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気道粘膜防御機構における気道粘膜下腺の役割

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気道粘膜防御機構における気道粘膜下腺の役割
日呼吸会誌
39(3)
,2001.
157
●ミニレビュー
気道粘膜防御機構における気道粘膜下腺の役割
玉田
勉
佐々木 司*
要旨:近年,気道の感染防御機構について,抗原特異的な免疫グロブリンを中心とした液性免疫の重要性が
注目されるようになってきた.気道上皮細胞は単に IgG を受動的に拡散させているだけなのに対し,気道
粘膜下腺は細胞表面にある IgA や IgM に対する受容体を介して,これらがより有効に抗原と接触できるよ
うな修飾を施しつつ気道液中へ輸送している.この輸送調節にはさまざまな炎症性サイトカインや免疫調節
ホルモンが密接に関与している.また,慢性的に大量の抗原に暴露される場合や,何らかの免疫異常がある
ような場合には,ヒト気道においても BALT(bronchus-associated lymphoid tissue)が顕在化してくるが,
これは鼻咽頭粘膜における NALT(nasopharyngeal-associated lymphoid tissue)や消化管における GALT
(gut-associated lymphoid tissue)などとともに抗原特異的免疫グロブリンの誘導組織として機能する.こ
こで獲得された免疫情報が最終的には気道粘膜下腺周囲に伝達されることで,気道粘膜における免疫機構が
常に維持されていると考えられている.このように,気道粘膜下腺は免疫細胞と密接な関わりを持ち気道粘
膜免疫機構のなかで重要な役割を果たしている.
キーワード:気道粘膜下腺,気道粘膜免疫,気管支随伴リンパ組織,気道分泌,免疫グロブリン
Airway submucosal gland,Airway mucosal immunity,Bronchus-associated lymphoid
tissue,Airway secretion,Immunoglobulin
はじめに
ヒトは一日に約 10,000 L の空気を換気しており,生
体維持に必要な呼吸機能を営んでいる.呼吸器組織は,
張り巡らしているからであると考えられる.そこでその
防御機構について,気道,特に気道粘膜下腺の果たす役
割の重要性についてこれまでに得られている知見をもと
に論述していきたい.
鼻咽頭などからなる上気道系,気管から細気管支に至る
本稿では,まず宿主側がどのような生体内防御機構を
下気道系,そしてより末梢側にある肺胞系の大きく三段
備えているかについて簡単に列記し,次にさまざまな外
階に分けられる.地上で生活する動物は鼻呼吸をするも
来抗原に対しどのように対処するのかについて粘膜免疫
のであり空気は鼻腔を通って肺に達するのが生理的であ
の観点からその臓器間相互作用も含めた機能について述
る.しかし,ヒト,特に成人では鼻炎によってやむを得
べることにする.
ず,または習慣のため,多くのヒトが口呼吸をしている.
口呼吸することによって外気は口腔内を通ることにな
る.ヒトでは口蓋扁桃,咽頭扁桃,舌扁桃などからなる
I.生体に備わっている気道粘膜防御機構に
ついて(気管―気管支)
Waldeyer’
s ring というリンパ組織が咽頭部に発達して
気道粘膜免疫において重要な役割を果たしているもの
おり,鼻粘膜以外にこれらも上気道の感染防御機構の一
として,気道粘膜を覆う気道液,気道上皮細胞,気道粘
部ととらえることができる.
膜下腺,粘膜下のリンパ組織などが挙げられる.
空気中には数多くの微生物や粉塵が含まれており,こ
1.気道液
れらが常時,気道内に入り込んでいることになるが,健
気道液は気道粘膜を覆う液層で 2 層よりなっており,
常人は,容易には気道感染や肺障害を引き起こすことは
上層は粘液のゲル層で主に気道粘液腺細胞および杯細胞
ない.これは,気道組織にこれらの外来抗原を殺菌また
から分泌されるムチンからなり,下層は periciliary fluid
は排除する機構が備わっており,絶えずその監視機構を
と呼ばれるゾル層で主に気道漿液腺細胞より分泌される
〒980―8574 宮城県仙台市青葉区星陵町 1―1
東北大学医学部第 1 内科
*
東北大学医学部附属病院総合診療部
(受付日平成 12 年 8 月 16 日)
―水分で構成される1).気道液中には
クロライド(Cl−)
非特異的な抗菌作用を持つさまざまな低分子蛋白(リゾ
チーム,ラクトフェリン,β―デフェンシンなど)のほ
かに,抗原特異的に作用する免疫グロブリンも多く含ま
158
日呼吸会誌
Fig. 1 Photomicrograph of porcine trachea showing
numerous submucosal glands under the surface epithelium
39(3)
,2001.
Fig. 2 Photomicrograph of porcine tracheal submucosal glands. The mixed acinus contains mucous(M)
and serous(S)cells, the latter mostly located at the
end of the mucous tubules.
れており防御の第一線として重要な役割を担ってい
る2)3).特に免疫グロブリンに関しては,後で詳しく述べ
ることにする.
2.気道上皮細胞
気道上皮細胞は正常では多くが線毛上皮であり,これ
にごくわずかの杯細胞が散在している.
上皮細胞層の機能としては,
粘液線毛輸送により,
咳反射とともに吸入された有毒ガス,異物,細菌などを
排除する4),
管腔側細胞膜上に存在する Na チャンネ
+
ル(ENaC : Epithelial Na Channel)を介して Na+吸収に
伴う水分吸収を行なう5),
同じく管腔側細胞膜上に存
−
在する cAMP 感受性 Cl チャンネル(CFTR : Cystic Fibrosis Transmembrane Regulator)を介した Cl−移動に
伴う水分移動(CFTR は気道上皮だけでなく気道粘膜
下腺にも多く発現しており6)7),その機能については,
Cl−―水分の移動が分泌の方向なのか吸収の方向なの
か8)∼10),また ENaC を抑制することで吸収を抑制する方
向に働くのか11,あるいはそれらが気道液の組成にどの
Fig. 3 Transmission electron photomicrograph of a human tracheobronchial gland acinus. Mucous cells(M)
have electron-lucent granules that range in diameter
from 300 nm near the Golgi to 1,800 nm near the apical nembrane. Serous cells(S)have electron-dense secretory granules that range in size between 300 and
1,000 nm.(From reference 20)
程度関与しているかについては議論の余地のあるところ
ではある.また,気道上皮細胞には Ca2+依存性 Cl−チャ
ンネルの存在も報告がある12)がその機能的意義は不明で
炎症性サイトカインを産生し周囲のリンパ球
外来抗原を取り込み MHC class II
いった現象も報告され17)∼19),注目を集めているところで
の分化を促す13)14),
ある)
,
もある.粘膜腺とともに杯細胞は粘液糖蛋白からなるム
チンを分泌することで気道液の粘稠度を増し,気道壁に
を発現し抗原呈示細胞として免疫細胞を活性化させ
沈着した外来抗原をトラップし排出するという非特異的
15)
な排除機構の中心的役割を果たしているといえるが,慢
一方,杯細胞は粘液細胞であるが,粘液細胞としては
性気管支炎などの慢性炎症気道においてはこのムチンが
ヒト気道では気道粘膜下粘液腺の方が 40∼60 倍とかな
過剰に産生され,下気道に貯留することでむしろ細菌の
る ,などさまざまな機能が報告されている.
16)
,気道分泌に主要な役割を果た
り多く存在し (Fig. 1)
増殖の場となり,感染を促す方向に作用してしまうと
しているのは粘膜下腺の方であると考えられる.しかし,
いった二面性があることも重要である.
粘膜下腺は末梢気道には存在しないことから杯細胞は末
3.気道粘膜下腺
梢気道のムチン分泌に重要であることが推測される.ま
気道粘膜下腺は混合腺であり,主に電解質,水分,低
た,慢性炎症気道においては杯細胞の過形成や過分泌と
分子量の蛋白分解酵素を分泌する漿液腺細胞と,主に粘
気道粘膜防御機構における気道粘膜下腺の役割
Fig. 4 Schematic representation of intracellular mechanisms on electrolyte secretion of the submucosal
glands. Inositol 1, 4, 5-trisphosphate(IP3)synthesis
caused by the stimulation of acetylcholine(ACh)receptors at the basolateral membrane leads to the release of Ca2+ from an IP3-sensitive Ca2+ pool(IP3S
CaP)and leads to the initial apically localized increase
−
of[Ca2+]
i, in turn activating the apical membrane Cl
+
channels. The following activation of K channels at
the basolateral membrane causes hyperpolarization,
which may be favorable both to the maintenance of
Cl− secretion and to causing Ca2+ influx into the cytosol. The K+ channel activation can be explained by
Ca2+ release from the caffeine or ryanosine-sensitive
(IP3-insensitive)Ca2+ pool(IP3IS CaP)
. Physiological
linkages between the putative Ca2+ stores are still unknown, as shown by dotted lines, although a cyclic
ADP ribose(cADPR)
-triggered Ca2+ release has been
proposed.
159
Fig. 5 Schematic representation of various steps in
glandular transport of locally produced dimeric IgA.
Polymeric immunoglobulin receptor(pIgR)is synthesized as a transmembrane protein on the rough endoplasmic reticulum(rER)of the serous cell, and forms
complexes whth J chain-containing dIgA originating
from local plasma cells. pIgR-dIgA complexes and excess free pIgR are taken up by the serous cell in endocytic vesicles. These vesicles move to the luminal face
by transcytosis. Secretory IgA(sIgA)and free secretory component(SC)are released by cleavage from
the transmembrane portion of pIgR. Pentameric IgM
(not shown)is transported externally by the same
pIgR-mediated mechanism.(Modified from reference
35)
外に cAMP 依存性 Cl−チャンネル(CFTR)の存在も報
告されている6)7)が,単に cAMP だけでは Cl−の分泌が
生じないなど22)27),その生理的機能については不明の点
が多い.
近年,漿液腺からは水分,リゾチーム,ラクトフェリ
ン,β―デフェンシンなどの非特異的な抗菌物質のほか
に,気道液中での主要な免疫グロブリンである分泌型
液糖蛋白からなるムチンを分泌する粘液腺細胞の 2 種類
IgA(sIgA)も積極的に分泌されていることが明らかに
からなる(Fig. 2,Fig. 3)
.ヒトではこの比率は 60:40
3)
5)
.以前より,気道漿液腺細胞
されてきている2)(Fig.
2)
20)
でやや漿液腺が多いといわれている .ヒト 以外で粘
表面には pIgR(polymetric immunoglobulin receptor)
膜下腺が発達しているのは,実験動物ではブタ(Fig. 1)
の存在が示唆されていたが28),近年になって気道漿液腺
21)
22)
23)
,フェレット 程度であり,他のマウス,ラ
細胞の性質を持つ Calu-3 細胞が細胞表面に pIgR を発現
ット,モルモットおよびウサギなどのげっ歯類では発達
し,さらにその mRNA や蛋白レベルでの発現量および
していない.気道腺細胞は,ムスカリン受容体,α―ア
pIgR を介した dimericIgA(dIgA)の管腔側への輸送
ドレナリン受容体などの刺激にてイノシトールリン脂質
能が炎症性サイトカインである IFN-γ によって upregu-
代謝が活性化され,管腔膜の直下に局在する IP3 感受性
late されていることが報告され29),気道腺細胞の免疫グ
Ca2+プールからの Ca2+放出が生じ,管腔膜上の Cl−チャ
ロブリン輸送における役割が注目されてきている.この
.気道分泌
ンネルが開き Cl−分泌をもたらす24)(Fig. 4)
ようなサイトカインによる調節は腸管上皮細胞でも知ら
やネコ
−
の 95% 以上は水分成分であり,この能動的な Cl 輸送
れており,Th 1 系サイトカインの IFN-γ や Th 2 系サイ
に伴って水分が気道内腔へ移動すると考えられてい
トカインの IL-4 などの関与も報告されている30).また,
る25)26).気道粘膜下腺には Ca2+依存性 Cl−チャンネル以
最近我々は,甲状腺刺激ホルモン(Throid Stimulating
160
日呼吸会誌
39(3)
,2001.
4.粘膜下のリンパ組織
気道液中には前述したようにさまざまな抗菌蛋白のほ
かに,IgA を中心とした免疫グロブリンも多く含まれて
いる2)3).気道にはこの抗原特異的分泌型 IgA を誘導す
る粘膜免疫機構が発達しており,気管支随伴リンパ組織
(bronchus-associated lymphoid tissue : BALT)と呼ば
れる33).同様の機構は消化管でもかなり発達しており,
パイエル板などからなる腸管随伴リンパ組織(gut-associated lymphoid tissue ; GALT)
として存在しているが,
これらの粘膜免疫機構は全身免疫系とは異なった独自の
免疫学的防御機構を持つ.すなわち,これらは粘膜面に
抗原特異的分泌型 IgA を誘導するために発達したもの
Fig. 6 Schematic representation of the proposed pathways of thyrotropin(TSH)in regulating the airway
defense mechanisms. The left half of the figure depicts the TSH action on nonspecific defense mechanisms. TSH markedly potentiates the neurotransmitter-mediated electrolyte secretion, resulting in an
upregulated fluid secretion that washes away the inhaled substances. The right half of the figure depicts a
hypothetical enrollment of TSH in the specific defense. TSH is known to bind to lymphocytes, raise the
plasma level of IFN-γ, and enhance the production of
immunoglobulins by promoting the differentiation and
proliferation of plasma cells. Then IFN-γ upregulates
the turnover of SC. In inflammatory or infected airways, plasma cells have been localized in close proximity to submucosal glands. M3 : muscarinic m3 receptor. α : adrenergic receptor. Th : helper T lymphocyte.
Numbers in parentheses are reference numbers.
(From reference 22)
で,抗原を取り込み免疫担当細胞に呈示する誘導組織と
抗原特異的 IgA を積極的に産生する実効組織から成り
立っている33).
BALT は形態学的には以下のような特徴を持つ.
外来抗原が沈着しやすい末梢の細気管支分岐部領域の粘
膜上皮層および粘膜固有層にリンパ濾胞が存在する,
リンパ濾胞は粘膜面に突出しリンパ性上皮(LE : lym-
濾胞内部には樹状細胞
cell)も存在する,輸出リンパ管のみ
phoepithelium)で覆われる,
(DC : dendritic
存在し輸入リンパ管は存在しないがその代わりに高内皮
性細静脈(HEV : high endotherial venule)が存在する,
などである33).
また,機能的には,外来性の病原微生物や異物などの
吸入抗原を積極的に取り込み,抗原特異的な IgA 産生
を誘導することが最も重要であると考えられている33).
すなわち,BALT の粘膜面を覆う LE には endocytosis
や pinocytosis などの積極的な抗原取り込み能があり,
BALT 内に取り込まれた抗原は内部に存在する DC な
Hormone : TSH)が本来の内分泌作用以外に免疫系とも
どの抗原呈示細胞によって Th 細胞に呈示される.DC
密接に関わっていることに注目し,TSH の気道粘膜下
や活性化された Th 細胞によって未感作の B 細胞が抗原
腺外分泌機能に対する影響についての報告をしてい
特異的な抗体を表面にもつ IgA 陽性 B 細胞に分化,成
22)
る .すなわち,従来 TSH は Th 1 系サイトカインであ
31)
熟する.さらに,IgA 陽性 B 細胞と Th 細胞は輸出リン
る IFN-γ の産生を促進したり ,B 細胞から形質細胞へ
パ管から出て,全身の循環系に入り,一部は HEV を介
の分化を促進したり32)と多様な免疫賦活作用が報告され
して再び BALT に homing し BALT 内で抗体を産生す
ているが,これに加えて気道粘膜下腺細胞での神経伝達
るが,またほかの多くは広く気道粘膜下に分布する.そ
物質(アセチルコリン,ノルアドレナリン)による電解
して,Th 2 細胞が産生する IL-4,5,6 などのサイトカ
質分泌に対して強い増強効果を持つことを明らかにし
インの存在下に IgA 陽性 B 細胞は形質細胞に分化し,
た.さらにこの効果は細胞内 Tyrosine Kinase を介して
抗原特異的分泌型 IgA を産生するようになるのであ
.
いるものと考えられた22)(Fig. 6)
る33)34).実は,このとき形質細胞は無秩序に気道粘膜下
つまり,気道粘膜下腺は粘膜下の免疫担当細胞および
に分布するのではなく,なるべく気道粘膜下腺の周囲に
さまざまなサイトカイン,免疫調節ホルモンなどと密接
集まろうとする傾向がある34)∼36).気道表層上皮細胞には
に関わることで,電解質―水分分泌という非特異的な防
dIgA を能動的に輸送する機能が乏しく,この輸送能は
御機構としてだけでなく,免疫グロブリンの分泌という
主に気道粘膜下腺漿液腺細胞において行われていると考
抗原特異的な防御機構の一部としても機能していると考
(Fig. 5)
.つまり,粘膜下腺近傍で産生
えられている35)36)
えられる.
された dIgA は腺細胞表面の pIgR と結合することで効
気道粘膜防御機構における気道粘膜下腺の役割
率よく気道液中に輸送されることができるのである.
161
またより多くの抗原との結合を可能にする優れた工夫で
これまでの報告では,BALT は,ラット,マウス,
あるといえる.ちなみに,IgM もまた分泌液中に 5 量
ウサギなどのげっ菌類の実験動物ではよく発達している
体として粘膜下腺より分泌されており,IgA と同様に J
が,健康なヒトやブタやネコではほとんど発達していな
chain と SC が結合した分泌型 IgM(sIgM)の形で存在
37)
いといわれていた .しかし,近年ヒトでも慢性気道感
38)
している34)35).一方,IgG も気道液中に比較的多く存在
染症であるびまん性汎細気管支炎(DPB) ,吸入抗原
しているが,IgG はここで述べたような能動的な機序で
によって惹起される肉芽腫性疾患の慢性過敏性肺臓
はなく,単に気道上皮間を受動的に拡散して管腔側に移
39)
炎 ,全身性の免疫異常を基盤とする膠原病性肺病変
40)
などで BALT が顕在化してくることや,慢性的な喫煙
41)
動するものと考えられており35),IgG と粘膜下腺との関
連はそれほど密接ではないといえる.
者の気道には BALT が出現する頻度が高い という報
2.気道粘膜下腺における sIgA の分泌機序
告により,慢性的に大量の抗原に暴露される場合や何ら
IgA 誘導組織で抗原呈示を受けた Th 細胞は,IgA 陽
かの免疫異常があるような場合には,ヒト気道において
性 B 細胞とともに全身循環系をまわり,気道粘膜下組
も BALT が顕在化してくることが示されている.
織(特に粘膜下腺周囲)に分布する34)35).さらに Th 2
II.粘膜免疫における気道粘膜下腺の
役割について
細胞が産生する IL-4,5,6 などのサイトカインの存在
下に IgA 陽性 B 細胞は形質細胞に分化し,抗原特異的
dIgA を産生する34)42).ここで,dIgA は気道粘膜下腺に
これまでに述べてきたように,気道粘膜下腺は単に気
備わっている輸送機構によって管腔側に能動輪送される
道分泌という非特異的な防御機構にのみ関与しているの
ことになる.もともと,粘膜下腺細胞表面には,2 量体
ではなく,BALT あるいはその他のリンパ組織(NALT,
の IgA や 5 量体の IgM と結合する受容体として機能す
Waldeyer’
s ring,GALT etc.)によって誘導された抗原
る pIgR がたくさん発現している2)28)29).pIgR が dIgA と
特異的な IgA を気道液中に積極的に分泌する経路とし
結合すると,この能動的な輸送機構によって基底膜側か
ても機能し,さまざまな微生物に対して免疫系と協調し
ら管腔側に向かって細胞内を移動する(transcytosis).
て抗原特異的な防御機構においても重要な役割を果たし
管腔側の細胞膜上にまで移動した pIgR-dIgA 複合体は,
pIgR が途中で切断されて細胞外部分は SC-dIgA 複合体
ている可能性が示唆されてきている.
そこで,ここでは,分泌型 IgA の構造的特徴,分泌
機序について概説した後,気道防御機構として気道粘膜
下腺がどのような役割を果たしているのかについて述べ
(=sIgA)として気道液中に放出され残りの部分は再び
.
細胞内に取り込まれる35)(Fig. 5)
近年,この IgA の一方向性の能動輸送が Th 1 系の炎
症性サイトカインである IFN-γ29)や,Th 2 系サイトカイ
ていく.
1.分泌型 IgA の構造
ンである IL-430)によって upregulate されていることが
そもそも IgA は 1960 年代後半に鼻汁中に存在する主
報告され,気道粘膜下腺が免疫系との密接な相互作用に
な蛋白として,はじめて粘膜免疫での重要性が示された
よって IgA の分泌を効率的に行なっていることが明ら
免疫グロブリンである.粘液中の IgA はほとんどが約
かにされてきている.
390 kD の 2 量体として存在しており,sIgA という形で
3.気道粘膜免疫における粘膜下腺の役割
特徴づけられる.粘膜下組織に集積した形質細胞は light
前述したように,IgA は 2 量体でしかも SC と結合す
chain と heavy chain からなる IgA 2 分子を,約 15 kD
ることによって,より多くの抗原と結合し,また気道液
の J chain というポリペプチドでジスルフィド結合させ
中でより安定して存在することができるという,粘膜免
て dIgA として分泌する.これによって単量体である
疫にとって有利な特徴を持っている34)が,この特徴は粘
IgG や血清型 IgA と比較して抗原結合価や凝集能が高
膜下腺細胞の輸送系を介してはじめて有効となり得るこ
34)
くなる .分泌液中ではさらに secretory
component
と,また,さまざまな炎症性サイトカインによってこれ
(SC)と呼ばれる約 80 kD の糖蛋白と結合することで,
ら免疫グロブリンの分泌が調節されているという点にお
sIgA として存在している.SC は dIgA が気道粘膜下腺
いても,気道粘膜下腺は気道粘膜免疫において sIgA と
細胞膜表面に存在する pIgR と結合して細胞質内を通り
同様に重要な役割を果たしているといえる.さらに興味
管腔側へ輸送され遊離する際に,pIgR の結合部がくっ
深いことに,健康なヒト,ブタ,ネコには BALT がな
ついたまま一緒に遊離したものである(Fig. 5)
.SC は
い代わりに気道粘膜下腺が非常によく発達しており,逆
高い親水性を有しているため sIgA はほかの免疫グロブ
にラット,マウスなどのげっ歯類では粘膜下腺はほとん
リンより親水性が高く,さらに分泌液中のさまざまな分
ど認められない代わりに BALT がよく発達しているこ
解酵素に対してもより抵抗性が高くなる34).このことも
とから,健常成人では IgA を誘導する機構が BALT で
162
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,2001.
はなく別の組織に備わっており,それらで誘導された
IgA 産生細胞が気道粘膜下腺の周囲に集まって抗体を産
生するという経路が推測される.つまり,気道粘膜下腺
は常に全身粘膜からの抗原情報を反映した防御の最前線
として機能しているというものである.実際に,気道系
は消化器系とは異なり盲端の構造をとっており,常に無
菌状態に保つためには外来微生物を発見したらすぐにそ
の場で殺菌し気道外に排出しなければならないという構
造上の必要性がある.しかし,この機構を可能にするに
は気道局所だけでは不十分である.そこで次に,多臓器
粘膜免疫と気道防御機構との関わりについて述べること
にする.
III.他臓器粘膜と気道粘膜の免疫機構
これまで,主に気道局所の粘膜免疫機構について述べ
てきたが,実際にさまざまな臓器の粘膜免疫と密接な関
係によって気道粘膜免疫が成り立っているとする報告が
.他臓器の粘膜免疫機構としては,咽
多い34)∼36)(Fig. 7)
頭部の Waldeyer’
s ring,消化管の GALT などが挙げら
れる.
1.鼻咽頭粘膜と気道粘膜免疫
NALT や Waldeyer’
s ring のリンパ濾胞は抗原を取り
込み,処理し,免疫細胞に抗原を呈示する能力が非常に
発達しているといわれており43)44),鼻咽頭粘膜で免疫系
に認識された抗原の情報が,気管―気管支の粘膜に伝達
されていることを示唆する報告もいくつかある.すなわ
ち,ヒト IgA にはいくつかのサブタイプがあり,その
うち IgA1 産生細胞が口蓋扁桃には 95% と非常に多く存
在しているが,他臓器の中では特に上気道―気管支粘膜
中に 75∼93% と高頻度に存在するという報告45)から,
Waldeyer’
s ring のリンパ濾胞で活性化された B 細胞
が,全身循環系を巡って IgA 産生の実効組織としての
気道粘膜に分布してくるのではないかと推測される.ま
Fig. 7 Model for putative homing pathways of primed
B and T cells from organized lymphoepithelial tissues
(inductive sites)to various exocrine glands or secretory epithelial tissues(effector sites)in the integral
mucosal immune system. Both tonsils and adenoids
(=NALT)and GALT exist in healthy humans, but
not BALT. However, in a case of chronic exposure to
numerous antigens or of development of any immune
disorders, BALT becomes obvious in the human airways. It is considered that much immune information
transmitted via IgA-producing B cells originated in
NALT and GALT, and that BALT are transmitted toward the bronchial glands.(Modified from references
36, 46)
た,マウスであらかじめ鼻粘膜に弱毒化した抗原を暴露
しておくと,その後気道系に同じ抗原が大量に暴露され
ても,コントロール群に比べて気道―肺のレベルでの炎
原の取り込み能が非常に発達しており,リンパ濾胞内部
症細胞の浸潤,組織破壊がごくわずかで終息してしまう
での抗原呈示が可能で,Th 細胞や B 細胞を活性化させ
こと46)から,鼻粘膜で得られた抗原に関する情報が何ら
る.
かの機序(おそらく IgA 産生細胞)を介して,下気道―
GALT は食餌とともにさまざまな外来抗原と常に接
肺組織に対し有効な免疫をもたらすことが示唆される.
しており,GALT の形成,機能維持には食餌因子が最
これらのことより,気道粘膜下腺周囲に集積する IgA
も重要であると考えられている.マウスを絶食にして中
陽性 B 細胞は,少なくとも一部は上気道系のリンパ組
心静脈栄養だけで飼育すると,GALT の委縮と腸管粘
織に由来するものであると考えられる(Fig. 7)
.
膜の IgA の減少が認められる.このような GALT が委
2.GALT と気道粘膜免疫
縮するような条件では腸管だけでなく気道系の IgA も
ヒト消化管においてはパイエル板や虫垂のリンパ濾胞
平行して減少するという報告7)や,逆にあらかじめ経口
に見られるような GALT が著しく発達している.GALT
的に緑膿菌生菌または死菌を投与しておきその後に生菌
も BALT や NALT や Waldeyer’
s ring などと同様に抗
を経気道的に投与するとコントロール群に比べて明らか
気道粘膜防御機構における気道粘膜下腺の役割
163
に気道での抗原特異的 IgA が増加しており,気道―肺
物質の開発,近い将来,新しい治療法の開発につながる
レベルでの炎症が軽症化し,また速やかに終息するとい
ことが期待される.
う報告48)49)などは,GALT で得られた抗原の情報が気道
文
系の防御機構にも影響を及ぼしていることを示唆してい
る.
献
1)Widdicombe JH : Ion and fluid transport by airway
これらのことから,GALT で活性化した IgA 陽性 B
epithelium. In : Takishima T, Shimura S, eds, Air-
細胞が,一度全身循環系を巡った後,腸管以外に気道粘
way secretion. Physiological bases for control of mu-
膜にも分布してくることで,消化管で獲得した免疫が気
cus hypersecretion, Marcel Dekker Inc. New York.
道粘膜免疫系にも伝達され,速やかに外来微生物を排除
1994 ; 399―432.
する機能が生体には備わっていると考えられる(Fig. 7)
.
3.気道粘膜免疫機構の破綻と気道感染
これまでに述べてきた気道の粘膜免疫機構は,気道局
所だけでなくさまざまな臓器との関わりによって成立し
うることが示唆された.ここでは,この機構が十分に機
2)Basbaum CB, Jany B, Finkbeiner WE : The serous
cell. Annu Rev Physiol 1990 ; 52 : 97―113.
3)Widdicombe J : Relationships among the composition of mucus, epithelial lining liquid, and adhesion of
microorganisms. Am J Respir Crit Care Med 1995 ;
151 : 2088―2093.
能しない場合について述べてみたい.先天性低ガンマグ
4)Wanner A, Salathe M, Orirdan TG : Mucociliary
ロブリン血症では IgG の補充療法が広く行われている
clearance in the airways. Am J Respir Crit Care
が,気道感染の合併症により死に至る率が高いと言われ
Med 1996 ; 154 : 1868―1902.
ている.実際にこの疾患群(補充療法によって血清 IgG
5)Boucher RC : Human airway ion transport(Part
は正常だが IgA は低値のままである)の気道液中には
one)
. Am J Respir Crit Care Med 1994 ; 150 : 271―
adenovirus,cytomegalovirus,rhinovirus な ど の ウ イ
281.
ルスが 36%,Haemophilus influenzae,Streptococcus vi-
6)Puchelle E, Gaillard D, Ploton D, et al : Differential lo-
ridans などの細菌は 64% も存在し,それぞれ健常者群
calization of the cystic fibrosis transmembrane con-
の 0%,23% と比較して有意に多いという報告50)は,気
ductance regulator in normal and cystic fibrosis air-
道免疫における IgA の重要性を裏付けるものである.
また,喫煙者のうち慢性気管支炎を発症したものについ
て気管支粘膜下腺周囲に集積する炎症細胞を検討した報
告51)によると,コントロール群(喫煙者)と比べて有意
に CD 4 CD 8 比が低下しており,過分泌以外にもこの
ような気道局所の免疫異常が慢性気道感染の原因となっ
ている可能性もある.
way epithelium. Am J Respir Cell Mol Biol 1992 ; 7 :
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7)Engelhardt JF, Yankaskas JR, Ernst SA, et al : Submucosal glands are the predominant site for CFTR
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8)Boucher RC : Molecular insights into the physiology
of the‘thin film’of airway surface liquid. J physiol
このように,気道粘膜免疫機構は生体を病原菌から守
1999 ; 516 : 631―638.
るうえで極めて重要な役割りを果たしているといえる.
9)Kunzelmann K, Schreiber R : CFTR, a regulator of
おわりに
10)Pilewski JM, Frizzell RA : Role of CFTR in airway
channels. J Membrane Biol 1999 ; 168:1―8.
気道粘膜免疫について気道粘膜下腺の重要性について
述べてきた.気道粘膜下腺は,単に気道粘膜を覆う気道
液の産生だけではなく,さまざまな臓器からの免疫情報
のターミナルとして抗原特異的 IgA の輸送も担い,ま
た,炎症性サイトカインや免疫調節ホルモンなどの調節
を受けていることなどから,気道粘膜免疫において極め
て重要な役割を果たしているといえる.しかし,いまだ
disease. Physiol Rev 1999 ; 79 : S 215―S 252.
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不明の点も多く,解明されるべき点も多い.また,この
13)Watanabe M, Ueno Y, Yajima Y, et al : Interleukin 7
領域の研究がもっとなされ,気道感染を繰り返す慢性閉
is produced by human intestinal epithelial cells and
塞性肺疾患,気管支喘息などの慢性炎症気道における治
regulates the proliferation of intestinal mucosal lym-
療として他臓器粘膜間の相互作用を利用した幼鼻,経口
phocytes. J Clin Invest 1995 ; 95 : 2945―2954.
ワクチンの利用,あるいは,気道粘膜下腺の輸送経路を
14)Martin LD, Rochelle LG, Fischer BM, et al : Airway
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Abstract
The Role of Airway Submucosal Glands in the Airway Mucosal Defense System
Tsutomu Tamada1)and Tsukasa Sasaki2)
1)
First Department of Internal Medicine, and 2)Department of Comprehensive
Medicine, Tohoku University Graduate School of Medicine
1―1, Seiryo-machi, Aoba-ku, Sendai 980―8574, Japan
Despite constant inhalation of air-borne particles including a variety of microbes and antigens, the normal
lungs hardly ever develop infection or airway injury. This is because the normal lung is equipped with sophisticated defense mechanisms against foreign substances. It has been reported that the airway mucosa, especially the
submucosal glands, play important roles not only in nonspecific defense using airway secretions but also in specific defense in cooperation with immune cells. In contrast to the nasopharyngeal or intestinal mucosa, which is always exposed to many foreign antigens, the mucosal surface of the lower respiratory tract in known to be kept in
a germ-free condition. This fact indicates that immunological information dervied from the antigen-rich mucosa,
such as the intestine, might be transmitted to the airway mucosa, thus resulting in efficient removal of unwanted
substances. This immunological elimination requires specific antibodies(Abs)against harmful antigens, and the
major population of Abs in the airway is dimeric IgA. Airway submucosal glands synthesize a secretory component(SC)
, a transporter of secretory IgA, and immunoglobulin-containing plasma cells have been identified preferentially around the glandular tissue. Overall, the submucosal glands play a key role in the integrity of airway
mucosal immunity.
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