...

Page 1 219 これまでの肉眼解剖学の教育と研究 新潟大学医学部解剖

by user

on
Category: Documents
16

views

Report

Comments

Transcript

Page 1 219 これまでの肉眼解剖学の教育と研究 新潟大学医学部解剖
2
1
9
これ まで の
肉 眼 解 剖 学
の教育 と研究
新潟大学医学部解剖学第-講座 (
主任 :熊木寛治教授)
千 葉 正
司
My Educational and Research Work in Macroscopic Anatomy
Shoji CHIBA
Fi
r
s
tDe
par
t
me
nto
fAnat
om夕,
Ng
i
gai
aUni
v
e
r
s
i
t
ySc
ho
olo
fMe
di
c
i
ne
(
Di
r
e
c
t
e
r:Pr
o
f.Hai
s
甜j
iHUMAHI)
Thi
spa
pe
1
-ment
i
onsmyf
unda
me
nt
a
li
dea
sa
ndr
e
s
ea
rchwor
・
ki
nma
cr
os
c
opi
ca
na
t
omy.
l
nt
hef
i
el
doft
hedi
s
s
e
c
t
i
onpr
a
c
t
i
c
ef
(
)
rme
di
ca
ls
t
udent
s,Ir
e
c
(
)
r
de
dbymys
el
fm
i nut
el
y
a
ndpr
ec
i
s
el
yas
e
r
i
e
sofl
i
nedr
a
wi
ngsofa
na
t
om
i Ca
lf
i
ndi
ngsonamal
ec
a
da
ver. Anot
her
s
er
i
e
sofc
ol
ors
l
i
de
swi
t
hdr
a
wi
ngsha
sb
eenma
deoft
ypi
cala
nda
bnor
ma
lt
opogr
a
phi
cal
s
t
uc
r
t
ur
e
si
na
lmos
ta
llpa
r
t
soft
hehuma
nb
ody;i
ti
ncl
ude
ss
omedi
s
s
e
c
t
i
onpr
oc
e
dur
es.
r
a
r
ec
onge
ni
t
la
a
b
noml
li
a
t
i
e
s,huma
n
ndf
e
t
us
e
s. h t
hef
i
el
dofmyo
wn r
e
s
e
a
r
・
c
h,
em b tl ,
OS a
Iha
ves
t
udi
e
dt
hemor
phol
ogi
cals
pe
ci
f
i
ci
t
ya
ndgenes
i
sont
hef
ol
l
owi
nghuma
ns
t
uc
r
t
ur
es
and var
i
a
t
i
ons(
abnor
ma
l
i
t
i
es)f
r
om t
hevi
ewpoi
nt
sofembr
yol
ogy and compar
a
t
i
ve
mo
nar
ycour
s
esoft
hebr
onchi
a
lal
ler
i
es,
a
na
t
omy:t
hechondr
oe
pi
t
r
ochl
ea
r
i
s,ext
r
a
pul
s
uper
f
i
ci
ald(
1
r
S
a
l
i
spe
di
sa
r
t
er
y.s
oで a
l
l
p
dAda
c
hi
'
sct
ypeb
r
a
c
hi
l pl
a
e
xus,Cut
a
ne
ousne
r
ves
i
nt
heuppere
xt
r
emi
t
y,a
z
ygos1
(
)
t
x
lOft
i
her
i
ghtl
ung.a
ndot
he
r
s. Thepa
pera
lS
or
e
por
t
s
r
t,a
ndas
i
t
usi
nver
s
ust
ot
a
l
i
s
i
n br
i
efs
omer
e
c
entwor
ka
r
t
er
i
aldi
s
t
r
i
but
i
oni
nt
hehea
di
s
s
ec
t
e
da
tToya
ma
.
Ke
ywo
r
d
s:a
t
l
a
so
fhuma
nb
o
d
y,V
a
r
i
a
t
i
o
ns,ma
c
r
o
s
c
o
p
i
ca
na
t
o
my
解剖学図譜,変異,肉眼解剖学
発生学.比較解剖学.時 には組織学的に考察 している.
は
じ め に
私は肉眼解剖学 を専攻 し, 人体構造の正常例から変異
私の場合,教育面と研究面の仕事が完全i
こ重複す るため,
襲習体 から得 られた知識や経験 はず解剖学の教育や嚢習
(
破格)・奇形に至 るまでの形態形成の変化について.肉
に即座に反映す ることがで きる.解剖学実習中に,私 自
眼並びに実体顕微鏡下で調査 ・研究 している.解剖体で
身が考 えつかないような形態学的変異について,学生か
割出 された所見は,線描画 とスライドによって記録 し.
ら教えられ ることもしば しば経験す る.解剖体の所見を
Re
pr
i
ntr
e
q
ue
s
t
st
o:Sl
l
O
j
iCHI
BA,
Fi
r
s
tDe
p
a
r
t
me
nto
fAna
t
o
my,Ni
i
g
a
t
a
Ul
l
i
ヽ
,
e
r
s
i
t
ySc
ho
o
lo
fMe
d
i
c
i
n
e,
Ni
i
g
a
t
aCi
t
y.9
5
1J
APAN.
別刷請求先: 〒9
5
1新潟市旭町 通 1番町
新潟大学医学部解剖学第一講座
千葉正司
2
2
0
新潟医学会雑誌
第 111巻
第 4号 平成 9年 4月
観察す る時には. 自分の考えに固執せず.そL
'
)
実態 を素
直に把握す るように努め, 自ら正確 なスケ ッチす るよう
心掛けている.描写 とい う作業を通 して. 自分の観察眼
研究面の仕事
1
. 筋性膿窟弓と肋軟骨滑車上筋
の不備を補い,またその過程で,新たな疑問や研究テ-
大胸筋の下線 と広背筋 を連絡す る中筋束を筋性厳窟弓
て も生 まれて くる.解剖学実習を通 して.医学生が 人体
と貰い,およそ1
0
%の出現頻度で ヒ トの厳笛に観察 され
構造を
こついての理解 を深めるだけでな く,肉眼解剖学 と
ら1
\ この破格筋は,輔乳動物 において体幹の在官を動
他の基礎科 目や臨床科 目との関連性E
こついて,少 Lで も
かす ところの,皮斡筋の-部が遭残 した ものと考えられ
興味 を抱 くように努力 していきたいと考 えている. これ
ている.筋性腹蔵弓の多 くは,頭側筋束 と外側筋束から
まで(
,
T
)白分(
T
)
仕事を,教育面 と研究面i
こ分けて,簡単に
構成 され 時には.後者の筋束が欠如す る場 合.筋が鍵
紹 介す る.
を
こ変化 して厳性厳窟弓となる場合 も認 め られる.
教
育面の仕事
1
. 解剖図譜の作製
行 し, 上腕骨内側 上鞭 まで伸びた状態 を肋軟骨滑車上筋5
)
解剖学 における教育面の仕事と して,すなわち自分の
勉強 も兼ねて.浦
大胸筋腹部は時 々,胸肋部か i
、
)
遊離 して膳嵩や 上腕筋
膜i
こ放散 している. この嫡東が、厳窟 前壁で細い鍵i
こ移
良治先生 (1
97
51(
'
)r実習 人体解剖
と呼び. 日本では現在 までに 5例ほど報告 されている.
この破格筋は.筋性膝窟弓と一緒に出現する傾向が認め
図譜_
」
l
\に習 一
つて,成 人男惟 1体を解剖 し,その経過 を
逮-,詳細 にスケ ッチ して,
「描画を
こよる解剖記録」 に
枚,体幹 と内臓が 211
まとめた2
l
.左上肢と左下肢が各8O
枚.頭 ・頚部が77枚の.合計 44
8枚の線描画か上
・
L
〕
構成 さ
れ 解剖所見は洩層から深部まで連続す るとい う特数を
有す る. また これ ら全ての線描画を着色 し, カラ-スラ
イ ドも作製す る.遺体 を解剖 し 解剖学者 自らが線描 し
た解剖図譜寮は,世界で もそれほど多 く存在 しないと思
われる.
2. カラースライ ドの作製
上記 とは別に,実習体 を局所解剖学的 に剖 出 して.
r人体C
'
)1
3うー
一
一I
J
:r
ラ[ 卜.
.
」の作製 も行 う3
、
. 人体 の部位
ごとのf
E
,
常構造 と変異を主体 とし,それに前胸壁の切除.
頭部 ・骨盤離断 ・脊柱管解放などの解剖手技.心臓 ・肺 ・
肝昧 ・腎牌 ・牌妹などの器官区域,断面像や低拡 大像,
低形成腎 ・双角子宮 ・輪状肺などの各種の破格 例 .食道
静脈噛 ・腸捻転 ・舶 :
i
_
へ′
LこアなどL
'
)
疾病,晒 し骨,蘇
脳児などの胎児標本.弘前大学医学部病理学教室 と国立
弘前病院 かL
T
.
〕
提供 された内陳逆位や完全大血管転移症の
心線 などを含めて,合計 後,
5
0 枚のスライ ドから構成 さ
5
00枚を選び,学生の解剖学実習過
れ る.その中から 1,
程 に沿 ったスライ ド集を完成 させ る,
「
描画による解剖記録」の着色スライ ド,「人体のカラスライ ド」は,解剖学の教材 として利周 している.解剖
学の分野では, これまでにもスライ ド輿や ビデオテ-プ
などの視覚教材が作製 され
また最近では, フォ ト C
D
も急速に普及 し始めている.教材の持つ,それぞれの長
所を.解剖学の教育に生かす必要があると考えている.
図 1 筋性厳窟弓と肋軟骨滑車上筋 (左膝蔵,前面.
Chi
b
a ら5、から引用)
大胸筋腹部 (
Ab) の遊離筋 束A は,大胸
Achl
筋停止側の下縁において, 筋性膿窟弓 (
の浅層で停止腔 (
Cet
) に移行す る.停止腔
は上腕筋膜下を走行 して上腕骨内側上帝i
こ向
か う.遊離筋束Bは肢嵩の筋膜 に放散す る.
Cl:大胸筋鎖骨部,La:広背筋,
St:大胸筋胸肋部,V :取窟静脈 ,
2-・4 :第 2-第 4肋間神経の外側皮枝
千葉 :これ までの肉眼解剖学 の教育 と研究
図 2 気管支動脈の起始 と走行の模式図 (
前面.Ka
s
aiandChi
ba81か ら引用)
気管支動脈は肺門付近では.左右の気管支 (
BD,BS)の上線 と下縁を走
行す るた姉.右上枝,右下枝.左上枝,左下枝 を区別で きる.通常 で
は∴ 右上枝 (
Bl.B2) は右 の鋳骨 下動脈 (
SD). 大動脈性 の最 上位
工
B) に,
右下枝 L
B3-BS
) は左鎖骨 下動脈 (
SS)
.動脈
の肋間動 脈 (
管索 (
DA) よ り近位の大動脈弓 (
ARC) とそれ よ り遠位 の胸大動脈
(
DESlに.左上枝 (
B6
. B7
) は大動脈 弓と胸大動脈に, 左下枝 (
B8
1
は胸大動脈に由来する.左銀骨下動脈,大動脈 弓,胸大動脈 か らの気
B3
,B4,B6
)は,途 中で分 かれて. 左右 の肺 に分布 す る
管 支動脈 (
こと もあ る.気管支動脈 は, 1個体では,模式図中の数枝 が出現 し
.
,
右 2本 ・左 2本の場 合が一般的 であ る.
AZ:奇静脈,CCD:右総頚動脈 .CCS:左総額動脈.
DT :胸管, E :食道 ,RI
):右反回神経,
RS:左反回神経 ,T :気管,TI:内胸動脈,
VD :右迷走神経 .VS:左迷 走神経
2
21
2
2
2
新潟 医学 会雑誌
第 1
1
1巻
第 4号
平成 9年 ・
=
1月
られ る (
図 1)
. その停 止腔 は,上 腕 筋 膜 下 を克 行 し
正中 神経 と上腕動脈 の浅層 を鋭 角 に交 差 Lて い る. 肋軟
骨滑 車 上 筋 は, ブ タな どの儲蹄叛 を
こ観 察 され
庶粋 筋 の
仲間 と考 え られ てい る.
2. (
;型 大動脈 弓
右の鎖骨 下動脈 が, 大 動脈 弓 の最終枝 と して起 こ り,
chi(1
92か L
T
)C
気 管 と食通 の 後 ろを通 る場 合を.Ada
型 大 動 脈 弓6\と呼 uL
, そ こで は通 常 L
'
'
)腕 頚 動 脈 は 形 成
さ行 手, 石松 頚動脈 は大動脈 弓か [
)第 1校 と して 分枝 し
こ 1人(
り割 合 (
0.
5
て い る. 二(
7
)変 輿は, お よそ 200人i
9
61で観 察 され7㌧ こt
T
)異常 右鎖 骨 卜動 脈 の起始 部膨大
に(
_
ト・
、
て、時 i
こは食道 J)通過障害 を来す こと もあ る.G
型大動 脈 弓で は, 右椎骨動 脈 が異常 右鎖 骨 下動脈 か t
1
-起
こる場 合 と右舷頚動脈 か L
▲
'
起 こる場 合を区 別で き. その
際 に右反 回神経 は.前 者 では 右鎖骨 下動 脈 を反 回す る こ
とな く直艶
喉頭 i
こ向 か い.後者 で は右椎骨動脈 を反 回
す るとい う違 いが認 め られ る。 異常 右鎖 骨下動脈 は,右
背側 大動 脈 の 末梢 部 が適 確 した もL
T
)と 考え られ て い る.
3. 気管 支動 脈
気 管 支動 脈 は,肺 の栄 薬血管 と Lて.肺 や気管 支C
'
)
悼
性疾 患 , 肺癌 な どi
こ開 陳 して,近 年. その重 曹度 が増 し
た動 脈 と思 われ る.健 常 体では管 径 が細 い こし
L
_
. また後
縦隔 の器 官 , 自律神経 や リンパ節 に覆 われ るため を
こ, 気
管 支動脈 の 正確 な剖出 は案 外難 しい. 気管支動脈 は, 肺
門付近 で は気管 支の _
.
L縁 と下縁 に沿 って走 行す るたれ
動 脈 を if
上枝.右 下私
区別で きる.
左上枝, 左下 枝 に
気管 支動 脈 の起始 は,胸 大動脈 由来 の最 上位 t
:
I
)右肋間動
・
)
一
鎖′
丹下動脈 J
二そL
T
)枝. 左鎖骨 下動脈 とそ の枝.動
派, J
f
p
l遠 位 の胸 大動
脈管 索 よ り近 位 の 大動 脈 弓.動 脈管索 よ ・
派, の 5部 に 輿 中 して い る (
図 2)
.右上 枝 は右鎖 骨 下
動脈 , 大動 脈 性 L
'
)右肋間動 脈 か 己
▲
'
, 右 ド枝 は大動脈 弓、
胸 大動 脈 か r
). 左 L枝 と左 下枝は それ ぞれ
胸 大動脈 か
ら別 々に起 こ る幌 向が認 め エ
:
)ilる. 左鎖 骨 下動脈, 大動
脈 弓, 胸 大動 脈 に起 こる気管支動 脈 は. 走行 中 に 2分 し
図 3 浅 足背 動脈 (
.
右 足背.Chi
ba1
0、か ら引 用1
距腿関節L
7
)
わずかに遠位で.前置骨 筋 (
Mt
a)
の外側 か !
▲
,f
:伸 筋 支帯 (
Rei
) を賢いた浅 足
背動 脈 (
.
Dps) は. 伴 行静 脈 を伴 、て足背 筋
険 L
Fdpl上 を 末榔 こ向 か ・
'
1. 異常動脈 は,
Ps) と深 俳 骨 神経 げ p) か r
l
浅誹骨 神経 (
て, 左右 の肺 に分布す ること もあ る.気管 支動脈 の数 は.
右 1本 ・左 1本か ら右 6本 ・左 4本まで変化 し, 占 2本 ・
左 2本の場 合 が一般的 で あ る… 、
4
. 浅 足背 動 脈
足 背動 脈 は通常 ,長母指 伸 筋 と短 母指 伸筋 の深層 を末
こ(
0.
7,
9
。1, 足背 静 脈 網 , 背 側 指 神 経
梢 に 向 か う. 稀 i
と同 L
-く, 足背 筋繰 上 の皮下組織 中 i
こ, 伴 行静脈 を伴 う
図3
)
.この動脈 は,通常 の (
潔)
太 い動脈 が認 め られ る (
足 背 動 脈 と区 別 して,浅 足背動 脈 と呼 ば れ て い る1
011
\
サルの仲 間 で は,洩 深 2本 の足背動脈 が存在 す るけれ ど
第 1浅 背 側 中足動 脈 (
lJ
I
ds) を分岐 した後,
再 び足背 筋膜 Tに進 入 して,深 足底枝 に移 行
す る. この破格 動脈 を, 皮静脈 と間適 えない
よ うを
こ注 意す る必要 があ る.
Edl:長指伸筋の腔 ,El
l
l:長母指 伸筋の鍵 .
Ml:外果, Mm :内果 ,Ns
a:伏在神経 ,
Res:上伸 筋支帯 ,Sma:大伏在静脈,
Spa:小伏在静 脈 .Su:誹 腹神経 .
′
rt:距骨頭
千葉 :こ,
t
l
LまでL
7
)肉眼解剖学 (
・
7
1教育と研究
図 凄 腕神経薬 を取 り囲む敷脈網 (
右前面,千葉16) か ら引用)
鎖骨下動 脈 (
As
)
,厳窟動脈 (A)の筋枝 とそれ らの吻合 (辛),並びに神経 の栄養
動脈 (m)によって,腕神経叢 を囲む動脈網 が形成 され る. C型腕神経叢 を
こ見 られ る巌
窟動脈の経路は.神経叢の背腹の問で,内側神経束 を乗 り越 える浅肩甲下動脈 (
Sbs
lと
液窟動脈c
T
)
末梢 とを連絡す る動脈吻 合路 し
矢E
r
]
)と して示 され る.C7 と C8間 を通 り.
正中神経 (
M)の背側 を下行す る上肢の動脈本幹は,通常 よ り細 く描いてある._
.
は.
いずれかの動脈 を示す.
Ap:胸筋神経 「
7+,As
p:肩甲上動脈 .At
lニ外側胸動脈 .Ax:腰高神経,
B :上腕動脈.bi:上陳二頭筋枝 .Bs:浅 上腕動脈.
C5-C8:第 5-第 8頚神経前枝,Ca:上行頚動脈 .Cam :内側前腕定神経.
Cbm :内側上腕 皮神経 .Cha:前上腕 回旋動脈.C
(
I:烏 口腕筋枝 ,
I
p:下胸筋動脈 (
Kodama t
も.1
9
87122、,MC:筋 皮神経 .R :榛骨神経.
Sb:肩甲下動脈,s
er:前鋸筋枝.s
s:肩甲下筋枝.s
u:鏡骨下筋枝,
Tl:第 1胸神経前校,Ta:胸肩峰動脈,Te:頚横動脈. U :尺骨神経
2
2
3
2
2
4
新潟医学 会雑誌
第 11
1拳 第 4号
平成 9年 4月
ち, ヒ トを
こおけ る挽足背動脈 の報告 は,健界 で も今 回の
2例 が最初 と思 われ る.浅 足背 動脈 だけの出現例 と,浅
深 2本の足背動脈 の共存例の, 各 1例において. 坐骨 動
脈 や伏在動脈 は認め られ なか った. 今回 の浅 足背動脈 の
成因 は,晴乳動物 E
・
こおけ る伏在動脈 の星背部 だけC
p
'
)部 分
的 な週残 か, あ るいは足背筋膜上 の側 副循環路 の拡張 と
考 え られ る.足背 での注射時 には, この異常動 脈 を皮静
脈 と間違 えない よ ・
"
7に注意す る必要 があ る.
5
. Ad
a
c
hi(
1
9
2
8
)の C型腕神経 叢
通 常 の膜 嵩 動 脈 は.腕 神経 薬 の 2限 (
C7 と C81 の
は,厳 窟動 脈 が神経弟 主部 を貫 かず に, 内側神経 束の背
側面 (
深層 ) を経過 す ること
_があ る. この よ うな神経兼
a
c
hiL1928)の C型腕 神経 薬 と呼 ばれ
は.Ad
お よそ
59
t
)
'
の出現 頻度 で観察 され る6、
.C型腕 神経束 では. 正
中神経 r
7十と定型的 な胸筋神経 r
7ナは 欠如 し,神経薬 主
部の形態 も.背腹の神経 が単 ・
の神経幹 と して 集束す る
ものか ら, 正常 例 に近 い車構築 を示す もの まで 硬化 して
い る121
l
r
.腕 神経葉 は,腹蔵動脈 か l
T
'の肩 甲下筋枝 な
どの筋枝, 神経 の栄養動脈 か L
t
)
構成 され た複雑 な動脈網
に よ って取 り囲 まれ て い る16、. 本 来 の依 馬動 脈 が退 化
し,内側神経束を乗 り越 える温肩甲下動脈 (
山田
1
輔7)
1
5、
と膝窟動脈 の 末梢 とを連絡 す る吻 合路 (
側副循環路 )が
聴講動 脈 の経 路 を導 くことがで きる (図 4).
6. 上肢の皮神経
上肢 L
'
T
)皮神経 の 末栴 分布に1いて.成 人遺 体 にお いて
通常 の如 く皮剥 して, 表層 か ら追究す るi
・
まかi
こ, 胎 児の
:
)鼓動 こ入る直前 まで,
皮膚 を筋膜 ごと厚 く刺 し.深層か ま
通 常 とは反 対 に追跡 を試 み た1
7㌧ その結 果 , 隣接 す る
神経 との間 で交通 が認 め f
∴
)
お る ものの, 後 上腕 皮神経 を
除 く各 駐神経 は. 真皮に進 入す るまでは. 余 り重 複す る
ことな く固有 の分布領域 を有す ること、 また横側 皮静脈
と尺側 皮静脈 に挟 まれ た 上肢 の腹 側面 には.腕 神経 葉 の
腹側 層 に由来す る皮神経 が分布 し‥ 上肢背側 面 には背側
層か らの 定神経 が分布 す ること, 内側 前腕 皮神経 には,
図 5 上肢の岐神経 分布領域 と皮静脈 との関係 (右
s
a
ii
、
)1
7\か ら引 用 )
前面 と錐面 .Ka
側
擁 側皮静脈 (C) と尺 皮静脈 (B)に因
まれ た上肢 の頗 側面 には,腕 神経 叢の腹側層
に起 こる妓 神経 が分布 し.背側 面 には背側層
に起 こる皮神経 が分布す る. 内側前腕 攻神経
(5. 61は.背 腹 U)2成 分 を有す る. 分節
が矢落 した De
r
ma
t
ome の境 界部、す なわ
ち前軸線 (A)の経過 は.前腕 正中線上 か ら
外側 に向か い. 上腕近 位 では榛側 皮静脈 の走
行i
こ一致 してい る.
前腕 正 中線上 か ら上腕外側 に向かい,最後 は擁側皮静脈
1 :上外側 上腕 皮神経 (
肢窟神経 )
.
2 :下外0l
Lt
.
腕 皮神経 (
椀骨 神経 l
,
3 :後前腕 虎神経 (
榛骨神経 ),
4 :外側前腕 皮神経 (筋 皮神経 1,
5 :内側前腕 皮神経 の掌 側枝,
図 5)
.
の走行 に一致 した (
6 :内側前腕 皮神軽 の尺側枝.
背 腹 2つの成 分が含 まれ ること. が明 らかi
こされた. さ
らに神経 の分節 が 欠落 した境 界部 (
C5 と Tl
l
lの Der
ma
t
omeの境 界線 )
, す なわ ち上肢 の前軸線 の経 過 は,
7. 梨状筋 と坐骨神経
梨状筋上孔 を上殿神経 が通 り,梨状筋下孔 を下殿神経 .
後大腿 妓神経 ,坐骨神経 が通 る, いわゆ る正常 の形態 は,
7 :前上腕 皮神経 (内側前腕 皮神経 の枝)
.
8 :内側上腕 皮神経 .
1
0:肋間上腕 神経 の後枝
千葉 :これ 蜜での肉眼解剖学 の教習 と研究
図 6 奇静脈葉への[
茎域気管支 と血管 の分布 (
右肺外側面.Chi
ba と
L
、
2
0'か
肺 の辺縁 を残 して,肺実質 を除去す る.奇静脈葉 を
こぼ,肺尖枝 の固
有 肺尖枝 (
BI
盈) と上後幸枝 の後 妓 (
B2
a) のそれぞれ の ま部,伴行
Vl
al が分布 す
動脈 (
肺 尖動 脈 と上行雄動脈 1
,肺尖 静脈 の肺尖 枝 (
る.奇静脈 葉と残 り(
T
)
肺 上薬 との問の深 い奇静脈裂中には,蓮離縁 に
奇静脈 を入れた奇静脈間膜 が収 まる,番静麻 は,右上糞 を後上方 か ら
∴l周 して. 上大静脈 i
こ注 ぎ,奇静脈葉 の限部 を
外側前方へ とほほ 3.
絞輪 す る.奇静脈の走行は矢印で示す.水平製は肺 の前縁 では不鮮 明
であ る 巨 ) 那,肺内では膜性 の中隔 (*) として認 め られ る.
B2:綾上貴校.B3:前 _
.
上
二
薬枝.
B4:外側中葉枝.BS:内側車乗枝.
BG:上下菓枝 .BT:内側肺底枝.
B1
0:挨肺底枝.V2a:後上薬静脈C
T
)
肺 尖枝
2
2
5
2
2
6
新潟医学会雑誌
第1
11巻
第 4号 平成 9年 4月
学部の大谷修教授 との共同研究) を紹介 した.
状筋 を単独で貫通す る場 合,坐骨神経 が分離 して,総俳
骨神経 が下殿 神経,後大腿 皮神経の背側限 とともに梨状
謝
筋を賢通す る場 合. さらには梨状筋 上孔 を上殿神経 のほ
3回新潟医学会c
T
)
特別講演の概要で
本文は,第 52
かを
こ,下殿神経,練排骨神経,後大腿皮神経 が通過 す る
ある.座長の労 を快 くお引 き受 け くだ された熊 木寛
場 合などの よ ・
'
)に,梨状筋 と仙骨神経弟背側枝 との問で
治教授 に. 図の掲載 を ご快 諾 され た河 西達 夫先生
は , さまざまな変異 が認 め られ る18).嬢大腿慮神経 の
し
弘前大学名誉教授)i
ニー心 よ り深謝いた します.
その腹側面 を通過 している. しか しなが L
T
'
上殿神経.下
辞
参
考
文
献
殿神経.総俳骨神経.後大腿 皮神経L
7
)背側眼は、 梨状筋
1
1浦 良治 :実習 人体解剖図譜.南江堂.東京.1
9
7
5.
上孔一梨状筋貫通,型状筋 f
{
孔の, いず,
1
・
lの経路 もと E
)
21千葉正 司 :描画 による解剖記銘 (
河西達 夫監修1
.
得 ることが可能である.梨状筋を貫通 しやすい神経 と し
弘前大学医学部解剖学第_
∴講座.1
987.
封 土下殿神経. 第2位が総俳骨神経,以下,後
て,第 1f
大腿皮神経 の背側限,膳骨 神経の背側部.後大腿 定神経
T
)
の臓側板. 腰骨神経の腹側主部の順 と判定 された. こC
ような神経 の梨状筋貫通は.脊柱 などの分節構成の異常
とは関係のない独自の現象 と思われ る1
9
1
.
8. 奇 静 脈 葉
覧.解剖誌 ,71:3
5
i
i
.1
99
6.
41河西達夫.千葉正司 :筋性液窟 弓の本態 とその神経
支配.解剖誌.52:3
0
9-・
3
3
6,1
977,
51Chi
t
)
a.SH Suz
uki
,T.and Kas
ai
.T.:A r
a
r
e
a
nomal
yoft
h
el
xt
c
t
or
a
l
i
sma
j
or
-t
hec
hondr
oe
pi
t
r
(
光
稀に,右の第 1肋骨 内側面に起 こる間膜が肺葉裂中に
hl
e
ar
i
s.Oka
j
i
ma
sド(
l
l
i
aAna
l
.J
pn.
.6
0:1
7
5-1
8
6.
1
9
83.
脈は体壁 を離れて ′
し-プ状 に走行 し,最後は上大静脈 に
61Adac
hi
、B,:Da
sAr
t
e
r
i
ens
ys
t
e
md
erJ
a
pa
nel
・
.Bd.
1
,2
2-41
,1
3
8-1
5
6,1
9
0-1
91,1
銘-3
2
6.Mar
u
残 して, 小 さな上部 と大 きな下部 とに分断 し.肺 上部を
後 内側 か ら外側 ,最後は前 内側 に向か う,お よそ 3月
n
ze
)
‥ Ⅰ
くさ
,
(
)
t
(
1
,1
9
2
8.
Ct
7)千葉正 司,鈴木孝夫 ,河西達夫 :大動脈 弓最終枝 と
間す る深 い奇静脈裂中に収 まi
)
,奇静脈葉の限部 を絞輪
しての右銀骨下動脈の 2例 と.本邦におけ る報告例
している.奇静脈葉i
こは,肺尖区 と後上薬区の区域気管
3:4
5
(
ト4
6
4,1
9
81.
につt
、
ての要約.弘前医学 .3
支の一部がそれぞれ分布 し.そJtゆえ奇静脈が.肺 尖区
81Ka
組i
,T.and(
「
hi
h
a.S.:Ma
cr
os
copi
ca
na
t
omy
、
と後上薬区の後内側部を部分的に綬輪 している (
図 6120、
oft
he br
onchi
alar
t
el
・
i
es.Ana
t.An∑.. 1
45:
奇静脈糞は.後主静脈が頭 方か1
、
-発生中の肺上輩の一部
を跨 ぐために生 L
<た もの と考えられている.左肺での奇
静脈葉 も.非常 に稀ではあ るものの,その存在が確認 さ
れてい る. 1
'′
しカなどでは.奇静脈葉が正常の状態 とい
1
6
6-1
81.1
97
9.
9) 河西達夫.千葉正司 :気管支動脈の起始 と走行.弘
前医学.33:3
8
6-4
03,1
9
81
.
l
otChi
b
a,S.:Twoca
s
e
soft
hes
up
er
f
i
ci
aldor
s
al
i
s
t
把di
sa
T
l
e
r
y obel
ヽ
,
e
di
nma
n.AI
l
nAna
一
,1
7
8:1
8
3
ラ.
-1
89.1
99
6.
9. 肝の舌状突起
肝臓の左葉の一部が. 舌状 に突出 して,蹄の左側 まで
1
1
1千葉正司 :線描による人体構造の記録.解剖学者 が
下垂 した状態 を,肝の舌状突起 と呼 んでい るJ
l
い. 舌状
語 る人体の世界 (日本解剖学 会編 1
.2
2-24.鼠 入
突起 と本来の左葉 との間 には,左側か ら大 きな切痕 が形
成 され
その延長は,肝臓賦側面 において,浅 い裂溝 と
99
6.
社,東京,1
1
21千葉正 司 :C型腕神経叢の形態学的研究 (
その l)
.
して肝門 に向かって構走 している.肝内の門脈系の分布
神経叢の形態 と各神経 の分岐態度について.解剖誌,
状腰 か ら, この舌状突起 は,本来退化すべき肝左葉 の前
5
8:1
43-1
5
6,1
9
8
3.
方部が遺残 した ものと考 え られた.
そのほか.現在調査中の,心臓の血管分布と動脈吻 合1
1
㌧
重複尿管例の腎区域,足の 多指症,内へ/
しこI
J
'
燕 (右傍
蜜山医科薬科大学医
十二指腸 ヘルニア)
,内臓逆位例 (
1
31千葉正 司 :C型腕神経叢の形態学的研究 (
その 2)
.
神経叢(
1
7
)
解析と各神経の分節構成.解剖誌.5
9:7
0
7
・
-7
22.1
9
8
4.
1
41千葉正 司 :C型腕神経叢の形態学的研究 (
その 3)
.
千葉 :これ まで の肉眼解剖 学 の教 育 と研究
膝嵩動脈 と神経 叢 との位 置的関 係 について.解 剖誌,
61:92
8,1
9
8
6.
・
1
5)山 田致知 :浅 肩 甲下動 脈 (新 称 ) の意義. 日本医事
新報 ・rユニ 7版 ,6
0:3- 7.1
9
67.
1
6)千 葉正 司
:C型腕神経 草 につ いて. 末梢 神経解 剖学
,1
61-・
1
6
8. S
CI杜 ,
一 基礎 と発展- (
佐藤達夫監修 )
東 京 ,1
99
5.
1
7)Ka
租i
,T.
,Chi
h ,S.an
dTs
uno
da,T.1
'Mor
phol
什
2
2
7
係 につ いて. 解剖 誌 ,6
9:2
80-3
05、1
9
9
4.
2
OIChi
t
n,S‥ S
uz
uki
,T.
,Tak
n haShi
.D.an
d Ka組i
,
T.:AT
la
ut
o
ps
ye
a
s
eOfa
z
ygosl
ot
x)a
ndt
h
ee
xt
r a
-
pul
monar
yC
our
s
eoft
hebr
onc
hi
a
lvei
ni
nma
n.
t
.J
pn.,6
6:31
3-3
3
8.1
9
9
0.
Oka
j
i
ma
sFol
i
aAna
21
)Chi
ゎ
a,S.
.Suェ
uki
.T.andKa
s
ai
.T.:A t
(
)
1
1
gue
1
i
kepr
.
oj
ee
t
i
onoft
hel
ef
tl
ob
ei
l
lhumと
I
nl
i
\
・
cl
・
.
a
c
compani
cdw
it
hl
i
enor
enalvenouss
huntand
gi
eali
nヽ
,
es
t
i
ga
t
i
(
)
T
IOft
hepel
・
i
phemldi
s
t
r
i
but
i
on
i
nt
r
a
hepa
t
i
cal
ler
i
ala
na
s
t
omos
i
s.Oka
j
i
m.
・
l
SFol
i
I
.
1
ofeut
aneousner
\
r
esi
l
lt
he ul
)
Pel
・
.ext
r
emi
t
y.
Ana
t.J
pn.
.郎 :51-6
6.1
9
9l.
l
.J
l
)
n‥ 5
8:60
3-61
2.1
9
82.
(
)
ka
j
i
ma
sFol
i
aAna
1
8)千 葉 正 司 :仙骨 神経 叢 各校 にム られ る梨状筋貫通 の
7:6
91-7
2
4、1
9
92.
多様性 に ついて.解剖誌 ,6
1
9)千葉正 司 ,石橋 恭之 .河西達夫 :仙骨神経 叢背 側枝
の梨状 筋貫通現 象 と脊柱 な どの分節 構成変 化 との閑
2
2)Ko
dar
r
払,K.
.Yanuda,M..Kawai
.K.
.Okamot
o,
K.and Mi
Zukami
,S.:The i
nf
er
i
orpect
or
al
a
r
t
er
y.anew def
i
ni
t
i
on_Oki
l
j
i
n
l
a
SFol
i
aAl
l
a
t.
J
pn‥ 6
4:47-5
8.1
9
8
7.
Fly UP