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あるスロットマシーン問題のグループによる解決
Kobe University Repository : Kernel Title あるスロットマシーン問題のグループによる解決(A Solution by Group to a Two-Armed Bandit Problem) Author(s) 末廣, 英生 Citation 国民経済雑誌,186(5):29-50 Issue date 2002-11 Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 Resource Version publisher DOI URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/00392693 Create Date: 2017-03-29 あるス ロッ トマ シー ン問題 の グループ による解決 末 席 英 生 複数の個人か らなるグループが,与えられた問題 を協力 して解決 しか ナればな ら ない状況に繰 り返 し直面す る時,各個人は問題解決の上で どの ように リーダーシッ He i ni c kea n dBa l e s( 1 9 5 3 )による実験室実験の結果があ プ を発揮するかに関 して, る。 この実験環境 を, 2人の個人がそれぞれ 1台ずつスロッ トマシーンを所有 し, そのいずれか一方を話 し合いで選んで トライするというプ ロセスを 2回繰 り返すゲ ームでモデル化する。個人は, 自分の所有するスロッ トマシーンの性能に関 して, 不完全な私的情報 を持 っている。 2人は,独立に同時 に自分のマシーンをグループ 採用すべ きか否かの主張 をす る。主張がかみ合えばそれが実施 され,そうでなけれ ば一方のマシーンがランダムに採用 されるOパ ラメーターを特定 して, このゲーム の逐 次均衡 を明示的 に計算 す る。一意的な逐次均衡 が求 め られ,そのプ レイが He i ni c kea n dBa l e s( 1 9 5 3 )による実験室実験の結果 をかな りうま く説明で きるこ とを示す。更に, このようなグループによる問題解決が,たいていの場合 に 1個人 による解決 よりも優れてお り, しか も望みうる最 もよい解決 に一致す ることを示す. キ-ワー ド リーダーシップ,スロットマシーン問題 1 序 3人寄れば文殊 の知 恵 とは, 問題 を解決 す るの に 1人 で はで きな くて も複数の個 人 がア イ デア を出 し合 えば解決 で きるこ とが あ る, とい う誰 もが知 って い る経 験則 で あ る。 これが事 実 で ある とす る と,人 が 問題解決 す る とい うこ とにつ いて, 次 の 2つの こ とが同時 に成 り立 っていなければな らない ように思 われ る。第 1に, あ る問題 を解決 す る方法 として 1人の個 人 が出せ るアイデア には限 りが あ り, しか も出せ るアイデア には個 人 間で重複 しない ものが あ るため に, 1人の個 人が 出せ るアイデ ア と複数の個 人が それ ぞれ出せ るアイデ アの合計 と を較べ ると,後者 の方が純粋 に広 い。第 2に, 自分 で は出せ なか ったアイデア を他人 が出 し た とき, それが 自分 で は もともと考 えつ かなか った ものであ るに もかかわ らず, その他人 か ら説 明 されれば理解 で き, しか ももともと自分 が考 えつ いたアイデア と較 べ て優 れてい るか どうかの取捨選択 がで き,結果 と して複数個 人 が出 したアイデ アの合計 の 中か ら正 しく有 力 3 0 第 186巻 第 5 号 なアイデアがグループの合意 として選ばれ る。 この 2つの ことは両立す るのだろうかO個人がある問題 を解決す る方法 として出すアイデ アは,その問題 に関す る彼 のこれ までの知識や,類似の問題 に直面 した過去の経験 に基づ い て出され ると考 えて よい。その様 な知識や経験 に限 りがあるか ら, 1人の個人が出せ るアイ デアに限 りがあると考 えられ る。他人が出 したアイデア も,同 じようにその他人の知識 と経 験 とに基づ いて出され る。 もとの個人がそのアイデアを自分 で考 えつかなかったのは,その 他人が持 っていた知識か経験かあるいはその双方が,彼 にはなかったか らである。だか ら, 自分では考 えつかなかった他人のアイデアを,それ を説明 されれば理解で き,適切 に評価で きるというのは,アイデアの理解 は,そのアイデアが出された基 の知識 も経験 もな くて もで きる, ということである。 アイデアを考 えつ くことには知識や経験が必要だが,アイデアを 理解 した り評価 した りす ることには必要ない, とい うことになる。 それが本 当か どうかは先 験的には決め られない。事実 として どうかを調べ,それが事実な らなぜ そうかが説明 されね ばな らない。 アイデアを考 えつ くこととアイデアを理解 した り評価 した りす ることが別であれば,複数 の個人がグループ として問題解決 に直面 した とき, アイデアを出 し合 い,出されたアイデア か ら解決策 を選択す るプ ロセスで,個人の行垂加こ混乱 は起 きに くいであろう。出されたアイ デアの どれが優 れているかについて,容易 に合意が成立す るか らである。逆 にそうでなけれ ば,グループ による問題解決プ ロセスは,安定的パ ター ンを示す と期待で きない。 事実が どち らかを示す間接的な証拠がある。すなわち,権 限構造のない小集団が何 らかの 問題解決のタスクに直面 した とき,その集団のメ ンバーはどの ような行動パ ター ンを示すか 1 9 5 0 年代 に社会学者 による実験研究が数多 くなされた。 この実験研究によって明 について,1 らか となったのは,全 く対等 な立場か らなる個人の間に役割分化が生 じる場合があること, 役割分化の発生パ ター ンはでた らめではな く, ある規則性があるとい うことである。その役 割分化 は リーダーシップの発生である。それは,複数の個人の中か ら, ある人のアイデアが 他の人 に受 け入れ られ る安定的なパ ターンが 自然 に生 まれ るとい うことである。 この事実は, アイデアを考 えつ くこととアイデアを理解 した り評価 した りす ることが別であることを示唆 す る。 なぜ そ うなるのか。 リーダーが出 したアイデアの基 となる知識や経験がフォロア一にはな いに もかかわ らず,なぜ そのアイデアを理解 し,それ を有力 と認め ることがで きるのか。本 稿 では,グループの各個人が持つ知識や経験の可能性 についてグループ内で共通の理解が成 立 していれば,た とえ他人の知識や経験 それ 自体 を直接共有 しな くて も,アイデアを出 し合 うとい う行動だけでそれが可能 となることを,簡単なゲーム ・モデル によって示す。 そのモデル は,ORで研究 されているスロッ トマ シーン問題 の変形である。個人は,自分の あるスロットマシーン問題のグループによる解決 3 1 知識や経験 を基 に, 1つの問題 に 1つの問題解決案 を出す能力があるとす る。その能力 を 1 台のスロッ トマ シーンで表す。スロッ トマ シー ンを 1回 トライす ると,問題 を解決す る 1つ のアイデアがでて くる。アイデアは,解決 に成功す るか失敗す るかのいずれかである。各個 人のマ シーンには,成功率の高 い良いマ シー ンと, そ うでない悪いマ シー ンとの可能性があ る。 そ して,各個人 は, 自分のマ シー ンの性能 についてはある程度知 っているが,他人のそ れは決 して直接知 ることはで きない。グループ は, 1つの問題 に 1つの解決策 しか トライで きない。各個人の持つマ シーンの うち誰のマ シーンを採用す るかを話 し合 って決めねばな ら ない。 このスロッ トマシー ンの採用ゲームの逐次均衡 を計算す る。モデル を簡単な数値例 の場合 9 5 0 年代 について明示的に解 く。す ると,ただ 1つの逐次均衡が得 られ,その均衡経路 は,1 の実験室実験の観察結果 をかな りうま く説明で きることがわか る。 本稿 の構成 は次の通 りである. まず 2節で,実験室実験で発見 されたグループ による問題 t yl i z e df ac t sを確認す る。3節では,グループ による問題解決プ ロセスの 解決行動 に関す る s ゲーム ・モデル を提示す る。 4節 は, 3節のゲームの戦略 を記述 し,逐次均衡 を定義す る。 5節 は,逐次均衡 を計算す る。 6節 は,求 め られた均衡 の経路 を調べ,実験室実験 か らの s t yl i z e df ac t sをどの程度 うま く説明で きるかを論 じる07節 は,均衡 によって実現 され る問 題解決のパ フォーマ ンス評価 を行 う。 2 I I e i ni c keandBal e s実験 9 5 0 年代 に社会学者が発見 した役割分化のパ ター ンとは何か をはっきりさせ よう。 まず,1 i ni c keandBal e s( 1 9 5 3 )である。He i ni c keと Bal e sは, この実験研究の代表の 1つは He r hwe t s t e r n と Ha va r r dの学部学生 を被験者 として,次の ような実験室実験 を それぞれ No 2 行 った。初等心理学の講義 を受講 している学部学生か らボランテ ィアを募 り, 5人か ら 6人 3 1組のグループ を1 0 組作 る。全員が毎週 1回同 じ時間に集 まって,グループ ご とにある問題 4 解決作業 をす る, というセ ッシ ョンを 4週間繰 り返す。各グループ には毎週異な る問題が 1 聞出 される。 それは,ある人間関係 の トラブル を記述 した もので,各 グループは4 0 分の制限 時間で 自由討論 を行 い,その トラブルの解決策 についてグループの提案 を 1つの レポー トに まとめ ることを求め られ る。問題 に出 された どの トラブル も,客観的 に見 て明確 な正 しい解 決策がそ もそ も存在 しない性質の ものである。各チームが作成 したレポー トは,審判 によっ て,現実性,説得力,考察の多面性 の 3つの観点か ら採点 され, 4セ ッシ ョンの合計点で最 優秀 グループが決 まる。最優秀 グループは, その全メ ンバーに対 し,初等心理学の講義 にお 5 ける彼の成績 に同 じだけのボーナス点 を与 えられ る。 i ni c keと Bal e sは,次の 3種類のデータを集めた。第 1に,各グル この実験室実験で,He 3 2 第 186巻 第 5 号 -プの各セ ッシ ョンご とに,実験室で行われている自由討論 を o newaymi 汀Orを通 して全 l e s( 1 9 5 0 )の i nt e r a c t i onc a t e go r ys ys t e m に従 って 観察記録す る。記録 された行動 を,Ba , 2 カテゴ リーの 1つ に分類す る。すなわち 「 解決策 ( すなわち,提案す る,意見す る, 次の1 , 正の反応 ( すなわち,他のメ ンバーに賛成す る,共鳴を示す,緊張 を解放 方向性 を示す)」 「 」 負の反応 ( すなわち,他のメ ンバ-に反対す る,敵意 を示す,緊張 を示す) 」および す る) 「 「 質問 ( すなわち,他のメ ンバーに提案 を求める,意見 を求 める,方向性 を求める)」である。 そ して,全行動 に占め る各 カテゴ リーのシェア-を計算す る。 第 2に,各グループのパ フォーマ ンスを測定す る。つ ま り,各 グループの各セ ッシ ョンご とに,作業成果であるレポー トの成績 をそのセ ッシ ョンで費や した討論の実質時間で割 った 成果効率性尺度 を計算す る。 第 3に,各グループで,メ ンバーによるリーダーシップの相互認知 を測定す る。すなわち, 各個人 に対 して,そのグループのメンバーを, リーダーシップの発揮度 に応 じて序列付 けさ せ る質問調査 を行 う。グループメ ンバー全員の序列付 けデータか ら,Ke ndal l( 1 9 4 8 )の一致 係数 を計算す る。その値 を序列 に関す るコンセ ンサスの形成度 と見なす。各セ ッシ ョンごと の序列 コンセ ンサス と全セ ッシ ョンを通 じての リーダー シップ についての序列 コンセ ンサス を計算す る。 6 集めたデータか らわかったことは次の事実である。 発見事実 1 :全セ ッシ ョンを通 じての リーダーシップ についての序列 コンセ ンサスに明 ら かに区別 され る 2つの コーホー トがあった。すなわち,一致係数が高い Hi ghCon s e ns us wCons e ns usGr o up sが 6グループあった。 Gr oupsが 4グループあ り,一致係数の低 い Lo 発見事実 2 二序列 コンセ ンサスの時間経路 に 2つの安定的なパ ター ンが見 られた。Hi gh Co ns e ns u sGr o upsでは,第 1セ ッシ ョンでの序列 コンセ ンサスが高 く,第 2セ ッシ ョンで 急落 し,第 3セ ッシ ョン と第 4セ ッシ ョンを通 じて着 実 に回復 す る。Lo w Co ns e ns us downを繰 り返す。 Gr o upsでは,序列 コンセ ンサスが時間を通 じて小刻みの up発見事実 3 :個人の行動の時間経路 に も2つの安定的なパ ター ンが見 られた。Hi ghCo n「 解決策」カテゴリーのシェア-が時間 を通 じて逓減 し,対人反応の s e ns usGr o upsでは, 純分 である 「 正の反応」カテゴ リーのシェア-か ら 「 負の反応」カテゴ リーのシェア-を 引いた ものは第 2セ ッシ ョンだけがほぼゼ ロで他の 3つのセ ッシ ョンは同程度の有意な正 7 , の値 を示す。Lo wCons e ns usGr o upsでは 「 解決策」カテゴ リーのシェア-が第 3セ ッシ ョンまで高止 ま りし,対人反応 の純分である 「 正の反応」カテ ゴリーのシェア-か ら 「 負 8 の反応」カテゴリーのシェア- を引いた ものは第 2セ ッシ ョンと第 3セ ッシ ョンで低 い。 ghCons e ns usGr oup sは Lo w Co ns e ns usGr oupsより成果効率性尺度が 発見事実 4 二Hi 有意 に高い。 あるスロットマシーン問題のグループによる解決 3 3 3 グループによるス ロッ トマシーン ・ゲーム He i ni c kea ndBa l e s( 1 9 5 3 )の実験結果 を説明す る,グループが問題解決 に直面す る状況 を 記述 したゲーム ・モデル を提示す る。 3. 1 ゲームのルール 個人 1と個人 2か らなるグループが,スロッ トマシーンの選択問題 に繰 り返 し 2回直面す る。個人 1も個人 2もそれぞれが 1台ずつスロッ トマシーンを所有 している。2人は,1期 日 に,2人が所有 しているスロッ トマシーンの うちの一方を採用 して,採用 したマシー ン〝 1を 1回 トライす る.トライの結果 Xlは成功 Sか失敗 Fのいずれかである。続いて 2期 日に,2 人は再び 2人が所有 しているスロッ トマシーンの うちの一方 を採用 して,採用 したマシーン M2を 1回 トライす る。トライの結果 x2は成功 Sか失敗 Fのいずれかである.個人 1も個人 2も,グループが達成する成功回数だけに関心がある.すなわち,彼 らの選好 は ( Xl ,x2 ) に対 して定義 され,効用関数 ui ( S,S)-2,u7 ( S, F)-ut ( F,S)-1,ui ( F, F)-0 ( i-1 ,2) で表現 され る。この効用関数は, ( S,F)上の定義関数 l s:( S,F)- ( 0,1)を l s( S)-1 , 1 s( F)-0で定義すると, ui ( Xl ・ x2) -t 葺 2l s( Xt )( i-1,2) と書ける。 1期 日も 2期 日も, 2人は同 じ手続 きを用いてグループ として採用す るスロッ トマシーン を決める。期首に, 2人は独立 に同時に, 自分が所有 しているスロッ トマシーンを採用すべ きであると主張す る ( p-po s i t i ve )か,あるいは主張 しない ( N-ne ga t i ve ) 02人が同時 に 自分のマシーンを採用すべ きであると主張 した場合 には,グループ として, 2人のマシーン の一方をランダムに採用する。 2人 とも自分のマシーンを採用すべ きであるとは主張 しなか った場合 に も,2人のマシーンの一方をランダムに採用す る.個人 tは自分のマシー ンMlを 採用すべ きであると主張 し,個人 jG ま自分のマシー ンMj を採用すべ きとは主張 しなかった なら, 自動的に個人 iのマシーンMi がグループ として採用 される。 スロッ トマシーンの性能は,それを 1回 トライ したときの成功確率 q∈( 0,1 )で表 される。 個人 1が所有す るスロッ トマシーンにも個人 2のそれにも,マシーンの性能 として 2つの可 能性 0<qB<qG<1があるo高い成功確率 qcをもつ良いマシーンM Gと,低 い成功確率 qBの 悪いマシーン〟 βである。 どの個人 も,外見か らは,個 々のマシー ンが良いマシーンか患いマシ- ンかを言 うことは で きない。全 く情報がない下では,あるマシーンが良いマシーンである可能性 は確率 β∈( 0, 3 4 第 186巻 第 5 号 1),悪いマ シー ンである可能性 は確率 1-βと見積 もられている。個人 1と個人 2が所有す る マ シー ンについて も同様 で, しか も個人が所有す るマ シー ンの性能の可能性 は独立である。 ただ し,個人 1も個人 2も, 自分が所有す るスロッ トマ シーンについては,個人的に過去 に 2回の使用経験がある。個人 i が この 2回の トライで得 た結果 を Yi-(Yき ,Y誉 )と書 く。 Y吉は Sか Fである.Yiは,個人 iの私的情報であるOしか も,それをコ ミュニケーシ ョンに こ伝 えることはで きない。 よって他者である個人 jL 3, 2 ス ロッ トマシーン ・ゲームと He i ni c keamdBal e s( 1 9 5 3)の実験環境 との対応関係 ここに提示 したスロッ トマシー ン・ ゲームは,次の意味で,He i ni c keandBal e s( 1 9 5 3 )の i ni c kea ndBal e s実験では,グループ は,異なる 実験環境 を記述 したモデル と見 なせ る。He 問題 に 4回直面す る。 しか し, その 4つの問題 はすべて人間関係 の トラブル に関す るもので あ り,それ らの解決 には類似 した能力が要求 され る, と考 えられ る。被験者 は,彼 に備 わっ たこの能力 を駆使 して,毎回の問題 に対 しその解決策 を考 え出す。 この能力が高 ければ良い 解決策 を出せ る可能性が高いが,それが保証 されているわけではない, と想定す るのが 自然 であろ う。 ス ロッ トマシーンは, この問題解決能力のモデルである。個人が 1台のスロッ トマシー ン を所有 していて,グループが直面す る 2回のス ロッ トマシー ン採用問題 にこの同 じマシーン で臨む とい うことが,個人 に備 わった問題解決能力は 1つで,それを独立 の問題 に繰 り返 し 適用す る状況 を表 している。能力の発揮 と同様,スロッ トマ シーンの トライは,そのマシー ンの性能が良ければ成功 しやすいが,性能が よいか らといって必ず成功す るとい うわけでは ない。 He i ni c kea ndBal e s実験で被験者が相互の問題解決能力を評価 し合 う関係 と,スロッ トマ シー ン ・ゲームでマシー ンの持 ち主が互 いのマ シー ンの性能 を評価 し合 う仕方は,次の様 に 対応 している。第 1に,He i ni c keandBal e s実験 では,各個人が 自分 の意見 にどの程度 自信 を持 っているかは,その解決策 を考 え出す に至 った彼の経験や知識 を反映す ると考 えて良い だろ う。その様 な知識や経験 は個人のこれ までの成長過程 に属す るものであるか ら,本人は 知 っているが,他者がそれ を本人 と同 じ意味で共有す ることはで きない。 スロッ トマシーン の過去の使用経験 に関す る非対称情報の想定は, この ことに対応 している。 第 2に,現実の問題解決 においては, ある知識や経験があるか らと言 って,それが今直面 している問題の解決能力 として有効か どうかは,必ず しもはっきり断定で きるとは限 らない。 む しろ,知識や経験 は,問題解決能力それ 自身ではな く,その間接的な証拠 と見 なせ る。同 様 に, スロッ トマ シー ンの性能に対 し, そのマ シー ンの過去の使用経. 験は, そのマ シーンの 性能それ 自体ではな く,そのマ シー ンの性能 に関す るデータ と見なせ る. あるスロットマシーン問題のグループによる解決 3 5 最後 に,ス ロッ トマシーン ・ゲームでは,マシー ンの過去の使用経験 は持 ち主以外 にはわ か らないが,グループが採用 したマ シー ンを トライ した結果 は全員に理解 され ると想定 して い る。 これは,現実の問題解決の状況 に置 き換 えて言 うと, ある個人が過去 に直面 した問題 解決状況で どの ような解決案 を考 え出 し, どの程度成功 したかは本人 しかわか らないが,覗 にグループが討論の末採用 した解決案や,それが成功だ ったか どうかは, 当該グループの全 員 に直接経験 として共有 されるとい うことである。 4 ス ロッ トマシーン ・ゲームにおける戦略,学習,逐次均衡 スロッ トマ シー ン ・ゲームにおける個人の行動 を予測す る為 に, まずスロッ トマ シー ン ・ ゲームで戦略の組が逐次均衡 をなす条件 を導 く。 4. 1 ヒス トリー ゲームのル ール に従 って 1期 日に起 こ りうることを述べ ると,次の ようになる。 まず,個 人i が 自分 のマ シー ンを採用すべ きか どうか につ いて行 う主張 a壬を ( P,N )の中か ら選 i .を ( P,N )の中か ら選ぶoこうして 1期 日の び,個人 jもそれ と同時 に独立 に自分の主張 a, 2人の主張ペアー al -( ai,a3 ・ )が定 まる.2人の主張 に従 って,場合 によってはランダムに, 1期 日にグループ として採用す るマ シー ンM lが決 まるO採用 されたマ シー ンが トライされ, 1期 日の結果 Xlが出るOこうして,1期 日の ヒス トリー hl -( al ,M l ,Xl )が定 まる。2期 日に起 こ りうることも全 く同 じように記述す ることがで き,2期 日の ヒス トリーは h2- ( a2, MZ ,x2 )と書 ける0 1期 日も 2期 日も,その ヒス トリー ht -( at,M t,X t)が とりうるバ リエーシ ョンは,全部 2 通 りある.すなわち ( ( P,P),M‥S) ,( ( P,P),M i,F) ,( ( P,P),Mj,S) ,( ( P,P), で1 M ,,F) ,( ( P,N),M t ,S) ,( ( P,N),M i,F) ,( ( N,P),M , I ,S) ,( ( N,P), Mj,F) ,( ( N, N),M i,S),( ( N,N),M l ,F),( ( N,N),Mj,S) ,( ( N,N),Mj,F)である。 4. 2 戦 略 スロッ トマ シー ン・ ゲームにおける個人の戦略 を b e ha v i o rs t r a t e g yの形式で述べ ると,吹 の様 になるO個人 iは, 1期 日の行動 を,確率朗 で 自分 のマ シー ンを採用すべ きであると主 -が・でそ う主張 しない というや り方で実行す る。ただ し,個人 iは,確率 封 を, 張 し,確率 1 自分のマシー ンについての使用経験 Yi に応 じて選ぶ ことがで きる。S ! ・ ( Yi )によって,自分 個i 人が 1期 日に自分のマ シー のマ シー ンの過去の 2匝け ライアルの結果が Ylである時 に, ンを採用すべ きであると主張す る確率 を表す もの とす る。 期 日の ヒス トリー h lご とに,確率 p誓 ( hl )で 自分 のマシー ン 個人 iは,2期 日の行動 を,1 3 6 第 186巻 第 5 号 を採用すべ きであると主張 し,確率 1 -9誓( hl) でそう主張 しない というや り方で実行す る. hl) を,自分のマシー ンについての使用経験 Ylに応 ただ し,この場合 も,個人 iは,確率 が ( ヲ( Yi,hl)によって, 自分のマシー ンの過去の 2回 トライアルの結 じて選ぶこ とがで きるo s 果 が Yi で 1期 日の ヒス トリーが hl である時 に個人 i が 自分のマ シー ンを採用すべ きである と主張す る確率 を表す もの とす る。 この ス ロ ッ トマ シー ン ・ゲーム にお け る個 人 i の戦 略 は,( S, F)2の要 素 Yl ・に △( ( P, N) )の要素 ( 封 ,1-が )を関係 が -S吉( Yt )によって対応 させ る関数 S ! ・:f S,F) 2-[ 0,1 ] と,( ( S,F) 2 )×( ( P,N ) 2×( M ‥Mj)×( S,F) )の要素 ( Yi ,hl )に △( ( P,N) )の要素 ( p誓 , -9誓 ) を関係 が -S 号( Yi,hl )に よって対応 させ る関数 S 誓:( ( S,F) 2 )×( ( P,N ) 2×( Mi, 1 Mj)×( S,F) ) -[ 0,1 ],のペアー si- ( S壬 , S 写 )である。 4. 3 ビリーフ 個人 iに とって,自分の行動選択 に関係 があ りなが ら直接観察で きない対象が,3つあるO 第 1に自分 のマシーンMiの性能,第 2に相手のマ シー ンMj の性能,第 3に相手のマシーン の過去の使用経験 Yj ,である。 1期 日の行動選択 にあたって,個人 iは,自分のマ シーンの ・だ けを もとに, この対象 の組 ( Mt ・ ,Mj, Yj )∈(MG,MB)×(M G,MB)×(S, 使用経験 Yl F)2 を推 測 しな けれ ばな らない。J L l ・ ( Mt, M,,Yj( Yt )に よって,Yz Lの もとで個 人 i が ( Mi ,Mj,Yj) の可能性 に付す確率 を表す。M i ,Mj,Yjの各対象 についての 〟Z ・ ( Mi ,M,, Yjl Yi )か ら導かれ る周辺分布 を F L l ・ ( Mi l Yi ),J L i( M, F YI ),J L i( Yjl Yl )と書 く。 2期 日の行動選択 にあたっては,個人 iは,自分 のマシー ンの使用経験 Ytに加 えて,1期 日の ヒス トリー hl が もた らす情報 を利用で きるoただ し,hl がベイズルール を通 して個人 t に正 しい情報 をもた らすには, 1期 日の結果 を もた らす ことになった自分 の行動 と相手の戦 9 略の組 ( 封 ,s j ・ )に関す る知識が必要である./ 招き ・ s H( Mt ・ ,Mj,Y, J Y‥hl )によって,Ytの もとで 1期 日に自分 の行動 Z ) きと相手 の戦 略 S3の組が実行 されて hl が起 きた時 に個人 i が ( Mi, M,,Y ,) の可能性 に付す確率 を表す。周辺分布の誘導 も,1期 日のそれ とパ ラレル に 構成 され る。 4. 4 プ レイの予想 スロッ トマ シー ン ・ゲームである戦略の組が与え られ ると,それが実行 された時のプ レイ の経路確率 を計算で きるOまず, 1期 日であれ 2期 日であれ,その期の個 人 iと個 人 jが,そ れぞれ確率 か ,9,で,自分のマシー ンを採用すべ きであると主張す るな らば, 2人の行動の あるペアーaが結果的に起 こる確率 J( a)は,それぞれ a- ( P,P),( P,N),( N,P), 7 [( れ P) ( N,N)について Pi P,, Pl( 1-Pj),( 1-Pi ) pj,( 1 -Pi)( 1-Pj)である。2人の行動ペア- 3 7 あるスロットマシーン問題のグループによる解決 aの下であるマ シー ンMhが採用 され る確率 が( Mh)は,ゲームのルール で述べた とお りで ある。 この 2つのプ ロセスをあわせ て見 ると, 2人の主張 を通 じて,その期 にグループが個 人 iのマシ-ンを探用す ることになる確率は 方伽 - , ' ( Mt -Ml )‡l pI Dj・(llPl ) (1-9, ) ] .pl (I-9,) と計算 され る。 他方,あるマ シー ンMhが選ばれた時,それ を トライ した結果が成功 となるか失敗 となるか は,採用 したマシー ンM hが M G か M B かでその確率が違 う.そ して,マ シー ン Mkを実際 に トライ した結果 は,それが M G か M B かについての情報 を与 える。マ シー ンMhが 1期 日に採 用 された場合 を考 えているとき,利用可能な情報 は高々そのマ シー ンMhに関す る過去の 2 回の使用経験 YkであるOそれ を条件 とす るマ シーン Mkの成功確率 方( Xl -Sl M l-M h , Yh ) は,ベイズルールで計算 して,それぞれ Yh- ( S,S)の障o. 45,Yk-( S,F)又 は ( F, S)の時0. 3 9 ,Yk-( F,F)の時0. 3 3 である. マ シーン M kが 2期 日に採用 された場合 を考 える時 には,もし 1期 日に も M l-M hだった な ら,1期 日の トライの結果 X lも追加的な情報 となるOそれ を条件 とす るマシー ンMhの成 功確率 7 T( x 2-SI M 2-M h ,Yk,M l-M h,Xl )は,ベイズルールで計算 して,それぞれ ( Yh , Xl )-( ( S,S),S)の時0. 47,( Yk ,X l )-(( S,S),F),( ( S,F),S)又 は (( F,S),S)の時 0. 4 3 ,( Yh,X l)-(( S,F),F),(( F,S),F)又 は (( F,F), S)の時0 . 3 7 ,( Yk,Xl )-(( F, F),F)の障o , 3 1となる。もちろん,1期 日に M l≠M kだ ったな ら,マ シー ンM hに関す る追 加情報 はないか ら, 7 T ( X2-sI M 2-Mk , Yk , Ml ≠Mk , Xl ) -7 T ( Xl -sI Ml -Mk , Yk) である。 4. 5 逐次均衡 のマ シー ンの使用経験が Yi であるとせ よ。個人 Jが戦略 S, ・に従 う時,個 人 i が 1期 個人 i 目に行動 pきをとることによって 1期 日に期待で きる利得 は U7 1( pi ,S , 11 Yi ) -苧pt ( Y,l Yl ) k吾, , 謹 1 ' S , ' `Y '''(Ml -Mk) El l s( Xl )l Ml -Mk・Yk] 苧pi u,I Yi ) k = 3, , ㌦l r s 3 ' Y ' ' ' ( Ml -Mk) W( X1-sI Ml -Mk・Yk) である。 1期 日の ヒス トリ- hlに応 じて 9号( hl )とす ることによって 2期 日に期待で きる利 得 は, 1期 目か ら見 て a) Uf( pl ・ ( p?(hl)) hl・S jI Yi ) -宅pl ( Y,l Yt ) ∑ 方` 97 1 ' s kI, ) ,I ( al ) ∑ ・ Ha' ( Ml -M k) j'Y ) 3 8 第 186巻 第 5 号 ' ' ( M2-Mk ・ ) ∑ Xll M l-Mk ,Yk) k, = L 方 9̀7 ' hl ' . S 榊 xl s, F方( xEl l s( x 2)I M 2-Mk ・ , Yk , , M l-Mk , Xl ] 8J -秤 ( Yjl Yl ) ∑謹 kI . ) ' s j' Y, ' ' ( al )∑ Ha l ( M l-Mk) ∑ Xll Ml -Mk ・Yk) A, ;, , 方P̀ W xL s, F方( ' ' S 榊 ' ) ( M2-Mk J ) x7 T ( X2-sI M 2-Mk ・ ,Yk ・ , Ml -Mk , Xl ) であるO従 って,個人 iのマ シー ンの使用経験が Ytの時,個 人 jが戦略 sjに従 う場合,個人 i が 1期 日に行動 が を と り 2期 日には 1期 日の ヒス ト1 )-h lに応 じて 9号 ( hl )とす ること か らスロッ トマ シー ン ・ゲーム全体で期待で きる利得 は, 1 , チ ,( p?( hl ) ) h l ,S ,I Yl ) …Ul( Pa l ,S ,F Yl ) +Uf( pl ,( 〆( hl ) ) h l ,S ,l Yi ) Ui ( である。 他方,個人 jが戦略 S,に従 っている時,1期 日に個人 iが行勅 封 をとり,ヒス ト1 )-h lが が 実現 した とせ よoこの時, 2期 日の期首に立 って,2期 日に行動 9号をとることか ら個人 i 期待で きる利得 は, U 再 f ' ?・ S ,' Y"h l ) -! -i . ) p s j ' ( Y,l Y"h l)k′∑ 方 P̀ 榊 p l ' Pz l ,'h l ' ' ( M2 -Mk′' s( x 2)l M 2-Mk , , Yk , , M l-Mk , Xl 】 ×El l -折 k' =l . ) S "( Y,l Y"hl ) ∑ 方 P̀榊 "h▲ ' ' ( M 2-Mk ・ ) ×7 T ( x 2-sI M 2-Mk ・ , Yk J , M l-Mk , Xl ) である。 個人 iの戦略 stと個人 jの戦略 S,の組が逐次均衡 をなす というのは,sjに対 しsiが 1期 日の行動の逐次合理性 Ut ( 轟 Yi ) , ( S 字( Y"hl ) ) h t ,S ,l Yi ) ≧Ul ( Pt l , ( pf( hl ) ) h l ,S,l Yl )f ora l l( pl( p?( hl ) ) h ・ )andY.I-( S El) と 2期 日の行動の逐次合理性 p Uf(l ,s i( Y"hl ) ,S ,l Y"hl) ≧Uf( pき , p亨 ,S ,l Y"hl) f ora l lpi ,p?andY"hl・- (s E2) を満 た し,逆 に sjもsiに対 し同様の逐次合理性 を満 たす場合 を言 うo あるスロットマシーン問題のグループによる解決 3 9 5 ス ロッ トマシーン ・ゲームの逐次均衡 を求める スロッ トマシーン ・ゲームの逐次均衡 を調べ る。本稿 は,個人では解 けない問題 をグルー プな ら解 けるとい う仕組 を示す ことが 日的であるか ら,スロッ トマシー ン ・ゲームの逐次均 衡 を一般的に解かな くて も,特定のパ ラメーターのケースについてそれ を示せれば十分であ 1 るOモデルのパ ラ-メーターを p-i ,qG-f・qB衡 を明示的に計算す る。 ‡ に特定 した場合 について,その逐次均 5. 1 考察する逐次均衡 スロッ トマ シー ン ・ゲームの逐次均衡 を,次のクラスについてすべて求め る。第 1に, 2 人の個人 は潜在的 には全 く対称 なので,両者が用い る戦略 も対称である場合 S-si-Sjを考 察す る。第 2に,戦略 Sは, 自分のマシー ンの使用経験 に関 して単調である。すなわち, s l( Y) ≦sl ( Y′ ) ,S 2( Y,hl ) ≦S 2( Y′ ,hl ) . t ・ t = !. 2l s(Yt ) ≦t = ?, 2l s(Y′ t ) f oral lhlandal lY,Y' ∈t S・ F) 2S である。 純粋戦略に限って言 うと,単調 な戦略 には, 1期 日の行動 について 4種類 しかない。すな = ?. 21 S(Yt ) -2の時の行動,Y が t = !, 21 S(Yt ) -1の時の行動 ,Y が t ∑ l s(Yt ) -0 わち,Y が t = 1 , 2 の時の行動の組 として,( P,P,P),( P,P,N),( P,N,N),( N,N,N)の 4種類である。そ れぞれのタイプの逐次均衡が存在す るか どうか を調べ,存在す るな らそれ を明示的 に計算す る。 5.2 2期 日の逐次合理的行動 まず,2期 日の逐次合理的行動 を調べ よう。それは, グループ として採用す るス ロッ トマ シー ンを決め る手続 きの持つ特徴 のおかげで,モデルのパ ラ-メーターによらないで, しか が Nの替 わ りに Pをとれば,その時の も簡単に,描写す ることがで きる。すなわち,個人 i 個人 jの行動が Pであれ N であれ,個人 iO ,マ シー ンが採用 され る確率が等 しく‡ だ け高 ま る。従 って,個人 i が P と Nのいずれの行動 をとるべ きかは,この様 な個人 i のマ シー ンの 採用確率の引 き上 げが望 ま しいか香 かのみで決 まる。その結果 として,次が成 り立つ。 補題 1 個 人 iのマ シー ンの過去の使用経験が Yiで ある場合 に, 1期 日に個人 iが行勅 封 をとり 個人 jが戦略 S3 ・に従 って行動 した結果 ヒス トリーが hl起 きた時,個人 i が,Miの性能 に 第 186巻 4 0 第 5 号 関す るピ 1 )- フ F L f ・ p き ・ S 3 ) ( M i-M GI Y‥hl )と Mj の性 能 に関す るビ リー フ J L l ( ♪ ! ・ S , I ) ( MjMGI Yl ,hl )を抱 いた とせ よ.な らば,個人 iの 2期 日の逐次合理的行動 は,2期 日の個人 jの戦 略 s S ・に よらず,p 5れ s i )( M i-MGI Yi ,hl )>FEl ( ・ か い( M, ・ -M c I Yi,hl)な らば a誓-P で あ り,逆 な らば a亨 -N で ある0 5. 3 ( p. p. N)均衡 1 1 補題 1を用 い ると,p- t・ qG-す , qB-i-の場創 こつ いて,( P,P・N)均衡が存在す るか 否 か を簡単に調べ るこ とがで きる。 まず 1期 日に個 人 jが ( P,P,N)均衡 に従 って行動 して が抱 くMiの性 能 に関す るピ 1 )-フ と Mj との性 能 に関す い る もの と想定 した とき,個 人 i ・ ,hlの うち Yiと ( a, 1 ・ ,M l ,X l )に依存 し a! .には依存 しないO個 人 iは 1 るビ リーフは,Yt 期 日に ( P,P,N)均衡 か ら範離す る行動 を とる場合 を含 め ると,Yl .と ( a3 . ,M l ,X l )の可 能 な組 み合 わせ は全部 で24通 りあ る。 その各 々について この ビ リーフのペ アー を計算す ると, 次の表 1の棟 になる。 表 1 :可能な J L Pき , ( P・ PIN) ) ( Ml-MG J Yt ・ ,hl ),FE≦Pi・ ( PP,N) ) ( M,-MG I Y‥hl )ペアー P YL . / ai . Yt . -( S,F),( F,S) Mi 0. 8 8, 0. 6 3 0. 7 2, 0. 6 3 Mi 0. 8 8, 0. 3 0 0. 7 2, 0. 3 0 Mj 0. 8 0, 0. 7 7 0. 8 0, 0. 5 3 Mj 0. 8 0, 0. 4 7 0. 8 0, 0. 2 2 MMz l /Xl . 0. 7 2 S , 0. 6 3 0. 4 7 F , 0. 6 3 M,. Yl . -( F,F) 〟 0. 5 7, 0. 7 7 0. 5 7, 0. 5 3 MMl l /Xl . 0. 47 S , 0. 6 3 0. 2 2 F , 0. 6 3 この表 1か ら,個 人 iは, 1期 日に M' Mi /Xl 0. 7 2 S , 0. 3 0 0. 4 7 F , 0. 3 0 M,. 0. 57, 0. 4 7 0. 5 7, 0. 2 2 MMi l / Xl 0. 47 S , 0. 3 0 0. 2 2 F , 0. 3 0 ( P, P, N)均衡 か ら帝離す る場合 を含 めてある行動 を とった時,それ に引 き続 いて起 こ りうるあらゆ る hlの下で,2期 日に 自分 が どの ような行動 を とるべ きか を,次の様 に言 うこ とがで きる。 補題 2 対 称 で単調 な戦 略 の組 ( S,S) が ( P,P,N) な らば,条件 ( SE2 ) を満 たす S2は次の通 り。 ●Y -( S,S) な らば,hlに よらず,S2( Y,hl )-P 4 1 あるスロットマシーン問題のグループによる解決 ●Y-( S,F)又 は Y-( F,S) な らば,hlが a3 ・ -N な らば必ず S 2( Y,hl )-P,a3 ・ -P な らば ( Ml ,Xl )に応 じて ( Ml ,X l )-(自分 のマ シー ン,S)又 は ( 相手のマ シー ン, F) な ら S 2( Y,hl )-Pそれ以外 は S 2( Y,hl )-N ●Y-( F,F)な らば,hlが a3 ・ -Pな らば必ず S2( Y,hl )-N,aJ l ・ -N な らば ( Ml ,Xl ) に応 じて ( Ml ,X l )-(自分のマ シー ン,S)又 は ( 相手のマ シーン,F)な らS2( Y, hl )-P それ以外 は S 2( Y,hl )-N さらに,個人 Jが 1期 日に ( P, P, N)均衡 に従 っていた として,個人 jが彼 のマシー ンの過 去の使用経験 Yj に応 じて 2期 日にどの ような行動 をとるか も,補題 2に言 う通 りである。 従 って,個人 iは,個人 jが常に ( P, P, N)均衡 に従 うと想定す ると,自分のマシー ンの .と個人 jのそれ Yj とのペアーの下で,自分の 1期 日の行動 aさに応 じて, 過去の使用経験 Yl 1期 日のプ レイによるマ シー ンの選択予想 方( a… ・ S l ( Yj ) )( al )・ が1 ( M -Mk) のみな らず, 2期 l r ( S 2 ( Y一・h l ), 8 2 ( Y,,hl ) ) ( M 2-M h)を計算す るこ 日の逐次合理的プ レイによるマ シー ンの選択予想 7 とがで きる.これ をマ シーン成功確率のデータ と合わせ ると,個人 jが常に ( P,P,N)均衡 が 1期 日に行動 a壬をとっ に従 い,自らも2期 日は逐次合理的に行動す るとした時 に,個人 i た場合 にスロッ トマ シー ン ・ゲーム全体 か ら期待で きる利得 Ui( a! ・ ,( S 2( hl )) h l ,SI Yi ) を計 算で きる。 それは,次の表 2の通 りである。 表 2:( P,P,N)均衡の下での Ui( aき ,( S 2( hl ) ) h l ,SI Yl ) Yl Ui( P, ( S 2 ( hl ) ) h l , Sl Yi ) Ui ( N, ( S 2 ( hl ) ) h l , SI Yt ) ( S,S) 0. 8 8 4 0. 8 2 9 ( S,F), ( F,S) 0. 8 1 0 0. 7 7 4 表 2により,個人 jが常に ( P, P, N)均衡 に従 うと想定 した時の,個人 iの 1期 日の逐次合 P,P,N)均衡 に従 うことである,とわか る.故 に,( P,P,N)均衡の存在が確 理的行動 は ( かめ られた。 5. 4 ( P,N,N)均衡 ( P,N,N)均衡が存在す るか否 かは,( P,P,N)均衡の場合 と全 く同様の手続 きで調べ る P,N,N)均衡 に従 い,自らも 2期 日は逐次合理的に行動す る ことがで きる。個人 jが常に ( とした時 に,個人 i が 1期 日に行動 a 壬をとった場合 にス ロッ トマ シー ン・ゲーム全体か ら期 ( a!,( S 2( hl ) ) h l ,SI Yi ) は,次の表 3の様 になる. 待で きる利得 Ui 4 2 第 186巻 第 5 号 表 3 :( P,P,N)均衡の下での Ul( a! ・ ,( S 2( hl )) h l ,SI Yl ) Yt Ut( P,( S 2 ( hl ) ) h l , Sl yi ) U. . ( N, ( S 2( h1 ) ) h l , SI Yi ) ( S,S) 0. 9 0 0 0. 8 5 2 ( S,F), ( F,S) 0. 7 9 8 0. 7 6 4 表 3に よれば ( P,N,N)均衡が要求す る sl(S,F)-sl( F,S)-N とい う 1期 日の行動は 逐次合理性の条件 ( SEl)を満 たさない. よって,( P,N,N)均衡 は存在 しないことが確 か め られた。 5. 5 ( P,P,P)均衡 , ( N,N,N)均衡 ( P,P,P)均衡が存在す るか否 かを調べ るには,( P,P,N)均衡や ( P,N,N)均衡の場 合 にはなかった問題が生 じる。すなわち,個人 iが 1期 日に ( P,P,P)均衡 か ら帝離する行 ・ -N を とったな ら,それ によって引 き起 こされ るいかなる 1期 日の ヒス トリー hlも 動 a! ( P,P,P)均衡の経路上 にはないか ら,個人 jの ビリーフ 〟 j ( 8 1 ・ s l ( Y, ) ) ( Mt ,Mj,Yi l Y,,hl ) はベイズ ・ルールによっては計算で きない。今,行動 a …-N をとった個人 i のマ シーンの過 去の使用経験が Yl -( S,S)だ った可能性 ,Y‡ -( S,F)又 は ( F,S)だった可能性 ,Yt ( F,F)だ った可能性 を,それぞれ 62 ,6. ,6。とす ると,M l . -M Gに関す る Kr e psandWi l s on i s t e ntbe l i e fは ( 1 9 8 2)の cons U ] ( s l . s E ( Y , ) ) ( Mi -MGI YJ ,hl)-62 P( Ml -MGI Yi =( S, S) ) +61 F L( Ml -MGJ Yl -( S, F) ) +6o F L ( Ml -MGI Yl -( F, F) ) 1 0 と書 けるO従 って,( P,P,P)均衡が存在す るか否かを調べ るには,62,61,6 0が生成 しうる j LI s l ・s l ( YJ ) ) ( M l-M G f Yj ,hl )のすべてについて,その下での個人 jの 2期 日の逐次合理的行動 が均衡行動 Pをとることの逐次合理性 をチェック しな を調べ,それに対 して 1期 日に個人 i ければな らない。 ( P,P,P)均衡では,1期 日に個人 jE まPをとるので,個人 iが帝離行動 N をとったとき には,必ず M l -M j となる。そ して, ( Y,,X l ) に応 じて, J L5 8 1 ・s l ( Y, ) )( M ,-M GY,,hl )は ( Yj ,X l )- (( S,S),S),の 障o. 88 ,( YJ,X l )- (( S,S),F),(( S,F),S) 又 は (( F, S),S) の 障o. 72, ( Y,,X l )-(( S,F),F),(( F,S),F) 又 は (( F,F),S) の 障o. 4 7 , ( YJ,X l )- (( F,F),F) の特O. 2 2となる.他方, 62,61 ,6 .が生成 しうる )は, M GI Y,,hl o・ 3-p( Ml -MGI Yl =( F, F))< p ] ( s l ・ s l ( Y , ) ) ( Mt -MGI YJ ,hl ) ≦F L( Mi -MGF Yz -( S, S))-0 . 8 J L l ・ 8 1 ・s l ( Y, ‖( M t- 4 3 あるスロットマシーン問題のグループによる解決 である。 ここで, 2期 日の個人 jの逐次合理的行動 は J L I s l ・ s l ( YJ ) ) ( Mi-M c J Yj,hl )に関 して 単調であるとい う補題 1の結果 を思 い出そ うoす ると,結局,個人 jの 2期 日の逐次合理的行 動 のバ リエ ー シ ョンは, 3通 りしかない こ とがわか る。す なわ ち,条件 ( SE2) を満 たす S , !( YJ,hl ) は, I L 5 s l ・ s l ( Y, ) ) ( Mi-MG J Yj,hl ) が 0. 72≦ F E i s l ・ s l ( Yj ) ) ( Mi-MGl Y,,hl )≦0. 8 な らば ( Y, ・ ,X l )が ( ( S,S),S)な らば Pそれ以外 は N 0. 47≦ノ げ,sl(Y,))(M i-M GJYj, hl)≦0. 72な らば ( Yj,X l )が ( ( S,S),S) ,( ( S,S),F),( ( S,F),S)又 は (( F,S),S) な らば Pそれ以外 は N 0. 3≦j L i s l ・ s l ( Y, ) ) ( M t-M GI Y,,hl)≦0. 47な らば (Y,,X l )が (( F, F),F) の時 を除いて Pで (( F,F),F) の時のみ N, であるO ・ -( F,F) としよう。個人 jG ま,1期 日に ( P,P,P) 今,個人 iのマ シー ンの使用経験が Yz 均衡 に従 って行動 し, 2期 日は逐次合理的行動 をとるとしようo この時,個人 i が 1期 日に Pをとり 2期 日は Yi ,hlの下での逐次合理的行動 を とることか ら期待で きる利得 と,1期 日 に N を とり 2期 日は Y‥hlの下での逐次合理的行動 をとることか ら期待で きる利得 とを, 個人 jの ビ リーフの 3通 りのケースについて比較す ると,次の表 4の様 になるO 表 4:( P,P,P)均衡の下での Ul( at( s Z( hl ) ) h l , S i Yi ) J L , ? 1 , 8 1̀ Y J ' ' ( Mt-MG l Yj, hl ) Ui ( P, ( S 2 ( hl )) h l , Sl Yt ) Ut( N, ( S 2 ( hl ) ) A . , Sl Yl , ) 0. 72≦F L デ, S 1̀ Y j ' ) ( Mi-MG l Yj, h1 )≦0. 8 0. 7 2 2 0. 7 31 0. 47≦F L i , B l , 8 1Ỳj ' ' ( Mi-MG l Yj, h1)≦0. 7 2 0. 7 2 2 0. 7 4 5 表 4によれば,個 人 jのど リーフ F E , ( ・ S l ・ s l ( Y, ) ) ( Mi ,M,,Yl ・ l Yj,hl ) が起 こ りうるどの様 な も のであった として も,( P,P,P)均衡が要求す る sl ( F,F)-P という 1期 日の行動 は逐次合 SEl )を満 たさない.よって,( P,P, P)均衡 は存在 しないことが確 かめ られた。 理性条件 ( ( N,N,N)均衡が存在す るか否か も同様 に調べ ることがで きる。そ して,Yi- ( S,S)の L i s l , s l ( YJ ) ) ( M i,Mj,Yi l Y."hl )の下で も ( N,N,N)均衡が要求す 時 には,想定 しうるどの J るs l ( S,S)-N という 1期 日の行動 は逐次合理性条件 ( SEl )を満 たさないこと,よって ( N, 〟,〟)均衡 も存在 しないことが確 かめ られ る。 5. 6 ス ロッ トマ シーン ・ゲームの逐次均衡 以上の分析結果 をまとめ ると,次の結論 を得 るO 命題 1 1 1 パ ラ-メーターが p-す ,qG-す ・qB -Ⅰ のスロッ トマ シー ン・ ゲームには,ただ 1つの対 称で単調 な逐次均衡が存在す る。それは, 1期 日には Y が ( S,S) ,( S,F)又 は ( F,S) 4 4 第 186巻 第 5 号 な らP ,( F, F)な ら N をとり, 2期 日には補題 2にある行動 を とる, という戦略か らな る。 6 ス ロッ トマシーン ・ゲームの逐次均衡が生成するグループ ・ダイナ ミクス 6. 1 ス ロッ トマシーン ・ゲームの逐次均衡 の均衡経路 1 1 ゲームで・グル- 。 の パ ラ-メーターが p-す ,qG-す ,qB -‡ の時,スロッ トマ シー ン・ 個人が命題 で述べた一意的な逐次均衡 に従 って行動 した とす ると,ゲームの均衡経路上で, グループの意思決定 はどの ような確率過程 に従 うだろ うか。それ を,特 に,個人の主張の経 al ,a2) に焦点 を当ててみ ると,グループが持つ 2つのマ シー ンの もともとの使用経験 路 ( (Y, ,Y, ) に応 じて,次の表 5の棟 になる。 表 5 :逐次均衡が実現する ( al ,a2) Yz , / Yj ( S,S) ( S,S) ( P,P) -( P,P) ( S,F),( F,S) -(' ( 2,p N' , W w. . P , . . 0 . . . 4 5 7 2 1 , ・ p,p, -: ( S,F),( F,S)・ p,p, ( p f pも w w. . p ,. . 0 . . . 4 5 7 2 1 ,・ p,p,- (温 , ;に : :: :: : ( F,F) ( P,N)- ( P,N) ( P.N)- ( P,N) 表 5は,スロッ トマ シー ン ・ゲームで見 られ る個人の主張の経路 には 3つのパ ター ンがあ P,N)- ( P,N )あるいは ( N,P)- ( N, る,とい うことを示 している。第 1のパ ター ンは,( 1 ) とい う 「 一貫 した リーダーシップ」である。すなわち,2人の個人の一方のマ シー ンは使 F,F)以外,つ ま り少な くとも 1回の Sがあ り, もう一方のそれが ( F,F)であ 用経験が ( った時 には, 1期 日も2期 日も,常に前者のマシー ンの持 ち主が 自分のマ シーンを採用す る よう主張 し,後者のマ シー ンの持 ち主 は常にその主張 を控 えるので,グル ープ として常に前 者のマ シー ンの持 ち主の意見が通 り,そのマ シーンがグループ によって採用 され る。 それは, 実際 に 1期 日にそのマ シー ンを採用 し, トライ してみた結果 にかかわ らず,そうである。 こ の場合,外部観察者か ら見 ると,前者のマ シー ンの持 ち主は,結果 に左右 されない 「 一貫 し た リーダー」 として振 る舞っているかの様 に見 える。 , 第 2のパ ター ンは 「クライシスを通 じて確立 され る リーダーシップ」である。具体的 には, P,P)- ( P,N) あるいは ( P,P)- ( N,P) つ ぎの 2つのサブ ・パ ター ンがある。 1つは, ( であるQ過去の使用経験が ともに ( S,F) または ( F,S) の時 には, 1期 日に 2人 とも自分 のマ シー ンを採用す るよう主張 して衝突す るが, ランダムに選んだマ シー ンを実行 した結果 それが成功すれば,その持 ち主 は 2期 日もそのマシー ンを引 き続 き採用す ることを主張 し, あるスロットマシーン問題のグループによる解決 4 5 採用 されなかったマ シー ンの持 ち主 はあえて 自分のマ シー ンを採用すべ きとは主張 しな くな るので, 2期 日は衝突な く成功 したマシー ンの所有者の意見が通 る。道 に, もしランダムに 選んだマシー ンを実行 した結果 それが失敗すれば,今度 は採用 されなかったマシー ンの持 ち 主が 2期 日には自分のマシー ンを採用す ることを主張 し,失敗 したマ シー ンの持 ち主 はあえ て自分のマシー ンを続 けて採用すべ きとは主張 しな くな るので, 2期 日は衝突な く1期 日は 採用 されなかったマ シーンの所有者の意見が通 る. また,一方のマシーンの使用経験が ( S, S)で他方のマ シー ンが ( S,F) または ( F,S)の時 に, 1期 日に前者のマシーンが選 ばれ て成功す るか又 は後者のマ シー ンが選ばれて失敗す る時 に も,同 じパ ター ンが起 こる。 N,N)- ( P,N) あるいは ( N,N)- ( N,P) である。第 1の 第 2のサブ ・パ ター ンは, ( それ と同様, 1期 日に l j-ダーシップが成立せず, ランダムに採用 されたマシー ンの結果 に よって 2期 日に リーダーシップが確立 され るが, 1期 日に ) )-ダーシップが成立 しない理 由 が, 2人が ともに自分 のマ シー ンの採用 を主張 して衝突す るためではな く, 2人 とも自分 の マシー ンの採用 に消極的であるためにそ うなる点が異 なる。 これは,過去の使用経験が とも F,F)の時に起 こる。 に ( 第 3のパ ター ンは,( P,P)- ( P,P)とい う 「 継続的意見対立」である。1期 日も 2期 日も, 両者が ともに自分のマ シー ンの採用 を主張 して衝突 し, グループ としてのマシーンの採用 は S,S) の時 に起 こるo また,一方 常にランダム となる。 これは,過去の使用経験が ともに ( S,S)で他方のマ シー ンが ( S,F) または ( F,S)の時 に, 1期 のマシーンの使用経験が ( 日に前者のマ シー ンが選ばれて失敗す るか又 は後者のマ シ- ンが選ばれて成功す る時 に も起 こる。 6. 2 ス ロッ トマシーン ・ゲームによる He i ni c keandBa le s実験の説明力 i ni c keandBal e s( 1 9 5 3 )の実験結果 をどの程\ スロッ トマシ- ン・ ゲームの均衡経路 は,He 度説明で きるだろ うか。ス ロッ トマ シー ン ・ゲームは 2期間のゲームである。その 1期 日が Hei ni ckeandBal e s実験の 1週 日と 2週 日に対応 し,2期 日が 3過 日と 4週 目に対応す る も i ni c keandBal e s( 1 9 5 3 )がグループ による問題解決プ ロセスに の と解釈 しよう。す ると,He 関 して集めた 3種類のデータ,つ ま りメ ンバー間の序列 コンセ ンサスの形成度,各個人の行 動,グループ ・パ フォーマ ンスは,スロッ トマ シー ン ・ゲームで言 うと, 1期 日のプ レイに L ! ・ S l ( Yz ) ・ s l ) ( Mi ,M, I Yi ,hl ) よって形成 され るそれぞれのマシー ンの性能に関す るビ リーフ J の個人間の一致度,マ シ-ンの採用 に関す る主張のペアー al -( a! ・ ,a3 ),a 2 -( a亨,aH,グル ープが採用 したマ シー ンの成功回数 , I ?, 2 l s( Xt )に対応す るO が 自分のマ シー ンの方が優れて マ シーンの性 能 に関す るビ リーフが一致す るとは,個人 i いるという判断 F L f sl( Yl ) , 息 L ) ( Mi -MG I Yl ,I l l )>J L 5 s l ( Yz)・s l )( Mj-MG I Yi ,hl )を持つ時 に個人 j 4 6 第 186巻 第 5 号 も同 じ判断 p, f s l ・ s l ( YJ ) )( M i-MG I Y, ・ ,hl )>ノ げ, B l ( Y, ) )( M , -MG t Yj,hl )を持つことを言 うO補 題 1に よれば, この ような一致が起 こることは, 2期 日の行動 に関 して a 2 -( a誓 ,a 3 )-( P, N)とい う主張の整合性が起 こることと同 じである。表 5によると,スロッ トマ シー ン・ゲー ムでは,序列 コンセ ンサスが形成 され る場合 とそ うでない場合が ともにある。すなわち, 2 人が所有す るマ シーンの過去の使用経験が ともに ( S,S)の時か,または一方のマ シーンの S,S)で他方のマ シー ンが ( S,F) または ( F,S) の時 に 1期 日に前者のマシ 使用経験が ( ー ンが選ばれて失敗す るか又は後者のマシー ンが選ばれて成功す る時 には, 1期 日が終 了 し た段階でなお両者 とも自分 のマ シー ンの方が優れていると考 える。つ まり,序列 コンセンサ i ni c keandBal e s スは成立 しない。それ以外では,序列 コンセ ンサスが成立す る。前者 は He 実験の Lo w Co ns e ns usGr o upsに対応 し,後者 は Hi ghCons e ns u sGr o upsに対応す る。 こ うして,スロッ トマ シー ン・ゲームは,He i ni c kea ndBal e s( 1 9 5 3 ) による発見事実 1・2を うま く説明で きる。 スロッ トマ シー ン ・ゲームにおける個人の行動 は, それが Pであることが He i ni c kea nd Bal e s実験 で分類 された 「 解決策」にあたると言 って よい。表 5によれば,スロッ トマ シーン・ 」 ,「クライ 一貫 した リーダーシップ ゲームにおける個人の行動パ ターンには 3種類がある。「 シスを通 じて確立 され るリーダーシップ」及び 「 継続的意見対立」である。「クライシスを通 じて確立 され る リーダーシップ」のパ ター ンが起 こるとき, 1期 日には両者か ら 「 解決策」 が提案 され るが,2期 日には相対的に高い性能のマ シーンを持つ と見 なされ るようになった i ni c keandBal e s( 1 9 5 3 )の発見事実 3で 個人か らだけ 「 解決策」が提案 され る。これは,He ,「継 報告 された Hi ghCo ns e ns usGr o upsにおける個人の行動パ ター ンに他 な らか 。他方 , 続的意見対立」のパ ター ンが起 こるとき,1期 日も 2期 日も 「 解決策」が両者か ら提案 され 続 ける。これは発見事実 3の Lo wCo ns e ns usGr o upsにおける個人の行動パターンであるO i ni c keandBal e s( 1 9 5 3 )による発見事実 3も, こうして,スロッ トマ シー ン・ ゲームは,He かな りうま く説明で きる。 ただ し,スロッ トマシー ン ・ゲームで起 こる 「 一貫 した 1 )-ダーシップ」のパ ター ンは, He i ni ckeandBal e s実験では観察 されなかった。ス ロッ トマシー ン・ゲームでは, 2人の個 , 一貫 した リーダーシッ 人が所有 す るマ シー ンの過去 の成功例 にア ンバ ランスが ある時 に 「 プ」が起 こる。He i ni c keandBal e s実験では被験者 は 5人ない し6人 なので,グループに出 された課題 に対 してその うちの 1人だけが過去 に類似 の問題 を解 いた経験 を持 ち他 は全員経 i ni ckea ndBal e s実験 で 「 一 験不足である,ということは起 こ りに くいであろ うoこれが,He 貫 した リーダーシップ」が観察 されなかった理由だ と推測 され る. スロッ トマ シー ン ・ゲームでのグループ ・パ フ ォーマ ンスは,基本的 に,個人が所有す る スロッ トマ シー ンの性能 に依存す る。実際に,マ シー ンの使用経験のペアーが与え られた下で 4 7 あるスロットマシーン問題のグループによる解決 の,均衡プ レイを通 じてグループが採用す るマ シー ンの期待成功確率 El t = !. 2 1 S( Xt ) l Y"Y,] を計算す ると,次の表 6の様 になる。 表 6: El l = ?. 2 . S ( XL ) F Y"Y, ] Yz , / Yj ( S,S) ( S,F)又は ( F, S) ( F,F) ( S,S) 0. 9 0 0 0. 8 0 2 0. 9 0 0 ( S,F)又は ( F,S) 0. 8 0 2 0. 8 0 1 0. 7 8 6 他方,表 5によると,スロッ トマ シー ン・ ゲームで 「 継続的意見対立」が起 こるのは,Y i と Yj が ともに ( S,S)か,一方が ( S,S)で他方が ( S,F) または ( F,S) の時であった。こ ens usGr oups のパ フォーマ ンスが Hi h g れは,スロッ トマ シー ン ・ゲームでは Low Cons ni ckeandBal es( 1 953)による Cons ens usGr oupsよりも高いことを意味す る。これは,Hei 発見事実 4と全 く逆である。 これは,スロッ トマシー ン ・ゲームではグル ープ ・パ フォーマ ンスはスロッ トマシー ンの トライの結果 とい うマ シー ンの性能 を直接反映す るデータで測 ら ni ckeandBal es実験では,40 分 の制約時間内で首尾一貫 した レポー トを れ るのに対 し,Hei 仕上 げることに成功す るということが,現実性 ・説得力 ・考察の多面性 によって採点 され る レポー トの出来具合 を左右す る程度が大 きい という違 いによると推測 され る0 7 グループ決定のパ フォーマンス スロッ トマ シー ン ・ゲームによって,個人では解 けない問題 をグループ な ら解 けるとい う 仕組が示せ た として,グループ はどの程度 うま く問題解決 しているのだろ うか。 まず,グループ は個人 よりも必ず優れているか を尋ね よう。つ ま り,個人 iが 1人で問題解 決す る状況 を,マ シー ン 〟 ∼だけが使 える トリビアルなスロッ トマ シー ン問題 と見 な し,1期 Mlを トライ した ときの成功確率 を計算す ると,Yi- (S,S)な ら0.900,Yi日も 2期 日も, ( S,F)又は ( F,S) な ら0. 7 86,Y t・- ( F,F) な ら0. 667である。 これ を,個人 iが,個人 J の持つマシー ンと自分のそれ とを持 ち寄 って,グループで問題解決す る場合の表 6と比較す る.す ると, Yi-( F,F)な ら,個人 jの持つスロッ トマ シー ンのデータ Yj が何 であって も, グループ解決のパ フォーマ ンスが,個人 i だけの場合 よ りも必ず厳密に優れているo Yi-( S, F)又は ( F,S)な ら,Yj -( F,i)の場合 には結果的 に個人 jのマ シー ンを採用す ることは だけの場合 と違わないが,Yj がそれ以外 な らや は りグループ ないのでグループ解決 は個人 i S,S)の場合 も,Yj -( F,F)の場合 には結果的に個 解決の方が厳密に優れているoYi-( 人 jのマ シー ンを採用す ることはないのでグループ解決 は個人 i だけの場合 と違わないO更 S,S)の場合 も,もともとの個人 iのマシー ンと個 人 jのそれには優劣がないので, に,Yj -( 48 第 186巻 第 5 号 l l だ けの場合 と違 わない。 ところが,Yj が ( S,F)又 は ( F,S)の場合 グル ープ解決 は個人 i だ けの場合 よ りも厳密 にパ フ ォーマ ンスが劣 る.それ は, には,逆 に,グル ープ解決 は個人 i 2種類 の ロスに起 因す る。第 1は,1期 日に個人 jも Pの行動 を とるので,Mlよ りも性能が 劣 っている可能性が高 い M湖 確 率Ⅰ で採用 され るか らで あ るo第 2は,1期 日に Mげ 採 用 され て失敗す るか Mj が採用 されて成功す るな ら, その場合 で も依然 として M,は M tよ りも性 能が劣 ってい る可能性が高 いに もかかわ らず, 2期 日には個人 jが再 びPの行動 を と り,Mげ 確率Ⅰ で採用 され る。 この ことか ら,更 に 1歩進 んで,問題解決 に先立 って,個 人 i が それ を個人で行 う場合 と個 1 2 人 jとの グル ープで行 う場合 を比較 して どち らが うま く解決 で きるか を考 えた としよう。 こ , れは,つ ま り, El t = ! . 2 . S( Xt ) I Y"Y]を更 に Yj の不確 実性 に対 して平均す るとい うことであ る。す ると,次が言 えた こ とにな る。 命題 2 1 1 パ ラ-メーターが p-す ・qG - す ,qB-i-とせ よo個人 榔 自分 のマ シー ンの使用経験 は 知 ってい るが個人 jのそれ は知 らない時,個人 i のマ シー ンだ けを 2回 トライす るの と,ス -( S,F),( F,S)又 は ( F,F) の場 ロ ッ トマ シー ン ・ゲーム をプ レイす るの とで は,Yi S, 合 にはス ロッ トマ シー ン・ ゲーム をプ レイす る方が高い成功確率 を期待で きるが,Yl-( S)の場合 には逆 に自分 のマ シー ンだけの方が ま しである. では,個人 による問題解決 と, グループ による問題解決 とは,個 人の能力 をあわせ て達成 しうる問題解決 の可能性 の上 限 に対 して, どの程度のパ フ ォーマ ンス を達成 で きているのだ ろ うか。 この上 限は,仮 にグル ープで 2つのマ シー ンに関す るすべ てのデータを利用 してマ シー ン選択 がで きるとした場合 の, グル ープ ・パ フ ォーマ ンスに よって定義す るのが 自然で Yi,Y,) を知 っている状況か ら出発 して 1期 日に MEと M,のいず ある。それは,データ ( れか一方 を選択 して トライ し, その結果 Xlを知 った上 で 2期 日に再 び Mlと M,のいずれ か一方 を選択 して トライす るとい う確率的ダイナ ミック ・プ ログラ ミング問題の解 である. 計算 によ り, その解 は,次の様 にな る。 命題 3 グループで 2つのマ シー ンに関す るすべてのデータを利用 してマ シー ンを採用で きるとし = !. 2 l s( Yi t) 't = !, 2 l s(Y3)な らば 1期 日も 2期 日も常に Mi た場合の最適 な採用ルール は, t を採用 し,t = !. 2 l s( Yl t ) -, = ;. 2 l s( Y, t )な らば 1期 日はランダムに採用 して,Xl -Sな ら 1期 日に採用 したマシー ンを 2期 日 も引 き続 き採用 し,Xl -F な ら 1期 日に採用 しなかった方 4 9 あるスロッ トマシーン問題のグループによる解決 のマ シー ンを 2期 日に採 用す る とい うル ール で あ る。 この最 適 な採用ルール は, ス ロ ッ トマ シー ン ・ゲームの逐 次均衡 の均衡経路 と比較 す る と, 2人 のマ シー ンの使用経験 が と もに ( S,S)で あ る場合 と,一 方が ( S,S)で他 方が ( S,F) 又は ( F,S)で 1期 日に前者のマ シー ンが採用 され て失敗す るか後者 のマ シー ンが採 用 され て成功 す る場合 とを除 いて,す なわ ち 「 継 続 的意見対立」の場合 を除 いて,完全 に一致 す る。 1 3 そ して,不一致 の場合 の成功確 率 の差 は,極 めて小 さい。 グル ープで最 適 な採 用ル ール を用 いた場合 のグル ープ ・ パ フ ォーマ ンス と 1 F と, ス ロ ッ トマ シー ン・ゲームの均衡経路 が達成 す るパ フ ォーマ ンス UG と,個 人 i のマ シー ンだ けを 2回 トライ した場合 のパ フ ォーマ ンス UZ とを相互 に比較 す ると,次の表 7の様 にな る。 表 7:グループによる解決の上限 L T F,実際のグループ解決 UG,個人解決 UTの比較 Yi / Yj ( S,S) ( S,F)又は ( F,S) ( F,F) ( S,S) UF>UG-UI UF-UI>UG UF-UG-t 〃 F,S) ( S,F)又は ( UF>UG>UI ・ UF-UG>UI UF=UG-UI 従 って, グル ープ による問題解決 は,起 こ りうるほ とん どの場合 で,個 人 に よる問題 解決 よ りも優 れ てお り, しか も望 み うる最 適 な決 定 を もた らす とい うこ とが で きる。 注 1 代表的な研究は,He i ni ckeandBal e s( 1 9 5 3 ) ,Bor get t aa ndBal e s( 1 9 5 3),Bal e sandSl at e r ( 1 9 5 5 )等である。 2 He i ni c keが行 った実験手続 きと Bal e sが行 ったそれ とは細部に違いがあるが,彼 らの実験は おお よそはここに述べた手続 きで行われた。 3 正確 に言 うと,He i ni c ke は初等心理学の講義 を受講 している学部学生か ら 5人 1組のグルー プ を 6組作 り,Ba l e sは一般学生か ら6人 1組のグループを 4組作 った0 4 正確 に言 うと,He i ni ckeはセ ッシ ョンを 6週間行い,Bal e sは 4週間行 った。2人のデータを 共通する最初の 4セ ッシ ョン分 についてプール した ものを,分析 に用いた。 5 正確 には,Bal e sの実験では,成績点の追加は行われず,ボランティア報酬が金銭で支払われた。 6 He i ni c keと Bal e sが論 じた発見事実は,ここで述べた もの以外に,対人反応が向けられる個人 の特定,行動が とられる向 きと序列 コンセ ンサスの相関関係,個人の満足度がある。 , 7 対人反応の時間経路の内容を細か く見 ると 「 負の反応」カテゴリーが第 2セ ッシ ョンのみ急上 , 昇す るのに対 し 「 正の反応」カテゴリーは,一方で 「 他のメンバーに賛成する」が逓減 し,他方 で 「 他のメンバーに共鳴を示す」 と 「 緊張 を解放す る」が逓増 して相互 にシェア-変化 をキャン セル し合 っている。 50 5 号 第 第 186巻 , 8 対人反応 の時間経路 の内容 を細 か く見 ると 「負の反応」カテ ゴ リーが第 2セ ッシ ョンのみ急上 , ghCons e ns usGr oupsと同 じだが 「 正の反応」カテ ゴ リーが第 3セ ッシ ョンで急 昇 す る点 は Hi 落す る点が異 なる。 9 正確 に言 うと, 自分 の行動 のパ ラメーター 封 は情報 としては意味が ない。 1 0 Ml ・ -MGに関す る Kr e psandWi l s on ( 1 9 82) の c ons i s t e ntbel i e fは,各 Yiについての均衡 行動 Pか らの t r e mbl i ngpr obabi l i t yの列 を構成 して,t r e mbl i ng の下でペ イズルール によって 計算 され る Mi -MGに関す るビ リーフの極 限である。 t r e mbl i n gの下でベ イズル ール によって計 算 され る Ml ・ -Mcに関す るビ リーフを,al-N が各 Yiに よって引 き起 こされた可能性 に分解 して表現 し,極 限 を とれば本文の表現 に達す る。この場合 ,t r e mbl i ngpr o babi l i t yの列 によって 生成で きる 62,61 ,COは,0≦02,61 ,6。< Il,62 +61 +60 -1を満 たすすべ てである. 1 1 これは,必ず しも ト1 )ビアル な結果 ではないこ とに注意 しよう.ス ロッ トマ シー ン ・ゲームで S,S)であった時, 1期 日にランダム に採用 したマシ は, 2人のマ シー ンの使用経験 が ともに ( ー ンの トライの結果が Sな ら 2期 日のマ シー ンもランダムに採用す るが,Fな ら 2期 日も 1期 日 と同 じマ シー ンを用 いる, とい う採用 の仕方 も可能である。 この様 な こ とをすれば,性能に関 し 90 0を下回 る。分 てネガテ ィブな結果が出たマ シー ンをわ ざわ ざ採用す るのだか ら,成功確率 は0. 析結果 は, この ようなことは均衡 の結果 としては起 こらないことを保証 している。 1 2 ここで,個人 iには 2つの方法 の間の選択権 はない もの とす る。もし選択権 が あれば,グループ でのスロッ トマシー ン・ ゲーム を選択す るか否 か 自体が,YIをシグナル して しまうので,問題 は ず っ と複雑 になる。 1 3 2人のマ シー ンの使用経験が ともに ( S,S) である場合,最適 な採用ル ールが達成す るグル ー プの成功確 率 は0. 91 0であ り,一方が ( S,S)で他方が ( S,F)又 は ( F,S)で ある場合のそれは 0. 900である。 参 考 文 献 Bal e s ,R. 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