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パブリック・リレーションズの新しい世界 - Weber Shandwick Japan
パブリック・リレーションズの新しい世界 ~グローバル統合ブランドにおける広報の役割~ ウェーバー・シャンドウィック / KRCリサーチ The New Global World of Public Relations / 2 統一されたグローバル・ブランドの構築と維持のために ウェーバー・シャンドウィックには「グローバル・マーケティング・ミックス の変化に適応するため、どのような移行措置を講じる必要があるか」「グロー バル企業は、広報の拠点や人員を世界各地にどのように配置することが適切 か」「コミュニケーションコンサルタントは、どのようなニーズや期待に対応 できるか」といったお問い合わせが頻繁に寄せられています。 グローバル企業でコーポレート・コミュニケーションを担当・統括する企業幹 部10名に、現状の課題と対策についてインタビュー調査を実施し、グローバル 企業のコミュニケーション活動についての5つの教訓を導き出しました。 The New Global World of Public Relations / 3 測定可能な将来の成果に投資せよ 企業のコーポレート広報部門に割り当てられる予算は、企業全体の抱える幾多の目標に対して、バラ ンス良く配分される必要があります。しかしながら、多くの場合、広報予算は前年度の予算配分、ま たは当年度の収益に基づき半ば自動的に配分された後に、優先順位に基づき微調整が行われる傾向が あります。 今回のインタビュー調査から、予算の地域配分を適切に行うためには、次の二つのことを考慮する必 要があることが明らかになりました。 第一に「現在、特定の地域がどの程度重要か」にとどまらず「その地域が将来にとってどの程度重要 になるか」についても十分に考慮すべきということです。 多くの企業が、広報予算の設定にあたって、現在の収益を考慮しています。しかし広報担当幹部の多 くが、収益を5年先、または10年先にどうしたいか、という点も考慮のうえで予算を検討していると回 答しました。すなわち先進的なグローバル企業は「広報は自社の将来の収益目標達成のための一手 段」と見ており、収益と広報が相互作用するものと考えていることを意味しています。 The New Global World of Public Relations / 4 第二に「今年度内にその地域で何を達成したいか」だけでなく 「今年度その地域で何を提供する必要があるか」を考慮すべきだ ということです。 インタビュー回答者は、資金を投下するコミュニケーション・プ ロジェクトは、具体的な成果が「測定可能でなくてはならない」 と語っています。このため広報担当幹部は、成功の可能性が高い 広報活動に重点的に予算を配分しています。つまりそれぞれの広 報活動は、将来に向けた基礎を築くことを目的とするのみならず、 具体的かつ測定可能な方法で、目標達成が可能なものであるべき だということです。 企業の存在感を高めよう とする市場には、比較的大 きな予算を割り当てる必要 がある。現在の収益に基づ く比例配分では成長を実現 することは難しい “ ” 予算は達成可能な戦略的 目標に基づいて決められる。 コミュニケーション活動へ の投資が、事業の成果を導 くことが可能だということ を示すことが重要だ “ ” 成長と拡大を図るべき地 域に予算を投下している “ ” The New Global World of Public Relations / 5 新興市場の予算を増やせ グローバル広報活動といえば、欧米を中心としたメディアで、で きるだけ多くの報道を獲得することに注力されるのが常でした。 売上高全体に占める アジア市場の売上高の割合 一方で、新興諸国における広報活動は、比較的低コストで実施で きるものと考えられてきました。 ウェーバー・シャンドウィックと人事コンサルティング会社スペ ンサー・スチュアートが、グローバル企業の広報幹部142名を対 象に共同で実施した最近の調査によると、これからのアジア市場 での売上は、年間売上高の約18%にまで高まると予測する一方で、 アジア市場に投下する広報予算は全体の13%に過ぎないことが分 かりました。 しかし今回のインタビュー調査では、回答者全員が、広報活動に 「安価」な地域などないという認識を持っていました。 コミュニケーション予算全 体に占めるアジア市場への 投下予算の割合 The New Global World of Public Relations / 6 インタビュー回答者は、予算配分に際して、相対的な人件費や為 替はほとんど考慮せず、むしろ広報課題の戦略的重要性に基づい て決定していると述べました。そして企業の将来的成長において 極めて重要な地位を占める新興市場に必要な広報予算は、急速に 増加しています。 その一方で、多くの回答者が、新興国への広報予算の配分に際し て不満を抱いた経験があると述べています。欧米に投資するより もはるかに小規模な予算で、中国やインドで十分な広報活動の成 果を期待する経営者と対立した経験があると回答しています。 グローバル広報を展開する上で、世界各地域に適切な予算を配分 するためには、グローバル事業戦略と事業目標を把握し、それら と連携した広報計画を立案する必要があります。しかも広報計画 は、達成可能かつ測定可能な指標を含めるべきであり、当該市場 の数年先の戦略的重要性に基づいた予算配分が必要となります。 さらに広報計画の立案にあたっては、現地の意見を聴取し、市場 の特性が広報活動の効果にどのような影響をもたらすかについて 知っておくことも大切です。 事業の成長が見込める地 域や、具体的な事業目標が 達成可能と思われる地域を 見定める必要がある “ ” 事業機会が最も大きく、 持続的な成長可能性が予期 できる市場に、より多くの 広報予算を割くことが道理 である “ ” The New Global World of Public Relations / 7 グローバルな戦略と規準をもとに、ローカルな戦術で臨め 「グローバル統合化(Global Integration)」は、一般的に用いられるビジネス用語となっており、今 回のインタビュー回答者も、一様にその重要性を認めています。 「グローバル統合化」には、グローバル広報において3つの意味があります。 第一に、コーポレート・ブランドが世界の隅々で一貫性のあるポジションを保ち、明確なメッセージ がグローバルに行き渡ることを意味します。 第二に、社員の持つ知識や知見が、常に円滑に、チーム内やチーム間、さらには企業のパートナーで あるエージェンシーにまで、周知徹底されることを意味します。すなわち、ベスト・プラクティス、 専門知識、スキルを世界で共有化し、最善の方法でコミュニケーションを行っているということです。 第三に、目的と指標をグローバルで統一化し、世界中の広報チームが達成すべきことと、その効果測 定方法を共有し、同じ理解と認識共有することを意味します。 The New Global World of Public Relations / 8 一方で、広報担当幹部たちが「グローバル統合化」の定義に当て はまらないと考えていることが二つあります。第一に、世界中で 全く同じ情報コンテンツを伝達すること。第二に、全く同様の広 報戦術を、複数の市場で展開することです。 インタビュー回答者たちは、世界の国々が今でも極めてローカル な特色を残していると考えています。グローバル戦略を尊重しつ つも、現地の文化に配慮するという基本的な考え方は、先進的な グローバル企業の広報担当幹部に幅広く支持されています。 グローバル企業では、各 市場のベスト・プラクティ スとアイディアを共有化し ようと努力している。そう することで、市場間で相互 に経験や知識、あるいはク リエイティビティを共有で きるからだ。しかしある市 場でうまくいくアイディア は、別の市場でうまくいく とは限らない。どのアイ ディアを取り入れるかを判 断するのは、それぞれの ローカル市場に委ねられる べきである “ ” グローバル統合化とは、 世界規模での首尾一貫した 戦略と、首尾一貫した質の 高い活動の実践を意味して いる。そのためには、各事 業部門や地域とのベストプ ラクティスと情報の共有化 が必須である “ ” The New Global World of Public Relations / 9 前述の理由から、広報担当幹部たちが、一貫性のあるグローバル戦 略に沿って地域に根差した広報活動を実践し、目的を達成するため にグローバル・エージェンシーに求めることは以下の通りです。 1 大局的な思考と高度な戦略立案能力、専門的な視点、斬新な アイディア 2 世界規模で影響力を持つインフルエンサーとのパイプ 3 世界の各地域で広報業務を遂行する能力に加え、専門性の高 いスキルやノウハウを持つ人材を早急に補充配備できる能力 4 高水準で一貫性のある広報活動をグローバルで実施または支 援する能力 5 特定業界の専門家、最新の広報ツールを活用する専門家、多 様なステークホールダーと関係を形成する専門家、必要に応 じて実用的な知識を応用できる実行力の高い専門家など、幅 広く専門性の高い人的資源 企業が信頼されるために は、信頼のおける実体を示 さなくてはならない。一貫 したメッセージの発信は企 業の信頼性維持に有用であ る “ ” グローバルで発信する メッセージが一貫性を保つ ことは、自社ブランドを明 確に定義し差別化するため にも重要だ “ ” The New Global World of Public Relations / 10 「デジタル」を広報から独立したカテゴリーとみなしてはならない 「デジタル」は、近年のコミュニケーション分野で利用すべき技術の一つであることは言うまでもあり ません。今回のインタビュー調査から、グローバル企業の広報担当幹部は、デジタルな手法によるコ ミュニケーションは、広報が日常的に行っているコミュニケーション業務と分け隔てて考えられるべき ものではないという意識を持っていることが分かりました。 さらに21世紀においては、従来のコミュニケーション技術に、デジタル・コミュニケーションのコン テンツ、ツール、技術、分析、文化のリテラシーを、完全に統合化することが、メディア・エンゲージ メントに重要であると回答しています。 もはや広報とデジタルを 隔てるものは何もない。つ まり、PR会社は、従来の 広報代理店としてよりも広 範囲に自らを再定義するこ とが必要となるだろう “ ” The New Global World of Public Relations / 11 PRの役割が拡大し、ますます戦略的重要性が増している 本調査から、多くのグローバル企業が、従来、別の部署に委ねていた業務を、自社の広報業務の一部 に取り込むことを検討していることが分かりました。 複数の回答者は、これまで個別の部署が行ってきた様々なコミュニケーションを、一つの部門で統合 して実施することの重要性が高まっていると述べました。つまりは、既存メディアとソーシャルメ ディア、社内コミュニケーションと対外コミュニケーションにおけるメッセージング、ブランディン グとコーポレート・レピュテーション(企業の評価・評判)、ガバメントリレーションとインベス ターリレーション、法務とクライシスコミュニケーションの区分を無くし統合することが次第に必要 性を増しているということです。 ニュースや情報が時間と空間を越えて飛び交う現代社会において、広報のグローバル統合化は、コ ミュニケーションの効率性向上、ブランド強化、情報の錯綜や評判の毀損を防止することに役立つと の認識が高まっています。これが広報、あるいは真の意味でのパブリック・リレーションズ(PR)の 役割が拡大している理由のひとつと言えるでしょう。 広報が果たしつつある戦略的役割の拡大は、ステークホールダー間におけるブランドとレピュテー ションの構築と保護を含むものです。広報部門は、単にメディアを通じた情報の拡散だけでなく、ス テークホールダーの興味や関心を把握し、ステークホルダーとの関係構築や深化にも責任を負うよう になっています。さらに広報機能は、企業とブランドの評判を管理し強化する中枢として認識される 時代が来ています。 The New Global World of Public Relations / 12 かつて広報とは、単にメディアリレーションだけを意味する言葉 として理解されてきました。しかし現在、文字通りのパブリッ ク・リレーションズ(PR)の重要な担い手として、広義に解釈さ れるようになっています。 今日のコーポレート広報責任者と広報業務担当者は、もはや既存 メディアでの言及や報道に一喜一憂するのではなく、グローバル な組織の中で、より高度な戦略的目的や役割を担い、自社ブラン ドの評判を構築し、ブランドがどこでどのように攻撃にさらされ ようとも、それを保護する役割を担っていることを自覚するべき でしょう。 また、いつでも、世界中のどこでも、ブランドの存在を通じて、 主要なステークホルダーとのエンゲージメント(関係構築)に責 任を負うようになってきていることを認識すべきでしょう。 かつて広報と言えば、メ ディアリレーションだけを 指していた時代があった。 しかし今日では、ブランド の認知と推進において、大 局的視野に立った戦略的役 割を担うものに進化を遂げ ている “ ” The New Global World of Public Relations / 13 調査のあらまし 当社は、グローバルに事業を展開する企業で広報を担当・統括する以下の企業幹部10名に詳細なイン タビュー調査を実施しました。これらの企業は、業種、地域展開(10社のうちの4社は、米国外に本社 を置く)、事業規模(年間売上高は30億ドルから1,000億ドルまで)、主要ステークホールダー(著名 なB2CブランドからB2BおよびB2Gまで)といった側面からも多岐に及んでいます。 • 消費者技術系企業担当最高コミュニケーション責任者 • 耐久消費財メーカーの最高マーケティング責任者 • 産業部品メーカーのアジア地域コミュニケーション部門長 • 健康製品メーカーのコーポレート・コミュニケーション部門長 • 自動車部品メーカーのコーポレート・コミュニケーション部門長 • エネルギー企業のコーポレート・コミュニケーション部門長 • 金融サービス企業のアジア、アフリカ、中東地域担当コーポレート・コミュニケーション部門長 • 食品サービス企業のグローバル・パブリック・アフェアーズ部門長 • 技術系企業の社内外コーポレート・コミュニケーション部門長 • 飲料メーカーのコーポレート・アフェアーズ担当副社長