と協議のうえ、
「利
用者満足度調査その他適切な方法により管理運営の改善点を把握し、施設の管理運
営を適正に行わなければならない。
」
(1項)、指定管理者は、
「前項に規定する調査
の実施状況及び結果を甲(市)に報告するものとする。」
(2項)と規定されている。
19
(イ)主催者に対するアンケートについて
指定管理者は、主催者である「利用者」に対して、ポートメッセなごやを会場に
選択した理由、同施設を知ったきっかけ、別の候補の有無、利用した感想など合計
8項目の「お客様アンケート」を実施している。
しかし、管理運営収支決算報告書には、8項目のうち「職員の対応やサービスに
対する利用者の評価」として1項目の記載があるに過ぎない。
前述のように、利用者意見等の把握は、指定管理者が適切な行政サービスを行っ
ているかどうかを判断するために実施される重要な手続であるから、管理運営収支
決算報告書にもその判断に資する程度に有益な記載がなされるのが望ましい。
また、お客様アンケートの実施状況を見ると、平成21年度の利用者アンケート
送付総数は74件、回答件数は37件で回答率は50%であった。その後の回答件
数は、平成22年度48件、平成23年度37件、平成24年度22件となってい
る。
指定管理者によるアンケート送付総数や回答件数は必ずしも多くないので、指定
管理者に対し、アンケート送付総数、アンケート回答率をいずれも向上させるよう
要請するべきである。
(ウ)来場者に対するアンケートについて
来場者に関する利用者満足度調査に関して、管理運営収支決算報告書に記載され
た実施状況及び結果を見ると、以下のとおりその記載はわずかである。
まず、平成20年度の管理運営収支決算報告書には全く記載がない。平成21年
度のものには【来場者からの要望】として「ベンチが汚い→21年3月対応予定」
との記載がある。平成22年度の管理運営収支決算報告書にも【来場者からの要望】
として「トイレ入り口の段差→床等に危険表示、対応済」との記載があるが、平成
23年度にはやはり何ら記載がない。この他に、利用者アンケートの実施、集計等
についての報告はない。市によれば、催事の内容によって来場者の属性が大きく異
なり、来場者アンケート結果の分析が困難なため、最近は実施していないとのこと
であった。
しかしながら、指定管理者制度の導入により、市が来場者と直接接する機会が大
幅に減り、指定管理者のサービス水準を把握し業務改善等に活用するためには、指
定管理者による利用者満足度調査が非常に重要な手法となるはずである。
そこで市は、指定管理者に対し、展示場協定書に基づいてより実質的な利用者満
足度調査の実施を求めるべきである。なお、主催者による来場者アンケートと指定
管理者による来場者アンケートに重複等がないよう、市は指定管理者と協議の上、
主催者のアンケートに施設、会場、備品、利用の手続、職員等に対する感想などの
質問項目を盛り込んでもらいその回答部分を抽出して分析するなど、効率的な利用
者満足度調査の実施に努力されたい。
20
また、調査項目としては、次のような項目が考えられるので適宜抜粋して利用さ
れたい。
【利用者の特徴の把握】
・来場回数・年齢・性別・居住地(市内在住か等)
・来場の
ための交通手段・来場に要した時間・来場の目的
【サービスへの満足度の把握】
・全体としての満足度・職員の接遇(「職員」につい
ては、主催者側職員との区別は必要と考えられる)・施設・設備の衛生環境・清
潔感・催しの満足度・施設設備の安全性・安全管理・案内放送・表示のわかりや
すさ
【広報効果の把握】・来場しようと思ったきっかけ
(エ)利用者満足度調査に関する展示場協定書の規定について
さらに、アンケートの対象者を来場者と主催者に明確に区分して、利用者満足度
調査の実施を指定管理者に義務付ける規定を、展示場協定書に盛り込むべきである
と考える。
⒄
名古屋市中小企業振興会館について
利用者アンケートの充実を図られたい(意見)
ア
市と指定管理者との「名古屋市中小企業振興会館管理運営協定書」(以下「振興会
館協定書」という。)29条には、指定管理者は市と協議のうえ、
「利用者満足度調査
その他適切な方法により管理運営の改善点を把握し、施設の管理運営を適正に行わな
ければならない。」
(1項)、指定管理者は、
「前項に規定する調査の実施状況及び結果
を甲(市)に報告するものとする。
」(2項)と規定されている。
イ
主催者に対するアンケートについて
指定管理者は、主催者である「利用者」に対して、振興会館の認知経路、同施設の
利用会場、施設利用の主な目的など自由記載も含めて13項目の「利用者アンケート」
を実施している。市によればアンケート発送件数は338件、回答件数は167件で、
回答率は約50%である。指定管理者によるアンケート送付総数や回答件数は必ずし
も多くないので、指定管理者に対し、アンケート送付総数、アンケート回答率をいず
れも向上させるよう要請するべきである。
ウ
来場者に対するアンケートについて
指定管理者は市に対して「名古屋市中小企業振興会館管理運営収支決算報告書」
(以
下「振興会館管理運営収支決算報告書」という。
)を毎年度末に提出しているところ、
同報告書には、振興会館協定書で求められている利用者満足度調査の実施状況及び結
果の記載は、以下のとおりわずかである。
まず、平成20年度の振興会館管理運営収支決算報告書には全く記載がない。平成
21年度のものには【来場者からの要望】として「パブリックスペースのカーペット
が汚い。→カーペット清掃の実施」とのみ記載がある。平成22年度には【来場者か
らの要望】として「トイレが暗い→トイレ照明の改修工事」と、平成23年度には【来
21
場者からの要望】として「子ども向け施設の充実→キッズルームの設置(平成24年
運用開始)」と記載がある。しかし、平成24年度には【来場者からの要望】の記載
はない。この他に、利用者アンケートの実施、集計等についての報告はない。
名古屋市国際展示場に関連して述べたように、指定管理者制度の導入により、市が
来場者と直接接する機会は大幅に減ることになり、指定管理者のサービス水準を把握
し業務改善等に活用するためには、指定管理者による利用者満足度調査が非常に重要
となる。
そこで市は、指定管理者に対し、振興会館協定書に基づいてより実質的な利用者満
足度調査の実施を求めるべきである。なお、主催者による来場者アンケートと指定管
理者による来場者アンケートに重複等がないよう、市は指定管理者と協議の上、主催
者のアンケートに施設、会場、備品、利用の手続、職員等に対する感想などの質問項
目を盛り込んでもらいその回答部分を抽出して分析するなど、効率的な利用者満足度
調査の実施に努力されたい。
調査項目としては、より実質的に施設の在り方や指定管理者の業務改善につなげる
ことができるものとするべきであるから、「名古屋市国際展示場」の監査の結果に記
載したものと同様なものから適宜抜粋して利用されたい。
エ
利用者満足度調査に関する振興会館協定書の規定について
さらに、アンケートの対象者を来場者と主催者に明確に区分して、利用者満足度調
査の実施を指定管理者に義務付ける規定を、振興会館協定書に盛り込むべきであると
考える。
10
観光に関する外部監査の結果と意見
近年、我が国では、少子高齢化が進み生産力人口が減少するだけでなく、日本の人口そ
のものも減少し続けている。市でも少子高齢化の傾向は同様であり、定住人口が減少に転
じるのは時間の問題と考えられている。このような状況に対応していくため、国内外から
の交流人口を増やすことこそ、産業の活性化、雇用の創出、ひいては地域の活性化に寄与
すると期待されている。国際的な都市の間では、様々な分野で競争が激しくなり、市とし
ても、この地域の魅力を再認識し、観光資源を十分に活用してさらなる観光振興を図るこ
とで交流人口を拡大し、活力を生み出す必要がある。
尾張徳川家の居城として栄えた名古屋城をはじめとする歴史的な観光資源だけでなく、
上野動物園に次いで国内第2位の集客数を誇る東山動植物園、人気のなごやめしなど、多
彩な観光資源を最大限に活用し、市の活力を生み出していかなければならない。
⑴
名古屋おもてなし武将隊事業について(意見)
名古屋おもてなし武将隊事業に関して、事業の受託者には、市から(公財)名古屋観
光コンベンションビューローに対して支出された補助金から5499万9597円が
支出されている。内訳は、名古屋城における観光客のおもてなし4396万9800円、
22
市内外におけるPR活動として1102万9797円である。
このような費用の流れは、(公財)名古屋観光コンベンションビューローから受託者
への支払いがどの程度発生しているか不明であるが、事業委託費が結果として過大とな
っている可能性も否定できない。直接事業委託費が支払われる場合には、過大でないか
どうかをチェックする仕組みがあるが、他団体への補助金を介して支払われる場合、委
託金額の妥当性を確認することは困難である。
そこで、今後、おもてなし武将隊事業の委託契約をするにあたっては、(公財)名古
屋観光コンベンションビューローの補助金を介しての委託料支出の妥当性を検討すべ
きである。
⑵
名古屋城について(指摘・意見)
所在地
開設年度
規模
施設内容
入場料
有料駐車場
開園時間
休園日
収蔵品
重要文化財
ア
名 古 屋 市 中 区 本 丸 1番 1号
昭 和 5年 ( た だ し 、 天 守 再 建 は 昭 和 34年 )
特 別 史 跡 範 囲 面 積 : 約 50万 ㎡ ( う ち 有 料 区 域 : 約 25万 ㎡ )
城 郭 内 : 約 36万 ㎡
城 郭 外 ( 三 之 丸 外 堀 ) : 約 14万 ㎡
天守(博物館相当施設)、櫓、門、石垣、名勝二之丸庭園、カヤの木(国の天然
記念物)
500円 ( 市 内 高 齢 者 100円 、 団 体 割 引 あ り ) 、 定 期 観 覧 券 2000円 ( 市 内 高 齢 者 600
円 ) 、 徳 川 園 共 通 券 640円 ( 市 内 高 齢 者 160円 ) 、 中 学 生 以 下 無 料
普 通 車 180円 ( 30分 毎 ) 、 大 型 車 600円 ( 最 初 1時 間 。 以 後 30分 毎 に 600円 )
午 前 9時 か ら 午 後 4時 30分 ( た だ し 天 守 ・ 本 丸 御 殿 へ の 入 場 は 午 後 4時 ま で )
12月 29日 ~ 31日 、 1月 1日
5000点 余
本 丸 御 殿 障 壁 画 1,047面 、 隅 櫓 3棟 、 表 二 之 門 、 旧 二 ノ 丸 東 二 之 門 、
二之丸大手二之門(有料区域外)
名古屋城警備委託契約の変更契約書には、「本契約は、地方自治法施行令167条
の2第1項1号及び名古屋市契約規則19条別表6により、随意契約とし」と記載さ
れているが、これは、当該契約が変更契約ゆえに随意契約の理由の記載は不要である
にもかかわらず、随意契約の条文を引用した記載誤りとのことである。また、名古屋
城事務補助・発券・改札整理・エレベーター運転・3D操作業務委託契約の変更契約
についても、「地方自治法施行令167条の2第1項2号及び名古屋市契約規則19
条別表6により随意契約とし」という記載があるが、変更契約ゆえに特に随意契約の
条文を引用して記載する必要はなく、この記載も誤りであるとのことである。
変更契約の場合、契約締結前に検討すべきは契約変更が可能な場合に該当するか否
かである。しかるに、かかる記載誤りが散見されるということは、実務上、確認すべ
き契約変更の要件の確認が不足していることが推認される。
かかる現状は、本来契約変更では対応できず、別途契約すべき事案も変更契約とし
て処理してしまうリスクを含んでおり妥当でない。
変更契約締結にあたっては、変更契約で対応できるための要件に該当するか、別途
随意契約とすべきかを慎重に検討されたい。(指摘)
23
イ
名古屋城に関する業務委託契約のうち、一般競争入札で落札者が受託者となった3
つの契約について、変更契約を締結していた。
一般競争入札は、予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもって申込みを
した者を契約の相手方とする制度であり(地方自治法234条3項)、競争入札の方
法によって締結する契約において、価格の持つ意味は契約当事者を決定する重要な事
項であるから、これを変更する契約は、特に慎重に行われなければならない。
(意見)
ウ
名古屋城の来場者アンケート(第2回)の報告書には、英文自由記載欄の集計がな
かった。名古屋城の魅力を日本国内のみならず、世界に発信することを企図するなら
ば、やはり他の言語で記載されたアンケートの自由記載欄の意見も参考にすべきであ
る。(意見)
⑶
名古屋市歴史的風致維持向上計画について(意見)
名古屋市歴史的風致維持向上計画(案)は、国が策定する基本方針に基づき策定され、
地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律に基づく認定を受けることが想
定されている。
名古屋市歴史的風致維持向上計画が認定されると、当該計画を遂行するための事業に
ついて社会資本整備総合交付金による事業支援が受けられることとなる。具体的には、
都市公園事業、都市再生整備計画事業、街並み環境整備事業などについて当該交付金に
よる支援が拡充される。また、重点区域における公共・公用施設の整備に関する事業の
用に供する土地等を、個人・法人が地方公共団体又は歴史的風致維持向上支援法人(市
町村長の指定を受けて歴史的風致の維持及び向上によるまちづくり活動を行う公益法
人やNPO法人をいう。)に譲渡する場合には、所得税、法人税等について1500万
円の特別控除を受けることができる。
このような制度となっていることにより、名古屋市歴史的風致維持向上計画において
いずれの地域のいかなる事業を実施するかの価値判断が、個人や法人の利益と結びつき
うるところであるから、認定後に国から受ける支援が不公平かつ不適正にわたることが
ないよう配慮されたい。
⑷
名古屋市揚輝荘について(意見)
【設置根拠条例等】
名 古 屋 市 揚 輝 荘 条 例 (平 成 24年 名 古 屋 市 条 例 第 55号 )
【設置目的】建築遺産の保存及び活用についての市民意識の高揚を図るとともに、城山・
覚王山界わいに関する資料等の保管及び展示並びに文化活動の促進により市民文化の振興
に寄与するため
施設概要
ア
【 暫 定 公 開 開 始 】 平 成 19年
【 業 務 時 間 ・休 館 日 】
休 館 日 : 月 曜 日 ( 祝 日 ・ 振 替 休 日 の 場 合 は 直 後 の 平 日 、 12月 29日 か ら 1月 3日 )
開 館 時 間 : 午 前 9時 30分 ~ 午 後 4時 30分 ( 貸 室 は 午 後 8時 ま で 使 用 可 )
【入場料】
南園(聴松閣):有料
北園:無料
揚輝荘聴松閣修復整備工事は、一般競争入札により、2億6460万円で落札され
24
業務が委託された。入札予定価格は2億9436万6450円であり、落札率は89.
8%であった。
しかし、その後、当初設計では調査できなかった部分が想定と異なった等により、
契約金額が2億9613万7800円へ増額され、増額後の金額が入札予定価格を上
回っている。
揚輝荘聴松閣修復整備工事は、文化財建造物の修復であるため、その価値を損なう
ことのないよう、建築当時の部材をできる限り再利用することが原則とされており、
入札時に想定されていなかった老朽部材の取替え・修理などの変更の必要が生じ、ま
た、来館者用仮設通路の充実化や付属建物の老朽が著しいことから応急修繕する必要
が生じたためであれば、設計変更もやむなしと考えられる。
もっとも、一般競争入札は、予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもっ
て申込みをした者を契約の相手方とする制度であり(地方自治法234条3項)、競
争入札の方法によって締結する契約において、価格の持つ意味は契約当事者を決定す
る重要な事項である。そこで、これを変更する契約は、特に慎重に締結していただき
たい。
イ
入場者数は平成20年度(開館時)が最も多く、以後平成24年度まで毎年減少し
ていた。(なお、平成25年度については、聴松閣の公開開始に伴い、入場者が大幅
に増加しているとのことであり、これは聴松閣公開のPRが奏功したためと考えられ
る。)
名古屋市揚輝荘が市の歴史的資産としてまだ新しく、訪問・見学の未経験者が多い
ことも潜在的なチャンスであろう。
アンケートの回答からは、ターゲットごとにポイントを絞ったPR活動をすること
が適するのではないかと思われる。主な来場者の年齢層を考えると、見学型の施設と
してばかりではなく、喫茶室や北園などゆったりくつろげるスペースとしての利用を
より前面に押し出したPRをすることで、長期的な入場者増につながると思われる。
特定非営利活動法人揚輝荘の会では、市に寄贈される以前より、揚輝荘の魅力を伝
える活動をし、講演会やコンサート等の開催などを行っているとのことである。名古
屋市揚輝荘は整備途中であり、現時点での評価は難しいところであるが、管理運営に
あたり必要な入場料収入が得られるよう、今後も広く名古屋市揚輝荘の魅力を発信し、
積極的なPR活動により、県外や海外から市を訪れた際に、観光客が立ち寄るスポッ
トとしての地位を確立されたい。
⑸
東山総合公園について(意見)
東山動植物園は、動物園としては上野動物園に次ぐ入園者数を誇る施設であるが、東
山動植物園再生プランは、益々の入園者の増加を狙っている。この点、平成25年9月
のゾージアム公開は、単なる展示にとどまらず動物があたかも自然の中で群れて生活す
る環境を再現する「群れ飼育」の世界に市民が訪れるという国内動物園の公開方法に関
25
する潮流を加速するものとして期待できる。一方で、一時東山動植物園を超えるほどの
人気であった旭山動物園の入園者数が、既に減少傾向に転じていることは、環境が異な
るとはいえ、動(植)物園の経営の難しさを物語っている。
所在地
開設年度
名 古 屋 市 千 種 区 東 山 元 町 3-70
昭 和 12年 3月 3日 植 物 園 開 園 、 同 年 同 月 24日 動 物 園 開 園
昭 和 43年 動 物 園 及 び 植 物 園 統 合
構 造 ・ 規 模 総 面 積 : 59.58ha、 動 物 園 : 32.21ha、 植 物 園 : 27.37ha
施設内容
開園日
展 示 動 物 497種 13,412点
保 有 植 物 245科 ( 1,661属 ) 7,057種
開 園 時 間 : 午 前 9時 か ら 午 後 4時 30分 ( た だ し 、 閉 園 は 午 後 4時 50分 )
休 園 日:毎週月曜日(休日にあたるときは直後の休日でない日)
年 末 年 始 ( 12/29~ 1/1)
種別
入園料
大人
1人 1回
団体
( 30人 以 上 )
450( 90) 円
団体
( 100人 以 上 )
400( 80) 円
500( 100) 円
※中学生以下は無料
※ ( ) 内 の 料 金 は 名 古 屋 市 内 に 住 所 を 有 す る 65歳 以 上
定期観覧券
東山スカイタワー
との共通観覧券
2,000( 600) 円
640( 160) 円
東山動植物園は、面積も広く、展示数も多い。そのため、一日で動物園及び植物園の
双方を見て回ることは容易ではない。そのような中で、全ての入園者が双方の施設をじ
っくり観察しているのか疑問である。特に、動物園のみ訪れ、植物園を省略する入園者
も少なくないようである。しかし、動物園と植物園の融合は再生の基本方針としても掲
げられるところであり、動物園のみならず、植物園にもより多くの人々に足を踏み入れ
てもらいたい。そのためには、平成25年度に初めて実施された紅葉のライトアップの
ように、植物園へ直接誘引する企画や展示の提供はもちろん重要であるが、改めて来園
しても良いと思わせるきっかけ作りも必要である。市が行った各種アンケート調査によ
ると、入園者の利用状況は「今回が初めて」、
「数年に1回」、
「年で1~2回」が大半で
あり、動物園を見て満足し、植物園に特別の関心を抱かないまま退園した客には、余程
魅力有る企画がない限り、後回しにした植物園のために改めて料金を払って見に来るよ
う期待することは難しい。そこで、例えば2度目の来園時に使用できる割引券の導入な
ど、リピーターに転じてもらう工夫も検討に値するのではないかと考えられる。現在で
も定期観覧券が販売されているが、通常料金では4回分に相当し、その購入者は年間4
回以上利用しようという意欲ある利用者に限られる。さらなる入園者増加を図るために
は、これまで定期観覧券を購入するほどの意欲を持ち合わせていなかった単発的な入園
者にも、利用頻度を高めてもらうことが必要である。「今回が初めて」、「数年に1回」、
「年で1~2回」の入園者が繰り返し来園してくれるようになれば、入園者数の増加も
期待できる。
また、例年入園者数の落ち込む夏及び冬については、別途入園者数を増加させる工夫
が必要である。既にイベントを実施する、団体旅行を誘致する等の工夫は見受けられる
が、気候による影響は不可避であり、さらなる工夫として、気候に合わせた対策も検討
する必要である。例えば、動植物の生態等と絡めて避暑又は避寒に適した展示施設の情
26
報をウェブサイトに掲載する等、来園の抵抗感を減らすための情報提供に努めることも
有益である。あるいは、広報なごや等の広報媒体に、入園者数が落ち込む期間や雨の日
に限定した、入園料無料クーポン券や割引券を印刷することも検討してよいように思わ
れる。
さらに、展示物に関するリアルタイムな情報提供を加速されたい。現在でも、職員、
ボランティア、愛好家による展示物の魅力の伝達は、それぞれの展示場所で行われてい
る。特に、動物園では、動物が人と対話しているかのような動作を引き出す職員が時折
り現れて数分間実演したり、日中は隠れたまま姿を見せない動物が偶々姿を見せている
ことを周知している愛好家がいれば、それだけでその場の雰囲気は明るく賑やかになる。
植物園でも、桜や紅葉の状況など日ごと変化する様子を解説するだけで、その魅力は増
大する。しかし、残念ながらそのような情報はその場に居合わせた者にしか伝わらない。
現在は、園内放送で入園者に伝達しているが、加えて、ソーシャル・ネットワーキング・
サービス等を通じて園外の市民にも伝達していただければ、入園者数の増加につながる
と思われる。
⑹
久屋大通公園について(意見)
市は、2度の活用調査を経て、テレビ塔の観光施設としての意義を認めている。もっ
とも、所有者かつ運営者であるテレビ塔(株)が自立的な再生を検討していることを尊
重し、その検討結果に応じた準備の選択肢を示すものにとどまっている。平成24年度
は、テレビ放送が終了して迎えた初年度であり、空いた空間の活用によるイベント展開
なども始まったばかりであるから、テレビ塔(株)としても、今後の所有形態等につい
て直ちに結論を出すことは困難であるものと思われる。
しかし、テレビ塔の所有権、運営のあり方にかかわらず、テレビ塔が名古屋のシンボ
ル的な位置を占める重要な観光資源であることに変わりはなく、今後ともその存続は当
然の前提とすら思われる。そして、観光戦略ビジョンの表現を借りれば「年間を通じた
賑わいづくり」のため、必要に応じてテレビ塔(株)と協力し、民間の活力をさらに取
り入れ、長期的には世界に知れ渡るような観光スポットに成長することを期待したい。
このように考えると、長期に渡りテレビ塔の責任ある整備・運営を維持するためには、
引き続き市としてその所有権を取得することも視野に入れて積極的に検討するべきで
あると考える。
⑺
なごやめし・観光物産展について(意見)
ア
なごやめし博覧会の知名度向上に向けた広報活動のあり方について
なごやめし博覧会は、平成23年度より始まった新しい試みであり、「東海ウォー
カー」に広告を掲載するなど積極的な広報活動を行ったことは評価されるが、平成2
4年度の事業報告書によればチケットの販売数は3038枚と、作成部数1万200
0枚を大きく下回る結果となったようである。
なごやめしそのものは既に知名度が高いので、この博覧会の目的は参加店と街その
27
ものに賑わいをもたらすことにあると考えられる。同様に、地産地消をテーマに街の
賑わいづくりを目指すイベントとして、市も後援する「名古屋グルメ選手権NAGO
-1グランプリ」(栄ミナミ商店街連盟主催)も同時期に行われている。
そこで、なごやめし博覧会開催にあたっては、NAGO-1グランプリとの相乗効
果を狙い、協働してPRを行うなどして、イベントの内容、参加方法を広く知らしめ
るべく益々広報活動に力を入れられたい。
イ
利用者からの意見を吸収する必要性について
なごやめし博覧会の開催にあたっては、参加店からは詳細なアンケートによる意見
聴取を行っている。
これに対して、利用者からの意見はチケットの利用状況や、新なごやめしコンテス
トに対する投票という形で示されるが、なごやめし博覧会全体に対する意見は吸収で
きていないと思われる。そこで、利用者に対しても、博覧会の知名度、情報の入手経
路、参加店に対する評価、参加して欲しい店舗の情報、チケットの販売方法や料金設
定に関する意見などについてアンケート調査するなどして、多様な意見を取り入れ、
今後の開催に役立てていただきたい。
ウ
観光物産展の事業報告について(意見)
全国主要都市において開催された観光物産展やイベントなどを活用して、積極的に
観光客の誘致を図る活動を行っている。もっとも、名古屋観光プロモーション実行委
員会が市に提出した事業報告に記載された実施事業は、「観光PRステージ」、「観光
パンフレットの提供」、
「観光案内」及び「クイズ」であるが、それ以上の具体的記載
はなく、例えば、訪問先で提供した観光パンフレットの部数や、イベントに参加した
人数などは不明である。旅行社セールスについても、訪問日と訪問先の記載しかなく、
具体的にどのような活動を行ったのか不明である。
また、事業報告書は、成果として、主にテレビや新聞などのメディアに取り上げら
れたことを掲げている。確かに、メディアへの露出は、名古屋の魅力を発信したこと
に関する成果であるし、名古屋の知名度アップとイメージ創出に対する効果も期待で
きる。しかし、観光客の誘致にどれほど効果的であったのかを知ることができるもの
ではない。このようにメディアへの露出を成果とするだけでは物産展等を活用したプ
ロモーションによって市へどれだけ観光客が誘致されたかどうかは判断できない。
市としては、具体的な事業報告を求めるとともに、観光客誘致の成果をはかる具体
的指標の設定を検討するべきである。この場合、参考とすべきは、観光物産展などに
併せて実施したイベントに参加した客、旅行社セールスに応じた旅行社社員、メディ
アで名古屋の情報に触れた視聴者らの受け取り方であろう。これら情報の受け手に対
するアンケートやヒアリング調査を頻繁に繰り返し、名古屋の知名度、イメージ、訪
問意欲、興味や関心の対象等に関する意見がどのように推移するかについて、注意深
く見守っていくべきである。あるいは、観光物産展で配布するパンフレットに、名古
28
屋を訪れた際に使用することのできる割引券などを組み合わせ、その後の使用枚数か
ら効果を把握することなども有効ではないかと考えられる。同様に、旅行社セールス
を行った結果、旅行社においてどのような商品が企画されたかなど追跡調査も検討す
べきである。
⑻
名古屋まつりについて(意見)
都市名
名古屋市
ア
行事名等
メインイベント
主催
名古屋まつり協進会
郷 土 英 傑 行 列 ( 織 田 [名 誉 会 長 ]愛 知 県 知 事
名古屋まつり
信長隊・豊臣秀吉
[名 誉 副 会 長 ]名 古 屋 商 工 会
H25 10/19~ 20
隊・徳川家康隊な
議所会頭
( 平 成 24年 度 の 来
ど ) が 名 古 屋 の 市 街 [会 長 ]名 古 屋 市 長
場 者 数 約 229万 人 )
地を行進する
[構 成 ]愛 知 県 、 名 古 屋 市 、
名古屋商工会議所等
平 成 25年 度 事 業 費
約 1億 2248万 円
[内訳]
名 古 屋 市 : 1億 1100万 円
愛 知 県 : 50万 円
名 古 屋 商 工 会 議 所 : 50万 円
企 業 等 寄 付 金 : 750万 円
雑 収 入 ・ 繰 越 金 : 約 300万 円
結論
民間に任せられる部分は民間に任せ、市として行わなければならない事業を、政策
目的に照らして限定するとともに、市が関与する場合でも、民間の力を活用すべきで
ある。このような観点からは、名古屋まつりに対する市の負担割合は、さらに減少さ
せるための努力を一層強めるべきである。
イ
公的関与のあり方に関する点検指針と民間活力の積極的な導入
市は、平成15年3月、「公的関与のあり方に関する点検指針」(以下「点検指針」
という。)を決定し、市の関与の必要性や実施主体の妥当性など、公的関与のあり方
を整理し、施策・事務事業の点検・検証・見直しを進める際の指針として、行政評価
においても活用している。そして、行政評価において、名古屋まつり負担金もこの視
点からも評価している。
名古屋まつり負担金の所管部局である総務局は、「公的関与の性質別区分」のなか
で、「市の個性、特色、魅力を継承・発展・創造し、あるいは国内外へ情報発信する
ことを目的とする事務事業」にあたるとしている。この区分に該当する事業は、公的
関与の必要性は認められるが、行政と民間の活動領域の割合は、他の区分に比べれば、
行政の活動領域が最も狭く、民間の活動領域が最も広いことになる。
「行政評価(内部評価)の実施結果
-平成24年度実施事業-」にも、主な見直
しの視点として次のように記載されている。「民間が公を担う場面が拡大しているこ
とを踏まえ、
『民で行うべきは民に』委ねるとともに、
『民でできるものは民に』委ね
ることを基本とし、行政の関与の必要性がない場合には、民営化等を検討するという
観点から点検します。また、市の関与が必要な場合であっても、公的関与の度合いが
小さいものについては、サービスの提供主体は民間活力を積極的に導入し、民間委託
等を検討するという観点から点検します。」
このように、市の関与が必要な場合であっても、事業主体は民間活力を積極的に導
入するべきである。
ウ
事業の精査と民間活力の活用の経過
29
市から名古屋まつり協進会(以下「協進会」という。)に交付された負担金は、平
成元年には3億4000万円、平成4年は2億4500万円であったが、平成24年
には、1億2100万円へと大きく減少している。減少した大きな要因は、実施行事
を見直したことにある。たとえば、平成4年に実施していた、「日本各地のまつりの
再現(光の伝統祭)」
、
「海外の舞踏」
、
「花バス」
、
「ナゴヤ・バンド・フェスティバル」、
「光のファンタジー」などを現在は実施していない。これは、協進会が事業を精査し
てきた結果である。
一方、現在も実施している事業においては、協進会は、郷土英傑行列の各隊に協賛
している市内百貨店には、
「名古屋まつり郷土英傑行列行事交付金要綱」に基づいて、
「交付金」を交付している。これに対して、例えば「フラワーカーパレード」や「子
ども会みこしパレード」などには、「名古屋まつり行事補助金要綱」に基づき、それ
ぞれの実施団体に対して、名古屋まつり行事「補助金」を交付して実施しており、協
進会のみで実施しているものではなく、民間の活力を活用している。
さらに、平成24年からのソーシャルタワーマーケット、平成25年のひまわりフ
ェスタなど、協進会の費用負担なしで、名古屋まつり会場の一部を完全に民間団体の
企画・運営にゆだねる新しい取り組みも行いつつある。
エ
協賛獲得と民間主体の事業実施により市負担割合の減少と事業の充実を両立
平成25年度に行われた行政評価の外部評価では、名古屋まつり負担金について、
弁護士、公認会計士、大学教授、企業経営者などの有識者の議論を経たうえで無作為
抽出の市民判定員による評価がおこなわれ、結果は、
「廃止・撤退」1、
「見直し(縮
小・市の関与の縮小・その他)」12、「継続」17で、「継続」の判定であった。た
だし、継続の17のうち、「経費の節減」が9、「収入の増加」が6、「現行のまま継
続」は2であり、より効率的な経費執行や、協賛などによる収入の増加により、一層
事業を充実していくことを求めている。
今後は、民間企業団体からの協賛を獲得し、協進会の費用負担のない民間主体の事
業実施の拡大に努めることで、まつりの一層の盛り上げをはかるとともに、名古屋ま
つり全体に対する市の実質的な負担割合と、協進会予算に対する市の負担割合を一層
縮小していくべきである。
⑼
マラソンフェスティバル
ア
ナゴヤ・愛知について
財務の透明性について(意見)
市は本件負担金についても、補助金に準じた交付要綱等を定め、支出の根拠を明ら
かにし、交付をすべきである。
負担金は、いくつかの種類に分けられるが、マラソンフェスティバルの負担金は、
「任意に各種団体を地方公共団体が構成しているとき、その団体の必要経費に充てる
ために構成各団体が取り決められた費用を支出する場合」(月刊「地方財務」編集局
編『[七訂]地方公共団体歳入歳出科目解説』ぎょうせい、315頁)に相当すると、
30
市は考えているようである。
しかし、名目的な主催が実行委員会であっても、実質的事業主体が中日新聞社であ
れば、市の負担は、中日新聞社の行う事業への補助金という色彩が濃い。
このような指摘に対して、市は「名古屋シティマラソンは名古屋市・名古屋市教育
委員会が主催であるため、負担金が適当。また、名古屋市が支出する負担金は、名古
屋シティマラソンに係る経費として算出されている。」との認識であった。
なるほど、名古屋シティマラソンは、市の事業であり、それを中日新聞社が主体と
して行うとなれば、委託事業としての側面もある。もちろん、市教育委員会から実行
委員会の事務局に1名が参加していることを考慮すれば、純粋な補助でも委託でもな
いということになる。
このように、マラソンフェスティバル
ナゴヤ・愛知に対する市の負担のあり方に
ついては、法律的にクリアに割り切れない曖昧なところがあるので、仮に負担金とす
る考えを維持するとしても、交付要綱を定めるなどして、支出の根拠を明確にし、収
支の透明性を高めていく必要があると考える。
イ
組織運営の透明性について(意見)
東京マラソンの成功を機に、大都市で、フルマラソンの市民大会が開催され、ある
いは開催が検討されている。大阪マラソン、神戸マラソン、京都マラソンなどはすで
に開催されており、平成27年には、3万人規模の横浜マラソン(仮称)が新しく開
催されると報道されている。
観光庁は、平成23年6月に、「スポーツツーリズム推進基本方針~スポーツで楽
しむ国・ニッポン~」を公表し、スポーツとツーリズムの融合を通じて、健康増進、
産業振興の効果が期待されるとしている。また、スポーツを活用した観光まちづくり
を提唱している。この基本方針の中で、スポーツを、プロ野球のように「世界的にも
ハイレベルな“観るスポーツ”」
、
「世代を超えて人気を集める“するスポーツ”」
、
「地
域や国が一体となって携わる“支えるスポーツ”」に分類し、マラソン及びマラソン
大会を、2番目と3番目のスポーツに位置づけている。
マラソンフェスティバルを同様に位置づけるならば、マラソン運営における地元の
市民ランナーをはじめとする地域住民の協力、理解は不可欠である。そのためには、
財務のみならず、組織運営、実行体制の透明性、効率性が求められる。
自治体主導の都市マラソンとして参考になるのは、東京マラソンであろう。東京マ
ラソンの運営は現在、
(一財)東京マラソン財団が行っている。
(一財)東京マラソン
財団は、運営の自立と効率性、透明性の向上のために、平成22年に東京都と日本陸
連により設立された。(一財)東京マラソン財団のホームページを閲覧すれば、資材
の調達や、委託などに関してきわめて透明性が高いことがわかる。
前述したように、2年後には、横浜マラソンがウィメンズマラソンの翌週に開催さ
れる予定である。通常の市民ランナーであれば、2週続けてフルマラソンを走ること
31
はないため、横浜マラソンに負けないよう全国各地からランナーを呼び込むようなマ
ラソンの魅力づくりに力を入れるべきである。
ウィメンズマラソンのエントリー方法及び参加者の決定方法を平成26年からは
先着順から抽選へと変更したため、抽選方法の公正さについても今後は求められるこ
とになる。
実行委員会を法人化するなどして、透明性を向上するべきとの考えに対しては、
「財
務体質がぜい弱な地方マラソンの運営の実情を全くかえりみていない」との反論が予
想される。たしかに、天候等の理由で中止となった場合の費用負担のあり方を考えれ
ば、現状のまま直ちに独立採算を求めることは無理であろう。しかし、マラソンフェ
スティバルが全国のランナーの注目と信頼を集め、今後さらに発展を続けるためには、
財務だけでなく、組織運営の面でも透明性を高めるべく、法人化を目指すべきである
と考える。
ウ
名古屋シティマラソンの魅力向上(意見)
名古屋シティマラソンは、名古屋ウィメンズマラソンとの同日開催により、制限時
間が緩和されるとともに参加定員も拡大し、タイムを競うマラソンであると同時に楽
しむマラソンの面が一層強くなった。しかし、華々しく賑やかや名古屋ウィメンズマ
ラソンと対照的に影が薄い印象が否定できず、エントリー数の変化にも影響している
ように思われる。
ランナーにとって出走直前の期待感・緊張感、競技中の高揚感もさることながら、
ゴール後の充実感・達成感を家族や知人と共有し、余韻を楽しむことができてこそ、
楽しむマラソンを満喫できると思われる。名古屋シティマラソンのゴールも、名古屋
ウィメンズマラソンのゴールであるナゴヤドームと同様に、ゴールしたランナーをも
てなすような演出をするなど、名古屋シティマラソンの魅力を向上させる方法を検討
すべきである。
最後に、沿道の賑わいについても民間活力を活用するべく民間主体のイベントを多
数導入し、名古屋の街全体が国内外のランナーをよろこんで迎え入れている雰囲気を
醸すため各観光施設と連携してこのイベントを盛り上げ、出走者数や経済効果等の面
で、マラソンフェスティバル
ナゴヤ・愛知が世界に誇れる大規模イベントに成長す
ることを期待したい。
以上
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