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不動産の譲渡所得税制等をめぐる若干の整理と研究

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不動産の譲渡所得税制等をめぐる若干の整理と研究
土地総合研究 2014年夏号
83
研究ノート
㻌
㻌
㻌
㻌
不動産の譲渡所得税制等をめぐる若干の整理と研究
荒井 俊行
㻌
はじめに
いがないとは言えないであろう。以下では、主と
毎年、 月の税制改正時期になると、住宅・土
して高度成長期以降の昭和 年代から 年近い
地に関する税制は、その時々の政策課題や経済情
期間にわたる不動産にかかる譲渡所得税制の足跡
勢に対応するために、
それこそ年中行事のように、
をたどり、特にマクロ的な土地の取引総量に不動
相当な数の特例措置が講じられる。
平成 年度の
産の譲渡所得税制がどの程度の影響を与えたのか
税制改正項目を見ると、例えば、譲渡所得に係る
を、
簡単な回帰式を用いて検証してみたいと思う。
「特定住宅地造成事業等のための 万円特別
控除」
(租税特別措置法 条の )の対象に、い
不動産の長期譲渡所得税制の変遷について
わゆるマンション建て替え円滑化法の改正とリン
まず、所得税法本則は、不動産の譲渡と他の資
クする形で、
「構造耐力が不足している老朽化マン
産(たとえばダイヤモンドやゴルフ会員権)の譲
ションの敷地売却にかかる譲渡」などが加わって
渡とを区別することなく同等に扱い、
昭和 年代
いて、項目数の増加のみならず、控除項目の性格
前半までは、保有期間 年を境にして、 年超の
も多様化している。最近でこそ、個人にかかる不
保有を長期、 年以下の保有を短期とし、前者は
動産の譲渡所得税制は、長期保有、短期保有別に
長期の期間をかけて生じた所得であることから、
分離比例課税制度が安定的に維持されているが、
一時所得と同様に、所得の 分の を総合課税の
昭和 年代から平成に至る時期まで期間を回顧
対象とし、後者についてはその全額を総合課税と
すると、この間、根幹の税率部分までもが目まぐ
する建前をとっていた(所得税法 条 項、
るしく変化しており、政策課題への即応という側
条 項)
。しかし昭和 年以降、不動産とその他
面はあるものの、また数年もすれば、税制が変わ
資産にかかる譲渡所得税制とを区分し、不動産に
るであろうという人々の憶測や期待を呼び、売り
対しては分離比例課税税制を導入する一方、その
惜しみあるいは買い急ぎなど不動産の取得・売却
他資産に対しては従来の総合課税制度を維持した。
行動に少なからぬ不安定的な影響を与えたと考え
その後、 年を境とする長期、短期の区分は、列
られる。不動産の政策税制は、土地・住宅政策を
島改造論の時期を経て、不動産への投機抑制の必
推進する上ではあくまで補完的な役割にとどまる
要性が強く認識されるようになった結果、昭和 べきであるという政府税制調査会が堅持していた
年( 年)から昭和 年( 年)までの間
税制補完論の立場から見ると、譲渡所得税制は、
は、保有期間 年以下が短期譲渡とされた(その
やや場当たり的かつ便宜的に変更されすぎたきら
後長短の期間区分は 年超か 年以下かの区分に
84
土地総合研究 2014年夏号
復帰)
。しかも、昭和 年( 年)以降は、長
る不公平税制ではないかという批判もある中で、
短の期間区分の基準日が、取得・譲渡の日ではな
今日で言うトリクルダウン理論( 「徐々に流れ落
く、譲渡年の 月 日現在にまで繰り上げられ、
ちる」という意味で、富裕層への住替え促進政策
保有期間の短い土地の譲渡に対して厳し目の扱い
を行うことが、順次住宅困窮者の住替えを容易に
となり、この考え方は、今日までそのまま維持さ
して、それらを通じた居住水準向上の効果が国民
れている。
全体に波及してゆくこと)に依拠して復活した。
更に昭和 年( 年)から昭和 年(
この制度は、課税の繰り延べという税制上異例の
年)までは、一定額以上の不動産の長期譲渡所得
恩典を不動産譲渡者に付与するものであったため、
には 分の あるいは 分の 総合課税の上積税
バブル期の昭和 年
( 年)
から平成 年
(
額を課税するという、個人の他の所得の多寡に依
年)まで、金持ち優遇政策との批判を受けて再度
存する事前の税負担の予測がかなり困難で複雑な
廃止されたが、適用要件を、譲渡年の 月 日現
譲渡所得課税制度を導入し、相当規模の不動産取
在の保有期間が 年超かつ、
居住期間が 年以
引をある程度抑え込もうという意図を含んだとも
上という極めて厳格な要件の下で、
平成 年
(
みられる税制が導入された。このため、税率が高
年)に三度目の復活を遂げ、今日までその性格が
くなる取引金額の大きい不動産譲渡を回避しよう
維持されている。
という不動産譲渡者の行動を誘発し、仮に不動産
このように廃止、復活を繰り返した居住用財産
取引を行うとしてもできるだけ取引金額を抑制し
の買換え特例制度であるが、最後の復活後も、特
ようとして、土地の切り売りが促進された可能性
例の不公平感は容易に払拭されず、その後何度も
がある。現に、小規模開発が増加し、敷地の分割
課税の適正化の面から適用要件の厳格化が図られ
によるミニ開発が問題視され始めたのがこの税制
て来ており、具体的には、居住用財産買換え特例
の適用時期と軌を一にしている。
制度の適用の要件として、もともとは青天井であ
不動産取引への課税強化が進む中で、居住用財
った買換えの際の譲渡資産価格の上限が順次の引
産の譲渡については、
住宅政策上、
住替えの促進、
き下げを経て、
平成 年度の税制改正においては、
居住水準の確保を実現しつつ、その譲渡にかかる
億円にまで縮減されている。なお、 年超保有
税負担を極力抑制する必要があったため、昭和 という同様の要件を満たしながら、買換えを行わ
年( 年)に居住用財産の譲渡にかかる譲渡所
ない場合の譲渡に対しては、 万円特別控除の
得の特別控除制度が創設され、順次その上限額が
みの特例では買換え特例とのバランスを欠くこと
拡大されてゆき、昭和 年( 年)以降は、
になるため、平成 年以降は、①居住用財産の買
直近の 万円控除がほぼ倍増されて、
最大 換え特例制度か② 万円特別控除及び控除後
万円になっている。そして、この金額が今日まで
の譲渡所得が 万円以下の部分は %、
年間維持され、特に支障なく運用されているこ
万円を超える部分についての %の分離比例課
とを考えると、この 万円特別控除制度が、当
税による優遇税制、とのいずれかが選択的に適用
時としてはいかに大胆なものであったかが推察で
されることとなっている。
きる。しかし、特に大都市部では、全国一律の ところで、昭和 年代後半以降、住宅数の絶対
万円控除制度のみでは、税負担なしに住替えに伴
的な不足状態が解消したのちも、人々の住宅取得
う従前の居住水準の維持に支障が生ずるケースも
意欲は根強い状況が続き、住宅敷地の供給源とし
あったので、昭和 年( 年)に、昭和 年
て都市近郊の市街化区域農地は最も有力かつ適地
( 年)に創設され、昭和 年( 年)に
性に優れたものであった。このため長期保有の市
一端廃止された居住用財産に関する買換え特例
街化区域農地の譲渡について、それが三大都市圏
(課税の繰り延べ)制度が、高額所得者を優遇す
の特定市に所在する場合は、実際上は、自治体が
土地総合研究 2014年夏号
制定する減額条例により骨抜きになったものの、
建前上は宅地並み課税という固定資産税の追い出
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いる可能性も否定できないことを一言付記する。
し的な税制が用意されたこともあり、その吐き出
長期譲渡所得税制が土地の取引面積に与え
しを容易にするため、宅地への転用が制限される
た影響について
代わりに固定資産税課税を農地並み課税にとどめ
不動産に係る譲渡所得税率は土地譲渡の円滑化
る生産緑地制度が整えられる平成 年前後までの
の観点から、税額の予見可能性を高める分離比例
間、
(特定市に限らず)全国での長期保有の市街化
税率が望ましいと考えられており、現実に、終戦
区域農地の譲渡に対し、通常の優遇措置をさらに
後昭和 年代に至る期間及び昭和 年代一時期
上回る特別の軽課制度が継続された。その後、こ
を除き、簡明な分離比例課税制度が維持されてい
の特例制度はその必要性が減じたことから廃止さ
る。これは総合課税により、不動産の譲渡に超過
れ、現在は、一般の不動産の譲渡所得税制に吸収
累進税率が課税されると、取引自体の先延ばしの
されている。なお、平成 年以降の市街化区域農
弊害や税の節約を目指とする不動産の切り売り等
地の減少状況については、
後段 の中で言及する。
を助長し、大規模取引を抑制する凍結効果が発生
こうした中で短期譲渡所得(基本的には保有期
するため、望ましくないと考えられたためであろ
間が譲渡年の 月 日現在で 年以内、一時期は
う。また、譲渡所得にかかる分離比例税率につい
保有期間が 年以内)については、税率が時期に
ては、他の税制全体とのバランスを保つように定
より差異があるが、土地転がしや売買の転売利益
められなければならないが、他の条件が変わらな
狙いの投機的な土地取引を抑制し、売買差益を吸
いとすれば、低い方が土地取引の流動化に寄与す
収する観点から高い税率により、重たい税金を課
る度合いが大きいであろうと考えられる。
する重課の仕組みが今日まで維持されている。
ここで、不動産譲渡所得の大宗を占める長期譲
最後に、バブル期に取得した居住用財産を売却
渡所得にかかるその時々の税率が土地取引量にど
する際、長らく不動産価格の値下がりが継続した
のような影響をもたらすのかを計量的に検証でき
ことにより、長期保有土地の譲渡であっても譲渡
ないかを考えてみよう。計量期間としては長期的
損を生ずることが一般化し、これを放置すること
な趨勢・傾向を把握するため、データをおさえら
は円滑な住替えや居住水準の確保のうえで大きな
れた昭和 年~平成 年の 年間をとる。
長期
阻害要因になることから、異例ではあるが、譲渡
譲渡所得税率は概ね分離比例税率なので、説明変
年の 月 日現在で 年超の保有期間を持つ居住
数としてはその時々の長期譲渡所得税率(住民税
用財産の買換え又は譲渡について、それぞれ平成
率を除く。
)を用いる。譲渡所得金額に応じて比例
年、平成 年から、譲渡年については他の所
税率が異なる場合は、
やや技巧的になるがその単
得との損益通算を認めるとともに、その翌年以降
純平均値を説明変数とした。また、上乗せ分に総
年間を限度に、合計所得金額が 万円以下の
合課税税率が併用される場合は比例税率と超過
年の個人の譲渡所得税に限り、住宅ローン借入に
累進税率の最高値との単純平均値(たとえば昭和
係る一定の要件の下で、譲渡損の繰り越し控除を
年には譲渡益 万を超える部分には 分の 認める制度が創設されている。以上、不動産の譲
総合課税の上積税額が課税されていたが、当時の
渡所得税制について、不十分ながらその大きな流
超過累進所得税率の最大値は であったので れを説明した。これらを一覧表にまとめたのが下
分 の 総 合 課 税 の 最 高 税 率 は 75% × 0.75 =
記の経年変化の一覧表(図表 )であり、文献に
当たって確認に努めたが、必ずしも税法の条文を
しっかりと照合したわけではないため、筆者の無
知及び調査の不十分さゆえに大きな誤りを含んで
56.25%となり、 万円以下の部分に適用される
分離比例税率 との中間値(20%+56.25%) ÷
2 = 38.125%)を、また、昭和 年のように 段
階の税率が適用されていた時期は、同様に、比例
86
土地総合研究 2014年夏号
図表 不動産に係る譲渡所得税の変遷
㻝㻥㻡㻜
㼨
㻡㻞
年度
長期保有の定義㻖㻞
㻡㻟
㼨
㻢㻠
㻢㻡
㼨
㻢㻤
3年
超
なし
課税方法
平均
課税
総合課税
特例
なし
㻜㻚㻟㻡
(63以降)
㻢㻥
㻣㻜
㻣㻝
㻣㻞
㻣㻟
㻣㻠
㻣㻡
㻣㻢
㻣㻣
㻣㻤
㻣㻥
㻤㻜
㻤㻝
5年超
分離課税(定率)
分離課税と総合課税(上積税額)
特別控除(百万円)
居住用財産
農地
㻝㻜
特例なし
㻝㻚㻡
㻝㻣
㻟㻜
㻞㻚㻡
㻡
税率(%)
㻜㻙㻞㻜
㻞㻜
㻞㻜
㻞㻜㻙㻠㻜
所得
(百万円)
㻠㻜㻙㻢㻜
平均
総合課税
課税㻖㻟
㻖㻠
㻝㻜
㻝㻡
㻞㻜
㻟㻛㻠
総合課税㻖㻡
㻢㻜㻙㻤㻜
㻝㻛㻞
総合課税㻖㻢
㻟㻛㻠
総合課税
㻤㻜㻙
都市圏にある農地に対する税率(%)
㻝㻡
㻜㻙㻞㻜
所得
(百万円)
㻝㻡
特例なし
㻞㻜㻙㻠㻜
㻝㻜
㻝㻡
㻞㻜
㻞㻜
㻠㻜㻙
超長期居住用財産の特例(%)㻖㻤
なし
優良住宅地造成特例
㻜㻙㻞㻜
所得
(百万円)
㻝㻡
特例なし
㻞㻜㻙㻠㻜
㻝㻛㻞
総合課税
㻠㻜㻙
短期保有特例(%)
居住用財産買換特例
5年以内 40㻖㻥
なし
特例
なし
特例あり
特例なし
居住用財産買換の譲渡損失特例
特例なし
居住用財産の譲渡損失特例
特例なし
(注)
*1
*2
*3
*4
*5
*6
税率は所得税の税率であり、住民税率を含まない(住民税率については、右記の参考資料を参照)。
1969年以降の保有期間は譲渡年の1月1日現在で判断される。
譲渡所得を5年間に平均化したうえで、累進課税。
譲渡所得金額の1/2をその他の所得と合算して累進税制に基づいて課税される。
2000万円を超える譲渡所得金額の3/4をその他の所得と合算して上積み税額を求め、それと2000万円までの税額(税率20%) とを合算する。
4000万円を超える譲渡所得金額の1/2をその他の所得と合算して上積み税額を求め、それと4000万円までの税額(税率20%)とを合算する。
譲渡所得金額が8000万円を超える場合には、その総額の3/4を用いて、同じように上積み税額を求め、これらを合計する。
*7 1993年の税制改正により、相続税の支払いのために土地を売却した場合には、譲渡所得金額から相続税の支払い額を控除できるようになった。
*8 超長期居住用財産の特例は居住用財産の特別控除との併用が可能である。両者とも居住用財産買換特例とは併用できない。
*9 総合課税による上積税額×110%と40%の分離課税額のいずれか多い税額となる。
*10 総合課税による上積税額×120%と50%の分離課税額のいずれか多い税額となる。
*11 居住用財産の買換えに伴い生じた譲渡損失の繰越控除(上限3年)は、合計所得金額が3000万円以下の年のみに適用(繰越不可)。
買換え資産に住宅ローン残高がある場合に限り、かつ、敷地面積が500㎡以下の部分のみに適用がある。譲渡年の1月1日現在の余裕季刊は5年超。
*12 居住用財産の譲渡に伴い生じた譲渡損失の繰越控除(上限3年)は、合計所得金額が3000万円以下の年のみに適用(繰越不可)。譲渡資産に
住宅ローン残高がある場合に限り、住宅ローン残高と譲渡資産の譲渡金額との差額を上限に適用がある。譲渡年の1月1日現在の余裕季刊は5年超。
*13 譲渡年の1月1日現在の保有期間10年超に適用される。
*14 譲渡年の1月1日現在の保有期間10年超かつ居住期間10年以上に適用される。
(参考)大蔵省(現財務省)『日本の税制』『日本の土地税制』及び国税庁ホームページ資料により土地総合研究所において作成。
土地総合研究 2014年夏号
㻤㻞
㻤㻟
㻤㻠
㻤㻡
㻤㻢
㻤㻣
㻤㻤
㻤㻥
㻥㻜
㻥㻝
㻥㻞
㻥㻟
10年超
㻥㻠
㻥㻡
㻥㻢
㻥㻣
㻥㻤
㻥㻥
㼨
㻞㻜㻜㻟
㻞㻜㻜㻠
㼨
㻞㻜㻝㻠
5年超
分離課税と総合課税(上積課税)
分離課税(累進)
分離課税(定率)
分離課税
(定率)
分離課税(累進)
㻟㻜
㻡
㻤
㻞㻜
㻞㻡
㻞㻜
㻞㻜
㻟㻜
㻖㻣
㻞㻜
㻝㻡
㻞㻡
㻝㻛㻞
総合課税
㻞㻡
㻟㻜
㻞㻡
㻟㻜
㻝㻡
㻞㻜
㻞㻜
㻞㻣㻚㻡
㻞㻜
㻞㻡
㻞㻞㻚㻡
40(百万円)までの部分10,
40(百万円)超の部分15 㻖㻝㻟
なし
特例なし
60(百万円)までの部分10、60(百万円)超の部分15 㻖㻝㻟
㻝㻜
㻝㻡
㻝㻡
㻞㻜
㻝㻡
㻝㻡
㻞㻜
10年以内 40
㻞㻜
㻖㻥
特例あり(10年超)
㻖㻥
5年以内 40 2年以内 50
㻖㻝㻠
特例なし
㻖㻝㻜
5年以内 30
特例あり(10年超)
㻖㻝㻠
㻖㻝㻝
特例なし
特例あり
(5年超)
特例あり
特例なし
(5年超)
㻖㻝㻞
参考資料:分離譲渡所得税率の住民税率との対応
分離所得税率(%)
住民税率(%)
㻝㻜㻚㻜
㻠㻚㻜
㻝㻡㻚㻜
㻡㻚㻜
㻞㻜㻚㻜
㻢㻚㻜
㻞㻞㻚㻡
㻣㻚㻜
㻞㻡㻚㻜
㻣㻚㻡
㻞㻣㻚㻡
㻤㻚㻜
㻟㻜㻚㻜
㻥㻚㻜
㻠㻜㻚㻜
㻝㻞㻚㻜
㻡㻜㻚㻜
㻝㻡㻚㻜
87
88
土地総合研究 2014年夏号
税率の %、 分の 総合課税の最高税率 %、
ると考えられるため)
を説明変数に加えた。
また、
分の 総合課税の最高税率 %の平均税率
この 年の期間を見た場合、
第一次石油ショック
(20% + 37.5% + 56.25%) ÷ 3 = 37.92%をそれぞ
以前の高度経済成長期とそれ以降ではエネルギー
れ代理説明変数と見ることとした。分離比例課税
供給構造の激変を主因としてエネルギー多消費型
と総合課税の上積税額とでは税制の性格が異なる
からエネルギー節約型へと経済構造が大きく変化
ので、別に明示的な説明変数を置くという考え方
したことは周知の事実であり、これに伴い、高度
もあろうが、総合課税の上積税額はおのずと税率
成長期とそれ以降の安定(低)成長期とを分ける
の差異となって表れるので、ここでは総合課税の
ダミー変数(X3 )を置いた。このダミー変数は、
上積税額の併用という特例制度は代理変数の数値
あわせて、
昭和 年から施行された国土利用計画
に反映されているものと考えることにした。
法による土地取引の届出・勧告制の導入という規
他方、各年の土地の取引面積としては旧自治省
制強化策を示しているととらえることもできよう。
(現総務省)税務局「道府県税課税状況等に関す
更に、バブル期後、金融機関の融資態度はそれ以
る調」
による土地の不動産取得税課税対象面積
(免
前とは大きく異なり、それが不動産市場に参加す
税点未満のものを含む)を用いた 。図表 では、
る市場参加者のビヘイビアを大きく規定すること
今回毎年の土地取引量を示す数量として使用した
になったので、バブル期前後で金融機関の融資態
不動産取得税の課税対象面積の合計値のほかに、
後日何らかの分析の際、役に立つこともあろうか
度の差異を示すダミー変数(X4 )を置いた。
と考えて、参考のため、地目別の課税対象面積の
である。
この関係を線形一次回帰式で示すと以下の通り
推移も示しておいた。なお、総務省によれば、調
Y = 314766.8 − 2173.05X1 +9802.9X2
(6.38)
(−1.37)
(2.32)
査名に「都」が抜けているのは、調査対象に「都」
が含まれないということではなく、都の場合、本
あるため、都の課税する固定資産税等がこの調査
R2 = 0.801583、標準偏差 = 53226.4、
( )内
対象に混入していないことを明らかにする意味で、
は t 値、
(解析期間は昭和 年度から平成 調査のタイトル名から「都」を除外したとのこと
ここで、土地取引面積(KD)
(Y)に長期譲渡所
得税率()
(X1 )がどのように影響するかを直線
回帰式により検証するが、土地取引量がその時点
での長期的な経済フレームの影響下にあることは
明らかであり、ここでは、土地取引量が影響を受
( 年度
けるであろう *'3 の実質成長率()
(X 2 )
前不動産取得税は取引後の登記を踏まえて都道
府県が普通徴収するので、取引から 年程度遅れ
不動産取得税(土地)の課税対象面積は、相続、遺贈
など形式的な所有権の移転には課税されないので、ほ
ぼ売買に伴う面積に近似できるが、贈与を含むなど、
売買面積そのものを示しているわけではないことに注
意する。なお、課税対象面積には、借地権の設定・移
転は含まれない。
+259211.1X3 -98322.4X4 (5.33)
(−4.03)
来の市町村税である固定資産税等の課税主体でも
である。
年度までの 年間)
以上のように、数式の( )で示される W 値を見
ると、説明変数である長期譲渡所得税率(X1 )に
ついては高くないため必ずしも説明力が十分とは
言えないが、長期譲渡所得税率が高いほど土地取
引量は減少する一方、経済成長率(X2 )とはプラ
スの相関、高度成長ダミー(X3 )ともプラスの相
関、バブル後の融資抑制ダミー(X4 )は土地取引
を抑制するという意味で符号条件を満たし、決定
係数もかなり高い結果を得た。高い長期譲渡所得
税率が一種の凍結効果を生む可能性を示唆してい
るものと言えよう(図表 、)
。
㻣㻣㻚㻝㻑
㻝㻡㻘㻣㻡㻠
㻢㻥㻚㻡㻑
㻣㻢㻘㻢㻡㻡
㻝㻝㻢㻚㻡㻑
㻞㻜㻘㻠㻞㻠
( - )
㻝㻜㻡㻚㻣㻑
㻝㻜㻠㻘㻠㻝㻝 㻝㻝㻜㻘㻟㻠㻤
㻝㻜㻞㻚㻟㻑
㻣㻠㻘㻡㻣㻣
㻝㻝㻟㻚㻜㻑
㻝㻜㻘㻣㻤㻥
㻝㻜㻜㻚㻤㻑
㻞㻝㻘㻤㻝㻢
㻡㻥
㻤㻝㻚㻥㻑
㻝㻝㻘㻤㻡㻞
㻤㻡㻚㻠㻑
㻡㻠㻘㻥㻥㻠
㻣㻢㻚㻤㻑
㻢㻢㻘㻠㻢㻣
㻣㻡㻚㻢㻑
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住宅用地以
外の宅地
地
林
農
山
そ の 他
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免税点未満のものを含む。
上段は、前年度比の増減(%)である。
注)自治省(現総務省)税務局「道府県税課税状況等に関する調」による。
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平成元年
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住宅用地
合 計
㻡
㻠
年 度
㻣㻡㻚㻞㻑
㻥㻣㻘㻜㻣㻡
㻥㻞㻚㻥㻑
㻥㻣㻘㻟㻝㻡
㻝㻝㻡㻚㻢㻑
㻤㻡㻘㻥㻟㻞
㻣㻟㻚㻣㻑
㻥㻘㻠㻠㻟
㻥㻞㻚㻡㻑
㻞㻞㻘㻣㻣㻟
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( - )
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㻤㻟㻚㻢㻑
㻝㻜㻠㻚㻜㻑
㻥㻝㻚㻥㻑
㻝㻜㻡㻚㻥㻑
㻥㻝㻚㻢㻑
㻥㻣㻚㻞㻑
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㻥㻟㻚㻢㻑
㻥㻡㻚㻤㻑
㻝㻤㻝㻚㻣㻑
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㻞㻜㻝㻚㻟㻑
㻡㻣㻚㻡㻑
㻥㻟㻚㻣㻑
㻡㻣㻢㻘㻟㻞㻡 㻢㻠㻠㻘㻢㻢㻜 㻠㻝㻤㻘㻜㻣㻤 㻞㻤㻝㻘㻢㻣㻞 㻟㻞㻢㻘㻤㻝㻝 㻞㻣㻟㻘㻟㻝㻟 㻞㻤㻠㻘㻞㻥㻞 㻞㻢㻝㻘㻞㻡㻣 㻞㻣㻢㻘㻢㻜㻜 㻞㻡㻟㻘㻠㻠㻣 㻞㻠㻢㻘㻟㻝㻥 㻞㻟㻝㻘㻢㻟㻟 㻞㻠㻝㻘㻡㻟㻟 㻞㻞㻢㻘㻝㻢㻥 㻞㻝㻢㻘㻢㻡㻥 㻟㻥㻟㻘㻢㻣㻢 㻞㻠㻝㻘㻜㻤㻥 㻠㻤㻡㻘㻟㻣㻤 㻞㻣㻥㻘㻞㻣㻣 㻞㻢㻝㻘㻤㻝㻟
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㻝㻞㻘㻤㻞㻝
㻥㻜㻚㻠㻑
㻞㻠㻘㻢㻝㻣
㻡㻢
合 計
㻥㻡㻚㻡㻑
㻤㻜㻘㻠㻣㻞
㻝㻜㻟㻚㻞㻑
㻝㻜㻘㻡㻜㻜
㻥㻟㻚㻠㻑
㻞㻣㻘㻞㻟㻠
㻡㻡
㻝㻝㻡㻚㻝㻑
㻟㻥㻘㻣㻢㻣
㻥㻣㻚㻜㻑
㻤㻠㻘㻞㻞㻢
㻥㻣㻚㻥㻑
㻝㻜㻘㻝㻣㻥
㻥㻥㻚㻠㻑
㻞㻥㻘㻝㻣㻞
㻡㻠
( - )
㻝㻜㻝㻚㻠㻑
㻝㻞㻣㻘㻟㻜㻥 㻝㻞㻥㻘㻜㻢㻥
㻥㻥㻚㻞㻑
㻤㻢㻘㻤㻢㻞
㻝㻜㻣㻚㻟㻑
㻝㻜㻘㻟㻥㻤
㻝㻜㻣㻚㻟㻑
㻞㻥㻘㻟㻢㻝
㻡㻟
そ の 他
㻢㻤㻚㻠㻑
㻤㻣㻘㻡㻣㻣
㻥㻜㻚㻜㻑
㻥㻘㻢㻥㻟
㻝㻜㻤㻚㻠㻑
㻞㻣㻘㻟㻢㻜
㻡㻞
㻣㻥㻚㻡㻑
㻝㻝㻟㻚㻤㻑
㻥㻠㻚㻝㻑
㻥㻣㻘㻥㻝㻟 㻝㻝㻝㻘㻟㻤㻟 㻝㻜㻠㻘㻣㻥㻤
㻤㻡㻚㻣㻑
㻝㻥㻡㻚㻜㻑
㻢㻡㻘㻢㻥㻤 㻝㻞㻤㻘㻜㻤㻥
㻣㻥㻚㻡㻑
㻝㻜㻘㻣㻣㻝
㻤㻢㻚㻥㻑
㻞㻡㻘㻞㻠㻜
㻡㻝
( - )
㻝㻝㻣㻚㻡㻑
㻡㻣㻚㻣㻑
㻢㻠㻚㻣㻑
㻥㻟㻚㻣㻑
㻥㻞㻚㻢㻑
㻝㻝㻝㻚㻞㻑
㻞㻥㻜㻘㻤㻟㻣 㻟㻠㻝㻘㻤㻟㻞 㻝㻥㻣㻘㻟㻟㻞 㻝㻞㻣㻘㻢㻠㻝 㻝㻝㻥㻘㻡㻣㻟 㻝㻝㻜㻘㻣㻠㻣 㻝㻞㻟㻘㻝㻝㻤
地
㻤㻢㻚㻜㻑
㻝㻟㻘㻡㻡㻢
㻥㻞㻚㻥㻑
㻞㻥㻘㻜㻠㻜
㻡㻜
山 林
農
住宅用地
㻣㻞㻚㻣㻑
㻟㻝㻘㻞㻢㻞
㻠㻥
住宅用地以 ( - )
外の宅地
㻝㻣㻘㻡㻟㻝
㻠㻤
㻝㻝㻤㻚㻢㻑
㻠㻞㻘㻥㻤㻣
昭和47
( - )
㻟㻢㻘㻞㻟㻣
年度
図表 不動産取得税の課税対象面積(地目別推移)
土地総合研究 2014年夏号
89
90
土地総合研究 2014年夏号
図表 長期譲渡所得税率を説明変数とし、土地取引量を被説明変数とする回帰式
(推計期間昭和 年~平成 年)
()説明変数入力データ
年度
昭和47
㻠㻤
㻠㻥
㻡㻜
㻡㻝
㻡㻞
㻡㻟
㻡㻠
㻡㻡
㻡㻢
㻡㻣
㻡㻤
㻡㻥
㻢㻜
㻢㻝
㻢㻞
㻢㻟
平成1
㻞
㻟
㻠
㻡
㻢
㻣
㻤
㻥
㻝㻜
㻝㻝
㻝㻞
㻝㻟
㻝㻠
㻝㻡
㻝㻢
㻝㻣
㻝㻤
㻝㻥
㻞㻜
㻞㻝
㻞㻞
㻞㻟
Y
実績値
㻡㻣㻢㻘㻟㻞㻡
㻢㻠㻠㻘㻢㻢㻜
㻠㻝㻤㻘㻜㻣㻤
㻞㻤㻝㻘㻢㻣㻞
㻟㻞㻢㻘㻤㻝㻝
㻞㻣㻟㻘㻟㻝㻟
㻞㻤㻠㻘㻞㻥㻞
㻞㻢㻝㻘㻞㻡㻣
㻞㻣㻢㻘㻢㻜㻜
㻞㻡㻟㻘㻠㻠㻣
㻞㻠㻢㻘㻟㻝㻥
㻞㻟㻝㻘㻢㻟㻟
㻞㻠㻝㻘㻡㻟㻟
㻞㻞㻢㻘㻝㻢㻥
㻞㻝㻢㻘㻢㻡㻥
㻟㻥㻟㻘㻢㻣㻢
㻞㻠㻝㻘㻜㻤㻥
㻠㻤㻡㻘㻟㻣㻤
㻞㻣㻥㻘㻞㻣㻣
㻞㻢㻝㻘㻤㻝㻟
㻞㻞㻜㻘㻝㻣㻝
㻝㻣㻤㻘㻢㻡㻢
㻝㻢㻡㻘㻜㻟㻥
㻝㻡㻢㻘㻝㻝㻡
㻝㻢㻝㻘㻤㻝㻠
㻝㻢㻠㻘㻝㻢㻥
㻝㻡㻤㻘㻟㻢㻝
㻝㻡㻟㻘㻤㻠㻠
㻝㻡㻣㻘㻟㻤㻡
㻝㻢㻜㻘㻡㻟㻤
㻝㻡㻢㻘㻟㻝㻥
㻝㻢㻥㻘㻣㻡㻜
㻞㻜㻜㻘㻟㻟㻣
㻞㻝㻠㻘㻞㻢㻢
㻞㻜㻥㻘㻝㻠㻡
㻞㻜㻥㻘㻣㻢㻥
㻝㻤㻥㻘㻜㻡㻞
㻝㻢㻡㻘㻡㻣㻟
㻝㻡㻣㻘㻥㻝㻡
㻝㻢㻞㻘㻝㻟㻞
理論値
㻡㻥㻜㻘㻟㻥㻣
㻢㻟㻜㻘㻡㻤㻤
㻟㻞㻝㻘㻟㻜㻝
㻞㻢㻢㻘㻠㻜㻠
㻞㻣㻝㻘㻝㻟㻝
㻞㻢㻥㻘㻝㻣㻜
㻞㻣㻢㻘㻠㻣㻤
㻞㻤㻡㻘㻟㻜㻜
㻞㻥㻣㻘㻝㻞㻡
㻞㻣㻞㻘㻢㻝㻤
㻞㻥㻜㻘㻡㻞㻟
㻞㻤㻞㻘㻢㻤㻝
㻞㻤㻥㻘㻟㻝㻤
㻟㻜㻞㻘㻜㻢㻞
㻟㻝㻢㻘㻣㻢㻢
㻞㻣㻟㻘㻢㻟㻟
㻟㻞㻜㻘㻞㻟㻤
㻟㻞㻟㻘㻝㻣㻥
㻞㻝㻞㻘㻢㻠㻠
㻞㻞㻤㻘㻟㻞㻥
㻝㻣㻟㻘㻤㻜㻜
㻝㻡㻤㻘㻝㻝㻡
㻝㻠㻢㻘㻟㻡㻝
㻝㻣㻝㻘㻟㻥㻜
㻝㻤㻠㻘㻢㻢㻡
㻝㻥㻜㻘㻡㻠㻣
㻝㻢㻣㻘㻡㻡㻝
㻝㻡㻤㻘㻞㻣㻥
㻝㻣㻥㻘㻤㻠㻡
㻝㻥㻤㻘㻠㻣㻝
㻝㻢㻡㻘㻝㻠㻝
㻝㻤㻟㻘㻣㻢㻣
㻞㻜㻠㻘㻠㻟㻡
㻞㻜㻟㻘㻠㻡㻠
㻞㻜㻢㻘㻟㻥㻡
㻞㻜㻢㻘㻟㻥㻡
㻞㻜㻝㻘㻠㻥㻠
㻝㻠㻟㻘㻢㻡㻣
㻝㻢㻜㻘㻟㻞㻞
㻞㻜㻢㻘㻟㻥㻡
X1
X2
㻝㻡㻚㻜㻜㻜
㻝㻡㻚㻜㻜㻜
㻞㻜㻚㻜㻜㻜
㻞㻜㻚㻜㻜㻜
㻟㻤㻚㻝㻞㻡
㻟㻤㻚㻝㻞㻡
㻟㻣㻚㻥㻞㻜
㻟㻣㻚㻥㻞㻜
㻟㻝㻚㻝㻞㻡
㻟㻝㻚㻝㻞㻡
㻞㻤㻚㻣㻡㻜
㻞㻤㻚㻣㻡㻜
㻞㻣㻚㻡㻜㻜
㻞㻣㻚㻡㻜㻜
㻞㻣㻚㻡㻜㻜
㻞㻣㻚㻡㻜㻜
㻞㻡㻚㻜㻜㻜
㻞㻡㻚㻜㻜㻜
㻞㻞㻚㻡㻜㻜
㻞㻞㻚㻡㻜㻜
㻟㻜㻚㻜㻜㻜
㻟㻜㻚㻜㻜㻜
㻟㻜㻚㻜㻜㻜
㻞㻣㻚㻡㻜㻜
㻞㻡㻚㻜㻜㻜
㻞㻡㻚㻜㻜㻜
㻞㻞㻚㻡㻜㻜
㻞㻜㻚㻜㻜㻜
㻞㻜㻚㻜㻜㻜
㻞㻜㻚㻜㻜㻜
㻞㻜㻚㻜㻜㻜
㻞㻜㻚㻜㻜㻜
㻝㻡㻚㻜㻜㻜
㻝㻡㻚㻜㻜㻜
㻝㻡㻚㻜㻜㻜
㻝㻡㻚㻜㻜㻜
㻝㻡㻚㻜㻜㻜
㻝㻡㻚㻜㻜㻜
㻝㻡㻚㻜㻜㻜
㻝㻡㻚㻜㻜㻜
㻡㻚㻜㻜㻜
㻥㻚㻝㻜㻜
㻡㻚㻝㻜㻜
㻙㻜㻚㻡㻜㻜
㻠㻚㻜㻜㻜
㻟㻚㻤㻜㻜
㻠㻚㻡㻜㻜
㻡㻚㻠㻜㻜
㻡㻚㻝㻜㻜
㻞㻚㻢㻜㻜
㻟㻚㻥㻜㻜
㻟㻚㻝㻜㻜
㻟㻚㻡㻜㻜
㻠㻚㻤㻜㻜
㻢㻚㻟㻜㻜
㻝㻚㻥㻜㻜
㻢㻚㻝㻜㻜
㻢㻚㻠㻜㻜
㻠㻚㻢㻜㻜
㻢㻚㻞㻜㻜
㻞㻚㻟㻜㻜
㻜㻚㻣㻜㻜
㻙㻜㻚㻡㻜㻜
㻝㻚㻡㻜㻜
㻞㻚㻟㻜㻜
㻞㻚㻥㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻙㻝㻚㻡㻜㻜
㻜㻚㻣㻜㻜
㻞㻚㻢㻜㻜
㻙㻜㻚㻤㻜㻜
㻝㻚㻝㻜㻜
㻞㻚㻝㻜㻜
㻞㻚㻜㻜㻜
㻞㻚㻟㻜㻜
㻞㻚㻟㻜㻜
㻝㻚㻤㻜㻜
㻙㻠㻚㻝㻜㻜
㻙㻞㻚㻠㻜㻜
㻞㻚㻟㻜㻜
X3
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
X4
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻜㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜
㻝㻚㻜㻜㻜 (注)X2 は、内閣府「国民所得統計」による。Y、X1、X2、X3、X4 のデータ及びその内容については本文参照。
土地総合研究 2014年夏号
91
()土地取引量(<)の動向(実績値、理論値)
(ha)
700,000
実績値
600,000
理論値
500,000
400,000
300,000
200,000
100,000
昭和47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
58
59
60
61
62
63
平成1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
0
不動産の長期譲渡所得税制の土地取引凍結
年までの一人当たりの実質分離長期譲渡所得
効果について
金額に比べて、地価水準がこの時期より低い昭和
国税庁「申告所得税標本調査」から、分離長期
年代後半及びほぼ同水準とみられる平成 年
譲渡所得の毎年の申告所得税課税人員数の推移を
から 年の方が全体として大きい金額になって
みると、昭和 年以降約 年間にわたり基調的
いて、しかも税率が一律 に軽減された平成 には毎年 万人台後半から 万人の間くらいの
年以降は、地価下落期にもかかわらず、明らかに
人数で推移しているが、日本列島改造論の最盛期
さらに金額が大きくなっている。このあたりのデ
の昭和 年やバブル期の平成初期には 万人台
ータからも上積税額の計算上、総合課税方式が併
から 万人台に達していたことがわかる (図表
用されていた時点における分離長期譲渡所得税制
)
。また、分離長期譲渡所得金額はバブル期に
が持っていた土地取引への凍結効果の一端を見る
急増しているが、上積税額の計算上、総合課税方
ことができよう。なお、一人当たり課税分離長期
式が併用されていた昭和 年から昭和 年まで
譲渡所得金額の絶対額を見ると、 年以降 年
の一人当たり分離長期譲渡所得金額は、地価水準
代前半まで、上積税額による総合課税計算が併用
がほぼ同水準の平成 年以降と比べても、
やや小
されない 万円内にとどまっていて、
土地の譲
さく、総合課税計算の併用が土地取引に抑制的な
渡者が、分離比例税率の範囲内に譲渡額をおさえ
効果をもたらしたことを推測させる。
このことを、
ようとしていたことを窺わせることも指摘してお
一人あたりの分離長期譲渡所得金額を地価水準で
こう。これに対し、地価水準はほぼ同じでも、平
実質化した実質値(平成 年 )の推移でみる
成 年ころ以降になると、
分離比例課税制度が定
と、この傾向はより明確であり、上積税額の計算
着したため、特に、実質値で見て、一人当たり課
上、
総合課税方式が併用されていた昭和 年から
税分離長期譲渡所得が頭打ちになるような兆候は
この調査では、申告所得税納税者について、所得種類
別、所得階級別の分布等が明らかにされている。調査
対象は、各年分の申告所得税について、翌年 月 日
現在において申告納税額がある者全部である。
見られない(図表 のふたつの丸印の部分を比
較対照されたい)
。
92
土地総合研究 2014年夏号
図表 分離長期譲渡所得(人員・金額)及び一人当たり分譲長期譲渡所得金額(名目・実質)の推移
()分離長期譲渡所得の申告実態(人員・金額等)
一人当たり
全国市街地価格
指数・全用途平均
分離長期譲渡所得(百万円)
(H12.3=100)
名目
実質
㻡㻚㻣
㻞㻞㻚㻠
㻞㻡㻚㻡
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㻟㻜㻚㻡
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㻞㻡㻚㻞
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㻝㻤㻚㻟
㻠㻜
㻝㻜㻚㻠
㻞㻜㻚㻤
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㻣㻚㻝
㻝㻝㻚㻡
㻢㻝㻚㻢
㻝㻞㻚㻜
㻞㻜㻚㻠
㻡㻤㻚㻥
㻢㻚㻡
㻝㻜㻚㻥
㻡㻥㻚㻠
㻣㻚㻠
㻝㻞㻚㻞
㻢㻜㻚㻣
㻣㻚㻥
㻝㻞㻚㻣
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㻝㻠㻚㻡
㻢㻡㻚㻞
㻝㻜㻚㻢
㻝㻡㻚㻝
㻣㻜㻚㻣
㻝㻝㻚㻝
㻝㻠㻚㻡
㻣㻢㻚㻥
㻝㻝㻚㻤
㻝㻠㻚㻠
㻤㻞㻚㻟
㻝㻞㻚㻟
㻝㻠㻚㻟
㻤㻢㻚㻞
㻝㻞㻚㻤
㻝㻠㻚㻠
㻤㻥
㻝㻟㻚㻤
㻝㻡㻚㻝
㻥㻝㻚㻡
㻝㻢㻚㻟
㻝㻣㻚㻟
㻥㻠㻚㻝
㻞㻝㻚㻣
㻞㻝㻚㻥
㻥㻥㻚㻞
㻞㻟㻚㻝
㻞㻝㻚㻞
㻝㻜㻥㻚㻝
㻞㻣㻚㻤
㻞㻟㻚㻣
㻝㻝㻣㻚㻠
㻟㻟㻚㻥
㻞㻡㻚㻟
㻝㻟㻟㻚㻥
㻟㻝㻚㻞
㻞㻝㻚㻝
㻝㻠㻣㻚㻤
㻞㻟㻚㻡
㻝㻢㻚㻞
㻝㻠㻡㻚㻞
㻞㻞㻚㻢
㻝㻢㻚㻡
㻝㻟㻣㻚㻞
㻞㻝㻚㻜
㻝㻢㻚㻝
㻝㻟㻜㻚㻥
㻞㻜㻚㻜
㻝㻡㻚㻤
㻝㻞㻢㻚㻝
㻝㻥㻚㻣
㻝㻢㻚㻠
㻝㻞㻜㻚㻡
㻝㻢㻚㻟
㻝㻠㻚㻝
㻝㻝㻡㻚㻢
㻝㻡㻚㻥
㻝㻠㻚㻞
㻝㻝㻝㻚㻡
㻝㻠㻚㻥
㻝㻠㻚㻝
㻝㻜㻢㻚㻝
㻝㻡㻚㻜
㻝㻡㻚㻜
㻝㻜㻜
㻝㻠㻚㻡
㻝㻡㻚㻠
㻥㻟㻚㻣
㻝㻟㻚㻡
㻝㻡㻚㻠
㻤㻣㻚㻠
㻝㻟㻚㻟
㻝㻢㻚㻠
㻤㻝㻚㻞
㻝㻟㻚㻜
㻝㻣㻚㻡
㻣㻠㻚㻠
㻝㻟㻚㻣
㻝㻥㻚㻤
㻢㻥㻚㻝
㻝㻡㻚㻜
㻞㻞㻚㻥
㻢㻡㻚㻣
㻝㻢㻚㻟
㻞㻡㻚㻠
㻢㻠㻚㻠
㻝㻠㻚㻠
㻞㻞㻚㻡
㻢㻟㻚㻥
㻝㻝㻚㻣
㻝㻥㻚㻜
㻢㻝㻚㻠
㻝㻞㻚㻡
㻞㻝㻚㻠
㻡㻤㻚㻡
㻝㻟㻚㻟
㻞㻟㻚㻣
㻡㻢㻚㻝
㻝㻟㻚㻟
㻞㻠㻚㻡
㻡㻠㻚㻞 分離長期譲渡所得
昭和44年
昭和45年
昭和46年
昭和47年
昭和48年
昭和49年
昭和50年
昭和51年
昭和52年
昭和53年
昭和54年
昭和55年
昭和56年
昭和57年
昭和58年
昭和59年
昭和60年
昭和61年
昭和62年
昭和63年
平成元年
平成2年
平成3年
平成4年
平成5年
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
平成18年
平成19年
平成20年
平成21年
平成22年
平成23年
平成24年
人員(人)
㻝㻤㻜㻘㻤㻣㻝
㻞㻟㻡㻘㻟㻥㻞
㻟㻠㻠㻘㻣㻜㻝
㻠㻠㻜㻘㻟㻣㻥
㻡㻣㻠㻘㻣㻝㻝
㻞㻝㻥㻘㻥㻞㻞
㻞㻟㻣㻘㻣㻝㻟
㻞㻜㻡㻘㻥㻢㻜
㻞㻟㻠㻘㻣㻠㻠
㻞㻠㻢㻘㻞㻣㻡
㻞㻢㻣㻘㻞㻢㻝
㻞㻢㻞㻘㻟㻞㻥
㻞㻡㻞㻘㻤㻞㻠
㻞㻢㻟㻘㻞㻜㻝
㻞㻤㻜㻘㻠㻡㻜
㻞㻥㻜㻘㻜㻢㻥
㻞㻥㻡㻘㻞㻟㻞
㻟㻝㻟㻘㻢㻥㻣
㻟㻢㻢㻘㻢㻠㻟
㻠㻜㻠㻘㻡㻤㻣
㻠㻣㻟㻘㻥㻤㻤
㻡㻝㻝㻘㻞㻞㻜
㻡㻢㻢㻘㻝㻠㻜
㻞㻞㻟㻘㻢㻣㻢
㻞㻢㻢㻘㻥㻝㻡
㻞㻥㻞㻘㻢㻝㻡
㻞㻤㻟㻘㻣㻡㻢
㻟㻞㻢㻘㻥㻝㻟
㻞㻥㻜㻘㻥㻥㻟
㻞㻠㻞㻘㻢㻞㻞
㻞㻠㻝㻘㻟㻟㻟
㻞㻟㻥㻘㻠㻠㻞
㻞㻝㻢㻘㻡㻠㻣
㻝㻥㻤㻘㻡㻡㻝
㻝㻥㻠㻘㻝㻥㻟
㻞㻠㻣㻘㻝㻢㻤
㻞㻢㻜㻘㻜㻞㻞
㻞㻢㻤㻘㻠㻜㻟
㻞㻡㻟㻘㻡㻣㻜
㻞㻝㻤㻘㻜㻢㻤
㻝㻣㻣㻘㻤㻥㻝
㻝㻥㻟㻘㻥㻞㻞
㻞㻜㻠㻘㻝㻢㻠
㻞㻞㻣㻘㻣㻜㻤
(百万円)
㻝㻘㻜㻟㻞㻘㻠㻥㻝
㻝㻘㻡㻜㻟㻘㻢㻠㻝
㻟㻘㻜㻢㻥㻘㻢㻟㻠
㻟㻘㻞㻞㻣㻘㻞㻤㻞
㻢㻘㻜㻜㻜㻘㻠㻝㻢
㻝㻘㻡㻡㻠㻘㻢㻜㻢
㻞㻘㻤㻡㻤㻘㻡㻢㻠
㻝㻘㻟㻟㻝㻘㻥㻞㻡
㻝㻘㻣㻟㻝㻘㻥㻟㻞
㻝㻘㻥㻡㻠㻘㻣㻥㻤
㻞㻘㻡㻞㻠㻘㻞㻣㻣
㻞㻘㻣㻥㻞㻘㻝㻠㻤
㻞㻘㻤㻝㻟㻘㻥㻜㻝
㻟㻘㻝㻝㻠㻘㻠㻥㻟
㻟㻘㻠㻡㻜㻘㻣㻤㻠
㻟㻘㻣㻜㻥㻘㻜㻠㻟
㻠㻘㻜㻣㻜㻘㻡㻠㻣
㻡㻘㻝㻜㻥㻘㻥㻥㻤
㻣㻘㻥㻡㻢㻘㻟㻝㻠
㻥㻘㻟㻡㻡㻘㻝㻢㻢
㻝㻟㻘㻝㻢㻡㻘㻞㻟㻤
㻝㻣㻘㻟㻜㻥㻘㻟㻥㻟
㻝㻣㻘㻢㻠㻤㻘㻠㻞㻥
㻡㻘㻞㻢㻟㻘㻟㻤㻟
㻢㻘㻜㻠㻜㻘㻜㻜㻤
㻢㻘㻝㻡㻤㻘㻜㻤㻟
㻡㻘㻢㻢㻤㻘㻟㻠㻝
㻢㻘㻠㻡㻠㻘㻡㻡㻤
㻠㻘㻣㻡㻢㻘㻜㻣㻟
㻟㻘㻤㻠㻣㻘㻡㻟㻜
㻟㻘㻢㻜㻠㻘㻣㻡㻣
㻟㻘㻡㻤㻟㻘㻟㻤㻟
㻟㻘㻝㻟㻝㻘㻤㻞㻠
㻞㻘㻢㻣㻥㻘㻜㻥㻣
㻞㻘㻡㻤㻤㻘㻥㻜㻝
㻟㻘㻞㻝㻞㻘㻜㻢㻤
㻟㻘㻡㻡㻤㻘㻟㻝㻝
㻠㻘㻜㻟㻠㻘㻥㻤㻢
㻠㻘㻝㻠㻡㻘㻢㻤㻞
㻟㻘㻝㻟㻝㻘㻤㻢㻥
㻞㻘㻜㻣㻢㻘㻢㻟㻠
㻞㻘㻠㻞㻠㻘㻥㻞㻢
㻞㻘㻣㻝㻜㻘㻡㻥㻟
㻟㻘㻜㻞㻠㻘㻠㻥㻞
注)国税庁「申告所得税標本調査」による。
実質値は、日本不動産研究所「全国市街地価格指数(全用途平均)
」の平成 年 月末を としてデフ
レートした値。
土地総合研究 2014年夏号
93
()一人当たり分離長期譲渡所得金額の名目値と実質値
(百万円)
35
実質
名目
30
25
20
15
10
平成年
平成年
平成年
平成年
平成年
平成年
平成年
平成年
平成年
平成年
平成年
平成元年
昭和年
昭和年
昭和年
昭和年
昭和年
昭和年
昭和年
昭和年
昭和年
0
昭和年
5
注)実質値は、日本不動産研究所「全国市街地価格指数(全用途平均)
」の平成 年 月末を としてデ
フレートした値。
不動産税制に関連する基礎的データについ
年データから不動産所得申告者の状況を紹介して
て(紹介)
おこう。同調査では、先ず事業所得のウエイトが大
(分離譲渡所得者の譲渡所得金額別の分布状況)
きい申告所得者を除き、それ以外の所得の中では不
分離長期譲渡所得税の動向に関連して、最新の
動産所得のウエイトの大きい所得者を不動産所得
国税庁「申告所得税標本調査」の平成 年のデー
者としてカウントしている。戸建てを 棟以上(借
タにより、分離譲渡所得の申告者の所得金額ラン
地の場合は 件で 棟換算)、又はマンションを
クの特徴などを申告者のクロスセクションデータ
戸以上賃貸すると税法上は事業と認定され、そ
から見ておこう(図表 )
。全体申告者の約 (約
こから得られる所得は事業所得に分類されるので、
万人)が長期譲渡所得の申告者であり、短期
不動産所得者とは、おそらく戸建てでは 戸未満、
譲渡所得の申告者は約 (約 人)と極めて少
マンションで言えば 戸未満を賃貸する比較的小
数であることがわかる。
規模な個人事業者のことであると考えられる。不動
分離長期譲渡所得金額別の申告者分布を見ると、
産所得申告者数は 万 千人であり、ここ数年い
最も多いのが譲渡所得金額 万円~ 万円の
ずれも 万人から 万人の間にあり、大きな変
金額帯であり、 万円以上の者が 割近いウエ
化はない。不動産所得金額ランク別の申告者数を見
イトを持つ。一方、分離短期譲渡所得者は 万円
ると 万円~ 万円の金額帯の申告者が で
以上 万円以内が最もウエイトが多く、 万円
あり、 万円以下が全体の を占める。不動産
以下の者が全体の 割を占め、相対的に少額である
所得者の所得金額を見ると、ここ数年減少傾向にあ
ことがわかる。それぞれの申告者一人当たりの平均
るものの、 年でも 兆 億円である。金額帯
分離譲渡所得金額は、分離長期では 万円、分
離短期では 万円であった。
(図表 、
、
)
(不動産所得者の動向について)
同じく国税庁「申告所得税標本調査」の平成 この不動産所得金額の中には、統計作成の制約上、不
動産所得者に分類される者が他の種類の所得を稼得して
いる場合には、それらを含んだ金額として表示されてお
り、純粋の不動産所得は、別の集計表から全体額の %
に当たる 兆 億円であることが判明している。
94
土地総合研究 2014年夏号
図表 長短別分離譲渡所得の所得金額別申告人員等(平成 年)
()平成 年の分離長期譲渡所得の所得金額ランク別申告人員(構成比、累積)
(人)
25,000
累積比率
20,000
ランク別人員
(右軸)
15,000
10,000
億円超
億円以下
億円以下
億円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
5,000
万円以下
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0
()平成 年の分離短期譲渡所得の所得金額ランク別申告人員(構成比、累積)
(人)
800
累積比率
700
600
ランク別人員
(右軸)
500
400
300
200
億円超
億円以下
億円以下
億円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
万円以下
100
万円以下
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0
()平成 年の分離長期・分離短期譲渡所得別人員(絶対数、構成比)
人
人
分離長期譲渡所得人員
総数
分離短期譲渡所得人員
総数
(注)各図表とも国税庁「申告所得税標本調査結果」による。
土地総合研究 2014年夏号
95
図表 所得金額ランク別不動産所得申告者・申告所得金額
()構成比図
(%)
100
(万人・100億円)
50.0
人員数(万人・右軸)
90
45.0
金額(億円・右軸)
80
人員累積割合
40.0
70
金額累積割合
35.0
60
30.0
50
25.0
40
20.0
30
15.0
20
10.0
10
5.0
0.0
0
~万
~万
~万
~万 ~万 ~万 ~万 万以上
(所得金額ランク)
()上記データ
人員数
(万人)
~100万
~200万
~300万
~500万
~1000万
~2000万
~5000万
5000万以上
㻤㻚㻝
㻞㻜㻚㻤
㻝㻢㻚㻣
㻞㻟㻚㻜
㻞㻜㻚㻥
㻣㻚㻤
㻞㻚㻞
㻜㻚㻠
金額
(100億円)
㻝㻚㻠
㻣㻚㻟
㻥㻚㻣
㻞㻝㻚㻝
㻟㻟㻚㻣
㻞㻠㻚㻣
㻝㻚㻡
㻜㻚㻣
人員累積
割合(%)
㻤㻚㻝
㻞㻤㻚㻥
㻠㻡㻚㻢
㻢㻤㻚㻣
㻤㻥㻚㻢
㻥㻣㻚㻠
㻥㻥㻚㻢
㻝㻜㻜
金額累積
割合(%)
㻝㻚㻞
㻣㻚㻟
㻝㻡㻚㻠
㻟㻟
㻢㻝㻚㻞
㻤㻝㻚㻤
㻥㻠㻚㻡
㻝㻜㻜 注)各図表とも、国税庁「申告所得税標本調査」による。
図 中、不動産所得申告者数の合計は 万 千人、不動産所得者の所得金額の合計は 兆 万円で
ある
が 万円~ 万円の申告者の所得が総額では
で長期譲渡所得税に対する特例的な軽減税率が用
兆円を超え、全体の 割近いウエイトを占めて
意されたことを紹介した。よく知られているよう
いる。不動産所得申告者一人あたりの平均不動産所
に、 年新都市計画法が施行されて都市計画区
得金額は 万円となる。
(図表 、)
域が定められ、都市計画区域は原則として市街化
区域と市街化調整区域とに区分され、公共投資の
(市街化区域農地面積の推移-固定資産税の課税
集中による計画的市街化が目指されたのであるが、
の適正化(いわゆる宅地並み課税)に関連して-)
開発を望む農地所有者の多数の存在のほか、開発
上記 において、譲渡所得税制について述べた
の予定はないものの、規制を嫌う農地所有者も少
際、長期保有の市街化区域農地には、平成 年ま
なくなかったため、市街化区域の拡大圧力が働き、
96
土地総合研究 2014年夏号
図表 全国の市街化区域農地等面積の経年変化
面積(ha)
160,000
140,000 143,258
120,000
100,000
市街化区域農地(全国)
近畿圏(特定市の市街化区域農地)
中部圏(特定市の市街化区域農地)
首都圏(特定市の市街化区域農地)
生産緑地(全国)
97,466
86,236
80,000
60,000
55,089
6,405
7,063
2,806
17,161
4,067
20,000
7,480
15,164
14,190
0
H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23
40,000
(注)国土交通省調べによる。
特定市とは、首都圏整備法、近畿圏整備法、中部圏都市整備法による既成市街地及び近郊整備地帯内等
に所在する市(首都圏 、近畿圏 、中部圏 、合計 )をいう。
大量の農地が市街化区域に編入された。当初は を除き、建築物の建築及び宅地の造成等の行為制
万 KD現在でも約 万 KD の農地が全国の市街化区
限がかかり、
指定から 年が経過するか、
または、
域内に存在する。これらの農地の取り扱いについ
主たる農業従事者が死亡または従事不能な故障者
ては、当時から、宅地と同等の固定資産税を課し
となる場合でなければ、市町村長に土地の買取り
て宅地化を推進すべきとの議論があった一方、農
申し出ができず、申し出から 月以内に当該生産
地の環境保全機能などの役割や農地所有者の経済
緑地の所有権の移転が行われなければ、行為制限
的負担能力を考慮して、農地並みの課税にとどめ
が解除されるが、それ以外の場合は、原則として
るべきだとの議論が併存した。後者の立場から市
生産緑地としての都市計画の指定解除が認められ
街化区域農地を保全するため、 年に制定され
ないものとされた。
たのが生産緑地法であった。この法律は、 年
ここでは、その後の市街化区域農地面積の増減状
に大きく改正され、農家の意向に沿いつつ、保全
況を概観しておきたいと思う。まず全国の市街化
する農地と宅地化する農地とに明確に区分したう
区域農地等面積(生産緑地を含む)は平成 年の
え、これとリンクした形で、前者のうち、敷地面
万 KD から平成 年には 万 KD まで減少
積 ㎡以上で、
良好な生活環境の確保に役立ち、
した(図表 )
。次に、三大都市圏の特定市につい
公共施設用地に適していて、用排水設備を持つな
て、制度発足当時の平成 年の状況をみると、宅
ど農林漁業の継続が可能な条件を満たせば、当該
地化される市街化区域農地面積は KD、同地
一団の土地を、市町村が都市計画法 条に定める
域内の生産緑地が KD とほぼ の割合であ
地域地区の都市計画のである生産緑地として指定
ったが、平成 年のデータを見ると、宅地並みの
することとしたうえ、三大都市圏の特定市に所在
固定資産税のかかる市街化区域農地面積は
する市街化区域農地に適用される固定資産税の課
KD に半減、一方、農地並み課税が継続され
税の適正化(いわゆる農地の宅地並み課税)を適
る生産緑地面積は、新たな指定を含めて、全体と
用除外とする制度設計になっており、生産緑地に
して、この間の減少はごく僅少にとどまり
おいては、農林漁業を営むために必要となる場合
KD と、両者の賦存量の割合はほぼ にな
土地総合研究 2014年夏号
97
図表 三大都市圏の特定市の市街化区域農地等面積の減少状況(平成 年→平成 年)
面積(ha)
35,000
30,628
30,000
市街化区域農地 生産緑地
25,000
20,000
15,000
15,113
14,353
14,110
10,000
5,000
0
H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23
(注)市街化区域農地:
「固定資産の価格等の概要調書」
(総務省)
[毎年 月 日の値]
生産緑地:
「都市計画年報」
(都市局)
[毎年 月 日の値]による
特定市とは、首都圏整備法、近畿圏整備法、中部圏都市整備法による既成市街地及び近郊整備地帯内等
に所在する市(首都圏 、近畿圏 、中部圏 、合計 )をいう。
図表 三大都市圏の都府県別の特定市における市街化区域農地の減少率
(ha)
7000
特定市の市街化区域農地平成年
特定市の市街化区域農地(平成年)
減少率(平成年~平成年・右軸)
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
注)都市計画協会「都市計画年報」により作成。
特定市とは、首都圏整備法、近畿圏整備法、中部圏開発整備法による既成市街地及び近郊整備地帯内等
に所在する市(首都圏 市、近畿圏 市、中部圏 市の合計 市)をいう。
った(図表 )
。この 年間の市街化区域農地の
埼玉県の順に低い(図表 )
。
減少率は %(年率約 %)
、生産緑地の減少
日本の市街地内には依然農地、樹林地など農林業
率は %(年率 %)である。市街化区域農地
的な利用に供される土地が多く存在しているが、
面積の減少率は、兵庫県、東京都、神奈川県、大
都市の縮退が不可避となっている今日、都市とそ
阪府の順に高く、逆に奈良県、三重県、千葉県、
れ以外の境界が不明確になり、都市側から賦存す
98
土地総合研究 2014年夏号
る農地等をより積極的に受け止めるとともに、農
は %という税率の特例が設けられているもの
業側からも、第 種兼業農家が大半で、農業所得
の、順次税率が引上げられてきている。他方、同
がきわめて低位にとどまる状況の下、 万 KD に
じ流通税である「不動産の譲渡に関する契約書」
も上る耕作放棄地を含む農地等の都市的利用を組
及び「建設工事の請負に関する契約書」に係る印
み込んだ土地利用を構想し、相互に乗り入れる形
紙税額は順次軽減(契約金額 万円超 万
の、混在や散在を前提としたモザイク型の計画論
円以下の場合、本則 万円が、 年 月まで が必要になっていることも否定できない事実であ
万円、 年 月以降( 年間) 万円)され、ま
り、新たな土地利用法制の構築に向けた再考・取
た、受領書のうち、受取金額が 万円未満( 年
組みが急務となってくると考えられる。
月までは 万円未満)のものには印紙税が課さ
れないこと、土地と住宅に係る不動産取得税も上
(登録免許税と印紙税)
述の通り、本則 %に対し、平成 年度以降 最後に、不動産に関係の深い流通税として、不
年 月までは %に軽減されていることとの関係
動産取得税、登録免許税、印紙税があるが、不動
では、同じ流通税でありながら、土地売買に伴う
産取得税制についてはその課税対象面積の時系列
登録免許税は、
他の流通税とはやや様相を異にし、
の推移を冒頭の において、譲渡所得税と関連
本則に近づく方向で、軽課とは逆行する動きとな
付けて紹介したので、ここでは、登録免許税と印
っている。
紙税についてについて紹介しよう。なお、不動産
また、印紙税については近年税収が毎年度 兆
取得税の税収額は、 年ほど前には年間 億
円程度と 年前の 兆円に比して大きく減少し
円を超えていたが、課税標準である固定資産税評
ている(図表 )
。これは、負担の大きい「不動
価額(土地)の下落や平成 年以降 年度まで
産の譲渡に関する契約書」及び「建設工事の請負
の措置として、土地、住宅に対しては、本則税率
に関する契約書」の印紙税率が特例的に順次引き
%が適用されず、%の特例の軽減税率が適用さ
下げられてきた結果であるとともに、未だに印紙
れているため、税収額も低下し、最近では 税収入に占める割合が高いこれらの契約類型の印
億円前後で推移していることを付言する。
紙税に軽減の余地があることを示している。
まず、登録免許税の課税件数については、平成
我が国の流通税は、財貨の移転という事実に着
年度の 万件から減少して平成 年度には
目しつつ、その背後に担税力を認めて課税するも
万件になっている。税収額もこれに対応して
のであり、財貨の移転自体に着目する不動産取得
平成 年度の 億円から平成 年度は 税と、財貨の移転に伴い作成される文書や登記等
億円に減少している。件数ベースでは全体の に着目する印紙税や登録免許税とに区分できる。
数パーセント、金額ベースでは全体の約 %が土
不動産の売却に伴い譲渡所得税が万遍なく課され
地の所有権移転登記に伴うものである(図表 )
。
ている以上、その上にさらに、特に国税としての
更に、内訳を大きく抵当権設定や相続等を含めた
流通税を重畳的に課することは消費税増税 %
土地関係登記、建物関係登記、商業・法人登記の
への方針決定時期を年末に控え、従来からある二
三つに区分すると、件数ベースで 割、金額ベー
重課税問題を改めて提起するとなろう。また、併
スでは 割が土地登記関連である(図表 )
。土
せて流通税の持つ税の転嫁問題や取引抑制効果に
地売買による所有権移転登記にかかる登録免許税
ついても、この際総合的な再整理が必要な時期を
率は固定資産税評価額を課税標準として、本則税
迎えていると言えよう。一方で経済成長と両立し
率の %が、平成 年度から 年度までは
うる財政健全化策の一環として不動産関係税の強
%、 年度は %、 年度から 年度まで
化を検討する動きもあり、留意が必要である。
土地総合研究 2014年夏号
図表 登録免許税の課税件数と納付税額(平成 年)
(万件)
1200
(億円)
7000
登録免許税納付額(右軸)
うち土地所有権移転登記の納付額(右軸)
1000
5000
800
600
400
6000
4000
課税件数
(総数)
3000
2000
200
1000
うち土地所有権移転登記件数
0
注)国税庁「申告所得税標本調査」による
図表 登録免許税の土地、建物、商業・法人登記別内訳(平成 年)
課税件数内訳
納付金額内訳
建物
商業・
法人
商業・
法人
建物
土地
土地
(注)法務省「民事・訟務・人権統計年報」による。
図表 印紙税収の推移
年度
金額(億円)
注)国税庁調べによる
0
99
100 土地総合研究 2014年夏号
図表 相続税の課税価格、負担割合、課税割合の推移
(注)日本 )3 協会資料による。
出典は国税庁「国税統計年報」
、厚生労働省「人口動態統計」による。
負担割合=各年の納付税額課税価格×、課税割合=被相続人数死亡者数×
補論相続税法の改正を巡って
実績値である %~%に倍増するとの見方など
(最近の相続税の課税動向)
も報道されている。相続税評価の基礎となる路線
来年、
平成 年 月 日以降に生じた相続から
価は、平成 年 月 日現在では、全国平均の標
大きく増税路線に舵を切る相続税法について、こ
準宅地が前年比マイナス %(前年はマイナス
の機会に基本的な情報を確認しておこう。まず相
%)と下落しているが、都道府県別にみると、
続税の課税対象となる被相続人数はこのところ毎
宮城県(%)
、東京都(%)
、愛知県(%)
、
年 万人前後で推移しているが、死亡者数が毎年
福島県
(%)
、
神奈川県
(%)
、
大阪府
(%)
、
万人以上あるため、相続税の課税対象となる
埼玉県(%)
、千葉県(%)の 都道府県が
被相続人比率(課税割合)は %にも達しない低
前年を上回り、大都市圏、特に首都圏の 都県は
い比率にとどまっている。また、相続税の課税価
すべて上昇に転じていることが判明している。
格は近年年間 兆円強、
これに対する納付税額の
仮に都内で法定相続人 人を持つ個人が平成 割合を示す負担割合は平均で %強というとこ
年 月以降に亡くなり、当該個人が所有する、㎡
ろである(図表 )
。
あたりの相続税評価額 万円の宅地 ㎡が相続
の対象になったとすると、法定相続人が被相続人
(大幅な増加が予想される首都圏を中心とした大
と同居していたか、別居していても、相続人が持
都市圏の相続税課税対象者)
家を持っていないような場合を除き、特定居住用
平成 年から適用される基礎控除の 割縮減
小規模宅地に係る特例(敷地面積が ㎡(平成
(定額控除額、 万円→ 万円)
、法定相続
年末までは ㎡)まで、評価額の 割を相続
人比例控除額
(一人当たり)
、
万円→ 万円)
税評価額から減額できる特例)が働かないので、
により、上記全国平均の課税割合が今の %から
被相続人が宅地のほかに 万円以上の預金等の
%程度へと 割増、場合によっては、バブル期の
純資産を保持していれば、
基礎控除額 万円を
土地総合研究 2014年夏号 101
図表 三大都市圏における相続税課税価格等の推移(国税局別)
(課税価格)
(被相続人 人当たり課税価格)
(注)日本 )3 協会資料による。
出典は国税庁「国税統計年報」による。
超えるため、相続税の課税対象になる。このよう
部分及び 億円超の部分の超過累進税率がこれま
な事例はそう珍しいことではないことから、相続
でよりもアップ(それぞれ %→%、%→
税総額及び一人あたり課税価格がともに大きい首
%)することから、相続時に相続税支払いのた
都圏を中心に、相続税の課税対象となる被相続人
めの現金等の準備が十分でない場合は、物納の要
割合が相当大きくなり、専門家の間では、特に東
件が必ずしも簡単ではないことを考慮すると、不
京都区部において相続事例の約 割が課税対象に
動産売却による納税資金の調達を強いられるケー
なるとの指摘がある(図表 )
。
スが特に都市部においては増えることが想定され
る。この動きは、のちに述べる高額の資産保有階
(相続税法改正に伴う不動産市場等への影響)
層による相続税節税対策としての不動産取得やさ
納付人員一人あたりの相続税課税評価額の長期
らに一部で活発化していると言われる海外投資家
的な推移をみると、課税対象となる相続財産総評
による国内での不動産取得需要よりも広範囲かつ
価額に占める土地の割合が、平成 年現在では
量的にも大きいものになると予想され、全体とし
%(ピークは平成 年の %)まで低下してい
ては不動産取引の需給の緩和要因として働くので
るとはいえ、
一貫して高い比重を占めているため、
はないかと考えられる。
地価水準の動向とほぼ比例的に増減していて、ピ
ーク時の平成 年には 億円を超えていたが、こ
こ数年は 万円台で推移している
(図表 、
)
。
(相続土地の譲渡に伴う取得費加算の縮減)
ここで、第一に、やや細かくなるが、先に述べ
た不動産の譲渡所得税制との関連もあるので、相
今回の相続税の基礎控除縮減に伴う課税対象額
続土地の売却に伴う課税強化について説明してお
の拡大や課税財産評価額が 億円超 億円以下の
こう。相続財産である土地等を相続税の申告期限
102 土地総合研究 2014年夏号
図表 課税対象被相続人数および一人当たり相続税課税価格の推移
(万円)
12,000
10,000
(人)
70,000
一人当たり相続税課税価格
課税対象被相続人数(右軸)
60,000
50,000
8,000
40,000
6,000
30,000
4,000
20,000
2,000
昭和
平成
0
10,000
0
(注)国税庁「申告所得税標本調査」による
図表 相続財産総評価額に占める土地価額の割合
産を相続し、その相続税評価額及び相続税額
が以下のようなものだったとしよう。そして
相続財産である土地 $ を相続税の申告期限か
ら 年以内に譲渡したとする(図表 )
。
従来の取得費加算額は、
昭和
平成
4
7
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
ある人 ; が土地 $%、および建物、その他財
(注)国税庁「申告所得税標本調査」による。㻌
から 年以内に譲渡した場合に限り、相続税額の
一部を譲渡土地の取得費に加算できる制度が今回、
厳し目に改正され、
平成 年 月以降の相続によ
り取得した資産を譲渡する場合から適用されるよ
(その者の相続税額総額) ×
(その者の全相続土地[A 及び B]の課税評価額) ÷
(その者の相続税課税評価額)
= 12 × (5+15)⁄40 = 6
であったが、改正後の取得費加算額は
(その者の相続税額総額)
× (その者の譲渡した土地[A]の課税評価額)
÷ (その者の相続税課税評価額) = 12 × 5⁄40
= 1.5
うになる。従来、土地を譲渡して相続税を納税し
となり、取得費加算が小さくなるため、譲渡税額
ようとすると、譲渡税がかかり、手取り額が減少
が増えることになるのである。もともとこの特例
してしまうため、これを緩和するために、譲渡し
は平成 年度の税制改正により、物納許可を受け
た土地に限らずその者が相続したすべての土地
た相続税相当額については、譲渡がなかったもの
(物納土地を除く)の相続税額が特例的に土地の
とされることとの均衡上、一部でも相続土地の譲
取得費加算の対象になっていたが、今回この特例
渡があれば、譲渡がなかった相続土地の譲渡を含
が廃止され、取得費加算は、その者が譲渡した土
めて、自ら相続した土地すべてについての譲渡が
地に対応する金額のみに縮小されるものである。
あったものとみなす特例税制である。当時は地価
わかりにくいので例を挙げて説明しよう。
いま、
水準が高く、しかも、長期譲渡所得税率が %と
土地総合研究 2014年夏号 103
図表 ある相続人の相続財産等(想定事例)
相続財産の種類㻌
相続税課税評価額㻌
相続税額㻌
続税評価額は更地の場合の評価額に比べて約 割
減の 億 万円、もし、その敷地面積が 土地 㻭㻌
㻡㻌
㻝㻚㻡㻌
㎡以下であり、かつ、他に事業用または居住用相
土地 㻮㻌
㻝㻡㻌
㻠㻚㻡㻌
続土地に係る %評価減の特例を使わなければ、
建物㻌
㻝㻜㻌
㻟㻚㻜㻌
当該敷地が ㎡以下の場合、全体について、不
その他財産㻌
㻝㻜㻌
㻟㻚㻜㻌
動産貸付用小規模宅地の %評価減の特例が使
㻠㻜㻌
㻝㻞㻚㻜㻌
合計㻌
重く、相続税の納税に伴う負担を軽減する必要性
が高かったが、現在は長期譲渡税率が %に下が
えるので 万円となる。また、貸家の相続税評
価額は、固定資産税評価額 ×
(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)と計算され、建物の
固定資産税評価額を時価の 割、
借家権割合 、
り、地価水準も当時に比べ低い水準で安定してい
賃貸割合 とすると、貸家の相続税評価額は時
ることから、不公正な特例であるとの指摘が会計
価の約 割の 万円となる。以上により、この
検査院からなされ、今回の改正に至ったものとさ
ケースの場合、全体としての相続税評価額を 億
れている。
円から 億円へと %に削減できることになる。
相続税評価額が大きくなると、法定相続人数など
(相続税節税のための貸家建設等)
条件によっては、相続税率が従来よりも上がる可
第二は、相続税節税のための貸家建設の増加に
能性も否定できないこと、不動産事業者の中には
ついてである。人口数及び人口の地域間の社会移
節税対策として貸家建設を奨励する動きが少なか
動減、さらに空貸家(貸室)の増加は、貸家着工
らずあることから、今の時期、金融資産を多く持
の減少要因であると考えられるが、消費税増税の
つ高齢層を中心に、相続税節約のための貸家建設
駆け込み需要もあり、 年度の貸家着戸数は前年
への誘因はかなり強いと言えよう。ちなみに、国
度比 %増と大幅に増加し、 年 月まで、前
土交通省の『世代間資産移転の促進に関する検討
年同月比着工戸数が か月連続の増加を続けて
会報告』
(平成 年 月)によると、やや古いが、
いる。これには、財産を金融資産で残すよりも、
平成 年に総務省が行った「全国消費実態調査」
不動産、特に貸家で残すと相続税評価額を相当圧
等から、
平成 年 月末現在の 歳以上の高齢
縮でき、節税対策になることが影響していると思
世帯が保有する宅地資産は約 兆円であり、全
われる。時価 億円の金融資産はほぼそのまま相
世帯の宅地資産 兆円の 割を占めることが示
続税評価額になるのに対し、今、仮に、 億円の
されている。
金融資産を原資に、 億円の土地を購入し、
ただし、相続税の節減に目を奪われて、その後
億円の建築費をかけて、全部を貸家用のアパート
の毎年のキャッシュフローの収支及び減価償却額
やマンションとして建設したとしよう。
借入金は、
や借入金利の償還を踏まえた損益計算の動向を適
別途、個人の相続税課税価格の計算上債務控除の
切に見通さないと、今後とも人口減により貸家需
対象となり、相続税額の軽減に寄与するが、ここ
給が緩む状況の下で、貸家市場は借り手市場化し
では、相続財産評価の低減効果について説明しよ
ていくと考えられるため、家賃の低迷等からその
う。このケースでは、土地の評価は貸家建付地と
後の経営に支障が出る恐れも否定できない。空き
な り 、 そ の 評 価 額 は 、 自用地評価 × (1 −
室リスク、家賃滞納リスク、建物老朽化リスク等
る。標準的なケースでは、借地権割合 、借家
を過大に評価しないよう、専門家の意見なども参
割合 (一律)
、賃貸割合 であり、土地の相
考にしながら、採算性確保に留意することが重要
借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)と計算され
を十分に見込み、12,(1HW 2SHUDWLQJ ,QFRPH)
であろう。
104 土地総合研究 2014年夏号
なお、資産を不動産に変えて運用する方法は、
このような仕組みについては、世代間の資産格差
必ずしも貸家建設に限らない。マンションを購入
の固定化を助長し、所得再分配機能を弱めるとの
して賃貸する方法によっても同じ効果を上げるこ
指摘がある一方、資産移転の選択の自由度(中立
とができる。むしろ、この方が管理費用は節減さ
性)を高め、資産移転の早期化を実現するととも
れるかもしれない。更に、高層マンションであれ
に、購買力の高齢層から壮年・中年層への移転を
ば、持分土地が細分化されるため、その分相続税
通じて、消費、住宅投資の拡大や経済の活性化に
評価額が相対的に小さくなるとともに、どの階で
寄与する効果を評価する向きもあった。加えて近
も建物の相続税評価額単価は同額であるため、購
年、特定の政策目的を持った時限的な贈与税の非
入単価ベースでは単価が高い上層階ほど実質的に
課税措置が相続時精算課税制度と併用可能な制度
建物相続税評価額単価を節約できるというメリッ
として設定・拡充される傾向があり、その例とし
トがあるとされる。そこで、大都市圏では、都心
ては、 歳以上の直系卑属に対する住宅取得等資
部を中心とした賃貸用投資マンションの購入行動
金の非課税措置(平成 年度から 年度まで、
が、多くの場合、相続税節減効果を目的とした動
最高額は平成 年贈与の、子、孫ごとの 万
機によって、高額の資産保有階層において活発に
円、その後段階的に非課税最高限度額は縮小)、
行われているとみられる。
歳までの直系卑属に対する教育資金の一括贈
与の非課税措置(平成 年 月から 年 月
(相続税の補完税としての贈与税)
日まで、最高額は子、孫ごとに 万円)を
よく知られているように、贈与税は、相続課税
の存在を前提に、相続課税の回避を防止する意味
の補完税として昭和 年に相続税法の中に創設
挙げることができる。
(贈与税の課税状況)
された。このため、非課税枠(昭和 ~ 年 近年の贈与税の課税状況を暦年課税と相続時精
万円、~ 年 万円、~ 年 万円、
算課税とに分けてみると、贈与件数全体に占める
~平成 年 万円、~ 年 万円)を小さ
暦年課税件数割合が圧倒的に多く、%を占め、
く抑え、同じ課税対象額に対する税率を相続税よ
年ごとにこの割合は増加している。一見、特別控
り高く設定していた。このことが生前贈与の円滑
除があり、かつ、限界税率の低い相続時精算課税
化を阻害していることが認識され、平成 年に、
を活用する方が、財産贈与上有利なように見える
暦年の贈与税制度と選択的に適用される相続時精
が、
現実の贈与の大宗は 件当たりの平均額が 算課税制度が創設された。この制度は、生前贈与
万円台と少額であること、贈与金額が 万円以
を受ける際に、贈与時に贈与税を支払い、その後
下であれば、基礎控除の 万円を引いた課税財
贈与者の相続時に生前の贈与財産を相続財産に加
産価額は 万円以下となり、限界税率は %乃
えて相続税を計算し、生前贈与時の贈与税を相続
至 %にとどまるので、相続時精算課税の限界税
税から控除して精算する制度であり、受贈者の各
率 %より低率となり、贈与金額から見て有利な
年の贈与額の累計が 万円の特別控除以下で
暦年課税を使うケースが多いことが背景にあるも
ある限り、贈与税は非課税とされる。この非課税
のとみられる。
枠を超える部分の贈与額には一律 %の比例税
また、取得財産価額総額でみても、暦年課税分
の贈与税が課され、贈与時の贈与額が大きいほど
が占める割合は増加傾向にあり、最新時では 割
暦年贈与に比して贈与税が軽減されるメリットが
を超えている。贈与税の納付税額総額は平成 ある。更に、時期により差異はあるが、これまで
年には 億円と、やや増加する傾向にある。暦
のところ住宅取得のための相続時精算課税につい
年課税の平均税率は 件当たりの贈与財産価格が
ては適用要件がさらに緩和されて優遇されてきた。
数百万円程度であるために 程度で推移してい
土地総合研究 2014年夏号 105
図表 贈与税の課税状況
㻌㻌
㻔㻭㻕件数㻌
①㻌
㻔㻮㻕取得財産価額㻌
㻔㻯㻕贈与税額㻌
㻔㻮㻕㻛㻔㻭㻕㻌
㻔㻯㻕㻛㻔㻮㻕㻌
㻔億円㻕㻌
㻔億円㻕㻌
㻔万円㻕㻌
㻔㻑㻕㻌
㻟㻢㻥㻘㻣㻠㻟㻌 㻔㻝㻜㻜㻕㻌
㻞㻜㻘㻞㻤㻤㻌
㻝㻘㻝㻤㻟㻌
㻡㻠㻥㻌
㻡㻚㻤㻌
平成 㻝㻤 年㻌 ②㻌
㻞㻤㻣㻘㻥㻥㻞㻌
㻔㻣㻠㻕㻌
㻥㻘㻠㻞㻠㻌
㻤㻥㻣㻌
㻟㻞㻣㻌
㻥㻚㻡㻌
③㻌
㻤㻟㻘㻞㻥㻜㻌
㻔㻞㻢㻕㻌
㻝㻜㻘㻤㻢㻠㻌
㻞㻤㻢㻌
㻝㻘㻟㻜㻠㻌
㻞㻚㻢㻌
①㻌
㻟㻡㻤㻘㻤㻟㻞㻌 㻔㻝㻜㻜㻕㻌
㻞㻜㻘㻡㻟㻤㻌
㻝㻘㻜㻣㻠㻌
㻡㻣㻞㻌
㻡㻚㻞㻌
②㻌
㻞㻣㻜㻘㻤㻡㻣㻌
㻔㻣㻡㻕㻌
㻤㻘㻢㻢㻜㻌
㻣㻥㻥㻌
㻟㻞㻜㻌
㻥㻚㻞㻌
③㻌
㻤㻥㻘㻡㻣㻝㻌
㻔㻞㻡㻕㻌
㻝㻝㻘㻤㻣㻤㻌
㻞㻣㻠㻌
㻝㻘㻟㻞㻢㻌
㻞㻚㻟㻌
㻝㻥㻌
㻞㻜㻌
㻞㻝㻌
㻞㻞㻌
㻞㻟㻌
①㻌
㻟㻞㻡㻘㻠㻜㻟㻌 㻔㻝㻜㻜㻕㻌
㻝㻣㻘㻡㻤㻝㻌
㻝㻘㻜㻟㻥㻌
㻡㻠㻝㻌
㻡㻚㻥㻌
②㻌
㻞㻡㻞㻘㻠㻜㻟㻌
㻔㻣㻤㻕㻌
㻤㻘㻞㻟㻣㻌
㻤㻡㻜㻌
㻟㻞㻢㻌
㻝㻜㻚㻟㻌
③㻌
㻣㻠㻘㻝㻟㻤㻌
㻔㻞㻞㻕㻌
㻥㻘㻟㻠㻠㻌
㻝㻤㻥㻌
㻝㻘㻞㻢㻜㻌
㻞㻚㻜㻌
①㻌
㻟㻝㻜㻘㻥㻠㻠㻌 㻔㻝㻜㻜㻕㻌
㻝㻢㻘㻞㻥㻥㻌
㻝㻘㻜㻝㻤㻌
㻡㻞㻠㻌
㻢㻚㻞㻌
②㻌
㻞㻠㻢㻘㻞㻡㻠㻌
㻔㻣㻥㻕㻌
㻣㻘㻥㻡㻟㻌
㻣㻥㻢㻌
㻟㻞㻟㻌
㻝㻜㻚㻜㻌
③㻌
㻢㻢㻘㻡㻜㻡㻌
㻔㻞㻝㻕㻌
㻤㻘㻟㻠㻣㻌
㻞㻞㻞㻌
㻝㻘㻞㻡㻡㻌
㻞㻚㻣㻌
①㻌
㻟㻝㻜㻘㻟㻞㻠㻌 㻔㻝㻜㻜㻕㻌
㻝㻡㻘㻞㻥㻝㻌
㻝㻘㻞㻥㻞㻌
㻠㻥㻟㻌
㻤㻚㻠㻌
②㻌
㻞㻢㻝㻘㻝㻠㻟㻌
㻔㻤㻠㻕㻌
㻥㻘㻜㻜㻠㻌
㻝㻘㻜㻥㻟㻌
㻟㻠㻡㻌
㻝㻞㻚㻝㻌
③㻌
㻡㻜㻘㻢㻢㻟㻌
㻔㻝㻢㻕㻌
㻢㻘㻞㻤㻤㻌
㻝㻥㻥㻌
㻝㻘㻞㻠㻝㻌
㻟㻚㻞㻌
①㻌
㻟㻠㻜㻘㻞㻠㻟㻌 㻔㻝㻜㻜㻕㻌
㻝㻢㻘㻞㻠㻤㻌
㻝㻘㻟㻢㻞㻌
㻠㻣㻤㻌
㻤㻚㻠㻌
②㻌
㻞㻥㻞㻘㻡㻡㻥㻌
㻝㻜㻘㻞㻜㻜㻌
㻝㻘㻝㻢㻥㻌
㻟㻠㻥㻌
㻝㻝㻚㻡㻌
㻝㻘㻞㻞㻥㻌
㻟㻚㻞㻌
㻔㻤㻡㻕㻌
③㻌
㻠㻥㻘㻞㻜㻠㻌 㻔㻝㻡㻕㻌
㻢㻘㻜㻠㻤㻌
㻝㻥㻟㻌
注国税庁「国税統計年報」による。
件数は贈与申告のあった者の数である
各年上段①は総計、中段②は暦年課税分、下段③は相続時精算課税分
( )は全体件数を とした場合の内訳の割合を示す。
るのに対し、非課税枠 万円(限度額まで複数
つの要因にになっているというのである。
回使用可能)がある相続時精算課税の税率は、多
上記の報道や図表 に示すように、
地方税の基
くの場合、贈与額の累計がこの非課税枠に収まる
幹税である不動産取得税及び固定資産税だけを見
ケースが多いために、~%程度と極端な低率に
ても、住宅及びその敷地に対しては様々な優遇措
とどまっている(図表 )
置が講ぜられているが、相互に微妙な適用条件の
差異があり、政策目的と優遇措置とが必ずしも整
補論 .住宅及び住宅敷地に対する不動産取得税、
合しているとは言い切れない可能性がある。ここ
固定資産税等の課税の特例制度について
では、これ以上、その内容を分析する材料を持ち
月 日の日経新聞「規制-岩盤を崩す-」の
特集記事の中で、「空き家放置が合理的」との副
題をつけて、高度成長期の人口増に住宅供給を追
い付かせる対策として、農地などの宅地化促進策
と合わせて昭和 年( 年)に住宅敷地に対
する固定資産税の課税標準を軽減する優遇措置が
制度化されたことが紹介されている。ところが、
これが今では空き家が撤去されずに放置される一
昭和 年に住宅用地に対する固定資産税の課税標準
の特例措置(一律)が創設され、翌昭和 年に、
敷地面積 ㎡以下の部分は、 ㎡超の部分は
とする特例が導入された。更に、平成 年から、固
定資産税評価額を時価の7割をめどに引き上げる流れ
の中で、この措置が拡充され、敷地面積 ㎡以下の
部分が、 ㎡超の部分が とされた。その上、
平成 年からは、それまではなかった住宅用地に対す
る都市計画税の課税標準の特例措置が、敷地面積 ㎡以下の部分については、 ㎡超の部分について
は という形で設けられ、今日に至っている。
106 土地総合研究 2014年夏号
合わせないが、今後さらに究明を必要とするテー
マであることだけを指摘しておこう(図表 )。
(本研究ノートは 年 月 日現在で整理し
たものです)
図表 住宅及びその敷地に対する不動産取得税及び固定資産税の優遇措置の例
不動産取得税
住宅特例床面積要件
住宅特例床面積要件
住宅敷地特例
(持家)
貸家
(持家、貸家とも)
 住宅特例は恒久措
課税標準の控除特 課税標準の控除特 税額控除の特例
例
例
 ㎡以上 ㎡以
 ㎡以上 ㎡以
下の場合
下の場合
備考
 住宅の床面積 置
㎡以上(貸家の場
 住宅敷地の税額控
合は ㎡以上)
除の特例は 年
 新築及び中古住宅
 新築住宅には適用
㎡以内の住宅
度から 年度ま
ともに適用があ
があるが、中古住
の ㎡までの部
での特例
る。
宅には適用がな
分が上限
い。
固定資産税
税額控除の特例
税額控除の特例
課税標準の特例
 住宅の税額控除の
 ㎡以上 ㎡以
 ㎡以上 ㎡以
 敷地面積 ㎡以
特例は 年度か
下の部分は 分の
ら 年度までの
特例。
下の場合
都市計画税
下の場合
 戸建ては 年間、
 戸建ては 年間、
、 ㎡超の部分
マンションは 年
マンションは 年
は 分の (住宅
 住宅敷地の課税標
間居住用部分が 間居住用部分が 床面積の 倍以
準の特例は恒久措
分の 以上の場合
分の 以上の場合
下の部分に限る)
置。
に限る税額を に限る税額を に課税標準を軽減
分の に軽減
分の に軽減
 特例なし(課税対
象外)
 特例なし(課税対
象外)
課税標準の特例
 住宅敷地の課税標
 敷地面積 ㎡以
準の特例は恒久措
下の部分は 分の
置
、 ㎡超の部分
は 分の (住宅
床面積の 倍以
下の部分に限る)
に課税標準を軽減
(注)土地総合研究所調べによる。
>あらい としゆき@
>一財土地総合研究所 専務理事@)
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