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クレジットカード債権を裏付けとした 証券の格付手法 Moody`s Approach

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クレジットカード債権を裏付けとした 証券の格付手法 Moody`s Approach
ASSET-BACKED SECURITIES
JULY 6, 2015
RATING METHODOLOGY
初めに
目次:
初めに
1
信用分析の各ステップ
4
付録 1:口座閉鎖がクレジットカード
信託のパフォーマンスに与える影響-
22
過去の事例の分析
付録 2: 依存度曲線の生成に用いる
期待損失率とデフォルト確率
26
付録 3: 日本と韓国のクレジット
29
カード案件に対する調整
付録 4: キャッシュフローのモデリング-
早期償還シナリオ
34
ムーディーズの関連リサーチ
38
コンタクト:
東京
クレジットカード債権を裏付けとした
証券の格付手法
Moody's Approach to Rating Credit Card
Receivables-Backed Securities
03.5408.4100
本格付手法は、世界の 1クレジットカード債権を裏付けとする証券および消費者
向けリボルビング・ローンを裏付けとする証券に対するムーディーズの格付アプ
ローチを説明するものである。ムーディーズのクレジットカード債権を裏付けとす
る資産担保証券(ABS)に対する格付アプローチは次の 4 つのステップで構成さ
れる。(1)案件の裏付資産のパフォーマンスとキャッシュフローを分析し、「スポン
サー・デフォルト時 Aaa 信用補完(Aaa LGSD)」、すなわち、取引のスポンサーが
クレジットカード口座を閉鎖していると想定した上での最大ストレス・シナリオにお
ける Aaa (sf)格付に対応する信用補完水準を決定する。ここで用いる「スポンサ
ーのデフォルト」という用語は、スポンサーの財務悪化を理由としてクレジッドカ
ード口座が閉鎖されるあらゆる状況を指している。(2)Aaa LGSD にスポンサーの
信用力(本格付手法では通常、カウンターパーティ・リスク評価 2(CR 評価))に
基づくヘアカットを適用し、Aaa (sf)格付に対応する信用補完水準(Aaa CE)を決
定する。(3)案件のシニアノートおよび劣後ノートが利用可能な信用補完、およ
びそれらのノートの格付を支えるために必要な信用補完の下限を考慮し、格付
を調整する。(4)オペレーショナル・リスク、カウンターパーティ・リスク、法的リスク
など案件にかかわる他のリスクを考慮して、ノートの最終的な格付を決定する。
図表 1 はこの 4 つのステップをより詳細に示したものである。
本格付手法は、モニタリングに関するセクションおよび付録 3 への修正を加えて 2015 年 7 月 6 日に
更新された。格付手法の内容には変更はない。
This rating methodology is based on Moody’s Investors Service’s rating methodology titled “Moody's Approach to
Rating Credit Card Receivables-Backed Securities, (June 16, 2015).” The rating approach described in the
Moody’s Investors Service report was adopted on July 6, 2015.
1
消費者向けリボルビング・ローンは、貸し手との間で合意した包括ローン契約に定める限度額内で借り
手がいつでも現金を引き出せるローンである。その意味で、消費者向けリボルビング・ローンの主な特
徴やリスク要因は標準的クレジットカードのそれに類似している。
2
詳細については、ムーディーズの関連リサーチの「格付記号と定義」を参照されたい。
ムーディーズ・ジャパン株式会社
ASSET-BACKED SECURITIES
ムーディーズの格付アプローチは、スポンサーが支払不能に陥り、証券化の対象となったクレ
ジットカード口座を閉鎖した場合にクレジットカード債権証券化のパフォーマンスが受ける影
響を分析した結果に基礎を置いている。付録 1 に分析結果の詳細と参照データを示した。
早期償還されたクレジットカード証券化商品に関するムーディーズの分析結果は、財務困難
に陥っていない限りスポンサーが口座を閉鎖するとは考えにくいことを示している。したがって、
スポンサーの CR 評価が高い案件が、ステップ 1 で述べられている Aaa LGSD シナリオに相
当するほど厳しいストレス・シナリオに直面する可能性はより低くなる。そこで、デフォルトに陥
っていないスポンサーは早期償還を防ぐための措置をとる、あるいは証券化以外の調達手段
を用いて新規カード債権購入のための資金調達を継続すると想定する 3。ステップ 2 で述べ
られているヘアカットは、スポンサーが口座を維持する場合においては案件が厳しいストレス
に直面する可能性が低いことを考慮して、プールに発生する不足額に関する想定を織り込ん
でいる。ムーディーズは、ノートの格付に影響を与える地域固有のリスクや他の固有のリスクを
織り込むため、分析手法を調整する。ムーディーズはグローバルな格付アプローチを用いる
が、主要変数の地域差を織り込むため必要に応じて修正を加える。他のすべての格付手法と
同様、ムーディーズの格付委員会は分析に関連する他の要因も考慮する。たとえば、日本と
韓国のクレジットカード ABS には、米国、英国およびカナダで一般的なクレジットカード ABS
との間に、いくつかの重要な慣行上の相違が存在する。日本および韓国におけるクレジットカ
ード ABS 格付手法の適用方法については、付録 3 を参照されたい。
この格付アプローチでは、特定の格付水準に相応すると考えられる信用補完水準は、裏付資
産ポートフォリオの固有の特徴、最大ストレス・シナリオにおけるポートフォリオのパフォーマン
スの予測、案件のスポンサーの信用力、案件の仕組み上の特徴に加えて、法的リスク、カウン
ターパーティ・リスク、オペレーショナル・リスクに基づいて案件ごとに決定される。したがって、
スポンサーが自身の信用力(スポンサーの CR 評価に反映される)が変化しても信用補完の
調整を行わないことを選択した場合、関連する証券化商品の格付が変更される可能性がある。
本件は信用格付付与の公表で
はありません。文中にて言及され
ている信用格付については、
ムーディーズのウェブサイト
(www.moodys.com)の発行体の
ページの Ratings タブで、最新の
格付付与に関する情報および
格付推移をご参照ください。
2
JULY 6, 2015
3
スポンサーは通常、(1) 超過スプレッドを拡大するための債権元本の割引など仕組み上の特徴、(2) 担保のパフォーマン
スを向上させるための既存口座より信用力の高い口座の追加、(3) 信用補完の追加、によって案件をサポートする。財務
困難に陥ったスポンサーはいずれのサポートも提供できないとみられる。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
図表 1
クレジットカード ABS に対する格付アプローチ
ステップ 1: 最大ストレス・シナリオ
= スポンサー・デフォルト時 Aaa レベル( Aaa LGSD )
裏付資産パフォーマンス・
シナリオ
(スポンサーのデフォルト
を想定)
市場価額分析
(法定償還期日における
ポートフォリオ売却)
ステップ 2: Aaa CE
依存率(スポンサーの
CR 評価から導く)
X
Aaa LGSD
ステップ 3:信用補完が Aaa CE に満たない
シニアノートおよび劣後ノートの分析
ステップ 4:最終格付
オペレーショナル・
リスク
法的リスク
カウンター
パーティ・リスク
その他のリスク
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
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JULY 6, 2015
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
信用分析の各ステップ
ステップ 1: 最大ストレス・シナリオの決定
クレジットカード債権を裏付けとする証券化商品の格付分析の最初のステップでは、最大スト
レス・シナリオにおけるプールの不足額の補填に必要な信用補完水準を決定する。このシナリ
オでは、案件が早期償還され、スポンサーが財政難に陥っているか、それに近い状況にある
と想定する。また、スポンサーが口座を維持するための資金を調達することやポートフォリオの
買い手を見つけることが困難であるため、口座を閉鎖したと想定する。この最大ストレス・シナ
リオにおける信用補完水準を、「スポンサー・デフォルト時 Aaa 信用補完(Aaa LGSD)」と呼ぶ。
分析の第 1 ステップでは、特定のストレス要因に晒された場合に裏付資産の質とパフォーマ
ンスを示す個々の指標が、どれくらいのペースでどの程度まで悪化するかを決定する。Aaa
LGSD は、案件存続期間中のストレスを加えた元本と資産からのキャッシュフロー(法定償還
期日における残存債権の売却代金を含むことができる)の合計と、ストレスを加えた案件の支
払債務の総額との差に等しい。したがって、Aaa LGSD はスポンサーのデフォルト時に案件の
資産と負債のキャッシュフローが Aaa (sf)格付を失わずに耐えることができるストレスの総計を
反映する。
ムーディーズは、次のストレス要因を分析して最大ストレス・シナリオを決定する。
» 新規購入(追加利用)の中断
» 予想を上回るチャージオフ
» 予想を下回るノート利息控除後利回り
» 元本返済の減速
» 法定償還期日に市場価格で売却される債権の額面の減額
ムーディーズは、早期償還された米国のクレジットカード証券化信託 4の分析に基づき、新規
購入の中断 5がすべての案件で発生すると想定する。いずれのケースでも、信託のスポンサ
ーがクレジットカードの利用を停止してから数ヶ月以内にパフォーマンスが著しく悪化した。破
綻した 6 つのクレジットカード信託のスポンサーと現在証券化されているクレジットカード・ポ
ートフォリオのスポンサーとの間には相違点があるが、現在のスポンサーが深刻な財務悪化に
直面した場合にカード利用を維持する能力が、過去の破綻信託のスポンサーを上回ることは
ないとムーディーズはみている。たとえ高度に事業が分散された金融機関がスポンサーであ
っても、深刻な財務悪化により信用力が低下すれば、カード・プログラムの資金調達を継続す
ることが難しくなり、信託 6の早期償還時にカード利用を維持することが困難になるだろう。
4
JULY 6, 2015
4
これらのケースには、CompuCredit をスポンサーとするアモチゼーション型(リボルビング型ではない)案件 2 件が含まれ
る。
5
言い換えると、ムーディーズが格付を付与している全てのクレジットカード ABS 案件について、追加利用率を 0%と想定
する。
6
この格付手法では必要な場合、「信託」を信託以外の主体が関わるストラクチャーの代用として用いる。英米法とは異な
る法体系が用いられる国・地域では、そのような信託は存在しない。たとえば日本のクレジットカード ABS 案件では分離
された担保プールに債権のみが移転され、口座は移転されず、証券の発行はプールごとに行われる。韓国では、それぞ
れの案件が個別のクレジットカード口座を裏付けとしており、セラーが持分を有する。そのような国・地域では、本レポート
でいうところの「信託」とは「証券化案件」を意味すると理解すべきである。また、信託以外のストラクチャーでも、「セラーの
持分」とはセラーが案件において有する経済的利益を表す負債に総称的に適用されると理解すべきである。これは、信
託ストラクチャーのポートフォリオにおけるセラーの受益権に類似したものである。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
破綻したクレジットカード信託 6 件の裏付資産と現在のクレジットカード債権証券化の裏付資
産との間には著しい相違点があるが、これら 6 件の証券化案件の分析によって、スポンサー
がカードの利用を停止した場合の消費者の普遍的な支払パターンが明らかになる。これらの
一般的な裏付資産のパフォーマンスにみられるパターンは、現在のクレジットカード・ポートフ
ォリオの最大ストレス・シナリオにおいても発生する可能性がある。本格付手法では全ての案
件に一定の(タイプ・大きさの)ストレスを適用しているが、個々の案件のストレス想定には各案
件の裏付資産の特徴を反映させる。したがって、ストレス想定は案件ごとに異なる。ムーディ
ーズは口座が閉鎖された 6 案件のパフォーマンス・データに加え、クレジットカード案件の
個々の裏付資産プールのヒストリカルなパフォーマンス・データを用いて、最大ストレス・シナリ
オにおける要因をモデル化する 7。
「ステップ 1A:ポートフォリオ分析」では、クレジットカード ABS 案件の裏付資産の信用力を決
定する 2 つの要因、すなわちポートフォリオの特徴とスポンサーあるいはサービサーの責務遂
行能力を検討する。次に、チャージオフ率、利回り、元本返済率の 3 つの主要指標にストレス
を加えることによって、案件存続期間におけるストレスを加えた資産のキャッシュフローとストレ
スを加えた支払債務との差額がどのような影響を受けるかを検討する。
ステップ 1A: ポートフォリオ分析
裏付資産の信用力
ポートフォリオの特徴とスポンサー/サービサーの評価
ムーディーズは、案件の裏付資産であるクレジットカード債権の特徴に基づいて、チャージオ
フ率、利回り、元本返済率、等の裏付資産の指標のパフォーマンスを想定する。一般に、クレ
ジットカード証券化に含まれる債権は(1)自国通貨建てであり、(2)適用法に準拠して生成さ
れ、(3)他の担保に供与されていないため信託口座に譲渡することができる。したがって、クレ
ジットカード口座と関連債権は、クレジットカード利用者の真正な金融債務であると想定する。
各債権ポートフォリオの相対的な強みと弱みを、債務者の信用スコア、口座開設時からの経
過期間、裏付資産プールにおけるコンビニエンス・ユーザーの比率やカード商品のタイプ、カ
ードの提携先の構成と集中、債務者の地理的集中、等の分析により評価する。また、ノートの
格付に影響する可能性のある、証券化における地域特有のリスクや他の固有のリスクを考慮
し、分析結果を調整する。
クレジットカード証券化案件の大半は、クレジットカード口座のスポンサーが同じ口座のサービ
サーでもあり、銀行がスポンサー/サービサーになることが一般的である。したがって、ムーディ
ーズは当該当事者のスポンサーとしての能力とサービサーとしての能力の両方を評価する。
スポンサー評価の一部として、ムーディーズはオリジネーション慣行と与信慣行の質と一貫性
を評価し、資産プールの将来の信用力を評価する上でヒストリカル・データがどの程度関連性
を持つかを決定する。その際に、パフォーマンスをヒストリカルなトレンドから逸脱させる要因に
なりそうな方針や戦略の変更を分析する。さらに、信用力の安定したカード口座のオリジネー
ションと与信を、スポンサーが継続するインセンティブを分析する。
サービサーの分析では、支払いの回収、損失緩和、回収率の最大化を行う能力を評価する。
分析の基礎となるのは、(1)過去のサービシング実績の定量分析、(2)サービサーの管理能
力の主観的評価(パフォーマンスを維持するインセンティブと動機を含む)、(3)サービサーが
証券化案件に携わった経験、(4)パフォーマンスに影響するとみられる経営資源の変化の評
価、である。
7
5
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スポンサーが支払不能に陥り口座を閉鎖したケースのクレジットカード証券化のパフォーマンス分析を付録 1 に掲載して
いる。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
スポンサーとサービサーが豊富な経験を持ち、一貫してムーディーズの予想の範囲に収まる
パフォーマンスを示してきた案件には不確実要因が少ない。スポンサーとサービサーが比較
的新しい、あるいは経験が少ない案件では、パフォーマンスの変動性が高まる。米国の案件
でサービサーがサービシングを中断した場合、受託者が最終的なサービサーの役割を引き
受けるか、適当な後継者を見つける責任を負うのが一般的である。したがって、最大ストレス・
シナリオでは、サービサーの交代が発生し、一部のケースでは交代したサービサーがより高
額のサービシング手数料を請求する可能性があることを想定する。
裏付資産のパフォーマンス
ムーディーズは案件の裏付資産プールの相対的な強みと弱み、ならびにサービサーとスポン
サーの責務遂行能力を評価した後、最大ストレスシナリオ(Aaa LGSD シナリオ)における裏付
資産のパフォーマンスを分析する。特に、チャージオフ率、利回り、元本返済率がそうしたシ
ナリオにおいてどのようなパフォーマンスを示すかに注目する。
チャージオフ率に加えるストレス
ほとんどの国では超過スプレッドのマイナスまたはスポンサーの支払不能が発生すれば、そ
の時点でノートの早期償還が開始される。しかし米国では、信託の契約文書にスポンサーの
破産は早期償還事由になることが明記されていても、連邦預金保険公社(FDIC)が信託の早
期償還を開始する理由として認めない可能性がある。したがって、米国の案件ではマイナス
の超過スプレッドのトリガーのみが早期償還事由になると想定する。このシナリオでは、早期
償還開始時のチャージオフ率は、早期償還開始時の利回りの想定のもとで(「利回りに加える
ストレス」を参照)、超過スプレッドがゼロになるチャージオフ率になる。米国以外の国・地域で
は、超過スプレッドがマイナスに転じる前にスポンサーの支払不能によって早期償還事由が
発生すると判断される場合(こうしたケースはパフォーマンスが強固でチャージオフ率が低い
ポートフォリオで発生し得る)、損益分岐点のチャージオフ率ではなく、ベースケース・チャー
ジオフ率の倍数を当初チャージオフ率として設定する。通常、超過スプレッドがマイナスに転
じる時点とスポンサーが支払不能に陥る時点はほぼ等しいことから、2 つのシナリオで生じる
損失率は非常に近似している。
次にムーディーズは、口座閉鎖に伴ってチャージオフ率が急速に上昇し、短期間でピークに
達した後、数ヶ月にわたって定常的なロングラン水準まで徐々に低下していくと想定する。ム
ーディーズは、早期償還期間における最も高いチャージオフ率を、予想するロングランチャー
ジオフ率の倍数と想定する(ほとんどのカード信託で通常 4 倍)。
ムーディーズは信託のヒストリカルパフォーマンスと信用特性に基づいて定常的なロングラン
チャージオフ率の水準を想定する。このチャージオフ率は通常、ポートフォリオの最高チャー
ジオフ率に近いものとなる 8。図表 2 に、標準的なカード信託ポートフォリオの口座閉鎖に伴う
早期償還期間の想定チャージオフ率の想定を示した。
8
6
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早期償還事由の発生直後にコンビニエンス・ユーザー(毎月債務残高を清算するユーザー)はプールから外れると想定
されるため、ロングランチャージオフ率はコンビニエンス・ユーザーではないユーザー(リボルビング・クレジット・ユーザー)
のみからなるプールを基準とする。そのため、コンビニエンス・ユーザーの口座が占める率が高いポートフォリオについて
は、ロングランチャージオフ率は信託されたポートフォリオのヒストリカルな最高チャージオフ率より高くなる。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
図表 2
早期償還期間における標準的なポートフォリオの想定チャージオフ率(年率換算)の例
50%
チャージオフ率(年率換算)
45%
40%
35%
30%
25%
20%
15%
10%
5%
0%
0
1
2
3
4
5
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7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36
口座閉鎖後の経過月数
出所: ムーディーズ・インベスターズ・サービス
注:ここで用いたデータはあくまでも例であり、実際のデータは発行体によって異なる。
早期償還期間におけるチャージオフ率の上昇は、様々な要因が与える影響を想定したもので
ある。
» 口座閉鎖時のカード保有者のカード利用停止。このような事態は、経済的困難に陥ったカ
ード保有者が債務を履行するためのカード支払いを行おうとするインセンティブを損なう。
» 信用力が低い債務者が増える方向に向かうプール構成の変化。早期償還事由発生後、
信用力の高い「コンビニエンス・ユーザー」(毎月債務残高を清算するユーザー)は債務残
高を清算する。
» マクロ経済の低迷(景気後退)。経済的困難に陥るカード保有者が増える 9。
早期償還期間のチャージオフ率は、最大ストレス・シナリオでは信用力の弱い債務者が徐々
に脱落し、その結果チャージオフ率に加わるストレスも次第に弱まっていくとするムーディーズ
の想定も反映している。
利回りに加えるストレス
裏付資産の利回りは、クレジットカード債権残高に付される金利(金融費用) 10、各種手数料
(遅延利息、限度超過手数料、年会費)、加盟店手数料(信用リスクの引き受け、詐欺被害額、
初回請求迄の短期間のクレジットカード債権の資金手当などのため、発行体が加盟店から受
け取る請求額に応じた手数料)で構成される。
Aaa LGSD シナリオでは、(1)加盟店手数料と年会費の受け取りは直ちに停止し(口座が閉鎖
され追加利用ができないと想定するため)、(2)延滞と貸倒が増加して回収額が減少し、(3)利
回りは当初減少した後、コンビニエンス・ユーザー(通常、金融費用を生まない)の減少に伴っ
て急速に安定すると想定する。ムーディーズは、加盟店手数料や年会費の構成に基づいて
ポートフォリオの想定を変える。たとえば、コンビニエンス・ユーザーの比率が高いポートフォリ
オは、加盟店手数料に由来する利回りの比率が不均等に高まる。また、ポートフォリオ構成の
変化や財務困難に陥ったスポンサーが他のスポンサーと競争するために金融費用や各種手
数料を引き下げるリスクを考慮するため、早期償還開始時のムーディーズの利回り想定はヒス
トリカルな利回りよりも低くなる。
一部のポートフォリオでは、市場金利の低下も利回り低下につながる。その可能性について
は、「資産と負債の金利ミスマッチの扱い」で説明する方法で別途調整する。図表 3 に、標準
的なカード信託ポートフォリオの早期償還時における想定利回りの例を示した。
7
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9
景気後退がスポンサーの財務困難の原因あるいはその促進要因になると想定する。
10
ほぼ全てのクレジットカード証券化案件において、キャッシュフローは発生主義ではなく現金主義で配分される。請求金
額と回収金額にはかなり大きな開きがあるため、利回りを考慮する際、この点は特に重要になる。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
図表 3
標準的なポートフォリオの早期償還期間の想定利回り(年率換算)の例
18%
16%
利回り(年率換算)
14%
12%
10%
8%
6%
4%
2%
0%
1
0
2
3
4
5
6
7
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36
8
口座閉鎖後の経過月数
出所: ムーディーズ・インベスターズ・サービス
注:ここで用いたデータはあくまでも例であり、実際のデータは発行体によって異なる。
元本返済率に加えるストレス
» Aaa LGSD シナリオでは、早期償還開始後の数ヶ月で元本返済率が劇的に低下すると想
定する。まず、コンビニエンス・ユーザーは、償還期間開始直後、残高を返済しプールから
抜け出る 11。その結果、残りのカード保有者の加重平均返済率はコンビニエンス・ユーザ
ーの口座を含めたプールの元本返済率よりも低くなる。同様に、元本返済率が比較的高
いカード保有者の残高が残存プールに占める割合が急速に低下していく。そのため、残
高の加重平均元本返済率はさらに低下していく。加えて、新規購入のための代替資金源
を確保できない一部のカード保有者は、口座の閉鎖によって流動性が圧迫される。そのよ
うなカード保有者は、閉鎖した口座の返済を延期せざるを得なくなる。
» したがって、大半のクレジットカード・ポートフォリオの元本返済率は口座の契約上の平均
最低返済率である 3%近傍で安定すると想定する 12。契約内容からみて最低返済率が高
いと考えられるクレジットカード証券化については、想定返済率を引き上げる。
» 図表 4 は、標準的なカード信託ポートフォリオの早期償還期間の想定元本返済率の例を
示している。
図表 4
標準的なポートフォリオの早期償還期間の想定元本返済率の例
14%
月次元本返済率
12%
10%
8%
6%
4%
2%
0%
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36
口座閉鎖後の経過月数
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
注:ここで用いたデータはあくまでも例であり、実際のデータは発行体によって異なる。
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11
データの入手可能性と信託のカードの構成によっては、コンビニエンス・ユーザーが早期償還開始の翌月に債務残高全
額を返済すると想定する場合もある。
12
早期償還開始時の元本返済率の想定は、信託のヒストリカルな元本返済率を基準とし、その時点の想定チャージオフ率
水準の上昇との整合性を図るために下方調整を施す。詳細は「チャージオフ率に加えるストレス」の項を参照されたい。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
ダイリューション(希薄化)
クレジットカード案件におけるダイリューションとは、返済あるいはチャージオフ以外の理由(通
常は商品の返品)により元本金額が減少することである。セラーは通常、ダイリューションによ
る元本の減少を補償する。クレジットカード ABS の場合、ダイリューションにより減少が予想さ
れる元本の金額に合わせてセラーの最低所要持分を設定する。
Aaa LGSD シナリオでは、早期償還開始後の数ヵ月間でダイリューションが発生すると想定す
る。これは、消費者が口座閉鎖前に購入した商品を返品しようとするためである。ただし、希薄
化率はそれぞれの国・地域で消費者が商品を返品する権利を規定する法律によって異なる。
ムーディーズはヒストリカルな月次希薄化率の倍数を、ストレスを加えた想定希薄化率として用
いる。ムーディーズは、ほとんどの信託がセラーの最低持分によりダイリューションを十分に吸
収できると予想しており、そうでないと考える場合はその旨を開示し、それに応じて Aaa LGSD
と Aaa 信用補完(Aaa CE)を調整する。
ステップ 1B: キャッシュフロー分析
案件の仕組みの分析
ストレスを加えたキャッシュフローと支払債務の分析において、ムーディーズは元本と金融費
用の配分を決定する仕組み上の特徴を評価する。評価対象は次の通りである。
» 事務管理手数料やサービシング・フィーなどの各種信託手数料を支払うための金融費用と
回収元本の配分。
» セラー/譲渡人の持分と投資家の持分との間の金融費用と回収元本の配分
» 信託から発行される異なったノートの間での金融費用と回収元本の配分
» 信託におけるセラーの最低所要持分
» 超過スプレッドが一定水準を下回った場合に一部クラスのノートの準備金勘定を増額させ
るために蓄積された金融費用
» 金利および/または通貨スワップ契約、あるいは他のデリバティブ契約やヘッジ契約
» 利回りを高め、それによって超過スプレッドを拡大するために、元本回収額を金融費用に
振り替える「割引」メカニズム。
負債と資産の金利ミスマッチの扱い
ムーディーズは、資産の金利(クレジットカード契約で規定された金利に従ってクレジットカー
ド残高に対し発生する金利)と負債(証券化ノート)の金利のミスマッチの観点からも信託の仕
組みを分析する。クレジットカード残高の金利は固定金利の場合と変動金利の場合があり、
(一定の条件の下でスポンサーが変更できる場合もある)、負債の金利も固定金利か変動金
利(通常 LIBOR ベース)のいずれかとなる。また、ムーディーズは、金利スワップ契約がある
場合その効果を織り込んで評価する。このように、ムーディーズは、資産利回りと負債金利の
スプレッドを縮小しうる金利変動の可能性を考慮してキャッシュフロー分析を調整する。
図表 5 は一般的な米国の案件について、資産・負債ミスマッチを考慮に入れたストレス水準
を示している。ムーディーズはヒストリカルな金利変動に基づいて、関連する市場金利の変化
を複数のシナリオでシミュレートし、Aaa 信頼度を想定したストレスを決定する 13。一般的な分
析では、負債の金利を引き上げるか、資産の金利を引き下げる。いずれのケースでも超過ス
プレッドは縮小する。固定金利資産と変動金利資産、あるいは固定金利負債と変動金利負債
が混合している案件では、それに応じてストレス要因を混合する。信託の全ての証券が支払
金利をシェアする仕組みをとる場合(デリンク・トラスト、「ソーシャリスト」トラストなど)、通常はそ
の信託が変動金利債務しか保有しないと仮定して分析する。これは、クレジットカード証券化
13
9
JULY 6, 2015
米国外の案件を格付する際には、当該国の金利変動と金利環境を考慮した上で同様の方法により金利にストレ
スを加える。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
は継続的発行プログラムであり、発行体は発行ノートの金利をいつでも固定金利から変動金
利に変更できるからである。シリーズ間で支払金利をシェアしない仕組みの場合、各シリーズ
の実際の WAC(加重平均クーポン)を用いる。
図表 5
一般的な米国の案件の資産・負債ミスマッチを考慮して加えられるストレスの水準
負債が変動金利
負債が固定金利
資産が変動 APR(年利率)
2.5%*
% = 参照変動金利†
資産が固定 APR(年利率)
5.0%§
0%
*
米国のプライムレートを指標とした APR と LIBOR ベースの変動金利負債のバッファー
†
このバッファーは、現行金利に基づく変動金利 APR の低下の可能性を考慮している。米国の案件では現行のフェデラル・ファンド・レー
トを用いる。
§
この想定に関しては、現在の金利環境も反映される。高金利環境の場合、このバッファーを削減する可能性がある。
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
資産と負債のミスマッチは、金利スワップや金利キャップなどのデリバティブ商品によって緩和
される場合がある。ムーディーズは、主に次の要因に基づいて緩和の度合いを評価する 14。
» カウンターパーティの信用力
» カウンターパーティの交代を発動させる条件
» デリバティブ商品と債券の期間および残存期間が釣り合う度合い
負債構成が変化する場合の異なる金利の扱いについて
ムーディーズは、シニアノートと劣後ノートの金利差を考慮するため、負債の加重平均金利に
ストレスを加える。シニアノートは劣後ノートより早く償還されるため、両ノートを合わせた加重
平均クーポンは早期償還期間において上昇する。
残存債権の市場価値に加えるストレス
キャッシュフロー分析の一部として、ムーディーズは案件の法定償還期日における残存債
権 15の価値を決定する。ムーディーズの分析に織り込む元本返済率は比較的低いため、通
常、ノートの法定償還期日に債権が一部残存する。また、ほとんどの証券化案件で投資家は
法定償還期日が過ぎればこれらの残存債権を回収する権利を失う。さらに、残存債権の売却
の可能性を確認するため、当該国の流通市場の分析も行う。
口座の閉鎖後、ポートフォリオのパフォーマンスが低下することを考慮して、ムーディーズは残
存債権が額面に対して大幅に割り引かれた価格で売却されると想定し、残存債権の市場価
値を推定する。ムーディーズが用いる割引率は、売却を要請する、あるいは許可する契約条
項、スポンサーの強さ、ポートフォリオの信用力によって決まる。契約により売却が強制される
案件では、最も低い割引率を適用する。信託の契約文書に売却強制条項がない場合は、ポ
ートフォリオの質と当該国の銀行システムにおけるスポンサー銀行の重要性を考慮する。事業
が分散されシステム上重要な金融機関がスポンサーであり 16、証券化ポートフォリオの質が最
高位の案件には、中位の割引率を適用する。
ムーディーズは、事業が分散されシステム上重要な金融機関が最高位の質を持つポートフォ
リオのスポンサーである場合、より脆弱で信用力の低いポートフォリオの管理のみを行うスポン
サーにくらべ、ポートフォリオを滞りなく縮小していくためにより多くの時間と選択肢を用いるこ
とができると予想している。ムーディーズは Aaa LGSD によりポートフォリオの質を測定するが、
Aaa LGSD が最も低いポートフォリオが最良の質を持つポートフォリオと考えられるため、その
際に法定最終償還期間の違いなど法的構造が信用力に与える影響を除去する。残存債権
10
JULY 6, 2015
14
証券化案件におけるスワップ・カウンターパーティに関するクロス・セクター格付手法を参照されたい。
15
残存債権に対する権利は通常、国・地域によって、あるいは同一地域内でも案件によって異なる。
16
ムーディーズによるシステム上重要な金融機関の格付と CR 評価は、その金融機関がある程度の政府サポートの恩恵を
得ることを反映している。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
の売却に関する条項が契約に含まれていない案件、あるいはそのような条項が含まれていて
も拘束力が弱い案件で、スポンサーが最高位の質のクレジットカード事業を手掛ける事業の
分散された金融機関やシステム上重要な金融機関ではない場合、残存債権に最も高い割引
率を適用する。
たとえば、米国のほとんどの案件の信託契約は、最終償還期日に裏付資産を売却することを
義務付けている。この場合、ムーディーズは最も低い割引率を適用し、裏付資産に額面の
55%-60%のヘアカットを施す。他の信託に中位の割引率を適用した場合、ヘアカット率は
65%-70%となり、最も高い割引率を適用すればヘアカット率は約 80%となる。また、クレジット
カード債権ポートフォリオの売却の歴史が浅く、流動性が低い市場では、残存価値をゼロとす
ることもあり得る。
アモチゼーション償還期間(予定償還期日から法定償還期日までの期間)が長くなれば、調
整の対象となる元本残高も減少する。しかし、ムーディーズの最大ストレス・シナリオは口座閉
鎖後一定年数が経過したカード保有者からの支払いに対するクレジットを限定する。一般に、
償還期間に関わるクレジットは約 4 年を上限とする 17。
ムーディーズは、ポートフォリオ評価とキャッシュフロー分析を実施し、Aaa LGSD を導出する。
Aaa LGSD は Aaa (sf)格付に相当する案件の最大ストレス・シナリオにおける信用補完水準で
ある。米国の標準的なクレジットカード案件の Aaa LGSD を算出するためのキャッシュフローの
モデリング方法については、付録 4 を参照されたい。
ステップ 2: Aaa 信用補完の分析にスポンサーの信用力を織り込む
ABS の返済は、主としてノートの裏付資産のパフォーマンスによって左右される。しかし、クレ
ジットカードのようなリボルビング型の消費者ローン商品の資産のパフォーマンスは、ABS での
資金調達の対象にならない貸出限度額のリボルビング部分を拡大することによって口座を維
持するスポンサーの能力に大きく依存する。ムーディーズは、このスポンサーへの依存度を、
依存率を用いて把握する。
ムーディーズは、適用する依存率に応じて Aaa LGSD を引き下げることにより、Aaa (sf) 格付に
相応する信用補完水準を決定する。依存率はスポンサーの CR 評価に応じて変化する。スポ
ンサーの CR 評価が高いほど、依存率は低くなる。この関係は、ポートフォリオのスポンサー
の CR 評価が高ければ最大ストレス・シナリオが実現する可能性は低くなり、従ってスポンサ
ーが口座を閉鎖する可能性も低くなり、厳しい状況下でも信託をサポートする可能性が高くな
ることを示唆している。
CR 評価が非常に低いスポンサーには、ステップ 1 で決定した最大ストレスシナリオ(Aaa
LGSD)を調整せずに用いる。これは、支払不能またはそれに近い状況に陥ったスポンサーは
パフォーマンスが悪化した口座を閉鎖すると想定されるからである。従って、CR 評価が非常
に低い(Ca(cr)など)スポンサーの Aaa LGSD は Aaa CE に等しくなる。
スポンサーの CR 評価が高くなれば Aaa CE はそれだけ低くなる。CR 評価が高いスポンサー
は、パフォーマンスが悪化したクレジットカード・ポートフォリオの口座を選択的に閉鎖したり、
貸出限度額を引き下げたり、そうした戦略をとることのできる別のスポンサーに売却することに
より、パフォーマンスの一層の悪化を防止しようとする可能性が高い 18。前述のとおり、早期償
還事由が発生した場合にスポンサーが口座を維持するには、証券化による資金調達以外の
資金調達源を通して口座に資金を供給する必要がある。CR 評価が高いスポンサーの場合、
そのような調達源から資金調達することが可能である。
11
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17
リボルビング型消費者ローンまたはヒストリカルな返済率が低いクレジットカード商品の予想平均存続期間にマッチさせた
長期償還期間が組み込まれている仕組みでは、クレジットを与える期間をこれより長くする。
18
クレジットカード事業がスポンサーの中核事業ではない場合や、スポンサーがポートフォリオの売却や縮小などによって
クレジットカード事業からの撤退を公表している場合など、特別な状況ではこの想定を調整する。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
また、財務状況が健全なスポンサーはそもそも、債権元本を割り引いて利回りや超過スプレッ
ドを拡大したり、信用力の低いクレジットカード口座をより質の高い口座と入れ替えたりすること
により、案件の早期償還を回避する能力が高い。また、CR 評価が高いスポンサーは案件の
信用補完額を引き上げる能力が高く、それによってノート保有者を早期償還期間中の損失拡
大から保護することができる。
従って、CR 評価が高い主体がスポンサーとなる案件の場合、ムーディーズは Aaa LGSD を
早期償還シナリオにおけるポートフォリオの最大損失水準を決定するためのベンチマークとし
て用い、スポンサーが財務困難に陥る可能性を織り込むためにスポンサーの信用力に応じて
その信用補完水準を引き下げる。特定の案件の Aaa CE は Aaa LGSD に対する比率として示
され、この比率は案件のスポンサーの信用力に基づいて決まる。図表 6 は、ムーディーズが
各案件に通常適用する、スポンサーの CR 評価ごとの依存率である 19。
図表6
スポンサーの CR 評価に応じて決定される Aaa LGSD の指標依存率
Aaa LGSDに対する比率(%)
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
Aaa
Aa1
Aa2
Aa3
A1
A2
A3
Baa1 Baa2 Baa3 Ba1 Ba2
スポンサーのCRA
Ba3
B1
B2
B3 Caa1 Caa2 Caa3 Ca
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
依存率は、クレジットカード ABS が Aaa(sf)格付を達成するための、スポンサーの CR 評価に
基づく Aaa LGSD に対する比率を表している 20。
依存率は(1)口座閉鎖時における厳しいストレスが加わる可能性、および(2)口座は維持され
るがスポンサーが案件をサポートしないと決定した場合、早期償還において発生するとみられ
る不足額を反映する。スポンサーは信託をサポートする契約上の義務を負わないため、たとえ
最も高い CR 評価が付与されたスポンサーの案件でも、Aaa (sf)を達成するためにはある程度
の信用補完が必要である。
CR 評価が高いスポンサーがポートフォリオを閉鎖する可能性は低いため、信用補完の必要
性は、口座のパフォーマンスが超過スプレッドによりチャージオフを完全にカバーできない程
度まで悪化するリスクから生じる 21。経済活動の悪化によりそのようなシナリオが現実化した場
合、スポンサーはパフォーマンスの悪化を緩和する措置をとるのではなく、サポートを提供し
ないことを選ぶ可能性がある 22。案件のパフォーマンスが悪化した場合のスポンサーの対応
を決定する要因のいくつかを次に挙げる。
» スポンサーの財務の健全性
19
20
21
22
12
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図表 6 でプロットした比率は、このリンクから入手可能である。
依存率についての詳細は付録 2 を参照されたい。
これは、信託のエコノミクス、特に超過スプレッドが提供するデフォルトをカバーするためのクッション(早期償還事由の発
生の可能性を左右する)によって決まる。ムーディーズは、超過スプレッドに対するムーディーズの評価を通じて、Aaa
LGSD でもこれを考慮する。
契約関係書類では契約上のサポート義務は定められていないが、クレジットカードのスポンサーには早期償還を回避す
るためにサポートを提供しようとするインセンティブが働く。しかし、他の資金調達手段が閉ざされている場合は、口座を
閉鎖する必要が生じる。実際に、多くのスポンサーが自身のカード・プログラムに(信用補完の追加や債権元本割引メカ
ニズムの使用などによって)部分的サポートを提供してきた。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
» ABS ノートの格下げや投資家の損失が資本市場の風評にどのように影響するかについて
のスポンサーの懸念
» スポンサーにとってのクレジットカード事業(および資金調達手段としてのクレジットカード
証券化)の重要性(たとえば、クレジットカード・セクターが全事業を占める専業会社の場合、
早期償還を回避しようとする強いインセンティブが働く)および過去にサポートを提供した
経緯の有無
» 将来のサポートの会計と税務処理
» 規制環境の下でスポンサーはどの程度、案件にサポートを提供できるか
これらの要因は、パフォーマンスが低い口座に支払能力のあるスポンサーがサポートを提供
する可能性に影響を与え、図表 6 の依存度曲線の形に影響し、その下限水準を決定する。
スポンサーがどのようなタイプにせよ、サポートを提供する可能性が低いとムーディーズが考
える場合、スポンサーの CR 評価にかかわらず、標準的な依存度曲線を上方に調整する可
能性がある 23。スポンサーのデフォルトまたは財務困難以外の理由でクレジットカード口座を
閉鎖する可能性がある場合も、標準的な曲線の範囲内で依存率を調整する場合がある 24。
ムーディーズが Aaa CE 水準を求めるにあたって Aaa LGSD を引き下げる際に用いる依存率
は、スポンサーの CR 評価によって決まる。Aaa CE 水準はスポンサーの CR 評価に応じて変
化する。図表 7 は、スポンサーの信用力の変化に応じて、クレジットカード信託のシニアノート
の格付を Aaa (sf)に維持するために必要な信用補完水準がどのように変化するかを示してい
る。ここでは、Aaa LGSD を 30%とし、図表 6 に基づく依存率を適用する。
図表7
Aaa LGSD が 30%の案件の Aaa CE とスポンサーの CR 評価の関係
35%
30%
Aaa CE
25%
20%
15%
10%
5%
0%
Aaa
Aa1
Aa2
Aa3
A1
A2
A3
Baa1 Baa2 Baa3 Ba1 Ba2
スポンサーのCRA
Ba3
B1
B2
B3
Caa1 Caa2 Caa3
Ca
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
スポンサーのカウンターパーティ・リスク評価
ムーディーズは通常、スポンサーのカウンターパーティ・リスク評価を、スポンサーがクレジット
カード事業から撤退する(したがってポートフォリオを売却する)可能性を示す指標として用い
る。これは、スポンサーが支払不能またはそれに近い状況に陥った場合、口座が閉鎖される
可能性が高まるからである。スポンサーのシニア無担保債務格付や銀行預金格付などの指
標ではなく CR 評価を通常の指標として用いる理由は、適切に破綻処理が行われた金融機
関はクレジットカード債権のオリジネーションといった中核事業を継続すると予想できるからで
ある。CR 評価はこのシナリオを反映している。クレジットカード事業がスポンサーのコア事業と
みなされない場合、あるいは金融機関の破綻時に特に当該事業の存続に関し懸念がある場
合には、ポートフォリオが閉鎖される可能性についてより低い基準を適用することになろう。
13
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23
証券化ストラクチャーにおけるスポンサーの位置付けには、国・地域によって大きな違いがあることをムーディーズは認識
している。これらの違いが関連性を持つと考えられる場合は、ムーディーズの想定に反映させる。たとえば、日本や他の
いくつかの国がこのケースに該当する。詳細については付録 3 を参照されたい。
24
クレジットカード事業がスポンサーの中核事業ではない、スポンサーがポートフォリオの売却あるいは縮小などによってク
レジットカード事業からの撤退を公表しているなど、特別な状況下でムーディーズはこの想定を調整することがある。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
スポンサーが CR 評価の対象とならない場合 25、あるいは CR 評価を持たないスポンサーの
場合、ムーディーズは最も適切な代替指標を用いる。それは例えば、当該スポンサーのシニ
ア無担保債務格付(あるいはそれと同等のもの)、もしくはケースによっては当該スポンサーの
預金格付(あるいはそれと同等のもの)より導き出される場合がある。また、限定的状況下では、
スポンサーに CR 評価も格付もない場合、「ロー・ボラティリティ(変動性の低い)クレジット・エ
スティメート」の対象となる場合がある 26。
CR 評価、格付、クレジット・エスティメートのいずれも利用できない場合、ムーディーズは、Aaa
CE は AaaLGSD に等しいとみなす。従って、シニアノートの信用補完が Aaa LGSD と同等か
それよりも大きい場合、オペレーショナルなリスク、法的リスクおよびカウンターパーティ・リスク
に対し適切な仕組みがなされていることを条件に、(スポンサーの CR 評価を決定していない
場合であっても)Aaa(sf)の格付を付与することができる。
ステップ 3: シニアノートおよび劣後ノートの分析
ステップ 1 および 2 において、案件の Aaa LGSD および依存度曲線により決定したヘアカット
から Aaa CE を導出した。格付分析のステップ 3 では、シニアノートが利用可能な信用補完の
Aaa CE に対する比率を考慮し、それが Aaa (sf)格付を支えるのに十分な金額かどうかを決定
する。劣後ノートについても、スポンサーの CR 評価、利用可能な信用補完の金額、劣後ノー
トの期待損失規模を考慮し、格付評価を行う。
ステップ 3A: 信用補完が Aaa (sf)に必要とされる水準を下回る、あるいは上回るシニア
ノート
信用補完が Aaa (sf)の格付に相応する水準を下回るクレジットカード証券化については、利用
可能な信用補完水準を反映させるため、ノートの格付を調整する。
ムーディーズは、利用可能な信用補完の Aaa CE に対する比率と、ある指標格付に対応する
同比率を比較する。図表 8 は、利用可能な信用補完の Aaa CE に対する比率(%)と、ムーデ
ィーズが定量的・定性的調整を行う前の段階でシニアノートが該当する格付レンジとのおおよ
その関係を示したものである。
図表8
シニアノートのモデル・アウトプットと利用可能 CE/Aaa CE 比率の対応
利用可能な信用補完/Aaa CE
100%
90%
80%
70%
60%
グレーゾーンAaa- Aa1
50%
40%
30%
20%
10%
0%
Aaa
Aa
A
指標 (sf) アウトプットの範囲
Baa
Ba and below
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
図表 6 および図表 8 から、スポンサーの CR 評価変更がシニアノートの格付にどのような影
響を与えるかを判断できる。たとえば、案件の Aaa LGSD が 30%、スポンサーの当初 CR 評
価が A2(cr)とする。図表 6 から CR 評価が A2(cr)のスポンサーの依存率は 43%となり、従っ
て当初の Aaa CE は 12.9%となる(0.43×30%)。
25
26
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例えば当該主体が、銀行や、銀行に準じた事業主体ではない場合。
証券化案件におけるクレジット・エスティメートの使用に関するクロス・セクター格付手法を参照されたい。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
スポンサーの CR 評価が Baa1(cr)に低下したと仮定した場合、依存率は 55%に上昇する。そ
の結果、Aaa CE は 16.5%に上昇する(0.55×30%)。シニアノートの信用補完は 12.9%にとど
まるため、新たな Aaa CE の 78%となる(12.9%/16.5%)。その結果、この比率だけに従うと、
シニアノートの格付は(図表 8 に従って)Aa1(sf)に引き下げられる可能性が高まる。さらに、信
託ごとの特性を考慮した調整が必要となる。
図表 9 は、当初 CR 評価が Aa2(cr)と A2(cr)の 2 つのスポンサーの最終 CR 評価が Ca(cr)ま
で引き下げられたことに伴うシニアノートの格付変更の例を示す。ここでは、利用可能な信用
補完には変化がないと仮定し、法的リスクやオペレーショナル・リスク、その他の定量的・定性
的調整は考慮しないものとする。図表 9 の実線は、利用可能な信用補完がスポンサーの当初
CR 評価に対応する Aaa CE と等しい案件のノートの格付の変化を示し、破線は利用可能な
信用補完がスポンサーの当初 CR 評価が対応する Aaa CE の 130%になる案件のノートの格
付の変化を示している。
CE/Aaa CE が 130%となる案件を例示したのは、スポンサーの CR 評価 の低下に伴いシニア
ノートの格付が低下する度合いが小さいことを示すためである。スポンサーの CR 評価が
Aa2(cr)である 130%のケースでは、スポンサーが A1(cr)以上の CR 評価を維持する限り、シニ
アノートは Aaa (sf)の格付を維持する。スポンサーの格付が A2(cr)である 130%のケースでは、
スポンサーが Baa2(cr)以上の CR 評価を維持する限り、シニアノートは Aaa (sf)の格付を維持
する。
図表 9
シニアノート格付 (sf)
スポンサーの CR 評価引き下げに伴うシニアノートの Aaa (sf)からの格付遷移の例
Aa2のスポンサー、信用補完がAaa CEと等しい
Aa2のスポンサー、信用補完がAaa CEの130%
0.5
Aaa
1.5
Aa1
2.5
Aa2
3.5
Aa3
4.5
A1
5.5
A2
6.5
A3
7.5
Baa1
8.5
Baa2
9.5
Baa3
10.5
Ba1
11.5
Ba2
12.5
Ba3
13.5
B1
14.5
B2
15.5
B3
16.5
Caa1
17.5
Caa2
18.5
Caa3
19.5
Ca
20.5
Aaa
Aa1
Aa2
Aa3
A1
A2
A3
Baa1 Baa2 Baa3 Ba1
A2のスポンサー、信用補完がAaa CEと等しい
A2のスポンサー、信用補完がAaa CEの130%
Ba2
Ba3
B1
B2
B3
Caa1 Caa2 Caa3 Ca
スポンサーCRAの遷移 ---->
注:本例では、(1) Aaa LGSD が 30%、(2)CR 評価が Aa2(cr)のスポンサーと CR 評価が A2(cr)のスポンサーがあり、後にそれぞれの CR 評価が
Ca(cr)まで引き下げられ、(3)スポンサーは案件に信用補完を全く追加しないと仮定している。
実線で示した例では、当初の Aaa CE は、Aaa LGSD とスポンサーの当初 CR 評価に基づく図表 6 の依存率の積となる。スポンサーの CR 評価
の引き下げに伴って、Aaa LGSD と新たなスポンサーの CR 評価に応じて調整された依存率の積が新たな Aaa CE になる。次に、ムーディーズ
は、当初の Aaa CE の新たな Aaa CE に対する比率を計算して、図表 8 を用いその比率をモデル・アウトプットに対応させる。
破線で示したシナリオの Aaa CE は、実線で示したシナリオの当初 Aaa CE の 130%である。
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
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JULY 6, 2015
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
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ステップ 3B: 劣後ノートの分析
ムーディーズは、スポンサーの CR 評価、利用可能な信用補完の Aaa CE に対する比率、劣
後ノートの期待損失規模を考慮して、劣後ノートの格付評価を行う。
劣後ノート格付はスポンサーの信用力に対する感応度が高い
案件の劣後ノートはサイズが小さく信用補完が限られるため、パフォーマンスがスポンサーの
財務の健全性に相関する度合いは通常、シニアノートに比べ高くなる。スポンサーが財務困
難に陥り口座を閉鎖した場合、プールのパフォーマンスの悪化に伴って発生する不足額を吸
収する信用補完が十分でない限り、劣後ノートに損失が発生する可能性が高くなる。
一般的にスポンサーは出来る限り信託をサポートしようとすると想定されるので、スポンサーが
財務困難に陥っていないとしても、劣後ノートの格付は依然、スポンサーの信用力の影響を
受け易い。ムーディーズは通常、劣後ノートの期待損失率が約 50%の場合、一般的にスポン
サーは財務困難に陥っていない限り信託をサポートすると予想されるため、劣後ノートをスポ
ンサーの CR 評価マイナス 2 ノッチより低い水準に格付することはない。
しかし、スポンサーは契約上、案件のサポートを義務付けられていないことから、将来スポンサ
ーのサポートが得られる可能性に与えるクレジットには上限を設ける。その結果、劣後ノートを
サポートする実体的信用補完(劣後構造や超過担保など)がゼロかまたは限られている場合
には、劣後ノートに Baa1(sf)を超える格付を付与することはない。
損失規模の評価
劣後ノートはサイズが小さいため、信用補完を超過する不足金額の大きさに対応して債券損
失の規模が拡大することから、損失規模は重要な考慮事項である。たとえば、100 ドルのシニ
アノートから 2 ドルの損失が発生した場合、損失率は 2%であるが、5 ドルの劣後ノートから 2
ドルの損失が発生すれば損失率は 40%になる。
劣後ノートの損失規模を評価するため、ムーディーズは Aaa LGSD の導出に用いたシナリオ
よりも小さいストレスを加えるシナリオを決定する。このシナリオでは、ポートフォリオの閉鎖に
伴うプールの期待損失を想定し、次にスポンサー・デフォルト時の期待損失(ELGSD)、劣後
ノートの信用補完、資本構成における劣後ノートの相対的なサイズを用いて、条件付き損失
規模を算出する。
ELGSD シナリオは、ムーディーズが劣後ノート格付を導出するために用いる重要な情報であ
る。ムーディーズは、Aaa LGSD を評価する案件ごとに ELGSD も決定する。Aaa LGSD の
ELGSD に対する倍率は 3 倍から 10 倍のレンジになるとみられる。ELGSD が小さいほど倍率
が高くなる。図表 10 は、Aaa LGSD の水準と ELGSD の水準との対応を示している。
16
JULY 6, 2015
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
図表 10
Aaa LGSD の水準とそれに対応する指標 ELGSD
Aaa LGSD
ELGSD
Aaa LGSD
ELGSD
15.0%
1.5%
31.0%
8.0%
16.0%
1.6%
32.0%
8.5%
17.0%
1.8%
33.0%
9.0%
18.0%
2.0%
34.0%
9.5%
19.0%
2.2%
35.0%
10.0%
20.0%
2.5%
36.0%
10.5%
21.0%
3.0%
37.0%
11.0%
22.0%
3.5%
38.0%
11.5%
23.0%
4.0%
39.0%
12.0%
24.0%
4.5%
40.0%
12.5%
25.0%
5.0%
41.0%
13.0%
26.0%
5.5%
42.0%
13.5%
27.0%
6.0%
43.0%
14.0%
28.0%
6.5%
44.0%
14.5%
29.0%
7.0%
45.0%
15.0%
30.0%
7.5%
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
利用可能 CE/Aaa CE 比率の使用と損失規模の調整
劣後ノートについては、まず利用可能な信用補完の Aaa CE に対する比率を考慮する(図表
8 参照)。次に、図表 8 に示されるアウトプットを下方調整する。スポンサー・デフォルト時損失
率が約 50%の劣後ノートに対するベースラインの調整幅は 2 ノッチである。
損失率が極めて高くなる 27と予想される劣後ノートについては、下方調整の幅を 1 ノッチ追加
する。逆に、損失率が低くなる 28と予想される劣後ノートについては、上方調整を行う。ムーデ
ィーズは、案件の ELGSD、劣後ノートをサポートする信用補完、劣後ノートの規模を用いて劣
後ノートの期待損失率を算出する。たとえば、クラス B 劣後ノートが投資金額の 7%を占め、そ
の下に投資金額の 8%のクラス C ノートがあり、ELGSD が 10%とすれば、クラス B ノートの損
失率は 29%になると予想される(損失率 10%-クラス C ノート 8%=7%のクラス B ノートに適
用される損失率 2%)
要約すれば、モデルから導出される劣後ノート(sf)格付は、次の 2 つのいずれか高い方になる。
1) 利用可能な信用補完の Aaa CE に対する比率から導出される格付(損失規模に応じて 1
-3 ノッチ下方調整)
2) Baa1 (損失規模に応じて 1 ノッチ上方または下方に調整する場合がある)とスポンサーの
CR 評価(損失規模に応じて 1-3 ノッチ下方修正)のいずれか低い方
図表 11 は、信用補完は変わらないとして、スポンサーの CR 評価が当初の A2(cr)から変更さ
れた場合、1 つのシニアノートと 2 つの劣後ノートの当初格付がどのように遷移するかを示し
ている(法的リスク、オペレーショナル・リスクは考慮しない)。それぞれのスポンサーの CR 評
価レベルには、利用可能 CE 対 Aaa CE 比率の分母となる Aaa CE が関連付けられる。図表 8
に示すフレームワークと劣後ノートの損失調整を適用して、各クラスのノートと各スポンサーの
CR 評価レベルに対応するモデルによる格付を決定する。更には、その結果に対し、証券化
17
JULY 6, 2015
27
一般に、ムーディーズの 3 年期待損失テーブルに基づく損失率が 70%を超える場合。
28
一般に、ムーディーズの 3 年期待損失テーブルに基づく損失率が 30%を下回る場合。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
商品がデフォルトした場合のムーディーズのアプローチを適用する場合、ノート格付に上限を
設定する場合がある。
図表 11
A2(cr)のスポンサーによる ABS ノートの格付遷移の例示:スポンサーCR 評価の変更に伴う信用
補完の調整はないと仮定
クラスA
クラスB
クラスC
Aaa
Aa1
ノートの格付のモデル・アウトプット
Aa2
Aa3
A1
A2
A3
Baa1
Baa2
Baa3
Ba1
Ba2
Ba3
B1
B2
B3
Caa1
Caa2
Caa3
Ca
Aaa
Aa1
Aa2
Aa3
A1
A2
A3
Baa1 Baa2 Baa3
Ba1
Ba2
Ba3
B1
B2
B3
Caa1 Caa2 Caa3
スポンサーCRAの遷移---->
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
図表 11 の前提
Aaa CE の計算
Aaa LGSD
スポンサーの CR 評価
35%
A2(cr)
依存率
43%
Aaa CE
15%
スポンサー・デフォルト時期待損失
10%
クラス A
クラス B
ノートの規模 (投資金額に占める割合)
85%
7%
8%
ノートの信用補完(投資金額に占める割合)
15%
8%
0%
100%
53%
0%
資本構造
利用可能 CE/Aaa CE
スポンサー・デフォルト時期待損失
ノートの当初格付
クラス C
0%
29%
100%
Aaa (sf)
A2 (sf)
Baa2 (sf)
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
ノートの利用可能な信用補完に含まれる超過スプレッド蓄積メカニズムを考慮
シニアまたは劣後ノートが利用できる信用補完は通常、劣後構造、準備金勘定、その他の形
態のハード補完、および超過スプレッドの蓄積を開始させるトリガーに与えるムーディーズのク
レジットで構成される。ムーディーズの格付アプローチでは、信託のパフォーマンスが以前の
早期償還の時と同じペースで悪化した場合に、どれだけの超過スプレッドを蓄積できるかに
基づいて、各信託の超過スプレッドに与えるクレジットを決定する。さらに、そのトリガーの恩恵
を受けるノートの格付に応じて、この量にストレスを追加する。すなわち、ノートの格付が高け
ればトリガーに与えるクレジットは低くなる。
過去の早期償還では、全般に蓄積メカニズムは投資家にとってほとんど無価値だった 29。そ
れらのメカニズムでは信託が早期償還を開始する前に捕捉できた超過スプレッドの額が極め
29
18
JULY 6, 2015
トリガーを厳格に規定し、また元本返済率と延滞水準を用いて超過スプレッド蓄積の時期と方法を決定していた First
Consumers は例外。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
て少なかったことがその理由である。ムーディーズは、トリガーの厳格性(早期償還に先立って
発行体が超過スプレッド蓄積を開始する時期)や案件が超過スプレッドの蓄積を実施する際
の基準として規定する指標などに基づいて、超過スプレッド蓄積トリガーに与えるクレジットを
調整していく。
ステップ 4: 最終リスク評価
クレジットカード ABS の格付アプローチの最終段階では、裏付資産と仕組みの分析を補完す
る最終リスクの評価を行い、最終格付を決定する。
ムーディーズの定量モデルのアウトプットは、格付委員会の格付プロセスにおける重要な情
報である。しかし、格付委員会が付与する実際の格付は、チャージオフ率、利回り、返済率の
想定に対する様々な感応度分析の結果に加え、オペレーショナル・リスク、法的リスク、カウン
ターパーティ・リスク、コミングリング・リスク、ソブリン・リスクに関連した定量・定性評価など、他
の要因も多数考慮している。
このステップでは、オペレーショナル・リスク、法的リスク、カウンターパーティ・リスク、コミング
ル・リスク等の案件固有のリスクを織り込むため、依存度曲線から導出した Aaa CE を調整する。
この種の高いリスクが存在し、適切な仕組み上の手当てや追加信用補完、流動性によってそ
れらのリスクが十分に緩和されない場合、案件の格付に上限を設定する可能性がある。
オペレーショナル・リスク
30
オペレーショナル・リスクは、サービサーの支払不能がサービシングとキャッシュ・マネジメント
に与える影響や、それを緩和するサービサー交代トリガーなどの仕組み上の手当てに関連す
る。オペレーショナル・リスクは、(1) 案件当事者が重要な責務を十分に遂行できないこと、お
よび(2) 破産後または破産管財人による財産保全手続きの開始後に案件当事者が責務を遂
行しないことから発生する。オペレーショナル・リスクに対する十分な仕組み上の手当てが設
定されていない案件では、ノートの格付の上限を引き下げる場合がある。
法的リスク
ムーディーズは、案件固有の仕組み上の特徴など、明示的にモデル化していない案件の法
的仕組みを評価する。ムーディーズは案件の法的側面を分析する際に、契約文書が資産の
質と案件の仕組みに関するムーディーズの想定を反映していることを確認する。法的リスクの
分析では、リーガル・オピニオンも精査し、資産の信託口座への預託、信託の倒産隔離、その
他の国・地域固有の問題に関する懸念に対する手当てが適切になされていることを確認する。
カウンターパーティ・リスク
31
ムーディーズはキャッシュフロー・モデルを用いずにカウンターパーティ・デフォルトリスクを評
価する。その結果によっては、モデルによる評価を調整し、案件ごとに格付に上限を設定する。
この評価では、カウンターパーティ交代トリガーなどの仕組み上のリスク緩和措置を考慮する。
カウンターパーティ・デフォルトリスクの主な要素は、スワップ・リスク、業務が中断するリスク、
案件に関わる銀行口座のデフォルトリスクに関連している。
キャッシュフロー型証券化商品におけるスワップ・カウンターパーティとのリンク度が格付に与
える影響を評価するためのムーディーズのアプローチは、次のような多くの要因によって決ま
る。(1)カウンターパーティの信用力、(2)スワップ契約文書のトリガー条項、(3)スワップ契約
のタイプと期間、(4)ノートをサポートする信用補完の金額、(5)関連するトランシェのサイズ、
(6)スワップ・カウンターパーティとのリンク度の影響を調整する前のノートの格付。
30
31
19
JULY 6, 2015
証券化案件におけるオペレーショナル・リスクに関するクロス・セクター格付手法を参照されたい。
証券化案件におけるスワップ・カウンターパーティに関するクロス・セクター格付手法を参照されたい。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
コミングリング・リスク
32
ムーディーズは、案件から回収したキャッシュがサービサーにより発行体に送金されないリスク
を評価する。特に、サービサーがキャッシュの受領を継続している時点で破産することがある
かどうかを評価する。
このようなコミングリングが発生する確率は、主としてサービサーの信用力とキャッシュの送金
先変更トリガーの有効性によって決まる 33。コミングリングにより案件に損失が発生するかどう
か、また、どの程度の損失が発生するかは、案件の契約文書で規定された発行体の権利、サ
ービサーから発行体への送金の頻度、サービサーの破産前の期待月次返済率、送金先変更
までに必要な時間、当該国・地域で適用される法律・規制など、多くの要因によって左右され
る。
回収口座提供者とサービサー(スポンサー)が同じ主体となる状況では、ムーディーズは、追
加の考慮事項として、サービシング契約を解約するのに要する時間、サービサーが決済シス
テムを利用できなくなる可能性、およびコミングリングされた金額の回収率(通常 45%)なども
検討する。
ムーディーズは、コミングリング・リスクが格付に与える影響を、(1)案件から損失が発生する確
率とその規模、(2)利用可能な信用補完、(3)コミングリング・リスクを織り込む前のノートの格
付、(4)コミングリング・リスクがノート保有者に対して期日通りの支払いを行う発行体の能力に
与える影響、を考慮して決定する。
ソブリン・リスク
案件の資産、オリジネーターあるいは発行体の所在国によっては、案件にシステミックな経済
リスク、法的リスクあるいは政治リスクが発生し、投資家に約定どおりの支払いを履行する能力
に影響を与える可能性がある。ムーディーズは通常、ソブリン・シーリングに関する格付手法
に従って、自国通貨建てシーリングを適用することにより、そのようなリスクを分析に織り込む。
モニタリング
ムーディーズは通常、本レポートで説明したアプローチの主要部分を案件のモニタリングに適
用するが、変化していない法的構造のレビューといった時間の経過に伴い関連性が低下する
要素は例外とする。また、案件のモニタリングに用いる詳細なデータを案件ごとに受領する。
既存のクレジットカード案件のパフォーマンスのモニタリングにおいて、ムーディーズは一般的
な規制環境とマクロ経済環境、裏付資産のパフォーマンス、オリジネーター、サービサーおよ
び案件の他の当事者に関する動向、信用補完の金額と形態、法的構造の信頼性に影響を与
える要因を追跡する。モニタリングの出発点は通常、スポンサーの信用力および予想と比較し
た裏付資産のパフォーマンスである。
ムーディーズは、次に挙げる特徴を持つクレジットカード ABS 案件については、格付の付与
や維持は行わない。
» 債務者の有効数 34が 75 35以下に減少した際に、信用補完の下限や準備金の下限などの
サポートメカニズムを持たない案件
20
JULY 6, 2015
32
証券化案件におけるキャッシュ・コミングリング・リスクに関するクロス・セクター格付手法を参照されたい。
33
この点に関しムーディーズが懸念するのは、破産した主体が証券化案件から回収されたキャッシュを保有する可能性で
ある。通常サービサーの CR 評価は、その主体の無担保債務が全額返済されない場合でも、(たとえキャッシュの送金先
変更トリガーの影響を考慮しなくとも)サービサーが支払いを継続する可能性を捉えている。こうしたサービサーが CR 評
価を持たない場合、ムーディーズは最適と考える代替指標を用いるが、それはたとえば、当該サービサーのシニア無担
保債務格付(あるいはそれと同等のもの)、もしくはケースによっては当該サービサーの預金格付(あるいはそれと同等の
もの)より導き出される場合がある。
34
有効数は、プールの債務者の名目数を用いずにプールの分散を測定する指標で、ローンの実際の規模を考慮し、それ
を同一規模のエクスポー2ャーから見た数字として表すためのものである。債務者の有効数は、数式:
𝐸𝐸𝐸𝐸𝐸𝐸𝐸𝐸𝐸𝐸𝐸𝐸𝐸𝐸𝐸𝐸𝐸𝐸 𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁 𝑜𝑜𝑜𝑜 𝑛𝑛 𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵 = 1/ ∑𝑛𝑛1(𝑊𝑊𝑊𝑊)2 によって表される。ここで、 Wi はプール全体における債務者 i の
比重である。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
» 債務者の有効数が 50 36以下に減少した際に、債務者一人当たりへのエクスポージャーの
増加に対し、準備金または信用補完の設定が不十分である案件
しかし、格付がムーディーズによる個々の債務者の信用力評価に依存しない証券、たとえば
プールのレベルにせよノートのレベルにせよ、完全且つ無条件の第三者保証の恩恵を受ける
証券は引き続きモニタリングする 37。また、全額の現金担保が設定されている証券も引き続き
モニタリングする。
21
JULY 6, 2015
35
有効数が得られない場合は、債務者の数 130 を閾値として用いる。債務者の有効数が得られない場合は、ローンの有
効数を用いる。
36
有効数が得られない場合は、債務者の数 90 を閾値として用いる。
37
証券化商品については、格付はサポート提供者の格付と、公表または非公表のアンダーライイング・レーティングのいず
れか高いほうとなる。金融保証会社の格付が投機的等級に格下げされた場合、ムーディーズは、アンダーライイング・レ
ーティングが公表されない証券の格付を取り下げる。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
付録 1:口座閉鎖がクレジットカード信託のパフォーマンスに与える影響-過去の
事例の分析
クレジットカード案件のスポンサーがパフォーマンスの悪い案件の口座を全て閉鎖した事例は
過去に 6 件あった。それら 6 件は全てが、関連する案件のスポンサーの財務基盤が弱く、口
座を維持できなくなったケースだった。一般に、口座の閉鎖は債権のパフォーマンスの一層
の悪化につながる。閉鎖された 6 つのカード・ポートフォリオは、Advanta Business Card Master
Trust 、 CompuCredit Acquired Business Portfolio Trust 、 CompuCredit Acquired Portfolio
Voltage Master Business Trust、First Consumers Credit Card Master Note Trust、 Spiegel Credit
Card Master Note Trust および NextCard Master Note Trust のポートフォリオだった。
口座閉鎖後、信託のパフォーマンスは悪化
スポンサーがクレジットカードの口座を閉鎖したケースでは全体的に、口座閉鎖後にパフォー
マンスが大幅に悪化した。全般に、カード保有者がクレジットカードの利用を停止されたことに
伴い、債務返済意欲が大幅に低下したことによって、元本返済率の低下、チャージオフ率の
上昇、利回りの低下が見られた。
元本返済率は急激に低下。全体に、スポンサーがカード利用を停止した数カ月後には、元本
返済率はほぼ最低返済率に近い 3%-4%のレンジに低下しその近傍で推移した(図表1A 参
照)。例外は Spiegel Trust で、同社の元本返済率は口座閉鎖の前に既に 3%-4%のレンジだ
ったが、その後は全体にそれよりやや高めで推移した。
図表1A
元本返済率(%)
24
22
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
Advanta Business Card Master Trust
NextCard Credit Card Master Note Trust
CompuCredit Voltage
-20 -18 -16 -14 -12 -10 -8 -6 -4 -2
0
First Consumers Credit Card Master Note Trust
Spiegel Credit Card Master Note Trust, Series 2001-A
CompuCredit APBT
2
4
6
8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36
口座閉鎖後の経過月数
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
チャージオフ率は急激に上昇。口座閉鎖後の 6-12 カ月にチャージオフ率が急激に上昇した。
チャージオフ率は、図表 1B に示すように、その後 2 年間で徐々に低下し、ほぼ早期償還前
の水準近くに戻った。口座閉鎖の結果、外部要因調整後、6 つの信託のうちの 5 つの信託に
ついてチャージオフ率が上昇したことがわかる。例外は CompuCredit Voltage Trust で、口座
閉鎖後 12 カ月の平均チャージオフ率が低下した。口座閉鎖が発生したのは 2010 年末で、
当時は、マクロ経済が全般に改善していたことがその理由と推定される。
22
JULY 6, 2015
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
図表1B
口座閉鎖月(第 0 月)を基準としたチャージオフ率
Advanta Business Card Master Trust
NextCard Credit Card Master Note Trust
CompuCredit Voltage
300%
First Consumers Credit Card Master Note Trust
Spiegel Credit Card Master Note Trust, Series 2001-A
CompuCredit APBT
250%
200%
150%
100%
50%
0%
-20 -18 -16 -14 -12 -10 -8 -6 -4 -2
0
2
4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36
口座閉鎖後の経過月数
注: Advanta のチャージオフ率については、サービサーのチャージオフ方針の変更が当初の上昇とその後(16 カ月目)における反転を説明
する理由となる。
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
利回りは徐々に低下後、安定。図表 1C は、全般に、口座閉鎖後、利回りが緩やかに低下し、
その後安定する状況を示している。First Consumers Trust の利回りは口座閉鎖前にも低下し
ていたが、口座閉鎖後はそのスピードを上回って低下した。
全般的な傾向は互いに相殺的な 2 つの効果を示している。
» スポンサーが口座を閉鎖した後は、加盟店手数料や年会費を徴収することができなくなっ
た。それらの費用は通常、利回りの約 15%を占める。
» 通常は金融費用を発生させないコンビニエンス・ユーザーの減少が加盟店手数料と年会
費の喪失を部分的に相殺した。
図表1C
口座閉鎖月(第 0 月)を基準とした利回り
200%
Advanta Business Card Master Trust
NextCard Credit Card Master Note Trust
CompuCredit Voltage
First Consumers Credit Card Master Note Trust
Spiegel Credit Card Master Note Trust, Series 2001-A
CompuCredit APBT
180%
160%
140%
120%
100%
80%
60%
40%
20%
0%
-20 -18 -16 -14 -12 -10 -8 -6 -4 -2
0
2
4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36
口座閉鎖後の経過月数
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
23
JULY 6, 2015
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
最終償還期日までの完全返済への影響
これらの案件の元本返済率がカードの最短返済期間に向かって低下して行くのに合わせ、ノ
ート保有者への支払いも低下するため、最終償還期日までに ABS が償還されないリスクが増
大した。しかし、図表 1D が示すように、ほとんどの場合において、ノートは最終償還期日まで
に償還(または償却)された。
図表 1D
最終償還期日までにほとんどのノートが償還または償却された。
NextCard
Master Note
Trust1
CompuCredit
CompuCredit
Acquired Portfolio
Spiegel Credit
First Consumers
Card Master Note Credit Card
Advanta Business Acquired Business Voltage Master
Trust
Master Note Trust Card Master Trust Portfolio Trust4 Business Trust4
クラス A
完済
完済 2
クラス B
クラス C
完済
完済
完済
部分償却
一例を除く部分
償却(次セクショ
ン参照)
部分償却
完済または
完全償却
完済
完済
完済
ほぼ完済 3
クラス D
1
2
3
4
完全償却
完全償却
2002 年 7 月に管財人の FDIC は NextCard が証券化信託外で保有していた債権の一部を CardWorks に売却した。その時点では、FDIC
は NextBank の残余持分と信託のサービシングの権利の買い手を見つけることができなかった。
案件は MBIA の保証の恩恵を受けた。
シリーズ 2001-A のクラス C は、早期償還以前に蓄積され、それが排他的に享受できる超過スプレッドによって、最終償還期日の 1 カ月
前まで完全に返済可能な状況だった。その後の情報は入手できていない。
CompuCredit の両案件の資本構造は、クラス A1、A2、A3、A4 とクラス B で構成されていた。
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
Advanta は例外
Advanta 信託には、早期償還期間の開始時点で 24 シリーズのノートが残存していた。そのう
ち最終償還期日までに完全償還もしくは完全償却も行なわれなかったのは1シリーズのみだ
った。具体的には、クラス B 2006-B1 ノートが当初ノート発行額の約 5%の残高を残して最終
償還期日を迎えた。これらのノートの投資家は、キャッシュフローに対する権利を最終償還期
日以降に延期する効果を持つ差し押さえ証書を受領した。Advanta とは違い、米国の他の信
託は、ABS ノートが最終償還期日までに完済されないか、完全に償却されない場合、ノートの
裏付けとなる残存債権の売却が行われる。
信託閉鎖時の状況
Advanta Business Card Master Trust
クレジットカード専業銀行の Advanta は 2009 年 6 月、Business Card Master Trust が早期償還
事由に抵触した際に、同信託の口座を閉鎖した。2009 年 11 月、Advanta Bank の親会社の
Advanta Corp は破産申請を行ない、2010 年 3 月には Advanta Bank 自身がレシーバーシッ
プ(財産保全管理手続)に入った。信託の対象となったクレジットカードの債務者は信用力の
高い小企業だった。口座閉鎖時、ムーディーズは Advanta に Caa3 の格付を付与していた。
CompuCredit:
Acquired Business Portfolio Trust と CompuCredit Acquired Portfolio Voltage Master Business
Trust
信託の仕組みが標準的なクレジットカード信託のそれとは顕著に異なる Acquired Business
Portfolio Trust と CompuCredit Acquired Portfolio Voltage Master Business Trust は、信託ストラ
クチャーの特性から、発行直後に償還を開始した。そのため、この CompuCredit の 2 つの信
託はいずれもスポンサーの継続的な資金調達源として機能しておらず、CompuCredit がパフ
24
JULY 6, 2015
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
ォーマンスの悪化したカード口座を維持するインセンティブは、一般的なアモチゼーション案
件として仕組まれていたとした場合のようには高くなかった 38。
CompuCredit’s Business Portfolio Trust は、サブプライム層の債務者のクレジットカード債権に
よって裏付けられていた。CompuCredit は他のオリジネーターからそれらの口座を購入してい
た。CompuCredit はこの案件の裏付けとなっていた全口座を閉鎖し、超過スプレッドが 2008
年の最初の三・四半期の平均 3.4%から第 4 四半期に 0.5%に、2008 年 12 月にはマイナス
0.9%に低下した後、2008 年末にポートフォリオは清算モードに入った 39。ムーディーズは、
CompuCredit が口座を閉鎖した時に同社に格付を付与していなかった。この証券化商品は
2011 年に完全に償還された。
CompuCredit’s Voltage Master Business Trust は、比較的信用力の弱い消費者のクレジットカ
ード債権によって裏付けられていた。同信託はそれらの債権を他のオリジネーターから購入し
ていた。証券を裏付けるプールの超過スプレッドは、2007 年 5 月の案件開始から 2010 年 11
月に CompuCredit が口座を閉鎖するまでほとんどの月でマイナスだった(平均超過スプレッド
はマイナス 1.9%)。ムーディーズは、CompuCredit が口座を閉鎖時に同社に格付を付与して
いなかった。
First Consumers National Bank:
First Consumers Credit Card Master Note Trust と Spiegel Credit Card Master Note Trust
First Consumers’ and Spiegel 信託のスポンサーは、Spiegel, Inc.(無格付)が所有する、First
Consumer National Bank (FCNB) ( 同 じ く 無 格 付 の ク レ ジ ッ ト カ ー ド 銀 行 ) だ っ た 。 First
Consumers 信託は、ほとんどがサブプライム層を対象とする汎用カードから生成される債権に
よって裏付けられていた。Spiegel 信託は Spiegel の自社ブランドの流通系クレジットカードによ
って裏付けられており、これもほとんどがサブプライム層であった。
信託は 2002 年 5 月に FCNB が財産保全管理手続きに入った時に早期償還トリガーに抵触
したにも関わらず、保全管理人の FDIC は早期償還を却下した 40 。2003 年 3 月、First
Consumers の信託の超過スプレッドがゼロを下回った時、通貨監督庁(OCC)は直ちに FCNB
に両案件を裏付ける口座の閉鎖を命じた。First Consumers 信託の場合、口座閉鎖直前の 3
カ月(2002 年 12 月から 2003 年 2 月まで)の平均超過スプレッドはマイナス 1.0%だった(そ
れに先立つ 12 カ月は 6.0%)。Spiegel 信託の場合、口座閉鎖直前の 3 カ月の平均超過スプ
レッドは 0.4%だった(それに先立つ 12 カ月は 5.3%)。Spiegel が口座を閉鎖した時、ムーデ
ィーズは FCNB にも Spiegel, Inc.にも格付を付与していなかった。
NextCard Master Note Trust
NextCard Master Note Trust のスポンサーは、専らネットを通じてプライム層を対象とした汎用
クレジットカードをオリジネートしていた NextBank だった。2002 年 3 月、同行が「安全性を欠く
不健全な事業を運営している」と判断した OCC は同行を閉鎖し、FDIC を保全管理人に指名
した 41 。2002 年 7 月、FDIC は、カード保有者が NextCard のクレジットカード口座の追加利
用をできないようにした。FDIC が口座を閉鎖した同じ月に、超過スプレッドの急激な低下を理
由に信託は早期償還事由に抵触した。口座閉鎖前の 3 カ月(2002 年 4 月から 2002 年 6 月)
の超過スプレッドは平均マイナス 0.3%だった(それに先立つ 12 カ月は 5.2%)。OCC が口座
を閉鎖した時、ムーディーズは NextBank に格付を付与していなかった。
25
JULY 6, 2015
38
アモチゼーション案件では、信託はクレジットカードの回収金を、クレジットカードによる新規購入への資金手当てではな
く、ノート保有者への返済に充てる。それに対しリボルビング取引では、信託は償還期間開始までの間、クレジットカード
の回収金を新規購入の資金に充てる。
39
本証券化は案件開始時点から償還されるよう仕組まれていたため、ほとんどのクレジットカード証券化に織り込まれるマイ
ナスの超過スプレッドにリンクした早期償還事由が織り込まれていなかった。
40
信託の契約書類では、スポンサーの破産は早期償還トリガーの一つとして明確に規定していたにも関わらず、FDIC は
管財人の管理下に置かれたことをもって信託の早期償還開始の原因とすることを認めなかった。
41
通貨監督庁が 2013 年 2 月 7 日に発行した“OCC Closes NextBank and Appoints FDIC Receiver,”を参照されたい。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
付録 2: 依存度曲線の生成に用いる期待損失率とデフォルト確率
ムーディーズは依存率をスポンサーが口座を閉鎖する場合としない場合の 2 つのシナリオに
おける案件の期待損失とデフォルト確率の計算から導いている。証券の期待損失とデフォルト
確率は各シナリオ結果の加重平均を計算することで導く。計算に用いるウエイトは、(1) スポン
サーがデフォルトまたは財務困難に陥る確率、および(2)スポンサーが財務困難に陥らない確
率である。また、非中核事業の業績不振や過去にスポンサーが案件にサポートを提供しなか
った履歴があるなど、特定の状況におけるスポンサーのデフォルトや財務困難とは無関係の
口座閉鎖の追加的な確率も考慮する。
いずれのケースにおいても、ムーディーズはまず、案件の全期間の総不足額の確率分布を示
す曲線の形状を想定する(通常、対数正規分布)。次に、資産プールの期待不足額とばらつ
きを判定し、当該資産プールの不足額の対数正規分布確率曲線を導く(不足額の分布は各
不足シナリオを対応する確率に結び付けたカーブとなる)。
中心傾向と分散(標準偏差やパーセンタイルなど)の指標が得られればそれらの分布を導くこ
とができる。中心傾向は、スポンサーが口座を閉鎖するか維持するかに応じて資産プールの
期待不足額から導く。標準偏差は、当該シナリオにおける Aaa (sf)格付に相応する信用補完
レベルから、間接アプローチを用いて推測する。そのような Aaa レベルの信用補完が得られ
れば、(案件の資産プールに裏付けられた)単純な仕組みの債券の、Aaa (sf)格付に対応する
期待損失とデフォルト確率が得られる。ムーディーズは、計算された期待損失(またはデフォ
ルト確率、分布と Aaa レベルの信用補完から導く)が Aaa の期待損失に整合するまで、分布
(対数正規分布を想定)の標準偏差に調整を加える。
中心傾向と標準偏差で決まる当該案件の不足額の分布が確定すると、その分布を用いて不
足額が当該ノートの信用補完レベルを超える確率を決定する。同様にノートの期待損失につ
いても、不足額の分布を用いて、それぞれのシナリオにおいて不足額が一定の信用補完額を
超過することによる投資家の損失を計算する。期待損失は、それらの損失の加重平均となる
(不足額の分布を表す確率分布曲線に示される損失シナリオの発生確率が各シナリオのウエ
イトとなる)。
シナリオ I: スポンサーが口座を閉鎖するケース
このシナリオでは、格付 Aaa (sf)に相当する信用補完レベルのムーディーズの想定は、本格付
手法のステップ 1 で説明した Aaa LGSD となる。ムーディーズは、期待不足額の想定(すなわ
ちスポンサーのデフォルト時のプールの期待損失)を、ポートフォリオの特性とこれまでに早期
償還が発生しスポンサーが口座を閉鎖した案件の不足額の実績に基づいて決定する 42。
シナリオ II: スポンサーが口座を閉鎖しないケース
このシナリオでは、格付 Aaa (sf)に相当する信用補完レベルのムーディーズの想定は、シナリ
オ 1 ほど深刻ではないストレス発生時における不足額に基づいたものとなる。シナリオ 2 では、
通常、債務者の標準的な信用力、スポンサーの自主的サポートに対する意欲(およびスポン
サーのこれまでのサポート実績)、現在の口座への請求状況および口座の利便性、その他の
仕組み上のプロテクションに照らして、期待不足額はゼロに近いと想定する。しかし、司法管
轄や案件によって、ムーディーズのこのような想定を変更することがある。
42
26
JULY 6, 2015
First Consumers, Next Card、Advanta の案件の場合、不足額(超過スプレッド控除後)は平均して約 10-12%だった。これ
らの早期償還と口座閉鎖のケースは主として、オリジネーターの信用力が弱く、ポートフォリオの質が平均から低位のケ
ースであった。ムーディーズのアプローチでは、特にポートフォリオの特徴とパフォーマンス、および信託のエコノミクス
(超過スプレッドなど)と仕組み上の特徴(法定償還期日など)に基づいて、スポンサーのデフォルト時のパフォーマンス
を区別する。そのため、期待プール損失の想定(ELGSD)の幅は、実際の早期償還ケースに基づく 10% - 12%より広くな
る。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
依存率:スポンサーの信用力の変化を埋め合わせる信用補完の変更
前述のとおり、Aaa LGSD は、シナリオ 1 のウエイトが 1 に等しく、シナリオ 2 のウエイトが 0 に
等しい場合、すなわちスポンサーがデフォルトに陥った場合の当該案件の格付 Aaa (sf)に相
応する最低信用補完額である。
スポンサーの格上げに伴いデフォルト確率が低下した案件では、ムーディーズはシナリオ 1
により低いウエイトを付与し、(不足額がより少ない)シナリオ 2 により高いウエイトを付与するの
で、ノートの期待損失とデフォルト確率はより低くなる。従って、格上げ前の信用補完は、Aaa
(sf)の格付に必要となる新たな最低額よりも多くなる。その場合、案件のスポンサーの信用力
がより高いノートについては、Aaa (sf)の格付に相応する新たな最低額(新たな Aaa CE)まで当
初の信用補完を縮小しうる。
スポンサーの信用力の変更がノートの Aaa CE に与える影響は、案件の特徴に応じて異なっ
てくる。またその影響は、ムーディーズの計算の基礎として、ノートの期待損失とデフォルト確
率のどちらを用いているかによっても異なってくる。ムーディーズは単純化のため、図表 2A に
示す通り、異なる特徴を持つ案件の期待損失とデフォルト確率の両方に基づいて、一連の平
均効果を計算している。
図表2A
スポンサー信用力に対応する依存率
30%のAaa LGSDに対する加重平均期待損 失分析 から導かれる 比率*
100%
指標となる依存率
Aaa LGSDに対する比率(%)
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
Aaa
Aa1
Aa2
Aa3
A1
A2
A3
Baa1 Baa2 Baa3 Ba1 Ba2
スポンサーのCRA
Ba3
B1
B2
B3
Caa1 Caa2 Caa3 Ca
*本例では、2 つのシナリオのそれぞれにおけるノートの期待損失を加重するために、ムーディーズの理想化されたデフォルト率テーブルか
ら CR 評価に示されるスポンサーの信用力に対応するデフォルト確率を導く。
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
劣後ノート:限られた信用補完による影響
超過スプレッド以外の信用補完が限られているノートについては、上記のシナリオ 1 およびシ
ナリオ 2 のそれぞれのシナリオにおける期待損失は、それぞれのシナリオにおける期待不足
額をノートの規模で除した値になる 43。ムーディーズは次に、シナリオ 1 についてはスポンサ
ーがデフォルト起こすか財務困難に陥る確率を用いて、そしてシナリオ 2 についてはスポンサ
ーがデフォルトに陥らない確率を用いて、2 つのシナリオの加重平均を計算する 44。シナリオ
2 の期待不足額は通常ゼロに近いので、当該ノートの期待損失は(1)スポンサーのデフォルト
確率または財務困難に陥る確率と(2)スポンサーのデフォルト時のプールの期待損失の積を、
ノートの規模で除した値に密接に相関する。そのため、信用補完が限られるか全くない劣後ノ
ートの格付は、スポンサーの信用力に左右される度合いが極めて高くなる
27
JULY 6, 2015
43
証券が信用補完の恩恵を受ける場合はこのケースに当たらない。すなわちノートの期待損失はいかなる場合にもプール
の不足額に等しくならない。この場合、ノートの期待損失は、信用補完が不足額より小さくなる場合の個々の不足シナリ
オに結び付けられた確率で決まる。
44
ムーディーズは通常、スポンサーの格付を 2 ノッチ調整することによって、スポンサーがデフォルトに陥る前に財務困難
に陥る可能性を考慮に入れる。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
次のようなシナリオにおいては格付に下方調整を施す。
» スポンサーがデフォルトに陥らないシナリオにおいてプールの期待損失(スプレッド控除後)
がゼロより大きい場合
» スポンサーがサポートを提供する確率が通常より低いと判断される場合
» 財務困難に陥らない場合でもスポンサーが口座を閉鎖すると判断される場合
28
JULY 6, 2015
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
付録 3: 日本と韓国のクレジットカード案件に対する調整
A. 日本
日本のクレジットカード証券化と米国、英国、カナダ、韓国との差異
日本におけるクレジットカード証券化の仕組みおよび慣行と米国、英国、カナダ、韓国のそれ
らにはいくつかの差異があり、格付手法にも以下で述べる差が生じている。
日本の案件には次のような特徴がみられる。
» 一般にスポンサーは、消費者・企業に向けに幅広い金融商品を提供する投資適格低位
(あるいは無格付)のファイナンス・カンパニーである。クレジットカード事業はいくつかある
スポンサーの事業の一つである場合が多い。そのため、スポンサーがデフォルトしていな
い状況であってもスポンサーがプログラムにサポートを提供する可能性は他の市場よりも
低い。
» 債権プールは、口座でオリジネートされた全ての債権ではなく、口座が生成する特別に指
定された債権で構成することが可能である。スポンサーは、非指定債権の生成を継続しな
がら、新たな指定債権の生成を停止することもできる。そのため、スポンサーが口座を閉鎖
しない場合でも、信託残高のアモチゼーションが進む可能性がある。
» コントロールドアモチゼーション中であっても、信託は通常、回収元本をシリーズ間で比例
配分する 45。そのため、日本のクレジットカード債権 ABS の仕組みは標準的な消費者ロー
ン案件の仕組みに類似しており、スポンサーがデフォルトに陥らなくとも、信用補完が損失
をカバーできない場合、ノートに損失が発生しうる。
» 一般に、裏付資産はコンビニエンス・ユーザーの口座を含まない。それが含まれる場合、
その残高はセラーが自身の持ち分として資金手当てをするのが普通である。またコミングリ
ング・リスクに晒されるため、ムーディーズはそこからのキャッシュフローを見込まない。また、
加盟店手数料や年会費は利回りに含まれていない。
» 日本のカードには、1 回払い、2 回払い、割賦払い、リボルビング払いなど、購入ごとにいく
つかの支払オプションが与えられる。ムーディーズは、通常、当初残高または前月残高に
基づいて、各オリジネーターのミニマムペイメント・スケジュールに従って契約上のミニマム
ペイメント額を決定する。図表 3A に一例を示している。その結果、返済期間の後半に元
本返済率が急激に上昇する。
図表 3A
当初元本に対する日本の契約上のミニマムペイメントの一例(日本円)
キャッシング・サービスの信用限度額
返済額
0 - 200,000
10,000
300,000
20,000
400,000 - 500,000
30,000
800,000
40,000
1,000,000
50,000
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
依存度曲線への影響
日本では、プールのパフォーマンスが悪化した場合にスポンサーが自身のクレジットカード案
件をサポートする可能性は、他のクレジットカード市場よりも低い。この差異を考慮して、ムー
ディーズは通常、日本のファイナンス・カンパニーの依存度曲線を調整する。その結果、格付
45
29
JULY 6, 2015
クレジットカード債権の元本回収は投資家持ち分とセラー持ち分にプロラタで原則配分される。通常の償還状況におい
て、投資家持ち分の元本回収は各シリーズの(名目残高ではなく)実際の残高に応じてシリーズ間で比例配分される。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
が Baa 以上のスポンサーに想定される Aaa 信用補完が高まることにより、他のクレジットカード
市場に比べてカーブが平坦化する 46。図表 3B は、スポンサーからのサポートの可能性を低
めた結果、スポンサーがデフォルトを起こしていないシナリオにおいてノート保有者の被る損
失が増加する想定に基づく依存度曲線を示している。
図表3B
スポンサーのサポートの可能性を低く想定した依存度曲線
サポートの想定を低くした曲線
指標依存度曲線
Aaa LGSDに対する比率(%)
120%
100%
80%
60%
40%
20%
0%
Aaa
Aa1
Aa2
Aa3
A1
A2
A3
Baa1 Baa2 Baa3 Ba1
Ba2
Ba3
B1
B2
B3
Caa1 Caa2 Caa3
Ca
スポンサーのCRA
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
利回りおよび元本返済の想定への影響
利回り
証券化案件の利回りには加盟店手数料や会費が含まれておらず、日本における Aaa LGSD
シナリオにおけるスポンサーのデフォルト前の想定利回りとデフォルト後の想定利回りの差は
小さくなる。残る主要な差異は延滞債権のヘアカットとなる。
元本返済
米国では通常、Aaa LGSD シナリオでスポンサーがデフォルトに陥った場合、元本返済率が
(契約上の最低返済率近くまで)大幅に低下すると想定する。これに対して、日本の場合、契
約上の最低返済額を用いて元本返済率をモデリングする。図表 3C は、ムーディーズの Aaa
LGSD 想定における日本の信託の想定元本返済率の一例を示している。
図表3C
日本のクレジットカードの元本返済率の例
100%
90%
元本返済率
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41
月数
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
過払金返還請求リスク
クレジットカードによるキャッシング・サービスを含む日本の消費者ローンの一部では、債務者
が「過払金」の返還を請求するケースがある。2010 年以前まで、そのようなローンには(1)「利
46
30
JULY 6, 2015
日本のオリジネーターが銀行または銀行類似の主体である場合は、通常その CR 評価を用いる。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
息制限法」で定められた上限金利を超えるが、(2)「出資の受け入れ、預かり金及び金利等の
取締まりに関する法律(出資法)」で定められた上限金利を下回る金利が設定されてい
た 47,48,49。裁判所が過払金返還請求を認めた場合、あるいはオリジネーターが自主的に返還
に同意した場合、オリジネーターは債務者が過去に利息制限法の上限金利を越えて支払っ
た利息部分の総額を計算し、その金額を元本に充当するため、元本残高が減少する。過払
金の総額が現在の元本残高を上回る場合、オリジネーターは超過部分を払い戻す。さらに、
オリジネーターが破産した場合は、破産管財人が破産手続きにおいて過払い利息を伴う全て
のローンの引き直し計算を行う可能性がある。
証券化されたローンについては、過払金を理由として元本残高が引き直し計算された場合、
通常、オリジネーターはそのローンの全額(過払金の元本充当による希薄化前の元本金額)
を信託から買い戻さなくてはならない。しかし、オリジネーターがローンを買い戻さない場合
(オリジネーターが破産した場合など)、過払い利息が元本に充当されるため信託債権の希薄
化が発生し、さらにオリジネーターは残存する過払金の返還請求分(あれば)を支払わなけれ
ばならない可能性がある。従って、過払金返還請求の対象となるローンが案件に含まれる場
合、ムーディーズはオリジネーターの信用力(案件の契約文書の要請に従ってローンを買い
戻す能力を示す)および元本残高の引き直し計算が行われる可能性を考慮することにより、
過払金リスクを検討する。
ムーディーズの信用分析には、オリジネーターの格付に基づき案件が達成し得る最も高い格
付のガイドラインを参照する。オリジネーターの格付と案件の格付の上限との関係は貸し手の
業種によって決まる。一般に、消費者金融会社がオリジネーターとなる案件では、クレジットカ
ード会社(信販会社)がオリジネーターである案件に比べ、制限的になる。これは、消費者金
融会社のほうが過払金返還リスクが大きく、事業の分散度が低いためである。従って、消費者
金融会社については、過払金返還請求とオリジネーターが財務困難に陥る可能性との相関
が高まると予想される。下の図表 3D に両者の関係を例示した。
図表 3D
オリジネーターの格付と過払金リスクのある消費者ローン ABS に対する格付上限との関係*
消費者ローン ABS に対する格付上限
オリジネーターの格付**
信販/クレジットカード会社
消費者金融会社***
Aa-A
Aaa
Aa
Baa
Aaa
A
Ba
Aa
Baa
B
A
Ba
Caa1 以下
Baa
B
注:
*
このガイドラインで示しているのは、オリジネーターの信用力とオリジネーターの属する業界のみである(実際の案件の格付は、利用可
能な信用補完の水準に応じてここで示す水準より低くなる可能性がある)。また、元本の引き直し計算が行われるリスクは規制の状況
によって異なるため、規制環境の変化に伴いリスクも変化する。
** オリジネーターに格付を付与していない場合は、クレジット・エスティメートを用いて案件を評価する(ムーディーズのウェブサイトからク
レジット・エスティメートの使用に関するクロスセクター格付手法を参照されたい)。
*** このガイドラインは、信用力の高い銀行の連結対象子会社でもなく持分法適用関連会社でもない消費者金融会社に適用される。
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
案件が次のようなプラス要因を持つ場合、実際の格付は格付ガイドラインが示唆する格付を
上回る可能性がある。
» 潜在的な希薄化の金額を十分にカバーできる追加信用補完が手当てされている
31
JULY 6, 2015
47
過払い利息は「グレーゾーン金利」とも呼ばれる。
48
2010 年 6 月の貸金業法の改正(完全施行)によりグレーゾーン金利は廃止された。同改正法は、オリジネーターが利息
制限法の上限金利を越える金利で融資を行うことを禁止している。
49
返還請求の対象となる可能性のある過払い金額は、ローンの契約期間において支払われた過払い利息の総額が、その
ローンに利息制限法の金利が適用され元本が返済されたと仮定した場合の利息の支払総額を超える金額である。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
» 償還期日までの期間が短い(6 ヵ月未満など)
» 同業界の他社と比べ、引き直し計算の対象となるローンがオリジネーターの事業に占める
比率が低いため、過払金返還請求リスクとオリジネーターの財務困難に陥るリスクの相関
が低い場合
B. 韓国
クレジットカード証券化における韓国と日本、米国、英国、カナダの差異
韓国におけるクレジットカード証券化は、米国、英国、日本、カナダにおける証券化と仕組み、
慣行の面でいくつかの重要な差異がある。
具体的に、韓国の案件には 次のような特徴がみられる。
» 裏付資産は、伝統的なクレジットカードによる購入、キャッシング・サービス、割賦貸出金か
ら生成された債権で構成される。他の地域に比べ、キャッシング・サービス債権の比率が
大幅に高い。韓国のキャッシング・サービスの債務者は全般に信用力が低く、キャッシン
グ・サービス債権の裏付資産の信用リスクは他のクレジットカード商品よりも高い。
» 返済は一括か、割賦か、リボルビング方式でなされる。また、リボルビング・クレジット枠を持
つカード保有者が支払期日までに勘定を完済しない場合、一括払い勘定がリボルビング
勘定に転換される場合がある。そのため、通常シナリオでの返済率が高くなる。
» 韓国の案件は通常、最低返済率が早期償還トリガーに含まれる仕組みをとっている。その
ため、それらの案件の早期償還開始時の返済率は通常、比較的高くなると予想され、案件
の信用リスクを減殺する要因となる。
» 韓国のチャージオフ率は概して米国よりも低いが、ヒストリカルデータは、景気停滞期には
急激に上昇しうることを示している。特に 2003-04 年の韓国の経済危機の時期には、年率
換算チャージオフ率が 31%に達するまで延滞債権やリスケジュール債権が急増した 50。
» 韓国のクレジットカード事業者は、クレジットカード保有者にカード使用金額に応じたキャッ
シュ・ポイントを提供しており、カード保有者はそれをクレジットカードの口座の残高の清算
に用いることができる。このようなプログラムは追加的なダイリューション(希薄化)リスクにさ
らされる。
» 韓国の証券化案件の利回りには通常、加盟店手数料が含まれない。
» 韓国のスポンサーは、一般に、無格付のファイナンス・カンパニーである。通常、案件クロ
ージング時点でバックアップ・サービサーが設置される。
» カード保有者は通常、自動引き落としによって、直接・自動的に案件の信託勘定に支払い
がなされるので、コミングリング・リスクは最低限に抑えられる。
» 案件には、韓国の外貨建てシーリングで捕捉される通貨の移転・転換リスクを相殺するた
めに通貨スワップ(CCS)が組み込まれていることがある。
チャージオフ、利回り、元本返済の想定への影響
韓国のクレジットカード証券化案件と米国、英国、カナダ、日本のクレジットカード証券化案件
にはいくつかの差異があり、韓国の証券化案件におけるムーディーズの想定に次の修正が必
要であると考えている。
50
32
JULY 6, 2015
ムーディーズのスペシャル・レポート“Moody’s Quarterly Evaluation of Korean Consumer Receivables-Backed Transactions – 2Q
2003”(Moody’s Investors Service, July 2003) を参照されたい。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
チャージオフ
ムーディーズは、Aaa LGSD シナリオの採用に当たって、潜在的に高い韓国市場のボラティリ
ティを反映し、米国、カナダ、英国のプログラムよりも高い倍数を用いてチャージオフ率にスト
レスを加える。そのため、口座閉鎖後の最大チャージオフ率は長期的期待チャージオフ率の
5 倍(他の市場では 4 倍)になると想定する。韓国の元本返済率は同国のクレジットカード市
場の商品構成の特殊性を反映して高く想定されることから、それがチャージオフ率に加えられ
た高いストレスを緩和する要因となる。
利回り
利回りは一括、割賦、キャッシング・サービス、リボルビングの別によって異なる返済スケジュ
ールの構成によって変わる 51。(1)ポートフォリオの返済率が高いこと、また(2)利回りには加盟
店手数料が含まれないことから、平均利回りは全般に他の市場よりも低くなる。韓国のクレジッ
トカード案件の利回りのモデリングでは、ポートフォリオ構成と資産ごとの金利を考慮に入れる。
元本返済率
利回りと同様、元本返済率も返済タイプの構成に左右される。Aaa LGSD シナリオでは、割賦
返済、リボルビング返済とキャッシング・サービスへの集中度を高めたストレスを加えたポートフ
ォリオ構成を想定する 52。契約上の最低支払義務を課す金融機関が競争圧力や債権のパフ
ォーマンスの悪化によってやむなくそれを引き下げる可能性があることから、リボルビング返済
とキャッシング・サービスの返済率は極めて低い水準まで低下させる。割賦返済ローンは、15
カ月から 18 カ月の期間の月次返済スケジュールで返済されると想定する。
スワップ・リスク
残高が保証される通貨スワップは、クレジットカードのスポンサーがデフォルトに陥った場合の
カウンターパーティ・リスクと解約リスクを伴うが、そのリスクは仕組みに織り込まれた次の標準
的なプロテクションで十分に対応されているとムーディーズは考える 53。
» 通常、クロージング時に長期預金格付が A2 で短期預金格付が P-1 の韓国の銀行がバッ
クアップ・サービサーとして設置される。バックアップ・サービサーはスポンサーのデフォルト
から 60 日以内にサービシングを引き継ぐ義務を負う。
» 2 カ月のサービシング業務移行期間中は、独立の計算代理人/取引管理人またはトラステ
ィーがスワップ・カウンターパーティに対する支払指示を行う。
» 信託の段階でキャッシュフローに中断が発生した場合、債券発行体レベルの準備金で 2
カ月分のスワップ支払いをカバーできる。
» トラスティーまたは取引管理人が取引口座を管理する。
» ムーディーズは、債券発行体口座にある残高を早期償還時のスワップ金額の基準とする。
そのため、スポンサーのデフォルト時の発行体のスワップ・カウンターパーティに対する義
務は、(1)スワップ・カウンターパーティに支払われるべき金額と(2)発行体レベルで利用可
能な金額の最低限を引き渡すことのみとなる。
33
JULY 6, 2015
51
高い信用リスクを補填するため、キャッシング・サービスの利回りが最も高くなる傾向がある。
52
この商品には最低集中限度がなく、債務者は他の返済パターンに柔軟に変更できる。
53
これらの緩和要因に関するムーディーズの見解についての詳細な論については、証券化案件におけるスワップ・カウン
ターパーティに関するクロス・セクター格付手法を参照されたい。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
付録 4: キャッシュフローのモデリング-早期償還シナリオ
以下に掲載する諸表は、米国で一般的な信託の仕組みを用いたクレジットカード案件のスト
レス・シナリオを示したものである。スポンサーの口座閉鎖後のクレジットカード・ポートフォリオ
の完全なペイアウトを想定した償還期間中の主要な前提は次の通りである。
信託の特徴に関する前提
» スポンサーの CR 評価は A2(cr)。
» ヒストリカルな元本返済率(PPR)は 17%-19%。
» ヒストリカルな最高チャージオフ率は 12%。
» 利回りレンジは 19%-21%。20%の加盟店手数料および年会費を含む。
» 年間サービシング手数料は 2%。
» ノートの加重平均クーポンは 1%。
» 変動金利資産は米国のプライムレートがベースであり、負債は LIBOR ベースの変動金利
であるため、ベーシス・リスクが発生する。
» 予定償還期日から最終法定償還期日までの月数は 30 カ月。元本積立期間と予想される
早期償還時期を考慮して 6 カ月のバッファーを加える。
» 早期償還期間の当初の投資家のプールに対する持分は 96%。信託の契約書類に、早期
償還期間中の元本配分は当初の債券残高を信託残高 で除した値(分子固定)に基づくこ
とが規定されている 54。金融費用は比例配分。
» ダイリューション・リスクまたは相殺リスクは想定しない。
» 契約文書により法定最終償還期日における売却が義務付けられているため、残存債権の
価値に約 60%のヘアカットを施す。
最大ストレス・シナリオの前提
図表 4A に、本格付手法のステップ 1 で説明した早期償還中における主要な変数に関する
様々な想定を示した。
» 元本返済率(PPR):PPR は図表 5 の想定元本返済率と同じ。当初 PPR はヒストリカルな元
本返済率に基づくが、早期償還開始時のチャージオフ率の上昇を想定してこれを下方調
整する。当初の想定を 12%(ヒストリカルな平均レンジ 18%に対する 33%の割引に相当)
とし、3%まで急激に低下するとする。
» 利回り:平均利回りを 20%と想定。加盟店手数料および年会費を控除し、延滞利用者の割
合を想定した後、利回りにストレスを加え 12.2%に低下させる。
» チャージオフ率:超過スプレッドの損益分岐点を想定した上、次の式を用いて元利払い開
始時のチャージオフ率を計算する。
早期償還時のチャージオフ率=利回り-サービシング手数料-
クーポン
すなわち
20% - 2% - 1% = 17%
54
34
JULY 6, 2015
分子が固定された月次元本配分率は 100%まで漸増するので、この元本配分方式は、信託残高が漸減している局面で
は、固定率の元本配分よりも投資家の権利の回復にとって有利になる。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
定常的なロングランチャージオフ率は、ヒストリカルなチャージオフ率の最大値に等しい 12%
と想定。図表 4A で示したように、年率換算チャージオフ率は第 8 カ月までに 17%から 48%
まで急激に上昇した後、次の 16 カ月で 12%までに漸減し、その後横ばいとなる。
» 超過スプレッド:償還開始直前のチャージオフ後の超過スプレッドはゼロと想定する。当初
のクーポン・レート 1%は現在のクーポンである。資産・負債の金利ミスマッチを考慮した
3.5%のバッファー(ベーシス・リスクに 2.5%、シニアノート償還に伴う加重平均スプレッドの
変化に 1%)を加え、クーポン・レートは 4.5%となる。サービシング手数料はストレスを加え
た 2%とし、償還期間を通じて一定とする。
図表 4A
早期償還中の主要変数の想定*
月
返済率
チャージオフ率
利回り
サービシング・レート
クーポン
超過スプレッド
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
12.00%
9.75%
7.50%
5.25%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
3.00%
17.00%
20.88%
24.75%
28.63%
32.50%
36.38%
40.25%
44.13%
48.00%
45.75%
43.50%
41.25%
39.00%
36.75%
34.50%
32.25%
30.00%
27.75%
25.50%
23.25%
21.00%
18.75%
16.50%
14.25%
12.00%
20.00%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
12.16%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
2.00%
1.00%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
4.50%
0.00%
-15.22%
-19.09%
-22.97%
-26.84%
-30.72%
-34.59%
-38.47%
-42.34%
-40.09%
-37.84%
-35.59%
-33.34%
-31.09%
-28.84%
-26.59%
-24.34%
-22.09%
-19.84%
-17.59%
-15.34%
-13.09%
-10.84%
-8.59%
-6.34%
*24 カ月目から償還期間の終わりまでの数値は 24 カ月目と同じ。
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
図表 4B は、図表 4A の想定に基づいた償還期間の最終月までのキャッシュフローの配分結
果を示している。
35
JULY 6, 2015
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
図表 4B
早期償還中のキャッシュフロー
配分
月
分配
期初信託債権 期初債券残高 金融費用配分 元本配分
1
2
3
1,041,667
921,984
833,819
1,000,000
885,104
797,700
33
34
35
36
164,313
157,741
151,431
145,374
145,748
139,361
133,235
127,360
96.0%
96.0%
95.7%
元本
金融費用 チャージオフ サービシング クーポン支払
不足額
累積
不足額
期末債券
残高
96.0%
100.0%
100.0%
97,500
69,149
43,775
10,133
8,969
8,083
17,396
18,255
19,028
1,667
1,475
1,330
3,750
3,319
2,991
(12,679)
(14,081)
(15,266)
(12,679)
(26,760)
(42,026)
885,104
797,700
734,896
88.7% 100.0%
88.3% 100.0%
88.0% 100.0%
87.6% 100.0%
4,929
4,732
4,543
4,361
1,477
1,412
1,350
1,291
1,457
1,394
1,332
1,274
243
232
222
212
547
523
500
478
(770)
(736)
(704)
(673)
(260,200)
(260,937)
(261,641)
(262,313)
139,361
133,235
127,360
121,725
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
不足額の列は、各月の金融費用配分のディール費用(チャージオフ、サービシング、投資家
クーポン)に対する不足額を示している。期末債券残高の欄は、元本返済の配分とチャージ
オフによる償却を控除した後の債券残高を示している。
Aaa LGSD の第二の構成要素である残高損失は、第 36 月末の残存債券残高から、最終法
定償還期日から 18 カ月間 55のキャッシュフローの現在価値を控除することで得られる。この
計算の結果、損失は債券残高 121,725 ドルの約 60%に相当する金額になる。本例では、契
約関連書類が最終法定償還期日前の裏付資産の強制売却を規定していると想定しているの
で、割引率に加えるストレスを小さくしている。
償還期間末の累積不足額 26.2%と残高損失 7. 3%(いずれも当初債券元本残高に対する比
率で表現)を足すことで、本例の Aaa LGSD 33.5%が得られる。
スポンサーの CR 評価に対する依存率 43%と Aaa LGSD 33.5%を用いて、Aaa 信用補完の
必要レベルが計算される。本例では Aaa CE は 14.4%となる。
感応度分析
図表 4C から図表 4J までは、モデルの様々な投入値と出力値である信用補完の関係を示し
ている。青色のセルは、図表 4A と 4B のベースケースの想定値を示している。
図表4C
スポンサーの CR 評価が Aaa の信用補完に与える影響
スポンサーの CR 評価
Aaa CE
Aa1(cr)
Aa3(cr)
A2(cr)
Baa1(cr)
Baa3(cr)
7.7%
10.7%
14.4%
18.4%
22.8%
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
図表4D
元本返済率の想定が Aaa 信用補完に与える影響
早期償還開始時の元本返済率
Aaa LGSD
Aaa CE
10%
12%
14%
16%
18%
34.6%
14.9%
33.5%
14.4%
32.4%
13.9%
31.4%
13.5%
30.3%
13.0%
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
55
36
JULY 6, 2015
現在価値の計算では、償還開始後 54 カ月でキャッシュフローをカットする。従って、この信託の予定償還期日から最終
法的償還期日までの 36 カ月の期間の内、18 カ月のキャッシュフローのみカウントする。
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
図表4E
元本返済率の下限の想定が Aaa 信用補完に与える影響
2%
3%
4%
5%
41.3%
17.7%
33.5%
14.4%
28.1%
12.1%
24.2%
10.4%
元本返済率の下限
Aaa LGSD
Aaa CE
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
図表4F
チャージオフ率の想定が Aaa 信用補完に与える影響
ロングランチャージオフ率
Aaa LGSD
Aaa CE
9%
10%
11%
12%
13%
14%
15%
27.5%
11.8%
29.6%
12.7%
31.6%
13.6%
33.5%
14.4%
35.3%
15.2%
37.1%
15.9%
38.8%
16.7%
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
図表4G
利回りの想定が Aaa 信用補完に与える影響
グロス利回り
Aaa LGSD
Aaa CE
15%
17.5%
20%
22.5%
25%
36.5%
15.7%
35.0%
15.0%
33.5%
14.4%
32.1%
13.8%
30.6%
13.2%
注:他の変数が全て一定であれば利回りと信用補完の関係は線型になる。本例では、利回りの想定を 2.5%変更すると信用補完が約
0.6%変化する。
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
図表4H
ノートの加重平均クーポン・レートが Aaa 信用補完に与える影響
1%
2%
3%
4%
5%
33.5%
14.4%
34.5%
14.8%
35.5%
15.2%
36.4%
15.7%
37.4%
16.1%
ノートの加重平均クーポン・レート
Aaa LGSD
Aaa CE
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
図表4I
最終法定償還期日が Aaa 信用補完に与える影響
18
24
30
36
42
Aaa LGSD
36.4%
34.7%
33.5%
32.7%
32.3%
最終法定償還期日までの累積不足額
25.2%
25.8%
26.2%
26.6%
26.8%
残高損失
Aaa CE
11.2%
15.7%
8.9%
14.9%
7.3%
14.4%
6.2%
14.1%
5.5%
13.9%
予定償還期日から最終法定償還期日までの月数
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
図表 4I の例では、最終法定償還期日に強制売却が行われ、かつ 54 カ月以降のキャッシュ
フローの現在価値計算での評価はゼロとする想定を用いている。裏付資産の評価と売却の困
難さを考慮し、保守的に法定最終償還期日の残存債権に 80%のヘアカットを施した市場価
値を用いて Aaa CE への影響を想定した場合、図表 4J が示すように、最終法定償還期日まで
の期間が長くなることによる影響は大きくなるが、最終法定償還期日までの期間が 4 年に近
づくほどその影響は減少する。
図表4J
残存債権の市場価値に対してより大きなヘアカットを用いた場合の最終法定償還期日が Aaa 信
用補完に与える影響
18
24
30
36
42
Aaa LGSD
41.8%
38.5%
36.0%
34.1%
32.8%
最終法定償還期日までの累積不足額
25.2%
25.8%
26.2%
26.6%
26.8%
残高損失
Aaa CE
16.6%
18.0%
12.7%
16.6%
9.7%
15.5%
7.5%
14.6%
5.7%
14.1%
予定償還期日から最終法定償還期日までの月数
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス
37
JULY 6, 2015
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
ムーディーズの関連リサーチ
他の補助的格付手法やクロス・セクター格付手法に記載されている、幅広い格付上の考慮事
項が、本クロス・セクター格付手法の適用において重要となることもある。関連しうる補助的格
付手法ならびにクロス・セクター格付手法については、ムーディーズのウェブサイトを参照され
たい。
本格付手法を用いて付与された信用格付のヒストリカルな信頼性と予測能力をまとめたデー
タは、ムーディーズのウェブサイトに掲載されている。
詳細については「格付記号と定義」を参照されたい。
38
JULY 6, 2015
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
ASSET-BACKED SECURITIES
ムーディーズ・ジャパン株式会社
〒105-6220
Report Number:
SF412246(Japanese)
SF409592(English)
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ます)。無断複写・転載を禁じます。
Moody's Investors Service, Inc.及び信用格付を行う関連会社(以下「MIS」といいます)により付与される信用格付は、事業体、与信契約、債務又は債務類似証券の相対的な将来の信用リス
クについての、ムーディーズの現時点での意見です。ムーディーズが発行する信用格付及び調査刊行物(以下「ムーディーズの刊行物」といいます)は、事業体、与信契約、債務又は債務
類似証券の相対的な将来の信用リスクについてのムーディーズの現時点での意見を含むことがあります。ムーディーズは、信用リスクを、事業体が契約上・財務上の義務を期日に履行で
きないリスク及びデフォルト事由が発生した場合に見込まれるあらゆる種類の財産的損失と定義しています。信用格付は、流動性リスク、市場価値リスク、価格変動性及びその他のリスク
について言及するものではありません。信用格付及びムーディーズの刊行物に含まれているムーディーズの意見は、現在又は過去の事実を示すものではありません。ムーディーズの刊行
物はまた、定量的モデルに基づく信用リスクの評価及び Moody’s Analytics, Inc.が公表する関連意見又は解説を含むことがあります。信用格付及びムーディーズの刊行物は、投資又は財
務に関する助言を構成又は提供するものではありません。信用格付及びムーディーズの刊行物は特定の証券の購入、売却又は保有を推奨するものではありません。信用格付及びムー
ディーズの刊行物はいずれも、特定の投資家にとっての投資の適切性について論評するものではありません。ムーディーズは、投資家が、相当の注意をもって、購入、保有又は売却を検
討する各証券について投資家自身で研究・評価するという期待及び理解の下で、信用格付を付与し、ムーディーズの刊行物を発行します。
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ディーズはこれらの情報をいかなる種類の保証も付すことなく「現状有姿」で提供しています。ムーディーズは、信用格付を付与する際に用いる情報が十分な品質を有し、またその情報源が
ムーディーズにとって信頼できると考えられるものであること(独立した第三者がこの情報源に該当する場合もあります)を確保するため、すべての必要な措置を講じています。しかし、ムー
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が不可能であることに起因又は関連していかなる者又は法人に生じたいかなる直接的又は補償的損失又は損害に対しても、それらがムーディーズ又はその取締役、役職員、従業員、代理
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他の種類の責任を除く)、あるいはそれらの者の支配力の範囲内外における偶発事象によるものである場合を含め、責任を負いません。
ここに記載される情報の一部を構成する格付、財務報告分析、予測及びその他の見解(もしあれば)は意見の表明であり、またそのようなものとしてのみ解釈されるべきものであり、これに
よって事実を表明し、又は証券の購入、売却若しくは保有を推奨するものではありません。ここに記載する情報の各利用者は、購入、保有又は売却を検討する各証券について、自ら研究・
評価しなければなりません。
ムーディーズは、いかなる形式又は方法によっても、これらの格付若しくはその他の意見又は情報の正確性、適時性、完全性、商品性及び特定の目的への適合性について、(明示的、黙
示的を問わず)いかなる保証も行っていません。
Moody's Corporation (以下「MCO」といいます)が全額出資する信用格付会社である Moody's Investors Service, Inc.は、同社が格付を行っている負債証券(社債、地方債、債券、手形及び CP を
含みます)及び優先株式の発行者の大部分が、Moody's Investors Service, Inc.が行う評価・格付サービスに対して、格付の付与に先立ち、1500 ドルから約 250 万ドルの手数料を Moody's
Investors Service, Inc.に支払うことに同意していることを、ここに開示します。また、MCO 及び MIS は、MIS の格付及び格付過程の独立性を確保するための方針と手続を整備しています。MCO
の取締役と格付対象会社との間、及び、MIS から格付を付与され、かつ MCO の株式の 5%以上を保有していることを SEC に公式に報告している会社間に存在し得る特定の利害関係に関す
る情報は、ムーディーズのウェブサイト www.moodys.com 上に"Investor Relations-Corporate Governance-Director and Shareholder Affiliation Policy"という表題で毎年、掲載されます。
オーストラリアについてのみ:この文書のオーストラリアでの発行は、ムーディーズの関連会社である Moody's Investors Service Pty Limited ABN 61 003 399 657(オーストラリア金融サービス認可
番号 336969)及び(又は)Moody's Analytics Australia Pty Ltd ABN 94 105 136 972(オーストラリア金融サービス認可番号 383569)(該当する者)のオーストラリア金融サービス認可に基づき行わ
れます。この文書は 2001 年会社法 761G 条の定める意味における「ホールセール顧客」のみへの提供を意図したものです。オーストラリア国内からこの文書に継続的にアクセスした場合、
貴殿は、ムーディーズに対して、貴殿が「ホールセール顧客」であるか又は「ホールセール顧客」の代表者としてこの文書にアクセスしていること、及び、貴殿又は貴殿が代表する法人が、直
接又は間接に、この文書又はその内容を 2001 年会社法 761G 条の定める意味における「リテール顧客」に配布しないことを表明したことになります。ムーディーズの信用格付は、発行者の
債務の信用力についての意見であり、発行者のエクイティ証券又はリテール顧客が取得可能なその他の形式の証券について意見を述べるものではありません。リテール顧客が、ムーディ
ーズの信用格付に基づいて投資判断をするのは危険です。もし、疑問がある場合には、ご自身のフィナンシャル・アドバイザーその他の専門家に相談することを推奨します。
日本についてのみ:ムーディーズ・ジャパン株式会社(以下、「MJKK」といいます。)は、ムーディーズ・グループ・ジャパン合同会社(MCO の完全子会社である Moody’s Overseas Holdings Inc.の
完全子会社)の完全子会社である信用格付会社です。また、ムーディーズ SF ジャパン株式会社(以下、「MSFJ」といいます。)は、MJKK の完全子会社である信用格付会社です。MSFJ は、全
米で認知された統計的格付機関(以下、「NRSRO」といいます。)ではありません。したがって、MSFJ の信用格付は、NRSRO ではない者により付与された「NRSRO ではない信用格付」であり、
それゆえ、MSFJ の信用格付の対象となる債務は、米国法の下で一定の取扱を受けるための要件を満たしていません。MJKK 及び MSFJ は日本の金融庁に登録された信用格付業者であり、
登録番号はそれぞれ金融庁長官(格付)第 2 号及び第 3 号です。
MJKK 又は MSFJ(のうち該当する方)は、同社が格付を行っている負債証券(社債、地方債、債券、手形及び CP を含みます。)及び優先株式の発行者の大部分が、MJKK 又は MSFJ(のうち該
当する方)が行う評価・格付サービスに対して、格付の付与に先立ち、20 万円から約 3 億 5,000 万円の手数料を MJKK 又は MSFJ(のうち該当する方)に支払うことに同意していることを、ここ
に開示します。
MJKK 及び MSFJ は、日本の規制上の要請を満たすための方針と手続も整備しています。
39
JULY 6, 2015
格付手法:クレジットカード債権を裏付けとした証券の格付手法
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