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Title 食品業界再編の一考察 - 慶應義塾大学学術情報リポジトリ(KOARA)
Title Author Publisher Jtitle Abstract Genre URL Powered by TCPDF (www.tcpdf.org) 食品業界再編の一考察 : 日本発グローバル食品メジャー企業のデザイン 細野, 有希(Hosono, Yuki) 井上, 光太郎(Inoue, Kotaro) 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 (2012. 3) 我が国の食品産業が国内市場の閉塞とグローバル競争の激化という環境の中で、生き残るための アクションとして「業界再編」をキーワードに「日本発グローバル食品メジャー企業」をデザイ ンする。 我が国の食品産業はこれまで、人口約1億2千人分の巨大胃袋に支えられ、安定した産業基盤を築 いてきた。しかしながら、足元を見ると、人口減尐により国内市場は縮小。一方で、縮小する国 内市場の分を海外市場に活路を見出そうとすれば、新興国市場を初めとする巨大市場を前にして 欧米企業を中心とするネスレやクラフトなどのグローバル食品メジャー企業を中心に、激しいグ ローバル競争が繰り広げられている。 こうしたグローバル競争の構造の特徴として、グローバル規模の業界再編が加速していることで ある。グローバル食品メジャー企業は最大で1兆円超の大型クロスボーダーMAを行い、高収益を 維持しながらグローバルでのプレゼンスを強めている。一方で我が国の食品業界はというと、近 年飲料業界を中心に積極的な再編の動向が見られるものの、全体として業界再編は進んでおらず 、未だ国内を中心に収益を奪い合っている状態である。その結果、グローバルメジャー企業と比 較すると、この10年で売上高8兆円のネスレを筆頭に、成長率、営業利益率や海外売上高比率等に 圧倒的な差が生じてしまった。このままでは日本はグローバル競争において务位することになる 。個々の企業がばらばらに動くのではなく、日本企業としてまとまる必要があると考える。 そこで、本論文では、我が国の食品産業が国内市場の閉塞とグローバル競争激化という環境の中 で生き抜くためのアクションとして「日本発グローバル食品メジャー企業」を誕生させる。具体 的には2段階あり、まず、第1段階として国内メジャー企業同士の多角化型統合により規模の拡大 を図り買収余力を確保、その上で第2段階として大型クロスボーダーMA実行する。 ここでなぜ、①国内メジャー企業同士の統合をするのか、②なぜ多角化型統合なのかというと、 ①については分析した結果、グローバルベースでの食品産業のクロスボーダーMAをする場合のタ ーゲット先の相対的規模の中央値はおおむね10%ということが明らかとなった。こうした中で個 々の日本企業がグローバル食品メジャー企業と張り合うだけの大型クロスボーダーMAを実行する ことは財務的に限界がある。したがって、国内メジャー企業同士でまず統合することにより財務 余力を確保する必要があると考える。次に②についてであるが、多角化統合する理由は水平型統 合と異なり、独禁法に抵触する可能性が低く、またリストラ等の統合コストがかからないため、 再編をスムーズに行い、グローバル競争に対応することができるからである。このように迅速に 国内メジャー同士で統合を行うことにより規模と買収余力を確保し、グローバル競争で勝ち残っ ていくことできると考える。 Thesis or Dissertation http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=KO40003001-00002011 -2698 慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程 学位論文 2011 年度 論文題名 食品業界再編の一考察:日本発グローバル食品メジャー企業のデザイン 主 査 井上光太郎 先生 副 査 青井倫一 先生 副 査 浅川和宏 先生 副 査 河野宏和 先生 平成 24 年 学籍番号 81031099 3月 1 日 提出 氏 名 細野有希 論 文 要 旨 所属ゼミ 井上光太郎研究会 学籍番号 81031099 氏名 細野 有希 (論文題名) 食品業界再編の一考察:日本発グローバル食品メジャー企業のデザイン (内容の要旨) 我が国の食品産業が国内市場の閉塞とグローバル競争の激化という環境の中で、生き残るためのア クションとして「業界再編」をキーワードに「日本発グローバル食品メジャー企業」をデザインする。 我が国の食品産業はこれまで、人口約 1 億 2 千人分の巨大胃袋に支えられ、安定した産業基盤を築 いてきた。しかしながら、足元を見ると、人口減尐により国内市場は縮小。一方で、縮小する国内市 場の分を海外市場に活路を見出そうとすれば、新興国市場を初めとする巨大市場を前にして欧米企業 を中心とするネスレやクラフトなどのグローバル食品メジャー企業を中心に、激しいグローバル競争 が繰り広げられている。 こうしたグローバル競争の構造の特徴として、グローバル規模の業界再編が加速していることであ る。グローバル食品メジャー企業は最大で 1 兆円超の大型クロスボーダーM&A を行い、高収益を維 持しながらグローバルでのプレゼンスを強めている。一方で我が国の食品業界はというと、近年飲料 業界を中心に積極的な再編の動向が見られるものの、全体として業界再編は進んでおらず、未だ国内 を中心に収益を奪い合っている状態である。その結果、グローバルメジャー企業と比較すると、この 10 年で売上高 8 兆円のネスレを筆頭に、成長率、営業利益率や海外売上高比率等に圧倒的な差が生 じてしまった。このままでは日本はグローバル競争において务位することになる。個々の企業がばら ばらに動くのではなく、日本企業としてまとまる必要があると考える。 そこで、本論文では、我が国の食品産業が国内市場の閉塞とグローバル競争激化という環境の中で 生き抜くためのアクションとして「日本発グローバル食品メジャー企業」を誕生させる。具体的には 2 段階あり、まず、第 1 段階として国内メジャー企業同士の多角化型統合により規模の拡大を図り買 収余力を確保、その上で第 2 段階として大型クロスボーダーM&A 実行する。 ここでなぜ、①国内メジャー企業同士の統合をするのか、②なぜ多角化型統合なのかというと、① については分析した結果、グローバルベースでの食品産業のクロスボーダーM&A をする場合のター ゲット先の相対的規模の中央値はおおむね 10%ということが明らかとなった。こうした中で個々の日 本企業がグローバル食品メジャー企業と張り合うだけの大型クロスボーダーM&A を実行することは 財務的に限界がある。したがって、国内メジャー企業同士でまず統合することにより財務余力を確保 する必要があると考える。次に②についてであるが、多角化統合する理由は水平型統合と異なり、独 禁法に抵触する可能性が低く、またリストラ等の統合コストがかからないため、再編をスムーズに行 い、グローバル競争に対応することができるからである。このように迅速に国内メジャー同士で統合 を行うことにより規模と買収余力を確保し、グローバル競争で勝ち残っていくことできると考える。 目次 要約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 第一章 序論 ―日本がグローバル競争で勝ち抜くにはどのようなアクションが必要か―・・・・・2 第一節 問題意識 1.国内成熟産業が直面する現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 2.グローバル競争の構造―加速化する業界再編―・・・・・・・・・・・・・3 第二節 日本企業に求められているアクションは何か・・・・・・・・・・・・・5 第三節 「日本発グローバル食品メジャー企業」構想・・・・・・・・・・・・・6 1.「日本発グローバル食品メジャー企業」構想・・・・・・・・・・・・・・・6 2.「メジャー企業」とは―研究の対象・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 第四節 本研究の意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 第二章 我が国食品産業の特色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 第一節 「食」固有の特色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 第二節 我が国食品産業の特色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 1.安定した基幹産業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 2.数尐ないメジャー企業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 3.高いオーナー比率、強い地域性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 4.低い海外売上高比率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 5.低い PBR、PER・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 6.グローバルでの地位・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 第三章 業界再編の必要性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 第一節 我が国食品産業を取り巻く環境・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 1.国内市場の閉塞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 2.グローバル展開の必要性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21 第二節 食品産業におけるグローバル競争の構造―業界再編の加速―・・・・・・23 1.グローバルビール業界の動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 2.他のグローバルメジャー企業の動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 第三節 進まない業界再編・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 1.近年の我が国食品産業の業界再編の動向・・・・・・・・・・・・・・・・28 2.検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35 3.考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ i 39 第四節 グローバル食品メジャー企業との比較・・・・・・・・・・・・・・・・40 1.成長性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 2.圧倒的な売上高と営業利益率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 3.高い海外売上高比率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 第五節 業界再編の必要性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 第四章 「日本発グローバル食品メジャー企業」を誕生させる意義・・・・・・・・47 第一節 国内メジャー企業同士の統合を行う意義・・・・・・・・・・・・・・・47 1.考え得る選択肢・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 2.検証―なぜ国内メジャー企業同士の統合なのか―・・・・・・・・・・・ 48 3.考察及び結論―国内メジャー企業同士の統合を行う意義―・・・・・・・ 55 第二節 多角化型統合を行う意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 1.考え得る選択肢・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 2.多角化型統合を行うメリット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60 3.多角化型統合について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62 4.考察及び結論―多角化型統合を行う意義・・・・・・・・・・・・・・・・63 第五章 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65 第一節 本論文の結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65 第二節 具体的な再編に関する示唆・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 1.考慮すべき事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 2.目指す方向性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 3.具体的な再編に関する示唆・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68 第三節 日本発グローバルメジャー企業誕生がもたらす効果・・・・・・・・・ 70 第四節 おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71 巻末付属資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・80 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82 ii 要約 我が国の食品産業が国内市場の閉塞とグローバル競争の激化という環境の中で、生き残る ためのアクションとして、「業界再編」をキーワードに、「日本発グローバル食品メジャー企 業」をデザインする。 我が国の食品産業はこれまで、人口約 1 億 2 千人分の巨大胃袋に支えられ、安定した産業 基盤を築いてきた。しかしながら、足元を見ると、人口減尐により国内市場は縮小。一方で、 縮小する国内市場の分を海外市場に活路を見出そうとすれば、新興国市場を初めとする巨大 市場を前にして欧米企業を中心とするネスレやクラフトなどのグローバル食品メジャー企業 を中心に、激しいグローバル競争が繰り広げられている。 こうしたグローバル競争の構造の特徴として、グローバル規模の業界再編が加速している ことである。グローバル食品メジャー企業は 1 兆円超の大型クロスボーダーM&A を行い、 高収益を維持しながらグローバルでのプレゼンスを強めている。一方で我が国の食品業界は というと、近年飲料業界を中心に積極的な再編の動向が見られるものの、全体として業界再 編は進んでおらず、未だ国内を中心に収益を奪い合っている状態である。その結果、グロー バルメジャー企業と比較すると、この 10 年で売上高 8 兆円のネスレを筆頭に、成長率、営業 利益率や海外売上高比率等に圧倒的な差が生じてしまった。このままでは日本はグローバル 競争において务位することになる。個々の企業がばらばらに動くのではなく、日本企業とし てまとまる必要があるのではないかと考える。 そこで、本論文では、我が国の食品産業が国内市場の閉塞とグローバル競争激化という環 境の中で生き抜くためのアクションとして「日本発グローバル食品メジャー企業」を誕生さ せる。具体的には 2 段階あり、まず、第 1 段階として国内メジャー企業同士の多角化型統合 により規模の拡大を図り買収余力を確保、その上で第 2 段階として大型クロスボーダーM&A 実行する。 ここでなぜ、①国内メジャー企業同士の統合をするのか、②なぜ多角化型統合なのかとい うと、①については分析した結果、グローバルベースでの食品産業のクロスボーダーM&A をする場合のターゲット先の相対的規模の中央値はおおむね 10%ということが明らかとな った。こうした中で個々の日本企業がグローバル食品メジャー企業と張り合うだけの大型ク ロスボーダーM&A を実行することは財務的に限界がある。事実、大型クロスボーダーM&A を実行している大手企業の自己資本比率は減尐している。したがって、国内メジャー企業同 士でまず統合することにより財務余力を確保する必要があると考える。 次に、②についてであるが、多角化統合する理由は、水平型統合と異なり多角化型統合の 場合は独禁法に抵触する可能性が低く、また、リストラ等の統合コストがかからないため再 編をスムーズに行うことができ、迅速にグローバル競争に対応することができるからである。 このように迅速に国内メジャー企業同士で統合を行い、グローバルメジャー企業に匹敵す る規模と買収余力を確保した上で大型クロスボーダーM&A を行っていくことによりグロー バル競争でのスタートラインに立つことができると考える。 1 第一章 -日本がグローバル競争で勝ち抜くにはどのようなアクションが必要なのか- 第一節 問題意識 1.国内成熟産業が直面する現状 これまで我が国の国内成熟産業の多くは人口約 1 億 2 千万人(世界 10 位)、世界第 2 位の 経済大国(GDP2 位)という自国の巨大市場に支えられ成長・発展を遂げてきた。しかし、 自国の市場を中心に成長・発展を遂げてきた国内内需型産業も、足元を見ると尐子高齢化に 伴う人口減尐が進行し(図表 1)、これまでの基盤である国内市場は縮小している。一方でグ ローバルを見渡せば、BRICs を初めとする新興国や、ボーダレス化に伴うグローバル消費者 をターゲットとした新たな巨大市場が期待されている。 しかしながら、新たなターゲットとして期待されるグローバル市場では、欧米企業を筆頭 に、既にグローバル規模での競争が激しく繰り広げられている。また中国や韓国などのアジ アのライバルも昨今では凄まじい勢いで台頭してきている。したがって、日本企業が国内市 場の縮小分をグローバル市場に活路を見出し、成長を描いていこうとするならばこれらの企 業と国境を越えた競争を繰り広げていかなければならない。 図表 1 我が国の人口推移1 我が国の人口推移 140000 120000 千万人 100000 80000 60000 40000 20000 0 1 統計局ホームページ公表データより(http://www.stat.go.jp/)筆者作成。 2 65歳以上 '老年 人口( 15~64 '生産年齢 人口( 0~14歳 (年少 人口) 2.グローバル競争の構造-加速化する業界再編- こうしたグローバル競争での 1 つの特徴となっているのが、アルセロール・ミタルを代表 する鉄鋼業界や自動車業界、航空輸送業界、石油業界、後述するビール業界等、多くの産業 においてグローバル規模の大型業界再編が加速していることである。鉄鋼業界を例にとれば、 2006 年にインドのミタル・スチールがヨーロッパのアルセロールを買収し、アルセロー ル・ミタルが誕生、アルセロール・ミタルは世界最大の鉄鋼メーカーへと躍進し、今日で は年間粗鋼生産量で世界シェアの約 10%を占めている。その前身となったアルセロールに 至っては 2001 年にフランスのユジノール、スペインのアセラリア、ルクセンブルクのアルベ ッドの大手欧州 3 社が統合したものである。こうした大型再編の結果、2000 年と 2010 年の 粗鋼生産量の順位を比較すると大きく変化を遂げていることが分かる(図表 2)。 図表 2 鉄鋼業界の 2000 年と 2010 年の粗鋼生産量順位の比較2 2010年 順位 1 2 3 4 5 6 7 7 9 10 鉄鋼メーカー アルセロール・ミタル 河北鋼鉄集団 上海宝鋼集団 武漢鋼鉄 新日本製鐵 ポスコ JFEスチール 江蘇沙鋼集団 首鋼集団 タタ製鉄 2000年 国名 粗鋼生産量'万t( ルクセンブルク 9050 中国 5290 中国 4450 中国 3660 日本 3610 韓国 3370 日本 3270 中国 3010 中国 2580 インド 2350 順位 鉄鋼メーカー 国名 粗鋼生産量'万t( 1 新日本製鐵 日本 2910 2 ポスコ 韓国 2850 3 アルベッド ルクセンブルク 2410 4 LNM 英国 2240 5 ユジノール フランス 2100 6 NKK 日本 2060 7 コーラス 英国 2000 8 ティッセン・クルップ ドイツ 1800 9 上海宝鋼集団 中国 1770 このようにグローバルでは大型再編を行い、グローバルメジャー企業へと成長を遂げてお り、再編による規模の拡大がグローバル競争を勝ち抜く上での 1 つの重要な要素になっていると いうことが言える。この点に関しては本論文において重要となるため、第一章に入る前に、ここ で業界再編が起こる要因についての先行研究とグローバル競争を勝ち抜くための戦略論の先 行研究に触れながら、グローバル競争の構造についてもう尐し詳しく整理することとする。 2グローバル企業調査会『世界業界マップ 2011』(ダイヤモンド社、2011 年)を基に筆者作成。 3 (1)先行研究-業界再編が起こる要因- 業界再編が起こる要因として、Mitchell and Mulherin(1996)や Andrade and Stafford (2004)、Harford(2005)らによれば、買収や企業再編は単独企業に起因するというもの ではなく、業界全体の現象に起因し、特定の産業を中心にある期間に M&A 件数が集中して いることを明らかにしている。そして、特定の産業を中心にある期間に M&A 件数が集中す る要因として、主に①実物的要因と②金融的要因の 2 つに分かれて説明がなされている。 ・実物的要因 実物的要因とは産業レベルでの成長性や収益性に対する「業界ショック」の影響に注目し ている。前述した Mitchell and Mulherin(1996)や Andrade and Stafford(2004)、Harford (2005)らによれば、産業内あるいは産業間での資源の大規模な再配分を必要とするような 成長性や収益性の「業界ショック」が起こった場合に M&A がこの資源配分の有効な手段と して用いられる結果として M&A 件数が集中すると主張している。そしてこの場合の「業界 ショック」は具体的には「正のショック」と「負のショック」の 2 つに分かれるとされてい る。 「正のショック」は、経済性要因を指し、主に技術進歩によって規模の経済や範囲の経済 の実現が可能となる場合や規制緩和によって収益の高い部門への参入が可能となる場合に M&A 件数が増えるとしている。一方で、 「負のショック」は Jensen(1993)が強調してお り、業界が技術革新等の大きな事柄によって技術が陳腐化し、需要が急減した場合に、過剰 設備問題を処理する手段として、M&A が集中するとしている。 ・金融的要因 一方で金融的要因としては、M&A 当事者の資金的制約が小さい場合や、株式市場のブー ム期に M&A の集中化が起きることが挙げられている。Harford(2005)は、M&A 件数の増 加が資金の流動性が高い場合においてのみ成立し、マクロレベルの流動性の増加が M&A 活 動における資金制約を緩和し、結果として全般的な M&A 件数の上昇につながることを指摘 している。株式市場のブーム期に M&A が集中することに関しては、Golbe and White(1988) が株価と M&A 活動に正の相関関係があることを実証しており、株式市場が効率的で特定の 産業において成長性が高く見込まれる場合に M&A が集中するとしている。 こうした業界再編が起こる要因が日本の M&A でも当てはまるのかについて、宮島(2008) が 1991 年から 2004 年の間の東証 1 部及び 2 部で取引金額が 2 億円以上の M&A のデータを 用いて検証を行っており、我が国の M&A は金融的要因による作用は小さく、実物的要因に よるところが大きいという結果を得ている。 4 (2)グローバル競争の構造 以上より従来から提示されてきた業界再編を引き起こす要因として主に実物的要因と金融 的要因について見てきたが、昨今のグローバル競争を見ると、経済のボーダレス化に伴うグ ローバル消費者と新興国市場をターゲットとする巨大市場が誕生したこと、ボーダレス化に 伴い世界中の消費者がターゲットとなり、サプライチェーンの統合が進んでいることが再編 をさらに加速させる大きな要因となっていると考える。企業活動や市場がグローバル化する 中では、これまで以上に業界再編による規模の経済性や範囲の経済性等の効果が広範囲に及 ぶようになっている。この点、 Porter(1982)も、原価低減か、すぐれた評判・サービス のいずれかによって、世界全体の量を扱うことから大きな利益が得られ、しかもその利益が その量を扱うために追加しなければならない費用よりも大きい場合、すなわち、規模の経済 が地球規模で働く場合に、グローバル競争が生じるとしている。 図表 3 グローバル競争の構造3 ≪これまでの主な要因≫ ≪近年の要因≫ ◆実物的要因 ・規模の経済性 ・新興国を初めとする巨大市場の台頭 ・規制緩和、技術革新 ・ボーダレス化に伴う ・上流・下流の再編による調達コストの -グローバル消費者の誕生 上昇 -サプライチェーンの統合 ◆金融的要因 買収企業の資金余力と株価 グローバル規模の再編 競争の激化 3 筆者作成。 5 第二節 日本企業に求められているアクションは何か 以上のようなグローバル規模の競争・業界再編が進む中で、日本では国内に多くのプレー ヤーが存在し、再編が進んでこなかった。鉄鋼業界を見ても、前述した図表 2 を見ると、こ の 10 年間で新日鉄は 2000 年時点では世界 1 位であったが、2010 年には 5 位に転落してい る。その間にアルセロール・ミタルが誕生し、世界 1 位の鉄鋼会社へと躍進した。こうした グローバルでの寡占化の動きを受け、昨今新日本製鉄と住友金属工業の統合が公正取引委員 会から承認を受け、2012 年 10 月を目途に正式に統合することが決定したが、グローバル規 模の再編はそれを先行くスピードで進んでいるのである。また後述するビール業界において も世界 TOP4 の AB インベブ、SAB ミラー、ハイネケン、カールバーグで世界シェアの 50% を超え寡占化が進んでいるが、日本においてはキリンを筆頭に、サントリー、アサヒ、サッ ポロの 4 社が国内を中心に競争を繰り広げている状況である4。 このように、日本で多くのプレーヤーが国内で収益性を奪い合いながら競争を繰り広げて いる間に、グローバルでは国境を越えた再編が加速し、競争の土台はボーダレス化している。 このような状況の中でこのまま個々の企業がそれぞれ行動を別にしながら国内を中心に争っ ているようでは、国内市場が縮小する中、さらには再編が加速するグローバル競争において 日本は勝ち残れない。日本企業同士で再編を行い、 「日本連合」でグローバルでの競争に挑ん でいく必要があるのではないだろうか。 ここで、個々にクロスボーダーM&A を実行すれば良いのではないかという意見もあるか もしれないが、本論文の帰結として、グローバル競争で勝ち抜くためには、国内のメジャー 企業同士で統合・規模拡大を図り日本を代表するグローバルメジャー企業になるための土台 を作っていく必要があると考える。これについては次章以降で詳しく展開していく。 そこで、本研究では以下具体的に、食品産業(主に食品製造業)に焦点をあて、我が国の 食品産業がグローバル競争で勝ち残る上でのグランドデザインとして「日本発グローバル食 品メジャー企業」構想を描くこととする。 4 ビール業界については第三章で詳細に述べる。 6 第三節 「日本発グローバル食品メジャー企業」構想 1. 「日本発グローバル食品メジャー企業」構想 我が国の食品産業の今後のグランドデザインとして、 「日本発グローバル食品メジャー企業」 を誕生させることが本論文の結論である。 具体的なプロセスしては 2 段階ある。まず第 1 段階として国内のメジャー企業同士で多角 化型統合を行い、グローバルメジャー企業と戦えるだけの規模追求を図り、その上で第 2 段 階として、海外大型クロスボーダーM&A の実行をし、シナジーの追求を図る(図表 4)。 図表 4 「日本発グローバル食品メジャー企業」構想5 そこで第二章以降においては、我が国の食品産業においてそもそもなぜ、日本発グローバ ル食品メジャー企業を誕生させる必要があるのか、なぜ国内メジャー企業同士の統合なのか、 なぜ多角化型統合なのか、具体的にはどのような再編を描いて行くのか について中心に、順に明らかにしていくこととする。 2. 「メジャー企業」とは-研究の対象- ここで本論文の研究対象について明らかにしたい。食品産業といっても川上の農業・水産 業を中心とする第一次産業、川下の小売りや外食を中心とする第三次産業など多岐に渡って いるが、本論文では、食品製造(加工)を中心とする第二次産業、その中でも「上場食品製 造業」を研究の対象としている(図表 56))。したがって、本論文で「食品産業」とするとき は、「(上場)食品製造業」を対象としていることに注意されたい。 また、本論文で言う「メジャー」企業とは、後述するいわゆる売上高 3 兆円以上のネスレ やクラフト、ユニリーバ等の欧米のグローバル食品企業と匹敵する企業を想定している。 5 6 筆者作成 筆者作成。なお業種分類については、金融庁分類を基準にしている。 7 図表 5 本研究の対象となる食品上場業種別内訳 2010年食品上場業種別内訳'金融庁分類( 業種 企業数 割合(%) その他食料品製造業 61 44.9 パン菓子製造業 17 12.5 飲料製造業 16 11.8 肉製品乳製品製造業 12 8.8 漁業・農業 9 6.6 製糖業 8 5.9 製粉業 7 5.1 食用油製造業 6 4.4 合計 136 100 第四節 本研究の意義 そこで以降具体的に論じていく前に、なぜ本研究が食品産業に焦点を当てているのか、本 研究で食品産業の今後のグランドデザインを描くことにどのような意義があるのかについて 以下 2 点、明確にしておくこととする。 1 点目として筆者は現在、農林水産省食料産業局産業連携課長である新井ゆたか氏が中心 となって発起した食品産業研究会という私的勉強会に参加しており、そこで今後の国家の産 業政策の 1 つとして食品産業をどう描いていくかについての研究を共同で行っている。「食」 を巡る環境については、深刻な原料高騰や TPP 加入の可否など連日のように報道されている が、「食」は私たちが生きていく上で必要不可欠な要素であり、「食の安全性」と「食糧の確 保」という国家の政策的な観点からも食品産業の今後をグランドデザインすることは重要で あると考える。したがって、本研究は我が国の食品産業の政策の在り方を考える上での一側 面としての意味を有している。 2 点目として、詳細は後述するが、食品産業は主要産業の中でも業界再編が進んでいない 特殊な産業である。したがって、本論文を通じて食品産業の業界再編について探求すること は有意義であると考える。 以上の理由から、以降の章では、具体的に食品産業(とりわけ食品製造業)の今後のグラ ンドデザインを描いていくこととする。 8 第二章 我が国食品産業の特色 第一章においては、序論としてグローバル競争下ではボーダレス化した巨大市場を巡って 業界再編が加速しており、規模拡大がグローバル競争を勝ち抜く上での 1 つの重要な要素と なっていること、そして日本企業がそのような環境の中でグローバル競争を勝ち抜いていく には、業界再編のアクションが必要であり、具体的には「国内メジャー企業を中心とする業 界再編」とその上での「大型クロスボーダーM&A の実施」が必要なのではないか、という ことを自身の問題意識を踏まえ述べた。 本章以降においては具体的に我が国の食品産業が今後を描いていく上でどのようなアクシ ョンが必要であるかについて、序論で述べた「国内メジャー企業を中心とする業界再編」と その上での「大型クロスボーダーM&A の実施」をキーワードに、「日本発グローバル食品メ ジャー企業」構想を提示していく。 そこで本章ではまず我が国の食品産業の特色について見ることとする。 第一節 「食」固有の特色 まず食品産業を考える上で非常に重要となるのが、「食」固有の特殊性である。「食」は私 たちが生きていく上で必要不可欠なものである。同時に、 「味覚」は文化や宗教、風土や気候、 食材や調理方法等が長い時間をかけて互いに影響し合い、それぞれの地域において人々の生 活とともに形成されてきた。したがって、嗜好性が強く、保守的な色彩が強い。 一方で近年、我が国においてはグローバル化に伴うライフスタイルの変化により、食の「欧 米化」や「多様化」が進み、海外の料理を扱った外食産業の展開や、食材・調味料等が流通 し、日常的にも多く取り入れられるようになってきている。海外でも寿司を初めとする日本 食がブームとなっている。また、マクドナルドをはじめとするファストフードのグローバル 展開も加速しており、食の「均一化」も進んでいるとも言われている。このようにグローバ ル化の進展に伴い、私たちの「食」を取り巻く環境は大きく変化している。 しかし、例えば海外旅行へ行った時などに日本食がとても恋しくなる時があるように、味 覚というのは生まれた土地によって長年にわたって形成されたものであるため、なかなかそ れを変えることは難しい。実際に日本にある異国料理もそのほとんどが日本人の好むような 味付けにアレンジされているし、海外での日本食も現地の人々の味覚に合うように工夫され ている。こうした人々の味覚を形成する地域性の影響が強く反映される「食」固有の特殊性 は、後述する食品産業の特色にも影響していると考える。 9 第二節 我が国の食品産業の特色 1.安定した基幹産業 上述した「食」固有の特色を背景に、我が国の食品産業は人口約 1 億 2000 万人余りの胃 袋と味覚を支える重要な基幹産業としての地位を築いてきた。産業規模はトータルで約 85 兆 円であり、大まかな内訳は生鮮成食品が 20%(第一次産業) 、加工食品が 50%(第 2 次産業)、 外食が 30%(第三次産業)となっており(図表 5)、とりわけ第二次産業を見ると同じ加工で あっても業態が細分化されていることが分かる。この約 85 兆円もの産業規模の大きさは自動 車産業と匹敵する規模であると言われている。 図表 5 食品産業の分類7 第一次産業 ・農林業 ・水産業 第二次産業 ・ 食品加工メーカー 冷凍食品、食肉加工食品、 水産加工食品、製粉、製 油、製糖、製パン、製菓、麺 類、惣菜、缶詰、レトルト、 調味料、飲料 第三次産業 ・小売業 ・外食産業 本論文の対象 また製造業の中でも食品産業は、事業所数、従業員数、出荷額ともに全体の約 1 割超を占 めており、「1 割産業」とも呼ばれている(図表 6、7)。図表 7 の 2009 年時点での製造業出 荷額をみると、製造業の中でも 12.6%を占めており、これは輸送用機械器具製造業の 19.6% に次ぐ規模であり、製造業の中でも重要な地位を占めていることが分かる。 また、他の産業と比較すると、生活上必要不可欠な食品産業は景気に左右されにくく「不 況知らず」ともいわれている。資料 8 を見ると、2009 年、2010 年における食料品のカテゴ リーの前年度対比は、製造業の平均マイナスよりも、売上高、経常利益ともに低いマイナス 値となっており、飛びぬけて業績が良いという数値ではないが、他の製造業の業界がこの時 期リーマンショックによる金融危機の影響を受けて軒並み業績が悪化したことを踏まえると 比較的変化が尐なく、安定しているということができる。 7 筆者作成。 10 図表 6 製造業における食品産業の地位①(事業所数、従業者数)8 事業所数 年度 全製造業 食品産業 1990 728,853 75,594 1995 654,436 68,957 2000 589,713 64,771 2002 536,591 61,283 2003 504,530 58,623 2004 491,020 57,159 2005 468,841 55,508 2006 479,957 55,839 2007 483,084 56,640 2008 442,562 53,723 2009 448,147 54,069 従業者(千人( 比率 全製造業 食品産業 比率 10.4% 11,788 1,277 10.8% 10.5% 10,880 1,307 12.0% 11.0% 9,700 1,284 13.2% 11.4% 8,783 1,288 14.7% 11.6% 8,658 1,274 14.7% 11.6% 8,565 1,254 14.6% 11.8% 8,551 1,243 14.5% 11.6% 8,674 1,237 14.3% 11.7% 8,974 1,283 14.3% 12.1% 8,726 1,279 14.7% 12.1% 8,164 1,169 14.3% 図表 8 製造業における食品業界の地位②(図表 7 は次頁)9 8 経済産業省「工業統計表・産業編」より筆者作成。なお、 「食品産業」には、飲料・たばこ・飼 料製造業が含まれている。 9 みずほ総合研究所HPより抜粋(http://www.mizuho-ri.co.jp/) 11 図表 7 製造業における食品産業の地位②(出荷額)10 【合計】 2000年 321,691,244 2001年 309,668,700 2002年 261,455,537 2003年 266,013,753 2004年 277,182,086 一般機械器具製造業 28,791,307 8.9% 27,067,700 8.7% 21,303,586 8.1% 21,814,850 8.2% 精密機械器具製造業 3,899,913 1.2% 3,847,000 1.2% 3,096,295 1.2% 3,130,929 1.2% 輸送用機械器具製造業 43,990,900 13.7% 44,834,100 14.5% 46,603,424 17.8% 48,452,850 18.2% 食品製造業 33,411,407 10.4% 33,251,800 10.7% 28,222,725 10.8% 27,803,447 10.5% 化学工業 23,546,995 7.3% 23,046,600 7.4% 21,326,958 8.2% 21,921,770 8.2% 電子部品・デバイス・電子回路製造業 - - 15,452,993 5.9% 16,965,544 6.4% 鉄鋼業 11,676,661 3.6% 10,986,900 3.5% 9,904,871 3.8% 10,711,904 4.0% 電気機械器具製造業 58,862,384 18.3% 51,969,500 16.8% 16,364,961 6.3% 16,538,310 6.2% 情報通信機械器具製造業 - - 12,125,628 4.6% 12,477,159 4.7% 石油製品・石炭製品製造業 9,160,628 2.8% 9,373,400 3.0% 9,117,171 3.5% 9,486,726 3.6% 生産用機械器具製造業 - -- はん用機械器具製造業 - -- 金属製品製造業 13,429,625 4.2% 13,090,700 4.2% 9,195,077 3.5% 8,757,239 3.3% プラスチック製品製造業'別掲を除く( 9,831,074 3.1% 9,471,100 3.1% 7,456,337 2.9% 7,895,205 3.0% 業務用機械器具製造業 0.0% -- 非鉄金属製造業 6,055,903 1.9% 5,734,200 1.9% 5,131,594 2.0% 5,117,957 1.9% パルプ・紙・紙加工品製造業 7,652,741 2.4% 7,343,700 2.4% 6,052,391 2.3% 6,017,013 2.3% 印刷・同関連業 11,848,490 3.7% 11,735,700 3.8% 5,236,691 2.0% 5,154,498 1.9% 窯業・土石製品製造業 8,076,054 2.5% 7,710,600 2.5% 4,615,257 1.8% 4,514,157 1.7% その他の製造業 4,158,205 1.3% 4,141,000 1.3% 3,576,165 1.4% 3,120,241 1.2% 繊維工業 5,552,104 1.7% 4,995,200 1.6% 3,087,906 1.2% 2,908,300 1.1% ゴム製品製造業 2,970,796 0.9% 2,782,900 0.9% 2,500,937 1.0% 2,522,623 0.9% 木材・木製品製造業'家具を除く( 2,612,004 0.8% 2,428,500 0.8% 1,333,812 0.5% 1,357,117 0.5% 家具・装備品製造業 2,222,961 0.7% 2,108,500 0.7% 1,306,618 0.5% 1,332,065 0.5% なめし革・同製品・毛皮製造業 529,685 0.2% 497,800 0.2% 221,415 0.1% 210,402 0.1% 10 24,536,493 3,507,608 49,286,726 28,219,247 22,757,720 18,189,471 12,734,024 16,934,497 12,652,846 10,080,688 前掲注 13 と同様。 12 2005年 287,405,399 2006年 306,513,488 2007年 327,381,130 2008年 326,598,297 2009年 233,860,164 8.9% 26,383,313 9.2% 28,424,134 9.3% 31,139,530 9.5% 1.3% 3,326,218 1.2% 3,616,948 1.2% 3,754,850 1.1% 17.8% 52,569,950 18.3% 58,353,759 19.0% 62,245,882 19.0% 62,098,133 19.0% 45,876,968 19.6% 10.2% 27,298,006 9.5% 27,328,350 8.9% 29,118,840 8.9% 29,396,419 9.0% 29,357,592 12.6% 8.2% 23,572,454 8.2% 24,685,519 8.1% 26,613,924 8.1% 26,394,527 8.1% 22,785,413 9.7% 6.6% 18,273,514 6.4% 18,576,588 6.1% 20,460,761 6.2% 20,079,665 6.1% 14,507,292 6.2% 4.6% 15,364,933 5.3% 16,786,223 5.5% 19,178,594 5.9% 21,942,919 6.7% 14,403,695 6.2% 6.1% 17,434,634 6.1% 18,265,831 6.0% 19,565,785 6.0% 15,446,164 4.7% 12,614,556 5.4% 4.6% 11,334,971 3.9% 12,308,243 4.0% 13,098,038 4.0% 14,236,022 4.4% 11,276,926 4.8% 3.6% 13,034,398 4.5% 15,264,442 5.0% 13,234,496 4.0% 13,505,787 4.1% 9,994,074 4.3% - - 15,713,189 4.8% 9,664,860 4.1% - - 11,172,664 3.4% 8,835,061 3.8% 8,876,875 3.2% 9,212,813 3.2% 9,602,559 3.1% 10,073,586 3.1% 10,102,203 3.1% 8,379,913 3.6% 8,437,030 3.0% 8,693,371 3.0% 9,228,018 3.0% 9,997,834 3.1% 9,764,205 3.0% 8,110,448 3.5% - - 7,870,855 2.4% 6,492,063 2.8% 5,649,325 2.0% 6,127,354 2.1% 8,312,801 2.7% 9,871,871 3.0% 9,516,403 2.9% 6,335,594 2.7% 6,149,096 2.2% 6,073,595 2.1% 6,205,990 2.0% 6,607,586 2.0% 6,748,972 2.1% 6,089,077 2.6% 5,074,033 1.8% 5,054,113 1.8% 5,057,747 1.7% 5,092,601 1.6% 4,942,061 1.5% 4,578,297 2.0% 4,694,137 1.7% 4,755,739 1.7% 5,043,031 1.6% 5,621,932 1.7% 5,453,395 1.7% 4,361,879 1.9% 2,868,493 1.0% 3,327,012 1.2% 3,557,427 1.2% 3,502,473 1.1% 3,650,864 1.1% 2,926,759 1.3% 2,795,561 1.0% 2,655,411 0.9% 2,616,696 0.9% 2,672,890 0.8% 3,084,485 0.9% 2,542,808 1.1% 2,612,365 0.9% 2,737,794 1.0% 2,941,497 1.0% 3,166,180 1.0% 3,120,374 1.0% 2,352,955 1.0% 1,381,213 0.5% 1,345,382 0.5% 1,423,515 0.5% 1,559,013 0.5% 1,471,288 0.5% 1,177,883 0.5% 1,304,906 0.5% 1,317,696 0.5% 1,364,238 0.4% 1,451,746 0.4% 1,277,953 0.4% 1,016,313 0.4% 220,485 0.1% 214,722 0.1% 221,582 0.1% 233,878 0.1% 213,331 0.1% 179,739 0.1% 2.数尐ないメジャー企業 こうして自国の安定的な産業基盤の下に成長・発展を遂げてきた我が国の食品産業で あるが、売上高が 1 兆円を超える企業は上場企業の中でもキリンホールディングス、ア サヒグループホールディングス、味の素、明治ホールディングスの 4 社となっており、 これに非上場のサントリーを加えても 5 社のみとなっている(図表 9)。同じ程度の産 業規模と言われている自動車産業の上位 3 社の売上高と比較すると 1 位のトヨタは約 19 兆円、2 位の日産が 8 兆円、3 位のホンダが 6 兆円規模であり(図表 10)、食品産業 は市場規模は大きい反面、1 社ごとの売上高が小さいことが分かる。 また、上場食品産業の売上高規模のボリュームを見ると、一番のボリュームゾーンは 1,000 億円~5,000 億円であり、中央値は 3 億 8 千 760 万円となっている(図表 11)。 事業所数が全製造業の中で 1 割を占めていることを考慮すると、いわゆる 1 兆円を超え るようなメジャー企業は尐ないと言える 図表 9 国内食品上位 10 社11 国内食品上位10社売上高'2010年( 順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 企業名 キリンホールディングス サントリー アサヒグループホールディングス 味の素 明治ホールディングス 日本ハム 山崎製パン マルハニチロホールディングス 森永乳業 日本水産 業種'金融庁分類( 飲料製造業 飲料製造業 飲料製造業 その他食料品製造業 その他食料品製造業 肉製品乳製品製造業 パン菓子製造業 漁業 肉製品乳製品製造業 漁業 図表 10 自動車産業の上位 3 社の売上高12 自動車産業の上位3社売上高'2010年( 順位 企業名 売上高'百万円( 1 トヨタ自動車 18,993,688 2 日産自動車 8,246,707 3 ホンダ 6,792,019 11 12 各社データより筆者作成。 各社データより筆者作成。 13 売上高'単位:百万( 2,177,802 1,742,373 1,489,460 1,170,876 1,106,655 953,616 928,242 828,715 585,116 481,574 図表 11 食品上場企業の売上高規模13 食品上場企業の売上高規模'136社、2010年( 企業数 占める割合 中央値 1兆円以上 28.24% 4社 5000億円以上1兆円未満 15.66% 4社 1000億円以上5000億円未満 44.19% 37社 500億円以上1000億円未満 4.27% 38,760'百万円( 14社 100億円以上500億円未満 7.00% 56社 50億円以上100億円未満 0.52% 14社 50億円未満 0.12% 7社 3.高いオーナー比率、強い地域性 メジャー企業が尐ないことに加え、オーナー比率が高く、地域性が強いと言うことも 食品産業の大きな特徴であるといえる。図表 12、13 を見ると、売上高が小さくなれば なるほど、オーナー比率が高く、また地域性が強くなっていることが分かる。前述した ように、メジャー企業が尐ないことを踏まえると、地域ごとの味を守り抜くというよう な色彩が強いと言えるのではないだろうか。 図 12 各売上高のボリュームに占めるオーナー企業の割合14 各売上高のボリュ ームに占めるオーナー企業の割合' 2 0 1 0 年( 1兆円以上 5000億円以上1兆円未満 1000億円以上5000億円未満 500億円以上1000億円未満 100億円以上500億円未満 50億円以上100億円未満 50億円未満 0% 25% 38% 40% 48% 64% 89% 2010 年の上場食品企業 136 社のデータを基に、筆者作成。 2010 年の上場食品企業 136 社のデータを基に、筆者作成。したがって、サントリーは含 まれていない。なお、オーナー企業か否かの判定は、会社四季報の 2011 年夏時点で掲載さ れている主要株主構成で、創業家一族(資産管理会社を含む)が保有する株式保有比率が 10%を超えているかどうかで判定を行っている。 13 14 14 図 13 各売上高のボリュームに占める本店所在地が東京都以外の企業の割合15 各売上高のボリュ ームに占める東京都以外の企業の割合' 2 0 1 0 年( 1兆円以上 0% 5000億円以上1兆円未満 25% 1000億円以上5000億円未満 46% 500億円以上1000億円未満 33% 100億円以上500億円未満 66% 50億円以上100億円未満 78% 50億円未満 86% 4.低い海外売上高比率 一方で食品製造上場企業の 2010 年時点での海外売上高比率(図表 14)を見ると、海 外売上高比率が 30%を超えるのは、キッコーマン、サカタのタネ、味の素の 3 社のみ となっている。近年積極的な海外展開が報道されているキリンを見ても 23.4%と 30% 未満にとどまっており、アサヒに至っては 10%未満である。前述した同程度の産業規 模である自動車産業のトヨタの海外売上高比率は約 70%であり、食品産業は海外売上 高が低いことが分かる。さらに図表 15 を見ると、上場食品製造業のうち、売上高が 10% 未満あるいは海外売上なしとする企業は全体の 90%以上を占めており、我が国の食品 産業はやはり国内市場を中心に展開してきたことが分かる。その背景には、前述したよ うに国や文化ごとの食の嗜好性の違いや、これまで国内市場が巨大で非常に安定的であ ったことが考えられる。 図表 14 海外売上高が 10%以上の上場食品企業(2010 年)16 海外売上高比率が10%以上の上場食品製造業'2010年( キッコーマン サカタのタネ 味の素 不二製油 ヤクルト本社 日清オイリオグループ キリンホールディングス 日本水産 東洋水産 日清食品ホールディングス ホッコク 太陽化学 アリアケジャパン その他食料品製造業 農業 その他食料品製造業 食用油製造業 飲料製造業 食用油製造業 飲料製造業 漁業 その他食料品製造業 その他食料品製造業 その他食料品製造業 その他食料品製造業 その他食料品製造業 44.1% 37.4% 32.7% 28.1% 24.4% 23.7% 23.4% 20.5% 18.9% 14.5% 13.5% 11.2% 10.8% 2010 年の上場食品企業 136 社のデータを基に、筆者作成。なお地域性の判定は、本店所 在地が東京か否かで判定を行っている。 16 2010 年の上場食品企業 136 社のデータを基に、筆者作成。 15 15 図表 15 上場食品企業の海外売上高割合別企業数(2010 年)17 上場食品製造業の海外売上高割合別企業数' 1 3 6 社、2 0 1 0 年( 30%以上 20%以上30%未満 10%以上20%未満 10%未満 海外売上なし 3社 5社 5社 87社 36社 5.低い PBR、PER では、こうした安定的な産業を市場はどう評価しているかというと、東証一部の業種 別 PER、PBR の平均を見ると、食品製造業の PER は 17.1、PBR0.9 と他の業種と比 較すると全体的に割安になっていることが分かる(図表 16)。 この理由としては主に 2 点考えられ、まず 1 点目として前述してきたように、食品産 業は国内市場を中心とした安定的な産業基盤の上で成り立っているがゆえに、業界とし て大きな変化がなく、市場にとっての魅力が尐ないことが挙げられる。そして 2 点目と して、前述したように、上場食品製造業に占めるオーナー比率が高いため、企業価値向 上への意識が低く、株価は割安に放置されることが多いことが挙げられている。 この点に関して、とりわけ 2005 年~2007 年にかけて、アメリカ投資ファンドのス ティールパートナーズが明星食品やブルドックソースなどを対象に、食品業界にも投資 の矛先を向け注目を集め、一時期はサッポロの株式も 20%弱保有していた。その背景 として、食品業界は業績が安定しキャッシュ・フローを多く積み上げているものの、飛 躍的な成長が見込めないため株価が割安に評価されていることに着目したものであっ た。 各社有価証券報告書より筆者作成。なお海外売上高 10%未満の企業については重要性の 原則から詳細の数字を掲載しなくて良いため、ここでも 10%未満でまとめている。 17 16 図表 16 東証一部業種別 PER・PBR 平均(2010 年 12 月 31 日時点)18 東証一部業種別PER ・PB R '2010年12月31日時点( 水産・農林業 鉱業 建設業 食料品 繊維製品 パルプ・紙 化学 医薬品 石油・石炭製品 ゴム製品 ガラス・土石製品 鉄鋼 非鉄金属 金属製品 機械 電気機器 輸送用機器 精密機器 その他製品 電気・ガス業 陸運業 海運業 空運業 倉庫・運輸関連業 情報・通信業 卸売業 小売業 銀行業 証券、先物取引業 保険業 その他金融業 不動産業 サービス業 PER 21.2 11.2 17.7 17.1 585.5 15.2 23.4 19.6 260.0 21.1 35.9 721.1 45.4 34.2 47.9 43.4 14.6 19.3 21.0 20.7 18.1 46.9 14.5 141.2 18.7 20.8 35.3 41.9 PBR 1.0 0.6 0.6 0.9 0.7 0.7 0.9 1.2 0.8 0.9 0.9 0.7 1.0 0.6 0.9 1.1 1.0 1.1 0.9 0.9 0.9 0.9 0.6 0.7 1.1 0.7 0.9 0.5 0.6 1.2 0.6 1.2 1.1 18東京証券取引所公表統計より筆者作成。 (http://www.tse.or.jp/) 17 6.グローバルでの地位 では以上の特徴を踏まえ、我が国の食品産業がグローバルでどの地位にいるかという ことを 2010 年の食品セクターの売上高をもとに順位でみると、上位 30 社以内に日本 企業は 5 社もランクしており、他産業と比較するとメジャー企業が尐ないものの、実は 意外と健闘していることが分かる(図表 17)。前述したように、海外売上高比率が低い ことを踏まえると、それだけこれまでの国内市場が世界 10 位の人口と GDP2 位という 経済大国に支えられ、巨大であったことが分かる。 図表 17 食品セクターグローバル売上高ランキング(2010 年)19 順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 日本語名 収 益 T12M' 単 位 : 百 万 円 ( ネスレ 8,189,411 アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド 6,684,673 ペプシコ 5,242,222 ユニリーバ 5,143,496 ク ラ フ ト ・フ ー ズ 4,320,102 バンジ 4,235,007 ザ コ カ ・コ ー ラ カ ン パ ニ ー 3,720,611 アンハイザー・ブッシュ・インベブ 3,134,057 ウ ィ ル マ ー ・イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル 3,061,618 JBS 2,858,133 タイソンフーズ 2,596,252 キリンホールディングス 2,169,070 ダノン 2,082,270 BENSO OIL PALM PLANTATION 1,985,396 ハイネケン 1,921,030 アサヒグループホールディングス 1,473,710 アソシエーテッド・ブリティッシュ・フーズ 1,410,562 ディアジオ 1,311,687 SABミラー 1,295,735 コンパニア・デ・ベビダス・ダス・アメリカス 1,276,774 ゼネラルミルズ 1,241,487 フ ォ メ ン ト ・エ コ ノ ミ コ ・メ ヒ カ ノ 1,217,113 ブ ラ ジ ル ・フ ー ズ (BRF) 1,209,849 味の素 1,207,695 明治ホールディングス 1,114,095 ケロッグ 1,069,176 デ ィ ー ン ・フ ー ズ 1,042,040 コナグラ・フーズ 1,029,570 ス ミ ス フ ィ ー ル ド ・フ ー ズ 1,020,789 オーラム・インターナショナル 1,015,628 日本ハム 989,308 以上より、我が国の食品産業は、地域性が強く、オーナー比率が高いこと、海外売上 高比率が低いことからも分かるように、これまで自国の巨大市場の下で、日本人の多様 な味覚に合わせ、安定的な発展を遂げてきたと言える。その反面で、メジャー企業が尐 なく、株価は割安に評価されている傾向にある。 2010 年の売上高を基準として、Bloomberg データより筆者作成。表示単位は円、為替レ ートは 2011 年 11 月 15 日時点の 78.13 円で換算) 19 18 第三章 我が国の食品産業を取り巻く環境 ―業界再編の必要性― 第二章では我が国の食品産業の特色として、これまで世界 10 位の人口と GDP2 位と いう巨大な自国の市場の下で安定的な産業基盤を築いてきたことを確認した。それでは なぜ、こうした安定的な産業の下で本論文の結論としている「日本発グローバル食品メ ジャー企業」を誕生させる必要があるのだろうか。 我が国の食品産業においても足元を見ると、多くの国内内需型企業同様、「国内市場 の閉塞」と、一方で「新興国を初めとするグローバル市場での競争の激化」という状況 に置かれている。そこで本章においてはそうした状況を確認し、その上でなぜ本論文の 結論である「日本発グローバル食品メジャー企業」を誕生させる必要があるのかについ て、明らかにしていくこととする。 第一節 我が国食品産業を取り巻く環境 1.国内市場の閉塞 これまで世界 10 位の人口と GDP2 位という経済大国に支えられて安定的に成長を遂 げてきた食品産業であるが、足元を見ると人口減尐による国内市場の縮小や、川上イン フレ・川下デフレの進行、小売業界の再編による価格交渉力の増大とそれに伴う PB ブ ランドの台頭、食の安全に対するコストの増大、そして現在議論されている TPP への 参加が決まれば安価な海外製品が参入してくる可能性等課題が山積しており、その基盤 が揺らぎつつある。以下それぞれについて見ていくこととする。 (1)人口減尐による国内市場の縮小 前述してきたように、食品産業は絶対数である「胃袋の数=人口」に支えられており、 我が国の食品産業もこれまで自国の人口に支えられてきた。しかしながら我が国も尐子 高齢化に伴い人口減尐が進んでいる。図を見ると、とりわけ平成 32 年あたりをピーク に減尐が加速していくことが分かる(前掲図表 1)。また、生産額を見ても生産額規模 は 80 兆円以上を保っているものの、1995 年をピークに生産額が徐々に減尐している (図表 18)。 このように、「胃袋の量」に産業基盤が支えられてきた我が国の食品産業もこのまま 人口減尐が加速していけば、これまでの収益の源泉であった国内市場が縮小し、国内で の成長性・収益性を確保することが難しくなる。同時に尐子高齢化という人口構造の変 化による「胃袋の質」にも対応していかなければならない。このように、人口減尐によ り国内市場が縮小することによる「胃袋の量と質」の変化は、食品産業にとって大きな 脅威となっている。筆者は 2011 年 6 月 15 日に行われたフードサービス学会に出席す る機会を得たが、そこでも専ら縮小する国内市場に対してどう対応していくかについて が、焦点となっていた。このように食品産業も人口減尐による国内市場の縮小に対して 危機感が高まっている。 19 前掲図表 1 我が国の人口推移 我が国の人口推移 140000 120000 65歳以上 (老年 人口) 千万人 100000 80000 15~64 (生産年齢 人口) 60000 40000 0~14歳 (年尐 人口) 20000 0 図表 18 食品産業の生産額推移20 食品産業の生産額の推移 100.0 90.0 80.0 92.5 78.9 89.4 87.6 86.4 84.9 84.4 83.0 81.8 81.5 82.0 70.0 60.0 外食産業 50.0 関連流通業 40.0 食 品 工 業 30.0 20.0 10.0 0.0 20農林水産省公表データより、筆者作成。 20 (2)川上インフレ・川下デフレの進行 川上インフレ、川下デフレによる影響も深刻となっている。新興国での人口増加や経 済成長による需要増加や天候不順などにより、国際的に原料価格が高騰している(図表 19)。 一方で、景気回復がなかなか見込めない中、消費者の低価格志向は続いており、川下 のデフレも進行している。こうした状況の中で、消費者に価格を転嫁することは難しい が、製粉や製油、製パンメーカーなどが昨今相次いで値上げの発表を行ったり、内容量 を減らすことで実質上の値上げをするなどで調整を行っている。同時に原料調達先の変 更や、生産工程の見直し、生産拠点の集約、原材料の切り替え等も行っている、我が国 の食品産業はこうした川上と川下の間に挟まれている状況にある。 図表19 世界の穀物等の国際価格の推移21 (3)大手小売業界の再編による価格交渉の圧力と PB ブランドの台頭 流通業界の再編も食品メーカーに影響を与えている。事実上大手小売りは、各社売上 高 5 兆円規模のイオンとセブン&アイ・ホールディングスの 2 社に集約されつつある。 2007 年にイオン、ダイエー、丸紅の 3 社が業務・資本提携を締結し、2010 年にはセブ ン&アイ・ホールディングスが傘下のミレニアムリテイリング、そごう、西武百貨店の 3 社を、そごうを存続会社として合併させ直接の完全子会社にするなど、相次いで再編 を加速させ、購買力を強化、食品メーカーに対する価格決定権を増大させている。した がって、食品メーカー側も川上デフレや川下デフレに加えて、小売側に対しても対応す 21 農林水産省公表資料、「世界の穀物需給及び価格の推移」より抜粋。 21 る策が必要となってきている。またこうした動きに付随して小売側が独自に展開する他 メーカーに比べて割安な PB ブランドも台頭しており、食品製造業にとっては痛手とな っている。 (4)食の安全に対するコストの増大 また、食の安全を維持するコストの増加についても、食品業界においては重要な課題 となっている。2008 年に起きたJTフーズの中国製冷凍ギョーザ中毒事件等の食品衛 生の不徹底や、不正、産地偽装や今回の震災による放射能汚染に対する影響や消費者の 反応を見ても分かるように、食品は直接体内に摂取され、健康に影響するものである以 上、不祥事で一度失った信頼は簡単に取り戻すことはできない。そのため、より一層厳 しい品質管理や衛生管理が要求されている。しかし前述したように、川上ではインフレ、 川下ではデフレが進行している中で、安全に関するコストの増加を価格に転嫁すること は難しく、こうしたコストも負担となっている。 (5)TPP 参加による輸入品との競争激化 現在 TPP への加入については様々な方面から議論がなされているところであるが、 TPP への加入が決定されれば、食品製造業としては、関税撤廃により原料調達のコス トが下がり恩恵を受けることができる一方で、特に川上の第一次産業においては安価な 輸入品との競争が激化する可能性が指摘されている。 以上、これまで安定的な産業基盤の下で成長してきた食品製造業も、国内市場の縮小 という将来的な成長性が見込まれない中でコスト高等により収益性が圧迫しており、取 り巻く環境は非常に厳しいと言える。 2.グローバル展開の必要性 こうした中、国内市場の閉塞を打破し、新興国を初めとする新たな巨大グローバル市 場で成長性と収益性を取り込もうと、近年我が国の食品産業も積極的に海外展開に乗り 出している。また、国レベルにおいても農林水産省を中心に平成 18 年に「東アジア食 品産業活性化戦略」を打ち出しており22、我が国の食品産業が国内市場の閉塞を打破す るための戦略として食品産業のグローバル展開の必要性を掲げている。グローバルに見 ると、BRICs を初めとする新興国市場では人口が増加、今後大幅な経済成長も見込ま れている このように、国内市場の閉塞分を海外に活路を見出そうと海外展開の動きが近年活発 になってきており、我が国の食品産業の今後の成長性を描く上で重要なアクションの 1 つとなっている。 22 当該戦略は、農林水産省が中心となって「東アジアの発展に貢献し、東アジアと共に成 長する」という視点から打ち出されている。 ( http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/easia/e_gaiyo/index.html) 22 図表 20 先進国・開発途上国の所得水準別人口の推移予測(1950 年~2050 年)23 図表 21 先進国・開発途上国の名目 GDP の推移予測(1990 年~2014 年)24 23 24 野村総合研究所 HP(http://www.nri.co.jp/)より抜粋。 野村総合研究所 HP(http://www.nri.co.jp/)より抜粋。 23 第二節 食品産業におけるグローバル競争の構造-業界再編の加速- しかしながら、海外の市場に活路を見出そうとすれば、新興国市場を初めとする巨大 市場を前にして、既にビール業界を中心にグローバル食品メジャー企業25によるグロー バル規模の再編が加速、規模の拡大を図りながら激しいグローバル競争を繰り広げてい る。そこで以下においてはビール業界を中心に、グローバル食品メジャー企業の再編の 動向を追っていくこととする。 1.グローバルビール業界の動向 日本でビール業界と言えば、キリン、アサヒ、サントリー、サッポロの 4 社が連なっ て国内を中心に激しい競争を繰り広げているが、世界を見ると Top4 で世界シェアの 50%を超えており、新興国等の台頭による巨大市場を前に、グローバル規模で寡占化が 進んでいる(図表 22)。 これらの 4 社は他の事業領域には展開せず、ビールを専業に大型再編を繰り返しなが ら今日の規模に至っており、世界ビール売上高・シェア 1 位のアンハイザー・ブッシュ・ インベブ(AB Inbev)は、2004 年にベルギーのインターブリューがブラジルのアンベ ブを買収して誕生したインベブ社が、2008 年にアメリカのアンハイザー・ブッシュ社 と合併して誕生した企業となっている。取引総額は約 5 兆 8,000 億円であり、ビール業 界の買収額としては最大規模である。その他、2 位の SAB Miler は 2002 年にイギリス の SAB がアメリカのアルトリアグループからミラーを約 5,600 億円で買収して誕生、6 位のモルソン・クアーズは 2004 年にアメリカのアドルフ・クアーズがカナダのモルソ ンを約 4,200 億円で買収して誕生した。このように世界のビール業界では大規模のグロ ーバル再編を繰り返して今日の規模へと成長している(図表 23、24)。 25 以降、グローバル食品メジャー企業として、ネスレ、ユニリーバ、クラフト、コカコー ラ、ペプシコ、AB インベブの 6 社を取り上げる。 24 図表 22 国別ビールの消費量26 百万 国別ビールの消費量 t 45 40 35 China 30 Japan 25 Brazil 20 United States of America 15 Germany 10 Russian Federation United Kingdom 5 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 図表 23 世界のビール業界の再編27 26Global 27AT Market Information Database(GMID)公表データより、筆者作成。 カーニーホームページより抜粋。(http://www.atkearney.co.jp/) 25 図表 24 世界ビールシェアランキング TOP10 (2009 年)28 世界ビールシ ェア ランキング' 2 0 0 9 年( 順位 企業名 国籍 1 ABインベブ ベルギー 2 SABミラー イギリス 3 ハイネケン オランダ 4 カールスバーグ デンマーク 5 青島ビール 中国 6 モルソン・クアーズ アメリカ 7 グルポモデロ メキシコ 8 北京燕京ビール 中国 9 キリンビール 日本 10 アサヒビール 日本 28 プラトーロジック社公表を基に、筆者作成。 ( http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnJS862134520100209) 26 2.他のグローバルメジャー企業の動向 こうした大規模な再編の動きはビール業界だけでなくそれ以外の食品業界において も起こっている。そこでビール業界以外のグローバルメジャー企業であるネスレ、ユニ リーバ、クラフト、コカコーラ、ペプシコを中心に業界再編の動向を確認することとす る。 図表 25 グローバルメジャー企業の売上高の 3 時点における推移と大型再編の動向29 ノバルティス(栄養・ベビ ーフード事業)等買収 (8 千億円規模) 10,000,000 9,000,000 8,000,000 ラルストンピュリ ナ社、シェフズア メリカの買収 '2兆円規模( キャドバリー買収 '2兆円規模( 7,000,000 6,000,000 5,000,000 ネスレ ユニリーバ クエーカーオーツ社 買収'1兆5千億円( インべブ コカコーラ 4,000,000 ペプシコ クラフト 3,000,000 2,000,000 1,000,000 0 ベストフーズ買収 (2 兆円規模) 売上高2000 売上高2005 売上高2010 インターブリュー・アンベブ 合併(5 兆円規模) 29 各社データより筆者作成。 27 アンハイザー・ブッシュ 買収(5 兆円規模) 図表 26 グローバル食品メジャー企業の主な大型 M&A30 告知日 07/03/2007 11/09/2009 01/16/2001 06/17/2002 08/06/2002 12/14/2006 04/12/2007 01/05/2010 04/12/2000 05/02/2000 09/27/2010 12/04/2000 12/02/2010 05/25/2007 09/03/2008 06/14/2000 03/03/2004 09/02/2004 ターゲット会 社 名 ダノン'グローバルビスケット事業( キャドバリー Nestle Purina PetCare Co Dreyer's Grand Ice Cream Holdings Inc シェフアメリカ ノバルティス'栄養健康事業( ノバルティス'ベビーフード事業( クラフト・フーズ'北米冷凍ピザ事業( スリムファーストフーズ ベストフーズ アルバート・カルバー クオーカーオーツ ウィム・ビル・ダン・フーズ Energy Brands Inc 中国匯源果汁集団 Bass Brewers Ltd Braco SA コンパニア・デ・ベビダス・ダス・アメリカス 買収側の社名 クラフト・フーズ クラフト・フーズ ネスレ ネスレ ネスレ ネスレ ネスレ ネスレ ユニリーバ ユニリーバ ユニリーバ ペプシコ ペプシコ ザ コカ・コーラカンパニー ザ コカ・コーラカンパニー アンハイザー・ブッシュ・インベブ アンハイザー・ブッシュ・インベブ アンハイザー・ブッシュ・インベブ 発表時ディール総額(百万ドル) 7,218 21,421 11,856 2,595 2,600 2,500 5,500 3,700 2,285 22,661 3,701 14,943 4,153 4,100 2,317 3,454 4,021 2,984 上記図表 25、26 はグローバルメジャー企業の 2000 年、2005 年、2010 年の 3 時点 の売上高の推移とその間に実施された主な大型 M&A を図表にしたものである。この図 表から見ても分かるように、グローバルメジャー企業の売上高が各時点で大きく飛躍を 遂げていることが分かる。ネスレに至っては 2000 年から 2005 年の間に約 3 兆円、ク ラフトは 2005 年から 2010 年の間に約 1 兆 5 千億円売上を増加させている。こうした 背景に、それぞれ 1 兆円超の大型 M&A を行っており、具体的にはクラフトのキャドバ リー買収 2 兆円超、ネスレの Purina Petcare の買収約 1 兆円、ユニリーバのベストフ ーズ 2 兆円超やペプシコのクオーカーオーツ買収 1 兆 5 千億円超などが挙げられる。 それ以外にも大型 M&A を行っている。このようにグローバルメジャー企業が飛躍的な 成長を遂げた背景の 1 つとして、グローバル規模での大型再編を加速させているのであ る。 30 Thomson データを基に筆者作成。 28 第三節 進まない業界再編 では一方で、グローバル食品メジャー企業で業界再編が加速する中、我が国の食品産 業の業界再編の状況はどうなっているのだろうか。 1.近年の我が国食品産業の業界再編の動向 結論から言うと、我が国の食品産業では業界再編が進んでいない。そこで以下におい ては 2000 年以降の我が国の業界再編の動向を確認していくこととする。 (1)他産業との比較 わが国の食品産業が製造業の中でも事業数が 1 割を占めていることを踏まえると、他 産業と比較して食品産業の M&A 件数は尐なく、全産業の M&A 件数に占める食品産業 の M&A 件数は 2~3%となっている(図表 27、28)。 図表 2731 31 レコフデータベースより筆者作成。敵対的買収も含む。 29 図表 28 全産業別 M&A 推移32 食品 32 レコフデータベースより筆者作成。 30 (2)近年の国内再編の動向 昨今新聞記事等では我が国の食品産業においても再編の機運が起こりつつあるとい うような記事を見かけるが、下記図表 29 をみると分かるように、2002 年から 2003 年、 2005 年から 2007 年にかけて M&A 件数が盛り上がったものの、2008 年以降は金融危 機の影響も受けてか減尐傾向にある。 図表 29 上場食品企業の M&A の動向33 上場食品企業のM&A動向 35 30 件数 25 20 15 IN-IN 10 IN-OUT 5 0 33 レコフデータベースより筆者作成。 31 主な国内大型再編についてまとめたものは図表 30 となっているが、これを見ると、 近年食品産業の医薬品事業への進出が目立つ。キリンの協和発酵の 4,000 億規模の買収 にはじまり、味の素やキッコーマンもそれぞれ医薬品事業の買収を実施し、食品事業以 外に医薬品事業へ参入し、多角化を図っている(図表 31)。 図表 30 近年の主な国内業界再編34 公表日 買収者 2007/10/22 キリンホールディングス 2008/9/11 明治乳業 2007/6/12 味の素 2006/2/23 コカ・コーラウエストジャパン 2006/4/24 アサヒビール 2010/8/30 コカ・コーラウエスト(CCW( 2006/11/15 日清食品 2005/12/27 ハウス食品 2006/7/3 山崎製パン 2002/10/29 味の素 2008/6/19 キッコーマン 2006/11/17 キリンビール 2001/12/26 キリンビール 被買収者 協和発酵工業 明治製菓 カルピス 近畿コカ・コーラボトリング 和光堂 キューサイ 明星食品 武田食品工業 東ハト 清水製薬 理研ビタミン メルシャン 武田薬品工業 被買収者 医薬品 食品 食品 食品 食品 食品 食品 食品 食品 医薬品 医薬品 食品 医薬品 形態 金額'百万円( 買収 415,857 合併 197,643 買収 80,368 合併 73,672 買収 42,811 買収 35,922 買収 31,985 買収 30,000 買収 27,086 買収 26,000 出資拡大 25,961 買収 24,790 営業譲渡 20,000 図表 31 キリン、味の素の事業ポートフォリオ35 味の素(2010年) キリン(2010年) 医薬 10% 医薬 他6% 品, 8% 他 11% 飲料、 食料, 29% 酒類 50% 食品 86% 2000 年 1 月 1 日から 2010 年 12 月 31 日の M&A データを基に、レコフデータベースよ り筆者作成。 35 各社の有価証券報告書(2010 年)より筆者作成。 34 32 一方で、食品同士の再編の動向を見てみると、2007 年にマルハとニチロが経営統合 しマルハニチロホールディングス(統合後約 8,900 億規模(2010 年)) 、2009 年には明 治製菓と明治乳業が統合し明治ホールディングス(統合後約 1 兆 1,000 億円規模(2010 年)、雪印乳業と日本ミルクコミュニティ―が統合し雪印メグミルク(統合後 5,000 億 円規模)等が誕生したが、いずれも統合後の規模はせいぜい 1 兆円規模であり、前述し た海外メジャーの再編の動向と比較すると規模はまだ小さい。 また最近ではサッポロが連結子会社のサッポロ飲料とポッカコーポレーションを 2013 年に統合すると発表したが、 サッポロとポッカの両社の売上高を単純に合算しても 5,000 億円規模であり(2010 年)、1 兆円にも届いていない。 図表 32 近年の主な国内業界再編の動向36 なお、2010 年にキリンとサントリーの統合が持ち上がり、約 4 兆円規模の日本初の 食品メジャー企業が誕生するという期待が大きく膨らんだ。しかしながら、結局破談と いう結果に終わっている37。このように、国内においては業界再編の起爆剤となるよう 日本経済新聞社 編『日経業界地図 2012 年度版』 (日本経済新聞出版社、2011 年)を基 に、筆者作成。 37 統合が破談となった背景にはオーナー企業で非上場のサントリーと、非オーナー企業で 上場会社であるキリンとの間で、「統合比率」と「サントリー創業家の権利」がクリアでき なかったことが原因とされている。サントリーの大株主は、資産管理会社の「寿不動産」 であり、同社の株式の約 90%を保有している。キリンとしては、寿不動産に新会社の 3 分 の1超を握られ、拒否権を持たれたのでは、「上場会社」として「株主平等原則に外れ、取 引先、社員などとの対等な関係が保たれなくなると判断したものと言われている。 「キリ 36 33 な大型再編はまだ起きておらず、M&A 自体の件数も尐ないのが実情である。 (3)近年のクロスボーダーM&A の動向 一方、近年飲料業界を中心に近年大型クロスボーダーM&A が実施され、海外シフト が加速している。図 33 は国内食品上位企業の主な大型クロスボーダーM&A をまとめ たものであるが、買収者のところを見るとそのほとんどがキリンを筆頭に、サントリー、 アサヒ、サッポロのビールを中心とする飲料業界によって実施されていることが分かる。 サントリーのフランスのオレンジ-ナ社の買収やキリンのフィリピンのサンミゲルビ ールの買収、そして昨今難航していたスキンオールの買収等、取引金額 1,000 億円超の 大型クロスボーダーM&A を実施している。 しかしながらグローバル食品メジャー企業の買収金額 1 兆円超と比較すると、日本企 業の買収金額は高額で 3,000 億円であり、小さいものとなっている(図表 33、前掲図 表 26) 図表 33 日本企業の主なクロスボーダーM&A の動向38 公表日 買収者 2009年9月 サントリーHD 2007年7月 キリンHD 2011年8月 キリンHD 2011年8月 アサヒHD 2008年8月 キリンHD 2008年12月 アサヒHD 2008年10月 サントリーHD 2009年1月 アサヒHD 2011年1月 キリンHD 2006年8月 サッポロ 2006年1月 味の素HD 2008年12月 日清食品HD 被買収者 オレンジーナ サンミゲルビール スキンカリオール フレイバード・ビバレッジズ・グループ・ホールディングス(FB( デアリーファーマーズ キャドバリー・シュウェップス・オーストラリア フルコアグループ(ダノンニュージーランド子会社) 青島ビール 華潤怡宝食品飲料 スリーマンビール 香港アモイ・フード・グループダノン・グループ子会社 アングルサイド 被買収企業国籍 イギリス フィリピン ブラジル オーストラリア オーストラリア イギリス フランス 中国 中国 カナダ フランス キプロス'ロシア( 被買収企業業種 金額'百万円( 飲料 300,000 飲料 294,000 飲料 198,800 飲料 98,200 乳製品 84,000 飲料 75,800 飲料 75,000 飲料 59,300 飲料 33,200 飲料 29,100 その他製造 27,300 製麺 22,200 ン・サントリー統合破談とビール業界再編の行方 まぼろしに終わった食品メジャー構想-日本の食品業界はどこへ行くのか?」財界にっぽん 42(5) 、6-11 頁(2010 年) 38 レコフデータの 2000 年 1 月 1 日から 2011 年 11 月 30 日時点の M&A データを基に、 公表ベースで金額の大きいものから順に、筆者作成。 34 前掲図表 26 グローバルメジャー企業の主な大型クロスボーダーM&A 告知日 07/03/2007 11/09/2009 01/16/2001 06/17/2002 08/06/2002 12/14/2006 04/12/2007 01/05/2010 04/12/2000 05/02/2000 09/27/2010 12/04/2000 12/02/2010 05/25/2007 09/03/2008 06/14/2000 03/03/2004 09/02/2004 ターゲット会 社 名 ダノン'グローバルビスケット事業( キャドバリー Nestle Purina PetCare Co Dreyer's Grand Ice Cream Holdings Inc シェフアメリカ ノバルティス'栄養健康事業( ノバルティス'ベビーフード事業( クラフト・フーズ'北米冷凍ピザ事業( スリムファーストフーズ ベストフーズ アルバート・カルバー クオーカーオーツ ウィム・ビル・ダン・フーズ Energy Brands Inc 中国匯源果汁集団 Bass Brewers Ltd Braco SA コンパニア・デ・ベビダス・ダス・アメリカス 買収側の社名 クラフト・フーズ クラフト・フーズ ネスレ ネスレ ネスレ ネスレ ネスレ ネスレ ユニリーバ ユニリーバ ユニリーバ ペプシコ ペプシコ ザ コカ・コーラカンパニー ザ コカ・コーラカンパニー アンハイザー・ブッシュ・インベブ アンハイザー・ブッシュ・インベブ アンハイザー・ブッシュ・インベブ 35 発表時ディール総額(百万ドル) 7,218 21,421 11,856 2,595 2,600 2,500 5,500 3,700 2,285 22,661 3,701 14,943 4,153 4,100 2,317 3,454 4,021 2,984 2.検証 -M&A は成長にどのように寄与してきたのか- 以上のように、我が国の食品産業においては、第一節で触れたようなグローバル食品 メジャー企業と比較すると、国内外合わせて規模が小さく、キリンとサントリーの統合 破談にみられるように大型再編が進んでいないことが分かった。 そこでここで M&A 活動が食品産業の成長に寄与してきたかについてここで検証を 行い、もう尐し詳細に見ることとする。 (1)検証内容 ・2000 年から 2010 年までの 10 年間で食品業界の成長にどのような特徴があるのか ・10 年間で M&A がどのように成長に寄与してきたのか について検証を行い、傾向を探る。 (2)検証の設計 各上場食品製造業の 2000 年、2010 年時点の財務データを取得。その上で、2010 年 時点での売上高を基準に 4 分位に分け、10 年間での各分位(特に第一分位)の成長指 標にプラスが与える要因が何か、M&A が成長に寄与しているかについて、相関分析を 中心に検証を実施。 (3)データソース・サンプル 2010 年の上場食品企業 136 社をもとに、下記成長指標として用いる 2010 年、2005 年、2000 年時点の財務データを取得。 ・成長指標として 2000 年と 2010 年時点における下記 6 つを用いる。 -売上高成長率(2000 年と 2010 年時点の売上高の成長率) -営業利益率改善(2000 年と 2010 年時点の営業利益率の伸びの差) -資産回転率改善(2000 年と 2010 年時点の資産回転率の伸びの差) -海外売上高比率改善(2000 年と 2010 年時点の海外売上比率の伸びの差) -従業員成長率(2000 年と 2010 年時点の従業員数の成長率) -株価上昇率(2000 年初と 2010 年末時点の株価の上昇率) ・M&A が成長に寄与しているかを測る指標としては 2000 年と 2010 年の 10 年間にお ける下記データを用いる。 -国内 M&A 実施の有無 (国内 M&A を実施している場合を 1 として判定) -国内 M&A 実施件数 -大型国内 M&A の実施の有無 (被買収企業の総資産が買収企業の総資産の 10%以上である場合を 1 として判定) -クロスボーダーM&A の実施の有無 (クロスボーダーM&A を実施している場合を 1 として判定) -クロスボーダーM&A の実施件数 -大型クロスボーダー大 M&A の実施の有無 36 (被買収企業の総資産が買収企業の総資産の 10%以上である場合を 1 として判定) ・その他データ -オーナー比率(前掲注 20 を参照) -地域性(前掲注 21 を参照) 37 (4)基本統計 図表 34 度数分布表(百万円) 統計量 売上高2010 度数 有効 欠損値 最小値 最大値 パーセンタイル 25 50 75 136 0 494 2,177,802 17,600 38,800 167,000 図表 35 記述統計量 記述統計量 売上高2010(百万円) 売上高2005(百万円) 売上高2000(百万円) 営業利益率2010 営業利益率2005 営業利益率2000 売上高EBITDA2010 売上高EBITDA2005 売上高EBITDA2000 ROE2010 ROE2005 ROE2000 EVEBITDA2010 EVEBITDA2005 EVEBITDA2000 資産回転率2010 資産回転率2005 資産回転率2000 研究開発費率2005 研究開発費率2010 研究開発費率2000 有利子負債比率2010 有利子負債比率2005 有利子負債比率2000 海外売上高比率2010 海外売上高比率2005 海外売上高比率2000 有効なケースの数 (リストごと) 度数 136 135 121 136 135 121 136 135 121 136 135 121 136 133 121 136 135 121 135 136 121 136 135 121 136 135 121 121 最小値 494 1,478 3,324 -5.72 -6.18 -1.37 -1.92 -10.79 .00 -70.12 -62.41 -302.40 .00 .00 .00 .36 .38 .43 .00 .00 .00 .00 .00 .00 .00 .00 .00 最大値 2,177,802 1,632,249 1,580,825 19.27 26.31 23.32 25.80 31.22 32.85 79.45 69.04 46.85 54.27 47.58 33.19 3.41 3.64 2.78 7.05 7.98 6.00 43.41 70.38 88.79 44.10 35.20 21.45 38 平均値 154,761 136,197 146,815 4.4607 4.21 5.00 7.64 7.26 8.16 6.41 5.18 2.23 7.01 10.00 7.02 1.37 1.34 1.29 .91 .91 .81 51.56 22.15 26.40 5.48 3.71 3.34 標準偏差 298,703 250,012 269,983 3.52209 4.05 4.12 4.38 4.96 5.24 10.86 10.88 29.21 5.97 7.38 6.12 .51 .53 .47 .89 .99 .85 37.93 19.26 21.17 6.94 5.55 4.51 (5)分析結果 ①結果1-この 10 年間で食品業界の成長にどのような特徴があるのか- 図表 36 分析結果(要約)39 2000年-2010年の成長傾向 地域性判定 オーナー判定 国内M&A実施の有無 国内M&A実施件数 国内大型M&A実施の有無 M&A 海外M&A実施の有無 海外M&A実施件数 海外大型M&A実施の有無 第一分位 第二分位 第三分位 第四分位 - '+( '+( + - '+( '+( '+( + '-( - - + '-( - - + '-( - '-( + - '-( - + '-( '-( '-( + '-( '-( '-( 飲料・ 肉製 品乳製品 業種 製油、製糖、 製糖、パン菓 その他食料、 パン菓子 子 製粉 ←強い相関性はない→ 売上高成長率 利益率改善 資産回転率改善 海外売上高成長率 従業員成長率 株価上昇率 特徴 '+( '+( '-( '+( '+( + '+( '-( '+( '-( '+( '-( '+( '+( '-( '-( '-( '+( - '-( '+( '+( '-( '-( 積極的な オーガニック オーガニック オーガニック MAによる 'ただし成 な成長 な成長 成長 長に陰り( 地域性が弱 く、オー ナ比 率低い 地域性が強く オーナー比率が高い ' 強い個性( ※'(はポジティブ/ネガティブであるが有意ではないことを表している。 上記図表 36 は相関分析を要約したものであるが、この表をみて分かるように、第一 分位のみ国内・海外問わず積極的に M&A を実施している(5%水準で有意)。成長指標 を見ると売上高成長率、利益率改善、海外売上高成長率、従業員成長率も有意ではない がポジティブにきいている。また株価上昇率については有意にポジティブであった(5% 水準で有意)。第一分位を構成する業種を見ると、主に飲料製造業と肉製品乳製品製造 業であることが分かった。 一方で、第二分位以降を見ると地域性・オーナー比率がともにポジティブであり、 M&A に対してはネガティブとなっている。第二、第三分位については有意ではないが 売上高成長率等の指標がポジティブになっている一方で、第四分位については売上高成 長率等の指標がネガティブの傾向が強く、この 10 年間で成長が鈍化していることがわ 39分析結果の相関係数表については巻末付属資料 39 1 を参照。 かる。第二分位以降の業種を見ると、分位ごとの業種の傾向として強い相関性はなかっ た。 ②結果2-M&A が成長に寄与しているのか- 検証結果1では、第一分位のみ M&A を積極的に実行していることが分かった。そこ で、M&A が直接成長に寄与しているかを調べるためにもう尐し詳細に、M&A の指標 と成長性指標の間に相関関係の有無を見た。結果は以下の通りである。 図表 37 分析結果(要約)40 売上高成長率 利益率成長 資産回転率改善 海外売上高成長率 株価上昇率 国内M&A実施の有無 国内M&A実施件数 国内大規模M&Aの実施の有無 海外M&A実施の有無 海外M&A実施件数 海外大規模M&Aの実施の有無 '+( + '+( '+( '+( '+( + + '+( '-( '-( '-( '+( '-( '-( '-( '-( '-( '-( + + + + + '-( '-( '-( '+( '+( '+( 検証の結果、M&A と成長指標に有意な相関性は海外売上高成長率(5%水準で有意) を除いて見られなかったが、次のような傾向が見られた。まず、国内 M&A、クロスボ ーダーM&A はともに売上高成長にポジティブであるが、有意にはならなかった。一方 で、利益率に関してはクロスボーダーM&A をすると下がる傾向がある。また同様に資 産回転率に関しては M&A を実行すると総じて下がる傾向である。 クロスボーダーM&A は海外売上高成長率寄与(1%水準で有意)となっており、市場 は国内 M&A よりもクロスボーダーM&A を評価する傾向(有意ではない)にある。 3.考察 まず2.検証結果1及び2から言えることとして、第一分位と第二分位以降について は明らかに成長の仕方が異なることである。これまで述べてきたように、近年食品産業 においても業界再編の機運が高まっていると言われているが、実際に積極的な再編のア クションを実行しているのは第一分位のみであるということが分かる。また、第一分位 のみクロスボーダーM&A を積極的に行っているということは、前述してきたようにグ ローバル競争という中で世界のグローバルメジャー企業を意識した行動であると言え るだろう。しかしながら売上成長率等の成長指標との相関性を見ると、必ずしも M&A と成長指標に強い相関性があるわけではないと言える。 一方、第二分位以降では地域性やオーナー企業といった傾向が強く、それぞれ「個性」 を保ちながら、国内市場を中心にでオーガニックに成長を遂げていると言える。第四分 位に至ってはこの 10 年間で成長指標がネガティブ傾向にあり、成長が鈍化しているこ とが分かる。 以上から言えることとして、我が国の食品産業は近年飲料業界を中心にクロスボーダ 40分析結果の相関係数表については巻末付属資料 40 1 を参照。 ーM&A を積極的に行って一定の業績改善及び海外売上高比率を伸ばしているものの、 M&A を実際に実行する企業は第一分位の大手企業に限定されていることが分かる。 第四節 グローバル食品メジャー企業との比較 このように、グローバル食品メジャー企業は大型再編を加速させる一方で、我が国の 食品産業では再編があまり進んでいないことが分かった。では、そうした結果日本企業 とグローバル食品メジャー企業にどのような差が生じているのだろうか。以下において 確認する。 1.成長性 2000 年、2005 年、2010 年時点でのグローバルメジャー企業と日本 TOP3 企業の成 長を比較すると、この 10 年間で圧倒的に差がひらいていることが分かる(図表 38)。 また、利益率を見ると、日本もわずかに営業利益率が改善しているものの依然として欧 州メジャーと比較すると低いものとなっている(図表 39、40)。 図表 38 日米欧 TOP3 企業の成長比較①(売上高、売上高成長率)41 日米欧TOP3企業の成長比較 200% 16,000,000 180% 14,000,000 160% 12,000,000 欧州TOP3 120% 10,000,000 米国TOP3 100% 8,000,000 日本TOP3 80% 6,000,000 欧州成長率 140% 60% 4,000,000 40% 2,000,000 20% 0% 米国成長率 日本成長率 0 2000 2005 2010 各 TOP3 の売上高の合計を基に、筆者作成。なお各 TOP3 企業として、欧州はユニリー バ、インベブ、ネスレの 3 社、米国はコカコーラ、クラフト、ペプシコの 3 社、日本は味 の素、キリン、アサヒの 3 社となっている。 41 41 図表 39 日米欧 TOP3 企業の成長比較②(営業利益率)42 日欧米TOP3企業の営業利益率'平均(推移 25 20 15 欧州TOP3 % 10 米国TOP3 日本TOP3 5 0 2000 2005 2010 図表 40 日米欧 TOP3 企業の成長比較③(営業利益率、売上高 EBITDA) 売上高EBITDA 営業利益率 2010 ネスレ 12.35 ユニリーバ 14.97 インべブ 30.76 コカコーラ 24.06 ペプシコ 14.41 クラフト 11.56 6.96 キリンHD 6.40 アサヒHD 5.47 味の素 42 2010 2005 中央値 2005 2000 2000 12.61 10.85 15.39 15.61 15.37 14.67 11.1 33.47 30.39 30.47 20.92 9.42 37.93 28.04 20.43 26.34 25.1 28.17 30.37 28.87 18.19 15.71 21.71 21.19 19.20 15.02 6.84 6.31 6.61 16.96 5.97 5.47 3.98 12.30 13.39 10.81 10.63 18.43 11.41 9.81 10.72 19.81 10.74 9.17 8.49 2010 2005 2000 19.36 16.07 10.46 16.68 19.85 19.26 6.96 6.59 5.14 各社データより、筆者作成。なお利益率は各 3 社の利益率の平均となっている。 42 2.圧倒的な売上高と営業利益率 図表 41 は日本企業と欧米メジャー企業の 2010 年時点での売上高と営業利益率をプ ロットしたものである。この図表から分かるように、欧米企業は日本企業と比較して、 売上高規模が大きく、また利益率が高いことが分かる。グローバルメジャー企業の利益 率は 10%以上であり、インベブに至っては約 30%である。それに対して日本企業は 10%未満となっている。 図表 41 日本企業と欧米メジャー企業の比較①(売上高・営業利益率)43 日本企業と欧米メジャー企業の比較'2010年( 10,000,000 9,000,000 8,000,000 7,000,000 6,000,000 売上高 5,000,000 4,000,000 3,000,000 2,000,000 1,000,000 0 ネスレ クラフト ペプシコ ユニリーバ ダノン ケロッグ 東洋水産 コカコーラ インべブ キリン アサヒ 0 10 20 30 40 営業利益率 3.高い海外売上高比率 第二章では日本の食品産業の海外売上高比率が低いことを述べたが、これに対して海 外メジャー企業は高い海外売上高比率となっており、多くは 40%以上、ネスレやイン ベブに至っては 80%以上となっている(図表 42)。 また図表 43 はグローバルメジャー企業の所在地域別の売上高構成をグラフにしたも のであるが、アジアやアフリカ、ラテン地域での売上高があることが分かる。したがっ てグローバルメジャー企業も先進国のみならず、市場が拡大する新興国で積極的に展開 していっていることが分かる。 2010 年の財務データを基準に Bloomberg から筆者作成。なお、ユニリーバについては ここでは食品事業のみの財務データを使用している。 43 43 図表 42 日本企業と欧米メジャー企業との比較②(海外売上高比率)44 日本企業と欧米メジャー企業の比較 10,000,000 9,000,000 8,000,000 7,000,000 6,000,000 売上高 5,000,000 4,000,000 3,000,000 2,000,000 1,000,000 0 ネスレ クラフト ペプシコ アサヒ キリン ダノン コカコーラ インベブ ユニリーバ ケロッグ 味の素 0 20 40 60 80 100 海外売上高割合 図表 43 各グローバルメジャー企業の所在地別売上高45 【ネスレ】地域別売上高(2010年) アメリカ ヨーロッパ アジア・オセアニア・アフリカ 30% 17% その他 33% 20% Bloomberg データより筆者作成。 Bloomberg データを基に筆者作成。なお、ユニリーバの食品事業の所在地別セグメント については該当データがないため、ここではユニリーバを除く 5 社とする。 44 45 44 【クラフト】地域別売上高'2010年( アメリカ ヨーロッパ その他 23% 49% 28% 【ABインベブ】地域別売上高'2010年( アメリカ ラテン ヨーロッパ 2% 22% 18% 58% 45 アジア 【ペプシコ】地域別売上高'2010年( アメリカ その他 メキシコ イギリス 3% 8% 31% 58% 【コカコーラ】地域別売上高'2010年( アメリカ ヨーロッパ パシフィック ラテン 9% 14% 42% 18% 17% 46 ユーラシア・アフリカ 第五節 業界再編の必要性 第一節から第四節までで、我が国の食品産業において業界再編は第一分位でクロスボ ーダーM&A を中心に積極的な再編の傾向がみられるものの、海外メジャーと比較する と再編規模や売上高、利益率等の差が生じていることが明らかとなった。 しかしながら、国内市場の閉塞という環境の中で、これまで通り国内のプレーヤー同 士で収益を争っているようでは、収益の源泉であった国内市場が縮小していく中で成長 を描くことは難しくなる。一方で、国内の縮小の分を海外に活路を見出そうとすれば、 規模が大きく、利益率が圧倒的に高いグローバルメジャー企業と競争を繰り広げていか なければならない。グローバル企業は業界再編を加速させ、グローバルで規模の経済性 を強めている中で現段階の日本企業はグローバル競争で遅れをとっている。したがって、 こうした状況を打破し成長性と収益性を高めていくには、業界再編を行い、グローバル メジャーに近づく規模を追求しながら、グローバル競争を勝ち抜いていく必要があると 考える。 そこで、具体的な業界再編構想として、本論文のテーマとしている「日本発グローバ ル食品メジャー企業」構想を掲げる。より具体的な実行策としては、「国内食品メジャ ー同士の多角化型統合」と、その上での「大型クロスボーダーM&A」である。 (要約) ・国内市場の閉塞…国内のプレーヤー同士で収益を奪えば、成長性は見込めない ・グローバル競争…大型再編の加速 ↓ 業界再編の必要性 ↓具体的には 日本発グローバル食品メジャー企業構想 そこで、次章ではなぜ国内メジャー同士の統合なのか、なぜ多角化型統合なのかを明 らかしていくこととする。 47 第四章 「日本発グローバル食品メジャー」企業を誕生させる意義 本論文がテーマとしている「日本発グローバル食品メジャー企業」構想として、これ まで述べてきたように「国内メジャー企業同士の多角化型統合」による規模の追求と、 その上での「大型クロスボーダーの実行」によるシナジーの追求を掲げた。そして、第 二章では食品産業の特色を、第三章においてはなぜ「業界再編」というアクションが必 要なのかについて中心に述べてきた。 そこで本章では、なぜ「日本発グローバル食品メジャー企業」を誕生させる必要があ るのか、具体的な構想として、なぜ「国内メジャー同士の統合」なのか、なぜ「多角化 型統合」なのか、についての検証を行っていくこととする。 第一節 国内メジャー企業同士の統合を行う意義 1.考え得る選択肢 前章で述べてきたように業界再編を行うことが必要だとしても、実行の手法として以 下①②の 2 通りが大きく考えられる。 ①まず国内統合を行い、その上でクロスボーダーを実施すべきという方向性 ②国内統合をせず、個々の企業でそれぞれクロスボーダーを実施すべきという方向性 ②のサイドからすれば、実際再編が進みにくい状況の中で「国内再編」という段階を 踏まえることにより労力をかけるよりは、個々の企業が直接クロスボーダーM&A を実 行し、自分たちの企業の戦略に合致する企業に対して M&A をしていった方が素早くグ ローバル化に対応することができるとする主張もあろう。 したがって、なぜ「国内メジャー同士の統合」を先に実行するのか、その意義は何か。 そこで以下においてはグローバルベースの食品産業の M&A 活動データを基に傾向を 分析し、明らかにすることとする。 48 2.検証-なぜ国内メジャー企業同士の統合なのか- (1)検証内容 クロスボーダーM&A の実行の前になぜ「国内メジャー同士の統合」という手法をと るのかについて、グローバルベースの食品産業の M&A 活動データから得られる傾向に 着目し、明らかにする。 以下検証については、グローバルベースの食品産業の M&A 活動データから以下 3 つ の傾向を中心に分析を行う。 ・グローバルベースの食品企業のクロスボーダーM&A のターゲット先の傾向46 ・グローバルベースでの大型 M&A の傾向47 ・グローバルベースでの買い手企業の株価にポジティブにはたらく M&A の傾向 (2)検証の設計 2000 年 1 月 1 日から 2009 年 12 月 31 日までのグローバルベースの食品産業の M&A 活動データを基に日本企業が買収者の場合とグローバル企業が買収者の場合とに分け て、それぞれ国内での M&A を行った場合とクロスボーダーM&A を行った場合に分け て傾向分析(中央値・平均値)を行う。 (3)データソース・サンプル 2000 年 1 月 1 日から 2009 年 12 月 31 日までのグローバルベースの食品産業の M&A 活動データを用いる。 (4)基本統計 巻末付属資料 2 を参照。 食品産業については SIC コード 2000~2100 の範囲を対象としている。 M&A については、取引金額 300 万ドル以上の M&A を対象としている。 46 47大型 49 (5)検証結果 ①結果1-グローバルベースでの食品企業のクロスボーダーM&A のターゲット先傾向 統計結果から、グローバル食品企業及び日本食品企業のクロスボーダーM&A 及び国 内 M&A のターゲット先の相対的規模、ROA、国籍についての結果を抜き出し、要約 したものが以下となる(図表 44~47)。 図表 44 日本企業・グローバル企業の M&A のターゲット先傾向(要約)48 グローバルAll Sampleのターゲット先傾向 国内M&A クロスボーダーM&A 相対的規模 ROA 11.03% '中央値( 11.46% '中央値( 2.90% (中央値( 5.29% '中央値( 日本企業のターゲット先傾向 国内M&A クロスボーダーM&A 相対的規模 ROA 5.60% '中央値( 10.10% '中央値( 1.70% (中央値( 8.21% '中央値( 日本企業が行っている M&A の傾向として、国内での M&A の場合、ターゲット先の 相対的規模は 5.7%、ROA は 1.7%となっており、海外企業が行っている国内での M&A のターゲット先の相対的規模(11%)及び ROA(2.9%)と比較すると総じて低いこと が分かった。 一方で、日本企業と海外企業の各クロスボーダーM&A の傾向を見ると、日本企業も 海外企業もターゲット先の相対的規模は約 11%、ROA は日本企業のターゲット先の方 が高く 8.2%、海外企業の場合は 5.3%となっており、日本企業の方がターゲットとし て収益性の高い企業を買収している。また全体的にターゲット先の国籍として近年、 OECD から OECD 以外の国にシフトしている傾向がある(図表 47)。 48統計結果より、筆者作成。統計結果の詳細は巻末付属資料 50 3 を参照。 図表 45 グローバルベースのクロスボーダー・国内 M&A 統計結果 グ ロ ー バ ル ベ ー ス の ク ロ ス ボ ー ダ ー M&A 統計量 取引金額 (百万ドル) 度数 有効 欠損値 平均 中央値 合計 ターゲット 先の相対的 規模 316 47 0 269 531.819294 1.6748 ターゲット 先 (OECD=1,Non 水平=1,多角 ターゲット -OECD=0) 化=0 先ROA 316 306 97 0 10 219 .80 .52 .0578 dmy2000 316 0 .1139 dmy2001 316 0 .1234 dmy2002 316 0 .0854 dmy2003 316 0 .0759 dmy2004 316 0 .1171 dmy2005 316 0 .0823 dmy2006 316 0 .1297 dmy2007 316 0 .0949 dmy2008 316 0 .0791 dmy2009 316 0 .0981 72.580000 .1103 1.00 1.00 .0529 .0000 .0000 .0000 .0000 .0000 .0000 .0000 .0000 .0000 .0000 168054.8970 78.72 252 158 5.61 36.00 39.00 27.00 24.00 37.00 26.00 41.00 30.00 25.00 31.00 グ ロ ー バ ル ベ ー ス の 国 内 M&A 統計量 取引金額 (百万ドル) 度数 有効 欠損値 平均 中央値 合計 ターゲット 先の相対的 規模 744 156 0 588 400.291496 .3613 ターゲット 先 (OECD=1,Non 水平=1,多角 ターゲット -OECD=0) 化=0 先ROA 744 713 293 0 31 451 .84 .49 .0501 dmy2000 744 0 .0820 dmy2001 744 0 .0995 dmy2002 744 0 .0914 dmy2003 744 0 .1048 dmy2004 744 0 .1129 dmy2005 744 0 .1075 dmy2006 744 0 .1142 dmy2007 744 0 .1142 dmy2008 744 0 .0995 dmy2009 744 0 .0739 50.631500 .1146 1.00 .00 .0290 .0000 .0000 .0000 .0000 .0000 .0000 .0000 .0000 .0000 .0000 297816.8730 56.36 623 349 14.67 61.00 74.00 68.00 78.00 84.00 80.00 85.00 85.00 74.00 55.00 図表 46 日本企業のクロスボーダー・国内 M&A 統計結果 日 本 企 業 の ク ロ ス ボ ー ダ ー M&A 統計量 取引金額 (百万ドル) 度数 有効 欠損値 平均 中央値 合計 ターゲット 先の相対的 規模 23 4 0 19 356.196783 189.841000 8192.5260 .1010 .1083 .40 ターゲット 先 (OECD=1,Non 水平=1,多角 ターゲット -OECD=0) 化=0 先ROA 23 23 5 0 0 18 1.00 1.00 23 .65 1.00 15 .0671 .0821 .34 dmy2000 dmy2001 dmy2002 dmy2003 dmy2004 dmy2005 dmy2006 dmy2007 dmy2008 dmy2009 23 0 23 0 23 0 23 0 23 0 23 0 23 0 23 0 23 0 23 0 .0000 .0000 .00 .0435 .0000 1.00 .0000 .0000 .00 .0870 .0000 2.00 .1739 .0000 4.00 .1304 .0000 3.00 .0870 .0000 2.00 .0435 .0000 1.00 .2609 .0000 6.00 .1739 .0000 4.00 日 本 企 業 の 国 内 M&A 統計量 度数 有効 欠損値 ターゲット 取引金額 ターゲット 先 (百万ドル) 先の相対的 (OECD=1,Non 水平=1,多角 ターゲット 規模 -OECD=0) 化=0 先ROA 115 62 115 112 84 dmy2000 115 dmy2001 115 dmy2002 115 dmy2003 115 dmy2004 115 dmy2005 115 dmy2006 115 dmy2007 115 dmy2008 115 dmy2009 115 平均 中央値 0 112.572104 42.629000 53 .1256 .0566 0 1.00 1.00 3 .54 1.00 31 .0056 .0170 0 .0522 .0000 0 .0957 .0000 0 .0435 .0000 0 .0609 .0000 0 .0783 .0000 0 .0957 .0000 0 .1130 .0000 0 .2000 .0000 0 .1478 .0000 0 .1130 .0000 合計 12945.7920 7.79 115 61 .47 6.00 11.00 5.00 7.00 9.00 11.00 13.00 23.00 17.00 13.00 51 図表 47 グローバルベースのクロスボーダーM&A の統計結果(上:ターゲット先 Non-OECD の場合、下:ターゲット先 OECD の場合) グ ロ ー バ ル ベ ー ス の ク ロ ス ボ ー ダ ー M&A( タ ー ゲ ッ ト 先 :Non-OECD) 統計量 取引金額 (百万ドル) 度数 有効 欠損値 平均 中央値 合計 ターゲット 先の相対的 規模 101 16 0 85 101.272782 34.003000 10228.5510 4.4925 .0754 71.88 ターゲット 先 (OECD=1,Non 水平=1,多角 ターゲット -OECD=0) 化=0 先ROA 101 95 37 0 6 64 .56 1.00 57 .53 1.00 50 .0858 .0562 3.17 dmy2000 101 0 dmy2001 101 0 dmy2002 101 0 dmy2003 101 0 dmy2004 101 0 dmy2005 101 0 dmy2006 101 0 dmy2007 101 0 dmy2008 101 0 dmy2009 101 0 .0594 .0000 6.00 .0693 .0000 7.00 .0495 .0000 5.00 .0792 .0000 8.00 .1683 .0000 17.00 .0891 .0000 9.00 .1485 .0000 15.00 .0693 .0000 7.00 .1287 .0000 13.00 .1386 .0000 14.00 グ ロ ー バ ル ベ ー ス の ク ロ ス ボ ー ダ ー M&A( タ ー ゲ ッ ト 先 :OECD) 統計量 取引金額 (百万ドル) 度数 平均 中央値 合計 有効 欠損値 ターゲット 先の相対的 規模 215 31 0 184 734.076028 122.641000 157826.3460 .2205 .1718 6.84 ターゲット 先 (OECD=1,Non 水平=1,多角 ターゲット -OECD=0) 化=0 先ROA 215 211 60 0 4 155 .91 1.00 195 .51 1.00 108 .0406 .0421 2.44 dmy2000 215 0 dmy2001 215 0 dmy2002 215 0 dmy2003 215 0 dmy2004 215 0 dmy2005 215 0 dmy2006 215 0 dmy2007 215 0 dmy2008 215 0 dmy2009 215 0 .1395 .0000 30.00 .1488 .0000 32.00 .1023 .0000 22.00 .0744 .0000 16.00 .0930 .0000 20.00 .0791 .0000 17.00 .1209 .0000 26.00 .1070 .0000 23.00 .0558 .0000 12.00 .0791 .0000 17.00 52 ②結果2-グローバルベースの食品企業の大型 M&A の傾向 次にグローバル企業及び日本企業の 300 万ドル以上の大型 M&A の傾向について主に 取引金額と買収先企業の株価リターン、買収プレミアム、相対的規模、ROA に着目し て見ることとする(図表 48~50)。 ・取引金額 まず取引金額を見ると、グローバル企業及び日本企業どちらもクロスボーダー大型 M&A の方が国内大型 M&A よりも取引金額が大きく、同時にグローバル企業の方が日 本企業よりも取引金額が大きい国内及びクロスボーダー大型 M&A を実行している(図 表 48~50)。また、グローバル企業の大型 M&A の場合、図表 49 の取引金額の平均値 を見ると日本企業の大型 M&A の取引金額の平均と比べかなり高額となっており、同じ 大型 M&A でもグローバル企業の方が日本企業よりも大規模な M&A を行っていること が分かる。 ・買い手企業の株主リターン 買い手企業の株主リターンを見ると、グローバル企業の大型クロスボーダーM&A の 場合買い手企業の株主のリターンは僅かではあるが-0.06325 とマイナスとなっている 一方で、グローバル企業の大型国内 M&A 及び、日本企業の大型国内及びクロスボーダ ーはプラスに評価されている(図表 48~50)。 ・買収プレミアム 買収プレミアムを見ると、総じてグローバル企業の方が日本企業よりも国内及びクロ スボーダー合わせて多くのプレミアムを支払っている(図 48~50)。 ・ターゲット先の相対的規模 グローバル企業の国内及びクロスボーダーでの大型 M&A のターゲット先の相対的 規模を見ると、それぞれ 28.99%、21.13%となっており、日本企業の国内及びクロス ボーダーでの大型 M&A のターゲット先の相対的規模のそれぞれ 11.61%、9.43%をは るかに上回っていることが分かる(図表 48~50)。 なお、グローバル企業及び日本企業いずれもクロスボーダーM&A の方が国内 M&A よりも相対的規模は大きい企業を買収している。したがってグローバル企業は日本より も相対的規模の大きい企業をターゲットにしていることが分かる(図表 48~50)。 ・ターゲット先 ROA 一方で ROA を見ると、日本企業は国内 M&A でのターゲット先ではグローバル企業 に比べ ROA の低い企業を買収しているが、クロスボーダーM&A の場合はグローバル 企業よりもターゲット先として ROA の高い企業を買収している。ただし、図表~をみ ると分かるように、日本企業のクロスボーダーM&A の ROA の平均値と中央値は同じ であるが、海外企業の ROA の平均値は 7.16 となっているため、ROA に関してはどち らも同程度の企業をターゲットとしていると言える(図表 48~50)。 ・文化や地域 また、グローバル企業のクロスボーダーM&A を見ると、言語や宗教、地域などはタ ーゲット先として大きく影響はないようである(図表 49)。 53 図表 48 日本企業・グローバル企業の大型クロスボーダーM&A のターゲット先傾向 (要約)49 グローバル企業のターゲット先傾向 取引金額'百万ドル( 買収プレミアム 相対的規模 ROA 636.19 33.28 28.99% 4.08 国内M&A '中央値( '中央値( '中央値( '中央値( 808.14 21.37 21.13% 5.39 クロスボーダーM&A '中央値( '中央値( '中央値( '中央値( 国内M&A クロスボーダーM&A 49 日本企業のターゲット先傾向 取引金額'百万ドル( 買収プレミアム 相対的規模 ROA 624.57 19.60 9.43% 2.86 '中央値( '中央値( '中央値( '中央値( 718.55 16.98 11.61% 7.09 '中央値( '中央値( (中央値( '中央値( 詳しい統計結果については巻末付属資料 3 を参照。 54 図表 49 グローバル企業の大型国内・クロスボーダーM&A 統計結果 グ ロ ー バ ル 企 業 の 大 型 国 内 M&A 統計量a 取引金額 3日間株主リ (百万ドル) ターン 度数 買収プレミ アム'公表4 週間前( ターゲット ROA ターゲット 相対的規模 言語(同言 宗教(同宗 地域(同大 語=1,異言語 教=1,異宗教 陸=1,異大陸 =0) =0) =0) 70 0 69 40 52 81 30 62 16 0 70 0 70 0 70 0 平均値 2077.808876 .040039 .332737 .0483 1.00 1.00 1.00 .000000 中央値 636.195000 .006559 .213710 .0408 1.00 1.00 1.00 .000000 有効 欠損値 グ ロ ー バ ル 企 業 の 大 型 ク ロ ス ボ ー ダ ー M&A 統計量a 買収プレミ 取引金額 3日間株主リ アム'公表4 (百万ドル) ターン 週間前( 度数 有効 欠損値 平均値 中央値 ターゲット ROA 70 0 23 47 23 47 30 40 2069.046400 808.140000 .011389 -.006325 .937042 .332847 .0716 .0539 言語(同言 宗教(同宗 地域(同大 語=1,異言語 教=1,異宗教 陸=1,異大陸 =0) =0) =0) 70 70 70 70 0 0 0 0 ターゲット 相対的規模 .53 1.00 .47 .00 .36 .00 11.737281 13.383759 図表 50 日本企業の大型クロスボーダーM&A 統計結果 日 本 企 業 の 大 型 国 内 M&A 統計量a 買収プレミ 取引金額 3日間株主リ ターゲット アム'公表4 (百万ドル) ターン ROA 週間前( 度数 有効 言語(同言 宗教(同宗 地域(同大 ターゲット 語=1,異言語 教=1,異宗教 陸=1,異大陸 相対的規模 =0) =0) =0) 7 8 8 8 8 8 5 7 平均値 0 756.867500 3 .029621 1 .246534 1 .0170 0 1.00 0 1.00 0 1.00 0 .000000 中央値 624.572000 .025263 .196081 .0286 1.00 1.00 1.00 .000000 欠損値 日 本 企 業 の 大 型 ク ロ ス ボ ー ダ ー M&A 統計量a 取引金額 3日間株主リ 買収プレミ (百万ドル) ターン アム 度数 平均値 中央値 有効 欠損値 8 0 3 5 2 6 832.162500 718.550000 .019572 .013875 .169810 .169810 言語(同言 宗教(同宗 地域(同大 ターゲット 語=1,異言語 教=1,異宗教 陸=1,異大陸 相対的規模 =0) =0) =0) 2 2 8 8 8 6 6 0 0 0 ターゲット ROA .0709 .0709 .1161 .1161 55 .00 .00 .00 .00 .25 .00 3. 考察及び結論―国内メジャー企業同士の統合を行う意義― (要約) 以上、グローバルベースでの食品産業の M&A の国内及びグローバル M&A の検証結 果を見てきたが、ここで「買収先の相対的規模」に注目したい。 検証結果1では、クロスボーダーM&A のターゲット先の相対的規模として、日本 企業もグローバル企業もおおむね 10%の企業であることが分かった。また、検証結果 2の大型 M&A ではグローバル企業は国内及びクロスボーダーM&A において 20%超の 相対的規模の企業をターゲットとしている一方で、日本企業は国内及びクロスボーダー M&A で相対的規模約 10%の企業をターゲット先としている。もし、相対的規模 10% が一つの目安になるとすれば、1,000 億円の企業を買収しようとすると、買収企業には 尐なくとも 1 兆円以上の規模がなければならないことを意味する。 このように、クロスボーダーM&A を実行し、グローバル企業に匹敵するグローバル 競争を加速させていこうとすれば、当然こうした規模の M&A を実行し続けるだけの財 務力が必要となる。グローバル企業が高い収益力を資金源に大型 M&A を実行している が、日本企業は収益性が低いため買収に必要なキャッシュフローを生み出しにくく、1 社だけで M&A を実行し続けていくことは財務的に限界がある。図表 52 は近年、大型 国内及びクロスボーダーM&A を実行しているキリンの 5 年間の自己資本比率の推移で あるが、これを見ても分かるように徐々に自己資本比率が悪化している。国内市場が縮 小する中で、規模が海外メジャーと比較して小さい日本企業にとっては、まず国内企業 同士で規模拡大を図りながら、買収余力を確保するというアクションが必要であると考 える。具体的には第三章第三節で検証を行った、再編が加速している第一分位が対象と なり、その中でも、売上高が 1 兆円前後の企業がメジャー同士の統合の対象になってく ると考える(図表 53)。 56 前掲図表 44 日本企業・グローバル企業の M&A のターゲット先傾向 グローバルAll Sample のターゲット先傾向 国内M&A クロスボーダーM&A 相対的規模 ROA 11.03% '中央値( 11.46% '中央値( 2.90% (中央値( 5.29% '中央値( 日本企業のターゲット先傾向 国内M&A クロスボーダーM&A 相対的規模 ROA 5.60% '中央値( 10.10% '中央値( 1.70% (中央値( 8.21% '中央値( 前掲図表 48 日本企業・グローバル企業の大型クロスボーダーM&A のターゲット先傾向 グローバル企業のターゲット先傾向 取引金額'百万ドル( 買収プレミアム 相対的規模 ROA 636.19 33.28 28.99% 4.08 国内M&A '中央値( '中央値( '中央値( '中央値( 808.14 21.37 21.13% 5.39 クロスボーダーM&A '中央値( '中央値( '中央値( '中央値( 国内M&A クロスボーダーM&A 日本企業のターゲット先傾向 取引金額'百万ドル( 買収プレミアム 相対的規模 ROA 624.57 19.60 9.43% 2.86 '中央値( '中央値( '中央値( '中央値( 718.55 16.98 11.61% 7.09 '中央値( '中央値( (中央値( '中央値( 前掲図表 33 日本企業の主なクロスボーダーM&A の動向 公表日 買収者 2009年9月 サントリーHD 2007年7月 キリンHD 2011年8月 キリンHD 2011年8月 アサヒHD 2008年8月 キリンHD 2008年12月 アサヒHD 2008年10月 サントリーHD 2009年1月 アサヒHD 2011年1月 キリンHD 2006年8月 サッポロ 2006年1月 味の素HD 2008年12月 日清食品HD 被買収者 被買収企業国籍 オレンジーナ サンミゲルビール スキンカリオール フレイバード・ビバレッジズ・グループ・ホールディングス(FB( デアリーファーマーズ キャドバリー・シュウェップス・オーストラリア フルコアグループ(ダノンニュージーランド子会社) 青島ビール 華潤怡宝食品飲料 スリーマンビール イギリス フィリピン ブラジル オーストラリア オーストラリア イギリス フランス 中国 中国 カナダ フランス キプロス'ロシア( 香港アモイ・フード・グループダノン・グループ子会社 アングルサイド 57 被買収企業業種 飲料 飲料 飲料 飲料 乳製品 飲料 飲料 飲料 飲料 飲料 その他製造 製麺 取引金額 '百万円( 300,000 294,000 198,800 98,200 84,000 75,800 75,000 59,300 33,200 29,100 27,300 22,200 図表 51 グローバル企業による大型クロスボーダーM&A50 取引金額 (百万ドル) 58,000 25,065 公表日 買収企業 2008年7月 インベブ 2000年5月 ユニリーバ 被買収企業 アンハイザー・ブッシュ ベストフーズ 被買収企業国籍 被買収企業業種 米国 ビール製造業 米国 缶詰製造業 2009年9月 クラフトフーズ キャドバリー 英国 菓子その他製造業 18,769 2005年4月 ぺルノ・リカール アライド・ドメック 英国 蒸留酒製造業 14,118 2007年7月 クラフトフーズ ダノン 仏国 練乳、濃縮牛乳製造業 7,214 2002年8月 ネスレ 2002年5月 SAB ノバルティス アルトリアグループ →ミラー 米国 米国 ベビーフード製造事業 たばこ、ビール製造業 5,500 5,574 2004年7月 アドルフ・クアーズ モルソン カナダ ビール製造業 4,210 ファイザー(菓子部門) 米国 製薬業 4,200 スコティッシュ・ニュー 英国 キャッスル(パブ部門) アルコール製造業 4,174 2004年3月 ABインベブ ブラコ ビール製造業 4,020 2010年5月 ネスレ クラフトフーズ(冷凍ピ 米国 ザ部門) Bass Brewers Ltd 英国 冷凍ピザ事業 3,700 ビール製造業 3,453 モルソン・クアーズ 米国 ビール製造業 2,600 シェフズ・アメリカ 米国 冷凍スナック事業 2,600 2007年12月 キャドバリー・ シュウェップス 2003年10月 Spirit Amber Bidco Ltd 2000年6月 ABインベブ 2007年10月 SABミラー 2002年8月 ネスレ ブラジル 図表 52 キリンの自己資本比率推移(5 年間) 【キリン】自己資本比率推移 60 50 50.6 42.7 40 35.4 % 30 34.3 36.3 自己資本比率 20 10 0 2006 2007 2008 2009 502000 2010 年 1 月 1 日から 2009 年 12 月 31 日までのクロスボーダーM&A TOP100 より、筆 者作成。 58 図表 53 統合の可能性となるメジャー企業 (2010 年の売上高を金順とした場合の第一分位)51 企業名 キリンホールディングス アサヒグループホールディングス 味の素 明治ホールディングス 日本ハム 山崎製パン マルハニチロホールディングス 森永乳業 日本水産 キユーピー 伊藤ハム 日清製粉グループ本社 ニチレイ 雪印メグミルク サッポロホールディングス コカ・コーラウエスト 日清食品ホールディングス 伊藤園 東洋水産 日清オイリオグループ ヤクルト本社 キッコーマン 江崎グリコ 日本製粉 プリマハム ハウス食品 不二製油 昭和産業 丸大食品 コカ・コーラ セントラル ジャパン 宝ホールディングス J-オイルミルズ カゴメ 米久 51 業種' 金融庁分類( 飲料製造業 飲料製造業 その他食料品製造業 その他食料品製造業 肉製品乳製品製造業 パン菓子製造業 漁業 肉製品乳製品製造業 漁業 その他食料品製造業 肉製品乳製品製造業 製粉業 その他食料品製造業 肉製品乳製品製造業 飲料製造業 飲料製造業 その他食料品製造業 飲料製造業 その他食料品製造業 食用油製造業 飲料製造業 その他食料品製造業 パン菓子製造業 製粉業 肉製品乳製品製造業 その他食料品製造業 食用油製造業 製粉業 その他食料品製造業 飲料製造業 飲料製造業 食用油製造業 その他食料品製造業 肉製品乳製品製造業 第三章第三節の検証より筆者作成。 59 売上高2 0 1 0 年' 百万円( 2,177,802 1,489,460 1,170,876 1,106,655 953,616 928,242 828,715 585,116 481,574 471,010 452,453 443,728 438,111 393,373 389,244 375,764 371,178 332,984 315,337 301,299 290,678 285,690 284,536 261,586 252,607 220,622 213,229 209,381 196,667 194,834 190,525 176,738 171,937 168,717 第二節 多角化型統合を行う意義 第一節においては「日本発グローバル食品メジャー企業」構想として、なぜ国内メジ ャー企業同士の統合が必要なのかについて、グローバルベースでの M&A 活動の傾向か ら「買収先の相対的規模 10%」という点に着目して明らかにした。 第二節では、その上でなぜ多角化型統合を行うのかについてについて論証する。 1.考え得る選択肢 実際に統合の形態として考えられるのは以下 3 つである。 ①水平統合(同業種(例. 飲料+飲料)) →専業特化型(インベブ) ②垂直統合(川上・川下(例. 製パン+製粉) ③多角化型統合 -食品内異業種同士(例. 飲料+乳業) →ネスレ型 -異業種同士(例. 食品+トイレタリー) →ユニリーバ、P&G 型 本論文では多角化型統合については、具体的にネスレのような食品内異業種同士か、 ユニリーバのような異業種同士を想定している。そこでなぜ本論文で多角化型統合を結 論とするのかについて、以下明らかにする。 60 2. 多角化型統合を行うメリット なぜ多角化型統合を行うのかということについて、多角化型統合のメリットに着目す る。水平統合、垂直型統合、多角化型統合のメリット・デメリットをまとめたものは以 下の通りである。 図表 54 各 M&A 形態によるメリット・デメリット52 図表 54 で各メリット、デメリットの部分で着目したいのは、 「統合コスト」と「独占 取引禁止法への抵触」である。 水平型統合の場合、同事業であるが故に、生産拠点の集約等やとりわけ人員削減の統 合コストが再編後の統合の足かせとなる可能性が考えられる。国内での統合コストで労 力を費やしてしまえば、グローバル競争に迅速に対応することはできなくなる。 同時に、独占取引禁止法に抵触する可能性も出てくる。通常、食品産業は嗜好性に応 じて業種が多岐に渡っているため、全体として寡占化は進みにくいとされている。また 近年ではグローバル競争を意識して、世界シェアで寡占度を判定しようとする動きもあ る。現にビール業界では前述したように TOP4 で世界シェアの 50%以上を握っており、 これら上位企業はビールを専業に展開をしている。しかし、現時点として我が国におい て独禁法を無視した議論は避けて通ることはできない。下記図表 55 は公正取引委員会 の公表資料を基に、食品業種内での産業集中度の高いものをまとめたものであるが、 CR3 が 90%以上を超える「ビール」を初めとして、特定の業種においては非常に産業 集中度が高くなっており、その分野での M&A に関しては独禁法に抵触する可能性が高 い。 また、垂直型統合という選択肢もあるが、垂直型統合を行った場合、TPP 参加の可 能性を考慮すると、TPP により安価な農作物の輸入が行われるようになれば、企業と してはより安く原材料を手に入れることができるため、垂直統合をするメリットは尐な 52筆者作成。 61 いと言える。 一方で、多角化型統合の場合、専門性の低下や投資効率の非効率性を招く「コングロ マリット」が発生する恐れがあるものの、上述した統合コストが比較的かからず、また 独禁法抵触の可能性も低いため、再編をスピーディーに行うことが可能であると考える。 グローバル競争・グローバル規模での業界再編が加速する中では、国内メジャー企業同 士で多角化型統合を行い、スピーディーに収益性と買収余力を確保することが必要であ る。 図表 55 食品業種内の産業集中度53 品目 チーズ マヨネーズ・ドレッシング類 ルウ類 即席めん 精製糖 小麦粉 食用植物油脂 食パン ビール 発泡酒 業種 累積集中度 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 乳製品肉製品製造業 CR3 71.7% 71.9% 68.4% 69.5% 64.3% 64.2% その他食料品製造業 CR3 85.1% 82.8% 83.0% 83.5% 83.3% 82.1% 81.6% 82.1% 82.1% その他食料品製造業 CR3 91.9% 91.7% 92.1% 94.1% 94.4% 94.2% 94.2% 95.5% 95.3% その他食料品製造業 CR3 64.0% 62.9% 63.0% 61.8% 63.0% 64.5% 65.6% 64.2% 64.6% 製糖業 CR3 67.4% 66.8% 45.7% 46.5% 50.5% 50.7% 製粉業 CR3 67.5% 66.4% 70.5% 71.2% 71.2% 71.0% 71.2% 71.3% 70.9% 食用油製造業 CR3 37.9% 38.2% 48.0% 46.2% パン菓子製造業 CR3 75.1% 75.1% 75.4% 76.3% 76.1% 73.8% 飲料製造業 CR3 93.7% 93.4% 93.1% 92.7% 92.7% 92.1% 91.5% 91.2% 90.5% 飲料製造業 CR3 99.4% 81.6% 84.3% 86.8% 89.3% 90.8% 90.7% 90.8% 90.8% この点、多角化型統合の場合、専門性の低下や、投資効率の非効率性を招く「コング ロマリットディスカウント」が発生する可能性があるというデメリットがあるものの、 統合コストや独禁法の抵触の可能性は低く、再編を迅速に行っていくことが可能となる。 重要なのは国内での統合は海外メジャー企業と対抗できる大型クロスボーダーM&A を 実行するための規模追求による買収余力の確保が必要となる。また食品の場合実際「多 角化」と言っても、扱う業種が異なっても原材料や流通等、重なり合いを多く持つため、 コングロマリットディスカウントは大きく発生しないと考える。 公正取引委員会ホームページ出荷集中度調査を参照。なお CR3 は 1 位から 3 位まで の企業のシェアの合計値であり、当該品目に係る集中度を示す 指標の 1 つとなってい る。(http://www.jftc.go.jp/katudo/ruiseki/ruisekidate1920.html) 53 62 3.多角化型統合について 以上、多角化型統合のメリットを「独禁法」と「統合コスト」という観点から説明し たが、多角化型統合としては具体的には食品内異業種同士と食品以外の異業種との統合 が考えられる。 多角化型統合 -食品内異業種同士(例. 飲料+乳業) -異業種同士(例. 食品+トイレタリー) →ネスレ型 →ユニリーバ、P&G 型 まず食品内異業種同士の統合の場合、「多角化」といっても、実際には食品の場合、 原材料や商品開発、流通経路等で重なり合いが多くあり、食品内の異業種で統合したと しても一定のシナジーは見込めると考える。 一方で食品以外との異業種との統合の場合、事業領域や原材料、研究開発やノウハウ 等が異なる側面が多くあるため、統合したとしても戦略の方向性が一致しない可能性も 考えられる。 しかし、例えばユニリーバや P&G などのように、食品とトイレタリーを組み合わせ た場合、「日用品」という点で製品が共通していること、同じ国内成熟型産業であり国 内市場の縮小に対する危機意識は共有できること、また、小売りに対するチャネル等も 重なる部分があるため、全くの異業種と統合を図るよりは、はるかにシナジーが見込め ると考える。実際にユニリーバはトイレタリーと食品で 50%ずつの事業構成となって おり、トイレタリーとの組み合わせについては有り得るものと考える。このことについ ては第五章で具体的な再編を描くにあたってもう一度述べることとする。 このように、「多角化型統合」といっても、組み合わせによって完全に異なるものの 統合ではなく、共通項から一定のシナジーを見込むことが可能であると考える。そのよ うな観点からも多角化型統合を行うことは一定のメリットがあると言える。 63 4.検証―株主リターン比較― ・検証結果及び考察 最後に、クロスボーダーM&A と国内 M&A における水平統合と多角化統合の株主リ ターンの比較を行い、買い手企業の株主がどう評価をしているのかを確認する。用いる データは第三章で用いたグローバルベースでの M&A 活動の傾向を分析したものであ るため(詳しくは本章第一節の2.検証を参照)、ここでは結果を要約したもののみ載 せることとする54。 図表 56 グローバルベースの買い手企業の株主リターンの統計結果 クロスボーダーM%A 国内M&A 買収企業3日間 株主リターン 度数 有効 欠損値 平均値 中央値 度数 買収企業3日間 株主リターン 10 11 水平 .029162 .007384 有効 欠損値 度数 平均値 中央値 14 21 度数 平均値 .006771 平均値 中央値 -.007894 中央値 度数 有効 欠損値 有効 欠損値 2 度数 平均値 20 -.032874 平均値 中央値 -.032874 多角化 中央値 平均値 中央値 水平 .003970 -.003822 有効 欠損値 28 11 .039711 .016854 有効 欠損値 度数 32 8 7 0 .090941 -.023629 有効 欠損値 7 36 .147895 .021356 多角化 上記図表 56 を見ると、クロスボーダーM&A においては多角化の傾向が強くなる ほど、株主リターンはマイナスの傾向が強くなるのに対し、国内 M&A は多角化型をポ ジティブに評価している傾向にある。したがって、国内 M&A において多角化型統合を 行っても問題は尐ないと言うことができる。 54 なお、M&A の形態として水平型または多角化型については、買収企業と被買収企業 の 4 ケタからなる SIC コードを用いて検証を行った。4 ケタすべて一致している場合を 水平統合として、位置しているケタ数で水平型か多角化型かの判別をした。詳しい統計 結果についは、巻末付属資料 3 を参照。 64 5.考察及び結論-多角型統合を行う意義- (要約) 国内再編によって規模を追求する上では多角化型の再編を行うことが重要 コングロマリット型の再編を行うことにより、 ・独占禁止法の抵触の可能性が低い ・被買収企業のリストラ等の統合コストが低い することができ、迅速に規模の拡大を図り、グローバル競争に注力することが可能 以上より、独禁法に抵触する可能性が尐なく、統合コストが低いという観点から、な ぜ水平型統合ではなく多角化型統合を行うのかを述べた。確かに、水平型統合の方が規 模の経済性がききやすく、シナジーとしては多角化型統合よりも大きいようにも思える。 しかし食品の場合、前述したように多角化型統合を行っても組み合わせにより重なり 合いが多く、一定のシナジーを見込むことができると考える。したがって、多角化型統 合を実行することにより、統合コストの増加や独禁法抵触の可能性といった負担をなる べく軽減し、スピーディーにグローバル競争に注力していくことが重要であると考える。 65 第五章 第一節 結論 本論文の結論 以上ここまでの章で、食品産業の現状と業界再編の必要性を述べ、なぜ日本発グロー バル食品を誕生させる必要性があるのか、具体的な内容としてなぜ国内メジャー企業同 士の多角化型統合をまず初めに行うのかについて検証を行い、明らかにしてきた。 繰り返すことになるが本論文の結論は、「日本発グローバル食品メジャー企業」の誕 生であり、具体的には「国内メジャー企業同士の多角化型統合」とその上での「大型ク ロスボーダーM&A」の実行である。 これまで自国を基盤に安定的に成長を遂げてきた食品産業も足元を見ると国内市場 は人口が減尐し、縮小傾向にある。一方で新興国市場を初めとする巨大グローバル市場 が台頭しており、縮小する国内市場の収益性を成長する海外で取り込もうと近年食品産 業も活発に海外展開を行っている。 しかしながら、こうしたグローバル市場ではすでにグローバル競争が激化している。 グローバル競争の構造として、売上高 8 兆円の食品世界 No.1 企業であるネスレを初め とするグローバル食品メジャー企業は業界再編を加速させ、ボーダレス化する巨大市場 で規模の拡大を図りながら収益性を高め、それを原資として大型 M&A を実行、さらな る規模拡大を図っている。したがって、日本企業が海外展開をしていくにはこうしたグ ローバル競争の構造に対して対抗するためのアクションとして大型再編が必要となる。 そこで、日本企業が求められるアクションとして、個々の企業でクロスボーダーM&A をしていけば良いとする選択肢もあるが、第四章で確認したように、クロスボーダー M&A のターゲット先の相対的規模は 10%となっている。したがって、こうした動きに 対して日本企業が 1 社のみでクロスボーダー大型 M&A を実行し続けていくには財務的 に限界がある。日本企業として勝ち残るために、まず国内のメジャー企業同士で統合を する必要があると考える。 その上でなぜ多角化型 M&A なのかというと、水平統合を行うことにより生じる「統 合コストの軽減」と「独禁法抵触の可能性を軽減」することにより、スピーディーにグ ローバル競争への対応が可能となると考えるからである。 以上が第一章から第四章までの結論である。 この結論に関して、キリン HD の加藤会長にご意見を賜る貴重な機会を得たが、「ま さにその通りである。我が国の食品産業が、海外展開が弱い理由として「食の嗜好性」 などが言われているが、そう言っているともはや成長を遂げていくことは不可能であ る。」と仰っていただくことができた。 66 第二節 具体的な再編に関する示唆 1.考慮すべき事項 では、具体的にどのような再編を描くのか。再編を考える上では物流や卸、メインバ ンク等の「商圏」を考慮する必要がある。下記図表 57 は第一分位の商圏をまとめたも のである。 図表 57 第一分位の商圏55 企業名 キリンホールディングス アサヒグループホールディングス 味の素 明治ホールディングス 日本ハム 山崎製パン マルハニチロホールディングス 森永乳業 日本水産 キユーピー 伊藤ハム 日清製粉グループ本社 ニチレイ 雪印メグミルク サッポロホールディングス コカ・コーラウエスト 日清食品ホールディングス 伊藤園 東洋水産 日清オイリオグループ ヤクルト本社 キッコーマン 江崎グリコ 日本製粉 プリマハム ハウス食品 不二製油 昭和産業 丸大食品 コカ・コーラ セントラル ジャパン 宝ホールディングス J-オイルミルズ カゴメ 米久 55 業種'金融庁分類( 飲料製造業 飲料製造業 その他食料品製造業 その他食料品製造業 肉製品乳製品製造業 パン菓子製造業 漁業 肉製品乳製品製造業 漁業 その他食料品製造業 肉製品乳製品製造業 製粉業 その他食料品製造業 肉製品乳製品製造業 飲料製造業 飲料製造業 その他食料品製造業 飲料製造業 その他食料品製造業 食用油製造業 飲料製造業 その他食料品製造業 パン菓子製造業 製粉業 肉製品乳製品製造業 その他食料品製造業 食用油製造業 製粉業 その他食料品製造業 飲料製造業 飲料製造業 食用油製造業 その他食料品製造業 肉製品乳製品製造業 売上高2010年'百万円( 商社が大株主 2,177,802 1,489,460 1,170,876 1,106,655 953,616 928,242 三菱商事 828,715 585,116 481,574 471,010 452,453 443,728 三菱商事 438,111 393,373 389,244 375,764 371,178 332,984 315,337 301,299 三菱商事 290,678 285,690 284,536 261,586 三井物産 252,607 伊藤忠商事 220,622 213,229 伊藤忠商事 209,381 三井物産 196,667 194,834 三菱商事 190,525 176,738 三井物産 171,937 168,717 三菱商事 各種データを基に、筆者作成。 67 メインバンク 三菱東京UFJ銀行 三井住友銀行 三菱東京UFJ銀行 みずほ銀行 百十四 みずほコーポレート みずほコーポレート みずほ銀行 みずほコーポレート 横浜銀行 みずほコーポレート みずほコーポレート みずほコーポレート 農林中央金庫 みずほコーポレート 西日本シティ銀行 みずほコーポレート りそな銀行 三井住友銀行 三菱東京UFJ銀行 みずほ銀行 みずほ銀行 三菱東京UFJ銀行 三井住友銀行 みずほコーポレート 三井住友銀行 三井住友銀行 みずほコーポレート 三井住友銀行 三菱東京UFJ銀行 みずほコーポレート みずほコーポレート 三菱東京UFJ銀行 スルガ銀行 2.目指すべき方向性 前述したように、2010 年時点で売上高が 1 兆円を超える上場企業は 4 社であり、1 番売上高の高いところでキリンの 2 兆円規模である。したがって、まずは 3 兆円規模の 企業を誕生させることが現実的な目標となろう。事実グローバル食品メジャーは 3 兆円 以上の規模で展開している。下記前掲図表 25 のグローバルメジャー企業の売上高推移 のグラフでクラフトを見ると、おおよそ 2000 年の時点で 3 兆円、その後 10 年間の間 に 2 兆円でキャドバリーを買収し、5 兆円規模の会社に成長した。第四章で検証したよ うに、グローバル企業の大型クロスボーダーM&A の場合、買い手の相対的規模は 20% 以上である(前掲注 48)。したがって、3 兆円規模の企業が誕生すれば、6,000 億から 1 兆円近い企業の買収が可能となる。日本企業もまず統合後 3 兆円の売上高規模からス タートして買収余力を高め、クロスボーダーM&A を行っていくことが望まれると考え る。 前掲図表 25 グローバルメジャー企業の売上高の 3 時点における推移 10,000,000 9,000,000 8,000,000 7,000,000 目標になる方向性 ネスレ 6,000,000 ユニリーバ 5,000,000 インべブ 4,000,000 コカコーラ 3,000,000 ペプシコ 2,000,000 クラフト 1,000,000 0 売上高2000 売上高2005 68 売上高2010 3.具体的な再編に関する示唆 再編を考える上では、日本企業が持つ技術力を核として、「食と健康」という軸で展 開をしていくことが望まれると考える。 (1)再編案1-売上高規模の大きい飲料業界(キリン)を中枢に国内大型再編を行う これまで見てきたように、キリンは売上高 2 兆円規模であり56、大型クロスボーダー M&A を積極的に実行している。また、破談になってしまったが、国内においてはサン トリーとの統合の動きもあった。したがって、グローバル展開と再編に積極的なキリン を中枢に置くことは十分に考え得る。 図表 58 具体的な再編案57 KV2015 より 再編案①食品異業種(ネスレ型) キリン+味の素 (3 兆 3 千億規模) 再編案②異業種同士(ユニリーバ型) キリン+花王 (3 兆 3 千億規模) 味の素は「健康分野」やカルピス買収による「飲料」も展開しており、キリンと事業 領域が重なる。またメインバンクが同じである。一方、花王に至っても収益の基盤であ る国内市場が縮小することに対する危機感があると同時に、特定保健用食品(トクホ) の「健康食品」を積極的に展開しており、キリンと事業領域や方向性が重なっている。 キリンの営業キャッシュ・フローは 218,025 百万円、味の素は 105.924 百万円、花 王は 172,284 百万円(いずれも 2010 年時点)であり、仮にキリンと味の素が統合した 56 57 ただし売上高の中には酒税が含まれている。 キリン中期計画 KV(キリン・ビジョン)2015 より抜粋。 69 場合は単純合算で約 3,000 億円、キリンと花王が合併した場合は 4,000 億円近いキャッ シュが生み出されることとなり、これらを大型クロスボーダーM&A に充てることが可 能となる。 (2)再編案2―味の素を中心に大型再編を行う 味の素は売上高 1 兆円規模であるが、国内調味料メーカーとして積極的にグローバル 展開に取り組んでおり、海外売上高比率も国内食品メーカーとしては高く、約 32%と なっている(2010 年時点)。したがって、味の素を中心において再編を行い、グローバ ル展開をしていくということも考えられる。 図表 59 具体的な再編案 「食と健康」を基軸に58 味の素中期経営計画より 再編案①食品異業種 味の素+明治 HD (2 兆 2 千億規模) 再編案②異業種同士 味の素+花王 (2 兆 3 千億規模) 明治 HD も味の素同様に「健康分野」に注力をしている。また明治製菓ではアミノ酸 を扱った商品も展開しており、アミノ酸をコアと置く味の素と事業領域を共有すること ができる。一方、花王に至っても収益の基盤である国内市場が縮小することに対する危 機感があると同時に、特定保健用食品(トクホ)などの「健康食品」を積極的に展開し 58 味の素中期経営計画より抜粋。 70 ており、味の素と事業領域や方向性が重なっていると言える。 味の素の営業キャッシュ・フローは 105,924 百万円、明治 HD は 47,707 百万円、花 王は 172,284 百万円(いずれも 2010 年時点)であり、仮に味の素と明治 HD が統合し た場合は単純合算で約 1,500 億円、味の素と花王が合併した場合は 3,000 億円近いキャ ッシュが生み出されることとなり、これらを大型クロスボーダーM&A に充てていくこ とが可能となるだろう。 第三節 日本発グローバル食品メジャー企業誕生がもたらす効果 最後に、「日本発グローバル食品メジャー企業」が誕生することにより、どのような 効果がもたらされるのかを言及することとする。 ①グローバル競争にスピーディーに対応 前述してきたように、国内メジャー同士の再編が行われば大型クロスボーダーを実行 できる買収余力が高まり、再編が進むグローバル競争の中でスピーディーに対応してい くことが可能となる。 ②再編が進まない第二分位以降での国内再編の起爆剤となる 第三章の第三節における検証のところで、第一分位と第二分位では成長の仕方が異な り、第二分位以下では M&A に対してネガティブであるということが明らかになった。 もし、国内メジャー企業同士の起爆剤となるような大型再編が行われれば、第二分位以 降も危機感を持ち、第二分位以降の再編が進む可能性が高く、再編が進んでいくことに より国内でのプレーヤーが整理され、供給過剰が解消、収益性が向上していくものと考 える。 ③川上(農業)への外部経済性 近年海外で日本食がブームとなっている。また海外では日本食は高級料理として認知 されている。したがって、川中がメジャー企業とあることにより、日本食ブランドの認 知がさらに広まり、TPP に合わせ、逆に日本の農作物を広く海外へ供給していくこと が可能となると考える。 ④「国家の食」と「食の安全性」の確保 このようにメジャー企業が誕生し、海外展開が積極的に行われれば、世界的な調達力 が強くなる。2011 年 3 月 11 日に起きた東北大震災で、水を初めとする被災地への物資 の供給や首都圏での買占現象で見られたように、国家の有事において食料を確保するこ とは重要である。再編によりグローバル規模での調達力が強化されれば、「国家の食」 と「食の安全性」を確保することができると考える。 71 第四節 おわりに 以上、本論文では「日本発グローバル食品メジャー企業」の誕生の一考察として、具 体的に「国内メジャー企業同士の多角化型統合」と、その上での「大型クロスボーダー M&A」の実行について述べてきた。 国内市場が縮小し、一方でグローバル競争が激化している中で我が国の食品産業が生 き残るためには、やはり「業界再編」というアクションが重要になると考える。確かに、 再編が進まない要因や、実行上の制約はあろう。しかし、このまま個々の企業がそれぞ れ国内を中心に別々に戦っているようでは再編が加速するグローバル競争において日 本は勝ち抜くことはできない。一致団結してこうした流れに立ち向かっていく必要があ る。したがって、個々の企業間を超えた大きなアクションが必要であり、その 1 つが「日 本発グローバル食品メジャー企業」の誕生であると考える。 以上をもって、「日本発グローバル食品メジャー企業」誕生の一考察とする。 72 巻末付属資料1 分析結果相関係数 相関係数 分位1 分位1 分位2以下 飲料製造業 その他食料 品製造業 肉製品乳製 品製造業 製粉業 製糖業 食用油製造 業 漁業農業 パン菓子製 造業 国内 MA20102000 国内MA件数 20102000 国内MA金額 20102000公 国内大型MA の実施の有 海外 MA20102000 海外MA件数 20102000 海外MA金額 20102000公 海外大型MA 実施の有無 売上高成長 率20102000 利益率差異 20102000 Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N 1 136 -1.000** 分位2以下 飲料製造業 その他食料品製造業 肉製品乳製品製造業 -1.000** .230** -.179* .180* 製粉業 .096 製糖業 -.144 食用油製造業 .124 国内MA金額 国内大型MA 海外MA金額 海外大型MA 売上高 パン菓子製 国内 国内MA件数 20102000公 の実施の有 海外 海外MA件数 20102000公 実施の有無 売上高成長 利益率差異 EBITDA差異 漁業農業 造業 MA20102000 20102000 表ベース 無10 MA20102000 20102000 表ベース 10 率20102000 20102000 20102000 -.017 -.116 .408** .463** .282** .327** .376** .418** .294** .212* .045 .013 .062 .000 .007 .037 .036 .266 .094 .150 .844 .180 .000 .000 .001 .000 .000 .000 .001 .013 .605 .879 .470 136 1 136 -.230** 136 .179* 136 -.180* 136 -.096 136 .144 136 -.124 136 .017 136 .116 136 -.408** 136 -.463** 136 -.282** 136 -.327** 136 -.376** 136 -.418** 136 -.294** 136 -.212* 136 -.045 136 -.013 136 -.062 .007 .037 .036 .266 .094 .150 .844 .180 .000 .000 .001 .000 .000 .000 .001 .013 .605 .879 .470 .000 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N .230** -.230** 1 -.318** -.110 -.082 -.088 -.076 -.094 -.133 .232** .309** .281** .068 .140 .289** .361** .347** .141 .195* -.058 .007 .007 .000 .204 .342 .308 .381 .278 .122 .006 .000 .001 .433 .105 .001 .000 .000 .102 .023 .500 136 -.179* 136 .179* 136 -.318** 136 1 136 -.281** 136 -.210* 136 -.225** 136 -.194* 136 -.240** 136 -.341** 136 -.169* 136 -.165 136 -.069 136 .004 136 -.047 136 -.084 136 -.092 136 -.110 136 -.035 136 -.052 136 -.041 .037 .037 .000 .001 .014 .008 .024 .005 .000 .049 .055 .422 .967 .588 .328 .289 .202 .686 .547 .633 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N .180* -.180* -.110 -.281** 1 -.072 -.078 -.067 -.083 -.118 .070 -.007 -.053 -.092 -.121 -.097 -.053 -.038 -.026 -.070 .018 .036 .036 .204 .001 .402 .368 .439 .338 .173 .416 .936 .536 .285 .159 .260 .537 .660 .767 .416 .837 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N .096 -.096 -.082 -.210* -.072 1 -.058 -.050 -.062 -.088 -.020 .025 -.036 .053 .007 -.032 -.039 -.028 .010 -.021 .067 .266 .266 .342 .014 .402 .501 .563 .473 .308 .821 .769 .678 .540 .934 .708 .652 .742 .908 .812 .436 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N -.144 .144 -.088 -.225** -.078 -.058 1 -.054 -.067 -.094 .077 -.019 -.026 .040 -.098 -.078 -.043 -.031 .060 .033 .077 .094 .094 .308 .008 .368 .501 .535 .441 .274 .371 .825 .767 .640 .258 .365 .620 .724 .485 .704 .374 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N .124 -.124 -.076 -.194* -.067 -.050 -.054 1 -.057 -.081 .084 -.016 -.034 .068 .127 .020 -.024 -.026 .017 .033 -.022 .150 .150 .381 .024 .439 .563 .535 .508 .347 .329 .849 .694 .434 .139 .819 .779 .762 .845 .699 .801 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N -.017 .017 -.094 -.240** -.083 -.062 -.067 -.057 1 -.101 -.014 .114 -.015 .030 .158 .132 -.025 -.033 .013 .051 -.022 .844 .844 .278 .005 .338 .473 .441 .508 .244 .872 .186 .859 .733 .066 .124 .774 .707 .877 .552 .799 136 -.116 136 .116 136 -.133 136 -.341** 136 -.118 136 -.088 136 -.094 136 -.081 136 -.101 136 1 136 -.134 136 -.116 136 -.037 136 -.112 136 -.082 136 -.091 136 -.064 136 -.046 136 -.101 136 -.108 136 .026 .180 .180 .122 .000 .173 .308 .274 .347 .244 .121 .180 .666 .194 .343 .291 .456 .593 .242 .209 .761 136 .408** 136 -.408** 136 .232** 136 -.169* 136 .070 136 -.020 136 .077 136 .084 136 -.014 136 -.134 136 1 136 .751** 136 .186* 136 .261** 136 .197* 136 .242** 136 .179* 136 .130 136 .136 136 .186* 136 .132 .000 .000 .006 .049 .416 .821 .371 .329 .872 .121 .000 .030 .002 .022 .004 .037 .133 .115 .030 .126 136 .463** 136 -.463** 136 .309** 136 -.165 136 -.007 136 .025 136 -.019 136 -.016 136 .114 136 -.116 136 .751** 136 1 136 .356** 136 .310** 136 .421** 136 .493** 136 .387** 136 .308** 136 .258** 136 .276** 136 .161 .000 .000 .000 .055 .936 .769 .825 .849 .186 .180 .000 .000 .000 .000 .000 .000 .000 .002 .001 .061 136 .282** 136 -.282** 136 .281** 136 -.069 136 -.053 136 -.036 136 -.026 136 -.034 136 -.015 136 -.037 136 .186* 136 .356** 136 1 136 .450** 136 .321** 136 .701** 136 .834** 136 .760** 136 .059 136 .044 136 .063 .001 .001 .001 .422 .536 .678 .767 .694 .859 .666 .030 .000 .000 .000 .000 .000 .000 .492 .614 .464 136 .327** 136 -.327** 136 .068 136 .004 136 -.092 136 .053 136 .040 136 .068 136 .030 136 -.112 136 .261** 136 .310** 136 .450** 136 1 136 .202* 136 .333** 136 .301** 136 .188* 136 .061 136 .093 136 .053 .000 .000 .433 .967 .285 .540 .640 .434 .733 .194 .002 .000 .000 .018 .000 .000 .029 .482 .280 .541 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N .376** -.376** .140 -.047 -.121 .007 -.098 .127 .158 -.082 .197* .421** .321** .202* 1 .801** .439** .313** .015 -.010 .023 .000 .000 .105 .588 .159 .934 .258 .139 .066 .343 .022 .000 .000 .018 .000 .000 .000 .864 .907 .786 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N .418** -.418** .289** -.084 -.097 -.032 -.078 .020 .132 -.091 .242** .493** .701** .333** .801** 1 .769** .630** .017 -.012 .078 .000 .000 .001 .328 .260 .708 .365 .819 .124 .291 .004 .000 .000 .000 .000 .000 .000 .841 .889 .365 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 136 Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N Pearson の 相関係数 有意確率 (両側) N Pearson の 相関係数 有意確率 .294** -.294** .361** -.092 -.053 -.039 -.043 -.024 -.025 -.064 .179* .387** .834** .301** .439** .769** 1 .952** .017 -.005 .069 .001 .001 .000 .289 .537 .652 .620 .779 .774 .456 .037 .000 .000 .000 .000 .000 .000 .848 .958 .423 136 .212* 136 -.212* 136 .347** 136 -.110 136 -.038 136 -.028 136 -.031 136 -.026 136 -.033 136 -.046 136 .130 136 .308** 136 .760** 136 .188* 136 .313** 136 .630** 136 .952** 136 1 136 .011 136 -.004 136 .061 .013 .013 .000 .202 .660 .742 .724 .762 .707 .593 .133 .000 .000 .029 .000 .000 .000 .897 .962 .478 136 .045 136 -.045 136 .141 136 -.035 136 -.026 136 .010 136 .060 136 .017 136 .013 136 -.101 136 .136 136 .258** 136 .059 136 .061 136 .015 136 .017 136 .017 136 .011 136 1 136 .939** 136 .080 .605 .605 .102 .686 .767 .908 .485 .845 .877 .242 .115 .002 .492 .482 .864 .841 .848 .897 .000 .354 136 .013 136 -.013 136 .195* 136 -.052 136 -.070 136 -.021 136 .033 136 .033 136 .051 136 -.108 136 .186* 136 .276** 136 .044 136 .093 136 -.010 136 -.012 136 -.005 136 -.004 136 .939** 136 1 136 .127 .879 .879 .023 .547 .416 .812 .704 .699 .552 .209 .030 .001 .614 .280 .907 .889 .958 .962 .000 .140 時価総額 巻末付属資料2 記述統計(第四章検証) TargetNationOnly17countriesRow# > 0 & ofSharesAcq >= 5 & TargetPrimarySICCode>2000 & TargetPrimarySICCode < 2100). VARIABLE LABELS filter_$ 'TargetNationOnly17countriesRow# > 0 & ofSharesAcq >= 5 & TargetPrimarySICCode>2000 & TargetPrimarySICCode < 2100 Cross-border Deal N % Owned Prior to Transaction % ofSharesAcq. Missing Mean 316 0 Domestic Deal Median Sum 7 0 N Missing Mean 744 0 Median Sum 6 0 100 316 0 73 100 744 0 78 Value ofTransaction($mil) 316 0 532 73 168,055 744 0 400 51 297,817 Target NetSales LTM($mil) 132 184 746 205 98,481 359 385 1,006 209 361,267 98 218 994 246 97,367 303 441 994 239 301,184 Acquiror Net Sales ($mil) 147 169 6,707 2,598 985,887 366 378 6,276 1,486 2,297,146 Acquiror Total Assets ($mil) 146 170 7,936 2,952 1,158,688 365 379 7,836 1,456 2,860,189 47 269 167.5% 11.0% 156 588 36.1% 11.5% Acquiror OECD Dummy = 1; Non-OECD = 0 316 0 79.7% 100.0% 252 744 0 83.7% 100.0% 623 1 = Horizontal; 0 = Diversifying Transaction 306 10 51.6% 100.0% 158 713 31 48.9% 0.0% 349 ACQ_PUBLIC_DUM 316 0 65.2% 100.0% 206 744 0 57.4% 100.0% 427 TAR_PUBLIC_DUM 316 0 28.8% 0.0% 91 744 0 32.7% 0.0% 243 TAR_SUB_DUMMY 316 0 42.7% 0.0% 135 744 0 39.7% 0.0% 295 68 248 48.6% 25.0% 186 558 21.5% 13.8% 40 106 210 -0.1% 0.0% 336 408 42.3% 0.8% 142 Target3daysreturn 55 261 9.1% 4.3% 189 555 10.2% 4.0% 19 TargetROA 97 219 5.8% 5.3% 293 451 5.0% 2.9% 15 AcquirerROA 146 170 6.5% 6.1% 365 379 1.5% 4.1% 5 AcquirerJapan 316 0 7.3% 0.0% 23 744 0 15.5% 0.0% 115 dmy2000 316 0 11.4% 0.0% 36 744 0 8.2% 0.0% 61 dmy2001 316 0 12.3% 0.0% 39 744 0 9.9% 0.0% 74 dmy2002 316 0 8.5% 0.0% 27 744 0 9.1% 0.0% 68 dmy2003 316 0 7.6% 0.0% 24 744 0 10.5% 0.0% 78 dmy2004 316 0 11.7% 0.0% 37 744 0 11.3% 0.0% 84 dmy2005 316 0 8.2% 0.0% 26 744 0 10.8% 0.0% 80 dmy2006 316 0 13.0% 0.0% 41 744 0 11.4% 0.0% 85 dmy2007 316 0 9.5% 0.0% 30 744 0 11.4% 0.0% 85 dmy2008 316 0 7.9% 0.0% 25 744 0 9.9% 0.0% 74 dmy2009 316 0 9.8% 0.0% 31 744 0 7.4% 0.0% 55 TargetTotalAssets($mil) RelativeAssetSize Premium (4 Weeks Prior to Announcement) Acquirer3daysreturn OECD Target N % Owned Prior to Transaction Missing Mean 215 0 215 215 Target NetSales LTM($mil) Median Sum N 7 0 0 80 100 0 734 123 157,826 92 123 908 247 TargetTotalAssets($mil) 61 154 1,379 Acquiror Net Sales ($mil) 98 117 Acquiror Total Assets ($mil) 97 RelativeAssetSize 31 Acquiror OECD Dummy = 1; Non-OECD = 0 Missing Mean 623 0 623 623 83,560 232 6,561 118 184 215 1 = Horizontal; 0 = Diversifying Transaction Median Sum 6 0 0 81 100 0 460 61 286,446 313 310 1,089 235 340,799 84,111 257 366 1,085 254 278,752 2,542 642,977 311 312 7,279 2,082 2,263,644 7,497 2,655 727,175 310 313 9,080 1,707 2,814,939 22.1% 17.2% 138 485 35.3% 9.9% 0 90.7% 100.0% 195 623 0 100.0% 100.0% 623 211 4 51.2% 100.0% 108 618 5 51.0% 100.0% 315 ACQ_PUBLIC_DUM 215 0 61.4% 100.0% 132 623 0 59.9% 100.0% 373 TAR_PUBLIC_DUM 215 0 25.6% 0.0% 55 623 0 31.3% 0.0% 195 TAR_SUB_DUMMY 215 0 47.9% 0.0% 103 623 0 40.9% 0.0% 255 Premium (4 Weeks Prior to Announcement) 47 168 62.8% 27.8% 30 152 471 24.0% 16.9% 36 Acquirer3daysreturn 63 152 0.6% 0.0% 0 299 324 45.6% 0.8% 136 Target3daysreturn 31 184 11.9% 7.1% 4 154 469 11.9% 5.0% 18 TargetROA 60 155 4.1% 4.2% 2 247 376 5.0% 2.8% 12 AcquirerROA 97 118 7.0% 6.7% 7 310 313 0.8% 3.9% 2 AcquirerJapan 215 0 7.0% 0.0% 15 623 0 18.5% 0.0% 115 dmy2000 215 0 14.0% 0.0% 30 623 0 8.5% 0.0% 53 dmy2001 215 0 14.9% 0.0% 32 623 0 10.0% 0.0% 62 dmy2002 215 0 10.2% 0.0% 22 623 0 9.0% 0.0% 56 dmy2003 215 0 7.4% 0.0% 16 623 0 10.1% 0.0% 63 dmy2004 215 0 9.3% 0.0% 20 623 0 11.4% 0.0% 71 dmy2005 215 0 7.9% 0.0% 17 623 0 11.4% 0.0% 71 dmy2006 215 0 12.1% 0.0% 26 623 0 11.7% 0.0% 73 dmy2007 215 0 10.7% 0.0% 23 623 0 12.0% 0.0% 75 dmy2008 215 0 5.6% 0.0% 12 623 0 8.8% 0.0% 55 dmy2009 215 0 7.9% 0.0% 17 623 0 7.1% 0.0% 44 % ofSharesAcq. Value ofTransaction($mil) 74 Non-OECD Target N % Owned Prior to Transaction % ofSharesAcq. Missing Mean 101 0 Median Sum 8 0 N Missing Mean Median Sum 121 0 8 0 60 101 0 57 50 121 0 62 Value ofTransaction($mil) 101 0 101 34 10,229 121 0 94 30 11,371 Target NetSales LTM($mil) 40 61 373 171 14,921 46 75 445 156 20,468 TargetTotalAssets($mil) 37 64 358 292 13,256 46 75 488 216 22,432 Acquiror Net Sales ($mil) 49 52 6,998 2,598 342,910 55 66 609 266 33,501 Acquiror Total Assets ($mil) 49 52 8,806 3,590 431,512 55 66 823 445 45,250 RelativeAssetSize 16 85 449.3% 7.5% 18 103 42.8% 17.8% Acquiror OECD Dummy = 1; Non-OECD = 0 101 0 56.4% 100.0% 57 121 0 0.0% 0.0% 0 1 = Horizontal; 0 = Diversifying Transaction 95 6 52.6% 100.0% 50 95 26 35.8% 0.0% 34 ACQ_PUBLIC_DUM 101 0 73.3% 100.0% 74 121 0 44.6% 0.0% 54 TAR_PUBLIC_DUM 101 0 35.6% 0.0% 36 121 0 39.7% 0.0% 48 TAR_SUB_DUMMY 101 0 31.7% 0.0% 32 121 0 33.1% 0.0% 40 Premium (4 Weeks Prior to Announcement) 21 80 16.7% 19.2% 3 34 87 10.5% 1.8% 4 Acquirer3daysreturn 43 58 -1.2% 0.1% -1 37 84 15.8% 0.6% 6 Target3daysreturn 24 77 5.4% 2.2% 1 35 86 2.9% 0.3% 1 TargetROA 37 64 8.6% 5.6% 3 46 75 5.2% 4.7% 2 AcquirerROA 49 52 5.7% 5.0% 3 55 66 5.3% 5.5% 3 AcquirerJapan 101 0 7.9% 0.0% 8 121 0 0.0% 0.0% 0 dmy2000 101 0 5.9% 0.0% 6 121 0 6.6% 0.0% 8 dmy2001 101 0 6.9% 0.0% 7 121 0 9.9% 0.0% 12 dmy2002 101 0 5.0% 0.0% 5 121 0 9.9% 0.0% 12 dmy2003 101 0 7.9% 0.0% 8 121 0 12.4% 0.0% 15 dmy2004 101 0 16.8% 0.0% 17 121 0 10.7% 0.0% 13 dmy2005 101 0 8.9% 0.0% 9 121 0 7.4% 0.0% 9 dmy2006 101 0 14.9% 0.0% 15 121 0 9.9% 0.0% 12 dmy2007 101 0 6.9% 0.0% 7 121 0 8.3% 0.0% 10 dmy2008 101 0 12.9% 0.0% 13 121 0 15.7% 0.0% 19 dmy2009 101 0 13.9% 0.0% 14 121 0 9.1% 0.0% 11 Japan Acquirer N % Owned Prior to Transaction % ofSharesAcq. Missing Mean 23 0 Median 11 Sum N 0 Missing Mean 115 0 Median Sum 13 0 43 23 0 69 96 115 0 53 Value ofTransaction($mil) 23 0 356 190 8,193 115 0 113 43 12,946 Target NetSales LTM($mil) 7 16 799 328 5,595 90 25 849 364 76,405 TargetTotalAssets($mil) 5 18 947 269 4,736 84 31 590 340 49,583 Acquiror Net Sales ($mil) 14 9 10,614 11,089 148,590 81 34 16,587 3,860 1,343,542 Acquiror Total Assets ($mil) 13 10 12,627 11,199 164,153 81 34 23,281 4,297 1,885,768 4 19 10.1% 10.8% 62 53 12.6% 5.7% Acquiror OECD Dummy = 1; Non-OECD = 0 23 0 100.0% 100.0% 23 115 0 100.0% 100.0% 115 1 = Horizontal; 0 = Diversifying Transaction 23 0 65.2% 100.0% 15 112 3 54.5% 100.0% 61 ACQ_PUBLIC_DUM 23 0 78.3% 100.0% 18 115 0 79.1% 100.0% 91 TAR_PUBLIC_DUM 23 0 21.7% 0.0% 5 115 0 67.8% 100.0% 78 TAR_SUB_DUMMY 23 0 56.5% 100.0% 13 115 0 20.9% 0.0% 24 5 18 35.7% 46.3% 2 64 51 10.0% 8.3% 6 10 13 0.6% 0.6% 0 68 47 1.7% 0.6% 1 Target3daysreturn 4 19 14.3% 10.4% 1 63 52 4.8% 2.9% 3 TargetROA 5 18 6.7% 8.2% 0 84 31 0.6% 1.7% 0 AcquirerROA 13 10 3.3% 3.1% 0 81 34 2.8% 3.1% 2 AcquirerJapan 23 0 100.0% 100.0% 23 115 0 100.0% 100.0% 115 dmy2000 23 0 0.0% 0.0% 0 115 0 5.2% 0.0% 6 dmy2001 23 0 4.3% 0.0% 1 115 0 9.6% 0.0% 11 dmy2002 23 0 0.0% 0.0% 0 115 0 4.3% 0.0% 5 dmy2003 23 0 8.7% 0.0% 2 115 0 6.1% 0.0% 7 dmy2004 23 0 17.4% 0.0% 4 115 0 7.8% 0.0% 9 dmy2005 23 0 13.0% 0.0% 3 115 0 9.6% 0.0% 11 dmy2006 23 0 8.7% 0.0% 2 115 0 11.3% 0.0% 13 dmy2007 23 0 4.3% 0.0% 1 115 0 20.0% 0.0% 23 dmy2008 23 0 26.1% 0.0% 6 115 0 14.8% 0.0% 17 dmy2009 23 0 17.4% 0.0% 4 115 0 11.3% 0.0% 13 RelativeAssetSize Premium (4 Weeks Prior to Announcement) Acquirer3daysreturn 75 巻末付属資料 3 統計結果 グローバルベースの M&A 活動(第四章検証) (1)グローバルベースのすべてのサンプル(日本を含む) In-In Dummy In-In=1 = 0 Statisticsa 1= Horizontal; Premium (4 Target Acquiror Acquiror Acquiror 0= Weeks Prior Total Net Total OECD Dummy Diversifyin to Assets Sales Assets RelativeAss = 1; Nong ACQ_PUBLIC_ TAR_PUBLIC_ TAR_SUB_DUM Announcemen Acquirer3da Target3days AcquirerJap ($mil) ($mil) ($mil) etSize OECD = 0 Transaction DUM DUM MY t) ysreturn return TargetROA AcquirerROA an dmy2000 dmy2001 dmy2002 dmy2003 dmy2004 dmy2005 dmy2006 dmy2007 dmy2008 dmy2009 98 147 146 47 316 306 316 316 316 68 106 55 97 146 316 316 316 316 316 316 316 316 316 316 316 % Owned Prior to Transaction 316 % of Value of Shares Transaction Acq. ($mil) 316 316 Target Net Sales LTM ($mil) 132 Mean Median 0 7.36 .00 0 0 72.51 531.819294 100.00 72.580000 184 746.06 204.99 218 993.54 246.18 169 6706.71 2598.31 170 7936.22 2952.46 269 1.6748 .1103 0 .80 1.00 10 .52 1.00 0 .65 1.00 0 .29 .00 0 .43 .00 248 .485774 .249720 210 -.0010 .0000 261 .0907 .0435 219 .0578 .0529 170 .0653 .0614 0 .0728 .0000 0 .1139 .0000 0 .1234 .0000 0 .0854 .0000 0 .0759 .0000 0 .1171 .0000 0 .0823 .0000 0 .1297 .0000 0 .0949 .0000 0 .0791 .0000 0 .0981 .0000 Sum 2326 22912 168054.8970 98481 97367 985887 1158688 78.72 252 158 206 91 135 33.0326 -.11 4.99 5.61 9.54 23.00 36.00 39.00 27.00 24.00 37.00 26.00 41.00 30.00 25.00 31.00 744 0 359 385 303 441 366 378 365 379 156 588 744 0 713 31 744 0 744 0 Statisticsa 744 186 0 558 336 408 189 555 293 451 365 379 744 0 744 0 744 0 744 0 744 0 744 0 744 0 744 0 744 0 744 0 744 0 N Valid Missing In-In Dummy In-In=1 = 1 N Valid Missing 744 0 744 0 Mean Median 6.26 .00 77.90 400.291496 100.00 50.631500 1006.31 208.63 994.01 238.53 6276.35 1486.17 7836.13 1455.51 .3613 .1146 .84 1.00 .49 .00 .57 1.00 .33 .00 .40 .00 .215044 .138380 .4230 .0080 .1020 .0400 .0501 .0290 .0147 .0414 .1546 .0000 .0820 .0000 .0995 .0000 .0914 .0000 .1048 .0000 .1129 .0000 .1075 .0000 .1142 .0000 .1142 .0000 .0995 .0000 .0739 .0000 Sum 4658 57958 297816.8730 361267 301184 2297146 2860189 56.36 623 349 427 243 295 39.9981 142.14 19.28 14.67 5.37 115.00 61.00 74.00 68.00 78.00 84.00 80.00 85.00 85.00 74.00 55.00 (2)クロスボーダーM&A(上:ターゲットが Non-OECD、下:ターゲットが OECD の場合) In-In Dummy In-In=1 = 0, Target OECD Dummy = 1; Non-OECD = 0 = 0 N Valid Missing Mean Median Sum Target Net Sales LTM ($mil) Target Total Assets ($mil) 1= Horizontal; Premium (4 Acquiror Acquiror Acquiror 0= Weeks Prior Net Total OECD Dummy Diversifyin to Sales Assets RelativeAss = 1; Nong ACQ_PUBLIC_ TAR_PUBLIC_ TAR_SUB_DUM Announcemen Acquirer3da Target3days AcquirerJap ($mil) ($mil) etSize OECD = 0 Transaction DUM DUM MY t) ysreturn return TargetROA AcquirerROA an 37 49 49 16 101 95 101 101 101 21 43 24 37 49 101 % Owned Prior to Transaction 101 % of Value of Shares Transaction Acq. ($mil) 101 101 0 8.50 0 0 56.66 101.272782 61 373.02 64 358.27 52 6998.17 52 8806.37 85 4.4925 0 .56 6 .53 0 .73 0 .36 0 .32 80 .166666 58 -.0120 77 .0539 64 .0858 52 .0569 .00 858 50.00 34.003000 5723 10228.5510 171.32 14921 291.95 13256 2598.31 342910 3590.00 431512 .0754 71.88 1.00 57 1.00 50 1.00 74 .00 36 .00 32 .191728 3.5000 .0010 -.52 .0215 1.29 .0562 3.17 40 dmy2000 101 dmy2001 101 dmy2002 101 dmy2003 101 dmy2004 101 dmy2005 101 dmy2006 101 dmy2007 101 dmy2008 101 dmy2009 101 0 .0792 0 .0594 0 .0693 0 .0495 0 .0792 0 .1683 0 .0891 0 .1485 0 .0693 0 .1287 0 .1386 .0504 2.79 .0000 8.00 .0000 6.00 .0000 7.00 .0000 5.00 .0000 8.00 .0000 17.00 .0000 9.00 .0000 15.00 .0000 7.00 .0000 13.00 .0000 14.00 In-In Dummy In-In=1 = 0, Target OECD Dummy = 1; Non-OECD = 0 = 1 Statisticsa N Mean Median Sum Valid Missing 215 0 6.82 .00 1467 215 0 215 0 92 123 61 154 98 117 97 118 31 184 215 0 211 4 215 0 215 0 215 0 47 168 63 152 31 184 60 155 97 118 215 0 215 0 215 0 215 0 215 0 215 0 215 0 215 0 215 0 215 0 215 0 79.95 734.076028 100.00 122.641000 17189 157826.3460 908.26 247.40 83560 1378.87 231.88 84111 6560.99 2541.51 642977 7496.65 2654.60 727175 .2205 .1718 6.84 .91 1.00 195 .51 1.00 108 .61 1.00 132 .26 .00 55 .48 .00 103 .628354 .277561 29.5326 .0064 -.0002 .40 .1191 .0705 3.69 .0406 .0421 2.44 .0696 .0673 6.75 .0698 .0000 15.00 .1395 .0000 30.00 .1488 .0000 32.00 .1023 .0000 22.00 .0744 .0000 16.00 .0930 .0000 20.00 .0791 .0000 17.00 .1209 .0000 26.00 .1070 .0000 23.00 .0558 .0000 12.00 .0791 .0000 17.00 76 (3)国内 M&A(上:ターゲットが Non-OECD、下:OECD の場合) In-In Dummy In-In=1 = 1, Target OECD Dummy = 1; Non-OECD = 0 = 0 N Valid Missing Mean Median Sum % Owned Prior to Transaction 121 % of Value of Shares Transaction Acq. ($mil) 121 121 0 8.23 .00 0 61.98 60.00 996 Target Net Sales LTM ($mil) Target Total Assets ($mil) 46 Acquiror Acquiror Acquiror Net Total OECD Dummy Sales Assets RelativeAss = 1; Non($mil) ($mil) etSize OECD = 0 46 55 55 18 121 Statisticsa 1= Horizontal; Premium (4 0= Weeks Prior Diversifyin to g ACQ_PUBLIC_ TAR_PUBLIC_ TAR_SUB_DUM Announcemen Acquirer3da Target3days AcquirerJap Transaction DUM DUM MY t) ysreturn return TargetROA AcquirerROA an 95 121 121 121 34 37 35 46 55 121 dmy2000 121 dmy2001 121 dmy2002 121 dmy2003 121 dmy2004 121 dmy2005 121 dmy2006 121 dmy2007 121 dmy2008 121 dmy2009 121 0 93.974347 29.731000 75 444.95 156.25 75 487.65 216.28 66 609.12 265.92 66 822.72 444.58 103 .4285 .1781 0 .00 .00 26 .36 .00 0 .45 .00 0 .40 .00 0 .33 .00 87 .104895 .017617 84 .1579 .0065 86 .0287 .0027 75 .0522 .0470 66 .0525 .0546 0 .0000 .0000 0 .0661 .0000 0 .0992 .0000 0 .0992 .0000 0 .1240 .0000 0 .1074 .0000 0 .0744 .0000 0 .0992 .0000 0 .0826 .0000 0 .1570 .0000 0 .0909 .0000 7499 11370.8960 20468 22432 33501 45250 7.71 0 34 54 48 40 3.5664 5.84 1.00 2.40 2.89 .00 8.00 12.00 12.00 15.00 13.00 9.00 12.00 10.00 19.00 11.00 299 324 154 469 247 376 310 313 623 0 623 0 623 0 623 0 623 0 623 0 623 0 623 0 623 0 623 0 623 0 In-In Dummy In-In=1 = 1, Target OECD Dummy = 1; Non-OECD = 0 = 1 N Valid Missing 623 0 623 0 623 0 313 310 257 366 311 312 310 313 138 485 623 0 618 5 623 0 623 0 Statisticsa 623 152 0 471 Mean Median 5.88 .00 80.99 459.784875 100.00 61.452000 1088.81 235.42 1084.64 253.78 7278.60 2081.82 9080.45 1707.45 .3525 .0988 1.00 1.00 .51 1.00 .60 1.00 .31 .00 .41 .00 .239682 .168532 .4559 .0083 .1187 .0501 .0497 .0281 .0080 .0390 .1846 .0000 .0851 .0000 .0995 .0000 .0899 .0000 .1011 .0000 .1140 .0000 .1140 .0000 .1172 .0000 .1204 .0000 .0883 .0000 .0706 .0000 Sum 3661 50458 286445.9770 340799 278752 2263644 2814939 48.65 623 315 373 195 255 36.4317 136.30 18.28 12.27 2.48 115.00 53.00 62.00 56.00 63.00 71.00 71.00 73.00 75.00 55.00 44.00 (4)日本が買収者の場合(上:クロスボーダーM&A、下:国内 M&A) Japan = Acquirer In-In Dummy In-In=1 = 0 Statisticsa N Valid Missing Mean Median Sum % Owned Prior to Transaction 23 % of Shares Acq. Value of Transaction ($mil) 23 23 Target Net Sales LTM ($mil) Target Total Assets ($mil) 7 1= Horizontal; Premium (4 Acquiror Acquiror Acquiror 0= Weeks Prior Net Total OECD Dummy Diversifyin to Sales Assets RelativeAss = 1; Nong ACQ_PUBLIC_ TAR_PUBLIC_ TAR_SUB_DUM Announcemen Acquirer3da Target3days AcquirerJap ($mil) ($mil) etSize OECD = 0 Transaction DUM DUM MY t) ysreturn return TargetROA AcquirerROA an dmy2000 dmy2001 dmy2002 dmy2003 dmy2004 dmy2005 dmy2006 dmy2007 dmy2008 dmy2009 5 14 13 4 23 23 23 23 23 5 10 4 5 13 23 23 23 23 23 23 23 23 23 23 23 0 10.80 .00 0 0 68.69 356.196783 96.08 189.841000 16 799.34 328.19 18 947.17 268.88 9 10613.60 11089.35 10 12627.12 11199.42 19 .1010 .1083 0 1.00 1.00 0 .65 1.00 0 .78 1.00 0 .22 .00 0 .57 1.00 18 .356902 .463029 13 .0061 .0059 19 .1426 .1040 18 .0671 .0821 10 .0332 .0305 0 1.0000 1.0000 0 .0000 .0000 0 .0435 .0000 0 .0000 .0000 0 .0870 .0000 0 .1739 .0000 0 .1304 .0000 0 .0870 .0000 0 .0435 .0000 0 .2609 .0000 0 .1739 .0000 248 1580 8192.5260 5595 4736 148590 164153 .40 23 15 18 5 13 1.7845 .06 .57 .34 .43 23.00 .00 1.00 .00 2.00 4.00 3.00 2.00 1.00 6.00 4.00 115 90 84 81 81 62 115 112 115 115 Statisticsa 115 64 68 63 84 81 115 115 115 115 115 115 115 115 115 115 115 0 13.07 .00 0 0 52.67 112.572104 43.13 42.629000 25 848.95 363.62 31 590.27 340.01 34 16586.94 3859.70 34 23281.08 4297.49 53 .1256 .0566 0 1.00 1.00 3 .54 1.00 0 .79 1.00 0 .68 1.00 0 .21 .00 51 .099818 .083159 47 .0172 .0058 52 .0479 .0288 31 .0056 .0170 34 .0282 .0308 0 1.0000 1.0000 0 .0522 .0000 0 .0957 .0000 0 .0435 .0000 0 .0609 .0000 0 .0783 .0000 0 .0957 .0000 0 .1130 .0000 0 .2000 .0000 0 .1478 .0000 0 .1130 .0000 1503 6057 12945.7920 76405 49583 1343542 1885768 7.79 115 61 91 78 24 6.3884 1.17 3.02 .47 2.29 115.00 6.00 11.00 5.00 7.00 9.00 11.00 13.00 23.00 17.00 13.00 In-In Dummy In-In=1 = 1 N Valid Missing Mean Median Sum 115 115 77 (5)300 万ドル以上の大型 M&A(グローバル・日本企業含む) 300万ドル以上のM&A'国内・グローバル含む( In-In Dummy In-In=1 = 0, AcquirerJapan = 1.00 統計量a 度数 有効 欠損値 平均値 中央値 Premium (4 Weeks Prior % of Value of to Shares Transaction Announcemen Acq. ($mil) t) 8 8 2 0 0 6 77.98 832.162500 .169810 100.00 718.550000 .169810 Target Net Sales LTM ($mil) Target Total Assets ($mil) 3 5 1436.24 1664.26 Acquiror Acquiror Target 15 Acquiror 15 Net Total Target 3 Acquiror 3 Day Return Day Return Sales Assets Day Return Day Return (+ / - 1 (+ / - 1 EBIT Margin ($mil) ($mil) (+ - 1 day) (+ - 1 day) week) week) 2 2 4 4 1 3 1 3 6 6 4 4 7 5 7 5 2178.88 .128984 13660.20 12754.37 .004464 .019572 -.024214 -.021395 2178.88 .128984 14956.56 12898.03 .004464 .013875 -.024214 -.019638 45 25 1416.11 601.39 30 40 2050.02 874.20 35 35 .148453 .118650 36 34 11315.36 5119.48 36 34 11412.00 5256.50 7 1 2070.38 2122.84 7 1 1340.88 1038.88 7 1 .034528 .034232 7 1 14869.62 12270.69 7 1 14089.77 9759.75 71 50 3002.24 1193.10 60 61 3489.64 1630.51 62 59 .096892 .084743 67 54 7408.99 3071.46 67 54 7711.68 3517.95 Cultural Distance: square root of the sum of the Same Same Same squared Language = Religion = Continent = differences 1; Not same 1; Not same 1; Not same , divided TargetROA AcquirerROA =0 =0 =0 by 4 2 4 8 8 8 8 6 4 0 0 0 0 .0709 .0515 .00 .00 .25 18.103530 .0709 .0387 .00 .00 .00 18.050872 Bilateral Trade (Imports from Acquiror Country as a % of Total RelativeAss Import) etSize 8 2 0 6 .107418 .1161 .100838 .1161 In-In Dummy In-In=1 = 0, AcquirerJapan = .00 統計量a 度数 有効 欠損値 平均値 中央値 70 70 0 0 85.53 2069.046400 100.00 808.140000 23 47 .937042 .332847 20 50 .085628 .063895 23 47 .011389 -.006325 20 50 .119810 .092947 24 46 .018752 .013596 30 40 .0716 .0539 36 34 .0655 .0688 70 0 .53 1.00 70 0 .47 .00 70 0 .36 .00 70 0 11.737281 13.383759 70 0 .105360 .079031 16 54 4.6378 .2113 5 3 .029621 .025263 6 2 .300305 .124720 5 3 .041660 .064463 7 1 .0170 .0286 7 1 .0321 .0347 8 0 1.00 1.00 8 0 1.00 1.00 8 0 1.00 1.00 8 0 .000000 .000000 8 0 .000000 .000000 7 1 .2367 .0943 69 52 .040039 .006559 40 81 .229332 .183678 68 53 .044081 .017295 59 62 .0483 .0408 67 54 .0497 .0472 121 0 1.00 1.00 121 0 1.00 1.00 121 0 1.00 1.00 121 0 .000000 .000000 121 0 .000000 .000000 33 88 .7339 .2899 In-In Dummy In-In=1 = 1, AcquirerJapan = 1.00 統計量a 度数 有効 欠損値 平均値 中央値 8 8 0 0 79.36 756.867500 90.18 624.572000 7 1 .246534 .196081 6 2 .209176 .149967 In-In Dummy In-In=1 = 1, AcquirerJapan = .00 統計量a 度数 平均値 中央値 有効 欠損値 121 121 0 0 87.97 2077.808876 100.00 636.195000 40 81 .332737 .213710 38 83 .211686 .141435 78 (6)クロスボーダーM&A を実行した際の水平型統合と多角化型統合を行った場合の株主リターンの比較(上(水平型統合)→下(垂直型統合)) In-In Dummy In-In=1 = 0, SameSIC4digit = 1.00, SameSIConly2and3digit = .00, SameSIConly1digit = .00 統計量a % of Shares Acq. 度数 有効 欠損値 平均値 中央値 21 0 83.84 100.00 Value of Transaction ($mil) 21 0 1190.483667 785.512000 Premium (4 Weeks Prior to Announcemen t) 7 14 .307866 .359054 Target Net Sales LTM ($mil) 14 7 752.02 352.08 Target Total Assets ($mil) 9 12 1156.69 901.60 EBIT Margin 11 10 .222395 .126828 Acquiror Net Sales ($mil) 14 7 7046.85 3427.89 Acquiror Target 15 Acquiror 15 Same Same Same Total Target 3 Acquiror 3 Day Return Day Return Language = Religion = Continent = Assets Day Return Day Return (+ / - 1 (+ / - 1 1; Not same 1; Not same 1; Not same ($mil) (+ - 1 day) (+ - 1 day) week) week) TargetROA AcquirerROA = 0 = 0 = 0 14 5 10 5 9 9 14 21 21 21 7 16 11 16 12 12 7 0 0 0 6883.23 .071282 .029162 .110158 .014106 .0938 .0353 .48 .33 .52 4013.13 .011690 .007384 .029827 .021535 .0562 .0606 .00 .00 1.00 Cultural Bilateral Distance: Trade square root (Imports of the sum from of the Acquiror squared Country as differences a % of , divided Total RelativeAss by 4 Import) etSize 21 21 9 0 0 12 12.077193 .161137 7.9941 13.383759 .114838 .1298 In-In Dummy In-In=1 = 0, SameSIC4digit = .00, SameSIConly2and3digit = 1.00, SameSIConly1digit = .00 度数 有効 欠損値 平均値 中央値 35 35 0 0 82.70 2299.992486 100.00 770.119000 9 26 2.017313 .517007 21 14 2035.20 772.00 14 21 2795.83 1941.58 17 18 .106245 .107912 23 12 15589.99 6837.91 23 12 15604.07 8016.86 統計量a 7 14 28 21 .142537 .006771 .117188 -.007894 7 28 .206051 .180012 15 20 .006716 .009126 14 21 .0428 .0257 23 12 .0817 .0704 35 0 .43 .00 35 0 .43 .00 35 0 .17 .00 35 0 13.019719 13.383759 35 0 .063610 .072685 9 26 .2767 .2312 9 13 .0941 .0817 3 19 .0632 .0603 22 0 .55 1.00 22 0 .50 .50 22 0 .45 .00 22 0 11.687578 13.383759 22 0 .119287 .071221 0 22 18 22 .0572 .0509 27 13 .0381 .0446 40 0 1.00 1.00 40 0 1.00 1.00 40 0 1.00 1.00 40 0 .000000 .000000 40 0 .000000 .000000 10 30 1.2918 .3256 In-In Dummy In-In=1 = 0, SameSIC4digit = .00, SameSIConly2and3digit = .00, SameSIConly1digit = .00 度数 有効 欠損値 平均値 中央値 22 22 0 0 88.90 2090.484273 100.00 768.199500 9 13 .175634 .169154 13 9 1135.85 688.10 9 13 1811.85 846.81 9 13 .133478 .116617 3 19 1589.37 1517.93 3 19 2196.79 1267.24 統計量a 9 2 13 20 .040318 -.032874 .062601 -.032874 9 13 .042092 .051676 3 19 .052726 .059732 In-In Dummy In-In=1 = 1, SameSIC4digit = 1.00, SameSIConly2and3digit = .00, SameSIConly1digit = .00 度数 平均値 中央値 有効 欠損値 40 40 0 0 78.78 1038.013450 100.00 597.728500 17 23 .253902 .183206 24 16 3148.27 1370.03 19 21 3251.51 1689.20 20 20 .113683 .094133 27 13 8313.35 2859.78 27 13 8210.36 3517.95 統計量a 17 32 23 8 .135152 .003970 .119571 -.003822 79 17 23 .170525 .158003 32 8 .012739 .015730 (7)国内 M&A を実行した際の水平型統合と多角化型統合を行った場合の株主リターンの比較(上(水平型統合)→下(垂直型統合)) In-In Dummy In-In=1 = 1, SameSIC4digit = .00, SameSIConly2and3digit = 1.00, SameSIConly1digit = .00 度数 有効 欠損値 平均値 中央値 39 39 17 26 24 24 31 31 0 0 94.90 2370.035949 100.00 671.117000 22 .397651 .275519 13 2533.42 1429.83 15 1983.15 1271.58 15 .077859 .056950 8 6635.43 3675.10 8 5803.79 3877.48 統計量a 15 24 .284178 .257769 28 15 27 24 31 39 39 39 39 39 21 11 .039711 .016854 24 .331517 .280357 12 .043069 .028358 15 .0525 .0347 8 .0568 .0378 0 1.00 1.00 0 1.00 1.00 0 1.00 1.00 0 .000000 .000000 0 .000000 .000000 18 .4858 .1423 In-In Dummy In-In=1 = 1, SameSIC4digit = .00, SameSIConly2and3digit = .00, SameSIConly1digit = 1.00 統計量a 度数 有効 欠損値 平均値 中央値 7 7 0 0 85.54 4779.962286 100.00 941.052000 4 3 .768131 4 3 4981.61 4 3 6355.32 4 3 .083739 7 0 20849.24 7 0 23630.99 4 3 .602662 7 0 .090941 4 3 .640031 7 0 .054011 4 3 .0113 7 0 .0804 7 0 1.00 7 0 1.00 7 0 1.00 7 0 .000000 7 0 .000000 4 3 .3446 .191339 5476.58 6584.88 .103478 7645.90 14377.00 .258263 -.023629 .447958 -.002958 .0290 .0857 1.00 1.00 1.00 .000000 .000000 .2621 In-In Dummy In-In=1 = 1, SameSIC4digit = .00, SameSIConly2and3digit = .00, SameSIConly1digit = .00 度数 平均値 中央値 有効 欠損値 43 0 43 0 9 34 24 19 20 23 21 22 9 34 9 34 89.03 2094.375302 100.00 586.808000 .098479 .065789 2762.41 1073.85 4198.45 1134.24 .084370 .081205 2709.59 2889.40 5366.35 1605.39 統計量a 8 35 .041026 .006261 80 7 36 10 33 7 36 20 23 9 34 43 0 43 0 43 0 43 0 43 0 5 38 .147895 .021356 .054329 .064986 .179602 .043225 .0318 .0400 .0221 .0311 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 .000000 .000000 .000000 .000000 .2760 .1677 参考文献(順不同) ・新井ゆたか『食品企業のグローバル戦略』(ぎょうせい、2011 年) ・斉藤高宏『わが国食品産業の海外直接投資―グローバル・エコノミーへの対応』 (筑波書房、1992 年) ・芝崎希美夫監修『最新データで読む産業と会社研究シリーズ 2012「食品」 』 (産学社、2010 年) ・斉藤訓之『食品業界のしくみ (図解雑学シリーズ)』 (ナツメ社、2010 年) ・福井晋『図解入門業界研究 最新食品業界の動向とカラクリがよーくわかる本』 (秀和システム、 2009 年) ・高橋正郎監修『食品産業における企業行動とフードシステム』 (農林統計協会、2006 年) ・茂木友三郎『キッコーマンのグローバル経営』(生産性出版、2007 年) ・堀章男『味の素 食文化のクリエーター―地球的な視野で「食と健康」に貢献する総合食品企業 のすべて』(阪急コミュニケーションズ、1992 年) ・山本謙治『日本の「食」は安すぎる 「無添加」で「日持ちする弁当」はあり得ない』 (講談社、 2008 年) ・鈴木宣弘共著『食料を読む』 (日本経済新聞出版社、2010 年) ・佐治広『食料・飲料』(日本経済新聞出版社、2006 年) ・石田信隆『TPPを考える―「開国」は日本農業と地域社会を壊滅させる』 (家の光協会、2011 年) ・共同通信社『進化する日本の食』 (PHP研究所、2009 年) ・21 世紀研究会『食の世界地図』(文芸春秋、2004 年) ・関満博共著『 「食」の地域ブランド戦略』 (新評論、2007 年) ・大薗友和『企業系列と業界地図』 (日本実業出版社、2002 年) ・柳川隆『産業組織と競争戦略』(勁草書房、2004 年) ・井上光太郎共著『M&Aと株価』 (東洋経済新報社、2006 年) ・井上光太郎共著『M&A とガバナンス―企業価値最大化のベスト・プラクティス (MBA コーポ レート・ファイナンス)』 (中央経済社、2005 年) ・宮島英昭編著『日本の M&A 企業統治・組織効率・企業価値へのインパクト』 (東洋経済新報 社、2008 年) ・グレアム・K・ディーンズ、フリッツ・クローガー『ストレッチ・カンパニー 超優良企業の成 長戦略に学べ』(東洋経済新報社、2005 年) ・小坂恕『グローバル M&A 戦争―激変する世界の産業勢力と日本企業の限界』 (ダイアモンド社、 2007 年) ・トーマス・フリードマン『フラット化する世界(上) 』(日本経済新聞出版社、2006 年) ・トーマス・フリードマン『フラット化する世界(下) 』(日本経済新聞出版社、2008 年) ・リチャード・ブリーリー、スチュワート・マイヤーズ、フランクリン・アレン『コーポレート フ ァイナンス(第 8 版)』(日経BP、2007 年) ・ブーズアンドカンパニー『成功するグローバル M&A―トップが考えるべき 6 つのステップと 81 CFO の役割』 (中央経済社、2010 年) ・有賀敏之『グローバル企業再編 国際企業間関係の現在』 (国文館出版株式会社、2006 年) ・ジェラルド・アドルフ『〈ビジネスの未来3〉成長戦略とM&Aの未来』 (日本経済新聞出版社、 2010 年) ・ジェイ B.バーニー『企業戦略論【上】 【中】 【下】 競争優位の構築と持続』 (東洋経済新報社、 2003 年) ・みずほコーポレート銀行産業調査部流通生活チーム「国際的に見たわが国食品企業の実態調査・ 分析」(2009 年) ・農林水産省「食品企業の海外事業展開」 (2011 年) ・「ビール業界を覆うグローバル競争」Financial Jpan 10 月号(2008 年)28-29 頁 ・NRI メディアフォーラム「国内食品業界再編の動向と今後の方向性」(2009 年) ・デイビッド・ハーディング「成功する M&A の源泉」 (ハーバードビジネスレビュー、2005 年 2 月) ・ジェフリーH.ダイアー「3 つの視点から分析する 提携すべき時、買収すべき時」 (ハーバー ドビジネスレビュー、2005 年 2 月) ・パンカジュ・ゲマワット「グローバル・メガマージャーの誤謬」 (ハーバードビジネスレビュー、 2001 年 2 月) ・マイケル・E・ポーター「3 つの世界企業に学ぶ競争戦略の革新と実行」(ハーバードビジネス レビュー、1983 年 2 月) ・Mark L. Mitchell, and J. Harold Mulherin(1996)“The Impact of Industry Shocks on Takeover and Restructuring Activity”Journal of Financial Economics 41、pp.193-229 ・Gregor Andrade, Mark Mitchell (2001) Erik Stafford ”New evidence and perspective on mergers” Jornal of Economic Perspectives Vol.15, No.2, pp.103-120 ・ Harford,J.(2005) “ What Drives Merger Waves?” Journal of Financial Economics,77, pp.529-560. ・Golbe, D and L.J.White (1988) “ A time-Series Analysis of Mergers and Acquisitions in the U.S. Economy” , Auerbach, A.J. (ed), Corporate Takeovers: Cause and Consequences, University of Chicago Press. ・Jensen, M.C.(1993) “The Modern Industrial Revolution, Exit, and the Failure of Internal Control Systems” Journal of Finance ,48, pp831-880 ・Andrade,G. and E.Stafford (2004) “Investigating the Economic Role of Mergers” Journal of Corporate Finance, 10, pp.1-36 82 謝辞 最後に本論文の作成にあたりご支援・ご協力を頂いた方へ、感謝の意を表する。 指導教授である井上光太郎先生の研究室のドアを叩いたのは 1 年前。その当時は自分が何を研究 したいのかがはっきりしていなかった。しかし、井上先生の下で学べば何か自分が大きく変われ るのではないかと直感的に思った。そしてその直感が間違っていなかったことをこの 1 年を振り 返り実感している。井上先生にはゼミ活動を通じ、ファイナンス的思考のみならず、社会人とし ての、そして時には人生の必要な要素を教えていただくことができた。また、本論文の作成を通 じて、数多くの貴重な機会とアドバイスをいただいた。これらを通じて得た経験や学んだ事柄は、 これから私が社会人生活を送る上での大きな財産になると確信している。 副査である青井倫一先生、浅川和宏先生、河野宏和先生には、まだ具体的な内容が定まっていな い段階で副査を快く引き受けていただいた。お忙しい中、思考が煮詰まった時にはどこで自分が 煮詰まっているのかを的確に見抜いていただき、多角的な視点からアドバイスをしていただいた。 ゼミの同期である、ぽんさん(渡邊裕介さん)、リーダー(後藤信之さん)、吉田さん(吉田浩司 さん)、かしけんさん(柏田顕吾さん) 、けんちゃん(杉本健太郎さん)にはいつも近くで支えて もらった。このメンバーでゼミを通じて多くの時間を共に過ごすことができ、本当に充実した KBS での最後の 1 年間を過ごすことができた。 これからもずっと、ここで築いた関係を大切にし、 より良いものにしていけたらと思う。 最後に、いつも私のやりたいことに最大限理解をし、長い間支え続けてくれた家族には心から感 謝している。本当にありがとう。 長い学生生活もいよいよ終わり、4 月からは社会人になる。これまで私を支えてくれた多くの人 に尐しでも恩返しができるよう、KBS で学んだ多くのことを最大限生かしながら、気持ち新たに 精一杯頑張って行きたい。 平成 24 年 1 月 3 日 M33 井上光太郎ゼミ 細野 有希 83